本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る蒸気抜きパウチ用外装カートンの1実施例を示す平面展開図であり、図2は本発明に係る蒸気抜きパウチ用外装カートンに蒸気抜きパウチを収納後で、開封前の状態を示す斜視図であり、図3は本発明に係る蒸気抜きパウチ用外装カートンに蒸気抜きパウチを収納後で、開封後(加熱前)の状態を示す斜視図であり、図4は本発明に係る蒸気抜きパウチ用外装カートンに蒸気抜きパウチを収納後で、加熱調理中(パウチ膨張時)の状態を示す斜視図である。
本発明の1実施例の蒸気抜きパウチ用外装カートン(K)は、液状物、固形物、固液混合体、粘体などの内容物を密封包装した蒸気抜きパウチ(P)を寝かせた状態で収納し、電子レンジで加熱調理可能であり、また取り扱い時の危険性も全くなく、さらに電子レンジ内から取り出す際のハンドリング性にも優れているものであり、具体的には、加熱により内部蒸気圧が所定圧力以上に上昇すると該蒸気圧により開口する蒸気抜きシール部(V)を有する蒸気抜きパウチ(P)用外装カートン(K)であって、図1に示すように、少なくとも天面パネル(1)と、該天面パネル(1)に対向する底面パネル(2)と、該天面パネル(1)および底面パネル(2)を連設する前後にダストフラップ(3a、3b、4a、4b)をそれぞれ有する両側面パネル(3、4)と、さらに蓋部(2c)を有する前側面パネル(2b)、および後側面パネル(1a、2a)とで形成した偏平状の直方体形状を呈しており、前記天面パネル(1)には、前記パウチ(P)の蒸気抜きシール部(V)を露出しないようにカートン開封口(6)が浅く形成されている。さらに該パウチ(P)の膨張によって切り裂ける開封用切れ目線(d)が該開封口(6)下端中央から下方に向かって設けられているもので、紙を主体とする1枚のブランクシートから形成される外装カートン(K)である。
尚、前記パウチ本体に設けられた蒸気抜きシール部(V)の仕組みには、各種のタイプがあり、例えば、(1)パウチ本体の所定位置に該パウチの表裏の内面同士をドーナツ状にシールして環状シール部を設け、該環状シール部の中心に予め、蒸気抜き孔を開けておき、蒸気圧により該環状シール部が剥離して該蒸気抜き孔から蒸気を放出する環状シール部タイプ、(2)パウチ本体の所定位置の表裏いずれか一方の面に蒸気抜き孔を開け、且つ該蒸気抜き孔を被覆するように易剥離性フィルムをシールしておき、蒸気圧により該易剥離性フィルムが剥離して該蒸気抜き孔から蒸気を放出する易剥離性フィルムタイプ、(3)パウチ本体の所定位置に設けられた背シール部の一部を弱シール部または脆弱部に形成しておき、蒸気圧により該弱シール部または脆弱部が剥離して蒸気抜き孔を形成し、該蒸気抜き孔から蒸気を放出する背シール部利用タイプなどがあり、特に制限されるものではなくいずれのタイプを用いても構わない。
また、前記両側面パネル(3、4)と前記開封口(6)側のそれぞれのダストフラップ(3a、4a)とが開封用切れ目線(d)により連設されている。さらに、前記天面パネ
ル(1)のカートン開封口(6)下端中央から下方に向かって設けられている開封用切れ目線(d)の所定の位置点(f)から該カートン開封口(6)の両端に向かってV字状の折り目線(e)を設け、且つ該天面パネル(1)下方の両コーナーに向かって逆Y字状の折り目線(e)が設けられている。
本実施形態において、外装カートン(K)のカートン本体は、扁平カートンで使用材料は紙を主体としており、基本的には通常のレトルト食品(レトルトパウチ)の外装に適用されている外装カートンと同じ構成、材質を有し、その内部には、図2に示すように、加熱により内部蒸気圧が所定圧力以上に上昇すると該蒸気圧により開口する蒸気抜きシール部(V)を有する蒸気抜きパウチ(P)が収納されている。
ところで、外装カートン(K)は、図1に示す、1枚のブランクから形成されるが、通常はサック貼機(製函機)を用いて前記側面パネル(4)と糊代(5)をアクリル系などの水性エマルジョンタイプ、或いはホットメルトタイプの接着剤などにより貼着させ、スリーブ状(筒状)に製函する。この得られたスリーブを横型カートニングマシンにセットして前記蒸気抜きパウチ(P)を充填包装するのが一般的であるが、商品によっては、前述のようにスリーブ状にしてから充填包装する方法を取らずに、1枚のブランクを用いて一気に該蒸気抜きパウチ(P)を充填包装機上で充填包装する、いわゆるラップランド包装形態にしても構わない。
前記スリーブを用いて横型カートニングマシンにより、該蒸気抜きパウチ(P)を収納する際には、該蒸気抜きパウチ(P)に設けられている蒸気抜きシール部(V)を上面に向けた状態で収納する。収納後、両側面パネル(3、4)に開封用切れ目線(d)により連設されているダストフラップ(3a、4a)をそれぞれ内側に折り曲げ、該折り曲げられた該ダストフラップ(3a、4a)外面と、同様に内側に折り曲げられた前側面パネル(2b)の内面を接着剤などにより貼着させ、さらに蓋部(2c)を、該カートン(K)本体の天面パネル(1)にオーバーラップする形態で接着剤などにより貼着する。そしてさらに前記両側面パネル(3、4)の他方に折り目線で連設されているダストフラップ(3b、4b)をそれぞれ内側に折り曲げ、引き続いて後側面パネル(1a、2a)をそれぞれ内側に折り曲げて、図2に示すように、偏平状の直方体形状を呈する蒸気抜きパウチ(P)が収納されている外装カートン(K)を作製する。
次に、図2に示す、蒸気抜きパウチ(P)入りの外装カートン(K)を電子レンジ内にセットして加熱調理するに際しては、図3に示すように、前記蓋部(2c)の先端部分である摘み部(h)を指で摘んで開封する。その際、前記両側面パネル(3、4)と前記開封口(6)側のそれぞれのダストフラップ(3a、4a)とを連設している開封用切れ目線(d、d)を切断して完全に開封しても構わないが、加熱調理時の内容物の飛散や蒸気の吹き出しなどの危険性を配慮して切断せずにして蓋部(2c)が防御壁になるような形態にしておき、加熱調理が終了してから切断して完全に開封した方が好ましい。また、前述と同様に内容物の飛散や蒸気の吹き出しによる危険性を防止するため、前記パウチ(P)の蒸気抜きシール部(V)を露出しないようにカートン開封口(6)が浅く形成されている。
次に、図4に示すように、加熱調理を開始すると内容物が加熱されて蒸気が発生し、パウチ(P)内の圧力上昇により、該パウチ膨張が起こるが、その際、該カートン(K)本体の強度と前記天面パネル(1)のカートン開封口(6)下端中央から下方に向かって設けられている開封用切れ目線(d)の所定の位置点(f)から該カートン開封口(6)の両端に向かって設けられているV字状の折り目線(e)と、且つ該天面パネル(1)下方の両コーナーに向かって設けられている逆Y字状の折り目線(e)とにより、膨張による該パウチ(P)の破裂をより一層抑制するので、該パウチ(P)内の圧力は、該天面パネ
ル(1)のカートン開封口(6)下端中央から下方に向かって設けられている開封用切れ目線(d)を容易に切り裂き、裂け目部(g)を形成し、同時に該蒸気抜きシール部(V)を開口し、前記裂け目部(g)を通じて蒸気を外部に安定的に確実に吹き出すことで該パウチ(P)の破裂が防止でき、加熱調理が継続できるものである。
このように本発明の蒸気抜きパウチ用外装カートン(K)は、液状物、固形物、固液混合体、粘体などの内容物を密封包装した蒸気抜きパウチ(P)を寝かせた状態で収納し、加熱により内部蒸気圧が所定圧力以上に上昇すると該蒸気圧により開口する蒸気抜きシール部(V)を有する蒸気抜きパウチ(P)用外装カートン(K)であって、図1に示すように、少なくとも天面パネル(1)と、該天面パネル(1)に対向する底面パネル(2)と、該天面パネル(1)および底面パネル(2)を連設する前後にダストフラップ(3a、3b、4a、4b)をそれぞれ有する両側面パネル(3、4)と、さらに蓋部(2c)を有する前側面パネル(2b)、および後側面パネル(1a、2a)とで形成した偏平状の直方体形状を呈しており、前記天面パネル(1)には、前記パウチ(P)の蒸気抜きシール部(V)を露出しないようにカートン開封口(6)が浅く形成されている。さらに該パウチ(P)の膨張によって切り裂ける開封用切れ目線(d)が該開封口(6)下端中央から下方に向かって設けられている。従って、従来のように蒸気抜き部分が完全に露出していないので該パウチ(P)の急激な膨張などによる突発的な蒸気の吹き出しや内容物の飛散により、火傷する危険性が全くなく非常に安全な外装カートン(K)である。さらに、前記両側面パネル(3、4)と前記開封口(6)側のそれぞれのダストフラップ(3a、4a)とを連設している開封用切れ目線(d、d)を切断し、完全に開封して外装カートン(K)から、容易に取り出すことができるのでハンドリング性にも優れているものである。
本発明において、外装カートン(K)は、マニラボールやコートボールなどの板紙を材料として使用し、水蒸気雰囲気中での加熱に耐え得る構成を有していることが好ましく、例えば接着部分には、水蒸気雰囲気中での加熱によっても実質的に接着強度を低下しない接着剤を使用する。或いは該カートン(K)本体の構成材として、紙材にプラスチックフィルムがラミネートされている耐水性構成材を用い、プラスチックフィルムの溶着によりその接着部分の接着を行なうことにより、水蒸気雰囲気中での加熱にもかかわらず該パウチ(P)の膨張に充分に耐え得る該カートン(K)を作製できる。
さらに、前記カートン(K)本体表面には、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式などの印刷方法により、商品の写真、内容説明などを印刷して消費者の購買動機に寄与する表示を行なうことができる。
また、該印刷後の表面にポリエステルシート、ポリプロピレンシートなどをラミネートし、平圧プレス機やロールプレス機などを使用して表面加工を行い、印刷面の艶出しを行なうこともできる。さらに、UVオフセット印刷機を使用し、用紙上にアクリル系や不飽和ポリエステル系のプレポリマーに、アクリルやスチレンなどのモノマー成分、光重合開始剤、および、その他添加剤を組成成分とする紫外線硬化型グロスニスをUVオフセット印刷することにより、耐摩擦性が良く、商品の流通工程や使用時に発生する該カートン(K)の外面に発生する擦れを防止することができるので物性面からも優れた該カートン(K)が生産できる。
前記カートン(K)の天面パネル(1)に設けられているV字状の折り目線(e)と、逆Y字状の折り目線(e)は、通常、罫線と呼ばれており、この罫線を設ける方法は、一般的に紙器加工に使用されている切れ刃と罫線刃(折り目線を設ける押し刃)を埋め込んだ表抜き抜型を使用することができる。したがって、特に特別な装置を用意することもないし、また作業工程も従来と全く同様に行うことができる。
ところで、紙器加工に使用されている抜型は、雄型と雌型から構成されており、雄型は合板に函の形状に合せて、レーザー切断装置で溝を切り込み、紙に罫線をつける罫線刃と切断する切刃を埋め込んである。
一方の雌型は、鉄板(面板またはカッティングプレートと呼ぶ)上に、堅い紙であるプレスボードを貼り付け、罫線刃の当たる部分に溝を作製する。
このような抜型を平板打抜機に取り付け、この平板打抜機の雄・雌の抜型の間にあらかじめ印刷された紙を送り込み、平圧式で加圧して打ち抜きを行い、切刃による切断と罫線刃による罫線を同時に加工して、所定の寸法・形状のブランクを作製するのが一般的である。
また、前記天面パネル(1)のカートン開封口(6)下端中央から下方に向かって設けられている開封用切れ目線(d)を設ける方法は、前述の雄型にミシン刃を追加して埋め込みミシン目による開封用切れ目線(d)、或いは、切刃を用いたハーフカット線やジッパーでも構わないが、作業性、コスト面などを考慮するとミシン目による開封用切れ目線(d)を設けることが好ましい。
ところで、本発明において、前記外装カートン(K)の中に収納されている蒸気抜きパウチ(P)としては、少なくとも、片面にシーラント層を有するウェブ状(巻取り状)の積層材料を作製し、該積層材料を用いて、例えば、図5に示すように、パウチ(P)本体の所定位置に該パウチ(P)の表裏の内面同士をドーナツ状にシールして環状シール部(11)を設け、該環状シール部(11)の中心に予め、蒸気抜き孔(12)を開けておき、蒸気圧により該環状シール部(11)が剥離して該蒸気抜き孔(12)から蒸気を放出する環状シール部タイプ、或いはパウチ(P)本体の所定位置の表裏いずれか一方の面に蒸気抜き孔(12)を開け、且つ該蒸気抜き孔(12)を被覆するように易剥離性フィルムをシールしておき、蒸気圧により該易剥離性フィルムが剥離して該蒸気抜き孔(12)から蒸気を放出する易剥離性フィルムタイプのいずれかの蒸気抜きシール部(V)と、背シール部(13)と、底シール部(14)と、内容物を充填した後に設けられる天シール部(15)および開封用ノッチ(N)とを設けてなるピロータイプ(背貼合掌)のパウチ(P)が用いられる。該パウチ(P)は、図6に示すように、電子レンジ内に入れ、加熱調理を開始すると内容物(L)が加熱されて蒸気(10)が発生し、該パウチ(P)内の圧力上昇により、パウチ膨張が起こるが、その蒸気圧により該蒸気抜きシール部(V)の環状シール部(11)、もしくは易剥離性フィルムが剥離して該蒸気(10)は蒸気抜き孔(12)から、放出されるので該パウチ(10)が破裂することはなく、さらに該蒸気抜き孔(12)部分が外装カートン(K)で覆われているので蒸気の吹き出しや内容物の飛散により、火傷する危険性がなく安全な形態の蒸気抜きパウチ用外装カートン(K)である。
また、その他の例として、図7に示すように、パウチ(P)の長手方向の中心からずれた位置の一方の面上に、略垂直に立ち上げることができ、常時は一方に倒された状態になっているフィン部(18)が形成され、該フィン部(18)は、対向するフィルム片の内面同士を中央に非シール部(19)を残して、三方のフィン部用周辺シール部(17)のみを合掌シールして形成されていて、該非シール部(19)内に設けられている前述した環状シール部タイプ、或いは易剥離性フィルムタイプ(この場合は、フィン部(18)に形成された蒸気抜き孔を表裏両面から易剥離性フィルムを被覆してシールしてある)のいずれかの蒸気抜きシール部(V)と、サイドシール部(16)と、底シール部(14)と、内容物を充填した後に設けられる天シール部(15)および開封用ノッチ(N)を設けてなるパウチ(P)が用いられる。該パウチ(P)は、図8に示すように、電子レンジ内
に入れ、加熱調理を開始すると内容物(L)が加熱されて蒸気(10)が発生し、該パウチ(P)内の圧力上昇により、パウチ膨張が起こるが、その蒸気圧により蒸気抜きシール部(V)の環状シール部(11)、もしくは易剥離性フィルムが剥離して該蒸気(10)は蒸気抜き孔(12)から、放出されるので該パウチ(10)が破裂することはなく、さらに該蒸気抜き孔(12)部分が外装カートン(K)で覆われているので蒸気の吹き出しや内容物の飛散により、火傷する危険性がなく安全な形態の蒸気抜きパウチ用外装カートン(K)である。
さらに、またその他の例として、図9に示すように、パウチ(P)本体の所定位置に設けられた背シール部(13)の一部を弱シール部、または脆弱部に形成しておき、蒸気圧により該弱シール部、または脆弱部が剥離して蒸気抜き孔を形成し、該蒸気抜き孔から蒸気を放出する背シール部利用タイプの蒸気抜きシール部(V)と、底シール部(14)と、内容物を充填した後に設けられる天シール部(15)および開封用ノッチ(N)とを設けてなる変形ピロータイプ(背貼合掌)のパウチ(P)が用いられる。該パウチ(P)は、図10に示すように、電子レンジ内に入れ、加熱調理を開始すると内容物(L)が加熱されて蒸気(10)が発生し、該パウチ(P)内の圧力上昇により、パウチ膨張が起こるが、その蒸気圧により蒸気抜きシール部(V)の該弱シール部または脆弱部が剥離して該蒸気(10)は蒸気抜き孔(12)から、放出されるので該パウチ(10)が破裂することはなく、さらに該蒸気抜き孔(12)部分が外装カートン(K)で覆われているので蒸気の吹き出しや内容物の飛散により、火傷する危険性がなく安全な形態の蒸気抜きパウチ用外装カートン(K)である。
次に、該パウチ(P)には、該パウチ(P)から内容物を取り出すための易開封加工部を形成する必要がある。このような易開封加工部としては、例えば、該パウチ(P)の周辺シール部端部にV型の開封用ノッチ(N)やI型の開封用ノッチ(N)または該パウチ(P)を横断するミシン目やハーフカット線などを施す。このような易開封加工部を形成する方法としては、レーザー加工、刃物などによる機械加工、ヒートバーなどによる熱加工などが挙げられる。
これらの蒸気抜きパウチ(P)の製造工程は、まず、初めに少なくとも、片面にシーラント層を有するウェブ状の積層材料を作製することが必要である。該積層材料の材質構成は、内容物の種類、内容量、流通条件などによって適宜設計されるが、図11および図12に基づいて詳細に説明する。
前記積層材料(20)としては、例えば、図11に示すように、最外層の基材層(22)と、印刷層(21)と、接着層(23)と、最内層のシーラント層(25)とを順次積層したものである。また、図12に示すように、必要に応じて、最外層の基材層(22)と最内層のシーラント層(25)との層間に中間層(24)を設けても構わない。尚、印刷層(21)と接着層(23)は、必須の層ではなく、適宜必要に応じて設けられる層である。
前記最外層の基材層(22)の材質としては、耐熱性を有し、一般に電子レンジで加熱調理される食品用包装材料として使用されているものならば、特に限定はされない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの延伸又は無延伸フィルム、ナイロン−6/メタキシリレンジアミンナイロン6共押出しフィルム、ポリプロピレン/エチレン
−ビニルアルコール共重合体共押出しフィルムなどのいずれか、またはこれらの2つ以上のフィルムを積層した複合フィルムであっても構わない。
尚、本発明において、該蒸気抜きパウチ(P)をより一層安定的に直線状に開封するため、前記基材層(22)が直線引裂き性を有するフィルムからなることが好ましい。該直線引裂き性を有するフィルムとは、一方向に延伸した1軸延伸フィルムや縦横の延伸倍率を変えた2軸延伸フィルムなどがあり、該パウチ(P)では、直線引裂き性を有する2軸延伸フィルムが好ましい。
一般的にプラスチックフィルムは、延伸フィルムと無延伸フィルムに大別されるが、延伸フィルムは、プラスチックフィルムを融点以下の温度に加熱しながら縦横2方向、或いはそのいずれか1方向に引き伸ばして配向させたフィルムであり、無延伸フィルムは延伸をしていない未延伸状態のフィルムで分子鎖の配向がなく分子運動が自由なため熱溶融による接着(熱シール)ができる。延伸によるフィルムの分子鎖は、1軸延伸では1方向に、2軸延伸では面方向に配向し、無延伸フィルムの物性改善が可能となる。また、延伸することにより、腰(剛度)、透明性、引張り強さ、収縮性は増加し、光沢、防湿性、バリア性は改善するが、伸び、引裂き強度は減少する。
このような直線引裂き性を有するフィルムとしては、通常2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)や2軸延伸ポリアミドフィルム(ON)などが多用されている。直線引裂き性を有するフィルムは、フィルムの長手(縦)方向[MD(machine direction、押し出し方向)方向]および幅(横)方向[TD(transverse direction)方向)の少なくとも、いずれかの方向に直線的に容易に引き裂かれ得る性能(易引き裂き性)を有している。
前記直線引裂き性を有するフィルムである2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)は、例えば、重量平均分子量600〜4000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)単位を5〜20重量%含有したポリブチレンテレフタレート(変性PBT)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)とを、PET/変性PBT=70/30〜95/5(重量比)の割合で混合した原料を用いて製造された2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)を挙げることができる。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、公知の製法、すなわち、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとからのエステル交換反応法、あるいは、テレフタル酸とエチレングリコールからの直接エステル化法によりオリゴマーを得た後、溶融重合、あるいはさらに固相重合して得られたものであり、さらに他の成分を共重合して得られたものであっても構わない。他の共重合成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸などのオキシカルボン酸、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコールや、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物が挙げられる。
前記ポリブチレンテレフタレート(変性PBT)は、PBTの重合工程においてPTMGを添加し、重縮合して得られるものであってもよいし、PBTとPTMGを押出機で溶融混練することによって得られるものであってもよい。
該2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)の原料樹脂には、ポリエ
チレンナフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートなどの他のポリマーを混合することができる。
該2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)を製造するには、先ず、例えば、変性PBTとPETを混合したものを押出機に投入し、加熱溶融した後、Tダイのダイオリフィスからシート状に押し出し、未延伸シートを製造する。Tダイのダイオリフィスから押し出されたシートは、静電印加キャスト法などにより、冷却ドラムに密着して巻き付けて冷却し、次に、温度90〜140℃で、縦横にそれぞれ3.0〜5.0倍の倍率で延伸し、さらに温度210〜245℃で熱処理して変性ポリエチレンテレフタレートフィルムを得る。2軸延伸方法としては、テンター同時2軸延伸法、ロールとテンターによる逐次2軸延伸法のいずれでもよい。また、チューブラー法で2軸延伸して変性ポリエチレンテレフタレートフィルムを製造しても構わない。
次に、該直線引裂き性を有するフィルムである2軸延伸ポリアミドフィルム(ON)としては、例えば、脂肪族ポリアミド(PA)とポリメタキシレンアジパミド(MXD6)とを、PA/MXD6=80/20〜95/5(重量比)の割合で混合した原料を用いて製造された2軸延伸ポリアミドフィルム(ONy)を挙げることができる。
具体的には、PAとしては、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン610(N610)、ナイロン12(N12)などの脂肪族ポリアミドが挙げられる。ホモポリマーの他、それぞれの単位を90モル%以上含有するコポリマーを含むものである。
MXD6は、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応で生成する構造単位を90モル%以上含有したものであり、ホモポリマーまたは他の成分を10モル%以下含有するコポリマーを含むものである。
該2軸延伸ポリアミドフィルム(ON)は、例えば、PAとMXD6とを混合したものを使用し、冷却ドラムによる冷却後、40〜60℃の温水による浸水処理を施し、延伸温度150〜220℃で縦方向および横方向に延伸倍率3〜4倍として延伸することによって製造することができる。
また、該基材層(22)の厚さは、加工性を考慮すると、10〜50μmの範囲内であることが好ましく、10〜30μmの範囲内がより好ましい。
次に、最内層のシーラント層(25)には、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂、またはこれらの樹脂を成膜化したフィルムを使用することができる。
また、該シーラント層(25)の厚さは、シール強度、加工性を考慮すると、20〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらには30〜70μmの範囲内がより好ましい。
次に、最外層の基材層(22)と、最内層のシーラント層(25)とを接着層(23)
を介してラミネーションしてなる積層材料(20)を形成する方法は、例えば、ドライラミネーション方法、ノンソルベントドライラミネーション方法、エクストルージョンラミネーション方法、及び該エクストルージョンラミネーション方法を利用したサンドイッチラミネーション方法などの公知の方法を使用することができる。
例えば、前記ドライラミネーション方法は、フィルム上に接着剤を塗布するコーティング部、乾燥装置、ニップローラー部の3つのセクションと、巻き出し、巻き取り、及びテンションコントロールシステムから構成されている。
該コーティング部は、一般的にグラビアロールコーティング方式、又はリバースロールコーティング方式を採用している。
該ドライラミネーション方法に使用する接着剤は、一般的に、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他などのラミネート用接着剤を使用することができる。
前記ラミネーション用接着剤は、溶剤型接着剤、或いは無溶剤型接着剤が使用されるが、無溶剤型接着剤を使用する場合は、乾燥装置は不要であり、特に、ノンソルベントドライラミネーション方法と呼んでいる。
前記エクストルージョンラミネーション方法は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を加熱し、シリンダーと呼ばれる筒の中で溶解し、スクリューで圧力をかけて押し出し、該シリンダーの先端部にあるTダイスと呼ばれる細いスリットからカーテン状に溶解した熱可塑性樹脂が押し出されフィルム状となってラミネーションされる方法である。
この際、該エクストルージョンラミネーション方法を利用して、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂を接着剤の代わりにして、最外層の基材層(22)と、最内層のシーラント層(25)とをラミネーションするサンドイッチラミネーション方法を使用することもできる。
以上のように、積層材料(20)を形成する方法は、ドライラミネーション方法、ノンソルベントドライラミネーション方法、エクストルージョンラミネーション方法、及び該エクストルージョンラミネーション方法を利用したサンドイッチラミネーション方法などがあるが、中でも物性的には接着強度に優れ、生産性の高いドライラミネーション方法が好ましい。
次に、前記印刷層(21)は、基材層(22)の表裏どちらでも印刷可能であるが、一般的なプラスチックフィルム袋への印刷の場合と同様に、インキの耐摩擦性、耐候性などを考慮して、基材層(22)の内面に商品の販売促進効果を向上させるなどの理由で美麗な絵柄の印刷層(21)を設けることが好ましい。
該印刷層(21)を形成する印刷インキとしては、インキに色彩を与える顔料や染料などからなる色材と該色材を微細な粒子に分散・保持しつつ、被印刷体に固着させる樹脂と該樹脂を安定して溶解し、該顔料や染料などの分散性、インキの流動性を保持し、かつ印刷の版からインキの適正量を転移できる溶剤とから構成されるビヒクル、更に色材の分散性、発色性向上や沈殿防止、流動性の改良を目的に界面活性剤などからなる助剤から形成されているが、特に色材は、耐候性の良い顔料が好ましい。
該印刷層(21)を設ける印刷方式は、該基材層(22)に印刷できる印刷方式ならば
、特に制約はないが、鉄製の円筒(シリンダー)表面上に銅メッキを施して下地を形成し、該銅メッキ面上に剥離層を設け、更に銅メッキをして、その表面を鏡面状に研磨した銅面に彫刻方式や腐食方式により、凹部(セル)を作成し、該セル内の印刷インキを該基材層(22)に転移させ、調子物でもカラフルに印刷ができ、且つ訴求効果も高いグラビア印刷方式が好ましい。
尚、前記基材層(22)に印刷する際、該基材層(22)と印刷インキとの密着性を向上させるため必要ならば、該基材層(22)の印刷層(21)を設ける面にオゾン処理、コロナ処理などの前処理を施すことが好ましく、更に、アンカーコート剤などをコーティングしても良い。
前記アンカーコート剤としては、例えばイソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系などのアンカーコート剤や、或いはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他などのラミネート用接着剤などを使用することができる。
該アンカーコート剤をコーティングする方法は、公知のグラビアロールコーティング方式、バーコーティング方式、滴下方式、リバースロールコーティング方式などを使用することができる。
次に、本発明においては、図12に示すように、前記基材層(22)と前記シーラント層(25)との間に中間層(24)を設けてもよく、前記中間層(24)は通常、前記の基材層(22)と前記シーラント層(25)だけでは該パウチ(P)としての機能を十分に果たすことができない場合などに設けられる。
前記の機能としては、ガスバリア性、機械的強靭性、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐摩耗性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性などであり、該パウチ(P)として要求されるこれらの機能を中間層(24)として設けることで達成するものである。
本発明において、該パウチ(P)に収納する内容物によって、特に酸素ガス、水蒸気、光などに対する耐性や長期常温流通などが求められる場合には、前記中間層(24)には、ガスバリア層(図示せず)を設ける必要がある。
前記ガスバリア層には、ガスバリア樹脂フィルムや支持体フィルムにガスバリア層を設けたガスバリアフィルムが用いられる。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)、ポリビニルアルコールフィルム(PVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)ケン化物などのフィルム、或いはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)などのフィルムにポリ塩化ビニリデン(PVDC)を塗工したフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着層、無機酸化物(酸化珪素、酸化アルミニウムなど)の蒸着薄膜層を設けたフィルムや、またこれらフィルムの1種乃至それ以上を組み合わせた積層フィルムを使用することができるが、これらの中でも、該支持体フィルムに易引き裂き性を有するアルミニウム箔、アルミニウム蒸着薄膜層、廃棄処分が容易な無機酸化物(酸化珪素、酸化アルミニウムなど)の蒸着薄膜層を設けたガスバリアフィルムが好ましいが、特に、近年の環境問題を考慮すると、使用後の廃棄処分が容易な前記無機酸化物を蒸着した無機酸化物蒸着フィルムがより好ましく多用されている。
前記無機酸化物蒸着フィルムの支持体フィルムは、特に制約はされないが、加工適性、包装適性、強度などの物性面を考慮して、単体フィルム及び各種の積層フィルムを使用することができる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)などの無延伸あるいは延伸フィルムである。
これらの中でも、引き裂き性、強度、コスト、加工適性、包装適性などの面から、前述したように、2軸方向に任意に延伸された直線引裂き性を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)や2軸延伸ポリアミドフィルム(ON)を使用することが好ましい。
該無機酸化物の蒸着薄膜層(図示せず)としては、基本的には金属の酸化物を使用することが可能であり、例えば珪素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムなどの酸化物またはそれらの混合物が挙げられる。
一般的には、透明性、物性面、生産性などから、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムを使用することが好ましい。
このような無機酸化物の蒸着薄膜層を形成する方法は、真空蒸着法、スパッタリング法などを使用することができるが、生産性、生産コスト面などを考慮すると、真空蒸着法が好ましい。
前記真空蒸着法は、被蒸着体の形態から、大別して3つの方式があり、1)バッチ方式:成形品の蒸着方式、2)巻き取り式半連続方式:ロール状フィルム(ウェブ)が対象で真空系の中で巻き出し・蒸着・巻き取り後、大気系に再度戻し、蒸着製品を取り出す方式、3)巻き取り式完全連続方式:ロール状フィルム(ウェブ)が対象でアンワインダー(巻き出し装置)とリワインダー(巻き取り装置)を大気系に配置し、蒸着ドラムや蒸発源を真空系に配置してロール状フィルム(ウェブ)に蒸発物質を蒸着する方式であって、一般的にair−to−air方式と呼ばれる方式である。
ロール状フィルム(ウェブ)に蒸発物質を蒸着する場合は、特に巻き取り式半連続方式が普及しており、その巻き取り式真空蒸着装置の構成要素と作業工程の概略、更に真空蒸着装置の内部構造について記述する。
先ず、構成要素は、ロール状フィルム(ウェブ)、蒸発源、蒸発物質、蒸着ドラム、真空系統、アンワインダー(巻き出し装置)、リワインダー(巻き取り装置)、ガイドロール等である。
次に、作業工程の概略について記述すると、先ず前準備として真空蒸着装置の扉を開け、ロール状フィルム(ウェブ)をアンワインダー(巻き出し装置)にセットし、アンワインダーと蒸着ドラム間に配置されているガイドロールを介して、前記ロール状フィルム(ウェブ)を蒸着ドラムまで走行させ、更にリワインダー(巻き取り装置)との間に配置されているガイドロールを介して、該リワインダー(巻き取り装置)に巻き取り、前記ロール状フィルム(ウェブ)への蒸発物質の蒸着準備が終了する。
次に、該真空蒸着装置の扉を閉じて、真空ポンプにより、該真空蒸着装置内の真空吸引定圧室と隔壁により分割された真空蒸着室を所定の真空環境にして、アンワインダー(巻き出し装置)から前記ロール状フィルム(ウェブ)を繰り出し、ガイドロールを介して走
行させた該ロール状フィルム(ウェブ)に、蒸着ドラムの下部に配置されている蒸発源から蒸発物質を加熱蒸発させて該ロール状フィルム(ウェブ)に蒸着させる。
前記蒸着ドラムは冷却されているので前記ロール状フィルム(ウェブ)に蒸発物質を再結晶化させて固着させ、更にリワインダー側のガイドロールを介して蒸着された該ロール状フィルム(ウェブ)はリワインダーに巻き取られる。
前記真空蒸着装置の内部構造は、真空吸引定圧室と真空蒸着室に隔壁で分割されており、真空吸引定圧室はアンワインダー、ガイドロール、張力制御装置、速度制御装置、位置制御装置、蒸着ドラムの一部、リワインダー等が配置されている。
該真空蒸着室は蒸着ドラムの一部と蒸発源とその加熱装置等が配置されており、真空蒸着装置本体の周辺に付属して配置されている真空ポンプにより、真空吸引定圧室は真空度が1×100MPa程度、隔壁を介して設けた真空蒸着室は1×10-2MPa(SI単位)程度にセットされる。
2つに室が隔壁で分割されているので、真空吸引定圧室で前記ロール状フィルム(ウェブ)から発生したガスなどの不純物(ダスト)は、真空蒸着室での蒸着時に悪い影響を与えることは少ない。
また、逆に該真空蒸着室に配置されている蒸発源からの放射熱は、真空吸引定圧室への影響は少ないので前記ロール状フィルム(ウェブ)への熱の影響は少ない。
前記真空蒸着法も、加熱方法により、1)間接抵抗法、2)直接抵抗加熱法(ワイヤフィード法)、3)高周波誘導加熱法、4)電子ビーム法(Electoron Beam、略してEB法)の4つの方法があるが、蒸発物質が酸化珪素や酸化アルミニウム等の絶縁性金属酸化物を使用する場合は、エネルギー変換効率の良い電子ビーム法が最適である。
巻き取り式電子ビーム真空蒸着法は、酸化珪素や酸化アルミニウム等の蒸発物質に直接、電子ビームを照射し、該蒸発物質表面上をスキャンすることで、該蒸発物質表面を加熱する方法で、電子ビームがあたった部分でエネルギーを変換し、該蒸発物質を蒸発させる方法である。
該蒸着薄膜の厚さは、蒸着フィルムの最終用途によって、適宜選択されるが、5〜400nmの範囲内であることが好ましい。
該蒸着薄膜層の膜厚が5nm未満では均一な膜が設けられないので、十分な酸素ガスバリア性や水蒸気バリア性が得られず、膜厚が400nmを越えると、柔軟性がなくなり、折り曲げ、引張りなどの外的要因により、該蒸着薄膜層に亀裂や剥離が発生しやすくなるので好ましくない。
尚、前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)や2軸延伸ポリアミドフィルム(ON)などの直線引裂き性を有する支持体フィルムと蒸着薄膜層との間に熱架橋性プライマーコート層(図示せず)を設けて、該フィルムと蒸着薄膜層との間の密着性を高めたガスバリアフィルムを使用しても構わない。
前記熱架橋性プライマーコート層としては、例えば、一般式M(OR)n(式中、M:Si、Zr、Ti、Alなどの金属元素、R:CH3、C2H5などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物または、一般式、R´Si(OR)3(R´:アルキル基、ビニル基、エポキシ基、グリ
シドオキシプロピル基など、R:アルキル基など)で表される3官能基のオルガノシランあるいは該オルガノシランの加水分解物の内、少なくとも一方とポリオール化合物およびイソシアネート化合物との複合物も使用することができる。
または、一般式、R´Si(OR)3(式中、R´:アミノ基、イソシアネート基、スルホキシド基など、R:アルキル基など)で表される3官能基のオルガノシランとポリオール化合物およびイソシアネート化合物との複合物からなるものでも構わない。
次に、前記金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(式中、M:Si、Zr、Ti、Alなどの金属元素、R:CH3、C2H5などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される化合物で、例えば、アルコキシシラン化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタニウムアルコキシド化合物、その他などを使用することができる。
具体的には、テトラメトキシシラン[Si(O−CH3)4]、テトラエトキシシラン[Si(O−C2H5)4]、テトライソプロポキシシラン[Si(O−iso−C3H7)4]、テトラブトキシシラン[Si(O−C4H9)4]、ジメチルジメトキシシラン[(H3C)2Si(O−CH3)2]、トリメトキシメチルシラン[H3CSi(O−CH3)3]、ジメチルジエトキシシラン[(H3C)2Si(O−C2H5)2]などのアルコキシシラン化合物、テトラメトキシジルコニウム[Zr(O−CH3)4]、テトラエトキシジルコニウム[Zr(O−C2H5)4]、テトライソプロポキシジルコニウム[Zr(O−iso−C3H7)4]、テトラブトキシジルコニウム[Zr(O−C4H9)4]などのジルコニウムアルコキシド化合物、テトラメトキシチタニウム[Ti(O−CH3)4]、テトラエトキシチタニウム[Ti(O−C2H5)4]、テトライソプロポキシチタニウム[Ti(O−iso−C3H7)4]、テトラブトキシチタニウム[Ti(O−C4H9)4]などのチタニウムアルコキシド化合物などを挙げることができる。
また、該金属アルコキシドが、一般式、M(OR)n(式中、M:Si、Zr、Ti、Alなどの金属元素、R:CH3、C2H5などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される化合物の加水分解物であってもよい。
次に、前記3官能基のオルガノシランは、一般式、R´Si(OR)3(式中、R´:アルキル基、ビニル基、エポキシ基、グリシドオキシプロピル基など、R:アルキル基など)で表される化合物で、例えば、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランなどを挙げることができるが、これらの化合物は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。また、前記一般式、R´Si(OR)3(式中、R´:アルキル基、ビニル基、エポキシ基、グリシドオキシプロピル基など、R:アルキル基など)で表される化合物の加水分解物であってもよい。
さらに、該3官能基のオルガノシランは、一般式、R´Si(OR)3(式中、R´:アミノ基、イソシアネート基、スルホキシド基など、R:アルキル基など)で表される化合物で、例えば、γ−アミノ−プロピルトリメトキシシラン、γ−アミノ−プロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができるが、これらの化合物は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。また、前記一般式、R´Si(OR)3(式中、R´:アミノ基、イソシアネート基、スルホキシド基など、R:アルキル基など)で表される化合物の加水分解物であってもよい。
次に、該熱架橋性プライマーコート層を構成している、ポリオール化合物としては、ポ
リエステルポリオールまたはアクリルポリオールを使用することができる。
前記ポリエステルポリオールは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの反応性誘導体の酸原料と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、4−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどのアルコール原料から公知の製造方法で得られたポリエステル系樹脂のうち末端に2個以上の水酸基(ヒドロキシル基)を持つもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。
次に、前記アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物、もしくはアクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーと共重合させて得られる高分子化合物のうち、末端にヒドロキシル基を持つもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。
中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレンなどのその他のモノマーを加え、共重合させたアクリルポリオールが好ましく使用される。
また、イソシアネート化合物との反応性を考慮するとヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。
次に、該ポリオール化合物と3官能基のオルガノシランの配合比は、重量比で1/1〜100/1の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2/1〜50/1の範囲内である。
溶解および希釈溶媒としては、溶解および希釈可能であれば、特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが単独および任意に配合されたものを使用することができる。
しかし、該3官能基のオルガノシランを加水分解するために塩酸や酢酸などの水溶液を使用することがあるため、共溶媒としてイソプロピルアルコールなどと極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を使用することがより好ましい。
また、3官能基のオルガノシランの配合時に反応を促進させるために反応触媒を添加しても一向に構わない。添加される触媒としては、反応性および重合安定性の観点から塩化錫(SnCl2、SnCl4)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)2Cl2)、錫アルコキシドなどの錫化合物であることが好ましい。これらの触媒は、配合時に直接添加してもよく、またメタノールなどの溶媒に溶かして添加してもよい。添加量は、少なすぎても多すぎても触媒効果は得られないため、3官能基のオルガノシランに対してモル比で1/10〜1/10000の範囲内が好ましく、さらに望ましくは、1/100〜1/2000の範囲内であることがより好ましい。
次に、該イソシアネート化合物は、ポリエステルポリオールまたはアクリルポリオール
と反応してできるウレタン結合により、支持体フィルムや蒸着薄膜層との密着性を高めるために添加されるもので、主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。
このようなイソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネート、脂肪族系のキシリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのモノマー類と、これらの重合体、誘導体が使用され、これらは単独または混合物として用いられる。
該ポリオール化合物とイソシアネート化合物の配合比は、特に制限されるものではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキングなどが発生し加工上問題がある。そこでポリオール化合物とイソシアネート化合物の配合比としては、イソシアネート化合物由来のイソシアネート基がポリオール化合物由来の水酸基の50倍以下であることが好ましい。特に、好ましいのは、イソシアネート基と水酸基が等量で配合される場合であり、その混合方法は、公知の方法が使用できる。
次に、該熱架橋性プライマーコート層を形成するためのプライマー溶液の調液法としては、3官能基のオルガノシランとポリオール化合物およびイソシアネート化合物を任意の配合比で混合した複合混合溶液を作り、それを支持体フィルム上にコーティングして形成する。
その複合混合溶液の作り方としては、3官能基のオルガノシランとポリオール化合物を混合し、溶媒、希釈剤を加え、任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物と混合して複合混合溶液を作る方法、または予め3官能基のオルガノシランを溶媒中に混合しておき、その後ポリオール化合物を混合させたものを溶媒、希釈剤を加え任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物を加え複合混合溶液を作る方法などがある。
この複合混合溶液に各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩などの硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系などの酸化防止剤、レベリング剤、流動調製剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤などを必要に応じて添加することも可能である。
次に、該熱架橋性プライマーコート層の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば、特に限定されないが、その乾燥膜厚が5〜300nmの範囲内であることが好ましい。厚さが、5nm以下では均一な塗膜形成ができず、安定的な密着性が得られず、300nm以上では、物性的に平衡に達するので経済的でない。
次に、該熱架橋性プライマーコート層を形成する方法は、例えば、公知のグラビアロールコーティング方式、リバースロールコーティング方式、バーコーティング方式、滴下方式などを使用することができる。
尚、密着性をさらに良くするために、該支持体フィルムのプライマー層を設ける面に、コロナ放電処理、グロー放電処理、低温プラズマ処理、火炎処理、薬品処理、溶剤処理などの公知の方法で前処理を行なう場合もある。また、該支持体フィルムの表裏面には、公知の各種の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、及び滑剤などを使用することも可能である。
次に、前記無機酸化物蒸着フィルムのガスバリア性をさらに高めるために、該無機酸化物蒸着層上にガスバリア性被覆層(図示せず)を積層した構成にしても構わない。該ガスバリア性被覆層としては、例えば、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド
およびその加水分解物または、(b)塩化錫、の少なくとも一方を含むものからなるもの使用することができる。
該ガスバリア性被覆層は、蒸着薄膜層の後工程での2次的な各種損傷を防止するとともに、より高いガスバリア性を付与するために該蒸着薄膜層のシーラント層を設ける面側に設けられるものであり、その成分は、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドおよびその加水分解物または、(b)塩化錫、の少なくとも一方を含む水溶液あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を該蒸着薄膜層上に塗布してガスバリア性被覆層を形成するものである。
例えば、水溶性高分子と塩化錫を水系(水溶液あるいは水/アルコール混合溶液)溶媒で溶解させた溶液、あるいはこれに金属アルコキシドを直接、あるいは予め加水分解させるなど処理を行なったものを混合した溶液を蒸着薄膜層上にコーティングし、加熱乾燥し形成したものである。
前記水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
特に、ポリビニルアルコール(PVA)は、ガスバリア性が優れているので好ましく、ここでいうポリビニルアルコール(PVA)は、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものである。
前記ポリビニルアルコール(PVA)としては、例えば酢酸基が数十%残存している、所謂部分鹸化ポリビニルアルコール(PVA)から酢酸基が数%しか残存していない完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA)などを含み、特に限定されるものではない。
前記塩化錫は、塩化第一錫、塩化第二錫、或いはそれらの混合物であり、またこれら塩化錫の無水物及び水和物なども使用できる。
次に、金属アルコキシドとしては、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定なテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムなどが好ましい。
さらに、該コーティング剤には、そのガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を、必要に応じて加えることができる。
該コーティング剤に加えられるイソシアネート化合物としては、その分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものが好ましい。
このようなイソシアネート化合物として、例えばトリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートなどのモノマー類と、これらの重合体、誘導体が挙げられる。
該ガスバリア性被覆層を蒸着薄膜層上に形成する方法は、グラビアコーティング方式、リバースロールコーティング方式、エアナイフコーティング方式などの公知の方法で塗布した後、加熱、乾燥して形成される。
その際の該ガスバリア性被覆層の厚さは、乾燥後の厚さが、0.01〜50μmの範囲内にあることが好ましい。該乾燥後の厚さが、0.01μm以下では、十分なガスバリア
性が得られず、50μm以上の場合は、塗膜にクラックが入り易く、ガスバリアに悪影響を及ぼすので好ましくない。
次に、前記基材層(22)と、ガスバリアフィルムからなる中間層(24)と、シーラント層(25)とを順次積層する方法は、前述と同様に、例えば、ドライラミネーション方法、ノンソルベントドライラミネーション方法、エクストルージョンラミネーション方法、該エクストルージョンラミネーション方法を利用したサンドイッチラミネーション方法などの公知の方法を適宜使用することができる。
尚、基材層(22)に印刷層(21)を設ける方法は、前述と同様にグラビア印刷方式を使用することが好ましい。
以上のような材料、方法による代表的な該パウチ(P)を構成する積層材料(20)は、例えば、最外層側から順に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(L−LDPE)、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)/無機酸化物蒸着薄膜層/接着剤/直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(L−LDPE)、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)/無機酸化物蒸着薄膜層/接着剤/無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、2軸延伸ポリアミドフィルム(ON)/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(L−LDPE)、2軸延伸ポリアミドフィルム(ON)/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、2軸延伸ポリアミドフィルム(ON)/無機酸化物蒸着薄膜層/接着剤/直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(L−LDPE)、2軸延伸ポリアミドフィルム(ON)/無機酸化物蒸着薄膜層/接着剤/無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。