以下、図面に基づいて本発明に係る平面移動型のアクチュエータについて複数の実施例について説明する。なお、実施例を説明する前に本発明で利用している基本技術の概略を図1を参照して説明する。本発明は所謂、フレミングの左手の法則を応用した発明である。図1(A)はフレミングの左手の法則を説明するために示した図である。同図で示すよう、磁石1に接近させてコイル2を配置して電流3を矢印方向に流すと、コイル2には黒矢印の方向に推力4が生じるというのがフレミングの左手の法則である。
図1(B)は、本発明が採用している磁石とコイルとの概略構成を示した図である。同図に示すように、磁石1は、中心位置1CTの周りに異なる磁極(N,S極)が交互となるようにして、平面状に配置されている(ここではN極,S極が2個ずつ)。この磁石1に対向するように複数(ここでは4個)のコイル2が配設されている。このコイル2を移動部材(図示せず)に固定し、コイル2に供給する電流を制御すると図1(A)の推力によりX−Y面内、すなわち2次元内で移動させることができる。本発明は上記構成を利用して実現されている面移動タイプのアクチュエータである。
図2は、図1(B)の構成をより具体的に示した図である。(A)は磁石1とコイル2との関係を示した斜視図、(B)は平面図、(C)は底面図である。図2では、磁石1を基板12上に固定配置している。平面に配置された上記磁石1に対して、4個のコイル2−1〜2−4が対面するように配置される。このコイル2に供給する電流を制御すると磁石1に対向した状態で相対移動して、2次元(面内)移動させることができる。なお、ここでは基板12に開口15を形成した場合を例示している。この開口15は、コイル2の移動量を検出するときに利用される。移動量を検出する手法には、このような開口15を利用する場合と、開口15を設ける必要のない場合とがある。この点については、後に詳述する。
また、4個のコイル2−1〜2−4は、中央部に空間2CTを形成して、放射状に配置されている。図2ではコイル2の位置をずらした状態で図示しているが、本明細書では磁石1側の中心位置1CT(図2では開口15に含まれる)に、コイルの中心位置(中央部の空間2CTに含まれる)が対向した状態を所定の初期位置として説明する。また、図1(B)及び図2で示した磁石1は所謂、永久磁石であっても電磁石であってもよい。永久磁石を採用する場合には、単体の磁石を複数、組合せてもよいし、1つの磁性体に着磁処理で複数の磁極を形成するようにしてもよい。例えば図1(B)で示した磁石1の場合、単体2個の磁石を用いて形成してもよいし、1つの磁性体に4磁極を着磁処理して形成してもよい。また、図2ではコイル2を固定側とし、磁石1を移動するように構成することも可能である。以下で示す実施例は、磁石1を固定側とし、コイル2を移動させる形態例である。
図3は、図1(B)でのX方向及びY方向におけるコイル位置と推力(荷重N)との関係を示した図である。横軸にコイルの位置の移動量(mm)、縦軸にコイルに生じる荷重Nをとっている。ここでは、コイルに電流200mAを流し、12000ガウスの磁石を用いた場合の例を示している。図1(B)でコイル2が磁石1のN、Sにちょうど跨る位置が、図3での中央位置である。この中央位置で最も大きな荷重Nが生じ、±5mm位置がずれた所でも十分な荷重Nが生じることが確認できる。さらに以下、図を用いて本発明の複数の実施例を説明する。
図4、図5及び図6は、実施例1に係るアクチュエータA−1について示した図である。図4は、本アクチュエータA−1の構成が確認できるように上側から示した分解斜視図である。また、図5は同アクチュエータA−1の構成が確認できるように下側から示した分解斜視図である。更に、図6は図4におけるX方向での断面図である。なお、本アクチュエータA−1は例えばマウスに組込んで使用する1部品の形態に形成されている。
本アクチュエータA−1は基板として機能する下ヨーク12上に形成されている。下ヨーク12上には、図2で説明したと同様の磁石1が配置されている。但し、この磁石1の中心位置には開口を形成していない。下ヨーク12の4隅にはスペーサ及び支持部材として機能する支持柱11が立設されている。この支持柱11により、下ヨーク12の上方に所定空間を形成して上ヨーク13が配設されている。上下のヨーク12,13の間に形成される空間内には、コイル2が固定されたスライダ20が移動可能な状態で収納される。このスライダ20は、コイル2に電流を供給したときに磁石1との間で生じた推力を受けて2次元を移動する。上ヨーク13上にはコイル2を2次元内の所定領域を移動(面移動)させるためのガイド機構が形成されている。
スライダ20は下面にコイル2を保持している。このコイル2はコイル支持部材21を介して、スライダ20の下面に固定されている。また、このスライダ20の上面側には操作用の突起部25が固定されている。この突起部25は、図5で示している上ヨーク13の中央に形成した開口13HL内に収納される。本アクチュエータA−1が組上げられたときには、図6で示すように、突起部25は上ヨーク13の上部に頭を出した状態となる。突起部25が配置される位置は、スライダ20の下面に固体したコイル2の中央位置2CT(図2参照)である。また、スライダ20の下面には、コイル2との間に介在するように回路基板23が嵌め込まれている。この回路基板23には図示しない電気部品が配置され、所定の回路パターンが形成されている。
スライダ20を2次元の所定領域で移動させる機構が上ヨーク13に形成されている。この移動機構について説明する。本実施例のアクチュエータA−1では、スライダ20と一体に移動する突起部25がガイド部材に係合することで2次元の所定領域を移動するようになっている。
本アクチュエータA−1は、突起部25をX方向及びY方向に案内するため、第1ガイド部材16と第2ガイド部材17とを備えている。図4を参照すると、第1ガイド部材16はX方向の所定範囲で上記突起部25をガイドする。第1ガイド部材16は中央に長方形の開口16HLを有し。この開口16HL内に突起部25を収納してX方向へガイドする。
さらに、上記第1ガイド部材16は第2ガイド部材17によって、X方向とは直角なY方向へガイドされるようになっている。第2ガイド部材17は、第1ガイド部材16の両側をY方向へ案内するように一対、配置されている。図6で示すように、第1ガイド部材6は両側に突出したフランジ部16FLを備えている。このフランジ部16FLが、一対配置した第2ガイド部材17の内壁に形成した受け溝17REに嵌合している。この受け溝17REはY方向に延在している。よって、第1ガイド部材16は第2ガイド部材17の内面に沿って一方向(Y方向)に摺動する。
上記のような構成では、突起部25が第1ガイド部材16によってX方向にガイドされ、さらに第1ガイド部材16が第2ガイド部材17によってX方向とは直角なY方向にガイドされる。よって、本アクチュエータではコイル2を有するスライダ20が所定の推力を受けたときに、突起部25がガイドされる2次元領域内を自在に移動できる構造が実現される。なお、図示は省略するが、突起部25は第1ガイド部材16内にセットされた状態では、X方向に摺動可能な状態となると共に下方に落下しないように保持される。よって、スライダ20は突起部25及び第1ガイド部材16を介して、上ヨーク13により支持される。
上記構成を有するアクチュエータA−1を例えばマウスに組込んで、突起部25に操作者が指で触れることができるようにすると、操作者はスライダ20に固定されたコイル2に基づいた推力を感じることになる。コイル2へ供給する電流を制御してスライダ20が小刻みに移動するようにすれば、操作者に突起部25が振動していると認識させることができる。よって、本アクチュエータA−1をマウスに組込んで使用すると、例えばコンピュータ側から操作者への情報を振動によって伝達できる。
しかし、本来、マウスは操作者の指示入力を行うためのデバイスである。そこで、本実施例で示すアクチュエータA−1は、マウスに組込んで入力装置としても使用できるように構成されている。そして、アクチュエータA−1は上記のように面移動する構成部分を含むということを前提にして、正確な座標入力が行えるように形成されている。以下、この点について説明する。マウスに組込んで本アクチュエータA−1が使用された場合、操作者は突起部25を移動させることにより指示入力を行う。そのため、アクチュエータA−1は突起部25の移動を精度良く検出する位置検出構成を備えている。なお、LEDとフォトダイオード(Photodiode:PD)を用いて光学的に突起部25の移動を検出することもできるが、ここでは磁電変換素子の1つであるホール素子を用いて位置検出を行うようにしている。ホール素子を用いることで、低コスト化を図れると共に、光を用いて検出する場合の外乱を除き精度よい位置検出が行える。
本実施例1のアクチュエータA−1は、磁界発生部となる磁石1の磁界を、コイル保持部となるスライダ20側に配置したホール素子で検出する。この出力信号に基づいて、座標出力を行うという構成である。図5で示すようにスライダ20の下面には、ホール素子部31が配置されている。このホール素子部31は、図6に示すように、組立てられた状態の初期位置で4つの磁極の中心位置と対向する位置に配設される。
スライダ20に固定されるコイル2は、その中央に空間2CTを備えている。さらに、コイル支持部材21には、空間2CTに対応する開口21HLが形成されている。上記ホール素子部31は、図6に示すように、アクチュエータA−1が組上げられた状態で空間2CTに収納され、開口21HLを介して位置検出用磁石30と対向した状態となる。ホール素子部31には、互いに直行するX方向、Y方向において2個ずつ、計4個のホール素子31−1〜31−4を含んでいる。各方向に1個ずつの素子を配して、磁石1とスライダ20の移動量を検出することも可能である。しかし、本アクチュエータA−1では、各方向に2個ずつのホール素子を配置することで、差動検出を行って高い精度の位置検出を行うようにしている。
図3から図6で示した実施例1のアクチュエータA−1によると、操作者が突起部25を移動した際に4つのホール素子31−1〜31−4が磁石1の4個の磁極からの磁界の変化を検出する。よって、突起部25の移動をホール素子31−1〜31−4で検出し、その検出信号を用いて座標入力を行うことができる。
図7は、上述した本アクチュエータA−1の構成を模式的に示したブロック図である。例えば回路基板23(図4、5参照)上に配置したCPU等を制御マイコン部52とすることができる。制御マイコン部52がコイル2への電流を制御する。この制御マイコン部52はインターフェース部51を介して例えば外部のコンピュータ等と接続される。コンピュータから供給される信号に基づいて、制御マイコン部52がドライバ部53に駆動信号を供給する。これにより、ドライバ部53がX軸駆動部54とY軸駆動部55とに供給する電流を調整する。ここでのX軸駆動部54とY軸駆動部55とは前述したコイル2に相当している。よって、制御マイコン部52からX軸駆動部54及びY軸駆動部55へ供給する電流を制御することによって、スライダ20に所望の動作を与えることができる。その結果、スライダ20と一体に移動する突起部25が振動等の動作を行うので、突起部25の動作を介して操作者に種々の情報を伝達できる。なお、本アクチュエータA−1をマウス等のデバイスに組込んだ形態では、デバイス側のCPU等を流用して制御マイコン部52としてもよい。
前述したように、本アクチュエータA−1は、入力装置としても機能するように構成されている。入力装置として機能した場合には、操作者が突起部25を指で移動することにより、接続されたコンピュータのディスプレイ上に座標位置入力を行うことができる。そのときには、磁石1に対向するように配置したホール素子部31の検出信号が利用される。このホール素子部31及び他のセンサを含むセンサ部56からの検出信号は上記制御マイコン部52へ供給され、処理される。例えば、制御マイコン部52がホール素子部31からの検出信号を受けた場合には座標出力のための所定演算を行って、インターフェース部51を介してコンピュータに座標データを出力する。
図8及び図9は、実施例2のアクチュエータについて示している。本実施例2は、実施例1の磁石1の形状に変更を加えた改良例である。ここでは、実施例1との相違点が理解し易いように、下ヨーク12とその上の磁石1を図示して説明する。図8は、実施例2のアクチュエータA−2に係る下ヨークと磁石を示した斜視図及び平面図である。前述した実施例1と同様の部位には同一符号を付すことで重複した説明を省略する。本実施例以後の実施例についても同様とする。
本実施例2のアクチュエータA−2の磁石1は、4個の磁極の中心位置に開口15を有している。磁石1とスライダ2とが初期位置にあるときに、開口15に対向するようにホール素子部31が位置する。すなわち、本アクチュエータA−2は、初期位置にある状態ではホール素子部31の対向する位置には磁石1が存在せず、ホール素子31−1〜31−4と磁極が対向しない形態となっている。本実施例では磁石1に開口15を形成することで、磁石1の磁極からの磁界分布を滑らかにする(磁束密度の分布歪みを抑制する)。これにより、ホール素子31−1〜31−4で磁石1とスライダ20側との移動量を検出し、正確な座標出力が行えるようにする。
図8(A)は開口15の形状を円形15CRとした場合、(B)は開口15の形状を正方形15SQとした場合、(C)は開口15の形状を星形(尖がり部を放射状に配置した形状)15STとした場合を示している。これらの開口15は、X軸及びY軸それぞれに線対称の形状である。このような開口15を磁石1に設けると、突起部25の移動位置を精度良く検出できるようになる。よって、操作者による突起部25の移動を精度良く検出し、正確な座標入力が行える。
図9は、磁石1の開口形状を変更した場合の磁界分布の変化を示した図である。図9(A)は磁石1に開口15を設けない場合の磁界分布を示している。また、同(B)は図8(A)の円形の開口15CRを設けた場合、同(C)は図8(B)の正方形の開口15SQを設けた場合、同(D)は図8(C)の星形の開口15STを設けた場合の磁界分布を示している。開口15を形成することにより、分布曲線の湾曲が緩やかとなり、磁束密度の分布が滑らかになるのが確認できる。密度分布の滑らか度は、図9(A)から図9(D)に向うに従って、大きくなることも確認できる。
なお、上記開口15の大きさ(面積)は、磁石1を固定側として見た場合に前記ホール素子部31(及び突起部25)が移動する領域に対して所定割合、例えば80%〜120%の範囲内にあるように設定しておくことが望ましい。上記開口15の大きさが小さ過ぎると磁石1からの磁束密度分布のリニアリティが悪化し、また、上記開口15の大きさが大き過ぎると駆動源となる磁石1から推進力を得ることが困難となる。これに対し、上記範囲に開口15の大きさを設定しておくと、磁石1からの磁束密度分布のリニアリティを維持でき、また、駆動源となる磁石1からの推進力も確保できる。
以上のように、本実施例2のアクチュエータA−2は、磁石1に開口15を形成するという簡単な変更で検出する磁界の歪みを補正できる。このように補正した磁界をホール素子部31により位置検出することができる。よって、操作者による突起部25の移動を精度良く検出し、正確な座標入力が行える。
図10は、実施例3のアクチュエータについて示している。本実施例3も実施例1の磁石1に変更を加えた改良例である。ここでも、実施例1との相違点が理解し易いように、下ヨーク12とその上の磁石1を図示する。図10は、実施例3のアクチュエータA−3に係る下ヨークと磁石を示した斜視図及び平面図である。実施例3のアクチュエータA−3の磁石1は、4個の磁極の中心位置に未着磁領域18を有している。この未着磁領域18は実施例2の開口15と同様の形状に形成されている。このように磁石1に開口15に相当する未着磁領域18を形成することによっても、磁石1の磁束密度の分布を滑らかにすることができる。
本実施例3のアクチュエータA−3の磁石1は、4個の磁極の中心位置に未着磁領域18を有している。磁石1とスライダ2とが初期位置にあるときに、未着磁領域18に対向するようにホール素子部31が位置する。すなわち、本アクチュエータA−3は、初期位置にある状態ではホール素子部31の対向する位置の磁石1が磁気を帯びていない。よって、本アクチュエータA−3の場合もホール素子31−1〜31−4と磁極が対向しない形態となる。よって、開口15を設けた場合と同様の効果を得ることができる。
図10(A)は未着磁領域18の形状を円形18CRとした場合、(B)は未着磁領域18の形状を正方形18SQとした場合、(C)は未着磁領域18の形状を星形18STとした場合を示している。これらの未着磁領域18は、X軸及びY軸それぞれに線対称な形状である。このような未着磁領域18を磁石1に設けることによっても、開口15を設けた場合と同様にホール素子部31により正確な位置検出が行える。よって、操作者による突起部25の移動を精度良く検出し、正確な座標入力が行える。なお、上記未着磁領域18についても、磁石1を固定側として見た場合に前記ホール素子部31が移動する領域に対して所定割合、例えば80%〜120%の範囲内にあるように設定しておくことが望ましい。
図11は、実施例4に係るアクチュエータA−4の構成が確認できるように下側から示した分解斜視図である。本実施例4のアクチュエータA−4では、4個のホール素子31−1〜31−4を個別配置して、磁石1の4つの磁極のほぼ中央となる位置と対向させている。なお、磁石1側の4つの磁極配置は、実施例1の図4と同様である。
図12は、磁石1の4つの磁極のZ軸方向(X、Y軸に垂直な高さ方向)への垂直磁場の強度の分布を示した図である。各磁極(N,S極)の中央部(4箇所)で強度値が大きいことが確認できる。よって、それぞれにホール素子31−1〜31−4を個別配置することで、磁界の変化に基づいて突起部25の移動を検出できる。なお、本実施例4の場合は、磁石1の中心部に開口を設けてもよいし、設けなくてもよい。本実施例4の場合も突起部25の移動を精度良く検出して、正確な座標入力を行うことができるようになる。
図13は、実施例5に係るアクチュエータA−5の構成が確認できるように下側から示した分解斜視図である。本実施例5のアクチュエータA−5も実施例4の場合と同様に4個のホール素子31−1〜31−4を個別配置している。ただし、本実施例では、磁石1の4つの磁極の境界部(隣接する磁極の間の部分)に対向するようにホール素子31−1〜31−4を配置する。
先の図12で示されているように、磁極が変わる境界部(S磁極とN磁極の間の部分)は磁界強度の変化が急峻である。本実施例5は、この部分の移動をホール素子で検出する。すなわち、磁石1に存在する4個の境界部それぞれにホール素子を配置することにより、突起部25の移動量を検出する。図14は、ホール素子が配置される場所が確認し易いように、実施例5のアクチュエータA−5に係る下ヨーク12と磁石1を示した平面図である。図14(A)は磁石1が永久磁石の場合であり、各ホール素子を磁極N,S間に配置する。図14(B)は磁石1をコイルによる電磁石とした場合であり、各ホール素子を隣接するコイル間に配置する。本実施例5によっても、突起部25の移動を精度良く検出して、正確な座標入力を行うことができる。なお、本実施例5の場合も磁石1の中心部に開口を設けてもよいし、設けなくてもよい。
図15、図16及び図17は、実施例6に係るアクチュエータA−6について示した図である。図15は、本アクチュエータA−6の構成が確認できるように上側から示した分解斜視図である。また、図16は、図15におけるX方向での断面図である。図17は、アクチュエータA−6に含む磁石1のZ軸方向(X、Y軸に垂直な方向)での磁場強度の分布を示した図である。なお、前述したように実施例1と同様の部位には同一の符号を付している。
本実施例6のアクチュエータA−6は、前述した実施例5までのアクチュエータとは異なり、専用の位置検出用磁石を備えている。そして、この位置検出用磁石をホール素子部31(図5参照)で検出するという構成を採用する。すなわち、本実施例6のアクチュエータA−6は、磁界発生部となる磁石1側に位置検出用磁石30を新たに配置している。そして、コイル2を保持して、コイル保持部となるスライダ20側にはこの位置検出用磁石30と対向する位置にホール素子部31が配置されている。図15及び図16で図示するように、本実施例では磁石1の中央に形成した前記開口15内に位置検出用磁石30を配置する。本実施例6では位置検出専用の磁石30を配置するので、ホール素子部31により精度よく検出を行うことができる。特に、本アクチュエータA−6では駆動用の磁石1の中心位置に前述した実施例の場合と同様に開口15を形成し、この部分に位置検出用磁石30をセットするだけである。よって、新たに検出用の磁石30を配置しても外形が大型化することはない。
なお、図17は、磁石1の4つの磁極の中央に位置検出用磁石30を配置したときのZ軸方向での磁場強度の分布を示した図である。先に示した図12と対比すると明らかなように、中央に検出用磁石に基づいた強度値が大きい山型の磁場が発生している。よって、本実施例6では、ホール素子部31がこの磁場を検出することにより突起部25の移動を正確に検出できる。実施例6では磁石1側に位置検出用磁石30を配置し、スライダ20側にこれと対向するようにホール素子部31を設けた場合を例示する。しかし、位置検出用磁石30とホール素子部31の配置を逆にしてもよい。すなわち、スライダ20側に位置検出用磁石30を配置し、磁石1側にこれと対向するようにホール素子部31を配置した構成でも同様の効果を得ることができる。
図18は、実施例7に係るアクチュエータA−7の断面図である。前述した実施例1から実施例6は上下のヨーク12、13内で発生している磁界をホール素子で検出する構成である。これに対し、本実施例7では位置検出用の磁石をヨーク外に設け、検出用磁石とホール素子とを対向させることにより磁石1とスライダ20との相対移動を検出する、本実施例7のように位置検出専用の磁石をヨーク外に設けると、ヨーク内部でコイルに電流を通した際に周部に発生する強い磁界の影響を受けないのでホール素子によって精度のよい位置検出が可能となる。
図18で示すように、アクチュエータA−7は本スライダ20の下面から垂下する腕部40を備えている。この腕部40は下ヨーク12を貫通し、その端部41はヨーク外に位置している。この端部41の位置はヨーク内で発生した磁界からの影響を十分に低減できる位置に設定される。なお、本実施例の場合、磁石1の中央及び下ヨーク12の中央に貫通口が形成されている。磁石1側に形成する貫通口は前述した開口15(図6他を参照)と同様でよい。また、下ヨーク12については貫通口12HLを形成する。これら貫通口12HL,15はスライダ20が移動可能な範囲で腕部40と干渉しない程度の大きさに形成される。
上記端部41には、位置検出用磁石30が固定される。この位置検出用磁石30に対向するように、ホール素子部31が基板50上に配置されている。ホール素子部31が配置される基板50は、本アクチュエータA−7の一部として下ヨーク12の下方に新たに設けてもよい。しかし、本アクチュエータA−7はマウス等の入力装置に組込んで使用されるものである。そこで、入力装置側の基板の一部を利用してホール素子部31を配置してもよい。この場合には、本アクチュエータA−7を入力装置に組込んだときに図18に示した構造が実現される。なお、図18では、腕部40の端部41に位置検出用磁石30を配置し、基板50側にホール素子部31を設ける場合を例示したが、位置検出用磁石30とホール素子部31とを逆に配置してもよい。
図19は、実施例8に係るアクチュエータA−8の断面図である。本実施例8は、上記実施例7と関連する実施例である。実施例7のアクチュエータA−7は腕部40を垂下させていたが、本実施例のアクチュエータA−8は磁石1とスライダ20とが相対移動する方向MDに延在させた腕部42を有している。本実施例では第2ガイド部材17の一部を延在させて腕部42を形成している。この腕部42の端部に位置検出用磁石30が固定される。この位置検出用磁石30に対向するように、ホール素子部31が回路基板23を延長した部分上に配置されている。なお、図19では、腕部42の端部に位置検出用磁石30を配置し、回路基板23側にホール素子部31を設ける場合を例示したが、位置検出用磁石30とホール素子部31とを逆に配置してもよい。また、図19では、第2ガイド部材17の一部を延在させて腕部42を形成しているが、上ヨーク13を延在させて腕部42を形成してもよい。
図20は、実施例9に係るアクチュエータA−9の断面図である。本実施例9は、上記実施例8と関連する実施例である。実施例8のアクチュエータA−8は腕部43を相対移動方向MDに延在させているだけである。しかし、本実施例のアクチュエータA−9は、腕部43から関節機構44を介して延長腕45が垂下している。本実施例では、回路基板23の一部を延在させて腕部43を形成している。この腕部43の下部に延長腕45が回動できる状態で接続する関節機構44が設けられている。この関節機構44は、延長腕45の上端に接続した球状部UB44と、この球状部UB44を摺動自在に保持する支承部44RHとを含んでいる。
また、延長腕45の下端には位置検出用磁石30が固定されている。この磁石30は基板50に固定した検出部47内に収納されている。検出部47の内部には位置検出用磁石30に対向するようにホール素子部31が配置されている。
図20に示したアクチュエータA−9では、スライダ20と一体となり腕部43が移動する。このとき延長腕45は、その上端を関節機構44に対して回転させ、自らが傾斜することで対応する。このような延長腕45の動きで、下端に配置した位置検出用磁石30がこれに対応して位置を変化させる。これをホール素子部31が検出する。
本実施例の場合、スライダ20と一体に移動する腕部43と関節機構44で接続された延長腕45の先端に検出用磁石30が取り付けられている。これに対向するようにホール素子部31が配置している。関節機構44の作用により、延長腕45の動きに対して、延長腕45先端の検出用磁石30の動きを小さくできる。よって、検出用磁石30を小さくすることができる。なお、図20では、延長腕45の端部に位置検出用磁石30を配置し、基板50側にホール素子部31を設ける場合を例示したが、位置検出用磁石30とホール素子部31とを逆に配置してもよい。
図21は、前述した複数の実施例に共通して採用できる好ましい磁石1の固定構造について示した図である。本実施例のアクチュエータでは、下ヨーク12上に固定配置された磁界発生部として機能する磁石1と、スライダ20に固定されたコイル2との距離を一定に維持することが必要である。図21に示した構造は、スペーサとして機能する支持柱11の下部に磁石1の端部1PAを受け入れて係止し、動きを規制する係止部11STが設けられている。このような係止機能を備えた支持柱11を採用すると磁石1とコイル2との距離を簡単に一定化できるので、コイル2の電流を流した際には安定駆動でき、また、突起部25を移動させたときにはホール素子により正確な位置位置検出が可能となる。
更に本発明に係る実施例10について説明する。本実施10は前述した実施例2、3と関連している。実施例2、3では、磁石1から発生している磁界に歪みがあるので、これを開口15や未着磁領域18を設けて解消するようにしている(図8、図10参照)。これに対し本実施例10は、ホール素子で検出したデータを補正して正確な座標値出力が行えるように構成したアクチュエータである。
図22は、実施例10に係るアクチュエータA−10の構成を模式的に示したブロック図である。なお、本アクチュエータA−10の外観は、図4〜図6で示した実施例1のアクチュエータA−1と同様である。すなわち、所定中心の周りに4磁極を交互に配置した磁石1が有り、初期位置で中心位置にホール素子部31が対向するように設定される。ホール素子部31にはX軸方向、Y軸方向の各方向で2個ずつのホール素子を含んでいる。ホール素子部31はスライダ20に固定されている。よって、初期状態では、ホール素子部31は4個の磁極の中心位置と対向しているが、スライダ20と共に移動する。磁石1とスライダ20とが相対移動したときに、ホール素子部31が4個の磁極から発生している磁界に応じた検出信号を出力する。具体的には各軸に2個配置したホール素子で軸方向での差動検出を行う。X、Yの2軸について検出を行うことで2次元での移動を検出できる。
図22に示すように、本実施例10のアクチュエータA−10は、実施例1のアクチュエータA−1と比較すると(図7参照)、制御マイコン部52に記憶部57が接続されている。本実施例では制御マイコン部52が、特に補正データを用いて演算を行う演算手段として機能する。そして、記憶部57には、ホール素子から出力される検出信号を補正するための補正データが記憶されている。ホール素子が検出する磁界の分布が歪んでいるためこれを補正するためである。本実施例の制御マイコン部52は、ホール素子部31からの検出信号を、記憶部57から取得した補正データを用いて演算処理し、磁界の歪みの影響を除いてスライダ20の移動量に正確に対応した座標値を出力する。よって、操作者が本アクチュエータA−10をマウス等の入力装置に組込んで利用し、突起部25を移動させたときに正確な座標入力が行なえる。
実測値或いは理論値に基づいて求めたデータを、上記補正データとして記憶部57に予め記憶して使用するようにしてもよい。また、本アクチュエータA−10の突起部25を移動した際に、ホール素子部31から検出された信号から補正データを個別に作成するようにしてもよい。また、このように作成した補正データは、継続的に使用するようにしてもよいし、本アクチュエータA−10を起動する毎に補正データを取得するように設定してもよい。このような補正データの取得、記憶に関する制御は制御マイコン部52によって行えばよい。
図23及び図24は、アクチュエータA−10で補正データを作成する際に実行する処理の一例を示した図である。磁石1の4磁極の中心位置を原点(0,0)とし、例えばスライダ20の可動最外周を検出範囲として反時計回りに数回移動させる。このとき、ホール素子から出力信号を4隅(+X,+Y)、(−X,+Y)、(−X,−Y)、(+X,−Y)、及び各辺での最大、最小値を記憶する。そして、例えば図24に示すように、4隅での検出座標値及び各辺での最大値及び最小値を含むデータテーブルを作成する。このデータテーブルを用いて、制御マイコン部52が演算処理を行って補正した座標値を出力する。
一般に2つの磁極間での磁界は中央が凸状となり、これが位置検出誤差の原因にもなっている。そこで、本実施例では、遇関数の1つである2次関数を用いた以下の近似式(1)、(2)を用いて演算を行う。これらの式に含む変数は図25に示した関係にある。Lx、Ly及びWxは、図24のテーブルから算定され、X,Yは操作者が突起部25を移動させたときにホール素子からの検出信号に基づいて算出される。そして、x、yは補正後の(X,Y)座標値である。すなわち、近似式(1)、(2)にホール素子からの出力値を代入することによって、補正した座標値を得ることができる。
x=X・[Lx+Wx{1−(Y/Ly)2}]/Lx・・・・・・(1)
y=Y・[Ly+Wy{1−(X/Lx)2}]/Ly・・・・・・(2)
図26は、制御マイコン部52によって実行される処理の一例を示したフローチャートである。このフローチャートは、本アクチュエータA−10が起動された際に自動で補正データを取得しておき、操作者により入力操作が行われたときに利用できるように構成した場合の処理例である。本アクチュエータA−10が起動されたときに、制御マイコン部52がコイル2に所定の電流を供給して、座標検出を開始する(S11,S12)。この座標検出は、磁石1の磁界の歪みを検出するためのものである。コイル2は図23で示した検出範囲を強制駆動され、これによりコイル2を保持するスライダ20が移動される。スライダ20にはホール素子が固定されているので移動に伴って歪みのある磁界について信号が出力される。
すなわち、図23に示した範囲をスライダ20が移動されて、4隅での座標値や途中の最大値、最小値が記憶部57に記憶される(S13)。制御マイコン部52は予め設定した検出範囲について、全て座標値を取得すると補正用のデータ収集を完了し(S14)、コイル2への電流供給を停止しする(S15)。このとき制御マイコン部52は、この後においてホール素子側から受ける検出信号を補正するための所定の補正データを作成して、記憶部57に格納する(S16)。
このようなアクチュエータ側の準備が完了した後に、操作者が突起部25を動かしての入力操作が行われる。突起部25が移動されることにより、ホール素子部31が移動して磁界に応じた検出信号を出力する(S17)。これの検出信号は制御マイコン部52へ供給される。制御マイコン部52、記憶部57から補正データを呼出し、前述した近似式を用いて演算を実行する(S18)。よって、磁石1の磁界に歪みがあっても、ホール素子の検出信号をこれに応じて補正してから座標が決定される。すなわち、磁石1に対する突起部25(即ち、コイル2)の移動量を正確に求めて、座標出力値に換算する。よって、本アクチュエータA−10を用いた場合も、突起部25の移動をホール素子部31で検出し、その検出信号を用いて座標入力を行うことができる。
なお、図26で示したフローチャートは、補正データを収集する座標検出はコイル2を駆動して自動で行うようにしたが、手動で行うようにしてもよい。また、一度補正データを取得した後は補正データを記憶部57に継続的に格納するように設定し、2回目以降はS17から実行するようにしてもよい。
以上、本発明に係る実施例として複数のアクチュエータを示した。これらアクチュエータは平面移動する駆動部分と共に、正確な座標入力を行うための構成を備えている。よって、アクチュエータを組込んだマウス等の入力装置は、マンマシンインターフェースとして極めて利用価値のある装置となる。
なお、前述した実施例に関して、磁石1は、永久磁石でも、コイルを用いた電磁石でもよい。電磁石とする場合は、空芯コイルでも、ボビン付きコイルでもよい。磁石1を電磁石で構成し、この磁石1に開口を形成する場合には、先ず4つのコイルを隣接するように配置してから、中心位置に定型の部材を押込む等の2次加工により所望形の開口を形成すればよい。また、前述した実施例では磁電変換素子としてホール素子を用いる例を示したが、ホール素子に代えて磁気抵抗効果素子(MR素子)を用いることもできる。
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。