〈第一番目の実施形態〉
本発明に係る光処理回路の第一番目の実施形態を図1〜4に基づいて以下に説明する。図1は、光処理回路の概略構成を表わす平面図、図2は、図1の光処理回路の概略構成を表わす断面図、図3は、図1の光処理回路に電界を印加したときのバンドダイヤグラム、図4は、光符号分割多重伝送方式の説明図である。
図1に示すように、InPからなると共に(100)面方位を有する半導体基板101上には、当該基板101の周縁端に一端側を位置させた入力導波路111が形成されている。この入力導波路111の他端側は、当該基板101上に形成されたスラブ導波路112の一端側にそれぞれ接続している。このスラブ導波路112の他端側には、当該基板101上に形成された複数のアレイ導波路113の一端側がそれぞれ接続している。これらアレイ導波路113の他端側は、当該基板101上に形成されたスラブ導波路114の一端側にそれぞれ接続している。このスラブ導波路114の他端側には、当該基板101上に形成された複数(本実施形態では8本)の出力導波路115の一端側がそれぞれ接続している。
このような入力導波路111、スラブ導波路112,114、アレイ導波路113、出力導波路115等により、本実施形態では、入力された光信号を複数の周波数成分に分離するアレイ導波路格子である光周波数分波器110を構成している。
前記出力導波路115の他端側は、前記基板101上に形成されて位相変調を行う複数(本実施形態では8本)の位相変調器120の一端側にそれぞれ接続している。これら位相変調器120の他端側は、当該基板101上に形成されて光路の等長化を図る遅延線130(本実施形態では8本)の一端側にそれぞれ接続している。
前記遅延線130の他端側は、前記基板101上に形成された複数(本実施形態では8本)の入力導波路141の一端側にそれぞれ接続している。これら入力導波路141の他端側は、当該基板101上に形成されたスラブ導波路142の一端側にそれぞれ接続している。このスラブ導波路142の他端側には、当該基板101上に形成された複数のアレイ導波路143の一端側がそれぞれ接続している。これらアレイ導波路143の他端側は、当該基板101上に形成されたスラブ導波路144の一端側にそれぞれ接続している。このスラブ導波路144の他端側には、当該基板101上に形成された出力導波路145の一端側が接続している。この出力導波路145の他端側は、当該基板101の周縁端に位置している。
このような入力導波路141、スラブ導波路142,144、アレイ導波路143、出力導波路145等により、本実施形態では、位相変調器で位相を変調された光信号を合成するアレイ導波路格子である光周波数合波器140を構成している。
図2に示すように、前記光周波数分波器110、位相変調器120、前記遅延線130、前記光周波数合波器140は、前記基板101上に、n型のInPからなる第一の半導体クラッド層102が設けられ、当該クラッド層102上に、ノンドープのバルクのInGaAsPからなるi型の半導体コア層103(バンドギャップ波長1.05μm、厚さ0.5μm)が設けられ、当該半導体コア層103上に、ノンドープのInPからなるi型の半導体補助クラッド層104(厚さ0.2μm)が設けられ、当該半導体補助クラッド層104上に、p型のInPからなる第三の半導体クラッド層105(厚さ0.1μm)が設けられ、当該第三の半導体クラッド層105上に、n型のInPからなる第二の半導体クラッド層106が設けられ、ハイメサ構造をそれぞれなしている。なお、本実施形態においては、前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104により、i型半導体層を構成している。
そして、前記位相変調器120は、図1,2に示すように、前記第二の半導体クラッド層106上に配設されて、電源に接続して電圧を印加される複数(本実施形態では8つ)の変調用電極107(例えば、長さ1.5mm程度)をさらに備えると共に、下記に示す方位(A)と平行となるように直線状に形成されている。なお、図1中、109は、前記クラッド層102上に配設された接地電極である。
このような構造をなす光処理回路100は、前記基板101上に、前記第一の半導体クラッド層102、前記半導体コア層103、前記半導体補助クラッド層104、前記第三の半導体クラッド層105、前記第二の半導体クラッド層106を順次結晶成長させて形成した後、上記第一の半導体クラッド層102までドライエッチングしてメサ構造の導波路を形成したら、SiO2等のパッシベーション膜を全面に成膜して、メサ構造の導波路の周囲を埋めて全体を平坦化させるようにポリイミドやBCB等を塗布し、前記電極107,109の配設部分の上記パッシベーション膜及び上記ポリイミドや上記BCB等を除去して、当該部分に前記電極107,109を設けることにより、製造することができる。
このような本実施形態に係る光処理回路100をOCDMA用の送信器として用いると、パルス状の光信号を光周波数分波器110の入力導波路111に入力することにより、パルス状の光信号は、フーリエ変換の関係からそのパルス幅に見合った周波数帯域を有している(例えば、1.55μmの光パルスで1psのパルス幅の場合にはTHzオーダ以下の周波数帯域となる)ことから、上記光周波数分波器110の設計された分波特性(例えば、180GHzのチャンネル間隔)にしたがって、周波数成分毎(本実施形態では8つ:λ1〜λ8)に前記出力導波路115へ展開される。
周波数成分毎に展開されたパルス状の光信号(λ1〜λ8)は、位相変調器120にそれぞれ送られる。ここで、前記電源により、前記電極107,109間に逆バイアスVbが印加されると、図3に示すように、p型の前記第三の半導体クラッド層105が電子eをブロックする層として作用するため、電流が流れず、前記コア層103に効率よく電界が掛かるようになることから、電気光学効果によって屈折率変化が誘起され、位相変調されるようになる。
これにより、上記光信号(λ1〜λ8)は、8桁のWalsh code(直交符号列、本実施形態では8つ)に対応した位相変調を加えられて(例えば、コード「0」に対しては位相の変化を0度とし、コード「1」に対しては位相の変化を180度とする)符号化される(図4参照)。このようにそれぞれ異なる直交符号で符号化された複数の光信号(λ1〜λ8)は、各遅延線130を通って等長化されてから、前記光周波数合波器140の前記入力導波路141へ送られる。
前記光周波数合波器140に送られた光信号は、合波(多重化)されて出力導波路145から出力され、光ファイバを介して伝送される(図4参照)。この光信号は、各周波数成分の位相が完全に一致しておらず、もはやパルス形状とはなっていないので、IM−DD(強度変調・直接検波)方式の受信器で受信されることはない。
他方、上記光処理回路を復号化用の受信器として用いると、異なる直交符号で符号化されて合波(多重化)された前記光信号が光周波数分波器110の入力導波路111に入力することにより、上記光信号は、分波されて周波数成分毎(本実施形態では8つ:λ1〜λ8)に前記出力導波路115へ展開され、位相変調器120にそれぞれ送られる。
ここで、前記電源により、前記電極107,109間に逆バイアスVbを印加することにより、先に説明した送信器の場合と同様にして位相変調する。この際に、適用している直交符号が送信器側と受信器側とで一致した場合、すなわち、上記Walsh Codeに対応して、送信器の場合と正反対の位相変調が前記位相変調器120で上記光信号に加えられた場合(例えば、コード「0」に対しては位相の変化を180度とし、コード「1」に対しては位相の変化を0度とする)のみ、各周波数成分の位相が完全に一致することから、復号化されて元のパルス状に再生され、元のデータ列が復調される(図4参照)。
なお、Walsh Codeが送受信器間で異なる光信号の場合、すなわち、上記受信器と異なる直交符号に送信器側で変調された光信号は、各周波数成分の位相が一致しないので、上記受信器で元のパルス状に再生されずにランダムノイズとなる。これにより、目的とする信号と他の信号とを分離することができる。
ところで、従来の光処理回路900においては、前記位相変調器920がPIN構造であることから、光損失が大きく、位相変調された光信号の強度が低下してしまう。また、前記p層における光損失の増加による信号強度の低下は、アレイ導波路構造に位相変調器920の導波路構造と同一の層構造を用いた場合に顕著になる。特に、位相変調器920に入力する光信号の強度が低い場合には、位相変調させた光信号を取り出すことができず、光信号処理をすることができなくなってしまう。
これに対し、本実施形態に係る光処理回路100においては、前記位相変調器120が、p層による光損失を抑制されていることから、位相変調された光信号の強度低下を抑制することができるので、位相変調器120に入力する光信号の強度が低い場合であっても、位相変調させた光信号を取り出すことができ、光信号処理をすることができる。
具体的に説明すると、一般に、p型のInP層は、光吸収量が、20×(光閉じ込め係数)×(ドーピング密度)×1018(cm-3)程度である。よって、先に説明した従来の光処理回路900のPIN構造においては、光閉じ込め係数を算出すると12%となり、ドーピング密度を1×1018(cm-3)とすると、過剰伝搬損失が約11dB/cmとなる。これに対し、本実施形態に係る光処理回路100の前記第三の半導体クラッド層104(p型のInP層)においては、光閉じ込め係数を算出すると約2%となり、ドーピング密度を1×1018(cm-3)とすると、過剰伝搬損失が約2dB/cmとなる。
したがって、本実施形態に係る光処理回路100によれば、従来の光処理回路900の場合よりも伝搬損失の増化を大幅に抑制することができるので、挿入損失を小さくすることができる。
また、前記位相変調器120が、前記方位(A)と平行となるように直線状に形成されているので、一次の電気光学効果であるポッケルス効果(本実施形態では前記基板が(100)面方位を有しているので、TEモードのみに作用する)による屈折率変化の符号とフランツケルディシュ効果による屈折率変化の符号とを一致させる(負のバイアスに対して正となる)ことができ、より効率的な位相変化を行うことができる。
なお、バンドギャップ波長としては、1.05μmに限らず、電界印加により大きな光吸収が発生しない程度に動作波長から離れている大きさであればよい(約100nm程度以上)。
また、半導体コア層103及び半導体補助クラッド層104からなるi型半導体層は、光閉じ込め係数の観点からすると、厚さが厚いほど好ましく、変調効率の観点からすると、厚さが薄いほど(電界強度が高くなるほど)好ましいことから、これらを勘案すると、厚さが0.2〜1.5μmの範囲であると好ましい。そのうち、半導体コア層103は、縦方向のシングルモード条件を勘案すると、厚さが0.1〜1.0μmの範囲であると好ましい。
また、光導波路の幅方向の長さは、横方向のシングルモード条件を勘案すると、1.0〜3.0μmの範囲であると好ましい。
〈第二番目の実施形態〉
光周波数分波器や光周波数合波器を構成するアレイ導波路格子は、その中心周波数f0が下記の式(1)で表される。
f0=m・c/(ΔL・neq)・・・(1)
ただし、neqは、アレイ導波路の等価屈折率、ΔLは、隣り合うアレイ導波路の長さの差、mは、回折次数、cは、光速である。
一般に、アレイ導波路格子は、ドライエッチングにより形成されるため、アレイ導波路の幅に0.1μm単位で加工誤差を生じてしまう。この誤差は、アレイ導波路の等価屈折率を僅かに変えてしまうため、上記式(1)からわかるように、アレイ導波路格子の中心周波数が変わってしまうことになる。
本発明に係る光処理回路においては、光周波数分波器及び光周波数合波器の二つのアレイ導波路格子を使用することから、製造プロセスの加工誤差により、これらのアレイ導波路格子間で中心周波数にずれを生じてしまうと、挿入損失(過剰損)の増加を招いてしまい、その結果、歩留まりの低下を引き起こしてしまう。このような状態をさらに鑑みて、製造プロセスで生じる二つのアレイ導波路格子のミスマッチを補正できるようにしたのが、以下の実施形態である。
このような、本発明に係る光処理回路の第二番目の実施形態を図5〜7に基づいて以下に説明する。図5は、光処理回路の概略構成を表わす平面図、図6は、図5の光処理回路の概略構成を表わす断面図、図7は、図5の光処理回路の光周波数分波器及び光周波数合波器の隣り合うアレイ導波路の相関関係説明図である。なお、前述した第一番目の実施形態と同様な部分については、前述した第一番目の実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を図面等で用いることにより、前述した第一番目の実施形態での説明と同様な説明を省略する。
図5,6に示すように、光周波数分波器210の前記スラブ導波路112の他端側には、前記方位(A)又は下記の方位(B)へ平行となる直線部213aを曲線部213bの間に有するように前記基板101上に形成された複数(本実施形態では8本)のアレイ導波路213の一端側がそれぞれ接続している。これらアレイ導波路213の他端側は、前記スラブ導波路114の一端側にそれぞれ接続している。
また、光周波数合波器240の前記スラブ導波路142の他端側には、前記方位(A)又は前記方位(B)へ平行となる直線部243aを曲線部243bの間に有するように前記基板101上に形成された複数(本実施形態では8本)のアレイ導波路243の一端側がそれぞれ接続している。これらアレイ導波路243の他端側は、前記スラブ導波路144の一端側にそれぞれ接続している。
そして、前記光周波数分波器210及び前記光周波数合波器240の前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243a上の一部分には、前記電源に接続して電圧を印加される補正用電極208a,208bが当該アレイ導波路213,243の各前記直線部213a,243aの間を連絡するように当該アレイ導波路213,243の間にわたって配設されており、当該補正用電極208a,208bは、当該アレイ導波路213,243の当該直線部213a,243aの軸方向の長さを当該アレイ導波路213,243の配列方向一方側(図5中、下方側)よりも配列方向他方側(図1中、上方側)ほど一定の割合で長くするように台形状に形成されている。
つまり、前記補正用電極208a,208bは、複数配列された各アレイ導波路213,243において、各前記アレイ導波路213,243の長さに対応して前記直線部213a,243aの軸方向の長さが設定されているのである。
また、前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aの前記補正用電極208a,208bの配設箇所と未配設箇所との間には、当該間を電気的に絶縁するように前記クラッド層105の一部をエッチング除去した分離溝216,246がそれぞれ形成されている。
つまり、前記電源の作動によって、すべてのアレイ導波路213,243の前記補正用電極208a,208bの配設部分の前記i型半導体層である前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104のみに同一の電界を効率よく印加することができるようになっているのである。
このような構造をなす光処理回路200は、前述した実施形態に係る光処理回路100の場合と同様な結晶成長、ドライエッチング、パッシベーション膜の成膜、平坦化を行った後、前記電極107,109,208a,208bの配設部分の前記パッシベーション膜及び前記ポリイミドや前記BCB等を除去して、当該部分に前記電極107,109,208a,208bを設けることにより、製造することができる。
このような本実施形態に係る光処理回路200においては、前述した実施形態に係る光処理回路100の場合と同様に、前記位相変調器120が、p層による光損失を抑制されていることから、位相変調された光信号の強度低下を抑制することができるので、位相変調器120に入力する光信号の強度が低い場合であっても、位相変調させた光信号を取り出すことができ、光信号処理をすることができる。
そして、前記補正用電極208a,208bに負のバイアスVbを印加させるように前記電源を作動させると、先に説明したように、前記第三の半導体クラッド層105が電子eをブロックする層として作用するため、電流が流れず、前記i型半導体層である前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104に効率よく電界が掛かるようになる。このため、前記i型半導体層である前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104には、電気光学効果による屈折率変化が誘起されることになる。
ここで、図7に示すように、前記光周波数分波器210及び前記光周波数合波器240のi番目に位置する前記アレイ導波路213,243において、上部に前記電極208a,208bが位置する前記直線部213a,243aの長さをLe,iとし、上部に前記電極208a,208bが位置しない前記直線部213a,243a及び前記曲線部213b,243bの長さをL0,iとし、前記光周波数分波器210及び前記光周波数合波器240のi+1番目に位置する前記アレイ導波路213,243において、上部に前記電極208a,208bが位置する前記直線部213a,243aの長さをLe,i+1とし、上部に前記電極208a,208bが位置しない前記直線部213a,243a及び前記曲線部213b,243bの長さをL0,i+1とし、さらに、上部に前記電極208a,208bが位置する前記直線部213a,243aにおける電界印加時の等価屈折率をneq1とし、上部に前記電極208a,208bが位置しない前記直線部213a,243a及び前記曲線部213b,243bにおける等価屈折率をneq0とすると、光周波数分波器210及び光周波数合波器240の位相整合条件は、下記の一般式(2)で表わすことができる。
ΔLe・neq1+ΔL0・neq0=mλ・・・(2)
このとき、
ΔLe=Le,i+1−Le,i、
ΔL0=L0,i+1−L0,i、
ΔLe+ΔL0=ΔL(ただし、ΔL>0)
である。
ここで、
ΔLe=αΔL(ただし、αは、0以外の任意の実数)、
Δneq=neq1−neq0
とすると、前記式(1),(2)より、中心周波数fを下記の式(3)で表すことができる。
f=m・c/{ΔL・(αΔneq+neq0)}・・・(3)
上記式(3)から、前記電極208a,208bに負のバイアスVbを印加させるように前記電源を作動させることで導波路に屈折率変化を生じることによって、中心周波数fが変化すると共に、その屈折率変化量に対する中心周波数fの変化量が、上記αの値で決まることがわかる。
なお、一次の電気光学効果であるポッケルス効果は、前記電極208a,208bに負のバイアスVbを印加させるように前記電源を作動させたとき、前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aが前記方位(A)に対して平行に配設されている場合、前記i型半導体層である前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104の屈折率変化を正とするように作用する。他方、前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aが前記方位(B)に対して平行に配設されている場合、前記i型半導体層である前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104の屈折率変化を負とするように作用する。ただし、上記ポッケルス効果は、TEモードのときのみに作用する。
また、二次の電気光学効果(本実施形態では、バルクを用いているため、フランツケルディシュ効果)は、前記電極208a,208bに負のバイアスVbを印加させるように前記電源を作動させたとき、前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aの方位に関係なく、前記i型半導体層である前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104の屈折率変化を正とするように作用する。なお、上記二次の電気光学効果は、TEモード及びTMモードの両方に作用する。
具体的には、例えば、前述した従来の光処理回路900において、製造プロセスの加工誤差により、光周波数分波器910のアレイ導波路913と光周波数合波器940のアレイ導波路943との幅に0.1μmの誤差を生じた場合、光周波数分波器910アレイ導波路913と光周波数合波器940のアレイ導波路913との等価屈折率に0.0001程度の変化量を生じてしまい、前記式(1)より、光周波数分波器910のアレイ導波路913と光周波数合波器940のアレイ導波路943との間で中心周波数が10GHz程度ずれてしまう。
このような状態を生じると、光周波数分波器910から出力された光信号が位相変調器920及び遅延線930を介して光周波数合波器940に入力されたときに、光損失が増加してしまい、光周波数合波器940から出力される光信号の強度が低下してしまうばかりか、光周波数分波器910に入力する光信号の強度が小さいと、処理そのものができなくなってしまうことがある。
他方、本実施形態に係る光処理回路200において、製造プロセスの加工誤差により、光周波数分波器210のアレイ導波路213と光周波数合波器240のアレイ導波路243との幅に0.1μmの誤差を生じた場合、上述した従来の光処理回路900の場合と同様に、中心周波数が10GHz程度ずれることになる。
ところで、前記i型半導体層の屈折率をn、電界をEb(=Vb/コア層厚、ただしVbは印加電圧)、ポッケルス定数をν41とすると、前記i型半導体層の屈折率変化Δnは、下記の式(4)で表すことができる。
Δn=+(n3/2)×ν41×Eb・・・(4)
ここで、InPやInGaAsPのポッケルス定数ν41は、−1.4×10-12/V程度、InPやInGaAsPの屈折率nは、3.2程度、コア層厚が0.5μmであるので、印加電圧Vbを4Vとすれば、前記i型半導体層の屈折率変化Δnを0.0001程度とすることができ、光周波数分波器210のアレイ導波路213と光周波数合波器240のアレイ導波路243との間の中心周波数のずれ(10GHz程)を解消することができる。
したがって、本実施形態に係る光処理回路200においては、前記補正用電極208a,208bで電界を印加することにより、光周波数分波器210と光周波数合波器240との光信号の中心周波数を一致させることができるので、光損失の増加を抑えることができ、光周波数合波器240から出力される光信号の強度低下を抑制することができると共に、光周波数分波器210に入力する光信号の強度が小さい場合であっても、処理することができる。
これをもう少し具体的に説明する。
前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aが前記方位(B)に対して平行に配設されている場合には、先に説明したように、負のバイアスVbに対して、前記i型半導体層である前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104の屈折率変化が負となることから、電界を印加すると、Δneqは負となる。
ここで、前記αが負(α<0)、すなわち、前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aがΔLずつ長くなるにしたがって、上部に前記補助用電極208a,208bが位置する前記直線部213a,243aの長さが短くなる場合であると、前記式(3)より、電界の印加によって前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aの透過帯域中心波長を長波長側へシフトさせることができる。
したがって、前記直線部213a,243aが前記方位(B)に対して平行に配設されて、前記αが負(α<0)である場合、光周波数分波器210の透過帯域中心波長が、光周波数合波器240の透過帯域中心波長よりも短波側へずれているときには、光周波数分波器210の前記補正用電極208aで負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器210の透過帯域中心波長と光周波数合波器240の透過帯域中心波長とを一致させることができ、光周波数分波器210の透過帯域中心波長が、光周波数合波器240の透過帯域中心波長よりも長波側へずれているときには、光周波数合波器240の前記補正用電極208bに負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器210の透過帯域中心波長と光周波数合波器240の透過帯域中心波長とを一致させることができる。
他方、前記αが正(α>0)、すなわち、前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aがΔLずつ長くなるにしたがって、上部に前記補助用電極208a,208bが位置する前記直線部213a,243aの長さが長くなる場合であると、前記式(3)より、電界の印加によって前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aの透過帯域中心波長を短波長側へシフトさせることができる。
したがって、前記直線部213a,243aが前記方位(B)に対して平行に配設されて、前記αが正(α>0)である場合、光周波数分波器210の透過帯域中心波長が、光周波数合波器240の透過帯域中心波長よりも短波側へずれているときには、光周波数合波器240の前記補正用電極208bで負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器210の透過帯域中心波長と光周波数合波器240の透過帯域中心波長とを一致させることができ、光周波数分波器210の透過帯域中心波長が、光周波数合波器240の透過帯域中心波長よりも長波側へずれているときには、光周波数分波器210の前記補正用電極208bに負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器210の透過帯域中心波長と光周波数合波器240の透過帯域中心波長とを一致させることができる。
これに対し、前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aが前記方位(A)に対して平行に配設されている場合には、先に説明したように、負のバイアスVbに対して、前記i型半導体層である前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104の屈折率変化が正となることから、電界を印加すると、Δneqは正となる。
ここで、前記αが負(α<0)の場合であると、前記式(3)より、電界の印加によって前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aの透過帯域中心波長を短波長側へシフトさせることができる。
したがって、前記直線部213a,243aが前記方位(A)に対して平行に配設されて、前記αが正(α>0)である場合、光周波数分波器210の透過帯域中心波長が、光周波数合波器240の透過帯域中心波長よりも短波側へずれているときには、光周波数合波器240の前記補正用電極208bで負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器210の透過帯域中心波長と光周波数合波器240の透過帯域中心波長とを一致させることができ、光周波数分波器210の透過帯域中心波長が、光周波数合波器240の透過帯域中心波長よりも長波側へずれているときには、光周波数分波器210の前記補正用電極209aに負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器210の透過帯域中心波長と光周波数合波器240の透過帯域中心波長とを一致させることができる。
他方、前記αが正(α>0)の場合であると、前記式(3)より、電界の印加によって前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aの透過帯域中心波長を長波長側へシフトさせることができる。
したがって、前記直線部213a,243aが前記方位(A)に対して平行に配設されて、前記αが正(α>0)である場合、光周波数分波器210の透過帯域中心波長が、光周波数合波器240の透過帯域中心波長よりも短波側へずれているときには、光周波数分波器210の前記補正用電極208aで負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器210の透過帯域中心波長と光周波数合波器240の透過帯域中心波長とを一致させることができ、光周波数分波器210の透過帯域中心波長が、光周波数合波器240の透過帯域中心波長よりも長波側へずれているときには、光周波数合波器240の前記補正用電極208bに負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器210の透過帯域中心波長と光周波数合波器240の透過帯域中心波長とを一致させることができる。
なお、前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aの一方を前記方位(A)に対して平行に配設し、他方を前記方位(B)に対して平行に配設した場合には、上述した条件を適宜組み合わせて、前記補正用電極208a,208bに電圧を適切に印加することにより、光周波数分波器210の透過帯域中心波長と光周波数合波器240の透過帯域中心波長とを上述した場合と同様に一致させることができる。
〈第三番目の実施形態〉
本発明に係る波長合分波器の第三番目の実施形態を図8〜10に基づいて以下に説明する。図8は、光処理回路の概略構成を表わす平面図、図9は、図8の光処理回路の概略構成を表わす断面図、図10は、図8の光処理回路の光周波数分波器及び光周波数合波器の隣り合うアレイ導波路の相関関係説明図である。なお、前述した第一,二番目の実施形態と同様な部分については、前述した第一,二番目の実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を図面等で用いることにより、前述した第一,二番目の実施形態での説明と同様な説明を省略する。
図8,9に示すように、光周波数分波器310の前記アレイ導波路213の各前記直線部213a上の一部分には、電源に接続して電圧を印加される補正用電極308aが各アレイ導波路213の間を断続させるようにそれぞれ配設されており、当該補正用電極308aは、当該アレイ導波路213の当該直線部213aの軸方向の長さがそれぞれ等しくなっている。
また、前記アレイ導波路213の前記直線部213aの前記補正用電極308aの配設箇所と未配設箇所との間には、当該間を電気的に絶縁するように前記クラッド層105の一部をエッチング除去した分離溝316がそれぞれ形成されている。
他方、光周波数合波器340の前記アレイ導波路243の各前記直線部243a上の一部分には、電源に接続して電圧を印加される補正用電極308bが各アレイ導波路243の間を断続させるようにそれぞれ配設されており、当該補正用電極308bは、当該アレイ導波路243の当該直線部243aの軸方向の長さがそれぞれ等しくなっている。
また、前記アレイ導波路243の前記直線部243aの前記補正用電極308bの配設箇所と未配設箇所との間には、当該間を電気的に絶縁するように前記クラッド層105の一部をエッチング除去した分離溝346がそれぞれ形成されている。
つまり、前述した第二番目の実施形態に係る光処理回路200においては、光周波数分波器210及び光周波数合波器240のアレイ導波路213,243の各前記直線部213a,243aの間を連絡するように当該アレイ導波路213,243の間にわたって配設すると共に、当該アレイ導波路213,243の当該直線部213a,243aの軸方向の長さを当該アレイ導波路213,243の配列方向一方側よりも配列方向他方側ほど長くするように台形状に形成された単一の補正用電極208a,208bを適用して、前記直線部213a,243aの間を電気的に短絡して同一の電界を印加できるようにしたが、本実施形態に係る光処理回路300では、光周波数分波器310及び光周波数合波器340の各アレイ導波路213,243の間を断続させるようにそれぞれ配設されると共に、当該アレイ導波路213,243の当該直線部213a,243aの軸方向の長さがそれぞれ等しい複数の補正用電極308a,308bを適用して、各前記直線部213a,243aの間でそれぞれ電気的に分離してそれぞれ独立の電界を印加できるようにしたのである。
このような構造をなす光処理回路300は、前述した実施形態に係る光処理回路100,200の場合と同様な結晶成長、ドライエッチング、パッシベーション膜の成膜、平坦化を行った後、前記電極107,109,308a,308bの配設部分の前記パッシベーション膜及び前記ポリイミドや前記BCB等を除去して、当該部分に前記電極107,109,308a,308bを設けることにより、製造することができる。
このような本実施形態に係る光処理回路300においては、前述した実施形態に係る光処理回路100,200の場合と同様に、前記位相変調器120が、p層による光損失を抑制されていることから、位相変調された光信号の強度低下を抑制することができるので、位相変調器120に入力する光信号の強度が低い場合であっても、位相変調させた光信号を取り出すことができ、光信号処理をすることができる。
ここで、図10に示すように、上部に前記電極308a,308bが位置する前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aの長さをLeとし、上部に前記電極308a,308bが位置しない前記直線部213a,243a及び前記曲線部213b,243bにおける等価屈折率をneq0とすると共に、光周波数分波器310及び光周波数合波器340のi番目に位置する前記アレイ導波路213,243において、上部に前記電極308a,308bが位置しない前記直線部213a,243a及び前記曲線部213b,243bの長さをL0,iとし、上部に前記電極308a,308bが位置する前記直線部213a,243aにおける電圧Vb,i印加時の等価屈折率をneq1,iとし、光周波数分波器310及び光周波数合波器340のi+1番目に位置する前記アレイ導波路213,243において、上部に前記電極308a,308bが位置しない前記直線部213a,243a及び前記曲線部213b,243bの長さをL0,i+1とし、上部に前記電極308a,308bが位置する前記直線部213a,243aにおける電圧Vb,i+1印加時の等価屈折率をneq1,i+1とすると(ただし、L0,i+1−L0,i=ΔL(>0)とする)、光周波数分波器310及び光周波数合波器340の位相整合条件は、下記の式(5)で表わされる。なお、上部に前記電極308a,308bが位置する前記直線部213a,243aは、当然のことながら、電界無印加時において、等価屈折率がneq0である。
Le・(neq1,i+1−neq1,i)+ΔL・neq0=mλ・・・(5)
ここで、
Δneq1=neq1,1−neq1,i
とすると、前記式(1),(5)より、中心周波数fを下記の式(6)で表すことができる。
f=m・c/(neq0・ΔL+Δneq1・Le)・・・(6)
つまり、i+1番目のアレイ導波路213,243の直線部213a,243aとi番目のアレイ導波路213,243の直線部213a,243aとの電界印加時の屈折率の差Δneq1をある一定の大きさとなるように保持しつつ、印加する各電圧Vb,i+1、Vb,iをそれぞれ調整することにより、中心周波数fを調整することができるのである。なお、上記屈折率差Δneq1に対する中心周波数fの変化量は、前記長さLeの大きさで決定されることがわかる。
具体的には、例えば、前述した従来の光処理回路900において、製造プロセスの加工誤差により、前述した第一番目の実施形態で説明したように、0.1μmの誤差を生じた場合、等価屈折率に0.0001程度の変化量を生じて、中心周波数が10GHz程度ずれてしまうことから、光損失が増加して、出力される光信号の強度が低下してしまうばかりか、入力する光信号の強度が小さいと、処理そのものができなくなってしまうことがある。
他方、本実施形態に係る光処理回路300において、製造プロセスの加工誤差により、光周波数分波器310のアレイ導波路213と光周波数合波器340のアレイ導波路243との幅に0.1μmの誤差を生じた場合、上述した従来の光処理回路900の場合と同様に、中心周波数が10GHz程度ずれることになる。
ところで、前述した第一番目の実施形態で説明したように、前記i型半導体層の屈折率変化Δnは、前記式(4)で表わされる。
ここで、前述した第一番目の実施形態で述べたように、InPやInGaAsPのポッケルス定数ν41は、−1.4×10-12/V程度、InPやInGaAsPの屈折率nは、3.2程度、コア層厚が0.5μmであるので、各前記アレイ導波路213,243の前記補正用電極308a,308bごとに電圧差ΔVを生じるように各前記補正用電極308a,308bに電圧をそれぞれ印加することにより、光周波数分波器310のアレイ導波路213と光周波数合波器340のアレイ導波路243との間の中心周波数fのずれを解消することができる。
したがって、本実施形態に係る光処理回路300においては、前述した第一番目の実施形態の場合と同様に、前記補正用電極308a,308bで電界を印加することにより、光周波数分波器310と光周波数合波器340との光信号の中心周波数を一致させることができるので、光損失の増加を抑えることができ、光周波数合波器340から出力される光信号の強度低下を抑制することができると共に、光周波数分波器310に入力する光信号の強度が小さい場合であっても、処理することができる。
これをもう少し具体的に説明する。
前記光周波数分波器310及び前記光周波数合波器340の前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aが前記方位(B)に対して平行に配設されている場合には、先に説明したように、負のバイアスVbに対して、i型半導体層である前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104の屈折率変化が負となる。
ここで、前記光周波数分波器310及び前記光周波数合波器340の前記アレイ導波路213,243がΔLずつ長くなるにしたがって、印加電圧を大きくすれば(|Vb,i+1|>|Vb,i|)、前記Δneq1が負となることから、前記式(6)より、中心周波数fを短波長側へシフトさせることができる。
他方、前記光周波数分波器310及び前記光周波数合波器340の前記アレイ導波路213,243がΔLずつ長くなるにしたがって、印加電圧を小さくすれば(|Vb,i+1|<|Vb,i|)、前記Δneq1が正となることから、前記式(6)より、中心周波数fを長波長側へシフトさせることができる。
したがって、前記光周波数分波器310及び前記光周波数合波器340の前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aが前記方位(B)に対して平行に配設されている場合、光周波数分波器310の透過帯域中心波長が、光周波数合波器340の透過帯域中心波長よりも短波側へずれているときには、前記光周波数分波器310の前記アレイ導波路213が長くなるほど印加電界を大きくするように、光周波数分波器310の前記補正用電極308aで負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器310の透過帯域中心波長と光周波数合波器340の透過帯域中心波長とを一致させることができ、光周波数分波器310の透過帯域中心波長が、光周波数合波器340の透過帯域中心波長よりも長波側へずれているときには、前記光周波数合波器340の前記アレイ導波路243が長くなるほど印加電界を大きくするように、光周波数合波器340の前記補正用電極308bに負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器310の透過帯域中心波長と光周波数合波器340の透過帯域中心波長とを一致させることができる。
これに対し、前記光周波数分波器310及び前記光周波数合波器340の前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aが前記方位(A)に対して平行に配設されている場合には、先に説明したように、負のバイアスVbに対して、i型半導体層である前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104の屈折率変化が正となる。
ここで、前記光周波数分波器310及び前記光周波数合波器340の前記アレイ導波路213,243がΔLずつ長くなるにしたがって、印加電圧を大きくすれば(|Vb,i+1|>|Vb,i|)、前記Δneq1が正となることから、前記式(6)より、中心周波数fを長波長側へシフトさせることができる。
他方、前記光周波数分波器310及び前記光周波数合波器340の前記アレイ導波路213,243がΔLずつ長くなるにしたがって、印加電圧を小さくすれば(|Vb,i+1|<|Vb,i|)、前記Δneq1が負となることから、前記式(6)より、中心周波数fを短波長側へシフトさせることができる。
したがって、前記光周波数分波器310及び前記光周波数合波器340の前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aが前記方位(A)に対して平行に配設されている場合、光周波数分波器310の透過帯域中心波長が、光周波数合波器340の透過帯域中心波長よりも短波側へずれているときには、前記光周波数合波器340の前記アレイ導波路343が長くなるほど印加電界を大きくするように、光周波数合波器340の前記補正用電極308bで負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器310の透過帯域中心波長と光周波数合波器340の透過帯域中心波長とを一致させることができ、光周波数分波器310の透過帯域中心波長が、光周波数合波器340の透過帯域中心波長よりも長波側へずれているときには、前記光周波数分波器310の前記アレイ導波路313が長くなるほど印加電界を大きくするように、光周波数分波器310の前記補正用電極308aに負のバイアス電圧を印加することにより、光周波数分波器310の透過帯域中心波長と光周波数合波器340の透過帯域中心波長とを一致させることができる。
なお、光周波数分波器310及び光周波数合波器340の前記アレイ導波路213,243の前記直線部213a,243aの一方を前記方位(A)に対して平行に配設し、他方を前記方位(B)に対して平行に配設した場合には、上述した条件を適宜組み合わせて、前記補正用電極308a,308bに電圧を適切に印加することにより、光周波数分波器310の透過帯域中心波長と光周波数合波器340の透過帯域中心波長とを上述した場合と同様に一致させることができる。
さらに、本実施形態に係る光処理回路300においては、光周波数分波器310及び光周波数合波器340の各アレイ導波路213,243の間を断続させるようにそれぞれ配設されると共に、当該アレイ導波路213,243の当該直線部213a,243aの軸方向の長さがそれぞれ等しい複数の補正用電極308a,308bを適用して、各前記直線部213a,243aの間でそれぞれ電気的に分離してそれぞれ独立の電界を印加できるようにしたことから、光周波数分波器310及び光周波数合波器340において、幅方向に隣り合う前記アレイ導波路213,243間での製造プロセスの加工誤差による光損失の増加を抑制することもできるので、光周波数分波器310及び光周波数合波器340の各アレイ導波路213,243を伝搬する各光信号の中心周波数をさらに精度よく調整することができる。
なお、前記式(6)からわかるように、光周波数分波器310及び光周波数合波器340の幅方向に隣り合うアレイ導波路213,243の直線部213a,243aへの印加電圧差ΔVに対する中心周波数fのシフトは、前記長さLeを長くすることにより、大きくすることができ、高効率で行うことが可能となる。
〈他の実施形態〉
なお、前述した第二,三番目の実施形態では、光周波数分波器210,310及び光周波数合波器240,340のアレイ導波路213,243の直線部213a,243a,に補正用電極208a,208b,308a,308bを設けるようにしたが、他の実施形態として、例えば、光周波数分波器210,310及び光周波数合波器240,340のアレイ導波路213,243の曲線部213b,243bに補正用電極を設けることも可能である。
しかしながら、前述した第二,三番目の実施形態のように、光周波数分波器210,310及び光周波数合波器240,340のアレイ導波路213,243の直線部213a,243aに補正用電極208a,208b,308a,308bを設けるようにすれば、先に説明したように、ポッケルス効果による屈折率変化量の相殺に伴う減少を抑制することができるだけでなく、製造の際の蒸着工程の容易化を図ることができると共に、損傷(断線)を抑制することができるので、非常に好ましい。
また、前述した第二,三番目の実施形態では、光周波数分波器210,310及び光周波数合波器240,340の両方に補正用電極208a,208b,308a,308bを設けるようにしたが、他の実施形態として、例えば、光周波数分波器及び光周波数合波器のいずれか一方だけに補正用電極を設けるようにすることも可能である。
このような場合には、中心周波数のシフト調整可能範囲が狭くなってしまうことから、光周波数分波器に複数の入力導波路を設けると共に、光周波数合波器に複数の出力導波路を設け、光周波数分波器の透過帯域中心波長と光周波数合波器の透過帯域中心波長との相対的なずれ量を上記シフト調整可能範囲内となるように、光周波数分波器の入力導波路と光周波数合波器の出力導波路との組み合わせを適宜選択できるようにすると、非常に好ましい。
また、例えば、図11に示すように、前記アレイ導波路213の前記直線部213aの前記入力導波路111側で各当該直線部213aの間を連絡するように当該アレイ導波路213の間にわたって配設されて当該アレイ導波路213の当該直線部213aの軸方向の長さを当該アレイ導波路213の配列方向一方側(図11中、下方側)よりも配列方向他方側(図11中、上方側)ほど一定の割合で短くするように前記出力導波路115側の辺を当該直線部213aに対して傾斜させた台形状をなす第一の補正用電極408aaと、前記アレイ導波路213の前記直線部213aの前記出力導波路115側で各当該直線部213aの間を連絡するように当該アレイ導波路213の間にわたって配設されて当該アレイ導波路213の当該直線部213aの軸方向の長さを当該アレイ導波路213の配列方向一方側(図11中、下方側)よりも配列方向他方側(図11中、上方側)ほど一定の割合で長くするように前記入力導波路111側の辺を当該直線部213aに対して傾斜させた台形状をなす第二の補正用電極408abとを光周波数分波器410に配設すると共に、上記アレイ導波路213の上記直線部213aの前記補正用電極408aa,408abの配設箇所と未配設箇所との間及び当該補正用電極408aa,408abの間に、当該間を電気的に絶縁するように前記クラッド層105の一部をエッチング除去した分離溝316,416を形成する、すなわち、前記αが負(α<0)となる第一の補正用電極408aaと、前記αが正(α>0)となる第二の補正用電極408abとを光周波数分波器410に配設した光処理回路400を適用すれば、光周波数合波器140の透過帯域中心波長に対する光周波数分波器410の透過帯域中心波長のずれ方向に応じて、第一の補正用電極408aa及び第二の補正用電極408abのいずれか一方を選択して電界を印加することにより、光周波数分波器410の透過帯域中心波長と光周波数合波器140の透過帯域中心波長との相対的なずれ量の調整可能範囲を広げることができるので、好ましい。
これと同様に、例えば、図12に示すように、前記アレイ導波路243の前記直線部243aの前記入力導波路141側で各当該直線部243aの間を連絡するように当該アレイ導波路243の間にわたって配設されて当該アレイ導波路243の当該直線部243aの軸方向の長さを当該アレイ導波路243の配列方向一方側(図12中、下方側)よりも配列方向他方側(図12中、上方側)ほど一定の割合で短くするように前記出力導波路145側の辺を当該直線部243aに対して傾斜させた台形状をなす第一の補正用電極508baと、前記アレイ導波路243の前記直線部243aの前記出力導波路145側で各当該直線部243aの間を連絡するように当該アレイ導波路243の間にわたって配設されて当該アレイ導波路243の当該直線部243aの軸方向の長さを当該アレイ導波路243の配列方向一方側(図12中、下方側)よりも配列方向他方側(図12中、上方側)ほど一定の割合で長くするように前記入力導波路141側の辺を当該直線部243aに対して傾斜させた台形状をなす第二の補正用電極508bbとを光周波数分波器540に配設すると共に、上記アレイ導波路243の上記直線部243aの前記補正用電極508ba,508bbの配設箇所と未配設箇所との間及び当該補正用電極508ba,508bbの間に、当該間を電気的に絶縁するように前記クラッド層105の一部をエッチング除去した分離溝346,546を形成する、すなわち、前記αが負(α<0)となる第一の補正用電極508baと、前記αが正(α>0)となる第二の補正用電極508bbとを光周波数合波器540に配設した光処理回路500を適用すれば、光周波数分波器110の透過帯域中心波長に対する光周波数合波器510の透過帯域中心波長のずれ方向に応じて、第一の補正用電極508ba及び第二の補正用電極508bbのいずれか一方を選択して電界を印加することにより、光周波数分波器110の透過帯域中心波長と光周波数合波器540の透過帯域中心波長との相対的なずれ量の調整可能範囲を広げることができるので、好ましい。
また、前述した第一〜三番目の実施形態では、前記第三の半導体クラッド層104にp型のInPを使用したが、他の実施形態として、例えば、p型のInAlAs等のような、前記第二の半導体クラッド層105の材料であるInPよりも電子親和力の小さい材料を第三の半導体クラッド層(厚さ0.05μm)に使用することも可能である。
ここで、第三の半導体クラッド層にp型のInAlAsを使用した場合の半導体アレイ導波路格子に電界を印加したときのバンドダイヤグラムを図13に示す。図13に示すように、InAlAsの層の電子親和力はInPの層の電子親和力よりも小さいため、InAlAsの層とInPの層との界面には、伝導体バンドの不連続が生じる。この伝導体バンドの不連続は、第二の半導体クラッド層(n型のInP)から前記i型半導体層(i型InP及びi型InGaAsP)側へ移動しようとする電子eに対してポテンシャル障壁として作用するため、この障壁を乗り越えられるエネルギを有する電子eだけが当該i型半導体層側へ移動できる。つまり、第二の半導体クラッド層(n型InP)から前記i型半導体層(i型InP及びi型InGaAsP)側へ移動しようとする電子eにとって、この接合は高抵抗となるのである。したがって、第二の半導体クラッド層の材料よりも電子親和力の小さい材料を第三の半導体クラッド層に使用すると、耐圧特性をさらに向上させることができるので、より高い電界を導波路に印加することができ、中心周波数の調整範囲をより広げることが可能となる。
なお、必要な耐圧特性を得られるような厚さを有する第三の半導体クラッド層(InAlAs)とすれば、InAlAsをi型(ノンドープ)とすることも可能である。この場合には、導波路の層構造にp型層が存在しなくなるので、伝搬損失をより小さくすることができ、挿入損失の小さい光処理回路を実現することができる。
また、前述した第一〜三番目の実施形態では、半導体コア層103、半導体補助クラッド層104、第三の半導体クラッド層105の順に積層した層構造としたが、他の実施形態として、例えば、第三の半導体クラッド層、半導体補助クラッド層、半導体コア層の順、すなわち、前述した第一〜三番目の実施形態と逆の順に積層した層構造とすることも可能である。ただし、この場合には、前述した第一〜三番目の実施形態の場合と印加電界の向きを逆にする必要がある。また、例えば、第一の半導体クラッド層と半導体コア層との間及び第二の半導体クラッド層と半導体補助クラッド層との間の両方に第三の半導体クラッド層をそれぞれ設けることも可能である。なお、この場合には、半導体コア層と第三の半導体クラッド層とが近くなって、第三の半導体クラッド層の光閉じ込め係数が大きくなってしまうことから、半導体コア層と第三の半導体クラッド層との間にi型の半導体層(半導体補助クラッド層)をさらに介在させておくと、第三の半導体クラッド層の光閉じ込め係数が大きくなることを防止できるので、非常に好ましい。
また、前述した第一〜三番目の実施形態では、前記半導体コア層103をバルクとした場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、前記半導体コア層103を量子井戸構造とすることも可能である。
また、前述した第一〜三番目の実施形態では、前記第三の半導体クラッド層104の光閉じ込め係数を極力下げるようにするためにi型半導体層として前記半導体コア層103及び前記半導体補助クラッド層104を用いるようにしたが、他の実施形態として、例えば、第三の半導体クラッド層の光閉じ込め係数が十分に低い場合には、半導体補助クラッド層を省略してi型半導体層として半導体コア層のみを用いるようにすることも可能である。
また、前述した第一〜三番目の実施形態では、前記電極107,208a,208b,308a,308bを第二の半導体クラッド層106上に設けるオーミック電極としたが、他の実施形態として、例えば、前記半導体補助クラッド層104上にショットキー電極を形成してこれを利用することも可能である。
また、前述した第一〜三番目の実施形態では、前記電極107,109,208a,208b,308a,308bと前記層102,106とを直接コンタクトさせるようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記電極107,109,208a,208b,308a,308bと前記層102,106との間にInGaAsやInGaAsP等からなるコンタクト層を設けて、コンタクト抵抗を下げるようにすることも可能である。
また、前述した第一〜三番目の実施形態では、接地電極107を前記第一の半導体クラッド層102上に設けるようにしたが、他の実施形態として、例えば、半導体基板にn型を使用している場合には、接地電極を当該半導体基板の裏面に設けることも可能である。
また、前述した第一〜三番目等の実施形態では、ハイメサ構造をなす光導波路を有する光処理回路100,200,300,400,500の場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、光導波路構造として、リッジ構造や、半導体レーザ等で適用されているような、導波路の幅方向(横方向)を埋め込んだ構造、すなわち、半絶縁性(SI)の半導体(例えば、ドーパントとしてFeやRu等を用いたもの)で埋め込むSI埋め込み構造を適用することも可能である。
また、前述した第一〜三番目の実施形態では、InGaAsP/InP系の半導体材料を使用した場合について説明したが、本発明は、このような材料に限定されるものではなく、その他の半導体材料であっても、前述した第一〜三番目の実施形態の場合と同様に適用することができる。
また、長さを一定の割合でなく不規則に変化させた補正用電極を光周波数分波器や光周波数合波器のアレイ導波路ごとに設けて当該アレイ導波路ごとにそれぞれ電圧制御すれば、構造や制御系が複雑になるものの、前述した実施形態と同様に中心周波数の制御を行うことはできる。