JP4818529B2 - 隔膜式センサ用気液分離膜 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体は透過させるが、液体の透過は遮断する気液分離膜に関連する。更に詳しくは、内部に検知極、対極、電解液(内部液)などを保持した構造の種々の隔膜式センサの隔膜として使用が可能な気液分離膜に関連する。
【0002】
【従来の技術】
従来からセンチメートルサイズの電量式及び定電位電解式の各種センサが実用化されている。なかでも漏洩ガス検知警報器などに広く用いられており、許容濃度(ACGIH又は日本産業衛生学会の勧告値)付近の低濃度ガスに対しても迅速に応答する性能を有したセンサとなっている。
【0003】
これらの電量式及び定電位電解式ガスセンサは、より広くは電気化学的センサと呼ばれ、気液分離膜(隔膜)とセンサ本体等の内部に、作用極(検知極)・対極などとともに内部液(電解液)などを保持した構造となっている。ここで隔膜として用いる気液分離膜の機能は、測定対象試料気体中の成分ガスをセンサの内部に輸送し、電気化学的な検出反応に供するとともに、反応に不可欠な電解液をセンサの内部に閉じこめて保持することである。気液分離膜には、目的によって、種々のものが用いられてきた。大気中レベルの酸素センサの場合は、高濃度(%オーダー)であるためにポアサイズや気孔率が小さい気液分離膜で使用可能であり、分子間の空隙を利用したふっ素化合物やシリコーンなど連続膜のフィルムも使用できた。
【0004】
一方、塩素ガス検知センサの場合は、対象ガスが有毒ガスであり、ppb〜ppmオーダーと低濃度ガスであるために、所定の感度を確保し、また十分な応答速度を得るためには、気液分離膜としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物を延伸して作製した有効径が1ミクロン以下(サブミクロン)のレベルの多数の空隙を有する気孔率が50−70%のいわゆる多孔質メンプレン等が用いられてきた。
【0005】
しかしセンサそのものが、小型・微小化して、特願平2000−132990のように例えば、5mm×5mm×3mm程度の石英ガラスブロックに電極の本体を加工したセンサ本体や、特公平6−1254号公報に記載された酸素センサのようにシリコン基板上に、異方性エッチングにより作成されたセンサ本体の場合は、微小であるために、気液分離膜に、既存のポリテトラフルオロエチレンなどを延伸した多孔質メンブレンを用いると、たわみなどを生じ、検知電極と隔膜との位置関係を微小サイズにおいて厳密に管理することは困難で隔膜と検知電極との距離を一定にしにくく、低濃度測定の場合、精度上問題が生じるだけでなく、組立作業上の困難も多い。
【0006】
そこでこうしたガラスやシリコンウエハといった新しい微小センサ本体の材質に適合した気液分離膜の開発が課題となっており、シリコンウエハーをDeepRIE(反応性イオンエッチング)により孔あけ加工した膜材や、アルミナを陽極酸化して多孔質化した膜材等が検討されている。例えば、厚さ160μmのシリコンウェハーに、DeepRIEにより、ポアサイズがφ30μmからφ100μm程度の貫通孔をあけることができる。また、厚さ10μmのアルミナに陽極酸化法によって、ポアサイズφ0.03μm程度の貫通口をあけることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
発明者等は既存の延伸して作製されたポリテトラフルオロエチレンなどの材質によらない気液分離膜として、厚さ160μm程度のシリコンウエハーにDeepRIEによりポアサイズがφ30μmの貫通孔をあけたものを、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンなどの試薬を用いてシラン化処理により撥水化して用いるなどの方法を検討し、更にポアサイズを小さくする検討を行ってきた。一定の厚みをもったシリコンウエハ等に直接、細孔を貫通させるために方法にはプラズマ状のイオンを基板上にたたきつけて孔をあける方法などがある。
【0008】
DeepRIE法(RIEはリアクティフ゛・イオン・エッチンク゛の略)は、周辺の基板材質が、プラズマ状のイオンによって削られるために細孔径が、意図した孔径よりも拡がってアスペクト比が低くなるという問題を改善できる方法である。プラズマ状のイオンを基板上にたたきつけて孔をあける際に、周辺の基板材質が、削られて細孔径が、意図した孔径よりも拡がってアスペクト比が低くなるのを避けるために、保護膜になる材質を細孔周辺に形成しつつ、エッチングを進める方法で、アスペクト比が向上し、より細い孔を開穿するのに、比較的、適している。
【0009】
この技術を用いた場合でも、アスペクト比が20でウエハの厚みが100ミクロンであった場合には5ミクロンの孔が到達できる最小孔径である。実際には、気液分離膜に用いる孔径はサブミクロンのオーダーであって、サブミクロンの孔径を開穿しようとすると厚み10ミクロンのシリコンウエハを用いることになり、機械的強度や保持安定性に難点が出てきて気体用の化学センサの隔膜として適しているサブミクロンのオーダーの細い孔径の膜を製作することは、実質的に困難であった。
更に細孔を気液分離機能を付与するためには、所定の細孔径を確保するともに、孔の周辺部に撥水性を持った物質を配置する必要があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、こうした従来技術の到達点を吟味し、シリコン基板を材料物質として(1)機械的にも堅牢でたわみを発生せず、(2)気液分離膜として使用できる程度に気液分離機能を維持しつつ気体が透過できるような気体の経路の孔径や断面積(実効透過面積)及び透過距離の見積り(3)孔近傍へのを撥水性の付与方法になどについて、検討した結果、本発明に想到した。
【0011】
発明者らは、膜としての機械的な強度を向上させるために、シリコン基板を2枚張り合わせる方法をとった。また気体が通過する経路としては、2層の接合平面に、微細なギャップを設け、これを孔径と見立てて気液分離膜とすることを検討した。
つまり2枚のシリコン基板を接合し、接合面のいずれかの一面に接合面に沿って浅溝を凹設してなり、各シリコン基板に設けられた貫通孔が、前記浅溝を介してのみ連通するようにしてなるとともに、いずれか一方のシリコン基板の貫通孔の凹設された浅溝への連接部の近傍を撥水性にすることにより気液分離膜とする。
【0012】
この方法においては、
(1)まず二枚のシリコン基板には、DeepRIEを用いて数多くのミクロンレベルの貫通孔を、両シリコン基板を重ね合わせたときに、両シリコン基板の貫通孔同士が重なり合わず図2に記載するような接合面に沿って凹状に開穿した溝によってのみ、連通するように形成する。
【0013】
(2)次に気体の気液による選択性が制御されて透過する経路をシリコンウエハを用いるにあたって、基板を貫通する孔を開穿して形成するという従来技術にかえて、シリコンウエハの平面上に凹状の溝を開穿して形成する。この開穿方法は、以下の通りである。
1)2枚のシリコン基板のうち、一方のシリコン基板の片面に溝の幅や長さや形状を所定の設計に従って、レーザ加工などでパターニングしたステンシルなどをマスク材として張り合わせておく。
2)このパターニングした部分にイオンプラズマによるECR(ECRはエレクトロサイクロトロンレゾナンスの略)エッチングを施す。アルゴンイオンによるエッチングの場合、溝の深さ方向の開穿速度は、1分間あたりナノメートルレベルの程度で制御できるので、エッチング時間を設定することにより、この凹状の溝を所望のサブミクロンのレベルで開穿することは十分に可能である。
【0014】
(3)二枚のシリコン基板のうち、片面に浅溝を凹設したシリコン基板に対して浅溝を凹設した面の反対側からプラズマCVD処理などを施して貫通孔の凹設された浅溝への連接部を撥水性にする。
(4)二枚のシリコン基板を片面に浅溝を凹設した面を接合面として、すでに知られた接合方法で接合する。ここで貫通孔の大きさや形状、その数は、シリコン基板の機械的な強度が失われない程度であってセンサの隔膜として使用な程度に有効面積を有しているならば、特に限定はない。
また、シリコン基板に限らず、平坦な面を有する堅牢な材料であって、サブミクロンのレベルでその面に浅溝を穿つことができる材料として、ガラス基板やポリイミド膜などを用いても、同様な気液分離膜を作製することができる。さらには、接合する2枚の基板は、それぞれ異なる材質の基板を選択し組み合わせることもできる。
【0015】
また請求項2の気液分離膜では、二枚の基板に設ける貫通孔を細長のスリット孔とする。つまり、一の基板には貫通孔を複数スリット状に設け、該基板の片面に各細長スリット間にスリットに対して直角方向に複数の浅溝を凹設せしめる。この基板の浅溝を凹設していない反対側の面の貫通孔の部分に、プラズマCVD法でフッ化ビニリデンを既に知られた手法で撥水性処理を施す。他の基板には2枚を重ね合わせた際に、一基板の細長スリットと重なり合わない位置に貫通孔を細長スリット状に設けて、一の基板の浅溝を凹設した面を重なり面として両基板をすでに知られた接合方法のうち、好適な方法である有機接着剤接合方法で接合した。
【0016】
基本的な構造と製造方法は請求孔1の気液分離膜と同様であるが、広くガスの透過面を形成できるとともに、貫通孔としての細長スリットと直角方向に交差するかたちで細長に浅溝を凹設するので、2枚の基板を重ね合わせたとき、各基板に形成された貫通孔は確実に凹設された浅溝で連通し、かつ両基板の貫通孔同士が直接、重なりあってリークを生じる危険性がないという特徴がある。この発明による気液分離膜をシリコン基板を選択して作成した場合は、シリコン基板を材料としているので、作用極やセンサボディなどもシリコン基板で作成することによって、センサ全体を組み立てる場合の気液分離膜との接合も、シリコン同士の接合となり、製造プロセスが単純になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。図1は本発明に係る気液分離膜を用いたシリコン基板を接合して隔膜式化学センサの実施形態を示す分解斜視図である。図1のシリコン基板を接合した隔膜式化学センサにおいて、対極1は、厚さ300μmのシリコン基板にステンシルマスクを使用して白金をスパッタリングして形成している。センサボディ2は、内部に電解液を収容する内部液溜めである。厚さ500μmのシリコンウエハを使用している。作用極3は100μmのシリコンウエハに水酸化カリウムで異方性エッチングでスリット状に形成され電解液の収容される空間と気液分離部を貫通させるとともに、貫通部壁面にステンシルマスクを使用して白金層をスパッタリングなどで形成して電極表面としている。厚み100μmのシリコン基板(一)4は2枚の気液分離膜を構成するシリコン基板のうちの一枚で撥水性処理を施していないものである。
【0018】
厚み100μmのシリコン基板(二)5は他の一枚で接合面に浅溝を凹設してあり、外気に晒される面からスリット状貫通孔にプラズマCVD法でフッ化ビニリデンを堆積させるなど既に知られた手法で撥水性処理を施した。微小空気孔への撥水性処理を施した場合の耐水圧については、理論的には、次のような式にしたがって気液分離膜として既知のポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物を延伸して有効径が1ミクロン以下(サブミクロン)のレベル多数の空隙を有する気孔率が50−70%のいわゆる多孔質メンプレンとの比較推定が可能である。
耐水圧P=−2γCOSΘ(1/w+1/h)
γ 表面張力: 水の場合 0.073N/m
Θ 接触角: 110°
w 孔横幅
h 孔縦幅
【0019】
センサの大きさは20mm角のシリコン基板から各層のセンサ材料がそれぞれ12個取ることができ、仕上がり寸法は約3mm強角のセンサを得ることができる
【0020】
図2は、気液分離膜を含む隔膜式化学センサの断面図である。この図により本発明になる気液分離膜を更に詳しく説明する。
図1と対応して、対極1、センサボディ(内部液溜め)2、作用極3である。
気液分離膜を構成するシリコン基板(一)4には、スリット状に貫通孔6が形成されており、他方の気液分離膜を構成するシリコン基板(二)5には、接合されたときに貫通孔6と重ならないようにスリット状の貫通孔7が形成されている。このスリットの重ね合わせで貫通孔6と貫通孔7は、シリコン基板5のシリコン基板(一)4に接合する面に凹設された浅溝8(太線で表示)によって連通している。
この実施の形態では、シリコン基板(一)4に開穿されたスリット状貫通孔は、長さが1.84mmで幅が0.11mmであって、0.27mm間隔で7本形成されている。またシリコン基板(二)5のシリコン基板に開穿されたスリット状貫通孔は、長さが4.と同じ1.84mmで幅が0.06mm(60μm)と細くなっており、ピッチは4.と同様に0.27mm間隔で6本形成されており、2枚を重ね合わせたときに、2対のスリット孔同士が重なり合わないように配置してすでに知られた接合方法のうち、好適な方法である有機接着剤接合方法で接合した。このスリット状の貫通孔はDeepRIE法(RIEはリアクティフ゛・イオン・エッチンク゛の略)によって行う。シリコン基板(二)5接合する面には、スリットに直角に、長さ1.84mm幅0.29mm(290μm)の凹形の浅溝が5本凹設されており、この浅溝の深さは約0.2μm程度に浅く加工しているが、この加工はECR(ECRはエレクトロサイクロトロンレゾナンスの略)エッチングによれば、溝の深さ方向の開穿速度は、1分間あたりナノメートルレベルなので、10nm程度の精度で可能であり、気液を選択透過させるギャップを安定して形成することが可能である。このようにして形成したギャップは幅が290μm、高さ約0.2μm、貫通孔同士を連通する気体の透過する経路長は、上下2枚のシリコン基板に開穿されたスリット幅の差の半分に相当し、25μmとなる。この実施の形態によるとギャップ幅290μm、ギャップ高さ約0.2μm、経路長25μmの孔が60個開穿される。この気液分離膜の耐水圧は、すでに記載した理論式から250KPa程度であり、PTFEの場合と比較しても気液分離性能に遜色はない。
【0021】
こうして作成された気液分離膜を用いてこの化学センサを内部液に4.6モルの臭化リチウム溶液を封入して作用極に対して−0.250〜−0.300Vを印加して1ppmの塩素ガスに晒した際の出力電流は、10nAであり、電極を微細化してはいるが電極の単位面積当たりの出力は従来の電極と比較して遜色なく、本発明による気液分離膜が、ガス透過膜としても、有効に機能していることが確認された。
【0022】
【発明の効果】
この発明によれば、(1)貫通孔を形成した基板を二枚重ね合わせて、この接合面にガスの透過する面を高い精度でサブミクロンレベルの面エッチンング加工を施し、この狭いギャップを気体の透過する経路として、貫通孔を連通させるようにして、貫通孔の近傍には撥水性処理を施しているので、確実に気液分離特性を与えることができる。
(2)この気液分離膜の作成方法はいわゆる半導体製造技術に基づいているので、微細なセンサの隔膜にも容易に接合することが可能であり、大量生産も可能である。
(3)従来のシリコン基板に気体の透過孔を開穿する方法と較べて、基板の面にサブミクロンレベルの気体が透過する浅溝を凹設するので、使用する基板は100μmのレベルであって、ンサに接合した場合のたわみなどに懸念がなく、しかも2枚張り合わせて用いるために、構造的にも堅牢である。
などの効果を確認することができる。
【0023】
この実施形態ではシリコン基板を用いてこの片面にサブミクロンレベルの浅溝を凹設する加工を既知のエッチング加工を施して気液分離膜を作製した。シリコン基板に限らず、平坦な面を有する堅牢な材料であって、サブミクロンのレベルでその面に浅溝を穿つことができる材料として、例えばガラス基板やポリイミド膜などを用いても、同様な気液分離膜を作製することが可能である。さらには浅溝を凹設する基板をシリコン基板で作製し、このシリコン基板を接合される基板としてシリコン基板以外のガラス基板や、ポリイミド膜などを選ぶ組み合わせも可能である。また請求項2において、二つの基板に穿スリットは細長状としたが、円周状として、凹設する浅溝を円周の中心から放射状に形成するなど、請求項1の範囲で多くの設計が可能である。貫通孔の近傍に撥水性を付与する方法として、発明の実施の形態では、プラズマCVD法などでフッ化ビニリデンなど撥水性の化合物を堆積し、導入する方法を採用したが、この方法に限定されず、表面を多孔構造にするなど幾何学的構造を変化させて撥水性を付与しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る気液分離膜を含む隔膜式センサの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る気液分離膜を含む隔膜式センサの断面図である。
【符号の説明】
1 対極
2 センサボディ(内部液溜め)
3 作用極
4 シリコン基板(一)
5 シリコン基板(二)
6 貫通孔
7 貫通孔
8 浅溝

Claims (2)

  1. シリコン基板、ガラス基板又はポリイミド膜の中から選択されるそれぞれ貫通孔を有する2枚の基板接合された隔膜式センサ用気液分離膜であって
    前記基板のいずれか一方には接合面に沿って貫通孔に連通した浅溝凹設され、
    前記貫通孔は、2枚の基板を重ね合わせた際に重なり合わない位置に設けられ、かつ、前記浅溝を介してのみ連通するようにされ
    いずれか一方の基板の貫通孔の前記凹設された浅溝への連接部の近傍撥水性処理を施したこと
    を特徴とする隔膜式センサ用気液分離膜。
  2. シリコン基板、ガラス基板又はポリイミド膜の中から選択される2枚の基板からなり、一の基板には貫通孔を複数細長スリット状に設け、該基板の片面に各細長スリット間にスリットに対して直角方向に複数の浅溝を凹設せしめ、他の基板には2枚を重ね合わせた際に、一のスリットと重なり合わない位置に貫通孔を細長スリット状に設けて、一の基板の浅溝を凹設した面を重なり面として両基板を接合し、一の基板の貫通孔と前記凹設された浅溝への連接部の近傍に撥水性処理を施したことを特徴とする請求項1に記載の隔膜式センサ用気液分離膜。
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