JP4812892B2 - 熱可塑性ポリウレタンのゴルフボールカバー組成物を成形後架橋する方法 - Google Patents

熱可塑性ポリウレタンのゴルフボールカバー組成物を成形後架橋する方法 Download PDF

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Description

本発明は、マルチピースゴルフボールを調製する方法に関する。
ゴルフボールは一般に、ワンピース構成またはコアを取り囲む外側カバーを含む多層のいずれかを有する。糸巻きボール形態は典型的に、固体または半固体のコアの周りにピンと張って巻かれた加硫ゴム糸を有し、これは次いで、強靭な保護材料製の単層または多層の被覆中に封入される。別の種類のボールであるワンピースボールは典型的に、成形可能な弾性材料の固体塊から形成され、これは、必要な硬度を発揮するために硬化されている。ワンピース成形ボールは通常、封入用のカバーを有さない。糸巻きボールでないマルチピース(2つ以上のピースの)ボールは一般に、一つまたは複数の層からなる固体または液体のコア、およびコアを覆って形成される一つまたは複数の層を有するカバーを有する。
マルチピースゴルフボールの多くは、強靭さおよび切断耐性を付与するためのアイオノマー樹脂を含有するカバーを有する。このようなアイオノマーの例には、E.I.DuPont de Nemours and Companyから入手可能なSurlyn(登録商標)およびExxon-Mobilから入手可能なIotek(登録商標)が含まれる。
ポリウレタンも、マルチピースゴルフボールのカバー材料中で使用されている。ポリウレタンは、加工の際に2種類の一次成分、最も一般的にはポリイソシアネート、例えばジフェニルメタンジイソシアネートモノマー、トルエンジイソシアネート、またはこれらの誘導体と、ポリオール、例えばポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールとを混合することによって形成されうる。ポリアミンと反応するイソシアネートはポリ尿素を形成する。「ポリウレタン」という用語は、ポリウレタン/ポリ尿素系を記載するために使用されることが多い。ポリウレタンは、例えば架橋された分子構造を有する熱硬化性であってもよく、または例えば線状分子構造を有する熱可塑性であってもよい。ポリウレタンプレポリマーが多官能性硬化剤、例えばポリアミンまたはポリオールと架橋すると、ポリウレタンは不可逆的に「硬化」する。プレポリマーは通常、ポリエーテルまたはポリエステルから製造される。架橋は、イソシアネート基とポリオールのヒドロキシル末端基との間で生じる。熱硬化性ポリウレタンの物理的特性は、架橋の程度によって調節できる。例えば、強固に架橋したポリウレタンは、相当に剛性で頑丈であるが、一方で架橋のレベルが低くなると、柔軟で弾力性のある材料となる。加工法に応じて、反応速度は、例えば一部の反応射出成形(RIM)システムの場合のように極めて高速であってもよく、または他の場合には、例えばいくつかのコーティングシステムにおけるように、数時間以上であってもよい。
本発明の目的は、マルチピースゴルフボールを調製する方法を提供することである。
以下に、本発明およびその種々の特徴の基本的理解を提供するために、本発明の局面の一般的な概要を示す。この概要は、本発明の範囲を多少なりとも限定することを意図するものではなく、後に続くより詳細な説明のための全体的な概説および内容を提供するだけのものである。
本発明の局面は、マルチピースゴルフボールを調製する方法を対象とする。一つの例において、マルチピースゴルフボールは、コア層およびカバー層を供給することによって調製される。カバー層は、架橋性で熱可塑性のポリウレタンを含む。カバー層およびコア層を、ゴルフボール予備成形品へと成形する。任意の適切な成形技術、例えば射出成形、圧縮成形、引き込み式ピン射出成形、真空成形、反応射出成形、液体射出成形、フローコーティングなどを使用してもよい。ゴルフボール予備成形品を、金型から取り出す。次いで、架橋性で熱可塑性のポリウレタンを架橋させるのに十分な条件下で、ゴルフボール予備成形品に放射線照射する。一部の態様において、コア層とカバー層との間に一つまたは複数の中間層が存在し、かつ/またはコアは多層構成を有していてもよく、かつ/またはコアは多層構成を有してもよい。
別の局面において、マルチピースゴルフボールは、カバー層およびコア層を成形して金型中でゴルフボール予備成形品を形成することによって、調製される。カバー層は、架橋性で熱可塑性のポリウレタンを含む。ゴルフボール予備成形品を金型から取り出し、少なくとも1日保管する。その後、特定のゴルフボール特性および/または性能特徴に対する要求を決定する。次いでゴルフボール予備成形品を照射して架橋性で熱可塑性のポリウレタンを架橋させ、所望のゴルフボール特性および/または性能特徴を達成する。
さらに別の局面において、マルチピースゴルフボールは、コア層およびカバー層を供給することによって調製される。カバー層は、架橋性で熱可塑性のポリウレタンを含む。カバー層およびコア層をゴルフボール予備成形品へと成形し、金型から取り出す。ゴルフボール予備成形品の外面には、紫外線硬化性トップコート組成物が適用される。次いでゴルフボール予備成形品に紫外線を照射し、架橋性で熱可塑性のポリウレタンを架橋させると同時に、UV硬化性トップコート組成物を硬化させる。
より具体的には、本発明は以下を提供する:
[1]コア層を供給する工程;
少なくとも一つの架橋性で熱可塑性のポリウレタンを含むカバー層を供給する工程;
該カバー層および該コア層を成形して金型中にゴルフボール予備成形品を形成する工程;
該ゴルフボール予備成形品を該金型から取り出す工程;ならびに
該架橋性で熱可塑性のポリウレタンを架橋させるのに十分な条件下で該ゴルフボール予備成形品にエネルギー源を照射する工程
を含む、マルチピースゴルフボールを調製する方法。
[2]コア層とカバー層との間に少なくとも一つの中間層を適用する工程をさらに含む、[1]の方法。
[3]少なくとも一つの中間層が、一種または複数種の動的加硫された熱可塑性エラストマー、官能化スチレン-ブタジエンエラストマー、熱可塑性ゴム、熱硬化性エラストマー、熱可塑性ウレタン、メタロセンポリマー、熱硬化性ウレタン、アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物を含む、[2]の方法。
[4]カバー層が、アイオノマー、熱可塑性物質、エラストマー、ウレタン、バラタ、ポリブタジエン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される物質をさらに含む、[1]の方法。
[5]コア層が、ポリブタジエンおよび約20〜50部のジアクリル酸金属塩、ジメタクリル酸金属塩、またはモノメタクリル酸金属塩を含むベース組成物から形成される、[1]の方法。
[6]ベース組成物が、天然ゴム、スチレンブタジエン、イソプレン、またはこれらの組み合わせをさらに含む、[5]の方法。
[7]エネルギー源が紫外線を含む、[1]の方法。
[8]カバー層が、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(HHPMP)、およびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスホンオキシド(BTPPO)からなる群より選択されるUV開始剤をさらに含む、[7]の方法。
[9]カバー層およびコア層を成形して金型中にゴルフボール予備成形品を形成することによって該ゴルフボール予備成形品を調製する工程であって、該カバー層が、少なくとも一つの架橋性で熱可塑性のポリウレタンを含む、工程;
該金型から該ゴルフボール予備成形品を取り出す工程;
該ゴルフボール予備成形品を少なくとも1日保管する工程;
ゴルフボールの特性、性能特徴、またはその両方に対する要求を決定する工程;ならびに
該決定されたゴルフボールの特性、性能特徴、またはその両方に従って前記架橋性で熱可塑性のポリウレタンを架橋させるのに十分な条件下で、前記ゴルフボール予備成形品にエネルギー源を照射する工程
を含む、マルチピースゴルフボールの調製方法。
[10]エネルギー源が紫外線を含む、[9]の方法。
[11]カバー層が、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(HHPMP)、およびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスホンオキシド(BTPPO)からなる群より選択されるUV開始剤をさらに含む、[10]の方法。
[12]照射工程の前に、ゴルフボール予備成形品を、地域供給業者、卸売業者、小売業者、および消費者のうち少なくともいずれかに流通させることをさらに含む、[9]の方法。
[13]ゴルフボールの特性、性能特徴、またはその両方に従って、照射済のゴルフボールに印を施す工程をさらに含む、[9]の方法。
[14]コア層を供給する工程;
少なくとも一つの架橋性で熱可塑性のポリウレタンを含むカバー層を供給する工程;
該カバー層および該コア層を成形して金型中にゴルフボール予備成形品を形成する工程;
該ゴルフボール予備成形品を該金型から取り出す工程;
紫外線硬化性トップコート組成物を該ゴルフボール予備成形品に適用する工程;ならびに
該架橋性で熱可塑性のポリウレタンを架橋させかつ該トップコート組成物を硬化させるのに十分な条件下で、該ゴルフボール予備成形品に紫外線を照射する工程
を含む、マルチピースゴルフボールを調製する方法。
[15]コア層とカバー層との間に少なくとも一つの中間層を適用する工程をさらに含む、[14]の方法。
[16]少なくとも一つの中間層が、一種または複数種の動的加硫された熱可塑性エラストマー、官能化スチレン-ブタジエンエラストマー、熱可塑性ゴム、熱硬化性エラストマー、熱可塑性ウレタン、メタロセンポリマー、熱硬化性ウレタン、アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物を含む、[14]の方法。
[17]カバー層が、アイオノマー、熱可塑性物質、エラストマー、ウレタン、バラタ、ポリブタジエン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される物質をさらに含む、[14]の方法。
[18]コア層が、ポリブタジエンおよび約20〜50部のジアクリル酸金属塩、ジメタクリル酸金属塩、またはモノメタクリル酸金属塩を含むベース組成物から形成される、[14]の方法。
[19]ベース組成物が、天然ゴム、スチレンブタジエン、イソプレン、またはこれらの組み合わせをさらに含む、[18]の方法。
[20]カバー層が、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(HHPMP)、およびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスホンオキシド(BTPPO)からなる群より選択されるUV開始剤をさらに含む、[14]の方法。
本発明は、熱可塑性ポリウレタンのゴルフボールカバー組成物を成形後架橋する方法を提供する。
本発明およびその特定の利点は、添付の図面を考慮して以下の詳細な説明を参照することによってより完全に理解されよう。
図1および図1Aは、マルチピースゴルフボールの断面図を概略的に示す。 熱可塑性ポリウレタンのゴルフボールカバー組成物の成形後UV照射の一例を示すプロセスフロー図である。 熱可塑性ポリウレタンのゴルフボールカバー組成物の流通後UV照射の例を示すプロセスフロー図である。 UV硬化性トップコートとカバー組成物中の熱可塑性ポリウレタンとの同時成形後UV照射の例を示すプロセスフロー図である。
詳細な説明
種々の例示構造についての以下の説明において、その一部を形成しておりかつ種々のゴルフボール構造例が例示目的で示されている、添付の図面を参照する。さらに、部分および構造について他の特定の配置も利用でき、本発明の範囲から逸脱することなく構造上および機能上の変更も行えることを理解すべきである。また、「上」、「下」、「前」、「後」、「リヤ」、「サイド」、「アンダーサイド」、「オーバーヘッド」などの用語は、本明細書において、本発明の種々の例示的な特徴および要素を記載するために使用されうるが、これらの用語は本明細書において、便宜上、例えば図中に示される例示方向および/または通常使用における方向に基づいて使用される。本明細書におけるいずれも、構造について特定の三次元的または空間的な方向付けが必要であると解釈されるべきではない。
A.ゴルフボールおよび製造システムおよび製造法の一般的な説明
ゴルフボールは、例えばワンピースボール、ツーピースボール、スリーピースボール(糸巻きボールを含む)、フォーピースボールなどの多様な構成を有しうる。これらの様々な種類の構成よりもたらされるプレー特徴における違いは、かなり顕著となる場合がある。一般にゴルフボールは、ソリッドボールまたは糸巻きボールとして分類され得る。ツーピース構成、典型的には、混合カバー、例えばアイオノマー樹脂によって包まれた、架橋ゴムのコア、例えば、ジアクリル酸亜鉛および/または類似の架橋剤で架橋されたポリブタジエンゴムを有するソリッドボールは、多くの平均的な趣味のゴルファーに人気がある。コアとカバー材料の組み合わせにより、ゴルファーが事実上破壊できずかつボールに大きな初速を与える比較的「硬い」ボールが提供され、結果として距離が延びる。ボールを形成する材料が非常に硬いので、ツーピースボールは、クラブで打ったときに硬い「感触」を有する傾向にある。同様に、その硬さのために、これらのボールは、ドライバーから離れた時にスピン速度が比較的小さく、このことは同じく、長い距離に役立つ。
糸巻きボールは一般に、ピンと張ったエラストマー材料によって囲まれ、耐久性のあるカバー材料、例えばアイオノマー樹脂、またはより柔軟なカバー材料、例えばバラタもしくはポリウレタンで被覆された、リキッドセンターまたはソリッドセンターで構築される。糸巻きボールは一般に、パフォーマンス(performance)ゴルフボールであると考えられ、ゴルフクラブで打つと良好な弾力性、望ましいスピン特徴、および感触を有する。しかし、糸巻きボールは一般に、ソリッドゴルフボールに比べて製造が困難である。
より最近では、スリーピースボールおよびフォーピースボールが、どちらも平均的な趣味のゴルファー用のボールとして、ならびに、プロおよび他のエリートレベルのプレーヤー用のパフォーマンスボールとして、人気を集めている。
種々のゴルフボールが、特定の競技特徴を提供するように設計されている。これらの特徴は一般に、ゴルフボールの初速およびスピンを含み、これを種々のタイプのプレーヤーに対して最適化することができる。例えば、あるプレーヤーは、グリーン付近においてゴルフボールを制御しかつ停止させるために、スピン速度の大きなボールを好む。他のプレーヤーは、距離を最大限に伸ばすためにスピン速度が小さく弾力性が大きいボールを好む。一般に、硬いコアおよび軟らかいカバーを有するゴルフボールは、スピン速度が大きい。反対に、硬いカバーおよび軟らかいコアを有するゴルフボールは、スピン速度が小さい。硬いコアおよび硬いカバーを有するゴルフボールは一般に、距離のために非常に高い弾力性を有するが、硬い感触があり、グリーン付近での制御が難しい。
一部の従来のツーピースボールの飛距離は、典型的な単層コアおよび単層カバー層構成を改変して多層ボール、例えば二重カバー層、二重コア層、および/またはカバーとコアとの間に配置された中間層(「マントル」層とも呼ばれる)を有するボールを提供することによって、改善されている。スリーピースボールおよびフォーピースボール(およびさらにファイブピースボール)は、現在一般に見出され、市販されている。本発明の局面は、上述の多層を有する種々の糸巻きボール、ソリッドボール、および/または多層ボールの構成を含む、あらゆる種類の構成に適用されうる。
図1および1Aはゴルフボール10の一例を示すが、これは、コア12、中間層14、複数のディンプル18を有するカバー16、および、ゴルフボール10の外面上に適用されたトップコート20を有する。ボール10はまた、本明細書において記載される種々の例示構成を含む、他の任意の構成を有してもよい。トップコート20の厚さは通常、カバー16または中間層14の厚さよりも有意に薄く、例として約5〜約25μmの範囲であることができる。トップコート20が、ディンプル18の深さおよび容積に与える影響は最小限とする。
ゴルフボール10のカバー16は、例えばこれらに限定されないが、アイオノマー、熱可塑性物質、エラストマー、ウレタン、バラタ(天然または合成)、ポリブタジエン、またはこれらの組み合わせなどの多数の材料で製造できる。以下に記載されるように、カバー16の少なくとも一つの層は、架橋性で熱可塑性のポリウレタンを含有する。コーティング層20の適用前に、ゴルフボール10のカバー16の外面に、任意のプライマーまたはベースコートを適用してもよい。
センター
ゴルフボールは、例えば低圧縮のセンターを有するように形成されてもよいが、これは依然として従来のツーピースのディスタンス(distance)ボールのものに近いボール完成品のCORおよび初速を示す。センターは、例えば約60以下の圧縮を有してもよい。こうしたセンターを用いて製造されたボール完成品は、インバウンド(inbound)速度125ft./s.にて測定した場合に、約0.795〜約0.815のCORを有する。「COR」とは反発係数を指し、これは、ボールの跳ね返り速度をその初速(すなわち入力速度)で除することによって得られる。この試験は、ある範囲の試験速度(例えば75〜150ft/s)にわたって垂直のスチールプレートに空気砲からサンプルを発射することによって行われる。高いCORを有するゴルフボールがプレートに衝突してそこから跳ね返るとき、その総エネルギーのうち消散するエネルギーは、より低いCORを有するボールよりも少ない。
「点」および「圧縮点」という用語は、圧縮スケールまたはATTI Engineering Compression Testerに基づく圧縮スケールを指す。このスケールは、当業者に周知であり、センターまたはボールの相対圧縮を測定する際に使用される。
センターは例えば、約65〜約80のショアD硬度を有しうる。センターは例えば、約1.25インチ〜約1.5インチの直径を有しうる。センターを形成するためのベース組成物は、例えば、ポリブタジエンと、約20〜50部のジアクリル酸金属塩、ジメタクリル酸金属塩、またはモノメタクリル酸金属塩とを含みうる。所望ならば、センターの特性をさらに改変するために、ポリブタジエンを、天然ゴム、スチレンブタジエン、および/またはイソプレンなどの当技術分野において公知の他のエラストマーと混合することもできる。エラストマーの混合物を使用する際、センター組成物中の他の構成要素の量は通常、100重量部とした全エラストマー混合物に基づく。
ジアクリル酸金属塩、ジメタクリル酸金属塩、およびモノメタクリル酸金属塩には、非限定的に、該金属がマグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、ナトリウム、リチウムまたはニッケルであるものが含まれる。例えばジアクリル酸亜鉛は、米国ゴルフ協会(「USGA」)試験において大きな初速を有するゴルフボールを提供する。
ジアクリル酸金属塩、ジメタクリル酸金属塩、またはモノメタクリル酸金属塩とポリブタジエンとの架橋を促進するためにフリーラジカル開始剤を使用することが多い。適切なフリーラジカル開始剤には、過酸化物化合物、例えばジクミルペルオキシド;1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;ビス(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;2,5-ジメチル-2,5ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン;またはジ-t-ブチルペルオキシド;およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。100%活性における開始剤は、ブタジエンゴム、または一種または複数種の他のエラストマーと混合したブタジエンゴム100部に基づいて、約0.05〜約2.5pphの範囲の量で添加されうる。添加される開始剤の量は、約0.15〜約2pphの範囲であることが多く、約0.25〜約1.5pphの範囲であることがさらに多い。ゴルフボールセンターは、コアの成形プロセスの際にポリブタジエンと架橋するジアクリル酸亜鉛-過酸化物硬化系に、5〜50pphの酸化亜鉛(ZnO)を組み入れてもよい。
センター組成物はまた、センターの密度および/または比重を調整するためにエラストマー組成物に添加される、充填剤も含みうる。充填剤の非限定例には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、およびリグラインド、例えば約30メッシュの粒径に粉砕されたリサイクルコア成形用マトリックスが含まれる。利用される充填剤の量および種類は、USGAによって最大ゴルフボール重量が1.620ozと確立されていることを踏まえ、組成物中の他の成分の量および重量によって決定される。充填剤は通常、約2.0〜約5.6の範囲の比重である。センターの比重が低下するようにセンター中の充填剤の量をより少なくしてもよい。
センターの比重は、センター、カバー、中間層およびボール完成品の大きさ、ならびにカバーおよび中間層の比重等の要素に依存して、例えば約0.9〜約1.3の範囲であってもよい。
促進剤、例えばテトラメチルチウラム、加工助剤、加工オイル、可塑剤、染料および顔料、酸化防止剤、ならびに当業者に周知の他の添加剤などの他の成分もまた、それらが通常使用される目的を達成するのに十分な量で、使用されうる。
中間層
ゴルフボールはまた、例えば、動的加硫された熱可塑性エラストマー、官能化スチレン-ブタジエンエラストマー、熱可塑性ゴム、熱硬化性エラストマー、熱可塑性ウレタン、TPE、メタロセンポリマー、熱硬化性ウレタン、アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物から形成される、一つまたは複数の中間層を有してもよい。例えば中間層は、熱可塑性または熱硬化性のポリウレタンを含んでもよい。市販の動的加硫された熱可塑性エラストマーの非限定例には、SANTOPRENE(登録商標)、SARLINK(登録商標)、VYRAM(登録商標)、DYTRON(登録商標)、およびVISTAFLEX(登録商標)が含まれる。SANTOPRENE(登録商標)は、動的加硫されたPP/EPDMである。官能化スチレン-ブタジエンエラストマー、すなわち無水マレイン酸またはスルホン酸などの官能基を有するスチレン-ブタジエンエラストマーの例には、テキサス州ヒューストンのShell Corporationから入手可能なKRATON FG-1901xおよびFG-1921xが含まれる。
適切な熱可塑性ポリウレタンの非限定例には、オハイオ州クリーブランドのLubrizol Companyから市販されている、ESTANE(登録商標)58133、ESTANE(登録商標)58134およびESTANE(登録商標)58144が含まれる。
メタロセンポリマー、すなわちメタロセン触媒を用いて形成されたポリマーの例には、マサチューセッツ州ハイアニスのSentinel Productsから市販されているものが含まれる。適切な熱可塑性ポリエステルには、ポリブチレンテレフタレートが含まれる。熱可塑性アイオノマー樹脂は、モノオレフィンのポリマーに対して、3〜12個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸または不飽和ジカルボン酸およびこれらのエステルからなる群より選択される少なくとも一つの物質による、交差金属結合(cross metallic bond)を与えることによって得ることができる(このポリマーは、1〜50重量%の不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸および/またはこれらのエステルを含有する)。より詳細には、酸含有エチレンコポリマーアイオノマーなどの低弾性率アイオノマーには、E/X/Yコポリマー(ここでEはエチレンであり、Xは軟化コモノマー、例えばアクリレートまたはメタクリレートである)が含まれる。アイオノマー樹脂の非限定例には、それぞれDuPontおよびExxon-Mobilから市販されているSURLYN(登録商標)およびLOTEK(登録商標)が含まれる。
あるいは、中間層は、第1および第2の成分の混合物であってもよく、ここで第1の成分は、動的加硫された熱可塑性エラストマー、官能化スチレン-ブタジエンエラストマー、熱可塑性もしくは熱硬化性のポリウレタン、またはメタロセンポリマーであり、第2の成分は、熱可塑性もしくは熱硬化性のポリウレタン、熱可塑性ポリエーテルエステルもしくはポリエーテルアミド、熱可塑性アイオノマー樹脂、熱可塑性ポリエステル、別の動的加硫されたエラストマー、別の官能化スチレン-ブタジエンエラストマー、別のメタロセンポリマー、またはこれらの混合物などの材料である。第1および第2の成分の少なくとも一方が、熱可塑性または熱硬化性のポリウレタンを含みうる。
中間層はまた、エチレンメタクリル酸/アクリル酸コポリマーを含有する混合物から形成されてもよい。酸含有エチレンコポリマーの非限定例には、エチレン/アクリル酸;エチレン/メタクリル酸;エチレン/アクリル酸/n-ブチルアクリレートまたはイソブチルアクリレート;エチレン/メタクリル酸/n-ブチルアクリレートまたはイソブチルアクリレート;エチレン/アクリル酸/メチルアクリレート;エチレン/メタクリル酸/メチルアクリレート;エチレン/アクリル酸/イソボルニルアクリレートまたはメタクリレート、およびエチレン/メタクリル酸/イソボルニルアクリレートまたはメタクリレートが含まれる。市販のエチレンメタクリル酸/アクリル酸コポリマーの例には、DuPontから入手可能なNUCREL(登録商標)ポリマーが含まれる。
あるいは、中間層は、エチレンメタクリル酸/アクリル酸コポリマーと熱可塑性材料を含む第2の成分とを含む、混合物から形成されてもよい。中間混合物に使用するのに適した熱可塑性材料としては、ポリエステルエステルブロックコポリマー、ポリエーテルエステルブロックコポリマー、ポリエーテルアミドブロックコポリマー、アイオノマー樹脂、動的加硫された熱可塑性エラストマー、無水マレイン酸もしくはスルホン酸などの官能基が結合したスチレン-ブタジエンエラストマー、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエステル、メタロセンポリマー、および/またはこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
中間層は、約0.8以上の比重を有する場合が多い。一部の例では、中間層は、1.0超の、例えば約1.2〜約1.3の範囲の比重を有する。中間層の比重は、例えば、硫酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化チタンおよびこれらの組み合わせなどの充填剤を添加することによって調整されうる。
中間層混合物は、約10,000psi未満、多くの場合約5,000〜約8,000psiの曲げ弾性率を有してもよい。中間層は、約35〜50のショアD硬度を有することが多い。中間層およびコア構成は一緒になって、約65未満、多くの場合約50〜約65の圧縮を有してもよい。通常、中間層は、約0.020インチ〜約0.125インチの厚さを有する。
ゴルフボールは、単一の中間層または複数の中間層を含んでもよい。ボールが複数の中間層を含む場合、第1の中間層は、例えばコアの硬度を上回る硬度を有する熱可塑性材料を含んでもよい。第2の中間層は、第1の中間層の周りに配置されてもよく、第1の中間層を上回る硬度を有してもよい。第2の中間層は、これらに限定されないが、ポリエーテルまたはポリエステル熱可塑性ウレタン、熱硬化性ウレタン、およびアイオノマー、例えば酸含有エチレンコポリマーアイオノマーなどの材料で形成されてもよい。
さらに、第3の中間層を、第1と第2の中間層の間に配置してもよい。第3の中間層は、上述のような種々の材料から形成されてもよい。例えば第3の中間層は、第1の中間層を上回る硬度を有してもよい。さらなる中間層が存在してもよい。
カバー層
ゴルフボールは通常、熱可塑性または熱硬化性の材料の層を一つまたは複数含む、カバー層も有する。アイオノマー樹脂、ポリウレタン、バラタおよびこれらの混合物などの種々の材料を使用してもよい。本明細書において記載されるように、カバー層における少なくとも一つの層は、架橋性で熱可塑性のポリウレタン(TPU)を含む。架橋性で熱可塑性のポリウレタンは、最初は熱可塑性であり、この状態のまま、繰り返し溶融および固化されうる。架橋は、一般に硬度を増大させかつ、以下でより完全に記載されるように、カバーに所望の特性を付与しそれによってゴルフボールに性能特徴を付与するように、制御されうる。
ポリウレタンは典型的には、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることによって形成される。一部の場合、ポリイソシアネートは、ポリエーテルまたはポリエステルとポリイソシアネートとの間の反応によって形成されたポリウレタンプレポリマーの形態である。ジフェニルメタンジイソシアネートモノマー(MDI)およびその誘導体ならびにトルエンジイソシアネート(TDI)およびその誘導体という2種類のポリイソシアネートが、ポリウレタンを製造するために優先的に使用される。
MDIは、最も広く使用されているポリイソシアネートである。硬質および軟質両方のフォーム、反応射出成形品、エラストマー、コーティング、および注入成形化合物が、MDIから製造される。MDIには、3つの基本的な等級であるポリメリックMDI、純MDI、および純MDI誘導体がある。純MDIは、ポリメリックMDIより産生されるものであり、低溶融温度(約100°F)の固体である。これは主に、熱可塑性のキャストエラストマーにおいて使用される。これはまた、繊維の引張強さおよび伸び率を大きくするために合成繊維用の添加剤として使用される。
純MDI誘導体は、特定の加工特徴および反応特徴を与えるよう適応させてもよい。これらの無溶媒液体は反応射出成形(RIM)において主に使用されるが、一体型表層成形物、半軟質成形物、および成形エラストマーにおける用途も見出される。トルエンジイソシアネートすなわちTDIは、軟質フォームを製造するために主に使用され、かつエラストマー、シーラント、およびコーティングにおいても使用される。TDIは一般に、MDIよりもずっと高いイソシアネート(-NCO)含量および低い分子量を有する、無色透明の液体である。またMDIおよびTDIを、特に軟質成形フォームを製造するために、混合してもよい。この確立されていない褐色液体混合物は通常、TDIとほぼ同程度に高いイソシアネート含量を有する。
ポリウレタン系で使用されるポリオールには、ポリエステル系およびポリエーテル系という2つの主要な種類がある。ポリオールは、通常、それらの官能性によって同定される。官能性は、架橋を制御する反応部位の数に関連する。架橋性であればある(官能性が高い)ほど、ポリウレタンはより剛性になる。官能性は、ポリオールを製造するために使用される開始剤によって制御される。例えばグリセリンは一般に、トリオール(三官能性)ポリオールを開始するために使用される。プロピレンオキシド、エチレンオキシド、またはこれらの組み合わせなどのオキシドは、ポリオールの分子鎖を伸ばしかつ最終的な加工特徴および性能特徴を調整するために開始剤に添加されることが多い。トリオールは軟質フォームを製造するために使用されることが多いが、ジオールは一般に、エラストマー、コーティング、およびシーラント用に使用される。テトラオールは通常、硬質フォーム用に使用される。
ポリエーテル系ポリオールは加水分解に対して大きな抵抗性を有する。ポリエーテルポリオールは、例えばアクリロニトリル/スチレンモノマーのインサイチュー重合によって改変されうる。得られるグラフトポリオールは一般に、向上した耐荷重特性ならびにより大きな引張強度および引裂強度を有する、軟質フォームを生じる。これらのビニルモノマーがグラフトした骨格に応じて、広範囲の性能特徴を発現できる。
ポリエステルポリオールは一般に、ポリエーテルポリウレタンより大きな強度特性、耐摩耗性、および熱安定性を有するポリウレタンを生じ、それらはより大きなエネルギーを吸収できる。ポリエステルポリオールは通常、分子量によって分類される。低分子量ポリオール(例えば1500未満)はコーティング、注入成形化合物、および硬質フォームに使用される。中程度の分子量のポリオール(例えば1550〜2500)は、エラストマーに使用されることが多い。高分子量ポリオール(例えば2500を超える)は通常、軟質フォームに使用される。
従来のTPUは容易に架橋しないが、化学的性質を調整することによって、および/または共助剤の添加により、TPUを架橋性にすることができる。例えばその開示が全体として参照により本明細書に組み入れられるLimerkens et al.U.S.2009/0197000A1を参照のこと。市販の架橋性TPUの非限定例には、BASFから入手可能なポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンであるElastollan(商標)1100が含まれ、それは優れた低温特性および加水分解抵抗性を示す。これらの製品は、射出成形および吹込み成形および押出し成形が可能である。一部の等級は、射出成形に好適である。適切な共助剤と混合する場合、Elastollan(商標)は、放射線照射を用いて架橋できる。Urepan(商標)などの他の市販のTPUは、適切な共助剤、例えばPetroflexから入手可能なヒドロキシル末端処理されたポリブタジエンであるLiquiflex(商標)と組み合わせる場合に使用できる。
一般に、熱可塑性ポリウレタンは成形中に架橋しないが、適切な供給源からエネルギーを印可することによって成形後に架橋されうる。過酸化物開始反応および放射線照射を含むフリーラジカル開始反応によってポリマー内の架橋を誘発するための多数の方法が知られている。一部の例では、TPUは放射線照射によって、例えばガンマ線または紫外線(UV)の照射によって、架橋される。他の形態の粒子放射線、例えば電子線も使用できる。放射線照射の種類は、下層の組成物などの要素に基づいて選択されてもよい。例えば特定の種類の放射線照射は、糸巻きゴルフボールの糸巻きを劣化させる場合がある。一方固体コアを有するボールは、同様の懸念の対象とならない。ある種の放射線照射は、コアを架橋する(およびそれによって硬化させる)傾向を有し得る。適切な放射線照射源は、こうした効果が望ましいかどうかによって選択されてもよい。
光開始剤は通常、光エネルギー、例えば紫外線によって架橋を促進するために添加される。UV開始剤の非限定例には、ケトン、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(HHPMP)、および(ビス)アシルホスフィンオキシド、例えばビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスホンオキシド(BTPPO)が含まれる。光開始剤の量は典型的に、組成物の約0.1〜約4重量%、より通常は約0.2〜約2重量%の範囲である。
カバーはまた、架橋性で熱可塑性のポリウレタンに加えて他の成分を含有してもよい。例えば、カバーの一つまたは複数の層は、弾性率の非常に低いアイオノマー(VLMI)を含む組成物で形成されてもよい。本明細書において使用される場合、「弾性率の非常に低いアイオノマー」という用語は、ポリマー中に約10重量%〜約50重量%で存在する、一般に(メタ)アクリレートエステルである軟化コモノマーXをさらに含む、アイオノマー樹脂を指す。VLMIは、エチレンなどのα-オレフィン、n-ブチルアクリレートまたはイソブチルアクリレートなどの軟化剤、および、アクリル酸またはメタクリル酸などのα,β-不飽和カルボン酸のコポリマーであり、ここで酸基の少なくとも一部がマグネシウムカチオンまたは他のカチオンによって中和されている。軟化コモノマーの他の例には、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、およびメチルメタクリレートが含まれる。一般にVLMIは、約2,000psi〜約10,000psiの曲げ弾性率を有する。VLMIは「軟質」アイオノマーと称されることがある。
アイオノマー、例えば酸含有エチレンコポリマーアイオノマーにはE/X/Yコポリマーが含まれるが、ここでEはエチレンであり、Xは、ポリマーの0〜50重量%で存在する軟化コモノマー、例えばアクリレートまたはメタクリレートであり、Yは、ポリマーの5〜35(多くの場合10〜20)重量%で存在するアクリル酸またはメタクリル酸であり、ここで酸部分は、カチオン、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、鉛、スズ、亜鉛もしくはアルミニウム、またはこのようなカチオンの組み合わせ(リチウム、ナトリウムおよび亜鉛が最も好ましい)によって1〜90%(通常は少なくとも40%)中和されて、アイオノマーを形成する。特定の酸含有エチレンコポリマーとしては、エチレン/アクリル酸、エチレン/メタクリル酸、エチレン/アクリル酸/n-ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/n-ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/イソブチルアクリレート、エチレン/アクリル酸/イソブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/n-ブチルメタクリレート、エチレン/アクリル酸/メチルメタクリレート、エチレン/アクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルメタクリレート、およびエチレン/アクリル酸/n-ブチルメタクリレートが含まれる。
カバー原料の加工を補助するため、アイオノマー樹脂を、所望の特徴を有するカバーを得るために混合してもよい。この理由から、カバーは、2つ以上のアイオノマー樹脂の混合物から形成されてもよい。混合物は、例えば非常に柔らかい材料およびより硬いの材料を含んでもよい。カバー原料の所望の特徴を得るために、異なるメルトフローインデックスを有するアイオノマー樹脂が使用されることが多い。SURLYN(登録商標)8118、7930および7940は、それぞれ約1.4、1.8、および2.6g/10minのメルトフローインデックスを有する。SURLYN(登録商標)8269およびSURLYN(登録商標)8265はそれぞれ、約0.9g/10minのメルトフローインデックスを有する。アイオノマー樹脂の混合物は、例えば約1〜約3g/10minのメルトフローインデックスを有するカバーを形成するために使用されてもよい。カバー層は、例えば約45〜約70の範囲のショアD硬度を有してもよい。
別の例として、熱硬化性キャストポリウレタンを使用してもよい。熱硬化性キャストポリウレタンは一般に、ジイソシアネート、例えば2,4-トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンビス-(4-シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、またはパラフェニレンジイソシアネート(「PPDI」)、および、メチレンジアミン(MDA)などのポリアミンで硬化するポリオール、またはトリメチロールプロパンなどの三官能性グリコール、またはN,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンなどの四官能性グリコールを用いて調製される。他の適切な熱硬化性材料としては、熱硬化性ウレタンアイオノマーおよび熱硬化性ウレタンエポキシ樹脂が含まれるが、これらに限定されない。熱硬化性材料の他の例には、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン、およびスチレン-プロピレン-ジエンゴムが含まれる。
カバーが複数層、例えば内側カバー層および外側カバー層を含む場合、種々の構成および材料が好適である。例えば内側カバー層で中間層を囲み、外側カバー層をその上に配置することができ、または、内側カバー層で複数の中間層を囲むことができる。内側および外側カバー層の構成を用いる場合、外側カバー層材料は、上述のような注入成形可能な(castable)反応性液体材料およびその反応生成物の少なくとも一つを含む熱硬化性材料であってもよく、約30ショアD〜約60ショアDの硬度を有してもよい。
内側カバー層は、硬質(例えば約65ショアD以上)で高い曲げ弾性率を有する広範な弾性材料から形成されてもよく、これはゴルフボールの隣接層に使用される他の材料と適合性である。内側カバー層材料は、約65,000psi以上の曲げ弾性率を有してもよい。適切な内側カバー層材料は、硬質で曲げ弾性率の高いアイオノマー樹脂およびそれらの混合物を含み、これは、モノオレフィンのポリマーに対して3〜12個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸または不飽和ジカルボン酸およびこれらのエステルからなる群より選択される少なくとも一つとの交差金属結合を与えることによって得られうる(このポリマーは、1〜50重量%の不飽和モノカルボン酸もしくは不飽和ジカルボン酸および/またはこれらのエステルを含有する)。より詳細には、こうした酸含有エチレンコポリマーアイオノマー成分は、E/X/Yコポリマーを含み、ここでEはエチレンであり、Xは、ポリマーの0〜50重量%で存在する軟化コモノマー、例えばアクリレートまたはメタクリレートであり、Yは、ポリマーの5〜35重量%で存在するアクリル酸またはメタクリル酸であり、ここで酸部分は、カチオン、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、鉛、スズ、亜鉛、もしくはアルミニウム、またはそのようなカチオンの組み合わせによって約1〜90%中和されて、アイオノマーを形成する。特定の酸含有エチレンコポリマーの例には、エチレン/アクリル酸、エチレン/メタクリル酸、エチレン/アクリル酸/n-ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/n-ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/イソブチルアクリレート、エチレン/アクリル酸/イソブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/n-ブチルメタクリレート、エチレン/アクリル酸/メチルメタクリレート、エチレン/アクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルメタクリレート、およびエチレン/アクリル酸/n-ブチルメタクリレートが含まれる。
存在してもよい他の適切な内側カバー材料の非限定例には、熱可塑性または熱硬化性のポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、またはポリエステル、動的加硫されたエラストマー、官能化スチレン-ブタジエンエラストマー、メタロセンポリマー、ポリアミド、例えばナイロン、アクリロニトリルブタジエン-スチレン-コポリマー(ABS)、およびこれらの混合物が含まれる。
架橋性TPUは、任意の適切なエネルギー源、例えば市販のUV線源を用いて照射されてもよい。ゴルフボールの球状形状のため、三次元表面に紫外線を適用できる装置を用いるのが望ましい。放射線レベルは、カバーの所望の最終特徴に従って選択されてもよい。一般に、放射線レベルが高ければ高いほどかつ/または曝露時間が長ければ長いほど、架橋の程度が高くなるが(例えば硬度が増大)、放射線レベルが低ければ低いほどかつ/またはより曝露時間が短ければ短いほど、架橋の程度が低くなる(例えば硬度が低下し、弾性が高くなる)。線量レベルは、広範囲にわたって変動しうるが、例として約1〜約14Mrad、より通常は約2〜約12Mradの範囲であることが多い。一般に、エネルギー量(およびすなわち架橋の程度)は、バルブの種類、曝露時間、フィルタ処理、および曝露距離の一つまたは複数を調整することによって制御されてもよい。
カバー層の組成物および放射線レベルを、所望の硬度、例えば約45〜約75、多くの場合約50〜約70ショアD硬度を与えるように選択してもよい。概して、架橋は一般に、カバーのショアD硬度を、架橋前の硬度に比べて1〜5単位増大させる。
トップコート
ゴルフボールの外側表面には通常、少なくとも一種の透明または着色ベースコートプライマーを塗り、続いて透明トップコートを少なくとも1回塗布する。透明トップコートは、カバー材料の保護、ボールの飛びの空気力学の改善、黄変の予防、および/またはボールの美観の改善などの種々な機能を果たし得る。
ある一般的なトップコートは、ゴルフボールの外側に適用される溶媒保持(solvent borne)2成分ポリウレタンを利用する。このトップコート製剤は一般に、環境問題および健康問題をもたらす揮発性有機化合物(VOC)の多量の供給源である溶媒の使用を必要とする。紫外線(UV)硬化性コーティングは一般に、溶媒を必要としない。同一出願人が所有する同時係属中の米国特許出願第12/470,820号に記載されるように、トップコートは、窒素または窒素富化空気を送達するシステムを用いて適用されうる。この係属中の米国特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
トップコートの非限定例には、熱可塑性物質、熱可塑性エラストマー、例えばポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、例えば最大約15%の酸を含有する、酸度の低い(low acid)熱可塑性アイオノマー、およびUV硬化系が含まれる。任意でさらなる添加剤、例えば流動添加剤、傷/スリップ(war/slip)添加剤、接着促進剤、増粘剤、光沢低減剤、軟化剤、架橋添加剤、イソシアネート、もしくは強靭化または引掻耐性を生じる他の剤、光学光沢剤、UV吸収剤などを、コーティング材料に組み入れてもよい。こうした添加剤の量は、通常0〜約5重量%、多くの場合0〜約1.5重量%の範囲である。トップコートの厚さは通常、約5〜約25μm、一部の例では、約10〜約15μmの範囲である。
以下に記載するように、UV硬化性トップコートが適用される一部の例では、カバー組成物中およびUV硬化性トップコート中の架橋性TPUを、単一工程にてTPUが架橋されかつトップコートが硬化されるように、同時に紫外線に曝露してもよい。
製造プロセス
ゴルフボールは、種々の技術、例えば射出成形、圧縮成形、引き込み式ピン射出成形、真空形成、反応射出成形、液体射出成形、フローコーティングなどを用いて形成されうる。ゴルフボールを製造するためのある一般的な技術とは、積層プロセスである。センターの周りに多層を形成するために積層体が最初に形成される。積層体は、少なくとも2つの層を含み、3つの層を含む場合がある。各層について使用するべき未硬化コア材料を混合し、該材料をカレンダー圧延して薄いシートにすることによって、積層体が形成されうる。または、未硬化中間層材料を混合し、該材料を圧延してシートにすることによって積層体を形成してもよい。積層体シートを一緒に積み重ね、カレンダー圧延機を用いて3つの層を有する積層体を形成できる。または、シートは押出成形によって形成されてもよい。
積層体はまた、各材料層の間に接着剤を用いて形成してもよい。例えば、エポキシ樹脂を接着剤として使用してもよい。接着剤は、良好な剪断強度および引張強度、例えば約1500psiを超える引張強度を有するべきである。接着剤は、硬化時に約60未満のショアD硬度を有することが多い。シートに適用される接着剤層は非常に薄く、例えば厚さ約0.004インチ未満にすべきである。
好ましくは、各積層体シートは、ゴルフボール完成品における層の厚さをわずかに上回る厚さに形成される。これらの厚さは異なっていてもよいが、通常はすべて約0.1インチ未満の厚さを有する。シートは非常に均一な厚さを有するべきである。
本方法における次の工程は、センターの周りに多層を形成させることである。これは、金型の上型と下型との間に2つの積層体を配置することによって達成されうる。積層体は、金型半型中でキャビティを形成してもよい。次いで積層体は、結合したときにセンターの周りに積層体層が形成されるようなパターンに切断されうる。例えば、積層体を切断して、野球ボールまたはテニスボールのカバーと同様に、数字の8形状またはバーベル様のパターンにしてもよい。他のパターン、例えば湾曲三角形、半球状のカップ形、楕円形、または、センターの周りに積層体層を形成するために一緒に結合することができる他のパターンを使用してもよい。次いでパターンを金型間に配置し、金型半型中でキャビティを形成させてもよい。層の厚さの均一性が維持されるように、真空源を使用して、積層体を金型キャビティへと形成させることが多い。
積層体をキャビティへと形成した後、次いでセンターを、積層体間に挿入する。次に積層体は、当技術分野で周知の温度および圧力の条件下でセンターの周りに圧縮成形される。金型半型は通常、圧縮成形プロセスの際に積層体から過剰な層材料を流出させるための孔を有する。圧縮成形の代替として、コアおよび/または中間層は、射出成形または他の適切な技術によって形成されてもよい。
次の工程は、ゴルフボールコアの周りにカバーを形成することを含む。センターおよび中間層を含むコアは、一対のカバー金型半型の内部で複数の引き込み式ピンによって支持されてもよい。引き込み式ピンは、当業者に公知の従来手段によって作動させうる。
コアを支持するピンと共に金型半型を閉じた後、複数の射出ポートまたはゲート、例えば縁部ゲートまたはサブゲートを通して、カバー材料を液体状態で金型内に射出する。縁部ゲートにより、得られるゴルフボールはすべて相互連結しており、大きなマトリックスとして一緒に金型半型から取り出すことができる。サブゲーティング(sub-gating)により、金型半型からゴルフボールを取り出している間にゴルフボールから金型ランナーが自動的に分離される。
所定量のカバー材料を金型半型内に射出して、コアを実質的に囲んだ後、引き込み式ピンを引っ込めることができる。コアと金型半型との間の同心性を維持しながら液体カバー材料を流動させて、コアと金型半型との間のキャビティを実質的に満たす。次いでカバー材料をコアの周りで固化させ、ゴルフボールを金型半型から取り出して、トップコーティング、塗装、および/または、以下でより詳細に記載されるような本発明の実施例に従うプロセスを含むその他の仕上げプロセスを含む、仕上げプロセスに供する。
B.本発明の特定実施例
図2を参照して、カバー層に架橋性TPUを有するゴルフボールを、ゴルフボール予備成形品を形成するために上に記載した技術に従って成形し、次いで金型から取り出してもよい。ゴルフボール予備成形品は、望ましいならばしばらくの間保管してもよい。予備成形品(未架橋ゴルフボール)の貯蔵寿命は、種々の層の組成、加工条件などに応じて変動し得る。大抵の場合、未架橋ゴルフボールは、約1年間以上まで有害な影響なく保管できる。保管中に光および/または高温への曝露が最小限となるように予防措置をとるべきである場合もある。ゴルフボールに関して目標とする特徴が特定されたら、上記ゴルフボールをエネルギー源、例えば上に記載したようなUV照射に供し、ゴルフボールに関する所望の特性および性能特徴を達成できる。任意で、その時点で、特性および性能特徴を特定するために、公知の技術を用いてゴルフボールに印を施してもよい。例えば、カバー層を架橋させた後に、対応するモデル記号をゴルフボールに取り付けてもよい。
カバー層内のTPUを成形後架橋することにより、多数の利点が提供される。例えば、図3に概略的に示すように、ゴルフボールを、本部製造所にてまず成形し、次いで地域供給業者、卸売業者、またはさらに場合によってはさらに下流の流通チェーンまで、例えば小売業者または消費者まで流通させてもよい。次いでゴルフボールは、しばらくの間(例えば少なくとも1日、1週間、1カ月間、2〜10カ月間、1年間、またはそれ以上)、ゴルフボールに関する特定の性能特徴(例えば距離、スピン、硬度など)に対する要求がその地域または場所で評価され得るまで、保管されうる。その後、供給業者、卸売業者、小売業者、消費者などはゴルフボールにエネルギー源、例えば上述の市販のUVエネルギー源を、前述の条件下で照射して、TPUを選択的に架橋させ、所望の特性および性能特徴を達成してもよい。このことは、ゴルフボールの特定の特徴についての好みまたは要求における変化に早急に適合できるという利点を提供するものである。
場合によっては、(未架橋)ゴルフボール予備成形品を、照射工程の前に第三者に出荷してもよい。例えば、供給業者、販売業者などが、照射工程を行う第三者に予備成形品を出荷してもよい。一部の例では、ゴルフボール予備成形品を、照射前に(例えば、2、3、または4個のボールをスリーブに、および/あるいは12、15、18または24個のボールを箱に)包装してもよい。該ゴルフボール予備成形品は、下流事業体(例えば地域の小売業者、卸売業者、小売業者、最終的な消費者など)によって開封され、その後、消費者が望む特性を得るために照射されてもよい。任意で、ボールは、照射工程後に再包装してもよい。照射工程によってゴルフボールに付与された特性に従ってゴルフボールおよび/または包装材料に印を施してもよい。
別の局面において、放射線照射を使用して、カバー層内の架橋性TPUに加えてゴルフボールの一つまたは複数の他の成分を同時に処理してもよい。例えば、図4に概略的に示すように、ゴルフボールを、カバー層内に架橋性TPUを有しかつUV硬化性トップコートを有するように調製してもよい。適切な条件下でゴルフボールを紫外線に曝露することは、カバー層内のTPUの架橋、ならびにUV硬化性トップコートの硬化に影響を与え得る。ゴルフボールの他の成分、例えばコアおよび/または中間層に、放射線源によって影響を受ける材料を含めてもよい。例えば、コアに使用される一部の材料は、紫外線に曝露されると硬化し得る。
本発明を、本発明の現在好ましい実施様式を含む特定の実施例によって詳細に記載したが、当業者は、上述のシステムおよび方法において多数の改変および置換を行い得ることを理解するであろう。したがって、本発明の精神および範囲は、添付の特許請求の範囲に示される程度に広く解釈されるべきである。
10:ゴルフボール
12:コア
14:中間層
16:カバー
18:ディンプル
20:トップコート

Claims (7)

  1. コア層を供給する工程;
    少なくとも一つの架橋性で熱可塑性のポリウレタンおよびUV開始剤を含むカバー層を供給する工程;
    該カバー層および該コア層を成形して金型中にゴルフボール予備成形品を形成する工程;
    該ゴルフボール予備成形品を該金型から取り出す工程;
    紫外線硬化性トップコート組成物を該ゴルフボール予備成形品に適用する工程;ならびに
    該架橋性で熱可塑性のポリウレタンを架橋させかつ該トップコート組成物を硬化させるのに十分な条件下で、該ゴルフボール予備成形品に紫外線を照射する工程
    を含む、マルチピースゴルフボールを調製する方法。
  2. コア層とカバー層との間に少なくとも一つの中間層を適用する工程をさらに含む、請求項記載の方法。
  3. 少なくとも一つの中間層が、一種または複数種の動的加硫された熱可塑性エラストマー、官能化スチレン−ブタジエンエラストマー、熱可塑性ゴム、熱硬化性エラストマー、熱可塑性ウレタン、メタロセンポリマー、熱硬化性ウレタン、アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物を含む、請求項記載の方法。
  4. カバー層が、アイオノマー、熱可塑性物質、エラストマー、ウレタン、バラタ、ポリブタジエン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される物質をさらに含む、請求項記載の方法。
  5. コア層が、ポリブタジエンおよび約20〜50部のジアクリル酸金属塩、ジメタクリル酸金属塩、またはモノメタクリル酸金属塩を含むベース組成物から形成される、請求項記載の方法。
  6. ベース組成物が、天然ゴム、スチレンブタジエン、イソプレン、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項記載の方法。
  7. UV開始剤が、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(HHPMP)、およびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスホンオキシド(BTPPO)からなる群より選択される、請求項記載の方法。
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