ところが、上記の医薬品を収容した収容容器は、たとえ上記の包装箱に入れられ、かつ、その包装箱が複数個まとめて例えば段ボール箱に収納されたとしても、トラック等による輸送過程において振動や衝撃が底から伝わることになる。この場合、収容容器内に詰め込まれた詰め物によって錠剤等が内部で飛び跳ねる等の動きは規制されていても、特に衝撃力が収容容器の底を通して内部の錠剤等に直に伝わるおそれがある。より詳しく見ると、衝撃を受けた際にその慣性に基づき錠剤等が上方へ飛び跳ねようとしても、その動きは詰め物により緩衝されることになるものの、その反動で錠剤等が下方に落下するときには収容容器の内部底面に対し直に衝突することになる。また、輸送中の横揺れによって、容器同士が接触し、損傷することもある。かかる落下等の動きの量自体は微小であっても、衝撃の慣性力がほぼ直に伝わるおそれがある。このため、錠剤等の収容物を輸送等の過程において衝撃等から十分に保護する上で、その収容容器を衝撃が作用したとしてもその衝撃を吸収して衝撃伝達を遮断した状態に保ち得る緩衝包装体の開発が要請されている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被包装物である収容容器に向けて作用する衝撃を吸収して衝撃伝達を確実に遮断した状態に保ち得る緩衝包装体及び緩衝包装構造を提供することにある。
上記目的を達成するために、第1の発明では、被包装物の外表面を覆うように、筒状の伸縮性のある素材を用いて形成された緩衝包装体を対象として、上記被包装物の底部を覆う底部緩衝部を備えることとする。そして、上記底部緩衝部として、上記素材の一端側の開放端を外周側又は内周側に巻き込むことによりドーナッツ環状に形成されたものとする。
この第1の発明に含まれる特定事項の場合、上記の底部緩衝部の略弾性的な変形作用によって被包装物に対し上下方向に作用する衝撃が吸収されその衝撃力の伝達が遮断されるため、収容容器等の被包装物のみならずその被包装物内に収容された被収容物についても、輸送過程等における損傷発生のおそれを確実に回避して十分に保護することが可能になる。
さらに加えて、上記第1の発明では、上記包装部の外周側から被包装物の外側面を覆う側方緩衝部をさらに備えるようにし、上記側方緩衝部として、上記素材の他端側の開放端を外周側に折返して後、上記被包装物の外側面に対応する位置で外周側に巻き込んでドーナッツ環状に形成するようにした(請求項1)。この特定事項により、底部側からの衝撃伝達の遮断という緩衝機能に加えて、側方からの衝撃についても上記側方緩衝部によってその伝達を遮断することが可能になる。これにより、ほぼ全方位からの衝撃に対して緩衝機能を発揮させることが可能となり、被包装物の衝撃に起因する損傷発生のおそれをより一層確実に回避させることが可能になる。
上記の側方緩衝部を有する第1の発明の場合には、上記被包装物の頂部を覆う頂部緩衝部をさらに備えるようにしてもよく、この場合の頂部緩衝部としては、上記素材の他端側の開放端を外周側に折返した部分の頂部である頂部折返し部により構成すればよい(請求項2)。この場合には、被包装物の底部側からの衝撃、側方からの衝撃に加え、頂部側からの衝撃に対しても緩衝機能を確実に発揮させることが可能となり、被包装物の緩衝をより一層確実なものとすることが可能となる。
そして、以上のいずれか緩衝包装体においては、さらに、被包装物の底部を覆う底部緩衝部とともに、この底部緩衝部と連続して被包装物の外側面を包囲した状態に覆う包装部を備えるようにすることができる。この包装部として、上記底部緩衝部から他端側に延びる上記素材の胴筒部により構成し、この胴筒部を周方向に対する外力が作用していない自由状態で上記被包装物の外側面の周長よりも短い周長を有するように形成することができる(請求項3)。この場合、被包装物の外側面を包装部で覆った状態にすることにより、包装部は、この包装部を構成する素材の胴筒部が伸長しその引っ張り力を被包装物の外側面に作用させた状態になる。このため、底部緩衝部は、この底部緩衝部から連続して被包装物の外側面を包囲する包装部によって、被包装物の底部を覆った状態に確実に保持されることになる。そして、かかる状態の保持によって、被包装物の包装状態を、衝撃伝達が遮断された状態に確実に保ち得ることになる。
第2の発明では、被包装物の外表面を覆うように、筒状の伸縮性のある素材を用いて形成された緩衝包装体を対象として、上記被包装物の頂部を覆う頂部緩衝部を備えることとし、上記頂部緩衝部として、上記素材の他端側の開放端を外周側又は内周側に巻き込むことによりドーナッツ環状に形成されたものとする。
この第2の発明に含まれる特定事項の場合、上記の頂部緩衝部の略弾性的な変形作用によって、被包装物に対し上下方向に作用する衝撃、なかでも特に頂部側から作用する衝撃が吸収されその衝撃力の伝達が遮断されるため、収容容器等の被包装物のみならずその被包装物内に収容された被収容物についても、輸送過程等における損傷発生のおそれを確実に回避して十分に保護することが可能になる。
さらに加えて、上記第2の発明では、上記被包装物の外側面を覆う側方緩衝部をさらに備えるようにすることができる。そして、この場合の側方緩衝部として、上記素材の一端側の開放端を外周側に折返した後、上記被包装物の外側面に対応する位置で外周側に巻き込んでドーナッツ環状に形成することとした(請求項4)。この特定事項により、頂部側からの衝撃伝達の遮断という緩衝機能に加えて、側方からの衝撃についても上記側方緩衝部によってその伝達を遮断することが可能になる。これにより、ほぼ全方位からの衝撃に対して緩衝機能を発揮させることが可能となり、被包装物の衝撃に起因する損傷発生のおそれをより一層確実に回避させることが可能になる。
さらに、この側方緩衝部を追加した上に、その側方緩衝部と連続して被包装物の外側面を包囲した状態に覆う包装部を備えるようにすることもでき、この包装部として、上記頂部緩衝部から一端側に延びる上記素材の胴筒部により構成し、この胴筒部を周方向に対する外力が作用していない自由状態で上記被包装物の外側面の周長よりも短い周長を有するように形成することができる(請求項5)。この場合、頂部緩衝部及び側方緩衝部が、側方緩衝部から連続して被包装物の外側面を包囲する包装部によって、被包装物の頂部及び外側面を覆った状態に確実に保持されることになる。このため、かかる状態の保持によって、被包装物を、上記の如く頂部側から及び側方からそれぞれ作用する衝撃に対しそれらの伝達が遮断された包装状態に確実に維持することが可能になる。
以上の第1〜第2の各発明に属するいずれかの緩衝包装体における伸縮性のある素材としては、合成樹脂製のネット材を用いることができる(請求項6)。この場合には、以上のような緩衝機能を発揮する緩衝包装体が所定周長の筒状ネット材により構成されることになるため、被包装物の形状・サイズに応じて個別に固定的なサイズ・形状のものを予め形成しておく必要を排して、少々の形状・サイズが相違する被包装物であっても、同じ緩衝包装体を用いて緩衝包装体を構成することが可能になり、被包装物の緩衝のためのコストを低減化し得ることになる。
又、第3の発明では、被包装物に対し緩衝包装体を組み合わせた緩衝包装構造として、被包装物の外表面が、以上の請求項1〜請求項6のいずれかに記載の緩衝包装体によって覆われてなるものとした(請求項7)。このような緩衝包装構造の場合、被包装物と緩衝包装体との組み合わせにより、以上説明した如き緩衝包装体による作用が発揮されて外部からの衝撃伝達を確実に遮断し得る構造を実現させることが可能になる。
以上、説明したように、請求項1〜請求項3のいずれか又は請求項6の緩衝包装体によれば、底部緩衝部によって、被包装物に対し特に底部側から上下方向に作用する衝撃を吸収してその衝撃力の伝達を遮断することができ、これにより、収容容器等の被包装物のみならずその被包装物内に収容された被収容物についても、輸送過程等における損傷発生のおそれを確実に回避して十分に保護することができるようになる。そして、底部側からの衝撃伝達の遮断という緩衝機能に加えて、側方からの衝撃についても側方緩衝部によってその伝達を遮断することができるようになり、これにより、輸送過程における横揺れ等に起因する損傷発生のおそれを確実に回避して十分に保護することができるようになる。特に、請求項2によれば、底部側からの衝撃、側方からの衝撃に加え、頂部側からの衝撃に対しても頂部緩衝部によってその伝達を遮断することができ、それぞれ、衝撃に起因する被包装物の損傷発生のおそれをより一層確実に回避して、被包装物の緩衝をより一層確実なものとすることができるようになる。さらに、請求項3によれば、包装部によって、底部緩衝部及び/又は側方緩衝部及び/又は頂部緩衝部が被包装物の該当部位を覆った状態に確実に保持されるようになるため、被包装物を上記の衝撃伝達を遮断した状態に確実に維持することができるようになる。
請求項4〜請求項6のいずれかの緩衝包装体によれば、頂部緩衝部によって、被包装物に対し特に頂部側から上下方向に作用する衝撃を吸収してその衝撃力の伝達を遮断することができ、これにより、収容容器等の被包装物のみならずその被包装物内に収容された被収容物についても、輸送過程等における損傷発生のおそれを確実に回避して十分に保護することができるようになる。そして、側方緩衝部によって、側方からの衝撃伝達をも遮断することができるようになり、輸送過程における横揺れ等に起因する損傷発生のおそれを確実に回避して十分に保護することができるようになる。これにより、ほぼ全方位からの衝撃に対して緩衝機能を発揮させて、被包装物の衝撃に起因する損傷発生のおそれをより一層確実に回避させることができるようになる。さらに、請求項5によれば、包装部によって、頂部緩衝部等による緩衝機能を確実に保持させて被包装物を衝撃伝達が遮断された包装状態に確実に維持することができるようになる。
さらに、請求項6によれば、被包装物の形状・サイズに応じて個別に固定的なサイズ・形状の緩衝包装体を予め形成しておく必要を排して、少々の形状・サイズが相違する被包装物であっても、同じネット材及び同じ緩衝包装体を用いて緩衝包装体を構成することができ、これにより、被包装物の緩衝のためのコストの低減化を図ることができる。加えて、ネット材を用いることで、特に包装部を形成した場合には、被包装物の表面の印刷ラベル等を外から視認できる、摩耗に起因する印刷ラベルの表面損耗を招くこともない、被包装物と包装部との間に能書等を介装させて外部から視認し得るようにすることもできる、外箱に入れる場合にも外箱内表面又は被包装物との間の摩擦に起因する紙屑又は樹脂屑の付着を招くこともない、などの効果も併せて得ることができる。
そして、請求項7の緩衝包装構造によれば、被包装物と緩衝包装体との組み合わせにより、緩衝包装体による種々の効果が発揮されて外部からの衝撃伝達を確実に遮断し得る構造を実現させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<参考形態>
図1は、本発明の実施形態と共通する構成を備えて参考となる参考形態に係る緩衝包装体ないし緩衝包装構造を示し、同図中の符号2は被包装物である収容容器、3はこの収容容器2の外面を包み込む緩衝包装体である。本参考形態で例示する収容容器2は合成樹脂製の透明円筒状の容器本体21と、この容器本体21の口部にねじ込まれた蓋22とからなる。もちろん、上記容器本体21はガラス製であってもよい。図面では、収容容器2として内部が空の状態のものを示しているが、本来は、内部に錠剤等の収容物が収容され、上部の余剰空間に詰め物が充填されているものである。
上記緩衝包装体3は、筒状のネット材Nを用いて形成されたものであり、上記容器本体21の底部211を下から覆う底部緩衝部31と、容器本体21の外周面(外側面)及び蓋22を包囲して覆う筒状の包装部32とを一体に備えたものである。上記底部緩衝部31は後に詳細に説明するように上記の筒状のネット材Nの一側の開放端を外側に捲り上げ順次巻き込んで覆い返すことによりドーナッツ環状のクッション座部を形成したものであり、浮き輪又はタイヤのゴムチューブの如く上下方向からの圧縮力又は衝撃力に対し略弾性又は弾塑性に類似したクッション性を発揮するように構成されたものである。又、上記包装部32は、上記底部緩衝部31の最も外周側から連続して上方に立ち上がり容器本体21及び蓋22を外周側から包囲して蓋22の上側においてネット材Nの他側の開放端を溶着等の手段により閉止部321にしたものである。この包装体32は、上記の底部緩衝部31におけるネット材Nの巻き込みにより元々のネット材Nよりも拡径したことに伴い生じる径方向内方に向けての締め付け力、すなわち、網目を狭めて径を狭めようとする略弾性の締め付け力によって、上記容器本体21や蓋22の外周面に対し密着し、これにより、上記底部緩衝部31と容器本体21との相対位置関係を同軸上に保持して、容器2と緩衝包装体3とを互いに一体化するようになっている。
要するに、上記緩衝包装体3は、その底部緩衝部31によって、容器2に対し上下方向に作用する慣性力に基いて衝撃力が容器本体21の底部211に対し作用するのを緩衝する、つまり衝撃力を吸収して衝撃力の上記底部211への伝達を遮断し、同時に、包装部32によって、上記底部緩衝部31が容器本体21の底部211との相互位置関係を常に維持して上記の緩衝機能を常に発揮し得るように底部緩衝部31と容器本体21とを互いに一体的に保持しかつ容器2から緩衝包装体3が脱落しないように保持するように、衝撃の伝達遮断機能と、一体保持機能とを同時に果たすようになっている。
以下、図2及び図3を参照しつつ上記の緩衝包装体3の形成方法を説明することにより、緩衝包装体3を用いた緩衝包装体について詳細に説明する。なお、図2及び図3では、ネット材Nのネット(網)の断面線を図示の簡略の観点より太線にて表示している。
まず、合成樹脂を用いて形成した比較的細径の筒状のネット材Nを形成する(図2参照)。このネット材Nは、素材として例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニルアセテート、ポリエステル、又は、これらの発泡素材を用いて、従来周知の押出成形法により製造すればよい。網目nの形状は図例では六角形のものを用いているが、これに限らず、菱形もしくは三角形等種々のものを採用することができる。さらに、網目nを構成する線径は、後述の巻き込みや容器2への装着等の取り扱いの容易性、あるいは、底部緩衝部31のクッション性との関係であまり太径ではなくて細径(例えば0.5mm程度)に設定すればよい。もちろん、これらは被包装物の自重等に応じて定めればよく、被包装物が液体の薬剤等を収容した重量物であれば、それに応じて上記の線径等を増大させるようにすればよい。
次に、上記の筒状のネット材Nの一側(図2図の例では下側)の開放端41を外側に捲り上げ順次内側に巻き込んでいく。これを所定の巻き数(少なくとも二重巻き)になるまで繰り返して環状の巻回部42を形成する(以上、工程P1)。そして、他側(図例では上側)の開放端43を外側に折り返し、そのまま下方に引き下げて上記巻回部42に外周側から被せて下方に引き下ろす(以上、工程P2)。これにより、上記巻回部42が上記の底部緩衝部31を形成することになり、これから下方に引き下ろされた開放端43までの胴筒部44が包装部32として形成されることになる。そして、開放端43を絞ってまとめた状態で熱溶融させて溶着することにより閉止部321(図3参照)を形成しておく。なお、その際に、上記の底部緩衝部31からこの閉止部321までの間の包装部32の長さとして、被包装物の収容容器2の高さに対応する長さを確保しておく。以上で、大径の底部緩衝部31と、ネット材N本来の直径と同じ小径の包装部32とからなる、収容容器2に装着する前の状態の緩衝包装体3の形成(製作又は製造)が完了する。
なお、上記の底部緩衝部31の径サイズは被包装物の径サイズとの関係で定めればよい。すなわち、底部緩衝部31の内径が被包装物の外径よりも少なくとも小さくなるように定め、後述の収容容器2への装着により容器本体21の底部211が底部緩衝部31の上に載置することになるようにする。この底部緩衝部31の内径はネット材N本来の直径(線径が極細のため内径と外径とはほぼ同等であるため「直径」と表示)とほぼ同等か又は小径になっている。
又、上記の工程P1の巻回部42の形成は、所定の巻き込み装置を用いて自動化することができる。すなわち、上記の開放端41と接触しつつ上動しその開放端を丸め込むための所定の円弧状面を有する剛性部材と、この剛性部材の上動と連動して巻き込みを補助するための押圧ローラとを備えた巻き込み装置を用いれば、上記の工程P1を容易に自動化することができる。かかる巻き込み装置は本出願人らが特開2003−276754にて提案している。
そして、形成された緩衝包装体3を図3に示すように収容容器2に被せて装着させる(工程P3)。この段階の収容容器2は、被収容物が充填されて出荷準備が完了した状態、つまり、被収容物である錠剤等が容器本体21内に既に充填・収容され、併せて詰め物等が上部の余剰空間に入れられた状態で蓋22により閉蓋された状態にされている。図3では、収容容器2への装着前に既に閉止部321が形成されているため、蓋22を上にした状態の収容容器2に対し上から緩衝包装体3の底部緩衝部31の下側開口311を被せることにより、緩衝包装体3を装着する例を図示している。すなわち、上記の下側開口311を外周側に広げて内径を拡大させた状態の底部緩衝部31を蓋22に外周囲に被せ、その底部緩衝部31を広げた状態のまま容器本体21の底部211まで押し下げた後、その底部緩衝部31を離して縮径させる。
上記底部緩衝部31は筒状のネット材Nが多重に巻き込まれてドーナッツ環状に形成されているため、外周側に引っ張れば容易に広がって内径が容器本体21よりも大径に拡径すると共に、包装部32も網目が広げられて拡径する。一方、上記の引っ張り力を解放すれば元の状態に復元(縮径)して底部緩衝部31の下側開口311の内径が容器本体21よりも小径になる。これにより、包装部32に連続する最外層のネットを除く内側の底部緩衝部31の上に、容器本体21の底部211が載置した状態になり、この底部緩衝部31と閉止部321との間に収容容器2の全体が収容された状態で包装部32がその収容容器2の外周面に密着することになる。
この状態では、底部緩衝部31が容器2の底部211を下側から覆った状態で、収容容器2の全体が緩衝包装体3により覆われた状態になる。この際、底部緩衝部31を構成する最外層のネット材Nの網が包装部32と連続し、この最外層の網を介して底部緩衝部31が包装部32側に引き付けられた状態になるため、底部緩衝部31を上記底部211に対し密着させる側に保持されることになる。一方、包装部32は収容容器2の外周囲に被せられることにより本来の網目が広げられて周方向が容器本体21の周長よりも長くなるように伸ばされた状態になるため、その網目を本来の状態に狭めて周長を本来の寸法に縮めようとする復元力、つまり縮径させようとする略弾性復元力によって、収容容器2の外周囲を締め付けた状態で容器本体21等の外周面に密着することになる。これにより、底部緩衝部31が底部211からずれないように確実に保持される上に、底部緩衝部31と底部211との相対位置関係を強固に維持した状態で緩衝包装体3の全体が収容容器2に密着して一体化されることになる。
このため、緩衝包装体として、容器2に対し上記の緩衝包装体3を装着させただけでも成立するが、トラック輸送や薬局等での取り扱いの便を考慮して包装用の外装箱5に入れるようにしてもよい。すなわち、工程P3により形成された緩衝包装体3付きの収容容器2を外装箱5内に入れて蓋51をすればよい(工程P4)。
以上の緩衝包装体あるいは緩衝包装構造の場合、例えば下方から上方に向けて衝撃力が作用して被収容物と共に収容容器2が反作用として押し下げられるように急変位したとしても、底部緩衝部31が内外周方向に拡径したり縮径したりして上下方向の厚みが大小変化することになり、これにより、その衝撃力が吸収されて収容容器2への伝達を遮断することができる。つまり、底部緩衝部31を構成するネット材Nの網は本来の直の筒の状態から強制的に巻き込まれて巻回状態にされているため、元の直の状態に復元しようとする略弾性復元力によって巻回外周側に張られた状態となり、内部には環状空隙が存在している。このため、底部緩衝部31が有するドーナッツ環状の形状を上下から圧縮しようとする力が作用すると、上記の如く拡径したり縮径したりを繰り返す略弾性的な挙動をすることになる。これに基づき、上記の衝撃力を吸収して衝撃力の伝達遮断が実現されることになる。しかも、上記の包装部32による一体保持機能に基づき、収容容器2に対する上下方向の衝撃力の伝達を遮断する底部緩衝部31による衝撃遮断機能を常に発揮し得る状態に維持することができる。以上により、収容容器2の緩衝・保護を十分に行うことができるようになる一方、収容容器2の被収容物が錠剤等であっても、その錠剤等を衝撃から十分に遮断して損傷発生のおそれを確実に回避させることができる。
しかも、そのような効果を、ネット材Nを用いた安価でかつ簡易な緩衝包装体3によって実現させることができる。すなわち、収容容器2の形状又はサイズが少々異なっていても、同じ緩衝包装体3を適用して緩衝包装体を構成することができるようになり、個々の形状・サイズ毎に緩衝材等を事前準備する必要をなくすことができる。又、上記形状又はサイズが大幅に異なるものであっても、ネット材Nの径寸法を数種類準備しておくだけで、対応することができる。その際、次に記す実施形態でも説明するが、必要長さが異なったとしても、長尺の状態で製造される筒状のネット材Nをその都度所望の長さに切断するだけの変更で済む。加えて、特に包装部32がネット材Nにより形成されているため、収容容器2の表面に貼付された印刷ラベル等を包装状態のままで外から視認することができる上に、合成樹脂製のネット材N自体の滑りが良いため、印刷ラベル等とこすれてもその印刷ラベル等の表面を損耗させることはなく、包装材料との間の摩耗に起因する印刷ラベルの表面損耗発生を回避することができる。この点は、収容容器2が医薬品収容の用途に用いられる場合には、その内容物を識別させるという印刷ラベルの識別性を損なうこともなく、医薬品として要求される誤用防止を確実に実現させることができる。又、上記の如くネット材N自体の滑りが良いことから、緩衝包装体3により包装した状態の収容容器2を例えば紙箱製の外箱内に収容させる場合にも、その外箱の内表面との間の擦れによる紙屑付着や、あるいは、収容容器2の外表面との間の擦れによる収容容器2自体の形成素材である合成樹脂の樹脂屑付着を共に発生させることなく清浄に保つことができる。さらに、収容容器2と包装部32との間に医薬品(被収容物)等の能書等を介装させることができ、これにより、能書等を外部から視認し得る状態で収容容器2と一体に保管することができるようになる。
又、外装箱5内に収納された状態では、その外装箱5の内壁面が上記底部緩衝部31の拡径挙動を所定量に規制して拘束する作用を果たすため、底部緩衝部31の変形を適度に抑えてその底部緩衝部31の衝撃吸収機能をより確実なものとすることができるようになる。なお、上記の如く底部緩衝部31の拡径挙動を拘束する内壁面の存在が重要であるため、外装箱5の代わりに梱包又は包装のための大きなケースに対し格子状の区画壁を形成し、区画壁により区画された格子空間に上記の緩衝包装体3が装着された収容容器2を入れるようにしてもよい。
以上の参考形態では、工程P2で形成された緩衝包装体3の開放端43を溶着して閉止部321を形成した例を説明したが、その閉止部321の事前の形成を省略してもよい。この場合には、例えば図4に示すように底部緩衝部31を下に、開放端43を上にした状態で、その開放端43を押し広げ、収容容器2を開放端43の側から押し込み、底部211を底部緩衝部31の最外層の網312の内側にある巻回部42の上に載置させるようにしてもよい。これにより、図5に示すように、容器本体21の底部211が底部緩衝部31の上に位置し、包装部32が容器本体21及び蓋22の外周囲に密着し、開放端43が蓋22の上側位置で本来のネット材Nの直径近くまで縮径して開口した状態となる。このように、閉止部321(図3等参照)を形成しなくても、包装部32は収容容器2の外周面に密着し、開放端43も蓋22よりも縮径した状態になるため、緩衝包装体として閉止部321の形成は必ずしも必須ではない。図5では、緩衝包装体3を装着した状態で収容容器2を外装箱5に入れる状態を示している。なお、閉止部321を事前に形成しない場合であっても、収容容器2に被せた後に閉止部321を事後形成するようにしても、もちろんよい。
<実施形態>
図6は、本発明の実施形態に係る緩衝包装体ないし緩衝包装構造を示し、同図中の符号6は被包装物である収容容器2の外面を包み込む実施形態の緩衝包装体である。なお、以下の説明では参考形態と同様の構成要素については参考形態と同じ符号を付して、重複した詳細説明を省略する。
上記緩衝包装体6は、容器本体21の底部211を下側から覆う底部緩衝部61と、容器本体21の外周面(外側面)を覆う側方緩衝部62と、蓋22を上側から覆う頂部緩衝部63と、容器本体21の外周面に密着する包装部64とを一体に備えたものである。上記底部緩衝部61は第1実施形態の底部緩衝部31と同じ構成を備えたもので上記包装部64により保持され、上記側方緩衝部62は容器本体21に対する縮径方向の略弾性的な復元力によって容器本体21の外周面に密着するように保持され、上記頂部緩衝部63は上記包装部64によりその位置を保持されている。
以下、参考形態と同様に、図7及び図8を参照しつつ緩衝包装体6の形成方法を説明することにより、緩衝包装体6を用いた緩衝包装体について詳細に説明する。なお、図7及び図8では、図2及び図3の場合と同様に、ネット材Nのネット(網)の断面線を図示の簡略の観点より太線にて表示している。
ネット材Nを用いて巻回部42を形成する点(図2の工程P1参照)、開放端43を押し広げて折り返すことにより巻回部42の外周側に巻き返して底部緩衝部61(底部緩衝部31)を形成する点(図2の工程P2参照)までは、参考形態と同様である。但し、工程P2終了時の底部緩衝部61(図7の工程P2参照)を除いた開放端43までの胴筒部44の長さは、上記の側方緩衝部62及び頂部緩衝部63の形成代の分だけ参考形態の場合よりも長く設定されており、この分だけ長いネット材Nを用いる点が参考形態とは異なる。
次に、開放端43を押し広げて外側に再度巻き返した後、その開放端43を底部緩衝部61の側に引き下ろして胴筒部44の外周側に二重巻き状態にする。開放端43が底部緩衝部61よりも所定寸法だけ下位置になれば、その所定寸法分だけ外側に折返し、さらにその折返し部分が上記と同様の下位置になるまで再度引き下ろして外側に折り返す。これにより、底部緩衝部61の直ぐ上位置の胴筒部44の外周囲に折り重ね状態に巻回したドーナッツ環状の側方緩衝部62を形成する(以上工程P5)。この際、底部緩衝部61の最外層の網を除く内側の巻回部42から胴筒部44の頂部折返し部45までの長さを収容容器2の高さよりも頂部緩衝部63の分だけ長く残るように当初のネット材Nの長さを設定しておき、これにより、上記の頂部折返し部45の部分で頂部緩衝部63を構成し、胴筒部44により包装部64を構成するようにする。この場合には、工程P5により側方緩衝部62の形成のみならず頂部緩衝部63及び包装部64の形成も完了し、緩衝包装体6の形成が完了することになる。
そして、図8に示すように、上記の工程P5完了後の緩衝包装体6を収容容器2に対し被せて装着させる(工程P6)。この装着作業は、参考形態の工程P3と同様に、底部緩衝部61の下側開口611を広げて収容容器2の上から被せていき、巻回部42の上に容器本体21の底部211を載置させると同時に、包装部64及び側方緩衝部62を容器本体21の外周面に密着させる。この状態で、収容容器2の蓋22から上に突出する頂部折返し部45をそのままの状態(図6の状態)で頂部緩衝部63を構成させるか、さらに外側に折り返した状態(図8の状態)にして頂部緩衝部63を構成させるか、さらに折返し数を増やして巻き込み状態にしてドーナッツ環状の頂部緩衝部を構成させるか、のいずれかにしてもよい。
参考形態でも説明したが、このままの状態でも、収容容器2と一体化された緩衝包装体6によって底部211を底部緩衝部61により、蓋22を頂部緩衝部63により、容器本体21の外周面を側方緩衝部62によりそれぞれ緩衝状態(衝撃力の伝達を遮断した状態)に保護することができ、その状態を確実に維持させることができる。さらに、加えて外装箱5aに入れるようにしてもよく、外装箱5aに入れることにより、参考形態で説明したように、上記の衝撃伝達遮断機能をより確実に得ることができるようになる。
この実施形態の場合、参考形態による効果に加え、収容容器2の外周面に対し側方から作用する衝撃に対しても十分な緩衝機能を発揮させることができるようになる。しかも、側方緩衝部62をも加えた緩衝機能をネット材Nを用いて安価でかつ簡易に実現させることができる。
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、容器本体21の底部211を保護する底部緩衝部61として巻回部42をそのまま用いるようにしてもよい。すなわち、工程P2(図2参照)において、開放端43を外側に押し広げて巻き返し、続いて巻回部42側に引き下ろすことにより、底部緩衝部61の最外層の網が連続して包装部44に連なるようにしているが、これに限らず、この工程P2を省略して工程P1のままの巻回部42により底部緩衝部61を構成するようにしてもよい。この場合、容器本体21の底部211に対する緩衝部の位置保持機能は若干劣るものの、底部緩衝部の緩衝機能はほぼ同じものを得ることができる。
実施形態では、底部緩衝部61、頂部緩衝部63及び側方緩衝部62をそれぞれ備えた例を示したが、例えば頂部緩衝部63を省略して底部緩衝部61及び側方緩衝部62と包装部64とで緩衝包装体6を構成するようにしてもよい。この場合には、蓋22上面から包装部64の上端(頂部折返し部45)までの寸法を短くして、そのまま開口させた状態でも、あるいは参考形態で示した閉止部321(図1又は図3参照)を溶着等により形成した状態でも、いずれを採用するようにしてもよい。
参考形態や実施形態では、錠剤等を収容するタイプの収容容器2を例示したが、これに限らず、液体を収容する薬瓶や、外径に比して軸方向に長いタイプの薬品収容容器等を被包装物にして本発明の緩衝包装体を適用するようにしてもよい。
又、緩衝包装体を構成する筒状で伸縮性を有する素材として、上記参考形態や実施形態では合成樹脂製のネット材を示したが、これに限らず、例えばシートゴム製の筒状素材、あるいは、発泡ポリスチロール製の筒状素材等を用いるようにしてもよい。