JP4808302B2 - 水処理装置およびその運転方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分離膜モジュールを用いた水処理装置において、エアーバブリングによる分離膜モジュールの分離膜の膜面の洗浄を行う水処理装置とその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
分離膜モジュールは、従来、無菌水、飲料水、超純水の製造装置や、空気の浄化装置に用いられてきた。これらの用途に加えて、最近では分離膜モジュールを汚濁性の高い液体の処理に用いることが検討され、一部実用化されている。
汚濁性の高い液体の処理とは、具体的には、河川水を処理する浄水処理、下水処理における二次処理、三次処理、さらには浄化槽における固液分離などがあげられる。
【0003】
このような用途においては、分離膜モジュールを、被処理液槽内の被処理液に浸漬し、この分離膜モジュールを構成する分離膜の濾液(処理液)側、すなわち二次側から吸引することによって、前記被処理液を、分離膜の被処理液供給側、すなわち一次側から二次側に透過させて濾過する吸引方式の水処理装置がしばしば用いられている。
しかし、このような水処理装置においても、汚濁性の高い液体を処理すると、被処理液中の汚泥、濁質などの固形分が、分離膜表面に付着することによる目詰まりがおこりやすい。このため、分離膜モジュールの寿命の短期化が問題となる。
【0004】
この目詰まりを防ぐために、エアーバブリングによる膜面洗浄が行われている。例えば、被処理液槽内の分離膜モジュールの下方に散気手段を配置する。この散気手段は、多数の孔が形成された管状あるいは板状のもので、コンプレッサーなどのエアー供給源と接続されている。そして、このエアー供給源から送気することによって、前記散気手段から気体が発散される。すると、上昇する気泡によって、分離膜モジュールを構成する分離膜が揺動し、分離膜表面近傍の液体が流動することにより、付着した固形分が取り除かれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、汚濁性の高い液体を処理するにおいては、上述のようなエアーバブリングによる洗浄を行っても、運転時間が長くなるにつれて固形分が沈降しにくくなったり、いったん分離膜の膜面から剥離した固形分が再び分離膜表面に付着する現象が発生しやすくなるという問題があった。その結果、エアーバブリングの効果が低下し、分離膜の目詰まりを十分に抑制することができなくなり、安定した濾過運転が困難となる場合があった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、分離膜モジュールを用いた水処理装置において、安定した濾過運転を継続できる水処理装置とその運転方法を提供することを課題とする。
また、分離膜の二次側から吸引して濾過する吸引式であり、エアーバブリングによる洗浄を行う水処理装置において、運転時間が長くなっても被処理液槽内の固形分が沈降しにくくなったり、分離膜表面への固形分の再付着が発生しにくく、安定した濾過運転を継続できる水処理装置とその運転方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが鋭意検討した結果、上述の問題は以下のようにして発生することがわかった。
すなわち、濾過運転を継続すると、被処理液槽内の固形分量が多くなってくる。この固形分は、分離膜表面に付着、堆積したり、被処理液槽の底部に沈殿したり、被処理液中で浮遊しているが、その多くは被処理液槽底部に沈殿する。
沈澱した固形分は、被処理液の供給時、または濾過によって被処理液から分離された時点などに沈澱したものと、濾過によって分離された時点では分離膜表面に付着、堆積していたものが、上述のエアーバブリングなどの洗浄によって洗い落とされたものである。
そして、これらの固形分が沈澱した状態を維持できれば、これらが再び分離膜表面に付着、堆積することはない。
【0007】
しかし、従来の水処理装置においては、被処理液を被処理液槽の上方(被処理液の液面側)から注ぎ込むようにして供給していた。このため、被処理液の液面が乱れたり、供給する被処理液の対流によって被処理液槽内全体の被処理液の対流が生じることによって、沈降しようとする固形分が沈降しにくくなったり、沈殿している固形分が再び舞い上がる現象がしばしば生じていることがわかった。
このように固形分の沈降が妨げられると、濾過運転が長くなる程、すなわち固形分濃度が大きくなる程、分離膜表面に固形分が付着しやすくなる。そして、分離膜表面の目詰まりが進行し、膜間差圧の上昇を招き、結果的に分離膜モジュールの寿命を早めてしまう。
【0008】
特に、濾過運転とエアーバブリングを同時に行いながら継続する連続運転方法においては、エアー散気手段よりも上方の液は、気泡の発生によって常に液の対流がおこり、攪拌されている状態にある。したがって、被処理液の液面上方から液を注ぎ込むと、この被処理液はすぐに攪拌され、新たに注ぎ込まれる被処理液中の固形分の沈降が常に妨げられていることになる。
【0009】
本発明者らは、これらの検討結果から、以下のような発明を完成させた。すなわち、本発明は、被処理液槽内に設置された分離膜モジュールと、該被処理液槽内の前記分離膜モジュールの下方に設置された散気手段とを備えた水処理装置において、散気手段の下方から被処理液槽内に被処理液を供給する被処理液供給ラインを有することを特徴とする水処理装置である。そして、前記被処理液槽の上部が、被処理液の液面に接触する蓋によって、実質的に密閉されていることを特徴とする。
また、上記水処理装置の運転方法であって、該被処理液槽内に被処理液が充填されるように、濾過流量と被処理液の供給流量を調整しながら濾過運転を行うことを特徴とする水処理装置の運転方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の水処理装置の一例を示したものであり、被処理液槽1は上方に開口する開口部1aを有する外形略直方体のものである。この被処理液槽1内には、分離膜モジュール3が配設されている。そして、この分離膜モジュール3の下方には、被処理液槽1の外部のエアー供給源5と接続された散気手段4が設けられ、これらの分離膜モジュール3と散気手段4は、被処理液槽1内に満たされた被処理液中に浸潰されるようになっている。
【0011】
この例の分離膜モジュール3においては、図2に示したように、その繊維軸方向が水平方向になるように配されたチューブ状の中空糸膜(分離膜)10が複数、シート状に集合している。一方、管状支持体11は、その内部に内部路12を有している。そして、前記中空糸膜10…からなるシート状の集合体の繊維軸方向の両端部が、2本の管状支持体11,11の側面に設けられたスリット13,13にそれぞれ挿入され、内部路12,12に開口するように液密に固定されている。
また、前記管状支持体11,11は、それぞれ図示しない集水管にまとめて接続されている。そして、中空糸膜10の外側から供給された被処理液が、中空糸膜10を透過して濾過され、中空糸膜10の内部を通って内部路12,12に至り、さらにこれらの内部路12,12をまとめる集水管(図示せず)を経て図1に示した処理液出口3bに至るようになっている。
【0012】
そして、この分離膜モジュール3は、その中空糸膜10…からなるシートの膜面が、被処理液槽1の底面に対して鉛直方向になるように、被処理液槽1内に固定されている。
【0013】
分離膜モジュール3を構成する分離膜の材質は特に限定せず、例えば、セルロース系;ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系;ポリスルフォン;ポリアクリロニトリル;ポリビニリデンフルオライド;ポリテトラフルオロエチレン;セラミックスなどの任意のものが使用できる。
また、分離膜の形状は、上述のような中空糸膜タイプに限らず、平膜タイプ、管状タイプ、袋状タイプなどの任意のものを使用できる。
分離膜の孔径は、細菌を完全に分離することを目的とすれば0.2μm以下が好ましいが、これに限定されるものではなく、用途によって適宜調整される。
【0014】
前記散気手段4は、好ましくは分離膜モジュール3側の面(上面)に多数の孔が形成された管状あるいは板状のもので、その形状などは特に限定することはない。また、孔を形成する部分を多孔質材料などで構成することもできる。
そして、この散気手段4に接続されたコンプレッサーなどのエアー供給源5から発生せしめられた加圧エアーが散気手段4に送られ、この散気手段4の多数の孔から発生した気泡が分離膜モジュール3に向かって上昇することによって、エアーバブリングによる洗浄が行われるようになっている。
【0015】
また、前記被処理液槽1の側面の下方側は、対向側面が相互に近づく方向に徐々に傾斜している。そして、この被処理液槽1の底面に設けられたドレイン抜きライン7から、被処理液槽1の底部に沈降した汚泥や濁質などの固形分を、必要に応じて抜き出しやすい構成となっている。
この被処理液槽1は、処理量に適した容量を有するものであれば特に限定せず、その材質は任意のものを使用できる。
【0016】
また、この被処理液槽1の側面下方には被処理液を供給する被処理液供給ライン6が設けられている。この被処理液供給ライン6の接続位置は、散気手段4よりも下方になるように設定される。
このように被処理液供給ライン6による被処理液の供給位置を散気手段4よりも下方に設定することによって、仮に被処理液の供給によって対流がおこり、被処理液槽1の底部に沈降していた固形分層の一部や、沈降しようとしていた固形分が舞い上がっても、エアー散気手段4に衝突して再び沈降するため、分離膜モジュール3まで到達しにくくなっている。その結果、固形分が分離膜モジュール3に付着しにくくなる。
また、従来のように被処理液槽1の上方から注ぎ込む場合のように、被処理液の供給による被処理液槽1内の被処理液全体の対流、攪拌が発生しにくくなるので、被処理液槽1内の被処理液全体において、固形分が沈降しやすくなるという効果が得られる。
【0017】
また、この被処理液供給ライン6の接続位置(被処理液の供給位置)は、被処理液槽1の底部に堆積する固形分層をできるだけ巻き上げないためには、この固形分層の上面よりも上方であると望ましい。しかし、実際の運転では、前記固形分層の上面の位置を正確に見積もるのは困難である。したがって、被処理液供給ライン6の接続部付近まで固形分層が堆積したところで、この固形分層をドレイン抜きライン7から引き抜くような運転方法を選定すると好ましい。
【0018】
一方、前記処理液出口3bには、処理液を処理液槽9に導く処理液送給ライン8が接続されており、この処理液送給ライン8にはポンプ8aが設けられている。
すなわち、このポンプ8aを駆動すると、処理液送給ライン8を介して分離膜モジュール3の二次側から吸引され、被処理液槽1内の被処理液が分離膜モジュール3によって濾過され、処理液出口3bから処理液が得られる。ついで、この処理液は処理液送給ライン8から処理液槽9に送液される。
【0019】
前記ポンプ8aは特に限定されるものではなく、目的の流量に応じたものであれば限定されない。
また、処理液槽9は、処理量に適した容量を有するものであれば特に限定せず、その材質は任意のものを使用できる。
【0020】
この水処理装置の運転方法は、エアー供給源5を停止した状態でポンプ8aを駆動して濾過する濾過運転と、ポンプ8aを停止した状態でエアー供給源5を駆動するエアーバブリングによる洗浄を交互に行う方法を採用することもできるし、ポンプ8aを連続的に駆動して濾過運転を継続しながら、同時にエアー供給源5を間欠的に駆動させて、所定間隔でエアーバブリングを行う方法を採用することもできる。
濾過運転とエアーバブリングの運転時間などの条件は、被処理液の特性、流量、分離膜モジュール3、ポンプ8a、散気手段4、エアー供給源5の性能などによって適宜調整される。
また、ポンプ8aとエアー供給源5を同時に駆動させて、濾過運転とエアーバブリングとを同時に継続して行う方法を採用することもできる。
【0021】
ところで、濾過運転とエアーバブリングとを同時に行う場合、エアーバブリングを行っている間、エアー散気手段4よりも上方の被処理液においては、常に対流がおこり、攪拌されている状態にある。
上述の水処理装置においては、被処理液を散気手段4の下方から供給するため、新たに導入した被処理液はエアーバブリングの影響をほとんど受けない。したがって、被処理液の供給初期の段階で、この被処理液中の沈降しやすい固形分を効率よく沈降させることができる。その結果、分離膜の負担を軽減することができる。
【0022】
また、濾過運転時の被処理液の時間当たりの供給量は、特に限定することはなく、被処理液の特性や分離膜モジュール3の性能などによって適宜調整することができるが、被処理液の供給流量と濾過流量とを略同流量に設定すると好ましい。この設定条件によれば、安定した運転を継続でき、被処理液槽1から液が溢れたり、反対に被処理液槽1内の被処理液量が不足して分離膜モジュール3が被処理液中に十分に浸潰されない状態を招くなどの不都合を防止することができる。
【0023】
被処理液の供給流量と濾過流量を同流量に設定して運転する場合、特に、図3に示したように、被処理液槽1の開口部1aに蓋1bが設けられ、被処理液槽1の上部、すなわち、被処理液の液面側が実質的に密閉可能なものを用いると好ましい。また、被処理液槽1と蓋1bとが一体化した構成とすることもできる。
実質的に密閉可能とは、被処理液の液面の略全体を被処理液槽1の内壁に接触させることができることをいうものとする。
このように被処理液の液面側を実質的に密閉状態とすることによって、被処理液槽1内に被処理液を隙間なく充填することができる。その結果、さらに被処理液の対流がおこりにくなり、被処理液槽1内の処理液全体の対流を抑制できる。
また、開口部1aが開放されていると、運転中に被処理液の液面が乱れるが、この場合は被処理液の液面が蓋1bの内側に接触しているため、このような乱れを防止できる。その結果、被処理液槽1内の被処理液の対流、攪拌を抑制して、固形分がさらに沈降しやすくなる。
したがって、濾過運転中、被処理液槽1内に被処理液が充填されている状態が維持できるように、濾過流量と被処理液の供給流量を調整しながら濾過運転を行うと好ましい。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。
(実施例)
図1ないし3にしたものと同様の水処理装置を用いて、河川水の濾過を行った。
すなわち、被処理液槽は、その上部の開口部に蓋が設けられ、実質的に密閉した状態で濾過運転を行うことができるものとした。被処理液槽の内容積は500Lであった。
また、分離膜モジュールは以下のようにして形成した。
すなわち、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を表面に保持したポリエチレン製の多孔質中空糸膜を、平行に折り返して配列し、ポリエステル製のマルチフィラメントからなる拘束糸条で中空糸膜の折り返し部分を拘束するように編んでシート状にして中空糸膜編織物を得た。
そして、この中空糸膜編織物4枚を、その中空糸膜の繊維軸方向の両端部を開口させ、この開口状態を保持するように、ポリウレタン樹脂を用いて2本のABS製管状支持体に一体に固定した。この中空糸膜モジュールの有効膜面積は4m2であった。
そして、この分離膜モジュールを、中空糸膜の繊維軸方向が水平になるように、また、中空糸膜編織物のシート面が鉛直方向になるように、前記被処理液槽内に配設し、固定した。
【0025】
ついで、被処理液槽内に散気手段を配置して水処理装置を構成し、被処理液槽に河川水を満たし、ポンプを駆動して濾過運転を行った。
濾過運転条件は、0.042m3/m2・hの定流量濾過であり、また、被処理液の供給流量は、被処理液槽内の水の体積が満杯の状態で一定に保たれるように、濾過流量と略同量に設定した。
エアーバブリングは、散気手段に接続されたエアー供給源を所定間隔で駆動させて間欠的、かつ定期的に行った。
この実験の結果、分離膜モジュールの濾過運転時の膜間差圧は、運転初期時9.3kPaで、6ヶ月運転後は21.4kPaであった。
【0026】
(比較例)
上部が開口した被処理液槽を用い、この被処理液槽の上方から注ぎ込むようにして被処理液を供給した以外は、実施例と同様にして実験を行った。
この実験の結果、分離膜モジュールの濾過運転時の膜間差圧は、運転初期時9.2kPaで、6ヶ月運転後は49.5kPaであった。
上述の実施例、比較例の結果より、実施例においては、固形分の沈降が妨げられにくく、分離膜への再付着が抑制されることにより、分離膜モジュールの寿命が長くなることが明らかとなった。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明においては、エアー散気手段よりも下方から被処理液槽に被処理液を供給することによって、被処理液中の固形分を効率良く沈降させることができる。また、いったん沈降した固形分が舞い上がって再度分離膜の膜面に付着するのを抑制することができる。このため、分離膜への固形分の付着、堆積による膜面の目詰まりを低減させることにより、水処理装置を長期間、安定に使用することができる。
また、被処理液槽の上方、すなわち被処理液の液面側を実質的に密閉できる構成とすることによって、さらに被処理液槽内の被処理液全体の対流が少なくなり、また、被処理液の液面の乱れを防止して、被処理液槽内の被処理液の対流、攪拌を抑制することができる。そして、固形分をさらに沈降しやすくすることができる。
この際、被処理液槽内に被処理液が充填されるように、濾過流量と被処理液の供給流量を調整しながら濾過運転を行うと、安定した効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の水処理装置の一例を示したフロー図である。
【図2】 図1に示した水処理装置に用いる分離膜モジュールの一例を示した斜視図である。
【図3】 本発明に用いる被処理液槽の構成の他の例を示したフロー図の要部である。
【符号の説明】
1…被処理液槽、3…分離膜モジュール、
4…散気手段、6…被処理液供給ライン、7…ドレイン抜きライン、
8…処理液送給ライン、8a…ポンプ、9…処理液槽。

Claims (2)

  1. 被処理液槽内に設置された分離膜モジュールと、該被処理液槽内の前記分離膜モジュールの下方に設置された散気手段とを備えた水処理装置において、
    散気手段の下方から被処理液槽内に被処理液を供給する被処理液供給ラインを有し、
    前記被処理液槽の上部、被処理液の液面に接触するように、被処理液槽を実質的に密閉する蓋が設けられていることを特徴とする水処理装置。
  2. 請求項に記載の水処理装置の運転方法であって、該被処理液槽内に被処理液が充填されるように、濾過流量と被処理液の供給流量を調整しながら濾過運転を行うことを特徴とする水処理装置の運転方法。
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