JP4807012B2 - 耐加水分解性に優れた生分解性不織布 - Google Patents

耐加水分解性に優れた生分解性不織布 Download PDF

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Description

本発明は、耐加水分解性に優れた脂肪族ポリエステル系の生分解性不織布に関するものであって、不織布を製造する際に刺激臭等の発生もなく製造環境が良好であり、土木資材をはじめとする各用途に好適に用いることができる生分解性スパンボンド不織布に関するものである。
近年、環境意識の高まりから種々の生分解性樹脂からなる不織布が提案されている。
生分解性不織布は、自然環境下で、日光、紫外線、熱、水、酵素、微生物等の作用により化学的に分解され、さらには形態的に崩壊するため、焼却処理の必要がなく、埋め立て処理や屋外への放置により処分が可能である。仮りに、焼却処理をした場合でも、生分解性樹脂は従来の不織布に使用されているポリエステルやポリプロピレン、ナイロン等の樹脂に比べ、一般的に燃焼熱量が低いため、焼却時に焼却炉を傷めないというメリットがある。
また、生分解性樹脂の中でも、二酸化炭素を大気中から取り込み成長する植物資源を原料とすることで、二酸化炭素の循環により地球温暖化を抑制できることが期待できるとともに、資源枯渇の問題も解決できる可能性があるため、植物資源を出発点とする樹脂、すなわちバイオマス利用の樹脂に注目が集まっている。
しかし、これまでのバイオマス利用の生分解性樹脂は、力学特性や耐熱性が低いとともに、製造コストが高いといった課題があり、汎用プラスチックとして使われることはなかった。
一方、近年では、力学特性や耐熱性が比較的高く、製造コストの低い生分解性樹脂として、でんぷんの発酵で得られる乳酸を原料としたポリ乳酸樹脂が脚光を浴びている。
ポリ乳酸樹脂を用いたポリ乳酸不織布の開発は、生分解性を活かした土木資材や農業資材等が先行しているが、それに続く用途として生活資材用途、工業資材用途、車両資材用途への応用も期待されている。
しかしながら、ポリ乳酸繊維およびそれからなる不織布は、使用環境下において加水分解が進むため、高い強度保持率が要求される用途においては、製品寿命が短いという問題があった。
この問題を改善するため、ポリ乳酸系芯鞘複合繊維からなり、該芯成分のポリ乳酸系樹脂より20℃以上融点の低いポリ乳酸系樹脂を鞘成分とすることにより不織布の機械的特性を向上させ、ウエザーメータを用いた耐候性試験において300時間照射後の強力保持率が50%以上であるというポリ乳酸系長繊維不織布からなる生分解性農業用被覆資材が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、該生分解性農業用被覆資材は、ポリ乳酸繊維の強度低下の過程で大きな要因となる加水分解について何ら対策が施されていないため、使用中に雨露の影響を受け加水分解反応が起こり、繊維、ひいては不織布の強度低下が進行するという欠点があった。
一方、ポリカルボジイミド化合物を添加して耐加水分解性を向上させた生分解性プラスチック組成物が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、該特許文献2中に記載のポリカルボジイミド化合物は、ポリ乳酸への分散性が低いとともに、ゲル化が発生しやすく、耐加水分解性向上に不十分なばかりか、繊維や不織布に適用する際の紡糸性が不安定となり、工業的な繊維、不織布の生産には適用しがたく、さらに、耐熱性が悪いことに起因し、ポリカルボジイミド化合物を添加したポリマを溶融紡糸すると、カルボジイミド化合物に由来した刺激性の分解ガスが発生するために作業環境が悪化する問題があった。
また、モノカルボジイミド化合物を添加することにより、耐加水分解性を向上させたポリ乳酸繊維や、分子中に2以上のカルボジイミド基を有し、その末端がカルボン酸で封止されている特定のポリカルボジイミド化合物が混合されてなるポリ乳酸繊維が提案されている(特許文献3および特許文献4)。
これらのポリ乳酸繊維は、製造時に刺激性の分解ガスの発生も少ないため各種繊維製品に好適に用いることができるとあるが、これらのポリ乳酸繊維を用いて生分解性不織布を製造した場合、不織布はその製造時に熱接着やニードルパンチによる繊維の絡合など、繊維に少なからずダメージが与えられるため、たとえ不織布を構成する繊維が優れた耐加水分解性を有していても、それがそのまま不織布の耐加水分解性の向上や湿熱条件下での強度保持率の向上につながるものではなかった。
特開2000−333542号公報 特開平11−80522号公報 特開2001−261797号公報 特開2004−332166号公報
本発明は、耐加水分解性に優れた脂肪族ポリエステル系生分解性不織布を提供せんとするものであって、不織布を製造する際に刺激臭等の発生もなく製造環境が良好であり、土木資材等をはじめとする各種用途に好適に用いることができる生分解性不織布を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するために、本発明の生分解性不織布は、以下の(1)の構成、または(2)の構成からなるものである。
(1)分子鎖末端にカルボキシル基を有する脂肪族ポリエステル樹脂を原料とする繊維を含有する生分解性不織布であって、5%重量減少温度が170℃以上のモノカルボジイミド化合物によって該脂肪族ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基のうち一部または全部が封鎖され、かつ湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率が30%未満であり、かつ脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することを特徴とする生分解性スパンボンド不織布。
(2)分子鎖末端にカルボキシル基を有する脂肪族ポリエステル樹脂からなる芯鞘複合繊維を含有する生分解性不織布であって、該芯鞘複合繊維の鞘成分樹脂のみが5%重量減少温度が170℃以上のモノカルボジイミド化合物によって該末端カルボキシル基の一部または全部が封鎖され、かつ該芯鞘複合繊維の鞘成分比率が5〜70vol%であり、かつ湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率が30%未満であり、かつ脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することを特徴とする生分解性スパンボンド不織布。
さらに、かかる(1)または(2)の本発明の生分解性不織布において、具体的に、より好ましくは、以下の(3)または(4)の構成を有するものである。
(3)末端カルボキシル基濃度が、0〜20当量/tonであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の生分解性スパンボンド不織布。
(4)脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリ乳酸樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の生分解性スパンボンド不織布
さらに、上述した本発明の生分解性スパンボンド不織布は、以下の(5)示した用度に使用され、特異な効果を発揮するものである。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の生分解性スパンボンド不織布からなることを特徴とする資材。
本発明によれば、製造する際に刺激臭等の発生もなく製造環境が良好であり、耐加水分解性に優れた生分解性スパンボンド不織布が得られる。
本発明の生分解性スパンボンド不織布は、土木資材をはじめとする各種の用途に好適に用いることができる。
本発明の生分解性スパンボンド不織布は、分子鎖末端にカルボキシル基を有する脂肪族ポリエステル樹脂を原料とする繊維を含有する生分解性不織布であり、該分子鎖末端のカルボキシル基を、5%重量減少温度が170℃以上のモノカルボジイミド化合物によってその一部または全部を末端封鎖した脂肪族ポリエステル樹脂からなる繊維を用いた生分解性スパンボンド不織布である。
本発明の生分解性不織布は、長繊維不織布でスパンボンド法により製造されるものが多様な用途に適するので好ましい。
長繊維不織布の場合は、例えば、溶融したポリマーをノズルから押し出し、これを高速吸引ガスにより吸引延伸した後、移動コンベア上に繊維を捕集してウェブとし、さらに連続的に熱接着、絡合等を施すことにより一体化してシートに形成をする、いわゆるスパンボンド法などにより製造することができる。
不織布の形成方式は、湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率が30%未満である生分解性不織布を形成することが重要であり、スパンボンド不織布の場合は、構成する繊維をより高度に配向結晶化させるため、紡糸速度は好ましくは2000m/分以上、より好ましくは3000m/分以上、さらに好ましくは4000m/分以上とし、またウェブを熱接着する際の圧着面積率が大きすぎると熱接着されている部分から強度低下が進行するため、熱接着する際の圧着面積率は好ましくは5〜30%とし、より好ましくは10〜25%とすることにより、湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率が30%未満である生分解性不織布を製造することができる。
本発明にかかる生分解性スパンボンド不織布の強伸度指数低下率の下限値は、1%程度まで、より好ましくは2%までである。
本発明の生分解性スパンボンド不織布において、生分解性不織布を構成する繊維の原料として使用する脂肪族ポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート系樹脂などが好適に用いられ、中でも力学特性や耐熱性が比較的高く、製造コストの低い点でポリ乳酸樹脂が特に好ましく用いられる。また、これらの樹脂を複数種類複合して用いてもよい。樹脂の複合の方法としては、溶融した複数種類の樹脂を混合する方法や、2種類の樹脂を芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型、多葉型などの複合繊維の形態にする方法が好ましい方法である。
本発明の生分解性スパンボンド不織布において、前記生分解性樹脂に結晶核剤や艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、滑剤等を本発明の効果が損なわれない範囲で添加することは何ら差し支えないところではあるが、特に、生分解性スパンボンド不織布を製造する際に刺激臭の発生をより減少させるために、脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%の範囲で添加することが重要であり、0.3〜4.0wt%の範囲で添加することがより好ましく、0.5〜2.0wt%の範囲で添加することがさらに好ましい。脂肪族ビスアミドまたはアルキル置換型の脂肪族モノアミドをそれぞれ単独で用いてもよいし、両者を併用して含有するものでもよい。脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドの含有量が0.1wt%よりも少ない場合は、脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドの有する離型効果が十分に発揮されず、熱接着工程を有するスパンボンド不織布製造方法の場合は、熱ロールなどに脂肪族ポリエステル樹脂のカルボキシル基末端と未反応のカルボジイミド化合物を含む脂肪族ポリエステル樹脂が付着しやすくなるため、含まれるカルボジイミド化合物が熱分解し、不快な刺激臭が発生しやすくなるため好ましくない。一方、含有量が5.0wt%を超える場合は、紡糸性が安定せずに、製糸ができないこともあり得るため好ましくない。
本発明の生分解性スパンボンド不織布において用いられる脂肪族ビスアミドは、特に限定されるものではないが、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、および芳香族系脂肪酸ビスアミド等が好ましく、例えばメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスバルミチン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられ、これらを複数種類混合して使用してもよい。
本発明の生分解性スパンボンド不織布において用いられるアルキル置換型の脂肪族モノアミドは、特に限定されるものではないが、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置換した構造の化合物であることが好ましく、N−ラウリルラウリル酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド等が挙げられ、これらを複数種類混合して使用してもよい。
脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを、紡糸するための原料となる樹脂に添加する方法は、特に限定されるものではないが、あらかじめ原料樹脂と添加する物質を加熱溶融混合したマスターチップを作製し、これを紡糸の際に原料樹脂に必要量添加して、添加物質量を調整する方法が好ましい。
ポリ乳酸樹脂としては、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体が好ましいものである。
本発明の生分解性スパンボンド不織布においては、製造する際に刺激臭等の発生もなく製造環境が良好であり、耐加水分解性に優れた生分解性不織布を得るため、耐加水分解安定剤として、カルボジイミド化合物を添加し、該化合物により生分解性不織布を構成する繊維の原料となる脂肪族ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基の一部または全部が封鎖されていることが重要である。
本発明の生分解性スパンボンド不織布において耐加水分解安定剤として用いられるカルボジイミド化合物としては、得られる生分解性不織布の用途に適していればよく、モノカルボジイミド化合物が用いられる場合は、5%重量減少温度(以下、「T5%」と示す)が170℃以上のモノカルボジイミド化合物であることが重要であり、T5%が190℃以上のモノカルボジイミド化合物であることがより好ましい。
T5%が170℃未満のモノカルボジイミド化合物では、樹脂成形時に添加した耐加水分解安定剤が分解および/または気化してしまい、不織布の耐熱性や品位が低下する、耐加水分解安定剤が脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端に有効に反応、作用せず十分な耐加水分解性の向上効果を得られない、不織布を製造する際の紡糸時に糸切れが頻発するなどの問題がある。なお、ここで5%重量減少温度とは、MACSCIENCE社製“TG−DTA2000S”TG−DTA測定機により、試料重量10mg程度、窒素雰囲気中にて昇温速度10℃/分として測定したときの、測定開始前の試料重量に対して重量が5%減量したときの温度として求めた温度である。
本発明の生分解性不織布において、耐加水分解安定剤として用いることのできるモノカルボジイミド化合物の例としては、例えば、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミドなどが挙げられる。耐加水分解安定剤として用いられるモノカルボジイミド化合物は、1種の単独使用であっても複数種の混合物であってもよいが、耐熱性および反応性や脂肪族ポリエステルとの親和性の点でN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(以下、TICと記す)が好ましく、複数種のモノカルボジイミド化合物を併用する場合は、末端封鎖剤として用いるモノカルボジイミド化合物の総量のうち50%以上がTICであることが好ましい。
モノカルボジイミド化合物により末端カルボキシル基を封鎖する方法としては、脂肪族ポリエステルの溶融状態でモノカルボジイミド化合物を末端封鎖剤として適量反応させることで得ることができるが、脂肪族ポリエステルの高重合度化、残存低分子量物の抑制などの観点から、ポリマーの重合反応終了後にモノカルボジイミド化合物を添加、反応させることが好ましい。
上記したモノカルボジイミド化合物と脂肪族ポリエステルとの混合、反応としては、例えば、重縮合反応終了直後の溶融状態の脂肪族ポリエステルにモノカルボジイミド化合物を添加し攪拌・反応させる方法、脂肪族ポリエステルのチップにモノカルボジイミド化合物を添加、混合した後に反応缶あるいはエクストルーダなどで混練、反応させる方法(以下、溶融混練という)、エクストルーダで脂肪族ポリエステルに液状のモノカルボジイミド化合物を連続的に添加し、混練、反応させる方法、モノカルボジイミド化合物を高濃度含有させた脂肪族ポリエステルのマスターチップと脂肪族ポリエステルのホモチップとを混合したブレンドチップをエクストルーダなどで混練、反応させる方法などにより行うことができる。
なお、本発明の生分解性スパンボンド不織布以外のものとなるが、耐加水分解安定剤として、ポリカルボジイミド化合物がカルボジイミド化合物として用いられる場合は、式(a)
Figure 0004807012
で表される4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、および式(b)
Figure 0004807012
で表されるイソホロンジイソシアネート、および、式(c)
Figure 0004807012
で表されるテトラメチルキシリレンジイソシアネートの少なくとも1種に由来し、分子中に2以上のカルボジイミド基を有し、かつそのイソシアネート末端がカルボン酸で封止されてなるポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。
ポリカルボジイミド化合物は、上記式(a)で表される4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、HMDIと略記する)、または、上記式(b)で表されるイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記する)、または、上記式(c)で表されるテトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、TMXDIと略記する)のいずれか1種に由来するカルボジイミド、もしくは上記化合物の2種混合物、または3種混合物のいずれかの混合物に由来するカルボジイミドで、分子中に2以上のカルボジイミド基、好ましくは5以上のカルボジイミド基を有するものを主成分とする。なお、ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基の上限は20である。
このようなカルボジイミドは、HMDI、またはIPDI、またはTMXDIまたは上記化合物の2種混合物、または3種混合物を原料とする脱二酸化炭素反応を伴うカルボジイミド化反応により製造することができる。なお、この中でも、得られた繊維の力学的特性が優れているという点で、HMDIを50重量%以上用いたカルボジイミドが好ましく、HMDIを80重量%以上用いたカルボジイミドがより好ましい。
また、その生分解性スパンボンド不織布に添加するポリカルボジイミド化合物としては、脂肪族ポリエステル樹脂中に未反応のポリカルボジイミド化合物が存在しても、熱安定性に優れるために不織布製造時の紡糸性悪化や刺激性ガスの発生を抑えることができることから、イソシアネート末端がカルボン酸を用いて末端を封止されたものであることが必要である。好ましく用いられるカルボン酸は、モノカルボン酸であり、例えば、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、無水トリメリット酸、2−ナフトエ酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2−フル酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、メタクリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ケイ皮酸、グリセリン酸、アセト酢酸、ベンジル酸、アントラニル酸等が挙げられ、この中で最も好ましいのはシクロヘキサンカルボン酸である。
なお、未反応のポリカルボジイミド化合物の熱劣化によって生じる熱分解ガスの発生量を減じるため、ポリカルボジイミド化合物の添加量を、カルボジイミド基当量として脂肪族ポリエステルのトータルカルボキシル基末端量の2倍当量以下にすることが好ましい。ポリカルボジイミド化合物の添加量は、より好ましくはトータルカルボキシル基末端量の1.5倍当量以下であり、さらに好ましくは1.2倍当量以下である。
本発明の生分解性スパンボンド不織布において、耐加水分解性に優れた生分解性スパンボンド不織布を得るため、カルボジイミド化合物により、生分解性スパンボンド不織布を構成する繊維の原料となる脂肪族ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基の一部または全部が封鎖されていることが重要であり、その繊維形態は特に限定されるものではない。繊度も通常、スパンボンド不織布に用いられている範囲で使用することができる。
ただし、使用される用途に応じて耐加水分解性を調節できることが好ましいが、耐加水分解性の調節は、モノカルボジイミド化合物の含有量の調節による他、繊維形態によってもコントロールすることができる。例えば、生分解性スパンボンド不織布を芯鞘型複合繊維で構成し、該芯鞘型複合繊維の鞘成分樹脂のみがモノカルボジイミド化合物を含有し、該化合物によってその末端カルボキシル基の一部または全部が封鎖されてなる脂肪族ポリエステル樹脂であれば、該鞘成分比率を調節することにより、生分解性スパンボンド不織布の耐加水分解性を調節することが可能となる利点がある。なお、この芯鞘型複合繊維は芯成分が多数ある、いわゆる海島型複合繊維であってもよいし、芯成分樹脂と鞘成分樹脂が異なる生分解性樹脂であってもかまわない。
本発明の生分解性スパンボンド不織布において、生分解性スパンボンド不織布の耐加水分解性調節のため芯鞘型複合繊維を適用する際は、該鞘成分の比率が、芯鞘型複合繊維の全横断面積の5〜70vol%であることが重要であり、より好ましくは10〜60vol%である。該鞘成分比率が5vol%未満であると、生分解性スパンボンド不織布の製造時、あるいは使用時に耐加水分解安定剤が添加されていない芯成分樹脂が繊維表面に露出しやすく、その部分から加水分解の進行が促進され、生分解性スパンボンド不織布の加水分解性を調節できなくなるため好ましくない。
一方、該鞘成分比率が70vol%を超えると、生分解性スパンボンド不織布の加水分解性の調節は実質的に不可能になるため、好ましくない。なお、本発明で用いられる芯鞘型複合繊維は、公知の芯鞘型複合繊維製造装置を使用して製造することができ、芯成分となる樹脂と鞘成分となる樹脂を別々のポリマー導入管から各々の濾過室で濾過した後、口金流入孔を介して口金細孔に分割流の状態で会合(合流)させることが可能な複合紡糸口金を使用することで得ることができる。
本発明の生分解性スパンボンド不織布を構成する繊維の原料となる脂肪族ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基濃度は、0〜20当量/tonであることが好ましく、0〜15当量/tonであることがより好ましく、0〜10当量/tonであることがさらに好ましい。該末端カルボキシル基濃度が20当量/tonを超えると、目的とする耐加水分解性を得ることができなくなるため好ましくない。なお、本発明でいう末端カルボキシル濃度とは後述する測定方法で測定した値をいう。
本発明の生分解性スパンボンド不織布において、不織布の目付、厚さ、強伸度、通気量などの特性値については、土木資材、農業資材、生活資材、工業資材、車輌資材、建築資材などのそれぞれの用途に適した特性値であればよく、特に限定されるものではないが、不織布の耐加水分解性の指標となる湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率は、30%未満である必要があり、20%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。なお、本発明でいう湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率とは、後述の実施例の欄(5)に記載した強伸度指数低下率を言う。
本発明における資材とは、土木資材、農業資材、生活資材、工業資材、車輌資材および建築資材の各資材をいう。
本発明における土木資材とは、土木用として用いられる資材であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、防草シート、植樹ポット、根巻材、盛土補強材、法面保護材、護岸シート、軟弱地盤表層処理材、吸出し防止材、トンネル排水材などのことである。
本発明における農業資材とは、農業・園芸用として用いられる資材であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、べたがけシート、育苗ポット、育苗シート、防根シート、糖度アップシート、マルチシート、防虫シート、防虫袋、農業用テープ材、種蒔シート、種蒔テープなどのことである。
本発明における生活資材とは、生活用品に用いられる資材であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、手提げ袋、土産物袋、ラッピング材、スーツカバー、クリーニングカバー、簡易衣料、マスク、ワイパー、枕カバー、布団収納袋、電気製品包装材、食品包装材、ティーバッグ、水切り袋などのことである。
本発明における工業資材とは、工業用として用いられる資材であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、フィルター、電線押え巻き材、工業用ワイパー、研磨布、電池セパレータなどのことである。
本発明における車輌資材とは、自動車、電車、航空機、船舶等の各種乗り物用として用いられる資材であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、天井材、フロアマット、シート材、異音防止材、スペアタイヤカバー材、トランクルーム内装材、エアバッグラッピング材などのことである。
本発明における建築資材とは、建築用として用いられる資材であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、透湿防水シート、屋根下葺材、ルーフィング材、塗膜防水材、遮音材、防音材、吸音材、断熱材、化粧板裏貼り材などのことである。
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれら実施例によって限定されるものではない。なお、下記実施例における各特性値は、次の方法で測定したものである。
(1)Mw(重量平均分子量)
試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とし、これをWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)Waters2690を用いて、25℃で測定し、ポリスチレン換算でMwを求めた。測定は各試料につき3点行い、その平均値をそれぞれのMwとした。
(2)融点(℃)
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を小数点以下第1位まで読み取り、小数点以下第1位を四捨五入した値を融点とした。
(3)単繊維繊度(dtex)
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維直径を測定し、平均値から繊維径を算出、これをポリマーの密度で補正し、繊度を算出した。算出値の小数点以下第2位を四捨五入した。
(4)目付(g/m2
JIS L 1906(2000年版)の5.2に基づいて、縦方向30cm×横方向30cmの試料を3点採取し、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、得られた値の小数点以下第1位を四捨五入したものを不織布の目付<A>とした。
(5)強伸度指数低下率(%)
不織布の幅方向5cm×長さ方向30cm(縦方向)、および長さ方向5cm×幅方向30cm(横方向)の各サンプルを、温度60±5℃、相対湿度80±5%の恒温槽に14日間吊り下げた状態で放置した。
JIS L 1906(2000年版)の5.3.1に基づいて、上記恒温槽内に放置したサンプル、および恒温槽内放置前のサンプル(恒温槽内に放置するサンプルを採取する際に同時に採取する)について、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件で、縦方向および横方向それぞれ5点の引張試験を実施し、得られた強伸度曲線から最大強力(N/5cm単位、小数点以下第2位を四捨五入)と破断時の伸度(%単位、小数点以下第2位を四捨五入)を読み取った。
恒温槽内に放置したサンプルについては、縦方向5点の最大強力の平均値をTMD14、横方向5点の最大強力の平均値をTCD14、縦方向5点の破断伸度の平均値をEMD14、横方向5点の破断伸度の平均値をECD14とし、恒温槽内放置前のサンプルについては、縦方向5点の最大強力の平均値をTMD0、横方向5点の最大強力の平均値をTCD0、縦方向5点の破断伸度の平均値をEMD0、横方向5点の破断伸度の平均値をECD0とした。
それぞれ5点の平均値は、小数点以下第2位を四捨五入した値を採用した。
そして、これらの測定値を用いて、次式により強伸度指数低下率を算出した。この場合も、小数点以下第2位を四捨五入した値を採用した。
強伸度指数低下率(%)=100−100×{(TMD14×√EMD14)+(TCD14×√ECD14)}/{(TMD0×√EMD0)+(TCD0×√ECD0)}
なお、測定に用いた試料はそれぞれ5cm×30cmのサイズで各槽内に投入する前にあらかじめ目付を測定し、上記(3)で測定した同じ試料の目付との差が±2%以内であるもののみを強伸度指数保持率(低下率)の測定に用いた。
(6)カルボキシル基末端濃度(当量/ton)
精秤したサンプルをo−クレゾール(水分5%)に溶解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより求めた。このとき、乳酸の環状2量体であるラクチド等のオリゴマーが加水分解し、カルボキシル基末端を生じるため、ポリマーのカルボキシル基末端およびモノマー由来のカルボキシル基末端、オリゴマー由来のカルボキシル基末端の全てを合計したカルボキシル基末端濃度が求まる。
比較例1
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にTICを溶融混練により添加し、TIC含有量が5.0wt%のチップを作製した。作製したTIC5.0wt%チップと、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂チップを、TIC5.0wt%チップの混合率が20wt%になるようにチップ混合装置により混合し、スパンボンド不織布の原料とした。この原料は、脂肪族ビスアミド等を含有しておらず、比較例である。
得られた原料を230℃で溶融し、口金温度235℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が16%のエンボスロールとフラットロールで、温度145℃、線圧25kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度1.6dtex、目付30g/m2 のスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布の末端カルボキシル基濃度は6.5当量/tonであり、強伸度指数低下率は18.5%であった。
この生分解性不織布は、強伸度指数低下率が18.5%であり、また目付30g/m2 のスパンボンド不織布であることから、べたがけシートや防虫袋などの農業資材、電気製品包装材やクリーニングカバーなどの生活資材、フィルターなどの工業資材、天井材などの自動車資材、屋根下葺材、化粧板裏貼り材などの建築資材等の用途に最適と判断できるものであった。
比較例2
HMDIを2kgに、末端封止剤としてシクロヘキサンカルボン酸180gを加え、カルボジイミド化触媒として3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドを10g加えて窒素をバブリングしながら190℃で12時間反応させ、重合度8のポリカルボジイミド化合物(以下、ポリカルボジイミド化合物Aという)を得た。
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にポリカルボジイミド化合物Aを溶融混練により添加し、ポリカルボジイミド化合物A含有量が5.0wt%のチップを作製した。作製したポリカルボジイミド化合物A5.0wt%チップと、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂チップを、ポリカルボジイミド化合物A5.0wt%チップの混合率が10wt%になるようにチップ混合装置により混合し、スパンボンド不織布の原料とした。得られた原料を230℃で溶融した後、口金温度235℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4100m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が16%のエンボスロールとフラットロールで、温度145℃、線圧25kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度1.2dtex、目付50g/m2 のスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布の末端カルボキシル基濃度は7.6当量/tonであり、強伸度指数低下率は16.2%であった。このスパンボンド不織布は、耐加水分解安定剤としてポリカルボジイミド化合物を使用しているものであり、また、脂肪族ビスアミド等を含有しておらず、比較例である。
この生分解性不織布は、強伸度指数低下率が16.2%であり、また目付50g/m2 のスパンボンド不織布であることから、育苗ポット、糖度アップシート等の農業資材、電気製品包装袋、ラッピング材、簡易衣料などの生活資材、フィルターなどの工業資材、天井材、エアバックラッピング材、トランクルーム内装材などの自動車資材、屋根下葺材、ルーフィング材、遮音材などの建築資材等の用途に最適と判断できるものであった。
比較例3
HMDIを2kgに、末端封止剤として安息香酸180gを加え、カルボジイミド化触媒として3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドを10g加えて窒素をバブリングしながら190℃で12時間反応させ、重合度8のポリカルボジイミド化合物(以下、ポリカルボジイミド化合物Bという)を得た。このスパンボンド不織布は、比較例2と同様に、耐加水分解安定剤としてポリカルボジイミド化合物を使用しているものであり、また、脂肪族ビスアミド等を含有しておらず、比較例である。
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にポリカルボジイミド化合物Bを溶融混練により添加し、ポリカルボジイミド化合物A含有量が5.0wt%のチップを作製した。作製したポリカルボジイミド化合物A5.0wt%チップと、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂チップを、ポリカルボジイミド化合物A5.0wt%チップの混合率が20wt%になるようにチップ混合装置により混合し、スパンボンド不織布の原料とした。得られた原料を230℃で溶融した後、口金温度235℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が16%のエンボスロールとフラットロールで、温度145℃、線圧60kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度1.6dtex、目付100g/m2 のスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布の末端カルボキシル基濃度は7.0当量/tonであり、強伸度指数低下率は17.2%であった。
この生分解性不織布は、強伸度指数低下率が17.2%であり、また、目付100g/m2 のスパンボンド不織布であることから、防草シートなどの土木資材、防根シート、糖度アップシートなどの農業資材、電気製品包装材、手提げ袋、布団収納袋などの生活資材、フィルターなどの工業資材、天井材、異音防止材などの自動車資材、屋根下葺材、ルーフィング材、吸音材などの建築資材等の用途に最適と判断できるものであった。
実施例1
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にTICを溶融混練により添加し、TIC含有量が5.0wt%のチップを作製した。
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にエチレンビスステアリン酸アミド(以下EBAという、日本油脂株式会社製アルフローH−50T)を溶融混練により添加し、EBA含有量が5.0wt%のチップを作製した。
作製したTIC5.0wt%チップと、EBA5.0wt%チップと、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂チップを、TIC5.0wt%チップの混合率が10wt%、EBA5.0wt%チップの混合率が10wt%になるようにチップ混合装置により混合し、スパンボンド不織布の原料とした。得られた原料を230℃で溶融し、口金温度235℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が16%のエンボスロールとフラットロールで、温度145℃、線圧25kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度1.6dtex、目付30g/m2 本発明にかかる生分解性スパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布の末端カルボキシル基濃度は6.5当量/tonであり、強伸度指数低下率は15.5%であった。
この生分解性不織布は、強伸度指数低下率が15.5%であり、また目付30g/m2 のスパンボンド不織布であることから、べたがけシートや防虫袋などの農業資材、電気製品包装材やクリーニングカバーなどの生活資材、フィルターなどの工業資材、天井材などの自動車資材、屋根下葺材、化粧板裏貼り材などの建築資材等の用途に最適と判断できるものであった。
比較例4
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にTICを溶融混練により添加し、TIC含有量が5.0wt%のチップを作製した。作製したTIC5.0wt%チップと、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂チップを、TIC5.0wt%チップの混合率が20%になるようにチップ混合装置により混合し、スパンボンド不織布の原料とした。得られた原料を鞘成分、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂を芯成分の原料とし、芯成分、鞘成分ともに230℃で溶融し、口金温度235℃で細孔より鞘成分比率20vol%の芯鞘複合繊維として紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が16%のエンボスロールで、温度145℃、線圧25kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度1.6dtex、目付50g/m2 のスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布の末端カルボキシル基濃度は17.6当量/tonであり、強伸度指数低下率は25.5%であった。
この生分解性不織布は、強伸度指数低下率が25.5%であり、また目付50g/m2 のスパンボンド不織布であることから、育苗ポット、糖度アップシート等の農業資材、電気製品包装袋、ラッピング材、簡易衣料などの生活資材、フィルターなどの工業資材、天井材、エアバックラッピング材、トランクルーム内装材などの自動車資材、屋根下葺材、ルーフィング材、遮音材などの建築資材等の用途に最適と判断できるものであった。
参考例1
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にTICを溶融混練により添加し、TIC含有量が5.0wt%のチップを作製した。作製したTIC5.0wt%チップと、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂チップを、TIC5.0wt%チップの混合率が10%になるようにチップ混合装置により混合し、短繊維不織布の原料とした。得られた原料を230℃で溶融し、口金温度240℃で細孔より紡出した後、1600m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。続いて、得られた未延伸糸をホットロール−ホットロール系延伸機を用いて延伸温度80℃、熱セット温度116℃で伸度が40%になるように延伸倍率を設定し延伸し、繊度が2.2dtexの延伸糸を得た。続いて、延伸糸と未延伸糸をクリンパーを用いて捲縮付与し、繊維長6mmにカットし、捲縮数13.2山/2.54cmの未延伸短繊維および捲縮数13.5山/2.54cmの延伸短繊維を得た。得られた延伸糸の短繊維を高圧ホモジナイザーを用い、繊維懸濁液を高速度で小径オリフィスを通過させ、次いで、これをオリフィス出口近傍の壁体に衝突させて急速に減速させることにより、繊維に切断作用を与え、フィブリル化短繊維を得た。
得られた延伸短繊維、未延伸短繊維およびフィブリル化短繊維を、水槽の中で60:15:25の配合率で混合し分散させ、次いで、繊維と水の混合溶液をメッシュのドラムを用いて、このドラムを回転させつつ、繊維と水を分離し、湿式不織布を漉き上げた。これを2つのロールを用いて搾水し、次いで、110℃の表面温度のドラムドライヤーの表面で乾燥を行い、さらに、140℃の表面温度のカレンダーロールを用い、線圧300kg/cmで熱プレスし未延伸糸を融着させ、単繊維繊度2.4dtex、目付80g/m2 の湿式不織布を製造した。得られた湿式不織布の末端カルボキシル基濃度は7.1当量/tonであり、強伸度指数低下率は19.5%であった。
この生分解性不織布は、強伸度指数低下率が19.5%であり、また目付80g/m2 の湿式不織布であることから、育苗ポットなどの農業資材、ラッピング材、電気製品包装材などの生活資材、フィルター、電線押え巻き材、電池セパレータなどの工業資材、スペアタイヤカバー材などの自動車資材、防音材などの建築資材等の用途に最適と判断できるものであった。
参考例2
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にTICを溶融混練により添加し、TIC含有量が5.0wt%のチップを作製した。作製したTIC5.0wt%チップと、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂チップを、TIC5.0wt%チップの混合率が20%になるようにチップ混合装置により混合し、短繊維不織布の原料とした。得られた原料を島成分、共重合ポリスチレンを海成分とし、島本数70本/ホールの海島型口金を通して、島/海重量比率30/70で溶融紡糸して未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を延伸倍率3.0倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、繊維長51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。得られた海島型複合繊維の原綿を、カード、クロスラッパー工程を通過させることにより積層ウェブとし、次いで、プレパンチで、100本/cm2 のニードルパンチを行って短繊維不織布を得た。
続いて、得られた短繊維不織布シートの上下から、1500本/cm2 の針本数でニードルパンチした後、極細繊維化することで単繊維繊度0.02dtex、目付250g/m2 の短繊維不織布を製造した。得られた短繊維不織布の末端カルボキシル基濃度は5.0当量/tonであり、強伸度指数低下率は11.4%であった。
この生分解性不織布は、強伸度指数低下率が11.4%であり、また、目付250g/m2 の短繊維不織布であることから、防草シートなどの土木資材、育苗ポットなどの農業資材、手提げ袋、電気製品包装材などの生活資材、フィルター、工業用ワイパーなどの工業資材、天井材、異音防止材などの自動車資材、吸音材、断熱材などの建築資材等の用途に最適と判断できるものであった。
Figure 0004807012
上述した実施例1、比較例1〜4、参考例1、2で得られた各不織布の特性は、表1に示したとおりである。これら不織布はいずれも強伸度指数低下率が30.0%未満であり、耐加水分解性に優れていた。また、これらの不織布は、製造する際に刺激臭等の発生もなく製造環境が良好であった。中でも、本発明の実施例1のものは、スパンボンド不織布の中で強伸度指数低下率が15.5%と最も小さく耐加水分解性に最も優れている。
比較例
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂を原料とし、230℃で溶融した後、口金温度235℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が16%のエンボスロールとフラットロールで、温度145℃、線圧25kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度1.6dtex、目付30g/m2 のスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布の末端カルボキシル基濃度は22.8当量/tonであり、強伸度指数低下率は55.8%であった。
この生分解性不織布は、目付30g/m2 のスパンボンド不織布であることから、電気製品包装材などの生活資材、天井材などの自動車資材の用途として検討されたが、強伸度指数低下率は55.8%であり、この点から同用途には不向きと判断できるものであった。
比較例
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂に2,2'−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)(以下、PBOという)を溶融混練により添加し、PBO含有量が0.5wt%の原料チップを作製した。得られた原料を230℃で溶融した後、口金温度235℃で細孔より紡出し、エジェクターにより紡糸速度4000m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が16%のエンボスロールとフラットロールで、温度145℃、線圧25kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度1.8dtex、目付50g/m2 のスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布の末端カルボキシル基濃度は21.2当量/tonであり、強伸度指数低下率は53.4%であった。
この生分解性不織布は、目付50g/m2 のスパンボンド不織布であることから、電気製品包装材などの生活資材、フィルターなどの工業資材、天井材、エアバックラッピング材、トランクルーム内装材などの自動車資材、屋根下葺材などの建築資材等の用途として検討されたが、強伸度指数低下率は53.4%であり、この点から同用途には不向きと判断できるものであった。
得られた不織布の特性は、表1に示したとおりであるが、比較例の不織布は強度指数低下率が30.0%以上のものであり、耐加水分解性に劣っていた。また、比較例の不織布は、末端カルボキシル基の封鎖効果が少なく、強伸度指数低下率が30.0%以上のものであり、耐加水分解性に劣っていた。
本発明の生分解性不織布は、製造する際に刺激臭等の発生もなく製造環境が良好であり、耐加水分解性に優れた生分解性不織布が得られるため、防草シート、植樹ポットなどの土木資材や、べたがけシート、育苗ポットなどの農業資材や、手提げ袋、ラッピング材などの生活資材や、フィルター、電線押え巻き材などの工業資材や、天井材、フロアマットなどの車輌資材や、透湿防水シート、屋根下葺材などの建築資材に適用でき、有用である。

Claims (5)

  1. 分子鎖末端にカルボキシル基を有する脂肪族ポリエステル樹脂を原料とする繊維を含有する生分解性不織布であって、5%重量減少温度が170℃以上のモノカルボジイミド化合物によって該脂肪族ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基のうち一部または全部が封鎖され、かつ湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率が30%未満であり、かつ脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することを特徴とする生分解性スパンボンド不織布。
  2. 分子鎖末端にカルボキシル基を有する脂肪族ポリエステル樹脂からなる芯鞘複合繊維を含有する生分解性不織布であって、該芯鞘複合繊維の鞘成分樹脂のみが5%重量減少温度が170℃以上のモノカルボジイミド化合物によって該末端カルボキシル基の一部または全部が封鎖され、かつ該芯鞘複合繊維の鞘成分比率が5〜70vol%であり、かつ湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率が30%未満であり、かつ脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することを特徴とする生分解性スパンボンド不織布。
  3. 末端カルボキシル基濃度が、0〜20当量/tonであることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性スパンボンド不織布。
  4. 脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性スパンボンド不織布。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性スパンボンド不織布からなることを特徴とする資材。
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