JP4807012B2 - 耐加水分解性に優れた生分解性不織布 - Google Patents
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Description
生分解性不織布は、自然環境下で、日光、紫外線、熱、水、酵素、微生物等の作用により化学的に分解され、さらには形態的に崩壊するため、焼却処理の必要がなく、埋め立て処理や屋外への放置により処分が可能である。仮りに、焼却処理をした場合でも、生分解性樹脂は従来の不織布に使用されているポリエステルやポリプロピレン、ナイロン等の樹脂に比べ、一般的に燃焼熱量が低いため、焼却時に焼却炉を傷めないというメリットがある。
ポリ乳酸樹脂を用いたポリ乳酸不織布の開発は、生分解性を活かした土木資材や農業資材等が先行しているが、それに続く用途として生活資材用途、工業資材用途、車両資材用途への応用も期待されている。
しかしながら、該特許文献2中に記載のポリカルボジイミド化合物は、ポリ乳酸への分散性が低いとともに、ゲル化が発生しやすく、耐加水分解性向上に不十分なばかりか、繊維や不織布に適用する際の紡糸性が不安定となり、工業的な繊維、不織布の生産には適用しがたく、さらに、耐熱性が悪いことに起因し、ポリカルボジイミド化合物を添加したポリマを溶融紡糸すると、カルボジイミド化合物に由来した刺激性の分解ガスが発生するために作業環境が悪化する問題があった。
(1)分子鎖末端にカルボキシル基を有する脂肪族ポリエステル樹脂を原料とする繊維を含有する生分解性不織布であって、5%重量減少温度が170℃以上のモノカルボジイミド化合物によって該脂肪族ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基のうち一部または全部が封鎖され、かつ湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率が30%未満であり、かつ脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することを特徴とする生分解性スパンボンド不織布。
(2)分子鎖末端にカルボキシル基を有する脂肪族ポリエステル樹脂からなる芯鞘複合繊維を含有する生分解性不織布であって、該芯鞘複合繊維の鞘成分樹脂のみが5%重量減少温度が170℃以上のモノカルボジイミド化合物によって該末端カルボキシル基の一部または全部が封鎖され、かつ該芯鞘複合繊維の鞘成分比率が5〜70vol%であり、かつ湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率が30%未満であり、かつ脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することを特徴とする生分解性スパンボンド不織布。
(3)末端カルボキシル基濃度が、0〜20当量/tonであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の生分解性スパンボンド不織布。
(4)脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリ乳酸樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の生分解性スパンボンド不織布
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の生分解性スパンボンド不織布からなることを特徴とする資材。
本発明の生分解性スパンボンド不織布は、土木資材をはじめとする各種の用途に好適に用いることができる。
試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とし、これをWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)Waters2690を用いて、25℃で測定し、ポリスチレン換算でMwを求めた。測定は各試料につき3点行い、その平均値をそれぞれのMwとした。
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を小数点以下第1位まで読み取り、小数点以下第1位を四捨五入した値を融点とした。
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維直径を測定し、平均値から繊維径を算出、これをポリマーの密度で補正し、繊度を算出した。算出値の小数点以下第2位を四捨五入した。
JIS L 1906(2000年版)の5.2に基づいて、縦方向30cm×横方向30cmの試料を3点採取し、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、得られた値の小数点以下第1位を四捨五入したものを不織布の目付<A>とした。
不織布の幅方向5cm×長さ方向30cm(縦方向)、および長さ方向5cm×幅方向30cm(横方向)の各サンプルを、温度60±5℃、相対湿度80±5%の恒温槽に14日間吊り下げた状態で放置した。
そして、これらの測定値を用いて、次式により強伸度指数低下率を算出した。この場合も、小数点以下第2位を四捨五入した値を採用した。
強伸度指数低下率(%)=100−100×{(TMD14×√EMD14)+(TCD14×√ECD14)}/{(TMD0×√EMD0)+(TCD0×√ECD0)}
精秤したサンプルをo−クレゾール(水分5%)に溶解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより求めた。このとき、乳酸の環状2量体であるラクチド等のオリゴマーが加水分解し、カルボキシル基末端を生じるため、ポリマーのカルボキシル基末端およびモノマー由来のカルボキシル基末端、オリゴマー由来のカルボキシル基末端の全てを合計したカルボキシル基末端濃度が求まる。
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にTICを溶融混練により添加し、TIC含有量が5.0wt%のチップを作製した。作製したTIC5.0wt%チップと、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂チップを、TIC5.0wt%チップの混合率が20wt%になるようにチップ混合装置により混合し、スパンボンド不織布の原料とした。この原料は、脂肪族ビスアミド等を含有しておらず、比較例である。
HMDIを2kgに、末端封止剤としてシクロヘキサンカルボン酸180gを加え、カルボジイミド化触媒として3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドを10g加えて窒素をバブリングしながら190℃で12時間反応させ、重合度8のポリカルボジイミド化合物(以下、ポリカルボジイミド化合物Aという)を得た。
HMDIを2kgに、末端封止剤として安息香酸180gを加え、カルボジイミド化触媒として3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドを10g加えて窒素をバブリングしながら190℃で12時間反応させ、重合度8のポリカルボジイミド化合物(以下、ポリカルボジイミド化合物Bという)を得た。このスパンボンド不織布は、比較例2と同様に、耐加水分解安定剤としてポリカルボジイミド化合物を使用しているものであり、また、脂肪族ビスアミド等を含有しておらず、比較例である。
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にTICを溶融混練により添加し、TIC含有量が5.0wt%のチップを作製した。
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にTICを溶融混練により添加し、TIC含有量が5.0wt%のチップを作製した。作製したTIC5.0wt%チップと、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂チップを、TIC5.0wt%チップの混合率が20%になるようにチップ混合装置により混合し、スパンボンド不織布の原料とした。得られた原料を鞘成分、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂を芯成分の原料とし、芯成分、鞘成分ともに230℃で溶融し、口金温度235℃で細孔より鞘成分比率20vol%の芯鞘複合繊維として紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が16%のエンボスロールで、温度145℃、線圧25kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度1.6dtex、目付50g/m2 のスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布の末端カルボキシル基濃度は17.6当量/tonであり、強伸度指数低下率は25.5%であった。
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にTICを溶融混練により添加し、TIC含有量が5.0wt%のチップを作製した。作製したTIC5.0wt%チップと、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂チップを、TIC5.0wt%チップの混合率が10%になるようにチップ混合装置により混合し、短繊維不織布の原料とした。得られた原料を230℃で溶融し、口金温度240℃で細孔より紡出した後、1600m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。続いて、得られた未延伸糸をホットロール−ホットロール系延伸機を用いて延伸温度80℃、熱セット温度116℃で伸度が40%になるように延伸倍率を設定し延伸し、繊度が2.2dtexの延伸糸を得た。続いて、延伸糸と未延伸糸をクリンパーを用いて捲縮付与し、繊維長6mmにカットし、捲縮数13.2山/2.54cmの未延伸短繊維および捲縮数13.5山/2.54cmの延伸短繊維を得た。得られた延伸糸の短繊維を高圧ホモジナイザーを用い、繊維懸濁液を高速度で小径オリフィスを通過させ、次いで、これをオリフィス出口近傍の壁体に衝突させて急速に減速させることにより、繊維に切断作用を与え、フィブリル化短繊維を得た。
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂にTICを溶融混練により添加し、TIC含有量が5.0wt%のチップを作製した。作製したTIC5.0wt%チップと、末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂チップを、TIC5.0wt%チップの混合率が20%になるようにチップ混合装置により混合し、短繊維不織布の原料とした。得られた原料を島成分、共重合ポリスチレンを海成分とし、島本数70本/ホールの海島型口金を通して、島/海重量比率30/70で溶融紡糸して未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を延伸倍率3.0倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、繊維長51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。得られた海島型複合繊維の原綿を、カード、クロスラッパー工程を通過させることにより積層ウェブとし、次いで、プレパンチで、100本/cm2 のニードルパンチを行って短繊維不織布を得た。
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂を原料とし、230℃で溶融した後、口金温度235℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が16%のエンボスロールとフラットロールで、温度145℃、線圧25kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度1.6dtex、目付30g/m2 のスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布の末端カルボキシル基濃度は22.8当量/tonであり、強伸度指数低下率は55.8%であった。
末端カルボキシル基濃度が22.8当量/ton、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂に2,2'−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)(以下、PBOという)を溶融混練により添加し、PBO含有量が0.5wt%の原料チップを作製した。得られた原料を230℃で溶融した後、口金温度235℃で細孔より紡出し、エジェクターにより紡糸速度4000m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が16%のエンボスロールとフラットロールで、温度145℃、線圧25kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度1.8dtex、目付50g/m2 のスパンボンド不織布を製造した。得られたスパンボンド不織布の末端カルボキシル基濃度は21.2当量/tonであり、強伸度指数低下率は53.4%であった。
Claims (5)
- 分子鎖末端にカルボキシル基を有する脂肪族ポリエステル樹脂を原料とする繊維を含有する生分解性不織布であって、5%重量減少温度が170℃以上のモノカルボジイミド化合物によって該脂肪族ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基のうち一部または全部が封鎖され、かつ湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率が30%未満であり、かつ脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することを特徴とする生分解性スパンボンド不織布。
- 分子鎖末端にカルボキシル基を有する脂肪族ポリエステル樹脂からなる芯鞘複合繊維を含有する生分解性不織布であって、該芯鞘複合繊維の鞘成分樹脂のみが5%重量減少温度が170℃以上のモノカルボジイミド化合物によって該末端カルボキシル基の一部または全部が封鎖され、かつ該芯鞘複合繊維の鞘成分比率が5〜70vol%であり、かつ湿熱雰囲気下での強伸度指数低下率が30%未満であり、かつ脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することを特徴とする生分解性スパンボンド不織布。
- 末端カルボキシル基濃度が、0〜20当量/tonであることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性スパンボンド不織布。
- 脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性スパンボンド不織布。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性スパンボンド不織布からなることを特徴とする資材。
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