JP4806175B2 - 発光デバイス、光書込み装置、および光通信装置 - Google Patents
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Description
図27は1次元フォトニック結晶の透過光スペクトルを観察した結果を示す図である。
フォトニック結晶を用いて微小光回路を作製する考えは数多く提案されている。
フォトニック結晶とは屈折率の異なる材料を波長サイズ程度に周期的に配列した人工結晶であり、設計の自由度が大きく、特異な光学特性(フォトニックバンドギャップ、スーパーレンズ、スーパープリズムなど)を有する。
また、フォトニック結晶はその周期から1次元、2次元、3次元と分類される。このうち1次元フォトニック結晶はもっともシンプルな構造をもっている。図26は、1次元フォトニック結晶の例として非特許文献1に紹介されているものである。それによれば、同図(a)に示すように、TiO2層とSiO2層の多層膜がガラス基板上にその膜厚が600nm/4になるように交互に成膜されている。同図(b)に示すように、中央部に欠陥層として厚さが1.6倍の層を設けている。
この2つのデバイスに光を入射し、その透過光スペクトルを観察した結果を図25に示す。欠陥層を含まない場合は波長600nmを中心とした広い範囲で透過率が低い領域が存在するが、欠陥層がある場合は鋭い透過ピークが存在する。欠陥層を含まないときの透過率の低い領域が伝播方向を限定した場合のフォトニックバンドギャップに対応する。また、欠陥層がある場合、フォトニックバンドギャップ中に欠陥準位ができ、欠陥準位に相当する波長の光が透過することとなる。欠陥層に共鳴する光を入射すると1次元フォトニック結晶中で多重反射が生じ、光電場は欠陥層のまわりに局在化する。
同じ1次元フォトニック結晶の例として、非特許文献2に記載された全反射型1次元フォトニック結晶の例を同図に示した。これはプリズムの表面にTiO2とSiO2の多層膜を設け、欠陥層として色素ドープした有機膜が設けられている。このデバイスに光が入射すると共鳴する波長や入射角でなければ光は欠陥層表面での全反射により光を閉じ込めることができる。
この他に1次元フォトニック結晶の例としては、多層膜に垂直に光を入射する3角形プリズム形状の分光素子がある(例えば、特許文献1 参照。)。
さらに多層膜による変調器の例としては、電気光学効果により屈折率変化が生じてデバイスの反射率が変化を起こし、変調器として作用するものもある(例えば、特許文献2 参照。)。
また、2次元フォトニック結晶を利用した例を説明する。結晶の周期性から光の伝播が禁じられるフォトニックバンドギャップをもつフォトニック結晶に対して、線状の欠陥を導入することによりフォトニック結晶導波路を作成することができる。欠陥とは周期構造に対して屈折率の異なる材料あるいは周期構造を乱す配列(大きさ)を持ったものである。この線状の欠陥では光が伝播することができ、また周囲はフォトニックバンドギャップであるので光は線欠陥にほぼ閉じ込められて伝播するため、光導波路として機能する。
一方、アレイ光源の例としては、LDやLEDのアレイ光源が一般的で、その他の構成として、導波路を使ったものとして出射側のピッチを入射側よりも狭ピッチにしたアレイ光源がある(例えば、特許文献4 参照。)。さらに、ビームを複数の導波路に分岐し、電気光学素子でOn/Offするアレイ光源も提案 されている(例えば、特許文献5 参照。)。
一方、1次元フォトニック結晶を利用した光源アレイの構成では、アレイ数が多くなると光は長い距離伝播する必要がある。たとえば、100μmピッチの発光アレイをアレイ数1000とすると、光源アレイデバイスの大きさは100mm以上の長さになる。導光路中両面を反射してジグザグに進むのであればデバイス長よりもさらに長い距離光が伝播することになる。この時、光が完全にコリメートされていれば伝播しても光が広がることはないが、完全にコリメートされていない場合は伝播中に徐々に光が広がり、光の取りだし効率が低下するとともに、光がピッチに合わずに伝播することになる。特に、1次元フォトニック結晶を利用したデバイスは、多層膜に入射する角度に依存した透過率となることから、常に一定の角度で入射できるようして光の利用効率を高くしておく必要がある。
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造はレンズ作用を有するホログラムであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明では、光源と、導光体の対向する2つの面の一方に1次元フォトニック結晶多層膜を設け光の出射面とした導光路デバイスと、前記光源からの光束を前記導光路デバイスの光の入射面に入射させる結合光学素子とで構成され、前記1次元フォトニック結晶多層膜に或る所定のピッチで複数の屈折率可変の欠陥層を設け、他方の面には全反射機能を持たせた発光デバイスにおいて、前記1次元フォトニック結晶多層膜は反射性の機能を有し、該1次元フォトニック結晶多層膜に設けられた複数の欠陥層は通常は光束を全反射し、電界の印加により光透過性を示す特性を有し、前記複数の欠陥層に印加される電界がOFF状態のときには、前記入射面から入射した光束は前記複数の欠陥層と前記他方の面との間で反射を繰り返し、前記導光路デバイスの光束の入射位置とは反対側の端縁から出射されるが、前記複数の欠陥層に印加する電界を個別に制御することにより、任意の位置の欠陥層から光束を出射するように構成されており、前記一方の面と他方の面の中間部には、光束を前記他方の面に収束させる局部構造と、前記他方の面から反射されてきた光束を前記欠陥層に収束させるための局部構造とが同一面にそれぞれが等間隔になるよう交互に並べて設けられており、前記局部構造の作用により、前記複数の欠陥層の各欠陥層には集光状態の光束が集光されるようしたことを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の発光デバイスにおいて、前記導光体が2枚の基板から形成され、その貼り合わせた界面に収束機能を有する局部構造が形成されていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明では、請求項6または7に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造を設けた面から、前記一方の面までの距離と前記他方の面までの距離とが、等しくないことを特徴とする。
請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造を設けた面から、前記一方の面までの距離が前記他方の面までの距離より大きいことを特徴とする。
請求項10に記載の発明では、請求項6ないし9のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は前記導光体の屈折率より高い屈折率からなる凸レンズ形状の高屈折率領域によって構成されていることを特徴とする。
請求項11に記載の発明では、請求項10に記載の発光デバイスにおいて、前記高屈折率領域は凸レンズ形状の空洞に充填された高屈折率の接着剤からなることを特徴とする。
請求項12に記載の発明では、請求項6ないし9のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は凹レンズ形状の低屈折率領域によって構成されていることを特徴とする。
請求項13に記載の発明では、請求項12に記載の発光デバイスにおいて、前記低屈折率領域は凹レンズ形状の空気層を含む空洞からなることを特徴とする。
請求項14に記載の発明では、請求項12に記載の発光デバイスにおいて、前記低屈折率領域は凹レンズ形状の空洞に充填された低屈折率の接着剤からなることを特徴とする。
請求項15に記載の発明では、請求項1,3ないし14のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は半導体作製プロセスを用いて形成したことを特徴とする。
請求項16に記載の発明では、請求項1ないし15のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記導光路デバイスの前記光の入射面は、前記光の出射面と対向する面に設けられていることを特徴とする。
請求項17に記載の発明では、請求項1ないし16のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記欠陥層は電気的制御により、屈折率変化を生ずる特性を有することを特徴とする。
請求項18に記載の発明では、請求項17に記載の発光デバイスにおいて、前記欠陥層は電気光学効果を有する材質もしくは液晶で構成されることを特徴とする。
請求項19に記載の発明では、請求項1ないし18のいずれか1つに記載の発光デバイスを用いた光書込み装置を特徴とする。
請求項20に記載の発明では、請求項1ないし18のいずれか1つに記載の発光デバイスを用いた光通信装置を特徴とする。
両図において符号1は導光体、2、2’は1次元フォトニック結晶としての誘電体多層膜、3は欠陥層、4は反射防止膜、10は導光路デバイス、11は光源、12はコリメートレンズ、13はプリズム、14は基板、20は発光デバイス、Lは光束をそれぞれ示す。
図1において、光束Lが伝播する導光体1の両面に誘電体多層膜層2、2’が成膜されている。導光体1は利用する光に対して透過率の高いガラスを使用している。また、誘電体多層膜2、2’として具体的には、TiO2とSiO2の2種の膜が交互に積層されている。ただし、煩わしさを避けるため、同図では層の境界線は示していない。
同図の上側に示した多層膜2の、層の中間の一部に欠陥層3が成膜されている。この欠陥層3は、屈折率の変化する層で構成されている。屈折率の変化する層としては、電気光学効果などを利用した非線形材料や液晶などがある。欠陥層3の両側(同図における上下方向)の多層膜はそれぞれ反射性の機能を有しており、一方の(同図では下側の)多層膜から入って欠陥層3を往復透過する際の欠陥層3の光路長によって、同じ多層膜に再入射する位相が異なる。通常は欠陥層3の屈折率は、上記位相が同じになるような屈折率であって、多層膜として他の部分と変わらない全反射特性を示すが、欠陥層の両面から所定の電界をかけると屈折率が変化し、上記位相が反転して局部的に透過性を示すようになる。
なお、屈折率可変の欠陥層に電界をかける構造および手法は公知であるため、図面の煩雑さを避けて図では簡略表示としている。
なお、光が入射する端面は入射時に発生する反射光を極力抑えるために反射防止膜4を用いている。また、導光体1の下の面にも誘電体多層膜2’を形成しているが、金属などの反射膜でもかまわない。要するに全反射機能を有していればよい。これは、以下の各実施形態においても同様である。
上記説明した誘電体多層膜2、2’が成膜された導光路デバイス10を使った発光デバイス20を図2に示した。発光デバイス20は、光源11と、光源11から出た光束Lをコリメートするためのコリメートレンズ12と、導光路デバイス10の導光体1に光を入射するためのプリズム13と、両面に誘電体多層膜2が成膜され一部欠陥層3を有する導光路デバイス10で構成される。光源11としては、半導体レーザーや固体レーザーやSHGレーザーなどがある。また、コリメートレンズ12は同図に示したように、半導体レーザーのそばに置くため、マイクロレンズなどが用いられる。さらにプリズム13は、導光路デバイス10へ設定した角度で入射できるような角度をもったプリズムとなっている。コリメートレンズ12とプリズム13を纏めて結合光学素子と称する。
光源から出た光束Lはコリメートレンズ12でコリメート光となって、プリズム13に入射する。そこで光束Lが導光路デバイス10へ設定した角度で入射できるように屈折されて導光体1へ入射する。すると、光束Lは誘電体多層膜2’で全反射される。そのとき凹面鏡1aの作用により、光束Lは集光状態となり上側に位置している欠陥層3のある位置に集光される。このとき、欠陥層にかかる電界がOFF状態つまり屈折率が全反射の状態の場合は、入射した光は全反射されて、下側の多層膜に到達する。ここで再度凹面鏡1aで反射されて、次の欠陥層のある位置に光が進む。次の欠陥層でON状態つまり屈折率が全反射の状態からずれた場合は、欠陥層に光が局在化し欠陥層から発光する。
この実施形態では、この発光する場合の欠陥層を含む多層膜の透過率が100%に近いため、ほとんどの光が透過して図の上側に出射される。もし、この欠陥層がOFFの状態であれば、図の点線で示したように光が反射してまたジグザグに進んでいく。
ここで欠陥層3から出射されず反射された光束は導光路デバイス10の導光体1の端縁(終端と呼ぶ)からそのまま抜けていくことになる。
上記説明では、凹面鏡1aがすべて同一形状であるように説明したが、実際は、本実施形態の場合、入射光束が最初に入る凹面鏡(最初の凹面鏡という)だけ若干形状が異ならせてある。それは、最初の凹面鏡に入射する光束だけは平行光束だからである。それ以外の凹面鏡に入る光束は、一旦上側の多層膜に収束してから反射されて発散光束になる。
凹面鏡を作製する導光体は透明なガラス基板Kとする。この基板材料に凹面鏡となる凸形状を以下の手順で形成する。
図3において、まず基板K上に感光性材料PRを塗布する。塗布する感光性材料PRの厚さは基板Kに形成する凸形状の高さと、後にこの感光性材料をレジストしてエッチングを行う基板材料のエッチング速度とレジストのエッチング速度の比(選択比)により設定する。例えば両者のエッチング速度が等しい選択比1の場合には、レジストの高さは形成する凸形状の高さとほぼ等しくする。また基板材料のエッチング速度がレジストのエッチング速度より2倍大きい選択比2の場合には、レジストの高さは凸形状の高さの1/2でよい。基板K上に塗布する感光性材料PRとしては通常の半導体製造で用いられるフォトレジストあるいは感光性ドライフィルムを使用することができる。具体的には、ポジ型レジストならOFPR−800、ネガ型レジストならOMR−85などを用いる。ポジ型あるいはネガ型の選択によりレジストに形状を転写する工程(フォトリソ工程)に用いるフォトマスクの形状が変化するが、基本的な形成手順は変わらない。本実施形態では選択比1の樹脂製のポジ型レジストを用いる場合について説明する。基板K上に形成したレジスト上に凸形状と同等形状をレジスト上に形成できるように透過率分布を設定したマスクを介して光を照射し、樹脂を感光させる。
このようにして形成した凸形状の感光性材料をマスクとして基板ガラスを基板Kに垂直な方向にエッチング(異方性エッチング)する。エッチングの手段としては半導体プロセスで通常用いられるドライエッチングが可能である。具体的には反応性イオンエッチング法(RIE)、電子サイクロトロン共鳴エッチング法(ECR)等である。ドライエッチングに用いるガスは基板材料により選択でき、例えば基板材料がガラスの場合はCF4、CHF3等を用いることができる。また、エッチング速度、選択性の調整のために前記のエッチングガスにN2、O2、Ar等のガスを混入する事もできる。このようにして、基板上に図5に示すような凸形状を形成し、導光体1が完成する。
続いて、導光体1の両面に多層膜2、2’を作成する。これはTiO2とSiO2を真空蒸着あるいはスパッタすることで形成する。この場合は、それぞれが設定した膜厚になるように制御する。なお、光の入射損失を少なくするため反射防止膜4を光束の入射位置に形成する。
このようにして導光路デバイス10が完成する。
両図において符号15はリレーレンズを示す。
図6において、導光体1は上下両面に、第1の実施形態と同様、多層膜2、2’が形成されている。多層膜2、2’の中間に凸レンズ状の高屈折率領域1b(以下単にレンズ1bと称す)からなる局部構造が等間隔で複数形成されている。多層膜2には欠陥層3が形成され、光の入射領域には反射防止膜4が形成されている点、およびその他の構成は第1の実施形態に示した構成と同様である。
図7に示す光源11から導かれた光束はリレーレンズ15によって、入射面に焦点を結び、屈折等を考慮して、丁度光束が図6における左端のレンズ1bに入射するように配置されている。この構成の場合、レンズ1bは最初のレンズもその他のレンズも同一の構成でよい。なぜなら各レンズに入射する光束の条件が互いに同等になるからである。第1の実施形態においても、本実施形態と同様リレーレンズを用いれば、すべての凹面鏡の構成を同一にすることができる。ここでは、コリメートレンズ12とプリズム13の他にリレーレンズ15も結像光学素子に含めて考える。
欠陥層3に所定の電界がかけられると(同図にONと表示)、欠陥層のある部分は局部的に光透過性を示し、欠陥層領域から光が外へ出ていく。この構成における光の透過率は非常に高いのでほとんどの光が外部へ出射し、図7に示すように明るい光点が得られる。
上記デバイスの作製方法を説明する。透明なガラス基板Kを2枚(K1、K2とする)用意し、それぞれについて以下の手順で作業を行う。
図8において、初めに樹脂材料からなる感光性材料PRを基板Kの片面に塗布する。
塗布する感光性材料PRの厚さは基板に形成する凹面の高さ(凸レンズの片方)と、後にこの感光性材料PRをレジストとしてエッチングを行う基板材料のエッチング速度とレジストのエッチング速度の比(選択比)により設定する。例えば両者のエッチング速度が等しい場合(選択比1)にはレジストの高さは形成する凹面の高さとほぼ等しくする。また基板材料のエッチング速度がレジストのエッチング速度より2倍大きい場合(選択比2)にはレジストの高さは凹面の高さの1/2でよい。基板K上に塗布する感光性材料PRとしては通常の半導体製造で用いられるフォトレジストあるいは感光性ドライフィルムを使用することができる。具体的には、OFPR−800(ポジ型レジスト)、OMR−85(ネガ型レジスト)などである。ポジ型あるいはネガ型の選択によりレジストに形状を転写する工程(フォトリソ工程)に用いるフォトマスクの形状が変化するが、基本的な形成手順は変わらない。
以下、第1の実施形態において図3ないし5を用いて説明したのと同様な工程を経て図10に示すような凹面形状1b’が形成される。
なお、接着剤としては熱硬化型なども使用可能であるが、いずれにしても、硬化に伴って体積の変化のなるべく少ないものを用いるのがよい。体積変化が避けられない場合は、空洞部から外部へ通ずる浅い溝(図示せず)を設けて、接着剤の体積変化を吸収させてやれば残留歪みが大きく出なくなってよい。
以後、導光体1の両面には、第1の実施形態と同様、欠陥層3を含む多層膜2と反射機能のみの多層膜2’、および反射防止膜4を形成する。
多層膜に入射させる光束はなるべく同じ角度(理想は平行光束)であることが望ましい。本実施形態のように、光束の発散を封じるため、レンズによって収束させる場合でもその収束角度はあまり急角度にならないようにしたい。そのため、レンズ1bと上側の反射面との距離は大きい方がよい。しかしながら下側の反射面までの距離も同様に大きくすると、導光体1の厚さが大きくなり過ぎる。そこで、レンズ1bより下側の反射面までの距離は、上側に比べて短く構成する。そして、レンズ1bの下側の焦点距離が下側の反射面までの距離に一致するようにし、上側の焦点距離が上側の反射面までの距離に一致するように構成する。そのためには基板K1側の凹面部1b’は浅く、基板K2側の凹面部1bは深く形成する。図11(b)はそのように構成した導光体1を示す図である。ただし、図の凹面部1b’、1b”は誇張して示してある。レンズの中心を通る光線は反射後もレンズの中心を通るため、レンズから収束点までの距離が上下で異なる場合は、レンズを等間隔に並べることができなくなる。間隔は上下の距離の比で決まるが、光束が下側から上側に向かって通過するレンズ同士だけでみると、等間隔であり、且つ、欠陥層のピッチに等しくなる。同様に光束が上側から下側に向かって通過するレンズ同士だけで見るとやはり、等間隔で且つ欠陥層のピッチに等しくなる。
下側の反射面までの距離が小さい場合は、収束角度が急角度になるので、反射面としては多層膜より通常の全反射膜の方が良い。
同図は導光体1の光の入出射面側から見たリレーレンズを含む正面図である。
図6、7に示した構成では、直線状に並んだ欠陥層3のいずれか1つが「ON」状態になってそこから光束が出射すると、そこから先にある欠陥層3への光束の伝播はもはやなくなる。したがって、欠陥層が複数並んでいても、いずれか1つの欠陥層から光が出てしまえば、それ以降に並んでいる欠陥層から光を出すことができない。すなわち、上記実施形態では、複数の欠陥層のうち1つだけから光を取り出すデバイスが得られる。ただし、すべての欠陥層のON、OFF制御を高速で走査することができれば、1次元の光走査装置として光書き込み装置に使用できる。
本実施形態は上記の問題を解消し、すべての欠陥層から全く任意に、同時に光を取り出すことができるデバイスを得るものである。
1つ1つの欠陥層3とそこに到る光束の経路を単独に見ると図6に示した断面図が当てはまる。ただし、一つの断面においては欠陥層3は一つしかなく、欠陥層を超えた先にはレンズ1bは用意してない。本実施形態では、欠陥層3−1は多層膜2’による1回反射のみが到達する。欠陥層3−2は、多層膜2’による1回反射のあと、多層膜2と2’による各1回反射の光束が到達する。同様にして、出射端が右にあるものほど多層膜2と2’による繰り返し反射が多くなって各光路の出射端に光束を導く。
それぞれの導光路に対応させてリレーレンズ15も、欠陥層3の個数と同じ数用意する。光源11からの光束はコリメートレンズ12でビーム整形して、すべてのリレーレンズ15を包括できる平行光にする。各リレーレンズは導光体1内のそれぞれの最初のレンズ1bに向け、光の入射位置に収束させる。任意の欠陥層3−k(kは1ないしnとする)が「ON」状態か、「OFF」状態かによって、光束はその欠陥層の位置から外部に出射するかしないかが決まる。すべての欠陥層に到る光束の経路が独立であるため、1つの欠陥層による光束の出射の選択は、他の欠陥層における光束の出射の選択に何ら影響を与えない。したがって、本実施形態によれば、任意の複数の出射端から同時に光束を出射させることができる。
本実施形態は、第2の実施形態を基本に説明したが、第1の実施形態を基本にしてもそっくり同じ原理の構成が可能である。当然、以下に述べるその他の実施形態においても同様である。
本実施形態は、原理的に第2の実施形態と同じ構成になっている。したがって、発光デバイスの構成は図7と同じになるので図示は省略する。異なる点は、導光体1の中に形成されている局部構造としての凸レンズが、第2の実施形態では、基板Kの凹面1b’に充填された高屈折率の接着剤によって形成されていたが、本実施形態では、基板Kの窪みに形成された凸面1c’と空気層もしくは窪みに充填された低屈折率層によって形成されている点である。本実施形態の凸レンズ1cは、見かけ上周囲より低屈折率の凹レンズが挿入された形になって凸レンズの役割をしている。
本実施形態も、基板K1と基板K2の厚さを異ならせて、図11(b)に示した考え方と同様な構成にすることができる。
透明なガラス基板Kを2枚(K1、K2とする)用意し、感光性材料PRを基板Kの片面に塗布し(図14)、所定の透過率分布を設定したマスクを介して光を照射し、現像し(図15)、エッチングして窪みと凸面からなる所望の形状を得(図16)、2枚の基板K1、K2を窪み部を対向させて貼り合わせて導光体1を完成させる(図17)。凸面の頂点は窪み以外の部分より低くなるように設定する。以上、ほとんどの工程は第2の実施形態で説明した工程と同様である。
接着は基本的には窪み部以外の部分のみで行う。そうすることによって、完成品は窪み部に空気層ができ、基板材質と空気との屈折率の差が大きいことによってレンズ作用が出しやすくなる。しかしながら、接着に際して、接着剤の窪み部への流れ込みが防ぎきれないようであれば、使用する光の波長に対して透明で、基板材質より十分屈折率の低い接着剤を窪み部に充填する方法も可能である。
本実施形態は第1の実施形態における下側の多層膜2’側の凹面鏡の代わりに局部構造としてレンズ作用を有する回折格子を配置したものである。この回折格子レンズの焦点位置は第1の実施形態と同様に多層膜2の位置になるように構成されている。
一般にレンズ作用を有する回折格子は、不等間隔で同心もしくは偏心の、円状もしくは楕円状の回折格子を作ることで達成できる。斜めに入射する断面が円形の光束を効率よく収束させるためには、回折格子の面にできる光束の断面に合わせた楕円状の回折格子が適している。入射窓から入った光束が回折格子に入射すると、1次回折光が収束性を以て欠陥層3の位置に到るように構成されている。欠陥層3が「OFF」状態のときは多層膜2によって反射され、発散しながら隣接する回折格子に到る。以下同様なことを繰り返す。
同図に示すように導光体1への入射光束が平行光束の場合、最初の回折格子と、隣接(およびそれ以降の)回折格子とが同じ構成にならないのは図1において説明したのと同じ理由による。したがって、リレーレンズを用いて導光体1の入射面に光束を収束させるようにすればすべての回折格子を同一形状にすることができる。
回折格子は石英基板K上に形成する。まず、基板K上に感光性材料PRを塗布し(図19)、回折格子のパターンをフォトリソグラフィでパターニングする(図20)。この後、エッチングする際のマスクとして働く金属をスパッタで成膜する(図21)。金属は、Ni、Al、Tiなどを使用する。成膜後、感光性材料PRを取り除く。すると、感光性材料上に成膜されていた金属膜は感光性材料とともに脱落して、基板上に成膜されていた金属膜だけ残る(図22)。この状態でドライエッチングを行ない、回折格子パターンを基板Kに作成する(図23)。エッチングのガスはCF4、CHF3等を用いることができる。また、エッチング速度、選択性の調整のために前記のエッチングガスにN2、O2、Ar等のガスを混入する事もできる。そのとき、金属膜もエッチングされてほとんどなくなってしまう。その後、反射膜をスパッタあるいは真空蒸着で成膜する。さきのエッチングマスクとしての金属膜は多少残っていても反射膜の下地になるだけなので、除去する必要はない。
続いて、基板の両面に多層膜を作成する。これはTiO2とSiO2を真空蒸着あるいはスパッタすることで形成する。この場合は、それぞれが設定した膜厚になるように制御する。なお、光の入射損失を少なくするため反射防止膜をデバイスの入射位置に形成する。
欠陥層への収束機能という見方でみれば、本実施形態における局部構造である回折格子の部分をホログラムで置換することもできる。ここでいうホログラムとは、導光体1へ入射し、平行光束もしくは発散光束として回折格子のあった領域に入射する光束を参照光とし、その領域を透過して欠陥層3に到る収束光束を物体光として構成されたホログラムを、回折格子の位置に配置する。実際にはその機能を有するホログラムをコンピュータで計算し、一般に使用される手法で基板上に描画することでホログラムを得ることができる。
更に別の構成として、局部構造として凸レンズ作用を有するフレネルレンズを用いることもできる。フレネルレンズは、球面レンズを多数の同心の円筒に分割し、曲面だった部分を1つの平面に揃うように置き換えたものであり、基本的なレンズ作用は基になった球面レンズの作用とほぼ同等である。フレネルレンズの作成方法は図3ないし5で示した凸面部の作成方法において感光性材料に対するエッチング用のパターンを変えるのみで基本的には同じである。フレネルレンズも必要に応じて楕円状に形成することができる。同様な考え方で、第1の実施形態の凹面鏡をフレネルレンズ同様平面かすることもできる。すなわち凸レンズ作用を有するフレネルレンズを裏返しにした構造にして曲面に相当する部分を鏡面とすればよい。作成方法も上記と類似の方法で良い。
本実施形態は第2の実施形態を基本形として用いて説明するが、第1ないし第5の実施形態すべてについて同じ原理が適用できる。
本実施形態が第2の実施形態と異なるところは、導光路デバイスの光の入射面が光の出射面と同じ面ではなく、逆側になっている点である。すなわち、第2の実施形態では光の入射面は多層膜2を施した面に設定していたが、本実施形態では多層膜2’の面に設定している。したがって、第2の実施形態では、入射光束は最初に単レンズ1bを経由して多層膜2’側にある反射面に達していたが、本実施形態では、入射光束は単レンズ1bを経て直接多層膜2の中の欠陥層3に向かう。その後の光束の挙動は第2の実施形態の場合と同じである。
本実施形態の構成の利点は、図25で明らかなように、光の入射面と反射面が同じ側にないため、光の出射面側が単純な平面構成となり、光の出射面の配置の自由度が増すことである。
前述のように、本構成は第1ないし第5のすべての実施形態に適用できる。ただし、入射光束を平行光束にするか、リレーレンズを用いて収束光束にするかは、必要に応じて選択すればよい。導光体1の局部構造の構成も当然それに応じた構成にする。
また、本実施形態を図12に示した第3の実施形態に適用する場合、一番光路の短い導光路においては、入射光束は局部構造を経ずに出射端に到る構成にすることも可能である。
2 誘電体多層膜
3 欠陥層
4 反射防止膜
10 導光路デバイス
11 光源
12 コリメートレンズ
13 プリズム
15 リレーレンズ
Claims (20)
- 光源と、導光体の対向する2つの面の一方に1次元フォトニック結晶多層膜を設け光の出射面とした導光路デバイスと、前記光源からの光束を前記導光路デバイスの光の入射面に入射させる結合光学素子とで構成され、前記1次元フォトニック結晶多層膜に或る所定のピッチで複数の屈折率可変の欠陥層を設け、他方の面には全反射機能を持たせた発光デバイスにおいて、
前記1次元フォトニック結晶多層膜は反射性の機能を有し、該1次元フォトニック結晶多層膜に設けられた複数の欠陥層は通常は光束を全反射し、電界の印加により光透過性を示す特性を有し、前記複数の欠陥層に印加される電界がOFF状態のときには、前記入射面から入射した光束は前記複数の欠陥層と前記他方の面との間で反射を繰り返し、前記導光路デバイスの光束の入射位置とは反対側の端縁まで伝播されて出射されるが、前記複数の欠陥層に印加する電界を個別に制御することにより、任意の位置の欠陥層から光束を出射するように構成されており、
前記他方の面には入射した光束を前記欠陥層に収束させるための収束機能を有する複数の局部構造が前記所定のピッチと同じピッチで設けられており、前記局部構造の作用により、前記複数の欠陥層の各欠陥層には集光状態の光束が集光されるようしたことを特徴とする発光デバイス。 - 請求項1に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は反射性を有する凹面であり、透過率分布を有したフォトマスクを利用した半導体プロセスで形成されていることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項1に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造はレンズ作用を有する回折格子であることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項1に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造はレンズ作用を有するホログラムであることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項1に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造はフレネルレンズであることを特徴とする発光デバイス。
- 光源と、導光体の対向する2つの面の一方に1次元フォトニック結晶多層膜を設け光の出射面とした導光路デバイスと、前記光源からの光束を前記導光路デバイスの光の入射面に入射させる結合光学素子とで構成され、前記1次元フォトニック結晶多層膜に或る所定のピッチで複数の屈折率可変の欠陥層を設け、他方の面には全反射機能を持たせた発光デバイスにおいて、
前記1次元フォトニック結晶多層膜は反射性の機能を有し、該1次元フォトニック結晶多層膜に設けられた複数の欠陥層は通常は光束を全反射し、電界の印加により光透過性を示す特性を有し、前記複数の欠陥層に印加される電界がOFF状態のときには、前記入射面から入射した光束は前記複数の欠陥層と前記他方の面との間で反射を繰り返し、前記導光路デバイスの光束の入射位置とは反対側の端縁から出射されるが、前記複数の欠陥層に印加する電界を個別に制御することにより、任意の位置の欠陥層から光束を出射するように構成されており、
前記一方の面と他方の面の中間部には、光束を前記他方の面に収束させる局部構造と、前記他方の面から反射されてきた光束を前記欠陥層に収束させるための局部構造とが同一面にそれぞれが等間隔になるよう交互に並べて設けられており、前記局部構造の作用により、前記複数の欠陥層の各欠陥層には集光状態の光束が集光されるようしたことを特徴とする発光デバイス。 - 請求項6に記載の発光デバイスにおいて、前記導光体が2枚の基板から形成され、その貼り合わせた界面に収束機能を有する局部構造が形成されていることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項6または7に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造を設けた面から、前記一方の面までの距離と前記他方の面までの距離とが、等しくないことを特徴とする発光デバイス。
- 請求項8に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造を設けた面から、前記一方の面までの距離が前記他方の面までの距離より大きいことを特徴とする発光デバイス。
- 請求項6ないし9のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は前記導光体の屈折率より高い屈折率からなる凸レンズ形状の高屈折率領域によって構成されていることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項10に記載の発光デバイスにおいて、前記高屈折率領域は凸レンズ形状の空洞に充填された高屈折率の接着剤からなることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項6ないし9のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は凹レンズ形状の低屈折率領域によって構成されていることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項12に記載の発光デバイスにおいて、前記低屈折率領域は凹レンズ形状の空気層を含む空洞からなることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項12に記載の発光デバイスにおいて、前記低屈折率領域は凹レンズ形状の空洞に充填された低屈折率の接着剤からなることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項1,3ないし14のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は半導体作製プロセスを用いて形成したことを特徴とする発光デバイス。
- 請求項1ないし15のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記導光路デバイスの前記光の入射面は、前記光の出射面と対向する面に設けられていることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項1ないし16のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記欠陥層は電気的制御により、屈折率変化を生ずる特性を有することを特徴とする発光デバイス。
- 請求項17に記載の発光デバイスにおいて、前記欠陥層は電気光学効果を有する材質もしくは液晶で構成されることを特徴とする発光デバイス。
- 請求項1ないし18のいずれか1つに記載の発光デバイスを用いたことを特徴とする光書込み装置。
- 請求項1ないし18のいずれか1つに記載の発光デバイスを用いたことを特徴とする光通信装置。
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