JP4804495B2 - 含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法 - Google Patents

含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、トリクロロベンゼン等の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法に関する。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は熱に対して安定で、電気絶縁性が高く、耐薬品性に優れている特性から、かつては熱媒体、電気機器の絶縁油、可塑剤、塗料、ノンカーボン紙の溶剤など、非常に幅広い分野に用いられた。しかし、生体に対する毒性が社会問題化するとともに製造・輸入が禁止されたが、その特性により当時は適切な処理方法がなく、使用者に保管が義務付けられた。近年になり、PCB処理が開始されるとともに、土壌汚染の問題や安全な処理方法の検討が早急な課題となっている。
PCBによる土壌汚染は、PCBが使用禁止となった1974年以降、使用した事業者により適正に保管されてきたことから、これまで問題となることが少なかった。しかし、保管期間が30年を超え、多くの保管施設では容器の劣化等による漏えいが発生しており、直下の土壌を汚染している場合もある。
PCB処理は2004年に開始されたが、処理の進捗にあわせて保管施設の撤去が進むことにより、保管施設の跡地のPCB汚染が表面化するおそれがある。また、PCB処理施設は日本全国に5箇所しかなく、PCB廃棄物を保管施設から処理施設まで移動するため、場合によっては1,000kmを超える長距離を輸送することもあり、輸送中の事故による新たな土壌汚染のリスクも考えられる。
PCBによる土壌汚染の処置は、汚染土壌を掘削除去して新たな土壌に入れ替える方法がとられることが多く、その他に現場でイソプロピルアルコール等の有機溶媒で洗浄する浄化方法が用いられることもある。しかし、有機溶媒には消防法危険物に該当するものが多く、取扱い方法や使用できる場所に制限がある。また、有機塩素系溶媒は消防法危険物に該当せず、洗浄能力にも優れているが、臭気や人体への有害性等が問題になり、近年では開放系の使用が削減される方向にあり、実質的には使用できない状況である。
鉄道分野においても、PCBはかつて車両用変圧器をはじめとする各種電気機器に使用され、現在は日本全国に設置された数10箇所を超える保管施設に相当数の変圧器やコンデンサ等が保管されている。
PCBの漏洩事故における処置は、付着した固形物の回収や有機溶剤による洗浄が一般的であり、処置後の廃液などの処理を含めて技術が公知であるものの、公道等で事故が発生した場合など、有機溶媒の使用が困難な状況において水系の洗浄剤を使用した洗浄が行なわれている。
水系洗浄は界面活性剤を使用する方法であり、洗浄剤の取扱いが簡便で比較的臭気や有害性が低く、引火や爆発といった危険もほとんどない安全な洗浄方法である。ところが、PCB、油分、洗浄剤を含む多量の廃水が発生し、これを簡易に処理する有効な方法が提供されていないのが現状である。
界面活性剤の特性として、親水部を外側に親油部を内側に形成したミセルの中に油分としてPCBを取り込むため、これを油水分離することで油相として取り除くことができるが、洗浄後の廃液はエマルジョンとなるため油水分離などの後処理が難しく、特に排出基準の厳しいPCBを含む場合には、膨大な廃液を保管しなくてはならない場合もある。
水中のPCBを分解する方法として、紫外線処理が効果的であることが知られているが、高濃度の油分や洗浄剤を含む廃水では処理効率が悪く、多大なエネルギーと処理時間を必要としていた。
界面活性剤も分解されにくい化学物質であるが、紫外線処理によって分解することができる。例えば、特許文献1には、界面活性剤及び放射性物質を含む廃液の処理方法及びその処理装置として、廃液に活性炭を混合してこの活性炭と放射性物質を除去した後、オゾンまたは酸素の存在下で洗濯廃液に紫外線を照射することによって、洗濯廃液中に残存する界面活性剤を分解する技術が開示されている。
特開平9−304589号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、活性炭によってPCBなどの含塩素有機化合物を除去することは困難である。紫外線処理を行なう方法は、廃液中の有機物濃度が高い場合は処理効率が大きく低下するほか、着色物質や浮遊物を多く含む廃液においても光が遮断されることによって反応が阻害される。つまり、従来の紫外線処理方法では、有機物濃度が低い廃液を高度に処理する場合に適しているが、高濃度の界面活性剤や油分を含む廃液の処理には不向きであった。
一方、従来の油水分離を行なう方法では、水相に含まれるPCBの濃度が高く、PCBの下水排除基準(3μg/L)を満足する処理水を得ることが困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、油水分離と紫外線処理を組み合わせ、かつ洗浄剤の特性を利用することで、高濃度の洗浄剤と油分を含む廃液から、PCBの下水排除基準を下回る処理水を得ることができ、安全かつ効果的な含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者は、水系洗浄の短所である廃液処理について検討を行い、界面活性剤の特性を利用した油水分離に、過酸化水素と紫外線を用いた酸化分解を組み合わせる方法を提案した。そして、非イオン系界面活性剤の一種であるポリオキシエチレンアルキルエーテル類を主成分とする洗剤を使用することで、曇点を利用した効果的な油水分離が可能となることを見出した。更に、界面活性剤の初期濃度を限界ミセル濃度(CMC)より低い濃度に設定することで紫外線による処理効率が向上することを見出した。また、曇点分離した水相は表面張力が高いことから、界面活性剤濃度が高く、洗浄に再利用できることを見出した。
以上の結果から、界面活性剤を含む廃液を処理に適した条件に調整することで効率的な処理が可能になり、処理による新たな廃棄物の発生や廃液の増加も抑制できることも示された。そして、界面活性剤を用いて油汚染土壌を洗浄し、処理が困難な廃棄物が発生しない処理フローを考案し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の(1)〜(6)で構成される。
(1)本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法は、非イオン系の界面活性剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程において生じた含塩素有機化合物を含む廃液を、
曇点以上の温度に加熱して油相と水相とに分離する油水分離工程と、
油水分離した前記水相において、前記界面活性剤の濃度を限界ミセル濃度より低い濃度に調整し、紫外線領域以下の波長を有する照射光を照射して、前記水相の含有成分を分解する紫外線処理工程と、を有することを特徴とする。
(2)本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法は、前記紫外線処理工程において、過酸化水素を添加して前記照射光を照射することが好ましい。
(3)本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法は、前記界面活性剤が、少なくともポリオキシエチレンアルキルエーテル類を含むことが好ましい。
(4)本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法は、前記洗浄液として、前記油水分離工程後の前記水相を再度利用しながら、前記洗浄工程と前記油水分離工程を繰り返し行なうことができる。
(5)本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法は、前記含塩素有機化合物として、少なくともポリ塩化ビフェニル、またはトリクロロベンゼンのいずれかを含むことができる。
(6)本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法は、前記油水分離工程を、常圧で100℃以内の温度で行なうことが好ましい。
本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法によれば、非イオン系の界面活性剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程において生じた含塩素有機化合物を含む廃液を、曇点以上の温度に加熱して油相と水相とに分離する油水分離工程と、油水分離した前記水相において、前記界面活性剤の濃度を限界ミセル濃度より低い濃度に調整し、紫外線領域以下の波長を有する照射光を照射して、前記水相の含有成分を分解する紫外線処理工程とを有することで、従来の油水分離に比べて油相に含まれる水分が少なく効率よく油水分離でき、水相において界面活性剤がミセルを形成しないため照射光を遮断せず、含塩素有機化合物の分解反応が阻害されることなく、安全かつ効果的に洗浄排水を処理することができる。そのため、高濃度の洗浄剤と油分を含む廃液から、PCBの下水排除基準(3μg/L)を下回る処理水を得ることができる。
また、本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法によれば、前記紫外線処理工程において、過酸化水素を添加して前記照射光を照射することで、ヒドロキシラジカル(・OH)が生成するため、ヒドロキシラジカルの強い酸化作用により有機物が分解されるとともに、副反応が起こりにくく有害な副生成物をほとんど発生しないため、新たにPCB汚染物となる二次廃棄物を発生させず、安全かつ効果的に洗浄排水を処理することができる。
また、本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法によれば、前記界面活性剤は、少なくともポリオキシエチレンアルキルエーテル類を含むことで、曇点が常圧で100℃以内の温度となるため、高温・高圧を伴わずに安全かつ効果的に洗浄廃水を処理することができる。
また、本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法によれば、前記洗浄液として、前記油水分離工程後の前記水相を再度利用しながら、前記洗浄工程と前記油水分離工程を繰り返し行なうことで、廃液量を増加させることなく、安全かつ効果的に洗浄排水を処理することができる。
また、本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法によれば、前記含塩素有機化合物として、少なくともポリ塩化ビフェニル、またはトリクロロベンゼンのいずれかを含むことで、このような毒性の高い化学物質を分解し、安全かつ効果的に洗浄廃水を処理することができる。
また、本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法によれば、前記油水分離工程を、常圧で100℃以内の温度で行なうことで、高温・高圧を伴わずに安全かつ効果的に洗浄廃水を処理することができる。
以下に、本発明の一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法は、含塩素有機化合物としてポリ塩化ビフェニル(PCB)やトリクロロベンゼンなどを含む洗浄廃水に対し、油水分離と紫外線処理を組み合わせ、かつ洗浄剤の特性を利用することを特徴としており、図1に示すように、非イオン系の界面活性剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程S1と、洗浄工程S1において生じた含塩素有機化合物を含む廃液1を、曇点以上の温度に加熱して油相5と水相4とに分離する油水分離工程S2と、油水分離した水相4において、界面活性剤の濃度を限界ミセル濃度より低い濃度に調整し、紫外線領域以下の波長を有する照射光を照射して、水相4の含有成分を分解する紫外線処理工程S3と、で概略構成されている。
<洗浄工程S1>
洗浄工程S1では、洗浄対象物に対し、非イオン系の界面活性剤を含む洗浄液で洗浄を行うことによって、含塩素有機化合物を含む廃液1が発生する。
本発明では界面活性剤の濃度および分解の指標として、表面張力を測定することとした。表面張力は、水の表面張力(72.5dyn/cm,25℃)を基準として、界面活性剤の濃度の上昇とともに低下し、界面活性剤がミセルを形成する最低の濃度(限界ミセル濃度:CMC)に達した以降はほぼ一定となる。表面張力は、汚れ成分の洗浄力や油分の可溶化等の界面活性剤の特性と密接に関係しているため、間接的にこうした諸特性について知ることができるほか、CMCより低濃度域では界面活性剤の濃度を推測することも可能である。表面張力の測定は、操作が簡便で短時間で行うことができ、再現性にも優れているが、電解質や油分による影響を強く受け、性状によっては測定できない場合がある。
「洗浄液」
洗浄液としては、非イオン系の界面活性剤を含んでいればよく、一般的に市販洗剤を用いることができるが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類を含むことが好ましい。これにより曇点を常圧で100℃以内の温度とすることができ、高温・高圧を伴わずに安全かつ効果的に洗浄廃水を処理することができる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル類は、一般的に広く普及している界面活性剤の一種であり、多くの市販洗浄剤に使用され、毒性が低く生分解性にも優れていると言われている。
「市販洗剤のスクリーニング」
実験に使用する洗剤として、鉱油を洗浄の対象とした市販の工業用洗剤を中心に17種類を選定した。鉱油用の洗剤に使用する界面活性剤の成分は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類が多く、工場の機械や床の清掃等を目的とした洗浄剤の他に、船舶事故等によって海洋や河川に油が流出した場合に直接散布する分散剤として販売されているものも選択した。その他、非イオン系界面活性剤と陰イオン系界面活性剤等、異種の界面活性剤を混合したものも使用した。
一般的に市販洗剤は、主剤となる界面活性剤に、添加剤として可溶化剤、着色剤、香料、pH調整剤等が含まれるが、詳細については非公開であり、得られる情報はパッケージの表示、製品安全データシート(MSDS)に記載されている範囲に限られる。そのため、界面活性成分の具体的な物質名等を特定することは難しいが、界面活性剤の含有量は、表示があるものでは概ね5%前後のものが多かった。また、非イオン系界面活性剤の水溶液は中性であるが、洗浄力を高めるためアルカリを添加し、アルカリ性洗剤と称しているものもあった。
「表面張力測定」
上記で選定した市販洗剤のうち、14種類について希釈濃度と表面張力の関係を調べた。表面張力の測定には輪環法を用いた。フラットシャーレ(直径64mm)に試験液5mLをとり、デュヌイ表面張力試験器(伊藤製作所製)で測定した。測定は最低3回行い、誤差が1.0dyn/cm以内となった3点の平均を測定値とした。
結果は、いずれの洗剤も洗剤濃度が0.001%では水の表面張力(72.5dyn/cm)とほぼ同じになり、濃度の上昇とともに表面張力が減少した。そして、0.1〜1.0%を超えると表面張力が約35dyn/cmで一定となった。表面張力は、界面活性剤濃度がCMCに達すると一定になることから、これらの洗剤のCMCは0.1〜1.0%程度と推定できる。また、洗剤の種類による表面張力変化の差異は少なく、CMCも概ね一致した。これは、洗剤の原液が使用時に100倍に希釈されることを想定し、その時の界面活性剤濃度がCMCの10倍になるように設計されているためであると考えられる。
<油水分離工程S2>
油水分離工程S2では、洗浄後の廃液1を曇点以上の温度に加熱して、油相5と水相4とに分離する。例えば、廃液1を常圧で100℃以内に加熱し、油水分離すればよい。これは界面活性剤の特性を利用した油水分離方法であり、非イオン系界面活性剤の一種であるポリオキシエチレンアルキルエーテル類の特性である曇点を利用している。
「曇点分離」
この種の界面活性剤は、分子中の親水基に水分子が物理的に結合することによって水に溶ける性質を有している。この結合は常温では安定であるが、温度が上昇すると分子運動が激しくなり、やがて結合が切れて水溶性の性質がなくなる。この温度を曇点という。この性質を利用することで油水分離を短時間に、かつ薬剤等の添加が不要であることから新たな廃棄物を発生させずに行うことが可能である。これを曇点分離という。
一般的な静置分離と比較して、曇点分離では油分を凝縮する効果が高く、油相5における水分が少ないため、同量の油分を含みながらも油相5の回収量を少なくすることができる。そのため、油相5に取り込まれた界面活性剤も少量であることから、油水分離後の水相4における界面活性剤の濃度も高く維持できる。
「油水分離方法の比較」
曇点分離の効果を分析するために、本発明者は、洗剤とトランスオイルを用いて、静置分離と曇点分離の2通りの油水分離方法による比較実験を行なった。
洗剤(KDS製シンプルグリーン、界面活性剤濃度4.5%)を蒸留水で10倍に希釈し、2本の三角フラスコに100mLずつ入れ、それぞれにトランスオイル10mLを添加し、マグネティックスターラーで15分間攪拌した。その後、そのうち1本を沸騰したウォーターバス中で10〜15分加熱し、すぐに分液ロートに移した。残る1本は加熱を行わずに分液ロートに移した。それぞれ1時間静置し、油相と水相の分離を観察した。
その結果、静置分離では油相が白濁したエマルジョンとなったが、曇点分離では黄色のトランスオイルそのものが分離され、曇点分離による効果的な油水分離を確認できた。油相の回収量は、静置分離では14mL、曇点分離では10.5mLであった。さらに回収した油相について、塩析によりエマルジョンを破壊したところ、いずれの油相中にもトランスオイルが9.8〜9.9mL含まれ、98〜99%のトランスオイルが回収できていた。特に、曇点分離では水分を0.6mLしか含んでおらず、水分を4mL含んでいた静置分離と比べて油分を凝縮する効果があることがわかった。
一方、水相については若干油膜が浮上する性状で回収された。そこで、水相に混入する油分をさらに減少させるため、分液する直前に分液ロートを氷水で冷却し、水に対する油の溶解度を下げることで油水分離のさらなる効率化を試みた。その結果、分離直後では若干の油膜が見られたが、その後、室温に戻るまで放置すると、溶解度の回復によって油膜の浮上がなくなり、表面張力が測定できるまでになった。
なお、効果的な曇点分離を行うためには一定の条件があり、エマルジョンが油/水型であることと、廃液1中に油が10〜20%含まれていることが必要であることが、本発明者らの実験により判明した。これは曇点が界面活性剤の水溶性を失わせることによる効果であることと、水溶性を失った油分が浮上するためには、分離した油分を凝集させる必要があるためであると考えられる。廃液1中の油濃度として10〜20%はやや高めであると考えられるが、曇点分離の効果が十分に得られない場合は、既に回収した油相5を利用するなどして油の濃度調整を行うことにより、曇点分離を行うことが可能であると考えられる。
「水相4の再利用」
前述の比較実験により、曇点分離で全量に近い油分を分離することができたことから、本発明者は、分離後の水相4を再度洗浄に利用することが可能ではないかと考え、検討を行った。
まず、前述の比較実験と同様に、静置分離と曇点分離の2通りの方法による油水分離を行い、油相5と水相4に分離回収した。そして、分離した水相4に再度トランスオイルを10mL添加し、各々の方法で油水分離を繰り返し計8回行った。回収した油相5は塩析を行い、油分と水分に分離した。各回の油水分離で回収された油相5の量と塩析の結果、添加したトランスオイルは、いずれも96%以上が油相5で回収された。
静置分離では、油相はほぼ均一なエマルジョンとなり、さらに塩析すると油分と水分が常に10:4の比率になった。一方、曇点分離では、毎回油相5がエマルジョン上に黄色のトランスオイルが浮上した性状で回収された。これを塩析すると、静置分離に比べて水分の比率が低いことがわかり、特に1回目と2回目では水分の混合がわずか0.6mLであった。
この結果より、洗浄液を再利用した場合でも油水分離が可能であり、さらに曇点分離では油分をより凝縮できることが確認された。また、二相分離後の水相4について表面張力を測定したところ、図2に示すとおり曇点分離の方が高くなった。これは、曇点分離ではトランスオイルと同時に界面活性剤も油相5に凝縮されていることを示している。また、曇点分離では、試行回数によって油相5中に混在する水分が増加する傾向を示したが、これは水相4の界面活性剤濃度が低下し、曇点分離の効果が低減したためであると考えられる。従って、界面活性剤の補充による濃度調製を行うことで、洗浄剤を再利用することが可能である。
以上の実験結果に基づき、本実施形態では、油水分離工程S2後の水相4を再度利用しながら、洗浄工程S1と油水分離工程S2を繰り返し行なうことができる。これにより、廃液1の量を増加させることなく、安全かつ効果的に洗浄排水を処理することができる。
<紫外線処理工程S3>
紫外線処理工程S3では、油水分離工程S2で油水分離した水相4について、界面活性剤の濃度をCMCより低い濃度に調整し、紫外線領域以下の波長を有する照射光を照射して、水相4の含有成分を分解する。この時、あらかじめ水を入れた反応槽に紫外線を照射しながら水相4と過酸化水素を添加することが好ましい。
含塩素有機化合物の分解には紫外線処理が効果的であるが、過酸化水素を添加しながら行なうとより効果が高いことが知られている。過酸化水素と紫外線による有機物の分解は、過酸化水素に254nmに最大波長をもつ紫外線を照射することで生成するヒドロキシラジカル(・OH)の強い酸化作用によることが知られており、促進酸化法とも言われる。この方法は副反応が起こりにくく、有害な副生成物をほとんど発生しないという特徴がある。しかし、廃液1中の有機物濃度が高い場合は処理効率が大きく低下するほか、着色物質や浮遊物を多く含む廃液1においても光が遮断されることによって反応が阻害される。つまり、紫外線処理は、有機物濃度が低い廃液1を高度に処理する場合に適しているが、高濃度の界面活性剤や油分を含む廃液1の処理には不向きである。
従って、予め油水分離により油分や有機物を分離除去したうえで紫外線処理を行えば、効果的な処理が期待できる。
「紫外線による界面活性剤の分解」
紫外線処理工程S3における界面活性剤の分解効果を調べるために、前述のスクリーニングに用いた市販洗剤17種類について、以下のような実験を行なった。
1L三角フラスコに水1L、洗剤1mL、過酸化水素水10mLを入れ、洗剤の初期濃度0.1%の試験液を調製した。これに水中用殺菌ランプ(三共電気製GLK8MQ、6.3W、中心波長254nm)を上部から挿入して液中に浸潰し、マグネティックスターラーで攪拌しながら紫外線を照射した。サンプリングは処理前および処理30分後以降2時間まで15分間隔で行い、各回5mLを採取して表面張力を測定した。その結果、表面張力変化は洗剤によって差が見られた。2時間の紫外線処理で17種類中5種類が70dyn/cmを超え、7種類が65〜70dyn/cmとなったものの、60dyn/cmを下回る変化の小さいものが5種類あった。
この結果を洗剤の希釈濃度と表面張力の関係とあわせて検討したところ、変化の小さい5種類のうち4種類はいずれも初期濃度がCMCを超えていることがわかった(残り1種類はD-リモネンを主成分とする洗剤で、粘性が高かったため表面張力の測定は省略した)。逆に、初期濃度がCMCを大きく下回っている2種類については1時間までに70dyn/cmに達していた。これにより、紫外線の処理効率にCMCが関係していることが示唆された。CMC以上の濃度では界面活性剤がミセルを形成し、構造が安定化するため紫外線による分解が阻害されるものと考えられる。従って、界面活性剤の紫外線処理は、初期濃度をCMCより低くして行うことで効率化が可能である。
「表面張力の変化」
市販洗剤は、含有する界面活性剤の詳細や添加剤が非公開であるため、界面活性剤の種 類による差異や、添加剤による影響について調査することが困難である。そこで、添加剤 を含まず、組成を知ることができる工業原料用の非イオン系界面活性剤を使用し、界面活性剤の構造による紫外線処理への影響について検討した。
表1に示す7種類の非イオン系界面活性剤について、界面活性剤の濃度を0.0001〜0.1%まで変化させて表面張力を測定した。結果を図3に示す。
Figure 0004804495
表面張力測定の結果、希釈濃度と表面張力の関係は市販洗剤と類似の傾向を示し、CMCは分子量が小さなNo.1が0.05%と高かったが、その他は概ね0.005〜0.01%であった。これは、市販洗剤のCMCが約0.1%で、洗剤に含まれる界面活性剤が概ね5%前後であるということと一致した。
また、CMCを超えて一定となる表面張力についても30〜40dyn/cmで市販洗剤とほぼ同じ結果となったが、疎水基が比較的大きいNo.3とNo.5では高い値を示した。
更に、希釈濃度と紫外線処理の効果について調べた。前述と同様に、1L三角フラスコに水1L、洗剤(No.1〜No.7)1mL、過酸化水素水10mLを入れ、洗剤の初期濃度0.1%の試験液を調製した。これに水中用殺菌ランプ(三共電気製GLK8MQ、6.3W、中心波長254nm)を上部から挿入して液中に浸潰し、マグネティックスターラーで攪拌しながら紫外線処理を1時間行い、その前後の表面張力を比較した。結果を図4に示す。
市販洗剤と同様に、紫外線処理効果はCMCに依存する傾向が見られた。この傾向は、特に分子量の大きいものや疎水基の比率が高い構造を持つもので若干強く見られたが、全体的に極端な差異は見られず、この種の界面活性剤では、紫外線処理に分子構造が影響を与える可能性は少ないと考えられる。
「廃液量の抑制」
前述したように、紫外線処理による界面活性剤の分解は、界面活性剤の濃度をCMCより低くすることで効率的に達成できる。しかし、市販洗剤の使用範囲における界面活性剤濃度はCMCの10〜100倍であり、洗浄時における界面活性剤の効果は、逆にCMCより高い濃度でなければ発揮されない。従って、廃液1の処理にあたっては、界面活性剤が高濃度で含まれていることを念頭に検討する必要がある。界面活性剤の濃度は、廃液1を希釈しても低下させることが可能であるが、そのぶん廃液1の量が増加してしまう。
そこで、本発明者は、廃液量を増やさない処理方法として、あらかじめ反応槽に水を入れておき、紫外線を照射しながら廃液1を少量ずつ、処理量と添加量のバランスをとりながら添加し、反応槽内の界面活性剤濃度をCMCより低く維持する方法を考案した。
図5に示すような実験装置において、反応槽(1Lトールビーカー)10にあらかじめ水900mLと過酸化水素水10mLを入れ、水中用殺菌ランプ11を2本(計12.6W)浸漬して点灯した。そこに、10倍希釈した洗剤(グローブイーピー製BY FAR Z−M)をペリスタポンプ12でゆっくり送液し、図6に示すように54時間で計900gの希釈洗剤を投入し、表面張力の変化を測定した。
送液量の基準として、送液した全量が未分解の場合でも反応槽10内の界面活性剤濃度が、1時間以内にCMCを超えない量として20〜30g/hに設定した(洗剤中の界面活性剤が原液で約5%含まれ、そのCMCが約0.01%であると仮定)。結果を図7に示す。
この実験の結果から、表面張力が50〜72.5dyn/cmの間で推移し、反応槽10内をCMCより低い濃度に維持することで、紫外線処理効率が低下しないことを確認した。処理後の廃液1の量は1,880mLであり、投入量に対して2.1倍まで低減することができ、この方法が廃液1の量を増やさない有効な方法である可能性を示した。
投入方法は、連続的に投入しても問題ないが、過負荷に気付くのが遅れるおそれがあるため、例えば1時間サイクルとして30分間投入、30分間停止(紫外線照射のみ)を繰り返すような断続的な投入方法であると制御がしやすく、紫外線処理への影響もないため好ましい。このような投入方法でpHは3でほぼ一定となり、処理期間中に大きく変動することはなかった。
ただし、投入される希釈洗剤がアルカリ性(pH8以上)であるため、過酸化水素の不足等の異常により分解が進行しなくなると徐々にpHが上昇する傾向が見られた。従って、分解の状況は表面張力とあわせてpHをモニターすることが好ましく、このようにすることで、より正確に処理状態を把握することが可能である。
水温は、紫外線ランプの発熱により徐々に上昇する傾向が見られた。そこで、水温が40℃を超えたところで25℃まで冷却する制御と、25℃で一定に保つ制御とを両方行ったが、いずれも処理への影響は見られなかった。
以上に基づいて、本発明者は、図1に示すように、界面活性剤で油汚染土壌を洗浄した廃液1の処理フローを考案し、本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法を完成させた。漏出量が多量であった場合などには、粗洗浄を複数回行うために、補充・濃度調整しながら油水分離後の水相4を利用する。
このようにして、従来の油水分離に比べて油相5に含まれる水分が少なく、効率よく油水分離できた。水相4において、界面活性剤がミセルを形成しないため照射光を遮断せず、含塩素有機化合物の分解反応が阻害されることなく、安全かつ効果的に洗浄排水を処理することができる。そのため、高濃度の洗浄剤と油分を含む廃液1から、PCBの下水排除基準(3μg/L)を下回る処理水を得ることができる。
なお、廃棄物処理について、含塩素有機化合物としてPCBを含む廃油は、既存のPCB処理施設に処理を委託する。油相5は、廃油としてPCB濃度が0.5mg/kgを超えた場合は特別管理産業廃棄物として処理し、PCB濃度が0.5mg/kg以下であれば産業廃棄物として処理すればよい。水相4は洗剤の再利用を考慮しない場合は、紫外線処理によってPCBを0.003mg/L以下まで分解し、中和して公共下水道に放流する方法、もしくは0.03mg/L以下まで分解し、廃酸として産業廃棄物処理する方法が選択できる。
また、PCBが高濃度である場合は、一定濃度に低減するまで洗剤を再利用して処理を行い、その後に仕上げ洗浄もしくは生物処理等の他の処理法を組み合わせる方法もある。いずれの工程においても、処理が困難な廃棄物が発生することはないと考えられる。
「GC−MS分析」
実施例として模擬汚染廃液の処理試験を実施し、GC−MS分析を行なった。まず、有機塩素化合物を含む油類を界面活性剤で洗浄することにより発生する廃液を想定した模擬汚染廃液を調製した。これに紫外線を照射した場合の有機塩素化合物と、油類のそれぞれの影響について調べた。模擬汚染物には、有機塩素化合物として1,2,4−トリクロロベンゼンを、油類として飽和炭化水素であるn−ヘキサデカンと、末端に不飽和結合を有する炭化水素であるオクタデセンの2種類をそれぞれ選定した。
(模擬汚染廃液の調製)
非イオン系界面活性剤を約5%含む市販洗剤(グローブイーピー製BY FAR Z−M)1mLに1,2,4−トリクロロベンゼン、n−ヘキサデカン、オクタデセンをそれぞれ10μLずつ加えて溶解した。これを、水1Lを入れたビーカーに投入し、模擬汚染廃液とした。(廃液濃度は市販洗剤0.1%、1,2,4−トリクロロベンゼン15mg/L、n−ヘキサデカン8mg/L、オクタデセン8mg/Lである。)
(実験方法)
実施例の模擬汚染廃液に、酸化剤として過酸化水素水1mLを添加し、マグネティックスターラーで攪拌しながら紫外線処理を行った。紫外線ランプは水中用殺菌ランプ2本(計12.6W)を浸漬して照射した。一定時間照射した後、サンプルを15mL採取した。そのうち10mLを遠心チューブにとり、酢酸エチル2mLを加えて約40分間振とう抽出し、遠心分離して得られた酢酸エチル相をガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)で分析した。結果を図8に示す。
なお、残り5mLはガラス製シャーレに入れ、表面張力を測定し、サンプリング時に溶存酸素計(笠原理化工業製DO−5Z)で液中の溶存酸素量を測定した。溶存酸素は処理開始とともに減少し、10分後では0.25mg/Lであった。その後、30分後から大きく上昇し、60分後には測定限界の19.99mg/Lを超えた。表面張力は処理時間とともに高くなり、20分後には一定となったことから、この時点で界面活性剤の性質を失っているものと考えられる。
(分析結果)
GC−MS分析の結果、図8(a)に示すように、紫外線処理前には添加した3種類の物質のピークパターンが明確に見られたが、図8(b)に示すように、紫外線処理60分後では1,2,4−トリクロロベンゼンのピークのみが見えなくなった。また、処理後に分解生成物や重合物と考えられるような新たなピークの出現は確認できなかった。
また、紫外線処理時間とGC−MS分析におけるピーク強度の関係について調べると、オクタデセンとn−ヘキサデカンのピークは60分後においても残存が確認されたが、1,2,4−トリクロロベンゼンのピークは最初の10分間で見られなくなったため、1,2,4−トリクロロベンゼンについては処理時間2分ごとに分析した。結果を図9に示す。
図9に示すように、1,2,4−トリクロロベンゼンは、4分後でに急速に減少し、8分後ではピークが見えなくなった。また、この間にジクロロベンゼンや重合物等と考えられるピークは確認できなかった。オクタデセンは、20分後まではあまり変化が無く、その後徐々に減少した。n−ヘキサデカンは、20分後までは増加していき、20分後を過ぎてから徐々に減少した。
「対比実験」
続いて、上記の実施例と同じ洗剤を用い、洗剤濃度を変化させて対比実験を行なった。
(模擬汚染廃液の調製)
比較例として、実施例における洗剤と同じ市販洗剤に1,2,4−トリクロロベンゼン、n−ヘキサデカン、オクタデセンをそれぞれ10μLずつ加えて溶解し、水1Lを入れたビーカーに投入して、界面活性剤濃度がCMCより高い模擬汚染廃液を調整した。
なお、比較例における洗剤濃度は、CMC(実測から0.2%程度と推定)を中心に0.01〜3%(投入量0.1,0.2,0.5,1.0,2.0,5.0,7.0,10,20,30mlの10点)とした。
(1,2,4−トリクロロベンゼンの残存率)
実施例および比較例の模擬汚染廃液に、酸化剤として過酸化水素水1mLを添加し、マグネティックスターラーで攪拌しながら紫外線処理を5分間行った。紫外線ランプは水中用殺菌ランプ1本(6.3W)を浸漬して照射し、紫外線5分間照射後の1,2,4−トリクロロベンゼンの残存率について調べた。
図10(a)に実施例の結果を示し、図10(b)に比較例の結果を示す。
(結果)
これらの結果から、1,2,4−トリクロロベンゼンは、CMC(表面張力は実測から33dyn/cm程度と推定)より高い濃度では分解効率がほぼ一定であるが、CMCより低い濃度(表面張力が大きくなる)においては分解効率が急激に高くなる傾向が見られた。なお、n−ヘキサデカンとオクタデセンについては、分解がほとんど進まない結果となり、これは洗剤濃度によっても変わらなかった。
さらに、表面張力が50dyn/cmを超えた場合では、1,2,4−トリクロロベンゼンの分解効率が逆に急激に低下した。これは、1,2,4−トリクロロベンゼンが水にほとんど溶解しない物質のため、界面活性剤をほとんど含まない水中では十分に拡散することができず、分解効率が低下したと考えられる。
続いて、上記と同じ方法で、紫外線処理時間とGC−MS分析におけるピーク強度の関係について調べた。図11(a)に実施例(洗剤濃度0.1%:CMCより低い濃度)の結果を示し、図11(b)に比較例(洗剤1%:CMCより高い濃度)の結果を示す。
図11(a)で示したように、実施例では3分以降、1,2,4−トリクロロベンゼンのピークパターンは確認できなくなった。一方、図11(b)で示したように、比較例では60分経過後においても僅かながらピークパターンが確認された。
「考察」
以上の結果より、界面活性剤の濃度が分解反応に大きく影響していることが解った。これは、図12(a)に示すように、CMC以上の濃度では界面活性剤がミセルを形成し、構造が安定化するため紫外線による分解が阻害されるものと考えられる。しかし、図12(b)に示すように、CMCより低い濃度では、界面活性剤が紫外線を遮断せず、油分の表面が露出するので、紫外線が油分の分解に作用するためであると考えられる。従って、界面活性剤の初期濃度をCMCより低くして紫外線処理を行うことで、分解反応が阻害されることなく、安全かつ効果的に洗浄排水を処理することができる。そのため、高濃度の洗浄剤と油分を含む廃液から、PCBの下水排除基準(3μg/L)を下回る処理水を得ることが可能となる。
また、物質によって紫外線分解に差があることが示され、分解速度は1,2,4−トリクロロベンゼン>界面活性剤>>オクタデセン>n−ヘキサデカンの順であった。また、残存酸素の変化と1,2,4−トリクロロベンゼンの分解および表面張力変化の関係から、分解は過酸化水素由来の酸素を消費する酸化分解であると考えられる。
紫外線処理では、処理対象物が水に溶解していることが必要であるが、模擬汚染物として添加した3種類の物質はいずれも水への溶解度が非常に小さいため、界面活性剤による可溶化が処理性能に大きく寄与すると考えられる。1,2,4−トリクロロベンゼンは界面活性剤の性質が失われる前に分解するため効率が良く、一方で油類(オクタデセンとn−ヘキサデカン)は界面活性剤の性質が先に失われることで水への溶解度が減少し、処理効率をさらに低下させているものと考えられる。
また、本実験を他の2種類の洗剤(ヤナギ研究所製Bu・N・Ka・I、KDS社製シンプルグリーン)についても実施した結果、同様の傾向が見られ、特定の洗剤における現象ではないことを確認した。
「対照実験」
さらに、対照実験として過酸化水素を添加しない条件で実験を行った。結果を図13に示す。
その結果、油類の分解が過酸化水素を添加した場合より進行する現象が見られた。これは、本条件では紫外線処理を行っても表面張力が変化しなかったことから、界面活性剤の分解が進まず、油類の可溶化が維持されたためであると考えられる。また、1,2,4−トリクロロベンゼンの減少にあわせてジクロロベンゼンの生成が確認され、反応速度が速い酸化反応に必要な酸化剤が不足する条件においては、脱塩素反応がゆるやかに進行すると考えられる。
そのため、本発明では紫外線処理工程S1において、過酸化水素を添加しながら紫外線処理を行なうことが好ましい。
図1は、本発明の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法の一実施形態例を示す図である。 図2は、油水分離の繰り返し試行において、分離後水相の表面張力変化を示す図である。 図3は、界面活性剤の希釈濃度と表面張力の関係を示す図である。 図4は、紫外線処理による界面活性剤の表面張力変化を示す図である。 図5は、本実施形態における廃液処理装置を示す模式図である。 図6は、本実施形態における廃液処理装置において、希釈洗剤の送液量と紫外線処理時間の関係を示す図である。 図7は、本実施形態における廃液処理装置において、紫外線処理時間と表面張力の変化を示す図である。 図8は、GC−MS分析における模擬汚染廃液中の各物質のピークパターンを示す図であり、図8(a)は紫外線処理前、図8(b)は紫外線60分処理後のピークパターンを示す。 図9は、GC−MS分析におけるピークの変化を示す図である。 図10は、紫外線5分間照射後の1,2,4−トリクロロベンゼンの残存率と洗剤濃度との関係を示す図であり、図10(a)は実施例の結果を示し、図10(b)に比較例の結果を示す。 図11は、紫外線処理時間とGC−MS分析におけるピーク強度の関係を示す図であり、図11(a)は実施例の結果を示し、図11(b)は比較例の結果を示す。 図12は、界面活性剤のミセル形成と紫外線の遮断を説明するための図であり、図12(a)は界面活性剤がCMC以上の濃度であり、ミセルを形成して紫外線を遮断している様子を示し、図12(b)は界面活性剤がCMCより低い濃度であり、油分の表面が露出している様子を示す。 図13は、過酸化水素を添加しない条件での紫外線処理のGC−MS分析におけるピークの変化を示す図である。
符号の説明
1…廃液、4…水相、5…油相、10…反応槽、11…紫外線ランプ、12…ペリスタポンプ。

Claims (6)

  1. 非イオン系の界面活性剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程において生じた含塩素有機化合物を含む廃液を、曇点以上の温度に加熱して油相と水相とに分離する油水分離工程と、
    分離後の前記水相において、前記界面活性剤の濃度を限界ミセル濃度より低い濃度に調整し、紫外線領域以下の波長を有する照射光を照射して、前記水相の含有成分を分解する紫外線処理工程と、を有することを特徴とする含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法。
  2. 前記紫外線処理工程において、過酸化水素を添加して前記照射光を照射することを特徴とする請求項1記載の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法。
  3. 前記界面活性剤は、少なくともポリオキシエチレンアルキルエーテル類を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法。
  4. 前記洗浄液として、前記油水分離工程後の前記水相を再度利用しながら、前記洗浄工程と前記油水分離工程を繰り返し行なうことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法。
  5. 前記含塩素有機化合物として、少なくともポリ塩化ビフェニル、またはトリクロロベンゼンのいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法。
  6. 前記油水分離工程は、常圧で100℃以内の温度で行なうことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の含塩素有機化合物を含む洗浄廃水の処理方法。
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