JP4803151B2 - ガソリンエンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明はガソリンエンジンの制御装置に関する。
一般に予混合圧縮自己着火燃焼(HCCI:Homogeneous-Charge Compression-Ignition combustion。)運転(以下、「圧縮自己着火運転」ともいう)を実行するに当たり、特許文献1に示すように、所定の運転領域において、排気弁の閉弁タイミングと吸気弁の開弁タイミングとを変更することにより、排気上死点の前後に吸気弁と排気弁の双方が閉じるネガティブオーバラップ期間を生じさせ、既燃ガスを内部EGRとして燃焼室に残留させる技術が知られている。このような圧縮自己着火運転は、排気性能の向上、燃費の向上、或いはポンピングロスの低減等を図る技術である。
他方、特許文献2に開示された先行技術では、エンジンの幾何学的圧縮比を変更可能なエンジンを採用し、運転状態に応じて圧縮比を変更する構成を採用している。
図12は、従来例の構成図である。
同図を参照して、このエンジン200のピストン201は、コネクティングロッド202と、このコネクティングロッド202に連結されたリンク203を介してクランクシャフト204のクランクピン205に連結されている。ピストン201とコネクティングロッド202は、ピストンピン206により当該ピストンピン206回りに相対変位可能に連結されているとともに、コネクティングロッド202とリンク203とは、リンクピン207により当該リンクピン207回りに相対変位可能に連結されている。リンク203は、圧縮比変更装置210に連結されている。圧縮比変更装置210は、リンク203を駆動する制御リンク211と、制御リンク211を駆動するモータ212とを有しており、モータ212をエンジン制御ユニットで制御することによって、運転状態応じてピストンピン206の中心からクランクピン205の中心との直線距離を変更し、エンジン200の幾何学的圧縮比が変更されるようになっている。
そして、特許文献2においては、基本的に低負荷時には、圧縮比を高く設定して燃費向上を図り、高負荷時には、圧縮比を低く設定してノッキングの発生を回避するようにエンジン200が制御されていた。
なお、ネガティブオーバラップ期間を生成する技術としては、例えば、特許文献3や特許文献4に開示された動弁機構が一般的に知られている。
特開2006−22664号公報 特開2006−226133号公報 特開2006−336494号公報 特開2006−348774号公報
ところで、圧縮自己着火運転によって、排気性能の向上、燃費の向上、或いはポンピングロスの低減等を図るためには、圧縮自己着火運転が実行される部分負荷運転領域を可能な限り高負荷側に拡張することが望ましい。
しかしながら、比較的高負荷側で圧縮自己着火運転のためのネガティブオーバラップ期間を設けて、特許文献1に開示されているように燃焼室に供給される酸素濃度を内部EGR量に応じて増量した場合には、表面着火が生じやすくなる結果、過早着火が生じやすくなるという問題があった。また、特許文献2の構成では、低速/低負荷側で圧縮比を高く設定する構成であるから、上述のような過早着火に対しては、有効な対策とはなり得なかった。
本発明は上記不具合に鑑みてなされたものであり、過早着火を抑制しつつ、燃費の向上を図り、もって圧縮自己着火運転を可及的に拡張することのできるガソリンエンジンの制御装置を提供することを課題としている。
上記課題を解決するために本発明は、少なくともエンジンの部分負荷運転領域で、排気弁の閉タイミングを排気上死点前に進角し、吸気弁の開タイミングを排気上死点後に遅角して、排気上死点の前後に前記排気弁と前記吸気弁とが何れも閉じるネガティブオーバラップ期間を設けるガソリンエンジンの制御装置において、前記エンジンの幾何学的圧縮比を変更可能な圧縮比変更装置と、前記エンジンの要求負荷を推定する機能を少なくとも含み、前記エンジンを含む車両の運転状態を判定する運転状態判定部と、前記運転状態判定部の判定に基づいて筒内での燃焼を制御する燃焼制御部と、前記圧縮比変更装置を制御する幾何学的圧縮比制御部とを備え、前記燃焼制御部は、前記部分負荷運転領域において低速低負荷側に設定される所定の通常圧縮自己着火領域では、排気上死点経過後に燃料を噴射させて圧縮上死点経過後に圧縮自己着火させる通常モードで筒内での燃焼を制御し、前記部分負荷運転領域における前記通常圧縮自己着火領域以外の多段着火領域では、前記ネガティブオーバラップ期間で一部の燃料を圧縮自己着火させ、その後、前記排気弁が閉じられたままの状態で残余の燃料を噴射させて圧縮上死点経過後に圧縮自己着火させる多段着火モードで筒内での燃焼を制御するものであり、前記幾何学的圧縮比制御部は、前記エンジンの幾何学的圧縮比を、前記多段着火モードでは前記通常モードよりも高い高圧縮比に設定するものであることを特徴とするガソリンエンジンの制御装置である。この態様では、部分負荷運転領域では、排気弁の閉タイミングが排気上死点前に進角し、吸気弁の開タイミングが排気上死点後に遅角することにより、排気上死点の前後に排気上死点の前後に吸気弁と排気弁の双方が閉じるネガティブオーバラップ期間が形成され、既燃ガスが内部EGRとして筒内に残留する。ここで、部分負荷運転領域のうち、低速低負荷側に設定される所定の通常圧縮自己着火領域では、通常モードでの圧縮自己着火運転が実行される。この通常モードでは、燃焼制御部が排気上死点経過後に燃料を噴射させることにより、この燃料噴霧が圧縮上死点の経過直後に自己着火し、エンジンが運転される。他方、通常モードのままでは過早着火の懸念がある比較的高速または高負荷側の多段着火領域では、多段着火モードに基づいて燃料噴射が制御される。この多段着火モードでは、気筒のネガティブオーバラップ期間において一部の燃料が圧縮自己着火し、その後、排気弁が閉じられたままの状態で残余の燃料が再度噴射されて、圧縮上死点経過直後に圧縮自己着火することになる。この圧縮自己着火により、筒内の昇温や圧力上昇が二段階に分散されるので、排気上死点経過後に噴射された燃料の噴霧が過早着火を来すおそれが大幅に低減し、燃焼安定性が飛躍的に向上する。そして、エンジンの幾何学的圧縮比は、多段着火モードでの運転時の方が通常モードでの運転時よりも高圧縮比に設定されることから、排気上死点経過直後の圧縮自己着火による燃費が向上し、圧縮自己着火運転が可能な運転領域を拡張しつつ、高速高負荷側での燃費を高めることができる。
好ましい態様において、前記エンジンは、筒内の混合気を火花点火する点火プラグを備え、前記燃焼制御部は、さらに前記点火プラグによる火花点火により筒内の混合気を燃焼させる火花点火モードでの燃焼も制御するものであり、前記幾何学的圧縮比制御部は、前記通常モードでは前記火花点火モードと同等の幾何学的圧縮比に設定するものである。この態様では、通常モードにおいて圧縮上死点経過直後の圧縮自己着火を比較的高い圧縮比で実現し、通常モードが採用される運転領域での燃費が向上するとともに、多段着火モードでは、排気上死点経過直後の圧縮自己着火による燃費をより向上することができる。
好ましい態様において、前記幾何学的圧縮比制御部は、所定の異常着火限界を超えない範囲内で幾何学的圧縮比を設定するものである。この態様では、燃焼制御部が設定する種々の運転モードにおいて、幾何学的圧縮比が高すぎることによる過早着火やノッキングを防止しつつ、所期の燃費向上を図ることができる。
好ましい態様において、前記燃焼制御部は、前記多段着火モードにおいて、前記ネガティブオーバラップ期間に圧縮自己着火される燃料の噴射量と、圧縮上死点経過直後に圧縮自己着火される燃料の噴射量とを略同量に設定するものである。この態様では、多段着火モードでの幾何学的圧縮比を高圧縮比に設定することによって、排気上死点経過直後の圧縮自己着火によるエンジンの燃費をさらに高めることができる。また、排気上死点経過直後に圧縮自己着火される燃料の噴射量を後段の燃料と概ね等量に設定することによって、各圧縮自己着火をリーンバーンとすることができるので、出力を高めて燃費を向上させる一方で、NOxの発生量を抑制することができる。
以上説明したように、本発明は、圧縮自己着火運転が実行される部分負荷運転領域において、要求負荷が比較的高負荷側ないしは高速側にあるときは、ネガティブオーバラップ期間で一部の燃料を圧縮自己着火させる多段着火モードで筒内での燃焼が制御されるので、筒内の昇温や圧力上昇が二段階に分散されることにより、排気上死点経過後に噴射された燃料の噴霧が過早着火を来すおそれが大幅に低減し、燃焼安定性が飛躍的に向上する。しかも、エンジンの幾何学的圧縮比は、多段着火モードでの運転時の方が通常モードでの運転時よりも高圧縮比に設定されることから、排気上死点経過直後の圧縮自己着火による燃費が向上する。従って、本発明によれば、過早着火を抑制しつつ、燃費の向上を図り、もって圧縮自己着火運転を可及的に拡張することができるという顕著な効果を奏する。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい形態について説明する。
図1は、本発明の実施の一形態に係る火花点火式4サイクルガソリンエンジン10の概略構成を示す構成図であり、図2は図1に係るエンジン10の一つの気筒とそれに対して設けられた吸気弁40および排気弁60等の構造を示す断面略図である。また図3は図1に係るエンジン10の動弁機構41、61の構造を示す概略図である。
これらの図において、図示のエンジン10は、クランクシャフト21を回転自在に支持するシリンダブロック22と、シリンダブロック22の上部に配置されたシリンダヘッド23とを一体的に有している。
シリンダブロック22およびシリンダヘッド23には、複数の気筒24が設けられている。各気筒24には、クランクシャフト21に連結されたピストン25と、ピストン25が気筒24内に形成する燃焼室26とが公知の構成と同様に設けられている。なお、シリンダブロック22には、クランクシャフト21の回転角(クランク角)を検出するクランク角度センサSW1と、エンジン10の冷却水の温度Twを検出するエンジン水温センサSW2とが設けられている。
シリンダヘッド23には、燃焼室26毎に燃料噴射弁28が設けられている。燃料噴射弁28は、各燃焼室26の側部から当該燃焼室26に直接燃料を噴射する直噴式のものである。また、シリンダヘッド23には、そのプラグ先端が各燃焼室26の頂部に臨む点火プラグ29が装備されている。点火プラグ29には、電子制御による点火タイミングのコントロールが可能な点火回路29aが接続されている。
さらに、エンジン10には、幾何学的圧縮比を変更可能な圧縮比変更装置70が設けられている。この圧縮比変更装置70は、原理的には、図12で説明した先行例と同様に、モータ等のアクチュエータによってエンジン制御ユニット100に制御されることにより、エンジン10の幾何学的圧縮比を所定範囲(例えばε=9〜17)の範囲で変更することができるようになっている。
エンジン10は、当該気筒24内に対して新気を供給する吸気システム30と、気筒24の燃焼室26で燃焼した既燃ガスを排気する排気システム50とを有している。
吸気システム30は、新気を気筒24内に供給するための吸気管31と、この吸気管31の下流側に連通するインテークマニホールド32を備え、このインテークマニホールド32はサージタンクから分岐してそれぞれ対応する気筒24に接続される分岐吸気管33を備えている。図示の実施形態において、各気筒24には、2つ一組の吸気ポート24aが形成されており(図1参照)、前記分岐吸気管33の下流端は、各気筒24の吸気ポート24aに対応して二股に形成されている。
吸気システム30の吸気管31には、エアフローセンサSW3と、吸気温度Taを検出する吸気温度センサSW4とが設けられている。さらに吸気管31には、吸気流量を調節するスロットル弁35が設けられている。このスロットル弁35は、アクチュエータ36によって開閉駆動されるように構成されている。
各気筒24に設けられた各吸気ポート24aには吸気弁40が設けられ、図示の実施形態では、吸気ポート24aに対応して気筒24毎に2つずつの吸気弁40が設けられている。
次に、排気システム50は、各気筒24に2つ一組で形成された排気ポート24bに接続された二股状の分岐排気管51を下流排出側で集合させたエキゾーストマニホールド52と、このエキゾーストマニホールド52の下流側集合部に接続されて、エキゾーストマニホールド52から既燃ガスを排出する排気管53とを有している。排気管53には、三元触媒等を含む浄化装置54が設けられている。この浄化装置54の上流近傍には、排気ガスの酸素濃度を検出する酸素濃度センサSW5が配置されている。
上記各排気ポート24bには排気弁60が設けられている。
図3を参照して、各吸気弁40並びに各排気弁60は、動弁機構41、61によって駆動される構成になっている。各動弁機構41、61は、対応する吸気弁40、排気弁60のステム40a、60aにそれぞれ固定されたVVL42、62と、各吸気弁40並びに各排気弁60の開閉タイミングを変更するVVT(Valuable Valve Timing Mechanism)43、63と、VVT43、63を介しクランクシャフト21の駆動力で駆動されるカムシャフト44、64と、カムシャフト44、64に一体化されて、所定の位相で吸気弁40、排気弁60を異なる位相で駆動する二組の吸気カム45a、45b並びに排気カム65a、65bとを有している。
VVL42、62は、所定のタイミングで第2排気カム65bが排気弁60のステム60aを押し下げる機能をON/OFFするいわゆるロストモーションを実現するためのものであり、図示の例では、タペット型のもので具体化されている。なお、VVL42、62の機構そのものは公知であるので、ここでは説明を省略する。
各吸気カム45a、45b並びに各排気カム65a、65bは、一方(図示の例では吸気カム45a、排気カム65a)が、いわゆる圧縮自己着火運転時において、180°未満の開弁角度CAで、それぞれ吸気弁40および排気弁60を開閉するとともに、他方(図示の例では、吸気カム45b、排気カム65b)が、いわゆる火花点火運転時において、180°以上の開弁角度(図示の例では、吸気弁40の開弁角度CAが200°〜230°、排気弁60の開弁角度CAが180°〜200°)で、それぞれ吸気弁40および排気弁60を開閉するように構成されているものである。
吸気弁40の各VVL42と排気弁60の各VVL62には、それぞれ作動油回路46、66が接続されており、各作動油回路46、66は、電磁弁47、67によって制御されるようになっている。そして、後述するエンジン制御ユニット(本実施形態ではPCM:Powertrain Control Module)100の制御によって、作動油回路46、66から作動油の供給が停止されると、吸気カム45b並びに各排気カム65bがVVL42、62によってロストモーションを起こし、これらのカム45b、65bからの駆動力が対応する吸気弁40並びに排気弁60のステム40a、60aに伝達されなくなる結果、各吸気弁40並びに排気弁60は、専ら吸気カム45a並びに各排気カム65aによって駆動されることとなり、吸気弁40、排気弁60は、180°未満の開弁角度CAで開閉動作を行うようになっている。他方、作動油回路46、66から作動油が供給されると、各吸気カム45b並びに各排気カム65bがVVL42、62のロストモーションが停止され、これら吸気カム45b並びに各排気カム65bの駆動力が対応する吸気弁40並びに排気弁60のステム40a、60aに伝達される結果、各吸気弁40並びに排気弁60は、上述のように180°以上の開弁角度CAで開閉されるようになっている。
作動油回路46、66に設けられた電磁弁47、67は、エンジン制御ユニット100によって制御されるようになっている。
VVT43、63は、例えばベーンポンプ等を用いて各吸気カム45a、45b並びに各排気カム65a、65bが対応する吸気弁40並びに排気弁60が駆動するタイミングを無段階的に変更するものであるが、その構成については、本件出願人が先に提案している特許文献3、特許文献4等に開示されているので、詳細な説明については、これを省略する。
次に、エンジン制御ユニット100について説明する。
図1に示すように、エンジン制御ユニット100は、CPU101、メモリ102、インターフェース103並びにこれらのユニット101〜103を接続するバス104を有している。そして、インターフェース103を介し、図2に示すように、入力要素として、クランク角度センサSW1、エンジン水温センサSW2、エアフローセンサSW3、吸気温度センサSW4、酸素濃度センサSW5、アクセル開度センサSW6、車速センサSW7等の各種検出手段が接続されている。他方、制御要素として、燃料噴射弁28、点火プラグ29による点火をコントロールする点火回路29a、スロットル弁35のアクチュエータ36(図1参照)、動弁機構41、61のVVT43、63に設けられた電磁弁(図示せず)、各VVL42、62を駆動する作動油回路46、66の電磁弁47、67、圧縮比変更装置70等が接続されている。
図2を参照して、エンジン制御ユニット100のメモリ102には、制御マップやデータ並びにプログラムが記憶されており、CPU101がこれら制御マップやデータに基づいてプログラムを実行することによって、図2に示すように、エンジン回転速度Neやエンジン負荷等の運転状態を判定する運転状態判定部110と、運転状態判定部110に判定された運転状態に応じて、エンジン10の筒内での燃焼を制御する燃焼制御部120と、エンジン10の幾何学的圧縮比を制御する幾何学的圧縮比制御部140とを論理的に構成している。
運転状態判定部110は、各入力要素からのセンサ信号に基づき、エンジン回転速度Ne、要求負荷Rt、吸気温度Ta、筒内温度Tc等、種々の運転状態を判定するモジュールである。なお本実施形態において、運転状態判定部110には、車両の運転状態も判定できるように、アクセル開度センサSW6や車速センサSW7等の検出信号が入力されるようになっている。また、運転状態判定部110は、各入力要素からの検出信号に基づき、エンジン10の運転状態(エンジン回転速度及びエンジン負荷)が何れの運転領域にあるかを判別するようになっている。
図4は本実施形態に係る運転状態に応じた制御を行うための運転領域の設定例を示す特性図である。
図4を参照して、同図に示す運転特性では、エンジン回転速度Neが所定回転速度(図示の例では3500rpm)以下の運転領域において、圧縮自己着火運転を実行する部分負荷運転領域HCCIが設定されているとともに、残余の領域では、火花点火による強制着火運転(火花点火モード)を実行する火花点火運転領域SIが設定されている。なお、図示の例において、部分負荷運転領域のうち、比較的低回転速度(図示の例では1500rpm)では、燃焼安定性を確保するために負荷に応じて火花点火運転が実行されるように設定されている。さらに、本実施形態においては、部分負荷運転領域HCCIのうち、破線から低負荷または低速側には通常圧縮自己着火領域Rnが設定される。この通常圧縮自己着火領域Rnでは、噴射した燃料を圧縮上死点経過直後でのみ燃焼させる通常モードが実行される。他方、この通常モードのままでは過早着火の懸念がある破線から高負荷または高速側には、多段着火領域Rmが設定される。この多段着火領域Rmでは、ネガティブオーバラップ期間中に排気上死点経過直後で圧縮自己着火させる多段着火モードが実行される。
図2に戻って、燃焼制御部120は、動弁機構41、61を制御するためのVVL制御部121およびVVT制御部122と、燃料噴射弁28による燃料噴射量や燃料噴射タイミングを制御する燃料噴射制御部123と、点火プラグ29による点火タイミングを制御する点火制御部124とを有し、吸気弁40や排気弁60の開閉制御、燃料噴射弁28による燃料噴射、点火プラグ29による点火タイミング等を制御するモジュールである。詳しくは後述するように、燃焼制御部120には、点火プラグ29で混合気を点火して混合気を燃焼する火花点火運転モードと、ネガティブオーバラップ期間を排気上死点の前後に設けて、燃料を圧縮自己着火させるHCCIモードとが設定されている。さらに、HCCIモードとしては、多段着火領域Rmで実行される多段着火モードと通常圧縮自己着火領域Rnで実行される通常モードとが設定されている。
VVL制御部121およびVVT制御部122は、それぞれ各VVL42、62、VVT43、63の駆動制御を司るものである。
VVL制御部121は、運転状態判定部110が判定した運転状態が部分負荷運転領域HCCIであるときには、作動油回路46、66への作動油の供給を停止し、吸気カム45b並びに各排気カム65bをロストモーションさせることによって、各吸気弁40、排気弁60の開弁角度CAが180°未満となるように開弁制御し、それ以外の火花点火運転領域SIでは、作動油回路46、66に作動油を供給して吸気カム45b並びに各排気カム65bの駆動力を対応する吸気弁40および排気弁60に伝達させ、各吸気弁40並びに排気弁60を180°以上の開弁角度CAで開閉制御するように構成されている。
VVT制御部122は、吸気弁40並びに排気弁60の開閉タイミングを決定するものである。VVT制御部122は、運転状態判定部110の判定に応じて、部分負荷運転領域HCCIであるときには、ネガティブオーバラップ期間を生成するように排気弁60の閉タイミングを進角し、吸気弁40の開タイミングを遅角するとともに、火花点火運転領域SIであるときには、180°以上の開弁角度で、それぞれ吸気弁40および排気弁60を開閉するように構成されている。
燃料噴射制御部123は、燃料噴射タイミング、燃料噴射量、吸気流量(空燃比)を制御するものである。この燃料噴射制御部123は、火花点火運転時においては、周知の構成と同様に、吸気行程後半から圧縮行程前半にかけて燃料を噴射するとともに、圧縮自己着火運転時においては、後述するタイミングで燃料を噴射させるものである。
点火制御部124は、火花点火モードにおいては、混合気を圧縮上死点経過直後で燃焼させるように、点火プラグ29の点火回路29aに制御信号を出力するとともに、HCCIモードにおいては、点火プラグ29を休止するように点火回路29aに制御信号を出力するものである。
次に、燃焼制御部120における各部の設定例について説明する。
図5は、燃焼制御部120に設定されている制御例を示すタイミングチャートであり、(A)は通常モード、(B)は多段着火モードの例を示している。
図5(A)を参照して、エンジン10が通常圧縮自己着火領域Rnで運転されている場合、VVT制御部122は、通常モードで吸気弁40と排気弁60の開閉タイミングを制御する。この通常モードでは、VVT制御部122は、排気弁60の閉タイミングを例えば排気上死点前70°(290°CA)に進角し、吸気弁40の開タイミングを例えば排気上死点後70°(70°CA)に遅角する。これにより、排気上死点の前後にそれぞれCAEX(70°CA)、CAIN(70°CA)のネガティブオーバラップ期間が形成され、既燃ガスが内部EGRとして燃焼室26に封緘される。
エンジン10が通常モードで制御される場合、燃料噴射制御部123は、通常は、排気上死点経過後の所定タイミング(例えば吸気行程中期。図示の例では、吸気弁40の開弁直前)で燃料F1を噴射し、圧縮上死点経過直後に圧縮自己着火するように燃料噴射量や吸気量を制御する。また、筒内にアルデヒド等の改質種を生成するために、必要に応じてネガティブオーバラップ期間CAEX内に一部の燃料F2を噴射するように設定されている。
図5(B)を参照して、エンジン10が多段着火領域Rmで運転されている場合、VVT制御部122は、多段着火モードで吸気弁40と排気弁60の開閉タイミングを制御する。この多段着火モードでは、VVT制御部122は、排気弁60の閉タイミングを例えば排気上死点前90°(270°CA)に進角し、吸気弁40の開タイミングを例えば排気上死点後120°(120°CA)に遅角する。これにより、排気上死点の前後にそれぞれCAEX(90°CA)、CAIN(120°CA)のネガティブオーバラップ期間CAEX、CAINが形成される。ここで、通常モードと多段着火モードとでネガティブオーバラップ期間CAEX、CAINが異なるのは、次に説明する燃料噴射制御部123の制御により、通常モードでは、圧縮上死点の経過直後にのみ燃料を圧縮自己着火(図中の着火IG)させているのに対し、多段着火モードでは、圧縮上死点の経過直後のみならず、ネガティブオーバラップ期間CAINにも圧縮自己着火(図中の着火IGPRE)を実行するためである。
燃料噴射制御部123は、ネガティブオーバラップ期間CAEX内に一部の燃料F11を噴射して、排気上死点の経過直後に予備的な着火IGPREを生じさせ、その後、吸気行程の後半でエンジン10を駆動するための燃料F12を噴射し、この燃料F12の混合気がIGで示すように圧縮上死点経過直後に自己着火するように設定されている。
ネガティブオーバラップ期間CAINにおける圧縮自己着火IGPREは、燃料噴射量を分割することにより、個々の燃料噴射後上死点までの間に過早着火が生じるのを防止しつつ、排気上死点経過後に噴射される燃料F12の着火安定性を高めるために実行されるものである。
本実施形態では、ネガティブオーバラップ期間CAINに圧縮自己着火IGPREを実行することにより、筒内温度Tcや筒内圧力Pの上昇分を分配し、高速側や高負荷側、或いは温間時においても過早着火を抑制することができる。
図6は、燃焼制御部120の吸排気弁開閉タイミングの設定例を示すグラフであり、(A)は排気弁60の閉タイミング、(B)は吸気弁40の開タイミングを示している。また、図7は、図6の設定例に基づく要求負荷とネガティブオーバラップ期間(内部EGR量)との関係を示すグラフである。
図6(A)(B)を参照して、ネガティブオーバラップ期間CAEX、CAINを設定するに当たり、通常モードでの閉弁制御では、要求負荷Rtが増加するに従い、排気弁60の閉タイミングを排気上死点側に遅角し、吸気弁40の開タイミングを進角するように設定されており、これによって図7に示すように、高負荷側に行くに連れてネガティブオーバラップ期間CAEX、CAINを低減するようにしている。この通常モードでは、既燃ガスの吸気系への吹き戻りやポンピングロスの低減の観点から、ネガティブオーバラップ期間CAEX、CAINが対称になるように設定される。
他方、多段着火モードで制御では、排気弁60の閉タイミングは、要求負荷Rtに拘わらず、一定に設定され、吸気弁40の開タイミングは、負荷が増加するほど、遅角するように設定されている。また、通常モードから多段着火モードに切り替わった時点での排気弁60の閉タイミングは、通常モードでの高負荷側の閉タイミングよりも進角した状態になっている。これによって、図7に示すように、高負荷側に行くに連れてネガティブオーバラップ期間CAEX、CAINが漸増するようにしている。これは、有効圧縮比を確保し、ネガティブオーバラップ期間CAINでの圧縮自己着火IGPREを確実なものとするためである。また、吸気弁40の開弁タイミングを要求負荷Rtの増加に伴って遅角させているのは、高負荷側になるほど、燃料噴射量が増加し、それに伴って、圧縮自己着火IGPRE時の筒内圧力Pが高くなるので、既燃ガスの充分な膨張期間を確保し、吸気系への吹き戻りを防止するためである。
図8は、要求負荷Rtに対する燃料噴射量Qの設定例を示すグラフである。
図6(A)および図8を参照して、本実施形態における通常モードでは、ネガティブオーバラップ期間CAEXに所定量の燃料F2を噴射することにより、筒内に反応性の高い活性種を生成し、着火性の向上を図るようにしている。圧縮自己着火のための燃料F1の噴射量Q1は、要求負荷Rtが増加するに連れて、曲線的に増加するのに対し、活性化のための燃料F2の噴射量Q2は、低負荷のみで比較的少量に設定されている。
他方、図6(B)および図8を参照して、多段着火モードでは、ネガティブオーバラップ期間CAINでの圧縮自己着火IGPREに供される燃料F11の噴射量Q11と圧縮上死点経過直後での圧縮自己着火IGに供される燃料F12の噴射量Q12は、何れも要求負荷Rtが大きくなるほど、多くなるように設定される。また、ネガティブオーバラップ期間CAINにおける圧縮自己着火IGPREは、燃費向上のために燃料噴射量を分割するためのものであり、後述するように幾何学的圧縮比εが高圧縮比に設定変更されることから、その燃料噴射量は、同じ要求負荷Rtにおける排気上死点経過後に噴射される燃料F12と等しく設定されている。
さらに、多段着火モードにおけるネガティブオーバラップ期間CAEXでの噴射量Q11は、通常モードにおけるネガティブオーバラップ期間CAEXでの噴射量Q2よりも多くなっている。この結果、通常モードから多段着火モードに切り替わった場合には、噴射量Q2は、噴射量Q11よりも低減することになる。これは、燃料F2が圧縮自己着火を要しない噴射量Q2であるのに対し、燃料F11がネガティブオーバラップ期間での積極的な圧縮自己着火を要するものだからである。
幾何学的圧縮比制御部140は、圧縮比変更装置70を駆動制御することにより、エンジン10の幾何学的圧縮比εを例えば9から17の範囲で変更できるようになっている。図示の例では、幾何学的圧縮比εが17を越える場合には、異常着火限界として設定が禁止されるように、圧縮比変更装置70のハード上、或いは、エンジン制御ユニット100におけるソフト上の設定がなされている。もっとも、異常着火限界は、ガソリンのオクタン価や、過給機の有無によっても随時変更される。
一般に着火遅れτは、アレニウスの公式
Figure 0004803151
に従うが、(1)式中、変数Aは、オクタン価に依存する値であり、例えば、
Figure 0004803151
は、ノッキングの予見に広く用いられている(Douaud, A. M. and Eyzat, P. “Four-Octane-Number Method for Predicting the Anti-Knock Behavior of Fuels and Engines”, SAE 780080, 1978)。
従って、本発明が適用されるエンジン10に使用されるガソリンのオクタン価や過給機の有無等に基づいて、例えば、圧縮比毎に(2)式の着火遅れτの値をデータ化し、メモリ102に記憶しておくことによって、適切な幾何学的圧縮比εを運転状況に応じて設定することができる。
図9は本実施形態における幾何学的圧縮比の設定例を示すグラフであり、(A)は通常モードまたは火花点火運転モードでの設定例、(B)は多段着火モードでの設定例を示している。
図9(A)を参照して、一般に、火花点火式ガソリンエンジンは、理論上はオットーサイクル(Otto Cycle)に従うものとされており、その理論熱効率をηthとすると
ηth=1−(1/εκ-1) (3)
(但し、εは圧縮比、κは比熱比)になる、とされている。
(3)式から明らかなように、火花点火式ガソリンエンジンの理論熱効率(従って、図示、正味熱効率)は、あるレベルまでは、圧縮比が高い方が向上する。他方、理論熱効率および平均有効圧力(MEP: Mean Effective Pressure)は、所定の圧縮比(図示の例ではε=14)までは比例的に上昇し、それ以降は横ばいになることが知られている(Heywood, J. B., “Internal Combustion Engine Fundamentals”, McGraw-Hill, inc 1988)。そこで、図9(A)に示すように、通常モードや火花点火モードにおいては、有効圧縮比が約13から約15の範囲になるように、幾何学的圧縮比εが設定される。
これに対して、多段モードで圧縮自己着火が2サイクルで実行される場合、排気上死点経過直後の燃焼IGPREは、ネガティブオーバラップ期間を設けるために排気弁60の閉タイミングを進角させることによって、有効圧縮比は低減する。このため、通常モードや火花点火モードと同じ幾何学的圧縮比εでは、図9(B)の三角形で示すように、熱効率はかなり低減する。そこで、本実施形態では、多段着火モードでの幾何学的圧縮比ε(例えばε=16)を通常モードの場合の幾何学的圧縮比ε(例えばε=14)よりも高く設定するようにしている。
次に、本実施形態の制御例について説明する。
図10および図11は、本発明の実施の一形態に係る制御例を示すフローチャートである。
図10を参照して、この制御例では、エンジン制御ユニット100は、クランク角度センサSW1が検出したクランク角度とエンジン回転速度、並びにアクセル開度センサSW6が検出したアクセル開度を読み込み、エンジン10の運転状態を検出する(ステップS20)。次いで、エンジン制御ユニット100は、要求負荷Rtを演算し(ステップS21)、演算された要求負荷Rtに基づいて現在の運転領域を判定する(ステップS22)。次いで、判定された現在の運転領域が部分負荷運転領域HCCIであるか否かを判別する(ステップS23)。
運転領域が圧縮自己着火運転を実行する部分負荷運転領域HCCIであった場合、さらに、演算された現在の運転領域が多段着火領域Rmであるか否かが判定される(ステップS24)。運転領域が多段着火領域Rmである場合、エンジン制御ユニット100は、多段着火モードでエンジン10を運転する。
多段着火モードでエンジン10が運転される場合、エンジン制御ユニット100は、圧縮比変更装置70を駆動して、幾何学的圧縮比εを図9(B)の設定例に基づく高圧縮比に変更する(ステップS25)。その後、エンジン制御ユニット100は、要求負荷/エンジン回転速度に応じた多段着火運転時のバルブタイミング、燃料噴射量、燃料噴射タイミングを燃焼制御部120に設定された制御マップから読み取り(ステップS26)、読み取った値に基づいて、バルブリフト量、バルブタイミング、燃料噴射量となるように、動弁機構41、61、燃料噴射弁28を制御する(ステップS27)。
図5(B)を参照して、ステップS26、S27の制御が実行されると、各気筒24では、排気弁60が例えば排気上死点前90°のところで閉じ、最初の燃料F11がその直後に噴射される。ここで燃料噴射された気筒24に着目して説明すると、ネガティブオーバラップ期間CAEXでの燃料F11の噴射によって、筒内では、燃料噴霧が高温の内部EGRにさらされ、ホルムアルデヒドが生成される。このホルムアルデヒドは、燃焼室26の温度が比較的低温(900K以下)では、ノッキングの原因となるOHラジカルを吸収する。このため、過早着火等を来すことなく、ピストン25は、排気行程から吸気行程に移行することになる。この過程で燃料噴霧が熱炎反応を来たし、圧縮自己着火IGPREが生じる。このときの熱炎反応によって、今度はOHラジカルが急増し、部分酸化反応が進行することによって、筒内は、自己着火しやすい活性混合気が生成されることになると考えられる。また、幾何学的圧縮比εがステップS25において高圧縮比に変更されたことにより、比較的高い有効圧縮比が維持されている。この結果、図9(B)に示すように、圧縮自己着火IGPREが生じたときの熱効率を高い値に維持することができ、燃費を大幅に向上させることが可能となる。
その後、ピストン25が吸気行程から圧縮行程に移行する過程で吸気弁40から開くことにより、筒内に新気が導入される。上述したように、吸気行程でのネガティブオーバラップ期間CAINは、吸気行程でのネガティブオーバラップ期間CAEXに対して充分大きく設定されている(CAIN>CAEX)ので、圧縮自己着火IGPREによって圧力が上昇した筒内のガスが、この吸気行程でのネガティブオーバラップ期間CAINで充分に膨張した後、新気が筒内に導入されることになる。この結果、既燃ガスが吸気系に逆流することなく、新気が少ないポンピングロスで筒内に導入されることになる。そして、この吸気行程の後期で燃料F12が噴射され、その後、吸気弁40が閉じることによって、新たに噴射された燃料噴霧も、高温の内部EGRにさらされ、活性化された雰囲気の中で多段発火現象を生じ、圧縮上死点経過直後に自己着火IGを生じることになる。この圧縮自己着火IGが生じたときの熱効率も、ステップS25において高圧縮比に変更されたことにより、高い値に維持される。
その後、エンジン制御ユニット100は、エンジン10の停止を判定する(ステップS28)。エンジン10が停止している場合には、処理を終了し、エンジンが停止していない場合には、ステップS20に戻って処理を繰り返す。
他方、ステップS24において、現在の運転領域が多段着火領域Rm以外の通常圧縮自己着火領域Rnであった場合、エンジン制御ユニット100は、通常モードでエンジン10を運転することになる。
通常モードでエンジン10が運転される場合、エンジン制御ユニット100は、圧縮比変更装置70を駆動して、幾何学的圧縮比εを図9(A)の設定例に基づく圧縮比に変更する(ステップS29)。その後、エンジン制御ユニット100は、要求負荷/エンジン回転速度に応じた多段着火運転時のバルブタイミング、燃料噴射量、燃料噴射タイミングを燃焼制御部120に設定された制御マップから読み取り(ステップS30)、読み取った値に基づいて、バルブリフト量、バルブタイミング、燃料噴射量となるように、動弁機構41、61、燃料噴射弁28を制御する(ステップS27)。
このため、図5(A)に示すように、各気筒24では、排気弁60が例えば排気上死点前70°のところで閉じ、吸気行程前半で燃料F1が噴射される。また、必要に応じてネガティブオーバラップ期間CAEX内に活性化のための燃料F2が噴射される。その後、吸気弁40が吸気行程中期から圧縮行程前半にかけて開閉することにより、高温の内部EGRにさらされた燃料噴霧が新気と混合して、圧縮上死点経過直後で圧縮自己着火IGを生じることになる。通常モードでは、多段着火モードに比べて相対的に有効圧縮比が高いため、圧縮自己着火IGが生じたときの熱効率は、図9(A)に示すように高い値となる。
その後は、多段着火モードと同様に、ステップS28以下の処理を実行する。
図10のステップS23において、現在の運転領域が火花点火運転領域SIである場合、エンジン制御ユニット100は、火花点火運転を実行する。
図11を参照して、火花点火運転において、エンジン制御ユニット100は、圧縮比変更装置70を駆動して、幾何学的圧縮比εを図9(A)の設定例に基づく圧縮比に変更する(ステップS31)。その後、エンジン制御ユニット100は、要求負荷/エンジン回転速度に応じた火花点火運転時のバルブタイミング、燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火タイミングを燃焼制御部120に設定された制御マップから読み取り(ステップS32)、読み取った値に基づくバルブリフト量、バルブタイミング、燃料噴射量、点火タイミングとなるように、動弁機構41、61、燃料噴射弁28、点火プラグ29を制御する(ステップS33)。この処理の後、エンジン制御ユニット100は、図10のステップS28に戻って処理を繰り返す。
以上説明したように、本実施形態によれば、部分負荷運転領域HCCIでは、排気弁60の閉タイミングが排気上死点前に進角し、吸気弁40の開タイミングが排気上死点後に遅角することにより、排気上死点の前後に排気上死点の前後に吸気弁40と排気弁60の双方が閉じるネガティブオーバラップ期間CAEX、CAINが形成され、既燃ガスが内部EGRとして筒内に残留する。ここで、部分負荷運転領域HCCIのうち、低速低負荷側に設定される所定の通常圧縮自己着火領域Rnでは、通常モードでの圧縮自己着火運転が実行される。この通常モードでは、燃焼制御部120が排気上死点経過後に燃料を噴射させることにより、この燃料噴霧が圧縮上死点の経過直後に自己着火し、エンジン10が運転される。他方、通常モードのままでは過早着火の懸念がある比較的高速または高負荷側の多段着火領域Rmでは、多段着火モードに基づいて燃料噴射が制御される。この多段着火モードでは、気筒のネガティブオーバラップ期間CAEX、CAINにおいて一部の燃料F11が圧縮自己着火し、その後、排気弁60が閉じられたままの状態で残余の燃料F12が再度噴射されて、圧縮上死点経過直後に圧縮自己着火することになる。この圧縮自己着火により、筒内の昇温や圧力上昇が二段階に分散されるので、排気上死点経過後に噴射された燃料の噴霧が過早着火を来すおそれが大幅に低減し、燃焼安定性が飛躍的に向上する。そして、エンジン10の幾何学的圧縮比εは、多段着火モードでの運転時の方が通常モードでの運転時よりも高圧縮比に設定されることから、排気上死点経過直後の圧縮自己着火による燃費が向上し、圧縮自己着火運転が可能な運転領域を拡張しつつ、高速高負荷側での燃費を高めることができる。
また本実施形態では、幾何学的圧縮比制御部140は、通常モードでは火花点火モードと同等の幾何学的圧縮比εに設定するものである。このため本実施形態では、通常モードにおいて圧縮上死点経過直後の圧縮自己着火を比較的高い圧縮比で実現し、通常モードが採用される運転領域での燃費が向上するとともに、多段着火モードでは、排気上死点経過直後の圧縮自己着火による燃費をより向上することができる。
また本実施形態では、幾何学的圧縮比制御部140は、所定の異常着火限界を超えない範囲内で幾何学的圧縮比εを設定するものである。このため本実施形態では、燃焼制御部120が設定する種々の運転モードにおいて、幾何学的圧縮比εが高すぎることによる過早着火やノッキングを防止しつつ、所期の燃費向上を図ることができる。
また本実施形態では、燃焼制御部120は、多段着火モードにおいて、ネガティブオーバラップ期間CAEX、CAINに圧縮自己着火される燃料の噴射量と、圧縮上死点経過直後に圧縮自己着火される燃料の噴射量とを略同量に設定するものである。このため本実施形態では、多段着火モードでの幾何学的圧縮比εを高圧縮比に設定することによって、排気上死点経過直後の圧縮自己着火によるエンジン10の燃費をさらに高めることができる。また、排気上死点経過直後に圧縮自己着火される燃料の噴射量を後段の燃料と概ね等量に設定することによって、各圧縮自己着火をリーンバーンとすることができるので、出力を高めて燃費を向上させる一方で、NOxの発生量を抑制することができる。
上述した実施の形態は、本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明の特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
本発明の一実施形態に係る火花点火式4サイクルガソリンエンジンの概略構成を示す構成図である。 図1に係るエンジンの一つの気筒とそれに対して設けられた吸気弁および排気弁等の構造を示す断面略図である。 図1に係るエンジンの動弁機構の構造を示す概略図である。 本実施形態に係る運転状態に応じた制御を行うための運転領域の設定例を示す特性図である。 燃焼制御部に設定されている制御例を示すタイミングチャートであり、(A)は通常モード、(B)は多段着火モードの例を示している。 燃焼制御部による吸排気弁の開閉タイミングの設定例を示すグラフであり、(A)は排気弁の閉タイミング、(B)は吸気弁の開タイミングを示している。 図6の設定例に基づく要求負荷とネガティブオーバラップ期間(内部EGR量)との関係を示すグラフである。 要求負荷に対する燃料噴射量の設定例の関係を示すグラフである。 本実施形態における幾何学的圧縮比の設定例を示すグラフであり、(A)は通常モードまたは火花点火運転モードでの設定例、(B)は多段着火モードでの設定例を示している。 本発明の実施の一形態に係る制御例を示すフローチャートである。 本発明の実施の一形態に係る制御例を示すフローチャートである。 従来例の構成図である。
符号の説明
10 4サイクル火花点火式ガソリンエンジン
24 気筒
25 ピストン
26 燃焼室
28 燃料噴射弁
29 点火プラグ
30 吸気システム
40 吸気弁
50 排気システム
60 排気弁
100 エンジン制御ユニット
110 運転状態判定部
120 燃焼制御部
121 VVL制御部
122 VVT制御部
123 燃料噴射制御部
124 点火制御部
SW1 クランク角度センサ
SW2 エンジン水温センサ
SW3 エアフローセンサ
SW4 吸気温度センサ
SW5 酸素濃度センサ
SW6 アクセル開度センサ
SW7 車速センサ

Claims (4)

  1. 少なくともエンジンの部分負荷運転領域で、排気弁の閉タイミングを排気上死点前に進角し、吸気弁の開タイミングを排気上死点後に遅角して、排気上死点の前後に前記排気弁と前記吸気弁とが何れも閉じるネガティブオーバラップ期間を設けるガソリンエンジンの制御装置において、
    前記エンジンの幾何学的圧縮比を変更可能な圧縮比変更装置と、
    前記エンジンの要求負荷を推定する機能を少なくとも含み、前記エンジンを含む車両の運転状態を判定する運転状態判定部と、
    前記運転状態判定部の判定に基づいて筒内での燃焼を制御する燃焼制御部と、
    前記圧縮比変更装置を制御する幾何学的圧縮比制御部と
    を備え、
    前記燃焼制御部は、前記部分負荷運転領域において低速低負荷側に設定される所定の通常圧縮自己着火領域では、排気上死点経過後に燃料を噴射させて圧縮上死点経過後に圧縮自己着火させる通常モードで筒内での燃焼を制御し、前記部分負荷運転領域における前記通常圧縮自己着火領域以外の多段着火領域では、前記ネガティブオーバラップ期間で一部の燃料を圧縮自己着火させ、その後、前記排気弁が閉じられたままの状態で残余の燃料を噴射させて圧縮上死点経過後に圧縮自己着火させる多段着火モードで筒内での燃焼を制御するものであり、
    前記幾何学的圧縮比制御部は、前記エンジンの幾何学的圧縮比を、前記多段着火モードでは前記通常モードよりも高い高圧縮比に設定するものである
    ことを特徴とするガソリンエンジンの制御装置。
  2. 請求項1記載のガソリンエンジンの制御装置において、
    前記エンジンは、筒内の混合気を火花点火する点火プラグを備え、
    前記燃焼制御部は、さらに前記点火プラグによる火花点火により筒内の混合気を燃焼させる火花点火モードでの燃焼も制御するものであり、
    前記幾何学的圧縮比制御部は、前記通常モードでは前記火花点火モードと同等の幾何学的圧縮比に設定するものである
    ことを特徴とするガソリンエンジンの制御装置。
  3. 請求項1または2記載のガソリンエンジンの制御装置において、
    前記幾何学的圧縮比制御部は、所定の異常着火限界を超えない範囲内で幾何学的圧縮比を設定するものである
    ことを特徴とするガソリンエンジンの制御装置。
  4. 請求項1から3の何れか1項に記載のガソリンエンジンの制御装置において、
    前記燃焼制御部は、前記多段着火モードにおいて、前記ネガティブオーバラップ期間に圧縮自己着火される燃料の噴射量と、圧縮上死点経過直後に圧縮自己着火される燃料の噴射量とを略同量に設定するものである
    ことを特徴とするガソリンエンジンの制御装置。
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