JP4800288B2 - 光触媒を用いた食品等の有機化合物を含む試料中のイプロジオン及び/又はイプロジオン代謝物の分析方法 - Google Patents

光触媒を用いた食品等の有機化合物を含む試料中のイプロジオン及び/又はイプロジオン代謝物の分析方法 Download PDF

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Description

本発明は、食品中のイプロジオン及び/又はイプロジオン代謝物を分析する方法に関する。
二酸化チタンには、酸化分解する作用と強い親水性を示す作用があることが知られている。酸化分解に関しては、二酸化チタンの結晶構造において、アナターゼ型の二酸化チタンが光触媒としての働きを示す。二酸化チタンは380nm以下の波長の紫外線が照射されると、ラジカルが発生し、表面に付着した有機物を酸化分解する。超親水性に関しては、二酸化チタンでコーティングした表面に紫外線を照射すると表面が超親水性になり、水等により表面の汚濁物質が流れやすくなり、汚れ付着防止となる。また、同様の作用により鏡などの曇り防止にも利用されている。
酸化分解する作用を利用して、大気中の匂い物質の分解、微生物の殺菌、廃水処理など多方面への利用、応用に関する報告が多くなされている。廃水処理に関しては、汚濁物質の高度分解処理を目的に二酸化チタンを用いる例があるが、特に、農薬、PCB、ダイオキシン類、内分泌かく乱物質など、いわゆる環境汚染物質を分解処理し、無害化するための検討が注目されている。
分解する物質が二酸化チタンの表面に存在する場合、酸化分解の反応は二酸化チタンの表面で行われる、いわば、2次元での反応とみなされる。しかし、液体中では、分解対象物が3次元で流動しながら存在するため、照射を受ける紫外線の量が一様でなくなり、分解の効率が下がる。そのため、多量処理ができないという課題があり、ガラスやシリカゲルなどの不活性物質に担持させるなどの検討が進められている。
水質分析、食品分析、土壌分析などにおいて目的の化学物質を測定する際、一般的には抽出した溶液を精製する操作を行う。この精製操作は不要な物質を除去するという意味では、上記廃水処理と目的は同じである。食品中の農薬分析では、有機溶媒で抽出した後、シリカゲル、ケイ酸マグネシウム、アミノプロピル、イオン交換樹脂、グラファイトカーボンやそれらのカートリッジカラムを用いて精製を行い、GC、GC-MS、HPLC、LC-MSなどで測定する。しかしながら、乾燥した果実、野菜、加工食品などの場合、サンプルによっては、妨害物質が多量に含まれているものがある。これらのサンプルは、上記の樹脂では精製が不十分であるため、可視紫外線検出器や蛍光検出器ではピークの判別が困難な場合や、LC-MSでの測定ではイオン化が不十分で測定が困難な場合もある。また、精製工程を増やすと操作に時間を要す上に、回収率が低下する懸念もある。従って、できるだけ精製工程を少なくし、精製効果の高い方法を確立する必要がある。特に、食品中の農薬分析は食品の安全衛生の観点から、分析値は重要な意味を持つため、精度高い測定法の確立は急務である。
野菜などの栽培における殺菌剤としてイプロジンが広く使用されており、食品中への残存が問題となっている。また、厚生労働省における輸出国における農薬等の使用状況等に関する調査で検出頻度の高い農薬の1つに挙げられている。
なお特許文献1では排水などの液体試料に含有される分析妨害成分を光触媒反応により分解したのち、化学分析を行う技術が開示されている。しかしながら特許文献1に記載の本技術は液体試料中の分析妨害成分である有機物を全て分解除去し、分析対象物である無機成分の分析を容易にすることを目的としている。農薬のような有機化合物を分析する目的で液体試料を光触媒により処理することは特許文献1には記載も示唆もされていない。
特開2006-113006号公報
本発明は食品等の有機物含有試料中に含まれるイプロジンを簡便且つ正確に測定するための手段を提供することを目的とする。
本発明者らは以下の手段により本発明の課題を解決することができることを見出した。
(1)有機物含有試料中のイプロジオン及び/又はイプロジオン代謝物を分析する方法であって、
(a)有機物含有試料中の有機溶媒可溶物を有機溶媒により抽出分離することにより、前記有機溶媒可溶物を有機溶媒中に溶解してなる抽出液を調製する工程と、
(b)前記抽出液に二酸化チタンを添加し、光照射を行い、前記抽出液中で光触媒反応を進行させる工程と、
(c)工程(b)を経た前記抽出液に含まれるイプロジオン及び/又はイプロジオン代謝物をクロマトグラフィーにより測定する工程と
を含むことを特徴とする前記方法。
(2)前記有機物含有試料が食品である(1)記載の方法。
(3)工程(b)が、前記抽出液と二酸化チタンとを光透過性の容器に収容し、撹拌及び/又は揺動により該容器内で抽出液中に二酸化チタンを分散させながら、該容器に対して光照射して光触媒反応を進行させる工程である(1)又は(2)記載の方法。
(4)クロマトグラフィーが液体クロマトグラフィーである(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)有機溶媒がアセトン、メタノール及び酢酸エチルからなる群から選択される溶媒又は前記群から選択される少なくとも2種の溶媒の混合溶媒である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)二酸化チタンが二酸化チタンの微粒子である(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)二酸化チタンが直径3mm〜5mmの粒状の基材上に固定化された二酸化チタンの微粒子である(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
本発明の方法によれば、食品等の有機物含有試料中に含まれるイプロジンを簡便且つ正確に測定することが可能となる。
1.イプロジオン及びイプロジオン代謝物
「イプロジオン」とは、3-(3,5-ジクロロフェニル)-N-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-カルボキサミド:
Figure 0004800288
を指す。
本発明において「イプロジオン代謝物」とはN-(3,5-ジクロロフェニル)-3-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-カルボキサミド:
Figure 0004800288
を指す。
本発明者は驚くべきことに、有機物含有試料の有機溶媒による抽出液を二酸化チタンによる光触媒作用によって処理した場合、前記抽出物中に含まれる、イプロジオン又はその代謝物のクロマトグラフィーによる分析を妨害する物質は分解されるものの、イプロジオン又はその代謝物は十分量残存するために、イプロジオン又はその代謝物のクロマトグラフィーによる分析が容易になることを見出した。
2.有機物含有試料
本発明において有機物含有試料とは糖、タンパク質、核酸などの有機物を含有する限り特に限定されないが、典型的には食品である。有機物含有試料としては他に、上水や排水、土壌などが挙げられる。
食品としては野菜、果実などの食用の植物が好ましい。有機物含有試料は乾燥したものであることが好ましい。例えば乾燥した野菜、果実などの食用の植物が好ましい。
有機物含有試料として用いられる食用の植物としてはバジル、唐辛子、パセリ、ミントなどが挙げられる。
3.有機溶媒による抽出(工程(a))
本発明の工程(a)は有機物含有試料中の有機溶媒可溶物を有機溶媒により抽出分離することにより、前記有機溶媒可溶物を有機溶媒中に溶解してなる抽出液を調製する工程である。
有機溶媒としてはイプロジオン又はイプロジオン代謝物を抽出可能なものであれば特に限定されないが、ベンゼン及びn−ヘキサン以外の有機溶媒であることが好ましく、とりわけアセトン、メタノール及び酢酸エチルからなる群から選択される溶媒又は前記群から選択される少なくとも2種の溶媒の混合溶媒が好ましい。これらの有機溶媒中では、二酸化チタン光触媒存在下にあるにもかかわらず、イプロジオン又はイプロジオン代謝物の分解が抑制される。
抽出操作は常法により行うことができる。有機物含有試料を十分に乾燥したものに有機溶媒を加え、有機溶媒可溶物を有機溶媒により抽出分離することが好ましい。具体的には、例えば有機物含有試料に有機物含有試料の重量の2倍〜10倍量の有機溶媒を加え、5〜10分間程度ホモジナイズするか、又は振とうすることにより抽出を行うとよい。また有機物含有試料が水を含む場合は、水を含む有機物含有試料に有機溶媒を加え、抽出後、抽出物中の水層と有機層とを分離し、有機溶媒可溶物を有機溶媒中に溶解してなる抽出液を得ることが好ましい。抽出液は更に脱水処理したものであることが好ましい。
本発明において「抽出液」には抽出操作後に濃縮されたもの、或いは有機溶媒の添加により希釈されたものをも包含するが、濃縮又は希釈されていない抽出液であることが好ましい。
4.二酸化チタン存在下での光触媒反応(工程(b))
工程(b)は工程(a)で調製された抽出液に二酸化チタンを添加し、光照射を行い、前記抽出液中で光触媒反応を進行させる工程である。
二酸化チタンとしてはアナターゼ型の二酸化チタンを使用する。
二酸化チタンは微粒子状のものを用いることができる。二酸化チタンの微粒子としては、直径が0.1〜0.5μm程度のものが好適なものとして挙げられる。
二酸化チタンの微粒子は適当な基材、例えば直径3mm〜5mmの粒状の基材上に固定化して用いることが好ましい。二酸化チタンの微粒子粉末と比較して固定化された二酸化チタンは取り扱いが容易になるためである。このような基材としてはシリカゲル粒子やガラスなどが挙げられる。基材上に固定化させる二酸化チタン微粒子の量は特に限定されないが、例えば基材に対して2〜10重量%であるのが好ましい。
抽出液に対する二酸化チタンの使用量としては、固定化されていない粉末状の二酸化チタン微粒子を使用する場合、抽出液20mlに対して3g〜6gの割合で使用することが好ましい。また二酸化チタンとして基材上に固定化されたものを使用する場合には、抽出液20mlに対して8g〜12gの割合で使用することが好ましい。
光照射による光触媒反応は、測定しようとするイプロジオン又はイプロジオン代謝物を実質的に分解しないが、クロマトグラム上でイプロジオン又はイプロジオン代謝物のピークと重複する位置にピークを示す抽出液中の妨害物質を分解するには十分な条件で行われる。このような条件を設定することは困難なことではない。なぜなら、本願明細書記載の実施例に示されるとおり、有機溶媒中ではイプロジオン又はイプロジオン代謝物は二酸化チタンによる光触媒反応によって容易には分解されないからである。
また、照射光の波長としては280〜380nm、紫外線の強度としては500μW/cm2以上、好ましくは3000μW/cm2以下、照射時間としては60分以上、好ましくは360分以下であるのが好ましい。
二酸化チタンは抽出液中で十分に分散されていることが好ましい。このためには抽出液と二酸化チタンとを光透過性の容器に収容し、撹拌及び/又は揺動により該容器内で抽出液中に二酸化チタンを分散させながら該容器に対して光照射して光触媒反応を進行させることが好ましい。光透過性の容器としては石英製の容器が好ましい。
5.クロマトグラフィーによる測定(工程(c))
工程(c)は、工程(b)を経た前記抽出液に含まれるイプロジオン及び/又はイプロジオン代謝物をクロマトグラフィーにより測定する工程である。
クロマトグラフィーとしては液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフ質量分析計、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計などが挙げられる。例えば、液体クロマトグラフィーにより測定する場合には、検出器としては可視紫外線検出器、カラムはODSカラムを用いるとよい。また、移動相はアセトニトリルと水あるいはトリフルオロ酢酸を適当量の比率で混合させたものを用いるとよい。
クロマトグラフィーに供する試料としては工程(b)を経た前記抽出液自体、その希釈物、又はその濃縮物を用いてもよいし、前記抽出液から有機溶媒を除去し他の適当な溶媒で再希釈したものを用いてもよい。
6.検出感度等
本発明の方法によれば有機物含有試料中に0.05ppm以上含まれるイプロジオン又はイプロジオン代謝物を検出及び定量することが可能である。
本発明によれば、食品等の有機物含有試料中のイプロジオン及び/又はイプロジオン代謝物の有無を判別することができる。また適当な標準試料を用いることにより有機物含有試料中のイプロジオン及び/又はイプロジオン代謝物を定量することも可能である。
1. 二酸化チタンの粒子を用いたイプロジオンの分析
1.1. 材料及び試薬
アセトン、アセトニトリル、イプロジオン、二酸化チタン(IV)、2−プロパノール、ジエタノールアミン、チタンテトラプロポキシドは和光純薬工業株式会社製を用いた。なお、アセトンは残留農薬・PCB試験用溶媒を、イプロジオンは残留農薬分析用を、アセトニトリルはHPLC用を用いた。ドライサーモユニット DTU-1B、ウォーターバスシェーカーPersonal-11はタイテック株式会社製、ブラックライト(ピーク波長:352nm)10Wは、東芝ライテック社製、ディスクフィルターはTITAN Filtration Systems Syringe Filter PTFE membrane pore size 0.45μm (SUN-SRi, USA)を用いた。遠心分離機はクボタ卓上多本架遠心機 KN-70(久保田商事株式会社)、電気マッフル炉はElectric Furnace KM-1303(アドバンテック東洋株式会社)を用いた。
1.2. 有機溶媒による抽出(工程(a))
市場で購入した乾燥バジルを粉砕して425μmの標準網ふるいに通し、ふるいに通した粉砕物の5g量り、50mlのガラス遠沈管に入れた。次いで、アセトンを50ml加えて振とう機(振幅30mm、150min-1)で10分間振として抽出し、次いで遠心分離機で3000rpm、5分間遠心分離した後、ろ紙5Bで濾過し、これを抽出液とした。
1.3. 二酸化チタン存在下での光触媒反応(工程(b))
40ml石英バイアルビンに抽出液20mlを入れると共に、イプロジオンとイプロジオン代謝物とをそれぞれ1ppmとなるように添加した。次いで、このバイアルビンに粉末状の二酸化チタン微粒子を6g加え、キャップを閉じた。
蛍光灯用器具2機を並列に固定した照射用器具を作製し、ブラックライトを装着した。2本のブラックライトの間に前記バイアルビンを固定し、左右からブラックライトを照射しながら、180分間振とうさせた(振幅30mm、150min-1)(図1)。ブラックライトの発熱でサンプルの温度が上昇するのを防ぐため、バイアルビンに送風する。180分間の照射後、ディスクフィルターで抽出液をろ過した。濾液を試験管に1mlとり、ドライサーモユニットを用い、35℃で保温しながら窒素を吹きかけ、アセトンを留去する。残留物にアセトニトリル1mlを加えて溶解した。これを遠心分離機で3000rpm、5分間遠心分離し、上澄みをHPLC用の検液とした。
1.4. クロマトグラフィーによる測定(工程(c))
HPLCシステムはヒューレットパッカード社のHP1050シリーズを用いた。検出器は東ソー株式会社製の可視紫外線検出器UV-8020を用い、インターフェイス35900を用いてデータを得た。カラムオーブンは、日立製作所製のL-7300冷却ユニット付を用いた。設定温度は25℃とした。カラムはカプセルパックC18 UG120 5μm サイズは4.6mm×250mm(CAPSELL PAK C18 UG120) 株式会社資生堂製(SHISEIDO CO.LTD)を使用した。ガードカラムはGUARD CARTRIDGE CAPCELLC18 UG120 S-5 4.0×10mmを用いた。移動相はアセトニトリルと4.4mMトリフルオロ酢酸を6:4(V/V)で混合させたものを用いた。流速は0.8ml/min、オートインジェクターを用い10μl注入した。検出器の波長は230nmとした。
1.5. 結果
バジル抽出溶液に二酸化チタンを加えてブラックライトを照射させると、イプロジオン溶出付近の妨害物質が分解され、定量可能なクロマトグラムが得られることがわかった(図2)。
なお、「1.2. 有機溶媒による抽出(工程(a))」で調製したバジル抽出液にイプロジオンを添加しない試料に二酸化チタンを添加し光触媒反応を行った場合、分解物のピークが、イプロジオンが存在したとすれば溶出する位置には重ならないことは事前に確認できた(図5)。
2. 好適条件について
2.1 二酸化チタン量について
抽出液バジルに加える二酸化チタンの量を変えて「1.3. 二酸化チタン存在下での光触媒反応(工程(b))」に従い検液を作製し、「1.4. クロマトグラフィーによる測定(工程(c))」に示すHPLCの条件で測定した。その結果、二酸化チタンを6g加えた場合、妨害ピークが分解により最も減少し、良好なピークが得られることがわかった(図3)。なお、7g以上加えると、均質に撹拌されない場合や、採取できる抽出液の量が少なくなり、測定するのが難しくなった。
2.2 紫外線強度について
10Wのブラックライト2本で530μW/cm2の紫外線強度であったが、クロマトグラム上で分解が安定しない場合があった。ブラックライトの本数を増やし強度を上げたが、ブラックライトの熱でサンプルの温度が上昇した。その対策として、ブラックライトを2本とし、鏡を2枚設置することで、紫外線強度を上げ、照射中は送風し、サンプルの温度が上昇しないようにした。ブラックライト2本で鏡を上下2枚設置した場合の紫外線強度は1085μW/cm2であった。
2.3 紫外線の照射時間について
紫外線の照射時間を変えて「1.3. 二酸化チタン存在下での光触媒反応(工程(b))」に従い検液を作製し、「1.4. クロマトグラフィーによる測定(工程(c))」に示すHPLCの条件で測定した。その結果、180分の照射で十分定量できるクロマトグラムが得られたので、180分までの照射とした。照射時間は長いほど分解が進行するが、分解を進めてもイプロジオンの溶出付近の変化は認められなかった(図4)。
3. イプロジオン及びイプロジオン代謝物の回収試験
3.1.標準溶液を用いた添加回収試験
イプロジオン標準液とイプロジオン代謝物標準液のそれぞれ1ppmアセトン混合溶液を作成し、石英バイアルビンに20ml入れた。これに二酸化チタンを6g加え、「1.3. 二酸化チタン存在下での光触媒反応(工程(b))」と同様の手順で紫外線を照射し、0、30、60、120、180分目を分取し、「1.4. クロマトグラフィーによる測定(工程(c))」条件に従い測定を行った。その結果、イプロジオンの180分の照射での回収率は88.3%、イプロジオン代謝物の回収率は91.0%であった。
3.2.バジル抽出溶液を用いた添加回収試験
バジル抽出液を石英バイアルビンに20ml入れた。これに100ppmのイプロジオン標準液とイプロジオン代謝物標準液をそれぞれ1ppmになるように加えた。これに二酸化チタンを6g加え、「1.3. 二酸化チタン存在下での光触媒反応(工程(b))」と同様の手順で紫外線を照射し、180分目を分取し、「1.4. クロマトグラフィーによる測定(工程(c))」条件に従い測定を行った。その結果、イプロジオンの180分での照射の回収率は102.6%、イプロジオン代謝物の回収率は101.1%であった。
3.3.標準溶液無添加試験
バジル抽出液を石英バイアルビンに20ml入れ、これにイプロジオン標準液とイプロジオン代謝物標準液は加えず、二酸化チタンを6g加え、「1.3. 二酸化チタン存在下での光触媒反応(工程(b))」と同様の手順で紫外線を照射し、180分目を分取し、「1.4. クロマトグラフィーによる測定(工程(c))」条件に従い測定を行った。その結果、イプロジオン及びイプロジオン代謝物の溶出位置には妨害となるピークは見られなかった。
4. 溶媒別イプロジオンの回収試験
イプロジオン標準品をアセトンに溶解して100ppmの標準溶液を作製した。次にアセトン、メタノール、酢酸エチル、ベンゼン、n−ヘキサン及びイオン交換水を用いてそれぞれ1ppm標準溶液とした。これに二酸化チタンを6g加え、「1.3. 二酸化チタン存在下での光触媒反応(工程(b))」と同様の手順で紫外線を照射し、180分目を分取し、「1.4. クロマトグラフィーによる測定(工程(c))」条件に従い測定を行った。
その結果、表1に示すように、アセトン、メタノール及び酢酸エチルについては回収率が高かったが、ベンゼン、n−ヘキサン及びイオン交換水については回収率が低かった。
Figure 0004800288
5. 光触媒シリカゲルを用いたイプロジオンの分析
5.1. 光触媒シリカゲルの作製
富士シリシア化学株式会社製シリカゲル(粒径1.70〜4.00mm)を用いて、以下のようにして光触媒シリカゲルを作製した。すなわち、先ず、ジエタノールアミン10mlに2−プロパノール200mlを加え混合した。これにチタンテトライソプロポキシド30mlを加えて撹拌し、これをチタニアゾルとした。シリカゲルにチタニアゾルを十分浸るまで注ぎ、室温で60分間浸漬させた。続いて2−プロパノールに漬けた後、30分間室温で乾燥させた。続いて100℃で乾燥させたのち、電気マッフル炉を用いて600℃で120分間焼成させたものを光触媒シリカゲルとした。
5.2. 光触媒シリカゲル存在下での光触媒反応(工程(b))
「1.2. 有機溶媒による抽出(工程(a))」で調製したバジル抽出液を、40ml石英バイアルビンに20ml入れると共に、イプロジオンとイプロジオン代謝物とをそれぞれ1ppmとなるように添加した。石英バイアルビンに更に「5.1. 光触媒シリカゲルの作製」で作製した、光触媒シリカゲルを10g加えてシリカゲルが抽出液に浸るようにし、キャップを閉じた。
ブラックライトを装着した蛍光灯用器具2機を並列に固定し、その間に前記バイアルビンを固定し、左右からブラックライトを照射した。ブラックライトの発熱でサンプルの温度が上昇するのを防ぐため、照射中はバイアルビンに送風した。180分間の照射後、濾液を試験管に1mlとり、ドライサーモユニットを用い、35℃で保温しながら窒素を吹きかけ、アセトンを留去した。残留物にアセトニトリル1mlを加えて溶解し、これを遠心分離機で3000rpm、10分間遠心分離し、得られた上澄みをHPLC用の検液とした。
5.3. クロマトグラフィーによる測定(工程(c))
光触媒シリカゲルを用いて、バジル抽出液中のイプロジオンを精製し、HPLCで測定した結果、イプロジオンの溶出位置付近の妨害ピークは消え、イプロジオンの定量が可能となる良好なクロマトグラムを得ることができた(図6)。また、クロマトグラム全体を見て、粉末状の二酸化チタンを用いた場合よりも、妨害ピークが少ないことから、妨害物質除去効果の高いことが示唆された。
図1は実施例で用いた光照射システムの模式図である。平行に位置した2本のブラックライトの間にサンプル設置した。互いに反射面が対向しあうよう配置した二枚の鏡の間にブラックライト及びサンプルを配置した。 図2は光照射前後のクロマトグラムを示す(上:光照射前 下:光照射後)。 図3は二酸化チタンの添加量の違いによるクロマトグラムの変化を示す。 図4は照射時間の違いによるクロマトグラムの変化を示す。 図5はバジル抽出液を二酸化チタンを用いて分解したクロマトグラムを示す。 図6は光触媒シリカゲルを用いてバジル抽出液を光分解したクロマトグラムを示す。

Claims (7)

  1. 有機物含有試料中のイプロジオン及び/又はイプロジオン代謝物を分析する方法であって、
    (a)有機物含有試料中の有機溶媒可溶物を有機溶媒により抽出分離することにより、前記有機溶媒可溶物を有機溶媒中に溶解してなる抽出液を調製する工程と、
    (b)前記抽出液に二酸化チタンを添加し、光照射を行い、前記抽出液中で光触媒反応を進行させる工程と、
    (c)工程(b)を経た前記抽出液に含まれるイプロジオン及び/又はイプロジオン代謝物をクロマトグラフィーにより測定する工程と
    を含むことを特徴とする前記方法。
  2. 前記有機物含有試料が食品である請求項1記載の方法。
  3. 工程(b)が、前記抽出液と二酸化チタンとを光透過性の容器に収容し、撹拌及び/又は揺動により該容器内で抽出液中に二酸化チタンを分散させながら、該容器に対して光照射して光触媒反応を進行させる工程である請求項1又は2記載の方法。
  4. クロマトグラフィーが液体クロマトグラフィーである請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 有機溶媒がアセトン、メタノール及び酢酸エチルからなる群から選択される溶媒又は前記群から選択される少なくとも2種の溶媒の混合溶媒である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. 二酸化チタンが二酸化チタンの微粒子である請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 二酸化チタンが直径3mm〜5mmの粒状の基材上に固定化された二酸化チタンの微粒子である請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
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