JP4794944B2 - C型肝炎に対するインターフェロン/リバビリン併用療法の有効性の判定方法 - Google Patents

C型肝炎に対するインターフェロン/リバビリン併用療法の有効性の判定方法 Download PDF

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Description

本発明は、遺伝子型(ジェノタイプ)1bのC型肝炎ウイルスに起因するC型肝炎に対するインターフェロン/リバビリン併用療法の有効性の判定方法に関する。
C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(以下、「HCV」ということがある)に感染することにより起こり、初めてHCVに感染したヒトの約70%はキャリアとなり慢性化する。HCVに起因する慢性肝炎(C型慢性肝炎)患者の30〜50%は感染から平均約20年で肝硬変になり、肝硬変患者の60〜80%は、感染から平均約30年で肝癌に移行する。
C型慢性肝炎の治療法としては、従来よりインターフェロン(以下、「IFN」ということがある)が用いられてきたが、近年では、IFNと抗ウイルス薬の1種であるリバビリン(以下、「RBV」ということがある)の併用療法が行なわれ、難治例においても治療効果が向上している。すなわち、血清中のHCVのRNA量(HCVはRNAウイルス)が100kIU/mL以上の場合、IFN単独療法では、著効例の割合が僅かに約5%であるが、IFNとRBVの併用療法により、血清中のHCVのRNA量が200kIU/mL以上の場合でも著効例の割合が約20%、ポリエチレングリコールを結合してIFNの血中半減期を長くしたポリエチレングリコール化IFN(以下、「PEG-IFN」言うことがある)とRBVの併用療法では、著効例の割合が約40%に向上した(非特許文献1)。
しかしながら、PEG-IFNとRBVの併用療法でもなお著効例の割合は半分よりも少ない。一方、IFN(PEG-IFNを包含する)とRBVの併用療法には副作用も報告されている。もし、IFNとRBVの併用療法が有効か否かを治療前又は治療初期に判定することができれば、IFN/RBV併用療法が効かない患者に対して、副作用のあるIFN/RBV併用療法を施すことを避けることができ、また、患者に対して他の治療方法を施すことが可能になる。さらに、これらの高価な医薬を投与して患者や社会に経済的な負担をかけることを避けることもできる。したがって、IFN/RBV併用療法が効くか否かを治療前又は治療初期に判定することが可能な方法が望まれる。
従来、HCVのNS5A領域中にある、第2209番目〜第2248番目のアミノ酸配列を調べることにより、IFNによるC型慢性肝炎の治療の有効性を判定する方法が知られている(非特許文献2、3)。しかし、この方法が発明された当時には、IFN/RBV併用療法は行なわれておらず、この方法がIFN/RBV併用療法の有効性の判定に使えるかどうかは不明である。
高木章乃夫、他、「内科」93(3):425-429, 2004 Enomoto N et al., Comparison of full-length sequences of interferon sensitive and resistant hepatitis C virus 1b. J Clin Invest 1995; 96:224230. Enomoto N et al., Mutations in the nonstructural protein 5A gene and response to interferon in patients with chronic hepatitis C virus 1b infection. N Engl J Med 1996; 334:7781. Chayama K et al., Genotypic subtyping of hepatitis C virus. J Gastroenterol Hepatol 1993; 8: 150156) Kato N et al., Molecular cloning of the human hepatitis C virus genome from Japanese patients with non-A, non-B hepatitis. Proc Natl Acad Sci USA 1990; 87: 95249528.
したがって、本発明の目的は、IFN/RBV併用療法の有効性を治療開始前又は治療開始後の初期に判定することができる方法を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、IFN/RBV併用療法の無効例では、HCVのコア領域中の特定のアミノ酸が他のアミノ酸に変異している場合が有意に多いことを見出し、患者から採取した検体中に含まれるHCVのコア領域中の当該領域のアミノ酸配列を調べることにより、IFN/RBV併用療法の有効性を高い確率で判定できることを実験的に確認して本発明を完成した。さらに、IFN/RBV併用療法開始後の初期の段階においてHCV RNA量が顕著に減少するか否かを判定基準に加えることにより、さらに正確にIFN/RBV併用療法の有効性を判定できることを見出した。
すなわち、本発明は、遺伝子型1bのC型肝炎ウイルスに感染している患者から採取された検体中に含まれるC型肝炎ウイルスのコア領域中のアミノ酸配列の第70番目のアルギニンが他のアミノ酸に変異しているか否か及び第91番目のアミノ酸がメチオニンか否かを調べ、
(1)第70番目のアルギニンがグルタミンに変異している
(2)第91番目がメチオニンである
のいずれにも該当しない場合にはインターフェロン/リバビリン併用療法が有効である可能性が高いという基準と対比することを含む、C型肝炎治療のためのインターフェロン/リバビリン併用療法の有効性の判定方法を提供する。また、本発明は、上記本発明の方法に加え、インターフェロン/リバビリン併用療法の開始前及び開始後の初期に採取された検体中に含まれるC型肝炎ウイルスの遺伝子量を測定して、併用療法開始後の初期にウイルス遺伝子量が有意に減少するか否かを調べ、前記(1)(2)の少なくともいずれか一方に該当する場合について、ウイルス遺伝子量が有意に減少するときは前記併用療法が有効である可能性が高く、ウイルス遺伝子量が有意に減少しないときは前記併用療法が無効である可能性が高いという基準と対比することをさらに含む、C型肝炎治療のためのインターフェロン/リバビリン併用療法の有効性の判定方法を提供する。
本発明により、IFN/RBV併用療法の有効性を治療開始前又は治療開始後の初期に判定することができる方法が初めて提供された。本発明によれば、IFN/RBV併用療法の有効性を治療開始前又は治療開始後の初期に判定することができるので、IFN/RBV併用療法が効かない患者に対して、副作用のあるIFN/RBV併用療法を開始ないしは継続することを避けることができ、また、患者に対して他の治療方法を施すことが可能になる。さらに、これらの高価な医薬を投与して患者や社会に経済的な負担をかけることを避けることもできる。したがって、本発明は、C型慢性肝炎の治療に大いに貢献するものと期待される。
本発明の方法が適用される患者は、遺伝子型(ジェノタイプ)1bのHCVに感染した患者である。C型慢性肝炎を引き起こすHCVには、遺伝子型1bと遺伝子型2があることが知られており、遺伝子型1bの方が多く、かつ、難治性の割合も高い。遺伝子型1bと遺伝子型2の識別方法は周知であり(非特許文献4)、HCV RNAのNS5領域の塩基配列に基づいて容易に識別することができる。
本発明の方法により有効性が判定される治療方法は、IFNとRBVの併用療法である(以下、単に「併用療法」ということがある)。IFNの型は特に限定されず、C型慢性肝炎の治療に用いられるいずれのIFNであってもよい。通常、IFNα、特にIFNα2bとIFNα2aが用いられるが、これらに限定されるものではない。また、IFNの血中半減期を長くするために、IFNにポリエチレングリコールを結合させたPEG-IFNも用いられているが、本願明細書及び特許請求の範囲における「インターフェロン」は、特に断らない限り及び文脈上そうでないことが明らかな場合を除き、PEG-IFNのような、C型慢性肝炎の治療に用いられるIFN誘導体をも包含する意味で用いている。なお、併用療法は、現在の遺伝子型1bのC型慢性肝炎の治療ガイドラインでは、血清中のHCV RNA濃度が100kIU/mL以上の高ウイルス量の場合、PEG-IFNα2bとRBVの併用療法を48週間、併用療法非適応例には、IFN(非PEG化)を2年間投与するとされており、また、血清中のHCV RNA濃度が100〜500kIU/mLの、高ウイルス症例のうちの中程度の場合には、PEG-IFNα2aの単独投与も可とされている。一方、血清中のHCV RNA濃度が100kIU/mL未満の低ウイルス量の場合には、IFN(非PEG化)を24週間又はPEG-IFNα2aを24〜48週間投与するとされている。また、再投与の場合、高ウイルス量の場合には上記した初回投与と同様であり、低ウイルス量の場合には、IFNα2b(非PEG化)とRBVの併用療法24週間又はPEG-IFNα2aの単独投与48週間又はIFN(非PEG化)の単独投与48週間とされている。なお、本発明の方法により有効性が判定される併用療法は、必ずしもこのガイドラインに従った併用療法に限定されるものではなく、他のIFN/RBV併用療法であってもよい。
本発明の方法に供される検体は、HCVに感染した患者から採取されたものであり、HCVを含むものであれば、何ら限定されず、血液のような体液や、肝生検検体等であってよい。これらのうち、採取が容易で感度も良好な血液(全血の他に、血清、血漿のような血液成分も包含する)検体が好ましい。
本発明の方法では、検体中に含まれるHCVのコア領域中のアミノ酸配列の第70番目のアルギニンがグルタミンに変異しているか否か及び第91番目のアミノ酸がメチオニンか否かを調べることを含む。HCVのゲノム配列及びそれがコードするアミノ酸配列は既に公知であり、例えば、非特許文献5及びGenBank Accession No. D90208には、HCVゲノムの原型(プロトタイプ)配列(HCVJ)が記載されている。配列表の配列番号1に、HCVJのコア領域の塩基配列を、それがコードするアミノ酸配列と共に示す。本発明の方法では、コア領域内の第70番目のアミノ酸(HCVJではアルギニン)がグルタミンに変異しているか否か、及び第91番目のアミノ酸がメチオニンか否か(第91番目のアミノ酸は、HCVJでもメチオニンであるが、下記実施例に具体的に示されるように、高ウイルス量のC型慢性肝炎患者の血清中のHCVでは、ロイシンの場合が多い。そして、第91番目のアミノ酸がメチオニンの場合(HCVJでもそうであるが)に無効例が有意に多い)を調べる。下記実施例において具体的に示されるように、併用療法が無効な例では、第70番目のアルギニンが他のアミノ酸に変異している及び/又は第91番目のアミノ酸がメチオニンである可能性が有意に高い。したがって、これらのアミノ酸を調べることにより、高い確率で併用療法が無効か否かを判定することができる。なお、下記実施例に具体的に示されるように、第70番目のアルギニンが変異している無効例では、アルギニンがグルタミン又はヒスチジンに変異しており、ほとんどの場合、グルタミンに変異している。また、第91番目のアミノ酸はメチオニンかロイシンであり、高ウイルス量のC型慢性肝炎患者の血清中のHCVでは、ロイシンの場合が多いが、このアミノ酸がメチオニンである場合に併用療法が無効である可能性が有意に高い。

上記の通り、HCVのゲノム配列は既に公知であるので、コア領域中の第70番目及び第91番目のアミノ酸が何であるかは、それ自体周知の方法により調べることができる。例えば、検体に含まれるHCVのゲノムRNAを鋳型として逆転写PCR(RT-PCR)を行い、増幅産物の塩基配列を決定することにより調べることができる。増幅領域は、上記第70番目から第91番目のアミノ酸をコードする領域を少なくとも含む領域であればよい。PCRのプライマーとしては、増幅領域の両端にそれぞれ相補的なオリゴヌクレオチドを用いることができ、これらのオリゴヌクレオチドの配列は、配列番号1に記載した公知の配列に基づいて容易に設定可能である。PCRは、これらのプライマーを用い、市販のキット及びサーマルサイクラー(商品名)のようなPCR用の装置を用いて、常法により行なうことができ、下記実施例にもRT-PCRの具体例が詳細に記載されている。なお、下記実施例に記載するように、測定の精度を高めるために、PCRを2段階で行うnested PCR(第1段のPCRの増幅産物を鋳型として、その増幅産物中の領域を第2段のPCRで増幅する)又はheminested PCR(第2段のPCRに用いるプライマーのいずれか一方として、第1段のプライマーと同じものを用いる)により行なってもよい。
上記した本発明の方法に加え、さらに、併用療法の初期に検体中のHCV RNA量が有意に減少するか否かを調べ、その結果も判断材料に加えることにより、判定の精度をさらに高めることができる。すなわち、HCVが上記した変異を有し、かつ、併用療法の初期に検体中のHCV RNA量が有意に減少しない場合には、併用療法が無効である確率がより一層高くなり、したがって、本発明の判定方法の精度をさらに高めることができる。なお、ここで、併用療法の初期とは、特に限定されないが、例えば、初回投与の24時間〜72時間後であり、また、有意に減少するとは、例えば、この期間に検体中のHCV RNA量が1/5ないし1/20以下になるか否か等を基準にすることができ、具体的な基準は適宜設定することができる。下記実施例では、初回投与48時間後に血清中HCV RNA濃度が1/10以下(すなわち、HCV RNA濃度の常用対数が1.0以上減少する)になるか否かを基準にしているが、必ずしもこの基準に限定されるものではない。なお、HCV RNA量は、常法である定量的RT-PCR法により測定することができ、HCV RNA量測定のためのキットも市販されているので、これを用いて容易に測定することができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
1. 患者及び併用療法
この実験には、HCVに感染し、併用療法を受けた50名の患者に参加してもらった。年齢は20歳から65歳でメジアンが53歳、男性31名、女性19名であった。50名のうち、34名(68.0%)は、毎週1回、1.5μg/kgのPEG-IFNα2bの皮下投与を受けると共に毎日600〜800mg/日のRBVの経口投与を48週間続けた。残りの16名(32.0%)の患者は、1日当り600万単位のIFNα-2b(非PEG化)を48週間に亘って筋肉内投与され(最初の2週間は1週間当り6回、続く46週間は1週間当り3回)、かつ、毎日600〜800mg/日のRBVの経口投与を48週間続けた。RBVの投与量は、体重に応じて調節した(体重が60kg以下の場合には600mg/日、体重が60kgを超える場合には800mg/日)。50名の患者のうち、14名(28.0%)では、治療中にヘモグロビン濃度が低下したので、RBVの投与量を減らした。併用療法終了時又は併用療法途中で、血清中のHCV RNAが、定性的PCR(後述)で検出限界未満になった患者を著効例(ウイルス学的著効例、VR)、併用療法終了時に定量的PCR(後述)及び/又は定性的PCRで血清中のHCV RNAが陽性であった患者を無効例(ウイルス学的無効例、NVR)とした。
2. HCVの型判別及びHCV RNAの測定
HCVの遺伝子型は、常法(非特許文献4)によりHCV RNAのNS5領域の塩基配列に基づき決定した。血清中のHCV RNA濃度は、先ず、定量的PCR(Amplicor HCV-RNA kit(商品名),version 2.0, Roche Diagnostics社製)により行なった。この測定方法の検出限界は0.5kIU/mLである。定量的PCRによりHCV RNAが測定されなかった場合には、より検出限界の低い定性的PCR(Amplicor(商品名), Roche Diagnostics社製)によっても測定した。定性的PCRの検出限界は、100コピー/mLである。
3. HCV RNAのコア領域及びNS5A領域の塩基配列決定
併用療法開始前の血清中のHCV RNA中の下記領域の塩基配列を決定することにより、コア領域の第1〜191番目のアミノ酸配列及びNS5A領域中の第2209番目〜第2248番目の領域(ISDR)のアミノ酸配列を決定した。血清検体から常法によりRNAを抽出し、ランダムプライマー及びMMLV逆転写酵素を用いてcDNAを合成した。次いで、得られたcDNAを鋳型として、以下のプライマーセットを用いた2段階のheminested PCR(コア領域)又はnested PCR(ISDR)により、上記したコア領域中の領域及びISDRをそれぞれコードする領域を増幅した。
(1) コア領域の増幅に用いたプライマーセット
(i) 第1段PCR
フォワード側プライマー(CC11):5'-GCC ATA GTG GTC TGC GGA AC-3'
リバース側プライマー(c14):5'-GGA GCA GTC CTT CGT GAC ATG-3'
(ii) 第2段PCR
フォワード側プライマー(CC9):5'-GCT AGC CGA GTA GTG TT-3'
リバース側プライマー:c14
(2) ISDRの増幅に用いたプライマーセット
(i) 第1段PCR
フォワード側プライマー(ISDR1): 5'-ATG CCC ATG CCA GGT TCC AG-3'
リバース側プライマー(ISDR2): 5'-AGC TCC GCC AAG GCA GAA GA-3'
(ii) 第2段PCR
フォワード側プライマー(ISDR3): 5'-ACC GGA TGT GGC AGT GCT CA-3'
リバース側プライマー(ISDR4): 5'-GTA ATC CGG GCG TGC CCA TA-3'
いずれの領域を増幅するためのPCRも、PCR用反応混合物を先ず95℃、15分間で変性させ、94℃、1分の変性工程、55℃、2分間のアニーリング工程及び72℃、3分間の伸長工程から成るサイクルを35サイクル繰返し、最後にさらに72℃、7分間の伸長工程を行なうことにより行なった。第1段のPCR終了後の反応混合物の1μLを第2段の反応混合物に加え、第1段と同じ条件(ただし、用いるプライマーは上記の通り異なる)で第2段のPCRを行なった。増幅産物は、常法によりアガロースゲル電気泳動にかけ、次いで、QIA quick PCR purification kit(商品名)を用いて精製し、次にダイレクトシーケンシング(直接的塩基配列決定)を行なった。ダイレクトシーケンシングは、Big Dye Deoxy Terminator Cycle Sequencing kit (Perkin-Elmer社製)を用いたジデオキシヌクレオチドターミネーションシーケンシングにより行なった。決定された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を、対応するコンセンサスアミノ酸配列と比較して、置換しているアミノ酸を特定した。なお、コンセンサスアミノ酸配列は、非特許文献5(GenBank Accession No. D90208)に記載されたHCVJの配列(配列番号1)及び本実施例で調べた50名の検体中のHCVの配列を比較して決定した(図1参照)。
4. 統計処理
コア領域及びNS5A領域のアミノ酸置換の解析には、Mann-Whitney U検定、χ2検定及びFisherの完全確率検定(exact probability test)を包含するノンパラメトリック検定を用いた。一変量及び多変量ロジスティック回帰分析を用いて無効例に有意に寄与した因子を決定した。また、オッズ比及び95%信頼区間(95%CI)を算出した。両側検定によるp値が0.05未満である全ての場合に統計学的有意差有りとした。一変量解析において統計学的有意差(p<0.05)又は境界有意差(p<0.10)を達成した変数は、多重ロジスティック回帰解析に入力して有意な独立因子を同定した。
5. 結果
著効例と無効例を比較した統計処理の結果、アミノ酸置換のうち、コア領域内の第70番目のアルギニンの変異及び第91番目のロイシンの変異(コンセンサス配列と比較した場合の変異)が統計学的に有意であることが明らかになった。他の部位(ISDR内も含む)のアミノ酸置換で統計学的に有意なものはなかった。コア領域内の第61番目から第110番目のアミノ酸配列を図1に示す。図1中、一番上に記載されたアミノ酸配列がこの領域のコンセンサス配列であり、2番目の配列がHCVJのこの領域のアミノ酸配列であり、その下に50名の患者から採取した検体中のHCVのこの領域のアミノ酸配列が50検体全てについて記載されている。なお、配列中の「−」で示されるアミノ酸は、一番上のコンセンサス配列のアミノ酸と同じであることを意味する。
第70番目及び第91番目のアミノ酸の変異(コンセンサス配列と比較した場合の変異)を伴う症例数、割合(括弧内)及びp値(フィッシャー完全確率検定)を下記表1に示す。なお、表1中、例えば、第70番目のアミノ酸は「aa70」のように示す。
Figure 0004794944
表1に示されるように、第70番目のアミノ酸及び第91番目のアミノ酸の変異(コンセンサス配列と比較した場合の変異)は、いずれか単独でも、組み合わせた場合でも、著効例と無効例の間に統計学的に有意差がある(p<0.05)。特にこれらのアミノ酸の少なくともいずれか一方(すなわち、第70番目のアミノ酸及び/又は第91番目のアミノ酸)が変異している場合には、p<0.001と統計学的有意差が特に大きくなることがわかる。また、無効例では、100%の確率でこれらのアミノ酸の少なくともいずれか一方が変異していることから、これらのアミノ酸のいずれも変異していない場合には、100%の確率で著効例であることもわかる。
実施例1と同じ患者について、48時間後の血清中のHCV RNA濃度が、併用療法開始前のHCV RNA濃度の1/10以下になったか否か(すなわち、HCV RNA濃度の常用対数が1.0以上低下したか否か)も判定材料に加えた。なお、50例中、1例は、48時間の検体が無く評価できず除外し、残りの49例について検討した。結果を図2に示す。
図2に示されるように、第70番目及び第91番目のどちらにも変異がない場合には、100%の確率で著効例である(上述)。また、第70番目及び第91番目の少なくともいずれかに変異がある場合でも、48時間後に血清中HCV RNA濃度が1/10以下に減少するか否かで場合分けすると、減少する場合(n=14)の著効例(n=13)の割合は92.9%であり、減少しない場合(n=13)の場合の著効例(n=2)は15.4%であった。換言すれば、第70番目及び第91番目のいずれにも変異がないか又は変異があっても48時間後に血清中HCV RNA濃度が1/10以下に減少する場合には、35/36(97.2%)の確率で著効例であることがわかる。このことから、併用療法初期のHCVの遺伝子量を測定することをさらに加えることにより、より一層判定の精度を高めることができることがわかる。
本発明の実施例において調査した、高ウイルス量のC型慢性肝炎の血清中のHCVのコア領域内の第61〜第110番目のアミノ酸配列を、コンセンサス配列及びプロトタイプ配列と比較して、併用療法の有効性と共に示す図である。 本発明の実施例において調査した、高ウイルス量のC型慢性肝炎の血清中のHCVのコア領域内の第70番目のアミノ酸及び/又は第91番目のアミノ酸の変異の有無及び48時間後の血清中のHCV RNA濃度が、併用療法開始前のHCV RNA濃度の1/10以下になったか否かに基づいて、著効例と無効例を場合分けした結果を示す図である。

Claims (5)

  1. 遺伝子型1bのC型肝炎ウイルスに感染している患者から採取された検体中に含まれるC型肝炎ウイルスのコア領域中のアミノ酸配列の第70番目のアルギニンが他のアミノ酸に変異しているか否か及び第91番目のアミノ酸がメチオニンか否かを調べ、
    (1)第70番目のアルギニンがグルタミンに変異している
    (2)第91番目がメチオニンである
    のいずれにも該当しない場合にはインターフェロン/リバビリン併用療法が有効である可能性が高いという基準と対比することを含む、C型肝炎治療のためのインターフェロン/リバビリン併用療法の有効性の判定方法。
  2. 前記検体中に含まれるC型肝炎ウイルスの遺伝子のコア領域中の、上記第70番目から第91番目のアミノ酸をコードする領域を少なくとも含む領域の遺伝子配列を決定することにより行なう請求項1記載の方法。
  3. 前記検体中に含まれるC型肝炎ウイルスの遺伝子を鋳型とした逆転写PCRを行い、増幅産物の塩基配列を決定することにより行なう請求項記載の方法。
  4. インターフェロン/リバビリン併用療法の開始前及び開始後の初期に採取された検体中に含まれるC型肝炎ウイルスの遺伝子量を測定して、併用療法開始後の初期にウイルス遺伝子量が有意に減少するか否かを調べ、前記(1)(2)の少なくともいずれか一方に該当する場合について、ウイルス遺伝子量が有意に減少するときは前記併用療法が有効である可能性が高く、ウイルス遺伝子量が有意に減少しないときは前記併用療法が無効である可能性が高いという基準と対比することをさらに含む請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記検体が血液検体である請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
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