JP4791754B2 - 立体像提示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、残像効果によって立体像を提示する立体像提示装置に関する。
従来、立体像を提示するものとして、二眼立体視によるCGや、ホログラムや、ストロボを利用した作品や、スリット光を利用した作品や、被投射体に映像を投射する装置等がある。
二眼立体視によるCGは、立体視を用いたもので、視差によって、リアルタイムで立体像の形状変化を表現可能なようにCGを採用したものである。
ホログラムは、観察する角度によって、立体像が動いている、または、形状が変化しているように見えるものである。
ストロボを利用した作品は、ストロボによって照射される瞬時の照射を利用して、回転させた被照射体を観察すると、アニメーション効果によって、当該被照射体が動いているように見えるものである(例えば、非特許文献1参照)。つまり、ストロボによる投射光の投射により、被投射体全体に高速間欠照明を供給することで、残像効果により、被投射体に動きが生じたように観察できるものである。
スリット光を利用した作品は、スリット光として、一部分を明るくして、他の部分を暗くした部分的な照明を、高速に回転する被投射体に投射し、当該被投射体の形が変形しているように見えるものである。
被投射体に映像を投射する装置は、高速に移動する被投射体に映像を投射することで、立体像を提示するものである。
岩井俊雄著 「岩井俊雄の仕事と周辺」 p46、p47 2000年11月 株式会社 六耀社
しかしながら、また、従来の二眼立体視によるCGによって立体像を提示する場合には、特殊な眼鏡(3Dメガネ)を用いて鑑賞する仕方や、レンチキュラースクリーン等を利用して裸眼により鑑賞する仕方があるが、いずれも可視範囲が表示画面の前方のみという制約があり、立体像を側面から鑑賞できない。
また、ストロボを利用した作品では、立体像が巡回する動きしか作り出すことができず、1巡の動きに相当する分だけ被投射体(例えば、30コマで1巡の動きとすれば、30体の被投射体)を載置しておく必要があると共に、立体像の動きに制約がある。
さらに、スリット光を利用した作品では、円盤状の物理的なスリット板に所定間隔で設けられた、中心から周縁に向かう小面積の線状のスリットを通過したスリット光を利用していたため、スリット板の回転方向の違い(正回転、逆回転)による2種類の形状変化に基づいた、2種類の立体像しか提示できず、立体像の形状変化をコントロールすることができないという問題がある。
さらにまた、被投射体に映像を投射する装置では、提示される立体像が、映像による面情報の時間積分による立体像となり、半透明な立体像しか提示できなかった。
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、立体像の形状変化をコントロールして提示することができる立体像提示装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、請求項1に記載の立体像提示装置は、投射光が投射される投射空間内を、被投射体が所定速度以上で通過することで、残像効果により、当該被投射体が変形した形状の立体像を提示する立体像提示装置であって、被投射体移動手段と、変更手段と、投射手段と、を備える構成とした。
かかる構成によれば、立体像提示装置は、被投射体移動手段によって、投射空間内を所定速度以上で通過させるように、被投射体を移動させる。例えば、この被投射体移動手段は、投射空間を被投射体が通過するように移動させる、或いは、繰り返し通過するように、周回運動(循環運動)や往復運動をさせたり、投射空間内で、被投射体を回転させたりする。なお、所定速度以上とは、被投射体が移動することで、当該装置の利用者(観察者)が何らかの立体像を観察可能な速度である。ただし、利用者各個人の動体視力等の差(個人差)により、立体像を観察可能な速度(単位時間当たりの通過回数)を一様に特定することは難しい。以下に述べる実施形態の中では、20Hzを採用しているが、これに限定されず、主観評価実験の結果を参考にして当該所定速度を決定してもよい。続いて、立体提示装置は、変更手段によって、投射光の形状を変更し、投射手段によって、変更手段で形状が変更された投射光を、被投射体移動手段により移動される被投射体に、当該装置の利用者が被投射体を観察した場合に、点滅状態と認識されないように単位時間において所定の回数投射する。
請求項2に記載の立体像提示装置は、形状が変更可能なスリット光としてスリット映像を投射しながら、回転させた被投射体を、残像効果を利用した立体像の現れる観察対象として提示する立体像提示装置であって、回転手段と、変更手段と、照射手段と、を備える構成とした。
かかる構成によれば、立体像提示装置は、回転手段によって、被投射体を載置して、回転させる。続いて、立体像提示装置は、変更手段によって、スリット映像において、スリット光を構成するスリット形状パターンを変更する。つまり、変更手段が当該装置の利用者によって操作されることで、スリット形状パターンを変更する。例えば、予めスリット形状パターンを何パターンか用意しておいて利用者が選択してもいいし、マウスやペン入力手段等により、利用者が思いつくまま描画した曲線を、スリット形状パターンとしてもよい。つまり、変更手段による操作に従ってスリット形状パターンが自在に変更される。
そして、立体像提示装置は、照射手段によって、変更手段による操作に従ってスリット形状パターンが変更されたスリット映像を、回転手段により回転される被投射体に、当該装置の利用者が被投射体を観察した場合に、点滅状態と認識されないように単位時間において所定の回数投射する。なお、単位時間において所定の回数とは、当該装置の利用者が被投射体(観察対象)を観察した場合に、点滅状態と認識されない回数を指している。例えば、被投射体を1200rpmで高速回転させる場合、1秒当たり20回横断(20Hz)するようにスリット映像を被投射体に投射することにより、当該装置の利用者は、被投射体を点滅状態と認識しない。
請求項3に記載の立体像提示装置は、形状が変更可能なスリット光としてスリット映像を投射しながら、回転させた被投射体を、残像効果を利用した立体像の現れる観察対象として提示する立体像提示装置であって、回転手段と、変更手段と、照射手段と、スリット映像反射手段と、を備える構成とした。
かかる構成によれば、立体像提示装置は、回転手段によって、被投射体を載置して、回転させ、変更手段によってスリット形状パターンを変更する。そして、立体像提示装置は、照射手段によって、変更手段による操作に従ってスリット形状パターンが変更されたスリット映像を投射する。そして、立体像提示装置は、スリット映像反射手段によって、照射手段で投射されたスリット映像を反射させ、回転手段により回転される被投射体の回転と同期がとれるように回転させながら、投射されたスリット映像を反射する。つまり、スリット映像反射手段が回転することによって、投射されたスリット映像が、被投射体に反射され、回転手段により回転される被投射体の回転とスリット映像反射手段により回転されるスリット映像の回転との同期がとれる場合、例えば、回転手段により被投射体を1200rpmで回転させる場合、スリット映像反射手段が12面鏡により構成されており、100rpmで回転した場合、1秒当たり20回横断(20Hz)するようにスリット映像を被投射体に投射することとなり、当該装置の利用者は、被投射体を点滅状態と認識しない。
請求項4に記載の立体像提示装置は、請求項2または請求項3に記載の立体像提示装置において、前記スリット形状パターンを、伸縮、変形または回転させるスリット形状変化手段を備えることを特徴とする。
かかる構成によれば、立体像提示装置は、スリット形状変化手段によって、スリット形状パターンを変化させる。そうすると、スリット光が、伸び縮みしたり、ゆらいだりするよう見えるようになる。なお、スリット光がゆらいだりするとは、スリットを所定方向に絶え間なく動かすようにすることで、例えば、スリット形状パターン(スリット光となる部分の形)が1本の直線であるような場合、この直線を、平面上で左から右方向、または、右から左方向に連続して移動させるようにして、スリット光が所定の動きを繰り返し行っているようにすることである。
請求項5に記載の立体像提示装置は、請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載の立体像提示装置において、前記スリット形状パターンの領域を白色とし、他の領域を黒色として、前記スリット映像を構成することを特徴する。
かかる構成によれば、立体像提示装置は、スリット映像について、スリット形状パターンの領域(光を通過させる領域)、つまり、スリット光を構成する部分を白色の映像、その他の領域(光を遮断させる領域)を黒色の映像とすることで、自在にスリット光の形状を変更することができる。
請求項6に記載の立体像提示装置は、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の立体像提示装置において、前記回転手段による回転の中心が、被投射体の中心となり、当該被投射体の形状が点対称形であることを特徴とする。
かかる構成によれば、立体像提示装置は、点対称形の形状をした被投射体を用いているので、回転手段による回転数をaとした場合、2a(2倍の回転数)で回転しているのと同等の効果が得られる。つまり、回転手段による被投射体の回転数を半分に減らすことが可能になり、被投射体にかかる遠心力や空気抵抗等の負荷を減少させることができる。同様に、被投射体の形状を、回転中心を軸にして、3等分した形状であれば、回転数を1/3に、4等分した形状であれば、回転数1/4にすることが可能である。なお、この場合、被投射体を一つの物体として構成するのではなく、回転中心から等距離、同じ向きに、同じ形状の物体を2個、または、3個、4個と載置することでも同様の効果を得ることができる。
請求項1に記載の発明によれば、投射空間を所定速度以上で通過するように、被投射体を移動させ、形状が変更可能な投射光を、被投射体移動手段により移動される被投射体に、当該装置の利用者が被投射体を観察した場合に、点滅状態と認識されないように単位時間において所定の回数投射することで、残像効果により視認される立体像の形状変化をコントロールして提示することができる。
請求項2に記載の発明によれば、回転させた被投射体に、形状が自在に変更されるスリット光を含むスリット映像が、当該装置の利用者が被投射体を観察した場合に、点滅状態と認識されないように単位時間において所定の回数投射されるので、特殊な眼鏡を必要とすることなく、被投射体を取り囲むように好きな角度から、残像効果により視認される立体像の形状変化をコントロールして提示することができる。
請求項3に記載の発明によれば、形状が自在に変更されるスリット光を含むスリット映像が反射され、回転手段により回転される被投射体の回転と同期がとれるように、反射されたスリット映像が、回転させた被投射体に投射されるので、特殊な眼鏡を必要とすることなく、被投射体を取り囲むように好きな角度から、残像効果により視認される立体像の形状変化をコントロールして提示することができる。
請求項4に記載の発明によれば、スリット形状パターンを変化させることで、残像効果により視認される立体像の形状を様々に変化させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、スリット形状パターンの領域、つまり、光を通過させる領域を白色の映像、その他の領域、つまり、光を遮断させる領域を黒色の映像とすることで、自在にスリット光の形状を変更することができる。なお、白色以外でも、色による領域分割提示や、形状の異なる多重像を提示することができる。
請求項6に記載の発明によれば、点対称形の形状をした被投射体を用いることで、回転手段による被投射体の回転数を半分に減らすことが可能になり、被投射体にかかる遠心力や空気抵抗等の負荷を減少させることができる。
次に、本発明の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。
〈立体像提示装置の概略〉
図1は、立体像提示装置の外観図(一部透視させている)である。図1に示すように、立体像提示装置1は、筐体に収められており、スリット光を含むスリット映像が投射される被投射体、つまり、残像効果によって浮かび上がる立体像(可変立体像)の現れる観察対象が強化ガラス内の載置台に載置されている。
また、立体像提示装置1は、筐体に嵌め込まれた操作タッチパネルが備えられている。さらに、立体像提示装置1の筐体の上方内部には、スリット光を含むスリット映像を投射するDMD(Dynamic Mirror Drive)プロジェクタと、DMDプロジェクタから投射されたスリット映像を反射させるポリゴンミラーとが収められている。
さらにまた、立体像提示装置1の筐体の下方内部には、被投射体(観察対象)を載置した載置台を回転させる回転モータと、操作タッチパネルのパネル上(タッチパネル面)にタッチ(押下)された結果に基づいて、これら(DMDプロジェクタ、ポリゴンミラー、回転モータ)を制御するPC(パーソナルコンピュータ)とが収められている。
〈立体像提示装置の構成〉
ここで示した立体像提示装置1のブロック図を図2に示す。図2に示すように、立体像提示装置1は、回転させた被投射体に、スリット光を含むスリット映像を投射することで、残像効果を利用した立体像を提示するもので、変更手段3と、制御手段5と、スリット形状パターン生成手段6と、スリット形状パターン蓄積手段7と、回転手段(被投射体移動手段)9と、照射手段(投射手段)11と、スリット映像反射手段13とを備えている。
変更手段3は、立体像提示装置1を操作するのに用いるもので、ここでは、タッチパネルによって構成されている。当該装置1の利用者によって、この変更手段3のタッチパネル面の所定箇所がタッチされると、当該タッチパネル面下に表示されている表示ボタンのいずれかが押下され、表示ボタンに対応した制御信号が制御手段5に出力されることになる。なお、変更手段3は、図1に示した操作タッチパネルに対応している。
この変更手段3から制御手段5に出力される制御信号は、回転手段9およびスリット映像反射手段13の回転方向および回転数のいずれかを制御する回転制御信号と、照射手段11から照射されるスリット映像の光量、当該スリット映像において、スリット光を構成するスリット形状パターンの生成または読み出し(選択)およびスリット形状パターンの変化のいずれかを制御するスリット制御信号とがある。
制御手段5は、変更手段3から入力された制御信号(回転制御信号、スリット制御信号)に基づいて、スリット形状パターン生成手段6と、スリット形状パターン蓄積手段7と、回転手段9と、照射手段11と、スリット映像反射手段13とを制御するもので、回転数制御手段51と、スリット光制御手段52とを備えている。なお、この制御手段5が図1に示したPCに対応している。
回転数制御手段51は、変更手段3から入力された制御信号(回転制御信号)に基づいて、回転手段9によって回転される被投射体と、スリット映像反射手段13によって反射されるスリット映像との同期がとれるように、回転手段9およびスリット映像反射手段13の回転数を制御するものである。この回転数制御手段51は、例えば、回転手段9による被投射体の回転数を600rpmに制御し、スリット映像反射手段13の回転数を100rpmに制御する。なお、回転手段9による回転数は、スリット映像(詳細は後記)と同期をとるためには、1200rpm必要であるが、被投射体の形状を点対称の形状にしてるため、当該被投射体の回転数を半分に減らすことができ、600rpmに制御されている。
スリット光制御手段52は、変更手段3から入力された制御信号(スリット制御信号)に基づいて、照射手段11によってスリット映像反射手段13に投射されるスリット映像(スリット光の形状)を制御するもので、スリット形状パターン切替手段52aと、スリット形状変化手段52bとを備えている。
スリット形状パターン切替手段52aは、変更手段3から入力された制御信号(スリット制御信号:スリット形状パターンを選択したもの)に基づいて、スリット形状パターン蓄積手段7に蓄積されているスリット形状パターンを読み出して、当該スリット形状パターンを含むスリット映像として、照射手段11に出力し、スリット形状パターンを切り替えるものである。
スリット形状変化手段52bは、変更手段3から入力された制御信号(スリット制御信号:スリット形状パターンを変化させるもの)に基づいて、照射手段11からスリット映像反射手段13に投射されるスリット映像が伸縮、変形または回転するように(スリット映像がゆらぐように)、スリット形状を変化させるものである。
スリット形状パターン生成手段6は、スリット光制御手段52に従って、スリット形状パターンをCG(コンピュータグラフィックス)として生成し、生成したスリット形状パターンを含むスリット映像を照射手段11に出力するものである。
スリット形状パターン蓄積手段7は、スリット光を構成する様々な形状を示すスリット形状パターンを、照射手段11に出力するスリット映像(入力映像)として蓄積しているもので、一般的なハードディスク等の記録媒体によって構成されている。つまり、照射手段11に出力される際には、このスリット形状パターン蓄積手段7に蓄積されているスリット形状パターンが、スリット映像における白色の映像となり、当該スリット映像において、その他の領域が黒色の映像となる。
回転手段9は、被投射体(観察対象)である物体を載置する載置台と、この載置台を高速に回転させる回転モータとによって構成されている。この回転手段9の回転モータは、制御手段5の回転数制御手段51による制御に従って、回転数を増減させることが可能である。ここでは、回転手段9の回転モータは、1200rpmの正または負の回転数を出力することができる。
照射手段11は、スリット光制御手段52による制御により、当該スリット光制御手段52から出力されたスリット形状パターン(スリット光を構成)を含むスリット映像を、スリット映像反射手段13に投射するものである。また、この照射手段11は、スリット光制御手段52のスリット形状変化手段52bの制御に基づいて、スリット形状パターンを変化させて、スリット光が変化したスリット映像をスリット映像反射手段13に投射するものである。この照射手段11が図1に示したDMDプロジェクタに対応している。
スリット映像反射手段13は、複数の面からなる反射鏡面と、この反射鏡面を回転させる回転機構とを備えており、制御手段5の回転数制御手段51による制御に従って、この回転機構により反射鏡面を回転させながら、照射手段11から投射されたスリット映像を反射させて、被投射体へ投射されたスリット映像を反射するものである。このスリット映像反射手段13が図1に示したポリゴンミラーに対応している。
ここでは、スリット映像反射手段13は、反射鏡面を12面備えており、この12面の反射鏡面が柱状体の側面を成すように形成されている。そして、回転機構として、柱状体の上面および下面の中心を貫通する回転軸と、この回転軸を回転駆動させる駆動部とが設けられており、回転軸と柱状体とが一体化されているので、この回転軸を回転させることで柱状体も回転し、柱状体の側面を成す反射鏡面が移動していくことになる。つまり、ここでは、スリット映像反射手段13が1回転すると、反射されたスリット映像により、被投射体を12回スキャンニング(横走り)することが可能である。この場合、スリット映像反射手段13の回転数が100rpmの場合、1秒当たりの横走りの回数(被投射体を横断する回数)は20回、すなわち、20Hzとなる。
なお、立体像提示装置1は、このスリット映像反射手段13を備えなくても、照射手段11が回転手段11による被投射体の回転数(単位時間当たりの回転数)と所定の関係にある回数だけ、高速にスリット光を被投射体に投射できれば、残像効果によって、立体像(可変立体像)を現すことができる。
この立体像提示装置1によれば、回転手段9によって回転させた被投射体に、照射手段11によって、形状が自在に変更されるスリット光を含むスリット映像が、被投射体の単位時間当たりの回転数と所定の関係にある回数投射されるので、特殊な眼鏡を必要とすることなく、被投射体を取り囲むように好きな角度から、残像効果によって視認される立体像の形状変化をコントロールして提示することができる。
また、この立体像提示装置1によれば、照射手段11で投射された、形状が自在に変更されるスリット光を含むスリット映像が、スリット映像反射手段13によって反射され、被投射体の単位時間当たりの回転数と所定の関係にある回転数になるように、この反射されたスリット映像が、回転させた被投射体に投射されるので、特殊な眼鏡を必要とすることなく、被投射体を取り囲むように好きな角度から、残像効果によって視認される立体像の形状変化をコントロールして提示することができる。
さらに、この立体像提示装置1によれば、スリット形状変化手段52bによって、スリット形状パターンが変化する、例えば、スリット光が揺らぐようにスリット形状パターンを変化させることで、残像効果によって浮かび上がる立体像の形状を様々に変化させることができる。
さらにまた、この立体像提示装置1によれば、スリット形状パターン蓄積手段7に蓄積されているスリット形状パターンが制御手段5のスリット光制御手段52によって読み出され、照射手段11に出力するスリット映像となり、このスリット映像において、スリット形状パターンの領域(光を通過させる領域)を白色の映像、その他の領域(光を遮断させる領域)を黒色の映像とから構成することで、自在にスリット光の形状を変更することができる。
そしてまた、この立体像提示装置1によれば、点対称形の形状をした被投射体を用いることで、回転手段9による被投射体の回転数を1/2に抑えることができる。
〈立体像提示装置の動作〉
次に、図3に示すフローチャートを参照して、立体像提示装置1の動作について説明する(適宜、図2参照)。
まず、立体像提示装置1は、回転手段9によって、被投射体(観察対象)を高速に回転させる(ステップS1)。続いて、立体像提示装置1は、照射手段11によって、スリット光としてスリット映像をスリット映像反射手段13に投射し、このスリット映像反射手段13で反射させたスリット映像を被投射体に投射する(ステップS2)。
そして、立体像提示装置1は、制御手段5によって、変更手段3に被投射体の回転数(回転手段9の回転モータの回転数)を変更する操作があったか否かを判定し(ステップS3)、操作があったと判定した場合(ステップS3、Yes)には、回転数制御手段51によって、回転数を変更する(ステップS4)。また、立体像提示装置1は、制御手段5によって、変更手段3に被投射体の回転数(回転手段9の回転モータの回転数)を変更する操作があったと判定しなかった場合(ステップS3、No)には、ステップS5の処理に移行する。
また、立体像提示装置1は、制御手段5によって、変更手段3にスリット形状パターン(照射手段11のスリット形状パターンの切替)を変更する操作があったか否かを判定し(ステップS5)、操作があったと判定した場合(ステップS5、Yes)には、スリット形状パターン切替手段52aによって、スリット形状パターンを変更する(ステップS6)。また、立体像提示装置1は、制御手段5によって、変更手段3にスリット形状パターン(照射手段11のスリット形状パターンの切替)を変更する操作があったと判定しなかった場合(ステップS5、No)には、ステップS7の処理に移行する。
さらに、立体像提示装置1は、制御手段5によって、変更手段3にスリット形状の変化(照射手段11のスリット形状の変化)をさせる操作、例えば、ゆらぎを付加する操作があったか否かを判定し(ステップS7)、操作があったと判定した場合(ステップS7、Yes)には、スリット形状変化手段52bによって、スリット形状を変化させる(ゆらぎを付加する)(ステップS8)。また、立体像提示装置1は、制御手段5によって、変更手段3にスリット形状の変化(照射手段11のスリット形状の変化)をさせる操作、例えば、ゆらぎを付加する操作があったと判定しなかった場合(ステップS7、No)には、ステップS9の処理に移行する。
さらにまた、立体像提示装置1は、制御手段5によって、変更手段3にスリット形状の変化(照射手段11のスリット形状の変化)を解除させる操作、例えば、ゆらぎを解除する操作があったか否かを判定し(ステップS9)、操作があったと判定した場合(ステップS9、Yes)には、スリット形状変化手段52bによって、スリット形状を元に戻す(ゆらぎを解除する)(ステップS10)。また、立体像提示装置1は、制御手段5によって、変更手段3にスリット形状の変化(照射手段11のスリット形状の変化)を解除させる操作、例えば、ゆらぎを解除する操作があったと判定しなかった場合(ステップS7、No)には、ステップS11の処理に移行する。
そして、立体像提示装置1は、制御手段5によって、変更手段3に動作を終了させる操作があったか否かを判定し(ステップS11)、操作があったと判定した場合(ステップS11、Yes)には、回転手段9、照射手段11およびスリット映像反射手段13を停止させる(ステップS12)。また、立体像提示装置1は、制御手段5によって、変更手段3に動作を終了させる操作があったと判定しなかった場合(ステップS11、No)には、ステップS3に戻り、動作を継続する。
なお、このフローチャートに示したステップS3およびステップS4と、ステップS5およびステップS6と、ステップS7、ステップS8、ステップS9およびステップS10とは、順序を問わずに起こりうる動作である。
〈立体像提示装置による立体像の生成の例、スリット形状パターンの例、スリット形状と立体像との例、ゆらぎの例〉
次に、図4〜図7を参照して、立体像提示装置1による立体像の例、スリット形状パターンの例、スリット形状と立体像との例、ゆらぎの例について説明する(適宜、図2参照)。
図4は、被投射体として、家の模型を用いた場合の立体像の生成の例を模式的に示した図である。図4(1)は、被投射体を回転手段9によって回転させる前、つまり、停止した状態を示している。図4(2)は、被投射体を回転手段9によって高速に(例えば、600rpm)回転させた状態を示している。
図4(3)は、照射手段11およびスリット映像反射手段13により、まっすぐなスリット光(スリットが直線状)を含むスリット映像を、被投射体の回転と同期させながら高速スキャンした状態を示しており、この場合、被投射体が曲がった状態で静止して見える。図4(4)は、照射手段11およびスリット映像反射手段13により、屈折したスリット光(スリットが屈折した直線状)を含むスリット映像を、被投射体の回転と同期させながら高速スキャンした状態を示しており、この場合、スリット光の形に合わせて被投射体も曲がった状態で静止して見える。
この図4に示したように、立体像提示装置1では、照射手段11にスリット映像の一部として入力したスリット形状パターンを、直線状のものから屈折した直線状のものに変更することで、残像効果によって現れる立体像の形状を変更させること、つまり、可変立体像を提示することができる。
図5は、変更手段3(ここでは、操作タッチパネル)に表示される、スリット形状パターンと、スリット形状変化手段52bによりスリット光(スリット映像)を変化させる選択ボタンとの一例を示した図である。
この図5に示すように、変更手段3では、予め設定された16種類のスリット形状パターンが選択可能になっている。そして、当該装置1の利用者が操作タッチパネル(変更手段3)の該当箇所に接触することで、スリット形状パターンを選択することができる。
また、スリット光(スリット映像)を変化させる選択ボタンとして、「FREEZE」と、「SWING」とが用意されている。「FREEZE」は、変化されたスリット光(ゆらいだスリット光)を元に戻すための選択ボタンである。また、「SWING」は、スリット形状変化手段52bを機能させることで、スリット形状を、例えば、照射面の中心線(点線で示している)を回転軸として、右または左回転することで、スリット形状を変化させる(スリット光がゆらぐようにする)ための選択ボタンである。
図6は、スリット形状と立体像との対応関係を示した図である。この図6(a)は、スリット形状が直線の場合、図6(b)は、スリット形状が稲光のように屈折している場合、図6(c)はスリット形状が直線上に分散する点の集合の場合に提示される立体像を示している。
なお、この図6では、回転手段9の回転数が約600rpmであり、スリット映像反射手段13(ここでは、12面の反射鏡面を備えている)の回転数が100rpmの場合の立体像の状態(様子)を示している。ここで、回転手段9の回転数を「約」600rpmとしているのは、意図的に600rpmよりもほんの少しだけ、早く回転させるようにすることで、被投射体(観察対象)がゆっくり回っているように当該装置1の利用者に見せるためである。
ちなみに、回転手段9の回転数とスリット映像反射手段13の回転数を完全に同期させる、つまり、回転手段9の回転数の整数倍を、スリット映像反射手段13の見かけ上の回転数(反射鏡面数×実際の回転数、ここでは12×100である)とすると、被投射体は静止しているように見える。この場合、観察される立体像は、スリット光の変化(動き)によってのみ動的な変化が生じることになる。
この図6では、被投射体として回転手段9で回転させる家の模型と対比させるために、当該家の模型の周りに、簡略化した人の模型を配している。つまり、家の模型は、回転させれば、それに応じて見た目も変化することになるが、人の模型は、変化することがない。
図6(a)の場合、スリット形状が直線であるので、立体像は、回転手段9およびスリット映像反射手段13の回転による歪みの影響を受けて、うねっているように見える。
図6(b)の場合、スリット形状が稲光のように屈折しているので、立体像も、屈折しているように見える。
図6(c)の場合、スリット形状が直線上に分散する点の集合であるので、立体像も、乱雑な多数の短い線の塊のように見える。
図7は、スリット形状が直線の際に「SWING」選択ボタンを押下した場合の、立体像の移り変わりを示している。この図7(a)、(b)および(c)に示すように、立体像は、垂直方向に立ちゆらいでいるように見える。特に、被投射体である家の模型の梯子部分は、上下に波打っているように見える。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、本実施形態では、立体像提示装置1は、回転手段9により被投射体を回転して、スリット映像反射手段13を回転させて、反射鏡面にスリット光を反射させているが、投射手段11に、DMDプロジェクタ等の高速制御が可能なデバイスを用いることで、投射光の反射鏡面を回転させることなく、被投射体を横断するスリット映像を生成することが可能になり、残像効果を利用した立体像(可変立体像)を生成することができる。
また、立体像提示装置1では、スリット映像反射手段13によりスリット光の投射を横走り(横方向にスキャンニング)としているが、縦走り(縦方向のスキャンニング)としてもよい。
さらに、この実施形態では、被投射体を回転手段9によって回転させる立体像提示装置1について説明したが、例えば、同一の被投射体を複数用意し、この複数の被投射体をベルトコンベア(被投射体移動手段)上に載置して、被投射体を所定速度以上の速度で平行移動させ、被投射体の形を変化させた状態にした立体像を提示することも可能である。
或いは、立体像提示装置1を、より大掛かりなものにして、利用者を乗せて移動する移動手段を用意しておき、被投射体を所定間隔で配置した複数の被投射体の前を、利用者と投射光とが高速に移動することにより変形した形状を認知するようにすることもできる。例えば、移動手段として、電車等の移動体が挙げられる。そして、この場合、例えば、当該電車が通過するトンネル内の壁面に被投射体を設置しておき、この壁面に設置した被投射体に投射するように、電車内や電車の側面部に照射手段を設けることで、壁面に設置した被投射体が変形した形状を観察することができる。
なお、立体像提示装置1の産業面の応用(様々な利用の仕方)としては、以下に示す5つの例(1)〜(5)が挙げられる。
(1)立体像提示装置1を用いると、被投射体である物体を、立体像として表示する際に、拡大表示が可能になる。
(2)立体像提示装置1を用いて、物体(立体物、例えば、建築物等の模型)を展開し、物体を構成する面の位置関係を提示する。つまり、建築物等の模型を被投射体として、当該模型の4面(側面の4面)、すなわち、本来ならば同時に見ることができない面を同時に提示することができる。
(3)立体像提示装置1により、被投射体が高速に回転することで、当該被投射体の表面に添付した(描かれた)バーコード状のパターンが、模様として観察できる。この(3)の場合について、書類の透かしを例にして、より詳細に説明する。書類の透かしの場合、円筒状の筒に、模様が浮かび上がるバーコード状のパターンやランダムの斑点からなるパターン(ある情報を暗号化した模様)を印刷した書類を貼り付けておく。そして、この円筒状の筒を回転させながら、当該パターンに、スリット形状パターンによるスリット光を投射すると、このスリット光が当該パターンを復号化する鍵の役割を果たし、暗号化されていた情報(模様)を正しく見せることができる。
この場合、異なるスリット形状パターンによるスリット光の形状の違いや、回転する筒と投射するスリット光との相対速度差の違いによって、当該パターンの復号化ができる場合と、できない場合とが生じるので、暗号化される情報の秘匿性が向上する。つまり、バーコード状のパターンやランダムの斑点からなるパターンを一種の暗号として捉えた場合、この暗号は破られにくいことになる。
なお、このようなバーコード状のパターンやランダムの斑点からなるパターンを、通常の光では見えないような顔料、つまり、スリット光の特定の波長でのみ見える顔料で印刷しておくことで、立体像提示装置1を利用しなければ、当該パターンが円筒状の筒に貼り付けられていることにも気付かれることがないので、当該パターンのコピーも難しくなるという利点がある。
このように、立体像提示装置1を利用する場合には、円筒状の筒を、被投射体に置き換え、バーコード状のパターンやランダムの斑点からなるパターンを被投射体に添付しておけばよい。なお、被投射体にバーコード状のパターンを添付する場合、通常の読みとり機(バーコードリーダー)で読み取ることができない、被投射体の凹凸がある面に当該パターンを添付したとしても、立体像提示装置1を用いれば、読み取ることができる(立体像として提示させることができる)。
(4)立体像提示装置1により、金属棒等の棒状部材を高速に移動させ、照明光(照射手段11によるスリット光)の形状を変化させることにより、当該棒状部材が正弦波のように波打っているように見える。これにより、波の動きを立体的に提示することができ、移動速度や単位時間当たりのスリット光の照射回数(投射回数)を調整してやることで、この波の動きをスローモーションで再現することができ、立体像提示装置1を、物理現象を説明する際の教育教材の一種として活用することができる。
(5)立体像提示装置1により、工業製品を高速に移動させ、照明光(照射手段11によるスリット光)の形状を変化させることにより、当該工業製品が設計段階にある場合、当該工業製品の形状変更のシミュレーションや実験に利用したり、当該工業製品の一部分を強調したり、変形したりすることができる。
また、立体像提示装置1を用いて、当該工業製品をショウケース内で展示する場合、単品の当該工業製品を高速に回転させることで、形状を変形させたり、複数の工業製品を用意しておき、これらの工業製品を周回運動するように移動させることで、動いているように(踊っているように)提示したりすることができる。これによって、ショウケース内に展示された工業製品は、観衆の人目を引くことができ、立体像提示装置1を、工業製品の広告を行う装置として利用することが可能になる。
本発明の実施形態に係る立体像提示装置の外観図(一部透視させている)である。 本発明の実施形態に係る立体像提示装置(図1に対応)のブロック図である。 図2に示した立体像提示装置の動作を説明したフローチャートである。 被投射体として、家の模型を用いた場合の立体像の生成の例を模式的に示した図である。 スリット形状パターンの例を示した図である。 スリット形状と立体像との対応関係の例を示した図である。 スリット形状変化手段を機能させた場合の立体像の移り変わりを示した図である。
符号の説明
1 立体像提示装置
3 変更手段
5 制御手段
51 回転数制御手段
52 スリット光制御手段
52a スリット形状パターン切替手段
52b スリット形状変化手段
6 スリット形状パターン生成手段
7 スリット形状パターン蓄積手段
9 回転手段(被投射体移動手段)
11 照射手段(投射手段)
13 スリット映像反射手段

Claims (6)

  1. 投射光が投射される投射空間内を、被投射体が所定速度以上で通過することで、残像効果により、当該被投射体が変形した形状の立体像を提示する立体像提示装置であって、
    前記投射空間内を所定速度以上で通過させるように、前記被投射体を移動させる被投射体移動手段と、
    前記投射光の形状を変更させる変更手段と、
    この変更手段によって形状が変更された投射光を、前記被投射体移動手段により移動される前記被投射体に、当該装置の利用者が前記被投射体を観察した場合に、点滅状態と認識されないように単位時間において所定の回数投射する投射手段と、を備える
    ことを特徴とする立体像提示装置。
  2. 形状が変更可能なスリット光としてスリット映像を投射しながら、回転させた被投射体を、残像効果を利用した立体像の現れる観察対象として提示する立体像提示装置であって、
    前記被投射体を載置して、回転させる回転手段と、
    前記スリット映像において、前記スリット光を構成するスリット形状パターンを変更する変更手段と、
    この変更手段による操作に従ってスリット形状パターンが変更されたスリット映像を、前記回転手段により回転される前記被投射体に、当該装置の利用者が前記被投射体を観察した場合に、点滅状態と認識されないように単位時間において所定の回数投射する照射手段と、を備える
    ことを特徴とする立体像提示装置。
  3. 形状が変更可能なスリット光としてスリット映像を投射しながら、回転させた被投射体を、残像効果を利用した立体像の現れる観察対象として提示する立体像提示装置であって、
    前記被投射体を載置して、回転させる回転手段と、
    前記スリット映像において、前記スリット光を構成するスリット形状パターンを変更する変更手段と、
    この変更手段による操作に従ってスリット形状パターンが変更されたスリット映像を投射する照射手段と、
    この照射手段で投射されたスリット映像を、前記回転手段により回転される前記被投射体の回転と同期がとれるように回転させながら反射するスリット映像反射手段と、を
    備えることを特徴とする立体像提示装置。
  4. 前記スリット形状パターンを、伸縮、変形または回転させるスリット形状変化手段を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の立体像提示装置。
  5. 前記スリット映像において、前記スリット形状パターンの領域を白色として、他の領域を黒色として構成することを特徴する請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載の立体像提示装置。
  6. 前記被投射体は、前記回転手段による回転の中心が、当該被投射体の中心となる点対称形であることを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載の立体像提示装置。
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