JP4791394B2 - 木材の腐朽対策方法 - Google Patents
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地盤中に埋設された木材の腐朽は、構造部材としての強度の低下を進めることとなるのでその対策が必要である。
(1)木材保存剤(防腐剤)を木材に塗布するか含浸させる方法
(2)木材保存剤を木材へ加圧注入する方法
(3)熱処理により木材を改質させる方法
(4)樹脂を用いて木材を改質させる方法
これらの方法による腐朽防止対策の作用機構は、使用する木材保存剤の種類や樹脂の種類により下記(あ)〜(う)のように分類することができる。
(あ)腐朽菌にとって有害な木物質を使用することで腐朽を防止するもの
(い)水を弾くようにさせ木材の乾燥を保つことで腐朽菌の繁殖を抑制することで腐朽を防止するもの
(う)木材そのものを腐朽菌が分解できないように改質することで腐朽を防止するもの
さらに、(2)〜(4)の方法を建設構造物基礎用木杭に適用しようとすると、相当な長さの木材を処理することとなり、その処理装置の規模が大きくなり容易に実施できない。
また、杭頭部にキャップを被覆嵌合させれることによって、施工時の杭頭部の打撃や把持に必要な強度を確保し施工性を高めることもできる。
まず、埋設しようとする木杭1の周面2の、埋設後に地下水位変動域Wの最下部よりやや下に位置することとなる箇所から杭頭までの部分、および、木口面3に、空気遮断材を塗布し被覆部4を形成する。
なお、地下水の水位が不明な場合は、十分に余裕を持たせた範囲について被覆部4を形成する。
上記の空気遮断材としては樹脂、塗料、廃プラスチック由来の低分子ワックス、セメント、アスファルト、粘性土等を使用することができる。
なお、ここでいう変動域Wとは、設計に用いられる変動域を指し、必ずしも実際の地下水変動の最大値と最小値の幅を指していない。
この設計上の変動域は、一般的には実際の変動域にほぼ等しいが、たまにしか生じない極端な地下水低下は実際の不朽には影響しないと考えられるので無視することが可能で、このような場合などは実際の地下水位変動域と設計上の地下水位変動域は異なることになる。
また、空気遮断材は、従来用いられている木材保存剤と異なり菌類(植物)の生存にとって有害となる化学物質を含有しないため、土壌汚染につながることがない。
特に、土中では、紫外線を含む日光にあたらないこと、気中のような激しい気象や温度変化に曝されないこと、気中と異なり地中ではある程度の湿気があるために乾燥により木杭に亀裂が生じる可能性が低いこと、などの理由から、木杭は腐朽することなく極めて安定的な状態に保たれる。
さらに、上記の空気遮断材の塗布は、長い木杭にも容易に行うことができる。
この場合も、木杭7を、その下端が地下水位変動域W最下部より低い位置に達し杭頭が地中に完全に没するように、また、上記地下水位変動域Wの位置には、この木杭7の被覆部6が位置するように埋設する(図1(b))。
この場合、杭頭の木口面は上記の空気遮断材を別途塗布することなどによって被覆するのが好ましい。
上記の空気遮断材13の充填方法としては、第1に、事前に空気遮断材13で杭頭部を被覆した後キャップ12を被せる方法が、第2に、空気遮断材13をキャップ12に入れこれに木杭頭部を差し込む方法が、第3に、キャップ12を木杭頭部に被覆嵌合した後キャップ12内を負圧にすることで空気遮断材13を吸引充填する方法がある。
逆さにしたキャップ12の蓋の内側に、杭頭部との間に適正な空間を設けるためのスペーサー15を設置して、これに木杭11の頭部を嵌合させる。
そのキャップ12の蓋(逆さにした該キャップの下部に位置することとなる)には、充填孔16が設けてあり、この充填孔16にはフレキシブルなホース17が接続されている。
上記ホース17の先端を空気遮断材13を貯留した空気遮断材貯留槽18へ入れる。
上記キャップ12の開口端部と木材の間を、コーキング材19により塞ぐ。
負圧タンク20に接続された三方バルブ21に吸引パイプ22を接続し、その吸引パイプ22の先端をキャップ21の側壁の上部(開口縁寄りの位置)に開設された吸引孔23に取り付ける。
その吸引孔23は、図3中に拡大して示したとおり、吸引パイプ22の先端をちょうど受入れ嵌合するような寸法に開口しているだけの簡単な構造であり、吸引パイプ22を取り付けて負圧タンク20で吸引することで、負圧によりツバ24の前面に取り付けたOリング25をキャップ12の側壁に圧接、密着させて固定されるようになっている。
上記負圧タンク20により吸引することにより、キャップ12内を負圧とし、上記ホース17を通して空気遮断材13を注入しキャップ12内の間隙に充填する。
キャップ12内が充填されると、空気遮断材13が負圧タンク20へ流入するので、上記ホース17の途中を止水ピンで止めるか、または、これを結束し空気遮断材13の流れを止め、その後、止水ピンまたは結束部から貯留槽18側のホース17を必要に応じ切断する(短ければ切断しなくてもよい)。
三方バルブ21を開放側へ回し、キャップ12から吸引パイプ22を取り外す。
充填された空気遮断材13が固化するまで一定時間放置する。
その放置時間は空気遮断材13のとして使用する材料により異なる。また、材料によっては固化に発熱を伴うので、そのような場合は適宜流水による冷却などを行う。
ただし、ホース17を接続するキャップ12の充填孔16を、できるだけ下寄りに、また、吸引パイプ22を接続する吸引孔23をできるだけ上寄りとなる状態にして吸引を行う必要がある。
このようにすることで気泡がキャップ12内に残ることを防ぐことが可能となる。
なお、上記の空気遮断材の充填は省略し、杭頭にキャップを被せただけの被覆部とすることも可能である。
[参考例1]
木杭26は、その下端が地下水位変動域下位Wより低い位置に達するように埋設されており、上記地下水位変動域Wおよびこれよりも浅い部分に位置する部位は、空気遮断層27に被覆されている(図5)。
(i)予め埋設された木杭26の杭頭部周辺を地下水位変動域下位Wより低い位置まで開削し、粘性土、シルトあるいは粒度配合の良い材料などの通気性の低い土質材料27aによって埋め戻す方法(図6(a))
(ii) 予め埋設された木杭26の杭頭部周辺を地下水位変動域下位Wより低い位置まで開削し、セメント系固化材27bなどによって埋め戻す方法(図6(b))
(iii) 予め埋設された木杭26の杭頭部周辺地盤を、重機28等によって、あるいは棒状のもので突いたり振動を与えることによって十分締固め通気性を低くする方法(図6(c))
すなわち、実施例4のキャップは、強度を問わないものであったが、ここで使用するキャップは重機による把持や打撃に耐える、金属製などの強度の大きいものである。
次いで、実施例4と同様の方法により、キャップ31と杭頭との間に上記と同様の空気遮断材32を充填する。
これにより、その木杭29は、その下端が地下水位変動域Wの最下部より低い位置に達するように、また、上記地下水位変動域Wの位置には、被覆部30が位置するように埋設される(図7(a))。
このように、キャップ31により杭頭部の強度を高めているので、施工時の木材保護と施工後の木材腐朽対策を両立させることができる。
木杭33は、そのキャップ35の部分を把持または打撃することにより、その下端が地下水位変動域Wの最下部より低い位置に達するように、また、上記地下水位変動域Wの位置には、被覆部34が位置するように埋設される(図7(b))。
この場合、実施例3の木杭8のように木口面は露出しないから、同実施例の方法で必要であった杭頭部へ空気遮断材の塗布作業は省略できる。
木杭38は、そのキャップ40の部分を把持または打撃することにより、その下端が地下水位変動域Wの最下部より低い位置に達するように、また、上記地下水位変動域Wの位置には、被覆部37が位置するように埋設される(図7(c))。
この強度の高いキャップ43は、木杭42の周面との間に空気遮断材を充填して、木杭42と完全に一体化しているので、側方向への拘束効果と充填材による木材への均等な応力伝達により、杭頭部の破損を防止するものである。
したがって、施工時の木材保護と施工後の木材腐朽対策を両立させることができる。
[参考例2]
この横架木材51は、垂直に埋設された複数の、実施例6と同様の木杭53上に横架した状態で埋設される(図8)。
[参考例3]
上記横架木材55は、被覆部54により空気の供給を効果的に遮断ないし低減できるので、その腐朽が防止される。
[参考例4]
樹皮が無い木口面については、上記の空気遮断材を塗布するかまたは浸透させることなどによって被覆部59’を形成する(図10)。
上記横架木材57は、被覆部59,59’により空気の供給を効果的に遮断ないし低減できるので、その腐朽が防止される。
[参考例5]
その実施は、以下のいずれかの方法によって行う。
(イ) 垂直に打設された複数の木杭63(参考例2,3,4と同様のもの)上に横架木材61を横架するとともにその周囲を開削し、粘性土、シルトあるいは粒度配合の良い材料などの通気性の低い土質材料によって埋め戻し、空気遮断層62を形成する。
(ロ) 埋設された上記横架木材61の周囲を、セメント系固化材などによって埋め戻して空気遮断層62を形成する。
(ハ) 埋設された上記横架木材61の周囲の地盤を重機によって十分締固め通気性の低い空気遮断層を形成する(図示しない)。
上記横架木材61への空気の供給は、空気遮断層62により効果的に遮断ないし低減されるので、その腐朽が防止される。
51,55,57,61 木材(水平部材)
4,6,10,14,30,34,39,43’52,54,59,59’ 被覆部
12,31,35,40,43 キャップ
13 空気遮断材
27,62 空気遮断層
W 下水位変動域
Claims (6)
- 埋設しようとする木材(1,7,8,11,29,33,38,42)の、埋設後に地下水位変動域(W)の最下部よりやや下に位置することとなる箇所から木材の上端までの部分に、被覆部(4,6,10,14,30,34,39,43’)を形成し、この木材(1,7,8,11,29,33,38,42)を、その下端が地下水位変動域(W)よりやや低い位置に達するように、かつ、上記地下水位変動域(W)の下端より、上記被覆部(4,6,10,14,30,34,39,43’)の下端が低い位置となるように埋設することによって、前記地中に埋設された木材(1,7,8,11,29,33,38,42)への空気の供給を遮断ないし低減することにより、その木材の腐朽を防止することを特徴とする木材の腐朽対策方法。
- 木材(1,29)に、空気遮断材を塗布することにより上記被覆部(4,30)を形成することを特徴とする請求項1記載の木材の腐朽対策方法。
- 木材(7,33)に、空気遮断材を含浸させることにより上記被覆部(6,34)を形成することを特徴とする請求項1記載の木材の腐朽対策方法。
- 木材(8,38)の樹皮(9)に空気遮断材を含浸させて被覆部(10,39)を形成することを特徴とする請求項1記載の木材の腐朽対策方法。
- 埋設後に地下水位変動域(W)の最下部よりやや下に位置することとなる箇所から木材(11,42)の上端までの部分を被覆するキャップ(12,43)を杭頭に被覆嵌合して上記被覆部(14,43’)を形成することを特徴とする請求項1記載の木材の腐朽対策方法。
- 上記キャップ(12,43)と木杭(11,42)の周面の間の間隙に空気遮断材(13)を充填して上記被覆部(14,43’)を形成することを特徴とする請求項5記載の木材の腐朽対策方法。
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