JP4791384B2 - 改質ポリエステル - Google Patents

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Description

本発明は、改質ポリエステルに関し、さらに詳細には物性が著しく改善され透明性に優れた改質ポリエステルに関する。
近年、石油枯渇問題に注目が集まる中、「脱石油」への取組の必要性がますます増大している。上記解決の手段として、脱石油原料を用いた材料の開発・リサイクル原料の効果的な利用等の方法が挙げられ、低い環境負荷性と有用な性能および高い生産性を併せもつ新材料の創出が重要となってきている。
低い環境負荷性を有する材料として、ポリ乳酸(PLA)が、生分解性を有するだけでなくバイオマス由来原料(非石化原料)を用い、剛性・透明性に優れた材料の一つであることが知られているが、既存材料比、耐熱性、耐衝撃性において劣っており、物性の改良が課題となっている(例えば、非特許文献1)。
一方、リアクティブプロセッシング(反応押出)技術は、押出機内で化学反応を行い、樹脂に機能性を付加することのできる、高い生産性・低コスト性の両立が可能な技術であり(例えば、非特許文献2)、ポリプロピレン樹脂への無水マレイン酸(MAH)変性等を始め比較的古くから検討が進められている(例えば、非特許文献3)。
こうした背景の中、リアクティブプロセッシング技術をPLAに適応し、PLAの改質や機能性向上を行った例が近年になって報告され始めている。
例えば、MAH変性をPLAに適応するコンセプトが開示されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、該技術はMAH変性PLAの存在と示唆するにとどめており、本特許のB成分に相当するものには、デンプンやグルテン等の天然高分子化合物を例示するにすぎず本発明とは相反するものである。
また、MAH変性PLAと、セルロースやデンプン等のバイオマス原料との複合により優れた物理特性および成形加工性が得られる技術(例えば、特許文献2)が、さらにはMAH変性バイオマスと、PLAとの複合により同じく優れた物理特性および成形加工性が得られる技術(例えば、特許文献3)開示されている。しかしながらこれらの技術は一般に数10万〜数100万もの平均分子量を有する非常に剛直なバイオマス原料とPLAとの複合化に関する技術であり、剛直なバイオマス原料の効果により得られた組成物の強度は向上が見られるものの、該組成物は透明性には優れないこと、剛直なバイオマス原料との複合材料であるがために引張伸度等の物性には特異的な効果は見られない等の点から本発明とは相反するものである。
さらに、乳酸を主成分とする重合体と、ポリアルキレンエーテルとポリ乳酸のブロック共重合体とを含む組成物により帯電防止性が付与される技術(例えば、特許文献4)やポリ乳酸系重合体と、ポリ乳酸セグメントとポリエーテル系セグメントを有する可塑剤により柔軟性に優れた組成物が得られる技術が開示されている(例えば、特許文献5)。これらの技術で用いられる、直接に共有結合で結ばれたポリアルキレンエーテルとPLAからなる化合物はいずれもブロック共重合体を前提としている。上記共重合体はポリアルキレンエーテル末端からのラクチドの重合、あるいはポリアルキレンエーテルと乳酸オリゴマーとの化学反応等の方法を用いるなどしてあらかじめ他で調整しておく必要があり、生産性が高いとは必ずしもいえないものであった。
以上のように、従来からPLAを化学的に変性し他成分と複合化する試みや、PLAとポリアルキレンエーテルとを直接に化学的に結合した化合物を用いることで機能性を見出す試みはなされていたものの、充分に高い透明性および生産性と、物性改善を両立する技術については未だ達成されていないのが実状であった。
さらに、PLAをベースとするガスバリア性に優れた樹脂は開発されていないのが実状である。
「成形加工」、プラスチック成形加工学会、2005年、第672頁 「高分子材料における反応性プロセシング技術の最近の動向」、住べテクノリサーチ株式会社、2003年、第1頁 「高分子化学」、29、1972年、第259頁〜第265頁 特表平11−511804号公報(第2頁、第22頁、第26頁〜第27頁) 特開平11−124485号公報([0007]、[0015]、[0043]〜[0064]段落) 特開2005−76025号公報([0005]〜[0009]、[0025]段落) 特開平8−253665号公報([0011]段落) 再表2004/000939号公報(第7欄第22行〜第8欄第18行)
本発明の課題は、従来技術ではなしえなかった、充分に高い透明性、生産性および低コスト性を併せもつ機能性の高い改質ポリエステル、さらには高機能樹脂組成物を提供することにある。
本発明の課題は、従来技術ではなしえなかった、ガスバリア性に優れ、生産性および低コスト性を併せもつ機能性の高い改質ポリエステル、さらには高機能樹脂組成物を提供することにある。
本発明の要旨とするところは、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)99〜20重量部、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基あるいはエポキシ基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有する数平均分子量10万以下のポリマー(B成分)1〜80重量部(ただし、A成分とB成分との合計が100重量部とする)、不飽和カルボン酸またはその誘導体、あるいは不飽和アルコールから選ばれる少なくとも1種以上の不飽和化合物(C成分)0.1〜20重量部、ラジカル発生剤(D成分)0.01〜5重量部とを含む組成物を加熱混練して得られ、上記A成分の少なくとも一部の主鎖と前記B成分の少なくとも一部とが前記C成分を介して化学結合している改質ポリエステルであることにある。
前記脂肪族ポリエステルはポリ乳酸であり得る。
前記C成分はマレイン酸または無水マレイン酸であり得る。
前記B成分の数平均分子量は1万以下であり得る。
前記B成分はポリアルキレンエーテルであり得る。
前記ポリアルキレンエーテルはポリエチレングリコールであり得る。
前記B成分はエチレン−ビニルアルコール共重合体であり得る。
前記B成分の数平均分子量は2〜4万であり得る。
前記改質ポリエステルは、DSC昇温測定による到達結晶化度が50%以下であり得る。
また、本発明の要旨とするところは、前記改質ポリエステルと、
脂肪族ポリエステル系樹脂、および/または、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基あるいはエポキシ基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基とを有する数平均分子量10万以下のポリマーと
が混合されてなることを特徴とするポリエステル樹脂混合物であることにある。
さらに、本発明の要旨とするところは、前記改質ポリエステルおよび/または前記ポリエステル樹脂混合物、を含む樹脂を成形してなる成形品であることにある。
またさらに、本発明の要旨とするところは、前記改質ポリエステルおよび/または前記ポリエステル樹脂混合物、を含む樹脂を成形してなるフィルムであることにある。
本発明の改質ポリエステルは、従来技術ではなしえなかった、充分に高い透明性と高伸度を備え、かつ、高生産性および低コスト性を併せもつ機能性の高い改質ポリエステルであり、さらに、この改質ポリエステルをベース樹脂への添加剤として用いベース樹脂の物性向上を計ることもできる。本発明の改質ポリエステルは、ベース樹脂と改質剤としてのポリマーが共有結合しているので、本発明の改質ポリエステルやこの改質ポリエステルが添加されたベース樹脂からなるフィルム等の成形品は経時的な物性変化も少なく品質安定性にも優れているため、各種工業材料用途、包装材料用途に使用可能である。
さらに、本発明の改質ポリエステルや、ベース樹脂にこの改質ポリエステルが添加されてなるポリエステル樹脂混合物は、従来のプラスチックに対して自然環境中での生分解性が高く、使用後は自然環境中で比較的容易に分解されるという利点を有する。本発明の樹脂は、産業界およびプラスチック廃棄物に係る環境問題の解決に寄与するところが非常に大きい。
本発明の改質ポリエステルは、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)99〜20重量部、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基あるいはエポキシ基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有する数平均分子量10万以下のポリマー(B成分)1〜80重量部(ただし、A成分とB成分との合計が100重量部とする)、不飽和カルボン酸またはその誘導体、あるいは不飽和アルコールから選ばれる少なくとも1種以上の不飽和化合物(C成分)0.1〜20重量部、ラジカル発生剤(D成分)0.01〜5重量部とを含む組成物を加熱混練して得られ、上記A成分の少なくとも一部の主鎖と上記B成分の少なくとも一部とが上記C成分を介して化学結合してグラフトもしくは架橋している改質ポリエステルである。B成分は脂肪族ポリエステル系樹脂を改質する改質剤としてのポリマーである。
本発明の最も大きな特徴は、ベース樹脂(A成分)と官能基を有するポリマー(B成分)、不飽和化合物(C成分)およびラジカル発生剤(D成分)を溶融混練することにより、(1)D成分からの発生ラジカルによるA成分の水素引抜き(A成分の活性化)、(2)活性化したA成分に対するC成分の付加、および(3)C成分とB成分の反応が連続的かつ断続的に進行することにある。(1)〜(3)のステップが進行することで、結果的に上記A成分の少なくとも一部の主鎖と上記B成分の少なくとも一部が上記C成分を介して化学結合することとなり、充分に高い透明性と高伸度を備え、かつ、高生産性および低コスト性を併せもつ機能性の高い改質ポリエステルを生み出すことができるようになる。
A成分に対するB成分の比率(以下重量比)が99:1をこえて小さくなると、この改質ポリエステルは充分に改質されない。A成分に対するB成分の比率が20:80をこえて大きくなると、この改質ポリエステルは充分な強度が得られない。改質ポリエステルの成形性および取扱性の観点から、A成分に対するB成分の比率が好ましくは95:5〜40:60、より好ましくは93:7〜50:50、さらに好ましくは93:7〜60:40である。
A成分とB成分との合計100重量部に対して、C成分が0.1重量部こえて小さくなるとこの改質ポリエステルは高伸度性が失われきわめて脆くなる。C成分が1.5〜20重量部、より好ましくは1.5〜10重量部であるとこの改質ポリエステルは伸度がきわめて大きくなり、優れた高伸度性が得られる。C成分が20重量部をこえて大きくなると架橋反応が過大に進行し、高伸度性が失われきわめて脆くなる。
A成分とB成分との合計100重量部に対して、D成分が0.01重量部こえて小さくなるとラジカル発生剤としての機能が満足に発揮されず、結果として高伸度性を有する改質ポリエステルが得られない。D成分が5重量部をこえて大きくなると架橋反応が過大に進行し、高伸度性が失われきわめて脆くなる。上記観点から、A成分とB成分との合計100重量部に対して、D成分が0.05〜3重量部が好ましく、0.1〜2重量部がさらに好ましい。
A成分の少なくとも一部とB成分の少なくとも一部がC成分を介して化学結合するうえで、ベース樹脂はD成分により容易に水素引抜きされることが必要となる。例えば、Jacob.J, Jian T, Zhihong Y, Mrinal B, J.Appl.Poly.Sci. 1139 (1997)によると、D成分による水素引抜きはカルボキシル基のα位メチレンから起こることが報告されている。そのため、本発明で用いるA成分は上記構造を有するポリエステル系樹脂を用いることが必要である。A成分は、ジカルボン酸成分とグリコール成分とで基本的に構成されるポリマー、あるいは脂肪族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステルが該当する。
カルボキシル基のα位メチレンを有することから、ジカルボン酸成分は基本的に脂肪族ジカルボン酸を用いることとなる。例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸などを用いることができる。耐熱性および生産性の観点からジカルボン酸の一部にイソフタル酸、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を用いても構わない。
また、A成分におけるグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオールなどの脂肪酸グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールなどのグリコール成分やポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等を共重合したものを用いることができる。生産性の観点から、グリコール成分はエチレングリコール、テトラメチレングリコール、1、3−プロパンジオール、ヘキサメチレングリコールであることが好ましい。
上記を満たす市販ポリエステルは、BASF社の“Ecoflex”、昭和高分子(株)社の“ビオノーレ”、Dupont社の“Biomax”等が挙げられる。これらの市販ポリエステルは生分解性を有することが知られており、生産性の観点からも環境負荷低減の観点からも好ましく用いることができる。
本発明で用いられる脂肪族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステルの原料である脂肪族ヒドロキシカルボン酸類は特に限定されない。具体的に例を挙げると、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、さらには、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状エステル、例えば、グリコール酸の二量体であるグリコリドや乳酸の二量体であるラクチド、6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトン等である。これらは必要に応じて二種類以上を混合して用いても良いし、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が不斉炭素を有する場合は、D体、L体それぞれ単独でも良いし、D体とL体の混合物、すなわちラセミ体でも良い。上記成分のブロックまたはランダム共重合体を用いても構わないし、上述のジカルボン酸成分とグリコール成分とで構成されるポリマーとのブロックまたはランダム共重合体を用いても構わない。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステルの中で市販されているものは、三井化学(株)社の“LACEA”、カーギルダウ社の“Nature Works”、ダイセル化学工業(株)社の“セルグリーンPH”等が挙げられ、生産性の観点からも環境負荷低減の観点からも好ましく用いることができる。
一般に、水素引抜き後のアルキルラジカルの安定性は第1級から第3級になるにつれ大きくなることが知られている。これは、アルキルラジカルの超共役による電子の非局在化に由来するものである。これに基づくと、水素引抜き反応はメチル基等のアルキル基を有する脂肪族ポリエステルに有利であり、脂肪族ポリエステル系樹脂の最も好ましい形態はポリ乳酸であると言える。
本発明におけるポリ乳酸の重量平均分子量は、通常少なくとも5万、好ましくは8万〜30万、さらに好ましくは10万〜20万である。平均分子量をかかる範囲とする場合には、各種成形品とした場合の強度物性を優れたものとすることができる。
本発明で使用される改質剤としてのポリマー(B成分)は、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基あるいはエポキシ基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有するポリマーである。加えて、A成分に付加したC成分と反応しうる必要があるため、B成分とC成分の組み合わせを適宜選択する必要がある。A成分への親和性および流動性の観点から、数平均分子量が10万以下であることが必要で、好ましくは5万以下、さらに好ましくは3万以下、特に好ましくは1万以下である。分子量の下限は特に限定されないが、200以上であることが好ましい。分子量が200以下の場合には、溶融混練時にガス化するおそれがある。形態は、液体であっても固体であっても特に問題ないが、取扱性および生産性の観点から、室温で固体であることが好ましい。また、官能基の位置は特に限定されず、末端であっても側鎖であっても構わない。
B成分は例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸等の各種アクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の各種ビニルアルコール系ポリマー、6−ナイロン、6,6−ナイロンに代表される各種ポリアミド系ポリマー、ポリアルキレンエーテルに代表される各種ポリエーテル系ポリマー、構成成分がジカルボン酸成分とグリコール成分であるもの、あるいは脂肪族ヒドロキシカルボン酸である各種ポリエステル系ポリマー、さらには上述ポリマー種をグリシジル基に代表されるエポキシ基で変性した化合物、例えば、ポリグリシジルメタアクリレート、ポリアルキレンエーテルグリシジルエーテル等を用いることができる。A成分との親和性の観点から、各種ポリビニルアルコール系ポリマー、各種ポリアミド系ポリマー、各種ポリエーテル系ポリマーが好ましく、ポリビニルアルコール系ポリマー、各種ポリエーテル系ポリマーがさらに好ましい。上記改質剤としてのポリマーは単独でも用いることができるし、2種以上を併用することもできる。
ポリビニルアルコールおよび部分けん化ポリビニルアルコールは一般に(株)クラレ社や日本酢ビ・ポバール(株)社より“ポバール”として、日本合成化学工業(株)社から“ゴーセノール”として各種グレードが上市されており、また、エチレン−ビニルアルコール共重合体も同じく(株)クラレ社から“エバール”として、日本合成化学工業(株)社から“ソアノール”として各種グレードが上市されており、いずれも好ましく用いることができる。
ポリエーテルはポリオキシメチレンの他、以下のグリコールからの誘導体を繰り返し単位に用いることができる。例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオールなどの脂肪族グリコール誘導体、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール誘導体、ビスフェノール−A、ビスフェノールSなどの芳香族グリコール誘導体などや、またこれらの共重合体、例えばエチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等を繰り返し単位に用いることができる。これらの中でもA成分との親和性の観点から、ポリアルキレングリコール、中でもポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールがさらに好ましい。
本発明において使用されるラジカル発生剤(D成分)は、上記した水素引抜き反応を生じさせ、その結果不飽和化合物(C成分)の付加を促進させることができる限り特に限定されない。例えば、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)ヘキサン、ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピルヘキシル)ベンゼン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ヘキシルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシベンゾエート等が挙げられるが、通常100〜300℃、好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは170〜220℃で溶融状態にて用いることを考慮すると、上記温度範囲内での半減期が5分以内であることが好ましい。以上の観点から、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)ヘキサン、ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピルヘキシル)ベンゼン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ヘキシルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が好ましく、その中でも特にジクミルペルオキシドが好ましい。上記ラジカル発生剤は単独でも用いることができるし、2種以上を併用することもできる。
本発明で使用される不飽和カルボン酸またはその誘導体、あるいは不飽和アルコールから選ばれる少なくとも1種以上の不飽和化合物(C成分)は、上記した活性化したA成分に付加できるものであれば特に限定されないが、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ソルビン酸、アクリル酸、クロトンアルコール、メチルビニルカルビノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、2−ブテン−1,4−ジオール等が挙げられるが、生産性、価格、汎用性の面から特に無水マレイン酸が好ましい。上記不飽和化合物は単独でも用いることができるし、2種以上を併用することもできる。
一般に、結晶性樹脂は結晶化度が高いと強度や強靱性が増すものの、配向等を伴わない結晶化では、過度に高い結晶化度は逆に脆化を促進する場合がある。上記観点から本発明の改質ポリエステルは、示差走査熱量測定(DSC測定)により求めた到達結晶化度が50%以下であることが好ましく、47%以下がさらに好ましく、45%以下が特に好ましい。
なお、到達結晶化度とは、以下の方法によるものである。すなわち、後述の成形により作成したシートサンプルから試料(5〜10mg程度)を採取してアルミパンに入れ、DSCを用いて窒素雰囲気下、室温から昇温速度20℃/minにて温度を変化させながら、結晶融解による吸熱ピーク(ΔHm(J/g))を求める。測定されたΔHmに基づき以下の式により到達結晶化度(%)を算出する。
到達結晶化度(%)={ΔHm/(a×b/100)}×100
上式中、「a」は公知の文献で示されている、脂肪族ポリエステルが100%結晶化した場合の結晶融解熱量(例えばポリ乳酸の場合、94J/g)を意味し、「b」は、本発明の改質ポリエステルにおける脂肪族ポリエステルの重量分率(重量%)を意味する。
本発明の改質ポリエステルは、脂肪族ポリエステル系樹脂と混合してポリエステル樹脂混合物として用いることができる。このポリエステル樹脂混合物はもとの脂肪族ポリエステル系樹脂の伸度性が改良されたものとなり、フィルム等の成形品として好適に使用される。
このポリエステル樹脂混合物には、さらにヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基あるいはエポキシ基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有する数平均分子量10万以下のポリマーが混合されていてもよい。これにより可塑性が改善される。
これらの混合方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いて樹脂混合物を得る方法が挙げられる。また樹脂の混合順序についても特に制限はなく、例えば脂肪族ポリエステル系樹脂および/またはヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基あるいはエポキシ基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有する数平均分子量10万以下のポリマーと、改質ポリエステルをドライブレンド後、溶融混練機に供する方法や、予めヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基あるいはエポキシ基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有する数平均分子量10万以下のポリマーと改質ポリエステルを溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチと脂肪族ポリエステル系樹脂とを溶融混練する方法等が挙げられる。また必要に応じてその他の添加剤を同時に溶融混練する方法や、予め脂肪族ポリエステル系樹脂とその他の添加剤を溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチと脂肪族ポリエステル系樹脂および/またはヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基あるいはエポキシ基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有する数平均分子量10万以下のポリマーと、改質ポリエステルとを溶融混練する方法を用いてもよい。
さらに、本発明の一態様においては、すぐれたガスバリア性を有し、かつ、高生産性および低コスト性を併せもつ機能性の高い改質ポリエステルを生み出すことができるようになる。すなわち、本発明の改質ポリエステルはB成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体であるときに、優れたガスバリア性が得られる。
エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量は5〜60モル%であることが好ましい。本発明の改質ポリエステルにおける脂肪族ポリエステルとの溶融混練性、およびこの改質ポリエステルのガスバリア性を両立させる観点から、20〜50モル%であることがさらに好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体としては、例えばエバールE105(商品名;(株)クラレ製)などが好適に用いられる。
このすぐれたガスバリア性を有する改質ポリエステルにおいては、組成物におけるA、B、C、D各成分の比率は75〜85、15〜25、0.5〜3、0.1〜1(いずれも重量%)であることが好ましい。また組成物にはこの他にE成分として、加水分解抑制剤が0.2〜2重量%添加されることが好ましい。
この組成物においては、B成分であるエチレン−ビニルアルコール共重合体の分子量(数平均分子量)は2〜4万であることが好ましい。分子量がこの範囲を下回ると、組成物の粘度が過度に低下して改質が充分進行せず、良好なガスバリア性を付与できない可能性があり、分子量がこの範囲を上回ると組成物の粘度が過度に上昇して改質が充分進行しない場合がある。
E成分としては、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン系化合物等が挙げられる。これらは一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
E成分となるカルボジイミド化合物は、分子中に一個以上のカルボジイミド基を有する化合物であり、ポリカルボジイミド化合物等も含む。このカルボジイミド化合物に含まれるモノカルボジイミド化合物としては、例えばジメチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ナフチルカルボジイミド等が例示される。
E成分となるイソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が例示される。
E成分となるオキサゾリン系化合物としては、例えば2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等が例示される。
E成分としては市販品も適宜使用できる。市販品として、例えば、日清紡(株)製のカルボジイミド(商品名カルボジライト)を適用できる。
本発明の改質ポリエステル、このポリエステルと樹脂混合物あるいは本発明の改質ポリエステルとこのポリエステルと樹脂混合物の両者は、通常の成形用樹脂と混合して成形用混合樹脂として用いることができる。これにより通常の成形用樹脂の高伸度性や成形性をあまり損なうことなく生分解性が向上する。この成形用混合樹脂は成形物、なかでもフィルムに成形して生分解性を有するフィルムとして好適に用いることができる。上記フィルムは無延伸フィルムとして用いても、一軸、二軸等の延伸フィルムとして用いることもできる。
通常の成形用樹脂としては例えばポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂などの熱可塑性樹脂や、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体系樹脂、ポリエステルエラストマー系樹脂、ポリアミドエラストマー系樹脂、エチレン/プロピレンターポリマー系樹脂、エチレン/ブテン−1共重合体系樹脂などの軟質熱可塑性樹脂などが挙げられる。
上記成形物中には、目的や用途に応じて各種の粒子を添加することができる。添加する粒子は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。これらの粒子を2種以上添加しても構わない。成形物の機械的特性の観点から、かかる粒子の添加量は、0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.02〜1重量%である。
また、本発明の成形物には、本発明の目的・効果を損なわない範囲で必要に応じて添加剤、例えば、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着性付与剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤またはポリシロキサン等の消泡剤、顔料または染料等の着色剤を適量配合することができる。
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
実験例1
使用材料
ポリ乳酸(PLA):“レイシア”H−400(三井化学(株)社製)
(80℃の熱風乾燥機で5時間乾燥後使用)
ポリエチレングリコール(PEG):PEG:4,000(和光純薬工業(株)社製)
無水マレイン酸(MAH):(シグマ アルドリッチ ジャパン(株)社製)
過酸化物(PO):ジクミルパーオキシド“パークミルD”(日本油脂(株)社製)
(パークミルDは190℃半減期が30秒程度であり、混練温度における水素引抜きあるいは架橋反応に適すると判断し用いた。)
ポリマーブレンド及び架橋
190℃に設定したバッチ式ニーダー(100MR3:(株)東洋精機製作所社製)にPLA/PEG=90/10(以下重量比)を投入、回転数を20rpmで5分間そのまま混練した後、回転数を50rpmに上げ、MAHおよびPOを少しずつ添加、さらに10分間混練し改質ポリエステルを得た。添加量(phr)は、Run1(比較例1):0/0、Run2(実施例1):1/0.5、Run3(実施例2):2/0.5とした。
成形
得られた改質ポリエステルを80℃の熱風乾燥機で5時間以上乾燥後、190℃に設定した卓上プレス機(小型プレスG−12型:テクノサプライ(株)社製)にて溶融プレス後、水冷板に挟み込み冷却した。フィルム厚は概ね300μmであった。
引張試験および構造解析
引張試験:得られたフィルムを短冊状に切り出し、万能抗張力試験器(5569型:インストロンジャパン(株)社製)にて25℃で行った。引張速度:10mm/min、初期長:20mmとした。
示差走査熱量測定:ダイナミック熱分析システム(D−DSC8230L:(株)リガク社製)を用いて得られたフィルムの示差走査熱量測定(DSC)測定を行った。昇温速度:20℃/minとした。
分子量分布測定:液体クロマトグラフ測定装置(LaChromD−7000:日製ハイテクノロジーズ(株)社製)、カラムに昭和電工(株)社製GPC K−805L)を用い、クロロホルムを移動相、測定温度は40℃とした。また、クロマトグラムは標準ポリスチレンで較正した。
赤外線吸収スペクトル測定:フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR−8300:(株)島津製作所社製)を用いて各サンプルの表面をATR分析した。
結果
DSC特性
図1にPLA単体とRun1のDSC昇温測定結果を示す。ガラス転移点(Tg)由来ピークが単一のまま20℃低下したことから、PEGがPLAに分子レベルで分散あるいは完全相溶していることが確認された。結晶化由来ピークが30℃低下していることはPLAがPEGにより可塑化され、結晶性が向上していることを示している。
結晶化度
表1にPLA単体とRun1〜3の到達結晶化度を示す。Run1および2はPLA単体に比べ大きく結晶化度が増しているのに対し、Runのそれは少し低下していた。
Figure 0004791384
引張試験
図2に各サンプルの応力-ひずみ曲線を示す。PEGブレンドにより弾性率はいずれもほぼ10%低下し、柔軟化していることが確認された。一方、PLAのみ、Run1は破断伸度が10%に満たずきわめて脆性が高かったのに対し、Run2は破断伸度が10%程度と改善され、Run3のそれは100%を超え、著しく脆性改善していることがわかった。分子量分布
図3にPEGのみ、およびRun1〜3のGPC溶出曲線(分子量分布曲線)と、低分子領域および高分子領域の拡大図を示す。
図3よりMAH/PO量の増加とともにPEG由来のピーク強度の低下が、さらに単純ブレンド(Run1)に対しMAH/PO添加系(Run2および3)の分子量の明らかな増加が明確となった。これは、PLA/PEGブレンドへのMAH/PO添加により以下に示すスキームでPLA−g−PEGがin situ生成したことを示すものである。
Figure 0004791384
赤外線吸収スペクトル
PLA−g−PEGの存在を明確化するべく、Run1〜3のサンプルをクロロホルムへ溶解させ、メタノール再沈物の赤外線吸収スペクトル測定を行った(図4)。単純ブレンド(Run1)ではPLA単体同様のスペクトルを示したのに対し、MAH/PO添加系(Run2および3)では、MAH/PO量の増加に従いPEG由来のピーク(2890cm−1付近)が明らかに増加していた。これは上記の混練によりPLA−g−PEGがin situ生成したことを示している。
透明性
Run2、Run3の樹脂は極めて透明であった。
実験例2
使用材料
ポリ乳酸(PLA):“レイシア”H−400(三井化学(株)社製)
(80℃の熱風乾燥機で5時間乾燥後使用)
エチレン−ビニルアルコール(EVOH):エチレン含有量44モル%、数平均分子量約3万
無水マレイン酸(MAH):(シグマ アルドリッチ ジャパン(株)社製)
過酸化物(PO):ジクミルパーオキシド“パークミルD”(日本油脂(株)社製)
(パークミルDは190℃半減期が30秒程度であり、混練温度における水素引抜きあるいは架橋反応に適すると判断し用いた。)
カルボジイミド樹脂(LA−1):商品名カルボジライトLA−1(日清紡績(株)社製)
ポリマーブレンド及び架橋
190℃に設定したバッチ式ニーダー(100MR3:(株)東洋精機製作所社製)にPLA/EVOH=80/20(以下重量部)を投入、あるいはPLA/EVOH/LA−1=80/20/1を投入、回転数を20rpmで5分間そのまま混練した後、回転数を50rpmに上げ、MAHおよびPOを少しずつ添加、さらに10分間混練し改質ポリエステルを得た。添加量(LA−1/MAH/PO(phr))は、Run4(比較例2):0/0/0、Run5(実施例3):0/1/0.5、Run6(実施例4):1/1/0.5、Run7(実施例5):0/2/0.5、Run8(実施例6):1/2/0.5とした。
成形
得られた改質ポリエステルを80℃の熱風乾燥機で5時間以上乾燥後、190℃に設定した卓上プレス機(小型プレスG−12型:テクノサプライ(株)社製)にて溶融プレス後、水冷板に挟み込み冷却しフィルムを得た。フィルム厚は概ね300μmであった。
構造解析
赤外線吸収スペクトル測定:フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR−8300:(株)島津製作所社製)を用いて各サンプルの表面をATR分析した。
電子顕微鏡撮影
走査型電子顕微鏡(S−3000N:(株)日立製作所製)を用いて各サンプルの断面を撮影した。なお、サンプルはイオンスパッター装置(E1010形日立イオンスパッター:(株)日立サイエンスシステムズ製)を用い、金蒸着前処理した。
ガス透過率測定:混合ガス透過率測定装置(GPM−250:ジーエルサイエンス(株)製)を用い、以下の条件で測定を行った。
測定方法:等圧法、測定温度:23℃、試料面積:50cm、キャリアガス:ヘリウムガス、測定ガス:純空気(窒素/酸素=79/21)、測定時間:6時間毎積算で計18時間。測定結果は厚み300μmに換算した後の酸素透過率の値である。
結果
赤外線吸収スペクトル
Run4、5、7のサンプルをTHFへ溶解させ、可溶部−不溶部を遠沈法により分離後、不溶部の赤外線吸収スペクトル測定を行った(図5)。単純ブレンド(Run4)ではEVOH単体同様のスペクトルを示したのに対し、MAH/PO添加系(Run5および7)では、MAH/PO量の増加に従いPLA由来のピーク(1720cm−1付近)が明らかに増加していた。これは上記の混練により化2に示すスキームでPLA−g−EVOHがin situ生成したことを示すものである。なお、図中、※印のピークは主鎖の酸化劣化による。
Figure 0004791384
電子顕微鏡
Run4、5、7の各サンプル断面の電子顕微鏡撮影結果を示す(図6)。単純ブレンド(Run4)では粗大な海島構造を形成しているのに対し、MAH/PO添加系(Run5および7)では、モルフォロジーが明確に変化していることがわかった。
ガスバリア性
PLA単体、およびRun4〜8各サンプルのガス透過率測定結果を表2に示す。
Figure 0004791384
単純ブレンド(Run4)に対し、MAH/PO添加系(Run5および7)はガスバリア性の向上が見られた。さらに、カルボジイミド系樹脂を加えたLA−1/MAH/PO添加系(Run6および8)はガスバリア性のさらなる向上が見られた。
PLA単体とRun1のDSC昇温−発熱測定曲線である。 Run1〜3の各サンプルの応力-ひずみ曲線である。 Run1〜3の各サンプルのGPC溶出曲線(分子量分布曲線)と、低分子領域および高分子領域の拡大図である。 Run1〜3の各サンプルの赤外線吸収スペクトル曲線である。 Run4〜7の各サンプルの赤外線吸収スペクトル曲線である。 Run4、5、7の各サンプル断面の電子顕微鏡写真である。

Claims (7)

  1. ポリ乳酸(A成分)99〜20重量部、数平均分子量10万以下のポリエチレングリコール(B成分)1〜80重量部(ただし、A成分とB成分との合計が100重量部とする)、不飽和カルボン酸またはその誘導体、あるいは不飽和アルコールから選ばれる少なくとも1種以上の不飽和化合物(C成分)0.1〜20重量部、ラジカル発生剤(D成分)0.01〜5重量部を含む組成物を加熱混練して得られ、上記A成分の少なくとも一部の主鎖と前記B成分の少なくとも一部とが前記C成分を介して化学結合している改質ポリエステル。
  2. 前記C成分がマレイン酸または無水マレイン酸であることを特徴とする請求項に記載の改質ポリエステル。
  3. 前記B成分の数平均分子量が1万以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の改質ポリエステル。
  4. DSC昇温測定による到達結晶化度が50%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の改質ポリエステル。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の改質ポリエステルと、
    ポリ乳酸、および/または、数平均分子量10万以下のポリエチレングリコールとが混合されてなることを特徴とするポリエステル樹脂混合物。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載の改質ポリエステルおよび/または請求項に記載のポリエステル樹脂混合物
    を含む樹脂を成形してなる成形品。
  7. 請求項1から4のいずれかに記載の改質ポリエステルおよび/または請求項に記載のポリエステル樹脂混合物
    を含む樹脂を成形してなるフィルム。
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