〔実施形態1〕
本発明の一実施形態を図面に基づいて以下に説明する。
(画像形成装置の全体構成について)
図2は本実施の形態における画像形成装置を備えた複合機1の全体構成を示す概略の説明図である。この複合機1は、原稿送り装置(以下、SPF:Single Pass Feederと称する)2と画像形成装置3を備えている。
画像形成装置3は、SPF2によって搬送された原稿をスキャンして得られた画像データ、あるいは外部から入力された画像データに応じて、記録用紙(シート)にモノクロ画像を形成するものである。この画像形成装置3は、スキャナ部(原稿読取装置)11、プリンタ部12及び給紙部13を備えている。
プリンタ部12は、露光ユニット21、現像器22、感光体(像担持体)23、帯電器24、クリーナユニット25、転写装置26、定着ユニット27、記録用紙搬送路28、排紙トレイ29及び手差しトレイ30を備えている。給紙部13は、給紙カセット41及び大容量給紙カセット(LCC)42を備えている。これら給紙カセット41及び大容量給紙カセット42は画像形成に使用する記録用紙を収容している。
スキャナ部11は、上面にガラスからなる原稿載置台51を備え、この原稿載置台51の下方に光源ホルダー52、ミラー群53及びCCD(撮像装置)54を備えている。このスキャナ部11では、SPF2から送られてくる原稿をスキャンする場合、光源ホルダー52及びミラー群53を原稿載置台51の一端側の位置に静止させる。この場合、SPF1から原稿が搬送されてくると、光源ホルダー52の光源から原稿に光が照射され、原稿からの反射光がミラー群53を介してCCD54に結像され、CCD54により電子的な画像データに変換される。このような動作を行うため、スキャナ部11の上面の一端部には、読取窓が形成されている。
プリンタ部12において、帯電器24は、感光体23の表面を所定の電位に均一に帯電させる。なお、画像形成装置3では、チャージャ型の帯電器24を用いているが、接触型のローラ型やブラシ型の帯電器を用いることもできる。
露光ユニット21は、高速印字処理に対応するために、2つのレーザ照射部61a,61bを備えた2ビーム方式を採用しており、照射タイミングの高速化に伴う負担が軽減されている。この露光ユニット21は、入力された画像データに応じてレーザ照射部61a,61bからレーザ光を照射する。このレーザ光は、ミラー群62a,62b介して、均一に帯電されている感光体23にされ照射され、感光体23を露光する。これにより、感光体23の表面に画像データに応じた静電潜像が形成される。
なお、画像形成装置3では、露光ユニット21として、レーザ照射部61a,61b及びミラー群62a,62bを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)を用いているが、発光素子をアレイ状に並べたEL書き込みヘッドやLED書き込みヘッドを用いることもできる。
現像器22は、感光体23に対向配置されており、感光体23の表面に形成された静電潜像を黒トナーにより顕像化する。
クリーナユニット25は、現像・画像転写後に感光体23の表面に残留したトナーを除去・回収する。
転写装置26は、静電潜像が有する電荷と逆極性の電界を印加することにより、搬送されてきた記録用紙上に、感光体23の表面に形成されたトナー像を転写する。例えば、静電潜像が(−)極性の電荷を有している場合には(+)極性の電界を印加する。
以下、本実施形態では、静電潜像が(−)極性の電荷を有しているものとして説明する。すなわち、感光体23上のトナーがマイナス帯電されるものとする。
転写装置26は、転写ベルト71、駆動ローラ72、従動ローラ73、転写ローラ74、及びテンションローラ78を備えている。
転写ベルト71は、その表面に記録用紙(シート)を吸着して搬送するものである。転写ベルト71は、10×108〜1×1012Ω・cmの範囲の抵抗値を有する。転写ベルト71は、駆動ローラ72、従動ローラ73、転写ローラ74、及びテンションローラ78に巻回されている。
駆動ローラ72は、従動ローラ73とで、転写ベルト71を回転駆動するものである。ここでは、駆動ローラ72には、アース接続されており、記録用紙の電荷を除去して転写ベルト71から記録用紙を剥離し易くする記録用紙剥離ローラとしても機能する。テンションローラ78は転写ベルト71にテンションを与えるものである。
転写ローラ74は、駆動ローラ72と従動ローラ73との間であって、感光体23と転写ベルト71との接触部に設けられており、駆動ローラ72および従動ローラ73と異なる導電性を有している。転写ローラ74は、感光体23の表面に形成されたトナー像を記録用紙上に転写するための転写電界を印加するものである。また、転写ローラ74は、弾性を有する導電性ローラであり、感光体23と転写ベルト71とが線接触ではなく所定の幅(転写ニップ領域)を有する面接触とすることができ、記録用紙へのトナー像の転写効率が向上している。
更に、転写ベルト71の転写ニップ領域の下流側には、搬送される記録用紙が転写ニップ領域で印加された電界を除電し、次工程への搬送をスムーズに行うための除電ローラ77が転写ベルト71の背面に配置されている。
定着ユニット27は、記録用紙上に転写されたトナー像を加熱して溶融させ記録用紙上に定着させる。この定着ユニット27は、加熱ローラ81と加圧ローラ82とを備え、加熱ローラ81の外周部には用紙剥離爪、ローラ表面温度を検出するための部材(サーミスタ)、ローラ表面をクリーニングするためのクリーニング部材が配置され、加熱ローラ81の内周部には加熱ローラ表面を所定温度(定着設定温度:160〜200℃)にするための熱源を有している。
他方、加圧ローラ82は、その両端部に加圧部材を有している。そして、当該加圧部材により、加圧ローラ82は、加熱ローラ81に対して所定圧量で圧接される。また、加熱ローラ81と同様に、加圧ローラ82の外周には用紙剥離爪およびローラ表面をクリーニングするためのクリーニング部材が配置されている。
このような定着ユニット27は、加熱ローラ81と加圧ローラ82との圧接部(定着ニップ部)において、搬送される記録用紙上の未定着トナーを加熱ローラ81の表面温度により溶融させ、圧接力により記録用紙上に定着させる。
排紙トレイ29には、画像が印刷された記録用紙が排出される。なお、この排紙トレイ29に代えて、排紙記録用紙の後処理装置(ステープル、パンチ処理等)もしくは複数段排紙トレイをオプションとして配置することも可能である。
給紙カセット41及び大容量給紙カセット42は、画像形成に使用する記録用紙(シート)を収容するためのものである。高速印刷処理のため、プリンタ部12の下方に配置された給紙カセット41は定型サイズの記録用紙を各々500〜1500枚収納可能である。他方、画像形成装置3の筐体側面外部に配置された大容量給紙カセット42は、複数の種類の記録用紙を多量に収納可能なものである。手差しトレイ30は、不定型サイズの記録用紙を給紙するためのものである。
(転写装置の周辺構成について)
次に、転写装置26の周辺構成の詳細について、図1を参照しながら説明する。図1は、図2のプリンタ部12を拡大した図である。上述したように、感光体23の周囲には、帯電器24、露光ユニット21、現像器22、転写装置26、クリーニングユニット25がこの順で配置されている。本実施形態では、感光体23の表面における、露光ユニット21によって光が照射される感光体23表面の位置と転写ニップ領域の中央との距離がL1に設定されている。
上述したように、転写ローラ74によって、感光体23と転写ベルト71とが転写ニップ領域において接触しており、感光体23と転写ベルト71との間に記録用紙を搬送することにより、記録用紙上に感光体23の表面に形成された帯電トナー像(現像剤像)が転写される。
転写ニップ領域の周辺には、記録用紙を転写ニップ領域に搬送するための搬送機構が配置されている。具体的には、図1に示されるように、転写ニップ領域からみて記録用紙の搬送方向の上流側に、ペーパーガイド88、一対のレジストローラ(給紙ローラ)90、ペーパーガイド89が配置されている。すなわち、図示しない他のレジストローラによってペーパーガイド88上を搬送されてきた記録用紙の先端がレジストローラ90に突入する。その後、レジストローラ90が図示しない用紙搬送系駆動モータによって回転駆動されることにより、記録用紙は、ペーパーガイド89上を搬送されて転写ニップ領域まで到達する。なお、レジストローラ90から転写ニップ領域の中央までの距離がL2に設定されている。
ペーパーガイド88上にはPinセンサ87が配置されている。Pinセンサ87は、記録用紙の存在の有無を検出するものである。Pinセンサ87からレジストローラ90までの距離はL3に設定されている。
本実施形態では、Pinセンサ87は、搬送路に突出した用紙検知レバーおよびホトインタラプタを有している。用紙検知レバーは、回動可能に軸支されており、記録用紙と接触することで回動する。用紙検知レバーが回動すると、記録用紙と接触していない側の用紙検知レバーの端部(他端)も変位する。ホトインタラプタは、用紙検知レバーにおける記録用紙と接触しない側の当該他端の変位を検出するものである。ホトインタラプタは、用紙検知レバーが記録用紙と接触しているときの位置に当該他端があることを検知した場合、記録用紙が存在することを示すON信号を出力する。一方、ホトインタラプタは、用紙検知レバーが記録用紙と接触してないときの位置に当該他端があることを検知した場合、記録用紙が存在しないことを示すOFF信号を出力する。そのため、Pinセンサ87からの出力がOFF信号からON信号に変化したタイミングが、記録用紙の先端がPinセンサ87に位置しているタイミングを示すこととなる。逆に、Pinセンサ87からの出力がON信号からOFF信号に変化したタイミングが、記録用紙の後端がPinセンサ87に位置しているタイミングを示すこととなる。
なお、本実施形態では、Pinセンサ87として用紙検知レバーおよびホトインタラプタを有するセンサを用いるものとしたが、他のセンサを用いてもよい。他のセンサとしては、反射型光センサなどを用いることができる。
また、図1に示されるように、プリント部12は、転写装置26の転写ローラ74に電圧を印加するために、定電圧電源(第2の高圧電源)83および定電流電源(第1の高圧電源)84の2つの高圧電源と、転写出力切換部85と、制御部86とを有している。
定電流電源84は、感光体23の表面上のトナーを記録用紙に引き寄せる(吸着させる)ための電圧を転写ローラ74に出力するものである。ここでは、定電流電源84は、感光体23の表面上のトナーがマイナス帯電されているため、転写ローラ74にプラスの電荷量を与えるように電流を出力する。すなわち、定電流電源84は、感光体23の表面の極性と異なる極性の電圧を出力する。
一方、定電圧電源83は、転写ベルト71上のトナーを感光体23側に戻すための電圧を転写ローラ74に出力するものである。ここでは、トナーがマイナス帯電されているため、定電圧電源83は、マイナスの電圧を転写ローラ74に出力する。すなわち、定電圧電源83は、感光体23の表面の極性と同じ極性の電圧を出力する。これにより、マイナス帯電されたトナーは、反発力により感光体23側に戻され、転写ベルト71上のトナーの除去を行うことができる。
転写出力切換部85は、制御部86からの切換信号に基づいて、転写ローラ74に対して定電圧電源83および定電流電源84のいずれかを接続するものである。転写出力切換部85は、制御部86から切換信号「A」を受けた場合、転写ローラ74と定電圧電源83とを接続し、制御部86から切換信号「B」を受けた場合、転写ローラ74と定電流電源84とを接続するものとする。
制御部86は、記録用紙の適切な位置に画像を形成するとともに、記録用紙と感光体23との分離不良を抑制するために、各ブロックの動作を制御するものである。図3は、制御部86と他の構成との電気的接続関係を示すブロック図である。制御部86には、転写出力切換部85、定電圧電源83、定電流電源84、Pinセンサ87、露光ユニット21、用紙搬送系駆動モータ92、画像処理部93と接続されている。
ここで、用紙搬送系駆動モータ92とは、レジストローラ90を含む、搬送路に配置されたローラを駆動するものである。また、画像処理部93は、スキャナ部または外部から入力された画像データに対して画像処理を施し、露光ユニット21で処理可能な画像書込み信号に変換するものである。
制御部86は、Pinセンサ87からの信号に基づいて、画像処理部93で生成された画像書込み信号を露光ユニット21に出力し、感光体23への画像書込みを開始させる。また、制御部86は、画像書込み開始のタイミングからの経過時間に基づいて、用紙搬送系駆動モータ92を制御し、レジストローラ90の回転および停止を制御する。さらに、制御部86は、レジストローラ90の回転開始のタイミングからの経過時間に基づいて、転写出力切換部85を制御する。
図4は、記録用紙を示す図である。本実施形態では、制御部86は、記録用紙のうち、予め定められた端部以外の画像形成領域に画像形成を行うように各ブロックを制御する。画像形成領域は、トナー像が転写可能な領域である。一方、当該予め定められた端部は、画像が形成されることのない画像無し領域である。図4において、斜線部が画像形成領域を示している。ここでは、記録用紙の搬送方向における先端から画像形成領域までの画像無し領域(先端ボイド)の距離をAとする。
以下に、制御部86における詳細な制御手順について、図5〜8を参照して説明する。
図5は、本実施形態の画像形成装置3における各ブロックの動作タイミングを示すタイムチャートである。図5において、「給紙ピックアップ」は、給紙カセット41から1枚の記録用紙を繰り出し給紙する動作タイミングを示している。「Pinセンサ」は、Pinセンサ87の出力信号を示している。「画像書込みタイミング」は、露光ユニット21によって感光体23の表面に画像を書き込むタイミングを示している。「レジストローラ」は、レジストローラ90の回転・停止のタイミングを示している。「転写出力切換手段」は、転写出力切換部85への切換信号を示している。
図6(a)〜(d)は、記録用紙の状態および転写出力切換部85の接続状態を示す図であり、図6(a)は図5に示す時点T0のとき、図6(b)は図5に示す時点T1のとき、図6(c)は図5に示す時点T2のとき、図6(d)は図5に示す時点T4のときの状態を示している。
図7は、制御部86の手順を示すフローチャートである。
まず、制御部86は、印字要求を検出するまで待機する(S10)。制御部86は、スキャナ部または外部装置から、画像データとともに印字指示を受けると印刷要求があったものと判断する。
印字要求を検出すると、制御部86は、給紙カセット41のピックアップローラを制御して、所定時間ごとに記録用紙をピックアップし、プリンタ部12に搬送する(S20)。このピックアップ制御(S20)は、S20以外の処理と並列して実行される並列処理である。当該並列処理については、図8を参照して後述する。
次に、制御部86は、転写出力切換部85に対して切換信号「A」を出力する(S30)。これにより、転写ローラ74と定電圧電源83とが接続され、転写ベルト71上に付着していたトナーは、感光体23側へ戻される。
その後、制御部86は、Pinセンサ87の出力信号がOFF信号からON信号に変化するまで待機する(S40)。Pinセンサ87の出力信号がOFF信号からON信号に変化する場合とは、上述したように、給紙カセット41から搬送されてきた記録用紙の先端がPinセンサ87の位置にきたときである。すなわち、Pinセンサ87が記録用紙の先端を検知するまで待機することとなる。
そして、Pinセンサ87が記録用紙の先端を検知すると、制御部86は、所定時間t1だけ待機する(S50)。所定時間t1だけ待機した後、制御部86は、図5に示されるように、画像処理部93で生成された1ページ目の画像書込み信号を露光ユニット21に送り、画像書込みを開始させる(S60)。なお、当該画像書込みは、図4に示した画像形成領域の最先端のラインから開始される。また、所定時間t1は、感光体23表面上における露光ユニット21による光照射位置と転写ニップ領域の中央との距離L1、レジストローラ90と転写ニップ領域の中央との距離L2、Pinセンサ87からレジストローラ90までの距離L3及びレジストローラ90での待機時間(後述する)に基づいて決定される。すなわち、(感光体がL1を移動する時間)と、(用紙がL2+L3を移動する時間)+(用紙のレジストローラ90での待機時間)との差分に基づいて、感光体23の画像書込開始位置と用紙の画像形成領域の先頭位置とが転写ニップ領域で一致するように、所定時間t1が決定される。
画像書込みを開始させると、制御部86は、所定時間t2だけ待機した後(S70)、図5に示されるように、用紙搬送系駆動モータ92を制御してレジストローラ90の回転を開始させる(S80)。
当該所定時間t2は、レジストローラ90と転写ニップ領域の中央との距離L2、レジストローラ90の回転による記録用紙の搬送速度V0、感光体23表面上における露光ユニット21による光照射位置と転写ニップ領域の中央との距離L1、および、記録用紙の先端ボイドの搬送方向の距離Aに基づいて予め定められている。なお、感光体23表面の移動速度は、上記搬送速度V0と同じである。具体的には、L1−t2×V0=L2+Aを満たすようにt2が設定される。これにより、所定時間t2が経過したのちに、レジストローラ90を駆動することにより、画像書込み開始時に形成された感光体23表面上の静電潜像の1ライン目が、記録用紙の画像形成領域の先頭と一致することになる。
図6(a)は、レジストローラ90を回転開始する時点T0における、記録用紙の状態および転写出力切換部85の接続状態を示している。図6(a)に示されるように、時点T0まではレジストローラ90が停止されていたため、記録用紙の先端はレジストローラ90により進行を妨げられている。すなわち、記録用紙はレジストローラ90において所定の待機時間だけ待機することとなる。そのため、記録用紙はわずかに撓んでいる。なお、この時点T0では、定電圧電源83と転写ローラ74とが接続されているため、転写ローラ74に付着しているトナーは感光体23に戻されている。
また、時点T0において、記録用紙の先端は、レジストローラ90の中央に位置している。なお、記録用紙は厚み80〜105μm程度の標準紙とする。
次に、レジストローラ90の回転を開始させてから、制御部86は、所定時間t3だけ待機した後(S90)、転写出力切換部85に対して切換信号「B」を出力し、転写ローラ74と定電流電源84とを接続させる(S100)。
当該所定時間t3は、レジストローラ90と転写ニップ領域の中央との距離L2、記録用紙の先端ボイドの搬送方向の長さAの1/2である距離L4、および、レジストローラ90により記録用紙の搬送速度V0に基づいて予め定められている。具体的には、t3=L2/V0+L4/V0を満たすようにt3が設定される。
図6(b)は、時点T0からL2/V0の時間だけ経過した時点T1における、記録用紙の状態および転写出力切換部85の接続状態を示している。図6(b)に示されるように、時点T1では、レジストローラ90を回転させてからL2/V0の時間だけ経過しているため、記録用紙の先端が転写ニップ領域の中央に位置する。
図6(c)は、時点T0から所定時間t3(L2/V0+L4/V0)の時間だけ経過した時点T2における、記録用紙の状態および転写出力切換部85の接続状態を示している。図6(c)に示されるように、時点T2では、図6(b)の状態からさらにL4/V0の時間だけ経過しているため、記録用紙の先端が転写ニップ領域の中央からL4だけ通過した状態となっている。ここで、L4は記録用紙の先端ボイドの長さAの1/2である。つまり、時点T2は、記録用紙の先端が感光体23と転写ローラ74との間を通過した後であり、記録用紙における画像形成の行われない所定領域(先端ボイド)が感光体23と転写ローラ74との間に位置している期間内である。
従来、図6(b)で示される時点T1、すなわち、記録用紙の先端が転写ニップ領域の中央に位置する時点において、感光体23表面上の帯電トナー像を記録用紙に転写するための転写電界を転写ローラ74に印加するようにしていた。
しかしながら、この場合、記録用紙の先端がプラスに大きく帯電され、マイナスに帯電された感光体23側に引き寄せられる。その結果、記録用紙と感光体23との分離がスムーズに行われないという問題があった。
さらに、記録用紙は、製紙工場において、大サイズの記録用紙として製造された後にカッターにより各種の規定サイズに切断され、梱包されて出荷される。このため、各種規定サイズの記録用紙には切断面が存在し、その切断面(切断された辺)には切断方向に突出する突起部が存在する。
例えば、製紙工場において、大サイズに製造された記録用紙は、通常、先ず規定幅(規定長さ)の帯状に切断された後、さらにその帯状の記録用紙が、上下動するカッターにより規定長さ(規定幅)に切断され規定サイズの記録用紙となる。この場合、上下動する前記カッターは通常片刃であり、この片刃の場合には切断された記録用紙の一方のみにおいて前記突起部が生じる。前記突起部は微小ではあるものの、人の触指により有無および方向を判別可能である。
そして、記録用紙が画像形成装置3の給紙カセット41に収容され、給紙カセット41から突起部が存在する辺を用紙先端部として転写ベルト71と感光体23との間に搬送された場合において、前記突起部が転写ベルト71と対向する状態であると、記録用紙の先端と転写ベルト71の間に隙間が生じる。
そのため、時点T1、すなわち、記録用紙の先端が転写ニップ領域の中央に位置する時点において、感光体23表面上の帯電トナー像を記録用紙に転写するための転写電界を転写ローラ74に印加した場合、記録用紙の先端と転写ベルト71との間において、パッシェンの法則に準じて放電が連続的に発生する。このため、記録用紙の転写ベルト71側の電位が低下し、記録用紙の感光体23側の電位が相対的に高くなり、記録用紙と感光体23との静電的な吸着力が相対的に上昇する。この結果、記録用紙は、より一層、感光体23の表面から自然剥離せずに、感光体23の表面に付着した状態となる。このため、記録用紙は用紙剥離爪により感光体23の表面から強制剥離されて、先端にトナー汚れが発生することになる。
しかしながら、本実施形態では、図6(c)で示される時点T2、すなわち、記録用紙の先端が転写ニップ領域の中央をL4だけ通過した時点において、感光体23表面上の帯電トナー画像を記録用紙に転写するための電界を転写ローラ74に印加する。
これにより、記録用紙の先端が転写ニップ領域に位置するときには、転写ローラ74にはマイナス帯電されたトナーを感光体23側に戻すための電圧が印加されているため、記録用紙は感光体23に吸着されない。さらに、仮に、記録用紙の突起部によって記録用紙の先端と転写ベルト71の間に隙間が生じたとしても、記録用紙の先端部と転写ベルト71との間において、パッシェンの法則に準じた放電が連続的に発生することはない。その結果、記録用紙は、感光体23の表面から自然剥離し、用紙剥離爪により感光体23の表面から強制剥離されて、先端にトナー汚れが発生する頻度が小さくなる。
さらに、転写ローラ74に接続される高圧電源を定電圧電源83から定電流電源84に切り換える。このように出力の異なる2つの高圧電源を切り換えることで、切換速度が向上する。そのため、記録用紙における先端ボイドが感光体23と転写ローラ74との間に位置している期間内で切換を行ったとしても、帯電トナー像が感光体23と転写ローラ74との間に位置するときには記録用紙に転写電界が印加される。これにより、画像形成が開始される位置を安定化させることができる。
次に、制御部86は、Pinセンサ87の出力信号がON信号からOFF信号に変化するまで待機する(S110)。Pinセンサ87の出力信号がON信号からOFF信号に変化する場合とは、上述したように、給紙カセット41から搬送されてきた記録用紙の後端がPinセンサ87の位置にきたときである。すなわち、Pinセンサ87が記録用紙の後端を検知するまで待機することとなる。
そして、Pinセンサ87が記録用紙の後端を検知すると、制御部86は、当該検知した時点T3から所定時間t4だけ待機した後(S120)、図5に示されるように、転写出力切換部85に対して切換信号「A」を出力し、転写ローラ74と定電圧電源83とを接続させる(S130)。
当該所定時間t4は、Pinセンサ87とレジストローラ90との距離L3、レジストローラ90と転写ニップ領域の中央との距離L2、および、レジストローラ90により記録用紙の搬送速度V0に基づいて予め定められている。具体的には、t4=(L2+L3)/V0を満たすようにt4が設定される。これにより、記録用紙の後端が転写ニップ領域の中央に位置したときに、転写ローラ74と定電圧電源83とが接続されることとなる。
図6(d)は、Pinセンサ87が記録用紙の後端を検知した時点T3から所定時間t4だけ経過した時点T4における、記録用紙の状態および転写出力切換部85の接続状態を示している。図6(d)に示されるように、記録用紙の後端が転写ニップ領域の中央に位置したときに、転写ローラ74と定電圧電源83とが接続される。そのため、時点T4以降では、記録用紙が転写ニップ領域に存在せず、かつ、転写ベルト71に付着したトナーが感光体23に戻されることとなる。
その後、制御部86は、次頁が存在するか否かを判断する(S140)。次頁が存在する場合にはS40に戻り、制御部86は、次頁の印字処理を開始する。一方、次頁が存在する場合には、制御部86は、給紙カセット41のピックアップローラを制御して、記録用紙のピックアップを停止させ(S150)、処理を終了する。
次に、図7のS20で示したピックアップ制御の処理の流れについて図8を参照しながら説明する。図8は、当該ピックアップ制御の処理手順を示すフローチャートである。
制御部86は、ピックアップローラを回転させ、記録用紙1枚を給紙カセット41からピックアップさせる(S160)。次に、制御部86は、ピックアップ制御処理(並列処理)の停止処理(上記S150)を行ったか否か、および、給紙カセット41内の記録用紙が無くなったか否かを判断する(S170)。
ピックアップ制御処理(並列処理)の停止処理(上記S150)を行わず、かつ、給紙カセット41内に記録用紙が存在している場合、制御部86は、所定時間だけ待機した後(S180)、再度ピックアップローラを回転させ、記録用紙1枚を給紙カセット41からピックアップさせる(S190)。その後、S170の処理に戻る。
一方、ピックアップ制御処理(並列処理)の停止処理(上記S150)を行った場合、もしくは、給紙カセット41内の記録用紙が無くなった場合、制御部86は、処理を終了する。
〔実施形態2〕
実施形態1では、レジストローラ90の回転を開始してから所定時間t3だけ経過した後に、転写ローラ74と定電流電源84とを接続させるようにした。汎用されている厚み80〜105μm程度の標準厚みの記録用紙を停止しているレジストローラ90に突き当てたとしても、当該記録用紙の先端は、レジストローラ90の中央で停止する。そのため、標準厚みの記録用紙を用いる場合には、上記実施形態1で問題がない。
しかしながら、標準厚みよりも厚み記録用紙を停止しているレジストローラ90に突き当てた場合、図9(b)に示すように、記録用紙の剛性が強いため、記録用紙は、レジストローラ90に食い込み量ΔEだけ突入した(食い込んだ)状態で停止することとなる。
本実施形態2は、このような標準厚みよりも厚い記録用紙を用いた場合であっても記録用紙が感光体23から剥離しやすい構成を有するものである。具体的には、画像形成装置3は、レジストローラ90の回転を開始してから、転写ローラ74と定電流電源84とを接続させるまでの待機時間t3を上記ΔEを考慮して補正する。
本実施形態の画像形成装置3は、図9(a)に示されるように、実施形態1と比較して、レジストローラ90に対して用紙搬送方向の下流にラインセンサ91を備える点で異なる。
ラインセンサ91は、記録用紙の先端の位置を読み取るものである。ラインセンサ91は、標準厚みの記録用紙を用いてレジストローラ90を回転させてから所定時間t5が経過したときの当該記録用紙の先端の基準位置E1を予め記憶しており、当該基準位置E1を基準として、記録用紙の先端の位置E2を検出する。位置E2が基準位置E1からずれる場合とは、記録用紙が厚いために図9(b)のようにレジストローラ90にΔEの食い込み量が生じる場合である。
また、本実施形態の制御部86は、ラインセンサ91と接続されており、レジストローラ90を回転させてから所定時間t5が経過したときにラインセンサ91を制御して、記録用紙の先端の位置E2を読み取らせる。さらに、制御部86は、標準厚みの記録用紙を用いたときに、レジストローラ90を回転させてから記録用紙の先端が転写ニップ領域の中央をL4だけ通過するまでの基準待機時間t3sを予め記憶している。
そして、制御部86は、ラインセンサ91が読み取った位置E2と、予め記憶している基準位置E1と、基準待機時間t3sとを用いて、待機時間t3を求める。
制御部86は、ラインセンサ91が検出した位置E2から基準位置E1と位置E2との距離を求め、当該距離をΔEと設定する。また、レジストローラ90の回転を開始する時点T0において、記録用紙の先端はΔEだけ下流側に位置しているため、ΔEだけ搬送される時間を基準待機時間t3sから除くことにより、記録用紙の先端が転写ニップ領域の中央をL4だけ通過したときに転写ローラ74と定電流電源84とを接続することができる。そのため、制御部86は、t3=t3s−ΔE/V0により、待機時間t3を求める。
本実施形態の制御部86の処理手順について、図10を参照しながら説明する。図10は、制御部86の処理手順を示すフローチャートである。
図10において、実施形態1と同じ処理について同じステップ(S)番号を付けている。図10に示されるように、本実施形態では、実施形態1の処理に加えて、S85およびS87の処理が追加されている。
すなわち、レジストローラ90の回転を開始(S80)した後、所定時間t5経過後に、制御部86は、ラインセンサ91を制御して、基準位置E1を基準としたときの記録用紙の先端の位置E2を読み取らせる(S85)。
その後、制御部86は、読み取られた位置E2により、基準位置E1と位置E2との距離ΔEを求め、t3=t3s−ΔE/V0により、待機時間t3を求める(S87)。
そして、S90では、S87で算出した待機時間t3だけ、レジストローラ90を回転させた時点T0から待機する。
これにより、標準厚みよりも厚い記録用紙であっても、記録用紙の先端が転写ニップ領域の中央をL4だけ通過したときに転写ローラ74と定電流電源84とを接続することができる。その結果、記録用紙は、感光体23の表面から自然剥離し、用紙剥離爪により感光体23の表面から強制剥離されて、先端にトナー汚れが発生する頻度が小さくなる。また、記録用紙の画像形成領域に画像を形成することができる。
以上のように、画像形成装置3は、感光体(像担持体)23の表面に形成された静電潜像をトナー(現像剤)により現像して帯電トナー像(現像剤像)とし、記録用紙を感光体23の表面に接触させて帯電トナー像を記録用紙に転写させるものである。そして、画像形成装置3は、感光体23の表面に対接し、静電力により、感光体23との間に介在する記録用紙に帯電トナー像を転写させる転写ローラ74と、感光体23の表面の極性と異なる極性であり、感光体23の表面の帯電トナー像を記録用紙に引き寄せるための電圧を出力する定電流電源(第1の高圧電源)84と、感光体23の表面の極性と同じ極性の電圧を出力する定電圧電源(第2の高圧電源)83と、転写ローラ74に対して定電流電源84及び定電圧電源83のいずれかを接続させる転写出力切換部85及び制御部86とを備え、制御部86は、記録用紙の先端が感光体23と転写ローラ74との間を通過した後であり、記録用紙における先端ボイド(画像形成の行われない所定領域)が感光体23と転写ローラ74との間に位置している期間内に、転写ローラ74と接続される高圧電源を定電圧電源83から定電流電源84に切り換える切換処理を行う。
そのため、上記切換手段が行われた後に、帯電トナー像を記録用紙に転写させることができる。
また、記録用紙の先端が感光体23と転写ローラ74との間を通過するときには定電流電源84の出力電圧が転写ローラ74に印加されず、定電圧電源83の出力電圧が印加されることとなる。定電圧電源83は、感光体23の表面の極性と同じ極性の電圧を出力するものである。そのため、記録用紙の先端は感光体23表面と同じ極性の電圧となる。その結果、記録用紙の先端と感光体23とは互いに反発しあうため、記録用紙が感光体23に吸着されることがなく、記録用紙と感光体23との分離不良を抑制することができる。
さらに、転写ローラ74に接続される高圧電源を定電圧電源83から定電流電源84に切り換える。このように出力の異なる2つの高圧電源を切り換えることで、切換速度が向上する。そのため、記録用紙における先端ボイドが感光体23と転写ローラ74との間に位置している期間内で切換を行ったとしても、帯電トナー像が感光体23と転写ローラ74との間に位置するときには記録用紙に転写電界が印加される。これにより、画像形成が開始される位置を安定化させることができる。
また、定電流電源84を用いることにより、記録用紙の材質が厚みに関わらず、転写時には一定の電流が転写部から像担持体に流れることなる。
なお、上記切換処理を行うタイミングを決定する方法として、実施形態1では、感光体23と転写ローラ74との間に記録用紙を搬送するための一対のレジストローラ(給紙ローラ)90を備え、制御部86は、停止しているレジストローラ90に記録用紙が到達した後に当該レジストローラ90を回転させ、当該回転の開始タイミングからの経過時間に基づいて、切換処理を実行するタイミングを決定する。
レジストローラ90と転写ローラ74との距離は、画像形成装置3の設計段階で決定されるものである。そのため、停止しているレジストローラ90で進行が妨げられている記録用紙が、レジストローラ90を回転させるとことにより、当該記録用紙における先端ボイドが感光体23と転写ローラ74との間に位置する状態まで搬送されるための所要時間(所定時間t3)は、予め求めることができる。そのため、レジストローラ90の回転の開始タイミングからの経過時間が当該所定時間t3に達したときに上記切換処理を行うことにより、記録用紙における先端ボイドが感光体23と転写ローラ74との間に位置するときに確実に切換処理を実行させることができる。
また、実施形態2は、停止しているレジストローラ90に記録用紙が到達したときの、当該記録用紙のレジストローラ90への食い込み量ΔEに対応する特徴量(ここでは、レジストローラ90を回転させてから所定時間t5経過したときにおける、基準位置E1を基準としたときの記録用紙の先端の位置E2)を検出するラインセンサ(検出部)91を備える。そして、制御部86は、停止しているレジストローラ90に記録用紙が到達した後にレジストローラ90を回転させ、当該回転の開始タイミングからの経過時間およびラインセンサ91によって検出された特徴量に基づいて、切換処理を実行するタイミングを決定する。
具体的には、レジストローラ90の回転の開始タイミングからの経過時間が、食い込み量ΔEによって位置ずれが生じている記録用紙を、当該記録用紙における先端ボイドの中央が感光体23と転写ローラ74との間に位置する状態まで搬送するための所要時間に一致したときに、前記切換処理を実行する。このように、レジストローラ90から転写ローラ74まで搬送される所要時間を、食い込み量ΔEによる位置ずれに基づいて補正する。この結果、記録用紙の種類に拘わらず、記録用紙における先端ボイドが感光体23と転写ローラ74との間に位置するときに確実に切換処理を実行させることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
最後に、画像形成装置3の制御部86は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、画像形成装置3の制御部86は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである画像形成装置3の制御部86の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記画像形成装置3に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、画像形成装置3を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。