JP4787471B2 - 脳機能亢進剤 - Google Patents

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Description

本発明は、生体内でノルエピネフリン、エピネフリン、ドーパミン、セロトニン等の神経伝達物質の放出を亢進させて脳機能の亢進を行う脳機能亢進剤に関する。
従来より、柑橘類の精油は、精神ストレスの軽減作用が期待され、リラクゼーションを目的とするアロマセラピー等に広く利用されている。これらの精油は、嗅覚刺激を介した短時間でのリラックス効果以外にも、飲食品等の形態でその香気成分を摂取した場合に、肺や腸管等を介して生体内に吸収され、精神活動に大きな影響を及ぼすことが期待されている。
例えば特許文献1には、フェンネルオイル、グレープフルーツオイル、ペッパーオイル、ヒソップオイル、セージオイル、エストラゴンオイル、ユーカリオイル、ローズマリーオイル、シンナモンオイル、クローブオイル、イランイランオイル、ジンジャーオイル、ゼラニウムオイル及びオリバナムより選ばれる1種又は2種以上を含有する香料組成物が開示されている。この香料組成物は、交感神経の活性化、痩身作用及び記憶力向上を引き起こすようになっている。
即ち、この特許文献1では、これらオイルの香りを被験者に嗅がせて脈動間隔や血圧ゆらぎを周波数解析する試験が行われ、交感神経活性の上昇効果が確認されている。また、同特許文献1では、ペッパーオイルやグレープフルーツオイルの香りを被験者に嗅がせた後に採血し、血中カテコールアミン類の濃度を測定したところ、その血中濃度が高められており、交感神経活動が活性化されていたことが確認されている。また、同特許文献1では、ラットの皮下組織にノルアドレナリンを添加することにより、エネルギー消費により体重減少を引き起こすことで知られる脱共役蛋白質−3の発現が高められたことも確認している。そして、これらのオイルに共通した有効成分としてリモネン、ビネン、ミルセン、ベンジルベンゾエート等が挙げられている。
一方、特許文献2には、ペリラアルデヒド(perilla aldehyde)及びペリラアルコール(perilla alcohol)を含有する精神高揚用香料組成物が開示されている。この特許文献2では、パネルとしての健康な成人女性の鼻先に、ペリラアルデヒド、ペリラアルコール、3−メトキシ−5−メチルベンゼン(DMMB)、又はレモンオイルを含む1%エタノール溶液を載置した状態で、随伴性陰性変動(Contingent Negative Variation;CNV)試験を実施している。その結果、ペリラアルデヒドがレモンオイルよりも高い精神高揚効果が認められた。さらに、この精神高揚効果は、ペリラアルデヒドとペリラアルコールとの混合溶液で相乗的に高められたことが確認されている。
特開2002−265977号公報 特開2003−119491号公報
ところが、前記特許文献1では、血中カテコールアミン類濃度の上昇が前記有効成分によるものであると直接的に証明された訳ではない。また、前記特許文献2では、CNV試験によって、注意、期待、予期等の心理過程や意識レベルの変動と連動する脳の緩除な電位変動を測定しただけに過ぎない。
本発明は、本発明者らの鋭意研究により、リモネン及びその代謝物を実験動物の生体内に投与したところ、神経伝達物質の放出が血液、肝臓及び脳組織内で亢進されたことを直接的に証明した結果なされたものである。その目的とするところは、神経伝達物質の放出を亢進する効果に優れた脳機能亢進剤を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の脳機能亢進剤の発明は、リモネン又はその代謝物を有効成分として含有し、神経伝達物質としてセロトニンの放出を亢進する作用を有することを要旨とする。
請求項2に記載の脳機能亢進剤の発明は、ペリラ酸又はペリラアルコールを含有し、神経伝達物質としてセロトニンの放出を亢進する作用を有することを要旨とする。
請求項3に記載の脳機能亢進剤の発明は、S−リモネン、S−ペリラ酸又はS−ペリラアルコールを含有し、神経伝達物質としてセロトニンの放出を亢進する作用を有することを要旨とする
本発明によれば、神経伝達物質としてセロトニンの放出を亢進する効果に優れた脳機能亢進剤を提供することができる。
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
実施形態の脳機能亢進剤(神経機能亢進剤)は、リモネン又はその代謝物からなる有効成分を含有している。この脳機能亢進剤は、生体内に投与することにより神経伝達物質としてセロトニンの放出を亢進させて脳機能の亢進(活性化)を行う作用を有している。神経伝達物質としては、カテコールアミン類やインドールアミン類等のモノアミン系の神経伝達物質が挙げられ、具体的にはノルエピネフリン(NE)、エピネフリン(E)、ドーパミン(DA)、セロトニン(5HT)等が挙げられる。
リモネン(limonene)は、C1016(分子量136.24)の単環式モノテルペン炭化水素であり、レモン様香気を有する液体である。リモネンには、R−リモネン(D−リモネン)及びS−リモネン(L−リモネン)の互いに鏡像関係にある光学異性体が存在している。R−リモネンはレモン等の柑橘類の精油に高含有され、S−リモネンはラズベリー等のベリー類の精油に含有されている。このリモネンは、生体内で代謝されると、ペリラ酸を経てペリラアルコールを生成する。即ち、前記リモネンの代謝物としては、ペリラ酸及びペリラアルコールが挙げられ、ペリラアルデヒドも挙げられる。
ペリラ酸(perillic acid 又は perilla acid)は、R−ペリラ酸及びS−ペリラ酸の互いに鏡像関係にある光学異性体が存在している。ペリラアルコール(perillyl alcohol 又は perilla alcohol)は、R−ペリラアルコール及びS−ペリラアルコールの互いに鏡像関係にある光学異性体が存在している。ペリラ酸はリモネンよりも神経伝達物質の放出亢進作用が高く、ペリラアルコールはペリラ酸と同等又はそれ以上の神経伝達物質の放出亢進作用を有する。また、これらリモネン及びその代謝物はいずれも、R−型よりもS−型の方が神経伝達物質の亢進作用が高い。なお、下記化1にリモネン及びその代謝物の構造を示す。
Figure 0004787471
ドーパミン(dopamine;4−(2−アミノエチル)−1,2−ベンゼンジオール)は、L−チロシンを原料に生合成される神経伝達物質であり、快・不快等の情動、注意、意欲、運動調節等に関与している。このドーパミンは、過剰だと幻覚、幻聴、妄想(精神分裂病に似た症状)等の症状を引き起こし、不足するとパーキンソン症状が起こりやすくなる。また、注意欠如・過運動症候群(ADHD)との関連も示唆されている。このため、生体内でドーパミンの放出を亢進させることによって、例えば、パーキンソン症状の改善効果、注意欠如改善効果等の優れた生理活性又は薬理活性効果が発揮され得る。このドーパミンは代謝されて3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)、3−メトキシチラミン(3MT)を生成する。
ノルエピネフリン(norepinephrine;4−(2−アミノ−1−ヒドロキシエチル)−1,2−ベンゼンジオール)は、ノルアドレナリン(noradrenaline)とも呼ばれ、ドーパミンを原料に生合成される神経伝達物質であり、ストレス反応、注意、不安、学習や薬物依存等に関与している。このノルエピネフリンは、交感神経の伝達物質として知られ、ストレスを受けると闘争からの回避行動を引き起すことが知られている。また、ストレスにさらされた場合にはノルエピネフリンが減少し、それを繰り返すと受容体の感受性が上昇して小さなストレス刺激に対しても過敏に攻撃・逃避反応をするようになる。このノルエピネフリンは、過剰だと躁状態が起こりやすく、不足すると意欲の低下が起こりやすい。このため、生体内でノルエピネフリンの放出を亢進させることによって、軽度のうつ状態の改善効果、交感神経増強によるダイエット効果等の優れた生理活性又は薬理活性効果が発揮され得る。
エピネフリン(epinephrine;4−[1−ヒドロキシ−2−(メチルアミノ)エチル]−1,2−ベンゼンジオール)は、アドレナリン(adrenaline)とも呼ばれ、ノルエピネフリンを原料に生合成される神経伝達物質であり、血糖上昇、心拍出力増加、末梢血管抵抗減少等に関与している。
セロトニン(serotonin;5−ヒドロキシトリプタミン)は、L−トリプトファンを原料に生合成される神経伝達物質であり、睡眠・覚醒の調節、情動抑制(感情の安定)、他の神経系の統制等に関与している。このセロトニンは、過剰だとセロトニン症候群(錯乱、発熱、発汗等)が起こりやすく、不足するとうつ病やてんかん発作になりやすい。このため、生体内でセロトニンの放出を亢進させることによって、抗うつ効果、抗てんかん効果、抗ストレス(癒し)効果等の優れた生理活性又は薬理活性効果が発揮され得る。また、セロトニンの薬理作用としては、血管、腸管、気管支等の平滑筋を収縮させる平滑筋収縮作用(ほとんどの血管を収縮させるが骨格筋の血管に限って拡張させる)、中枢神経系での神経伝達物質(原則として抑制性に働くが興奮性に働く場合もある)としての作用、痛覚神経の末端を刺激する作用、循環器系に対する血圧調節作用等が挙げられる。このセロトニンは代謝されて5−ヒドロキシインドール酢酸(5HIAA)を生成する。
この脳機能亢進剤は、注射等により生体内に投与されるのが好ましい。また、この脳機能亢進剤は、嗅覚器官を通して投与(アロマテラピー等)する方法、皮膚から吸収させる方法、又は飲食品等の形態で経口摂取してもよく、この場合でも注射による投与の場合と全く同様の効果が発揮され得る。即ち、この脳機能亢進剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飲食品(健康食品)として利用され得る。また、この脳機能亢進剤は、香水、お香、ソープ類、キャンドル、室内芳香剤のような香料又は雑貨類に添加することも可能である。
従って、本実施形態の脳機能亢進剤は、リモネン又はその代謝物からなる有効成分を含有していることから、生体内に投与することにより神経伝達物質としてセロトニンの放出を亢進する作用を有しており、特に脳内でのセロトニンの放出を亢進する作用に優れている。このため、この脳機能亢進剤を生体内に投与することによって、身体的、精神的に様々な良好な生理活性又は薬理活性効果を発揮させることができる。さらに、前記有効成分としてリモネンの代謝物を含有している場合には、リモネンを含有する場合よりも神経伝達物質の放出を亢進させることが可能である。
<リモネン代謝物の測定>
実験動物としてウィスター系クリーンラット(12週齢の雄、体重(B.W.)=250g±10g;日本SLC社製)を用い、市販飼料(CE−2;日本クレア社製)及び水道水にて2週間予備飼育した。予備飼育後のラットにR−リモネン(シグマ社製)を0.5μl/g・B.W.の量(各個体約110〜130μl)を腹腔内投与した。投与したラットは30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、9時間後、12時間後にそれぞれ堵殺し、血清、肝臓及び脳組織を摘出した。脳組織の摘出の際には、断頭した頭部を10〜20分氷の中に漬け、脳組織中の血液をできるだけ脱血した後に脳組織全体の摘出を行って試験に供した。
上記の方法で採取した血液1mlを取り3000rpmで10分間遠心し上清の血漿を回収した。得られた血漿は、予めメタノールで洗浄し水で馴化させたC18固相カラム(ボンドエルートC18(6ml):GLサイエンス社製)に通し樹脂に吸着させた後、10mM酢酸アンモニウム水溶液15mlを通し洗浄を行った。洗浄したカラムにメタノール0.5mlを通し、リモネン及びその代謝物の回収液を得た。また、脳組織及び肝臓については、各臓器重量を計測し、同重量の生理食塩水を加え超音波破砕機にて組織の破砕を行った。得られた組織溶液を2g取り3000rpmで10分間遠心し上清を回収した。得られた上清は血漿と同様の方法でC18固相カラムを用い、リモネン及びその代謝物の回収液を得た。上記の方法で得られた血清、肝臓及び脳組織の回収液を、必要に応じ脱抱合処理し、下記HPLC条件1で分析した。
(HPLC条件1)
システム;Shimadzu LC10AD System、カラム;Shimadzu LUNA 5u C18 (2.0φ×250mm) 、サンプル注入量;10μl、流速;0.2ml/分、カラム温度;40℃、UV Detector;λ=210nm、PDA Detector;λ=190−370nm
溶出液A=アセトニトリル(TFA0.1%)、溶出液B=水(TFA0.1%)
溶出方法;0−5分 A:B=60%:40%
5−10分 A:B=60%:40% → A:B=70%:30%(グラジエント溶出)
10−15分 A:B=70%:30%
15−25分 A:B=70%:30% → A:B=80%:20%(グラジエント溶出)
25−35分 A:B=80%:20%
35−45分 B=100%
R−リモネンを投与してから1,2,3,4時間後に堵殺したラット血漿(blood)からの回収液をHPLC分析した結果をそれぞれ図1(a)〜(c)及び図2(a)に示す。また、R−リモネンを投与してから4時間後に堵殺したラット肝臓(heaptic)、脳組織(brain)からの回収液をHPLC分析した結果をそれぞれ図2(b)及び(c)に示す。なお、図1,2中には、リモネンと、その代謝物であるペリラ酸及びペリラアルコールの精製品をそれぞれ上記HPLC条件1にてHPLC分析したときに各成分が溶出された時間に各成分の名称が示されている。一方、R−リモネンを投与してから1,2,3,4時間後における血漿中又は脳組織中のリモネン代謝物(ペリラ酸、ペリラアルコール)濃度の経時変化を図3のグラフにまとめた。なお、図3に示す各分析値は4個体以上のラットについて行った試験結果の平均値と標準偏差を示している。
図1,2より、投与したR−リモネンは血漿中にほとんど見られず、代謝物の形で存在していることが明らかとなった。ラットでの主な代謝物としてはペリラ酸及びペリラアルコールが検出され、いずれも血漿中で数ppm〜数十ppmに達していることが確認された。肝臓ではやや特異的なピークが見られたものの、血漿と脳組織ではピークパターンも似ており、脳内にも血漿中とほぼ同じ濃度で移行していることが示唆された。リモネンが脳組織にどのような形で移行しているかは、これまで報告がないことから新たな知見であり、またデータは示さないがブレインマイクロダイアリシスによる脳室内の還流液からペリラ酸が検出されたことからも、リモネンが代謝されペリラ酸やペリラアルコールになった形で脳へ移行していることが伺えた。
これらの結果から、リモネンを生体内に投与した直後は、一部そのままの形で脳に達する可能性はあるものの、脳への作用はペリラ酸やペリラアルコールの形で行われている可能性が高いことが判った。また、データは示さないが、リモネンの代謝物の血中濃度は、投与3〜6時間後ごろに最高値に達し、その後は徐々に濃度が減少して行くことが判った。脳におけるこれら代謝物の濃度も血中濃度とほぼ同様の濃度推移で動いていることが明らかとなった。次に、リモネンを投与した際に、脳での神経伝達物質放出にどのような影響を及ぼすか検討すべく、ペリラ酸やペリラアルコールの影響を中心に、下記実施例2に記す脳組織スライスを用いた検討を実施した。
<脳組織スライスからの神経伝達物質放出量の測定1(放出量亢進の確認)>
実験動物としてウィスター系クリーンラット(15−18週齢の雄、日本SLC社製)を用い、市販飼料CE−2及び水道水にて1〜3週間予備飼育した後、断頭、堵殺しすばやく脳組織を摘出し、該脳組織から大脳皮質(CC)を得た。この大脳皮質をTissue Chopperにて厚さ0.3mmにスライスした後、予め酸素ガスで十分飽和したKrebsバッファー(37℃)に浸漬させた。Krebsバッファーは脳組織液を模した組成の水溶液であり、121.0mM NaCl、1.3mM CaCl2、1.0mM NaH2PO4、13.5mM KCl、1.2mM MgCl2、1.2mM NaHCl2及び10.0mM Glucose(すべて和光純薬社製)の組成からなるとともに、50μM L-Tyrosine(片山化学工業製)、10μM Nomifensine maleate(フナコシ製)、10μM L-Tryptophan(関東化学社製)及び50μM Imipramine(シグマ社製)が添加されている。L-Tyrosineはドーパミン、ノルエピネフリン及びエピネフリンを生合成するための原料、Nomifensine maleateはドーパミンの脳細胞への再取り込み阻害剤、L-Tryptophanはセロトニンを生合成するための原料、Imipramineはセロトニンの脳細胞への再取り込み阻害剤として添加されている。
Krebsバッファーに浸漬した各大脳皮質のスライスは、攪拌し十分洗浄した後に、Krebsバッファーごと数枚ずつエッペンチューブにとり分けた。各チューブは液量が1mlになるように調整した後に、R−リモネン、S−リモネン、R−ペリラアルコール、S−ペリラアルコール、S−ペリラ酸(すべてシグマ社製)、又は Hardcastleら(Biochemical pharmacology Vol.57, p801-809, 1999)の方法に従って合成したR−ペリラ酸を各化合物の終濃度が0.3%になるように添加した。なお、前記化合物(リモネン、ペリラ酸及びペリラアルコール)は水への溶解性が低いものが多いため、予めエタノールに溶解した上で添加した。よって、試験区として何も添加しないコントロール区(control)、各化合物の溶媒として利用した1%エタノールの区分(1% EtOH)も加え評価を行った。
各区分は各化合物の添加前、添加直後(0分)、添加15分後及び添加30分後にそれぞれ200μlずつサンプリング液を採取し、以下に示すHPLC条件2(HPLC−ECD法)にて分析を実施した。結果を図4に示す。なお、化合物添加15分後及び30分後のサンプリング液は、神経伝達物質の含有量でほぼ同様な結果が得られたため、図4には化合物添加15分後のサンプリング液を分析した結果を示す。分析した物質としては、ノルエピネフリン(NE)、エピネフリン(E)、ドーパミン(DA)、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)、セロトニン(5HT)、5−ヒドロキシインドール酢酸(5HIAA)、3−メトキシチラミン(3MT)である。また、図4に示す各分析値は6個体以上のラットについて行った試験結果の平均値と標準偏差を示している。
(HPLC条件2)
システム;Shimadzu LC10AD System、カラム;Eicom MA-5ODS-S(4.6φ×150mm)、サンプル注入量;10μl、流速;0.8ml/分、カラム温度;40℃、EC Detector;Apply Voltage=700mV
溶出液Cは、0.1M酢酸ナトリウムクエン酸バッファー(88%)、メタノール(12%)、30mg/L EDTA・2Na及び265mg/L オクタンスルホン酸ソーダ(いずれも和光純薬社製)を含有する。
溶出方法;メタノール:溶出液C=15%:85%(イソクラティックモード)
図4より、R−リモネンではNE,DA,5HT及び3MTの放出が亢進され、S−リモネンでは5HT及び3MTの放出が亢進された。R−ペリラアルコールではDA及び5HTの放出が亢進され、S−ペリラアルコールではNE,E,DOPAC及び5HTの放出が亢進された。R−ペリラ酸ではDA,DOPAC,5HT,5HIAA及び3MTの放出が亢進され、S−ペリラ酸ではDA,DOPAC及び5HIAAの放出が亢進された。
<脳組織スライスからの神経伝達物質放出量の測定2>
実験動物としてウィスター系クリーンラット(15週齢の雄、日本SLC社製)を用い、市販飼料CE−2及び水道水にて1〜3週間予備飼育した後、断頭、堵殺しすばやく脳組織を摘出した。脳組織は、大脳皮質(CC)、線条体(St)、海馬(Hip)、視床下部(Hyp)の各部位に分けた後、各部位をTissue Chopperにて厚さ0.3mmにスライスした。スライスされた各部位は、予め酸素ガスで十分飽和したKrebsバッファー(実施例2と同じ組成)に浸漬させた。
Krebsバッファーに浸漬した各スライスは、攪拌し十分洗浄した後に、Krebsバッファーごと数枚ずつエッペンチューブにとり分けた。各チューブは液量が1mlになるように調整した後、上記実施例2と同様に各化合物のそれぞれについて、終濃度が0.5%、0.3%、0.1%、0.05%又は0.005%になるように添加し、実施例2と同様にHPLC条件2にて分析を実施した。また、コントロール区及び1%エタノールの区分についても実施例2と同様に評価を行った。
なお、この脳スライス法による評価では、脳組織を摘出し実践に供試することから、脳組織を如何に良好な状態で壊死させずに実験を行えるかが重要なポイントであり、迅速な実験が求められる。今回、大脳皮質(CC)、線条体(St),海馬(Hip)、視床下部(Hyp)の4つの部位で試験を実施したが、大量かつ容易に得られる大脳皮質以外は、スライス数が多く取れないことや細胞の壊死が激しいことから、安定的な結果が得られにくいことが判った。従って、今回は大脳皮質のみを用いて検討した。それらの結果を図5〜9に示す。
図5〜9に示すように、0.005〜0.5%までの各化合物濃度における脳組織スライスからの神経伝達物質の放出を検討した結果、リモネンが代謝されペリラ酸やペリラアルコールの形になることで非常に強い神経伝達物質放出の亢進が認められた。リモネンの立体異性体であるR−リモネンとS−リモネンは神経伝達物質放出に関してどちらも同じような効果を示したが、S−リモネンの方がR−リモネンよりも強い作用を示す傾向があった。この傾向は代謝された形でも同様で、ペリラ酸やペリラアルコールの形になっても、S−型の方がR−型よりも強い作用を有していた。ペリラ酸とペリラアルコールはどちらも同程度の強さであったが、ペリラアルコールの方が若干強い効果を有していた。
放出された各神経伝達物質について詳細に見ると、まず、ノルエピネフリン(NE)では0.1%の濃度のR−リモネン、S−リモネン、S−ペリラ酸及びS−ペリラアルコールによる放出の亢進が認められた。よって、これら4つの化合物が0.1%以上の濃度でノルエピネフリン放出の亢進作用があることが示された。また、これら4つの化合物以外でも0.3%以上の濃度でノルエピネフリン放出の亢進作用があることが示された。同様に、エピネフリン(E)の場合、S−ペリラアルコールが0.1%以上、S−リモネンが0.3%以上、R−リモネンが0.5%以上の濃度で、それぞれエピネフリン放出の亢進作用があることが示された。
ドーパミン(DA)の場合、ペリラアルコールが0.05%以上の濃度で放出の亢進が確認された。また、ドーパミンの代謝物であるDOPACではS−ペリラアルコール及びS−リモネンで放出の亢進が確認されていることから、これら化合物が0.05%以上の濃度でドーパミン放出の亢進作用があることが示された。これら2つの化合物以外でも0.1%以上の濃度でドーパミン放出の亢進作用があることが示された。
セロトニン(5HT)では、0.1%以上の濃度のリモネン、ペリラ酸及びペリラアルコール(いずれもR−型、S−型共に)によって放出の亢進が確認された。また、セロトニンの代謝物である5HIAAでは、0.005%以上の濃度のR−リモネン、S−リモネン、R−ペリラアルコール及びS−ペリラアルコールによって放出の亢進が確認されていることから、これら化合物が0.005%以上の濃度でセロトニン放出の亢進作用があることが示された。また、R−ペリラ酸及びS−ペリラ酸では0.1%以上の濃度でセロトニン放出の亢進作用があることが示された。これらの結果を下記表1にまとめた。
Figure 0004787471
また、本実施例3で得られた各試験結果について、各化合物を脳組織スライスに添加したときに放出された神経伝達物質の放出量を、1%エタノールを脳組織スライスに添加したとき(1%エタノールの区分)に放出された同神経伝達物質の放出量で割ることにより、1%エタノールの区分に対する各神経伝達物質の放出倍率を求めた。この放出倍率は、1.0より高いときには神経伝達物質の放出が亢進されたことを表す。結果を図10及び図11(a)〜(d)に示す。
以上の結果から、リモネン及びその代謝物を投与することにより、脳内での神経伝達物質の放出が効果的に亢進されることが明らかとなった。その亢進作用はセロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリンで特に高いことから、セロトニン放出不足が一因とされているうつ病やてんかんへの治療効果が期待でき、また現代社会で益々大きな問題となっているストレスや睡眠不足等に対してもセロトニンによる「癒し」の効果が期待される。また、ドーパミンについては、パーキンソン病や注意力散漫、意欲低下等の症状においてこれらの摂取による改善が期待できる。ノルエピネフリンについてもうつ病の改善や、意欲低下等の症状の改善が期待される。また昨今、ノルエピネフリンの亢進により交感神経が優勢になることで体内の脂肪燃焼が促進されダイエットにつながるといった報告もあることから、脂肪燃焼促進作用等の効果も期待される。
なお、今回の脳スライス法は様々な化合物の神経伝達物質に与える影響を簡便に評価することができる一方で、脳神経細胞の生存維持が難しいことから、細胞(スライス)数がかなり必要であり、また実際に生体内で作用する濃度よりもより高濃度でないと有意差が出にくいといった欠点もある。こういった点からも、実際の生体内では、今回の試験で有意差が出た濃度よりももっと低濃度でも亢進作用が十分発揮されていると考えられる。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 脳機能亢進剤の有効成分としてリモネンを含む柑橘類やベリー類等の精油を用いてもよい。このように構成した場合でも神経伝達物質の放出を亢進する効果に優れている。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 脳内での神経伝達物質の放出を亢進する作用を有することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の脳機能亢進剤。
・ 柑橘類の精油を有効成分として含有し、神経伝達物質の放出を亢進する作用を有することを特徴とする脳機能亢進剤。このように構成した場合、神経伝達物質の放出を亢進する効果に優れている。
(a)〜(c)はそれぞれ、実施例1のR−リモネン投与1時間後、2時間後及び3時間後のラット血漿をHPLC分析した結果を示すクロマトグラム。 (a)〜(c)はそれぞれ、実施例1のR−リモネン投与4時間後のラット血漿、肝臓及び脳組織をHPLC分析した結果を示すクロマトグラム。 実施例1のラット血漿及び脳組織中のリモネン代謝物濃度の経時変化を調べた結果を示すグラフ。 実施例2の脳組織スライスからの神経伝達物質放出量の測定結果を示す。 実施例3の脳組織スライスからの神経伝達物質放出量の測定結果を示す。 実施例3の脳組織スライスからの神経伝達物質放出量の測定結果を示す。 実施例3の脳組織スライスからの神経伝達物質放出量の測定結果を示す。 実施例3の脳組織スライスからの神経伝達物質放出量の測定結果を示す。 実施例3の脳組織スライスからの神経伝達物質放出量の測定結果を示す。 実施例3の神経伝達物質の放出倍率を示す棒グラフ。 (a)〜(d)はいずれも実施例3の神経伝達物質の放出倍率を示す。

Claims (3)

  1. リモネン又はその代謝物を有効成分として含有し、神経伝達物質としてセロトニンの放出を亢進する作用を有することを特徴とする脳機能亢進剤。
  2. ペリラ酸又はペリラアルコールを含有し、神経伝達物質としてセロトニンの放出を亢進する作用を有することを特徴とする脳機能亢進剤。
  3. S−リモネン、S−ペリラ酸又はS−ペリラアルコールを含有し、神経伝達物質としてセロトニンの放出を亢進する作用を有することを特徴とする脳機能亢進剤。
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