従来、各種画像形成装置は、シートに画像を形成するようになっている。具体的には、電子写真方式、インクジェット方式、熱転写方式などのいずれかの方式を採用したプリンタ、複写機、ファクシミリ等がある。
電子写真方式を採用した画像形成装置は、トナーを現像剤に使用しており、静電的な画像形成部によってトナー像をシートに転写した後、定着器によってシートを加熱及び加圧してトナー像をシートに溶融固着させて画像を形成するようになっている。
また、インクジェット方式を採用した画像形成装置は、インクを現像剤に使用しており、機械的、又は熱的反応を利用して微小なオリフィスを有するノズルを多数有する記録ヘッドからインクをシートに高速で吐出する画像形成部によって、シートに画像を形成するようになっている。
さらに、熱転写方式を採用した画像形成装置は、インクリボンを現像剤に使用しており、サーマルヘッドによってインクリボンからインクをシートに熱転写させる画像形成部によって、シートに画像を形成するようになっている。
画像形成装置に使用されるシートには、一般的に普通紙、はがき、ボール紙、封書、特殊な表面処理を施されたOHP用の樹脂製シート等、多種多様の種類がある。また、画像形成装置は、世界中に普及してきたため、各地で使用されるどのようなシートに対しても良好な画像を形成できるようになっていなければならない。特に、シートの表面粗さと厚さは、画質や画像形成に必要なエネルギー消費量に大きな影響を与える非常に重要な要素である。
例えば、電子写真方式を採用した画像形成装置の後述する定着器12(図13参照)において加熱源からシートの表面へ熱を伝える加熱効率は、表面が平滑なシート(以下、「平滑紙」と言う)と、粗いシート(以下、「ラフ紙」と言う)とでは、シートの表面粗さ、シートの摩擦係数、熱伝導率等の表面性の相違による熱の伝わりくさの差(熱抵抗差)によって異なっている。このため、電子写真方式を採用した画像形成装置は、平滑紙で適正な定着温度でラフ紙にトナー像を定着しても定着不足を招くため、ラフ紙に対してはより高い温度でトナー像の定着を行う必要がある。
このため、現状の画像形成装置は、ラフ紙にトナー像を定着することができる温度を標準の定着温度に設定してあり、平滑紙に対しては、常に過剰な温度でトナー像を定着している。さらに、より粗いシートに対してはさらに高い定着温度が必要である。このようなシートに画像を形成することを想定して、画像形成装置には、ユーザに定着温度の設定を変更させる選択モードを設けてあるタイプのものがある。
しかし、このように、使用するシートの種類に応じて、その都度、定着条件を切り替えると、ユーザにモード選択を強いることになり、従来の画像形成装置は、操作が面倒であった。
一方、インクジェット方式を採用した画像形成装置は、使用されるシートが平滑紙の場合と、ラフ紙の場合とでは必要なインクの量が異なっている。すなわち、インクジェット方式を採用した画像形成装置は、平滑紙で適正なインク量でラフ紙上に画像形成しても、ラフ紙の厚さ方向にインクが浸透して濃度不足を招くため、平滑紙より多くのインクを吐出する必要がある。このため、現状の画像形成装置では、これらの表面の粗さが異なるシートに対してユーザが、予め、そのシートの種類を画像形成装置に認識させる作業を行う必要があった。
また、熱転写方式を採用した画像形成装置は、使用されるシートが平滑紙の場合と、ラフ紙の場合とでは必要な電力量が異なっている。すなわち、熱転写方式を採用した画像形成装置は、平滑紙で適正な電力量でラフ紙上にインクを熱転写しても熱が伝わりにくいので、インクの転写性が低下して画像に濃度不足を招いていた。
以上のように、何れの方式を採用した画像形成装置においても、シートの表面粗さによる画像の画質の低下を防ぐため、余分な熱、インク及び電力を消費していた。これらの問題を防ぐためには、シートの表面粗さに応じてこれらの条件を切り替えることが必要である。このように条件を切り替えるため、ユーザに設定変更の手間を強いることなく、自動的にシートに種類を識別するシート識別装置が使用されている。
シート識別装置は、例えば、比較的安価、かつ高速にシートの表面粗さの検知ができるように、シートの表面に当接する当接部材(以下、プローブと言う)がシート表面との摺擦によって生じる振動や摺擦音等の物理的現象を検知部で検知して、シート同士で異なる検知量の差を表面粗さの差として検知するようになっているものがある。具体的なシート識別装置として、プローブの振動をプローブに設けた圧電素子で電気信号に変換して検知するようになっているものがある(特許文献1及び特許文献2参照)。
しかし、特許文献1,2には、実際にシートの表面に当接させるプローブに必要な具体的構成条件は詳細に開示されていない。すなわち、単純な直線状のプローブが搬送方向の上流側で一方の端部を固定されて、下流側の先端をシートに、斜めから搬送方向に逆らわないように当接させる構成が示されているだけであり、高い精度で検知することが困難である。
また、上記特許文献の内容はあくまでシートの表面粗さの検知のみを対象としているが、実際の画像形成装置における画像形成には使用されるシートの厚さや熱容量も重要である。
電子写真方式のプリンタや複写機は、熱容量の高いシートほど表面に加えられた熱を内部に拡散しやすくなり、熱の伝わりくさ(熱抵抗)が同じでも表面温度が上がりにくくなるという現象があるため、トナー像をシートに定着する定着工程においてシートの表面粗さ、すなわち、接触熱抵抗に相当する物理量を事前に検知して定着温度制御を行うだけでは不充分であり、より広範囲な種類のシートに対してより高精度に定着温度の制御を行うには、使用されるシートの坪量や厚さ、すなわち、熱容量に相当する物理量をも検知しておく必要がある。
また、他の方式の画像形成装置に関しても、使用するシートの坪量や厚みの差を画像形成の前に知ることは重要であり、例えば、画像を形成するサーマルヘッドによってインクリボン上のインクをシートに熱転写させる熱転写式プリンタでは、やはりシートの熱抵抗のほかに熱容量の差が消費電力に大きく影響していた。
また、インクジェット方式の画像形成装置は、表面粗さが粗いシートほどインクがシートに吸収されて画像濃度が低下しやすいことに加えて、同じ表面性のシート同士では厚みが厚いほど厚み方向へのインクの拡散が増えてやはり画像濃度が低下しやい傾向にある。また、逆に、薄いシートに対してはインク量が多すぎるとシートの裏へのインクのにじみ、裏移りなどが懸念される。
さらに、その表面に光沢やインクのにじみを調整するため、樹脂製のコート層を設けたり、樹脂製のシートを用いたりするなど特殊なシートを使用する場合がある。この場合、これらのシートは、他のシートと画像形成に要する適切なインクの吐出量が異なる。このため、そのようなシートを使用する際には、事前にそのシートに合ったモードに画像形成装置を切り変える必要がある。
ここで、事前にこれらのシートの種類を検知できるようにすると、ユーザの手間を省くことができる。しかし、これらの特殊なシートの識別には表面性の検知だけでは不充分であり、より確実にシートの種類を識別するには、剛性や厚さ、坪量など多角的な情報に基にシートを識別する必要がある。
本発明者は、圧電素子を用いたシート識別装置において、シートの測定表面の識別性能を改善して実用化するため、プローブの先端部を、搬送平面上を搬送方向前後に振動できるようにし、かつシート搬送方向に対して逆らって測定表面に食い込む角度に設定すると、非常に高い識別性能が得られることを見出した。
そこで、本発明者は、このような構造を、シートの搬送を阻害することなく安価に実現する構成として、短冊状の板金を少なくとも、例えば2箇所折り曲げてS字形状にしたプローブを回動軸に回動可能に設けた構成のS字型表面性検知センサを考え出した(特許文献3参照)。そのS字型表面性検知センサは、図13に示した画像形成装置20の、給紙カセット7aからのシート搬送経路に設けられた転写上ガイド9に取り付けられている。
なお、図13において、感光ドラム2は、露光器3からのレーザ光によって画像に相当する潜像が形成された後、その潜像が現像器4によってトナー現像されてトナー像が形成される。感光ドラム2に形成されたトナー像は、シートに、転写ローラ6によって転写され、フィルム加熱型定着器12でシートが加熱加圧されることによって定着される。
シートの種類を識別するためのシート識別装置を構成するS字型表面性検知センサを図14(a)(b)に示す。図14(a)はS字型表面性検知センサの正面図である。図14(b)はS字型表面性検知センサの平面図である。
S字型表面性検知センサ15は、シートに所定の当接圧で当接する当接部材であるS字型のプローブ15aと、プローブ15aの平坦部に設けられた圧電素子15bと、プローブ15aが取り付けねじ15dにより取り付けられたプローブホルダ15cと、プローブホルダ15cが固定され、シート搬送方向に対して直交し、かつ搬送平面に平行なプローブ回動軸15eなどを備えている。プローブ15aの先端部は、プローブ回動軸15eを中心として搬送平面に対して約0.1Nないし約0.28N程度の当接圧で不図示の加圧部材により搬送平面板15hに加圧当接されている。
プローブ回動軸15eは、軸受け15fに回転自在に支持されている。軸受け15fは、転写上ガイド9を兼ねるセンサ保持板15gの上面に設けられている。搬送平面板15hは、搬送平面としてのシート搬送路上に設けられている。
図15(a)に示すように、S字型表面性検知センサ15の下流側には、下流側シート折り曲げ搬送路16を設けてある。下流側シート折り曲げ搬送路16は、シート搬送路のシート搬送方向下流に下流側先端部が下方に落ち込むように形成された上ガイド板延長部16aと下ガイド板延長部16bとで構成されている。下流側シート折り曲げ搬送路16を設けると、プローブ15aの先端を通過するシートPは、下流側シート折り曲げ搬送路16に沿って搬送平面板15hにより構成される水平搬送平面に対して下方に折り曲げられながら搬送されるので、破線で示すように上方、すなわち、プローブ15a側に撓んでループを形成(屈曲変形)してプローブ15aの先端を押し上げる。
この場合、シートの剛性が高くなるほど、ループの高さが高くなり、ループがプローブ15aを押圧する力も強くなり、プローブ15aとシートPとの間の摩擦が大きくなる。なお、剛性とは、いわゆる、シートの腰の強さのことである。
また、剛性の高いシートが搬送されてきたとき、不図示の加圧部材によって下方に押されているプローブ15aは、加圧部材の加圧力に抗して高い位置に押し上げられる。そして、一度高く跳ね上げられたプローブ15aは、シートの上面に落下する。このときの衝撃力は、圧電素子15bによって電気信号に変換される。衝撃力が大きい程、電気信号が大きくなる。
このように、シートが搬送されてくると、S字型表面性検知センサ15のプローブ15aには、主に、摩擦力と衝撃力との2通りの力が加わるので、結果としてセンサの検知信号にシートの剛性情報を重畳させることができ、シート表面の粗さに加えてシートの厚みや坪量と相関の高いシートの剛性を同時に検知することができる。
図15(b)は、S字型表面性検知センサ15の検知性能を説明するための折れ線グラフである。1つのグラフ中には、フィルム加熱型定着器12(図13参照)でシートにトナー像を定着させたときの各種シートに対する最適定着温度の違いと、表面性のみを検知させる構成を用いた際のセンサの各種シートに対する検知信号レベルの違いと、さらにシートの剛性を検知させる構成を用いた際のセンサの検知信号レベルの各種シートに対する違いを示してある。グラフの横軸には、実際に使用される使用頻度の高い種類のシートを12種類選び、坪量の小さなシートを左から右へと順にラフ紙と平滑紙を交互に並べ、最後にOHP用紙(以下、「OHT」と言う)を示してある。
なお、図15(b)において、各シート名称の大文字の記号部が同じものは同じ表面性を示している。大文字Aで示されるAタイプのシートは微細な凹凸が表面に均一に形成されているラフ紙である。大文字Bで示されるBタイプのシートは平滑紙である。大文字Cで示されるCタイプのシートは表面に波型の修飾が施されたラフ紙である。各シートの数字部は各シートの剛性と相関の高い坪量を示している。なお、表面性とは、シート表面の粗さ、滑り易さなどのシート表面の状態をいう。
図15(b)において、◆点でプロットされたS字型表面性検知センサを用いたシート表面の検知結果は、ラフ紙と平滑紙の大小関係を十分なマージンで識別可能であることを示している。しかし、■点でプロットされたシートの最適定着性との相関を比較すると、坪量の大きな平滑紙に対しては定着温度を上げたほうが良い傾向にあるため、この表面性の結果のみで定着制御を行うことは不十分であることがわかる。一方、搬送路に下流側シート折り曲げ搬送路16を設けてシートの剛性検知機能を付与した場合の▲点でプロットされた折れ線と最適定着性の折れ線の相関は高く、このような検知特性を用いることで、ラフ紙と平滑紙及び坪量差を十分な信号マージンで識別することが可能であることがわかる。
以上のように、画像形成装置は、S字型表面性検知センサ15を用いることによって、搬送されてきたシートの表面性及び剛性差の検知を少なくとも定着工程前に完了して定着制御を切り替えることができるので、使用するシートの種類をユーザが気にすることなく、かつ、画像不良や不要な電力の消費を少なくすることができる。
特開2000−314618号公報
特開2000−356507号公報
特開2003−097909号公報
以下、本発明の実施形態のシート識別装置と、この装置を装置本体に備えた画像形成装置としてのプリンタとを図に基づいて説明する。なお、説明文で取り上げている数値は、おおよその参考数値であって、本発明を限定するものではない。
図10は、画像形成装置として電子写真方式を採用したプリンタの基本構成を示す概略図である。このプリンタ100は、トナーを現像剤としてシートに画像を形成するようになっている。帯電ローラ101は、感光ドラム102の表面を一様に所定の極性に帯電させる。その後、露光器103は、レーザ光によって露光した感光ドラム102の領域のみを除電して感光ドラム102上に潜像を形成する。この潜像は、現像器104のトナー105によって現像されてトナー像として顕像化される。
一方、画像が記録されるシートPは、給紙カセット121から給紙ローラ対123(下ローラはパッドでも良い)によって垂直搬送ローラ対124まで先端部が搬送された後、この垂直搬送ローラ対124によって転写前搬送ローラ対125まで搬送される。また、シートPは、手差しトレイ122から給紙ローラ対123によって転写前搬送ローラ対125まで搬送される場合もある。そして、シートPは、転写前搬送ローラ対125によって支持板としての上ガイド板109a及び転写下ガイド板109bの間に沿って予め規定された進入角度で感光ドラム102と転写ローラ106との転写ニップ部まで搬送される。上ガイド板109a及び転写下ガイド板109bは、1対の案内板を構成している。感光ドラム102と転写ローラ106とは、画像転写手段を構成している。
上ガイド板109aには、後述するシート識別装置111を設けてある。シート識別装置111は、シートを識別する信号を制御手段としての制御部130(図3(b)参照)に送る。制御部130は、シートを識別する信号に基づいて、シートを識別し、そのシートに適した定着温度にするため後述する定着器112の温度管理を行う。
なお、シートPがシート識別装置111に搬送されて来るまでに接触した種々の部材との摺擦によってシートPの表面が帯電している可能性がある。このため、この転写前搬送ローラ対125から転写ニップ部までシートPが搬送されるまでの間には、静電的記録を行うに際して画像を乱す要因となる不要な帯電を取り除く除電ブラシ108が搬送中のシートPの背面側に接するように設けられて、接地されている。
そして、このように除電ブラシ108により除電されたシートPには、トナー105と逆極性の高電圧がシート背面の転写ローラ106に印加される。それとともに、シートPの裏面は、トナー105と逆極性に帯電される。感光ドラム102上のトナー像が静電的にシートPに引き付けられて、シートに転写され、保持し続けられる。
最後に、トナー像が転写されたシートPは、ニップ部を形成する加熱回転体113と加圧ローラ114とで構成される定着器112まで搬送される。シートPは、ニップ部で予め設定されている定着温度を保持するように加熱回転体113側に設けられたヒータによって温度制御されながら加熱及び加圧されてトナー像を定着される。トナー像を定着されたシートは、プリンタ100の外部に排出される。
なお、トナー像転写後の感光ドラム102の表面には、極性の異なるトナー等の付着物が僅かに残る。このため、転写後の感光ドラム102の表面は、クリーニング部110において、感光ドラム102の表面にカウンター当接されるクリーニングブレード110aによって付着物が掻き落とされて清掃される。表面が清浄になった感光ドラム102は、次の画像形成に備えて待機する。
定着器112は、熱効率と安全性を高めるため、加熱回転体113に、低熱容量の耐熱性樹脂フィルムを円筒状に加工してその表面に離型性層を形成した定着フィルムを使用している。加熱回転体113は、加熱回転体113と加圧ローラ114との定着ニップ部の内側からセラミックヒータが当接されて加熱されるようになっている。このため、フィルム加熱型定着器112は、近年の省エネルギ推進の観点から、ハロゲンヒータを内包する円筒状の金属を定着ローラとして使用する従来の熱ローラ方式に比べて熱伝達効率が高く、装置の立ち上がりも速いので、より高速の機種にも適用されるようになってきている。
(第1実施形態のシート識別装置)
図1は、本発明の第1実施形態に係るシート識別装置のシート搬送方向に沿った断面図である。
シート識別装置111は、圧電素子115bを有する弾性変形可能な当接部材としてのS字型のプローブ115aにシートが接触して通過するときのプローブ115aの振動を圧電素子115bが検知してシート識別部119(図3参照)でシートを識別するようになっており、プローブ115aがシートに接触する先端部115abと圧電素子115bとの間の位置で、シートを受け止めて案内するシート案内手段としてのシート搬送ガイド117と、シートに押圧されたプローブ115aを受け止める被衝突手段としての被衝突壁118aなどを備えている。
シート識別装置111は、上ガイド板109aに設けたS字型表面性検知センサ(以下、単に「検知センサ」と言う)115を備えている。検知センサ115は、後述する圧電素子115bや配線を保護するカバーと被衝突壁と兼用の保護カバー118を有している。保護カバー118も上ガイド板109aに設けられている。
検知センサ115は、シートに所定の当接圧で当接するS字型のプローブ115aと、プローブ115aの平坦部に設けられた圧電素子115bと、プローブ115aが取り付けねじ115dにより取り付けられたプローブホルダ115cと、プローブホルダ115cが固定され、シート搬送方向に対して直交し、かつ搬送平面に平行なプローブ回動軸115eと、プローブ回動軸115eを回転自在に支持する軸受け115fと、シート搬送ガイド117などを備えている。軸受け115fは、転写上ガイド109aを兼ねるセンサ保持板の上面に設けられている。
プローブ115aの先端部は、プローブ回動軸115eを中心として搬送平面に対して約0.1Nないし約0.28N程度の当接圧で不図示の加圧部材により下ガイド板109bに加圧当接されている。
また、プローブ115aや圧電素子115bを保護するカバーと被衝突壁と兼用の保護カバー118は、上ガイド板109aに対して約40度傾斜した被衝突壁118aを有している。上、下ガイド板109a,109bの下流側には、シートを下向きに案内する下流側シート折り曲げ搬送路116を設けてある。シート変形手段としての下流側シート折り曲げ搬送路116は、上ガイド板109aを下流側に下向きに延長した上ガイド板延長部116aと、下ガイド板109bを下流側に下向きに延長した下ガイド板延長部116bとで構成されている。
剛性の高いシートは、搬送されてくると下流側シート折り曲げ搬送路116の案内によって下方に屈曲変形、あるいは湾曲変形させられてループを形成される。シートは、ループの部分でプローブ115aの先端部115abを押して、プローブ115aをシート搬送ガイド117の下端以上の高さまで押し上げる。このとき、プローブ115aの折り曲げ部115aaが、約45度傾斜している被衝突壁118aに衝突する。
なお、保護カバー118とシート搬送ガイド117は、ポリオキシメチレン(POM)で形成されて、表面を滑らかに加工されている。また、下流側シート折り曲げ搬送路116は、19度の角度で下方に傾斜している。また、プローブ115aの厚みは0.15mmで、幅は4mmである。プローブ115aが進入している開口部109aaの寸法は、平面視6mm×6mmのほぼ正方形である。プローブ平坦部の長さは15mmである。圧電素子115bの厚さ、幅、長さは、0.2mm×3mm×6mmである。圧電素子115bは、プローブの折り曲げ部115aaの端部から2mm離れた場所に接着されている。
検知センサ115のシート搬送方向下流側に下流側シート折り曲げ搬送路116を設けてあるので、プローブ115aを通過したシートは、下流側シート折り曲げ搬送路116に沿って、下ガイド板109bの水平搬送平面より下方に屈曲変形、あるいは湾曲変形させられながら搬送される。シートは、このように下方に屈曲変形、あるいは湾曲変形させられるとき、上方、すなわち、プローブ側にループ(屈曲変形)してプローブ115aを下方より図中の太矢印Fup方向に押圧するようになる。
矢印Fup方向の押圧力は、搬送されるシートの剛性によって異なる。剛性が高いシートほど強い力でプローブ115aの先端部115abを持ち上げる。矢印Fup方向の押圧力が強いほど、プローブ115aの先端部115abとシートとの間の接触圧が高くなって摩擦力も強く作用する。すると、プローブ115aの振幅が大きくなり、圧電素子115bの変位と歪の量及び速度も増加するため、結果として検知信号も高くなる。しかし、シート搬送ガイド117があることによって、ループ高さが規制される。ある剛性以上の剛性の高いシートのループ高さは、全て同一に制約される。このため、検知センサ115は、シート同士の剛性差を検知することが困難になる。
そこで、検知センサ115は、保護カバーを有している。プローブ115aが剛性の高いシートによって強く跳ね上げられると、プローブ115aの圧電素子115bを設けてある先端(プローブ115aの折り曲げ部115aa)が、保護カバー118の内の被衝突壁118aに衝突して強い信号を発生するとともに、図中の太矢印Fdown方向(下方向)への反作用がプローブ115aに作用する。このため、プローブ115aは、シート表面側に跳ね返されて、シートとの接触圧を高められて衝突する。すると、プローブ115aは、再びシートに跳ね返されて、再度、被衝突壁118aに衝突する。プローブ115aは、このような衝突を繰り返すように振動する。
プローブ115aが被衝突壁118aに衝突する勢いは、シート同士の剛性差に基づくプローブ先端部の跳ね上げ時の加速度の差によって異なる。このため、シート搬送ガイド117は、ある程度のループが形成できる高さに確保されていれば、ある剛性以上の全てのシートを一定のループ高さに制約しても、そのループ形成過程においてシートがプローブ先端部を跳ね上げる際の加速度に充分な差がシート同士に生じさせるようになっていればよい。
図2(a)は、このようにシート同士の剛性差に基づく衝突強度さ(衝突する勢い)を実験によって求めたグラフである。本検証実験は、検証用のシートとして通常の紙を使用した場合、搬送されるシート同士の表面粗さの差が大きいと表面粗さの検知結果が重畳されて、純粋にシート厚自体の検知性能を確認できなくなること、通常の紙では製造時のバラツキや放置状態差(環境変化、外力の作用による剛性の低下等)などによって同じ種類の紙でも紙厚及び剛性がばらつきやすいこと等の不具合点があることを配慮して行った。
すなわち、これらによる評価精度の低下を避けるため、材質が均一で製造ばらつきが少なく、物理的特性がより安定し、剛性と厚さとの相関も高いシートとして、図2(b)に示すように、表面粗さRaの値が1.5μm乃至2.0μmの同等レベル範囲に収まり、厚さを3段階に分類できるような樹脂シートとして市販のポリカーボネート製樹脂シートを選択し、粗さ検知性を同等に抑え、厚さみを評価できるシート厚評価用標準シートとして用いている。
これらの各評価用シートを使用した検知センサ115の検知結果は、図2(a)のグラフ中にプロットされた3点のようになった。この実験結果から検知センサ115は、シート厚の変化に対してほぼ直線的に検知できる良好な検知性能を備えて、少なくとも厚さ50μm以上のシート厚の検知に使用できることがわかった。
図3(a)は、このようにシート同士の剛性差に基づく衝突強度さを検知信号に反映させた場合と、させなかった場合の複数種類のシートに対する検知特性の差を比較した結果のグラフである。被衝突壁118aが無い場合の細い折れ線の特性は図16(c)と同じような特性を示している。すなわち、設置スペースの制約に応じてプローブの回転軸部に規制部を設けてプローブの可動範囲をある高さまでに規制しつつ、搬送性に配慮してシート搬送ガイドを設けたためにシートの坪量及び厚さの変化に対する検知特性が損なわれている。
しかし、図中の太い折れ線の検知特性に示されているように、図1に示す検知センサ115は、プローブの高さ方向の規制をプローブの回転軸部で行う代わりに被衝突壁118aで行っているので、全体的に信号レベルが高くなるとともに、シート搬送ガイド117を使用した構成でも坪量の変化に応じて信号レベルが高く反映されるように改善されていることがわかる。
なお、図3(a)において、A90gのシートの信号レベルは、実験結果に基づく評価では、やや高めに検知されているが、元々このA90gのシートはA75gのシートやA105gのシートより表面粗さがやや粗い傾向に有り、表面粗さの検知傾向としてはこのような傾向の方が正しい。さらに、同じ種類のシートでも、表裏差や製造時期や場所などによって表面性にばらつきが有り、このときのA90gのシートは、特に比較的粗いものを使用した結果であると思われる。
検知センサ115からの識別信号は、図3(b)に示す、シート識別部119に送られる。シート識別部119は、検知センサ115からの識別信号に対応したシートの種類を記憶しており、受けた識別信号に基づいて対応するシートの種類を判断する。
シート識別装置111は、シート識別部119によって識別されたシートの種類を制御部130に報せる。制御部130は、シートの種類に応じて、定着器112(図10参照)の温度制御を行う。制御部130は、画像形成動作全般を制御するようになっている。このため、制御部130は、シート識別装置111からの識別信号に基づいて定着器112の温度制御を行うことができる。
すなわち、制御部130は、シート識別装置111からのシートの剛性を加味した識別信号に基づいてシートの熱容量を推測する推測手段である推測部130aと、推測部130aにより推測されたシートの熱容量に応じて必要最小限の温度でトナー像をシート上に溶融固着するための温度テーブル130bなどを備えている。制御部130は、温度テーブル130bに従って定着器112の温度制御を行いトナー像をシート表面に永久定着するようにしている。
なお、この温度テーブル130bの代わりに、推測部130aにより推測されたシートの熱容量に応じて必要最小限の加熱時間、または加熱処理間隔でトナー像をシート上に溶融固着するための時間テーブルを備え、この時間テーブルに従って定着器112による加熱時間または加熱処理間隔の制御を行ってトナー像をシート表面に永久定着するようにしてもよい。
このように、図1に示す識別装置111は、次のようにしてシートを識別するようになっている。先ず、下流側シート折り曲げ搬送路116により、シートPをプローブ側に屈曲変形、あるいは湾曲変形させる。プローブ115aが、シートの屈曲変形、あるいは湾曲変形した部分によって跳ね上げられる。プローブ115aが跳ね上げられる勢いは、シートの剛性が大きい程、勢いが良い。そして、シート搬送ガイド117が、シートの屈曲変形、あるいは湾曲変形した部分を受け止める。跳ね上げられたプローブ115aは、被衝突壁118aに衝突して跳ね返されてシートに当接し、シートに跳ね返されて被衝突壁118aに再度衝突する。プローブ115aが最初に被衝突壁118aに衝突したときの押圧力と勢いが最も強い。このように、プローブ115aは、シートによる跳ね上げと被衝突壁118aによる跳ね返しとが繰り返されて振動するが、このときの識別信号を基にして、シート識別部119(図3(b)参照)が、シートの剛性に基づいた押圧力の大きさと衝突強さを加味して種類を識別する。なお、本実施形態においてはプローブ115aは被衝突壁118aとシートとの間を跳ね返されてやがてシート上に落ち着く。
すなわち、シート識別装置111は、シートがシート搬送ガイド117に受け止められてプローブ115aを押圧する押圧力によって、プローブ115aが被衝突壁118aに衝突する衝撃力を圧電素子115bが検知してシートの種類を識別するようになっているので、プローブ115aの可動範囲が狭くなったり、シートの屈曲変形量が制限されたりするような条件下においても、プローブ115aに対するシートの剛性に基づいた押圧力の強度差、及びその作用に伴って生じる衝突強度差を加味することができ、確実にシートの種類を識別することができる。
従って、シート識別装置111は、高さを低くして小型にすることや、シート搬送ガイド部材を設けてジャムの発生を防止することができる。
さらに、シート識別装置111は、1つの圧電素子115bとプローブ115aによって、シート表面の熱抵抗(熱の伝わりにくさ)とシートの剛性に基づく熱容量との2つの相関関係の高い物理量を検知することができるので、各物理量を検知するために2つの専用センサを用いる場合に比べてコストを下げることができる。
さらに、プローブ115aは、シートによって跳ね上げられていないとき(図1の破線の位置にいるとき)、折り曲げ部115abの部分のみがシート搬送ガイド117の下方に突出するようになっている。このため、シート識別装置111は、搬送されてきたシートがプローブ115aの折り曲げ部115abの上側に侵入するのシート搬送ガイド117で防止することができて、ジャムの発生を防止することができる。
なお、図1に示すシート識別装置111は、定着器112の定着制御を目的として、シートの表面粗さと、シートの厚みもしくは坪量(剛性)との両方の検知を行えるようになっているが、単に、シートPの剛性のみを検知したい場合には、検知センサ115における検知信号の信号レベル及びS/Nは低下するものの、上記構成におけるプローブ115aを短冊状の平板に代えてS字効果を無くすなどの方法を用いて表面粗さ検知性能を低下させることで実現することができる。したがって、プローブ115aは、必ずしも、ほぼS字状に形成されている必要が無い。
さらに、図1に示すシート識別装置111のように、圧電素子115bを有するプローブ115aを樹脂製の保護カバー118内に衝突させることは強い信号を発生させる上では有効である。また、強い信号を発生できるようにプローブ115aを被衝突壁118aに勢い良く衝突させると、プローブ115aが被衝突壁とシートとの間を跳ね返されて最後、シート上に落ち着くことになるが、この間、プローブと被衝突壁とが損傷を受けることが懸念される。しかし、実験の結果、シートを約45万枚まで検知しても、損傷をほとんど受けないことが判明した。これによって、シート識別装置111は、被衝突壁118aにプローブ115aが強く当たるようにしても、長期間良好な検知精度を維持することができる。
また、プリンタ100の制御部130(図3(b)参照)は、シート識別装置111の識別結果に応じて定着器112の温度を制御する。この結果、プリンタ100は、定着器112を無駄な高い温度に設定することなく、シートの特性に合った必要最小限の最適な温度でトナー像をシートに確実に定着することができる。また、どのような種類のシートが使用されても、良好な定着動作を効率良く行うことができる。
(第2実施形態のシート識別装置)
図4は、本発明の第2実施形態に係るシート識別装置のシート搬送方向に沿った断面図である。図1に示すシート識別装置と同一部分には、同一符号を付してその部分の説明は、省略する。
S字型表面性検知センサ215の被衝突壁兼用の保護カバー218における内壁には、衝突用板金製の被衝突壁219を設けてある。この被衝突壁219は、保護カバー218の内壁の、プローブ115aの折り曲げ部115aaを受け止める位置に埋め込まれて接着固定された、板厚約0.5mmのSUS板金である。被衝突壁219は、保護カバー218の内壁に沿って、かつ上ガイド板109aに対して約45度の角度に傾斜している。なお、被衝突壁219は、SUS板金に限定されるものではない。S45Cのような金属板であってもよい。また、被衝突壁219は、金属板に限定されるものでなく、保護カバー218のポリオキシメチレン(POM)で形成された樹脂よりも長期間衝突に耐えられる部材であってもよい。
検知センサ215は、プローブ115aの折り曲げ部115aaが被衝突壁219に衝突したとき、その衝撃力に応じて圧電素子115bから信号を発する。そして、この衝撃力に起因する信号を振動に起因する検知信号に加味してシート識別装置211は、制御部によってシートの種類を識別する。
プローブ115aの折り曲げ部115aaが被衝突壁219に衝突したとき被衝突壁219に吸収される衝突エネルギは、図1に示す検知センサ115がポリオキシメチレン(POM)製の保護カバー218に衝突したとき保護カバー218に吸収される衝突エネルギよりも少ない。すなわち、被衝突壁兼用の保護カバー218に吸収される衝突エネルギの割合を下げることができる。
このため、圧電素子115bは、衝突時により強い信号を発生させることができる。さらに、衝突後にプローブ115aが、被衝突壁219から跳ね返される勢いも強くなり、その後のプローブ115aのシート表面に衝突してからの跳ね上がりと被衝突壁219からの再度の跳ね返しとの繰り返し動作で生じる信号レベルが高くなる。この結果、シート識別装置211は、検知信号全体のレベルが高くなり、S/Nを向上させて、より高い識別性能を得ることが可能となる。
また、図1に示すシート識別装置111において、保護カバー118の樹脂製の部分にプローブ115aを衝突させる場合でも約45万枚の通紙試験に対して異常が生じなかったことからして、図4に示すシート識別装置211は、金属性の被衝突壁219にプローブ115aを衝突させるようになっているので、さらに、長期間の使用に耐えられるようになっている。
以上のように、図4に示すシート識別装置211は、プローブ115aを被衝突壁として金属板を用いることで、衝突時に発生する信号レベルを高くして検知信号のS/Nの向上と、耐久性の向上とを同時に実現できるので、図1に示すシート識別装置111よりシート識別の信頼性を高めることができる。また、シートPの剛性に基づいたプローブ115aを跳ね上げる力の大きさと、プローブ115aが被衝突壁219に衝突する勢いとによって、シートPの坪量や厚さ(熱容量)の影響を含めたシートPの識別性能が得られるようになり、定着器112の適切な定着温度制御を行うことができる。
さらに、シート識別装置211は、図1に示すシート識別装置111と同様に、高さを低くして小型にすることや、シート搬送ガイド部材を設けてジャムの発生を防止することができる。
(第3実施形態のシート識別装置)
図5は、本発明の第3実施形態に係るシート識別装置のシート搬送方向に沿った断面図である。図1に示すシート識別装置と同一部分には、同一符号を付してその部分の説明は、省略する。
S字型表面性検知センサ315の被衝突壁と兼用の保護カバー318は、上ガイド板109aの一部分を切り起こして形成してある。上ガイド板109aを切り起こしたときに生じた孔は、プローブ115aが貫通する開口部109aaとして利用される。保護カバー318の左端部(シート搬送方向の下流側端部)は、プローブ115aの折り曲げ部115aaを受け止める被衝突壁318aの役目をしている。被衝突壁318aは、上ガイド板109aに対して、シート搬送方向の上流側へ約45度傾いている。
上ガイド板109aは、電気メッキされた厚さ約1mmの鋼板である。したがって、上ガイド板109aを切り起こして形成された保護カバー318も同様な鋼板であり、被衝突壁318aも同様な鋼板である。このため、保護カバー318と被衝突壁318aは、充分な硬さと剛性を有している。このため、被衝突壁318aは、図4に示す被衝突壁219と同様な役目をすることになる。
図5に示すシート識別装置311は、既存の装置の上ガイド板109aを追加工して、保護カバー318を形成してあるので、新たな部品を用いることなく、低いコストで、図4に示すシート識別装置211と同様な効果を得ることができる。
すなわち、図5に示すシート識別装置311も、検知信号全体のレベルが高くなり、S/Nを向上させて、より高い識別性能を得ることが可能となる。また、図1に示すシート識別装置111より、長期間の使用に耐えられるようになっている。そして、定着器112の適切な定着温度制御も行うことができる。
さらに、シート識別装置311は、図1に示すシート識別装置111と同様に、高さを低くして小型にすることや、シート搬送ガイド部材を設けてジャムの発生を防止することができる。
(第4実施形態のシート識別装置)
図6(a)、(b)は、第4実施形態におけるシート識別装置のシート搬送方向に沿った断面図である。図1、図5に示すシート識別装置と同一部分には、同一符号を付してその部分の説明は、省略する。
図6(a)、(b)に示すS字型表面性検知センサ415の被衝突壁と兼用の保護カバー318は、図5に示す保護カバー318と同様に、上ガイド板109aの一部分を切り起こして形成してある。
上、下ガイド板109a,109bのシート搬送方向の上流側には、シートをシート搬送ガイド117に向けて上向きに案内するシート変形手段としての上流側シート折り曲げ搬送路416を設けてある。上流側シート折り曲げ搬送路416は、上ガイド板109aを上流側に下向きに延長した上ガイド板延長部416aと、下ガイド板109bを上流側に下向きに延長した下ガイド板延長部416bとで構成されている。上流側シート折り曲げ搬送路416は、上、下ガイド板109a,109bに対して約19度の角度で下向きに傾斜している。
このように、図6に示すシート識別装置411には、検知センサ415のシート搬送方向の上流に、上流側シート折り曲げ搬送路416を設けてあるので、転写前搬送ローラ対125(図10参照)によって搬送されるシートPは、プローブ115aの下方からプローブ115aの先端部115abを突き上げるように当接しながら、かつ上流側シート折り曲げ搬送路416の折れ曲がりに沿って屈曲変形、あるいは湾曲変形しながら搬送されることになる。すなわち、シートは、上方にループを形成しながら搬送されるようになっている。
上流側シート折り曲げ搬送路416に案内されて搬送されるシートにできるループの大きさは、既述した図1に示すシート識別装置111と同様に、使用されるシートの厚さに応じて変化するようになっている。すなわち、図6(b)に示すように、剛性の高いシートほど、ループが大きくなり、プローブ115aの先端部115abを持ち上げるのに必要な剛性も確保されるようになっており、プローブ115aの先端部115abを大きく持ち上げることができるようになっている。
これにより、プローブ115aの先端部115abとシート表面との接触圧も相対的に高くなって摩擦抵抗が大きくなり、結果として検知センサ115の検知信号レベルが上昇する。しかし、シート搬送ガイド117によってプローブ115aの持ち上げた高さが制限される。このため、シート識別装置411は、センサ保持板兼用保護カバー318の被衝突壁318aにプローブ115aを衝突させることで、図1に示すシート識別装置111と同様に、シートPの剛性に基づいた押圧力の大きさ、及び衝突強度の大きさを加味した、すなわち、シートPの坪量または厚さ(熱容量)の影響を含めたシートPの識別性能が得られる。また、シート識別装置411は、定着器112(図10参照)を適切な定着温度制御をすることができる。
また、図6に示すシート識別装置411は、図5に示すシート識別装置と同様に低いコストで、図4に示すシート識別装置211と同様な効果、すなわち、検知信号全体のレベルが高くなり、S/Nを向上させて、より高い識別性能を得ることが可能となる。また、図1に示すシート識別装置111より、長期間の使用に耐えられる効果が得られるようになっている。そして、定着器112の適切な定着温度制御も行うことができるようになっている。
さらに、シート識別装置411は、図1に示すシート識別装置111と同様に、高さを低くして小型にすることや、シート搬送ガイド部材を設けてジャムの発生を防止することができる。
なお、図6のシート識別装置411に、図1、図4、図5に示すシート識別装置111,211,311の下流側シート折り曲げ搬送路116を設けて、シートの上流側と下流側との両方からシートを湾曲させるようにしてもよい。この場合、シートの湾曲を確実に形成することができる。
(第5実施形態のシート識別装置)
図7(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係るシート識別装置のシート搬送方向に沿った断面図である。図1、図5に示すシート識別装置と同一部分には、同一符号を付してその部分の説明は、省略する。
図7(a)、(b)において、S字型表面性検知センサ515の被衝突壁兼用の保護カバー318は、図5に示す保護カバー318と同様に、上ガイド板109aの一部分を切り起こして形成してある。
検知センサ515と、回転体対としての転写前搬送ローラ対125(図10参照)とは接近して配設してある。転写前搬送ローラ対125は、互いに圧接した駆動ローラ125aと従動ころ125bとで構成されている。転写前搬送ローラ対125は、駆動ローラ125aと従動ころ125bとのニップが、下ガイド板109bの上面より上方、すなわち、プローブ115aの先端部115abと、支持板としての上ガイド板109aの下面との間に位置するように配設されている。従動ころ125bは、軸方向に適度な間隔をおいて複数に分割配置されている。上ガイド板109aは、複数の従動ころ125bの間に櫛歯状に進入して設けられている。
このような、S字型表面性検知センサ515と転写前搬送ローラ対125との配置関係をすることによって、転写前搬送ローラ対125から排出されたシートPの先端部は、ニップから下ガイド板109bまでの落差に応じてシートの自重と、シートの剛性に応じた角度で垂れ下がりながら搬送されて、下ガイド板109bに接触し、この後、下ガイド板109bに沿って搬送されていく。そして、シートPは、図7(b)に示すようにシートPを跳ね上げる。このとき、剛性の高いシートは、シートの腰の強さによってプローブ115aを勢い良く被衝突壁318aに衝突させる。
検知センサ515の配設位置は、次のようにして位置決めされている。シートの垂れ下がり角度は、主にシートの剛性に支配されやすいので、シート厚(剛性)に差のある複数のシートの垂れ下がり角度が最も変化しやすい位置、すなわち、高さ方向の変動が激しくなる位置を求め、その位置でシートの先端部がプローブ115aの先端部115abに接触するように、検知センサ515の位置を調整してある。
このように、検知センサ515と転写前搬送ローラ対125とを接近させて配置することにより、シート同士の厚さ(剛性)の差をシートの搬送高さの差になって表れるようにして、シートPとプローブ115aとの接触圧の差を導き出し、既述した各実施形態のシート識別装置111,211,311,411と同様にそれによって生じるシートの滑りにくさ(摩擦強度)のシート同士の差と、シート搬送ガイド117によって制限されるシート高さを補うための被衝突壁318aとプローブ115aとの衝突強度のシート同士の差とから検知センサ515の検知信号にシート厚や坪量の差の影響を重畳することができる。
なお、一般的には剛性の高いシートは同時に単位体積当たりの重さも重くなるので垂れ下がりやすい要因も含んでいるが、シートの重さ自体に力学的に大きな作用をするほどの影響力が無く、2倍乃至3倍程度の坪量の差ではその剛性の差のほうが水平方向にシートの端部を保持した際の垂れ下がり量により強く影響する。
以上のようにして、図7に示すシート識別装置511は、既述した各実施形態と同様に、シートPの剛性に基づいた押圧力の大きさと衝突強度の大きさを加味した、すなわちシートPの坪量または厚さ(熱容量)の影響を含めたシートPの識別性能が得られるようになり、適切な定着温度制御が実現できるようになる。
さらに、シート識別装置511は、図1に示すシート識別装置111と同様に、高さを低くして小型にすることや、シート搬送ガイド部材を設けてジャムの発生を防止することができる。
(第6実施形態のシート識別装置)
図8(a)、(b)は、本発明の第6実施形態に係るシート識別装置のシート搬送方向に沿った断面図である。図1、図5に示すシート識別装置と同一部分には、同一符号を付してその部分の説明は、省略する。
図8(a)、(b)に示すS字型表面性検知センサ615の被衝突壁兼用の保護カバー318は、図5に示す保護カバー318と同様に、上ガイド板109aの一部分を切り起こして形成してある。
下ガイド板109b上に、上流側突部626aと下流側突部626bとが突設してある。上流側突部626aと下流側突部626bは、検知センサ615のプローブ115aを間にして、シート搬送方向上流側と下流側とに突設してある。突部626a、626bの高さは、下に傾いているときのプローブ115aの先端部115abと上ガイド板109aとの間に位置する高さであり、かつシートPの搬送を妨げない高さに設定してある。また、突部626a、626bのシート搬送方向上流側の傾斜面626aa.626baは、シートを円滑に案内できるように、なだらかに形成されている。
このように、下ガイド板109bに突部626a、626bを設けると、厚みの薄いシートが、2つの突部626a、626b上を通過するとき、剛性が低いため、2つの突部626a、626bに沿って凹型に変形しやすい。このように凹型に変形した厚みの薄いシートは、プローブ115aを持ち上げる力が弱いため、シートの滑りにくさ(摩擦強度)に応じた信号レベルの上昇は少ないままである。
一方、厚みの厚いシートが、図8(b)に示すように、2つの突部626a、626b上を通過するとき、シートPは剛性が高いため、2つの突部626a、626b上をほぼ水平な状態を保ちながら通過する。そして、このようにほぼ水平な状態を保ちながら通過する剛性の高いシートは、プローブ115aの先端部115abとの当接位置において、プローブ115aを持ち上げる力が大きく、これに伴ってシートの滑り易さに応じた信号レベルの上昇が促され、結果として同じ滑りにくさ(摩擦強度)であれば厚みの薄いシートより厚みの厚いシートの信号レベルの方が、より高く、検知される。
以上のシート識別装置611は、剛性の高いシートが2つの突部626a,626bの上を通過するとき、プローブ115aの先端部115abを持ち上げるのを利用して、シートの識別をするようになっている。そのとき、シート搬送ガイド117によってプローブ115aの持ち上げ高さが規制されても、被衝突壁兼用の保護カバー318の被衝突壁318aにプローブ115aを衝突させることにより、既述した各実施の形態と同様に、シートPの剛性に基づいた押圧力の大きさと衝突強度の大きさを加味した、すなわち、シートPの坪量または厚さ(熱容量)の影響を含めてシートPの識別をすることができる。そして、シート識別装置611は、適切な定着温度制御を行うことができる。
なお、本実施の形態において、2つの突部626a、626bは必ずしもプローブ15aの上流側と下流側の両方に設ける必要が無い。いずれか一方を設けるだけでも、剛性差の検知強度は低下するものの、プローブ当接位置を適正に調整することで十分な検知性能を得ることができる。
(第7実施形態のシート識別装置)
図9(a)、(b)は、本発明の第7実施形態のシート識別装置のシート搬送方向に沿った断面図である。図1、図5に示すシート識別装置と同一部分には、同一符号を付してその部分の説明は、省略する。
図9(a)、(b)に示すS字型表面性検知センサ715の被衝突壁兼用の保護カバー318は、図5に示す保護カバー318と同様に、上ガイド板109aの一部分を切り起こして形成してある。
検知センサ715と、転写前搬送ローラ対125(図10参照)とは接近して配設してある。検知センサ715の下流側には、転写前搬送ローラ対125よりもシート搬送速度の遅い下流側搬送ローラ対726を配設してある。転写前搬送ローラ対125は、互いに圧接した駆動ローラ125aと従動ころ125bとで構成されている。回転体対としての下流側搬送ローラ対726も、互いに圧接した駆動ローラ726aと従動ころ726bとで構成されている。
プローブ115aの前後で、シート搬送速度の異なる転写前搬送ローラ対125と下流側搬送ローラ対726とでシートを搬送させると、その速度差によりシートは、下流側搬送ローラ対726の近傍で屈曲変形、あるいは湾曲変形して、ループを形成される。なお、このループは、シートの下方に下ガイド板109bを設けてあるため、上方にしか形成されない。すなわち、ループは凸状にしか形成されない。
搬送されてきたシートが厚みの薄いシートの場合、そのシートは、剛性が弱いため、ループが下流側搬送ローラ対726の上流側直前に急峻な形状で形成される。その急峻なループは、両搬送ローラ対125,726間に位置する検知センサ115の先端部115abを浮き上がらせる量が少なく、浮き上がったとしても剛性が弱いため、プローブ115aの当接圧に負けて、プローブ115aの先端部115abを充分持ち上げる力も小さくなる。このため、シートの滑りくさ(摩擦強度)に応じた信号レベルの上昇は少ないままとなる。
一方、搬送されてきたシートが厚みの厚いシートの場合、そのシートは、剛性が高いため、図9(b)に示す形状に湾曲変形してループを形成する。ループは、下流側搬送ローラ対725の直前から緩やかなカーブを描いて形成されるので、プローブ115aの先端部115abを、厚みの薄いシートのときより、大きく浮き上がらせる。また、シートは、剛性が強いため、プローブ115aの自重等に抗してプローブ115aを充分持ち上げることができる。
なお、転写前搬送ローラ対125の搬送速度Vtと下流側搬送ローラ対726の搬送速度Vhとの速度差は、(1−Vh/Vt)=0.01程度になるように調整しておくのが好ましい。例えば、転写前搬送ローラ対125のシート搬送速度を1%程度速くすることで、厚みの厚いシートがプローブ115aに当接する部分におけるループ高さが約1mm乃至2mmになる。
ここで、このようにシートPによりプローブ115aにプローブ先端部を十分持ち上げる大きさの押圧力が働くようになると、摩擦強度に応じた信号レベルの上昇が促され、結果として同じ表面性であれば薄いシートPaより厚いシートPbの信号レベルの方が、より高く検知されるようになる。
このように、シート識別装置711は、シート搬送速度の異なる搬送ローラ対125,726によってシートが搬送されるとき、剛性の高いシートほど高いループを形成してそのシートがプローブ115aの先端部115abを持ち上げるようになっている。このとき、シート搬送ガイド117によって、プローブ115aの持ち上げ高さが規制されても、被衝突壁兼用の保護カバー318の被衝壁318aにプローブ115aを衝突させることにより、既述した各実施の形態と同様に、シートPの剛性に基づいた押圧力の大きさと衝突強度の大きさを加味した、すなわち、シートPの坪量または厚さ(熱容量)の影響を含めてシートPの識別をすることができる。そして、シート識別装置711は、適切な定着温度制御を行うことができる。
なお、この下流側の搬送ローラ対726は、新たに設けても良いが、図10に示す感光ドラム102と転写ローラ106とを代わりに使用してもよい。この場合、感光ドラム102と転写ローラ106とによるシート搬送速度は、グリップ力の高いゴム表面を有する転写ローラ側の搬送速度にほぼ依存することになる。しかし、感光ドラム102と転写ローラ106とによるシート搬送速度を変えると、画像形成精度に影響を与えることになる。このため、上流側の搬送ローラ対125の搬送速度を、感光ドラム102と転写ローラ106とによるシート搬送速度より、わずかに速くするのが好ましい。
以上の各シート識別装置111,211,311,411,511,611,711は、図10に示す、電子写真方式を採用したプリンタ100に設けた場合について述べてきたが、これに限らず、他の画像形成装置、例えば、図11に示す、インクジェット型画像形成装置の一例であるインクジェットプリンタ140、あるいは、図12に示すサーマルヘッド型画像形成装置の一例であるサーマルヘッドプリンタ170に設けるようにしても良い。
図11は、例えば、図9に示すシート識別装置711をインクジェットプリンタ140に設けた場合のシート搬送方向に沿った断面図である。但し、図9に示す転写前搬送ローラ対125の代わりに給紙ローラ141を使用し、下流側搬送ローラ対726の代わりにピンチローラ対143を使用するものとする。すなわち、シート識別装置711のS字型表面性検知センサ715は、給紙ローラ141とピンチローラ対143との間に配設してある。なお、給紙ローラ141とピンチローラ対143との代わりに、シート識別装置711専用のローラ対を設けてもよい。また、転写前搬送ローラ対125と、下流側搬送ローラ対726は、ベルト対であってもよい。
インクジェットプリンタ140は、給紙トレイ147、給紙ローラ141、シートガイド142、ピンチローラ対143、画像形成手段としての記録ヘッド144、プラテン145、排紙ローラ対146等を備えている。
給紙ローラ141のシート搬送速度を、ピンチローラ対143のシート搬送速度よりも速くすることにより、検知センサ715のプローブ115aの先端部に、剛性に応じて上方向に湾曲したシートの部分を当接させることができる。このときの、シートの湾曲高さは、シートPの剛性に応じて高くなる。しかし、シートの湾曲した部分は、シート搬送ガイド117に受け止められて、プローブ115aを持ち上げる高さを制約される。プローブ115aは、シートによって持ち上げられた勢いで被衝突壁318aに衝突する。これにより、検知センサ115からの検知信号(識別信号)として、シートPの表面性の情報にシートPの剛性情報を加味した信号を出力することが可能となる。
このように、シート識別装置711が、検知センサ715によって得られたシートPの剛性を加味した検知信号(識別信号)に基づいてシートPの種類を識別して、シートP同士の表面粗さや厚さ及び材質の差など複数の条件に応じた最適なインク吐出量を設定するようになっているので、インクジェットプリンタ140は、シートPの特性に応じた最も良好な画像をシートに形成することができる。
このインクジェットプリンタ140では、インクジェットプリンタ140に本来設けられている給紙ローラ141とピンチローラ対143を使用した、第7実施形態の方式を採用したが、構成の差によってこれらのローラ等を用いることが困難な場合には、別途専用ローラを設けてもよい。
図12は、図6に示すシート識別装置411を備えたサーマルヘッドプリンタ170のシート搬送方向に沿った断面図である。
サーマルヘッドプリンタ170は、インクリボン180、一対のインクリボン搬送ローラ178、サーマルヘッド179、ヘッド対向板兼シート搬送ガイド181等で構成されている。サーマルヘッド179とインクリボン180は熱転写が像形成手段を構成している。
シートPに画像を形成する場合、プリント信号を受け取ってから不図示の給紙ローラ及び搬送ローラが、シートPをヘッド対向板兼シート搬送ガイド181と給紙側のインクリボン搬送ローラ178とのニップまで搬送する。
このため、インクリボン180とヘッド対向板兼シート搬送ガイド181は、シートを挟持した状態になる。そして、インクリボン180は、密着させられたシートを、循環することよってサーマルヘッド179まで搬送する。この後、サーマルヘッド179にプリント信号に応じた電力を供給される。すると、インクリボン180上のインク層180aが加熱されて溶融し、このインク層180aがシートに熱的に転写される。これによって、シートにインク層180aによる画像が形成される。
ところで、このサーマルヘッドプリンタ170においては、少なくともヘッド対向板兼シート搬送ガイド181とインクリボン搬送ローラ178のニップ部よりも上流側に検知センサ415を配置し、かつこの検知センサ415のプローブ先端部115abの上流側近傍に、上流側シート折り曲げ搬送路416を設けてある。シートPは、プローブ15aの下方からプローブ先端部を突き上げるように搬送される。このため、シート搬送ガイド117によってプローブの持ち上げ高さが制約されることを補うためにプローブと被衝突壁との衝突強度を加味させるようにする。
このように、シート識別装置411が、検知センサ415によって得られたシートPの表面性の情報にシートPの剛性情報を加味した検知信号(識別信号)に基づいてシートの種類を識別して、シート表面の接触熱抵抗に加えてシートPの熱容量に応じたサーマルヘッド179への最適な供給電力量を設定するようになっているので、サーマルヘッドプリンタ170は、シートPの特性に合わせて必要最小限の温度及び電力で最も良好な画像をシートに形成することができる。