JP4780526B2 - 異種材料の接合方法、接合装置及び接合構造 - Google Patents
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例えば、アルミニウム合金と鋼を異種接合する場合には、高硬度で脆弱なFe2Al5、FeAl3などの金属間化合物が生成するため、継手強度を確保するためには、これら金属化合物の制御が必要となる。
高エネルギービームを用いた異種材料の重ね接合においては、脆い金属間化合物の生成を抑制するために、高融点材料の側にデフォーカスさせた高エネルギービームを照射し、高融点材料側からの伝熱によって低融点材料を溶融させて接合する方法がとられていた(例えば、非特許文献1参照)。
「溶接学会全国大会講演概要」、社団法人日本溶接学会、2003年4月、第72集、p.152
したがって、接合界面の金属間化合物の生成を制御して良好な接合強度を得るためには、接合条件を極めて精密にコントロールしなければならず、しかもその適正な接合条件範囲が極めて狭いことから、条件制御が比較的容易な高エネルギービームを熱源に用いたとしても、工業的に実用化することが極めて困難であるという問題点があった。
また、当該接合方法における好適形態としては、上記両材料の間にこれら材料とは異なる第3の材料を介在させた状態で、高エネルギービームを照射して、両パネルの少なくとも一方と第3の材料との間で共晶溶融を生じさせて接合することを特徴としている。
すなわち、接合界面の酸化皮膜があらかじめ部分的に破壊されていることによって、この酸化皮膜の破壊部分を起点とする両材料の拡散反応が容易に進行することから、高エネルギービーム照射熱量を抑えることによって金属間化合物の生成を抑制しながら、高強度の接合を行うことが可能となる。
なお、図1(b)は、上記予圧ローラ12及び加圧ローラ13に対するレーザビームBの進行方向から見た位置関係を示しており、進行方向に沿って同一直線上に並んだ予圧ローラ12及び加圧ローラ13との干渉を避けるために、レーザビームBが所定の角度で照射されるようになっている。
また、これら予圧ローラ12及び加圧ローラ13は、上記照射ヘッド11と一体的に移動し、常にレーザビームBから一定の距離の位置で、被接合材料を押圧しながら移動することができるように構成されており、ワーク(被接合材料)が平面でなく、例えば自動車ボディのように、3次元形状の場合にも追従することができるようになっている。
なお、当該接合装置10は、固定された被接合材料に対して移動するようにすることも、接合装置10の側を固定して、被接合材料の側を移動するようにいてもよい。
これに続いて、高融点材料である亜鉛めっき鋼板1の側にレーザビームBを、焦点を材料表面の手前で結ぶように、つまりデフォーカスさせ、接合界面において高融点材料である鋼板1を溶融させないような条件で照射した後、ビーム照射による加熱部分に、加圧ローラ13によって所定の加圧力を加え、アルミニウム合金材2と亜鉛めっき鋼板1とを相対的に密着させる。
このとき、被接合材料に対する高エネルギービームの相対移動や高エネルギービームの照射を連続的なものとすることによって、連続的な線状の接合が可能となり、車体剛性や強度の向上に好適な連続的な線状の接合が高い生産性で実現できる一方、高エネルギービームの相対移動や照射のタイミングを断続的なものとすれば、点(スポット)状やステッチ状の接合を行なうことができる。
このような亜鉛めっき鋼板を使用することによって、新たにめっきを施したり、特別な準備を要したりすることもなく、防錆目的で亜鉛めっきを施した通常の市販鋼材をそのまま適用することができ、極めて簡便かつ安価に、上記のような異種材料との強固な接合が可能になる。
図3は、Al−Zn系2元状態図を示すものであって、図に示すようにAl−Zn系における共晶点(Te)は、655Kであり、Alの融点933Kよりもはるかに低い温度で共晶反応が生じる。
したがって、図に示した共晶点を利用してAlとZnの共晶溶融を作り出し、アルミニウム材の接合時における酸化皮膜除去や相互拡散などの接合作用に利用することによって、低温接合が実施できるため、接合界面における金属間化合物の成長を極めて有効に抑制することができる。
したがって、両金属の清浄面を接触させ、655K以上に加熱保持すると反応が生じる。これを共晶溶融といい、Al−95%Znが共晶組成となるが、共晶反応自体は合金成分に無関係な一定の変化であり、合金組成は共晶反応の量を増減するに過ぎない。
すなわち、酸化皮膜の部分的な破壊によって亜鉛とアルミニウムの局所的な接触が起こり、この状態で高エネルギービームの照射によって亜鉛めっき鋼板の表面を加熱され、接合界面が所定の温度状態に保持されると、接触部分から共晶溶融が生じ、この液相の生成によって近傍の酸化皮膜が破砕、分解されてさらに共晶溶融が全面に拡がる反応の拡大によって、酸化皮膜破壊の促進と液相を介した接合が達成される。
まず、図4(a)に示すように、少なくとも接合界面側の表面に、Alと共晶を形成する第3の金属材料として機能する亜鉛めっき層1pが施された亜鉛めっき鋼板1と、アルミニウム合金材2を用意する。なお、アルミニウム合金材2の表面には酸化皮膜2cが生成している。
すると、押圧による変形や、皮膜破壊手段の種類によっては、機械的、熱的、あるいは電気的な衝撃などにより、図4(c)に示すように局部的に酸化皮膜が破壊される。
すなわち、これら金属とAlとの共晶金属は、母材であるアルミニウム合金材の融点以下で溶融するため、脆弱な金属間化合物が生成し易い鋼材とアルミニウム合金材の接合においても、低温で酸化皮膜の除去ができ、接合過程での接合界面における金属間化合物の生成が抑制でき、強固な接合が可能になる。
鋼材パネルとマグネシウムとの接合に際しては、後述する実施例と同様に鋼材側にめっきした亜鉛とマグネシウムの間に共晶反応を生じさせて接合することが可能である。さらに、アルミニウムとマグネシウムを接合する場合においても、亜鉛や銀を第3の材料として利用することが可能である。
図1に示すように、板厚1.0mmのA6000系アルミニウム合金材2(低融点材料)の上に、板厚0.55mmの亜鉛めっき鋼板1(高融点材料)を重ね、高融点材料である鋼板1の側からYAGレーザによるレーザビームBを照射した。
このとき、レーザビームBの前方において皮膜破壊手段である予圧ローラ12によって、レーザビームBの後方においては加圧手段である加圧ローラ13によってそれぞれ押圧し、このレーザビームBと予圧ローラ12、加圧ローラ13を被溶接材料に対して、図中に矢印で示す方向に移動させることによって連続的に線状に接合した。
またレーザ照射中はレーザと同軸のノズルでアルゴンガスを25L/minの流量で流しシールドした。
例えば、下側のローラを上側のローラに引き寄せるような状態で移動させ、材料を上側ローラとの間ではさみ、接合部に加圧する。ローラの構造をこのようにすることによって、上記のように、下側の材料に剛性が無い場合や、フランジを接合する場合にも対応することができる。
図6には、皮膜破壊手段として、上記した与圧ローラに替えて、パルス通電による例を示す。
その直前には、銅合金など導電性の高い金属材料からローラ状に形成された上下1対の電極15、15により、両材料1、2を相対的に加圧しながら、電極15,15の間にパルス通電を行うようにしている。
上下1対の電極15、15は、変圧器16を介して電源17に接続されており、電極15、15を通じて、両材料1、2に高電流の短時間通電、つまりパルス通電を行い、これによってアルミニウム合金材2と亜鉛めっき鋼板1の接合界面の酸化皮膜を効率良く、局部破壊することができ、前述の実施例と同様の効果を得ることができる。
図7は、皮膜破壊手段として、超音波振動を付与するようにした例を示すものであって、図7(a)は、当該接合装置を進行方向から見た正面図、図7(b)はその側面図であって、アルミニウム合金材2と亜鉛めっき鋼板1を重ねた被接合材料に対して、同様に亜鉛めっき鋼板1の側にデフォーカスさせたレーザビームBが照射される。
さらにビーム照射位置の直後には、1対の加圧ローラ13、13によって、所定の加圧力が加えられ、これによってアルミニウム合金材2と亜鉛めっき鋼板1を相対的に密着させて接合を行う。
例えば、上記実施例においては、加熱の熱源として、YAGレーザを用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、共晶反応を誘起させ、反応を制御できる精密なコントロールが可能な高エネルギービームであれば利用可能である。また、レーザビームなどの加熱熱源は連続して照射して、連続的な線状接合もできるし、断続的に照射して、ステッチ状に線接合することも可能である。
1p 亜鉛めっき層(第3の材料)
2 アルミニウム合金材(低融点材料)
2c 酸化皮膜
4 共晶溶融金属
5 反応層
10 異種材料の接合装置
11 照射ヘッド
12 与圧ローラ(皮膜破壊手段)
12b 押圧面
12c、12d 凹凸
13 加圧ローラ(加圧手段)
15 電極(皮膜破壊手段)
19 振動ローラ(皮膜破壊手段)
Claims (10)
- 互いに融点の異なる高融点材料と低融点材料を重ね合わせて接合するに際し、接合界面の酸化皮膜を部分的に破壊しながら、高エネルギービームを高融点材料表面に照射して両材料を加熱し、加熱された両材料を相対的に加圧して両材料を連続的又は断続的に接合することを特徴とする異種材料の接合方法。
- 高エネルギービームを両材料に対して相対移動させながら照射すると共に、上記高エネルギービーム照射位置の進行方向前方に配設した皮膜破壊手段によって酸化皮膜を破壊すると共に、上記照射位置の進行方向後方に配設した加圧手段によって両材料を加圧することを特徴とする請求項1に記載の異種材料の接合方法。
- 上記皮膜破壊手段が両材料を相対的に押圧する与圧ローラであることを特徴とする請求項2に記載の異種材料の接合方法。
- 上記与圧ローラの押圧面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の異種材料の接合方法。
- 上記皮膜破壊手段が機械的変形、温度変化、超音波振動、熱的衝撃及び電気的衝撃からなる群から選ばれる少なくとも1つを与える手段であることを特徴とする請求項2に記載の異種材料の接合方法。
- 上記高融点材料と低融点材料の間にこれら材料とは異なる第3の材料を介在させた状態で、高エネルギービームを照射し、上記両材料の少なくとも一方と第3の材料との間で共晶溶融を生じさせて接合することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の異種材料の接合方法。
- 上記両材料の少なくとも一方に、第3の材料によるめっきが施してあることを特徴とする請求項6に記載の異種材料の接合方法。
- 上記両材料の一方が亜鉛めっき鋼板であって、該亜鉛めっき鋼板にめっきされている亜鉛を第3の材料として利用することを特徴とする請求項7に記載の異種材料の接合方法。
- 被接合材料に対して相対移動可能に配設され、連続的又は断続的に相対移動しながら上記被接合材料の接合部に高エネルギービームを連続的又は断続的に照射する照射ヘッドと、
上記照射ヘッドによる高エネルギービーム照射位置の進行方向前方に配設され、接合界面の酸化皮膜を部分的に破壊する皮膜破壊手段と、
上記高エネルギービーム照射位置の進行方向後方に配設され、高エネルギービーム照射による加熱部を加圧する加圧手段を備えたことを特徴とする異種材料の接合装置。 - 請求項6〜8のいずれか1つの項に記載の接合方法によって得られる接合構造であって、上記両材料の新生面同士が直接、又は上記両材料の少なくとも一方と第3の材料との反応層を介して接合されていると共に、当該接合部の両側に、第3の材料、被接合材料由来成分、酸化皮膜及び接合過程で生じる反応生成物の群から選ばれる少なくとも1種から成る排出物が排出されていることを特徴とする異種材料の接合構造。
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