JP4775566B2 - 希土類永久磁石及びその製造方法並びに回転機 - Google Patents

希土類永久磁石及びその製造方法並びに回転機 Download PDF

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Description

本発明は、高い磁気特性を有するR−M−B系希土類永久磁石に関し、特に高速回転を行う電気自動車用モータや発電機、FAモータ等の永久磁石回転機に用いた際に発生する渦電流を低減した希土類永久磁石に関する。また、本発明はかかる永久磁石の製造方法及び該永久磁石を用いた回転機に関する。
Nd−Fe−B系永久磁石は、その優れた磁気特性のために、ますます用途が広がってきている。近年、モータや発電機などの回転機の分野においても、機器の軽薄短小化、高性能化、省エネルギー化に伴い、Nd−Fe−B系永久磁石を利用した永久磁石回転機が開発されている。Nd−Fe−B系焼結磁石の電気抵抗は100〜200μΩ・cmの導体であり、磁石に生じる渦電流に伴う発熱が、磁石の大きさの2乗で大きくなるために大容量回転機においては大きな問題となっている。渦電流低減のために有効な手段は、鉄心に使われる電磁鋼板のように薄板化して絶縁積層することであるが、細分化したセグメント磁石を接着固化して所要の大きさの磁石とする方法は、磁石の製造工程が増加し、製造コストの増加や磁石重量歩留まりの低下を招く。また、セグメント磁石を接着固化せず小磁石のまま用いることも考えられるが、磁石間の反発力に抗して小磁石をロータに組込み固着することは難しい。
積層磁石の製造工程を簡単にするものとして、特開2000−295804号公報(特許文献1)の磁石表面に内周又は外周切断機やワイヤーソー等で加工して溝切りしてスリットを形成する方法がある。しかし、この方法でのスリット幅は外周切断で0.8mm程度であり、多くのスリットを入れると磁石体積が減少し、磁束量を得ることができない。1個の磁石に10本以上のスリットを入れる場合、スリットにより失われる磁石体積がもとの体積の20%になることもある。なお、ワイヤーソーならスリット幅を0.05mm程度にできるが、加工速度が遅く、量産性に欠ける。
また、特開2005−198365号公報(特許文献2)には、矩形体の希土類永久磁石にその一側面から対向する側面側へ一定長さの複数のスリットを形成して分割部と前記スリット端で分割された磁石が保持される連通部とを設け、その後、スリット内に非導電性樹脂を充填し、更に分割部と連通部とを分離することで、複数の板状永久磁石を非導電性樹脂を介して積層配置された構成からなるモータ用希土類永久磁石が得られるとある。しかし、この方法でも、加工でスリットを入れるのでスリットの幅は0.5mm以上であり、多くのスリットを入れると磁石体積が減少し、磁束量を得ることができない。
特開2000−295804号公報 特開2005−198365号公報
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みなされたもので、R−M−B系焼結磁石(RはY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、MはFe、又はFeとCoを主体とする遷移金属)の磁石にスリットを入れた渦電流低減に有効な磁石において、スリット加工による磁石体積低減を少なくした希土類永久磁石、その製造方法、及び回転機を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、Nd−Fe−B系焼結磁石に代表されるR1−M−B系焼結磁石(R1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、MはFe、又はFe及びCoを主体とする遷移金属)において、磁石体に複数のスリットを入れる工程を、焼結体に対し切断刃などを用いた加工で行うのではなく、焼結前の成型体に凹溝及び突条を設けて、突条面が重なるように成型体を複数個積み上げ、これを焼結する工程で得ること、更には、成型体の表面の凹溝にR3の酸化物(R3はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を部分的に塗り、酸化物を塗った面に同様の成型体を複数個積み上げ、これを焼結する工程で得ることが有効で、ここで得られたスリットの空隙幅は0〜0.1mmであり、しかも焼結後の加工を行うよりコストがかからない上、焼結工程でスリットを作製すると、スリットに面する焼結磁石体の表面はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の酸化物の層が形成され、この希土類元素の酸化物の電気抵抗は磁石体に比べ非常に大きいので、酸化物で実質的に絶縁している効果があることを知見し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、下記の回転機用として有効な希土類永久磁石及びその製造方法並びに回転機を提供する。
請求項1:
1−M−B系組成(R1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、MはFe、又はFe及びCoを主体とする遷移金属)からなる複数個の磁石単体が、一体に接合した焼結接合体からなり、該焼結接合体は一面から他面にかけて貫通するスリットを有しており、上記スリット面には、それぞれ 3 の酸化物の塗布によって形成された 3 の酸化物層(R 3 はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)が形成されていることを特徴とする希土類永久磁石。
請求項2:
1−M−B系組成(R1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、MはFe、又はFe及びCoを主体とする遷移金属)からなる複数個の単体成型体の表面にそれぞれ凹溝を形成し、これによって突条部を形成すると共に、該凹溝にR 3 の酸化物(R 3 はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を塗布し、該突条部を介して上記複数個の単体成型体を積層し、次いで焼結して、上記突条部において上記単体成型体を互いに接合すると共に、上記各突条部の側方に上記凹溝によって形成される一面から他面にかけて貫通するスリット内に上記R 3 の酸化物層を形成した焼結接合体からなる希土類永久磁石を得ることを特徴とする希土類永久磁石の製造方法。
請求項
請求項1記載の希土類永久磁石を用いた回転機。
本発明により、磁石にスリットを入れた渦電流低減に有効な希土類永久磁石において、スリット加工による方法より磁石体積低減を少なくした磁石を提供することができる。これにより大型・高回転モータなどの磁石に発生する渦電流問題を解決すると同時に、渦電流低減による磁束量の低下(トルク低下)がほとんど生じないので、産業上、その利用価値は極めて高い。
本発明に係る希土類永久磁石は、R1−M−B系組成(R1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、MはFe、又はFe及びCoを主体とする遷移金属)からなる複数個の焼結磁石単体が、一面から他面にかけて貫通するスリットを有して一体に接合してなり、上記スリット面には、それぞれR2の酸化物層(R2はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)が形成されているものである。
なお、本発明において、R及びR1並びにR2はいずれもY及びScを含む希土類元素から選ばれるものであるが、Rは主に得られた磁石体に関して使用し、R1は主に出発原料に関して用いる。更に、R2は主にスリットに形成された酸化物層である。
この場合、R2の酸化物層は、後述する本発明の製造方法によれば、R1−M−B系組成のR1の酸化により形成されるか、又はR3の酸化物の塗布に基づくものである。
磁石合金は、R1、Fe、Bを含有する。R1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上で、具体的にはY、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuが挙げられ、好ましくはNd、Pr、Dyを主体とする。これらY及びScを含む希土類元素は合金全体の10〜15原子%、特に12〜15原子%であることが好ましく、更に好ましくはR1中にNdとPrあるいはそのいずれか1種を10原子%以上、特に50原子%以上含有することが好適である。Bは3〜15原子%、特に4〜8原子%含有することが好ましい。その他、Al、Cu、Zn、In、Si、P、S、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、Sn、Sb、Hf、Ta、Wの中から選ばれる1種又は2種以上を0〜11原子%、特に0.1〜5原子%含有してもよい。残部はFe及びC、N、O等の不可避的な不純物であるが、Feは50原子%以上、特に65原子%以上含有することが好ましい。また、Feの一部、例えばFeの0〜40原子%、特に0〜15原子%をCoで置換しても差し支えない。
本発明の希土類永久磁石を製造する場合は、常法に従い、磁石合金を粗粉砕、微粉砕、成形、焼結させることにより得ることができる。この場合、磁石合金は、原料金属あるいは合金を真空あるいは不活性ガス、好ましくはAr雰囲気中で溶解した後、平型に鋳込む、あるいはストリップキャストにより鋳造することで得られる。上記合金は、通常0.05〜3mmに粗粉砕される。粗粉砕工程にはブラウンミルあるいは水素粉砕が用いられる。粗粉は、例えば高圧窒素を用いたジェットミルにより通常0.2〜30μmに微粉砕される。
微粉末は磁界中、圧縮成型機に挿入され、成型機中のパンチにより微粉末を成型することができる。
ここで、本発明の希土類永久磁石を得るには、
第一の方法として、上記のようにして複数個の単体成型体を作製し、これら単体成型体の表面に凹溝を形成すると共に、これによって突条部を形成し、このように形成された突条部を介して上記複数個の単体成型体を積層し、次いで焼結して、上記凹溝において一面から他面にかけて貫通し、スリットが形成された状態で上記突条部において上記単体成型体が焼結することによってR2の酸化物層が形成された焼結磁石単体が接合することで希土類永久磁石を得る方法、更には、
第二の方法として、上記のように複数個の単体成型体を作製後、これらの単体成型体の表面の凹溝にR3の酸化物層を部分的に形成し、このR3の酸化物層が互いに重なり合うように上記複数個の単体成型体を積層し、次いで焼結して上記R3の酸化物層非形成部分において上記単体成型体が焼結することによって形成された焼結磁石単体が接合することで希土類永久磁石を得る方法
が好適に採用される。
上記第一の方法について更に詳述すると、単体成型体に凹溝及びこれにより突条を形成する方法としては、図8に示すように磁石合金の微粉末をパンチにより圧縮成型する場合、パンチの先端面に突条及び凹溝を形成し、このパンチによって圧縮成型する際に圧縮成型体(単体成型体)の成形と同時に凹溝及び突条を形成する方法が挙げられる。図3は、このような凹溝及び突条が形成された単体成型体の一例を示すもので、10が単体成型体、11が凹溝、12が突条であり、本発明においては凹溝11の一側部は側壁がなく、一側方に開放された状態を含む。なお、この例においては、凹溝11、突条12の長さ方向が磁化方向と一致する。また、パンチ材料は特に限定されるものではなく、磁場中成形できるものであればよく、上述したように予めパンチに所望の形状になるように凹凸が設けられている。突条の高さHは0.1mm以下であり、より好ましくは1〜100μm、特に20〜80μmであることが好ましい。図3は突条の数が3個であるが、3個に限定されない。また、突条の幅の合計(W1+W2+W3)は磁石幅Wの10〜50%、特に20〜40%の割合で選ばれる。この比率が10%未満では接合面積が小さく、磁石体の強度が弱くなってしまい、50%を超えると、スリットによる渦電流低減効果が少なくなってしまう場合がある。
これらの成型体を複数個積み上げ、焼結炉に投入するが、この場合、本発明においては上記突条部を介して(即ち、一の単体成型体の表面に形成された突条面が他の単体成型体面と当接した状態で)単体成型体を積層する。焼結は真空あるいは不活性ガス雰囲気中、通常900〜1,200℃で行われる。この焼結により、上記各単体成型体は焼結されて、焼結磁石単体がそれぞれ形成されると共に、この際、上記突条部において一の単体成型体(焼結磁石単体)と他の単体成型体(焼結磁石単体)とが接合、一体化される一方、上記凹溝部分が磁石体の一面から他面(対向面)にかけて貫通するスリットとなる図1に示すような磁石体(希土類永久磁石)1が焼結接合体として得られる。なお、2は焼結磁石単体、3は上記突条部に由来する焼結磁石単体相互の接合連結部、4は上記凹溝に由来するスリットである。ここで、各スリットは、そのスリット面に上記焼結時に形成された上記R1の酸化に基づくR2の酸化物層5が形成される。このR2の酸化物層5は、焼結時に磁石合金のR1が焼結雰囲気中の微量の酸素により酸化されて形成されるもので、この第一の方法においてR2≒R1である。なお、この酸化物層は、EPMA(電子線マイクロプローグ分析装置)やXPS(X線電子分光分析装置)等で酸化物の層であることを確認できる。酸化物の層厚は通常50μm以下、特に0.5〜50μmが好ましい。また、上記スリットの空隙幅SWは100μm以下、より好ましくは1〜100μm、特に20〜80μmが好ましい。
次に、第二の方法について説明すると、この方法は、上記した方法で得られた単体成型体の凹溝にR3の酸化物層を必要により部分的に形成する。図4はこれを示すもので、10は単体成型体、11は凹溝、12は突条部、13はR3の酸化物層である。なお、この第二の方法において、R3はR1と同じ元素であってもよく、異なる元素であってもよい。上記R3の酸化物層を形成する方法としては、R3の酸化物粉末をそのまま又はそのスラリーを単体成型体の凹溝表面に必要により部分的に塗布し、乾燥する方法が好適である。なお、R3は、上述したようにY及びScを含む希土類元素から選ばれ、具体的にはY、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuが挙げられ、好ましくはYを主体(50質量%以上)とする。酸化物粉末の平均粒子径は100μm以下、好ましくは10μm以下が望ましい。その下限は特に制限されないが、1nm以上が好ましい。酸化物粉末を成型体に塗布する方法として、粉末の状態でつける方法と有機溶剤や水に分散させ、このスラリー状のものを刷毛塗りやスプレイ塗布した後に風や真空により乾燥させる、あるいは自然乾燥させる方法が挙げられる。この場合、R3の酸化物層13の厚さは、上記突条部12の高さと一致するか又はこれより低いことが必要で、塗布の厚さは好ましくは0.05mm以下、より好ましくは0.01〜0.05mmである。なお、図4は塗布部の数が4個であるが、4個に限定されなく、所望の形状になるように塗布すればよい。また、突条の幅の合計(W1+W2+W3)は磁石幅Wの10〜50%、特に20〜40%の割合で選ばれる。この比率が10%未満では、接合面積が小さく磁石体の強度が弱くなってしまい、50%を超えると、スリットによる渦電流低減効果が少なくなってしまう場合がある。なお、この例では上記R3の酸化物層13の長さ方向は、磁化方向と一致している。
これらのR3の酸化物層が凹溝に帯状に必要により部分的に形成された成型体を複数個積み上げ、焼結炉に投入する。焼結は真空あるいは不活性ガス雰囲気中、通常900〜1,200℃で行われる。この焼結により上記各単体成型体は焼結されて、焼結磁石単体がそれぞれ形成されると共に、この際突条部において一の単体成型体(焼結磁石単体)と他の単体成型体(焼結磁石単体)とが接合、一体化される一方、上記R3の酸化物形成部分がそのまま磁石体の一面から他面(対向面)にかけて帯状に残る図2に示すような磁石体(希土類永久磁石)1が焼結接合体として得られる。なお、2は焼結磁石単体、6は突条部に由来する焼結磁石単体相互の接合連結部である。この場合、図2の焼結接合体においては、凹溝内に突条部と同一高さになるようにR3の酸化物層を形成したため、スリット内がR3の酸化物層で充満されているが、これに限られるものではなく、R3の酸化物層を突条部より低く形成して、スリット内に空隙を与えるようにしてもよい。
本発明によれば、上述した従来の問題点を解決することができ、R−M−B系焼結磁石にスリットを入れた渦電流低減に有効な磁石において、スリット加工による磁石体積低減を少なくした磁石を提供することができる。本発明の希土類永久磁石は、R1−M−B系組成からなる焼結前の成型体に突条を設けてこの面が重なるように複数個積み上げ、これを焼結するものと、成型体の凹溝にR3の酸化物を必要により部分的に塗り、同様に成型体を突条を介して複数個積み上げて焼結する工程で得るといったものがあるが、上記した本発明の第一及び第二の方法で得られた希土類永久磁石におけるスリットの空隙幅あるいは希土類酸化物の厚みは0.1mm以下であり、スリットによる磁石体積の減少は、従来の加工でスリットを付けるものの1/10程度になる。しかも加工を行うよりコストがかからない。
また、焼結工程でスリットを作製すると、スリットに面する焼結磁石体の表面は希土類元素の酸化物が形成されており、希土類元素の酸化物の電気抵抗は磁石体に比べ非常に大きいので、スリット面で酸化物層が接触していて空隙がなくても実質的に絶縁している効果がある。
なお、本発明で得られた希土類永久磁石におけるスリットは、磁石表面に形成される溝、磁石内部に形成される空隙をも含むものである。
このようにして得られた絶縁効果のある磁石は、着磁され、回転機等に用いることができる。
以下、参考例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
参考例1−1〜3、比較例1,2]
Nd−Fe−B系焼結磁石(信越化学工業(株)製/N42SH)において、単体成型体寸法が10mm×60mm×14.5mmの60mm×14.5mmの面にパンチにより0.1mmの突条部を形成した。得られた突条部を有する単体成型体6枚を重ねて、不活性ガス雰囲気中、1,050℃で焼結した。これにより、密度が上がって、50mm×50mm×10mmの焼結体が得られた。磁化方向は10mm方向である。突条の位置は次の3種類で、突条の幅の合計は磁石幅の40%にあわせている。参考例1−1は図5のようにスリットがほぼ等しい間隔になるよう3箇所で接合されている。参考例1−2は図6のように両端と中央の3箇所で接合されている。参考例1−3は図7のように中央の1箇所で接合されている。参考例1−1、参考例1−2、参考例1−3ではスリットの幅は0.08mmであった。焼結工程で磁石体の表面には合金に含有される希土類元素の酸化物が形成されるので、スリットに面する焼結磁石体の表面にも希土類酸化物層が形成されている。本参考例では厚さ約15μmのNdの酸化物が形成される(EPMA)。酸化物の電気抵抗は合金に比べて大きいので、スリット面の酸化物層が接触し、隙間がゼロの状態でも渦電流は流れ難い。
この磁石に磁場強度±0.015テスラ、周波数2,000Hzの交番磁場を印加し、発生する渦電流損失を測定した。なお、比較例1としてスリットを設けていない50mm×50mm×10mm(信越化学工業(株)製/N42SH)の焼結体、比較例2として加工にてスリットを参考例1−3と同様に施した焼結体を用意した。なお、加工は切断刃によるものでスリット幅は0.8mmであった。結果を表1にまとめた。比較例1の渦電流損失を基準値としたものも示した。
参考例のようにスリットを入れることで、比較例1のスリットのないものより33〜74%の損失にできた。スリットの入れ方によって損失の低減度合いが変化する。参考例1−3と比較例2は同形状のスリットであるので渦電流低減は同じであった。但し、スリット幅を比較すると本発明は比較例2の1/10であり、磁石体積が減らないので比較例2より大きな磁束を得ることができる。
Figure 0004775566
[実施例
参考例1−1の磁石成形体の凹溝に平均粒子径10μmのY(イットリウム)酸化物微粉末を有機溶剤に分散させ、このスラリー状のものを刷毛塗りした後に自然乾燥させた。塗布の厚さは0.03mmである。塗布された成形体6枚を重ねて不活性ガス雰囲気中、1,050℃で焼結すると、密度が上がって50mm×50mm×10mmの焼結体が得られた。磁化方向は10mm方向である。酸化物が塗布されていない突条部分は焼結過程で接合した。スリット面に酸化イットリウム(EPMA)が形成されていた。接合部の位置と面積が参考例1−1と同じになるような試料を作製し、参考例1と同様に交番磁場中の渦電流損失を測定した。結果は17Wであった。
本発明の一実施例に係る希土類永久磁石の断面図である。 本発明の他の実施例によって得られた希土類永久磁石の断面図である。 単体成型体の一例を示す斜視図である。 単体成型体の他の例を示す斜視図である。 参考例1−1による希土類永久磁石の断面図である。 参考例1−2による希土類永久磁石の断面図である。 参考例1−3による希土類永久磁石の断面図である。 本発明に用いるパンチ形状である。
符号の説明
1 磁石体
2 焼結磁石単体
3 接合連結部
4 スリット
5 R2の酸化物層
6 接合連結部
10 単体成型体
11 凹溝
12 突条
13 R3の酸化物層
H 突条の高さ
SW スリットの空隙幅
W 磁石幅
W1,W2,W3 突条の幅

Claims (3)

  1. 1−M−B系組成(R1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、MはFe、又はFe及びCoを主体とする遷移金属)からなる複数個の磁石単体が、一体に接合した焼結接合体からなり、該焼結接合体は一面から他面にかけて貫通するスリットを有しており、上記スリット面には、それぞれ 3 の酸化物の塗布によって形成された 3 の酸化物層(R 3 はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)が形成されていることを特徴とする希土類永久磁石。
  2. 1−M−B系組成(R1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、MはFe、又はFe及びCoを主体とする遷移金属)からなる複数個の単体成型体の表面にそれぞれ凹溝を形成し、これによって突条部を形成すると共に、該凹溝にR 3 の酸化物(R 3 はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を塗布し、該突条部を介して上記複数個の単体成型体を積層し、次いで焼結して、上記突条部において上記単体成型体を互いに接合すると共に、上記各突条部の側方に上記凹溝によって形成される一面から他面にかけて貫通するスリット内に上記R 3 の酸化物層を形成した焼結接合体からなる希土類永久磁石を得ることを特徴とする希土類永久磁石の製造方法。
  3. 請求項1記載の希土類永久磁石を用いた回転機。
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