JP4773540B2 - ヒト癌胎児性抗原に対する特異的結合メンバー;材料および方法 - Google Patents

ヒト癌胎児性抗原に対する特異的結合メンバー;材料および方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヒト癌胎児性抗原(CEA)に対する特異的結合メンバー並びにそれに関連した材料および方法に関する。
CEAは、多数のヒト癌腫において発現が増加する腫瘍関連糖タンパク質である。CEAは広く使用されている臨床上の腫瘍マーカーであり、それに対して惹起された抗体は画像診断(Goldenberg,D.M., Int. J. of Biol. Markers 1992, 7:183-188)および療法(例えばLedermann 他, Int. J. Cancer 1991, 47:659-664 )に利用されている。CEAは免疫グロブリンスーパーファミリーの1員であり、正常組織上に見つかる他の抗原メンバー、例えば正常交差反応性抗原(NCA)との相同性を有する(Buchegger, F. 他,1984, Int. J. Cancer 33:643-649 )。
多数のマウス抗CEA抗体はCEA上の或る範囲のエピトープに結合して存在し(Hammarstrom 他, 1989, Cancer Res. 49:4852-4858)、そしてヒトファージ表示ライブラリーからヒト抗CEA抗体が単離されている(A.D. Griffiths他, EMBO J. 12, 725-734,1993 ; A.D. Griffiths 他, EMBO J. 13, 3245-3260, 1994 ; WO 93/11236 )。本発明は、CEAに対して10 nM(1×10−8M)未満の解離定数を有するヒト抗CEA抗体の最初の例と、NCAを発現しない細胞型または正常ヒト肝細胞系と交差反応しない最初のそのようなヒト抗CEA抗体を獲得した発明から端を発する。
本明細書中では、大規模な万能ファージ表示ライブラリーをヒトCEAに特異的なヒト抗体の入手源として使用できることが示される。次いで、改善された性質を有するヒトCEAに対するヒト抗体を様々な方法で工作することができる。実施例1には、いかにしてヒト抗CEA抗体のVHドメインとVLドメインの相補性決定領域(CDR)のオリゴヌクレオチド指令突然変異誘発によってヒト抗CEA抗体の親和力を高めることができるかが実証される。例えば、或るライブラリーから得た抗体のVHドメインを別のライブラリーからのVLドメインと組み合わせ、かくして各VHドメインについて試験されるVLパートナーのプールを拡大するという、抗体鎖入替え(shuffling)の使用も証明される。実施例1は更に、親抗体に比較して変更された或る範囲の正常組織に対する特異性を有する新規抗体を作製するための、前記方法、またはオリゴヌクレオチド突然変異誘発とVL鎖入替えの組合せの使用も実証する。この新規抗体は親抗体に比較して改善されたヒトCEAに対する親和力も有する。この方法を使って、特異的腫瘍ターゲティング剤としてのそれの潜在能力を高めるような形で元の抗体の特異性を変更できることも証明される。VHとVLの特定組合せを使うと、正常ヒト肝細胞系に対する交差反応性が大きく減少する。
癌の治療や診断における抗CEA抗体の使用は多くの特許〔例えばMatsuokaおよびKuroki (1989) 特許第4871834 号;Buchegger およびMach (1991) JP特許第5047507 号;Chester 他 (1995) WO 95/15341 号〕の主題である。本明細書に開示されるヒト抗体は、それらがヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を持たないので反復処置の使用を可能にするという利点のために、同様な用途に有益であるだろう〔Schroff他 (1985) Cancer Res. 45: 879-885; DeJager他 (1988)Proc. Am. Assoc. Cancer Res 29:377〕。HAMA応答は、治療量の減少をもたらす投与抗体の中和から、アレルギー反応、血清病および腎障害に至るまでの範囲の効果を有する。
ヒトCEAに対するヒト抗体はヒト腺癌のマウス異種移植片モデルにおいて腫瘍限局化に有効であることが本明細書中で示される。
用語法
特異的結合メンバー
これは、互いに結合特異性を有する一対の分子(分子ペア)のメンバーを表す。特異的結合ペアの各メンバーは天然から誘導してもよくまたは完全もしくは部分合成により製造されてもよい。分子ペアの一方のメンバーは、分子ペアの他方のメンバーの特定の空間的および極性的構造に特異的に結合し、従って該特定構造に相補的である、表面上の一領域またはキャビティを有する。よって分子ペアの両メンバーは互いに特異的に結合する性質を有する。特異的結合ペアの型の例は、抗原−抗体、ビオチン−アビジン、ホルモン−ホルモンレセプター、レセプター−リガンド、酵素−基質である。本出願は抗原−抗体型反応と関係がある。
抗体
これは、天然のものであるかまたは部分もしくは完全合成により製造された免疫グロブリンである。この用語は、抗体結合ドメインであるかまたはそれと相同である結合ドメインを有する、任意のポリペプチドまたはタンパク質も包含する。それらは天然源から誘導することができ、または部分的にもしくは完全に合成してもよい。抗体の例は免疫グロブリンイソタイプおよびそれらのイソタイプサブクラス;抗原結合ドメインを含んで成る断片、例えばFab, scFv,Fv, dAb, Fd ;並びにダイアボディである。
モノクローナル抗体および他の抗体の形を取り、そして元の抗体の特異性を保持している別の抗体またはキメラ抗体を生産するために組換えDNA技術を使用することも可能である。そのような技術は、或る抗体の免疫グロブリン可変領域または相補性決定領域(CDR)をコードするDNAを、別の免疫グロブリンの定常領域または定常領域+フレームワーク領域に導入することを伴ってもよい。例えば、EP-A-184187 、GB-2188638A またはEP-A-239400 を参照のこと。ハイブリドーマまたは抗体を産生する他の細胞を遺伝的変異または他の変異にかけることができるが、そのような変異は生産される抗体の結合特異性を変えても変えなくてもよい。
抗体は様々な方法で変更することができるので、「抗体」という語は、必要な特異性を持つ結合ドメインを有するどんな特異的結合メンバーまたは物質でも包含すると解釈すべきである。従って、この用語は抗体断片、抗体の誘導体、機能的等価物および同族体を包含し、天然のものにせよ完全にもしくは部分的に合成のものにせよ、免疫グロブリン結合ドメインを含んで成る任意のペプチドを包含する。従って、別のポリペプチドに融合された免疫グロブリン結合ドメインまたは等価物を含んで成るキメラ抗体も含まれる。キメラ抗体のクローニングおよび発現は、EP-A-0120694とEP-A-0125023に記載されている。
完全抗体の断片が抗原結合機能を果たし得ることも証明されている。結合性断片の例は(i)VL,VH,CLおよびCH1ドメインから成るFab断片;(ii)VHドメインとCH1ドメインから成るFd断片;(iii )単一抗体のVLドメインとVHドメインから成るFv断片;(iv)VHドメインから成るdAb断片〔Ward, E.S.他, Nature 341, 544-546 (1989)〕;(v)単離されたCDR領域;(vi)2つの連結されたFab断片を含んで成る二価断片であるF(ab')2;(vii )VHドメインとVLドメインを会合させて抗原結合部位を形成できるようにするペプチドリンカーによってVHドメインとVLドメインが連結されている一本鎖Fv分子(scFv)〔Bird他, Science, 242, 423-426 (1988); Huston他, PNAS USA,85, 5879-5883 (1988)〕;(viii)二特異性一本鎖Fv 二量体(PCT/US92/09965);および(ix)遺伝子融合により作製された多価または多特異性断片「ダイアボディ」(WO94/13804; P. Holliger 他,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 6444-6448, 1993)である。
ダイアボディは、各ポリペプチドが免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含んで成る第一ドメインと免疫グロブリン重鎖の結合領域を含んで成る第二ドメインを含んで成り、この2つのドメインは(例えばペプチドリンカーによって)連結されているが互いに会合して抗原結合部位を形成することはできない、ポリペプチドの多量体である。抗原結合部位は、多量体中の1つのポリペプチドの第一ドメインと該多量体中の別のポリペプチドの第二ドメインとの会合により形成される(WO 94/13804)。
二特異性抗体を使用する予定であるなら、従来の二特異性抗体であることができ、それらは様々な方法で製造することができ〔Holliger, P.およびWinter G. Current Opinion Biotechnol. 4,446-449 (1993)〕、例えば化学的にまたはハイブリッドハイブリドーマから調製することができ、あるいは上述した二特異性抗体断片のいずれかであることができる。完全抗体よりもむしろscFv二量体またはダイアボディを使用することが好ましいかもしれない。抗イディオタイプ反応の影響を潜在的に減少させる可変領域のみを使って、Fc領域を使わずにダイアボディおよびscFvを作製することができる。二特異性抗体の他の形態としては、Traunecker他, EMBO J.10, 3655-3659 (1991)に記載された一本鎖"Janusins"が挙げられる。
二特異性完全抗体に対抗するものとしての、二特異性ダイアボディ(diabody)も、それらが大腸菌(E.コリ)中で容易に作製できそして発現させることができるために、特に有用であり得る。適当な結合特異性のダイアボティ(および抗体断片のような多数の他のポリペプチド)は、ファージ表示(WO94/13804)を使ってライブラリーから容易に選択することができる。例えば抗原Xに対して向けられた特異性を有するダイアボディの1本のアームを一定に維持しようとするならば、もう一本のアームが異なるライブラリーを調製し、そして適当な特異性を有する抗体を選択することができる。
抗原結合ドメイン
これは、抗原の一部または全部に特異的に結合し且つ相補的である領域を含んで成る抗体の部分を表す。抗原が大きい場合、抗体は抗原の特定部分にのみ結合することができるが、その部分はエピトープと呼ばれる。抗原結合ドメインは1または複数の抗体可変ドメインにより提供することができる。好ましくは、抗原結合ドメインは抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体重鎖可変領域(VH)を含んで成る。
特異的
これは、特異的結合ペアの一方のメンバーがそれの1または複数の特異的結合相手以外の分子に対して何ら有意な結合を示さないような状況を指すために用いられる。この語は、例えば抗原結合ドメインが、多数の抗原が担持している特定のエピトープに対して特異的である場合にも用いることができ、その場合には、該抗原結合ドメインを有する特異的結合メンバーは該エピトープを担持している様々な抗原と結合するだろう。
機能的に等価の変異体形
これは、別の分子(親分子)に対して構造上の相違を有するけれども、有意な相同性および親分子の生物学的機能の少なくとも部分(例えば特定の抗原またはエピトープを結合する能力)を保持している分子(変異体)のことを言う。変異体は断片、誘導体または突然変異体の形態であることができる。変異体、誘導体または突然変異体は1もしくは複数のアミノ酸の付加、削除、置換もしくは挿入による、または別の分子の結合による、親分子の変更によって得ることができる。それらの変更はヌクレオチドレベルまたはタンパク質レベルで行うことができる。例えば、コードされるポリペプチドがFab断片であり、それを次いで別の起源からのFc尾部に連結せしめることができる。あるいは、酵素、フルオレセイン等のようなマーカーを連結せしめてもよい。
本発明は一般的に、ヒトCEAに対して特異的であるヒト抗体の抗原結合ドメインを含んで成る特異的結合メンバー(ポリペプチドを含む)を提供する。
図1aは、CEA に特異的な抗体のVH遺伝子のヌクレオチド配列とアミノ酸配列を示す。免疫してないヒトライブラリーから誘導されたCEA 特異的scFv配列の整列。図面の上のパネルはクローンCEA1〜CEA7のVH遺伝子のアミノ酸配列を示し;下のパネルは同クローンのヌクレオチド配列を示す。CDR=相補性決定領域。 図1bは、CEA に特異的な抗体のVL遺伝子のヌクレオチド配列とアミノ酸配列を示す。免疫してないヒトライブラリーから誘導されたCEA 特異的scFv配列の整列。図面の上のパネルはクローンCEA1〜CEA7のVL遺伝子のアミノ酸配列を示し;下のパネルは同クローンのヌクレオチド配列を示す。クローン間の同一配列はドットにより表される。 図2は、VH CDR3 の変異誘発によりCEA6から誘導されたクローンの配列を示す。CEA6のVH遺伝子と重鎖CDR3の変異誘発により誘導された4つのクローンのVH遺伝子の整列されたアミノ酸配列。クローン間の同一配列はドットにより表される。 図3は、VL CDR3 の変異誘発によりCEA6から誘導されたクローンの配列を示す。CEA6のVL遺伝子と重鎖CDR3の変異誘発により誘導された3つのクローンのVL遺伝子の整列されたアミノ酸配列。クローン間の同一配列はドットにより表される。 図4は、CEA6のVL遺伝子と軽鎖入替えにより誘導された3つのクローンのVL遺伝子の整列されたアミノ酸配列を示す。クローン間の同一配列はドットにより表される。各クローンの最も相同な生殖細胞系列遺伝子は次のものである: CEA6 L12a TO6D4 DPK9 TO6D8 DPK9 TO6D12 Hu102 図5−1は、CEA6のフローサイトメトリー分析とCEA を発現しているHeLa細胞上でのCEA6由来クローンの選択を示す。上のパネル(図5a)は、CEA 発現細胞への検出抗体 9E10 のバックグラウンド結合(scFvの添加なし)を示す。全てのCEA 特異的クローンは蛍光細胞の数(x軸)の約10倍のシフトを示し、よってそれらの細胞への抗CEA scFv結合を証明する。(図5a−陰性対照;図5b−T06D4 ;図5c−T06D12;図5d−HBB11 ;図5e−T06D11;図5f−T06D10;図5g−CEA6)。 図5−2は、CEA6のフローサイトメトリー分析とCEA を発現しているHeLa細胞上でのCEA6由来クローンの選択を示す。上のパネル(図5a)は、CEA 発現細胞への検出抗体 9E10 のバックグラウンド結合(scFvの添加なし)を示す。全てのCEA 特異的クローンは蛍光細胞の数(x軸)の約10倍のシフトを示し、よってそれらの細胞への抗CEA scFv結合を証明する。(図5a−陰性対照;図5b−T06D4 ;図5c−T06D12;図5d−HBB11 ;図5e−T06D11;図5f−T06D10;図5g−CEA6)。 図6は、0.01〜1μg/mlの濃度の遊離形CEA の存在下で測定した、CEA6のフローサイトメトリー分析とCEA を発現しているHeLa細胞におけるCEA6由来クローンの選択を示す。この図は、遊離形CEAがCEAを発現しているHeLa細胞と抗CEA scFvを目当てに競争できないことを示す。対照的に、対照抗体(MFE) は1μg/ml遊離形CEA の濃度で該細胞と競争する。FSG1=陰性対照。MFI=平均蛍光強度。 図7−1は、CEA6のフローサイトメトリー分析とCEA 陰性Chang ヒト肝細胞におけるCEA6由来クローンの選択を示す。上のグラフ(図7a)はCEA6の一成分が肝細胞に結合していることを証明し、一方でTO6D4 (図7b)、TO6D12(図7c)、TO6D11(図7e)、TO6D10(図7f)およびFSG1(無関連の非CEA 特異的scFv=陰性対照)(図7g)は同じようには結合しない。HBB11 (図7d)は、蛍光細胞の幅広のピークにより表されるように、前記肝細胞に対する交差反応性を幾らか示す。 図7−2は、CEA6のフローサイトメトリー分析とCEA 陰性Chang ヒト肝細胞におけるCEA6由来クローンの選択を示す。上のグラフ(図7a)はCEA6の一成分が肝細胞に結合していることを証明し、一方でTO6D4 (図7b)、TO6D12(図7c)、TO6D11(図7e)、TO6D10(図7f)およびFSG1(無関連の非CEA 特異的scFv=陰性対照)(図7g)は同じようには結合しない。HBB11 (図7d)は、蛍光細胞の幅広のピークにより表されるように、前記肝細胞に対する交差反応性を幾らか示す。 図8はベクター pUC119MCH中のクローニング部位を示す。このベクターはpUC119由来であり、次の特徴を有する:CAT リーダー配列(ハイブリッド遺伝子III −pelBリーダー);ユニークNcoIおよびSfiI 5′クローニング部位;ユニークNotI 3′クローニング部位;myc タグ(9E10による検出のため);部位特異的標識のための単一システイン残基;IMAC精製のためのヘキサヒスチジンタグ。 図9は、ヒト結腸腺癌のマウス異種移植モデルにおける99mテクネチウム標識CEA6 scFV の組織対血液比(種々の組織について)を示す。塗りつぶした棒は注射後3時間目の値であり、陰影を付けた棒は注射後24時間目の値である。24時間後、血液中のものに対する組織中に取り込まれた放射能の比は約3.0 である。 図10は、ヒト結腸腺癌のマウス異種移植モデルにおける99mテクネチウム標識CEA6の注射後3時間および24時間目の生体分布(種々の組織)を示す。塗りつぶした棒は注射後3時間目の値であり、陰影を付けた棒は注射後24時間目の値である。24時間後、注入線量の2〜3%が腫瘍に特異的に局在化することがわかる。 図11は、ベクターpUC119EHIS中のクローニング部位を示す。このベクターはpUC119由来であり、次の特徴を有する:ユニーククローニング部位 SfiI, PstI, XhoI, NotI ;抗Eタグ抗体(Pharmacia)による検出のためのEタグ;IMAC精製のためのヘキサヒスチジンタグ。 図12aは様々なVH遺伝子セグメントのヌクレオチド配列を示す。 図12bは様々なVL遺伝子セグメントのヌクレオチド配列を示す。 図13は、CEA1、CEA2、CEA3、CEA4、CEA5およびCEA6がK1 PSAを認識するかどうかを評価するためのELISA の結果を示す(OD450nm 対CEA クローン番号)。 図14は、ELISA による固定化CEA に結合するクローンCEA1、CEA2、EA3、CEA4、CEA5およびCEA6の能力に対する、K1またはCAポリシアル酸(PSA) との予備インキュベーションの効果を示す。1=生来のCEA に関するシグナル;2=scFvをK1と共に予備インキュベーションした時のシグナル;3=scFvをCAと共に予備インキュベーションした時のシグナル。(図14a−CEA1;図14b−CEA2;図14c−CEA3;図14d−CEA4;図14e−CEA5;図14f−CEA6)。 図15は、ELISA によって測定した490 nmでの吸光度としてプロットした、様々な精製scFvに対する選ばれたペプチドファージの結合親和力を示す。 図16は、選ばれたペプチドファージを使ったCEA へのscFv CEA6の結合の阻害を示す。結果は405 nmで測定した吸光度としてプロットされる。 図17は、注射後3、6、18および24時間目の種々の組織に局在化された様々な125I標識scFvの注入線量の平均百分率を示す。
1つの観点では、結合ドメインはヒトCEAに対して1.0 ×10−8M未満、好ましくは5.0 ×10−9M未満の解離定数を有する。
ヒト癌胎児性抗原に対して特異的なヒト抗体抗原結合ドメインを含んで成る特異的結合メンバーであって、前記結合ドメインがヒト癌胎児性抗原に対して1.0 ×10−8M未満の解離定数を有する特異的結合メンバーは、次のもの:
i) CEA6のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図1aに示される)とCEA6のVLドメイン(そのアミノ酸配列は図1bに示される);
ii) CEA6のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図1aに示される)と、TO6D4, TO6D8およびTO6D12(それらのアミノ酸配列は図4に示される)から選ばれたVLドメイン;
ii ) CEA6のVLドメイン(そのアミノ酸配列は図1bに示される)と、TO6D10, HBA11, HBB11およびHBB6(それらのアミノ酸配列は図2に示される)から選ばれたVHドメイン;および
iv) TO6D11のもの、即ちTO6D10のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図2に示される)と、TO6D12のVLドメイン(そのアミノ酸配列は図4に示される)
から選ばれた、VHドメインとVLドメインのペアを含んで成る結合ドメインを含むことができる。
別の観点では、特異的結合メンバーはヒト肝細胞、例えばヒト肝細胞系と結合もしくは交差反応しないかまたは有意に結合もしくは交差反応しない。それがヒトCEAへの結合と比較して有意でないとすれば、ヒト肝細胞との交差反応性結合は低いだろう。よって、特異的結合メンバーはヒト肝細胞と実質的に非交差反応性であることができる。同様に、それは他の正常組織または細胞、例えば血管内皮、筋肉、好中球、赤血球またはリンパ球を結合しないかまたは有意に結合しない。正常リンパ球および好中球との反応性が無いことは、NCAとの高レベルの交差反応性が無いことを暗示する。
結合ドメインがヒト肝細胞と実質的に非交差反応性である、ヒト癌胎児性抗原に特異的なヒト抗体抗原結合ドメインを含んで成る特異的結合メンバーは、次のもの:
i) CEA6のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図1aに示される)と、TO6D4 およびTO6D12から選ばれたVLドメイン(それらのアミノ酸配列は図4に示される)
ii) CEA6のVLドメイン(そのアミノ酸配列は図1bに示される)と、TO6D10のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図2に示される);および
iii ) TO6D11のもの、即ちTO6D10のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図2に示される)と、TO6D12のVLドメイン(そのアミノ酸配列は図4に示される)
から選ばれた、VHドメインとVLドメインのペアを含んで成る結合ドメインを含むことができる。
特異的結合メンバーは細胞性CEAまたは可溶性CEAと結合することができるが、それは細胞性CEAに優先的に結合するだろう。
結合ドメインが可溶性ヒト癌胎児性抗原よりも細胞性ヒト癌胎児性抗原に優先的に結合する、ヒト癌胎児性抗原に特異的なヒト抗体抗原結合ドメインを含んで成る特異的結合メンバーは、次のもの:
i) CEA6のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図1aに示される)とCEA6のVLドメイン(そのアミノ酸配列は図1bに示される);
ii) CEA6のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図1aに示される)と、TO6D4 およびTO6D12から選ばれたVLドメイン(それらのアミノ酸配列は図4に示される)
iii ) CEA6のVLドメイン(そのアミノ酸配列は図1bに示される)と、TO6D10およびHBB11 から選ばれたVHドメイン(それらのアミノ酸配列は図2に示される);および
iv) TO6D11のもの、即ちTO6D10のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図2に示される)と、TO6D12のVLドメイン(そのアミノ酸配列は図4に示される)
から選ばれた、VHドメインとVLドメインのペアを含んで成る結合ドメインを含むことができる。
本発明の更に別の観点による特異的結合メンバーは、ヒトCEAの糖質エピトープに特異的である。例としては、CEA1、CEA2、CEA3、CEA4およびCEA5のいずれかのVHとVLペアを含んで成る特異的結合メンバーが挙げられる。それらのVHドメインのアミノ酸配列は図1aに示され、そしてVLドメインのアミノ酸配列は図1bに示される。
更なる観点では、本発明は、ヒトCEAのA3−B3細胞外ドメインに(好ましくは特異的に)結合するヒト抗体抗原結合ドメインを含んで成る特異的結合メンバーを提供する。そのような特異的結合メンバーは、次のもの:
i) CEA6のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図1aに示される)とCEA6のVLドメイン(そのアミノ酸配列は図1bに示される);
ii) CEA6のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図1aに示される)と、TO6D4, TO6D8およびTO6D12から選ばれたVLドメイン(それらのアミノ酸配列は図4に示される);
iii ) CEA6のVLドメイン(そのアミノ酸配列は図1bに示される)と、HBA11, HBB11およびHBB6から選ばれたVHドメイン(それらのアミノ酸配列は図2に示される);
iv) TO6D11のもの、即ちTO6D10のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図2に示される)と、TO6D12のVLドメイン(そのアミノ酸配列は図4に示される);および
v) CEA6のVHドメイン(そのアミノ酸配列は図1aに示される)と、LOB1C, LOE17およびLOSC2 から選ばれたVLドメイン(それらのアミノ酸配列は図3に示される)
から選ばれた、VHドメインとVLドメインのペアを含んで成ることができる。
特異的結合メンバーは抗体断片、例えば一本鎖Fv(scFv)の形であってもよい。Fab, Fab', F(ab')2, Fabc, Facbまたはダイアボディ(G. Winter およびC. Milstein, Nature 349, 293-299, 1991 ;WO 94/13804 )のような他の形の抗体断片を使うこともできる。特異的結合メンバーは完全抗体の形であってもよい。完全抗体は抗体イソタイプ、例えばIgG、IgA、IgD、IgEおよびIgM の形態のいずれか並びにイソタイプサブクラス、例えばIgG1またはIgG4の形態のいずれかであることができる。
特異的結合メンバーは操作された抗体、例えばCEAに対する1つの抗原結合アーム(即ち特異的ドメイン)と別の特異性に対するもう1つのアームとを有する二特異性抗体分子(またはF(ab')2のような断片)であるか、または二価もしくは多価分子の形であってもよい。
抗体配列に加えて、特異的結合メンバーは別のアミノ酸、例えばペプチドもしくはポリペプチドを構成するアミノ酸、あるいは抗原を結合する能力に加えて別の機能的特徴を分子に付与する別のアミノ酸を含んでもよい。例えば、特異的結合メンバーは標識、酵素またはその断片などを含んでもよい。
結合ドメインは生殖細胞系列(ジャームライン)セグメントまたは再配列された遺伝子セグメントによりコードされるVHドメインの部分もしくは全部を含んで成ってもよい。結合ドメインはVLκドメインまたはVLλドメインの部分もしくは全部を含んで成ってもよい。
結合ドメインは下記生殖細胞系列のうちの1つのVH1,VH3またはVH4遺伝子配列を含んで成ることができる:DP71生殖細胞系列;DP47生殖細胞系列;DP67生殖細胞系列;DP32生殖細胞系列;DP10生殖細胞系列もしくはDP14生殖細胞系列;またはそれらの再配列された形。"DP"命名法は Tomlinson, I.M.他, J. Mol. Biol.227: 776-798 (1992) 中に記載されている。
結合ドメインは下記の生殖細胞系列のうちの1つのVλ1,Vλ3またはVκ1遺伝子配列を含んで成ることができる:生殖細胞系列DPL5;生殖細胞系列DPL2;生殖細胞系列DPL16 ;生殖細胞系列L12a;またはそれらの再配列された形。
結合ドメインは、1もしくは複数のフレームワークおよび/または1もしくは複数のCDR中に存在することができる、1もしくは複数のヌクレオチド変更(付加、削除、置換および/または挿入)、例えば約25, 20, 15, 10または5個以下の変更、4,3,2または1個の変更、を有する生殖細胞系列遺伝子の変更形もしくは変異体形であることができる。
結合ドメインは、図1aに示されるいずれかのアミノ酸配列を有するVHドメインの一部もしくは全部、または前記アミノ酸配列の機能的に等価の変異体形を含んで成ることができる。
特に、結合ドメインは、図1aにCDR1, CDR2またはCDR3として示されるアミノ酸配列を有する1または複数のCDR(相補性決定領域)を含んで成ることができる。好ましい態様では、結合ドメインは図1aに示されるCDR3配列を含んで成る。CDRの機能的に等価の変異体も本発明に包含され、特に1もしくは複数のアミノ酸の付加、削除、置換または挿入により指摘のCDR配列とは異なっており、且つ本明細書中に開示される本発明の特異的結合メンバーのCEA結合能力と場合により該特異的結合メンバーの好ましい特徴のうちの1つまたは複数を保持している変異体が含まれる。特に好ましいCEA6 VH の変異体配列が図2に示される。本発明の好ましい態様では、特異的結合メンバーは図2に示されるCDR3配列(またはそれの機能的に等価の変異体形)を含む。特異的結合メンバーは、図2に示されるCDRと隣接して且つそれの間に示されるフレームワーク領域、または示されるものの変形を包含する異なるフレームワーク領域、の全部または一部を含んで成ることができる。"HBA11"および"HBB11" のCDR3配列(図2)のいずれかが使われる場合(例として)、特異的結合メンバーは、どんなフレームワーク領域を使うにしても、指摘した位置(図2)にアルギニン(R)残基を含むことができる。
結合ドメインは図1bに示されるいずれかのアミノ酸配列を有するVLドメインのまたは前記アミノ酸配列の機能的に等価の変異体形の全部または部分を含んで成ることができる。
特に、結合ドメインは、図1bにおいてCDR1, CDR2またはCDR3として示されるアミノ酸配列を有する1または複数のCDR(相補性決定領域)を含んで成ることができる。好ましい態様では、結合ドメインは図1bに示されるCDR3配列を含んで成る。CDRの機能的に等価の変異体形も本発明に含まれ、特に特に1もしくは複数のアミノ酸の付加、削除、置換または挿入により指摘のCDR配列とは異なっており、且つ本明細書中に開示される本発明の特異的結合メンバーのCEA結合能力と場合により該特異的結合メンバーの好ましい特徴のうちの1つまたは複数を保持している変異体が本発明に含まれる。特に好ましいCEA6 VL の変異体配列が図3と図4に示される。本発明の好ましい態様では、特異的結合メンバーは図3または図4に示されるCDR3配列(またはそれの機能的に等価の変異体形)を含む。特異的結合メンバーは図3もしくは図4のCDRと隣接して且つそれの間に示されるフレームワーク領域、または示されるものの変形を包含する異なるフレームワーク領域、の全部または一部を含んで成ることができる。好ましいフレームワーク変更は図4に示され、それらの変更フレームワーク領域は図4に示す"T06D4","T06D8" または"T06D12"のCDR配列のうちの1つもしくは複数と共に使用してもよいし使用しなくてもよい(だが使用が好ましいだろう)。
第一抗体の1または複数のCDR配列がその抗体のものではない(例えば別の抗体の)配列のフレームワーク内に置かれる、いわゆる「CDR移植(grafting)」は、対応米国特許を有するヨーロッパ特許EP-B-0239400中に開示されている。
特定の変異体VLまたはVHドメインは、本明細書中に与えられるいずれかの特定配列中に、1または複数のアミノ酸配列変更(付加、削除、置換および/または挿入)、多分約20個以下の変更、約15個以下の変更、約10個以下の変更、または約5個以下の変更、4個、3個、2個もしくは1個の変更、を含むことができる。変更は1もしくは複数のフレームワーク領域および/または1もしくは複数のCDR中に存在することができる。
本発明に係る特定のVHおよびVL変異体は次のものである:示された配列中のSer53 の削除を除いて図1a中にCEA2 VH について示された配列を含んで成るVHドメイン;示された配列中のGly53の削除を除いて図1a中にCEA3 VH について示された配列を含んで成るVHドメイン;示された配列中のThr10 (これは下のコード配列中のコドン10のACC によりコードされ得る)からセリンへの置換を除いて図1b中にCEA6について示された配列を含んで成るVLドメイン;示された配列中のGln5からVal への置換と残基9〜11のところのAlaGluVal からGluAlaLeu への置換を除いて図2中にCEA6、T06D10、HBA11、HBB11およびHBB6のいずれかについて示されたVL配列を含んで成るVLドメイン;示された配列中のLeu33 からMetへの置換を除いて図3または図4中にCEA6、LOB1C、LOE17、LOSC2、TO6D4、TO6D8およびTO6D12のいずれかについて示されたVL配列を含んで成るVLドメイン;示された配列に対して指摘の変更を有する上記変異体のアミノ酸配列変異体。
本発明の特異的結合メンバーは、CEAを結合し且つ図1a,図1b,図2,図3および図4に示された配列のいずれかの一部または全部を含んで成る任意の特異的結合メンバーと、特に本明細書中にその配列が具体的に開示される任意の特異的結合メンバー(その変異体を含む)と、CEAへの結合を目当てに競争するものであってもよい。例えば、そのような特異的結合メンバーは、CEAのA3−B3ドメインへの優先的結合を目当てにTO6D11もしくはCEA6と競争するか、またはCEAの糖質エピトープへの結合を目当てにCEA1と競争してもよい。結合メンバー間の競争は、例えば、別の未標識の結合メンバーの存在下で検出することができる特定のレポーター分子を1つの結合メンバーに標識として取り付け、同じエピトープまたは重複するエピトープに結合する特異的結合メンバーの同定を可能にすることにより、試験管内で容易にアッセイすることができる。
1観点では、本発明の特異的結合メンバーは次のアミノ酸配列:
(i) Pro Ala Ala Tyr Leu Trp Trp Val Asp Ser、または
(ii) Pro Pro Ala Tyr Leu Tyr Trp Arg Ser Ser
を含むペプチドを結合する(CEA6はそのような特異的結合メンバーの一態様である)。この試験には、上記配列に加えて片側末端に1または複数のアミノ酸(例えばN末端にCGG)を有するペプチドを使うことができる。本発明の特異的結合メンバーは、CEAへのそれらの結合が配列(i) もしくは(ii)のいずれかを有するかまたはそれを含むペプチドにより阻害されるようなものであることができる。この試験には、どちらか一方の配列に加えて1または複数のアミノ酸(例えばN末端にCGG)を有するペプチドを使うことができる。
ペプチド(i) および(ii)のいずれかを結合する特異的結合メンバーは、例えばそのペプチドを使って選別することによりファージ表示ライブラリーから単離することができる。
本発明に係る特異的結合メンバーは単離された形および/または精製された形で提供することができる。
本発明は、ヒトの癌、例えば結腸、肺または乳房の腺癌の形態の診断試薬としての上記特異的結合メンバーの使用を提供する。
CEAに対する特異的結合メンバーは、CEAを発現している腫瘍の存在および位置を具体的に表示するために用いることができる画像診断薬として使用することができる。本発明は、CEAを発現している細胞または腫瘍の存在を決定する方法であって、本発明により提供される特異的結合メンバーと細胞とを接触させ、そして前記細胞への前記特異的結合メンバーの結合を測定することを含んで成る方法を提供する。この方法は、生体内で実施してもよく、または体外に取り出した細胞の試験試料を使って試験管内で実施してもよい。
本発明は、ここに提供される特異的結合メンバーのヒトCEAへの結合を引き起こすかまたは許容することを含んで成る方法を提供する。そのような結合は試験管内または生体内で起こり得る。結合が生体内である場合、この方法は特異的結合メンバーを哺乳類の1または複数の個体に投与することを含んで成る。本明細書中で実験的に証明されるように、本発明の特異的結合メンバーはマウスに異種移植された腫瘍上のヒトCEAと結合し、特異的結合メンバーおよびそれらの性質の調査と開発を目的とした研究のための有用な実験モデルを提供する。
細胞試料における抗体の反応性は、任意の適当な手段によって測定することができる。個々のレポーター分子を使った標識付けが1つの可能性である。レポーター分子は直接的または間接的に検出可能な、好ましくは測定可能なシグナルを生成することができる。レポーター分子の結合は直接的もしくは間接的な共有結合によるもの、例えばペプチド結合を介したもの、または非共有結合によるものであることができる。ペプチド結合を介した結合は、抗体とレポーター分子をコードする融合遺伝子の組換え発現の結果としてあってもよい。
1つの好ましい態様は、スペクトル上分離された吸光または発光特性を有する個々の蛍光色素、リン色素またはレーザー色素と各抗体との共有結合によるものである。適当な蛍光色素としては、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリスリンおよびテキサスレッドが挙げられる。適当な色素染料としてはジアミノベンジジンが挙げられる。
別のレポーター分子としては、巨大分子のコロイド粒子または粒状物質、例えば有色の、磁性もしくは常磁性であるラテックスビーズ、および視覚的に観察されるか、電気的に検出されるか、または他の形で記録され得る検出可能なシグナルを直接的にもしくは間接的に発生させることができる、生物学的もしくは化学的活性物質が挙げられる。それらの分子は、例えば、色を発生もしくは変化させるかまたは電気的性質に変化を引き起こす反応を触媒する酵素であってもよい。それらはエネルギー状態の間の電子遷移が特徴的なスペクトル吸収または発光を引き起こすように、分子的に励起可能であってもよい。そのような分子としては、バイオセンサーと共に使われる化学的存在物を挙げることができる。ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンとアルカリホスファターゼ検出系を使ってもよい。
結合を測定する方式は本発明の特徴でなく、当業者は自らの好みと一般知識に従って適当な方式を選択することができる。
個々の抗体−レポーター接合体により発せられたシグナルを使って、細胞試料(標準および試験試料)から関連する抗体結合の絶対的または相対的データを定量可能に引き出すことができる。加えて、ヨウ化プロピジウムのような一般的な核染色法を使って、試料中の全細胞集団の数を計数して、全細胞に関する各細胞集団の定量的比率を提供することができる。125I、111Inまたは99mTcのような放射性核種を抗体に取りつけた時、その抗体が正常組織よりも腫瘍中に選択的に存在するならば、ガンマカメラを使って腫瘍組織中の放射性標識の存在を検出しそして定量することができる。得られる腫瘍画像の質は、シグナル対ノイズ比に正比例する。CEA抗体を使った癌の画像診断の概説は、Goldenberg D.M. (同文献)により与えられている。
125Iおよび 99mTcの実験的使用は本明細書中に例示される。
本発明は、例えばエフェクター機能を有するように融合タンパク質としてカップリング、結合または操作する時の、治療薬としての上述の特異的結合メンバーの使用にも備える。本発明に係る特異的結合メンバーは、毒素、放射能、T細胞、キラー細胞または他の分子を、CEAを発現している腫瘍にターゲッティングするために使用することができる。
従って、本発明の更なる観点は、本発明により提供されるような特異的結合メンバーの投与を含んで成る治療方法、そのような特異的結合メンバーを含んで成る医薬組成物、および投与のための薬剤の製造における、例えば医薬上許容される賦形剤と共に特異的結合メンバーを配合することを含んで成る薬剤または医薬組成物の製造方法における、そのような特異的結合メンバーの使用を提供する。
本発明に従って提供される組成物は個体に投与することができる。投与は好ましくは「療法的有効量」で行われるが、これは患者に効用が表れるのに十分な量である。そのような効用は少なくとも1つの症状の少なくとも緩和であるだろう。実際の投与量、投与速度および投与スケジュールは、治療しようとするものの性質および重さに依存するだろう。処方、例えば用量決定などは、一般開業医および他の医師の裁量の範囲内である。抗体の適当な用量は当業界で公知である。Ledermann J.A.他 (1991) Int. J. Cancer 47: 659-664;Bagshawe K.D. 他 (1991) Antibody, Immunoconjucates and Radio-pharmaceuticals 4: 915-922を参照のこと。
組成物は単独でまたは処置すべき状態に応じて他の療法と組み合わせて同時にもしくは連続的に投与することができる。
本発明に係る医薬組成物および本発明に従った使用のための医薬組成物は、活性成分に加えて、医薬上許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または当業者に周知の他の物質を含んで成ることができる。そのような物質は無毒性であるべきであり、且つ活性成分の効能を妨害してはならない。担体または他の物質の正確な性質は、経口であるかまたは注射(例えば静注)によることができる投与の経路に依存するだろう。
経口投与用医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粉剤または液剤の形態であることができる。錠剤はゼラチンのような固形担体または補助剤を含んでもよい。液体医薬組成物は、一般に液状担体、例えば水、石油、動物油もしくは植物油、鉱物油または合成油を含んで成る。生理的食塩溶液、ブドウ糖もしくは他の糖類溶液またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールを含めてもよい。
静注または患部注射のためには、活性成分は発熱物質不含有であり且つ適当なpH、等張性および安定性を有する非経口投与に許容される水性溶液の形であるだろう。当業者は、例えば等張の賦形剤、例えば塩化ナトリウム液、リンガー液、乳酸加リンガー液を使って、適当な溶液を調製することが十分可能である。必要ならば、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加剤を含めてもよい。
本発明の特異的結合メンバーは、コードする核酸からの発現により調製することができる。コードする核酸からの発現を含んで成る特異的結合メンバーの生産方法が本発明の一局面を構成するので、提供されるいずれかの特異的結合メンバーをコードする核酸それ自体も本発明の一局面を構成する。発現は、便利には、核酸を含有する組換え宿主細胞を適当な条件下で培養することにより達成することができる。発現による生産後、任意の適当な技術を使って特異的結合メンバーを単離しそして/または精製し、次いで例えば少なくとも1つの別の成分を含んでもよい組成物の処方において、適宜使用することができる。
核酸は図1aおよび図1bに示されるアミノ酸配列、または任意の機能的に等価の形態をコードすることができる。使用する核酸配列は図1aまたは図1bに示されるもののいずれか、あるいはそれらの変異体、対立遺伝子または誘導体であることができる。1もしくは複数のヌクレオチドの付加、置換、削除または挿入により、ヌクレオチドレベルで変更を行ってもよく、そのような変更が遺伝暗号の縮重に応じてアミノ酸レベルに表れてもよいし表れなくてもよい。
多種多様な宿主細胞中でのポリペプチドのクローニングおよび発現系が公知である。適当な宿主としては、細菌、哺乳類細胞、酵母およびバキュロウイルス系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現のための技術の現状で利用可能な哺乳類細胞系としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞および多数の他のものが挙げられる。一般に好ましい細菌宿主は大腸菌(E.コリ)である。
E.コリのような原核細胞中での抗体および抗体断片の発現は技術の現状で十分に確立されている。概説については、例えばPluckthun, A., Bio/Technology 9: 545-551 (1991) を参照のこと。培養真核細胞中での発現も、特異的結合メンバーの生産のためのオプションとして当業者に利用可能である。最近の概説については、例えばReff, M.E. (1993) Curr. Opinion Biotech. 4: 573-576 ;Trill, J.J. 他(1995) Curr. Opinion Biotech. 6: 553-560を参照のこと。
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および適当な他の配列を包含する適当な調節配列を含有する適当なベクターを選択しまたは作製することができる。ベクターは適宜プラスミド、ウイルスのファージまたはファジミドであることができる。更なる詳細については、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual: 第2版,Sambrook他, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press を参照のこと。例えば核酸構成物の調製、突然変異誘発、塩基配列決定、細胞中へのDNAの導入および遺伝子発現における核酸の操作、並びにタンパク質の分析のための多数の既知技術およびプロトコールが、Short Protocols in Molecular Biology, 第2版,Ausubel 他編,John Wiley & Sons, 1992 中に詳細に記載されている。Sambrook他とAusubel 他の開示は参考として本明細書中に組み込まれる。
本発明の別の観点は、本明細書中に開示されるような核酸を含有する宿主細胞を提供する。更に別の観点は宿主細胞中にそのような核酸を導入することを含んで成る方法を提供する。この導入は任意の利用可能な技術を用いることができる。真核細胞の場合、適当な技術としてはリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクション、レトロウイルスまたは他のウイルス、例えばワクシニア、または昆虫細胞の場合はバキュロウイルス、を使った形質導入が挙げられる。細菌細胞の場合、適当な技術としては塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを使ったトランスフェクションが挙げられる。
導入に続いて、例えば該遺伝子の発現条件下で宿主細胞を培養することにより、核酸からの発現を引き起こすかまたは可能にすることができる。
一態様では、本発明の核酸は宿主細胞のゲノム(例えば染色体)中に組み込まれる。組み込みは、標準技術に従って、ゲノムとの組換えを促進する配列を含めることにより促進することができる。
特異的結合メンバーの生産後、例えば本明細書中に開示される方法のいずれか、例えば医薬品のような組成物の処方に、または開示されるように、特異的結合メンバーに加えて細胞への該メンバーの結合を測定するための1もしくは複数の試薬を含んで成るキットのような診断用品の処方に用いることができる。
本発明の別の観点および態様は当業者に明白であろう。本発明を十分に理解するために、下記の実施例を限定のためではなく例示のためにのみ与える。次の図面を参照する。
本明細書中に引用される全ての文書は参考として組み込まれる。
実施例の目録
実施例1:CEA に特異的な抗体の単離
実施例2:CEA へのscFv断片の結合親和力の測定
実施例3:細胞性CEA へのCEA 特異的抗体の結合の証明
実施例4:ヒト肝細胞系に対する抗CEA 抗体の特異性の変化の証明
実施例5:CEA に特異的な抗体のエピトープマッピング
実施例6:ヒト結腸腺癌異種移植片へのCEA 特異的抗体の生体内限局化
実施例7:CEA6およびTO6D11のドメイン認識の更なる調査
実施例8:CEA1, CEA2, CEA3, CEA4およびCEA5の結合特異性の分析
実施例9:CEA1, CEA2, CEA3, CEA4, CEA5およびCEA6並びにCEA6の親和力成熟変異体の免疫細胞化学
実施例10:ヒト結腸腺癌への125I標識抗CEA 抗体の限局化
実施例11:CEA に特異的な抗体のエピトープマッピングの改良
実施例12:CEA に特異的な125I標識scFvの腫瘍取込みおよび正常組織生体分布の分析
実施例1:CEA に結合する抗体の単離および特徴づけ
1. 免疫されてないファージ抗体レパートリーの選択による、ヒトCEA に対する抗体の同定および特徴づけ
抗体レパートリー
次の抗体レパートリーを使った:
扁桃、骨髄および末梢血リンパ球を含むリンパ系組織から誘導された大規模一本鎖Fvライブラリー。
43人の非免疫処置提供者から、"Quickprep mRNA キット"(Pharmacia) を使って、様々なリンパ系組織のB細胞からポリアデニル化RNAを調製した。" 第一鎖cDNA合成キット" (Pharmacia)を使って、合成を開始するのにランダムヘキサマーを用いてmRNAから第一鎖cDNAを合成した。以前に記載されたような〔Marks 他(1991) J. Mol. Biol. 222: 581-597 〕VH,VκおよびVλ遺伝子用のファミリー特異的プライマーを使ってV遺伝子を増幅せしめ、続いてPCR集成により(Gly4, Ser)scFvリンカーと一緒に組み換えた。VH−リンカー−VL抗体構成物をファジミドベクターpCANTAB 6 の SfiI部位と NotI部位の中でクローニングした。連結、エレクトロポレーションおよび細胞の平板分離は以前に記載された通りであった(Marks 他, 前掲)。ライブラリーは、使用するベクターと挿入断片の量を増やしそして多重エレクトロポレーションを実施することにより、以前に記載されたものよりも約1000倍大きな規模になった。これは、Bst NIフィンガープリント法によって極めて多様であることが示された約6.0 ×10個体の組換え体を有すると計算されるscFvレパートリーをもたらした。
a.ファージ抗体ライブラリーの誘導
上記のファージ抗体ライブラリーをCEA に対する抗体について選択した。ファジミド粒子を救済するために次のようにレパートリーを処理した。2lの三角フラスコ中の500 mlの予熱した(37℃)2YTAG (100μg/mlアンピシリンと2%グルコースが補足された2YT培地)に、該ライブラリーのグリセロール保存(−70℃)培養物からの約3×1010個の細胞を接種した。十分に通気しながらOD600nmが0.7 に達するまで(約2時間)培養物を37℃で増殖させた。約10の感染多重度(moi) にM13K07ヘルパーファージ(Stratagene)を培養物に加えた(OD600nm =1は、培養物1mlあたり5×10個の細胞に等しい)。培養物を37℃で15分間静置インキュベートした後、軽く通気しながら(200 rpm )同じ温度で45分間インキュベートした。培養物を遠心分離し、細胞ペレットから上清を排水した。細胞を500 mlの 2YTAK(100 μg/mlアンピシリンと50μg/mlカナマイシンが補足された2YT 培地)中に再懸濁し、十分に通気しながら(300 rpm) 30℃で一晩インキュベートした。3回のポリエチレングリコール(PEG)沈澱によりファージ粒子を精製・濃縮し〔Sambrook, J., Fritsch, E.F. & Maniatis, T.(1990) Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour, New York〕そして1012形質導入単位(tu)/ml(アンピシリン耐性クローン)になるようにPBS中に再懸濁した。
b.CEA上でのファージ抗体ライブラリーの選別
前記レパートリーから誘導したファージをCEA上で選別した。75mm×12mmの免疫用チューブ(Nunc; Maxisorp)を、PBS中の組換えヒトCEA(20 ug/ml, Genzyme )1mlで37℃で一晩コーティングした。PBSで3回洗浄した後、該チューブを3%MPBS(3%"Marvel"脱脂粉乳、1×PBS)で充たし、37℃で2時間インキュベートしてブロックした。洗浄を繰り返し、1 mlの3%MPBS中のファジミド粒子(1013 tu )を添加し、チューブを静置状態で37℃で1時間インキュベートした。チューブをPBST(0.1 %)で20回洗浄し、次いでPBSで20回洗浄した。1mlの100 mMトリエチルアミンを加えそして該チューブを静置状態で室温で10分間インキュベートすることによって、結合したファージ粒子をチューブから溶出させた。溶出した物質を0.5 mlの1M Tris-HCl (pH 7.4)の入ったチューブの中にピペットで加えることにより、即座に中和した。ファージを4℃で貯蔵した。溶出したファージ0.75mlを使って、対数増殖期のE.コリ TG110mlに感染させた(Gibson, T.J. (1984) 博士論文,University of Cambridge )。感染した細胞を2YT ブロス中で軽く通気しながら37℃で1時間増殖させ、次いで243 mm×243 mmの皿(Nunc)に入った2YTAG 培地の上に塗布した。この平板を30℃で一晩インキュベートした。平板からコロニーをかき取って10mlの2YTブロス中に移し、−70℃での保存用に15%(v/v) グリセロールを加えた。
CEA上でのレパートリーの第1回選別からのグリセロール保存培養物をヘルパーファージを使って救済して、第二回選別のためのファジミド粒子を得た。グリセロール保存培養物 250μlを使って50mlの2YTAG ブロスに接種し、そしてOD600nm が0.7 に達するまで(約2時間)、250 mlの三角フラスコ中で十分に通気しながら37℃でインキュベートした。M13K07ヘルパーファージ(moi =10)を培養物に加え、次いで該培養物を静置状態で37℃で15分間インキュベートした後、軽く通気しながら(200 rpm )同じ温度で45分間インキュベートした。培養物を遠心分離し、細胞ペレットから上清を排水した。細胞を予熱した2YTAK 50ml中に再懸濁し、十分に通気しながら培養物を30℃で一晩インキュベートした。PEG沈澱(Sambrook他,1990)によりファージ粒子を精製・濃縮し、そして1013 tu /mlになるようにPBS中に再懸濁した。
レパートリーの第1回選別から得られたファージを上述したように第2回選別した。ファージ増殖および選別工程を第3回と第4回選別に渡って繰り返した。
c.イムノアッセイのための選ばれた単一クローンの増殖
第3回および第4回選別からの個々のコロニーを使って、96ウエルの組織培養プレート(Corning) の各ウエルに入れた100 μlの2YTAG に接種した。このプレートを適度に振盪しながら (200 rpm)30℃で一晩インキュベートした。15%になるようにグリセロールを各ウエルに加え、それらのマスタープレートを分析の用意ができるまで−70℃で保存した。
d.抗CEA scFvを同定するためのELISA
ファージ上に表示されたscFvまたは可溶性scFvを使って、ELISAによりCEA に特異的なクローンを同定した。
(i) ファージ ELISA
マスタープレートからの細胞を、ウエルあたり100 μlの2YTAGを含む新鮮な96ウエルの組織培養プレートに接種した。ウエル中の細胞が対数的に増殖するようになるまで(OD600 =0.2 〜1.0 )、それらのプレートを37℃で6〜8時間インキュベートした。各ウエルにmoi =10でM13K07を加え、静置状態で15分間インキュベートし、次いで穏やかに振盪しながら(100 rpm )45分間インキュベートした(共に37℃で)。プレートを2000 rpmで10分間遠心分離し、上清を除去した。各細胞ペレットを100 μlの2YTAK 中に再懸濁し、30℃で一晩インキュベートした。
各プレートを2000 rpmで遠心分離し、各ウエルから上清 100μlを回収し、20μlの18%M6PBS (18%脱脂粉乳、6×PBS )中でブロックし、静置状態で室温で1時間インキュベートした。一方で、PBS 中0.5 μg/ml CEA 100 μlまたは PBSのみ 100μl(未コーティングの対照プレートを与える)のいずれかにより静止状態で37℃で一晩コーティングしておいたフレキシブルマイクロタイタープレートを、PBS 中で3回洗浄し、次いで静置状態で3MPBS 中で室温で2時間ブロックした。それらのプレートをPBSで3回洗浄し、CEAコーティングしたプレートまたは未コーティングのプレートの両プレートの各ウエルに50μlの予備ブロック済ファージを加えた。両プレートを静置状態で37℃で1時間インキュベートした後、ファージを流し出した。PBST中で2分間ずつ3回インキュベートし、次いでPBS 中で2分間ずつ3回インキュベートすることにより(全て室温で)プレートを洗浄した。
CEA コーティングしたプレートと未コーティングのプレートの両プレートの各ウエルに、3MPBS 中のヤギ抗fd抗体(Pharmacia) の1:10,000希釈液50μlを添加し、静置状態で37℃で1時間プレートをインキュベートした。各プレートを上記と同様に洗浄し、3MPBS 中のロバ抗ヒツジアルカリホスファターゼ接合体(Sigma) の1:5,000希釈液50μlを加え、静置状態で37℃で1時間インキュベートした。各プレートを上記と同様に洗浄した後、0.9 %NaCl中で2回すすいだ。色素生成基質pNPP (Sigma)またはAmpak 系 (Dako) のいずれかを使ってアルカリホスファターゼ活性を視覚化した。マイクロタイタープレートリーダーを使って 405 nm (pNPP)または 492 nm(Ampak) のいずれかで光学濃度を測定することにより、各クローンにより生成される吸光度シグナルを評価した。CEA コーティングしたプレート上に生じたELISA シグナルが未コーティングのプレート上のELISA シグナルの少なくとも2倍であったならば、そのクローンを更なる分析のために選択した。
(ii)可溶性ELISA
マスタープレートからの細胞を使って、ウエルあたり100 μlの2YTAG を含む新鮮な96ウエルの組織培養プレートに接種した。それらのプレートを30℃で8時間インキュベートし、次いで2000 rpmで10分間遠心分離し、上清を除去した。各細胞ペレットを、1mM IPTGを含む 2YTAK 100μl中に再懸濁し、30℃で一晩インキュベートした。
各プレートを2000 rpmで遠心分離し、各ウエルから上清 100μlを回収し、20μlの18%M6PBS 中で静置状態で室温で1時間ブロックした。一方で、PBS 中 0.5μg/ml CEA 100 μlまたは PBSのみ100 μlのいずれかにより静止状態で37℃で一晩コーティングしておいたフレキシブルマイクロタイタープレートを、PBS 中で3回洗浄し、次いで静置状態で3MPBS 中で37℃で2時間ブロックした。それらのプレートをPBS で3回洗浄し、CEA コーティングしたプレートまたは未コーティングのプレートの両方の各ウエルに50μlの予備ブロック済の可溶性scFvを加えた。それらのプレートを静置状態で37℃にて1時間インキュベートした後、scFv溶液を流し出した。PBST中で2分間ずつ3回インキュベートし、次いでPBS 中で2分間ずつ3回インキュベートすることにより(全て室温で)、両プレートを洗浄した。
CEA コーティングしたプレートと未コーティングのプレートの両プレートの各ウエルに、3MPBS 中の抗myc tag マウス抗体 9E10〔Munro, S. & Pelham, H.R.B. (1986) Cell 46, 291-300〕の1:200 希釈液100 μlを添加し、静置状態で37℃で1時間プレートをインキュベートした。各プレートを上記と同様に洗浄し、3MPBS 中のヤギ抗マウスアルカリホスファターゼ接合体(Pierce)の1:5,000希釈液100 μlを加え、静置状態で37℃で1時間インキュベートした。各プレートを上記と同様に洗浄した後、0.9 %NaCl中で2回すすいだ。色素生成基質pNPP (Sigma)を使ってアルカリホスファターゼ活性を視覚化した。マイクロタイタープレートリーダーを使って405 nm (pNPP) で光学濃度を測定することにより、各クローンにより生成される吸光度シグナルを評価した。CEA コーティングしたプレート上に生じたELISA シグナルが未コーティングのプレート上のELISA シグナルの少なくとも2倍であったならば、そのクローンを更なる分析のために選択した。
(iii) 特異性ELISA
上述のように未コーティングのウエルよりもCEA を結合すると確認されたクローンを更に特異性について分析した。ファージ上に表示されたscFvまたは溶液中のscFvを使って、上述した通りに特異性ELISA を実施した。ただし、50mlのFalconチューブに入れた培地5mlに各クローンを接種しそして増殖させて、ELISA に使用するファージscFvまたは可溶性scFvを調製した。マイクロタイタープレートの各ウエルを0.5 μg/ml CEA、10μg/ml ウシ血清アルブミン(BSA) 、10μg/ml オボアルブミン、10μg/ml リゾチーム、10μg/ml アオガイヘモシアニン(KLH) またはPBS (未コーティングのウエル)のいずれか 100μlによりコーティングした。ファージ(または可溶性scFv)とマイクロタイタープレートの両方を予備ブロックした後、各クローンからの50μlブロック済ファージ(または可溶性scFv)を、CEA 、BSA 、オボアルブミン、リゾチーム、KLH のいずれかでコーティングしたウエルまたは未コーティングウエルに加えた。上記と同様に、色素生成基質pNPP (Sigma)を使ってアルカリホスファターゼ活性を視覚化した。CEA でコーティングしたウエルで生成されるELISA シグナルが、試験抗原のいずれかまたは未コーティングウエルのシグナルよりも少なくとも5倍大きければ、そのクローンをCEA 特異的であるとみなした。
e.CEA 特異的scFv抗体の配列決定
CEA 特異的抗体のヌクレオチド配列を、最初にベクター特異的プライマーを使って各クローンからの挿入DNAを増幅せしめることにより決定した。2YTAG 寒天プレート上の個々のコロニーからの細胞を、プライマーpUC19reverseおよびfdtetseq(表1)を使った挿入DNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のための鋳型として使用した。増幅条件は94℃で1分、55℃で1分および72℃で2分の30サイクルに続いて、72℃で10分から成った。PCR生成物をPCR Clean-up Kit (Promega)を使って50μl H2Oの最終容量に精製した。各挿入断片調製物2〜5μlを、Taq 色素−ターミネーターサイクル配列決定システム(Applied Biosystems)を使った塩基配列決定用の鋳型として使った。各クローンの軽鎖を配列決定するにはプライマーmycseq10とPCR-L-Linkを使い、そして各クローンの重鎖を配列決定するにはプライマーPCR-H-LinkとpUC19reverseを使った(表1)。
f.初期CEA 特異的scFv抗体の配列
選別から7種類のCEA 特異的抗体が単離された。各クローン名とそれの重鎖および軽鎖生殖細胞系列を下記に示す。各VHドメイン遺伝子およびVLドメイン遺伝子の完全配列は図1aとbに与えられる。
Figure 0004773540
2. 初期CEA 特異的scFv抗体の親和力成熟
a.CEA 特異的scFv抗体CEAE6 のCDR3「スパイク」
(i) VH CDR3 「スパイク」レパートリーの作製
63マーの変異原性オリゴヌクレオチドプライマーCEA6HCDOP をまず合成した(表1参照)。このプライマーは、倹約変異誘発法〔Ballint およびLarrick (1993) Gene 137: 109-118〕を使ったCEA6 VH CDR3の7残基のスパイクを可能にした。プライマーLMB3とCEA6HCDOP を使ったPCRによりCEA6重鎖を増幅せしめた。増幅条件は94℃で1分、55℃で1分および72℃で1分の25サイクルに続いて、72℃で10分から成った。PCR生成物を1%アガロース−TAEゲルを通して分離し、増幅されたVHを表すバンドを切り取り、Geneclean キット(Bio 101) を使ってアガロースゲルから該生成物を溶出させた。
プライマーfdtetseqとCEA6JH(表1)を使ったPCRにより親のCEA6軽鎖を増幅せしめた。増幅条件は94℃で1分、55℃で1分および72℃で1分の25サイクルに次いで、72℃で10分から成った。PCR生成物を1%アガロース−TAEゲルを通して分離し、増幅されたVLを表すバンドを切り取り、Geneclean キット(Bio 101) を使ってアガロースゲルから該生成物を溶出させた。
約50 ng の増幅され「スパイク」されたCEA6重鎖と50 ng の増幅された親のCEA6軽鎖を組み合わせた。1×反応緩衝液、200 nMのdNTPおよび5単位のTaq ポリメラーゼの添加後、これを集成物の増幅に使用した。増幅条件は94℃で1分、65℃で4分の7サイクルから成った。各集成物5μlを、プライマーfdtetseqとLMB3を使った「プルスルー(pull-through)」増幅において鋳型として使った。増幅条件は94℃で1分、55℃で2分および72℃で1分の25サイクルに続き、72℃で10分から成った。
プルスルー増幅生成物を1%アガロース−TAEゲルを通して分離し、「スパイク」したプルスルーVH−VLを表すバンドを切り取り、Geneclean キットを使って溶出させた。これを制限エンドヌクレアーゼ Sfi IとNot I (NEB) で消化し、そして予めSfi I とNot I で消化しておいたファジミドベクターpCantab 6 (Amershamligation system )中に連結せしめた。連結生成物を用いてエレクトロコンピテントTG1 細胞を形質転換せしめ、2YTAG プレート上に塗布し、そして30℃で一晩インキュベートした。このCEA6 VH CDR3の「スパイク」処理から約1.1 ×10個のクローンが得られた。
(ii) CEA6 VH CDR3 スパイクレパートリーの選別
CEA6 VH CDR3スパイクレパートリーをCEA 特異的抗体について選択した。初期ライブラリーについて前に記載された通りに、該レパートリーからファジミド粒子を回収した。回収したファージを100μl 3MPBSの最終容量において1時間予備ブロックした。第1回選別には約1011tuのファージを使い、その後の選別には10〜1010tuのファージを使った。第1回選別には、10 nM の最終濃度になるようにビオチン化CEA を予備ブロック済ファージに加え、静置状態で37℃にて1時間インキュベートした。製造業者の指示に従って10:1のビオチン対CEA のモル比においてNHS-SSビオチン(Pierce)を使ってCEA をビオチン化した。
各選別に向けて、100 μlのDynabeads 懸濁液(Dynal)を磁石の上で分離し、ビーズを回収し、1mlの3MPBS 中で2時間予備ブロックした。ビーズを磁石上で回収し、ファジミド/ビオチン化CEA 混合物中に再懸濁し、そしてくるくる回転させながら室温で15分間インキュベートした。ビーズを磁石上で集め、PBSTで3回、次いでPBS 中で3回洗浄した。各洗浄の後、ビーズを磁石上で回収し、次の洗浄液の中に再懸濁した。最後に、ビーズの半量を10μlの50mMDTT (ジチオトレイトール)中に再懸濁し(ビーズの残りの半量はバックアップとして4℃で保存する)、室温で5分間インキュベートした。全てのビーズ懸濁液を使って5mlの対数増殖中のTG1 細胞に感染させた。これを静置状態で37℃で15分間インキュベートし、次いで適度に振盪させながら45分間インキュベートし、2YTAG プレート上に塗布し、そして30℃で一晩インキュベートした。
プレートからコロニーを10mlの2YT ブロス中にかき取り、−70℃での保存に備えて15%(v/v) グリセロールを加えた。
(iii) CEA6 VH スパイクレパートリーからのCEA 特異的scFv抗体の同定
上記に記載した通りに、CEA 特異的scFv抗体をファージELISA と可溶性ELISA の両方により同定し配列決定した。4つの新規CEA 特異的scFv抗体が同定された。いずれも、上述のCEA6軽鎖配列(L12a)と、VHの標的スパイクされた7残基中に1または複数個の変異を有していた。その配列を図2に与える。
(iv) CEA6 VL/VH CDR3−「スパイク」レパートリーの作製
まず65マーの変異原性オリゴヌクレオチドプライマー CEA6LCDOPを合成した(表1参照)。このプライマーは、倹約変異誘発法(Ballint およびLarrick 、前掲)を使ったCEA6 VL CDR3の4残基のスパイクを可能にした。プライマーCEA6JHとCEA6LCDOP を使ったPCRによりCEA6軽鎖を増幅せしめた。増幅条件は94℃で1分、55℃で1分および72℃で1分の25サイクルに続いて、72℃で10分から成った。各集成物5μlを、プライマーfdtetseqとLMB3を使った「プルスルー(pull-through)」増幅において鋳型として使った。増幅条件は94℃で1分、55℃で2分および72℃で1分の25サイクルに次いで、72℃で10分から成った。
上述の10 nM ビオチン−CEA 選択から得られたCEA6由来重鎖の集団を、プライマーPCR-H-LinkとLMB3(表1)を使ったPCRにより増幅せしめた。増幅条件は94℃で1分、55℃で1分および72℃で1分の25サイクルに次いで、72℃で10分から成った。PCR生成物を1%アガロース−TAEゲルを通して分離し、増幅されたVH集団を表すバンドを切り取り、Geneclean キット(Bio 101) を使ってアガロースゲルから溶出させた。
約50 ng の増幅され「スパイク」されたCEA6軽鎖と50 ng の増幅された親のCEA6重鎖とを組み合わせた。1×反応緩衝液、200 nMのdNTPおよび5単位のTaq ポリメラーゼの添加後、これを集成物の増幅に使用した。増幅条件は94℃で1分、65℃で4分の7サイクルから成った。各集成物5μlを、プライマーfdtetseqとLMB3を使った「プルスルー(pull-through)」増幅において鋳型として使った。増幅条件は94℃で1分、55℃で2分および72℃で1分の25サイクルに続いて、72℃で10分から成った。
プルスルー増幅生成物を1%アガロース−TAEゲルを通して分離し、「スパイク」したプルスルーVH−VLを表すバンドを切り取り、Geneclean キットを使って溶出させた。これを制限エンドヌクレアーゼ SfiIと NotI(NEB) で消化し、そして予め SfiIとNot Iで消化しておいたファジミドベクターpCantab 6 (Amershamligation system )中に連結せしめた。連結生成物を用いてエレクトロコンピテントTG1 細胞を形質転換せしめ、2YTAG プレート上に塗布し、そして30℃で一晩インキュベートした。このCEA6 VL CDR3の「スパイク」処理から約6×10個のクローンが得られた。
(V) CEA6 VL/VH CDR3スパイクレパートリーの選択
CEA6 VL/VH CDR3 スパイクレパートリーをCEA 特異的抗体について選択した。初期ライブラリーについて前に記載した通りに、該レパートリーからファジミド粒子を回収した。回収したファージを100 μl 3MPBSの最終容量において1時間予備ブロックした。第1回選別には約1011tuのファージを使い、その後の選別には10〜1010tuのファージを使った。第1回選別には、10 nM の最終濃度になるようにビオチン化CEA を予備ブロック済ファージに加え、静置状態で37℃にて1時間インキュベートした。
各選別に向けて、100 μlのDynabeads 懸濁液(Dynal)を磁石上で分離し、ビーズを回収し、1mlの3MPBS 中で2時間予備ブロックした。ビーズを磁石上で回収し、ファジミド/ビオチン化CEA 混合物中に再懸濁し、そしてくるくる回転させながら室温で15分間インキュベートした。ビーズを磁石上で集め、PBSTで3回、次いでPBS中で2回洗浄した。次いでCEA6のものより長いオフ速度(off rate;koff)を有するクローンの選択を行った。50 nM の濃度のCEAを含有するPBS 中でビーズを洗浄した。様々な時点(15分、30分、1時間、3時間および18時間)磁性ビーズ上に捕捉されたファージを磁石上で分離し、洗浄溶液を置換した。最後に、ビーズの半量を10μlの50 mM DTT 中に再懸濁し(ビーズの残りの半量はバックアップとして4℃で保存する)、そして室温で5分間インキュベートした。全ビーズ懸濁液を使って5mlの対数増殖中のTG1 細胞に感染させた。これを静置状態で37℃で15分間インキュベートし、次いで適度に振盪させながら45分間インキュベートし、2YTAG プレート上に塗布し、そして30℃で一晩インキュベートした。
(vi) CEA6 VH/VL−スパイクレパートリーからのCEA 特異的scFv抗体の同定
上記に記載した通りに、CEAに特異的なscFv抗体をファージELISAと可溶性ELISA の両方により同定し配列決定した。3つの新規CEA特異的scFv抗体が同定された。この3つは全て上述のCEA6重鎖配列(DP10)と、VLの標的スパイクされた4残基中に変異を有していた。その配列を図3に与える。
b.CEA 特異的scFv抗体CEA6の軽鎖入替え
(i) レパートリーの作製
上記のCEA6 VH CDR3スパイククローンの集団を、PBL および扁桃由来のscFvレパートリーから誘導された軽鎖の全レパートリーを使って組み換えた。CEA6 VH CDR3スパイク重鎖を、プライマーPCR-H-LINK(表1)とLMB3を使ったPCRにより増幅せしめた。増幅条件は94℃で1分、55℃で1分および72℃で1分の25サイクルに続いて、72℃で10分から成った。PCR生成物を1%アガロース−TAEゲルを通して分離し、増幅されたVHを表すバンドを切り取り、Gene-clean キット(Bio 101) を使ってアガロースゲルからを溶出させた。
プライマーfdtetseqとPCR-L-LINK(表1)を使ったPCRにより、扁桃由来軽鎖を増幅せしめた。増幅条件は94℃で1分、55℃で1分および72℃で1分の25サイクルに続いて、72℃で10分から成った。PCR生成物を1%アガロース−TAEゲルを通して分離し、増幅されたVLを表すバンドを切り取り、Geneclean キット(Bio 101)を使ってアガロースゲルから溶出させた。
約50 ng のCEA6 VH CDR3がスパイクされ増幅された重鎖と50 ngの増幅された扁桃由来の軽鎖とを組み合わせた。1×反応緩衝液、200 nMのdNTPおよび5単位のTaq ポリメラーゼの添加後、これを集成物増幅に使用した。増幅条件は94℃で1分、60℃で1分および72℃で1分30秒の7サイクルに続いて、72℃で10分から成った。各集成物10μlを、プライマーfdtetseqとLMB3を使った「プルスルー(pull-through)」増幅において鋳型として使った。増幅条件は94℃で1分、60℃で1分および72℃で1分30秒の25サイクルに続いて、72℃で10分から成った。
プルスルー増幅生成物を1%アガロース−TAEゲルを通して分離し、プルスルーVH−VLを表すバンドを切り取り、Genecleanキットを使って溶出させた。これを制限エンドヌクレアーゼ Sfi IとNot I (NEB) で消化し、そして予めSfi I とNot I で消化しておいたファジミドベクターpCantab 6 (Amersham ligation system)中に連結せしめた。連結生成物を用いてエレクトロコンピテントTG1細胞を形質転換せしめ、2YTAG プレート上に塗布し、そして30℃で一晩インキュベートした。扁桃由来軽鎖を使ったCEA6 VH CDR3スパイク重鎖の軽鎖入替えから約3×10個の独立クローンが得られた。
(ii) 軽鎖入替えレパートリーの選択
軽鎖入替えレパートリーを、CEA6 VH/VL CDR3 スパイクレパートリーについて上述したのと全く同様に、CEA6より長いオフ速度(koff)を有するCEA 特異的抗体について選別した。
(iii) 軽鎖入替えレパートリーからのCEA 特異的scFv抗体の同定
上記に記載した通りに、CEA 特異的scFv抗体をファージELISA と可溶性ELISA の両方により同定し配列決定した。3つの新規CEA 特異的scFv抗体が同定された。この3つは全て上述のCEA6重鎖配列(DP10)を有していた。各VLドメイン遺伝子の配列を下記に要約し、完全配列を図4に与える。
Figure 0004773540
3. 高親和性抗CEA 抗体の構築
高親和性抗CEA scFvから誘導した重鎖と、高められたオフ速度と減少されたヒト肝臓交差反応性を示す抗CEA scFvから誘導した軽鎖との組換え。
scFv抗体CEA6のCDR3をスパイクすることにより得られた抗体は高親和性でCEA と結合する(項目2b)。より高い親和性の抗体を獲得する見込みを高めるために、高親和性抗CEA scFvから得たVHを、高められたオフ速度と減少されたヒト肝臓交差反応性を示す抗CEAscFvから得たVLと組み合わせることを決めた(実施例4)。
クローンTO6D10からの重鎖を、プライマーLMB3とPCR-H-Link(表1)を使ってPCRにより増幅せしめた。増幅条件は94℃で1分、55℃で1分および72℃で1分の25サイクルに続いて、72℃で10分から成った。PCR生成物を1%アガロース−TAEゲルを通して分離し、増幅されたVHを表すバンドを切り取り、Geneclean キット(Bio 101) を使って溶出させた。
抗CEA 特異的クローン TO6D8とTO6D12から、プライマーfdtetseqとPCL-L-Link(表1)を使ってPCRにより別々に軽鎖を増幅せしめた。VH増幅について上記したものと同じPCR条件を使った。次いで各VL PCR生成物を別々に上記と同様に1%アガロース−TAEゲルを通して精製した。
約50 ng の増幅された重鎖と50 ng のいずれかの増幅された軽鎖とを組み合わせた。1×反応緩衝液、200 nMのdNTPおよび5単位のTaq ポリメラーゼの添加後、これらを集成物の増幅に使用した。増幅条件は94℃で1分、55℃で1分および72℃で2分の7サイクルに続いて、72℃で10分から成った。各集成物5μlを、プライマーfdtetseqとLMB3を使った50μlの「プルスルー(pull-through)」増幅において鋳型として使った。増幅条件は94℃で1分、55℃で1分および72℃で2分の25サイクルに続き、72℃で10分から成った。
プルスルー増幅生成物を1%アガロース−TAEゲルを通して分離し、プルスルーVH−VLを表すバンドを切り取り、Genecleanキットを使って溶出させた。これらを制限エンドヌクレアーゼ SfiIとNot I(NEB) で消化し、そして予めSfi IとNot Iで消化しておいたファジミドベクターpCantab 6 (Amersham ligation system)中に連結せしめた。連結生成物を用いてエレクトロコンピテントTG1細胞を形質転換せしめ、2YTAG プレート上に塗布し、そして30℃で一晩インキュベートした。
c.組換え型クローン TO6D9およびTO6D11の同定
TO6D8 軽鎖(クローンTO6D9 を与える)またはTO6D12軽鎖(クローンTO6D11を与える)のいずれかと共にTO6D10重鎖を有するクローンを、配列決定により同定した。
実施例2:CEA へのscFv断片の結合親和力測定
CEA6親クローンに由来する全抗CEA scFvの親和力を表面プラスモン共鳴により測定し、一方CEA1〜CEA5の親和力を結合阻害ELISA により測定した。
a.表面プラスモン共鳴による親和力測定
実施例1に記載のscFv断片のCEA への結合のオフ速度を、センサーチップに結合させた脱シアル酸CEA を使って測定した。100 μgのCEAを0.1 M酢酸ナトリウム緩衝液 pH 4.0 中に再懸濁し、1.375mUのシアリダーゼ (Sigma)を使って脱シアル酸した。これを時折振盪しながら37℃で4時間インキュベートした。次いで脱シアル酸CEA を、10 mM リン酸塩緩衝液 pH 7.0 中で500 μg のCEA あたり1単位のガラクトースオキシダーゼを使って酸化した。それを36℃で2時間インキュベートし、Centricon カラムを使って10 mM 酢酸ナトリウム緩衝液 pH 4.0 中に脱塩した。次いでこのCEA をアルデヒドカップリングによってセンサーチップ上に固定した。15μlのEDC/NHS カップリング剤 (Pierce) を5μl/分の流速でチップに通した。35μlの5 mMヒドラジン/水をチップに通した後、35μlのエタノールアミンをチップに通した。60μg/mlの処理CEA 4μlを2μl/分の流速でチップに通した後、0.1 M酢酸塩緩衝液 pH4.0 中の0.1 M水素化シアノホウ素ナトリウム溶液40μlを5μl/分の流速で通した。この方法を使って約1500 RU (共鳴単位)のCEA が結合された。この方法を使って5000 RU および800 RU CEAチップを製造した。オフ速度の計算を行う前に、各試料についで精製scFvによる該チップの飽和(実施例3参照)を証明した。Bia-Evaluationソフトウエアと、scFv調製物が100 %活性であるという仮定を使って、オンおよびオフ速度を計算した。その結果を表2に示す。
b.阻害ELISA による親和力測定
CEA1〜CEA5の親和力は、それらのscFvがCEA の脱シアル酸により除去される糖質構造を認識するために、表面プラスモン共鳴により評価することはできなかった。従って、それらの親和力は結合阻害ELISA により測定した。
実施例1に記載した通りに可溶性scFv ELISAを実施した。PBS 中のscFv調製物の希釈系列を作って、ELISA 上に約0.2 OD単位のシグナルが生じる時点を一晩評価した。この濃度のscFvを20 nM から0.1 nMまでに及ぶ濃度の生来のCEA と共に4℃で一晩予備インキュベートした。得られたデータを、クロッツプロットとしてプロットした〔y軸=最大吸光度/(最大吸光度−CEA 濃度nにおける吸光度);x軸=1/CEA 濃度n〕。このプロットの勾配を解離定数であるとみなした。結果を表3に示す。
実施例3:細胞性CEA への抗CEA 抗体の結合の証明
a.HeLa細胞の表面上へのCEA 発現
これらの実験には全て、金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)で精製したscFvを使った。これは次のようにして調製した。コロニーを2%グルコースと100 μg/mlアンピシリンを含む2TY(2TY/G/A )50ml中に接種し、30℃で一晩インキュベートした。次いでこの一晩培養物を500 mlの2TY/G/A に添加し、振盪インキュベーター中で30℃にて1時間増殖させた。細胞を8Kで10分間ペレット化し、1 mM IPTG と100 μg/ml アンピシリンを含む2TY 500 ml中に再懸濁し、そして22℃で一晩増殖させた。予冷したローター(4℃)中で8,000 g にて10分間細胞をペレット化することにより、周縁質(ペリプラズム)調製物を調製した。このペレットを25mlの氷冷Tris-HCl, pH 8, 20%(w/v) ショ糖, 1 mM EDTA 中に再懸濁し、氷上で15分間インキュベートした。次いで製造業者の指示に従って、NTA −アガロース(Qiagen)を使ったIMACによって周縁質調製物からscFvを精製した。
CEA を発現している1×10個のHeLa細胞を、PBS/0.5 %(w/v)BSA (PBS/BSA) 中100 μlに調整した、IMAC精製済の抗CEA scFv 5μg またはヒト胎児ヘモグロビンに特異的な対照scFv (FSG-1) 5μg と共に室温で1時間インキュベートした。細胞を10mlのPBS/BSA中で1回洗浄し、100 mlのPBS/BSA 中25μg/mlのマウス抗myc 抗体(9E10)と共に1時間インキュベートした。細胞を10mlのPBS/BSA 中で洗浄し、PBS/BSA 中のFITC接合抗マウス抗体(Sigma) の1:200 希釈液 100μlと共にインキュベートした。10mlのPBS/BSA 中での最終洗浄の後、Coulter-EPISXL-MCLフローサイトメーターを使ったフローサイトメトリーにより、細胞蛍光を測定した。FL1 チャンネル(放出波長<550 nm)を使って1×10の蛍光現象を測定し、そして細胞数に対して対数目盛の上にプロットした。オフ速度成熟抗CEA scFvの選択結果を図5に示す。
b.抗CEA scFvは可溶性CEA よりも細胞性CEA に優先的に結合する
CEA を発現しているHeLa細胞にscFv添加前に可溶性CEA を添加すること以外は、上記と同様にフローサイトメトリーを実施した。10ng/ mlから1μg/mlまでの濃度範囲を細胞に添加した(図6)。試験したどの濃度でも、可溶性CEA は細胞へのモノクローナル抗体の結合を阻害しなかった。可溶性CEA の添加は、同様な細胞結合親和力を有する無関係のモノクローナル抗体の結合を阻害することができた。これは、CEA6とそれの親和力成熟scFv断片が可溶性CEA よりも優先的に細胞性CEA と結合することを示唆する。
実施例4:ヒト肝細胞系に対する親和力成熟抗CEA 抗体の特異性の変更の証明
1×10個のChang ヒト肝細胞をIMAC精製済抗CEA scFvまたは対照scFvと共にインキュベートすること以外は、実施例3aに記載したのと全く同じようにフローサイトメトリーを実施した。FL1 チャンネル(放出波長<550 nm)を使って1×10の蛍光現象を測定し、そして細胞数に対して対数目盛の上にプロットした。その結果を図7に示す。
図7から、CEA6がヒト肝細胞系と部分的に交差反応することがわかる。HBA11 とHBB11 も幾らか交差反応性を与えたが、一方軽鎖入替えレパートリーからの選別により単離されたクローンは、このアッセイにおいて肝細胞系との検出可能な交差反応性を全く示さなかった。よって、採用した選別プロトコールが、ヒト肝臓に対する交差反応性が減少された抗CEA 抗体を富化したことが証明された。
実施例5:CEA に特異的な抗体のエピトープマッピング
a.全長CEA またはCEA エピトープN, A1-B1, A2-B2, A3-B3の発現
CEA は、108 アミノ酸残基のNH2 末端ドメイン(ドメインN)に続いて各々178 残基の3つの高相同性中間部ドメイン(A1-B1, A2-B2, A3-B3 )から構成される。23残基のC末端ドメイン(ドメインM)は翻訳後に取り除かれ、そして細胞膜中にCEA をつなぎ止める糖リン脂質成分により置換されることが証明されている。細菌CMP-KDO シンターゼ(CKS) との融合タンパク質としての全長CEA またはエピトープN, A1-B1, A2-B2 もしくはA3-B3 のcDNAは、J. Shively博士により提供された〔Hass他 (1991) Cancer Res. 51:1876-1882〕。
CKS-CEA 遺伝子を含むXL1-Blue細胞を次のようにして培養した。50μg/mlアンピシリンを含む2mlの2TY の培養液に単一コロニーを接種した。培養物を37℃で約3〜4時間インキュベートした後、IPTGを1 mMの最終濃度に添加した。更に5時間増殖を続け、次いで細胞をペレット化し、−70℃で保存した。細胞ペレットを3mlの10mM Tris, 1 mM EDTA, pH 10.0 中に再懸濁した。リゾチーム(6mg)を加え、試料を15分間氷上に置いた。0.3 mlの20%Triton X-100を加え、懸濁液を混合した。更に3mlの10 mM Tris, 1 mM EDTA, pH10.0を加えた。Triton不溶性画分を遠心分離によりペレット化し、6mlの8M尿素中に再懸濁した。尿素可溶性物質をPBS (0.15 M NaCl, 0.02 Mリン酸ナトリウム, pH 7.2) に対して透析して可溶性タンパク質を得た。
b.CEA6由来の抗CEA scFvのエピトープマッピング
可溶性タンパク質部分を1μg/mlの濃度で37℃で一晩ELISA プレート上にコーティングした。約1μg/mlの濃度の精製scFvを用いること以外は実施例1に記載したのと同様にして、金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を使って可溶性抗CEA scFvを精製した。全てのCEA6由来クローンがA3− B3 ドメインに優先的に結合した。
かくして、親和力成熟操作によりヒト肝細胞に対する特異性は変更されたけれども、これは親和力成熟クローンのCEA ドメイン特異性には影響を与えないことが証明された。
c.CEA1, CEA2, CEA3, CEA4およびCEA5のエピトープマッピング
これらのクローンを、脱シアル酸CEA (実施例2に記載した通りに調製)への結合について可溶性ELISA により試験した。処理済のまたは未処理のCEA を0.5 μg/mlの濃度でELISA プレートにコーティングし、次いで実施例1に記載の通りにELISA を実施した。CEA1,CEA2, CEA3, CEA4およびCEA5は全て、脱シアル酸CEA に対してバックグラウンドより高い検出可能なシグナルを与えなかった(2時間の発色後0.1 OD単位)が、一方生来のCEA に対するシグナルはいずれも2時間後に>0.4 OD単位であった。これは、このクローン集団が、シアリダーゼ処理により除去され得る生来のCEA 上の糖質エピトープを認識することを証明する。このクローン集団のうち、発現されたCEA エピトープ N, A1-B1, A2-B2またはA3-B3 に結合したものは1つもなかった。E.コリにおいて発現されるタンパク質はグリコシル化されないので、この結果は脱シアル酸CEA を使って得られた観察結果を確証する。
実施例6:ヒト結腸腺癌異種移植片へのCEA 特異的抗体の限局化
ヒト結腸腺癌のマウス異種移植モデルにおいて、放射性標識マウス抗CEA mAb が腫瘍に限局化されることが証明されている〔Pedley他 (1991) Int. J. Cancer 47: 597-602〕。本明細書中に記載される抗CEA scFv抗体がそのようなモデルにおいて好結果に腫瘍に限局化され得るかどうかを確立するために実験を組み立てた。
a.放射性標識を可能にするシステイン標識ベクター中へのscFvのサブクローニング
プライマーLMB3とftdseqを使ったPCRにより、全ての抗CEA 抗体のscFv挿入断片を調製した。増幅条件は94℃で1分、55℃で1分および72℃で1分の25サイクルに続いて、72℃で10分から成った。PCR生成物を1%アガロース−TAEゲルを通して分離し、増幅されたscFvを表すバンドを切り取り、そしてGenecleanキット(Bio101 )を使ってアガロースゲルから溶出させた。この生成物を制限エンドヌクレアーゼ Sfi IとNot I (NEB) で消化し、予めSfi I とNot I で消化しておいたシステイン標識ベクター pUC119MCH(図8)中に連結せしめた(Amersham ligation system)。この連結生成物を用いてエレクトロコンピテントTG1細胞を形質転換せしめ、2TYAGプレート上に塗布し、30℃で一晩インキュベートした。コロニーを取り、scFvを配列決定して、pUC119MCH ベクター中に挿入断片が正しく組み込まれたかどうかを確認した。
b.IMAC精製scFvのテクネチウム99m 標識
実施例3に記載の通りに抗CEA scFvをIMACにより精製した。次いでそれらをPak 他 (1992) Nucl. Med. Biol. 19: 699-677に記載された通りにテクネチウム99m で標識した。
c.動物モデル
ヒト結腸腺癌細胞系LS174Tからの皮下継代により、ヌードマウスにおいてヒトLS174T異種移植片を確立した。4匹のマウスから成るグループを各時点に採用した。マウスの尾静脈に3 mCi/mgの比活性で20μg のテクネチウム99m 標識CEA6 scFv を注射した。注射後3時間または24時間目にマウスを犠牲にし、該抗体の生体分布および組織:血液比を測定した。
CEA6 scFv について得られた結果を図9と図10に示す。注射後24時間目には腫瘍:血液比は3であり、腫瘍:肝臓比は1.2 であり、そして腫瘍:正常結腸比は3.6であった。よって、抗CEA scFv CEA6が結腸腺癌のヌードマウスモデルにおいてヒト異種移植腺癌に限局化することが実証された。
実施例7:CEA6およびTO6D11のドメイン認識の更なる調査
a.末端システイン残基を介したセンサーチップへのscFvのカップリング
pUC119MCH ベクター中に作製した末端システイン残基を含むCEA6またはTO6D11のモノマー調製物を、次のようなリガンドチオール固定化法を使ってCM5 チップ(Pharmacia) にカップリングさせた。50μlの50 mM 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 (EDC)試薬 (Pharmacia)と50μlの 200 mM N−ヒドロキシスクシンイミド (NHS)試薬 (Pharmacia)を混合し、該混合物を5μl/分の流速でチップに通した。次いで20μlの80mM2−(2−ピリジニルジチオ)エタンアミン塩酸塩(PDEA)活性化溶液を同じ流速でチップに通した。このPDEA溶液は、4.5 mgのPDEA (Sigma)を250 μlの0.1Mホウ酸緩衝液 pH 8.5 中に溶かすことにより新しく調製した。約100 μg/mlの精製モノマーscFv溶液20μlを、PBS を使って50μlにし、次いでそのscFv溶液に50μlの50mM蟻酸ナトリウム pH 4 を加え、この混合物 50 μlを同じく5μl/分の流速でチップに通した。1.5 mgのL-システインと14mgのNaClを250 μlの0.1 M 蟻酸ナトリウム緩衝液 pH 4.3 中に溶かすことにより50 mM L−システイン−1 M NaCl不活性化溶液を調製し、そしてこの溶液20μlを5μl/分の流速でチップに注入した。この操作は、チップにカップリングしているモノマーTO6D11 scFv の375 共鳴単位(RU)の固定化およびモノマーCEA6 scFv の374 RUの固定化を提供した。既知のNドメイン反応性scFvから成る対照チップも同じ手順により調製した。
b.精製CEA ドメインの調製
細菌CKS 遺伝子を含まないpUC119EHISベクター(図11)中でクローニングした実施例5aに記載のCEA ドメインの50ml培養物を、2%グルコースと100 μg/ml アンピシリンを含む2TY (2TYGA) 中で30℃にて一晩増殖させた。それらの培養物を500 mlの2TYGA に接種し、30℃で更に1時間増殖させた。5K, 10分の遠心分離により細胞をペレット化し、予め30℃に温めておいた1 mM IPTG と100 μg/ml アンピシリンを含む2TY 中に該ペレットを再懸濁した。30℃で3時間振盪することにより誘導を行い、次いで上記と同様に細胞をペレット化した。ペレットを10mlの1×TES (0.2 M Tris-HCl, 0.5 mM EDTA,0.5 M ショ糖)中に再懸濁した後、15mlの0.2 ×TES を加えた。細胞を30分間氷上に置き、次いで4℃にてSorvall SS34ローター中での10K で30分間の遠心分離により細胞破片をペレット化した。上清を50mlのFalconチューブに移し、25μlの1 M MgCl(QIAGEN)を加えた。リン酸塩緩衝液(300 mM NaCl, 50 mMリン酸ナトリウム, pH 8)中で洗浄しておいた2mlのNi-NTAアガロース (Quiagen)を上清に加え、4℃で1時間回転させた。次いでNi-NTAアガロースを卓上遠心機中で1000 rpmで2分間遠心分離することによりペレット化し、アガロースペレットを20mlのリン酸塩緩衝液(300 mM NaCl, 50 mMリン酸ナトリウム, pH 8)中で2回、次いで10 mM イミダゾールを含むリン酸塩緩衝液中で1回洗浄した。Biorad Polyprep カラムにアガローススラリーを移し、300 mMイミダゾール/リン酸塩緩衝液の1ml×2アリコートの添加により、カラムからCEA ドメインを溶出させた。
c.センサーチップ上に固定化されたscFvへのCEA ドメイン調製物の結合
4つのCEA ドメイン調製物(A1-B1, A2-B2, A3-B3, N)各70μlを5μl/分の流速においてscFv固定化チップに通した。各ドメインの注入後、10mlの10 mM HCl の注入によりチップを再生した。CEA6とTO6D11 scFv 固定化チップについては、ドメインA1−B1, A2−B2およびA3−B3はいずれも表面へのおよそ100 RUの結合をもたらした。CEA6またはTO6D11 scFv 固定化チップ上へのNドメインの結合は全く観察されなかった。CEA6およびTO6D11 scFv 固定化チップの両方について各ドメインのKoffを計算すると(表4)、A3−B3が最長のオフ速度を有することがわかった。この結果は、このドメイン(A3−B3)がCEA とTO6D11により優先的に認識されるドメインであることを示唆する。ドメインA1−B1, A2−B2およびA3−B3は、CEA6およびTO6D11 scFv とそれらの全ドメインとの幾らかの交差反応性の説明となるかもしれない3ドメイン全てに共通である要素を含まない。これは、CEA6のドメイン認識の全体的特徴が、TO6D11に対するこの抗体の親和力成熟の間に変更されなかったことを証明する。
対照として、CEA のNドメインを認識することが示された固定化scFvを有するチップも、様々なドメインをチップに通すことにより試験した。このscFvは54 RU のNドメイン調製物の結合を与えたが、scFvへの他のドメインの検出可能な結合は与えなかった。これは、Nドメイン調製物の活性を証明し且つこのscFvの特異性を再確認する。
実施例8:CEA1, CEA2, CEA3, CEA4およびCEA5の結合特異性の分析
実施例5cに記載した通りに、CEA1, CEA2, CEA3, CEA4およびCEA5は、脱シアル酸CEA への結合について試験した時に全く検出可能なELISA シグナルを与えなかった。このことは、それらのクローンがCEA のシアル酸含有糖質成分を認識していることを示唆する。それらのクローンの特異性を次のようにして更に調べた。
a.ポリシアル酸(PSA) への結合についてのCEA1, CEA2, CEA3,CEA4およびCEA5のELISA 試験
平均約200 モノマーのシアル酸ポリマーであるPSA の1変形である、ビオチン化K1ポリシアル酸は、R. Waibek 博士により提供された。PSA のK1変形をE.コリのK1株から精製した。E.コリ K1 は、長い直鎖状PSA (K1)鎖の合成を触媒する膜性CMP-NeuAc ;ポリ−α−2−8−シアロシル シアリルトランスフェラーゼ複合体を有する。
ストレプトアビジン被覆プレート(Pierce, Reacti-Bind )上にPSA を10μg/mlの濃度で室温で1時間コーティングした。該プレートを3%MPBS中で室温で1時間ブロックし、次いで3%MPBS中のCEA1, CEA2, CEA3, CEA4, CEA5およびCEA6(対照として)のモノマー調製物 100μlを約100 μg/mlの濃度で各ウエルに添加した。プレートを室温で1時間置いておき、次いでPBST中で3回洗浄し、次いでPBS 中で3回洗浄した。結合したscFvの検出は、1:200 希釈した抗myc tag 抗体 (9E10) (MunroおよびPelham, 1986) を使って37℃で1時間行った。プレートを上記と同様に洗浄し、1:5000希釈したアルカリホスファターゼ接合ヤギ抗マウスIgG(Pierce)を使って37℃で1時間展開した。プレートを上記と同様に洗浄し、0.9%NaCl中ですすぎ、色素生成基質pNPP (Sigma)を加えた。405 nmで吸光度を測定した。
クローンCEA1, CEA2, CEA3, CEA4およびCEA5は全て、PSA K1ポリマーに対してシグナルを与えたが、CEA6は全く検出可能なシグナルを与えなかった(図13)。それらの結果は、CEA1, CEA2, CEA3,CEA4およびCEA5がいずれも遊離形のK1 PSAを認識し、よってシアル酸がそれらのCEA の認識に何らかの役割を果たしていることを示唆する。
b.遊離形のK1または遊離形のコロン酸(CA)による、CEA へのCEA1, CEA2, CEA3, CEA4およびCEA5の結合の阻害
過剰の遊離形 PSA K1 および遊離形 PSA CA (約1μM)を100μlのscFvモノマー調製物(約100 μg/ml)と共に予備インキュベートし、次いでscFvを使って実施例1d(ii)に記載したようなELISAにより生来のCEA を検出した。CAは、一鎖あたり平均約16個のシアル酸残基を有するシアル酸のポリマーである。CEA1, CEA2, CEA3,CEA4およびCEA5の場合、K1とCAの両方について様々な程度に生来のCEA に対するシグナルが阻害された。生来のCEA へのCEA6の結合は、K1またはCA PSAの存在により阻害されなかった(図14)。K1およびCAによるCEA へのscFv結合の阻害の程度は表5に要約される。CEAへのCEA1, CEA2, CEA3, CEA4および低レベルでのCEA5の結合が遊離形PSA 分子によって阻害されたということは、それらのscFvによるCEA の認識の更なる証拠として、CEA に対するそれらの認識の際のシアル酸結合特異性という一要素を提供する。
実施例9:正常結腸粘膜および結腸直腸腫に関するCEA1, CEA2, CEA3, CEA4, CEA5およびCEA6の免疫細胞化学
クローンCEA1〜CEA6の精製モノマー調製物を使って、種々の組織源からのパラフィン包埋ホルマリン固定試験片(BioMedix)において発現されるCEA を検出した。試験片をHistoclear中で脱蝋し、次いで100 %エタノール中で2回、70%エタノール中で1回洗浄し、蒸留水中で再水和し(全て各回5分ずつ)、そしてPBST中ですすいだ。次いで20%酢酸中で15分間インキュベーションし、PBSTですすぎ、PBS 中1%BSA (PBSB)中で1時間ブロックすることにより、内因性アルカリホスファターゼ活性をブロックした。すすぎの後、PBSB中に希釈したモノマーscFv画分を添加し、湿潤雰囲気下で4℃にて一晩インキュベートした。試験片をPBSTで3回(各回2分ずつ)洗浄した後、PBSB中に1:100 希釈された9E10と共に室温で1時間インキュベートした。上記と同様にすすいだ後、アルカリホスファターゼ接合ヤギ抗マウス抗IgG(PBS /10%ウシ胎児血清中に1:100希釈したもの)を加え、1時間インキュベーションを続けた。結合した抗体を、Fast Red (Sigma)基質を使って検出し、更にヘマトキシリンを使って試験片を対比染色し、封入した。
CEA1, CEA2, CEA3, CEA4およびCEA5は、正常結腸陰窩上皮の弱い染色を与え、正常胚上皮の不均一染色を与えた。それらの5つのクローンは中程度から高度にまで分化した腺癌の可変的陽性染色を与えた。中程度に分化した腫瘍の染色は腺の基底面と内腔側に限局化されたが、一方でより完全に分化した腫瘍の染色はムチン生産性杯細胞に限られていた。それらのクローンは「典型的な」抗CEA 染色パターンを与えなかった。これは、発現の全段階には存在しないかもしれないCEA 上の糖質要素との反応性により説明され得る。
CEA6は正常胚上皮の強い染色を与え、杯細胞および陰窩上皮も反応した。CEA6による腺癌の染色は、中程度から高度に分化した腫瘍の均一で強い陽性を与えたが、あまり分化してない癌の染色はずっと不均一であった。
実施例10:ヒト結腸腺癌異種移植片へのI 125 標識抗CEA 抗体の限局化
実施例6は、CEA を発現するヒト結腸腺癌を異種移植したヌードマウスにおける腫瘍へのテクネチウム99m 標識CEA6 scFv の限局化のデータを説明している。同じ動物モデルにおいてTO6D11 scFv と一緒にI125標識CEA6 scFv を使って、その実験を繰り返した。
a.scFvモノマー調製物のI125標識
精製したscFvのI125による標識は、FrakerおよびSpeck (1978)Biochem. Biophysc. Res. Commun. 80, 849-857 により最初に記載された「ヨードゲン法」を使って行った。この方法では、CEA6とTO6D11の両方のVH CDR3 中に4個ある、タンパク質中のチロシン残基にヨウ素を優先的に取り付ける。CDR のヨウ素化は理論上抗原結合特異性を傷つけ得るけれども、それらを放射性標識後にCEA アフィニティーカラム(Dr. David Read, Department of Clinical Oncology, Royal Free Hospital, London から借用したカラム)に通すことにより、CEA6とTO6D11の両方を免疫反応性について調べた。これは、標識したタンパク質の7-90%がカラムに結合できることを示し、125I標識がscFvの生体内適用のための実行可能な標識アプローチであることを証明する。
b.動物モデル
ヒト結腸腺癌細胞系LS174Tからの皮下継代により、ヌードマウスにおいてヒトLS174T異種移植片を確立した。4匹のマウスから成るグループを各時点に採用した。マウスの尾静脈に1 mCi/mgの比活性で10μg のI125標識scFvを含む溶液100 μlを注射した。注射後3, 24または48時間目にマウスを犠牲にし、該抗体の組織:血液比をガンマカウンティングにより測定した。
CEA6およびTO6D11について得られた結果を表6に示す。CEA6とTO6D11の両方が全ての時点で腫瘍に限局化し、同じく免疫反応性が傷つけられなかったことを確証する。CEA6は注射後24時間目に22.5:1 の組織:血液比を与え、注射後48時間目には3.1 :1の組織:血液比を与えた。TO6D11はCEA6ほどには効果的に腫瘍に限局化せず、注射後24時間目に 5.8:1 の組織:血液比を与えたが、腫瘍を標的しなかったTO6D11は標的したCEA6よりも長くそこにとどまっていた。注射後48時間目のTO6D11の組織:血液比は 6.6:1であった。
実施例11:CEA に特異的な抗体のエピトープマッピングの改良
a 大型ファージ表示ライブラリーからの特定ペプチドの選択
CEA6により特異的に認識されるCEA 分子上の配列を詳細に分析するために、ファージ上に表示された非常に大型の(>1011クローン)組合せペプチドレパートリーの選択に、抗原として精製モノマーCEA6 scFv を使った。使用したペプチドライブラリーはFisch 他,1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 7761-7766 により記載された通りに作製した。簡単に言えば、pUC 系プラスミド上にコードされる10のランダムアミノ酸を、受容体ファージによりコードされ且つ5アミノ酸スペーサーにより分離された10アミノ酸と生体内で組み換えた。組換え配列(25アミノ酸をコードする)のレパートリーを繊維状ファージのgIII タンパク質と融合せしめ、それを表示に利用できるようにした。12.5μg/ml テトラサイクリンを含む2YT 培地中で30℃で一晩増殖させた培養物からファージを精製した。典型的なファージ収率は1〜5×1011 t.u. /mlのオーダーであった。
実施例3に記載の如く精製されそしてFPLC分画されたCEA6 scFvを使って、PBS 中10μg/mlの濃度で免疫用チューブ(Nunc, Maxi- sorp)を4℃で一晩コーティングした。3%(w/v) 脱脂粉乳Marvelを含むPBS (PBSM)を使って該チューブを室温で1時間ブロックした後、PBSM中で予備ブロックしたファージを含む上清(5×1011t.u.)を、室温で更に90分間に渡り結合させた。非特異的ファージを実施例1に記載の通り洗い流し、3mlの100 mMトリエチルアミンを使って特異的ファージを溶出させ、1.5 mlの1M Tris-HCl, pH 8.0 で中和し、そしてE.コリ TG1中に再感染させた。4回までの選別を実施し、ポリクローナル集団中のCEA6特異的ファージの収率を、後述するようなELISA により評価した。第3回および第4回選別からの個々のファージクローンを、ELISA により特異性について更にスクリーニングした。
96ウエルのプレートを、CEA6 scFv で、または対照として異なる特異性を有する別のscFvで、PBS 中10μg/mlの濃度において4℃で一晩コーティングした。プレートを室温にて1時間PBSMでブロックし、次いでマイクロタイタープレート中の2YT-tet 中で増殖させた個々のクローンからの上清を、CEA6 scFv でコーティングしたプレートに添加する前に、PBSM中で予備ブロックした。 1:5000希釈された抗M13 HRP接合体を使ってファージ結合を検出した。検出はOPD基質(Sigma) を使って行った。マイクロタイタープレートリーダー中で490 nmでプレートを読んだ。
b ペプチドライブラリーから選択されたクローンの配列決定
CEA6陽性ファージの塩基配列決定は、下記のオリゴヌクレオチドプライマーを使った2つのエクソンの別々のPCRにより行った。
エクソン1 オリゴ 4445 5'-ACTTGGTTAGGTCCATGTCCGTCAGC-3'
fdPCRBACK 5'-GCGATGGTTGTTGTCATTGTCGGC-3'
エクソン2 オリゴ 3358 5'-GAAGTGATGCAACACTGGAGC-3'
fdPCRFOR 5'-TAGCCCCCTTATTAGCGTTTGCCA-3'
表7は、ELISA により特異的にscFvを結合することが証明された、CEA6 scFv に関する第3回および第4回選別後に選ばれたペプチドファージの配列の編集を示す。選ばれたクローンのうち、1/11だけが25アミノ酸ペプチドとして組換え配列を有した。残りのクローンは受容体ファージによりコードされる10アミノ酸(Fisch 他, 前掲におけるエクソン2)を含んでいた。
選ばれた配列を、3つの178 アミノ酸ドメイン反復配列(A1B1,A2B2, A3B3)全てに共通したヒトCEA 配列と整列して示す。表7において下線が引かれた残基は「A」サブドメイン内の139 〜148 位にあり、その場所で、選ばれたペプチドファージとの最強の相同性が観察される。第3回選別で選ばれたペプチド P3G12およびP3C8は最も厳格な相同性を示し;加えて、P3G12 (P4C5)およびP3C8 (P4A3)と同じ配列を有するクローンも第4回選別で単離され、それらの配列を有するファージの陽性抗原選別を示す。従ってファージP3G12およびP3C8を、PEG沈澱による精製(実施例1aに記載)並びに更なる特異性分析cおよびELISA によるCEA へのCEA6結合の阻害dに採用した。
c 共通フレームワークを有するscFvを使った特異性分析
CEA6に対するファージP3G12 およびP3C8の特異性を更に調べるために、上記aに記載したような96ウエルプレート上へのコーティングに下記の精製scFvを採用した:
(i) scFv P2-2E10 :ウシヒストンH1に特異的であり、CEA6と同じ生殖細胞系列VH(DP10)およびVL(L12a)を有するが、両鎖のCDR 中の配列が異なる;
(ii) scFv P2-1D2:ウシ全ヒストンに特異的であり、異なるVH(DP75, VH1 から)を有するがVLは同じである;
(iii)scFv VoDox-1 :化合物ドキソルビシンに特異的であり、異なるVH(DP47, VH3 から)を有するがVLは同じである。
全てのscFvを実施例3に記載の通りに精製し、aに記載のようにELISA を行った。図15は試験した各ペプチドについてプロットした吸光度を示す。試験したscFvはいずれも、CEA6 scFv に関して選ばれたペプチドに特異的に結合できない。CEA6に対する両ペプチドの特異性を確証するだけでなく、これは両ペプチドとも全てのscFv上に存在するmyc タグまたはhis タグのいずれも認識しないことを確証する。別の実験において、選ばれたペプチドはヒトIgG1, κとして再構成されたCEA6を結合することを証明したが、同じイソタイプの無関連ヒト抗体への結合は全く示さなかった。
d ペプチドファージを使った結合阻害ELISA
CEA へのCEA6 scFv の結合の阻害を、選ばれたペプチドファージ、生来のCEA (陽性対照)または無関連ペプチドファージ(陰性対照)のいずれかを使ったELISA により測定した。CEA を0.5 μg/mlの濃度でウエルあたり50μlにおいて96ウエルプレートに37℃で一晩コーティングした。プレートを3%MPBSでブロックし、その間に1μg/mlのCEA6 scFv を、クローンP3G12, P3C8 もしくはP4A2からのファージの10倍希釈系列(3%MPBS中)と共に、またはCEA の希釈系列(55 nM から始まる)と共に室温で90分間予備インキュベートした。次いで、予備インキュベートした試料を、ブロック済のプレートに室温で1時間移した。9E10 (1μg/ml)に続いて抗マウスIgG−アルカリホスファターゼ接合体(1/2500)とpNPP基質(Sigma)を使った標準検出法により、結合したCEA6を検出した。
図16は、生来のCEA を使った阻害と比較した、様々な濃度の特異的ファージと非特異的ファージの両方によるELISA シグナルの減少を示す。P3G12 ファージとP3C8ファージは両方とも>1.0 ×1010t.u./mlの濃度においてCEA 結合を特異的に阻害するが、一方で無関連のファージ(P4A2)は阻害しない。
実施例12:CEA に特異的な 125 I標識scFvの腫瘍取込みおよび正常組織生体分布の分析
実施例10は、異種移植されたヒト結腸癌への125I標識CEA 特異的scFv CEA6 およびTO6D11の効率的限局化を説明する。別の実験において、CEA6の親和力成熟から誘導されたscFv(HBB11, TO6D10,TO6D4, TO6D12 並びにTO6D11およびCEA6)は全て、注射後24時間目に腫瘍組織に限局化されることが証明された。その実験では、CEA6とTO6D12は24時間目に最高の腫瘍:血液比を示した(11:1)。TO6D4 はそれより低かった(4:1)が、24時間目の腫瘍における注入線量の百分率は最高であった(2%)。TO6D4 は、より遅いクリアランスを示す、より好ましい腫瘍:腎臓比も与えた。記載される更なる実験は、それらの観察結果を確かめるために、および取り込まれた放射能を測定することができる一層多数の時点を組み込んだ、CEA6, TO6D12およびTO6D4 の背合わせの比較を与えるために実施した。
a.125ヨウ素によるモノマーscFvの標識
実施例10に参照したヨウ素法により一本鎖Fvを標識した。標識後、125I−CEA6、125I−TO6D12および125I−TO6D4 のそれぞれ90%、85%および62%がCEA −セファロースカラムに結合した。
b.腫瘍異種移植片モデル
LS174T異種移植片を有する16匹のマウスのグループに、各々のヨウ素化scFvの静注1回量(1μCi/50μg)を投与した。注射後3,6, 18および24時間後に4匹のマウスのグループを犠牲にし、腫瘍と他の組織をガンマカウンティング用に取り出した。
3種のscFvは全て腫瘍に優先的に限局化した。最大の腫瘍:血液比は14.6:1(24時間目の125I-CEA6)、6.6:1(24時間目の125I-TO6D12)および 7.4:1(18時間目の125I-TO6D4)であった。図17は、様々な時点についてプロットした腫瘍の注入線量の平均百分率/g(%ID/g)を示す。24時間の時点では、平均%ID/gは0.5 %(125I-CEA6)、0.4 %(125I-TO6D12)および1.5 %(125I-TO6D4)であった。TO6D4 は最も好ましい腫瘍:腎臓比を示し、このことはこのscFvがよりゆっくりと排泄されることを示唆する。しかしながら、3つのscFvの全体クリアランス速度の測定は、それらがおよそ2時間の推定t1/2(α)を有し、互いに識別できないことを示した。従って、この実験は、クローンTO6D4 がCEA6のものに比較して最も遅いオフ速度を示さないけれども、それは生体内投与後により低いクリアランス速度をもたらす特性を獲得したことを証明する。
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Claims (17)

  1. ヒト癌胎児性抗原に対して特異的なヒト抗体抗原結合ドメインを含む抗体であって、ここで前記結合ドメインはヒト癌胎児性抗原に対して1.0 ×10-8M以下の解離定数を有し、ヒト肝細胞と結合もしくは交差反応しないかまたは有意に結合もしくは交差反応せず、及び/又はヒト癌胎児性抗原のA3−B3細胞外ドメインに結合し、
    そして該結合ドメインは、可溶性ヒト癌胎児性抗原よりも細胞性ヒト癌胎児性抗原に優先的に結合し、
    ここで、前記ヒト抗体抗原結合ドメインがVHドメインとVLドメインからなり、前記VHドメインとVLドメインが下記のペア:
    (i) 配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するCEA6のVHドメインと、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するTO6D4および配列番号に示されるアミノ酸配列を有するTO6D12から選ばれたVLドメイン;
    (ii) TO6D11のもの、即ち配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するTO6D10のVHドメインと、配列番号に示されるアミノ酸配列を有するTO6D12のVLドメイン;
    (iii) 配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCEA6のVLドメインと、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するTO6D10のVHドメイン;
    (iv) 配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するCEA6のVHドメインと、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCEA6のVLドメイン;並びに
    (v) 配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCEA6のVLドメインと、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するHBB11のVHドメイン
    から選ばれる、前記抗体
  2. 前記結合ドメインがヒト癌胎児性抗原に対して5.0 ×10-9M未満の解離定数を有する、請求項1に記載の抗体
  3. 前記ヒト抗体抗原結合ドメインが、次の生殖細胞系列:DP71生殖細胞系列;DP47生殖細胞系列;DP67生殖細胞系列;DP32生殖細胞系列;およびDP10生殖細胞系列のうちの1つのVH1、VH3もしくはVH4遺伝子配列、またはそれらの再配列された形を含む、請求項1に記載の抗体
  4. 前記ヒト抗体抗原結合ドメインが、次の生殖細胞系列:生殖細胞系列DPL5;生殖細胞系列DPL2;生殖細胞系列DPL16 ;および生殖細胞系列L12aのうちの1つのVλ1、Vλ3 もしくはVκ1 遺伝子配列、またはそれらの再配列された形を含む、請求項1に記載の抗体
  5. 一本鎖Fv(scFv)分子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体
  6. 前記ヒト抗体抗原結合ドメインを構成するアミノ酸に加えて1または複数のアミノ酸を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体
  7. 標識またはレポーター分子を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体
  8. 前記標識が放射性ヨウ素である、請求項7に記載の抗体
  9. ヒト癌胎児性抗原を発現している細胞の存在を決定する方法であって、試験管内で細胞を請求項1に記載の抗体と接触させ、そして前記細胞への前記抗体の結合を測定することを含む、前記方法。
  10. ヒト癌胎児性抗原への請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗体の試験管内での結合を引き起こすかまたは許容することを含む方法。
  11. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸。
  12. ベクターの一部分である、請求項11に記載の核酸。
  13. 請求項11または請求項12に記載の核酸を含有する細胞。
  14. 請求項11または請求項12に記載の核酸からの発現を含む、抗体の製造方法。
  15. 請求項13に記載の細胞を培養することを含む、請求項14に記載の方法。
  16. 発現後に前記抗体を単離しそして/または精製する、請求項14または請求項15に記載の方法。
  17. 前記抗体を組成物の処方において使用する、請求項16に記載の方法。
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