JP4773157B2 - サンプルマニピュレータ - Google Patents

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Description

本発明は例えば標本分析システム(sampling and assay system)に関する。なお、その代表的な用途の一つが生体標本の分析であるため、本発明に関する本願中の説明はこの種の用途を念頭に置いて行うこととするが、自明なことに、本発明は他種の類似用途にも適用することができる。
従来から、顕微鏡による標本(sample or specimen:サンプル)の観察に当たっては、とりたてて能動的機能のない基板であるスライドの上に、観察したい標本を配置及び固定し、これを顕微鏡で観察するという手法が採られている。こういった観察環境下でも、精密な光学系を使用しまた標本に染色若しくは蛍光タグ付けを施せば、超高速画像や高解像度画像を得ることができ、ひいては各種の過程、例えば細胞成分を局所に集める過程や細胞成分間相互作用又は細胞成分対外界相互作用を見守る過程を、観察しながら実行することができる。このこととの関連で、従来から、観察対象となる過程を能動的に制御できるようにすることや加速できるようにすることが、強く求められている。
また、マクロ的なスケールにおいては、細胞、バクテリア或いはウイルスを好適に操る(マニピュレーションする)ことができるようにすることが、望まれている。それは、こういったマクロ的物体のマニピュレーションが、生体要素(bio-agent)検出といった興味深い用途に関わっているためである。実際、光による微細物捕捉即ち光トラッピング(optical trapping)の分野における進歩は、単一細胞スケールでのマニピュレーションを可能にするツール、例えばレーザピンセットやレーザシザー乃至レーザメスをもたらしている。しかしながら、レーザを用いることができる媒体(環境乃至対象)は限られており、また光トラッピングを含むプロセスはその並列化や大規模化が容易でない。そのため、オペレータが生体分子の移動を制御できるより優れた方法が、切望されている。
更に、帯電している分子を非接触で動かすには電界を使用すればよい。この原理による手法の例としては、電気泳動法や電気浸透法がある。こういった手法は、水溶液や有機溶液、空気やエーロゾル、高粘度物質例えば各種のゲル等を含め、多くの媒体(環境)において有効である。しかしながら、電界を使用して生体分子を動かす古典的手法例えば電気泳動法は、基本的には、標本を挟むように2個の電極を置きそれらの間にある全ての粒子を可動化する、というやり方であり、こういったやり方を用いる限り、標本スライド内にある複数個の分子乃至微小領域を個別に制御することはできない。
米国特許第4896174号明細書 米国特許第5893015号明細書 米国特許第6134412号明細書 米国特許第6137979号明細書 米国特許第6219515号明細書 米国特許第6246855号明細書 米国特許第6272296号明細書 米国特許第6290342号明細書 米国特許第6351623号明細書 米国特許第6499831号明細書 LabVIEW 7.1, National Instruments, pp.1-2, [online], [Internet URL http://www.ni.com/labview], searched on June 25, 2004 ChemImage, ChemIcon Inc., The Chemical Imaging Company, 6 pages, [online], [Internet URL http://www.chemimage.com], searched on June 25, 2004 "Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology," 4th ed., "Electroseparations (Electrophoresis)" in vol.9, Wiley-Interscience, 1994 A. T. Andrews, "Electrophoresis: Theory, Techniques, and Biochemical and Clinical Applications," 2nd.ed., Clarendon Press, 1993 John F. Robyt et al., "Biochemical Techniques: Theory and Practice," 2nd ed., Waveland Press, 1987 Hawker et al., Biotecnol. Prog. 1992, 8:429-435
本発明の目的の一つは、実施形態における下位概念的な表現に即していえば、随意に制御可能な標本スライド並びにその製造及び使用方法を提供すること、特にスライド上の標本を生化学イメージングシステムにて可視化しつつインタラクティブに操れるようにすることにある。
本発明の一実施形態に係るサンプルマニピュレータは、顕微鏡観察イメージングシステムにて使用されるサンプルマニピュレータであって、基板と、この基板上に配置された複数個一組の進行波電極と、この進行波電極にアドレスし少なくとも一種類の電気信号を印加する手段と、その内部に標本を収容し移送することができるよう基板上に配置された媒体の層と、を備え、この媒体内に標本が入っている状態で進行波電極に適切な電気信号を印加することによって、基板上のある位置から別の位置へとその標本を随意に移動させ得るものである。
本発明の他の実施形態に係るサンプルマニピュレータは、顕微鏡観察イメージングシステムにて使用されるサンプルマニピュレータであって、基板と、この基板上に配置された複数本一組の導電バスと、基板上に配置された電気絶縁物の層と、この電気絶縁物の層上に配置された複数個一組の進行波電極と、電気的な冗長性を実現するため、並びに進行波電極が両側からバイアスされ電極電流による電圧降下が最小化されるよう電気的設計を最適化するため、導電バス毎に設けられた複数個一組の導電ビアと、を備え、進行波電極上の適切な媒体の層内に1個又は複数個の標本が入っている状態で複数本一組の導電バスに適切な電圧波形を印加することによって、サンプルマニピュレータ上のある位置から別の位置へとその又はそれらの標本を随意に移動させ得るものである。
本発明の他の実施形態に係るシステムは、標本看取面(sample viewing surface)上の標本を随意に移動させるシステムであって、少なくとも一種類の波形を出力するため少なくとも1個の出力手段を有する電子コントローラと、サンプルマニピュレータと、を有し、このサンプルマニピュレータが、基板と、この基板上に配置され電子コントローラの少なくとも1個の出力手段に電気的に導通している複数個一組の進行波電極と、を備え、この複数個の進行波電極のうち何れかに近接するよう基板上に標本が配置されている状態で複数個の進行波電極に適切な波形を印加することによって、基板上のある位置から別の位置へとその標本を随意に移動させ得るサンプルマニピュレータであるシステムである。
本発明の他の実施形態に係る方法は、基板及びこの基板上に配置された複数個一組の進行波電極を備えるサンプルマニピュレータを用い第1の標本を第2の標本から分離させる方法であって、サンプルマニピュレータ上に第1の標本を載せるステップと、サンプルマニピュレータ上に第2の標本を載せるステップと、サンプルマニピュレータの進行波電極に印加する電圧波形について適切なスイープ周波数を決定するステップと、決定したスイープ周波数を有する電圧波形をサンプルシミュレータの進行波電極に印加することにより複数個一組の進行波電極を横断する静電進行波を発生させるステップとを、決定したスイープ周波数を以て発生させた静電進行波により、第1の標本がサンプルマニピュレータの少なくとも一部の領域にて第1の速度で横断移動し且つ第2の標本がサンプルマニピュレータの少なくとも一部の領域にて第1の速度と異なる第2の速度で横断移動するよう(その結果としてこれら2個の標本が空間的に離れていくよう)、実行するものである。
本発明の他の実施形態に係る方法は、基板及びこの基板上に配置された複数個一組の進行波電極を備えるサンプルマニピュレータを用い標本を集中させる方法であって、サンプルマニピュレータ上に標本を載せるステップと、進行波電極の並び上における進行波発生位置を少なくとも1箇所選択するステップと、選択した少なくとも1箇所の進行波発生位置に少なくとも一種類の電圧波形を印加することによりその位置から進行波を発生させるステップとを、発生した進行波が作用した標本が集中するよう実行するものである。
本発明の他の実施形態に係る方法は、基板及びこの基板上に配置された複数個一組の進行波電極を備えるサンプルマニピュレータを用い標本を適切な何種類かの試薬と反応させ或いは複数個の試薬同士を反応させる方法であって、サンプルマニピュレータ上の第1の位置に1個又は複数個の標本又は試薬を載せるステップと、サンプルマニピュレータ上の第2の位置に1個又は複数個の試薬を載せるステップと、サンプルマニピュレータの進行波電極に印加する電圧波形について適切な周波数を決定するステップと、決定した周波数を有する電圧波形をサンプルマニピュレータに印加することにより静電進行波を発生させ標本及び試薬又は試薬及び試薬のうち少なくとも一方を他方に接近していくよう動かし反応させるステップと、を有するものである。
本発明の他の実施形態に係る方法は、上述の分離方法を実行するための分離モード(separation mode or dispersive mode)、上述の集中方法を実行するための集中モード(focusing mode or concentration mode)、上述の反応方法を実行するための反応モード(reaction mode or mixing mode)、等の動作モードを順序立てて又は並列的に起動することにより、複数サンプルマニピュレーションを実行する方法である。本方法によれば、例えば、標本を種(species)毎に分離させ種毎に局所的に集中させることができる。本方法によれば、例えば、標本と試薬又は試薬同士を接触させて相互に反応及び結合させ反応が生じた種と反応が生じなかった種とを相互に分離させることができる。本方法によれば、例えば、標本の移動と集中とを同時に引き起こす、標本の集中と反応とを同時に引き起こす等、利用可能な動作モードを複数個組み合わせて起動させて標本を操る(マニピュレーションする)ことができる。なお、本件技術分野における習熟者(以下「当業者」)であれば、本願における開示に基づきこれ以外の様々な組合せ方を想到できるであろう。本発明はそういった組合せ方をも包含するものである。
本発明の実施形態に係るサンプルマニピュレータ(以下「本マニピュレータ」とも称する)はユーザが誰からの支援もなく取り扱える器具であり、本願中で仔細に説明するように、これを準リアルタイム可視化例えば数フレーム又は数秒に亘る視覚フィードバックと併用することによって、標本をインタラクティブに動かし操ることができ、またこれをジョイスティック操作で実現することができる。また、本マニピュレータでは、進行波電極乃至トレースを複数個並べることによって、個別にアドレス可能な静電進行波発生用のグリッド(以下「進行波グリッド」とも称する)が形成される。このグリッドはその上に静電進行波(以下単に「進行波」とも称する)を発生させるグリッドであり、その機能はプログラミングによって何通りかに即応的乃至即時的に(即ちオンザフライ的に)再構成できる。また、本マニピュレータを使用し標本を操るための管理乃至制御は、二段階の処理で実行できる。例えば、本マニピュレータ上に載せられている2個の標本を同マニピュレータ上にてそれらの現在位置とは別の目標位置へと動かすには、目標位置を選択決定する第1の処理と、同マニピュレータ内にて一種類又は複数種類の進行波を発生させそれら2個の標本を目標位置へと動かす第2の処理とを、行えばよい。これらのうち第1の処理に際しては、まず、ユーザ等が、それら2個の標本のうち一方の現在位置を代表するトレースと他方の現在位置を代表するトレースとにより挟まれている空間内に狙いを定め、ジョイスティックその他のコントローラのカーソルを動かすことにより目標位置を選択し、例えばジョイスティックに対する親指クリック操作等によって目標位置を決定して起動信号を発生させる。この処理に際しては、対応するモニタ上に画像が表示される。この画像はレジストレーションキュー即ち位置合わせ用のキューを含む画像であり、ユーザ等はこの画像を参照することによってトレースを認識し位置を指定することができ、また標本を操るためのアルゴリズムは相隣り合うトレース例えばn番目のトレースとn+1番目のトレースとを区別して認識することができる(即ち起動信号発生時におけるカーソル位置を少なくともトレース単位で認識できる)。次に、第2の処理に際しては、標本を操るためのアルゴリズムは、予めプログラムされている進行波アルゴリズムの中から使用する動作モードに相応するものを選択して起動させる。例えば、起動信号発生時におけるカーソル位置を境に、一方の側にはある進行波アルゴリズムを、他方の側にはまた別の進行波アルゴリズムを、それぞれ割り当てて起動させる。進行波アルゴリズムは、グリッドのうちその割当先の部分にて進行波を発生させるアルゴリズムであり、それぞれスイープ周波数を選択決定する機能を伴っている。従って、この進行波アルゴリズムを例えばLabviewコントローラ等の電子コントローラにて実行することにより、進行波グリッド上に一種類又は複数種類の進行波を発生させ、2個の標本を目標位置へと動かすことができる。
本マニピュレータは、本願中で仔細に説明するように、概略、基板と、基板上に配置されその内部又は上部に1個又は複数個の標本を収容又は搭載して移送するのに適した媒体の層と、基板上に配置された複数個一組の進行波電極と、進行波電極にアドレスするためのシステム又はコンポーネントとを、備えている。進行波電極にアドレスするためのシステム又はコンポーネントは、例えば、電圧源又は電気信号源を進行波電極と電気的に導通させる複数本一組の導電バス乃至二次電極や、少なくとも一種類の電気信号を進行波電極に送り込む手段例えば1個又は複数個の導電ビアや、本マニピュレータの周縁に沿って配置された1個又は複数個のエッジコネクタ等から、構成することができる。進行波電極に対するアドレシングを所望の形態で行うため、例えば、小型電子ICチップを本マニピュレータ内又はそのコントローラ内に1個又は複数個組み込んでもよい。それらのチップのうちどのチップにより必要なアドレシングを行わせるか、また詳細にはどのような形態でアドレシングを行うのか、といった事項についての決定は、例えば、本マニピュレータ又はその周辺に実装されているアルゴリズム又は論理回路により行わせればよい。勿論のこと、進行波電極に対するアドレシングを容量性結合を介し行ってもよい。
図1は、本発明の実施形態に係り顕微鏡観察イメージングシステム等で使用できるサンプルマニピュレータの三次元構造を示す斜視図である。本マニピュレータの形状・寸法は、例えば、多くの用途において使用されている既存のスライドフォーマットに合致する1インチ×3インチの長方形とすることができる(1インチ=約2.54cm)。本マニピュレータは基板及びその上に形成された三層構造を有しており、基板としては、基板を形成するのに適した各種の素材、例えばガラスにより形成された基板を使用することができる。基板上の三層構造のうち一番下にある層には、複数本一組の(図の例では8本の)アルミニウム製のバスが設けられている。これらのバスは、電気信号を送り込むライン又は電気信号が帰還するラインとして使用できるよう、また電極電流による電圧降下ができるだけ小さくなるよう、導電性の良好なアルミニウムを用いて形成された大きな断面積のバスである。図示したバスは四相駆動用のバスであり8本設けられている。真ん中にある層は電気絶縁素材により形成された層、例えば3μm厚のSiON(silicon oxinitride)層であるが、SiONに代え、ブレードコート、ディップコート、スピンコート、ウェブコート、気相成長等の手法により絶縁性ポリマの層を形成し、低コスト化を図ってもよい。それに適する素材の例としては、これに限られるものではないが、ポリイミド(polyimides)、ポリウレタン(polyurethanes)、ポリエチレン(polyethylenes)、ポリプロピレン(polypropylenes)、ポリスチレン(polystyrenes)、ポリアクリレート(polyacrylates)、UV(ultraviolet:紫外線)硬化性ポリマ、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene:PPX)等を、掲げることができる。PPXの例としては、商品名パリレン(parylene)、パリレンN、パリレンC、パリレンF等で販売されているものを、掲げることができる(即ちハロゲン化物等も含めることができる)。また、低価格品が求められる用途では、印刷回路基板乃至可撓性回路技術を用いて金属化層及び絶縁素材を堆積させる低コストプロセスが望ましい。
三層構造のうち一番上にある層には、複数個の進行波電極が形成されている。これらの進行波電極は、例えば、接着性をよくするためチタン上にプラチナを重ねた構造を有しており、ビアを介してその二層下にあるアルミニウム製のバスに接続されている。進行波電極とバスとを導電接続するビアは、十分な冗長性を得るため、またトレースに沿った導電経路を短くするため、多数設けられている。バス及びビアは、各トレースをその両端(両側)からバイアスできるよう、従って電気信号の帰還経路長が更に半減しトレース接触部とトレース接触部との間の電圧降下が低減されるよう、配置及び形成されている。認められるように、本マニピュレータの電気的構造は、標本を移送するのに必要な電気化学的電流等の電極電流により生じ得る進行波電極沿い電圧降下を最小化することを狙って、設計されている。更に認められるべきことに、本マニピュレータを形成する素材は上記素材に限定されるものではない。なお、気中粉体用進行波電極並びにその製造方法及び手段については、特許文献1〜9を参照されたい。
より詳細には、図1に示すサンプルマニピュレータ100は、ガラス製の基板110、この基板110上に配置され電気絶縁体により形成されている絶縁層120、並びにこの絶縁層120上に配置され適切な液体又はゲルにより形成されている媒体層130を、備えている。これらのうち、基板110は、ガラスでも他の素材でも形成できるし、また光学的に(実質)透明でもよいがそうでなくてもよい。この基板110の上には複数本の導電バス140が配置されており、これらのバス140に対する電気的アクセス及び導通手段としては、1個又は複数個の(図の例では4個の)コンタクトパッド150を含むエッジコネクタが、基板110上に配置されている。これらを覆う絶縁層120の上にはグリッドを形成するよう複数個の進行波電極乃至トレース160が配置されており、これらのトレース160は、概略、後により詳細に説明するように互いに平行となるよう間隔配置されている。そして、それぞれ進行波電極160のうち少なくとも1個とバス140のうち少なくとも1本とを電気的に導通させるため、絶縁層120の内部を通る複数個の導電ビア170が、導電バス140毎に何個か設けられている。これらのビア170は、概略、この図の積層アセンブリの厚み方向に沿って延びている(少なくとも部分的にはそのようになっている)。更に、この図に示すシステム、アセンブリ及びグリッドを駆動するには、多相電気信号、例えば第1相φ1、第2相φ2、第3相φ3及び第4相φ4の電気信号から構成される四相電気信号を使用する。この四相電気信号により本マニピュレータを駆動するには、複数個の進行波電極160のうち第1の進行波電極には第1相φ1の電気信号を、第1の進行波電極のすぐ隣にある第2の進行波電極には第2相φ2の電気信号を、同方向に沿い第2の進行波電極のすぐ隣にある第3の進行波電極には第3相φ3の電気信号を、同方向に沿い第3の進行波電極のすぐ隣にある第4の進行波電極には第4相φ4の電気信号を、同方向に沿い第4の進行波電極のすぐ隣にある2個目の第1の進行波電極には第1相φ1の電気信号を、というように、複数個の進行波電極160をその並び方向における配置順に従い4群に分け、群毎に異なる位相の電気信号を印加する。このようにして進行波電極160に電気信号を印加すると、媒体層130上又は媒体層130内に分散配置されている標本例えば図中のA及びBが随意に移動する。なお、媒体層130を形成する媒体に関しては、液体やゲルに限らず、媒体層130上又は媒体層130内に載せて1個又は複数個の標本を移送できるよう素材を選択すればよい。水溶液内では標本たる大抵の種例えば生体分子が帯電していることや、溶液のpH値を調整できることからすれば、大抵の用途においては、本マニピュレータにおける媒体層130としては液状やゲル状の媒体層130を使用するのが普通であろう。しかしながら、空気、エーロゾル等を含め各種の気体状媒体を媒体層130として使用すること、例えば液状やゲル状の媒体層130を廃し進行波電極160上に直接標本を載せて移送することも、用途によっては可能である。
本マニピュレータにおける基板110は、その用途次第で、光学的に(実質)透明なものにもまた光学的に(実質)反射性のものにもすることができる。透明基板にするか反射基板にするかは、本マニピュレータの用途及び使用方式に応じて決めればよい。ここでいう使用方式には例えば照明を反射する反射式と透過させる透過式とがあり、反射式の場合は標本と同じ側に、また透過式の場合は標本とは逆の側に、照明用の光源を配置する。使用方式を反射式及び透過式の何れにするかは、標本が比較的光反射性かそれとも光透過性かにによって決めればよい。また、本マニピュレータを構成する他のコンポーネント、例えば複数個の進行波電極160や1本又は複数本のバス140もまた、その用途次第で、光学的に(実質)透明なものにも光学的に(実質)反射性のものにもすることができる。例えば、その用途上基板110を光学的に(実質)透明なものにする場合は、進行波電極160等も光学的に(実質)透明なものにするのがよいであろう。場合によっては、進行波電極160等のコンポーネントを光学的に透明なものにしつつ基板110を光学的に反射性のものにする方がよいこともある。そして、本マニピュレータを動作させ複数個一組の進行波電極160にて進行波を発生させるときには、同マニピュレータ内又はその一部領域に配置されている進行波電極160の集まりそれぞれにて所望の時間波形が得られるよう、進行波電極160の各組に対して一種類又は複数種類の所望波形を印加する。
本マニピュレータにて使用する進行波技術に関しては、次のようなことがいえる。まず、図1中の進行波電極160の如く相並んでいる電極群に対し、時間変動する電圧を印加すると、静電波が発生する。印加する電圧の位相を適宜設定乃至制御することにより、これらアレイ化されている電極の延長方向に直交する方向に沿い、時間経過に応じて静電波を進行させることができる。更に、これらの電極上にタンパク質その他の生体分子や無機素材が位置しており、またそれらが電荷を有しているのであれば、それら生体分子や無機素材を、静電波として発生した進行波により移動させることができる。その移動度が一定の種については、本マニピュレータのような進行波デバイスにおける移送状態を、同期状態と非同期状態とに区分することができる。同期状態はしきい周波数未満の周波数を有する電圧が印加されている状態であり、非同期状態はしきい周波数を超える周波数を有する電圧が印加されている状態である。しきい周波数は種が進行波電界とペースを合わせて移動できるかどうかの境目となる周波数であり、しきい周波数を下回る周波数では種が進行波電界にペースを合わせて即ち同期して移動できるのに対し、しきい周波数を上回る周波数では種が進行波電界に対しもはやペースを合わせることができない。種の移動度例えば電気泳動移動度μが与えられている場合は、しきい周波数fTHRESHOLDを次の式
[数1]
fTHRESHOLD=μE/4p
により求めることができる。この式中、Eは進行波の電界強度、pは進行波電極のピッチである。図2に、その分子量が似通っている2個の標本(それぞれ分子量がMW1又はMW2)について、周波数応答曲線を示す。しきい周波数fTHRESHOLDより低い周波数レンジにて発生する同期状態の特徴は、移送速度が高いこと、周波数上昇に対し移送速度が直線的に増加すること、分子量の違いによる移送速度の差が小さいこと等である。従って、同期状態を初期分離に利用すれば、標本乃至種を迅速に分離できる。これに対して、しきい周波数fTHRESHOLDより高い周波数レンジにて発生する非同期状態の特徴は、移送速度が低いこと、分子量の違いによる移送速度の差ΔVが大きいこと等である。従って、非同期状態を利用すれば、分子量が似通っている標本乃至種同士をより精密に分離できる。なお、移送条件をより好適なものにすれば、周波数応答曲線のうちの同期状態部分がより急峻になり、またそのピークがより高くなる。
本マニピュレータによれば、移送挙動におけるこのような状態相違を好適に利用することができるため、標本のマニピュレーションに当たり種々のやり方を採ることができ、また視覚フィードバックを用いた実験を管理乃至制御することができる。その基本的な理由は、個別の電極又は電極群を選択することができること、またそれら電極又は電極群に適用すべき特定の進行波アルゴリズムを呼び出して所望の機能を実行させることができること、である。
既存の1インチ×3インチ外形の顕微鏡用スライドと同じく1インチ×3インチの長方形にする場合、本マニピュレータにてトラック即ち標本を移送する道筋として利用できる部分の長さは、およそ6cmとなる。トレースの四相駆動は、グループアドレシング(例えば4本のトレースを一遍にアドレシングするやり方)によっても、また個別アドレシングによっても、実現することができる。
約6cmの長さを有するトラックに全部で1500本のトレースを設ける場合、トレースピッチは約6cm/1500個=約40μmとなる。従って、四相個別アドレシングを行う際には、解像度即ち最大限に収束している標本の幅についての測度がトレースピッチと同じく約40μmという精細な解像度になるが、反面、接続箇所の個数は最少でも1500箇所と多数になってしまう。これに対し、同じ構成にて四相グループアドレシングを行う際には、同相で駆動されるトレース間のピッチ即ちグループピッチが約40μm×四相=約160μmとなるため、解像度もこれと同じく約160μmという四相個別アドレシング時より粗な解像度になるが、反面、接続箇所の個数は1500個/四相=375箇所に減る。後述するように、幾種類かの動作モードを実現するため6cmのトラックを6個のグループ、即ちそれぞれにアドレス可能で長さが1cmずつのセグメント6個へと、物理的に分割する場合を考えると、1セグメント当たりの接続箇所の個数は、1500個/6cm/四相=約62箇所となる。
本マニピュレータを構成する進行波電極その他のコンポーネントとしては、様々な構成、配置及び寸法のものを使用できる。構成、配置、寸法等の例を幾つか挙げると、次のようになる。まず、進行波電極ピッチ(隣り合うトレースの中心間距離)は、例えば約600μm〜約10μmの範囲内の値、特に約200μm〜約20μmの範囲内の値とするのが望ましい。隣り合う進行波電極間の対向辺間隔は、例えば約300μm〜約7.5μmの範囲内の値、特に約100μm〜約10μmの範囲内の値とするのが望ましい。モデリング及び製造能力を考慮すると、設計的に望ましいといえるトレース形状・寸法は、10μm幅及び40μmピッチである。そのようにした場合、トラック1cm当たりトレース本数は250個となる。また、グリッド乃至その進行波電極に印加する電気信号の電圧レベルは、例えば約5V〜約0.001Vの範囲内の値、特に約2V〜約0.10Vの範囲内の値とするのが望ましい。移送機構を機能させるには、電極位置にて電気化学反応を発生させ続けることと同時に、当該電気化学反応のレベルを制御しガスが顕著に発生するレベルより低いレベルにしなければならない。特に、電気化学反応が発生していないと媒体内の可動イオンによりデバイの二重層が形成され、媒体内にて移送のために必要とされる電界がこの電気二重層によって大きく抑圧されることとなる。導電率の更なる制御は、当業者に知られているように、双生イオンを使用することにより実現可能である。そして、電気信号の周波数は、移送すべき標本、生体分子乃至帯電種に応じて好ましい値に決めればよいが、発明者の知見によれば、例えば約0.001Hz〜約25Hzの範囲内の値、特に約0.020Hz〜約2Hzの範囲内の値が有用である。
先に述べたように、本マニピュレータのユーザは、同マニピュレータ上に載せられている標本をインタラクティブに操ることができる。即ち、進行波電極に適切な電圧波形を印加することにより、本マニピュレータの標本看取面に沿い随意の方向へと、標本を動かすことができる。本マニピュレータに形成されている1個又は複数個の進行波グリッド又はその部分領域への一種類又は相異なる複数種類の電圧波形の印加は、適切なアクチュエータ乃至コントローラを用いれば実行可能であり、また当該アクチュエータ乃至コントローラは商業的に入手可能なアクチュエータ乃至コントローラによって実現できる。例えば、当業者に知られているジョイスティック型コントローラを用いればよい。更に、適切なソフトウェアを用いれば、一種類又は相異なる複数種類の波形を印加すること、特に標本の移送又はマニピュレーション中に波形を変更することができる。例えば、適切な制御ソフトウェアを用いれば、ある種の波形を印加している状態でユーザが一種類又は複数種類のパラメータの変更、例えばスイープ周波数や電圧レベルの変更を欲したときに、これを即座に実行に移すことができる。このように標本のマニピュレーション中に波形等を即座に変更すること及びそのための能力を指して、本願ではオンザフライと称している。
更に、本マニピュレータの動作モードには後に詳述する少なくとも三種類のモード(分離モード、集中モード及び反応モード)がある。但し、本マニピュレータの動作モードはこれら三種類のモードには限られず、同マニピュレータを他種のモードで動作させることもできる。更に、これらのモードは、SDS−PAGE又はその各種の変形版と併用することができる。そこで、本マニピュレータの動作モードについて述べる前に、SDS−PAGE技術に関して概説・検討する。
SDS−PAGEとは、電気泳動の原理に基づき分子特に生体タンパク質を分離する分析手法である。電気泳動とは、電界の印加による溶液内帯電分子の移動等を指している。溶液内における帯電分子の移動速度は、その電荷、大きさ及び分子量に依存している。分析用のツールとしては、SDS−PAGEは簡素、高速且つ高感度である。
SDS即ちドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)は、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)としても知られ、タンパク質を変性させるイオン洗剤である。複数種のタンパク質を混合したものにSDSを加えると、SDSは疎水性相互作用によってそれらのポリペプチド主鎖(polupeptide backbone)と結合し水素結合を破壊し疎水性相互作用をブロックし更にそれらを部分的に展開して、その三次構造及び二次構造を除去し分子式における差を小さくする。ジスルフィド架橋(disulfide bonds)を断ち切るには、通常、2−メルカプトエタノール(2-mercaptoethanol)やジチオトレイトール(dithiothreitol:DTT)等の還元剤も使用される。SDSは各タンパク質の固有電荷(native charge)をマスクするため、SDSをタンパク質の混合物に加えた結果として、概ね直線状でその単位質量当たり合計負電荷が一定な錯体(complex)が得られる。このように処理することによって、例えば生体タンパク質の分離に際して各タンパク質の電荷及び寸法が及ぼす影響が小さくなり、従って各タンパク質をその分子量のみに基づき分離することが可能になる。
また、PAGEはポリアクリルアミドゲル電気泳動(polyacrylamide gel electrophoresis)の略である。ポリアクリルアミドゲルは、アクリルアミドモノマ(acrylamide monomer)と、架橋コモノマ(cross-linking comonomer)例えばビスアクリルアミド(bisacrylamide)と、緩衝剤と、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)等の開始剤やテトラメチレンジアミン(tetramethylenediamine:TEMED)等の加速剤といった重合反応を推進する物質と、を結合させることにより合成できる。この合成により得られるポリアクリルアミドゲルは、様々な寸法の孔を有する繊維マトリクスである。この孔の寸法は、ゲル内に占めるモノマの割合及び架橋コモノマに対するモノマの比率を変化させることにより、制御することができる。
SDS−PAGE用の装置は、GE Healthcareの一部門であるBio−Rad and Amersham等の供給元から、商業的に入手できる。SDS−PAGE用の装置は、通常、2個の緩衝剤リザーバを備えている。2個の緩衝剤リザーバのうち1個は、その内部の緩衝剤に陽極が浸漬されている陽極用緩衝剤リザーバであり、もう1個は、その内部の緩衝剤に陰極が浸漬されている陰極用緩衝剤リザーバである。陽極及び陰極はそれぞれ直流電源に接続されており、陽極用緩衝剤リザーバと陰極用緩衝剤リザーバはポリアクリルアミドゲルを介してつながっている。また、標本ウェル群は、通常はポリアクリルアミドゲルの一端にあり、標本とされるタンパク質はこれらのウェル内にある(置く)。なお、他の装置例えば冷却ブロック等も併用できる。
電界が印加されると、SDSによって処理されたタンパク質は、ポリアクリルアミドゲルに形成されている孔を通って移動する。その際、小さなタンパク質は大きなタンパク質に比べて孔を素早く通り抜ける傾向があり、その移動速度は分子量の対数値に対して反線形的な関係を有している。従って、これを既知の分子量標準値に照らし合わせることにより、そのタンパク質の分子量及び寸法を決定することができる。なお、他の手法、例えば二次元ゲル電気泳動をSDS−PAGEと併用すれば、標本の解像度が向上する。また、SDS−PAGEについては、非特許文献3〜5に更なる情報が示されている。
さて、本マニピュレータにおける少なくとも三種類の動作モードのうち第1の動作モードは分離モードである。大まかにいうと、この動作モードにおいては、静電進行波を用い、似通った分子量又は質量を有する複数個又は複数種類の標本、分子、種又は個体を分離することができる。分離モードを実行する際には、例えば、その分子量が似通っている少なくとも2個の標本の混合物を、図3中の「前」に示す進行波グリッドの端部近傍に配置する。おおよそでも分子量がわかっているなら、(推定した)電気泳動移動度を用い図2中のしきい周波数fTHRESHOLDのすぐ上になるようスイープ周波数を決め、決定したスイープ周波数を有する電気信号をグリッドに印加することによって、グリッド上の標本混合物を非同期状態で動かすことができる。なお、SDS−PAGEにおいてはタンパク質標本に現れる電荷がその分子量に比例しているため、その分子量が正確に決定されている標準的なタンパク質についての移動距離を参照することによって移動度を推定することができる。分子量による移動速度差ΔVが大きい非同期状態で標本混合物を移動させると、グリッド上のトラック例えばその長さが6cmのトラック上を動いていく間に、その標本混合物は分離乃至分散して複数個に分かれる。例えば図3中の「後」に示した例では、2個の標本に分かれている(図3中の「後」は「前」より右側における標本の位置関係を示している)。このようにSDS−PAGEを用いつつ本マニピュレータを分離モードで動作させた場合、その分子量が15kDaを挟んで200ドルトン違っている二種類のタンパク質について、計算上、従来のゲル電気泳動法に比べ標本間の分離に要する時間が1/3.4に短くなりまた標本間の空間的分離距離が41%増加する。また、グリッド上を並進する過程で変形していく複数個のタンパク質標本から検出できる最小の分子量差は、80ドルトンである。分離モードで動作させたときこのような分離能力が得られることからすれば、本マニピュレータは、重要な分離ツールとなり得るものであるといえる。
本マニピュレータを分離モードで動作させ複数個の標本を相互に分離させるプロセスは、例えば次のようになる。まず、ユーザ又はそのマシンは、分子、帯電種その他の個体を少なくとも二種類含む標本混合物を、本マニピュレータ上の第1領域に導入する(例えば載せる)。用途によっては、このように複数個の標本を混合物として同時に載せるのではなく、それら複数個の標本を順番に載せていくようにしてもよい。分析対象としている分子や種の分子量又は質量の平均値又は中央値を既に知っている又は想定しているユーザ又はそのマシンは、標本例えば一組の分子又は種が非同期状態で変位するよう、例えばしきい周波数のすぐ上の周波数を、印加するのに適するスイープ周波数として決定する。この決定に応じ、ユーザが操るマシンや本マニピュレータ用の電子コントローラが、決定されたスイープ周波数を有する多相電圧波形を、同マニピュレータの導電バスを介し同マニピュレータの進行波グリッドに印加する。すると本マニピュレータ上の標本群はグリッドを縦断する方向(進行波電極を横断する方向)に沿って移動し始めるが、その速度はここで観察対象としている分子や種の種類毎に違う。この移動速度上の違いは、いずれ顕微鏡やモニタ画面等で看取できまた画像認識できるようになる。即ち、分子又は種の集まりが複数個例えば2個の領域へと空間的に分離し、引き続いてそれらの領域の間の距離が増していく。
本マニピュレータにおける第2の動作モードは集中モードである。この動作モードにおいては、本マニピュレータを用い、特定の質量範囲に属する標本又は標本群を集中乃至収束させる(1箇所に集めコンパクトにする)ことができる。この動作モードは、進行波グリッド上にある特定の位置を選択し、その標本又は標本群に含まれるタンパク質等がその位置に向け動いていくよう図4に示す如く差し向かいの進行波を発生させることにより、実現できる。この動作モードが格別に重要になるのは、その標本又は標本群が希釈されている場合、特にこの動作モードの実行によりその濃度が少なくとも局所的に増加し検出可能な下限(limit of detection:LOD)に達する可能性がある場合である。溶質例えばタンパク質が広がっているバンド(空間)をコンパクト化する(狭める)上で限界になるのは、電気的ドリフトに逆らって働く後方拡散である。その一次概算値は、次の式
[数2]
E(w/2)=kT/q
により求めることができる。この式中、Eは進行波の電界強度、wは溶質例えばタンパク質のバンドの幅、kはボルツマン定数、Tは温度、qは電荷である。局所的に電界強度Eが一桁強まると、バンド幅wは最大で1/10程まで狭まる。先に述べた例においては、バンド幅wの最小値は、進行波電極を個別アドレシングする場合は約40μm、グループアドレシングする場合は約160μmである。
本マニピュレータを集中モードで動作させ標本又は標本群を集中乃至収束させるプロセスは、例えば次のようになる。まず、ユーザ又はそのマシンは、集中乃至収束させたい標本又は標本群を本マニピュレータ上に導入する(例えば載せる)。標本又は標本群を載せる領域は、原則として、2個の進行波発生元領域間とする。例えば、まず、本マニピュレータの第1の端と第2の端との間、理想的にはそれらから等距離にある位置に、集中乃至収束させたい標本又は標本群を載せる。ユーザが操るマシンや本マニピュレータ用の電子コントローラは、この状態で、第1の端に第1の電圧波形を、また第2の端に第2の電圧波形を、それぞれ印加する。すると、第1の電圧波形が印加された第1の端からは第1の進行波が、また第2の電圧波形が印加された第2の端からは第2の進行波が発せられ、これら二種類の静電進行波は本マニピュレータ上を差し向かいに伝搬していき、その結果として標本又は標本群が集中乃至収束する。なお、二種類の電圧波形の印加ひいては二種類の進行波の生成は、同時に行わせてもよいし順番に行わせてもよい。また、この例では電圧波形を2箇所に印加し2箇所で進行波を発生させているが、電圧波形を印加する箇所従って進行波の発生元領域を1箇所としても、標本又は標本群を集中乃至収束させることができる。また、進行波グリッドにおける各進行波の発生元を、1箇所例えば1本のトレースとしても、また複数箇所例えば複数本のトレースとしても、標本又は標本群を集中乃至収束させることができる。何れにせよ、標本又は標本群の集中乃至収束或いはそのバンドのコンパクト化は、進行波が進む方向に対応する方向に沿って、即ち一般に進行波電極乃至トレースに直交する方向に沿って生じる。換言すると、標本又は標本群或いはそれに含まれる特定の分子又は帯電種は、本質的に、本マニピュレータ上におけるその占有エリアの収縮を妨げる力に抗しつつ集中乃至収束し、その密度乃至濃度が実効的に高まっていく。なお、密度乃至濃度の増加量は、本マニピュレータ上における単位表面積当たり分子又は種個数によって左右される。
本マニピュレータにおける第3の動作モードは反応モードである。この動作モードにおいては、本マニピュレータを用い、最終的に1個又は複数個の目標標本(例えば錯体等の標本)に接触することとなるよう1個又は複数個の種(例えば試薬)が動かされる。その目的は、この種をその目標標本と反応させること、或いは何らかの反応乃至相互作用が生じるか、生じるのはどのような反応乃至相互作用か等を調べることにある。目標標本に対する種の相対移動は、様々なやり方で実現できる。例えば、ユーザ又はそのマシンは、目標標本に接触させようとしている種を本マニピュレータ上の一端に、また目標標本を同マニピュレータ上の他の位置に置く。その上で、ユーザが操るマシンや本マニピュレータ用の電子コントローラは、適切な周波数の進行波を用いて種を移動させ目標標本に接触させる。このとき、同時に、目標標本から見て下流側にある進行波電極を用いて目標標本に逆向きの静電力を印加し、目標標本が動かないようにするとよい。反応継続時間を制御するには、種が目標標本と接触している状態を所定時間に亘り維持した後、ユーザ又はそのマシンの指示等に応じ、動作モードを反応モードから分離モードへと切り替えればよい。或いは、集中モードを用いて目標標本を最初の場所に保持してもよい。集中モードにおける進行波は、目標標本から見て上流側にある種を目標標本に向けて移動させるため、このようにしても反応モードを代替的に実現することができる。
目標標本となり得る物質乃至物体としては、各種の生物錯体、例えばタンパク質錯体、核酸錯体、タンパク質核酸錯体、細胞器官、リボゾーム、(タンパク質錯体の一種である)多酵素錯体、ウイルス等を掲げ得る。これらの生物錯体は比較的大きな物体であり、しかも適切な緩衝剤内での寸法及び固有電荷がよくわかっている物体であるから、進行波を用いることによってまたより単純又は小規模なタンパク質と同じようにして、移動させ集中乃至収束させまた一定の場所に保持することができる。それと同時に、これらの生物錯体は、しばしばタンパク質、ペプチド、小分子の薬剤若しくは薬剤候補等といった個別分子のそれとは顕著に異なる移動度ひいてはしきい周波数を有しているため、それらを対象として分離、集中乃至収束といったマニピュレーションを行うことが可能である。例えば、混合物に含まれているタンパク質錯体を試薬と反応させるには、まず、分離モード等によるマニピュレーションを実行して進行波により当該混合物から他の軽いタンパク質を全て移動し去り、顕著に重いタンパク質錯体をアイソレートすればよい。その上で、本マニピュレータ上に残った錯体の位置を所定速度で通るよう所望の一種類又は複数種類の試薬を移動させれば、当該錯体をその又はそれらの試薬と反応させることができる。更に、分離モード等によるマニピュレーションを実行し進行波により錯体と試薬とを分離させれば、結合エネルギ等も決定できる。また、本マニピュレータを利用できる(であろう)用途は、これに限られるものではないが、混合、分離、結合状態検出等等、数多く存在している。例えば、進行波を反応分析用マニピュレータとして使用する際に、図5に示すように、まず、本マニピュレータ上に分析対象たるタンパク質錯体を載せる一方そのタンパク質錯体から見て上流に試薬を載せるものとする。次に、タンパク質錯体を実質的に固定しておき試薬を移動させるか、或いはタンパク質錯体を試薬より低速で移動させることにより、試薬をタンパク質錯体に貫通させるものとする。本マニピュレータ上でタンパク質錯体を実質的に固定し又はタンパク質錯体を試薬より低速で移動させるには、タンパク質錯体が非同期状態で低速移送され試薬が同期状態で高速移送されるようスイープ周波数を調整しその結果に基づきグリッドに与える信号を発生させればよい。そして、試薬のうちどの程度の割合が最終的にタンパク質錯体を通り抜けたかを調べれば、反応物間の結合エネルギや結合強度について、有用な情報を得ることができる。
より詳細には、反応モードに相応する代表的なプロセスは次のようなものである。まず、例えば反応を以て分析すべき分子乃至種を含む第1の標本(例えば錯体)を本マニピュレータの一端に載せる。次に、例えば適切な試薬を含む第2の標本を第1の標本から見て上流にある位置に載せる。そして、本マニピュレータに一種類又は複数種類の電圧を印加することにより、試薬を第1の標本に貫通させる。
錯体に結合し得る個別分子のそれとは違う移動度を有する錯体については、文献によって示されている周知例がある。これらの例乃至文献は、本マニピュレータにおける反応モードの実現可能性や有用性を裏書きしている。即ち、本マニピュレータは、相異なる電気泳動移動度を有する複数種類の試薬の(目標標本又は他の試薬に対する)位置及び速度をよりインタラクティブに制御できるよう、またマニピュレーションの種類を空間的及び時間的にまた多様なやり方で組み合わせ得るよう、構成されている。その結果、本マニピュレータによれば、これまで広く用いられてきた古典的な移動度差利用型電気泳動移動度シフト分析法では提供できなかった能力を、提供することができる。
錯体の中でも注目すべきものは、リボゾームと小胞(ビシクル)である。非特許文献6は、粘度=1.59cPの媒体内におけるリボゾームの電気泳動移動度が−6.8×10-5cm2/(V・sec)であることや、膜フラグメントから形成されている小胞の電気泳動移動度を細胞を溶解させまた二種類の小胞個体群について計測した結果その値として−4×10-5cm2/(V・sec)及び−0.9×10-5cm2/(V・sec)が得られたことを、報告している。細胞膜から取り出された小胞は、しばしば、反応系において重要とされる。なぜなら、細胞膜から取り出された小胞は膜タンパク質を含んでおり、従って当該膜タンパク質との反応性及び結合性に関する試験に用い得るからである。そして、リボゾームは、タンパク質合成の場であるため注目すべきものである。
本マニピュレータにおける反応モード等の動作は、自由溶液内でもゲル内でも実行できる。特に、ゲル内例えばポリアクリルアミドゲル内においては、多分子錯体の移動度及び個別分子の移動度が共に非常に低いため、ゲル内で分離するという手法はなお実用的である。実際、ゲル内実効孔寸法が、典型的なタンパク質の寸法(1〜10nm)とリボゾームの寸法(直径=25nm)や小胞の寸法(非特許文献6では直径=250nm)との中間であれば、錯体挙動の立体障害(steric hindrance)により移動度の差が増すため、ここで議論している相互作用を調べる上での本マニピュレータの実用性は更に増す。また、リボゾームの移動度として上述した値を用いた場合、簡易式
[数3]
μ=q/(6pvR)
から、総電荷計算値=16eが得られる。なお、この式中、qは電荷、vは粘度、Rは半径である。またリボゾームの分子量は25MDaである。これらの数値から、本マニピュレータがなぜ個別のタンパク質、例えばその分子量が10〜250kDaで総電荷が単位電荷eの数倍程に小さいタンパク質を錯体に対し相対移動させ得るかを、理解することができよう。錯体の例にはタンパク質錯体、タンパク質核酸錯体、リボゾーム、膜フラグメントのようなタンパク質脂質錯体、小胞体フラグメント、ゴルジ体標本、ウイルス、多酵素錯体、並びにそれらの任意の組合せが含まれる。
本マニピュレータにおける反応モードは、試薬に対する錯体の反応を調べるためだけでなく、抗体親和力計測や対環境変化応答計測にも利用できる。これらの計測に当たっては、顕微鏡の焦点位置に目標物(抗体、細胞、バクテリア、ウイルス等)を固定しておき、要求に応じまた進行波グリッドを用い、試験手段(test agent)をこの目標物の所在エリアへと動かせばよい。なかでも抗体親和力計測は、目標物たる抗体を本マニピュレータの表面又はその近傍に引き留めておいて任意の試験手段を移動させるか、或いは(抗体の移動は許容しつつも)任意の試験手段を抗体に対して相対移動させることによって、行うことができる。この種の計測は、特定の試験手段例えば標本が目標物たる抗体と反応するかどうかを調べるための診断等に利用できる。抗原タンパク質を目標物として固定する一方試験手段として複数種類の抗体を用い、その抗原タンパク質に結合するかどうかをそれら抗体それぞれについて調べることも可能である。また、対環境変化応答計測とは、細胞、バクテリア、ウイルス等が環境変化に対してどのように応答・反応するかを調べるための計測である。対環境変化応答計測に際しては、進行波グリッドを用い、真核細胞、バクテリア、ウイルス等の目標物が所在しているエリアに、試験手段たる任意の生体要素例えばタンパク質や毒素を送り込めばよい。目標物は、例えば、本マニピュレータの表面又はその近傍に固定等しておく。生体要素が目標物所在エリアに送り込まれたために生じる環境変化に対し、その目標物がどのように応答・反応するかを調べることによって、この対環境変化応答計測を遂行できる。抗体親和力計測及び対環境変化応答計測の何れにおいても、試験手段の影響下における目標物分子の変化・変容を、マルチスペクトルイメージング技術を用いて観測することができる。
本マニピュレータにおける反応モードは、ELISAにおいても利用できる。ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay:酵素免疫測定法)とは、一般に、タグ付けされている可動分子を固定されている生体分子と反応させるための反応工程と、結合せずに残った分子を除去するための洗浄工程と、を含む分析手法のことであり、この分析手法においては、目標物と明確に結合し目標物上に残留している分子が、例えば蛍光により可視化される。このELISAの採り得る形態の一つに、一般に(固定されている)計測用抗体と二種類の可動分子(通常は捕獲された抗体及び目標物たる抗原)とを必要とするサンドイッチ分析がある。サンドイッチ分析に使用される二種類の可動分子は、それらが一緒に存在していないと計測用抗体に結合できず、計測用抗体にそれらが結合すると蛍光等の出射光が発生する。本マニピュレータは、典型的には、進行波の力を用いてこの反応プロセスを促進し(例えば固定されている生体分子例えば計測用抗体に二種類の可動分子を近づけていき)、携帯分析チケット等の用途物における信号強度を強める、という形態で利用できる。
また、マニピュレーション後にスライドを洗浄したくない場合や洗浄することが許されない場合も頻繁にあり得る。そういった場合には、FRET(fluorescent resonance energy transfer:蛍光共鳴エネルギ移動)と呼ばれる検出手法を用いればよい。FRETを実行する際には、まず、計測用の生体分子及び目標物たる分子を互いに違う色の染料即ち発する光の波長が互いに異なる染料によりラベリングする。当該計測用分子が例えば数nm程度まで接近し当該目標分子と相互作用できる状態に至ると、それら二種類の染料のうちより短波長の光を発する染料からの光によって他方の染料が励起され(即ち当該他方の染料にエネルギが移動し)当該他方の染料がより長波長の光を発生させる。この状態が継続することをFRET効果と呼ぶ。本マニピュレータにおける反応モードをFRETにおいて実行するには、例えば、本マニピュレータを、その上に進行波を発生させることができるスマートスライド(能動的或いは情報処理機能付きスライド)として構成しておき、当該スマートスライド上に目標分子を固定する一方、当該スマートスライド上に進行波を発生させて計測用分子を移動させる。その際、例えば何種類かの計測用分子が固定済目標分子の近傍に順繰りに入っていき、その目標分子と反応しなかった計測用分子がその目標分子から離れていくようにすれば、目標分子の近傍に入っていった何種類かの計測用分子のうちどれが励起に応答しFRET効果を発生させたかを調べることによって、結合して残った計測用分子がどれであるか、即ちどの計測用分子が真正なる相互作用相手なのかを知ることができる。
本発明は、上述したサンプルマニピュレータ及びこれをインタラクティブに操るためのコントローラを含むシステム(以下「本システム」とも称する)として、実施乃至把握することもできる。本システムにおいては、まずUV蛍光画像や着色乃至染色画像を表示できる準リアルタイム可視化システムにより可視キューが表示され、ユーザはこの可視キューに表示されている情報に基づき計測等を管理乃至制御する。この管理乃至制御は二段階の操作で実行できる。最初の操作は、二本のトレースに挟まれている空間内にジョイスティックのカーソルを置く操作であり、次の操作は、ジョイスティックで親指クリックする操作である。表示される画像はレジストレーションキューを含んでおり、本システムに実装されているアルゴリズムは、この画像上におけるクリック時のカーソル位置を挟む相隣り合ったトレースの番号n及びn+1を識別する。このアルゴリズムは、予めプログラムされている進行波アルゴリズムの中から使用する動作モード等に応じて適切な進行波アルゴリズムを起動・実行させる。進行波アルゴリズムは、トレース番号の識別結果等に応じスイープ周波数等を選択乃至決定し、その結果に基づき生成した電圧波形乃至電気信号即ち決定したスイープ周波数等を有するものを、電子コントローラ例えばLabviewコントローラから進行波グリッドへと印加する機能を、有している。このインタラクティブな管理乃至制御の流れを図6に示す。なお、本システムにおいて、コントローラに複数個のサンプルマニピュレータを電気的又は信号的に接続することも可能である。その際、それらのサンプルマニピュレータの配置は用途に応じて決めればよい。例えば、一組のサンプルマニピュレータをタイル状に連ねることができる。
即ち、複数本のバス及び相互接続手段を有する形態にて本発明に係るサンプルマニピュレータを実施する場合、そのサンプルマニピュレータを複数個一組にし例えばタイル状に連ねて用い、あるサンプルマニピュレータからその隣にあるサンプルマニピュレータへと標本を随意に動かし引き渡せるシステムを構成することが、可能である。例えば、先に実施形態として述べたサンプルマニピュレータを複数個隣り合わせに連ねれば、あるサンプルマニピュレータからそれに連なる何個かのサンプルマニピュレータへと何個かの標本を移動させることができる。また、本システムを実施するのに複数個のサンプルマニピュレータを用いる場合、それらを一列に並べてもよいし、あるサンプルマニピュレータの多辺に沿って(即ち多軸的に)それらを並べてもよいし、或いはそれらを非直線アレイ状に並べてもよい。何れにせよ、複数個のサンプルマニピュレータをタイル状配置する場合は、エッジコネクタ乃至コンタクトパッドを介し、各サンプルマニピュレータを1個又は複数個のコントローラに電気的に接続し、接続先のコントローラから制御信号乃至適切な波形を受け取れるようにするのが望ましく、またそれらのバス同士を接続し、サンプルマニピュレータ同士も電気的に導通させるのが望ましい。
また、Labviewコントローラを例示しているけれども、それ以外のコンピュータベースコントローラを用いても、大抵、本発明を実施することができる。本発明の実施に使用できるコントローラは、一般的にいえば、本発明の実施形態に係るサンプルマニピュレータと当該コントローラとのインタフェースとして、波形発生用ソフトウェア及びディジタル/アナログ(D/A)変換用ハードウェアカードを実装している電子コントローラである。
以上の記述においては、本発明の実施形態に係るサンプルマニピュレータ及びその動作について、進行波による移送モデルという観点や、三層VIC(vertically integrated cell:縦方向統合セル)の設計及び製造という観点や、駆動用電子回路の概念的設計という観点から、SDS−PAGEゲル上でのタンパク質の移送を例に説明した。また、蛍光タグ付けされているタンパク質の進行波による移送については、その幅が19μmの進行波電極を30.5μmの間隔で配置したグリッドによる例に基づき説明した。この例にて25kDaのタンパク質を移送するには、カスタムキャスト(カスタム形成)されている100μmのゲルにそのタンパク質を装着し、更にそれを進行波電極によるアレイの上に載せて、1Vの進行波により励起すればよい。また、PAGE又はアガロースゲルは事前製造しておいてもよく、プレキャスト(事前形成)されているゲルは様々な供給元から入手できる。必要であれば、DNA(deoxyribonucleic acid:デオキシリボ核酸)又はタンパク質錯体混合物を従来型ゲル電気泳動アセンブリによりゲル上に事前装着しておき、所望の標本を含むエリアを精密に切り出してスマートスライド上の進行波グリッド上に精密に配置することも可能である。図7に、蛍光タグ付けされているタンパク質のバンドがゲル内で移動することを明らかにするため、移動前の状態(左)及び移動後の状態(右)を示す。この図においては、タンパク質が右側に動き部分的にコンパクト化されている。なお、移送モードはシミュレーションによって予め定めた。そして、実施形態として示した三層サンプルマニピュレータの形状及び寸法は、1cm×1cm外形のVICを変形、拡張したものであり、タイル状に連ねより大きな広がりを形成できるよう設定されている。
図8に、1cm長のセグメント10個によって形成された10cm長のトラックを有するサンプルマニピュレータ用の電子回路乃至電子コントローラを、模式的に示す。この図に示す10個のセグメントのうち、1個については進行波電極に対する個別アドレシングが可能であり、残りの9個についてはグループアドレシングが可能である。また、この図におけるサンプルマニピュレータや、この図に示す回路により実現されるシステムは、先に本発明の実施形態として説明したものである。より詳細には、この図においては、システム200のうち個別アドレシング用のコントローラ210と、サンプルマニピュレータ250とが示されている。コントローラ210は、例えば印刷回路基板として実現するのが望ましいものであり、サンプルマニピュレータ250上の個別アドレス可能な電極を駆動するため、250通りの信号を出力する。また、コントローラ210は、アナログ電圧Vhigh及びVlow用の複数本のバス215と、当該コントローラ210を構成する回路基板上のチップ、マイクロプロセッサ乃至制御素子にアドレスしまたそれを制御するための複数個の入力手段220と、1個又は複数個の制御チップ230(この図では230a〜230h)と、複数個の制御出力手段240a〜240hと、を備えている。コントローラ210は、当該コントローラ210上の制御チップ230の中から適切なチップを選択し動作させるための信号等、各種の情報を入力手段220から受け取り、適切な処理を実行した後、例えば少なくとも一種類の波形が(動作しているチップから直接又は当該チップの出力に応じ進行波グリッド280iに付設若しくは内蔵の回路から)進行波グリッド280i内の進行波電極に印加されるようにするため、制御出力手段240a〜240h更にはサンプルマニピュレータ250の接続用インタフェース260を介し進行波グリッド280iに制御乃至駆動用の電気信号を供給する。
また、サンプルマニピュレータ250は、概略、先に図1に示したサンプルマニピュレータ100に対応する構成を有している。この図に示した実施形態においては、サンプルマニピュレータ250は、およそ1cm×10cmの能動面乃至活性面が形成されるようガラス基板を用いて実現されており、また四相駆動乃至制御信号により駆動される2250個の進行波電極及び個別アドレス可能な250個の進行波電極を合わせて2500個の進行波電極を有している。即ち、サンプルマニピュレータ250は、サンプル装着エリア275の他、例えばそれぞれ250個の進行波電極を有し1cm×1cmの領域を占有する複数個の進行波グリッド280(この図では10個の進行波グリッド280a〜280j)を備えており、そのうち9個の進行波グリッド280a〜280h及び280jの進行波電極に対しては図示していない回路又はコントローラ210からグループアドレス可能であり、進行波グリッド280iの進行波電極に対してはコントローラ210から個別アドレス可能である。サンプルマニピュレータ250は、更に、図示していない回路又はコントローラ210からサンプル装着制御信号を入力するための入力手段265や、図示していない回路又はコントローラ210から四相駆動乃至制御信号を入力するための入力手段270を有している。入力手段270を介して信号が入力されると、この信号が直接又は進行波グリッドに付設若しくは内蔵されている回路にて四相電圧波形(一般には多相電圧波形)に変換されて、その進行波電極に印加される。
本発明の実施形態に係るサンプルマニピュレータは、様々な形状及び寸法にて実現できる。例えば、ここに述べた通りサンプルマニピュレータ全体又はそのうちの進行波グリッドが1cm×1cmの正方形領域を占める構成とすることもできるし、従来における顕微鏡スライドに対応した外形、例えばサンプルマニピュレータ全体又はそのうちの進行波グリッドが1インチ×3インチの長方形領域や500mm×750mmの長方形領域を占める構成とすることもできる。無論、理解されるべきことに、本発明の実施形態に係るサンプルマニピュレータはこういった特定の形状及び寸法に限定されるべきものではない。
本発明の実施形態は、様々な種類の粒子乃至種について利用することができる。例えば、空気その他の気体状媒体内で移送するのであれば最大で約40〜約50μmの直径(球状に近い場合)乃至広がり(非球状の場合)を有する粒子を、また水その他の液体状媒体内で移送するのであれば数nm〜約10μmの直径乃至広がりを有する粒子を、効果的に移送できる。ゲル等の媒体を使用する場合は、通常、ポリアクリルアミドゲル内であれば数nm〜約100nmの寸法を有するタンパク質を、またアガロースゲル内であれば最大で1μmの寸法を有するDNAを、移動させることができる。特定の粒子特性に限定を加えることを意図するものではないが、約0.05〜約0.5g/cm3の密度を有する粒子、典型的には0.1g/cm3の密度を有する粒子は、空気その他気体状の媒体内での移送によく適している。同様に、空気中にある数fC(フェムトクーロン)の荷電粒子から液体中にある約0.01fCの荷電粒子に至るまで、様々な荷電粒子を効果的に移送できる。固有電荷を有していない粒子であっても、pH調整した水溶液や、SDS等の帯電試薬を用いることによって、特定の生体分子に電荷を付与して移送可能にすることができる場合がある。
本発明の一実施形態に係るサンプルマニピュレータ、特に三層構造上にある液状又はゲル状の媒体内に2個の標本を載せた状態を示す図である。 その分子量が異なる二種類の標本について周波数応答曲線を示すグラフである。 2個の標本スポットを分離させる分離モードを説明するための図である。 標本スポットを集中させる集中モードを説明するための図である。 標本を試薬と反応させ結合を検出する反応モードを説明するための図である。 本発明の一実施形態に係るサンプルマニピュレータについて、準リアルタイム視覚フィードバック及びジョイスティック操作を利用したインタラクティブなフロー制御の流れを模式的に示す図であるである。 進行波グリッド上におけるタンパク質の挙動を進行波印加前後の対比により示す図である。 個別アドレス可能電極用の電子コントローラの模式図である。

Claims (4)

  1. 基板及びこの基板上に配置された複数個の進行波電極を備えるサンプルマニピュレータを用い標本と試薬とを反応させる方法であって、
    前記サンプルマニピュレータ上の第1の位置前記標本を載せるステップと、
    前記サンプルマニピュレータ上の第2の位置前記試薬を載せるステップと、
    前記サンプルマニピュレータの進行波電極に印加する電圧波形について適切な周波数を決定するステップと、
    前記決定した周波数を有する電圧波形を前記サンプルマニピュレータの進行波電極に印加することにより静電進行波を発生させ、前記標本及び前記試薬のうち少なくとも一方を他方に接近していくよう動かし反応させるステップと、
    を有する方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、
    蛍光染料によりラベリングされた前記標本が前記基板上に固定され、前記試薬が蛍光共鳴エネルギ移動効果を生じる第2の蛍光染料によりラベリングされている方法。
  3. 請求項2に記載の方法であって、
    前記サンプルマニピュレータ上の進行波によって前記試薬が前記標本に接近し、離れることにより、蛍光共鳴エネルギ移動効果が前記試薬と前記標本との間に起こったかどうかを決定する方法。
  4. 請求項1に記載の方法であって、
    前記試薬として二種類の異なる分子が進行波によって動いて、第3の固定された分子である前記標本に接近し、それら3つの分子が相互作用して信号を発生する方法。
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