JP4772403B2 - 切削工具及び切削加工方法 - Google Patents

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Description

この発明は、ワークに形成された下穴を所定の内径に加工するための切削工具、例えばエンジンのシリンダーヘッドにおけるバルブ穴を所定の内径に加工するとともにこのバルブ穴の開口部を所定の形状に加工するための切削工具及びこの切削工具を用いた切削加工方法に関する。
従来、この種の切削工具として例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。その一例を図5に示す。
この切削工具は、軸線O回りに回転される工具本体1の後端側部分が工作機械への取付部2とされ、この工具本体1の先端面1Aに穿設された装着孔3に、長尺の略円柱状をなす加工工具としてリーマ4が軸線Oと同軸に装着されたものであり、さらに、工具本体1の先端部外周には、軸線Oに対して傾斜して設けられた切刃5が備えられている。
また、装着孔3の後端側部分は、リーマ4の切刃の位置調整を行うための調整ボルトがねじ込まれた調整ボルト孔6とされており、この調整ボルト孔6の後端側には、調整ボルト孔6の内径と略同一の内径を有し、切削油剤の供給通路の一部をなすクーラント孔7が穿設されている。
クーラント孔7の後端側には、リング部材8によって工具本体1に直接固定されたパイプ9が取付部2の内部空間に突出するように設けられており、このパイプ9を介して工作機械側からクーラント孔7に切削油剤が供給される。
また、クーラント孔7は、切削油剤をリーマ用供給孔へ導けるように開口されるとともに、工具本体1に設けられた切刃用供給孔にも切削油剤を導けるように開口されている。
上記のリーマ用供給孔は、リーマ4に対して略軸方向に沿って貫通して設けられ、その際、リーマ4の先端面への開口部が埋め栓によって封止されるとともに、リーマ4の先端外周側に分岐されてリーマ4の切刃部をなす断面V字状に形成された複数の条溝の溝底部分に開口されている。
上記の切削工具においては、工具本体1が、軸線O回りに回転されつつ軸線O方向の先端側に向かって送られることにより、上記の工具本体1の装着孔3に装着されたリーマ4が、例えばステムガイド穴やエンジンのシリンダーヘッドにおけるバルブ穴からなる下穴を所定の内径に加工するとともに、上記の工具本体1の先端部外周に設けられた切刃5が、このバルブ穴の開口部にバルブヘッドが当接するバルブシート面を加工するようになっている。
上記の加工の際には、工作機械からパイプ9を通じて供給された切削油剤が、クーラント孔7及びリーマ用供給孔を通じてリーマ4の切刃部の溝底部分から吐出され、リーマ4の切削が良好に行えるようにされている。
特開2002−59313号公報
ところで、上記の切削工具においては、クーラント孔7に供給された切削油剤が、リーマ用供給孔に導かれることでリーマ4の切刃部から吐出されるようにしているものの、クーラント孔7がリーマ4の切刃部の溝の溝底部分に開口されているので、切削油剤がリーマ4の軸線Oに沿って吐出することができず、図5の矢印aのように、軸線Oに対して斜めに吐出されてしまう。また、工具本体1が回転されることにより、リーマ4の切刃部から吐出された切削油剤が遠心力により飛び散ってしまう。
このため、切削油剤がワークの加工点に向けて供給されなくなるので、リーマ4がワークに食い付く際には、その切削抵抗が大きくなり、リーマ4の切刃部の寿命が短くなってしまうとともに、加工精度が劣化し、リーマ4で加工された穴が、所望の内径より大きくなってしまうといった問題があった。
特に、近年では、エンジン部品の小型化、軽量化に伴い、シリンダーヘッドのバルブ穴の径が小さくなってきており、穴加工するリーマ4の外径もそれに応じて小さくなってきているので、リーマ4内部に設けられるリーマ用供給孔の内径が小さくなる傾向にある。リーマ用供給孔の内径が小さい場合には、切削油剤がリーマ用供給孔を通過するのが困難となり、切削油剤が十分に供給されなくなるといった問題があった。
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、切削油剤を加工点に確実に供給することができ、加工工具の切刃が早期に磨耗するのを防止して寿命が短くなるのを回避するとともに、加工を良好に行うことができる切削工具及び切削加工方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、この発明は、軸線回りに回転される工具本体と、該工具本体の先端側に前記軸線に沿って設けられた装着孔と、該装着孔に装着されるとともに該装着孔への挿入部分をクランプネジによって固定される加工工具と、該加工工具での切削時に切削油剤を供給する、前記工具本体にその軸線を中心に形成されたクーラント孔とを備えた切削工具であって、前記クーラント孔は、該クーラント孔と連通するよう前記工具本体に前記軸線と垂直な方向に延びて形成された横孔、該横孔と連通するよう前記工具本体に前記軸線と平行に延びて形成された縦孔、および該縦孔と連通するよう前記工具本体の外周側に向けて開口されるとともに該工具本体の内部に向けて延びて形成された連絡路を介して、前記工具本体の先端側に開口される供給路に連通され、前記工具本体の先端部にクーラント保持部が設けられ、該クーラント保持部は前記供給路と連通され、前記クーラント保持部から前記加工工具の外周面に沿って前記切削油剤が前記加工工具の先端部へ向けて供給される供給孔が設けられ、前記工具本体の先端部外周にはインサートを装着する取付座が設けられ、該取付座の工具径方向内周側の壁面には、前記連絡路が形成されたことを特徴とする。
上記の構成の切削工具では、工具本体の先端部にクーラント保持部が設けられており、このクーラント保持部にクーラント孔から切削油剤が供給されて一時保持される。一時保持された切削油剤が、供給孔を通じて、加工工具の外周面に沿ってこの加工工具の先端部に供給されるので、ワークの加工点に向けて切削油剤が確実に供給される。したがって、加工工具の切刃が早期に磨耗するのを防止して寿命が短くなるのを回避するとともに、加工を良好に行うことできる。
また、切削油剤が一時保持された後に先端側に向けて供給されるので、常に一定量の切削油剤を加工点に確実かつ安定的に供給することができる。よって、切削油剤が加工点に確実に供給されるので、加工工具がワークに食い付く際の切削抵抗が小さくなり、加工工具の切刃の寿命が長くなるとともに、加工精度が向上し、加工工具によって形成される加工部分を所望の寸法で仕上げることができる。
ここで、このようなクーラント保持部を工具本体先端部に設けるには、前記工具本体の先端面にキャップを装着し、該キャップには、前記加工工具が貫通される貫通孔を設け、前記クーラント保持部を、前記キャップと前記工具本体と前記加工工具のシャンク部とで囲繞して画成すればよい。これにより、工具本体に別段の機構を設けることなく、切削油剤を一時保持できるクーラント保持部を設けることができる。また、構造が簡単なので、加工コストが低く、メンテナンスが容易な切削工具を提供できる。
また、前記クーラント保持部を、前記加工工具の先端側に向かって徐々に断面積が小さくなるテーパ状に形成することにより、クーラント保持部に貯留された切削油剤の圧力によって切削油剤が一定以上の流速をもって吐出されるので、切削油剤を確実に加工点に供給できる。
また、前記供給孔を、前記キャップの前記貫通孔の内周面に設けられた凹部と前記加工工具の前記シャンク部の外周面とから構成することにより、工具本体に別段の機構を設けることなく簡易な構造で、切削油剤を加工点に向けて供給することができる。また、加工工具のシャンクの外周面に沿って切削油剤が供給されるので、加工工具の先端部方向にある加工点に向けて確実に切削油剤を供給することができる。
さらに、前記供給孔を、前記工具本体の前記軸線と平行に直線状に延びるように形成することにより、クーラント保持部内に貯留された切削油剤が軸線と平行に加工工具の先端側に向けて吐出されるので、切削油剤を加工工具の先端側に向けて確実に供給することができる。
また、このような構成とされた切削工具を用いて、前記加工工具の先端側に向けて前記切削油剤を供給しながら切削を行うことにより、ワークの加工点に向けて確実に安定して切削油剤が供給されるので、切削加工を良好に行うことができる。
本発明の実施の形態について説明する。図1に切削工具を、図2から図4に工具本体に装着されるキャップを示す。
この切削工具21は、工具本体22と、工具本体22の先端側に装着される加工工具として長尺状のリーマ23と、工具本体22の先端部に装着されるキャップ24とで構成されている。
工具本体22は、図1に示すように、軸線O回りに回転される軸線Oを中心とした略多段円柱状をなすものであって、その後端側部分には、工作機械への取付部31が設けられている。工具本体22の先端面22Aには、軸線Oと同軸で断面円形をなす装着孔32が穿設され、先端面22Aの外周部分には、キャップ24を固定するためのボルト孔33が円周上に等間隔で3箇所配置されている。
装着孔32の後端側部分には、装着孔32の先端側部分の内径より一段大きい内径とされるとともに内周面に雌ネジ部が形成された調整ボルト収納孔34が形成されている。この調整ボルト収納孔34には、胴体部が調整ボルト収納孔34の内径と略同径であり、この胴体部に雄ネジ部が形成された調整ボルト35が螺着されている。この調整ボルト35の先端部はリーマ23と略同径とされ、調整ボルト35の内部には、その先端部から後端部に貫通する孔36が形成されている。
装着孔32に形成された調整ボルト収納孔34の後端側には、調整ボルト収納孔34と略同径で軸線Oを中心としたクーラント孔37が、装着孔32と連通されるように設けられている。クーラント孔37の後端側には、リング部材38によって工具本体22に直接固定されたパイプ39が、軸線O方向の後端側に向けて取付部31の内部空間に突出するように設けられており、このパイプ39は工作機械側の図示されない切削油剤供給手段に接続されている。
工具本体22の側面には、円周方向に等間隔で複数箇所(本実施の形態では3箇所。ただし、図1には1箇所のみを示す。)に、工具本体22の外周面からクーラント孔37に向けて軸線Oと垂直な方向に延び、クーラント孔37と連通された横孔40が設けられ、横孔40の工具本体22外周面の開口部は、止め栓41にて封止されている。各横孔40には、工具先端方向に軸線Oに平行に延びる縦孔42が連通されており、各縦孔42の工具先端側の開口部は、上記ボルト孔33の底部に設けられ、ボルト43にて封止されている。
工具本体22の先端部外周には、切刃を有するインサート44を装着する取付座45が、円周方向に等間隔で3箇所設けられ、各取付座45の工具径方向内周側の壁面には、工具径方向外周側に向けて開口され、工具内部に向けて延びて縦孔42を貫通する連絡路46が形成されている。また、各連絡路46の工具径方向内周端には、連絡路46と連通され、工具本体22の先端面22Aに向けて延びて先端面22Aに開口される供給路47が形成されている。
各取付座45には、軸線O方向の後端側に向かうにしたがって漸次工具径方向外側へ向かうように傾斜する切刃を有するインサート44が装着され、各取付座45の工具後端側には、インサート44の位置調整を行うインサート調整ネジ48が螺着されている。インサート調整ネジ48の一端は、取付座45に装着されたインサート44の工具後端側を向く面に当接され、他端は、工具本体22の外周面の一部が切り欠かれて形成された切欠部49に露呈されている。
また、工具本体22の側面には、工具本体22の外周面から軸線Oと垂直な方向に延びて装着孔32に開口されるネジ孔50が設けられ、このネジ孔50には、リーマ23をクランプして固定するクランプネジ51が螺着されている。
リーマ23は、長尺の略円柱状をなすものであり、その先端部分が切刃部61とされ、後端部分がシャンク部62とされている。切刃部61には、リーマ23の先端から後端側に向けて断面V字状をなす複数の条溝(図示せず)が周方向に等間隔に設けられていて、この条溝の回転方向を向く壁面の先端側と外周側の辺稜部に切刃が形成されている。
また、シャンク部62の後端部分には、外周面が切り欠かれた平坦面63が設けられている。さらに、リーマ23の内部には、先端部から後端面に向けて開口されたリーマ用供給孔(図示せず)が軸線O方向に沿って設けられており、リーマ用供給孔のリーマ23先端側部分は、切刃部61に設けられた断面V字状をなす複数の条溝の溝底部分に向けて開口されている。
キャップ24は、その外形が略円柱状をなし、先端部は先細りのテーパ状に形成されており、キャップ24の外形がなす円柱の中心軸Lに沿って、リーマ23のシャンク部62の外径と略同一の内径を有する貫通孔71が設けられている。この貫通孔71のキャップ後端側は、先端側に向けて内径が漸次縮径される縮径部72が設けられている。また、この貫通孔71の中心軸Lと垂直な平面における断面は、図4に示すように、シャンク部62の外径と略同一の径を有する円73の外周に、等間隔で3箇所に、例えば円73より半径の小さい断面円弧状に外側に膨らんだ凹部74を有する形状とされている。また、この凹部74は、軸線Oに対して平行に直線状に延びるように形成されている。
キャップ24の側面には、工具本体22の外周面からキャップ24の外形がなす円柱の中心軸Lと垂直な方向に延びて貫通孔71に開口されるネジ孔75が円周方向で等間隔に複数設けられ、リーマ23の切刃の振れ精度を調整する振れ調整ネジ76が螺着されている。また、キャップ24の外周部分には、キャップ24の中心軸Lに平行にキャップ24の先端側から後端側へ貫通されたボルト挿通孔77が、円周方向に等間隔で3箇所設けられている。
キャップ24は、ボルト挿通孔77に挿通されたボルト43が工具本体22の先端面22Aに設けられたボルト孔33に螺着されることにより、工具本体22の先端面22Aにキャップ24の後端面が当接するように装着される。ここで、ボルト43は、キャップ24の固定と、ボルト孔33の底部に設けられた縦孔42の開口部の封止との2つの役割を有している。
リーマ23は、そのシャンク部62がキャップ24の貫通孔71を通じて工具本体22に設けられた装着孔32に挿入され、シャンク部62の後端面が調整ボルト35の先端面に当接されるとともに、シャンク部62に設けられた平坦面63が、工具本体22のネジ孔50が設けられた方向に向けられる。工具本体22のネジ孔50に螺着されたクランプネジ51によって平坦面63が押圧されることにより、リーマ23が工具本体22に固定される。
リーマ23とキャップ24が装着された状態において、工具本体22の先端面22Aとキャップ24の縮径部72とリーマ23のシャンク部62の外周面とで囲繞されることにより、工具本体22の先端部にクーラント保持部81が画成され、このクーラント保持部81は、先端側へ向かって徐々に断面積が狭くなるテーパ状に形成されている。
また、キャップ24の貫通孔71に形成された凹部74とリーマ23のシャンク部62の外周面とによって供給孔82が構成され、この供給孔82は、軸線Oと平行に直線状に延びるように形成されている。
上記の構成の切削工具21においては、リーマ23の突き出し長さの調整は、工具本体22内部に収納された調整ボルト35によって行われ、突き出し長さを調整した後に、クランプネジ51を工具本体22のネジ孔50にねじ込み、リーマ23を固定する。また、リーマ23の切刃の振れ精度の調整は、キャップ24の側面に螺着された振れ調整ネジ76によってリーマ23のシャンク部61を押圧することにより行う。
また、工具本体22の先端部外周に装着されたインサート44の位置調整は、取付座45の工具後端側に設けられたインサート調整ネジ48をねじ込んで、インサート44の工具後端側を向く面を押圧することにより行われる。
上記の構成の切削工具21は、工作機械の主軸端に工具本体22の取付部31を介して取り付けられ、リーマ23及びインサート44の位置調整を行った上で、軸線O回りに回転されるとともに軸線Oの先端方向に向けて送られることにより、リーマ23によって、例えばエンジンのシリンダーヘッドにおけるバルブ穴(ワークに形成された下穴)を所定の内径に加工するとともに、工具本体22の先端部外周に取り付けられた複数のインサート44の切刃によって、このバルブ穴の開口部にバルブヘッドが当接されるバルブシート面を切削加工するものである。
このような切削加工を行う際には、切削油剤が、工作機械からパイプ39を通じて工具本体22のクーラント孔37に供給される。クーラント孔37に供給された切削油剤は、リーマ23の切刃部61、インサート44、リーマ23の先端側の3方向に向けて供給され、切削加工が良好に行えるようにされている。次に、この切削油剤の供給経路について詳しく説明する。
切削油剤の第一の供給経路は、クーラント孔37の工具先端側に設けられた調整ボルト収納孔34に収納された調整ボルト35の内部の孔36を通じて供給されるものである。ここで、調整ボルト35の先端面にはリーマ23の後端面が当接されており、調整ボルト35の内部の孔36とリーマ23の後端面に開口されたリーマ用供給孔とが同一軸上に配置されている。したがって、調整ボルト35を通じて供給された切削油剤は、リーマ用供給孔を通じて、リーマ23先端部の切刃部61に設けられた断面V字状をなす複数の条溝の溝底部分から外部に供給される。
条溝の溝底部分から外部に供給された切削油剤は、回転される工具本体22の遠心力により、リーマ23の切刃部61の回転方向前方側に向けて供給される。したがって、リーマ23で下穴の切削加工を行っている際においては、切削油剤が、切刃部61により切削されるワークに向けて供給されているので、切刃部61での切削加工を容易に行うことができ、高い加工精度を得ることができる。また、切刃部61が早期に磨耗されるのを防止でき、リーマ23の寿命を向上させることができる。
切削油剤の第二の供給経路は、クーラント孔37からクーラント孔37の側面に連通されて設けられた横孔40と、横孔40の工具先端を向く側面に連通されて設けられた縦孔42と、縦孔42を貫通するように設けられた連絡路46とを通じて供給されるものである。連絡路46は取付座45の工具径方向内周側の壁面に向けて開口されており、切削油剤は、取付座45に装着されたインサート44に向けて供給される。
インサート44に向けて供給された切削油剤は、インサート44によって加工される、例えばエンジンのシリンダーヘッドにおけるバルブ穴の開口部に向けて供給されるので、インサート44による切削加工が容易に行うことができ、高い加工精度を得ることができる。また、インサート44の切刃の磨耗が抑制され、インサート44の寿命を向上することができる。
切削油剤の第三の供給経路は、クーラント孔37からクーラント孔37の側面に連通されて設けられた横孔40と、横孔40の工具先端を向く側面に連通されて設けられた縦孔42と、縦孔42を貫通するように設けられた連絡路46と、連絡路46の工具径方向内周端から工具本体22の先端面22Aに向けて延びて先端面22Aに開口される供給路47とを通じて供給されるものである。
供給路47を通じて供給された切削油剤は、工具本体22の先端面22Aとキャップ24の縮径部72とリーマ23のシャンク部62の外周面とで囲繞されることにより画成されたクーラント保持部81に一定量が一時保持される。クーラント保持部81に保持された切削油剤は、キャップ24の貫通孔71に形成された凹部74とリーマ23のシャンク部62の外周面とで構成された供給孔82を通じて、リーマ23のシャンク部62の外周面に沿って、リーマ23の先端側に向けて排出される。
したがって、切削油剤は、一旦、クーラント保持部81に一定量保持されて、安定的にリーマ23の先端側に向けて排出され、リーマ23がワークの切削加工を行う加工点に向けて確実に供給されるので、リーマ23がワークに食い付く際の切削抵抗を低減することができ、リーマ23の切刃部62が早期に磨耗するのを防止し、リーマ23の寿命を長くすることができる。また、リーマ23の切削抵抗が低減されることにより、加工精度が向上し、リーマ23で加工された穴を所望の内径に形成することができる。
また、上記の構成の切削工具21では、クーラント保持部81が、工具本体22の先端面22Aとキャップ24の縮径部72とリーマ23のシャンク部62の外周面とで囲繞されることにより画成されており、工具本体22に特別な加工をすることなく、工具本体22と分離して加工できるキャップ24を加工することでクーラント保持部81が形成できるので、この切削工具21の加工コストを抑えることができる。
また、リーマ23、キャップ24を取り外すことにより、クーラント保持部81の清掃などのメンテナンス作業を簡単に行うことができる。
さらに、クーラント保持部81が、先端側へ向かって徐々に断面積が狭くなるテーパ状に形成されているので、クーラント保持部81に貯留された切削油剤の圧力によって切削油剤が一定以上の流速をもって吐出されるので、切削油剤を確実に加工点に供給することができる。
また、供給孔82が、キャップ24の貫通孔71に形成された凹部74とリーマ23のシャンク部62の外周面とで構成されており、凹部74の大きさを変更することにより、リーマ23の外径に関わらず、供給孔82の大きさを調整できる。したがって、リーマ23が小径の場合でも、供給孔82の大きさが確保できるので、粘性の高い切削油剤であっても、加工点に向けて確実に供給することができる。
また、リーマ23、キャップ24を取り外すことにより、供給孔82の清掃などのメンテナンス作業を簡単に行うことができる。
さらに、供給孔82が軸線Oに平行に直線状に延びるように形成されているので、クーラント保持部81内に貯留された切削油剤が軸線Oと平行にリーマ23の先端側に向けて吐出されるので、切削油剤をリーマ23の外周面に沿って加工点に向けて確実に供給することができる。
また、粘性の高い切削油剤の場合には、リーマ23の内部に形成されたリーマ用供給孔の内径が小さいと、リーマ用供給孔を通じてリーマ23の切刃部61に切削油剤が供給できなくなるが、上記の構成の切削工具21では、リーマ23の外周面に沿って切削油剤をリーマ23の切刃部61に供給できるので、切刃部61での切削加工を容易に行うことができ、高い加工精度を得ることができるとともに、切刃部61が早期に磨耗されるのを防止でき、リーマ23の寿命を向上させることができる。
また、キャップ24を工具本体22に装着する際に、工具本体22の先端面22Aに開口された縦孔42の開口部を封止するボルト43を使用しているので、工具本体22の先端面22Aの面積が小さい場合においても、キャップ24を確実に装着することができ、クーラント保持部81を画成できるとともに、切削工具21の部品点数が減るので、加工コストを低減することができる。
なお、本実施形態においては、供給孔82を円周方向に3箇所設けたもので説明したが、供給孔82の大きさや個数は、リーマ23の径や工具本体22の先端面22Aの径などの工具サイズ、切削油剤の種類、供給量、切削加工の加工速度、ワークの材質等を勘案して適宜選択されるのが好ましい。また、クーラント保持部81の大きさについても同様である。
また、本実施形態においては、クーラント保持部81が、工具本体22の先端面22Aとキャップ24の縮径部72とリーマ23のシャンク部62の外周面とで囲繞されることにより画成されているが、キャップ24を使用しないで工具本体22の先端部に別途、クーラント保持部を設けても良い。ただし、この場合には、加工コストの低減やメンテナンスの容易化のメリットを得ることができないので、本実施形態のように、クーラント保持部81を画成したほうが良い。
また、本実施形態においては、供給孔82が、キャップ24の貫通孔71に形成された凹部74とリーマ23のシャンク部62の外周面とで構成されているが、クーラント保持部に連通する孔を別途設けても良い。ただし、この場合には、加工コストの低減やメンテナンスの容易化のメリットを得ることができないので、本実施形態のように、供給孔82を構成したほうが良い。
また、本実施形態においては、工具本体22の装着孔32に装着する加工工具として長尺のリーマ23を選択しているが、これに限定されることなく、他の加工工具を工具本体22の装着孔32に装着しても良い。また、工具本体22の先端部外周にインサート44が装着されたもので説明したが、必ずしもインサート44が装着されている必要はない。
本発明の実施の形態である切削工具の断面説明図である。 本発明の実施の形態である切削工具のキャップの断面説明図である。 本発明の実施の形態である切削工具のキャップの正面図である。 本発明の実施の形態である切削工具のキャップに設けられた貫通孔の拡大図である。 従来の切削工具の縦断面説明図である。
符号の説明
21 切削工具
22 工具本体
23 リーマ(加工工具)
24 キャップ
37 クーラント孔
62 シャンク部
71 貫通孔
74 凹部
81 クーラント保持部
82 供給孔

Claims (6)

  1. 軸線回りに回転される工具本体と、該工具本体の先端側に前記軸線に沿って設けられた装着孔と、該装着孔に装着されるとともに該装着孔への挿入部分をクランプネジによって固定される加工工具と、該加工工具での切削時に切削油剤を供給する、前記工具本体にその軸線を中心に形成されたクーラント孔とを備えた切削工具であって、
    前記クーラント孔は、該クーラント孔と連通するよう前記工具本体に前記軸線と垂直な方向に延びて形成された横孔、該横孔と連通するよう前記工具本体に前記軸線と平行に延びて形成された縦孔、および該縦孔と連通するよう前記工具本体の外周側に向けて開口されるとともに該工具本体の内部に向けて延びて形成された連絡路を介して、前記工具本体の先端側に開口される供給路に連通され、
    前記工具本体の先端部にクーラント保持部が設けられ、該クーラント保持部は前記供給路と連通され、前記クーラント保持部から前記加工工具の外周面に沿って前記切削油剤が前記加工工具の先端部へ向けて供給される供給孔が設けられ
    前記工具本体の先端部外周にはインサートを装着する取付座が設けられ、該取付座の工具径方向内周側の壁面には、前記連絡路が形成されたことを特徴とする切削工具。
  2. 前記工具本体の先端面にキャップが装着され、該キャップには、前記加工工具が貫通される貫通孔が設けられ、
    前記クーラント保持部は、前記キャップと前記工具本体と前記加工工具のシャンク部とで囲繞されて画成されていることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
  3. 前記クーラント保持部は、前記加工工具の先端側に向かって徐々に断面積が小さくなるテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の切削工具。
  4. 前記供給孔は、前記キャップの前記貫通孔の内周面に設けられた凹部と前記加工工具の前記シャンク部の外周面とから構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の切削工具。
  5. 前記供給孔は、前記工具本体の前記軸線と平行に直線状に延びるように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の切削工具。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の切削工具を用いて、前記加工工具の先端側に向けて前記切削油剤を供給しながら切削を行うことを特徴とする切削加工方法。
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