JP4771954B2 - Dnaベクター - Google Patents

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Description

本発明はDNAベクターに関する。なお、本願は、開示全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる2003年6月9日出願の米国特許仮出願第60/477,232号に基づく優先権を主張する出願である。
連邦政府の後援による研究開発における発明に対する権利の声明文
該当せず
発明の背景
莫大な財務的および人的資源を投資しているにもかかわらず、癌は今なお主要な死亡原因の1つとなっている。たとえば、乳癌、肺癌、大腸癌、前立腺癌、膀胱癌、および腎癌ならびにいくつもの血液学的悪性病変(例えば、成人および小児急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および続発性白血病)により、年間600万人以上が死亡している(例えば、Wangら、Oncogene 19: 1519-1528 (2000)を参照されたい)。癌治療の標準的手法は、外科手術、放射線療法および化学療法の組み合わせを中心としている。これらの手法により、特定の悪性病変では劇的な成功が見られている。しかし、特定の段階を過ぎて診断された場合には、しばしば癌は治癒不能である。治療に対する別の手法が必要とされている。
悪性病変の一般的な特徴は、制御の外れた細胞の増殖である。癌細胞は、正常な表現型から、自律性の増殖が可能な悪性の表現型への形質転換過程を経ていると思われる。体細胞遺伝子(すなわち、抗原)の増幅および過剰発現は、正常細胞の悪性細胞への形質転換に至る一般的な初期事象であると考えられている。発癌性遺伝子によってコードされた悪性表現型の特徴は、細胞分裂の際に、形質転換細胞の子孫に引き継がれる。
癌において過剰発現されるいくつかの抗原が、最近同定されている(例えば、
Figure 0004771954
を参照されたい)。これらの抗原の中には、癌遺伝子、すなわち悪性細胞中で機能し形質転換を誘導するまたはそれに関連している遺伝子、と同定されたものもあり、これには、例えば、共に乳房腫瘍で過剰発現するウィルムス腫瘍抑制遺伝子(WT1)およびB726P;肺扁平上皮癌において過剰発現されるL523S、および前立腺腫瘍において過剰発現されるP501Sが含まれる(例えば、Xu et al., Cancer Res. 61:1563-68, 2001を参照されたい)。これらの抗原は、癌の診断および治療に都合よく使用できる。例えば、これらの抗原は、癌特異的免疫応答の誘導に都合よく使用できる。特に、WT1ポリペプチドは、タンパク質に基づくワクチンに使用されている(例えば、Gaiger et al., Proc. Amer. Assoc. Cancer Res. 42:698 (2001)を参照されたい)。
核酸による免疫(すなわち、遺伝子免疫)は、ワクチンの有効性および安全性を改良する可能性のある、有望な技術である(例えば、Cui et al., J. Biotechnol. 102(2):105-115 (2003); Robinson and Torres, Semin. Immunol. 9:271 (1997); Robinson et al., Int. J. Mol. Med. 4:549 (1999); およびHartikka et al., Hum. Gene Ther. 7:1205-1217 (1996)を参照されたい)。タンパク質に基づくワクチンまたは弱毒化ウイルス生ワクチンと比較して、核酸ワクチンにはいくつかの、良く解析された利点がある。DNAワクチン接種の顕著な特徴は、タンパク質ワクチン接種よりも優れた細胞障害性Tリンパ球(CTL)活性の誘導である。核酸によってコードされたタンパク質は、ウイルス抗原のプロセッシングと類似したやり方で加工され、提示されるため、細胞免疫は増強され得る(例えば、Corr et al., J. Exp. Med. 184:1555 (1996)を参照されたい)。また、プラスミドに基づくベクターは、タンパク質に基づくワクチンまたは生きた生物体全体のワクチンよりも容易に製造でき、より安全に使用できると考えられている。最後に、DNAワクチン中に新しいまたは変化させた抗原を組み込むほうが容易だと期待される。
DNAワクチン接種後の防御免疫は、さまざまなマウスモデルで示されている(例えば、Wang et al., Vaccine; 21(15):1672-80 (2003); Manickan et al., J. Immunol. 155:259 (1995); Zinckgraf et al., Vaccine 21(15):1640-9 (2003); Ott et al., J. Control Release 79(1-3):1-5 (2002); Fynan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11478 (1993)を参照されたい)。しかし、ヒトの試験の報告は、それほど期待できるものではない(例えば、Denis-Mize et al., Gene Ther. 7:2105 (2000)を参照されたい)。
したがって、癌細胞中で過剰発現する抗原に対する免疫応答を刺激するための組成物の成分として使用できる異種核酸配列を発現する発現ベクターおよび方法が必要である。特に、特定の癌抗原が関連している悪性病変を標的とできる組成物、および特定の癌抗原に対する免疫応答を誘発および増強できる組成物および方法が必要とされている。本発明はこの必要性および他の必要性を満たすものである。
発明の簡単な概要
本発明は発現ベクターおよびそのような発現ベクターを用いて異種核酸配列を発現する方法を提供する。1つの態様内では、発現ベクターは5'から3'方向に以下のエレメントを含む発現カセットを含む:CMVプロモーター配列、CMVエンハンサー配列、CMV主要前初期遺伝子由来のCMVイントロンA配列、異種核酸配列、およびポリアデニル化部位。ここで、プロモーターは異種核酸配列に機能的に連結している。いくつかの態様では、CMVイントロンA配列は、塩基約1513位から塩基約1736位までの欠失を有する。他の態様では、異種核酸は例えばL523S (SEQ ID NO:6)のような癌抗原をコードする。いくつかの態様では、発現カセットはSEQ ID NO:3に示される配列のヌクレオチド54位〜3675位、SEQ ID NO:3に示される配列のヌクレオチド1位〜1653位、またはSEQ ID NO:3に示されるヌクレオチド配列を含む。本発明は上述の発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。いくつかの態様では、宿主細胞は大腸菌(E. coli)または哺乳動物細胞である。本発明はさらに上述の発現ベクターを含む免疫原性組成物も提供する。
本発明の別の態様は、異種核酸配列を発現する方法を提供する。5'から3'方向に以下のエレメントを含む発現カセットを含む発現ベクターを含む宿主細胞が培養される:CMVプロモーター配列、CMVエンハンサー配列、CMV主要前初期遺伝子由来のCMVイントロンA配列、異種核酸配列、およびポリアデニル化部位。ここで、プロモーターは異種核酸配列に機能的に連結している。いくつかの態様では、CMVイントロンA配列は、塩基約1513位から塩基約1736位までの欠失を有する。いくつかの態様では、異種核酸は例えばL523S (SEQ ID NO:6)のような癌抗原をコードする。いくつかの態様では、発現カセットはSEQ ID NO:3に示される配列のヌクレオチド54位〜3675位、SEQ ID NO:3に示される配列のヌクレオチド1位〜1653位、またはSEQ ID NO:3に示されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、発現カセットは、SEQ ID NO:4に示されるヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、宿主細胞は大腸菌または哺乳動物細胞である。
本発明の別の態様は、免疫応答を誘発するための方法、すなわち5'から3'方向に以下のエレメントを含む発現カセットを含むベクターを含む免疫原性組成物を、免疫に有効な量投与する段階を含む方法を提供する:CMVプロモーター配列、CMVエンハンサー配列、CMV主要前初期遺伝子由来のCMVイントロンA配列、異種核酸配列、およびポリアデニル化部位。ここで、プロモーターは異種核酸配列に機能的に連結しており、かつ免疫応答は異種核酸配列によりコードされるペプチドに対して誘導される。いくつかの態様では、免疫原性組成物は複数回投与される。
配列の簡単な説明
SEQ ID NO:1はpUC9のDNA配列である。
SEQ ID NO:2はpRSVneoのDNA配列である。
SEQ ID NO:3はpCRXA20のDNA配列である。
SEQ ID NO:4はCMV_MIE_遺伝子,_5'末端のDNA配列である。
SEQ ID NO:5はL523S配列を含むアデノウイルスベクターのDNA配列である。
SEQ ID NO:6はL523SのDNA配列である。
SEQ ID NO:7はL523Sのポリペプチド配列である。
SEQ ID NO:8はL523S p13-21のポリペプチド配列である。
発明の詳細な説明
I. 序説
本発明は特定の癌抗原が関連する悪性病変を標的化できる組成物、および特定の癌抗原に対する免疫応答を誘発および増強できる組成物および方法を提供する。特に、本発明は真核細胞にトランスフェクトされた場合に遺伝子を発現できる発現ベクターDNAプラスミドを提供する。ベクターは、5'から3'方向に以下のエレメントを含む発現カセットを含む:CMVプロモーター配列、CMVエンハンサー配列、CMV主要前初期遺伝子由来のCMVイントロンA配列、異種核酸配列、およびポリアデニル化部位。ここで、プロモーターは異種核酸配列に機能的に連結している。1つの例示的な態様では、異種核酸配列は癌抗原である。いくつかの態様では、異種核酸配列は癌抗原をコードする。本発明は発現ベクターおよび薬学的に許容される担体を含む組成物も提供する。本発明はさらに異種核酸配列を発現するための組成物、およびそのような組成物を対象に投与することによって異種核酸配列によりコードされたポリペプチドに対する免疫応答を誘発するための方法も提供する。
II. 定義
「免疫原性組成物」は、免疫応答を誘発または調節する組成物であり、好ましくは、組成物は特定の抗原に応じた免疫応答を誘導または増強する。免疫応答には、液性免疫応答および細胞性免疫応答が含まれる。免疫原性組成物は、任意の段階の疾患を治療または予防するために治療的または予防的に使用できる。
本明細書で用いる「異種」は、あらかじめ決定され、参照される核酸またはアミノ酸配列に関連して定義される。例えば、構造遺伝子配列に関しては、異種プロモーターは、参照された構造遺伝子に天然では隣接していないが、実験操作により位置決められたプロモーターとして定義される。同様に、異種遺伝子または核酸セグメントは、参照されたプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントに天然では隣接していない遺伝子またはセグメントと定義される。ポリペプチド配列、すなわちタンパク質をコードするポリペプチド配列に関しては、異種ペプチドは、参照されたタンパク質またはその一部に天然では隣接していないペプチドである。いくつかの態様では、異種ポリペプチドはタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質である。
「タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質」とは、共有結合した少なくとも2つのポリペプチドを有するタンパク質であって、1つのポリペプチドが1つのタンパク質配列またはドメインに由来し、他方のポリペプチドが別のタンパク質配列またはドメインに由来するものをさす。ポリペプチドは直接結合しているか、または共有結合リンカー、例えば、ポリグリシンリンカーのようなアミノ酸リンカー、または、例えば、糖質リンカー、脂質リンカー、脂肪酸リンカー、ポリエーテルリンカー、例えば、PEG等(例えば、Hermanson (1996) Bioconjugate techniquesを参照)のような別の種類の化学的リンカーを介して結合している可能性がある。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を形成するポリペプチドは、通常はC末端からN末端に連結しているが、C末端からC末端、N末端からN末端、またはN末端からC末端に結合していても良い。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順で良い。また「タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を構成するポリペプチドの、保存的に修飾された変異型、多型の変異型、アリル、変異体、部分配列(subsequence)、および種間相同体もさす。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、例えば、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を連続してコードする組み換えポリヌクレオチドを調製することにより、1つのタンパク質配列由来のアミノ酸鎖を別のタンパク質配列由来のアミノ酸鎖に共有結合させることによって作製できる。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、同一または異なる種に由来する、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の異なるアミノ酸鎖を含む可能性がある。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質中の異なるアミノ酸鎖は、直接共にスプライスされるか、または化学的結合基またはアミノ酸結合基を介して間接的に共にスプライスされる可能性がある。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、本明細書でさらに詳細に説明するとおり、任意で他の成分も含む可能性がある。
「アジュバント」は、非特異的な免疫応答増強剤である。
「液性免疫応答」は、血液の無細胞成分、すなわち血漿または血清により仲介される;1つの個体から別の個体に血清または血漿を移すと、免疫が移される。
「細胞性免疫応答」は抗原特異的リンパ球によって仲介される;1つの個体から別の個体に抗原特異的リンパ球を移すと、免疫が移される。
本発明の免疫原性組成物は、対象における治療的または予防的な応答を誘発するために十分な量が対象に投与される。これを達成するために適切な量は、「治療的に有効な用量または量」と定義される。
本発明の免疫原性組成物は、対象における免疫応答を誘発するために十分な量が対象に投与される。これを達成するために適切な量は、「免疫原的に有効な用量または量」と定義される。
「タンパク質」という用語は、本明細書では「ポリペプチド」および「ペプチド」と互換的に使用される。
「核酸」とは、一本鎖または二本鎖いずれかの型の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーをさす。この用語は、合成の、天然に存在する、および天然に存在しない核酸であって、参照核酸と同様な結合特性を有し、さらに参照ヌクレオチドと同様な様式で代謝される、既知のヌクレオチドアナログまたは修飾された骨格残基または結合を含む核酸を包含する。そのようなアナログの例には、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
他に記載がない限り、特定の核酸配列は、明示的に示された配列に加えて、保存的に修飾されたその変異型(例えば、縮重したコドンの置換)および相補配列も暗示的に含む。具体的には、縮重したコドンの置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基によって置換された配列を作製することによって行ってもよい(Batzer et al. (1991) Nucleic Acid Res. 19:5081; Ohtsuka et al., (1985) J. Biol. Chem. 260:2605-2608; Rossolini et al., (1994) Mol. Cell. Probes 8:91-98)。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換的に使用される。
本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を含むポリヌクレオチド配列は、ストリンジェントな条件下で、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の各ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の各々とハイブリダイズする。したがって、融合ポリペプチドの個々のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、保守的に修飾された変異型、多型の変異型、アリル、変異体、部分配列、および種間相同体を含む。
「配列の同一性の割合」は、比較する領域に渡って最適に整列させた2つの配列を比較することによって決定されるが、比較される領域中のポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列の最適な整列のために、参照配列(付加または欠失を持たない)と比較して、付加または欠失(ギャップ)を含む可能性がある。割合は、2つの配列において同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、一致する位置の数を得て、一致する位置の数を比較する領域における位置の総数で割り、その結果を100倍して配列の同一性の割合を計算する。
ポリヌクレオチド配列が「実質的同一性」と言う用語は、ポリヌクレオチドが少なくとも25%の配列の同一性を有する配列を含むことを意味する。または、同一性の割合は、25%から100%の間の任意の整数でも良い。より好ましい態様は、以下に記述するように、標準的なパラメータを用いて、本明細書に記載されるプログラム、好ましくはBLASTを用いて、参照配列と比較して、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上を含む。当業者は、コドンの縮重、アミノ酸の類似性、リーディングフレームの位置等を考慮することによって、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するために、これらの値が適当に調節できることを認識するだろう。これらの目的のためのアミノ酸配列の「実質的同一性」は、通常はポリペプチドが例えばSEQ ID NO:3に対して少なくとも40%の配列の同一性を有することを意味する。ポリペプチドの同一性のより好ましい割合は、40%から100%の間の任意の整数であり得る。より好ましい態様は、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%を含む。「実質的に類似した」ポリペプチドは、同一ではない位置の残基は保存的なアミノ酸置換によって異なる可能性があること以外は、上記のような配列を共有する。保存的アミノ酸置換は、類似した側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;脂肪族水酸基の側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびスレオニン;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミン;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群はリジン、アルギニン、およびヒスチジン;ならびに含硫側鎖を有するアミノ酸の群はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換の群は:バリン・ロイシン・イソロイシン、フェニルアラニン・チロシン、リジン・アルギニン、アラニン・バリン、アスパラギン酸・グルタミン酸、およびアスパラギン・グルタミンである。
比較のための配列の最適な整列は、Smith and Waterman (1981) Add. APL. Math. 2:482の局所同一性アルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の同一性整列アルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444による類似性探索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実施(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WIのGAP, BESTFIT, BLAST, FASTA, およびTFASTA)、または精査によって実行できる。
配列同一性または配列類似性の割合を決定するために適した好ましいアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschul et al. (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記述されている。BLASTおよびBLAST 2.0は、本明細書に記載されたパラメータを用いて、本発明の核酸およびタンパク質の配列同一性の割合を決定するために使用される。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公開されている。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメータM(一致する残基のペアに対するリウォードスコア;常に>0)およびN(不一致の残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列の場合、スコアマトリックスを用いて累積スコアが計算される。各方向のワードヒットの伸長は、到達した最大値から累積整列スコアが量Xだけ低下する;1つまたは複数の負のスコア残基の整列が蓄積したために累積スコアがゼロまたはそれ以下になる;またはいずれかの配列の端に到達する時に、停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、整列の感受性とスピードを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワード長(W) 11、期待値(E) 10、M=5, N=4、および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長3、期待値(E) 10、およびBLOSUM62スコアマトリックス(Henikoff and Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915を参照されたい)整列(B) 50、期待値(E) 10, M=5, N=4, および両鎖の比較を用いる。
ヌクレオチド配列が実質的に同一であることを示す別の方法は、中程度に、および好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、2つの分子が互いにまたは第3の核酸にハイブリダイズするかどうかである。ストリンジェントな条件は、配列に依存し、異なる状況下では異なっている。長い配列の方が、高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範囲のガイドは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology -- Hybridizaiton with Nucleic Probes, “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays” (1993)に記述されている。一般に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHにおける特定の配列の融解温度(Tm)よりも約5〜10℃低い温度が選択される。Tmは、標的配列の50%が完全に一致したプローブにハイブリダイズする温度(規定されたイオン強度およびpHで)である。通常は、ストリンジェントな条件は、pH 7.0〜8.3において塩濃度が約1.0 Mナトリウムイオン未満、通常は約0.01〜1.0 Mナトリウムイオン濃度(または他の塩)で、温度は短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃、および長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドを越える)では少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤を添加しても提供できる。選択的または特異的ハイブリダイゼーションでは、陽性のシグナルはバックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドのハイブリダイゼーションの10倍である。
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、以下のとおりである:50%ホルムアミド、5X SSC、および1% SDS、42℃でインキュベーション、または5X SSC、1%SDS、65℃でインキュベーションし、0.2X SSCおよび0.1% SDSで65℃において洗浄する。
本発明のためには、適当な「中程度にストリンジェントな条件」には、例えば、5X SSC, 0.5% SDS, 1.0 mM EDTA (pH 8.0)の溶液中でプレウォッシュし、50℃〜65℃、5X SSCで一晩ハイブリダイズさせ、その後2X, 0.5Xおよび0.2X SSC(0.1% SDSを含む)の各々で65℃において20分間、2回洗浄することが含まれる。そのようなハイブリダイズするDNA配列も、本発明の範囲内である。
本明細書に記述される「T細胞の増殖」には、T細胞の増殖に加えて、増殖に至るようなT細胞の刺激、すなわち、有糸分裂に至る事象の開始および有糸分裂自身が含まれる。T細胞の増殖を検出する方法は、以下に説明される。
III. 本発明のベクター
本発明は特定の癌抗原が関与した悪性病変を標的とできる組成物、ならびに特定の癌抗原に対する免疫応答を誘発および増強できる組成物および方法を提供する。特に、本発明は5'から3'方向に以下のエレメントを含む発現カセットを提供する:CMVプロモーター配列、CMVエンハンサー配列、CMV主要前初期遺伝子由来のCMVイントロンA配列、異種核酸配列、およびポリアデニル化部位。ここで、プロモーターは異種核酸配列に機能的に連結している。
本発明に開示されるように、異種ポリペプチドをコードする核酸のタンパク質発現産物は、T細胞によって認識される。
A. 発現ベクター
1つの態様では、本発明の化合物は、異種ポリペプチドまたは異種ポリペプチドの変異型を含むタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを含む。本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質においては、異種ポリペプチド成分は、例えば、アミノ酸リンカーまたは別の種類の化学的リンカーのようなリンカーを介して、別のポリペプチドに融合するか、直接融合している可能性がある。本発明の範囲内の他の変異型には、天然の異種ポリペプチドのアミノ酸一次構造が、他のペプチドもしくはポリペプチド、またはグリコシル基、脂質、リン酸、アセチル基等のような化学的集団と、共有結合または集合体を形成することによって修飾されている、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質が含まれる。共有結合の誘導体は、例えば、アミノ酸側鎖またはN末端またはC末端に特定の官能基を連結させることによって、調製できる。
本発明は、グリコシル化を有するまたは有しない融合タンパク質、および融合タンパク質をコードする発現カセットも含む。酵母または哺乳動物発現系において発現された融合タンパク質は、発現系によって、分子量およびグリコシル化パターンが、天然の分子と類似しているか、わずかに異なる可能性がある。大腸菌のような細菌中におけるポリペプチドをコードするDNAの発現は、通常は非グリコシル化分子を提供する。真核生物のタンパク質のNグリコシル化部位は、3連アミノ酸Asn-A1-Zによって特徴づけられるが、ここでA1はPro以外の任意のアミノ酸で、ZはSerまたはThrである。不活化されたNグリコシル化部位を有する、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の変異型は、オリゴヌクレオチド合成および連結または部位特異的変異導入技術のような、当業者に周知の技術によって作製でき、本発明の範囲内である。または、N結合グリコシル化部位を、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に付加することもできる。
変異型を含むと理解される本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質には、ヒトおよび非ヒトポリペプチドの任意の組み合わせが含まれる。非ヒトポリペプチドには、例えば、ラット、マウス、モルモット、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ等のような、任意の哺乳動物由来のポリペプチドが含まれる。
本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の任意の変異型は、本発明の態様として含まれる。1つの態様では、そのような変異型は天然タンパク質と実質的に同一または実質的に類似しており、免疫応答を刺激する能力を保持している。タンパク質が免疫応答を誘導する能力に対する、任意の配列修飾の効果は、例えば、本明細書に記述される方法を用いて、変異タンパク質がT細胞反応を誘導する能力を解析するか、変異タンパク質が抗体を生産する能力を解析することによって、容易に決定できる。
特定の態様内では、本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、例えば、免疫融合パートナーまたは発現エンハンサーのような、融合パートナーを含む可能性がある。融合パートナーは、例えば、Tヘルパーエピトープ、好ましくはヒトで認識されるTヘルパーエピトープを提供したり(免疫融合パートナー)、組み換えタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質よりも高い収率でタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を発現する役に立ったり(発現エンハンサー)する可能性がある。特定の好ましい融合パートナーは、免疫および発現の両方の強化をする融合パートナーである。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の溶解度を改善したり、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質が所望の細胞内コンパートメントをターゲットとしたりできるように、他の融合パートナーを選択することもできる。さらに別の融合パートナーには、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の精製を促進する親和性タグが含まれる。
関連しない免疫原性タンパク質と共に、本明細書に記述される融合ポリペプチドを含む、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質も提供される。好ましくは、免疫原性タンパク質はリコール反応を誘発することができる。そのようなタンパク質の例には、破傷風、結核、および肝炎タンパク質(例えば、Stoute et al. (1997) New Engl. J. Med. 336:86-91を参照されたい)。
別の態様では、免疫融合パートナーはグラム陰性菌であるインフルエンザB型菌(Haemophilus influenza B)の表面タンパク質であるプロテインDに由来する(WO 91/18926)。好ましくは、プロテインD誘導体は、タンパク質の初めのおよそ3分の1(例えば、N末端の最初の100〜110アミノ酸)を含み、プロテインD誘導体には、脂質が付加している可能性がある。特定の好ましい態様内では、リポプロテインD融合パートナーの最初の109残基は、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質にさらなる外来T細胞エピトープを提供し、大腸菌内での発現レベルを上昇させる(したがって、発現エンハンサーとして機能する)ためにN末端に含まれる。脂質のテールは、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質が抗原提示細胞に最適に提示されるために役立つ。他の融合パートナーには、インフルエンザウイルスから得られる非構造タンパク質であるNS1(ヘマグルチニン)またはその免疫原性部分が含まれる(例えば、WO 99/40188およびWO 93/04175を参照されたい)。通常は、N末端の81アミノ酸が使用されるが、Tヘルパーエピトープを含む異なる断片も使用できる。1つの態様では、本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、さらに、好ましくはタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質のN末端領域に結合した、NS1融合パートナーまたはその免疫原性断片を含む。NS1パートナーを含むタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、以下に説明するように、好ましくはBHK細胞中で組み換えにより発現される。
別の態様では、免疫融合パートナーは、LYTAとしてい知られるタンパク質またはその一部(好ましくはC末端部分)である。LYTAは、アミダーゼLYTAとして知られるNアセチルLアラニンアミダーゼ(LytA遺伝子にコードされている;Gene 43:265-292 (1986))を合成する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)に由来する。LYTAは、ペプチドグリカン骨格の特定の結合を特異的に分解する、自己溶解素である。LYTAタンパク質のC末端ドメインは、コリンまたはDEAEのような一部のコリンアナログに対する親和性を担う。この性質は、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の発現に有用な、大腸菌C-LYTA発現プラスミドの開発に利用された。アミノ末端にC-LYTA断片を含むハイブリッドタンパク質の精製は、記述されている(Biotechnology 10:795-798 (1992)を参照されたい)。ある好ましい態様内では、LYTAの繰り返し部分が、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に組み込まれている場合がある。繰り返し部分は、C末端領域に見られ、残基178位から開始する。特に好ましい繰り返し部分は、残基188位〜305位を含んでいる。
本発明の融合パートナーポリペプチドをコードする核酸は、当技術分野で周知の任意の適当な方法によって調製できる。その例には、適当な配列のクローニングおよび制限、またはNarang et al. (1979) Meth. Enzymol. 68:90-99のホスホトリエステル法;Brown et al. (1979) Meth. Enzymol. 68:109-151のホスホジエステル法;Beaucage et al. (1981) Tetra. Lett. 22:1859-1862のジエチルホスホラミダイト法;および米国特許第4,458,066号の固相支持法ような方法による、直接の化学合成が含まれる。
融合パートナーポリペプチドおよび選択されたタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を含む融合ポリペプチドをコードする組み換え核酸は、当技術分野で周知の任意の方法によって調製できる。上述のように、組み換え核酸は、好ましくは融合パートナーポリヌクレオチド配列が、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の5'に位置するように作製される。融合パートナーおよびタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質のポリヌクレオチド配列は、融合およびその後の発現を促進するように修飾することもできる。
組み換え核酸は、さらに、タンパク質精製プロトコールを容易にするような親和性タグをコードする配列のような、他のヌクレオチド配列も含むことができる。
B. 異種核酸によってコードされたタンパク質変異型
一般に、CD4 T細胞群は、特異的な抗原によって刺激されたときに、リンフォカインの放出を介してヘルパーまたはインデューサーとして機能すると考えられる;しかし、CD4細胞のサブセットは、細胞障害性Tリンパ球(CTL)として作用し得る。同様に、CD8細胞は、直接に抗原性標的を溶解することによって機能すると考えられる;しかし、さまざまな条件下では、リンフォカインを分泌し、ヘルパーまたはDTH機能を提供し得る。この潜在的に重複する機能があるにもかかわらず、CD4およびCD8の表現型マーカーは、クラスIまたはクラスII MHC抗原に結合したペプチドの認識に結びつけられている。クラスIまたはクラスII MHCに結合した抗原の認識には、CD4およびCD8 T細胞が、異なる状況下で提示される異なる抗原または同一の抗原に対して、応答する必要がある。免疫原性ペプチドのクラスII MHC抗原への結合は、抗原提示細胞によって取り込まれた抗原に関して、最も広く見られる。
CD4 T細胞は、一般的に癌細胞に対して外来の抗原を認識する。反対に、通常の状況では、クラスI MHCへのペプチドの結合は、サイトゾル中に存在し、標的自身によって合成されたタンパク質についてのみ起こり、外来環境のタンパク質は含まれない。その例外は、正確なクラスI結合モチーフを有する外来ペプチドで、高濃度で細胞中に存在するものの結合である。したがって、CD4およびCD8 T細胞は、広く異なる機能を持ち、抗原が通常どこに存在するかを反映して、異なる抗原を認識する傾向がある。
本発明の変異型を提供するためのアミノ酸置換を行う別の方法は、クラスII MHC分子(CD4 T細胞応答)またはクラスI MHC分子(CD8 T細胞応答)に結合する能力のあるT細胞モチーフ中のアミノ酸を同定し、置換することである。クラスII MHC分子に結合する理論的可能性を有するモチーフを持ったペプチドセグメントは、コンピュータ解析によって同定できる。例えば、T細胞認識の可能性のある部位を区別するために設計されたいくつかのコンピュータアルゴリズムを組み込んだ、タンパク質配列解析パッケージT Sitesが使用できる(Feller et al. (1991) Nature 349:720-721)。2つの検索アルゴリズムが使用される:(1) Margalitにより記述されたAMPHIアルゴリズム(Feller et al. (1991) Nature 349:720-721; Margalit et al. (1987) J. Immunol. 138:2213-2229)は、αヘリックスの周期性および両親媒性にしたがってエピトープモチーフを同定する;(2) RothbardおよびTaylorアルゴリズムは(Rothbard et al. (1988) EMBO J. 7:93-100)、電荷および極性パターンに従って、エピトープモチーフを同定する。両方のモチーフを有するセグメントは、クラスII MHC分子への結合に最も適している。CD8 T細胞は、クラスI MHC分子へ結合したペプチドを認識する。Parker et al. (1994) J. Immunol. 152:163は、特定のMHC分子へ結合するペプチドが、識別し得る配列モチーフを共有することを決定した。HLA-A2.1の溝に結合するペプチドモチーフは、培養細胞株のHLA-A2.1分子から得られたペプチドのエドマン分解によって決定された(表1、Falk et al. (1991) Nature 351:290-296より)。この方法では、典型的または平均的なHLA-A2.1結合ペプチドは長さが9アミノ酸で、2 (L)および9 (V)の位置に優位なアンカー残基を有することが同定された。共通に見られる強度の結合残基は、2 (M)、4 (E, K)、6 (V)、および8 (K)の位置に同定されている。同定されたモチーフは、多くの結合ペプチドの平均を表す。
(表1)HLA-A2.1制限モチーフ
Figure 0004771954
現在決定されている推論されたペプチドモチーフは、特に厳密なものではない。HLA-A2.1結合ペプチドの中には、両方の優位なアンカー残基を含まないものもあり、優位なアンカー残基に隣接するアミノ酸が結合の許可の有無に主要な役割を果たす。現在記述されている結合モチーフを持つペプチドがすべて結合するわけではなく、モチーフを持たないペプチドにも結合するものがある。しかし、現在のモチーフは、結合する能力のあるいくつかのペプチドを同定するためには十分有用である。すべてのMHC分子およびそれぞれのモチーフは、残基2位および9位の優位なアンカーアミノ酸の間に6つのアミノ酸を有することに注意されたい。
タンパク質内のペプチドモチーフの同定に続いて、保存的または非保存的なアミノ酸置換を導入することができる。後者の置換は、より効力のあるおよび/または広い交差反応性のある、改良されたタンパク質を生産することを意図している。より効力のあるタンパク質またはペプチドの例は、天然のタンパク質またはポリペプチドに特異的なT細胞による認識に影響を与えることなく、天然のタンパク質またはポリペプチドと同じMHC分子に対して、より高い親和性で結合するものである。より広い交差反応性を有するポリペプチドの例は、天然のポリペプチドよりも広い交差反応性の免疫応答を誘導するものである(すなわち、より広い範囲のMHC分子に結合する)。同様に、ペプチドモチーフの間に存在し、スペーサー機能を有する1つまたは複数のアミノ酸も(例えば、MHC分子またはT細胞受容体と相互作用しない)、保存的または非保存的に置換できる。本明細書に記述されたT細胞認識を刺激する能力に関するアッセイを含むさまざまなアッセイによって、1つまたは複数の置換を含むポリペプチドの、有用または有害な免疫相互作用を検定することができるのは、当業者には明らかだろう。
本発明の範囲内の変異型には、加えて、または、代わりに、上述のようなポリペプチドの所望の免疫学的性質にほとんど影響しないような、アミノ酸の欠失または付加を含む他の修飾が含まれ得る。所望の免疫学的性質が、天然の全長型タンパク質と少なくともほぼ同等であれば、切断型または非天然の伸長型タンパク質も使用できることは、当業者には理解できるだろう。再生時に間違った分子内ジスルフィド結合が形成されるのを防ぐために、システイン残基を、削除するか他のアミノ酸と置換してもよい。変異導入のための他の手法には、KEX2プロテアーゼ活性の存在する酵母系における発現を増強するための、隣接する2塩基アミノ酸残基の修飾が含まれる。
IV. 本発明のポリヌクレオチドの調製
A. タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
本発明にしたがって、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質のアミノ酸配列をコードする任意のヌクレオチド配列を用いて、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の発現を指示する組み換え分子を作製できる。
融合ポリヌクレオチドを作製するための全長のコード配列または相同変異型をクローニングするために、ヌクレオチド配列またはその相補鎖の任意の部分から設計された標識DNAプローブを用いて、ゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングし、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の各成分のコード配列を同定することができる。ヌクレオチド配列は、任意の適当な哺乳動物、例えば、ヒト、ラット、マウス、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ等でよい。
そのようなクローンは、癌抗原のような、関心対象の全長タンパク質を発現するクローンについて、適当な発現ライブラリーをスクリーニングすることによって単離できる。ライブラリーの調製およびスクリーニングは、一般に、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor, NY (1989)に記述される方法ような、当業者に周知の方法を用いて、実施できる。簡単に述べると、バクテリオファージ発現ライブラリーを播き、フィルターに移す。その後、フィルターを検出試薬とインキュベーションする。本発明の文脈では、「検出試薬」はタンパク質に結合する能力があり、当業者に周知のさまざまな方法のうちの任意のものにより検出できる、任意の化合物である。典型的な検出試薬は、レポーター基に結合した、プロテインA、プロテインG、IgGまたはレクチンのような「結合剤」を含む。好ましいレポーター基には、酵素、基質、コファクター、阻害剤、色素、放射性核種、発光団、蛍光団、およびビオチンが含まれる。より好ましくは、レポーター基は、テトラメチルベンジジンまたは2,2'-アジノ-ジ-3-エチルベンズ-チアゾリンスルホン酸のような基質とインキュベートすることによって検出できる西洋ワサビペルオキシダーゼである。例えば、癌抗原を発現するゲノムまたはcDNA配列を含むプラークは、当業者に周知の技術によって、単離および精製される。適当な方法は、例えば、上記Sambrook et al.に記述されている。
コード配列の単離は、本明細書に開示されるコード配列に基づいて設計された2つの縮重オリゴヌクレオチドプライマープールを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、実施できる。所望の核酸は、他の周知の増幅技術を用いても、クローニングできる。PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβレプリカーゼ増幅、および他のRNAポリメラーゼを介した技術を含む、当業者がインビトロ増幅法を行うために十分なプロトコールの例は、上記Sambrook et al.、およびAusubel et al. Current Protocols in Molecular Biology (1994)、ならびに米国特許第4,683,202号; PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innis et al.編、1990); Arnheim & Levinson C&EN pp. 36-47 (1990年10月1日); The Journal of NIH Research 3:81-94 (1991); Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173; Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874; Lomell et al. (1989) J. Clin. Chem. 35:1826; Landegren et al. (1988) Science 241:1077-1080; Van Brunt (1990) Biotechnology 8:291-294; Wu et al. (1989) Gene 4:560; およびおBarringer et al. (1990) Gene 89:117に記載されている。インビトロ増幅した核酸をクローニングするための改良された方法は、米国特許第5,426,039号に記載されている。本発明の核酸の増幅に使用するために適したプライマーは、本明細書に提供された配列に基づいて設計できる。
本明細書にしたがって、タンパク質、ポリペプチド、もしくは融合タンパク質、その断片、またはその機能的同等物をコードする本発明のポリヌクレオチドを用いて、適当な宿主細胞中で、タンパク質、ポリペプチド、もしくは融合タンパク質、その断片、またはその機能的同等物を発現させる組み換え核酸分子を作製できる。そのようなポリヌクレオチドによってコードされる融合ポリペプチド産物は、コード配列の分子的操作によって変化させられる。
遺伝コードの固有の縮重性のために、実質的に同一または機能的に同等なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を、本発明の実施に使用して、融合ポリペプチドの発現ができる。そのようなDNA配列には、本明細書に記述される低度に、中等度に、または高度にストリンジェントな条件下で、本明細書に開示されるコード配列またはその相補鎖にハイブリダイズする能力を有するものが含まれる。
本発明にしたがって使用できる変化させたヌクレオチド配列には、異なるヌクレオチド残基の欠失、付加、または置換によって、同一または機能的に同等な遺伝子産物をコードする配列が得られるものが含まれる。遺伝子産物自身が、アミノ酸残基の欠失、付加、または置換を含み、それによりサイレント変異が誘導され、機能的に同等な抗原性エピトープが生産される場合がある。そのような保存的アミノ酸置換は、関与する残基の、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質に基づき、作製できる。例えば、負に荷電したアミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる;正に荷電したアミノ酸には、リジン、ヒスチジン、およびアルギニンが含まれる;同様な親水性度の値を有する電荷のない極性頭部を持つアミノ酸には、以下のものが含まれる:グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、およびチロシン;ならびに非極性の頭部を持つアミノ酸には、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、およびトリプトファンが含まれる。
遺伝子産物のプロセッシングおよび発現を修飾する変異を含むがこれらに限定されないさまざまな目的のため、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質のコード配列を変更するために、本発明のヌクレオチド配列を操作することができる。例えば、当技術分野で周知の技術を用いて変異を導入して、例えば、制限部位を挿入または削除したり、グリコシル化パターン、リン酸化を変更したり、翻訳、開始、および/または終結配列を作製および/または破壊したり、またはさらなるインビトロ修飾を容易にするためにコード領域に変異を作製したり等ができる。当業者は、特定の核酸構築物に変更を作製するための多くの方法を認識するだろう。そのような周知の方法には、例えば、位置指定突然変異導入法、縮重オリゴヌクレオチドを用いたPCR増幅、核酸を含む細胞の化学的変異誘発剤または放射線への暴露、所望のオリゴヌクレオチドの化学合成(例えば、大きな核酸を作製するため、連結および/またはクローニングと組み合わせて)、および他の周知の方法が含まれる(例えば、Giliman et al. (1979) Gene 8:81-97; Hutchinson et al. (1978) J. Biol. Chem. 253:6551; Roberts et al. (1987) Nature 328:731-734を参照されたい)。好ましくは、操作は融合ポリペプチドの免疫原性を破壊しない。
本発明の1つの態様では、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質のコード配列は、当技術分野で周知の化学的方法を用いて全体として、または部分として合成され得る(例えば、Caruthers et al. (1980) Nuc. Acids Res. Symp. Ser. 7:215-223; Crea et al. (1980) Nuc. Acids Res. 9(10):2331; Matteucci et al. (1980) Tetrahedron Letter 21:719 (1980); およびChow et al. (1981) Nuc. Acids Res. 9(12):2807-2817を参照されたい)。
B. 配列の修飾
免疫応答を刺激する能力を保持した本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の変異型は、一般に、上述の1つまたは複数の局面の配列を修飾し、得られたタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質が免疫応答を刺激する能力、例えば、T細胞応答または抗体応答、を測定することにより、同定できる。例えば、そのような測定は一般に、修飾されたタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をT細胞に接触させ、応答を測定することにより実施できる。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の個々のポリペプチド成分の天然に存在する変異型も、例えば、個々の各ポリペプチドまたはその変異型をコードするDNA配列を用いて、適当なcDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、単離できる。
上述の配列の修飾は、標準的な組み換え技術を用いるか、修飾されたタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の自動合成によって導入できる。例えば、変異は、天然の配列の断片に連結できるような制限部位が隣接した変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することによって、特定の位置に導入できる。連結後には、得られた再構成された配列は、所望のアミノ酸挿入、置換、または欠失を有するアナログをコードすることになる。
または、オリゴヌクレオチド位置指定突然変異導入法を用いて、必要な置換、欠失、または挿入にしたがって、特定のコドンを変化させた遺伝子を提供することができる。上述の変異を作製する方法の例は、Walder et al. (1986) Gene 42:133; Bauer et al., (1985) Gene 37:73; Craik (1985) BioTechniques January:12-19; Smith et al. (1981) Genetic Engineering: Principles and Methods, Plenum Press; および米国特許第4,518,584号および同第4,737,462号に記述されている。
そのようなタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の発現のために作製されたヌクレオチド配列の変異は、当然、コード配列の読み枠を保存し、好ましくは、mRNAの翻訳への悪影響を避けるため、ハイブリダイズしてループまたはヘアピンのようなmRNAの2次構造を形成する可能性のある、相補的な領域を生成しないものである。変異部位をあらかじめ決定することはできるが、変異の性質自体をあらかじめ決定しておく必要はない。例えば、特定の部位における変異体の最適な特徴を選択するためには、標的コドンにおいて無作為な変異作製を行い、発現された変異体タンパク質について、所望の活性のスクリーニングをすることができる。タンパク質をコードするヌクレオチド配列におけるすべての変異が最終産物に発現されるわけではない。例えば、発現を増強するため、主に転写されたmRNAにおける2次構造のループを避けるために(例えば、欧州特許出願第75,444A号を参照されたい)、または、大腸菌での発現用には周知の大腸菌で好まれるコドンのような、選択された宿主によって容易に翻訳されるコドンを提供するために、ヌクレオチド置換が導入される場合がある。
C. 発現ベクター
本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質、およびその変異型は、好ましくは組み換えDNA法によって生産される。そのような方法には、例えば、癌抗原タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をコードするDNA配列を、上述の組み換え発現ベクターに挿入し、組み換え微生物、哺乳動物、真菌、または昆虫細胞発現系において、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の発現、および好ましくは分泌を促進するような条件下で、DNA配列を発現する段階が含まれる。本発明で提供されるタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をコードするDNA配列は、cDNA断片および短いオリゴヌクレオチドリンカーから、または一連のオリゴヌクレオチドから組み立てることができ、組み換え発現ベクター中に挿入し、組み換え転写ユニット中で発現することのできる合成遺伝子を提供することができる。
組み換え発現ベクターは、哺乳動物、真菌、微生物、ウイルス、または昆虫遺伝子から得られる適当な転写または翻訳調節エレメントに機能的に連結したタンパク質をコードするDNA配列を含む。そのような調節エレメントには、転写プロモーター、任意で転写を制御するためのオペレーター配列、適当なmRNAリボゾーム結合部位をコードする配列、および転写および翻訳の終結を制御する配列が含まれる。複製起点および形質転換細胞の認識を容易にするための選択マーカーも、さらに組み込まれても良い。
DNA領域は、機能的に互いに関連しているときに、「機能的に連結」している。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、ポリペプチドの分泌に参加する前駆体として発現されれば、ポリペプチドのDNAに機能的に連結している;プロモーターは、配列の転写を制御すれば、「機能的に連結」している;またはリボゾーム結合部位は、翻訳を許可するような位置にあれば、コード配列に「機能的に連結」している。一般に、「機能的に連結」というのは、連続しており、分泌リーダーの場合にはリーディングフレーム内であることを意味する。微生物中で発現されるタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をコードするDNA配列は、好ましくは、DNAのmRNAへの転写を早期に終結する可能性のあるイントロンは含まない。
細菌で使用する発現ベクターは、周知のクローニングベクターであるpBR322 (ATCC 37017)の遺伝的エレメントを含む市販のプラスミドから得られた細菌の複製起点、および選択マーカーを含む可能性がある。そのような市販のベクターには、例えば、pKK223-3 (Pharmacia Fine Chemicals, Uppsala, Sweden), pGEM1 (Promega Biotec, Madison, WI), pET28b (Novagen)およびpPDM(改変pET28b, Corixa)が含まれる。これらのpBR322「骨格」部分は、適当なプロモーターおよび発現される構造配列と組み合わせられる。大腸菌は、通常、大腸菌種に由来するプラスミドであるpBR322の誘導体(Bolivar et al., (1977) Gene 2:95)を用いて形質転換される。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性遺伝子を含むため、形質転換細胞を同定するための単純な手段を提供する。
好ましい酵母ベクターは、大腸菌における選択および複製のためのpBR322由来のDNA配列(Ampr遺伝子および複製起点)および酵母DNAを用いて組み立てられる。異種タンパク質の分泌を指示する酵母のα因子リーダーは、プロモーターと発現される構造遺伝子との間に挿入できる(例えば、Kurjan et al. (1982) Cell 30:933; およびBitter et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:5330を参照されたい)。リーダー配列は、リーダー配列と外来遺伝子の融合を容易にするために、3'末端付近に、1つまたは複数の有用な制限部位を有するように修飾できる。
転写および翻訳制御配列に加えて、発現系の中には、ネオマイシン、チミジンキナーゼ、ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、およびジヒドロ葉酸還元酵素のような、遺伝子増幅を提供するマーカーを有するものがある。
発現ベクターのエピソーム複製を可能にする有用な細胞株は、CV-1/EBNA (ATCC CRL 10478)である。CV-1/EBNA細胞株は、エプスタイン・バーウイルスの核抗原-I (EBNA-1)をコードする遺伝子をCV-1細胞株にトランスフェクトすることにより得られたもので、ヒトCMV前初期エンハンサー/プロモーターからEBNA-1を構成的に発現する。
哺乳動物の培養細胞における発現のための好ましいベクターには、pFLAGCMV-1 (Kodak), pcDNA3.1/hyg (Invitrogen), pEE14-GS (CellTech), pBIB、およびVR1012 (Hartikka et al. (1996) Hum. Gene Ther. 7(10):1205-1217)が含まれる。
発現ベクターを導入するためには、外来ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するための任意の既知の手順が使用できる。これには、Superfect (Qiagen)のような試薬の使用、リポソーム、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バイオリスティック粒子加速(遺伝子ガン)、またはクローニングされたゲノムDNA、cDNA、合成DNA、または他の外来遺伝子材料の宿主細胞への導入のための任意の他の既知の方法(例えば、Sambrook et al.、上記を参照されたい)が含まれる。
D. 宿主細胞
形質転換宿主細胞は、組み換えDNA技術を用いて作製された発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクトされた細胞で、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をコードする配列を含むものである。形質転換宿主細胞は、関心対象の所望のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を発現する可能性があるが、DNAのクローニングまたは増幅の目的で形質転換された宿主細胞は、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を発現する必要はない。発現されたタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、好ましくは、選択されたDNAに依存して、培地または上清中に分泌される。当業者は、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質が培養上清中に分泌されるれば、培養上清中に可能性であることも理解できるだろう。
発現ベクターを導入するためには、外来ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するための任意の既知の手順が使用できる。これには、Superfect (Qiagen)のような試薬の使用、リポソーム、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バイオリスティック粒子加速(遺伝子ガン)、またはクローニングされたゲノムDNA、cDNA、合成DNA、または他の外来遺伝子材料の宿主細胞への導入のための任意の他の既知の方法(例えば、Sambrook et al.、上記を参照されたい)が含まれる。
組み換えタンパク質の発現に適した宿主細胞には、適当なプロモーターの制御下にある、原核生物、酵母、または高等真核生物の細胞が含まれる。適当な哺乳動物宿主細胞株の例には、Gluzman (1981) Cell 23:175に記述されたサル腎細胞のCOS-7株、ならびに、例えば、CV-1/EBNA (ATCC CRL 10478), L細胞、C127, 3T3, チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COS, NS-1, HeLa, ヒト胚腎線維芽細胞(HEK293), BHK、およびHEK293細胞株を含む、適当なベクターを発現する能力のある他の細胞株が含まれる。哺乳動物発現ベクターは、非転写エレメント(例えば、複製起点、発現される遺伝子に連結した適当なプロモーターおよび/またはエンハンサー、および他の5'または3'隣接非転写配列)、および5'または3'非翻訳配列(例えば、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、ならびに転写終結配列)を含む可能性がある。好ましい哺乳動物発現系は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HEK293、およびBHK細胞株である。組み換えCHO発現タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、グリコシル化されたタンパク質として細胞上清に分泌される。
原核生物には、グラム陰性生物またはグラム陽性生物、例えば、大腸菌またはバチルス(Bacilli)が含まれる。高等真核細胞には、下記のような、昆虫または哺乳動物起源の確立された細胞株が含まれる。DNA構築物から得られたRNAを用いて、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を生産するために、無細胞翻訳系も使用できる。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主に用いるために適当なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Pouwels et al., Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, NY (1985)に記述されている。
広範な蛋白分解およびジスルフィドのプロセッシングを必要としないタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の発現には、原核生物発現宿主が使用できる場合がある。原核生物の発現ベクターは、一般に、1つまたは複数の表現型の選択マーカー、例えば、抗生物質耐性を提供するまたは自己栄養要件を供給するタンパク質をコードする遺伝子、および宿主内で増幅されるために宿主が認識する複製起点を含む。形質転換に適した原核細胞宿主には、大腸菌(例えば、BL21 (DE3) CodonPlus大腸菌)、枯草菌(Bacillus subtilis), ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium), およびシュードモナス(Pseudomonas), ストレプトミセス(Streptomyces), およびブドウ球菌(Staphylococcus)属内のさまざまな種が含まれるが、他の宿主も使用できる。
昆虫(例えば、SpodopteraまたはTrichoplusia)細胞系も、組み換えポリペプチドの発現に使用できる。昆虫細胞中での異種ポリペプチドの生産のためのバキュロウイルス系は、例えば、Luckow et al. (1988) BioTechnology 6:47に総説が述べられている。
E. 関心対象のタンパク質の精製
関心対象の精製されたタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、適当な宿主/ベクター系を培養し、本発明のDNAの組み換え翻訳産物を発現させ、それを培地または細胞抽出物から精製することにより調製できることを、当業者は理解するだろう。例えば、組み換えポリペプチドを培養培地中に分泌する系の上清は、まず、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットのような、市販のタンパク質濃縮フィルターを用いて濃縮できる。濃縮段階の後に、濃縮物を適当な精製マトリックスにかける。例えば、適当なアフィニティマトリックスには、適当な支持体に結合した、カウンター構造タンパク質(すなわち、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質が、構造に基づく特異的相互作用によって結合するタンパク質)またはレクチンまたは抗体分子が含まれる可能性がある。
または、垂れ下がったジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは基質のような、陰イオン交換樹脂も使用できる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、ポリスチレン、セファロース、またはタンパク質精製に一般的に使用される他の種類で良い。または、陽イオン交換段階も使用できる。適当な陽イオン交換剤には、スルホプロピルまたはカルボキシメチル基、好ましくはスルホプロピル基を含む、さまざまな不溶性マトリックスが含まれる。ゲル濾過クロマトグラフィーも、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の精製手段を提供する。本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、好ましくは、例えば、monoQカラムまたはQセファロース高速クロマトグラフィーを用いて、陰イオン交換クロマトグラフィーによって、精製される。
アフィニティクロマトグラフィーも、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の好ましい精製方法である。例えば、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に対するモノクローナル抗体は、当技術分野で周知の方法を用いたアフィニティクロマトグラフィー精製に有用な場合がある。
最後に、疎水性RP-HPLC媒質(例えば、垂れ下がったメチルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲル)を用いた、1つまたは複数の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)は、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をさらに精製するために使用できる可能性がある。以上の精製段階のいくつかまたはすべては、さまざまな組み合わせで、均一な組み換えタンパク質またはポリペプチドを提供するためにも使用できる可能性がある。
細菌培養で生産された組み換えタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、まず細胞沈殿物から抽出し、その後、1つまたは複数の濃縮、脱塩、水性イオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィー段階により、精製できる可能性がある。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、最後の精製段階で使用できる場合がある。組み換えタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の発現に使用された微生物細胞は、凍結融解サイクル、音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む、任意の好都合な方法によって、破壊できる。
分泌タンパク質としてタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を発現する酵母細胞の発酵は、精製を大幅に簡素化する。大規模発酵から得られる分泌された組み換えタンパク質は、Urdal et al. (1984) J. Chromatog. 296:171によって開示された方法と類似した方法によって精製できる。この参考文献は、調製用HPLCカラムを用いた組み換えヒトGM-CSFの精製のための、2つの連続した逆相HPLC段階を記述している。
組み換え培養で合成されたタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の調製物は、培養からタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を回収するために用いられた精製段階に依存した量および特徴で、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質ではない、タンパク質を含む細胞成分を含む可能性がある。これらの成分は、通常は酵母、原核生物または非ヒト真核生物由来である。そのような調製物は、通常は、関心対象のタンパク質が由来する種の中で天然で見られるような、関心対象のタンパク質に通常結合している場合がある他のタンパク質は含まない。
自動合成は、本発明のタンパク質およびポリペプチドを調製するための別の方法を提供する。例えば、任意の市販の固相技術、例えば、成長するアミノ酸鎖にアミノ酸が順次付加されるMerrifield固相合成法(Merrifield (1963) J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2146)が使用できる。ポリペプチドの自動合成のための装置は、Applied Biosystems, Inc. (Foster City, CA)のような業者から市販されており、一般に、製造元の指示にしたがって操作できる。
V. 本発明の組成物
本発明のDNAベクターおよびその中の異種核酸配列によってコードされるポリペプチドは、薬学的組成物または免疫学的組成物(すなわち、ワクチン)に都合よく組み込むことができる。薬学的組成物は、ベクターおよび生理学的に許容される担体または賦形剤を含む。ワクチンは、1つまたは複数のそのような化合物または細胞、およびアジュバントまたはリポソーム(これに化合物が取り込まれる)のような免疫刺激剤を含む場合がある。免疫刺激剤は、外来抗原に対する免疫応答(抗体、および/または細胞を介する)を強化するまたは増強する任意の物質で良い。免疫刺激剤の例には、アジュバント、生分解性マイクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクタイド)およびリポソーム(これに化合物が取り込まれる)が含まれる(米国特許第4,235,877号)。ワクチン調製は、一般に、例えばPowell and Newman (1995)に記述されている。本発明の範囲内の薬学的組成物およびワクチンは、生物学的に活性または不活性の、他の化合物も含む可能性がある。例えば、他の腫瘍抗原の1つまたは複数の免疫原性部分は、融合ペプチドに組み込まれて、または別の化合物として、組成物またはワクチン中に存在する場合がある。
特定の態様内では、薬学的組成物およびワクチンは、ヒトのような患者において、血液学的悪性病変に関連するペプチドに特異的なT細胞応答を誘発するように設計されている。一般に、T細胞応答は比較的短いペプチド(例えば、天然の血液学的悪性病変関連ペプチドの連続する23アミノ酸残基、好ましくは連続する4〜16残基、より好ましくは連続する8〜16残基、およびさらに好ましくは連続する8〜10残基)をコードする異種核酸の使用により誘導される。その代わり、または、それに加えて、ワクチンはT細胞応答を選択的に増強する免疫刺激剤を含む可能性がある。すなわち、免疫刺激剤は、抗体応答が増強される量よりも相対的に多く、血液学的悪性病変関連ペプチドに対するT細胞応答のレベルを増強する可能性がある。例えば、CFAのような標準的な油に基づくアジュバントと比較して、T細胞応答を選択的に増強する免疫刺激剤は、血液学的悪性病変関連の陰性対照細胞株と比較して、T細胞の増殖応答を少なくとも2倍、溶解応答を少なくとも10%、および/またはT細胞活性化を少なくとも2倍増強するが、抗体応答の増強は検出されない。異種核酸にコードされるポリペプチドに対するT細胞または抗体応答が増強される量は、本明細書に提供されるような、当技術分野で周知の代表的な技術を用いて決定できる。
薬学的組成物またはワクチンは、上述の1つまたは複数の癌抗原をコードする核酸配列を含み、それによりポリペプチドはインサイチューで生産される可能性がある。上記のように、DNAは、核酸発現系、細菌およびウイルス発現系、ならびに哺乳動物発現系を含む、当業者に周知のさまざまな送達系内に、存在する可能性がある。当技術分野では、数多くの遺伝子送達技術が周知である(Rolland, 1998、およびその参考文献)。適当な核酸発現系は、患者中での発現に必要なDNA、cDNA、またはRNAを含む(例えば適当なプロモーターおよび終結シグナル)。細菌発現系は、細胞表面にペプチドの免疫原性部分を発現する、またはそのようなエピトープを分泌する細菌(例えばカルメット-ゲラン桿菌(Bacillus-Calmette-Guerrin))の投与を含む。好ましい態様では、DNAはウイルス発現系(例えば、ワクシニアまたは他のポックスウイルス、レトロウイルス、またはアデノウイルス)を用いて導入されるが、ここで非病原性(欠損のある)の、複製可能ウイルスが使用される可能性がある(Fisher-Hoch et al., 1989; Flexner et al., 1989; Flexner et al., 1990: 米国特許第4,603,112号、米国特許第4,769,330号、米国特許第5,017,487号; 国際特許出願公開公報番号WO 89/01973; 米国特許第4,777,127号; 英国特許番号GB 2,200,651; 欧州特許番号EP 0,345,242; 国際特許出願公開公報番号WO 91/02805; Berkner, 1988; Rosenfeld et al., 1991; Kolls et al., 1994; Kass-Eisler et al., 1993; Guzman et al., 1993a; およびGuzman et al., 1993)。そのような発現系にDNAを組み込む技術は、当技術分野で周知である。ワクチンはポリヌクレオチドおよびペプチド成分の両方を含む可能性があることは明らかだろう。そのようなワクチンは、増強された免疫応答を提供する可能性がある。
本教示により、ワクチンは薬学的に許容される担体を含む可能性があることは、当業者には明らかだろう。「薬学的にまたは薬理学的に許容される」という用語は、動物、またはヒトに適切に投与されたときに、有害な、アレルギー性の、または他の重大な有害反応を引き起こさないような分子および組成物をさす。本明細書では「薬学的に許容される担体」には、任意のすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。薬学活性のある物質のためにそのような媒体および物質を使用することは、当技術分野で周知である。任意の通常の媒体または物質が活性成分と適合しない場合を除き、治療用組成物におけるその使用は予期される。ヒトへの投与では、調製物はFood and Drug Administration Office of Biologics standardsの要求する、無菌性、発熱原性、ならびに一般的安全性および純度の基準に適合する必要がある。追加の活性成分も、組成物に組み入れられる場合がある。
本発明の薬学的組成物には、当技術分野で周知の任意の適当な担体が使用できるが、担体の種類は、投与経路によって異なる。本発明の組成物は、例えば、局所、経口、経鼻、静脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下、または筋肉内投与を含む、任意の適当な投与方法のために調製できる。皮下注射のような非経口投与には、好ましくは担体は、水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ろう、または緩衝液を含む。経口投与には、上記の任意の担体、またはマンニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、および炭酸マグネシウムのような、固体担体が使用できる。生分解性マイクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ポリグリコレート)も、本発明の薬学的組成物の担体として利用できる。適当な生分解性マイクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号; 同第5,075,109号; 同第5,928,647号; 同第5,811,128号; 同第5,820,883号; 同第5,853,763号; 同第5,814,344号および同第5,942,252号に開示されている。特定の局所適用には、周知の成分を用いたクリームまたはローションのような製剤が好ましい。
そのような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)、糖質(例えば、グルコース、マンノース、スクロース、またはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ペプチド、またはグリシンのようなアミノ酸、抗酸化剤、静菌薬、EDTAのようなキレート剤、またはグルタチオン、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、製剤をレシピエントの血液と等張、低張、またはわずかに高張にする溶質、懸濁化剤、濃厚化剤、および/または保存剤も含む可能性がある。または、本発明の組成物は、凍結乾燥物として調製されるか、 1つまたは複数のリポソーム、マイクロスフェア、ナノ粒子、または周知の技術を用いた微粉化送達系として調製されても良い。
本発明のワクチン組成物の調製には、アジュバントのような、任意の免疫刺激剤が使用できる。大部分のアジュバントは、水酸化アルミニウムまたは鉱油のような、抗原を迅速な異化作用から守るように設計された物質、およびリピドA、百日咳菌(Bortadella pertussis)または結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のタンパク質のような免疫応答の刺激剤を含む。適当なアジュバントは、例えば、ミョウバンに基づくアジュバント(例えば、Alhydrogel, Rehydragel, リン酸アルミニウム、Algammulin, 水酸化アルミニウム)、油に基づくアジュバント(フロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, MI)、Specol, RIBI, TiterMax, Montanide ISA50またはSeppic MONTANIDE ISA 720);非イオン性ブロックコポリマーに基づくアジュバント、サイトカイン(例えば、GM-CSFまたはFlat3-リガンド);Merck Adjuvant 65 (Merck and Company, Inc., Rahway, NJ); AS-2 (SmithKline Beecham, Philadelphia, PA); カルシウム、鉄、または亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;陽イオンまたは陰イオン被覆多糖類;ポリホスファゼン;生分解性マイクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびQuil Aとして、市販されている。GM-CSFまたはインターロイキン-2, -7, または-12のようなサイトカインも、アジュバントとして使用できる。
ヘモシアニンおよびヘモエリスリンも、本発明で使用できる。スカシガイから得られるヘモシアニンの使用は特に好ましいが、他の軟体動物および節足動物のヘモシアニン(KLH)およびヘモエリスリンも使用できる。さまざまな多糖類アジュバントも使用できる。脱アセチル化キチンを含む、キチンおよびキトサンのような、多糖類のポリアミン種は特に好ましい。
別の好ましいアジュバントは、細菌のペプチドグリカンの、ムラミールジペプチド(MDP, N-アセチルムラミール-L-アラニル-D-イソグルタミン)群である。アミノ酸誘導体スレオニル-MDPおよび脂肪酸誘導体MTPPEのような、ムラミールジペプチドの誘導体も予期される。
米国特許第4,950,645号は、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールから形成された人工リポソームに使用することが提案される、ムラミールジペプチドの親油性2糖-トリペプチド誘導体を記述している。ヒトの単球の活性化および腫瘍細胞の破壊に有効だと言われるが、一般に高用量で非毒性である。米国特許第4,950,645号および国際特許出願公開公報番号WO 91/16347の化合物は、本発明の特定の局面を達成するために使用することも提案される。
BCGおよびBCG細胞壁骨格(CWS)も、トレハロースジミコレートと共に、またはなしで、本発明にアジュバントとして使用できる。トレハロースジミコレート自身を使用することもできる。Azuma et al. (1988)は、マウスにおいて、トレハロースジミコレートの投与は、インフルエンザウイルス感染に対する耐性の増強と相関することを示した。トレハロースジミコレートは、米国特許第4,579,945号に記述されるようにして調製できる。
例えば、サポニンおよびQS21 (Cambridge Biotech)のような誘導体のような、両親媒性物質および界面活性剤は、本発明の免疫原とともに使用する、さらに別の好ましいアジュバント群である。非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤(Rabinovich et al., 1994; Hunter et al., 1991)も利用できる。Yamamoto et al. (1988)によって記述されたようなオリゴヌクレオチドは、別の有用なアジュバント群である。Quil Aおよびレンチネンも、好ましいアジュバントである。
超抗原も、本発明のアジュバントとして使用することが予期される。「超抗原」とは、一般に、抗原のプロセッシングを必要とせず、ペプチド抗原よりも、多くの割合のTリンパ球を刺激する、細菌産物である(Mooney et al., 1994)。超抗原には、ブドウ球菌のエキソタンパク質、例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)および表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)のα、β、γ、およびδエンテロトキシン、ならびに大腸菌のα、β、γ、およびδエキソトキシンが含まれる。
一般的なブドウ球菌のエンテロトキシンは、ブドウ球菌エンテロトキシンA (SEA)およびブドウ球菌エンテロトキシンB (SEB)として知られており、エンテロトキシンE (SEE)までが記述されている(Rott et al., 1992)。化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes) B (SEB)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)エンテロトキシン(Bowness et al., 1992)、化膿性連鎖球菌の細胞質膜結合タンパク質(CAP)(Sato et al., 1994)、および黄色ブドウ球菌のトキシックショック症候群毒素-1 (TSST-1)(Schwab et al., 1993)も、有用な超抗原である。
本発明に使用するために特に好ましいアジュバントの1つの群は、米国特許第4,866,034号の精製解毒エンドトキシンのような、解毒されたエンドトキシンである。これらの精製解毒エンドトキシンは、哺乳動物においてアジュバント反応を生産するために有効である。
解毒エンドトキシンは、他のアジュバントと組み合わせても良い。米国特許第4,435,386号に記述されるように、解毒エンドトキシンとトレハロースジミコレートとの組み合わせは予期される。解毒エンドトキシンとトレハロースジミコレートおよびエンドトキシンの糖脂質の組み合わせ(米国特許第4,505,899号)、ならびに米国特許第4,436,727号、同第4,436,726号、および同第4,505,900号に記述されるように、解毒エンドトキシンと細胞壁骨格(CWS)またはCWSとトレハロースジミコレートの組み合わせも、予期される。CWSとトレハロースジミコレートのみの組み合わせで解毒エンドトキシンを含まないものも、米国特許第4,520,019号に記述されるように、やはり有用だと予見される。
MPLは、現在、本明細書に使用するための1つの好ましい免疫増強剤である。MPLの使用に関する参考文献には、各々、加齢マウスの反応におけるMPLの特定の役割に関するTomai et al. (1987), Chen et al. (1991)、およびGarg and Subbarao (1992);D-ガラクトシダーゼ負荷マウス、およびリポ多糖類およびMPLに対するその感受性の上昇に関するElliott et al. (1991);細菌の感染に関するChase et al. (1986);およびトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)に対するマウスの耐性に対するMPLおよびエンドトキシンの効果を記述したMasihi et al. (1988)が含まれる。Fitzgerald (1991)も、ウサギにおいて、梅毒ワクチンの免疫原性をアップレギュレートし、および感染に対する相当な保護を与えるための、MPLの使用を報告している。
Baker et al. (1992)は、リピドAおよびそのアナログが、サプレッサーT細胞活性の発現を消滅させる能力に対する、構造的特徴の影響をさらに解析した。彼らは、リピドA中のリン酸基の数を2から1に低下させ(すなわち、モノホスホリルリピドA、MPLを生成する)、さらに主に3の位置の残基を取り除くことにより、脂肪酸アシル含量を低下させると、毒性が進行性に低下することを報告した;しかし、これらの構造的修飾は、Ts機能の発現を消滅させる能力には、影響を与えなかった(Baker et al., 1992)。これらのタイプのMPLは、本発明で使用するために理想的である。
一般的に関連した研究の中で、Tonamoto et al. (1994a; b; 1995)は、化学合成されたリピドA前駆体において、アセチル化またはスクシニル化の後に、エンドトキシン活性が分離することを記述した。したがって、「アセチル406」および「スクシニル516」のような化合物(Tonamoto et al., 1994a; b; 1995)も、本発明で使用することが予期される。
合成MPLは、特に好ましいアジュバント群である。例えば、Brade et al. (1993)は、抗リピドA MAbに結合する、リピドAのビスホスホリル化グルコサミン2糖骨格を含む人工複合糖質を記述している。これは、本発明の特定の局面で使用する候補の1つである。
米国特許第4,987,237号に記述されるMPL誘導体は、本発明で使用することが特に予期される。米国特許第4,987,237号は、モノホスホリルリピドA核の一次水酸基にエステル基を介して結合した側鎖上に、アミンのような1つまたは複数の遊離基を含む、MPL誘導体を記述している。誘導体は、カップリング剤を通して、リピドAをさまざまな生物活性のある材料に対して、カップリングする都合の良い方法を提供する。リピドAの免疫刺激特性は、維持される。米国特許第4,987,237号に記載のすべてのMPL誘導体は、本発明のMPLアジュバントの組込まれた細胞に使用することが予期される。
ヒトに一般的に使用されないものでも、さまざまなアジュバントが、例えば、抗体を作製したい、またはその後に活性化T細胞を得たい場合に、動物で使用される可能性がある。例えば、非照射腫瘍細胞を用いた場合に起きるような、細胞またはアジュバントのいずれかに起因する毒性または他の有害効果は、そのような場合には問題ではない。
本明細書で提供されるワクチン中では、アジュバント組成物は、好ましくは主にTh1タイプの免疫応答を誘導するように設計される。高レベルのTh1タイプのサイトカイン(例えば、IFNγ、TNFα、IL-2、およびIL-12)は、投与された抗原に対して、主に細胞性の免疫応答を誘導する傾向がある。反対に、高レベルのTh2タイプのサイトカイン(例えば、IL-4, IL-5, IL-6, およびIL-10)は、主に液性免疫応答を誘導する傾向がある。本明細書のワクチンの投与後に、患者はTh1およびTh2タイプの応答を含む免疫応答を示すだろう。応答が主にTh1タイプである好ましい態様内では、Th1タイプのサイトカインのレベルは、Th2タイプのサイトカインのレベルよりも、大きく上昇する。これらのサイトカインのレベルは、標準的な測定法を用いて、容易に評価できる。サイトカインのファミリーの総説は、例えば、Mosmann and Coffman (1989)を参照されたい。
主にTh1タイプの応答を誘発するために使用する好ましいアジュバントには、例えば、モノホスホリルリピドA、好ましくは3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)と、アルミニウム塩の組み合わせが含まれる。MPLアジュバントは、Corixa Corporation (Seattle, WA;例えば、各々が参照により全体として本明細書に組み入れられる米国特許第4,436,727号; 同第4,877,611号; 同第4,866,034号、および同第4,912,094号を参照されたい)から入手できる。CpG含有オリゴヌクレオチド(CpGジヌクレオチドはメチル化されていない)も、主にTh1応答を誘導する。そのようなオリゴヌクレオチドは周知であり、例えば、国際特許出願公開公報番号WO 96/02555および国際特許出願公開公報番号WO 99/33488に記述されている。免疫刺激DNA配列も、例えば、Sato et al. (1996)に記述されている。別の好ましいアジュバントは、サポニン、好ましくはQS21 (Aquila Biopharmaceuticals Inc., Framingham, MA)であり、単独または他のアジュバントと組み合わせて使用できる。例えば、増強システムは、QS21と3D-MPLの組み合わせのような(例えば、国際特許出願公開公報番号WO 94/00153を参照されたい)、モノホスホリルリピドAおよびサポニン誘導体の組み合わせ、またはQS21がコレステロールで抑えられている、より反応の弱い組成物(例えば、国際特許出願公開公報番号WO 96/33739を参照されたい)を含む。他の好ましい製剤は、水中油型乳剤およびトコフェロールを含む。水中油型乳剤中のQS21, 3D-MPL、およびトコフェロールを含む特に強力なアジュバント製剤も、記述されている(例えば、国際特許出願公開公報番号WO 95/17210を参照されたい)。
他の好ましいアジュバントには、Montanide ISA 720 (Seppic), SAF (Chiron), ISCOMS (CSL), MF-59 (Chiron), Detox (Corixa Corporation), RC-529 (Corixa Corporation), およびアミノアルキルグルコサミン4リン酸(AGP)が含まれる。
本明細書に提供される任意のワクチンは、1つまたは複数の抗原、1つまたは複数の免疫刺激剤またはアジュバント、および1つまたは複数の適当な担体、賦形剤、または薬学的に許容される緩衝液を提供するような周知の方法を用いて、調製できる。本明細書に記述される組成物は、徐放製剤(すなわち、投与後に化合物を徐々に放出する効果を示す、カプセル、スポンジ、またはゲル[例えば、多糖類を含む]のような製剤)の一部として投与しても良い。そのような製剤は、一般に、周知の技術(Coombes et al., 1996)を用いて調製でき、例えば、経口、経直腸、または皮下埋め込み、または所望の標的部位への埋め込みにより、投与できる。徐放製剤は、担体マトリックスに分散、および/または速度制御膜に取り囲まれたレザバー内に含まれた、ペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体を含む可能性がある。
そのような製剤内に使用される担体は、好ましくは生体適合性があり、生分解性の場合もある;好ましくは、製剤からの活性成分の放出レベルは比較的一定である。そのような担体には、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)の微粒子、ならびにポリアクリレート、ラテックス、でんぷん、セルロース、デキストランが含まれる。他の放出遅延担体には、非脂質親水性コア(例えば、架橋された多糖類またはオリゴ糖)を含む超分子バイオベクター、および任意で、リン脂質のような両親媒性化合物を含む外層を含む(米国特許第5,151,254号; 国際特許出願公開公報番号WO 94/20078; 国際特許出願公開公報番号WO 94/23701; および国際特許出願公開公報番号WO 96/06638)。徐放製剤に含まれる活性化合物の量は、埋め込み部位、放出速度および期待される持続時間、ならびに治療または予防する疾患の性質に依存する。
併用療法も予期され、単剤および併用剤の両方に、同じ種類の基礎となる薬学的組成物を利用できる。ワクチンおよび薬学的組成物は、密封したアンプルまたはバイアルのような単位用量および複数回用量の容器で提供できる。そのような容器は、好ましくは、使用時まで製剤の無菌性を保持するために、密封されている。一般に、製剤は、油性または水性の媒体中の懸濁液、溶液、または乳剤として保存される可能性がある。または、ワクチンまたは薬学的組成物は、凍結乾燥された状態で保存され、使用直前に無菌の液体担体を添加すれば良い場合がある。
VI. 発現ベクターを含む薬学的組成物の投与
いくつかの態様では、本明細書で開示される発現ベクターを含む薬学的組成物は、癌を有する個体、通常は、哺乳動物、例えば、ヒト、チンパンジー、イヌ、またはネコに送達できる。
A. 経口送達
特定の用途では、本明細書で開示される発現ベクターを含む薬学的組成物は、経口投与を介して個体に送達される。これらの組成物は、不活性な希釈剤、または同化できる食用担体と調剤されるか、またはハードもしくはソフトシェルのゼラチンカプセル中に封入されるか、錠剤中に圧縮されるか、食事の食物中に直接取り入れられている可能性がある。
活性化合物は、賦形剤中に組込まれ、摂取可能な錠剤、口腔錠、口内錠、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤等の形態中で使用できる(Mathiowitz et al., 1977; Hwang et al., 1998; 米国特許第5,641,515号; 米国特許第5,580,579号、および米国特許第5,792,451号)。錠剤、口内錠、丸薬、カプセル等も、以下を含む可能性がある:トラガント、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチンのような結合剤;リン酸2カルシウムのような賦形剤;コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、アルギン酸等のような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;およびスクロース、ラクトース、もしくはサッカリンのような甘味料、またはペパーミント、冬緑油、もしくはチェリー風味のような香料も添加できる。剤形がカプセルの場合には、上述のタイプの材料に加えて、液体担体を含む場合がある。コーティングとして、または剤形の物理的形状を変化させるために、さまざまな他の材料も存在する場合がある。例えば、錠剤、丸薬、またはカプセルは、セラック、糖、またはその両方でコーティングしてもよい。エリキシルのシロップは、活性化合物、甘味料としてスクロース、保存料としてメチルおよびプロピルパラベン、チェリーまたはオレンジ風味の色素および香料を含む場合がある。もちろん、任意の剤形を調製するために使用する任意の材料は、薬学的に純粋で、使用される量においては実質的に非毒性である必要がある。さらに、活性化合物は徐放性の試料および製剤に組込まれている可能性がある。
通常、これらの製剤は、少なくとも約0.1%またはそれ以上の活性化合物を含むが、当然、活性成分の割合はさまざまな可能性があり、都合よく製剤全体の重量または体積の約1または2%と約60%または70%の間またはそれ以上である場合がある。当然、治療に有用な各組成物中の活性化合物の量は、化合物の任意の単位用量中に、適当な用量が得られるように、調製できる。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品の寿命、ならびに他の薬学的検討事項も、そのような薬学的製剤の調製分野の当業者は熟慮し、そのため、さまざまな用量および治療プログラムが望ましい場合がある。
または、本発明の組成物は、経口投与のためにマウスウォッシュ、歯みがき剤、口腔錠、口腔スプレー、舌下の経口投与製剤の形で、1つまたは複数の賦形剤と組込まれても良い。例えば、マウスウォッシュは、必要量の活性成分を、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)のような適当な溶媒中に取り込んで調製できる。または、活性成分は、ホウ酸ナトリウム、グリセリン、および炭酸水素カリウムを含むような経口液剤に取り込まれるか、歯みがき剤中に分散するか、または、水、結合剤、研磨材、香料、発泡剤、および湿潤薬を含む可能性のある組成物中に、薬学的有効量が添加される場合がある。または、組成物は、舌の下に入れるか、または口中で溶解するような錠剤または溶液に形成されても良い。
B. 注射剤の送達
特定の状況では、本明細書に開示される薬学的組成物を、米国特許第5,543,158号; 米国特許第5,641,515号および米国特許第5,399,363号に記述されるように、非経口的、静脈内、筋肉内、または腹腔内で送達することが望ましい。活性化合物の溶液は、遊離塩基または薬学的に許容される塩として、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適切に混合した水中で調製できる。分散も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物ならびに油の中で、調製できる。通常の保存および使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を予防するために、保存剤を含んでいる。
注射剤に適した薬学的形状には、無菌水溶液もしくは分散、および無菌注射液または分散の即時調合剤のための無菌粉末が含まれる(米国特許第5,466,468号)。すべての場合に、形態は無菌で、容易に注射器で注入できる程度に液体である必要がある。製造および保存条件下で安定で、細菌や真菌のような微生物の汚染活動に対して保護されなくてはならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、その適当な混合物、および/または植物油を含む、溶媒または分散媒体であり得る。例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散の場合には必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により、適当な流動性が維持できる。微生物の活動の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等のようなさまざまな抗菌および抗真菌剤によって、容易にできる。多くの場合、例えば、糖または塩化ナトリウムのような等張剤を含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような、吸収遅延剤を組成物中に使用することにより、可能になる。
水溶液中における非経口投与のためには、例えば、必要ならば溶液は適切に緩衝し、液体希釈剤はまず十分な生理食塩水またはグルコースを用いて等張にする。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適している。この関連で、利用できる無菌水性媒体は、本開示に照らし合わせて、当業者に周知となるだろう。例えば、1つの用量は、1 mlの等張NaCl溶液に溶解し、1000 mlの皮下注入液に添加するか、提案される注入部位に注入される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Edition, pp. 1035-1038および1570-1580を参照されたい)。必然的に、治療する対象の状態によって、いくらかの投薬の変化は起きるだろう。いずれにしろ投与の責任者は、各対象のための適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与については、調製物はFDA Office of Biologics standardsの要求する、無菌性、発熱原性、ならびに一般的安全性および純度の基準に適合する必要がある。
無菌注射溶液は、必要な量の活性化合物を、上記のさまざまな他の成分とともに、適当な溶媒中に取り込み、その後、フィルター滅菌することによって、調製される。一般に、分散は、さまざまな無菌活性成分を、上記の、基礎となる分散媒体および必要な他の成分を含む無菌媒体に取り込むことによって、調製できる。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合は、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術で、活性成分、およびその前にフィルター滅菌した溶液自身から得られる任意の他の所望の成分の粉末が得られる。
本明細書に開示される組成物は、中性または塩の形態で調合できる。薬学的に許容される塩は酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)を含み、これは例えば、塩酸またはリン酸のような無機酸で形成されるか、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等のような有機酸で形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩も、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第2鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等のような有機塩基から得られる。調合後、溶液は製剤に適した方法で、治療に有効量が投与される。製剤は、注射溶液、薬剤放出カプセル等のような、さまざまな剤形で簡単に投与できる。
本明細書で使用される「担体」は、すべての溶媒、分散媒体、媒体、コーティング、希釈剤、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁剤、コロイド等を含む。薬学的に活性な物質のためにそのような媒体および物質を使用することは、当技術分野で周知である。通常の媒体または物質が活性成分と不適合な場合を除き、治療用組成物におけるその使用は、予期される。補助的な活性成分も、組成物に組み入れることができる。
「薬学的に許容される」という用語は、ヒトに投与されたときに、アレルギー性またはそれに類似した有害な反応を誘発しない、分子および組成物をさす。活性成分としてタンパク質を含む水性組成物の調製は、当技術分野で周知である。通常は、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかの注射剤として調製される;注射の前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体の形態も、調製できる。調製物は、乳化しても良い。
C. 経鼻送達
特定の態様では、薬学的組成物は鼻腔内スプレー、吸引、および/またはエアゾル送達媒体によって送達できる。鼻腔エアゾルスプレーを介して肺に直接、遺伝子、核酸、およびペプチドを送達する方法は、例えば、米国特許第5,756,353号および米国特許第5,804,212号に記述されている。同様に、鼻腔内微粒子樹脂(Takenaga et al., 1998)およびリソホスファチジルグリセロール化合物(米国特許第5,725,871号)を用いた薬物の送達も、薬学分野で周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持体基質の形態での経粘膜薬物送達は、米国特許第5,780,045号に記述されている。
D. リポソーム、ナノカプセル、および微粒子を介した送達
特定の態様では、発明者らは適当な宿主細胞への本発明の組成物の導入のために、リポソーム、ナノ粒子、微粒子、マイクロスフェア、脂質粒子、小胞等を使用することを予期している。特に、本発明の組成物は脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、またはナノ粒子等に被包されて送達されるように、調合できる。
そのような製剤は、本明細書に開示される核酸または構築物の、薬学的に許容される製剤の導入に好ましい場合がある。リポソームの形成および使用は、一般に当技術分野で周知である(例えば、Couvreur et al., 1977; Couvreur, 1988; 細胞内細菌感染および疾患のための、標的を定めた抗生物質治療におけるリポソームおよびナノ粒子の使用を記述したLasic, 1998を参照されたい)。最近、血清安定性および循環半減期を改善したリポソームが開発された(Gabizon & Papahadjopoulos, 1988; Allen and Choun, 1987; 米国特許第5,741,516号)。さらに、潜在的な薬剤担体としてのリポソームおよびリポソーム様調製品のさまざまな方法が、総説されている(Takakura, 1998; Chandran et al., 1997; Margalit, 1995; 米国特許第5,567,434号; 米国特許第5,552,157号; 米国特許第5,565,213号; 米国特許第5,738,868号および米国特許第5,795,587号)。
T細胞懸濁、初代肝細胞培養、およびPC12細胞を含む、他の手順によるトランスフェクションに通常は抵抗性のあるいくつかの種類の細胞に、リポソームは使用され、成功してきた(Renneisen et al., 1990; Muller et al., 1990)。さらに、リポソームには、通常ウイルスに基づく送達系に見られるようなDNAの長さの制限がない。リポソームは、遺伝子、薬剤(Heath & Martin, 1986; Heath et al., 1986; Balazsovits et al., 1989; Fresta & Puglisi, 1996)、放射線療法剤(Pikul et al., 1987)、酵素(Imaizumi et al., 1990a; Imaizumi et al., 1990b)、ウイルス(Faller & Baltimore, 1984)、転写因子およびアロステリックエフェクター(Nicolau & Gersonde, 1979)をさまざまな培養細胞株および動物に導入するために、効果的に使用されてきた。さらに、リポソームを介した薬物送達の効果を調べるいくつかの臨床試験が成功裏に完了している(Lopez-Berestein et al., 1985a; 1985b; Coune, 1988; Sculier et al., 1988)。さらに、いくつかの研究では、リポソームの使用が、全身送達後に、自己免疫応答、毒性、または生殖腺局在を伴わないことが示唆されている(Mori & Fukatsu, 1992)。
リポソームは、水性媒体中に分散したリン脂質から形成され、自然に多重層の同心性2重膜小胞を形成する(多重層リポソーム(MLV)とも呼ばれる)。MLVは一般に25 nmから4μmの直径を有する。MLVを音波処理すると、200〜500Åの範囲の直径を持ち、中心に水溶液を含む小単層小胞(small unilamella vesicle (SUV))が形成される。
リポソームは細胞膜と類似しており、本発明に関連してペプチド組成物の担体として使用されると予測される。水溶性および脂溶性物質の両方を、それぞれ水性空間および2重膜自身に封じ込めることができるため、広い適合性がある。リポソーム製剤を選択的に修飾することにより、薬剤運搬リポソームを、活性薬剤の部位特異的送達のために使用することも可能である。
リポソーム製剤の作製には、Couvreur et al. (1977; 1988)の教示に加え、以下の情報も利用できる。リン脂質は、水中に分散したときに、水に対する脂質のモル比に依存して、リポソーム以外のさまざまな構造を形成し得る。比率が低い場合には、リポソームが好ましい構造である。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および2価の陽イオンの存在に依存する。リポソームは、イオン性および極性物質に対しては、ゆっくりした低い透過性を示し得るが、温度が上昇すると相転移が起き、透過性が著しく変化する。相転移では、ゲル状態として知られる密に詰まった規則正しい構造から、流体状態として知られる緩く詰まった規則の緩い構造に変化する。これは、特徴的な相転移温度で起こり、その結果としてイオン、糖、および薬剤に対する透過性が上昇する。
温度に加えて、タンパク質への暴露でも、リポソームの透過性は変化し得る。チトクロームcのような特定の可溶性タンパク質は、2重膜に結合し、変形させ、貫通し、それにより透過性を変化させる。コレステロールは、見掛け上リン脂質をさらに密に詰まらせて、タンパク質の貫通を阻害する。抗生物質および阻害剤の送達に最も有用なリポソーム形成は、コレステロールを含むと予測される。
溶質を保持する能力は、リポソームのタイプによって異なる。例えば、MLVは溶質を保持する効率は中程度であるが、SUVは極度に効率が悪い。しかし、SUVによってサイズ分布における均一性および再現性という利点が提供され、サイズと保持効率の妥協は、大単層小胞(large unilamella vesicle (LUV))によって提供される。これらは、エーテル蒸発によって調製され、MLVと比較して、溶質の保持では3〜4倍効率が良い。
リポソームの特性に加えて、化合物の保持の点で重要な決定因子は、化合物自身の物理化学的性質である。極性化合物は、水性空間に保持され、非極性化合物はリポソームの脂質2重層に結合する。極性化合物は、透過によるか、2重層が破壊されたときに放出されるが、非極性化合物は温度またはリポタンパク質への暴露によって破壊されない限り、2重層に結合したままである。いずれのタイプも、相転移温度において、最大の流出速度を示す。
リポソームは、4つの機序で細胞と相互作用をする:マクロファージおよび好中球のような細網内皮系の貪食細胞によるエンドサイトーシス;非特異的な弱い疎水性の力もしくは静電力、または細胞表面成分との特異的相互作用のいずれかによる細胞表面への吸着; リポソームの脂質2重層の形質膜への挿入による、形質細胞膜との融合と、同時に起こる細胞質へのリポソーム内容物の放出;およびリポソーム脂質の細胞膜もしくは細胞内の膜への移動、またはその逆で、リポソーム内容物の結合はない。どの機序が作用するかを決定することは困難な場合が多く、複数の機序が同時に作用する場合もある。
静脈内注射されたリポソームの運命および処理は、そのサイズ、流動性、および表面電荷のような物理的性質に依存する。組成によっては、何時間または何日も組織中に残る場合もあり、血中半減期は数分から数時間までの範囲がある。MLVおよびLUVのような大きなリポソームは、細網内皮系の貪食細胞によって迅速に取り込まれるが、循環器系の生理のために、大部分の部位では、そのような大きな種が出ることは制限される。肝臓または脾臓の洞様血管のような毛細血管内皮に大きな開口部または孔が存在する場所のみで、出ることができる。したがって、これらの臓器は取り込みの際立った部位である。それに対して、SUVはより広い組織分布を示すが、それでも肝臓および脾臓に多く隔離されている。一般に、このインビボの振る舞いは、リポソームの潜在的標的を、これらの大きなサイズにアクセスできる臓器および組織にのみ、制限する。これには、血液、肝臓、脾臓、骨髄、およびリンパ器官が含まれる。
一般に、ターゲッティングは本発明の制限にはならない。しかし、特定のターゲッティングが望ましい場合には、それを実現するための方法が利用できる。抗体を使用して、リポソームの表面に結合し、特定のタイプの細胞表面に存在する特異的抗原受容体に抗体および薬剤の内容物を方向づけることができる。糖質の抗原決定基(細胞間認識、相互作用、および接着に関与する、糖タンパク質または糖脂質細胞表面成分)も、リポソームを特定の細胞タイプに方向づける潜在力を有するため、認識部位として使用できる。大部分の場合、リポソーム調製品の静脈内注射が使用されると予測されるが、他の投与経路も考えられる。
または、本発明は、本発明の組成物の、薬学的に許容されるナノカプセル製剤を提供する。ナノカプセルは一般に、安定で再現性のあるやり方で、化合物を捕獲することができる(Henry-Michelland et al., 1987; Quintanar-Guerrero et al., 1998; Douglas et al., 1987)。細胞内重合による過負荷による副作用を避けるために、そのような超微粒子(約0.1μmのサイズ)は、インビボで分解できるポリマーを用いて設計する必要がある。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキルシアノアクリレートナノ粒子は、本発明での使用が予測される。そのような粒子は、記述されるようにして(Couvreur et al., 1980; 1988; zur Muhlen et al., 1998; Zambaux et al., 1998; Pinto-Alphandry et al., 1995、および米国特許第5,145,684号)簡単に作製できる。
VII. 結合剤
さらに本発明は、本発明の発現ベクター中の異種核酸によってコードされる癌抗原また癌遺伝子に特異的に結合する、抗体およびその抗原結合断片のような、薬剤を提供する。本明細書では、抗体またはその抗原結合断片は、検出可能レベル、すなわち、バックグラウンドシグナル(例えば、ELISAで)の少なくとも2倍のレベルで、そのタンパク質(すなわち、癌抗原または癌遺伝子)と反応し、同様な条件下で無関係のタンパク質と検出できるレベルで反応しなければ、「特異的に結合する」と言われる。本明細書では、「結合」とは、複合体が形成されるような、2つの別の分子の間の非共有結合をさす。結合する能力は、例えば、複合体の形成の結合定数を決定することにより、評価できる。結合定数は、複合体の濃度を、成分の濃度の積で除したときに得られる値である。一般に、本明細書の文脈では、複合体の形成の結合定数が約103 l/molを越えると、2つの化合物は「結合する」と言われる。結合定数は、当技術分野で周知の方法を用いて決定できる。
結合剤は、本明細書に提供される代表的な測定法を用いて、乳癌、卵巣癌、大腸癌、肺癌、または前立腺癌のような癌を有する患者と有しない患者を区別する能力も有する場合がある。すなわち、特定のタンパク質(すなわち、癌抗原)に結合する抗体または他の結合剤は、疾患を有する患者の少なくとも約20%において癌の存在を示すシグナルを生成し、癌を有しない患者の少なくとも約90%で、疾患のないことを示す陰性シグナルを生成する。結合剤がこの要件を満たすかどうかを決定するためには、癌を有する患者と有しない患者(標準的な臨床検査を用いて決定)から得られる生体試料(例えば、血液、血清、血漿、尿、および/または腫瘍生検)を、本明細書に記述のようにして、結合剤に結合するポリペプチドの存在について測定すれば良い。統計的に有意な数の、疾患を有する試料および有しない試料が測定される必要があるのは、明らかだろう。各結合剤は、上記の基準を満たすべきである;しかし、当業者は、感度を改善するために、組み合わせて使用できることを認識するだろう。
上記の要件を満たす任意の薬剤は、結合剤である可能性がある。例えば、結合剤はペプチド成分を持つもしくは持たないリボゾーム、RNA分子、またはポリペプチドであり得る。好ましい態様では、結合剤は抗体またはその抗原結合断片である。抗体は、当業者によって既知の任意の多様な技術により調整されうる(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)を参照)。一般に、抗体は、本明細書に記述されたモノクローナル抗体の作製を含む細胞培養技術、または、組み換え抗体の生産を可能にするための、適当な細菌または哺乳動物細胞宿主への抗体遺伝子のトランスフェクションによって、生産できる。1つの技術では、例えば、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の各ポリペプチドの間の接合部に対応する配列(「接合部領域」と呼ばれる)、または融合ポリペプチドを含む免疫原を、まず、広範囲の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ラビット、ヒツジ、またはヤギ)のいずれかに注入する。この段階では、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、もしくは融合タンパク質、または本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の接合部領域は、修飾なしに免疫原として働く場合がある。または、特に比較的短い配列に関して、ウシ血清アルブミンまたはスカシガイのヘモシアニンのような担体タンパク質に配列が連結されていると、より強い免疫応答が誘発される可能性がある。好ましくは、1回またはそれ以上のブースター免疫を組込んだ、事前に決められたスケジュールにしたがって、免疫原は動物宿主に注射され、動物から定期的に採決する。その後、融合ポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体は、そのような抗血清から、例えば、適当な固相支持体に結合した融合ポリペプチドを用いたアフィニティクロマトグラフィーにより精製できる。
本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に対するポリクローナル抗体は、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質と特異的に免疫反応し、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の個々のポリペプチド成分とは反応しないような、ポリクローナル抗体のみを得るために、選択できる。この選択は、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の個々のポリペプチド成分と交差反応する抗体を、取り除くことによって行える。
または、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質のペプチド成分の各々またはすべてを認識する抗体は、本発明の状況で有用である可能性がある。
関心対象の免疫原性融合ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein (1976) Eur. J. Immunol. 6:511-519の技術およびその改良法を用いて、調製できる。簡単に述べると、これらの方法では、所望の特異性(すなわち、関心対象の融合ポリペプチドとの反応性)を有する抗体を生産する能力のある不死細胞株を調製する。そのような細胞株は、例えば、上述の免疫動物から手に入れることができる。その後、例えば、好ましくは免疫動物と同系である、骨髄腫融合パートナーとの融合によって、脾臓細胞を不死化する。さまざまな融合技術が利用できる。例えば、脾臓細胞と骨髄腫細胞を数分間、非イオン性界面活性剤と混合し、その後、ハイブリッド細胞の増殖は支持するが、骨髄腫細胞の増殖は支持しない選択培地上に、低密度で播いても良い。好ましい選択技術は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択を用いるものである。通常は1〜2週間である十分な時間がたつと、ハイブリッドのコロニーが観察される。単コロニーを選択し、その培養上清の、融合ポリペプチドに対する結合活性を測定する。高い反応性と特異性を有するハイブリドーマが好ましい。
モノクローナル抗体は、増殖するハイブリドーマコロニーの上清から、単離できる。さらに、ハイブリドーマ細胞株を、マウスのような適当な脊椎動物宿主の腹腔に注入するような、収率を向上させるためのさまざまな技術を使用しても良い。その後、腹水または血液から、モノクローナル抗体を採取することができる。クロマトグラフィー、ゲル濾過、沈殿、および抽出のような通常の技術によって、抗体から汚染物質を除去できる。本発明の融合ポリペプチドは、例えば、アフィニティクロマトグラフィー段階のような、精製過程で使用しても良い。
特定の態様では、抗体の抗原結合断片が好ましい。そのような断片にはFab断片が含まれ、これは標準的な技術を用いて調製できる。簡単に述べると、プロテインAビーズカラム上のアフィニティクロマトグラフィーにより、ウサギ血清から免疫グロブリンを精製し(Harlow and Lane、上記)、パパインで消化すると、FabおよびFc断片が得られる。FabおよびFc断片は、プロテインAビーズカラム上のアフィニティクロマトグラフィーによって分離できる。
本発明のモノクローナル抗体は、1つまたは複数の治療剤に結合できる。これに適した薬剤には、放射性核種、分化誘発剤、薬剤、毒素、およびその誘導体が含まれる。好ましい放射性核種には、90Y、123I、125I、131I、186Re、188Re、211At、および212Biが含まれる。好ましい薬剤には、メトトレキセート、ならびにピリミジンおよびプリンのアナログが含まれる。好ましい分化誘発剤には、ホルボールエステル、および酪酸が含まれる。好ましい毒素には、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、コレラ毒素、ゲロニン、シュードモナス外毒素、赤痢菌毒素、およびアメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質が含まれる。
治療剤は、直接または間接的に(例えば、リンカー基を介して)、適当なモノクローナル抗体に結合(例えば、共有結合)できる。薬剤と抗体の間の直接の反応は、各々が、相手と反応できる置換基を有する場合に、可能である。例えば、1つの分子のアミノ基またはスルフヒドリル基のような求核基は、他方の、無水物または酸ハロゲン化物のようなカルボニル含有基、または良い脱離基(例えば、ハロゲン化物)を含むアルキル基と、反応できる場合がある。
または、リンカー基を介して、治療剤と抗体を結合させることが望ましい場合がある。リンカー基は、結合能力に干渉するのを避けるため、治療剤から抗体を遠ざけるためのスペーサーの役割を果たすことができる。リンカー基は、治療剤または抗体上の置換基の化学反応性を上昇させ、それにより結合効率を改善する可能性もある。化学反応性が向上すると、向上しなければ使用できないような薬剤、または薬剤上の官能基の使用が容易になることもある。
当業者には、リンカー基として、ホモ官能基およびヘテロ官能基の両方の、さまざまな二官能性または多官能性試薬が利用できることは明らかだろう(Pierce Chemical Co., Rockford, ILのカタログに記載されたような試薬)。カップリングは、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、または酸化糖質残基を通して、行われる。そのような方法を記述した、例えば米国特許第4,671,958号を含む、数多くの参考文献がある。
本発明の免疫複合体の抗体部分から遊離したときに、治療剤の効力が高まる場合には、細胞の内部移行時または内部移行後に、切断され得るリンカー基を使用することが望ましいことがある。いくつもの切断可能なリンカー基が記述されている。これらのリンカー基からの薬剤の細胞内放出の機構には、ジスルフィド結合の還元(例えば、米国特許第4,489,710号)、感光性結合の照射(例えば、米国特許第4,625,014号)、誘導体化したアミノ酸側鎖の加水分解(例えば、米国特許第4,638,045号)、血清補体を介した加水分解(例えば、米国特許第4,671,958号)、および酸触媒加水分解(例えば、米国特許第4,569,789号)が含まれる。
抗体に複数の薬剤を結合するのが望ましい場合がある。1つの態様では、薬剤の複数の分子が、1つの抗体分子に結合される。別の態様では、複数のタイプの薬剤が、1つの抗体に結合される。特定の態様にかかわらず、複数の薬剤を有する免疫複合体は、さまざまな方法で調製できる。例えば、複数の薬剤は、抗体分子に直接結合させるか、結合のための複数の部位を提供するリンカーを使用することができる。または、担体が使用できる。
担体は、直接またはリンカー基を介した共有結合を含む、さまざまなやり方で、薬剤を運ぶことができる。適当な担体には、例えば、アルブミン(例えば、米国特許第4,507,234号)のようなタンパク質、ペプチド、および例えば、アミノデキストラン(例えば、米国特許第4,699,784号)のような多糖類が含まれる。担体は、非共有結合、またはリポソーム小胞のような被包によって、薬剤を運ぶ可能性もある(例えば、米国特許第4,429,008号および同第4,873,088号)。放射性核種薬剤に特異的な担体には、放射性ハロゲン化した小分子およびキレート化合物が含まれる。例えば、米国特許第4,735,792号は、代表的な放射性ハロゲン化小分子およびその合成を開示している。放射性核種のキレートは、金属、または金属酸化物、放射性核種の結合のためのドナー原子として、窒素または硫黄原子を含むキレート剤を含めた、キレート剤から形成できる。例えば、米国特許第4,673,562号は、代表的なキレート剤およびその合成を開示している。
抗体および免疫複合体の投与には、さまざまな経路が使用できる。通常は、投与は静脈内、筋肉内、皮下、または切除した腫瘍の母床中である。抗体/免疫複合体の正確な用量は、使用する抗体、腫瘍上の抗原密度、および抗体のクリアランス速度に依存して変わるのは、明らかだろう。
VIII. T細胞
免疫療法用組成物は、加えて、または代わりに、本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に特異的なT細胞を含み得る。そのような細胞は、一般に、インビトロまたはエクスビボで、標準的な手法を用いて調製できる。例えば、T細胞は患者の骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の1つの画分から、市販の細胞分離系(米国特許第5,240,856号および同第5,215,926号; WO 89/06280; WO 91/16116およびWO 92/07243も参照されたい)を用いて、単離できる。または、T細胞は血縁または非血縁のヒト、非ヒト哺乳動物、細胞株、または培養から得ることもできる。
T細胞は、癌抗原または癌遺伝子、癌抗原もしくは癌遺伝子をコードするポリヌクレオチド、および/またはそのようなポリペプチドを発現する抗原提示細胞(APC)により、刺激できる。そのような刺激は、融合ポリペプチドに特異的なT細胞の生成が可能な条件およびそれに十分な時間、行われる。好ましくは、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、特異的なT細胞の生成を促進するために、マイクロスフェアのような送達媒体内に存在する。
T細胞は、そのペプチドでコートされた標的細胞、またはその融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現する標的細胞を殺す場合に、特定のポリペプチドに特異的だと考えられる。T細胞の特異性は、任意のさまざまな標準的な技術を用いて評価できる。例えば、クロム放出アッセイまたは増殖アッセイでは、陰性対照と比較して、溶解および/または増殖の刺激指数が2倍以上上昇すれば、T細胞の特異性を表す。そのようなアッセイは、例えば、Chen et al. (1994) Cancer Res. 54:1065-1070に記述されるようにして実行できる。または、T細胞の増殖の検出は、さまざまな既知の技術によって実施できる。例えば、T細胞の増殖は、DNA合成の速度の上昇を測定することにより(例えば、トリチウムチミジンによりパルス標識したT細胞を培養し、DNAに取り込まれたトリチウムチミジンの量を測定する)、検出できる。3〜7日間、ポリペプチド(100 ng/ml〜100μg/ml、好ましくは200 ng/ml〜25μg/ml)と接触すると、T細胞の増殖は少なくとも2倍に増加するはずである。上述のように、2〜3時間接触すると、サイトカイン放出レベル(例えば、TNFまたはIFN-γ)が2倍になればT細胞の活性化を表す、標準的なサイトカインアッセイで測定される(Coligan et al., Current Protocols in Immunology, vol. 1, Wiley Interscience, Greene (1998))、T細胞の活性化が起こるはずである。ポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはポリペプチド発現APCに応答して活性化されたT細胞は、CD4+および/またはCD8+であり得る。癌抗原特異的T細胞は、標準的な技術を用いて、増殖させられる。好ましい態様では、T細胞は、患者、または血縁もしくは非血縁ドナーから得られ、刺激および増殖後に、患者に投与される。
治療のためには、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはAPCに応答して増殖するCD4および/またはCD8 T細胞は、インビトロまたはインビボのいずれかで、数を増やすことができる。そのようなT細胞のインビトロ増殖は、さまざまな方法で行える。例えば、T細胞は、インターロイキン2のようなT細胞増殖因子、および/またはポリペプチドを合成する刺激細胞を添加するか、または添加せずに、ポリペプチドに再暴露できる。または、ポリペプチドの存在下で増殖する1つまたは複数のT細胞は、クローニングにより数を増やすことができる。細胞のクローニング方法は当技術分野で周知であり、限界希釈を含む。増殖後、細胞は、例えばChang et al. (1996) Crit. Rev. Oncol. Hematol. 22:213により記述されたようにして、患者に戻すことができる。
IX. 異種核酸によってコードされた免疫応答
A. 免疫応答の検出
本発明の1つの局面では、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質(またはタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)は、異種ポリペプチドが関連する悪性病変において発現するものも含めた、異種ポリペプチドに対する免疫応答を誘導するために用いられる。そのような悪性病変の代表例には、乳癌、卵巣癌、大腸癌、肺癌、および前立腺癌が含まれる。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質によって、タンパク質に対する免疫応答がいったん誘導されると、長期間続き、検査の時に体内にそのタンパク質が存在するか否かに無関係に、免疫後も長期間、検出され得る。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質への反応によって誘導された、タンパク質に対する免疫応答は、CD4またはCD8 T細胞の特異的活性化の存在の有無または増強を調べるか、抗体によって検出できる。例えば、免疫された個体から通常の技術(例えば、末梢血リンパ球のフィコール/ハイパーク密度勾配遠心による)によって単離されたT細胞を、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質とインキュベートする。例えば、T細胞は、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質(通常は、タンパク質全体を5μg/mlまたはそのタンパク質を合成する細胞を計量した数)と37℃で、インビトロにおいて2〜9日(通常は4日)インキュベートできる。対照とするために、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の非存在下で、T細胞試料の一部をインキュベートすることが望ましい可能性がある。
CD4またはCD8 T細胞の特異的活性化は、さまざまな方法で検出できる。特異的T細胞活性化の検出方法には、T細胞の増殖、サイトカイン(例えば、リンフォカイン)の生産、または細胞溶解活性(すなわち、癌抗原タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に特異的な細胞障害性T細胞の生産)の検出が含まれるが、これらに限定されない。CD4 T細胞では、特異的T細胞活性化の検出のための好ましい方法は、T細胞の増殖の検出である。CD8 T細胞では、T特異的細胞活性化の検出のための好ましい方法は、細胞溶解活性の生成の検出である。
T細胞の増殖の検出は、さまざまな既知の技術でも実行できる。例えば、T細胞増殖は、DNAの合成速度の測定により、検出できる。増殖するよう刺激されたT細胞では、DNAの合成速度が上昇する。DNA合成の速度を測定する典型的な方法は、例えば、新しく合成されたDNAに取り込まれるヌクレオシド前駆体であるトリチウムチミジンにより、T細胞の培養をパルス標識することによる。取り込まれたトリチウムチミジンの量は、液体シンチレーション分光光度計を用いて、決定できる。T細胞の増殖を検出する他の方法には、インターロイキン-2 (IL-2)生産、Ca2+流量、または3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムのような色素の取り込みの上昇の測定が含まれる。または、リンフォカイン(例えば、インターフェロンγ)の合成を測定したり、完全なタンパク質に応答できるT細胞の相対数を定量することもできる。
B. 抗体産生の検出
本発明は、T細胞に対する免疫原性に加えて、B細胞も刺激し、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を認識できる抗体を産生させる、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質も対象としている。そのような抗体の検出は、特定の抗原または癌遺伝子が関与している悪性病変を診断する、さらなる方法を提供する。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に特異的な抗体(すなわち、約107 l/molまたはたそれ以上の結合親和性を示す)は、血清および腹水を含むさまざまな体液中に存在する可能性がある。簡単に述べると、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に特異的な抗体が存在するかどうかを決定することが望まれるヒトのような温血動物から、体液試料を単離する。タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に特異的な抗体と、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質との間の免疫複合体が形成されるのに十分な時間および条件下で、体液をタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質とインキュベートする。例えば、体液およびタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、46℃で24〜48時間インキュベートされる場合がある。インキュベーション後に、反応液中に免疫複合体が存在するかどうかを調べる。タンパク質と、タンパク質に特異的な抗体との間に形成された1つまたは複数の免疫複合体の検出は、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のような、さまざまな既知の技術によって行える。
適当な免疫学的検定には、David et al. (米国特許第4,376,110号)の2重モノクローナル抗体サンドイッチイムノアッセイ技術;モノクローナル抗体-ポリクローナル抗体サンドイッチアッセイ(Wide et al., in Kirkham and Hunter, eds., Radioimmunoassay Methods, E. and S. Livingstone, Edinburgh (1970));Gordon et al. (米国特許第4,452,901号)の「ウェスタンブロット」法;標識されたリガンドの免疫沈降法(Brown et al. (1980) J. Biol. Chem. 255:4980-4983);例えばRaines et al. (1982) J. Biol. Chem. 257:5154-5160に記述されたような酵素結合免疫吸着検定法(ELISA);蛍光色素の使用を含む免疫細胞化学技術(Brooks et al., (1980) Clin. Exp. Immunol. 39:477);および活性の中和(Bowen-Pope et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:2396-2400)が含まれる。上述の免疫学的検定に加えて、米国特許第3,817,827号; 同第3,850,752号; 同第3,901,654号; 同第3,935,074号; 同第3,984,533号; 同第3,996,345号; 同第4,034,074号; および同第4,098,876号を含むいくつもの免疫学的検定が利用できる。
検出のためには、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質(すなわち、抗原)は標識されていてもされていなくても良い。標識されていない場合には、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、凝集アッセイに使用される。さらに、非標識タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、免疫複合体と反応する標識分子と組み合わせて使用するか、免疫グロブリンに特異的な抗体のような、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に対する抗体と反応する標識抗体(2次抗体)と組み合わせて、使用できる。または、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は直接標識できる。標識されたときには、レポーター基は、例えば、ラジオアイソトープ、蛍光色素、酵素、発光体、色素粒子等を含み得る。これらおよび他の標識は当技術分野で周知であり、例えば、米国特許第3,766,162号; 同第3,791,932号; 同第3,817,837号; 同第3,996,345号; および同第4,233,402号に記述されている。
通常、ELISAでは、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質は、マイクロタイターウェルの表面に吸着している。表面上の残りのタンパク質結合部位は、その後、ウシ血清アルブミン(BSA)、熱不活化正常ヤギ血清(NGS)、またはBLOTTO(保存剤、塩、および消泡剤も含む、脱脂粉乳の緩衝溶液)のような適当な物質で、ブロックされる。その後、特定の抗体を含むと考えられる試料とウェルをインキュベートする。試料は、希釈せずに使用しても良いが、またはより多くの場合は、通常、BSA、NGS、またはBLOTTOのようなタンパク質を少量(0.1〜5.0重量%)含む、緩衝溶液中で希釈してもよい。特異的な結合が起きるために十分な長さの時間インキュベートした後、ウェルを洗浄して未結合のタンパク質を除去し、その後、レポーター基で標識された抗種特異的免疫グロブリン抗体とインキュベートする。レポーター基は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、およびグルコースオキシダーゼを含む、さまざまな酵素から選択できる。特異的な結合が起きるのに十分な時間の後、ウェルを再度洗浄して、未結合の複合体を除去し、酵素の基質を添加する。発色させ、ウェルの内容物の光学密度を目視により、または装置により、決定する。
本発明のこの局面の1つの好ましい態様では、レポーター基は、関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に結合している。免疫複合体の検出段階では、任意の結合していないタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を実質的に除去し、その後、レポーター基の存在の有無を検出する。
別の好ましい態様では、レポーター基は、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に特異的な抗体に結合する能力のある2次抗体に結合している。免疫複合体の検出段階には、(a) 結合していない任意の抗体を実質的に除去する段階、(b) 2次抗体を添加する段階、(c) 結合していない任意の2次抗体を実質的に除去する段階、および (d) レポーター基の存在の有無を検出する段階が含まれる。関心対象のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に特異的な抗体がヒトに由来する場合は、2次抗体は抗ヒト抗体である。
免疫複合体の検出の第3の好ましい態様では、レポーター基は免疫複合体に結合する能力のある分子に結合している。検出段階には、(a) 分子を添加する段階、(b) 結合していない任意の分子を実質的に除去する段階、およびその後、(c) レポーター基の存在の有無を検出する段階が含まれる。免疫複合体に結合する能力のある分子の例は、プロテインAである。
本発明の範囲内で、さまざまな免疫複合体の検出方法が使用できることは、当業者には明らかだろう。任意の方法に使用するために適したレポーター基には、例えば、ラジオアイソトープ、蛍光色素、酵素、発光体、および色素粒子が含まれる。
本発明の関連する局面では、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質と、タンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質に特異的な体液中の抗体との間に形成される免疫複合体は、癌治療の効果をモニターするために使用できるが、ここで癌治療は、癌抗原または癌遺伝子が関与している悪性病変のための、特定の癌抗原または癌遺伝子に関する治療である。治療開始の前後に個体から採取した体液試料を用い、上述の方法によって免疫複合体について分析できる。簡単に述べると、両試料中で検出された免疫複合体の数を比較する。第1の試料(治療前)と比較して、第2の試料(治療開始後)において、免疫複合体の数が実質的に変化していれば、これは治療が成功したことを反映している。
X. 癌治療
本発明の1つの局面では、本明細書に記述される免疫原性組成物を用いて、例えば、乳癌、肺癌、または前立腺癌のような癌に関連する癌遺伝子を有する対象において、特異的な免疫応答を誘発する。免疫原性組成物は、任意の段階の疾患の治療、すなわち、癌前、癌、もしくは転移段階、または疾患の予防のために使用できる。
本発明の別の局面では、本明細書に記述される組成物は、乳癌、卵巣癌、大腸癌、肺癌、または前立腺癌のような癌の免疫療法に使用される場合がある。そのような方法では、薬学的組成物およびワクチンが患者に投与される。本明細書では、「患者」とは任意の温血動物、好ましくはヒトをさす。患者は、癌に罹患している場合もしていない場合もある。したがって、上述の薬学的組成物およびワクチンは、癌の発生の予防、または癌に罹患した患者の治療に使用される可能性がある。癌は、悪性病変の存在を含む、当技術分野で一般に受け入れられている基準を用いて診断できる。薬学的組成物およびワクチンは、原発腫瘍の手術による切除、および/または放射線療法または通常の化学療法剤の投与のような治療の、前または後のいずれかに投与できる。投与は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内、皮内、肛門、膣、局所、舌下、および経口投与による投与を含む、任意の方法によって行える。
特定の態様では、免疫療法は、免疫応答修飾剤の投与により(本明細書で提供される融合ポリペプチドおよびポリヌクレオチドなど)、内在性の宿主免疫系を腫瘍に対して反応するようにインビボで刺激する、能動的な免疫療法である可能性がある。
他の態様では、免疫療法は、直接または間接的に抗腫瘍効果を仲介する、確立された腫瘍免疫反応性を持った薬剤(エフェクター細胞または抗体など)の送達によるもので、完全な宿主免疫系に必ずしも依存しない、受動的な免疫療法である可能性がある。エフェクター細胞の例には、上述のT細胞、Tリンパ球(CD8 細胞障害性Tリンパ球および CD4Tヘルパー腫瘍浸潤リンパ球など)、キラー細胞(ナチュラルキラー細胞およびリンフォカイン活性化キラー細胞)、B細胞および抗原提示細胞(樹状細胞およびマクロファージなど)であって、本明細書に提供されるタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質を発現するものが、含まれる。本明細書に記述される融合ポリペプチドに特異的なT細胞受容体および抗体受容体は、クローニング、発現し、養子免疫療法のために他のベクターまたはエフェクター細胞に移入することができる。本明細書の融合ポリペプチドを用いて、受動免疫療法のために、抗体または抗イディオタイプ抗体を作製することもできる(上記、および米国特許第4,918,164号に記述される)。
一般にエフェクター細胞は、本明細書に記述されるように、インビトロでの増殖により、養子免疫療法に十分な量を得ることができる。単一の抗原特異的エフェクター細胞を、インビボでの抗原認識は保持したまま、数十億個に増殖させるための培養条件は、当技術分野で周知である。そのようなインビトロ培養条件では、通常、しばしばサイトカイン(IL-2など)および非分裂フィーダー細胞の存在下で、抗原により断続的に刺激を行う。上記のように、本明細書で提供される免疫反応性融合ポリペプチドは、免疫療法のために十分な数の細胞を生産するために、抗原特異的T細胞培養を迅速に増殖させるために使用できる。特に、樹状細胞、マクロファージ、またはB細胞のような抗原提示細胞は、免疫反応性融合ポリペプチドでパルスするか、当技術分野で周知の標準的な技術を用いて1つまたは複数のポリヌクレオチドをトランスフェクトしても良い。例えば、抗原提示細胞には、組み換えウイルスまたは他の発現系において発現を増加させるために適当なプロモーターを有するポリヌクレオチドを、トランスフェクトできる。治療に使用する培養エフェクター細胞は、増殖し、広く分布し、またインビボで長期間生存する必要がある。IL-2を補った抗原による繰り返し刺激によって、培養エフェクター細胞をインビボで増殖し、相当数が長期間生存するように誘導できることが、研究で示されている(例えば、Cheever et al., (1997) Immunological Reviews 157:177を参照されたい)。
または、本明細書に記述される融合ポリペプチドを発現するベクターを、患者から採取し、エクスビボでクローン増殖させた抗原提示細胞に導入し、同じ患者に戻すこともできる。トランスフェクトされた細胞は、任意の周知の手段を用いて、好ましくは無菌的に、静脈内、腔内、腹腔内、または腫瘍内投与により患者に戻すことができる。
本明細書に記述される治療用組成物の投与の経路および頻度、ならびに用量は、個体によって異なり、標準的な技術を用いて容易に確立できる。
一般に、薬学的組成物およびワクチンは、注射(例えば、皮内、筋肉内、静脈内、または皮下)、鼻腔内(例えば、吸入)、または経口で投与できる。好ましくは、52週間にわたり、1〜10回の投与が行われる可能性がある。好ましくは、1ヶ月間隔で6回の投与が行われ、ブースターワクチン接種がその後、定期的に行われても良い。個々の患者には、別のプロトコールが適切な場合がある。適当な投与量は、上述のように投与された場合に、抗腫瘍免疫応答を促進する能力があり、基礎レベル(未治療レベル)を少なくとも10〜50%上回るものである。そのような応答は、患者の抗腫瘍抗体を測定するか、インビトロで患者の腫瘍細胞を殺す能力のある細胞溶解性エフェクター細胞のワクチン依存的産生によって、モニターできる。そのようなワクチンは、ワクチン接種をしていない患者と比較して、ワクチン接種をした患者において、臨床転帰を改善する(例えば、より頻度の高い完全もしくは部分的緩解、またはより長い無病生存期間)免疫応答を誘導することができるはずである。一般に、1つまたは複数の融合ポリペプチドを含む薬学的組成物およびワクチンでは、1回投与量中に存在するタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質の量は、宿主1kgあたり、約1μgから5 mg、好ましくは100μgから5 mg、および最も好ましくは5μgから250μgの範囲である。適当な用量のサイズは、患者のサイズにより異なるが、通常は約0.1 mlから約5 mlの範囲である。
好ましくは、1回投与量は、1患者あたり、本明細書に記載の発現ベクター8 mgまたはそれ以下である。投与は2週間間隔で4回、4週間間隔でさらに2回行われる。後の2回の投与は、ブースターショットを意図している。
一般に、適当な投与および治療法により、治療および/または予防のメリットを提供するために十分な量の活性化合物が提供される。そのような応答は、治療していない患者と比較して、治療した患者において、改善した臨床転帰(例えば、より頻度の高い完全もしくは部分的緩解、またはより長い無病生存期間)を確立することによって、モニターできる。癌抗原または癌遺伝子に対する既存の免疫応答の増強は、一般に、臨床転帰の改善と相関がある。そのような免疫応答は、標準的な増殖、細胞毒性、またはサイトカインアッセイを用いて評価でき、これは治療の前後に患者から採取した試料を用いて実行できる。
XI. 癌の検出
A. 癌の検出方法
一般に、癌は、患者から採取した生体試料(血液、血清、血漿、尿、および/または腫瘍生検など)中で、癌抗原または癌遺伝子タンパク質、および/またはそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドの存在に基づいて、患者において検出できる。すなわち、そのようなタンパク質は、例えば、乳癌、卵巣癌、大腸癌、肺癌、または前立腺癌等のような癌の有無を示すマーカーとして、使用できる。本明細書に提供される結合剤を用いて、一般に、生体試料中で、それに結合する癌抗原または癌遺伝子のレベルを検出することができる。ポリヌクレオチドプライマーおよびプローブを用いて、癌抗原または癌遺伝子をコードするmRNAのレベルを検出することもできるが、これはやはり癌の有無を示している。一般に、癌抗原または癌遺伝子配列は、正常組織と比較して腫瘍組織では少なくとも3倍のレベルで存在するはずである。
結合剤を用いて、試料中のポリペプチドマーカーを検出するためには、当技術分野で周知のアッセイ形式が、いくつも存在する(例えば、Harlow and Lane、上記を参照されたい)。一般に、患者における癌の有無は、(a) 患者から得た生体試料に結合剤を接触させる段階;(b) 試料中で、結合剤に結合するポリペプチドのレベルを検出する段階;および (c) ポリペプチドのレベルを、事前に決定してあるカットオフ値と比較する段階、によって決定できる。
好ましい態様では、アッセイで固相支持体上に固定した結合剤を用いて、ポリペプチドに結合し、これを試料の残りの部分から除去する。結合したポリペプチドは、レポーター基を含み、結合剤/ポリペプチド複合体に特異的に結合する、検出試薬を用いて、検出できる。そのような検出試薬は、例えば、ポリペプチドに特異的に結合する結合剤、または、抗免疫グロブリン、プロテインG、プロテインA、もしくはレクチンのような、結合剤に特異的に結合する抗体もしくは他の物質を含む。または、競合アッセイを利用することができ、その場合、ポリペプチドをレポーター基で標識し、これを、固定された結合剤を試料とインキュベーションした後に、固定された結合剤に結合させる。標識ポリペプチドの結合剤への結合を、試料の成分が阻害する程度が、固定された結合剤に対する試料の反応性を示す。そのようなアッセイで使用するのに適したポリペプチドには、結合剤が結合する、全長癌抗原または癌遺伝子、およびその一部、ならびに、上述のように結合剤が結合するタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質およびその一部が含まれる。
固相支持体は、腫瘍タンパク質を結合することができる、当業者に周知の任意の材料で良い。例えば、固相支持体は、マイクロタイタープレートのテストウェル、またはニトロセルロースもしくは他の適当な膜でも良い。または、支持体はガラス、ガラスファイバー、ラテックス、またはポリスチレンまたはポリ塩化ビニルのようなプラスチック材料などのビーズまたはディスクでも良い。支持体は、例えば、米国特許第5,359,681号に開示されるような、磁気粒子または光ファイバーセンサーでもよい。結合剤は、当業者に周知のさまざまな技術を用いて固相支持体に固定できるが、技術は特許および科学文献に数多く記述されている。本発明の文脈では、「固定」という用語は、吸着のような非共有結合、および共有結合(薬剤と支持体上の官能基の直接の結合でも、または架橋剤による連結でもよい)の両方をさす。マイクロタイタープレート上のウェル、または膜への吸着による固定が好ましい。そのような場合、吸着は、適当な緩衝液中の結合剤を、固相支持体に、適切な時間、接触させることによって行われる。接触時間は温度によって変わるが、通常は約1時間〜約1日の間である。一般に、プラスチックのマイクロタイタープレート(ポリスチレンまたはポリ塩化ビニル)のウェルに、約10 ngから約10μg、および好ましくは約100 ngから約1μgの範囲の量の結合剤を接触させれば、適当な量の結合剤が固定されるために十分である。
結合剤の固相支持体への共有結合は、一般に、結合剤上の水酸基またはアミノ基のような官能基と支持体の両方に反応するような2価性試薬を、まず支持体と反応させることによって、実施できる。結合剤は、例えば、ベンゾキノンを用いるか、または支持体上のアルデヒド基と結合パートナー上のアミンおよび活性水素の縮合によって、適当なポリマーコートを有する支持体に共有結合できる(例えば、Pierce Immunotechnology Catalog and Handbook, 1991, at A12-A13を参照されたい)。
特定の態様では、アッセイは2つの抗体のサンドイッチアッセイである。このアッセイは、まず通常はマイクロタイタープレートのウェルである固相支持体に固定された抗体に、試料を接触させ、試料中のポリペプチドが固定された抗体に結合できるようにする。その後、結合しなかった試料は、固定されたポリペプチド-抗体複合体から除去し、レポーター基を含む検出試薬(好ましくは、ポリペプチドの異なる部位に結合できる2次抗体)を添加する。その後、固相支持体上に結合したままの検出試薬の量を、特定のレポーター基に適当な方法を用いて決定する。
より具体的には、上述のようにいったん抗体が支持体上に固定されたら、支持体上の残りのタンパク質結合部位は、通常ブロックされる。ウシ血清アルブミンまたはTween 20(商標) (Sigma Chemical Co. St. Louis, MO)のような、当業者に周知の任意の適当なブロッキング剤。その後、固定された抗体を試料とインキュベートし、ポリペプチドが抗体に結合できるようにする。試料は、インキュベーション前にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような適当な希釈剤で希釈しても良い。一般に、適当な接触時間(すなわちインキュベーション時間)とは、乳癌、卵巣癌、大腸癌、肺癌、または前立腺癌を有する個体から得られた試料中のポリペプチドの存在を検出するために十分な時間である。好ましくは、接触時間は、結合ポリペプチドと未結合ポリペプチドの間の平衡で得られる結合レベルの、少なくとも約95%の結合レベルを達成するために十分である。当業者は、平衡に到達するために必要な時間は、ある時間で起こる結合のレベルを測定することによって決定できることを、認識するだろう。室温では、通常約30分のインキュベーション時間で十分である。
結合していない試料は、0.1% Tween 20(商標)を含むPBSのような適当な緩衝液で固相支持体を洗浄することにより、除去できる。その後、レポーター基を含む2次抗体を固相支持体に添加できる。好ましいレポーター基には、上記のものが含まれる。
その後、検出試薬を固定された抗体-ポリペプチド複合体と、結合したポリペプチドを検出するために十分な時間、インキュベートする。適当な時間は、通常、一定時間に起きる結合のレベルを測定することによって、決定できる。それから、結合しなかった検出試薬を除去し、レポーター基を用いて、結合した検出試薬を検出する。レポーター試薬を検出するために使用する方法は、レポーター基の性質による。放射性の基では、シンチレーション計数またはオートラジオグラフィー法が一般に適当である。色素、発光団、および蛍光団の検出には、分光法が使用できる。ビオチンは、異なるレポーター基(通常は放射性または蛍光基または酵素)に結合したアビジンを用いて検出できる。酵素のレポーター基は、基質を添加し(一般に特定の時間)、その後、反応産物の分光分析または他の分析を行って検出できる。
乳癌、卵巣癌、大腸癌、肺癌、または前立腺癌のような癌の有無を決定するためには、一般に、固相支持体に結合したままのレポーター基から検出されるシグナルを、事前に決定したカットオフ値に対応するシグナルと比較する。1つの好ましい態様では、癌の検出のカットオフ値は、固定された抗体を、癌を持たない患者から得られる試料とインキュベートしたときに得られる平均シグナルである。一般に、事前に決定したカットオフ値より3標準偏差高いシグナルを生成する試料は、癌陽性と考えられる。別の好ましい態様では、カットオフ値は、Sackett et al., Clinical Epidemiology: A Basic Science for Clinical Medicine, Little Brown and Co., 1985, p. 106-107の方法に従うReceiver Operator Curveを用いて決定される。簡単に述べると、この態様では、カットオフ値は、診断検査の結果の各々の可能なカットオフ値に対応する、真の陽性率(すなわち、感度)および偽陽性率(100%特異性)のペアのプロットから決定される。左上の隅に最も近い、プロット上のカットオフ値(すなわち、最大の面積を囲む値)が、最も正確なカットオフ値で、この方法で決定されたカットオフ値よりも高いシグナルを生成する試料は、陽性と考えられる。または、カットオフ値は、偽陽性率を抑えるために、プロットに沿って左に移動させるか、偽陰性率を抑えるために、右に移動させても良い。一般に、この方法で決定されたカットオフ値よりも高いシグナルを生成する試料は、癌陽性と考えられる。
関連する態様では、アッセイはフロースルーまたはストリップテスト形式で行われ、ここでは結合剤はニトロセルロースのような膜に固定される。フロースルーテストでは、試料が膜を通過する際に、試料中のポリペプチドは固定された結合剤に結合する。その後、第2の、標識された結合剤が、第2の結合剤を含む溶液が膜を通過する際に、結合剤-ポリペプチド複合体に結合する。その後、結合した第2の結合剤の検出は、上述のようにして行える。ストリップテスト形式では、結合剤が結合した膜の一端を、試料を含む溶液に浸す。試料は膜に沿って、第2の結合剤を含む領域を通過し、固定された結合剤の領域まで移動する。固定された抗体の領域における第2の結合剤の濃度は、癌の存在を示す。通常は、その部位の第2の結合剤の濃度は、視覚的に見られる、線のようなパターンを形成する。そのようなパターンがない場合には、陰性の結果を示す。一般に、生体試料が、上述の形式で2つの抗体のサンドイッチアッセイにおいて陽性のシグナルを生成するために十分な量のポリペプチドレベルを含む場合に、視覚的に識別できるパターンを生成するように、膜に固定された結合剤の量は選択される。そのようなアッセイにおいて使用するのに好ましい結合剤は、抗体およびその抗原結合断片である。好ましくは、膜に固定される抗体の量は、約25 ngから約1μg、より好ましくは約50 ngから約500 ngの範囲である。そのようなテストは、通常、非常に少量の生体試料を用いて実施できる。
当然、本発明の腫瘍タンパク質または結合剤を用いるために適した、数多くの他のアッセイプロトコールが存在する。上記の説明は、例示に過ぎない。例えば、上述のプロトコールは、癌抗原または癌ポリペプチドを用いるように容易に改変でき、生体試料中のそのようなポリペプチドに結合する抗体を検出することができるのは、当業者には明らかだろう。そのようなタンパク質特異的抗体の検出は、癌の存在と相関する。
癌はさらに、または、その代わりに、生体試料中のタンパク質またはポリペプチドと特異的に反応するT細胞の存在に基づいて、検出できる。特定の方法では、患者から単離されたCD4および/またはCD8 T細胞を含む生体試料を、ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはそのようなポリペプチドを発現するAPCとインキュベートし、T細胞の特異的活性化の有無を検出する。適当な生体試料には、単離T細胞が含まれるが、これに限定されない。例えば、通常の技術(末梢血リンパ球のフィコール/ハイパーク密度勾配遠心など)により患者からT細胞を単離できる。T細胞は、ポリペプチド(例えば、5〜25μg/ml)と37℃で2〜9日間(通常は4日間)インビトロでインキュベートできる。対照とするために、ポリペプチドの非存在下で、T細胞試料の別の一部をインキュベートすることが望ましい可能性がある。CD4 T細胞では、活性化は好ましくはT細胞の増殖を評価して検出する。CD8 T細胞では、活性化は好ましくは細胞溶解活性を評価して検出する。疾患を持たない患者と比較して、少なくとも2倍の増殖レベル、および/または少なくとも20%上回る細胞溶解活性レベルは、患者に癌が存在することを示す。
上述のように、癌はさらに、または代わりに、生体試料中の癌抗原をコードするmRNAまたは癌遺伝子のレベルに基づいて検出できる。例えば、少なくとも1つが、癌抗原または癌遺伝子タンパク質をコードするポリヌクレオチドに特異的な(すなわち、ハイブリダイズする)、最低2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づくアッセイで用いて、生体試料から得られる癌抗原または癌遺伝子cDNAの一部を増幅することができる。その後、ゲル電気泳動のような、当技術分野で周知の技術を用いて増幅されたcDNAを分離および検出する。同様に、癌抗原または癌遺伝子タンパク質をコードするポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイゼーションアッセイに用いて、生体試料中で、癌抗原または癌遺伝子タンパク質をコードするポリヌクレオチドの存在を検出することができる。
アッセイ条件下でハイブリダイゼーションが起きるためには、オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは、少なくとも10ヌクレオチド、および好ましくは少なくとも20ヌクレオチドの長さの癌抗原または癌遺伝子をコードするポリヌクレオチドの部分に、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約75%、およびより好ましくは少なくとも約90%の同一性を有する、オリゴヌクレオチド配列を含む必要がある。好ましくは、オリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはプローブは、上記の中程度にストリンジェントな条件下で、本明細書に記載の癌抗原または癌遺伝子のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズする。本明細書に説明する診断方法に有用な可能性のあるオリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはプローブは、好ましくは、少なくとも長さが10〜40ヌクレオチドである。好ましい態様では、オリゴヌクレオチドプライマーは、少なくとも10の連続したヌクレオチド、より好ましくは少なくとも15の連続したヌクレオチドを含む。PCRに基づくアッセイおよびハイブリダイゼーションアッセイの技術は、当技術分野で周知である(例えば、Mullis et al., (1987) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263; Erlich ed., PCR Technology, Stockton Press, NY (1989)を参照されたい)。
1つの好ましいアッセイは、RT-PCRを利用するもので、PCRは逆転写と組み合わせて用いられる。通常は、生検組織のような生体試料からRNAを抽出し、逆転写してcDNA分子を作製する。少なくとも1つの特異的なプライマーを用いたPCR増幅により、cDNA分子が作製され、これは例えば、ゲル電気泳動を用いて分離および可視化できる。増幅は、被験患者および癌に罹患していない個体から採取した生体試料を用いて、行える。増幅反応は、2桁にわたって何種類かに希釈したcDNAについて行える。非癌患者の同じ希釈度の試料と比較して、被験患者のいくつかの希釈物において、発現が2倍以上に増加していれば、通常、試料は陽性と判断される。
別の態様では、癌抗原または癌遺伝子タンパク質またはポリペプチド、およびそのようなタンパク質またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、癌の進行をモニターするためのマーカーとして使用できる。この態様では、ある期間にわたって、癌の診断のための上記のアッセイを実行し、反応性ポリペプチドのレベルの変化を評価する。例えば、6ヶ月から1年の期間に渡って、アッセイを24〜72時間ごとに行い、その後は必要に応じて行う。一般に、結合剤によって検出されるポリペプチドのレベルが時間が経つに連れ上昇する患者では、癌は進行している。反対に、時間が経っても反応性ポリペプチドのレベルが一定または低下する場合には、癌は進行していない。
特定のインビボ診断アッセイは、腫瘍に対して直接、実施できる。1つのそのようなアッセイでは、結合剤を腫瘍細胞に接触させる。その後、結合した結合剤は、レポーター基を介して間接的に、または直接的に検出できる。そのような結合剤は、組織学的用途でも使用できる。または、ポリヌクレオチドプローブをそのような用途で使用することもできる。
上記のように、感受性を改善するために、特定の試料において、複数の癌抗原または癌遺伝子マーカーを測定することができる。本明細書に提供される異なるタンパク質に特異的な結合剤は、1つのアッセイ内で組み合わせることができるのは明らかだろう。さらに、複数のプライマーまたはプローブを、同時に使用しても構わない。腫瘍タンパク質マーカーの選択は、どの組み合わせが最適の感受性を提供するかを決定するための日常的な実験に基づいて行える。加えて、または代わりに、本明細書に提供される腫瘍タンパク質のアッセイは、他の既知の腫瘍抗原のアッセイと組み合わせても良い。
XII. キット
本発明はさらに、上述の任意の診断方法に用いるキットも提供する。そのようなキットは通常、診断アッセイを行うために必要な2つまたはそれ以上の構成要素を含む。構成要素は、化合物、試薬、容器、および/または装置である可能性がある。例えば、キットの1つの容器は、癌抗原または癌遺伝子に特異的に結合する、モノクローナル抗体またはその断片を含む可能性がある。そのような抗体または断片は、上述のように、支持体に結合して提供されても良い。1つまたは複数の別の容器は、アッセイで使用される、試薬または緩衝液のような要素を含む可能性がある。そのようなキットは、加えて、または代わりに、抗体結合を直接または間接的に検出するために適したレポーター基を含む、上述のような検出試薬を含む可能性がある。
キットは、治療用目的でも提供できる。本発明の本組成物は、容器の中で通常は凍結乾燥した状態で、提供される可能性がある。本明細書に記述されるベクターは、使用説明書と共にキットに含まれ、緩衝液、安定化剤、殺生物剤、および不活性なタンパク質も含まれていても良い。一般に、これらの任意の材料は、ベクターの量に基づいて、重量で約5%未満存在し、ベクター濃度に基づいて、重量で少なくとも約0.001%の総量で存在する。活性成分を希釈するための、不活性な増量剤または賦形剤を含むことが望ましい可能性があり、賦形剤は組成物全体の重量の約1〜99%で存在する可能性がある。
または、キットは、生体試料中の癌抗原または癌遺伝子をコードするmRNAのレベルを検出するように設計される可能性がある。そのようなキットは一般に、癌抗原または癌遺伝子をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズする、上記のオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを少なくとも1つ含む。そのようなオリゴヌクレオチドは、例えば、PCRまたはハイブリダイゼーションアッセイに使用できる。そのようなキット中に存在する可能性のある更なる構成要素には、第2のオリゴヌクレオチド、および/または癌抗原または癌遺伝子をコードするポリヌクレオチドの検出を容易にするための診断試薬または容器が含まれる。
実施例
実施例1:pCRXA-20の作製
プラスミドpCRXA20は、(1) pUC9から得られたプラスミド複製起点;(2) pRSVneoからクローニングされたカナマイシン耐性遺伝子および細菌プロモーター;(3) pRSVneoからクローニングされたSV40ポリアデニル化配列;(4) CMVプロモーター、および (5) ヒトサイトメガロウイルスからクローニングされたイントロンAの一部、エクソンA、およびエクソンBの一部を含むMIE領域の5'非翻訳配列を用いて作製された。
pCRXA20(SEQ ID NO:3)は3584塩基で、5つの領域を含む。第1の領域(塩基1位〜1368位)は、ヒトCMVウイルス、Towne株(ATCC番号:VR-977)のウイルスDNAからクローニングされた。この第1の領域は、ウイルスプロモーター、エンハンサー、およびイントロンAを含み、これはCMV主要前初期遺伝子(Genbankアクセッション番号M60321)の塩基512位〜1513位および1736位〜2094位に対応し、クローニングされた遺伝子のmRNA転写物を誘導する。第2の領域(塩基1369位〜1416位)は、6つの制限酵素の認識部位を含み、アニーリングしたオリゴヌクレオチドから得られた。この領域を用いて、遺伝子をベクターにクローニングできる。第3の領域(塩基1417位〜1651位)は、プラスミドpRSVneo(ATCC# 37198)の塩基3407位〜3634位からクローニングされた。この第3の領域は、SV40ウイルスの初期および後期ポリアデニル化シグナルを含み、クローニングされた遺伝子のmRNA転写物に必要なポリA部位を提供する。第4の領域(塩基1652〜2581)は、細菌プロモーターおよびカナマイシン耐性遺伝子を含む。プロモーターはプラスミドpUC9 (ATCC# 37252)の塩基2463位〜2600位およびpRSVneoの遺伝子の塩基4589位〜5383位からクローニングされた。この第4の領域は、ベクターを含む細菌の選択的増殖を可能にする。第5の領域(塩基2582位〜3584位)は、pUC9の塩基605位〜1600位からクローニングされた複製起点を含み、細菌中でベクターの増殖を可能にする。
実施例2:pCRXA-20を用いた免疫応答の誘導
CMVプロモーターの制御下でヒトL523Sを発現する、複製欠損E1およびE3欠失ヒトアデノウイルス血清型5ベクターは、標準的な分子生物学技術を用いて作製された(AdEasy System, Johns Hopkins University, Baltimore, MD)。L523S-アデノウイルスベクターのDNA配列は、SEQ ID NO:5に示されている。全長のL523Sタンパク質をコードするcDNA配列は、SEQ ID NO:6に示されており、対応するアミノ酸配列は、SEQ ID NO:7に示されている。
全長L523Sタンパク質(SEQ ID NO:6)をコードする遺伝子は、標準的な技術を用いてpVAX1(Invitrogen, Carlsbad, CA)およびpCRXA-20に挿入し、L523-DNA発現ベクターを作製した。
3群のC57bl/6マウス(1群あたり4マウス)を100μgのL523-DNA発現ベクター(pVaxまたはpCRXAのいずれか)で免疫するか、DNAを全く投与しなかった。3週後、すべてのマウスを108 pfuのL523-アデノウイルスで免疫した。アデノウイルス免疫の2週後に、脾臓細胞を採取した。L523Sに対するT細胞応答は、IFNγ細胞内サイトカイン(ICC)染色もしくはIFNγELISPOTのいずれかによるインターフェロンγ(IFNγ)、またはクロム放出アッセイを用いて評価した。
L523ペプチドp13-21(SEQ ID NO:8)によるインビトロ刺激の後、ELISPOTにより、免疫および未処理の脾臓細胞のIFNγ分泌を測定した。免疫脾臓細胞(4 x 105)は、抗IFNγ-コートしたELISPOTプレートのウェル中で、2連でp13-21(5μg/ml)と2日間培養した。2日後、未処理の脾臓細胞からは、IFNγELISPOTは検出されなかった。アデノウイルスのみ(DNAの免疫なし)で免疫されたマウスから得られた細胞は、各ウェルあたり約50スポット、pVAX/L523Sプラスミドで免疫されたマウスから得られた細胞は、各ウェルあたり100スポットを示し、これに対して、pCRXA-20プラスミドで免疫されたマウスから得られた細胞は、各ウェルあたり1000以上のスポットを示した。この結果は、pCRXAにより誘発された免疫応答は、pVaxで誘発されたものよりもはるかに強いことを示す。
L523特異的免疫応答は、IFNγICCを用いても測定された。新鮮な脾臓細胞を、L523S p13-21(SEQ ID NO:8)で6時間刺激し、その後、CD4、CD8、およびIFNγの発現を染色した。ICCアッセイの結果は、ELISPOTアッセイの結果と一致していた。pCRXA/L523Sで免疫された群は、平均1.3%のL523S抗原特異的T細胞を示したが、pVAX/L523Sプライミングは、ワクチンのアデノウイルス成分の投与以上のCD8 T細胞応答を示さなかった。これは、最適なCD8 T細胞応答を誘発するためにはDNA免疫が必要であることを示し、pCRXAが強力な免疫応答を誘発することが確認された。
実施例3:pCRXA-20を用いたCTL株の溶解活性
免疫されたC57bl/6マウスから得られた免疫脾臓細胞は、L523S p13-21(SEQ ID NO:8)でパルスされた、放射線照射EL4細胞と、6日間培養した。6日目に、T細胞株について、標準的な4時間クロム放出アッセイにより、未処理またはL523S p31-21(SEQ ID NO:8)でパルスしたF45標的細胞に対する、溶解活性を測定した。結果は、IFNγELISPOTおよびICCアッセイの結果と一致していたが、6日間のインビトロ刺激後のほうが、CD8 T細胞の機能活性における差は少なかった。この結果は、pCRXAで同様に免疫されたマウスよりも、pVaxで免疫されたマウスのほうが、CTL活性が低いことを示す。アデノウイルス単独の免疫でもCTL活性は誘発されたが、他のアッセイと同様に、DNA免疫によりこの活性が増強されると考えられる。
本明細書に引用されるすべての出版物および特許出願は、各々の出版物または特許出願が具体的に個々に参照により本明細書に組み入れられると示されたのと同様に、参照により本明細書に組み入れられる。
上記の発明は、理解を明確にするために、実例および実施例を用いて、ある程度詳細に説明されているが、本発明の教示を考慮すれば、添付の特許請求の範囲または精神を逸脱することなく、本発明に対して特定の変更および修飾を加えることができるのは、当業者には明らかであろう。

Claims (22)

  1. 以下のエレメント:サイトメガロウイルス(CMVプロモーター配列、CMVエンハンサー配列、CMV主要前初期遺伝子のCMVイントロンA配列、異種核酸配列、およびポリアデニル化部位
    を5'から3'方向に含む発現カセットを含む発現ベクターであって、該プロモーターは該異種核酸配列に機能的に連結しており、かつ該発現カセットはSEQ ID NO:3に示される配列のヌクレオチド1位〜1653位を含む、発現ベクター。
  2. 異種核酸が癌抗原をコードする、請求項1記載の発現ベクター。
  3. 発現カセットが、SEQ ID NO:3に示される配列を含む、請求項1記載の発現ベクター。
  4. 癌抗原がSEQ ID NO:6に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項記載の発現ベクター。
  5. 請求項1の発現ベクターを含む宿主細胞。
  6. 請求項の発現ベクターを含む宿主細胞。
  7. 大腸菌(E. coli)および哺乳動物細胞からなる群より選択される、請求項記載の宿主細胞。
  8. 大腸菌および哺乳動物細胞からなる群より選択される、請求項記載の宿主細胞。
  9. 請求項1に示される発現ベクターを含む組成物。
  10. 以下のエレメント:CMVプロモーター配列、CMVエンハンサー配列、CMV主要前初期遺伝子のCMVイントロンA配列、異種核酸配列、およびポリアデニル化部位を5'から3'方向に含む発現カセットを含む発現ベクターを含む宿主細胞を培養する段階を含む方法であって、該プロモーターは該異種核酸配列に機能的に連結しており、かつ該発現カセットはSEQ ID NO:3に示される配列のヌクレオチド1位〜1653位を含む、異種核酸配列を発現するための方法。
  11. 異種核酸が癌抗原をコードする、請求項10記載の方法。
  12. 発現カセットが、SEQ ID NO:3に示される配列を含む、請求項10記載の方法。
  13. 宿主細胞が、大腸菌および哺乳動物細胞からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
  14. 癌抗原がSEQ ID NO:6に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項11記載の方法。
  15. 免疫応答を誘発するための、請求項記載の組成物であって、該免疫応答が、異種核酸配列によってコードされるポリペプチドに対する免疫応答である、組成物
  16. 数回投与されるものである、請求項15記載の組成物
  17. 異種核酸配列によってコードされるポリペプチドに対する免疫応答を誘発するための医薬の製造における、請求項9記載の組成物の使用。
  18. 医薬が複数回投与されるものである、請求項17記載の使用。
  19. SEQ ID NO:3に示される配列のヌクレオチド1位〜1653位を含む発現カセット。
  20. 請求項19に記載の発現カセットに挿入されている異種核酸配列を含む発現ベクターであって、該発現カセットのプロモーターが該異種核酸配列に機能的に連結している、発現ベクター。
  21. 異種核酸配列の発現のための発現ベクターを作成する方法であって、SEQ ID NO:3に示される配列のヌクレオチド1位〜1653位を含む組み換え発現ベクターに、ポリペプチドをコードするDNA配列を挿入する段階を含む、方法。
  22. DNA配列が癌抗原をコードする、請求項21記載の方法。
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