本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、脆弱なArF露光用レジストを損傷せずにエッチングできるようにしたことによって、ラインエッジラフネス(Line Edge Roughness:LER、ストライエーションともいう)の問題を解決して130nm以下の微細パターンを高精度に形成可能とした半導体装置及びその製造方法に係る。本発明はまた、脆弱なArF露光用レジストを損傷せずにエッチングできるドライエッチング方法及びこのドライエッチング方法を利用した配線材料の作製方法や、エッチング装置にも係わる。
近年、LSIの高集積化及び高速化に伴って、半導体装置の微細化と多層化とが進んでいる。この場合のLSI製造における露光方法としては、ArF露光方法に代表されるように、波長の短いレーザ(例えば、エキシマレーザー)を用いたものが利用される。これによって、例えば、メタクリル樹脂やアクリル樹脂等からなるレジスト材にマスクパターンを転写してレジストマスクを形成し、このレジストマスクで覆われた膜をドライエッチングして、例えば、配線用のホールや溝等を微細加工する。このような微細加工においては、横と深さ方向に精密なエッチング形状を得るという高い加工精度が要求されている。そのため、異方性を高めてエッチングを行うことから、所定のエッチングガスをプラズマ雰囲気中に導入してドライエッチングを行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、ArF露光方法で用いられるレジスト材として、真空紫外光の波長領域において透過性をもたせるために、ベンゼン環を持たない化合物を用いることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このレジスト材は、ArFレーザーを用いて露光を行うと、脆弱化すると共に、ベンゼン環を有するレジスト材(例えば、KrF露光用レジスト材)と比較してプラズマ耐性が低い。このため、プラズマ雰囲気中でドライエッチングを行うと、レジストマスクは、プラズマ中のエッチャントに曝され、プラズマ放電から放射される紫外光やイオン衝撃の影響によって、パターニングされた領域のエッジ部にエッジ荒れが生じ、パターン形状の周辺が変形するという問題が生じる。
図15(a)〜(c)及び(a')〜(c')は、従来の半導体装置におけるトランジスタのゲート製造方法を示す半導体装置の断面図及び上面図の概略図である。この従来のゲート製造方法によれば、図15(a)及び(a')に示すように、まず、Si基板151上にゲート酸化膜152を所定膜厚成長させ、次にゲート電極用の膜として、例えば、ポリシリコン膜153aとタングステン膜153bとの積層膜153を成膜した後、ハードマスク用の電気絶縁膜SiO2膜154を公知のCVD法等で成膜(堆積)する。そして、反射防止膜155を塗布成膜してから、アクリル系樹脂をベースとしたArF露光用レジスト156(例えば、東京応化工業製TARF−P6111)等を塗布成膜し、ここに成膜されたレジスト膜156を公知のArF露光装置(例えば、ASML製TWINSCAN−XT1400)により露光して、ゲート電極用のパターンを有するレジストマスク156をゲート電極用の積層膜153上に形成する。なお、ハードマスク用の薄膜としては、CVD法によるSiN膜やSiC膜等の電気絶縁膜も一般的に用いられる。
このようなパターンを有するレジストマスク156で覆われたハードマスク用の電気絶縁膜154をプラズマ雰囲気中でドライエッチングすることによって、この電気絶縁膜154にレジストマスク156のパターンを転写するとき、レジストマスク156が脆弱なために、このパターンの端部が歪んで形状が変形したり、レジストの一部が薄くなったり、時には孔が開くこともある(レジストのLER)。このようなレジストマスクの状態でエッチングを継続すると、図15(b)及び(b')に示すように、ハードマスク154にも、歪んだり、変形したり、周辺欠損したパターンの形状が転写され、いわゆるストライエーション(Striation)が発生するという問題がある。このため、このストライエーションの発生したハードマスク154bを用いて更にドライエッチングを継続してハードマスク154bからゲート電極用の積層膜153にパターンを転写すると、図15(c)及び(c')に示すように、ゲート電極用の積層膜153にもストライエーションがそのまま転写されることになる。このようなストライエーションは、ときには50nmもの大きさに達するため、高いエッチング加工精度の要求を満たすことができなくなる。
このストライエーションと呼ばれる変形が50nmあるときには、設計値として200nmの線幅を有するパターンであれば、線パターンとして許容されても、130nm以下の線幅の設計であると、パターンの周辺から50nmの欠損があれば、残りの線幅では相対的に許容されない。微細パターンの半導体装置の製造ではこれは使えない。
上述のように、トランジスタのゲートとしては、通常、ポリシリコン又はその上にタングステンを積層した材料構造が用いられる。この場合、ゲート長Lgはトランジスタが動作するときのオンとオフとを区別するスレッショールド電圧を決める重要な製造パラメータであるので、正確に制御する必要がある。もしゲート材料のエッチングの際に、パターンエッジの変形であるストライエーションが発生すると、一本のゲートの中にゲート長Lgの分布ができてしまう。すると、Lgの長短が混合したトランジスタが並列接続されたようになるので、トランジスタのスレッショールド電圧がブロードになりシャープなオンオフ特性が得られなくなる。
スレッショールド電圧がブロードになると、トランジスタの動作電圧に、余裕を持たせる必要が生じるので、電源電圧を高く設計することになり、消費電力が大きくなるという弊害が生じる。また、スレッショールド電圧の中心値の分散があると、動作タイミングを合わせるためにロジックサイクルを長く設計する必要がでてくるので、高速動作が望めなくなる。高い電源電圧や遅いロジックサイクルは、近年の要望である高集積で高速・低消費電力という商品設計の要請に合わない。従って、一本のゲートの中で、ゲート長Lg分布の小さい値で加工することが重要になる。
以上の背景があるので、ゲート作製における線幅の制御は重要である。しかし、ArF露光法でレジストにパターンを転写して、それをマスクとしてゲート材料を直接エッチングしようとすると、エッチングされる材料の厚みよりマスクとしてのレジストを余裕をもって厚く設計しなければならなくなる。このように厚く設計すると、焦点深度DOF(Depth of Focus)はレジスト厚みより小さいので、焦点の合わない部分がレジストの深さ方向に存在することになり、正確なパターンの転写が望めないという問題が起きる。この問題を避ける方法として、従来から、薄いレジストをマスクにしてエッチング耐性の高いハードマスクにレジストパターンを転写する方法が採用されていた。しかるに、レジストが薄くなると、ハードマスクをエッチングするときにストライエーションが生じ、このストライエーションがハードマスクに転写されて、ゲート長Lgの分布が生じてしまうという問題もある。
また一方で、従来のArF露光技術及びエッチング技術に従って、例えばシングルダマシン法を用いてCu配線を作製する場合、図16(a)に示すように、トランジスタ作製領域161上にCVD法によりSiO2膜162aを堆積させ、次に、エッチングストッパ層としてSiN膜162bを堆積させた後にSiO2膜162cを堆積させ、CMPストッパー層として再びSiN膜162dを堆積させることによって、層間絶縁膜162を成膜する。次に、この層間絶縁膜162上に、上述のゲート製造方法と同様に、公知のArF露光技術を用いて配線パターンを有するArFレジストマスク(図示せず)を形成する。そして、このArF露光用レジストマスクで覆われた層間絶縁膜162をプラズマ雰囲気中でドライエッチングしてこの層間絶縁膜162に配線パターンを転写することによって、金属配線材料を埋め込むための溝やホール(孔)パターンを層間絶縁膜162に形成する。ここに形成された溝やホールに、バリアメタルとしてTaN163等を公知のスパッタ法により成膜した後にCuめっき法によりCu膜を成膜して金属配線材料を埋め込む。最後に、やはり公知のCMP法を適用することによって、Cu配線164を完成する。
このように従来のパターン転写方法を適用してCu配線164を形成した場合、図16(b)に示すように、ホールや溝等にストライエーションが発生してしまう。このため、図16(c)に示すように、層間絶縁膜を構成するSiO2膜162cのホールや溝パターンのエッジには深いくびれ部分165が生じ、そこにはバリアメタル163が充分に入り込めないのでバリア性能が不十分となり、配線材料としてのCu164が薄膜中に侵入拡散して近接配線同士が短絡するという問題が発生する。この短絡の程度が軽いときには電流漏洩の原因になるし、経時変化があると製品の市場不良の原因にもなる。ここで、製品の市場不良とは、半導体装置搭載の製品が、市場で流通している期間に不良を発生することをいう。
半導体の配線は一部でも細いところがあると、その部分で断線を起こしやすい。その細さが一定値を下回らないようにするには、設計段階で配線を太くする。しかし、その分、半導体装置のチップ面積が大きくなり、一枚のウエハから取れる設計チップ数が減るのでコストを押し上げることになる。そのため、仕上がりの線幅がばらつきのないものを作製することが必要になる。
レジストマスクを用いて層間絶縁膜(電気絶縁膜)をドライエッチングすると、まずレジストが変形し、この変形したレジストマスクで層間絶縁膜がエッチングされるので、レジストマスクの変形が膜パターンの変形として転写される (この変形がストライエーションである)。半導体装置の配線は、このストライエーションの発生した溝中にバリアメタル膜とCu膜を埋め込むことで形成されるので、溝内のストライエーションは配線のストライエーションとして転写される。半導体装置の配線の層数は、通常のシステムLSIやメモリーデバイス等では10層を超えるものもあるので、歩留まり低下の原因になるストライエーションを低減することは、製造コスト低減のために重要である。
200nm以上の線幅や線同士の間隔を有するパターンの転写であれば、KrF露光用のベンゼン環を有するレジストをマスクとして用いることによって、ストライエーションの発生を抑制可能ではある。KrF露光に際して用いるレジストは、ドライエッチの際にチャンバー内で発生させるプラズマによる紫外線照射や、エッチングガスのC3F8が分解して発生するフッ素ラジカルに対する耐性が高い。このため、レジストの不規則な変形であるストライエーションは比較的に小さく、また、設計線幅がストライエーションに比べて大きいので、問題にはならない。しかし、130nm以下、特に100nm以下の半導体世代になると、ArFレーザーを用いた露光技術を使うことから、このときのレジストは、その化学構造が紫外線照射やフッ素ラジカルに敏感な構造となるため、ストライエーションがKrF露光のレジスト(ベンゼン環を含む化合物)よりも大きくなってしまう。よって、線幅に対するストライエーションの割合が大きくなって、半導体装置の製造歩留まりを低下させるという問題が発生している。
上述のストライエーション問題を解決するために、フロロカーボンガスを含有する混合ガスを低圧のプラズマ雰囲気中に導入して、ArF露光方法で形成したレジストをマスクとして膜(層間絶縁膜)をドライエッチングする技術が従来提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、低圧でドライエッチングすることにより、ストライエーションの発生が抑制できてもエッチング速度が低下するので経済的実用性に乏しい。
本出願人は、上記ストライエーションの発生を抑制して高いエッチング加工精度が得られる層間絶縁膜のドライエッチング方法として、ArF露光(フォトリソグラフィ)法を用いて形成したレジストマスクで覆われた層間絶縁膜を、エッチングガスとして、ハロゲン系ガス(ハロゲンは、F、I、Br)であって、I及びBrの少なくとも一方が、原子組成比でハロゲンの総量の26%以下で、残りがFであるフッ化炭素化合物ガスを導入しつつ、プラズマ雰囲気中でドライエッチングしてホールや溝を微細加工する層間絶縁膜のドライエッチング方法についてすでに提案している(例えば、特許文献3参照)。しかし、この先願には、このエッチング方法が、パターン寸法が130nm以下を必要とする半導体装置の製造に対して有用であることは記載されていない。
特開平11−31678号公報(特許請求の範囲等)
特開2005−251814号公報(例えば、特許請求の範囲等)
特開2006−108484号公報(例えば、特許請求の範囲等)
Koji Nozaki and Ei Yano,FUJITSU Sei.Tech. J., 38,1 P3-12(June 2002)
上述のように、従来の半導体装置においては、130nm以下、特に100nm以下の微細パターンを含む半導体装置を製造する方法として、ArF露光技術を使用しなければならないため、ゲート長、配線幅又はコンタクトホール径等のパターン寸法に対するストライエーションの割合が増大したことから、半導体装置の製造歩留まりが低下するという問題があった。
本発明は、上記従来技術の問題を解決するために、ArF露光技術を用いて形成された130nm以下の微細パターンであっても、脆弱なArF露光用レジストマスクを損傷せずにエッチングできるようにすることによって、ストライエーションの発生を抑制して製造歩留まりを向上させることができるようにした半導体装置及びその製造方法の提供を目的とする。
本発明の課題はまた、脆弱なArF露光用レジストを損傷せずにエッチングできるドライエッチング方法及びこのドライエッチング方法を利用した配線材料の作製方法の提供にある。
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、ArF露光技術を用いて形成されたパターンを有するレジストマスクで覆われた酸化膜をプラズマ雰囲気中でドライエッチングして当該酸化膜に上記パターンを転写する工程を備えた半導体装置の製造方法において、パターン幅及びパターンとパターンとの間隔の両方又はそのいずれか一方が50〜100nmであるパターンを有するレジストマスクで覆われた酸化膜を、エッチングガスとしてC 3 F 7 Iガス又はC 3 F 7 Brガスを用い、また、Arガス又はArガスと酸素ガスとを導入し、エッチャントのF原子数密度の減少したプラズマ雰囲気中でドライエッチングして、パターン幅及びパターンとパターンとの間隔の両方又はいずれか一方が50〜100nmであり、かつストライエーションが5nm未満に抑制されたパターンを該酸化膜に転写する工程を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、パターン幅及び/又はパターンとパターンとの間隔が50〜100nmであるレジストパターンがマスクとなされ、また、エッチングガスとして、安定な化合物でありかつそれ自体Si等に対するエッチャントとしての機能を有するC 3 F 7 Iガス又はC 3 F 7 Brガスが適用されるので、パターン寸法が100nm以下の微細パターンのエッチングに際し、パターン寸法に対して大きな割合となるストライエーションの発生が抑制されると共に、エッチング時の圧力を低下させることに頼らずに、プラズマ雰囲気中のF原子数の密度を減少させるため、レジストマスクへのダメージが軽減される。よって、レジストに損傷(変形や欠損)を与えずに薄膜をプラズマエッチングしてパターン転写することが可能となるため、100nm以下の微細パターンであってもストライエーションという課題を克服しながらホール又は溝等のパターンを形成することができるようになる。従って、精密な薄膜加工が可能になる。
また、レジストマスクから薄膜に転写されたパターンをハードマスクとして、その下地材料を精密にエッチングすることも可能となるから、このハードマスクを介してレジストパターンを下地材料に高精度に転写することができるようになる。
上記薄膜としては、電気絶縁膜を適用可能であり、また、この電気絶縁膜が層間絶縁膜である場合には、転写された上記パターンにダマシン法により更に金属配線材料を埋め込むこともできる。
また、この電気絶縁膜はC又はNを含む材料からなり、その比誘電率が、1.5以上、3.7以下の範囲であることが望ましい。
なお、上記パターンが転写された薄膜をマスクにして当該薄膜の下地材料をエッチングすることも可能であって、この下地材料をゲート電極用の膜又はSi基板とすることができる。
上記ゲート電極用の膜として、W、Ti、Ta、Co若しくはNiを含む導電膜又はポリシリコン膜又は当該導電膜とポリシリコン膜との積層膜を適用することができる。
また、本発明は、DRAM及びフラッシュメモリーから選ばれたメモリー、ロジックデバイス、システムLSI、又はこれらを一部に含む半導体装置及びその製造方法として好適である。上記メモリーは、アスペクト比20以上の高アスペクト比を有するコンタクトホールを有するメモリーであってもよい。
本発明のドライエッチング方法は、ArF露光技術を用いて形成されたパターンを有するレジストマスクで覆われた酸化膜をプラズマ雰囲気中でドライエッチングする方法において、パターン幅及びパターンとパターンとの間隔の両方又はそのいずれか一方が50〜100nmであるパターンを有するレジストマスクで覆われた酸化膜を、エッチングガスとしてC 3 F 7 Iガス又はC 3 F 7 Brガスを用い、また、Arガス又はArガスと酸素ガスとを導入し、エッチャントのF原子数密度の減少したプラズマ雰囲気中でドライエッチングし、パターン幅及びパターンとパターンとの間隔の両方又はいずれか一方が50〜100nmであり、かつストライエーションが5nm未満に抑制されたパターンを転写することを特徴とする。
また、上記ドライエッチング方法において、レジストマスクから薄膜に転写されたパターンをハードマスクとして、その下地材料を精密にエッチングすることも可能となるから、このハードマスクを介してレジストパターンを下地材料に高精度に転写することができるようになる。上記薄膜としては、電気絶縁膜を適用可能であり、また、この電気絶縁膜が層間絶縁膜である場合には、転写された上記パターンにダマシン法により更に金属配線材料を埋め込むこともできる。また、この電気絶縁膜はC又はNを含む材料からなり、その比誘電率が、1.5以上、3.7以下の範囲であることが望ましい。
なお、上記パターンが転写された薄膜をマスクにして当該薄膜の下地材料をエッチングすることも可能であって、この下地材料をゲート電極用の膜又はSi基板とすることができる。上記ゲート電極用の膜として、W、Ti、Ta、Co若しくはNiを含む導電膜又はポリシリコン膜又は当該導電膜とポリシリコン膜との積層膜を適用することができる。
本発明のエッチング装置は、ArF露光技術を用いて形成されたパターンを有するレジストマスクで覆われた薄膜をプラズマ雰囲気中でエッチングする装置において、真空チャンバーと、前記真空チャンバーに設けられた高周波電源に接続された基板電極と、前記基板電極に対向させて設けられた対向電極と、ガス流量制御手段を介してガス源に接続され、前記真空チャンバー内にエッチングガスを導入するガス導入手段を備え、上記エッチングガスとして、ハロゲン化炭素化合物ガス(ただし、ハロゲンがF、I及びBrの少なくとも2種であり、I及びBrの少なくとも1種が原子組成比でハロゲン原子総量の26%以下である)を上記ガス導入手段によりチャンバー内に導入し、パターン幅及びパターンとパターンとの間隔の両方又はそのいずれか一方が32〜130nmであるパターンを有するレジストマスクで覆われた薄膜をエッチングするように構成されたことを特徴とする。
本発明における上記パターンが、コンタクトホールパターンである場合には、ホール径及びホールとホールとの間隔の両方またはそのいずれか一方が50〜100nmであっても適用できる。
本発明によれば、パターン寸法が130nm以下の微細パターンをエッチングして半導体装置を製造する場合に、レジストマスクに損傷(変形や欠損)を与えずに薄膜のプラズマエッチングが可能となるため、130nm以下の微細パターンであっても精密な薄膜加
工が可能になる。よって、ストライエーションという課題を克服しながら絶縁膜にホールや溝を形成することができるので、当該絶縁膜パターンをマスクにして、その下地材料を精密にエッチングすることでレジストパターンを下地材料に精密に転写することができる。このため、ストライエーションのないホールや溝等を形成できるので、精密な寸法の配線やトランジスタのゲート等を備えた半導体装置を製造することができる。従って、130nm以下のパターンであっても、パターン周辺の変形等の損傷を50nm以下に抑制することができるから、設計値通りに機能する半導体装置を歩留まりよく提供できるようになる。
また、本発明で用いるエッチングガスの効果はパターン寸法に依存しないので、90nm世代、65nm世代、45nm世代の半導体装置の製造にも有効である。
本発明に係る半導体装置及びその製造方法、並びに薄膜のドライエッチング方法及びこのドライエッチング方法を用いた配線材料の作製方法を実施するための最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る半導体装置の一例を示す模式的断面図である。本実施形態の半導体装置aでは、シリコン結晶1表面の一部がゲート酸化膜2で覆われると共に、シリコン結晶1中には、素子分離(STI:Shallow
Trench Isolation)構造3、深いソースとドレイン4、及び浅いソースとドレイン5が配される。また、ゲート酸化膜2上には、ポリシリコン膜11aとタングステン(W)膜11bとの積層膜からなるゲート電極11が配される。これらのソースドレインと電気的に接続するタングステン配線12が、バリアメタル膜(TiN膜)10と銅(Cu)13とからなる上層配線に接続されるとともに、これらのタングステン配線12を相互に電気的に絶縁するBPSG膜7が下層SiO2膜6と上層SiN膜8とに挟まれる。同様に、このSiN膜8上には、バリアメタル10とCu13とからなる上層配線を相互に絶縁するためのTEOS−SiO2膜9が成膜されて構成される。
本発明では、絶縁膜をエッチングするガスとして、安定な化合物を形成すると共にそれ自体Siに対するエッチャントとしての機能を有するI及びBrの少なくとも一方を含有するフッ化炭素化合物ガスを用いる。このフッ化炭素化合物ガスとしては、ヨウ素化フッ化炭素化合物ガス及び臭素化フッ化炭素化合物ガスのいずれか一方、又はこれらの混合ガスである。
このようなエッチングガスにより損傷することなくドライエッチングされてレジストマスクから転写されたパターンを有する薄膜を備えるので、本実施形態に係る半導体装置aでは、STI3、ゲート電極11、W配線12及びCu配線13等のパターン構造にストライエーションがない。よって、ゲート長Lgの分布が小さくシャープなオンオフ特性を有するトランジスタと、配線間リークが低減された配線とを備えることが可能となる。また、ストライエーションに起因したCu拡散等の経時変化に基づく不良発生率も少ない。
ここで、図2を参照し、本発明で用いるエッチング装置について説明する。このエッチング装置21は、磁場ゼロを含む領域に発生させた放電プラズマ(NLDプラズマ)を用いるものであり、ドライポンプ又はロータリーポンプやターボ分子ポンプ等の真空排気手段22を設けた真空チャンバー23を有する。
チャンバー23は、石英のような誘電体製の円筒状側壁23cを有する上部のプラズマ発生室23aと下部の基板処理室23bとから構成されている。円筒状側壁23cの外側には、三つの磁場コイル24a、24b及び24cが所定の間隔を置いて設けられ、磁場発生手段を構成する。三つの磁場コイル24a、24b及び24cは、その外側を上下から囲むように高透磁率材料製のヨーク部材25に取付けられている。この場合、上側及び下側の各磁場コイル24a及び24cには、同方向の電流を流し、中間のコイル24bには逆向きの電流を流すようにしている。これにより、中間のコイル24bのレベル付近に円筒状側壁23cの内側に連続した磁場ゼロの位置ができ、環状磁気中性線が形成される。
環状磁気中性線の大きさは、上側及び下側の各コイル24a及び24cに流す電流と中間のコイル24bに流す電流との比を変えることで適宜設定でき、環状磁気中性線の上下方向の位置は、上側及び下側の各磁場コイル24a及び24cに流す電流の比によって適宜設定できる。また、中間のコイル24bに流す電流を増していくと、環状磁気中性線の径は小さくなり、同時に磁場ゼロの位置での磁場の勾配も緩やかになってゆく。中間のコイル24bと円筒状側壁23cとの間には、高周波電場発生用のアンテナ26aが設けられ、このアンテナは高周波電源26bに接続され、磁場発生手段を構成する。そして、三つの磁場コイル24a、24b及び24cによって形成された環状磁気中性線に沿ってNLDプラズマを発生させる。
基板処理室23b内には、環状磁気中性線の作る面と対向させて処理基板Sが載置される基板載置部である断面円形の基板電極27が絶縁体28を介して設けられている。この基板電極27は、コンデンサー29aを介して第2高周波電源29bに接続され、電位的に浮遊電極となって負のバイアス電位となる。
また、プラズマ発生室23aの上方の天板23dは、円筒状側壁23cの上部に密封固着され、電位的に浮遊状態とし対向電極を形成する。この天板の内面には、チャンバー23内にエッチングガスを導入するガス導入手段30が設けられ、このガス導入手段30は、ガス流量制御手段(図示せず)を介してガス源に接続されている。このような構成のエッチング装置21において、Arとエッチングガス(例えば、C3F7Iガス)とを導入して薄膜をエッチングすることによって、ストライエーションのないパターン形成が可能となる。
次に、本発明に係る半導体装置の製造方法の適用例として、トランジスタ作製工程からシングルダマシンCu配線形成工程までを含む半導体製造工程のモデル工程を、図3乃至10を参照して以下に説明する。各工程間には洗浄や測定等の工程があるが、その説明は本発明とは直接関係がないので除外する。
まず、図3(a)に示すように、シリコンウエハ31を準備し、公知の酸化炉を用いて約900℃で酸化膜を約10nm成長させ、図3(b)に示すように、SiO2膜32を形成する。次に図3(c)のように、公知のLP−SiN炉を用いて約800℃でSiN膜33を90nm程度成膜してから、ArF露光法を用いて100nmの溝パターンを有するレジストマスク34を形成する。
このレジストマスク34で覆われたSiO2膜32とSiN膜33とを、図3(d)のように、ハロゲン化炭素化合物ガス(ただし、ハロゲンがF、I及びBrの少なくとも2種であり、I及びBrの少なくとも1種が原子組成比でハロゲン原子総量の26%以下である)を用いてエッチングし、図3(e)に示すように、レジストマスク34をアッシング除去してハードマスク32、33を形成する。このとき、ハードマスク32、33には、ストライエーションは認められない。このハードマスク32、33の下地材料であるシリコンウエハ31をさらにエッチングすることによって、図3(f)に示すように、シリコンウエハ31中に、幅100nmのトレンチ(溝)パターン35を形成する。パターンを転写するハードマスク32、33が滑らかなので、この溝パターン35にもストライエーションは発生しない。
このように溝パターン35の形成されたシリコンウエハ31を約900℃で酸化した後、図4(a)に示すように、約400℃のHDP(High Density
Plasma、高密度プラズマ)−SiO2膜41により溝パターン35を埋め込む。そして、公知のHDP−CMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)を適用して平坦化し(図4(b))、約850℃の酸化工程を経てから、例えば公知のICPエッチャーによるSiN剥離工程を実施した後、希フッ酸(HF)を用いた酸化膜除去工程によって、図4(c)に示すように、平坦化された表面とSTI構造35aとを備えたシリコンウエハ31を得る。
次に、図4(d)に示すように、約850℃での酸化工程によりゲート酸化膜42を成長させ、図4(e)に示すように、公知のCVD法を用いてポリシリコン膜43を150nm成膜し、さらにW膜44を200nmほど成膜してゲート電極用の膜を積層させた後、ハードマスク用のPE−TEOS(テトラエトキシシラン)−SiO2膜45を200nm成膜する。
図4(f)のように、ArF露光法によるゲート露光工程でゲート電極パターン46を形成し、このパターン付レジストマスク46を用いて、上述のハロゲン化炭素化合物ガス(ただし、ハロゲンがF、I及びBrの少なくとも2種であり、I及びBrの少なくとも1種が原子組成比でハロゲン原子総量の26%以下である)を用いて図2のエッチング装置21によりTEOS−SiO2膜45を50%オーバーエッチングを含めて300nm分エッチングして、図4(g)に示すハードマスク45を形成する。このハードマスク・エッチング工程では、ストライエーションが発生しないので、なめらかな形状のハードマスク45を形成可能である。
次に、図5(a)に示すように、ゲートエッチとして、W膜44とポリシリコン膜43とを、公知のICPエッチャー等でエッチングすることによって、ゲート電極51を完成する。レジストパターン46は、このエッチング時にエッチアウト(消失)してしまう。また、ここでも本発明によりストライエーションの発生を抑制して形成されたハードマスク45からゲート電極51にパターンが転写されるので、ゲート電極51には、ストライエーションは認められない。
次に、酸化膜再成長工程を約850℃で実施した後、As:1×1015/cm2をイオン注入してソースドレイン(SD)の浅い注入LDD(Lightly doped
drain)52を形成する。
その後、図5(b)に示すように、約400℃のPE−CVD工程によりSiN膜53を成長させ、RIE(Reactive Ion
Eching:反応性イオンエッチング)を用いて図5(c)に示すサイドウオール53cを形成する。そして、このサイドウオール53cをマスクとしてAs:5×1015/cm2をイオン注入してから850℃で30分間アニールすることによって、ソースドレイン54を形成する。
次に、図5(d)のように、PE−SiN膜55を100nm程度成膜させた後、図5(e)に示すように、BPSG(boro-phospho silicate glass)膜56を700nm成長させてから800℃でアニールする。そして、公知のILD−CMPを適用してBPSG膜56を突起部が無くなるように研磨除去することによって、図6(a)に示すように、平坦化された第1層間絶縁膜56aを形成する。
次に、図6(b)に示すように、平坦化された絶縁膜56a上に、CVD法によるTEOS−SiO2キャップ膜61を約400℃で成長させてから、図6(c)に示すように、ArF露光法により直径約100nmのコンタクトホールパターン62を有するレジストマスク63を形成する。このレジストマスク63で覆われたTEOS−SiO2膜61を
上述のハロゲン化炭素化合物ガスによりストライエーションを発生させることなくエッチングし、続けて下層のBPSG膜56a、PE−SiN膜55及びゲート酸化膜42もエッチングし、図6(d)に示すようなコンタクトホール64を形成する。
コンタクトホール64のアスペクト比は、DRAM等のメモリーでは10以上が普通であって、アスペクト比が20以上となることも多く、50以上となる場合も少なくないが、本発明に係るエッチング技術を適用すると、レジスト劣化が抑制されるため、TEOS−SiO2膜61、BPSG膜56a及びPE−SiN膜55からなる絶縁膜層に深いコンタクトホールをエッチングにより形成する場合に、レジストとの選択比を容易に10以上と高く維持できるようになるので、例えば、アスペクト比20以上のようなアスペクト比の高いコンタクトホール(High Aspect Ratio Contact Hole: HARC)のエッチングに最適である。通常、レジストマスク63の厚さは200〜300nm程度であるから、コンタクトホール径が32nm〜130nmのパターンであれば、アスペクト比が100程度であっても、本発明を適用できる。本発明によれば、従来のHARCエッチング技術のように、バイアスパワーを抑制して基板バイアスを低く抑える必要がなくなるので、アスペクト比20以上のHARCエッチングであっても、ストライエーションの発生を抑制して良好な形状のパターンを形成できる。
次に、公知のアッシング法によりレジストマスク63を剥離し、図7(a)に示すように、バリアメタル71として、TiN膜を約20nmCVD成膜してから、図7(b)に示すように、CVD−W膜72を約50nm成膜することによって、コンタクトホール64を埋め込む。続いて、公知のW−CMP法を用いてバリアメタル71をストッパーとして余分なW膜を研磨除去した後バリアメタル膜71も除去することによって、図7(c)のようなWプラグ73を形成する。これらのWプラグによりソースドレイン54及びゲート電極51との電気接続をとることになる。なお、ゲート電極51へのコンタクトプラグは図示しない。
このようにして形成されたトランジスタに、シングルダマシン工程によりCu配線を形成する方法を以下に述べる。図7(d)に示すように、まず公知のプラズマCVD法によって、PE−SiNキャップ膜74を約400℃で約50nm成長させる。
同様にして図8(a)のように、プラズマCVD法によりTEOS−SiO2膜81を約250nm成膜させてからPE−SiN膜82をPE−SiN膜74と同じく50nm成長させる。続いて、ArF露光法を用いて配線パターン83を有するArFレジスト膜84を約200nmの厚さで形成する。配線パターン83は、配線幅及び/又は配線間隔が130nm以下の微細配線であって、より微細化を進めるために、100nm以下であってもよい。
次に、上述の本発明に係るハロゲン化炭素化合物ガスを用いたドライエッチングによって、このArFレジストマスク84からPE−SiN膜82にストライエーションを発生させることなくパターンを転写し(図8(b))、さらに図9(a)に示すように、下層のTEOS−SiO2膜81までエッチングを継続する。これによって、配線パターンがストライエーションのない滑らかな側壁を備えて層間絶縁膜81に溝パターンとして形成される。
その後、通常のマイクロ波アッシャーによりレジストマスク84を剥離し、さらにICPエッチング装置によりSiNエッチを施すことによって、図9(b)のように、配線用の溝83aの底部からSiN膜74を除去する。
次に、図10(a)に示すように、公知のスパッタ法を用いてTaN膜を約10nm成膜してからTa膜を約15nm成膜することによって、バリアメタル膜101を形成し、さらにCuめっき法によりCu膜102を約1μm成膜した後、約200℃でのアニールを施す。最後に、CMP法を用いて、図10(b)に示すように、バリアメタル膜101のTa膜をストップ層として、余分のCu膜を研磨除去する。これによって、レジストマスク84から転写されたパターン、すなわち配線用の溝83aにダマシン法により金属配線となるCu102bを埋め込む。
上述の本実施形態に係るCu配線102b によれば、本発明に係るエッチング方法を適用して滑らかに形成された溝パターン83にバリアメタル膜101及びCu膜102を埋め込むから、図16に示す従来のCu配線164のようなストライエーション165がないので、層間絶縁膜81へのCuの拡散は起こりえない。よって、本実施形態に係る半導体装置aでは、従来のCu配線164でのストライエーション165に起因したCu拡散に伴う配線間リーク等の不良発生を、配線幅及び/又は配線間隔が130nm以下の微細パターンであっても完全に防止できるので、半導体装置の製造歩留まりを著しく向上させることができる。
ここで、本発明で用いるエッチングガスについて詳述する。本発明では、上述したように絶縁膜をエッチングするガスとして、安定な化合物を形成すると共にそれ自体Siに対するエッチャントとしての機能を有するI及びBrの少なくとも一方を含有するフッ化炭素化合物ガスを用いる。このフッ化炭素化合物ガスとしては、ヨウ素化フッ化炭素化合物ガス及び臭素化フッ化炭素化合物ガスのいずれか一方、又はこれらの混合ガスである。
ヨウ素化フッ化炭素化合物ガス及び/又は臭素化フッ化炭素化合物ガスを、Cn(Hal)2n+2(式中、Halはハロゲン原子を表し、n=1〜3)と表現する。好ましくは、CF3I、CF3Br、C2F5I、C2F5Br、C3F7I、C3F7Br、C3F6I2、C3F6Br2の中から選択された少なくとも1種、又はこれらのフッ化炭素化合物ガスとHI若しくはHBrとから選択された二種以上を含有する混合ガスであることが好ましい。nの数が3を超えると、エッチングの際にチャンバー内が汚染される等の不具合が生じ、実用的でない。
また、エッチングガスとしては、C2F4I2などのヨウ素化フッ化炭素化合物ガスやC2F4Br2などの臭素化フッ化炭素化合物ガスも用いることもできる。この場合、原子組成比でハロゲンの総量の26%以下になるように、CF4ガスなどを添加して利用する。
さらに、エッチングガスは、HI及びHBrの少なくとも一方と、テトラフルオロエチレンのような過フッ化炭素化合物(Cn(Hal)2n(式中、Halはハロゲン原子を表し、n=1〜3))ガスとの混合ガスであってもよく、エッチングガスとして、CF3Iと過フッ化炭素化合物との混合ガス、CF3Brと過フッ化炭素化合物との混合ガスを用いてもよい。
上記エッチングガスは、CF4とC2F4I2又はC2F4Br2との混合ガスとしてもよいし、HI及びHBrの少なくとも一方と過フッ化炭素化合物との混合ガスとしてもよいし、CF3Iと過フッ化炭素化合物との混合ガスとしてもよいし、CF3Brと過フッ化炭素化合物との混合ガスとしてもよい。
本発明のエッチングによる反応生成物のデポジションの量を調節してエッチングしたホールや溝が埋まってしまうのを防止するために、エッチングガスに、チャンバー内に導入するガスの総流量に対して3〜15%程度の酸素を添加することが好ましい。この場合、3%未満では、上記効果を達成することができず、また、デポジションの量を調節することができなくなる。他方で、15%を超えると、ArFレジストがダメージを受けてエッチングされてしまう。
上記エッチング装置21を用いて、エッチングされる絶縁膜としては、SiO2などの酸化物膜、HSQやMSQのようにスピンコートによって形成されたSiOCH系材料、或いはCVDによって形成されるSiOC系材料もしくはCVD法により形成されるSiOF膜で比誘電率1.5〜3.7のLow−k材料であり、多孔質材料を含む。
SiOCH系材料としては、例えば、商品名NCS/触媒化成工業社製、商品名LKD5109r5/JSR社製、商品名HSG−7000/日立化成社製、商品名HOSP/Honeywell Electric Materials社製、商品名Nanoglass/Honeywell Electric Materials社製、商品名OCD T−12/東京応化社製、商品名OCD T−32/東京応化社製、商品名IPS2.4/触媒化成工業社製、商品名IPS2.2/触媒化成工業社製、商品名ALCAP−S5100/旭化成社製、商品名ISM/ULVAC社製等がある。
SiOC系材料としては、例えば、商品名Aurola2.7/日本ASM社製、商品名Aurola2.4/日本ASM社製、商品名Orion2.7/TRIKON社製、商品名Coral/Novellus社製、商品名Black Diamond/AMAT社製等がある。また、商品名SiLK/Dow Chemical社製、商品名Porous-SiLK/Dow Chemical社製、商品名FLARE/Honeywell Electric Materials社製、商品名 Porous FLARE/Honeywell Electric Materials社製、商品名 GX‐3P/Honeywell Electric Materials社製等などの有機系の低誘電率層間絶縁膜であってもよい。
ここで、本発明に到った経緯を説明すると共に、本発明の原理を考察する。例えば誘導結合方式(ICPプラズマ)のエッチング装置(図示せず)を用い、1〜3Paの作動圧力下で、フロロカーボンガス(CxFy)を含有するエッチングガスをプラズマ雰囲気中で導入してシリコン酸化膜エッチングを行うと(この場合、Arプラズマ密度は〜1×1011cm−3である)、レジストマスクはプラズマに曝されてダメージを受けて、レジストマスクのエッジ部に荒れと変形(エッジ荒れ)が生じる(ストライエーションと呼ぶ)。この状態で酸化膜エッチングを継続すると、その形状がホールや溝に転写されて膜のストライエーションが発生する。
本発明で用いるNLD装置21を用いると、通常圧力(1Pa以上)より低い圧力(0.3−0.7Pa)でもプラズマ放電が可能である。これを用いてC3F8ガスで低圧でエッチングするとストライエーションを抑制できる傾向にあることを見出した。一般にC3F8ガスを分解して発生する分解種にはF、CF、CF2、CF3等があるが、この中でF以外の分子ラジカルは主に重合前駆体としての働き、レジストに対するエッチャントとしての働きは低い。このことから、F原子ラジカルがレジストのC=O基や他の官能基と反応し、レジストマスクを脆弱化させるものと考えた。このことから、ストライエーションを抑制するためには、このFラジカルを排除する反応が有効であると推測した。
CxFyでなくエッチングガスとしてC3F7Iを用いると、同じ圧力でもレジストのエッチング速度が低下した。このときレジストのエッチング速度が減少するのは、レジストマスクのエッチャントであるFラジカルが気相中においてIと反応し、IF3、IF5、IF7等を形成するためFラジカルが減少するからと考えた。
上記考察を実証するために、以下に具体的な実施例を記載する。
本発明では、絶縁膜をストライエーションなしでエッチングすることが基本であるので、この実施例では、絶縁膜としてシリコン基板(ウエハ)上にTEOSガスからプラズマCVD法により膜厚300nm狙いで成長(堆積)させた酸化膜(TEOS−SiO2)を準備した。
そして、この絶縁膜を覆うように反射防止膜に続けてArF露光用レジスト膜を塗布成膜した後、ArF露光技術を用いて幅100nmの溝を含む配線パターンを形成した。そして、この配線パターンを有するレジスト膜で覆われた絶縁膜をプラズマ雰囲気中でドライエッチングした。
上記エッチングには、エッチング装置21において、ArとエッチングガスであるC3F7Iガスとを2.67Paの圧力下で真空チャンバー23内に導入し、絶縁膜をエッチングして100nmの溝を形成し、レジストを剥離した。このときArの流量を230sccm、C3F7Iの流量を50sccm、酸素の流量を20sccmに設定して行った。また、プラズマ発生用高周波アンテナコイル26aに接続した高周波電源26bの出力を1kW、基板電極27に接続した高周波電源29bの出力を0.3kW、基板温度10℃に設定して行った。
得られた溝の状態を基板上面から観察したSEM写真を図11(a)に示す。絶縁膜111aに幅100nmの溝パターン112aが滑らかに形成され、溝パターン112aの底部には下地材料のシリコン結晶が観察された。このように、本実施例では、溝内のストライエーションの発生が3nm未満に抑制されていることが確認された。よって、本発明によれば、配線用溝パターンのストライエーションに起因する不良が発生しないことが明瞭なので、このストライエーションに起因した不良による歩留まり低下を完全に防止できることが実証された。
従来技術と比較のために、同じ装置条件でC3F7Iガス代えてC3F8ガスを用いて得られた形状を図11(b)に示す。従来例では、絶縁膜111bに約100nmの幅で溝パターン112bが形成されていたが、溝内にストライエーション113が発生したため、設計値100nmの配線幅が、エッチング後には100nm±15%もの分布を持つことを確認した。従来技術では、このようにストライエーション113の発生した配線用の溝112bに金属配線材料が埋め込まれてしまうので、上述したCu拡散等により配線工程での歩留まりが低下してしまうのである。
なお、ここではC3F7Iガスを使用した実施例を記載したが、C3F7Brガスを適用しても、同様の効果を奏してストライエーションのない溝パターンが得られた。
本実施例では、Cuダマシン法に従って、半導体装置のCu配線を形成する方法について説明する。一層分の形成工程の基本部分について説明するが、2層以上の配線を形成するときには、以下の手順を繰り返し又は若干修正することにより形成できる(図12(a)乃至(c)参照)。
(1)まず、プラズマCVD法により、400℃でSi基板121上にTEOS−SiO2膜122aを250nm成膜し、続けてcap−SiN膜122bを50nm厚さに成長させた。
(2)このSiN膜122b上に、Cu配線を形成する予定のTEOS−SiO2層間絶縁膜122cを、公知のプラズマCVD法により400℃で200nmの厚さに形成し、さらにプラズマCVD法で400℃でCMPストッパーとしてのプラズマシリコン窒化膜(p−SiN)122dを膜厚:30nmで成長させた。
(3)このSiN膜122d上に、ArF露光のためのレジスト(Shipley社製の商品名:UV−6)をコートした。この場合、下の層からの光の反射を防止するために、反射防止膜(BARC(東京応化工業社製))をコートした後に、ArF露光用のレジストを300nmの厚さにコートした。
(4)このレジスト膜に、公知のArF露光装置を用いて、100nm幅の配線パターンを転写した。
(5)配線パターンを溝として現像した。
(6)次いで、SiN膜122dとSiO2層間絶縁膜122cとを、以下のプロセス条件で、200nmエッチングし、このSiO2膜122c内に溝を形成した。
・エッチングガス:O2添加してArガスで希釈したC3F7Iガス。比較のために、C3F7Iガスに代えてC3F8ガスを用いた従来例も実施した。
・Arガス流量:230sccm
・C3F7Iガス流量:50sccm(C3F8ガス流量も同じとした)
・O2ガス流量:20sccm
・圧力:2.67Pa
・アンテナ高周波電力:1kW
・基板高周波電力:0.3kW
・設定基板温度:10℃
(7)アッシングによりレジストを除去した。
(8)洗浄後に、上記形成された溝内にスパッタ法によりTaN膜123を10nm厚さで均一に成長させた。
(9)このTaN膜上に、Cuシード層を30nmスパッタリングしたあと、公知のCuメッキを行い、膜厚500nmのCu膜を形成した。
(10)CMP法でCu膜を研磨除去した。この場合、SiN膜122dの表面で止めることによって、Cu配線124を得た。
(11)洗浄した後、得られた試料の上面を観察した。
上記工程(1)〜(11)を経て得られた試料の断面構造を図12(a)に示すと共に、試料の上面図を図12(b)に、また、図12(a)の線X−Xで切断したCu配線の上面図を図12(c)に模式的に示す。
図12(b)から明らかなように、本発明に従って行ったエッチングの結果、溝にはストライエーションは観察されなかったが、図16(b)及び(c)に示したように、従来のエッチングガスを用いた場合は、溝にストライエーション165が発生していた。このようなストライエーション165が発生していると、この溝をTaN膜163で埋め込むとき、深くくびれた部分にはTaN163が十分に成長しないで薄く成長するか、又はこの部分には成長しないことが分かった。このTaN膜163は、Cu膜が層間絶縁膜162c内へ侵入して拡散するのを防ぐバリア膜としての機能を有するため、その機能が不十分であると半導体特性が不良となり、製品歩留まりの低下となる。
図16(a)の線X−Xで切断し、配線断面を上から観察し、ストライエーション165部分を拡大した場合を、模式的に図16(c)に示す。図12に示す本発明の方法で形成したCu配線の実験では、ストライエーションはない。一方、図16(b)に示すC3F8ガスを用いた従来方法の場合では、ストライエーション165が発生した配線が形成された。図16(c)中のA部分は一部でCuと層間絶縁膜162cとが接触に近い状態となっていることが分かる。
これに対して、本発明による実施例では、図12から明らかなように、溝形成時にストライエーションが発生しないので、製造仕上がり寸法が配線全体にわたって許容値内で一定なので局所的に細い部分がなくなる。
配線幅の局所バラツキがあると従来は一番細くなるところが設計値を下回ることが起きないように線幅の設計値を太くする。本発明によれば、小さな余裕を与えて線幅を設計できるのでチップを小さく設計できる。よって従来の場合よりもコストを下げることができ、価格競争力を獲得できる。
また、ストライエーションによる鋭い凹みが発生するとバリアメタル膜(TiN膜やTaN膜等)の膜厚が薄くなる部分が出来てCuがそこから拡散する弊害があるが、本実施例によるパターン転写法では、全体にわって凹みが発生しないのでバリアメタルのCu拡散バリアとしての機能の信頼性が高まる。従来技術による配線のようなストライエーションに起因した不良を防止できるので、半導体装置aの製造歩留まりを向上させることが可能となる。
なお、上記のエッチングにおいて、層間絶縁膜(膜厚:200nm)をエッチングする場合に、C3F7Iガスの代わりに、エッチングガスとしてC3F8とI原子を含むIH等の混合ガスを用い、エッチングを行う際に反応室で反応させてC3F7Iガスを生成させ、このガスを真空チャンバー内へ導入する方法も考えられる。この方法は、技術的に可能であり、同様な効果を期待できるが、制御するパラメータが増えるので量産向きではない。
本実施例では、本発明に係る半導体装置aに含まれるゲートを正確に作製するための主要な工程部分を説明する。図13(a)乃至(c)及び(a')乃至(c')に主要工程で得られた半導体装置の断面図及び上面図を、それぞれ模式的に示す。ゲート作製前のトランジスタの絶縁分離工程やゲート絶縁膜の製造工程、また、ゲート材料をエッチングした後のサイドウオール形成やソースドレインの拡散工程は公知の方法に従って実施できるので、ここでは説明しない。
ゲート作製工程:
(1)シリコン(Si)ウエハ131上にゲート酸化膜132を所定膜厚成長させた後、ドープアモルファスSi(a−Si)膜133aを200nm厚さで、公知のCVD法により500℃で成膜させた。
(2)このa−Si膜133a上に、400℃でタングステン(W)膜133bを200nm厚さで、CVD成長させた。
(3)次に、700℃で30分間アニール処理した。こうして、ゲート電極用の膜133を形成した。
(4)上記タングステン膜133b上に、ハードマスクとしてプラズマ酸化膜(TEOS−SiO2)134を、400℃で200nm厚さに成長させた。
(5)このハードマスク134上に、ArF露光のためのレジスト(Shipley社製の商品名:UV−6)136をコートした。この場合、下の層からの光の反射を防止するために反射防止膜(BARC)135をコートした後、ArF露光用のレジスト136を300nm厚さにコートした。
(6)次いで、80nm幅のゲートパターンを公知のArF露光装置を用いてレジストに転写した。これによって、図13(a)に示すように、ゲート長80nmのパターンを有するレジストマスクを形成した。
(7)プラズマ酸化物膜134を、以下のプロセス条件で、200nmエッチングした。
・エッチングガス:O2添加してArガスで希釈したC3F7Iガス。比較のために、C3F7Iガスに代えてC3F8ガスを用いた場合(従来技術、図15参照)も実施した。
・Arガス流量:230sccm
・C3F7Iガス流量:50sccm(C3F8流量も同じ)
・O2ガス流量:20sccm
・圧力:2.67Pa
・アンテナ高周波電力:1kW
・基板高周波電力:0.3kW
・ 設定基板温度:10℃
(8)レジスト136及び反射防止膜135を剥離した(図13(b)参照)。このとき、ハードマスク134bには、3nm以上のストライエーションは認められず、なめらかな外観であった。
(9)次に、HBrガスを用いて、W膜133bを200nm及びポリシリコン膜133aを200nmエッチングすることによって、図13(c)に示すように、ゲート電極構造137を作成した。
(10)最後に、ハードマスク134bを残したまま、洗浄し、再酸化した。
上記工程(1)〜(10)を経て得られたゲート電極構造137では、ハードマスク134bを形成するときにストライエーションが発生せずにレジストマスク136のパターンが転写されているので、なめらかな側壁を有するハードマスク134bから、更にエッチングによりこのパターンが転写されてゲート電極構造137が形成された。よって、レジストマスク136から設計値通りのゲート長でゲート電極構造137を形成可能となるから、ストライエーションに起因したゲート長Lgの分布発生を完全に抑制できる。
本実施例では公知の熱酸化膜をゲート酸化膜として用いたが、高誘電率ゲート酸化膜(例えば、HfOx)であっても良い。また、ゲート構造としてアモルファスシリコン膜とタングステン膜との積層構造を用いたが、アモルファスシリコン膜に代えてポリシリコン膜を用いても良いし、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)又はニッケル(Ni)を含むメタル膜(導電膜)単体の場合であっても良い。さらに、本実施例では80nmをゲート長としたが、ArF液浸露光、電子線露光等で解像する、より微細なパターン(50nm位以下まで可能)に対しても適用できる。
従来のC3F8ガスを用いてエッチングした時のパターンでは、図15(c)に示したように、一つのゲートでみたとき、最短と最長で評価して±15%((最大−最小)/(最大+最小)の%表示)のゲート長分布が発生していたが、本発明で得られたパターンでは、図13(c)に示すように、ゲート長の分布範囲は±5%以内であって、エッジ部分の荒れは、5nm未満であった。
よって、本発明によれば、ストライエーションの発生をおさえた方法でエッチングすることにより、従来よりゲート長Lg分布が少ない仕上がりの半導体装置を提供できる。本発明を用いるとSi結晶の側面をチャネルとして利用するトランジスタの作製においても平滑な側面を得ることが可能である。次にその実施例を記載する。
本実施例では、本発明に係る半導体装置の製造方法として、フィン型トランジスタのチャネルの作製方法を説明する。
図14(a)乃至(e)及び(a')乃至(e')は、それぞれ、本発明を適用したフィン型トランジスタのチャネルの作製方法を模式的に示す断面図及び上面図である。フィン型トランジスタでは、Si結晶の側面をチャネルとして使用することから、従来のようにSi結晶のエッチングに際してストライエーションが発生すると、表面散乱によりトランジスタ特性が劣化するという問題がある。
本実施例では、図14(a)に示すように、シリコンウエハ141に熱酸化膜142を100nm成長させてから、反射防止膜143に続けてArF露光用レジスト144を塗布成膜した後、このレジスト膜144を公知のArF露光法を用いてパターン形成することによって、チャネル形成用の微細パターンを有するレジストマスク144を形成した。チャネル電位をゲート電位に追従させるためには、この微細パターンは、通常100nm以下であることが望ましい。
次に、レジストマスク144で覆われた熱酸化膜142を、実施例3と同様のプロセス条件を用いてプラズマ雰囲気中でエッチングし、ハードマスク142bを形成した(図14(b)参照)。このとき、本発明の作用によって、ハードマスク142bにはストライエーションの発生は認められなかった。さらにエッチングガス系をシリコンエッチング可能な塩素(Cl2)とHBrの混合ガスとしてエッチングを継続し、このハードマスク142bからシリコンウエハ141にパターンを転写した(図14(c)参照)。このハードマスク142bからパターンを転写されたシリコンウエハ141dにも、3nm以上のストライエーションは認められなかった。
次に、図14(d)に示すように、ハードマスク142cを約0.5%の希フッ酸により溶解除去することによって、フィン型チャネル141dを作製する。そして、このフィン型チャネル141dのパターンを有するシリコンウエハ141を熱酸化させてゲート酸化膜145を成長させた。これによって、フィン型チャネル141dを作製した。このフィン型チャネル141d上にポリシリコン等からなるゲート電極を公知の方法に従って作製してフィン型トランジスタを完成する。このゲート電極の作成方法については、多数の公知例があるのでここでは述べない。
本実施例によれば、シリコン結晶141に形成されたシリコンの微細ライン141dをその側壁にストライエーションを発生させることなく滑らかに形成することができるため、この側壁をチャネルとして使用するフィン型トランジスタを高精度に制御可能となる。
本発明は、DRAM及びフラッシュメモリーから選ばれたメモリー、ロジックデバイス、システムLSI、又はこれらを一部に含む半導体装置及びその製造方法として利用可能である。
本発明のドライエッチング方法を適用してトランジスタのゲートを作製して得られた半導体装置の模式的断面図。
本発明のドライエッチング方法に用いるエッチング装置の一例を概略的に示す配置断面図。
本発明に係わる半導体装置の製造方法の一実施の形態を説明するために、そのプロセスの最初の工程を示す半導体装置の断面図。
図3のプロセスの次の工程を説明するための半導体装置の断面図。
図4のプロセスの次の工程を説明するための半導体装置の断面図。
図5のプロセスの次の工程を説明するための半導体装置の断面図。
図6のプロセスの次の工程を説明するための半導体装置の断面図。
図7のプロセスの次の工程を説明するための半導体装置の断面図。
図8のプロセスの次の工程を説明するための半導体装置の断面図。
図9のプロセスの次の配線形成工程を説明するための半導体装置の断面図。
実施例1で得られた溝の状態を基板上面から観察したSEM写真(a)及び比較のために行われた従来例の場合のSEM写真。
実施例2の工程(1)乃至(11)で得られた試料の断面構造(a)、その模式的上面図(b)及び(a)の線X−Xで切断した場合の配線断面を示す図(c)。
本発明に係る半導体装置aに含まれるゲートを作製するための主要工程部分を説明するための、半導体装置の断面図(a)乃至(c)及び上面図(a')乃至(c')。
本発明を適用したフィン型トランジスタのチャネルの作製方法を模式的に示す断面図(a)乃至(e)及び上面図(a')乃至(e')。
従来のトランジスタのゲート製造方法を示す半導体装置の断面図(a)乃至(c)及び上面図(a')乃至(c')の概略図。
従来技術に従ってCu配線を作製した場合の断面図(a)、その上面図(b) 及び(a)の線(X−X)で切断した場合の配線断面を拡大した上面図(c)。