しかしながら、上記特許文献1の断熱材では、圧縮機構の発熱が伝達されて高温となったケーシング上壁や膨張機構周辺のケーシング側壁から、膨張機構周辺の冷媒を介して膨張機構に流入する熱を防ぐことはできない。また、ケーシングは高温に保たれ、膨張機構は低温に保たれることから、膨張機構周辺の空間の冷媒は密度差によって対流を生じ、ケーシングの上壁や膨張機構周辺の側壁と膨張機構のケーシング内の露出面との間の熱交換を促進するという問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮機構と膨張機構が1つのケーシング内に収納された流体機械において、断熱材の構成に工夫を加えることにより、膨張機構又は圧縮機構のケーシング内の露出面とその周囲の冷媒との間の熱交換を防いで能力低下や動力回収効果の低下を防止することにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、圧縮機構(50)又は膨張機構(60)のケーシング(31)内の露出面全体を断熱材(90,96)で覆うようにした。
具体的には、第1の発明では、冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷媒回路(20)に設けられる流体機械を対象とする。
上記流体機械は、
ケーシング(31)と、
上記ケーシング(31)に収納されて冷媒を圧縮する圧縮機構(50)と、
上記ケーシング(31)に収納されて冷媒を膨張させる膨張機構(60)と、
上記ケーシング(31)に設けられて上記圧縮機構(50)及び上記膨張機構(60)を連結する回転軸(40)と、
上記ケーシング(31)の内部空間に設けられ、上記圧縮機構(50)又は膨張機構(60)における上記ケーシング(31)内の露出面全体を覆い、上記回転軸(40)が貫通する断熱材(90,96)とを備えている。
上記の構成によると、冷媒回路(20)に設けた流体機械(30)の圧縮機構(50)で圧縮された冷媒は、放熱用の熱交換器で放熱した後に流体機械(30)の膨張機構(60)へ流入する。膨張機構(60)では、流入した高圧冷媒が膨張する。膨張機構(60)で高圧冷媒から回収された動力は、回転軸(40)によって圧縮機構(50)へ伝達され、圧縮機構(50)を駆動するために利用される。膨張機構(60)で膨張した冷媒は、吸熱用の熱交換器で吸熱した後に流体機械(30)の圧縮機構(50)へ吸入される。
このとき、膨張機構(60)は低温に保たれ、圧縮機構(50)は高温に保たれることにより、両者間に温度差が発生する。しかし、断熱材(90,96)は、圧縮機構(50)又は膨張機構(60)のケーシング(31)内の露出面全体を覆っているので、ケーシング(31)の内部空間と断熱材(90,96)で覆われた圧縮機構(50)又は膨張機構(60)との間での熱交換が防止される。このため、能力低下や動力回収効果の低下が防止される。
第2の発明では、上記第1の発明において、上記断熱材(90,96)は、上記ケーシング(31)との固定部(54,67)を境に上記回転軸(40)の軸方向に第1断熱材(90)と第2断熱材(96)とに分割されている。
上記の構成によると、圧縮機構(50)又は膨張機構(60)は、固定部(54,67)によってケーシング(31)に固定されているが、断熱材(90,96)を第1断熱材(90)と第2断熱材(96)とに分割することで、断熱材(90,96)の組付が容易となる。
第3の発明では、上記第2の発明において、上記第1断熱材(90)は、上記回転軸(40)の貫通部から上記ケーシング(31)内面までを覆い、上記ケーシング(31)の内部空間を上記膨張機構(60)が収納される第1空間(48)と、上記圧縮機構(50)が収納される第2空間(49)とに区画している。
上記の構成によると、ケーシング(31)の内部空間を膨張機構(60)が収納される第1空間(48)と、圧縮機構(50)が収納される第2空間(49)とに断熱材(90,96)によって区画することにより、両空間内で対流が行われず、低温の膨張機構(60)のある第1空間(48)は、低温、高密度に保たれ、高温の圧縮機構(50)のある第2空間(49)は、高温、低密度に保たれる。このため、さらにケーシング(31)の内部空間と断熱材(90,96)で覆われた圧縮機構(50)又は膨張機構(60)との間での熱交換が防がれ、能力低下や動力回収効果の低下が防止される。
第4の発明では、上記第3の発明において、上記冷媒回路(20)から冷媒が直接圧縮機構(50)に導入され、該圧縮機構(50)から圧縮された冷媒が上記第2空間(49)に吐出されて該第2空間(49)からケーシング(31)外へ流出するように構成され、
上記断熱材(90,96)は、上記膨張機構(60)を被っている。
上記の構成によると、ケーシング(31)内は高温高圧に保たれる、いわゆる高圧ドーム型の流体機械となる。この場合、ケーシング(31)内の雰囲気との温度差の激しい、低温の膨張機構(60)のケーシング(31)内の露出面全体を覆いながら、第1空間(48)と第2空間(49)とを断熱材(90,96)で区切ることで、冷媒対流が効果的に防止され、物質移動による熱交換が発生せず、さらに効果的に能力低下や動力回収効果の低下が防止される。
第5の発明では、上記第3の発明において、上記冷媒回路(20)から冷媒が直接圧縮機構(50)に導入され、圧縮された冷媒が直接ケーシング(31)外に吐出されるように構成され、
上記断熱材(90,96)は、上記圧縮機構(50)を被っている。
上記の構成によると、ケーシング(31)内は低温低圧に保たれる、いわゆる低圧ドーム型の流体機械となる。このため、膨張機構(60)が高温の吐出冷媒によって加熱されることはなく、その高温の吐出冷媒が膨張機構(60)によって冷却されることはない。そして、ケーシング(31)内の雰囲気との温度差の激しい、高温の圧縮機構(50)のケーシング(31)内の露出面全体を覆いながら、第1空間(48)と第2空間(49)とを断熱材(90,96)で区切ることで、冷媒対流が効果的に防止され、物質移動による熱交換が発生せず、さらに効果的に能力低下や動力回収効果の低下が防止される。
第6の発明では、上記第3乃至第5のいずれか1つの発明において、上記第1断熱材(90)の外周面と上記ケーシング(31)の内周面との間の隙間をシールする弾性変形可能なシール手段(92, 98)を備えている。
すなわち、組立易さや、ケーシング(31)と断熱材(90)の線膨張係数の違いによる、断熱材(90)の熱膨張による破損の防止を考慮すれば、断熱材(90)の外周面とケーシング(31)の内周面との間には、所定の隙間が必要となる。しかし、上記の構成によると、この隙間を設けても、弾性変形可能なシール手段が隙間をシールするため、膨張機構(60)側冷媒と圧縮機構(50)側冷媒とがこの隙間を通って貫流することはない。このため、物質移動による熱交換が発生せず、能力低下や動力回収効果の低下も生じない。
第7の発明では、上記第6の発明において、上記シール手段は、第1断熱材(90)の外周に装着されるOリング(92)とする。
上記の構成によると、組立時には、弾性変形可能なOリング(92)が圧縮されて変形するので、ケーシング(31)内に断熱材(90)を挿入し易い。また、断熱材(90)が熱膨張しても、Oリング(92)が圧縮されるだけで、断熱材(90)は破損せず、逆に断熱材(90)が熱収縮しても、圧縮されていたOリング(92)が元に戻るだけで、断熱材(90)の外周面とケーシング(31)の内周面との間の隙間がシールされる。このため、冷媒対流が防止され、物質移動による熱交換が発生せず、能力低下や動力回収効果の低下も生じない。
第8の発明では、上記第6の発明において、上記シール手段は、第1断熱材(90)の外周に一体に設けられた鍔部(98)とする。
上記の構成によると、組立時には、弾性変形可能な鍔部(98)が圧縮されて変形するので、ケーシング(31)内に断熱材(90)を挿入し易い。また、断熱材(90)が熱膨張しても、鍔部(98)が圧縮されるだけで、断熱材(90)は破損せず、逆に断熱材(90)が熱収縮しても、圧縮されていた鍔部(98)が元に戻るだけで、断熱材(90)の外周面とケーシング(31)の内周面との間の隙間がシールされる。このため、冷媒対流が防止され、物質移動による熱交換が発生せず、能力低下や動力回収効果の低下も生じない。
第9の発明では、上記第6乃至第8のいずれか1つの発明において、上記第1断熱材(90)には、上記第1空間(48)と第2空間(49)とを連通させて該第1空間(48)と第2空間(49)との間の圧力差を緩和させる連通路(93)が形成されている。
上記の構成によると、連通路(93)を通って高圧の冷媒が低圧側の空間内に流れ込むので、第1空間(48)と第2空間(49)との間の圧力差が緩和され、圧力差が激しくなることによる断熱材(90)の破損が防止される。例えば、細い連通路(93)を1つだけ設けることにより、冷媒対流が防止される。
第10の発明では、上記第1乃至第9のいずれか1つの発明において、上記断熱材(90,96)には、上記冷媒を停留させるための空間を形成する断熱層(94,97)が設けられている。
上記の構成によると、断熱材(90,96)には、断熱層(94,97)が形成されているので、この断熱層(94,97)内の空間にガス冷媒が効果的に停留する。ここで、一般的な断熱材(90,96)を構成する樹脂系材料の熱伝導率に比べ、ガス冷媒の熱伝導率の方が1オーダー近く低くなっていることから、断熱層(94,97)のないものに比べて断熱材(90,96)全体の熱伝導率が低下する。このため、断熱材(90,96)を厚くする必要がなくなり、全体の大型化が防がれると共に、断熱材(90,96)の質量が軽くなり、そのコストが低くなる。
第11の発明では、上記第10の発明において、上記断熱層(94,97)は、上記断熱材(96)の表面から凹陥された凹部よりなる。
上記の構成によると、凹部の開口又は冷媒導入孔(95)から冷媒が断熱層(94,97)に導入されて断熱層(94,97)に停留し、断熱材(96)の熱伝導率を低下させることができるので、断熱材(96)を厚くする必要がなくなり、全体の大型化が防がれると共に、断熱材(96)の質量が軽くなり、そのコストが低くなる。また、成型品の場合には、型抜きが容易で且つ薄肉構造となることから成型性がよい。
第12の発明では、上記第10又は11の発明において、上記断熱材(90,96)には、上記断熱層(94,97)に冷媒を導入するための冷媒導入孔(95)が形成されている。
上記の構成によると、冷媒導入孔(95)から断熱層(94,97)に冷媒が導入されて冷媒が停留し、断熱材(90,96)の熱伝導率を低下させることができるので、断熱材(90,96)を厚くする必要がなくなり、全体の大型化が防がれると共に、断熱材(90,96)の質量が軽くなり、そのコストが低くなる。また、冷媒導入孔(95)により、断熱層(94,97)内とケーシング(31)内空間とが均一化されるので、断熱材(90,96)が差圧により変形したり、破損するのが防止される。さらに冷媒導入孔(95)により、冷媒中に混在するミスト油が断熱層(94,97)内に溜まるのが防止される。
第13の発明では、上記第10乃至第12のいずれか1つの発明において、上記断熱層(94,97)は、鉛直方向に複数並んだものとする。
上記の構成によると、鉛直方向に断熱層(94,97)が区画されて断熱層(94,97)内での冷媒対流が緩和されるので、断熱効果が向上する。このため、断熱材(96)を厚くする必要がなくなり、全体の大型化が防がれると共に、断熱材(90,96)の質量が軽くなり、そのコストが低くなる。
第14の発明では、上記第10乃至第12のいずれか1つの発明において、上記断熱層(94,97)は、周方向に複数並んだものとする。
上記の構成によると、ロータリ式の膨張機構(60)や圧縮機構(50)は、通常、軸方向から見て円周方向に温度が分布している。上記の構成によると、円周方向に温度分布された膨張機構(60)や圧縮機構(50)に接する断熱材(96)に周方向に分割して断熱層(94,97)を設けているので、断熱層(94,97)内での温度差が小さくなって冷媒対流が緩和される。このため、断熱効果が向上し、断熱材(90,96)を厚くする必要がなくなり、全体の大型化が防がれると共に、断熱材(90,96)の質量が軽くなり、そのコストが低くなる。
第15の発明では、上記第1乃至第14のいずれか1つの発明において、上記断熱材(90,96)は、樹脂成型品とする。
上記の構成によると、樹脂系材料の熱伝導率に比べ、ガス冷媒の熱伝導率の方が1オーダー近く低くなっていることから、断熱層(94,97)のないものに比べて断熱材(90,96)全体の熱伝導率が低下する。また、樹脂を成型する際には、断熱層(94,97)があるために薄肉構造となり、厚肉のものに比べて全体が均一に冷え易く変形が防止されるので、成型性がよい。このため、断熱材(90,96)を厚くする必要がなくなり、全体の大型化が防がれると共に、断熱材(90,96)の質量が軽くなり、そのコストが低くなる。
第16の発明では、上記第1乃至第15のいずれか1つの発明において、上記冷媒回路(20)は、二酸化炭素を冷媒として超臨界冷凍サイクルを行うものとする。
上記の構成によると、流体機械(30)が接続された冷媒回路(20)で冷媒としての二酸化炭素が循環する。流体機械(30)の圧縮機構(50)は、吸入した冷媒をその臨界圧力以上にまで圧縮して吐出する。一方、流体機械(30)の膨張機構(60)へは、臨界圧力以上の高圧冷媒が導入されて膨張する。
以上説明したように、本発明によると、断熱材(90,96)で圧縮機構(50)又は膨張機構(60)のケーシング(31)内の露出面全体を覆ったことにより、ケーシング(31)の内部空間と断熱材(90,96)で覆われた圧縮機構(50)又は膨張機構(60)との間での熱交換を防いで、能力低下や動力回収効果の低下を防止することができる。
上記第2の発明によると、断熱材(90,96)を固定部(54,67)を境に回転軸(40)の軸方向に分割したことにより、断熱材(90,96)の組付が容易となり、製造コストを低くすることができる。
上記第3の発明によると、ケーシング(31)の内部空間を膨張機構(60)が収納される第1空間(48)と、圧縮機構(50)が収納される第2空間(49)とに断熱材(90,96)によって区画して両空間内での対流を防止したことにより、さらに効果的にケーシング(31)の内部空間と断熱材(90,96)で覆われた圧縮機構(50)又は膨張機構(60)との間での熱交換を防いで、能力低下や動力回収効果の低下を防止することができる。
上記第4の発明によれば、ケーシング(31)内の雰囲気との温度差が激しい膨張機構(60)に近いところで第1空間(48)と第2空間(49)とを断熱材(90,96)で区切ることにより、冷媒対流を効果的に防止して、物質移動による熱交換を防止し、能力低下や動力回収効果の低下を防ぐことができる。
上記第5の発明によれば、ケーシング(31)内の雰囲気との温度差が激しい圧縮機構(50)に近いところで第1空間(48)と第2空間(49)とを断熱材(90,96)で区切ることにより、冷媒対流を効果的に防止して、物質移動による熱交換を防止し、能力低下や動力回収効果の低下を防ぐことができる。
上記第6の発明によれば、断熱材(90)の外周面とケーシング(31)内周面との間に隙間を設けて組立易さや断熱材(90)の熱膨張による破損を考慮しながら、その隙間を弾性変形可能なシール手段でシールするようにしたことにより、膨張機構(60)側の第1空間(48)と圧縮機構(50)側の第2空間(49)との間の冷媒対流を防止して物質移動による熱交換を防止し、能力低下や動力回収効果の低下を防ぐことができる。
上記第7の発明によれば、Oリング(92)によって、断熱材(90)とケーシング(31)内周面との間に隙間をシールするようにしたことにより、組み立て易く、能力低下や動力回収効果の低下も生じない流体機械が得られる。
上記第8の発明によれば、断熱材(90)の外周に鍔部(98)を一体に設けて断熱材(90)とケーシング(31)内周面との間の隙間をシールするようにしたことにより、組み立て易く、能力低下や動力回収効果の低下も生じない流体機械が得られる。
上記第9の発明によれば、連通路(93)を設けて第1空間(48)と第2空間(49)との間の圧力差を緩和させるようにしたことにより、断熱材(90)の破損を効果的に防止することができる。
上記第10の発明によれば、断熱材(90,96)に断熱層(94,97)を形成してその空間内にガス冷媒を停留させたことにより、断熱材(90,96)全体の熱伝導率を低下させることができるので、断熱材(90,96)を厚くする必要がなくなり、全体の大型化を防止できると共に、断熱材(90,96)のコストを低くすることができる。
上記第11の発明によれば、断熱材(90,96)の表面を凹陥して断熱層(94,97)を形成し、冷媒を停留させている。このため、断熱材(90,96)の熱伝導率を効果的に低下させることができると共に、成型時の型抜きが容易となり、且つ薄肉構造となるため、成型性を向上させることができる。
上記第12の発明によれば、断熱材(90,96)に冷媒導入孔(95)を形成して、この冷媒導入孔(95)から断熱層(94,97)に冷媒を導入して停留させるようにした。このため、断熱材(90,96)の熱伝導率を効果的に低下させることができると共に、断熱材(90,96)が差圧により変形したり、破損するのを防止することができる。
上記第13の発明によると、断熱層(94,97)を鉛直方向に複数並べて断熱層(94,97)内での冷媒対流を緩和するようにしたことにより、断熱効果を向上させることができる。
上記第14の発明によると、断熱層(94,97)を周方向に複数並べて断熱層(94,97)内での温度差を小さくしたことにより、冷媒対流を緩和させて断熱効果を向上させることができる。
上記第15の発明によると、樹脂系材料よりなる断熱材(90,96)の熱伝導率を効果的に低下させることができる。また、樹脂成型品である断熱材(90,96)に断熱層(94,97)を設けたことにより、断熱層(94,97)のない厚肉のものに比べて均一に冷え易くなって変形を防止することができるので、成型性を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態は、本発明にかかる流体機械である圧縮・膨張ユニット(30)を備えた空調機(10)である。
〈空調機の全体構成〉
図1に示すように、本実施形態の空調機(10)は、冷媒回路(20)を備えている。この冷媒回路(20)には、圧縮・膨張ユニット(30)と、室外熱交換器(23)と、室内熱交換器(24)と、第1四路切換弁(21)と、第2四路切換弁(22)とが接続されている。また、この冷媒回路(20)には、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填されている。
上記圧縮・膨張ユニット(30)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(31)を備えている。このケーシング(31)内には、圧縮機構(50)と、膨張機構(60)と、電動機(45)とが収納されている。ケーシング(31)内では、圧縮機構(50)と電動機(45)と膨張機構(60)とが下から上に向かって順に配置されている。圧縮・膨張ユニット(30)の詳細については後述する。
上記冷媒回路(20)において、圧縮機構(50)は、その吐出側(吐出管(37))が第1四路切換弁(21)の第1のポートに、その吸入側(吸入管(36))が第1四路切換弁(21)の第4のポートにそれぞれ接続されている。一方、膨張機構(60)は、その流出側(流出管(39))が第2四路切換弁(22)の第1のポートに、その流入側(流入管(38))が第2四路切換弁(22)の第4のポートにそれぞれ接続されている。
また、上記冷媒回路(20)において、室外熱交換器(23)は、その一端が第2四路切換弁(22)の第2のポートに、その他端が第1四路切換弁(21)の第3のポートにそれぞれ接続されている。一方、室内熱交換器(24)は、その一端が第1四路切換弁(21)の第2のポートに、その他端が第2四路切換弁(22)の第3のポートにそれぞれ接続されている。
上記第1四路切換弁(21)と第2四路切換弁(22)は、それぞれ、第1のポートと第2のポートとが連通し且つ第3のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通し且つ第2のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。
〈圧縮・膨張ユニットの構成〉
図2に示すように、圧縮・膨張ユニット(30)は、縦長で円筒形の密閉容器であるケーシング(31)を備えている。このケーシング(31)の内部には、下から上に向かって順に、圧縮機構(50)と、電動機(45)と、膨張機構(60)とが配置されている。また、ケーシング(31)の底部には、潤滑油である冷凍機油が貯留されている。つまり、ケーシング(31)の内部では、圧縮機構(50)寄りに冷凍機油が貯留されている。
ケーシング(31)の内部空間は、膨張機構(60)のフロントヘッド(61)の下側に設けた後述する第1断熱材(90)によって上下に仕切られており、上側の空間が第1空間(48)を、下側の空間が第2空間(49)をそれぞれ構成している。第1空間(48)には膨張機構(60)が配置され、第2空間(49)には圧縮機構(50)と電動機(45)とが配置される。
ケーシング(31)には、吐出管(37)が取り付けられている。この吐出管(37)は、電動機(45)と膨張機構(60)の間に配置され、ケーシング(31)内の第2空間(49)に連通している。また、吐出管(37)は、比較的短い直管状に形成され、概ね水平姿勢で設置されている。
電動機(45)は、ケーシング(31)の長手方向の中央部に配置されている。この電動機(45)は、ステータ(46)とロータ(47)とにより構成されている。ステータ(46)は、焼嵌め等によって上記ケーシング(31)に固定されている。ロータ(47)は、ステータ(46)の内側に配置されている。このロータ(47)には、該ロータ(47)と同軸に回転軸(40)の主軸部(44)が貫通している。
回転軸(40)は、回転軸を構成している。この回転軸(40)では、その下端側に2つの下側偏心部(58,59)が形成され、その上端側に2つの大径偏心部(41,42)が形成されている。回転軸(40)は、下側偏心部(58,59)の形成された下端部分が圧縮機構(50)に、大径偏心部(41,42)の形成された上端部分が膨張機構(60)にそれぞれ係合している。
2つの下側偏心部(58,59)は、主軸部(44)よりも大径に形成されており、下側のものが第1下側偏心部(58)を、上側のものが第2下側偏心部(59)をそれぞれ構成している。第1下側偏心部(58)と第2下側偏心部(59)とでは、主軸部(44)の軸心に対する偏心方向が逆になっている。
2つの大径偏心部(41,42)は、主軸部(44)よりも大径に形成されており、下側のものが第1大径偏心部(41)を構成し、上側のものが第2大径偏心部(42)を構成している。第1大径偏心部(41)と第2大径偏心部(42)とは、何れも同じ方向へ偏心している。第2大径偏心部(42)の外径は、第1大径偏心部(41)の外径よりも大きくなっている。また、主軸部(44)の軸心に対する偏心量は、第2大径偏心部(42)の方が第1大径偏心部(41)よりも大きくなっている。
図示しないが、回転軸(40)には、給油通路が形成されている。給油通路は、回転軸(40)に沿って延びており、その始端が回転軸(40)の下端に、その終端が回転軸(40)の上側にそれぞれ開口している。圧縮機構(50)及び膨張機構(60)へは、この給油通路から冷凍機油が供給されるようになっている。ただし、膨張機構(60)に供給される冷凍機油は、最小限のものとされ、膨張機構(60)を潤滑した冷凍機油は、第1空間(48)内には流出せず、流出管(39)から吐出されるようになっている。
圧縮機構(50)は、いわゆる揺動ピストン型のロータリ式圧縮機を構成している。この圧縮機構(50)は、シリンダ(51,52)とピストン(57)を2つずつ備えている。圧縮機構(50)では、下から上に向かって順に、リアヘッド(55)と、第1シリンダ(51)と、中間プレート(56)と、第2シリンダ(52)と、フロントヘッド(54)とが積層された状態となっている。
第1及び第2シリンダ(51,52)の内部には、円筒状のピストン(57)が1つずつ配置されている。図示しないが、ピストン(57)の側面には平板状のブレードが突設されており、このブレードは揺動ブッシュを介してシリンダ(51,52)に支持されている。第1シリンダ(51)内のピストン(57)は、回転軸(40)の第1下側偏心部(58)と係合する。一方、第2シリンダ(52)内のピストン(57)は、回転軸(40)の第2下側偏心部(59)と係合する。各ピストン(57,57)は、その内周面が下側偏心部(58,59)の外周面と摺接し、その外周面がシリンダ(51,52)の内周面と摺接する。そして、ピストン(57,57)の外周面とシリンダ(51,52)の内周面との間に圧縮室(53)が形成される。
第1及び第2シリンダ(51,52)には、それぞれ吸入ポート(32)が1つずつ形成されている。各吸入ポート(32)は、シリンダ(51,52)を半径方向に貫通し、その終端がシリンダ(51,52)の内周面に開口している。また、各吸入ポート(32)は、吸入管(36)によってケーシング(31)の外部へ延長されている。
フロントヘッド(54)及びリアヘッド(55)には、それぞれ吐出ポートが1つずつ形成されている。フロントヘッド(54)の吐出ポートは、第2シリンダ(52)内の圧縮室(53)を第2空間(49)と連通させる。リアヘッド(55)の吐出ポートは、第1シリンダ(51)内の圧縮室(53)を第2空間(49)と連通させる。また、各吐出ポートは、その終端にリード弁からなる吐出弁が設けられており、この吐出弁によって開閉される。なお、図2において、吐出ポート及び吐出弁の図示は省略する。そして、圧縮機構(50)から第2空間(49)へ吐出されたガス冷媒は、吐出管(37)を通って圧縮・膨張ユニット(30)から送り出される。
図3に拡大して示すように、膨張機構(60)は、いわゆる揺動ピストン型のロータリ式膨張機で構成されている。この膨張機構(60)には、対になったシリンダ(71,81)及びピストン(75,85)が2組設けられている。また、膨張機構(60)には、フロントヘッド(61)と、中間プレート(63)と、リアヘッド(62)とが設けられている。
膨張機構(60)では、下から上に向かって順に、フロントヘッド(61)、第1シリンダ(71)、中間プレート(63)、第2シリンダ(81)、リアヘッド(62)が積層された状態となっている。この状態において、第1シリンダ(71)は、その下側端面がフロントヘッド(61)により閉塞され、その上側端面が中間プレート(63)により閉塞されている。一方、第2シリンダ(81)は、その下側端面が中間プレート(63)により閉塞され、その上側端面がリアヘッド(62)により閉塞されている。また、第2シリンダ(81)の内径は、第1シリンダ(71)の内径よりも大きくなっている。
膨張機構(60)は、固定部としてのマウンティングプレート(67)によって、上記ケーシング(31)内面に固定されている。
回転軸(40)は、積層された状態のフロントヘッド(61)、第1シリンダ(71)、中間プレート(63)、第2シリンダ(81)を貫通している。リアヘッド(62)の中央部には、該リアヘッド(62)を厚み方向へ貫通する中央孔が形成されている。回転軸(40)の上端部は、このリアヘッド(62)の中央孔に挿入されている。また、回転軸(40)は、その第1大径偏心部(41)が第1シリンダ(71)内に位置し、その第2大径偏心部(42)が第2シリンダ(81)内に位置している。
図6及び図7にも示すように、第1シリンダ(71)内には第1ピストン(75)が、第2シリンダ(81)内には第2ピストン(85)がそれぞれ設けられている。第1及び第2ピストン(75,85)は、いずれも円環状あるいは円筒状に形成されている。第1ピストン(75)の外径と第2ピストン(85)の外径とは、互いに等しくなっている。第1ピストン(75)の内径は第1大径偏心部(41)の外径と、第2ピストン(85)の内径は第2大径偏心部(42)の外径とそれぞれ概ね等しくなっている。そして、第1ピストン(75)には第1大径偏心部(41)が、第2ピストン(85)には第2大径偏心部(42)がそれぞれ貫通している。
上記第1ピストン(75)は、その外周面が第1シリンダ(71)の内周面に、一方の端面がフロントヘッド(61)に、他方の端面が中間プレート(63)にそれぞれ摺接している。第1シリンダ(71)内には、その内周面と第1ピストン(75)の外周面との間に第1膨張室(72)が形成される。一方、上記第2ピストン(85)は、その外周面が第2シリンダ(81)の内周面に、一方の端面がリアヘッド(62)に、他方の端面が中間プレート(63)にそれぞれ摺接している。第2シリンダ(81)内には、その内周面と第2ピストン(85)の外周面との間に第2膨張室(82)が形成される。
上記第1及び第2ピストン(75,85)のそれぞれには、ブレード(76,86)が1つずつ一体に設けられている。ブレード(76,86)は、ピストン(75,85)の半径方向へ延びる板状に形成されており、ピストン(75,85)の外周面から外側へ突出している。第1ピストン(75)のブレード(76)は第1シリンダ(71)のブッシュ孔(78)に、第2ピストン(85)のブレード(86)は第2シリンダ(81)のブッシュ孔(88)にそれぞれ挿入されている。各シリンダ(71,81)のブッシュ孔(78,88)は、シリンダ(71,81)を厚み方向へ貫通すると共に、シリンダ(71,81)の内周面に開口している。これらのブッシュ孔(78,88)は、貫通孔を構成している。
上記各シリンダ(71,81)には、一対のブッシュ(77,87)が1組ずつ設けられている。各ブッシュ(77,87)は、内側面が平面となって外側面が円弧面となるように形成された小片である。各シリンダ(71,81)において、一対のブッシュ(77,87)は、ブッシュ孔(78,88)に挿入されてブレード(76,86)を挟み込んだ状態となる。各ブッシュ(77,87)は、その内側面がブレード(76,86)と、その外側面がシリンダ(71,81)と摺動する。そして、ピストン(75,85)と一体のブレード(76,86)は、ブッシュ(77,87)を介してシリンダ(71,81)に支持され、シリンダ(71,81)に対して回動自在で且つ進退自在となっている。
第1シリンダ(71)内の第1膨張室(72)は、第1ピストン(75)と一体の第1ブレード(76)によって仕切られており、図6及び図7における第1ブレード(76)の左側が高圧側の第1高圧室(73)となり、その右側が低圧側の第1低圧室(74)となっている。第2シリンダ(81)内の第2膨張室(82)は、第2ピストン(85)と一体の第2ブレード(86)によって仕切られており、図6及び図7における第2ブレード(86)の左側が高圧側の第2高圧室(83)となり、その右側が低圧側の第2低圧室(84)となっている。
上記第1シリンダ(71)と第2シリンダ(81)とは、それぞれの周方向におけるブッシュ(77,87)の位置が一致する姿勢で配置されている。言い換えると、第2シリンダ(81)の第1シリンダ(71)に対する配置角度が0°となっている。上述のように、第1大径偏心部(41)と第2大径偏心部(42)とは、主軸部(44)の軸心に対して同じ方向へ偏心している。したがって、第1ブレード(76)が第1シリンダ(71)の外側へ最も退いた状態になるのと同時に、第2ブレード(86)が第2シリンダ(81)の外側へ最も退いた状態になる。
上記第1シリンダ(71)には、流入ポート(34)が形成されている。流入ポート(34)は、第1シリンダ(71)の内周面のうち、図6及び図7におけるブッシュ(77)のやや左側の箇所に開口している。流入ポート(34)は、第1高圧室(73)と連通可能となっている。一方、上記第2シリンダ(81)には、流出ポート(35)が形成されている。流出ポート(35)は、第2シリンダ(81)の内周面のうち、図6及び図7におけるブッシュ(87)のやや右側の箇所に開口している。流出ポート(35)は、第2低圧室(84)と連通可能となっている。
上記中間プレート(63)には、連通路(93)(64)が形成されている。この連通路(93)(64)は、中間プレート(63)を厚み方向へ貫通している。中間プレート(63)における第1シリンダ(71)側の面では、第1ブレード(76)の右側の箇所に連通路(93)(64)の一端が開口している。中間プレート(63)における第2シリンダ(81)側の面では、第2ブレード(86)の左側の箇所に連通路(93)(64)の他端が開口している。そして、図6に示すように、連通路(93)(64)は、中間プレート(63)の厚み方向に対して斜めに延びており、第1低圧室(74)と第2高圧室(83)とを互いに連通させている。
以上のように構成された本実施形態の膨張機構(60)では、第1シリンダ(71)と、そこに設けられたブッシュ(77)と、第1ピストン(75)と、第1ブレード(76)とが第1ロータリ機構部(70)を構成している。また、第2シリンダ(81)と、そこに設けられたブッシュ(87)と、第2ピストン(85)と、第2ブレード(86)とが第2ロータリ機構部(80)を構成している。
図3に示すように、本発明の特徴として、ケーシング(31)の内部空間には、膨張機構(60)におけるケーシング(31)内の露出面全体を覆い、上記回転軸(40)が貫通する断熱材(90,96)を備えている。断熱材(90,96)は、マウンティングプレート(67)を境に回転軸(40)の軸方向に第1断熱材(90)と第2断熱材(96)とに分割されている。
下側の第1断熱材(90)は、上記膨張機構(60)における圧縮機構(50)側に当接するように上記回転軸(40)周辺から上記ケーシング(31)内周面までを覆うように設けられている。このことで、ケーシング(31)内の雰囲気との温度差の激しい、低温の膨張機構(60)側の第1空間(48)が第1断熱材(90)によって第2空間(49)と区切られている。
具体的には、第1断熱材(90)は、中心に回転軸(40)が挿通される中心孔を有する円盤状のもので、膨張機構(60)におけるフロントヘッド(61)の下面と接するように設けられている。回転軸(40)の外周面と、第1断熱材(90)の内周面との間には、回転軸(40)の回転を妨げないように最小限の隙間が形成されている。
図4及び図5に示すように、第1断熱材(90)は、冷媒を停留させるための空間を形成する第1断熱層(94)を備えている。この第1断熱層(94)は、周方向に複数並んだ略密閉型の空間を形成している。すなわち、図4に示すように、膨張機構(60)の表面温度は、軸方向から見たときにAからFへ順に低くなるように概ね周方向に分布している。それにあわせて第1断熱層(94)が平面視で扇形に周方向に密閉状に仕切られている。各第1断熱層(94)には、冷媒を導入するための冷媒導入孔(95)が形成されている。
また、図3に示すように、上側の第2断熱材(96)は、天板を有する略円筒形状を有し、膨張機構(60)の側面及び上面のケーシング(31)内の露出面全体を被っている。すなわち、第2断熱材(96)には、流入管(38)や流出管(39)が貫通している。さらに、これら流入管(38)や流出管(39)の外周も覆うとよい。また、マウンティングプレート(67)とケーシング(31)内面との間の隙間も覆うと効果的である。
第2断熱材(96)には、冷媒を停留させるための空間を形成する第2断熱層(97)が形成されている。具体的には、膨張機構(60)の側面を覆う部分には、側面側第2断熱層(97a )が鉛直方向に複数並んで形成されている。側面側第2断熱層(97a )は、第2断熱材(96)の内周面から外方へ凹陥された凹部よりなる。側面側第2断熱層(97a )は、さらに周方向に分割してもよい。膨張機構(60)の上面を覆う部分には、平面側第2断熱層(97b )が形成され、この平面側第2断熱層(97b )は、第2断熱材(96)の下面から上方へ凹陥された凹部よりなり、上記第1断熱層(94)と同様に膨張機構(60)上面の円周方向に分布する温度勾配に対応させて周方向に複数並んでいる。なお、第1断熱層(94)と同様に略密閉型の空間を形成するものとしてもよい。図示しないが、第2断熱材(96)にも各第2断熱層(97)に冷媒を導入するための冷媒導入孔(95)が形成されている。
また、第1及び第2断熱材(90,96)は、樹脂成型品で構成されている。具体的な材料としては、耐熱性の高い(240〜250℃)、特殊エンジニアリングプラスチックが考えられる。例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルケトン)、PI(ポリアミド)等がある。ここで、一般的な断熱材(90,96)を構成する樹脂系材料の熱伝導率0.3w/m−kに対し、二酸化炭素冷媒の熱伝導率は、膨張機構(60)側の空間で0.07w/m−kとなり、二酸化炭素冷媒の方が樹脂系材料よりも1オーダー低くなっている。
第1断熱材(90)のように、内部に空洞の第1断熱層(94)を形成するには、アンダーカット部が存在するため、ダイスライド射出成型が考えられる。すなわち、図示しないが、まず、第1断熱層(94)を上下に分割するようにずらした位置で射出成形したものを金型内でスライドさせて合わせ、次にそれらの接合部に溶融樹脂を再度射出して溶融接着する。
一方、第2断熱材(96)の第2断熱層(97)のように内側表面に凹部を形成するには、アンダーカット部が存在しないので、一般的な射出成形が可能である。
いずれの場合も、熱伝導率を適度に低下させること、脱型後に均一に冷えて変形が少ないことを考慮して第1断熱層(94)及び第2断熱層(97)の形状を決定するとよい。
−運転動作−
上記空調機(10)の動作について説明する。ここでは、空調機(10)の冷房運転時及び暖房運転時の動作について説明し、続いて膨張機構(60)の動作について説明する。
〈冷房運転〉
冷房運転時には、第1四路切換弁(21)及び第2四路切換弁(22)が図1に破線で示す状態に切り換えられる。この状態で圧縮・膨張ユニット(30)の電動機(45)に通電すると、冷媒回路(20)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
圧縮機構(50)で圧縮された冷媒は、吐出管(37)を通って圧縮・膨張ユニット(30)から吐出される。この状態で、冷媒の圧力は、その臨界圧力よりも高くなっている。この吐出冷媒は、室外熱交換器(23)へ送られて室外空気へ放熱する。室外熱交換器(23)で放熱した高圧冷媒は、流入管(38)を通って膨張機構(60)へ流入する。膨張機構(60)では、高圧冷媒が膨張し、この高圧冷媒から動力が回収される。膨張後の低圧冷媒は、流出管(39)を通って室内熱交換器(24)へ送られる。室内熱交換器(24)では、流入した冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、室内空気が冷却される。室内熱交換器(24)から出た低圧ガス冷媒は、吸入管(36)を通って吸入ポート(32)から圧縮機構(50)へ吸入される。圧縮機構(50)は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。
〈暖房運転〉
暖房運転時には、第1四路切換弁(21)及び第2四路切換弁(22)が図1に実線で示す状態に切り換えられる。この状態で圧縮・膨張ユニット(30)の電動機(45)に通電すると、冷媒回路(20)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
圧縮機構(50)で圧縮された冷媒は、吐出管(37)を通って圧縮・膨張ユニット(30)から吐出される。この状態で、冷媒の圧力は、その臨界圧力よりも高くなっている。この吐出冷媒は、室内熱交換器(24)へ送られる。室内熱交換器(24)では、流入した冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。室内熱交換器(24)で放熱した冷媒は、流入管(38)を通って膨張機構(60)へ流入する。膨張機構(60)では、高圧冷媒が膨張し、この高圧冷媒から動力が回収される。膨張後の低圧冷媒は、流出管(39)を通って室外熱交換器(23)へ送られ、室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(23)から出た低圧ガス冷媒は、吸入管(36)を通って吸入ポート(32)から圧縮機構(50)へ吸入される。圧縮機構(50)は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。
〈膨張機構の動作〉
膨張機構(60)の動作について、図7を参照しながら説明する。
まず、第1ロータリ機構部(70)の第1高圧室(73)へ超臨界状態の高圧冷媒が流入する過程について説明する。回転角が0°の状態から回転軸(40)が僅かに回転すると、第1ピストン(75)と第1シリンダ(71)の接触位置が流入ポート(34)の開口部を通過し、流入ポート(34)から第1高圧室(73)へ高圧冷媒が流入し始める。その後、回転軸(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなるにつれて、第1高圧室(73)へ高圧冷媒が流入してゆく。この第1高圧室(73)への高圧冷媒の流入は、回転軸(40)の回転角が360°に達するまで続く。
次に、膨張機構(60)において冷媒が膨張する過程について説明する。回転角が0°の状態から回転軸(40)が僅かに回転すると、第1低圧室(74)と第2高圧室(83)が連通路(93)(64)を介して互いに連通し、第1低圧室(74)から第2高圧室(83)へと冷媒が流入し始める。その後、回転軸(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなるにつれ、第1低圧室(74)の容積が次第に減少すると同時に第2高圧室(83)の容積が次第に増加し、結果として膨張室(66)の容積が次第に増加してゆく。この膨張室(66)の容積増加は、回転軸(40)の回転角が360°に達する直前まで続く。そして、膨張室(66)の容積が増加する過程で膨張室(66)内の冷媒が膨張し、この冷媒の膨張によって回転軸(40)が回転駆動される。このように、第1低圧室(74)内の冷媒は、連通路(93)(64)を通って第2高圧室(83)へ膨張しながら流入してゆく。
続いて、第2ロータリ機構部(80)の第2低圧室(84)から冷媒が流出してゆく過程について説明する。第2低圧室(84)は、回転軸(40)の回転角が0°の時点から流出ポート(35)に連通し始める。つまり、第2低圧室(84)から流出ポート(35)へと冷媒が流出し始める。その後、回転軸(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなってゆき、その回転角が360°に達するまでの間に亘って、第2低圧室(84)から膨張後の低圧冷媒が流出してゆく。
〈断熱材の作用〉
第1断熱材(90)によって、ケーシング(31)の内部空間が膨張機構(60)が収納される第1空間(48)と、圧縮機構(50)が収納される第2空間(49)とに区画されているので、第1空間(48)は、低温、高密度となり、第2空間(49)は、高温、低密度となる。このことで、ケーシング(31)内は高温高圧に保たれる。ケーシング(31)内の雰囲気との温度差の激しい、低温の膨張機構(60)側の第1空間(48)を第1断熱材(90)で区切ることで、冷媒対流が効果的に防止される。
また、断熱材(90,96)は、膨張機構(60)のケーシング(31)内の露出面全体を覆っているので、ケーシング(31)の内部空間と膨張機構(60)との間での熱交換が防止される。
また、膨張機構(60)は、マウンティングプレート(67)によってケーシング(31)に固定されているが、断熱材(90,96)を第1断熱材(90)と第2断熱材(96)とに分割することで、断熱材(90,96)の組付が容易となる。
また、第1及び第2断熱材(90,96)には、断熱層(94,97)が形成されているので、この断熱層(94,97)内の空間にガス冷媒が効果的に停留する。ここで、一般的な断熱材(90,96)を構成する樹脂系材料の熱伝導率に比べ、ガス冷媒の熱伝導率の方が1オーダー近く低くなっていることから、断熱層(94,97)のないものに比べて断熱材(90,96)全体の熱伝導率が低下する。
第1及び第2断熱材(90,96)を成型する際には、断熱層(94,97)があるために薄肉構造となり、厚肉のものに比べて全体が均一に冷え易く変形が防止されるので、成型性がよい。
冷媒導入孔(95)から第1及び第2断熱層(94,97)に冷媒が導入されて冷媒が停留し、第1及び第2断熱材(90,96)の熱伝導率を低下させることができるので、第1及び第2断熱材(90,96)を厚くする必要がなくなる。また、冷媒導入孔(95)により、第1及び第2断熱層(94,97)内とケーシング(31)内空間とが均一化されるので、第1及び第2断熱材(90,96)が差圧により変形したり、破損するのが防止される。さらに冷媒導入孔(95)により、冷媒中に混在するミスト油が断熱層(94,97)内に溜まるのが防止される。
第1断熱材(90)においては、第1断熱層(94)を、膨張機構(60)下面の円周方向に分布する温度勾配に対応させて周方向に分割して設けている。同様に、平面側第2断熱層(97b )を、膨張機構(60)上面の円周方向に分布する温度勾配に対応させて周方向に分割して設けている。このため、断熱層(94,97)内での温度差が小さくなって冷媒対流が緩和され、断熱効果が向上する。
第2断熱材(96)においては、凹部における成型時の型抜きが容易で且つ薄肉構造となることから成型性がよい。また、鉛直方向に区画されて側面側第2断熱層(97a )内での冷媒対流が緩和されるので、断熱効果が向上する。第2断熱材(96)が膨張機構(60)の外周も被っているので、膨張機構(60)の外周表面とケーシング(31)内の雰囲気との間での熱のやりとりが効果的に防止され、さらに断熱効果が向上する。
−実施形態1の効果−
したがって、本実施形態の圧縮・膨張ユニット(30)によると、断熱材(90,96)で膨張機構(60)のケーシング(31)内の露出面全体を覆ったことにより、ケーシング(31)の内部空間と断熱材(90,96)で覆われた膨張機構(60)との間での熱交換を防止して、能力低下や動力回収効果の低下を防止することができる。
断熱材(90,96)をマウンティングプレート(67)を境に回転軸(40)の軸方向に分割したことにより、断熱材(90,96)の組付が容易となり、製造コストを低くすることができる。
ケーシング(31)の内部空間を膨張機構(60)が収納される第1空間(48)と、圧縮機構(50)が収納される第2空間(49)とに断熱材(90,96)によって区画して両空間内での対流を防止したことにより、さらに効果的にケーシング(31)の内部空間と断熱材(90,96)で覆われた膨張機構(60)との間での熱交換を防止することができる。
断熱材(90,96)に断熱層(94,97)を形成してその空間内にガス冷媒を停留させたことにより、断熱材(90,96)全体の熱伝導率を低下させることができるので、断熱材(90,96)を厚くする必要がなくなり、全体の大型化を防止できると共に、断熱材(90,96)のコストを低くすることができる。
第1及び第2断熱材(90,96)に冷媒導入孔(95)を形成して、この冷媒導入孔(95)から第1及び第2断熱層(94,97)に冷媒を導入して停留させるようにした。このため、第1及び第2断熱材(90,96)の熱伝導率を効果的に低下させることができると共に、第1及び第2断熱材(90,96)が差圧により変形したり、破損するのを防止することができる。
第2断熱材(96)の内周面を凹陥して断熱層(94,97)を形成し、冷媒を停留させている。このため、断熱材(90,96)の熱伝導率を効果的に低下させることができると共に、成型時の型抜きが容易となり、且つ薄肉構造となるため、成型性を向上させることができる。
側面側第2断熱層(97a )を鉛直方向に複数並べて側面側第2断熱層(97a )内での冷媒対流を緩和するようにしたことにより、断熱効果を向上させることができる。
第1断熱層(94)を周方向に複数並べて第1断熱層(94)内での温度差を小さくしたことにより、冷媒対流を緩和させて断熱効果を向上させることができる。
樹脂成型品である第1及び第2断熱材(90,96)に第1及び第2断熱層(94,97)を設けたことにより、熱伝導率を効果的に低減させることができる。また、第1及び第2断熱層(94,97)のない厚肉のものに比べて均一に冷え易くなって変形を防止することができるので、成型性を向上させることができる。
ケーシング(31)内の雰囲気との温度差が激しい膨張機構(60)に近いところで第1空間(48)と第2空間(49)とを第1断熱材(90)で区切ることにより、冷媒対流を効果的に防止して、物質移動による熱交換を防止し、能力低下や動力回収効果の低下を防ぐことができる。
−実施形態1の変形例1−
上記実施形態1では、第2断熱層(97)を内周面から外方へ凹陥された凹部よりなるものとしたが、外側表面から内方へ凹陥された凹部よりなるものとしてもよい。しかし、この場合には、第2断熱層(97)内に冷媒を停留させるために、凹部を深くする必要がある。
上記実施形態1では、第1断熱層(94)は、周方向に複数並んだ略密閉型の空間を形成したものとしたが、上側が開放し、上面から下方へ凹陥された凹部よりなるものとしてもよい。
(実施形態2)
図8及び図9は本発明の実施形態2を示し、断熱層(94,97)がなく、変わりにシール手段(92, 98)が設けられている点で上記実施形態1と異なる。なお、以下の各実施形態では、図1乃至図7と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
〈断熱材の構成〉
本実施形態では、断熱材(90)の外周には、Oリング収納凹部(91)が形成されている。断熱材(90)の外周面とケーシング(31)の内周面との間には、常温で若干隙間が生じるように断熱材(90)の大きさが設定されている。Oリング収納凹部(91)には、シール手段としてのOリング(92)が設けられている。この弾性変形可能なOリング(92)が、ケーシング(31)の内周面との間の隙間をシールする役割を果たしている。
上記断熱材(90)には、第1空間(48)と第2空間(49)とを連通させて該第1空間(48)と第2空間(49)との間の圧力差を緩和させる連通路(93)が形成されている。すなわち、この連通路(93)は、第1空間(48)から第2空間(49)に貫通する貫通孔よりなる。このことで、第1空間(48)と第2空間(49)とは気密に仕切られている訳ではなく、第1空間(48)の内圧と第2空間(49)の内圧は概ね等しくなっている。
〈断熱材の作用〉
一方、組立易さや、ケーシング(31)と断熱材(90)の線膨張係数の違いによる、断熱材(90)の熱膨張による破損の防止を考慮すれば、断熱材(90)の外周面とケーシング(31)の内周面との間には、所定の隙間が必要となる。
すなわち、組立時には、弾性変形可能なOリング(92)が圧縮されて変形するので、ケーシング(31)内に断熱材(90)を挿入し易い。また、断熱材(90)が熱膨張しても、Oリング(92)が圧縮されるだけで、断熱材(90)は破損せず、逆に断熱材(90)が熱収縮しても、圧縮されていたOリング(92)が元に戻るだけで、断熱材(90)の外周面とケーシング(31)の内周面との間の隙間がシールされる。
このことで、ケーシング(31)内は高温高圧に保たれる。ケーシング(31)内の雰囲気との温度差の激しい、低温の膨張機構(60)側の第1空間(48)を断熱材(90)で区切ることで、冷媒対流が効果的に防止される。
一方、連通路(93)を通って第2空間(49)内の高圧の冷媒が第1空間(48)内に流れ込むので、第1空間(48)と第2空間(49)との間の圧力差が緩和される。このため、圧力差が激しくなることによる断熱材(90)の破損が防止される。
−実施形態2の効果−
したがって、本実施形態の圧縮・膨張ユニット(30)によると、断熱材(90)の外周面とケーシング(31)内周面との間に隙間を設けて組立易さや断熱材(90)の熱膨張による破損を考慮しながら、膨張機構(60)側の第1空間(48)と圧縮機構(50)側の第2空間(49)との間の冷媒対流を防止して物質移動による熱交換を防止し、能力低下や動力回収効果の低下を防ぐことができる。
また、Oリング(92)によって、断熱材(90)とケーシング(31)内周面との間の隙間をシールするようにしたことにより、組み立て易く、能力低下や動力回収効果の低下も生じない圧縮・膨張ユニット(30)が得られる。
また、断熱材(90)に連通路(93)を設けて第1空間(48)と第2空間(49)との間の圧力差を緩和するようにしたことにより、断熱材(90)の破損が防止されるので、断熱材(90)の耐久性を向上させることができる。
−実施形態2の変形例−
上記実施形態2では、シール手段として、断熱材(90)の外周にOリング(92)を装着したが、図10に示すように、断熱材(90)の外周に鍔部(98)を一体に設けてもよい。すなわち、断熱材(90)の外周全体に薄肉の鍔部(98)を一体成形すればよい。このことで、組立時には、弾性変形可能な鍔部(98)が圧縮されて変形するので、ケーシング(31)内に断熱材(90)を挿入し易い。また、断熱材(90)が熱膨張しても、鍔部(98)が圧縮されるだけで、断熱材(90)は破損せず、逆に断熱材(90)が熱収縮しても、圧縮されていた鍔部(98)が元に戻るだけで、断熱材(90)の外周面とケーシング(31)の内周面との間の隙間がシールされる。
(実施形態3)
図11及び図12は本発明の実施形態3を示し、ケーシング(31)内が低圧である、いわゆる低圧ドーム型の圧縮・膨張ユニット(30)である点で上記実施形態1と異なる。
図11及び図12に示すように、上記ケーシング(31)は、上記実施形態1と同様に、流入管(38)及び流出管(39)と、吸入管(36)及び吐出管(37)とを備えている。この各吸入管(36)は、一端が圧縮機構(50)の吸入ポート(32)にそれぞれ接続され、他端がケーシング(31)を貫通して冷媒回路(20)の配管に接続されている。つまり、上記各吸入管(36)は、低温低圧の冷媒をケーシング(31)の外部から圧縮機構(50)へ導くように構成されている。
本実施形態においても、室内熱交換器(24)又は室外熱交換器(23)にて蒸発した低温低圧の冷媒は、吸入管(36)を通じてケーシング(31)の内部空間にではなく圧縮機構(50)に直接吸入される。つまり、本実施形態では、圧縮・膨張ユニット(30)は、低圧ドーム型に構成されている。
具体的には、上記固定部としてのフロントヘッド(54)と、リアヘッド(55)とには、それぞれ吐出ポート(33,33a)が1つずつ形成されている。上記フロントヘッド(54)側の吐出ポート(33)は、始端が第2シリンダ(52)における圧縮室(53)の高圧側に連通している。上記リアヘッド(55)側の吐出ポート(33a)は、始端が第1シリンダ(51)における圧縮室(53)の高圧側に連通する一方、終端がリアヘッド(55)の外部に設けられた吐出室(33b)に連通している。この吐出室(33b)は、フロントヘッド(54)側の吐出ポート(33)に連通している。つまり、上記第1シリンダ(51)の圧縮室(53)で圧縮された冷媒は、吐出室(33b)を介してフロントヘッド(54)側の吐出ポート(33)へ流れ、第2シリンダ(52)の圧縮室(53)で圧縮された冷媒と合流する。また、上記各吐出ポート(33,33a)は、図示しないが、リード弁からなる吐出弁が設けられており、この吐出弁によって開閉される。
上記吐出管(37)は、一端が圧縮機構(50)におけるフロントヘッド(54)側の吐出ポート(33)の終端に接続され、他端がケーシング(31)を貫通して冷媒回路(20)の配管に接続されている。つまり、吐出管(37)は、圧縮機構(50)で圧縮された冷媒を該圧縮機構(50)からケーシング(31)の外部へ導くように構成されている。
このように、ケーシング(31)の内部空間には、圧縮機構(50)の高温高圧の吐出冷媒が流入することなく、吸入管(36)より吸い込まれた低温低圧の冷媒で満たされるので、ケーシング(31)がいわゆる低圧ドーム型に構成されることになる。これにより、膨張機構(60)が高温の吐出冷媒によって加熱されることはなく、その高温の吐出冷媒が膨張機構(60)によって冷却されることはない。
そして、本実施形態においても、ケーシング(31)の内部空間には、圧縮機構(50)におけるケーシング(31)内の露出面全体を覆い、上記回転軸(40)が貫通する断熱材(90,96)を備えている。断熱材(90,96)は、フロントヘッド(54)を境に回転軸(40)の軸方向に第1断熱材(90)と第2断熱材(96)とに分割されている。 ケーシング(31)の内部空間は、下側の第1断熱材(90)によって上下に仕切られている。上側の空間が第1空間(48)を、下側の空間が第2空間(49)をそれぞれ構成している。第1空間(48)には膨張機構(60)と電動機(45)とが配置され、第2空間(49)には圧縮機構(50)が配置されている。
つまり、ケーシング(31)内の雰囲気との温度差の激しい、高温の圧縮機構(50)側の第2空間(49)を第1断熱材(90)で区切ることで、冷媒対流が効果的に防止され、物質移動による熱交換が発生せず、能力低下や動力回収効果の低下も生じない。
本実施形態においても、一般的な断熱材(90,96)を構成する樹脂系材料の熱伝導率0.3w/m−kに対し、二酸化炭素冷媒の熱伝導率は、圧縮機構(50)の吐出側で0.03w/m−kであり、二酸化炭素冷媒の方が樹脂系材料よりも1オーダー低くなっている。
第1及び第2断熱材(90,96)には、第1及び第2断熱層(94,97)が形成されている。第1断熱層(94)は、周方向に複数並んでいる。すなわち、図示しないが、上記実施形態1と同様に圧縮機構(50)の上面の温度勾配も軸方向から見たときに概ね円周方向に分布しているので、それに対応させるように第1断熱層(94)が平面視で扇形に仕切られている。また、側面側第2断熱層(97a )についても、上記実施形態1と同様に鉛直方向に複数並んでいる。側面側第2断熱層(97a )は、さらに周方向に分割してもよい。圧縮機構(50)の下面を覆う平面側第2断熱層(97b )は、第2断熱材(96)の上面から下方へ凹陥された凹部よりなり、上記第1断熱層(94)と同様に圧縮機構(50)下面の円周方向に分布する温度勾配に対応させて周方向に複数並んでいる。図示しないが、第2断熱材(96)にも各第2断熱層(97)に冷媒を導入するための冷媒導入孔(95)が形成されている。
このように構成することで、断熱層(94,97)内の空間にガス冷媒が効果的に停留する等、上記実施形態1と同様に第1及び第2断熱材(90,96)の作用が得られる。
−実施形態3の効果−
したがって、本実施形態にかかる圧縮・膨張ユニット(30)においても、断熱材(90,96)で圧縮機構(50)のケーシング(31)内の露出面全体を覆ったことにより、ケーシング(31)の内部空間と断熱材(90,96)で覆われた圧縮機構(50)との間での熱交換を防いで、能力低下や動力回収効果の低下を防止することができる。
また、ケーシング(31)内の雰囲気との温度差が激しい圧縮機構(50)に近いところで第1空間(48)と第2空間(49)とを第1断熱材(90)で区切ることにより、冷媒対流を効果的に防止して、物質移動による熱交換を防止し、能力低下や動力回収効果の低下を防ぐことができる。
断熱材(90,96)に断熱層(94,97)を形成してその空間内にガス冷媒を停留させたことにより、断熱材(90,96)全体の熱伝導率を低下させることができるので、断熱材(90,96)を厚くする必要がなくなり、全体の大型化を防止できると共に、断熱材(90,96)のコストを低くすることができる。
−実施形態3の変形例−
上記実施形態2では、第1断熱層(94)は、周方向に複数並んだ略密閉型の空間を形成したものとしたが、下側が開放し、下面から上方へ凹陥された凹部よりなるものとしてもよい。
上記実施形態2と同様にシール手段(92, 98)や連通路(93)を設けてもよい。
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、膨張機構(60)は、揺動ピストン型のロータリ式膨張機で構成したが、ローリングピストン型のロータリ式膨張機によって膨張機構(60)を構成してもよい。この膨張機構(60)では、各ロータリ機構部(70,80)において、ブレード(76,86)がピストン(75,85)とは別体に形成される。そして、このブレード(76,86)は、その先端がピストン(75,85)の外周面に押圧され、ピストン(75,85)の移動に伴って進退する。
上記各実施形態では、圧縮機構(50)を揺動ピストン型のロータリ式圧縮機とし、膨張機構(60)を揺動ピストン型のロータリ式膨張機としたが、いずれもスクロール式のものとしてもよい。スクロール式膨張機構や圧縮機構とした場合には、軸方向から見た表面温度分布は、中心が最も高温で半径方向へ低くなる。このため、第1断熱層(94)及び平面側第2断熱層(97b )は、断熱材(90,96)の接する膨張機構又は圧縮機構の表面の温度分布にあわせて同心円状に分割したものとすればよい。
上記各実施形態では、第2断熱層(97)として、側面側第2断熱層(97a )と平面側第2断熱層(97b )とを設けたが、いずれか一方のみを設けてもよい。熱伝導率を適度に低下させること、脱型後に均一に冷えて変形が少ないことを考慮して第2断熱層(97)を設けるとよい。
上記各実施形態では、断熱層(94,97)とシール手段(92, 98)とは、簡略化のために別々に設けているが、同時に設けてもよい。
第1及び第2断熱材(90,96)は、耐熱性の高い特殊エンジニアリングプラスチックで形成するとしたが、実施形態1のように温度の比較的低い膨張機構(60)側に設ける場合には、冷媒温度が100℃以下となるので、耐熱性の低い汎用エンジニアリングプラスチックで形成してもよい。例えば、POM(ポリアセタール)が考えられる。また、エポキシや、FRPでもよいが、FRPの場合、炭素、ガラス繊維等を含有させると熱伝導率が高くなるという欠点がある。
上記各実施形態では、冷媒は、二酸化炭素としたが、R410A、R407Cやイソブタンでもよい。
上記各実施形態では、第2空間(49)における、圧縮機構(50)の上側に電動機(45)を配置したが、圧縮機構(50)の下側に配置してもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。