JP4765530B2 - パターン形成体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、配線基板の導電性パターンや、カラーフィルタの着色層等、種々の機能性部を形成するために用いられるパターン形成体、およびその製造方法に関するものである。
従来より、基材上に図案、画像、文字、回路等の種々のパターンを形成するパターン形成体の製造方法として、様々な方法が提案されており、例えば、平版印刷や、オフセット印刷、ヒートモード記録材料を用いた平版印刷原版を作製する印刷法等も用いられている。また、例えば、基材上に塗布したフォトレジスト層にパターン露光を行い、露光後、フォトレジストを現像し、さらにエッチングを行ったり、フォトレジストに機能性を有する物質を用いて、フォトレジストの露光によって目的とするパターンを直接形成する等のフォトリソグラフィーによるパターン形成体の製造方法も知られている。
しかしながら、高精細なパターン形成体を製造する際には、上記印刷法では位置精度が低い等の問題があり、用いることが難しかった。また、上記フォトリソグラフィー法においては、フォトレジストを用いるとともに、露光後に液体現像液によって現像を行ったり、エッチングを行う必要があるので、廃液を処理する必要が生じる等の問題があった。また、フォトレジストとして機能性の物質を用いた場合には、現像の際に使用されるアルカリ液等によって劣化する等の問題もあった。
そこで、基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を形成し、光触媒を含有する光触媒含有層側基板と対向させて配置した後、所定の方向から露光することにより、特性変化層の特性が変化したパターンを形成するパターン形成体の製造方法も提案されている(特許文献1および特許文献2)。この方法によれば、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって、上記特性変化層の特性を利用して、容易に機能性部を形成することが可能なパターン形成体を製造することがきる。また、現像液等を用いる必要がない、という利点も有する。
しかしながらこの場合、露光精度や、光触媒の作用により生じた活性酸素種の拡散等の面から、例えば細線等、微細なパターンを有するパターン形成体の形成が難しいという問題があった。
特開2000−249821号公報 特開2003−295428号公報
そこで、より高精細なパターン状に特性が変化したパターンを有するパターン形成体、およびその製造方法の提供が望まれている。
本発明は、表面に凸面および凹部領域が形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する樹脂層を有し、上記凹部領域の側面および底面が、上記凸面の特性と異なる特性を有することを特徴とするパターン形成体を提供する。
本発明によれば、上記樹脂層の凹部領域の側面および底面の特性が、樹脂層の凸面の特性と異なることから、これらの特性の差を利用して、凹部領域内にのみ、高精細に機能性部を形成する機能性部形成用塗工液を付着させることができる。したがって、凹部領域のパターンに沿って高精細なパターン状に機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができるのである。
また、本発明は、表面に凸面および凹部領域が形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する樹脂層と、基体および上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板とを、上記樹脂層の凸面および上記光触媒含有層が接触するように配置し、所定の方向からエネルギーを照射するエネルギー照射工程を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記光触媒含有層と樹脂層の凸面とを接触させた状態でエネルギー照射を行うことから、凸面に光触媒の作用を及ぼすことなく、樹脂層の凹部領域の底面および側面のみに光触媒の作用を及ぼすことができる。したがって、樹脂層の凸面と凹部領域の底面および側面との特性が異なるパターン形成体を製造することができ、凹部領域のパターンに沿って高精細に機能性部を形成可能なものとすることができるのである。また本発明によれば、エネルギー照射の際の露光精度や、光触媒の作用により発生した活性酸素種の拡散等の影響を受けないことから、微細なパターン状に凹部領域が形成されている樹脂層を用いることにより、微細なパターン状に特性が変化したパターン形成体を製造することができる、という利点も有する。
本発明によれば、凹部領域のパターンに沿って高精細に機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができるという効果を奏するものである。
本発明は、配線基板の導電性パターンや、カラーフィルタの着色層等、種々の機能性部を形成するために用いられるパターン形成体、およびその製造方法に関するものである。以下、それぞれについて説明する。
A.パターン形成体
まず、本発明のパターン形成体について説明する。本発明のパターン形成体は、表面に凸面および凹部領域が形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する樹脂層を有し、上記凹部領域の側面および底面が、上記凸面の特性と異なる特性を有することを特徴とするものである。
本発明のパターン形成体は、例えば図1または図2に示すように、凹部領域a、および凸面bが形成された樹脂層1を有し、上記凹部領域aの側面cおよび底面dの特性が、凸面bの特性と異なることを特徴とするものである。ここで、上記凸面とは、平坦な基板を樹脂層と対面して接触させた際、基板と接触する面をいうこととする。また、上記凹部領域とは、樹脂層表面において凸面以外の領域をいうこととし、凹部領域は側面および底面から構成される。
本発明によれば、上記樹脂層の凹部領域の側面および底面の特性が上記樹脂層の凸面と異なるものとされていることから、この特性の差を利用して、凹部領域にのみ機能性部を形成する機能性部形成用塗工液を付着させることが可能となる。したがって、凹部領域のパターンに沿って高精細に機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができるのである。
また、本発明によれば、上記樹脂層がエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化するものとされていることから、上記樹脂層の凸面と、光触媒を含有する光触媒含有層とを接触させて露光することにより、上記樹脂層の凹部領域の側面および底面の特性を変化させることができ、上記樹脂層の凸面の特性と異なるものとすることができる。したがって、複雑な工程や特別な装置等を必要とすることなく、効率よく製造されたパターン形成体とすることができるのである。
以下、本発明のパターン形成体について各構成ごとに詳しく説明する。
1.樹脂層
まず、本発明に用いられる樹脂層について説明する。本発明に用いられる樹脂層は、表面に凸面および凹部領域が形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化するものであれば、特に限定されるものではない。
ここで、上記エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化するとは、光触媒を含有する光触媒含有層を樹脂層と近接するように配置してエネルギー照射した場合に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、表面の有機基が分解または変性等され、表面の特性が変化することをいう。なお本発明に用いられる樹脂層の特性変化の種類は、特に限定されるものではなく、例えば樹脂層の表面に存在する有機基が分解または変性等されて濡れ性が変化するもの等であってもよく、また表面の接着性が変化するもの等であってもよい。
本発明においては上記の中でも特に樹脂層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、表面の液体との接触角が低下する層であることが好ましい。これにより、樹脂層の凸面の濡れ性と、樹脂層の凹部領域の側面および底部の濡れ性との差を利用して、上記凹部領域内にのみ高精細に機能性部を形成する機能性部形成用塗工液を付着させることができるからである。
このような濡れ性の変化する樹脂層として用いられるものとしては、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリエチレンテレナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ化ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィン、アラミカ(登録商標)、トレリナ(登録商標)、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリカーボネート等からなる層や、特開2000−249821号公報に記載されているオルガノポリシロキサンを用いた濡れ性変化層等と同様の層とすることができる。
ここで本発明において上記凹部領域は、樹脂層の凸面から20μm以下、中でも0.5μm〜10μm程度の深さ凹んでいるものであることが好ましい。上記凹部領域の凹みの深さをこのようなものとすることにより、樹脂層の凸面に光触媒含有層を接触させてエネルギーを照射することによって、上記凹部領域の側面および底面の特性を変化させることが可能となるからである。なお、本発明においては、凹部領域内に、上記深さより凹んでいる部分等を有していてもよく、一部上記光触媒の作用により特性が変化していない領域を含んでいてもよい。
また、上記凹部領域の断面形状としては特に限定されるものではなく、例えば矩形状であってもよく、また凹部領域の底面の幅が狭いテーパー形状や、半円状等としてもよい。また、凹部領域内は、例えば図1に示すように平坦であってもよく、また例えば図2に示すように、凹凸が形成されているものであってもよい。なお、上記凹部領域のパターンについては特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途や、凹部領域上に形成される機能性部の種類等により、適宜選択されることとなる。また、凹部領域の形成されている幅についてもパターン形成体の用途に応じて適宜選択されるものであるが、通常0.1μm以上、中でも1μm〜1000μm程度とされていることが好ましい。また、上記樹脂層の膜厚等についても適宜選択される。
また、凸面の幅としても、パターン形成体の用途に応じて適宜選択されるものであるが、通常0.1μm以上、中でも1μm〜1000μm程度とされていることが好ましい。上記凸面の幅が上記値より狭い場合には、パターン形成体の凹部上に機能性部を形成する際、隣接する凹部領域に形成される機能性部どうしがつながってしまう場合等があるからである。
ここで本発明において、上述したような凸面および凹部領域が形成された樹脂層の形成方法としては特に限定されるものではない。例えば上述したような材料からなる平坦な層を、フォトリソグラフィー法によりパターニングして形成したものであってもよく、また例えば凸面および凹部領域の形状と同様の形状に形成された基材上に、上記材料を含有する樹脂層形成用塗工液を塗布して形成したもの等であってもよい。本発明においては特に、例えば図3に示すように、基材2上に、上述したような材料を含有する紫外線硬化型樹脂組成物を塗布して平坦な紫外線硬化型樹脂層1´を形成し(図3(a))、この紫外線硬化型樹脂層1´に、形成する凸面および凹部領域の形状と凹凸が反転した形状を有する型10を密着させて露光して(図3(b))、樹脂層1を形成(図3(c))したものであることが好ましい。これにより、微細なパターン状に凹部領域を形成することが可能であり、また複雑な工程を経ることなく効率よく樹脂層を形成することが可能となるからである。
なお、本発明に用いられる樹脂層の凹部領域の側面および底面の特性を変化させる方法については、後述する「B.パターン形成体の製造方法」の項で詳しく説明するので、ここでの説明は省略する。
2.パターン形成体
本発明のパターン形成体は、例えば上記凹部領域の底面および側面の濡れ性と、凸面の濡れ性との差等を利用して着色層を形成するカラーフィルタの製造や、上記特性の差を利用して導電性パターンを形成する配線基板の製造等、種々の機能性部を有する機能性素子の製造に用いられるものとすることができる。本発明のパターン形成体は、特に微細な機能性部を有する機能性素子の製造に有用である。
ここで、本発明のパターン形成体は、上記樹脂層を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば図1に示すように、樹脂層1のみからなるものであってもよいが、例えば図4に示すように、基材2と、樹脂層1とからなるもの等であってもよい。また、必要に応じて、例えば基材上に遮光部等を有するもの等であってもよい。以下、本発明に用いられる基材について説明する。
(基材)
本発明に用いられる基材としては、パターン形成体の用途等に応じて適宜選択されるものであり、一般的なパターン形成体に基材として用いられるものと同様とすることができる。また基材の透明性や可撓性や耐熱性、絶縁性等についても特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途に合わせて適宜選択される。このような基材として具体的には、紙基材の樹脂積層板や、ガラス布・ガラス不織布基材の樹脂積層板、セラミック、金属等が挙げられる。
また、本発明においては、基材が平坦なものであってもよいが、上述したように、樹脂層の凸面および凹部領域と同様の凹凸を有するものであってもよい。このような凸面および凹部領域の形成方法としては、上記樹脂層の項で説明した方法と同様とすることができる。
B.パターン形成体の製造方法
次に、本発明のパターン形成体の製造方法について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法は、表面に凸面および凹部領域が形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する樹脂層と、基体および上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板とを、上記樹脂層の凸面および上記光触媒含有層が接触するように配置し、所定の方向からエネルギーを照射するエネルギー照射工程を有することを特徴とする方法である。
本発明のパターン形成体の製造方法は、例えば図5に示すように、基体11および基体11上に形成された光触媒含有層12とを有する光触媒含有層側基板13を準備し(図5(a))、表面に凸面bおよび凹部領域aが形成された樹脂層1の凸面bと、上記光触媒含有層側基板13の光触媒含有層12とを接触するように配置した後、所定の方向からエネルギー20を照射し(図5(b))、樹脂層1の凹部領域aの側面cおよび底面dの特性を変化させる(図5(c))エネルギー照射工程を有する方法である。なお、上記樹脂層の凹部領域および凸面は、上述した「A.パターン形成体」で説明したものと同様である。
ここで、平坦な樹脂層と上記光触媒含有層側基板とを対向させて配置し、フォトマスク等を用いてパターン状にエネルギーを照射し、パターン形成体を形成する場合には、光触媒の作用により生じた活性酸素種が拡散してしまうこと等によって、細線等の微細なパターンを形成することが難しいという問題があった。
一方、本発明によれば、上記樹脂層の凸面と光触媒含有層とを接触させてエネルギーを照射することから、光触媒含有層と接触している樹脂層の凸面の特性が変化することがなく、また発生した活性酸素種等も樹脂層の凹部領域にのみ広がるものとすることができる。したがって、凹部領域の側面および底面のみの特性を変化させることができ、凸面の特性と凹部領域の側面および底面の特性とが異なるものとすることができるのである。また本発明によれば、凹部領域が微細なパターン状に形成されている場合であっても、凹部領域の側面および底面のみの特性を変化させることが可能であり、凹部領域の形状に沿って、高精細に機能性部を形成可能なパターン形成体を製造することができるのである。
以下、本発明のエネルギー照射工程について詳しく説明する。
1.エネルギー照射工程
本発明のエネルギー照射工程は表面に凸面および凹部領域が形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する樹脂層と、基体および上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板とを、上記樹脂層の凸面および光触媒含有層が接触するように配置し、所定の方向からエネルギーを照射する工程である。
以下、本工程に用いられる樹脂層、光触媒含有層側基板、およびエネルギーの照射方法についてそれぞれ説明する。
a.樹脂層
本工程において用いられる樹脂層としては、表面に凸面および凹部領域が形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化するものであれば、特に限定されるものではない。
本発明において、上記特性変化の種類としては特に限定されるものではなく、例えば樹脂層の表面に存在する有機基が分解または変性されて濡れ性が変化する層であってもよく、また例えば有機基が分解または変性されることにより、接着性が変化するもの等であってもよい。このような樹脂層の材料や、上記凸面や凹部領域の形状や形成方法等については、上述した「A.パターン形成体」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
b.光触媒含有層側基板
次に、本工程に用いられる光触媒含有層基板について説明する。本工程に用いられる光触媒含有層側基板は、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有するものであり、通常、基体上に光触媒含有層が形成されているものである。以下、本工程に用いられる光触媒含有層側基板の各構成について説明する。
(1)光触媒含有層
まず、光触媒含有層側基板に用いられる光触媒含有層について説明する。本工程に用いられる光触媒含有層は、光触媒含有層中の光触媒が、近接する樹脂層の特性を変化させることが可能なものであれば特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよく、光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の特性は特に親液性であっても撥液性であってもよい。
本発明に用いられる光触媒含有層中に含有される光触媒としては、半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができる。また半導体以外としては、金属錯体や銀なども用いることができる。本発明においては、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
また、上記酸化チタンとして可視光応答型のものを用いてもよい。可視光応答型の酸化チタンとは、可視光のエネルギーによっても励起されるものであり、このような可視光応答化の方法としては、酸化チタンを窒化処理する方法等が挙げられる。
酸化チタン(TiO)は、窒化処理をすることにより、酸化チタン(TiO)のバンドギャップの内側に新しいエネルギー準位が形成され、バンドギャップが狭くなる。その結果、通常酸化チタン(TiO)の励起波長は380nmであるが、その励起波長より長波長の可視光によっても、励起されることが可能となるのである。これにより、種々の光源によるエネルギー照射の可視光領域の波長も酸化チタン(TiO)の励起に寄与させることが可能となることから、さらに酸化チタンを高感度化させることが可能となるのである。
ここで、本発明でいう酸化チタンの窒化処理とは、酸化チタン(TiO)の結晶の酸素サイトの一部を窒素原子での置換する処理や、酸化チタン(TiO)結晶の格子間に窒素原子をドーピングする処理、または酸化チタン(TiO)結晶の多結晶集合体の粒界に窒素原子を配する処理等をいう。
酸化チタン(TiO)の窒化処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば、結晶性酸化チタンの微粒子をアンモニア雰囲気下で700℃の熱処理により、窒素をドーピングし、この窒素のドーピングされた微粒子と、無機バインダや溶媒等を用いて、分散液とする方法等が挙げられる。
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下であることが好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能である。またこの場合、光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に樹脂層の凹部領域の特性を変化させることができる。
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法の他の例としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基体上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基体上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiXで表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基体上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
さらに、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
(2)基体
次に、光触媒含有層側基板に用いられる基体について説明する。本発明においては、図5に示すように、光触媒含有層側基板は、少なくとも基体11とこの基体11上に形成された光触媒含有層12とを有するものである。
本発明に用いられる基体は、上記光触媒含有層を形成可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば可撓性を有する樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。
なお、基体表面と上記光触媒含有層との密着性を向上させるため、また光触媒の作用による基体の劣化を防ぐために基体上に中間層を形成するようにしてもよい。このような中間層としては、シラン系、チタン系のカップリング剤や、反応性スパッタ法やCVD法等により作製したシリカ膜等が挙げられる。
c.エネルギーの照射方法
次に、本工程におけるエネルギーの照射方法について説明する。本工程においては、上記樹脂層の凸面と、上記光触媒含有層側基板の光触媒含有層とを接触させて配置してエネルギーを照射する。
ここで、上記光触媒含有層と上記樹脂層の凸面とを接触させて配置するとは、エネルギー照射の際、上記樹脂層の凸面に光触媒の作用が及ばないように光触媒含有層および樹脂層を配置すればよく、例えば上記光触媒含有層と樹脂層の凸面とを圧着して配置してもよく、また上記光触媒含有層と樹脂層の凸面とが軽く接するように配置してもよい。本発明においては、このような光触媒含有層側基板の配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
なお、本発明でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒によって、樹脂層の凹部領域の側面および底面の特性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは150nm〜380nmの範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができ、本発明においては、フォトマスク等を用いることなく、全面にエネルギーを照射することができる。また、上述したような光源を用いてエネルギーを照射する方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
ここで、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、樹脂層の凹部領域の側面および底面が光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化するのに必要な照射量とする。またこの際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的に特性を変化させることができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
2.その他
また、本発明においては、上述したエネルギー照射工程だけでなく、必要に応じて例えば樹脂層の形状を調整する工程や、基材上に遮光部等を形成する工程等を有していてもよい。
なお、本発明により製造されたパターン形成体は、例えば上記樹脂層の凹部領域の側面および底面の濡れ性と、樹脂層の凸面の濡れ性との差等を利用して凹部領域に着色層を形成するカラーフィルタの製造や、上記の特性の差を利用してレンズを形成するマイクロレンズの製造、上記特性の差を利用して導電性パターンを形成する配線基板の製造等、種々の機能性部を有する機能性素子の製造に用いられるものとすることができる
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(パターニング用基板の形成)
下記の成分を混合して、紫外線硬化性樹脂混合液を調製した。
・ウレタンオリゴマー 70質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 30質量部
・ヘキサンジオールジアクリレート 20質量部
・N−ビニルピロリドン 20質量部
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5質量部
・ジメチルポリシロキサンポリエーテル変性シリコーン 0.7質量部
上記紫外線硬化性樹脂混合液を、ライン幅およびスペース幅がいずれも50μmであり、かつ1μmの深さの凹凸パターンが形成された原版上に滴下した。上記紫外線硬化性樹脂混合液上に基材として、易接着PETフィルムを重ね合わせた後、高圧水銀灯を用いて600mJ/cm(365nm)の紫外線を照射して上記紫外線硬化性樹脂混合液を硬化させて樹脂層とした。その後、上記原版を剥離し、深さ1μmの凹凸パターンが完全に転写されたパターニング用基板を得た。
(光触媒含有層側基板の作製)
石英ガラス(基体)上に、下記の成分を混合後、温度25℃で24時間攪拌して調製したプライマー層形成用組成物を塗布した。その後、温度120℃で20分間加熱し、0.1μmの厚みのプライマー層を形成した。
・0.1規定塩酸水溶液 50g
・テトラメトキシシラン 100g
次いで、二酸化チタンを含有する光触媒無機用コーティング剤(石原産業製、商品名「ST−K03」)を、上記プライマー層上に塗布し、温度150℃で20分間加熱し、膜厚0.15μmの光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板を形成した。
(パターン形成体の作製)
続いて、上記パターニング用基板の樹脂層と、上述した光触媒含有層側基板の光触媒含有層とを密着させ、光触媒含有層側より20mW/cmの照度で、波長が365nmである紫外線を照射し、パターン形成体を作製した。
(機能性部の形成)
上記パターン形成体の樹脂層の凹凸上に、Agナノ粒子ペースト(藤倉化成社製)をアプリケーターにより塗布したところ、凹部に選択的にAgナノ粒子ペーストを塗布することが可能であった。最後に、上記Agナノ粒子ペーストを160℃で30分間乾燥させて、上記パターン形成体の凹部にAg配線を作製した。
[実施例2]
実施例1と同様に、パターン形成体を作製した。その後、クリーナーコンディショナー(CD−202 上村工業社製)を濃度50ml/Lに調整し、上記パターン形成体を温度60℃で5分間洗浄した。その後、純水で洗浄し、さらに濃度50ml/Lの硫酸を用いて、室温で1分間酸洗浄し、最後に純水で洗浄を行った。
続いて、PED−104(上村工業社製)を濃度270g/Lに調整し、上記パターン形成体を室温で1分間プレディップした。
次に、濃度270g/LのPED−104(上村工業社製)と濃度30ml/LのAT−105(上村工業社製)とを混合したものに、上記パターン形成体を25℃で8分間浸漬し、Pd−Sn触媒を上記樹脂層の表面に吸着させ、純水で洗浄を行った。
次に、濃度100ml/LのAL−106(上村工業社製)に、パターン形成体を3分間浸漬し、上記パターン形成体の樹脂層上に吸着させたPdーSn触媒を活性化させた後、純水で洗浄を行った。無電解銅めっき用の標準浴として純水71.9vol%とスルカップPEA−6A 10.0vol%と、スルカップPEA−6B 10.0vol%と、スルカップPEA−6C 1.4vol%と、スルカップPEA−6D 1.2vol%と、スルカップPEA−6E 5.0vol%と、37%ホルムアルデヒド0.5vol%とを混合した。その浴液中に、上記パターン形成体を34℃の状態で5分間浸漬し、水洗およびアルコール洗浄を行った。
その結果、上記凹部にのみ選択的に銅がめっきされ、上記凹部に銅配線を作製できた。
本発明のパターン形成体の一例を示す概略断面図である。 本発明のパターン形成体の他の例を示す概略断面図である。 本発明に用いられる樹脂層の形成方法の一例を示す工程図である。 本発明のパターン形成体の他の例を示す概略断面図である。 本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
符号の説明
1 …樹脂層
2 …基材
11…基体
12…光触媒含有層
13…光触媒含有層側基板
20…エネルギー
a …凹部領域
b …凸面
c …側面
d …底面

Claims (2)

  1. 表面に少なくとも一つの凸面および凹部領域が形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により生じる活性酸素により特性が変化する樹脂により形成された樹脂層と、
    基体および前記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層側の表面が、前記樹脂層の前記凸面と接触した状態で前記凹部領域を覆うことが可能な形状を有する光触媒含有層側基板とを、
    前記樹脂層の前記凸面および前記光触媒含有層が接触するように配置してエネルギーを照射し、これにより前記凸面以外の凹部領域を活性酸素により改質させるエネルギー照射工程を有し、
    前記樹脂層および前記光触媒含有層側基板の少なくとも一方が、前記エネルギーに対して透過性を有するものであり、
    前記樹脂層の前記凸面以外の凹部領域表面が改質された樹脂層を得ることを特徴とするパターン形成体の製造方法。
  2. 前記凹部領域は、前記凸面から20μm以下の深さで凹んだ形状を有することを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体の製造方法。
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