本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明を適用した超音波診断装置1の内部の構成を表している。
超音波診断装置1は、本体11、その本体11に電気ケーブルを介して接続されている超音波プローブ12、入力部13、および表示部14により構成されている。
図2に示されるように、超音波診断装置1の本体11は、制御部21、送信部22、受信部23、画像データ生成部24、データ記憶部25、演算部26、残留多重エコー虚像発生抑制部27、およびDSC(Digital Scan Converter)28により構成されている。
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)などからなり、種々の制御信号を生成し、各部に供給することにより超音波診断装置1の駆動を総括的に制御する。
送信部22は、レートパルス発生器、送信遅延回路、およびパルサ(いずれも図示せず)からなり、レートパルス発生器は、制御部21から供給された制御信号に基づいて被検体の内部に入射する超音波パルスのパルス繰り返し周波数を決定するレートパルスを発生し、送信遅延回路に供給する。また、送信遅延回路は、送信時における超音波ビームの収束距離や偏向角度を設定するための遅延回路であり、制御部21から供給される制御信号に基づいて、送信時における超音波ビームの焦点位置と偏向角度が所定の焦点位置と偏向角度となるように、レートパルス発生器から供給されたレートパルスに遅延時間を加え、パルサに供給する。さらに、パルサは、超音波振動子を駆動するための高圧パルスを生成する駆動回路であり、送信遅延回路から供給されたレートパルスに基づいて、超音波振動子を駆動するための高圧パルスを生成し、生成された高圧パルスを超音波プローブ12に出力する。
受信部23は、プリアンプ、受信遅延回路、および加算器(いずれも図示せず)からなり、プリアンプは、超音波プローブ12から被検体に供給された超音波パルスの反射波に基づく受信信号を取得し、取得された受信信号を所定のレベルまで増幅し、増幅された受信信号を受信遅延回路に供給する。
受信遅延回路は、制御部21から供給される制御信号に基づいて、プリアンプから供給された増幅後の受信信号に各超音波振動子のフォーカス位置からの超音波の伝播時間の差に対応する遅延時間を与え、加算器に供給する。加算器は、受信遅延回路から供給された各超音波振動子からの受信信号を加算し、加算された受信信号を画像データ生成部24に供給する。
画像データ生成部24は、Bモード処理部31とドプラモード処理部32により構成されている。Bモード処理部31は、対数増幅器、包絡線検波回路、およびTGC(Time Gain Control)回路(いずれも図示せず)からなり、制御部21から供給された制御信号に基づいて、以下の処理を行う。
すなわち、Bモード処理部31の対数増幅器は、受信部23から供給された受信信号を対数増幅し、対数増幅された受信信号を包絡線検波回路に供給する。包絡線検波回路は、超音波周波数成分を除去して振幅のみを検出するための回路であり、対数増幅器から供給された受信信号について包絡線を検波し、検波された受信信号をTGC回路に供給する。TGC回路は、包絡線検波回路から供給された受信信号の強度を最終的な画像の輝度が均一になるように調整し、Bモード画像データを生成し、生成されたBモード画像データをデータ記憶部25に供給する。
データ記憶部25は、Bモード処理部31とドプラモード処理部32から供給されたBモード画像データとドプラモード画像データを取得し、取得されたBモード画像データとドプラモード画像データを記憶する。また、データ記憶部25は、制御部21からの指示に従い、必要に応じて、記憶されているBモード画像データとドプラモード画像データをDSC28に供給する。さらに、データ記憶部25は、演算部26において演算された演算結果を記憶し、必要に応じて、記憶されている演算結果を表示部14に供給する。
また、データ記憶部25は、残留多重エコー虚像発生抑制部27のパルス繰り返し周波数変更部36から供給された変更結果を記憶する。
演算部26は、データ記憶部25に記憶されている複数の画像データの中から所望の画像データを読み出し、読み出された画像データに基づいて特徴点を抽出し、その抽出結果をデータ記憶部25に供給する。また、演算部26は、データ記憶部25に記憶されている複数の画像データの中から所望の画像データを読み出し、読み出された画像データに基づいて特徴点の追跡演算を行い、追跡演算結果に基づいて被検体の診断部位における各種パラメータを算出し、その算出結果をデータ記憶部25に供給する。
残留多重エコー虚像発生抑制部27は、残留多重エコー虚像発生判定部33、残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数算出部35、およびパルス繰り返し周波数変更部36からなり、残留多重エコー虚像発生判定部33は、データ記憶部25に記憶されているBモード画像データなどに基づいて残留多重エコー虚像が発生しているか否かを判定し、その判定結果を残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34とパルス繰り返し周波数変更部36に供給する。
残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34は、残留多重エコー虚像発生判定部33から供給された判定結果に基づいて、残留多重エコーによる虚像が発生している深度や領域を算出し、算出結果を残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数算出部35とパルス繰り返し周波数変更部36に供給する。
残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数算出部35は、残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34から供給された算出結果に基づいて、残留多重エコーによる虚像の発生を抑制するパルス繰り返し周波数である残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数を算出し、算出結果をパルス繰り返し周波数変更部36に供給する。
パルス繰り返し周波数変更部36は、残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34と残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数算出部35から供給された算出結果に基づいて、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を、算出された残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数あるいは最高パルス繰り返し周波数に変更し、その変更結果をデータ記憶部25と制御部21に供給する。
DSC28は、データ記憶部25から供給されたBモード画像データとドプラモード画像データを取得し、取得されたBモード画像データとドプラモード画像データを、超音波スキャンの走査線信号列からビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示部14に供給する。
また、超音波プローブ12は、本体11に電気ケーブルを介して接続されており、被検体の表面に対してその前面を接触させ超音波の送受信を行う超音波トランスジューサであり、1次元にアレイ配列あるいは2次元にマトリクス配列された微小な超音波振動子(図示せず)をその先端部分に有している。この超音波振動子は圧電振動子としての電気音響変換素子である。超音波プローブ12は、送信時には本体11の送信部22から入力された電気パルスを超音波パルス(送信超音波)に変換し、また受信時には被検体により反射された反射波を電気信号に変換し、本体11に出力する。
入力部13は、電気ケーブルを介して本体11と接続され、操作パネル上に、オペレータが残留多重エコー虚像発生抑制処理(図4と図5を参照して後述する)を開始させる指示をするための残留多重エコー虚像発生抑制処理ボタンの他、オペレータの種々の指示を入力するための表示パネル、キーボード、トラックボール、マウスなどの入力デバイスを有しており、患者情報、計測パラメータ、物理パラメータ、テンプレートサイズ、および、画像演算に用いる画像の時相や格子間隔などをオペレータが入力するために用いられる。
表示部14は、ケーブルを介して本体11のDSC28と接続され、図示せぬLCD(Liquid Crystal Display)や図示せぬCRT(Cathode Ray Tube)が設けられており、超音波スキャンの走査線信号列からビデオフォーマットの走査線信号列に変換されたDSC28からのBモード画像データとドプラモード画像データなどを取得し、取得されたBモード画像データとドプラモード画像データなどを図示せぬLCDや図示せぬCRTに表示する。
次に、図3のフローチャートを参照して、図2の超音波診断装置1における残留多重エコー虚像発生抑制前パルス繰り返し周波数設定処理について説明する。
ステップS1において、制御部21は、オペレータが入力部13を操作することにより表示部14に表示される画像の表示倍率が入力されたか否かを判定し、オペレータが入力部13を操作することにより表示部14に表示される画像の表示倍率が入力されたと判定されるまで待機する。
ステップS1においてオペレータが入力部13を操作することにより表示部14に表示される画像の表示倍率が入力されたと判定された場合、制御部21はステップS2で、入力部13から供給されたオペレータの指示に対応した画像表示倍率指示信号に基づいて、オペレータが要求する超音波の送受信を行う画像表示倍率に応じた表示深度を算出する。
ステップS3において、制御部21は、ステップS2の処理において算出された表示深度の算出結果に基づいて、残留多重エコー虚像発生抑制処理前に超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数である残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数を、予め設定されている割合に応じて算出する。すなわち、残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数は、残留多重エコーによる虚像の発生を多少抑制するため、オペレータが求めるBモード断層画像の表示深度(以下、「設定表示深度」という。)に応じた最高パルス繰り返し周波数([数2]より求まるパルス繰り返し周波数)よりも所定の値低くなるように予め固定値として設定されており、その設定された固定値が算出する。
ステップS4において、制御部21は、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を、算出された残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数に設定する。これにより、残留多重エコー虚像発生抑制処理(図4と図5を参照して後述する)を行う前においては、設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数よりも所定の値低い残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数で超音波の送受信が行われる。なお、上述したように、残留多重エコーによる虚像が発生しやすい領域と、残留多重エコーによる虚像が発生しにくい領域があるため、最高パルス繰り返し周波数よりも所定の値低く設定されたとしても、超音波を走査する領域によっては残留多重エコーによる虚像が発生してしまうことがある。
制御部21は、設定された残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数のデータである残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数データをデータ記憶部25に供給する。
ステップS5において、データ記憶部25は、制御部21から供給された残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数データを取得し、取得された残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数データを記憶する。
ステップS6において、制御部21は、ステップS4の処理において設定された残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数に基づいて、残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数設定制御信号を生成し、送信部22に供給する。
その後、送受信部22のレートパルス発生器(図示せず)においては、制御部21から供給された残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数設定制御信号に基づいて、被検体の内部に入射する超音波パルスのパルス繰り返し周波数を、設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数よりも所定の値低い残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数に決定するレートパルスが発生される。この設定処理以降、オペレータにより超音波プローブ12の先端(超音波送受信面)が被検体の体表面上の所定の位置に固定され、設定された残留多重エコー虚像発生抑制処理前パルス繰り返し周波数の超音波の送受信により、所定の時相における画像データの生成が開始される。
図4と図5のフローチャートを参照して、図2の超音波診断装置1における残留多重エコー虚像発生抑制処理について説明する。この処理は、残留多重エコー虚像発生抑制前パルス繰り返し周波数設定処理により設定されたパルス繰り返し周波数の超音波の送受信により生成された画像データに、残留多重エコーによる虚像がすでに発生している場合、あるいは、オペレータが残留多重エコーによる虚像が発生しそうであると予想した場合に、オペレータが残留多重エコー虚像発生抑制ボタンを操作することにより開始される。
ステップS11において、制御部21は、オペレータが入力部13の図示せぬ残留多重エコー虚像発生抑制ボタンを操作することにより残留多重エコー虚像発生抑制処理を開始するとの指示がなされたか否かを判定し、残留多重エコー虚像発生抑制処理を開始するとの指示がなされたと判定されるまで待機する。
ステップS11において残留多重エコー虚像発生抑制処理を開始するとの指示がなされたと判定された場合、制御部21はステップS12で、第1超音波送信制御信号と第1超音波受信制御信号を生成し、それぞれ、送信部22と受信部23に供給する。ここで、第1超音波送信制御信号には、オペレータが入力部13を操作することにより入力された画像の表示倍率に基づいて算出される設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数で超音波が送信されるための制御信号が含まれており、第1超音波受信制御信号には、オペレータが入力部13を操作することにより入力された画像の表示倍率に基づいて算出される設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数で超音波が受信されるための制御信号が含まれている。
ステップS13において、送信部22は、制御部21から供給された第1超音波送信制御信号に基づいて、超音波ビームを被検体に送信する。すなわち、送信部22のレートパルス器は、制御部21から供給された第1超音波送信制御信号に基づいて、被検体の内部に入射する超音波パルスのパルス繰り返し周波数が設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数になるように決定するレートパルスを発生し、送信遅延回路に供給する。また、送信遅延回路は、制御部21から供給される第1超音波送信制御信号に基づいて、送信時における超音波ビームの焦点位置と偏向角度が所定の焦点位置と偏向角度(θ1)となるように、レートパルス発生器から供給されたレートパルスに遅延時間を加え、パルサに供給する。さらに、パルサは、送信遅延回路から供給されたレートパルスに基づいて、超音波振動子を駆動するための高圧パルスを生成し、生成された高圧パルスを超音波プローブ12に出力する。超音波プローブ12は、送信部22から入力された高圧パルス(電気パルス)を超音波パルスに変換し、変換された超音波パルスを被検体に送信する。被検体内に送信された超音波の一部は、音響インピーダンスの異なる被検体内の臓器間の境界面あるいは組織にて反射される。
ステップS14において、超音波プローブ12は、被検体により反射された反射波を電気信号に変換し、本体11に出力する。ステップS15において、受信部23は、制御部21から供給された第1超音波受信制御信号に基づいて、超音波プローブ12から入力された受信信号を増幅し、所定の遅延時間を付加して、画像データ生成部24に供給する。すなわち、受信部23のプリアンプは、超音波プローブ12から被検体に入力された超音波の反射波に基づく受信信号を取得し、取得された受信信号を所定のレベルまで増幅し、増幅された受信信号を受信遅延回路に供給する。
受信部23の受信遅延回路は、制御部21から供給された第1超音波受信制御信号に基づいて、プリアンプから供給された増幅後の受信信号に各超音波振動子のフォーカス位置からの超音波の伝播時間の差に対応する遅延時間を与え、加算器に供給する。加算器は、受信遅延回路から供給された各超音波振動子からの受信信号を加算し、加算された受信信号を画像データ生成部24に供給する。
ステップS16において、画像データ生成部24のBモード処理部31とドプラモード処理部32は、受信部23から供給された受信信号に種々の処理を施し、θ1方向の第1Bモード画像データと第1ドプラモード画像データを生成し、生成されたθ1方向の第1Bモード画像データと第1ドプラモード画像データをデータ記憶部25に供給する。
ステップS17において、データ記憶部25は、画像データ生成部24のBモード処理部31とドプラモード処理部32から供給されたθ1方向の第1Bモード画像データと第1ドプラモード画像データを取得し、取得されたθ1方向の第1Bモード画像データと第1ドプラモード画像データを記憶する。
次に、超音波の送受信方向をΔθずつ順次更新させながらθ1+(N−1)Δθまで変更してN方向の走査によって上記と同様な手順で超音波の送受信を行い、被検体内をリアルタイム走査する。このとき、制御部21は、その制御信号によって送信部22の送信遅延回路と受信部23の受信遅延回路の遅延時間を、所定の超音波送受信方向に対応させて順次切り替えさせながら、θ1+Δθ乃至θ1+(N−1)Δθ方向の第1Bモード画像データと第1ドプラモード画像データの各々を生成させる。
また、データ記憶部25は、生成されたθ1+Δθ乃至θ1+(N−1)Δθ方向の第1Bモード画像データと第1ドプラモード画像データを、すでに記憶されているθ1方向の第1Bモード画像データと第1ドプラモード画像データとともに、所定の時相の2次元の第1Bモード画像データと第1ドプラモード画像データとして記憶する。
例えば、図6[A]に示されるように、データ記憶部25には、オペレータが入力部13を操作することにより入力された画像の表示倍率に基づいて算出される設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数で超音波が送信されたときの、所定の時相の2次元の第1Bモード画像データが記憶される。
図6[A]に示された例の場合、オペレータが入力部13を操作することにより入力された画像の表示倍率に基づいて算出される設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数で超音波が送信されているため、すでに送信された超音波の設定表示深度よりも深い領域からの反射信号と、新たな超音波の設定表示深度よりも浅い近距離からの反射信号とが混在した信号を受信することとなり、残留多重エコーによる虚像が発生しやすくなる。特に、被検体の体内の深いところに超音波を強く反射する強反射体があるような場合や、オペレータが被検体の心臓などを診断する場合においては、超音波が被検体の体内において十分減衰できず、残留多重エコーによる虚像が発生しやすい。図6[A]に示された例の場合、断層画像iの上部近傍に、残留多重エコーによる虚像である断層画像gと断層画像hが表示されてしまっている。
ステップS18において、制御部21は、第2超音波送信制御信号と第2超音波受信制御信号を生成し、それぞれ、送信部22と受信部23に供給する。ここで、第2超音波送信制御信号には、オペレータが入力部13を操作することにより入力された画像の表示倍率に基づいて算出される設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数の1/2倍のパルス繰り返し周波数(最高パルス繰り返し周波数よりも十分に低いパルス繰り返し周波数)で超音波が送信されるための制御信号が含まれており、第2超音波受信制御信号には、オペレータが入力部13を操作することにより入力された画像の表示倍率に基づいて算出される設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数の1/2倍のパルス繰り返し周波数(最高パルス繰り返し周波数よりも十分に低いパルス繰り返し周波数)で超音波が受信されるための制御信号が含まれている。付言すれば、最高パルス繰り返し周波数の1/2倍のパルス繰り返し周波数で超音波を送受信した場合には、最高パルス繰り返し周波数で超音波を送受信した場合に生成される画像と比較すると、2倍の深度までの画像が生成される。
なお、第2超音波送信制御信号と第2超音波受信制御信号に、最高パルス繰り返し周波数の1/2倍以下のパルス繰り返し周波数(例えば、最高パルス繰り返し周波数の1/3倍のパルス繰り返し周波数など)で超音波が送受信されるための制御信号が含まれるようにしてもよい。
ステップS19において、送信部22は、制御部21から供給された第2超音波送信制御信号に基づいて、超音波ビームを被検体に送信する。すなわち、送信部22のレートパルス器は、制御部21から供給された第1超音波送信制御信号に基づいて、被検体の内部に入射する超音波パルスのパルス繰り返し周波数が設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数の1/2倍のパルス繰り返し周波数になるように決定するレートパルスを発生し、送信遅延回路に供給する。
また、送信遅延回路は、制御部21から供給される第2超音波送信制御信号に基づいて、送信時における超音波ビームの焦点位置と偏向角度が所定の焦点位置と偏向角度(θ1)となるように、レートパルス発生器から供給されたレートパルスに遅延時間を加え、パルサに供給する。パルサは、送信遅延回路から供給されたレートパルスに基づいて、超音波振動子を駆動するための高圧パルスを生成し、生成された高圧パルスを超音波プローブ12に出力する。超音波プローブ12は、送信部22から入力された高圧パルス(電気パルス)を超音波パルスに変換し、変換された超音波パルスを被検体に送信する。被検体内に送信された超音波の一部は、音響インピーダンスの異なる被検体内の臓器間の境界面あるいは組織にて反射される。
ステップS20において、超音波プローブ12は、被検体により反射された反射波を電気信号に変換し、本体11に出力する。ステップS21において、受信部23は、制御部21から供給された第2超音波受信制御信号に基づいて、超音波プローブ12から入力された超音波の反射波に基づく受信信号を増幅し、所定の遅延時間を付加して、画像データ生成部24に供給する。すなわち、受信部23のプリアンプは、超音波プローブ12から被検体に入力された超音波の反射波に基づく受信信号を取得し、取得された受信信号を所定のレベルまで増幅し、増幅された受信信号を受信遅延回路に供給する。
受信部23の受信遅延回路は、制御部21から供給された第2超音波受信制御信号に基づいて、プリアンプから供給された増幅後の受信信号に各超音波振動子のフォーカス位置からの超音波の伝播時間の差に対応する遅延時間を与え、加算器に供給する。加算器は、受信遅延回路から供給された各超音波振動子からの受信信号を加算し、加算された受信信号を画像データ生成部24に供給する。
ステップS22において、画像データ生成部24のBモード処理部31とドプラモード処理部32は、受信部23から供給された受信信号に種々の処理を施し、θ1方向の第2Bモード画像データと第2ドプラモード画像データを生成し、生成されたθ1方向の第2Bモード画像データと第2ドプラモード画像データをデータ記憶部25に供給する。
ステップS23において、データ記憶部25は、画像データ生成部24のBモード処理部31とドプラモード処理部32から供給されたθ1方向の第2Bモード画像データと第2ドプラモード画像データを取得し、取得されたθ1方向の第2Bモード画像データと第2ドプラモード画像データを記憶する。
次に、超音波の送受信方向をΔθずつ順次更新させながらθ1+(N−1)Δθまで変更してN方向の走査によって上記と同様な手順で超音波の送受信を行い、被検体内をリアルタイム走査する。このとき、制御部21は、その制御信号によって送信部22の送信遅延回路と受信部23の受信遅延回路の遅延時間を、所定の超音波送受信方向に対応させて順次切り替えさせながら、θ1+Δθ乃至θ1+(N−1)Δθ方向の第2Bモード画像データと第2ドプラモード画像データの各々を生成させる。また、データ記憶部25は、生成されたθ1+Δθ乃至θ1+(N−1)Δθ方向の第2Bモード画像データと第2ドプラモード画像データを、すでに記憶されているθ1方向の第2Bモード画像データと第2ドプラモード画像データとともに、所定の時相の2次元の第2Bモード画像データと第2ドプラモード画像データとして記憶する。
例えば、図6[B]に示されるように、データ記憶部25には、オペレータが入力部13を操作することにより入力された画像の表示倍率に基づいて算出される設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数の1/2倍のパルス繰り返し周波数で超音波が送信されたときの、所定の時相の2次元の第2Bモード画像データが記憶されている。
図6[B]に示された例の場合、オペレータが入力部13を操作することにより入力された画像の表示倍率に基づいて算出される設定表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数の1/2倍のパルス繰り返し周波数で超音波が送信されているため、被検体の体内で超音波が十分減衰し、残留多重エコーによる虚像は発生しにくい。図6[B]に示された例の場合、図6[A]に示された例の場合では残留多重エコーによる虚像として断層画像iの上部近傍に表示されてしまった断層画像gと断層画像hに対応する断層画像kと断層画像lが、設定表示深度よりも深い本来の正しい深度・領域に表示されており、残留多重エコーによる虚像は発生していない。
ステップS24において、残留多重エコー虚像発生抑制部27の残留多重エコー虚像発生判定部33は、データ記憶部25に記憶されている第1Bモード画像データ(図6[A])と第2Bモード画像データ(図6[B])を読み出す。ステップS25において、残留多重エコー虚像発生判定部33は、読み出された第1Bモード画像データと第2Bモード画像データに基づいて、両画像間の差分をとる。すなわち、図6[B]の第2Bモード画像データに基づいて、オペレータにより予め設定された設定表示深度まで画像を切り出し、図6[A]の第1Bモード画像データと比較し、2枚の画像の輝度情報の差分をとる。
ここで、2枚の画像の輝度情報から差として抽出される部分は、2つ考えられる。1つには、2枚の画像は全く同じ時相で超音波が走査されて生成された画像ではなく、多少の時間差があるため、例えば、その時間差の間に被検体が体動するなどにより超音波の走査領域がわずかに移動する場合があり、そのような場合、2つの画像の輝度情報に差が生じることがある。2つには、2枚の画像間においては、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数が大きく異なるため、一方の画像にのみ残留多重エコーによる虚像が発生している場合には、2つの画像の輝度情報に差が生じることがある。
残留多重エコーによる虚像における輝度は、一般に、周囲の画像の輝度よりも相対的に高く、特に、被検体の体内の深いところに超音波を強く反射する強反射体があるような場合においては、被検体の体内で減衰しているにもかかわらず超音波の反射信号として受信されているため、周囲の画像の輝度よりも高い傾向にある。従って、画像の輝度情報の差として抽出される2つの部分のうち、残留多重エコーによる虚像が発生している場合(後者)においては、2枚の画像の輝度情報から抽出される差は大きくなる。一方、被検体が体動するなどにより超音波の走査領域がわずかに移動したような場合(前者)には、走査領域の移動もわずかであるため、2枚の画像の輝度情報から抽出される差は小さい。
例えば、図6[A]と図6[B]の第1Bモード画像データと第2Bモード画像データに基づいて両画像間の差分をとると、図7に示されるような差分画像が得られる。図7の例の場合、差分画像の断層画像mと断層画像nが、図6[A]の画像と図6[B]の画像の輝度情報の差分をとったときにおける図6[A]の断層画像gと断層画像hに対応する画像である。
従って、2枚の画像の差分をとった場合、一方の画像に残留多重エコーによる虚像が発生しているときに輝度情報の差分として抽出される輝度差の閾値(基準値)を予め設定するようにすれば、残留多重エコーによる虚像が発生しているか否かを判定することができる。
なお、2枚の画像の差分をとった場合、残留多重エコーによる虚像となることなく正しい深度と位置に表示された部分(図6[A]の断層画像iと図6[B]の断層画像j)は、輝度情報としてほとんど差異がないため、相殺されてしまい、2枚の画像の輝度情報から差としては抽出されない。
ステップS26において、残留多重エコー虚像発生判定部33は、差分画像(図7)に、予め設定された所定の基準値より大きい輝度差の部分があるか否かを判定する。
ステップS26において差分画像に予め設定された所定の基準値より大きい輝度差の部分があると判定された場合、残留多重エコー虚像発生判定部33はステップS27で、現在オペレータが診断している所定の部位において残留多重エコーによる虚像が発生していると判定し、その判定結果に基づいて、現在オペレータが診断している所定の部位において残留多重エコーによる虚像が発生している旨の指示を残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34に供給する。また、残留多重エコー虚像発生判定部33は、第1Bモード画像データと第2Bモード画像データの差分画像を、残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34に供給する。
ステップS28において、残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34は、残留多重エコー虚像発生判定部33から供給された第1Bモード画像データと第2Bモード画像データの差分画像を取得し、残留多重エコー虚像発生判定部33から供給された残留多重エコーによる虚像が発生している旨の指示に従い、取得された第1Bモード画像データと第2Bモード画像データの差分画像に基づいて、残留多重エコーによる虚像が発生している最大深度を算出する。具体的には、図7に示されるように、差分画像に存在する、残留多重エコーによる虚像に対応する断層画像nの被検体の体表面からの最大深度Dを算出する。
ここで、図6[A]と図6[B]に示されるように、被検体の体表面から残留多重エコーによる虚像として最も深い所に表示されている断層画像hまでの距離DAと、設定表示深度から正しい深度と位置に表示されている断層画像lまでの距離DBは、一般的に、ほとんど同じ値を示す。
また、図7の差分画像は図6[A]と図6[B]の画像の差分であるため、被検体の体表面から残留多重エコーによる虚像として最も深い所に表示されている断層画像hまでの距離DAと、差分画像に存在する残留多重エコーによる虚像に対応する断層画像nの被検体の体表面からの最大深度Dとは同じ値を示す。従って、差分画像に存在する、残留多重エコーによる虚像に対応する断層画像nの被検体の体表面からの最大深度Dを算出することで、図6[B]の断層画像lを正しい深度と位置に表示させて残留多重エコーによる虚像の発生を抑制する残留多重エコー虚像発生抑制表示深度を(設定表示深度+断層画像nの被検体の体表面からの最大深度D)と算出することができるとともに、算出された残留多重エコー虚像発生抑制表示深度に応じたパルス繰り返し周波数を算出することができる。
残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34は、算出された残留多重エコーによる虚像が発生している最大深度のデータである残留多重エコー虚像発生最大深度データを残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数算出部35に供給する。
ステップS29において、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数算出部35は、残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34から供給された残留多重エコー虚像発生最大深度データに基づいて、オペレータが要求する部位において残留多重エコーによる虚像の発生を抑制する残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数を、[数3]に従い算出する。
[数3]
残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数=最高パルス繰り返し周波数−{伝播音速度/(残留多重エコーによる虚像が発生している最大深度+α)}
なお、一般に、被検体の体内の深いところに超音波を強く反射する強反射体があるような場合、発生する残留多重エコーによる虚像の深度や位置などは、ほとんど変わらないが、被検体の体動や超音波プローブの接触させる位置などの診断環境の変化により多少のずれは生じてくる。仮に、図6[B]の断層画像lを正しい深度と位置に表示させるぎりぎりのパルス繰り返し周波数を、残留多重エコー虚像抑制パルス繰り返し周波数として算出するようにしてしまうと、被検体の体動や超音波プローブの接触させる位置などの診断環境の変化により、残留多重エコーによる虚像が画面に表示されたり、表示されなかったりする。このようなことは、オペレータが診断するときの妨げとなる。
そこで、[数3]においては、オペレータが要求する部位において残留多重エコーによる虚像の発生の抑制を確実にするために、残留多重エコーによる虚像が発生している最大深度Dに余白係数αを加えるようにする。これにより、図8に示されるように、残留多重エコーによる虚像として表示されてしまう断層画像の表示深度や位置が多少ずれた場合であっても、残留多重エコーによる虚像の発生を抑制することができる。従って、被検体の体動や超音波プローブの接触させる位置などの診断環境の変化によって生じる、突発的な残留多重エコーによる虚像が画面に表示されないようにすることができる。
残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数算出部35は、算出された残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数のデータである残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数データをパルス繰り返し周波数変更部36に供給する。
ステップS30において、パルス繰り返し周波数変更部36は、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数算出部35から供給された残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数データを取得し、取得された残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数データに基づいて、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に変更する。
ステップS26において差分画像に予め設定された所定の基準値より大きい輝度差の部分はないと判定された場合、残留多重エコー虚像発生判定部33はステップS31で、現在オペレータが診断している所定の部位において残留多重エコーによる虚像が発生していないと判定し、その判定結果に基づいて、現在オペレータが診断している所定の部位において残留多重エコーによる虚像が発生していない旨の指示をパルス繰り返し周波数変更部36に供給する。
ステップS32において、パルス繰り返し周波数変更部36は、残留多重エコー虚像発生判定部33から供給された残留多重エコーによる虚像が発生していない旨の指示に従い、データ記憶部25に記憶されている、オペレータが入力部13を操作することにより入力された表示深度に応じた最高パルス繰り返し周波数データを読み出し、読み出された最高パルス繰り返し周波数データに基づいて、超音波が送受信されるときのパルス繰り返し周波数を最高パルス繰り返し周波数に変更する。これにより、残留多重エコーによる虚像が発生しない場合には、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を設定表示深度における最高パルス繰り返し周波数に変更することができる。従って、不必要なフレームレートの低下を抑制し、残留多重エコーによる虚像が発生している領域か否かに応じて、好適なフレームレートに変更することができる。
なお、残留多重エコーによる虚像が発生しない場合、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を設定表示深度における最高パルス繰り返し周波数に変更するようにしたが、勿論、最高パルス繰り返し周波数よりも低い周波数であって、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数よりも高い周波数に変更するようにしてもよい。
ステップS33において、パルス繰り返し周波数変更部36は、設定されたパルス繰り返し周波数のデータであるパルス繰り返し周波数データをデータ記憶部25と制御部21に供給する。データ記憶部25は、パルス繰り返し周波数変更部36から供給されたパルス繰り返し周波数データを取得し、取得されたパルス繰り返し周波数データを記憶する。
ステップS34において、制御部21は、パルス繰り返し周波数変更部36から供給されたパルス繰り返し周波数データに基づいて、パルス繰り返し周波数変更制御信号を生成し、送信部22に供給する。
その後、送受信部22のレートパルス発生器(図示せず)においては、制御部21から供給されたパルス繰り返し周波数変更制御信号に基づいて、被検体の内部に入射する超音波パルスのパルス繰り返し周波数を、オペレータが要求する部位において残留多重エコーによる虚像の発生を抑制する残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数(残留多重エコーによる虚像が発生していない場合、最高パルス繰り返し周波数)に決定するレートパルスが発生される。
この変更処理以降、オペレータは超音波プローブ12の先端(超音波送受信面)を被検体の体表面上の所定の位置に固定し、変更された残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数(残留多重エコーによる虚像が発生していない場合、最高パルス繰り返し周波数)で、超音波を送受信することができる。従って、残留多重エコーによる虚像の発生を抑制しつつ、残留多重エコーによる虚像が発生している領域か否かに応じて好適なフレームレートに変更することができる。
本発明の実施形態に示された超音波診断装置1においては、生成された画像データに残留多重エコーによる虚像がすでに発生している場合、あるいは、オペレータが残留多重エコーによる虚像が発生しそうであると予想した場合に、オペレータが残留多重エコー虚像発生抑制ボタンを操作することにより開始されるようにしている。これにより、オペレータは、診断に合うように残留多重エコー虚像発生抑制処理を開始させることができるだけでなく、例えば超音波プローブ12を頻繁に動かして広範囲を走査する場合(すなわち、走査対象が明らかに異なる肝臓から腎臓や膀胱に至る範囲を走査する場合)に、被検体の体動などにより突発的に発生した残留多重エコーによる虚像によって断続的に、かつ、不適切にフレームレートが変化してしまうことを抑制することができる。勿論、残留多重エコー虚像発生抑制処理を常時行うようにしてもよい。
ところで、図4と図5のフローチャートを参照して説明した残留多重エコー虚像発生抑制処理では、残留多重エコーによる虚像を確実に抑制することができるが、フレームレートが極端に低下する可能性がある。そこで、差分画像(図7)において残留多重エコーによる虚像があると判定された領域に関する走査線のみ、超音波を送受信するときの残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に変更し、その他の領域に関する走査線では超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を最高パルス繰り返し周波数変更するようにしてもよい。この場合における残留多重エコー虚像発生抑制処理は、図9と図10のフローチャートに示されている。
図9と図10のフローチャートを参照して、図2の超音波診断装置における他の残留多重エコー虚像発生抑制処理について説明する。なお、図9と図10のステップS41乃至S59、およびステップS62乃至S65の処理は、図4と図5のステップS11乃至S29、およびステップS31乃至S34の処理と同様であり、その説明は繰り返しになるので省略する。
ステップS60において、残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34は、取得された第1Bモード画像データと第2Bモード画像データの差分画像に基づいて、残留多重エコーによる虚像が発生している領域である残留多重エコー虚像発生領域を算出する。図7の例の場合、残留多重エコーによる虚像に対応する断層画像nと断層画像mは、残留多重エコー虚像発生領域Mに存在している。
残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34は、算出された残留多重エコー虚像発生領域のデータである残留多重エコー虚像発生領域データをパルス繰り返し周波数変更部36に供給する。
ステップS61において、パルス繰り返し周波数変更部36は、残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部34から供給された残留多重エコー虚像発生領域データと、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数算出部35から供給された残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数データを取得し、取得された残留多重エコー虚像発生領域データと残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数データに基づいて、残留多重エコーによる虚像が発生している領域に関する走査線では、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に変更し、残留多重エコーによる虚像が発生している領域に関しない走査線では、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を、最高パルス繰り返し周波数に変更する。
具体的には、図11に示されるように、残留多重エコー虚像発生領域Mに関する走査線においては、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数が、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に変更され、残留多重エコー虚像発生領域M以外の領域に関する走査線においては、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数が最高パルス繰り返し周波数に変更される。
これにより、残留多重エコーによる虚像が発生していると判定された場合において、全領域に関する走査線について残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に変更するよりも、フレームレートの低下を抑えることができる。これにより、残留多重エコーによる虚像の発生を抑制しつつ、残留多重エコー虚像が発生している領域か否かに応じて、好適なフレームレートにさらに変更することができる。
なお、本発明の実施形態に示された超音波診断装置1においては、残留多重エコーによる虚像が発生していると判定された場合、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に変更するようにしたが、表示される全表示画面内において残留多重エコーによる虚像が占める面積を算出し、算出された残留多重エコーによる虚像が占める面積が所定の割合よりも大きいときにのみ、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数を算出し、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を、算出された残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に変更するようにしてもよい。この場合における残留多重エコー虚像発生抑制処理は、図12と図13に示されている。
図12と図13のフローチャートを参照して、図2の超音波診断装置1における他の残留多重エコー虚像発生抑制処理について説明する。なお、図12図13のステップS71乃至S88、ステップS91乃至S96の処理は、図4と図5のステップS11乃至S26、およびステップS27乃至S34の処理と同様であり、その説明は繰り返しになるので省略する。
ステップS89において差分画像に予め設定された所定の基準値より大きい輝度差の部分があると判定された場合、残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部35は、発生している残留多重エコーによる虚像が全表示画像(差分画像)において占める領域面積の割合である残留多重エコー虚像発生領域面積割合を算出する。図7の例の場合、差分画像全体において、断層画像nと断層画像mが占める領域面積の割合である残留多重エコー虚像発生領域面積割合が算出される。
ステップS89において、残留多重エコー虚像発生深度・領域算出部35は、算出された残留多重エコー虚像発生領域面積割合が予め設定された所定の基準値より大きいか否かを判定する。
ステップS89において算出された残留多重エコー虚像発生領域面積割合が予め設定された所定の基準値より大きいと判定された場合、処理はステップS91に進み、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数が算出される。
ステップS89において算出された残留多重エコー虚像発生領域面積割合が予め設定された所定の基準値より大きくないと判定された場合(すなわち、発生している残留多重エコーによる虚像が全表示画像において占める領域面積の割合が所定の基準値よりも小さいと判定された場合)、パルス繰り返し周波数変更部36はステップS97で、残留多重エコー深度・領域算出部34から供給された残留多重エコー虚像発生領域面積割合が予め設定された所定の基準値より大きくないとの旨の指示に従い、データ記憶部25に記憶されている最高パルス繰り返し周波数データを読み出し、読み出された最高パルス繰り返し周波数データに基づいて、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を、最高パルス繰り返し周波数に変更する。
これにより、残留多重エコーによる虚像が発生していても、発生した残留多重エコーによる虚像がわずかであるため、表示される全表示画面内において残留多重エコーによる虚像が占める面積が小さく、オペレータの診断にそれほど支障がない場合(残留多重エコー虚像発生抑制処理が不要な場合)に、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を、残留多重エコーによる虚像の発生を抑制する残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に変更しないようにしたので、フレームレートが不必要に低下することを抑制することができる。
なお、算出された残留多重エコー虚像発生領域面積割合が予め設定された所定の基準値より大きくないと判定された場合、残留多重エコー虚像発生抑制処理をキャンセルするようにしてもよい。
また、本発明の実施形態に示された超音波診断装置1においては、残留多重エコーによる虚像が発生しているか否かを、差分画像に基づいて輝度差が予め設定された所定の基準値より大きいか否かにより判定するようにしたが、例えば、差分画像の平均輝度情報を算出し、算出された差分画像の平均輝度情報に基づいて、発生している虚像とそれ以外の画像とを区別することができる所定の基準値を変更するようにしてもよい。また、差分画像における輝度の分散情報に基づいて、発生している虚像とそれ以外の画像とを区別することができる所定の基準値を変更するとともに、差分画像における輝度の分散情報に基づいて大きく外れている部分があるか否かにより、残留多重エコーによる虚像が発生しているか否かを判定するようにしてもよい。勿論、その他の方法により、差分画像などに基づいて残留多重エコーによる虚像が発生しているか否かを判定するようにしてもよい。
さらに、本発明の実施形態に示された超音波診断装置1においては、2次元断層像について用いているようにしているが、例えば、3次元断層像について用いるようにしてもよい。
また、本発明の実施形態に示された超音波診断装置1においては、Bモード断層画像表示モードについて適用するようにしたが、例えば、カラードプラモードやパルスドプラモードとの同時モードなどにおいても適用することができる。
さらに、本発明の実施形態に示された超音波診断装置1においては、算出された残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に基づいて、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を、残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に変更するようにしたが、例えば、算出された残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に関するデータを表示部14に表示させ、表示された残留多重エコー虚像発生抑制パルス繰り返し周波数に基づいて、オペレータが入力部13を操作することにより好みで所定のパルス繰り返し周波数を入力し、超音波を送受信するときのパルス繰り返し周波数を入力された所定のパルス繰り返し周波数に変更するようにしてもよい。これにより、虚像が発生している領域か否かに応じてよりユーザにとってより好適なフレームレートに変更することができる。
なお、本発明の実施形態では、フローチャートのステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。