JP4753787B2 - 蛍光分光式内部応力検査装置 - Google Patents
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Description
さらに、安全で安心できる社会を維持するために、航空機のガスタービンの安全性確保や発電用ガスタービンの寿命保証などが要求される。また、ランニングコスト低減の観点からも、ガスタービン部品の耐久性向上が重要な課題であり、遮熱コーティングに対して、遮熱性能、耐久性の向上がより一層求められている。
セラミック遮熱層は、酸化イットリウム(Y2O3)で部分安定化した酸化ジルコニウム(ZrO2)など、低熱伝導性のセラミックで形成する。
金属ボンドコートは、金属基材と密着し耐食・耐酸化性金属被覆機能を有し、剥離を防止する。
高温酸化による剥離は、金属下地層に含まれるアルミニウムがセラミック遮熱層から供給される酸素と反応して金属下地層の表層にアルミナ(Al2O3)を含む酸化層(TGO)が成長し、この酸化層が厚くなるに従いセラミック遮熱層に作用する熱応力が大きくなって、遂にはセラミック遮熱層が剥離すると推測されている。
すなわち、遮熱コーティングの界面近傍の状況を反映する事象を観察することができる装置、あるいは亀裂発生部位となるTGOの応力状態を直接検知する装置が得られれば、遮熱コーティングの健全性を非破壊で評価することが可能となり、遮熱コーティングの余寿命評価が可能となる。
したがって、遮熱コーティングの剥離損傷を評価することはできるが、剥離に至らない遮熱コーティングの余寿命を評価することは不可能である。
ここで、非破壊検出装置として、超音波を利用する方法、X線透過を利用する方法、赤外線カメラを用いる方法が採用されている。ただし、これらの方法はそれぞれ測定条件に基づいて、非測定体が、実機から取り外しのできる部品や形状が複雑でない比較的小さな部品に限られ、あるいは赤外線カメラ方式では非測定体の裏側から加熱して表面に表れる温度差から推定するため加熱ができる部材に限られるという問題がある。
開示方法は、赤外線サーモグラフィ法で検出した部分について表面元素分析法を用いて単なるスケールなどを検出して区別し剥離部分を確認するようにしたものである。複合的な測定方法により、目的とする遮熱コーティングの剥離現象を間接的に検出することができる。
特に、試料に可視光レーザを照射し、TGOで励起された蛍光のスペクトルを検出することによりTGO応力を測定するフォトルミネッセンス法が有効である。この方法によれば、蛍光を励起させるレーザ光は最外層の約0.5mmのジルコニアセラミック遮熱層を透過して酸化物層に到達するので、酸化物層の応力を非破壊的に測定することができる。
フォトルミネッセンス法は、顕微鏡構成を利用して、たとえば波長532nmのグリーンレーザを対物レンズを通して試料に照射し、発生した蛍光を分光器で分離してCCDカメラで撮像することにより、蛍光映像の顕微鏡写真を取得して応力の評価をする。
また、可視光レーザを対物レンズで絞って試料に照射するため、測定エリアの径が約15μm程度と極めて小さく、ガスタービン部材の遮熱コーティングの広い表面をくまなく測定するには極めて長い測定時間が必要となり実質上困難である。
さらに、運用している最中の現行ガスタービンについてそのままの状態で測定して余寿命を評価する手段として利用することはできない。
非特許文献1は、この現象を利用して、応力のないサファイヤと応力下のTGOで蛍光波長に明らかな差異があることを確認し、非破壊的測定を介してTBCの品質管理に利用する可能性について論じている。
しかし、試用した計測装置は、光ファイバを利用したプローブを実験室用のラマン測定装置に接続したもので、実機を分解せずに適用できるものではない。
また、画像出力装置は、分光器と一次元CCDカメラとCCDカメラを制御するカメラ制御器を備えて、対象物から放出される蛍光をレンズリレーを通し分光器を介して一次元CCDカメラで検出するものであってもよい。演算装置は分光器を透過した光を検出したカメラ信号と分光器の透過光周波数に基づいて、蛍光の光周波数スペクトルのピーク位置を推定することができる。
このような遮熱コーティングでは、金属下地層の材料がセラミック遮熱層から浸潤してくる酸素により酸化してた酸化層(TGO)が成長し、この酸化層が原因となって、遂にはセラミック遮熱層が剥離する現象が発生する。本発明の健全性検査装置では、蛍光励起用可視光レーザが薄いセラミック遮熱層を透過してTGOに達し、TGOに含有される蛍光物質の発生する蛍光周波数の遷移に基づいて内部応力を推定するので、非接触でセラミック遮熱層の剥離を判定することができる。
ボアスコープと同じ構造のチューブを使用するため、ガスタービンの動翼、静翼、燃焼器などの部品を保護する遮熱コーティングなどを測定対象とする場合にも、タービンを分解しなくても、覗き孔からチューブ状のプローブを差し入れて検査することができる。
チューナブルフィルタは、透過光の周波数を電気的に調整できるフィルターで、たとえば液晶の特性を利用した液晶チューナブルフィルタ(ケンブリッジリサーチアンドインストルメンテーション社製バリスペック(VariSpec):商品名)など、市販されているものを利用することもできる。
また、タービンなどを回転させながら動翼の出現時間間隔に同期するパルスでレーザ照射をして発生する蛍光を測定することにより、動翼を群として見て表面位置にしたがった内部応力分布を測定することができる。
なお、本発明の蛍光分光式内部応力検査装置は、遮熱コーティングに限らず、可視光レーザを照射すると可視光領域の蛍光を発生し、かつ、この蛍光の波長が内部応力に影響を受けるような材料に対して、同様に適用できることはいうまでもない。
図1は本発明の1実施例に係る蛍光分光式内部応力検査装置の構成を模式的に示した断面図、図2は蛍光の応力遷移を表す図面、図3は二次元CCDカメラで得られた光強度信号例を示すグラフ、図4は剥離判定の手順を説明するブロック図、図5と図6は蛍光分光式内部応力検査装置により動翼を測定する例を説明する図面、図7は高温に長時間暴露した蛍光分光式内部応力の内部応力の観察例を示す図面、図8は蛍光分光式内部応力検査装置により構成するタービン翼自動検査装置の概念図である。
ボアスコープチューブ11は、工業用内視鏡であるボアスコープのチューブと同様に、画像を伝送するレンズリレーを中心軸に沿って設けその外側にレーザ光を伝送する光ファイバ束を配置しステンレス管で被覆したものである。
対象物には蛍光励起用レーザにより蛍光を生ずる蛍光物質が含まれていて、励起光線13を受光すると特定波長の蛍光14が生ずる。
Δν=Πσ (式1)
と表すことができることが知られている。Πは比例係数である。
対象物の画像信号は、ボアスコープチューブ11に組み込まれたレンズリレーで伝送され、半透過反射板24を透過して二次元CCDカメラ31に入射する。二次元CCDカメラ31が受入する画像信号には、対象物から放射される蛍光が含まれている。
なお、蛍光を観察するときは、第2光路切替ミラー25は光路を避けた位置に待避させておく。
したがって、チューナブルフィルター32と組み合わされた二次元CCDカメラ31は、スペクトル解析を行ったと同じ作用をし、フィルターで選択した波長ごとの二次元画像を提供する。
二次元CCDカメラ31にはカメラ制御器33が付属し、カメラ制御器33はカメラ31を制御して画像を取得すると共に、カメラの出力を演算装置41に伝送する。二次元CCDカメラ31は、チューナブルフィルター32を透過した画像を撮影するので、フィルタの透過周波数ごとに切り出した画像を取得して出力する。
なお、二次元CCDカメラ31の1画面は、対象物表面の40μm平方に対応する。従来の顕微鏡型フォトルミネッセンス法においては直径約15μmの測定エリアで観察するのと比較すると、測定領域が極めて大きく拡大し、同じ表面積を測定する場合にも能率が大いに向上する。
図3は、二次元CCDカメラ31における所定の画素から得られた光強度信号を波長および波数に対してプロットしたグラフである。
上段のグラフ(a)は内部応力のない状態にあるアルミナについて波長532nmのグリーンレーザを照射して測定したときの光強度、下段のグラフ(b)は遮熱コーティングに発生した酸化層について測定したときの光強度の測定値である。フィルター制御器によりフィルター透過周波数が順次、電気的に所定間隔で設定されたときの画像信号から取得された光強度信号であるので、測定値は離散的な値をとる周波数ごとに得られる。
そこで、正しい内部応力値を知るためには正確なピーク位置を求める必要があり、この離散的な情報を用いて相互干渉したピークの位置を正確に推定できる手法が求められる。
PV(ν−ν0)=G(ν−ν0;w1)[L(ν−ν0;w2)]β
(式2)
ここで、Gは幅w1に関するガウス分布関数、Lは幅w2に関するローレンツ分布関数、指数βは正の定数である。
TGOの内部応力は、TGO層が薄く基材との界面剥離が無い間はほぼ2〜2.3GPaの圧縮応力を示し、多少厚みが増えると界面クラックが生じるようになって1.5〜1.7MPa程度に減少し、その後、界面剥離が進行するにつれてさらに内部応力が低下し、金属下地層とセラミック遮熱層との間が完全に剥離すると内部応力が解放されてほぼ0MPaになる。
図4は、演算装置41において実行される剥離判定の手順を説明するブロック図である。
ボアスコープチューブ11の先端を測定対象物の表面に向けてグリーンレーザを照射し、発生する蛍光を二次元CCDカメラ31で受光する。
演算装置41は、カメラ制御器33からCCDカメラ出力(101)を取得し、フィルター制御器34から透過光の波長情報(102)を取得して、スペクトル解析(103)をする。
算定した波長ずれを用い、波数偏差と内部応力が比例することを表す先の関係式(式1)に基づいて、内部応力値を推定する(104)。
内部応力の推定値から剥離の有無を判定する(105)。内部応力と剥離状態の対応関係を予め調査して、剥離の有無を判定する判定基準(106)として使用することができる。また、ボアスコープによる表面観察の結果(107)を加味して判定の正確度を向上させることが好ましい。
ボアスコープチューブ11の先端から照射される可視光レーザにより遮熱コーティングの酸化層に含まれるクロムイオンの蛍光に基づいて得られる内部応力に基づいて剥離状態を推定する。
動翼61の位置を調整すると共に、ボアスコープチューブ11を動翼の表面に沿って走査させることにより、動翼の遮熱コーティング表面を広く観察することができる。
図7の(a)は10時間、(b)は50時間、(c)は100時間、(d)は200時間暴露したときの応力分布状態を表す。短時間の暴露では部分的にしか剥離していないが、長時間暴露するとほぼ全面にわたって剥離してしまう様子が観察できた。
サンプル駆動装置71は、タービン翼を蛍光分光式内部応力検査装置70に対して所定の位置姿勢に把持し、プログラムにしたがって駆動して、タービン翼73の検査対象部分を自動的に蛍光分光式内部応力検査装置にかける。蛍光分光式内部応力検査装置は、可視光レーザにより励起された蛍光のスペクトル解析をしてR2ピークの位置を確定し、内部応力を算定して、剥離状態を推定する。1個のタービン翼について測定をすませたら、自動搬送装置によって検査済みのタービン翼を排泄し次のタービン翼をサンプル駆動装置に供給して次々に自動検査を行う。
ボアスコープで行うTBCの外観検査により、TBCの剥離や金属粉などの衝突痕などを発見することができ、蛍光分光式内部応力検査装置の蛍光検出によりTBC内部の状態を推定することができる。しかし、これだけではTBC膜厚が薄いときにTGO応力が小さく評価されてTBCの健全性を正当に評価することが難しい。
これに対して、TBCの膜厚や金属接合層の厚さを同時に測定した結果を加味することにより、TBCの健全性や余寿命を高い信頼性を持って評価することが可能になる。
また、遮熱コーティングの履歴した温度水準も同様に蛍光スペクトルのピーク輝度に影響を与えるので、本実施例の蛍光分光式内部応力検査装置を用いたフォトルミネッセンス法により暴露温度履歴を推定することができる。
このように、本実施例の蛍光分光式内部応力検査装置を利用することにより、多様な内部損傷検査が可能になる。
本実施例の蛍光分光式内部応力検査装置を用いることにより、従来のフォトルミネッセンス法によるよりも広範囲の測定が可能で検査の効率が向上し、また、現行ガスタービンを開放することなく能率よく健全性評価が可能である。
12 光ファイバ
13 励起光線
14 蛍光
21 蛍光励起用レーザ発生装置
22 光ファイバ
23 光路切替ミラー
24 半透過反射板
25 第2光路切替ミラー
31 二次元CCDカメラ
32 チューナブルフィルター
33 カメラ制御器
34 フィルタ制御器
41 演算装置
51 アイピース
52 ハロゲンランプ
60 航空エンジン
61 動翼
62 カバー
63 観察孔
70 蛍光分光式内部応力検査装置
71 サンプル駆動装置
72 自動搬送装置
73 タービン翼
Claims (8)
- 照射光を伝送する光ファイバと画像を伝送するレンズリレーを備えたボアスコープチューブと、蛍光励起用可視光レーザ発生装置と、蛍光画像上の画素ごとに波長成分ごとの光強度信号を出力する画像出力装置と、演算装置を備えて、超合金基材上に、金属下地層である金属接合層、セラミック遮熱層の順に重なった構造を備え、金属下地層に可視光レーザにより蛍光を発生する蛍光物質を含む遮熱コーティングを対象物として、前記蛍光励起用可視光レーザ発生装置で生成したレーザを前記ボアスコープチューブの前記光ファイバを通して前記対象物に照射するようにし、前記対象物から放出される蛍光を前記画像出力装置で検出し、前記演算装置において前記画像出力装置の出力に基づき前記蛍光の光周波数スペクトルのピークを検出して、前記対象物の内部応力の大小を判定することを特徴とする蛍光分光式内部応力検査装置。
- 前記蛍光励起用可視光レーザは緑色のグリーンレーザであって、前記蛍光物質がクロムイオン(Cr3+)であることを特徴とする請求項1記載の蛍光分光式内部応力検査装置。
- 前記蛍光励起用可視光レーザ発生装置がパルスレーザを発生して、該パルスレーザの周期を対象物の回転と同期させるように調整することができることを特徴とする請求項1または2記載の蛍光分光式内部応力検査装置。
- 前記ボアスコープチューブに照明用光源とアイピースを付与してボアスコープと共用することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の蛍光分光式内部応力検査装置。
- 前記画像出力装置は、チューナブルフィルタと二次元CCDカメラを備え、さらに、該CCDカメラを制御するカメラ制御器と前記チューナブルフィルタの透過光周波数を調整するフィルタ制御器を備えて、前記対象物から放出される蛍光を前記レンズリレーを通し前記チューナブルフィルタを介して前記二次元CCDカメラで検出し、前記演算装置は前記カメラが検出した光信号と前記フィルタ制御器から取得した前記チューナブルフィルタの透過光周波数とに基づき前記蛍光の光周波数スペクトルのピーク波長を検出して、前記対象物の内部応力の大小を判定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の蛍光分光式内部応力検査装置。
- 前記チューナブルフィルタは、位相遅延板と液晶セルを1対の直線偏光子で挟んだものを複数直列に配設して、透過光の周波数を電気的に調整できるようにしたフィルタであることを特徴とする請求項5記載の蛍光分光式内部応力検査装置。
- 前記画像出力装置は、分光器と一次元CCDカメラと該CCDカメラを制御するカメラ制御器を備え、前記対象物から放出される蛍光を前記レンズリレーを通し前記分光器を介して前記一次元CCDカメラで検出し、前記演算装置は前記カメラが検出した前記分光器を透過した光信号と該分光器の透過光周波数とに基づき前記蛍光の光周波数スペクトルのピーク位置を検出して、前記対象物の内部応力の大小を判定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の蛍光分光式内部応力検査装置。
- さらに、渦電流式膜厚計あるいは交流インピーダンス式膜厚計を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の蛍光分光式内部応力検査装置。
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