JP2004093300A - セラミックス被覆材の非破壊検査法及び非破壊検査装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】セラミックス被覆材の剥離を引き起こし得る亀裂の検査と、好ましくはセラミックス被覆材の膜厚の測定も行うことができるセラミックス被覆材の非破壊検査法及び非破壊検査装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材16表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材17の検査方法であって、前記セラミックス被覆材17の表面から励起させるために必要な特定波長光(励起光)Lを照射し、該特定波長光Lにより励起される蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材17を検査することを特徴としている。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材16表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材17の検査方法であって、前記セラミックス被覆材17の表面から励起させるために必要な特定波長光(励起光)Lを照射し、該特定波長光Lにより励起される蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材17を検査することを特徴としている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス被覆膜の非破壊検査法及び検査装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セラミックスの利点のひとつは高温にも耐えられることであり、高温構造材としての適用可能性を検討する研究が長い間行われてきた。しかし、セラミックスの致命的な弱点である「脆さ」を完全に克服することは困難であり、確かに以前に比べれば靭性値は飛躍的に向上しているものの、それでも十分な値とは言えずに今持って金属材料と同様の考え方で強度設計が可能なセラミックス材料は存在しない。
そこで、近年、機械的応力に耐える構造材としての役割を金属に持たせ、その金属を高温でも耐えられるように遮熱する目的で金属にセラミックス材料をコーティングする適用が良く行われている。例えば、近年の発電用ガスタービンでは高効率化のためにガス入り口温度が年々上昇し、金属翼のままでは十分な耐熱性が得られないことから、セラミックス厚膜をTBC(Thermal Barrier Coating;遮熱被覆膜)トップコートとして施工する。この施工法によれば金属翼の上にセラミックスをコーティングするだけで良いので、設計思想を大きく変更することがなく、手軽であるとともに産業上の利用価値が大きい方法である。
【0003】
セラミックス被膜の施工では溶射法が最も低コストで産業上の利点が大きいので良く用いられるが、施工後に所定の厚みに溶射されたかどうかを正確に把握する必要があるにもかかわらず、実際には確立された方法が無い。それまでの経験とカンに頼っているだけで、何らかの不確定要因が入ったりすると、全く対応ができない。このように再現性に多大な問題があるが、問題点はそれだけではなく、1度の溶射であっても、例えばガスタービン翼のような複雑な3次元形状の翼では、翼全体に均一に溶射することが困難である。どうしても膜厚が厚いところと、薄いところができてしまい、後々の耐久性などに直接影響する可能性がある。
【0004】
一方、金属にセラミックス厚膜を施工して耐熱性をもたせても、何らかの理由により膜が剥離すると、下地金属の表面温度は一気に上昇して、条件によっては一部が溶融する等して重大な事故を引き起こす可能性がある。このため、剥離に至る事前の剥離を検知する方法が重要な技術となるが、一般的には定期点検等の運転停止時に目視や浸透探傷法等で表面に発生している亀裂を確認する程度のことしか実施されておらず、これらの方法でもその有効性は十分大きいものではないのが現状である。
【0005】
また、現在では前述したような事故を防止するために、特に過酷な環境にある翼の一群(第一段動翼等)は、ある一定期間が過ぎると全て新品と交換をしており、もし健全な翼が多く含まれていると非常にコストがかさむことになる。もしも、定期点検時等にその時の翼の状態を完全に把握することができれば、交換の要否が判断でき、無駄が省けて低コスト化に大きく貢献することになるが、現在では確立された方法は無い。
【0006】
一方、表面に観察される亀裂は概ね表面に対して垂直方向に導入されているものが多く、これは剥離に対してそれほど重要では無い。そればかりか高度なTBCではトップコートに故意に縦方向の亀裂を導入しているものがある(EB−PVD法で作製された厚膜等)ので、誤認の可能性もあってあまり有効な方法では無い。最も危険なクラックは表面と並行に導入されたクラックで、これらのクラックのいくつかが結合することにより、容易に剥離を引き起こす。これらの亀裂は、表面から目視や浸透探傷法等では検出できない内部で起きているために、その検出や位置の特定は一般的に困難である。
【0007】
より一般的な非破壊検査では、サーモグラフィーや超音波を用いたものがあるが、サーモグラフィーでは被検体を均一加熱する必要があり、複雑形状のものであると困難である。また、超音波を用いるものでは測定精度に問題があり、また超音波の入反射に対するS/N比を上げて誤差を最小限にするために、表面を可能な限り平滑にする必要があったり水没させる必要があるので、大型の製品には適さない等、問題点は多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、セラミックス被覆材の剥離を引き起こし得る亀裂の検査と、好ましくはセラミックス被覆材の膜厚の測定も行うことができるセラミックス被覆材の非破壊検査法を提供することを目的の一つとしている。
また本発明は、上記非破壊検査法に用いて好適なセラミックス被覆材の検査装置を提供することを目的の一つとしている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、金属基材上に施工されるTBCトップコートのようなセラミックス被覆材の部分的な剥離を引き起こす基材と被覆材との界面にほぼ平行に伸展する亀裂の検査を行うことができる非破壊検査法として、(1)被覆材のセラミックス自体が発する蛍光を利用する方法、及び(2)蛍光に強く反応する浸透探傷液をセラミックス被覆材中に浸透させ、浸透探傷液の発する蛍光を利用する方法の2種類の分光的手法を考案し、検証することで、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、前記セラミックス被覆材の表面から励起光を照射し、該セラミックス被覆材の被照射部において前記励起光により励起される蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材を検査することを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記セラミックス被覆材に照射する励起光として、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を用いることが好ましく、前記特定波長光として、レーザ光を用いることもできる。
【0012】
係る構成の検査法は、上記(1)のセラミックス自体から発せられる蛍光を利用する点に特徴を有する検査法である。以下、係る非破壊検査法について説明する。物質にある波長の光を照射すると、その大部分は同一波長の光として散乱されるが、ごく僅かに入射波長とは異なる波長の光が散乱される。この現象をラマン散乱といい、ラマン散乱光は物質を構成する分子の回転や振動を反映するので、解析により物質についての様々な情報を得ることができ、励起する光の波長に応じてラマン散乱光は変化する。ところが、このように励起波長を違えても、そのエネルギーより低い側で一定の波長の強い光が検出される場合がある。この光を蛍光といい、ラマン散乱光と比較してその強度が数十倍にもなる場合があるので、ラマン散乱光とこの蛍光がほぼ同一の波長域に存在すると、ラマン散乱光は蛍光に埋もれて検出できなくなる。
【0013】
従って、ラマン測定を行う際には、蛍光が測定するラマン散乱光の波長と同範囲にあるともはや測定はできないので、蛍光領域を避けられる励起波長を選択して測定を行う必要がある。本発明者らは逆転の発想で、この蛍光は物質そのものが発する光であること、及びラマン散乱光よりも強いことの2点を利用して、非破壊検査への応用を考えたものである。つまり、亀裂の無い所に合焦すると物質そのものが発生する蛍光による強い光が観察できるが、亀裂箇所に合焦するとその場所には空気しかないので蛍光は発しない(合焦するまでの情報は拾うので、弱い光は少し出る)ことが本検査法の原理である。
【0014】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法では、前記セラミックス被覆材の厚さ方向の複数位置において前記励起光により励起される蛍光の測定を行い、得られた蛍光強度の分布から前記セラミックス被覆材の膜厚を導出することができる。
【0015】
また本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法では、前記セラミックス被覆材の厚さ方向の複数位置において前記励起光により励起される蛍光の測定を行い、得られた蛍光強度の分布から前記セラミックス被覆材の亀裂の有無及び/又は深さの検出を行うこともできる。
【0016】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、前記セラミックス被覆材に光に反応して蛍光を発する浸透探傷液を含浸させてセラミックス被覆材の亀裂に前記浸透探傷液を浸透させた後、前記セラミックス被覆材の表面から光を照射し、該光により励起される前記浸透探傷液の蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材の亀裂を検査することを特徴としている。
【0017】
上記構成の非破壊検査法によれば、光の照射による蛍光の発生如何に関わらず、任意の材料を用いたセラミックス被覆材に対しても亀裂の検出を行うことができる。TBCとして広く用いられているZrO2は、可視光領域においてある程度の透過性を有しているため、先に記載の材料自体が発する蛍光を利用して検査を行うことができる。しかし、蛍光を励起させるための光源の出力が不足している場合やTBCが厚すぎるために透過される蛍光の強度が低下し、亀裂検出のための明確な検量線が得られない場合には亀裂の検出精度が低下したり、亀裂検出自体ができないことがある。このような場合に特に本構成の検査法は有効である。
【0018】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記亀裂の検査を行うことができる。
また本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記亀裂の検出を行うことができる。
すなわち、上記浸透探傷液に蛍光を励起させるための光としてレーザ光等のように特定波長範囲の光を主体とする特定波長光、あるいは紫外線を用いることができる。
【0019】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材の表面における亀裂検出を行い、検出された亀裂周囲において前記紫外線を集光して照射し、前記集光された紫外線により励起される蛍光の測定を行うことにより前記セラミックス被覆材内部の亀裂の検出を行うことを特徴とする。
【0020】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材の表面における亀裂検出を行い、検出された亀裂周囲において、特定範囲の波長成分を主体とする励起させるために必要な特定波長光を照射し、前記特定波長光により励起される蛍光の測定を行うことを特徴とする。
【0021】
上記構成の検査法は、セラミックス被覆材表面に生じた亀裂を紫外線照射による浸透探傷液の発光により検知し、その検知された亀裂の被覆材内部の情報を、励起させるために必要な特定波長光照射又は集光紫外線照射により検査するものであり、セラミックス被覆材表面においては、広い面積から亀裂を効率よく検出することができ、亀裂周囲においてはセラミックス被覆材内部の情報を知ることができるため、極めて効率よくセラミックス被覆材の検査を行うことが可能である。
【0022】
上記紫外線を照射してセラミックス被覆材を検査する方法は、部材表面に存在する微小な亀裂を目視にて容易にかつ高精度に確認する方法である蛍光探傷浸透法と同様の手法を用いる。係る検査法は、極めて高い信頼性を要求される航空機分野を中心として広く利用されている。これは、亀裂に紫外線を照射すると蛍光を発する検査液を浸透させて表面の亀裂を検出するもので、亀裂の検出原理としては染色探傷法と同様である。但し、蛍光探傷浸透法では、欠陥部(亀裂)自らが蛍光により発光することと、ブラックライトと呼ばれる紫外線発光ランプ(可視光よりも紫外なので、人間の目には見えない)を用いるので暗い場所で作業することが可能で、より発光が目立つことになるので、単なる色の変化として検出する染色探傷法と比較して感度がより高い方法である。
【0023】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法では、前記セラミックス被覆材表面から励起させるために必要な前記特定波長光又は集光紫外線を照射し、該光により励起される浸透探傷液の蛍光の測定を行うに際して、前記セラミックス被覆材の厚さ方向の複数位置において前記蛍光測定を行い、得られた蛍光強度の分布から前記亀裂の深さを導出することができる。係る構成により得られる亀裂の深さを、上記紫外線照射により検知された亀裂周囲の複数箇所で行うことで、セラミックス被覆材の亀裂の伸展程度を知ることができ、被覆材の寿命の推定に極めて有用な情報を得ることができる。
【0024】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記浸透探傷液として、ローダミン、キトンレッド、コーマリン、オキサジンから選ばれる1種以上の蛍光色素溶液を用いることができる。
【0025】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、前記セラミックス被覆材に励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、該特定波長光照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記特定波長光により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えた検査装置を用い、前記特定波長光照射手段により前記セラミックス被覆材の表面へ特定波長光の照射を行い、該特定波長光の焦点位置で励起される蛍光の測定を前記蛍光測定手段により行う検査を、前記移動手段により前記特定波長照射手段の焦点位置を移動させることで前記セラミックス被覆材の表面又は内部の複数の箇所において行うことを特徴としている。
【0026】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、前記セラミックス被覆材に紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記紫外線照射手段から出射される紫外線を集光するための集光手段と、前記紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記紫外線により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えた検査装置を用い、前記セラミックス被覆材に蛍光に反応する浸透探傷液を浸透させた後、前記紫外線照射手段により前記セラミックス被覆材の表面に紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材表面の亀裂を検出し、前記検出された亀裂周囲において、前記集光手段により集光された紫外線を前記セラミックス被覆材に照射し、前記紫外線の焦点位置で励起される蛍光の測定を前記蛍光測定手段により行う検査を、前記移動手段により前記紫外線の焦点位置を移動させることで前記セラミックス被覆材の表面又は複数位置で行うことを特徴としている。
【0027】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、前記セラミックス被覆材に、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、前記セラミックス被覆材に紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記特定波長光照射手段及び紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記特定波長光により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えた検査装置を用い、前記セラミックス被覆材に蛍光に反応する浸透探傷液を浸透させた後、前記紫外線照射手段により前記セラミックス被覆材の表面に紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材表面の亀裂を検出し、前記検出された亀裂周囲において、前記特定波長光照射手段により前記セラミックス被覆材の表面へ特定波長光の照射を行い、該特定波長光の焦点位置で励起される蛍光の測定を前記蛍光測定手段により行う検査を、前記移動手段により前記特定波長照射手段の焦点位置を移動させることで前記セラミックス被覆材の表面又は内部の複数位置において行うことを特徴としている。
【0028】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記蛍光測定手段として、受光素子を備えた撮像手段と、該撮像手段により得られた画像を処理するための画像処理手段とを用い、前記撮像手段により前記セラミックス被覆材表面の前記紫外線照射手段により紫外線を照射された領域を撮影し、得られた画像を前記画像処理手段により処理することで前記セラミックス被覆材表面の亀裂を検出することができる。
【0029】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記蛍光測定手段として顕微ラマン装置を用いることができる。係る構成によれば、数μm程度の極めて微小な領域に対して蛍光の測定が可能であり、セラミックス被覆材の厚さ方向の情報を正確に得ることができる。
【0030】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査に適用できる検査装置であって、
励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、前記特定波長光照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記特定波長光の照射により被照射体において励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えたことを特徴としている。
上記構成の非破壊検査装置によれば、高い精度でセラミックス被覆材の膜厚測定及び亀裂の検査を行うことができる。
【0031】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査に適用できる検査装置であって、前記セラミックス被覆材に紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記紫外線照射手段から出射される紫外線を集光するための集光手段と、前記紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記紫外線により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えたことを特徴としている。
上記構成の非破壊検査装置によれば、セラミックス被覆材に蛍光を発する浸透探傷液を含浸させた被検体に対して、紫外線照射を行うことでセラミックス被覆材表面の亀裂の検出を行うことができ、検出された亀裂及びその周囲に集光された紫外線を照射して蛍光測定を行うことで、セラミックス被覆材内部の亀裂の検査を行うことができる。
【0032】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査に適用できる検査装置であって、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記特定波長光照射手段及び紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記特定波長光又は紫外線の照射により被照射体において励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えたことを特徴としている。
上記構成の非破壊検査装置によれば、セラミックス被覆材に蛍光を発する浸透探傷液を含浸させた被検体に対して、紫外線照射を行うことでセラミックス被覆材表面の亀裂の検出を行うことができ、検出された亀裂及びその周囲に励起させるために必要な前記特定波長光を照射して蛍光測定を行うことで、セラミックス被覆材内部の亀裂の検査を行うことができる。
【0033】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、前記蛍光測定手段に、受光素子を備えた撮像手段と、該撮像手段により得られた画像を処理するための画像処理手段とが備えられた構成とすることができる。
上記構成の非破壊検査装置によれば、セラミックス被覆材表面の亀裂の検出を、セラミックス被覆材表面の画像を処理することにより行うことができるので、測定者の技術や経験によらず高精度の亀裂検出が可能である。
【0034】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、前記画像処理手段により認識されたセラミックス被覆材表面の亀裂発生位置に、前記移動手段により励起させるために必要な前記特定波長光照射手段及び前記特定波長光により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを移動させるための測定位置制御手段を備えた構成とすることができる。
上記構成によれば、紫外線照射と蛍光測定によりセラミックス被覆材表面の亀裂を検出するとともに、その亀裂の位置情報に基づき移動手段を制御して、被覆材内部の検査を行うための励起させるために必要な特定波長光照射手段を移動させることができるので、セラミックス被覆材表面の亀裂探査と発見された亀裂の内部検査とを、極めて簡素な手順で行うことができ、効率よく高速にセラミックス被覆材の検査を行うことができる。
【0035】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、励起させるために必要な前記特定波長光照射手段及び蛍光測定手段とを有する顕微ラマン装置を備えた構成とすることができる。
【0036】
次に、本発明に係る非破壊検査装置においては、励起させるために必要な前記特定波長光がレーザ光であり、前記特定波長照射手段がレーザ光照射手段である構成とすることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係るセラミックス被覆材の検査装置の第1の実施形態を示す構成図であり、この図に示す検査装置10は、3次元ステージ(移動手段)11と、顕微ラマン装置19(特定波長光照射手段、蛍光測定手段)とから概略構成されており、顕微ラマン装置19は、3次元ステージ11に3次元的に移動可能に支持されたプローブ12と、このプローブ12に一端を接続された光ファイバ13と、光ファイバ13の他端と接続された装置本体14とを備えて構成されている。そして、3次元ステージ11のプローブ12の下方に被検体15が配置され、装置本体14から光ファイバ13を介してプローブ12に供給された励起させるために必要な特定波長光を被検体15に照射し、被検体15の表面又は内部で励起された蛍光を、プローブ12から光ファイバ13を通じて装置本体14へ送り、装置本体14において蛍光の強度等を測定するようになっている。
【0038】
本実施形態に係る検査装置10では、上述したように局所的な蛍光を検出するための装置として、顕微ラマン装置を流用することが可能であり、特に皮膜の厚み方向の変化を定量的に測定するために、表面から内部方向に焦点を移動していく共焦点機能が必要である。
【0039】
また、例えばガスタービン翼等の比較的大きな部材は顕微ラマン装置のステージに載らないが、XYZともに長作動距離でかつ微動機構を持った3次元ステージに、励起光照射とラマン散乱光検出のプローブを備えた装置構成とすることで比較的大きな部材であっても測定することが可能になる。また、広範囲な測定を短時間で処理するためには、1箇所の測定時間は短いほど良いので、このために励起させるために必要な特定波長光としては出力の大きなレーザを用いることが好ましい。このような高出力レーザでは例え短時間であっても材料の焼損、溶解等の危険性があるが、被検体がセラミックスの場合には耐熱性が高いので問題がない。また、レーザ光以外でも、ハロゲンランプ等の光源に、その強い白色光の波長帯域をフィルタリングするためのフィルターを付けることで励起させるために必要な特定波長光を得ることができ、このような方法で対応が可能な場合には、高価なレーザ照射装置等を用意する必要がないため、装置の低コスト化を達成することができる。
また本実施形態の検査装置10では、これらの筐体の大きく成りがちな高出力レーザや分光機構は別の場所に設置し、光ファイバを用いて、プローブとの光のやりとりをする構成とされており、比較的大きな部材であっても短時間で広範囲を測定することが可能とされている。
【0040】
上記構成を備えた本発明に係る検査装置を用いて金属基材上に形成されたセラミック被覆材を検査する方法を以下に説明する。図2A、図2Bは、図1に示す検査装置を用いたセラミックス被覆材の膜厚測定の説明図であり、図3は、係る測定により得られる蛍光強度分布を示す説明図である。
図2には被検体15の部分断面構造及び図1に示すプローブ12から出射された励起させるために必要な特定波長光Lが図示されている。被検体15は、金属基材16上にセラミックス被覆材17が成膜された構成である。この被検体15のセラミックス被覆材17の膜厚を測定するには、セラミックス被覆材17の表面側から、励起させるために必要な特定波長光Lの焦点位置を被覆材17厚さ方向に順次移動させ、励起させるために必要な特定波長光Lにより励起された蛍光をセラミックス被覆材17内部の複数位置で測定する。すなわち、初めにセラミックス被覆材17の表面に励起させるために必要な特定波長光Lを合焦させて蛍光を確認し、その後焦点位置を移動させて順次蛍光の測定を行う。例えば、図2Aに示す状態では、セラミックス被覆材内部の位置bに励起させるために必要な特定波長光Lを合焦させて蛍光の測定を行い、次に、励起させるために必要な特定波長光Lの焦点を、3次元ステージ11によりプローブ12を下方に移動させて図2Bに示すように焦点位置を位置cに移動させて蛍光の測定を行う。
【0041】
このようにして位置a〜cで測定された蛍光強度と、焦点位置の深さとの関係は図3に示すようになる。すなわち、焦点位置が深くなるほど観測される蛍光の強度はほぼリニアに低下する。そして、焦点位置の深さが金属基材16に達すると、蛍光強度の低下が停止し、それ以上焦点位置を深くしても観測される蛍光強度は一定になる。従って、この焦点位置の移動に伴い蛍光強度が低下する範囲にはセラミックス被覆材17が存在しており、蛍光が観測されない範囲又は蛍光強度が変化しない範囲ではセラミックス被覆材17は存在しないので、焦点位置の蛍光強度が変化する範囲での焦点位置の移動距離がセラミックス被覆材17の膜厚を与える。本実施形態に係る検査装置10では、測定に当たり3次元ステージ11によりプローブ12を移動させて励起させるために必要な特定波長光Lの焦点位置を移動させるので、プローブ12の移動距離により直接セラミックス被覆材17の膜厚が得られるという利点がある。尚、励起させるために必要な特定波長光Lの焦点位置は、プローブ12にレンズ等の光学手段を設け、焦点距離を調節することによっても変化させることができ、得られた蛍光強度の分布からセラミックス被覆材17の膜厚を得ることができるのは勿論である。
【0042】
次に、図1に示す検査装置10を用いてセラミックス被覆材の亀裂の検出を行う場合について図4及び図5を参照して以下に説明する。図4A、図4Bは、図1に示す検査装置を用いたセラミックス被覆材の膜厚測定の説明図であり、図5は、係る測定により得られる蛍光強度分布を示す説明図である。図4A、図4Bは、被検体15の断面構造を示しており、符号18はセラミックス被覆材17に生じた亀裂を示している。
【0043】
図1に示す検査装置10により亀裂の検出を行う場合、上記膜厚測定と同様に、表面に励起させるために必要な特定波長光を合焦させて蛍光を確認した後、励起させるために必要な特定波長光Lの焦点位置を被覆材17の膜厚方向基材側へ移動させて傾向測定を行う。図4Aは、励起させるために必要な特定波長光Lの焦点を被覆材17内部の位置bに合わせて蛍光の測定を行う場合を示しており、図4Bは、励起させるために必要な特定波長光Lを亀裂18内の位置cに合焦した場合を示している。このようにして図4に示す位置a、b、c及びセラミックス被覆材17の表面で蛍光測定を行うと、図5に示すような蛍光強度分布が得られる。すなわち、セラミックス被覆材17表面から位置a、bの順で励起させるために必要な特定波長光Lの合焦位置を移動して測定すると、各位置で観測される蛍光強度は合焦位置の深さに応じてリニアに減少する。しかし、亀裂18内の位置cにおいては、セラミックス被覆材17が存在しないために、深さに応じた蛍光強度の低下よりも大きな蛍光強度の低下が生じる。従って、図5に示すようなセラミックス被覆材17厚さ方向の蛍光強度分布において変曲点が生じたならば、その位置(図5では位置b、c間)に存在する亀裂18を検知することができる。また、図1に示す検査装置10では、焦点位置の移動距離は3次元ステージ11に支持されたプローブ12の高さ方向の移動距離と対応するため、セラミックス被覆材17内部に生じた亀裂18の深さを容易に特定することが可能である。
【0044】
このように、図1に示す構成を備えた検査装置によれば、金属基材上に形成されたセラミックス被覆材の膜厚及びこのセラミックス被覆材内部に生じた亀裂の検出及び深さの特定が可能である。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図6ないし図9を参照して以下に説明する。本実施形態の検査装置及び検査法は、セラミックス被覆材に光により蛍光を発する浸透探傷液を浸透させた被検体を用い、前記浸透探傷液において励起される蛍光を測定することでセラミックス被覆材の検査を行うものである。
【0046】
図6は、本発明に係るセラミックス被覆材の検査装置の第2の実施形態を示す構成図である。この図に示す検査装置20は、3次元ステージ21と、顕微ラマン装置24と、紫外線励起撮像装置(紫外線照射手段、撮像手段)28とを備えて構成されており、3次元ステージ21の下方に被検体15が配置されるようになっている。尚、係る被検体15は、図2に示す構成と同様のものであり、金属基材16上にセラミックス被覆材17が成膜されたものである。
紫外線励起撮像装置28は、紫外線を照射するための手段としてのブラックライトと、紫外線により励起された蛍光を受光して撮影するための撮像手段としてのCCDとを備えて構成されており、プローブ22及び25から紫外線を照射し、この紫外線の照射により被検体15で励起された蛍光をプローブ22,25に接続された光ファイバ27,26を介して前記CCDにより取り込むことで、観測された蛍光を画像として得られるようになっている。また、紫外線励起撮像装置28には、計算機(画像処理手段)30が接続されており、紫外線励起撮像装置28により撮影された画像を処理して被検体15から得られた情報を処理して亀裂の検査を行えるようになっている。また、上記計算機30は、顕微ラマン装置24にも接続されており、顕微ラマン装置24により得られた蛍光の情報の処理も行うことができるようになっている。
【0047】
3次元ステージ21には2つのプローブ22,25が3次元的に移動可能に支持されており、プローブ22の一端に2本の光ファイバ23,27が接続されており、光ファイバ23の他端に顕微ラマン装置24が接続され、光ファイバ27の他端には紫外線励起撮像装置28が接続されている。すなわち、プローブ22は紫外線と励起させるために必要な特定波長光の両方を照射できるようになっている。また、プローブ22の発光側(光ファイバ23,27と反対側の端部)には、集光手段22aが設けられており、プローブ22から出射される紫外線又は励起させるために必要な特定波長光を集光して被検体15に照射することができるようになっている。一方、プローブ25の一端には光ファイバ26を介して紫外線励起撮像装置28が接続され、プローブ25の他端から紫外線を照射できるようになっている。
【0048】
上記構成の検査装置20を用いたセラミックス被覆材の非破壊検査法を以下に説明する。図7は、係る検査法のブロック図であり、以下ではこのブロック図に沿って説明する。
図7に示すように、本実施形態の検査法は大きく3段階に分けられる。すなわち、A.検査前処理、B.表面マクロ測定、C.内部ミクロ測定の3段階である。
【0049】
<A.検査前処理>
まず、A.検査前処理では、図6に示す被検体15に対して検査を可能にするための処理を施す。具体的には、被検体15の表面に浸透探傷液を含浸させ、その後、被検体15の表面を水洗して被検体15の表面に付着した前記探傷液を除去する。これらの処理により、被検体15のセラミックス被覆材表面に亀裂が生じていれば、その亀裂に浸透探傷液が浸透され、その後表面から浸透探傷液を除去することで、亀裂内部にのみ浸透探傷液が浸透された被検体15が得られる。
【0050】
<B.マクロ測定>
上記工程により被検体15の前処理が終了したならば、図6に示す検査装置20の3次元ステージ21に被検体15を配置する。このマクロ測定段階では、図6に示す紫外線励起撮像装置28からプローブ25を介して被検体15表面に紫外線を照射し、被検体15(セラミックス被覆材)表面において励起される蛍光をCCDにより一括測光して被検体15表面の情報をデジタル化して計算機30に記憶する。そして、この記憶された画像を処理することで、被検体15表面における亀裂発生位置を特定する。
このマクロ測定では、被検体15表面の広範囲の情報を得る必要があるので、プローブ25から照射される紫外線は集光されていないものを用い、むしろ蛍光灯表面に可視光から紫外線を取り出すための塗料を塗布したもの等を紫外線照射手段の光源として用いることが好ましく、紫外線の出射光率を高めるために、光源に紫外線を反射する反射板を設けてもよい。
【0051】
<C.ミクロ測定>
次に、上記工程により検出された大まかな亀裂発生位置に基づき、より位置精度の高いミクロ測定により、更に詳細な亀裂位置の特定を行う。このミクロ測定では、集光レンズ(群)等の集光手段22aを備えたプローブ22を用いて測定を行う。すなわち、紫外線励起撮像装置28からプローブ22を介して集光された紫外線を被検体15の亀裂発生箇所又はその周囲に照射し、より狭い範囲について、セラミックス被覆材の表面のみならず、セラミックス被覆材内部までの蛍光測定を行い、被検体15のセラミックス被覆材表面における亀裂位置をより正確に位置特定するとともに、セラミックス被覆材内部への亀裂の進展状況も知ることができる。
【0052】
図8は、本実施形態に係るミクロ測定による亀裂検出を説明するための説明図であり、図9は、図8に示す測定により得られる蛍光強度分布を示すグラフである。図8A、図8Bに示す被検体15のセラミックス被覆材17には、亀裂18が生じており、この亀裂18のセラミックス被覆材17表面に露出した部分は、先のマクロ測定により検出される。また、亀裂18内部には浸透探傷液29が浸透されている。
本ミクロ測定においてセラミックス被覆材17内部の情報を得るには、セラミックス被覆材17の表面から順次集光紫外線Uの焦点位置をセラミックス被覆材17の内部に移動させて蛍光の測定を行う。この蛍光の測定は、紫外線励起撮像装置28により測光して画像を記憶することにより行う。図8Aは、セラミックス被覆材17内部の位置bに集光紫外線Uを合焦した状態を示し、図8Bは、セラミックス被覆材17内部の亀裂18内の位置cに集光紫外線Uを合焦した状態を示している。このようにしてセラミックス被覆材17内部の複数位置で得られた蛍光強度と、セラミックス被覆材17内における集光紫外線Uの焦点位置の深さとの関係は、図9のようになる。すなわち、亀裂18が存在しない位置a、bに集光紫外線Uを合焦した場合には蛍光は観測されず、亀裂18が存在する位置cに合焦した場合には、亀裂18内に浸透された浸透探傷液29が発する蛍光が観測される。このようにして、セラミックス被覆材17内部に伸展した亀裂18を検知することができ、またその大きさの推定も可能であるため、亀裂18のセラミックス被覆材17内部への伸展程度も推定することが可能である。
尚、本測定において、集光紫外線U及び紫外線励起撮像装置28のCCDは、プローブ22aに設けられた集光手段22aにより、検査対象である亀裂18の大きさに応じて適切な集光及び検出精度となるように調節される。すなわち、紫外線の照射により最も強く発光するのは、亀裂18がセラミックス被覆材17の表面に露出した部分であるので、表面における蛍光の検出精度を抑制することで、内部の亀裂の情報を得られるようになる。
【0053】
実際の測定では、上記マクロ測定により得られた被検体表面の情報に基づき、対象亀裂の周囲を3次元ステージ21によりプローブ22を移動させて被検体15表面を粗く高速に走査してCCDにより撮像し、得られた画像を計算機30に蓄積して処理し、同じ深さで最も蛍光強度が高く観測された位置を中心として、より細かく測定する。さらに、本実施形態の検査装置20によれば、被検体15の亀裂周囲の蛍光の測定を行うことで得られた画像を計算機30により3次元図として可視化し、亀裂18の情報を極めて詳細に得ることができる。また、このような3次元図としての情報を得るために、本実施形態に係る検査装置20においては、長作動距離でかつ微動機構を備えた3次元ステージ21に、プローブ22が支持された構成とされている。
【0054】
上記構成を備えた本実施形態の検査装置20では、上記マクロ測定において得られた被検体15表面の情報に基づいて3次元ステージ21を作動させ、プローブ22を対象亀裂位置に移動させ、対象亀裂の内部情報のミクロ測定を行うことも可能である。その場合には、計算機30と3次元ステージ21とを接続し、計算機30に蓄積された被検体15の表面情報に基づいて3次元ステージ21の制御信号を計算機30から送出する構成とする。この場合には計算機30は、3次元ステージ21の測定位置制御手段として機能する。
従って、被検体15表面における亀裂検出と、その亀裂の詳細な検査を自動化することができ、極めて効率よくかつ高精度にセラミックス被覆材の検査を行うことができる。
【0055】
また、上記ミクロ測定では、集光した紫外線を用いてセラミックス被覆材内部の亀裂を検出する方法のほか、顕微ラマン装置24を用いた励起させるために必要な特定波長光を利用した励起による蛍光測定によってもセラミックス被覆材の内部情報を得ることができる。すなわち、顕微ラマン装置24から光ファイバ23を介して接続されたプローブ22の先端から励起させるために必要な特定波長光を出射させ、上記マクロ測定により検出された亀裂の周囲に照射する。そして、図8に示す集光紫外線Uを用いた方法と同様に、セラミックス被覆材17の膜厚方向に励起させるために必要な特定波長光の焦点を順次移動させて得られた蛍光強度を顕微ラマン装置24に接続された計算機30により処理することで、セラミックス被覆材17の亀裂18の検査を行うことが可能である。また、この場合には、浸透探傷液を励起させるために必要な特定波長光により励起し、顕微ラマン装置24のラマン散乱光検出系で検出することとなるので、検出感度を高めるために高出力の励起させるために必要な特定波長照射手段を備えることが好ましく、検出光の強さが適当な強さとなるようにすることが好ましい。
但し、ミクロ測定に顕微ラマン装置24を用いる場合に、セラミックス被覆材17に励起させるために必要な特定波長光を照射するとセラミックス被覆材自身が蛍光を発することがあるので、浸透探傷液29で励起される蛍光の波長域とセラミックス被覆材自身で励起される蛍光の波長域は互いに異ならせる必要がある。
【0056】
本実施形態の一連の測定では、紫外線により励起された蛍光を測光して画像として保存するので、被検体15に紫外線が照射されるのが一瞬ですむ。従って、従来の浸透探傷液を含浸した試料に紫外線を照射して目視により亀裂を検出する検査に比して、紫外線による被検体15の損傷を極めて小さくすることができるので、セラミックス被覆材の表面に紫外線を照射する際に採られていた紫外線防護対策が特に必要なく、簡便で、効率の良い検査法である。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
(第1の実施例)
<セラミックス自体が発する蛍光を検出する方法>
本例では、上記第1の実施形態で説明した非破壊検査法に準じてセラミックス被覆材の非破壊検査を行った。
まず、直径30mmφの円板状の金属基材に8mol%Y2O3−ZrO2(以下8YSZと略記することもある。)を溶射してセラミックス被覆材を形成させ試験片(被検体)とし、その後熱処理による熱応力を試験片に負荷して溶射膜内部に人為的に亀裂を発生させた。内部亀裂は表面からは確認できないが、内部に亀裂を発生する熱処理条件はこれまでに経験的に求められているので、これを用いた。
この試験片のセラミックス被覆材である8YSZは波長514.5nmのArイオンレーザによる励起で図10に示すような蛍光40を発するので、これを用いた。一般的に蛍光はよりブロードなピークとして検出されるが、8YSZの蛍光40の場合には比較的シャープなピークとして検出される。レーザの励起波長を変えてもこの位置にピークが出ることを確認済みなので蛍光には間違いないが、なぜシャープとなるのかその理由については明らかではない。
【0058】
次いで、この蛍光40のピークに対して、顕微ラマン分光装置により表面から内部に向かって合焦し、図2に示すようにセラミックス被覆材の内部の複数位置で蛍光測定を行い、内部亀裂を調べた。この結果を図11に示す。図11に示すように、表面より深さが深くなるほど、ラマン散乱強度の積分値は小さくなっているが、図11に示した位置▲1▼〜位置▲4▼のところで変曲点が認められており、これが亀裂の存在を示していると考えられる。さらに、位置▲5▼より深さの深いところでは、強度がこれ以上低くならない飽和状態であり、この辺りが金属との界面を示し、トップコートの厚みを表していると考えられる。
【0059】
(第2の実施例)
<蛍光に強く反応する浸透探傷液をセラミックス被覆材中に浸透させ、その蛍光をセラミックス表面から透過して検出する方法>
本例では、上記第2の実施形態で説明した非破壊検査法に準じてセラミックス被覆材の亀裂に浸透探傷液を浸透させた試料を用いて非破壊検査を行った。
【0060】
上記第1の実施例と同様なサンプルを用意し、同様の内部亀裂を人為的に発生させた。
次いで、このサンプルを水溶性の浸透探傷液中に10分間漬け込んで十分含浸させて、その後余分な液を水に浸したワイパーで拭った。ごく表面に付着した蛍光の感度を抑制するために、探傷液がほとんど付いていないような状態とするために水で湿したワイパーで丹念に拭った。さらに、拭い切れなかったことをも考えて、浸透探傷液には比較的蛍光を発する感度の低いものを用いた。
ブラックライトには用いた浸透探傷液に最もよく反応する365nmのランプを用いた。ブラックライト照射により、表面のクラックが容易に明らかになったので、次に顕微ラマンを用いてこの周辺領域について蛍光観察を行った。この結果を図12に示す。
図12に示すように、位置▲1▼〜▲5▼において蛍光強度にピークが観測された。位置▲1▼には非常に大きな亀裂の存在が考えられ、位置▲2▼〜▲5▼にも比較的小さな亀裂の存在が示唆される。
【0061】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のセラミックス被覆材の非破壊検査法は、前記セラミックス被覆材の表面から励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射し、該特定波長光により励起される蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材を検査する構成とされたことで、亀裂の無い所に合焦すると物質そのものが発生する蛍光による強い光が観察できるが、亀裂箇所に合焦するとその場所には空気しかないので蛍光は発しない(合焦するまでの情報は拾うので、弱い光は少し出る)ことを利用してセラミックス被覆材の表面又は内部の亀裂の検出を行うことができる。
【0062】
次に、本発明のセラミックス被覆材の非破壊検査法は、前記セラミックス被覆材に光に反応して蛍光を発する浸透探傷液を含浸させてセラミックス被覆材の亀裂に前記浸透探傷液を浸透させた後、前記セラミックス被覆材の表面から光を照射し、該光により励起される前記浸透探傷液の蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材の亀裂を検査する構成とされたことで、光の照射による蛍光の発生如何に関わらず、任意の材料を用いたセラミックス被覆材に対しても亀裂の検出を行うことができる。
【0063】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材の表面における亀裂検出を行い、検出された亀裂周囲において前記紫外線を集光して照射し、前記集光された紫外線により励起される蛍光の測定を行うことにより前記セラミックス被覆材内部の亀裂の検出を行う構成、あるいは、前記検出された亀裂周囲において前記励起させるために必要な特定波長光により励起される蛍光の測定を行うことにより前記セラミックス被覆材内部の亀裂の検出を行う構成により、セラミックス被覆材表面の広範囲からの亀裂の検出と、検出された亀裂の詳細な情報の取得を行うことができる。
【0064】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、励起させるために必要な特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、前記特定波長光照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記特定波長光の照射により被照射体において励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えた構成により、高い精度でセラミックス被覆材の膜厚測定及び亀裂の検査に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るセラミックス被覆材の検査装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】図2A、図2Bは、図1に示す検査装置を用いたセラミックス被覆材の膜厚測定の説明図である。
【図3】図3は、図2に示す蛍光測定により得られる蛍光強度分布を示す説明図である
【図4】図4A、図4Bは、図1に示す検査装置を用いたセラミックス被覆材の膜厚測定の説明図である。
【図5】図5は、図4に示す蛍光測定により得られる蛍光強度分布を示す説明図である。
【図6】図6は、本発明に係るセラミックス被覆材の検査装置の第2の実施形態を示す構成図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態の非破壊検査法のブロック図である。
【図8】図8A、図8Bは、本実施形態に係るミクロ測定による亀裂検出を説明するための説明図である。
【図9】図9は、図8に示す測定により得られる蛍光強度分布を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の第1の実施例で用いた8YSZにArイオンレーザを照射して得られる蛍光を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明の第1の実施例における蛍光測定の結果を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の第2の実施例における蛍光測定の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
10,20 非破壊検査装置
11,21 3次元ステージ(移動手段)
12,22,25 プローブ
13,23,26,27 光ファイバ
14,24 顕微ラマン装置(特定波長光照射手段、蛍光測定手段)
15 被検体
16 基材
17 セラミックス被覆材
22a 集光手段
28 紫外線励起撮像装置(紫外線照射手段、撮像手段)
18 亀裂
30 計算機(画像処理手段、測定位置制御手段)
L 励起させるために必要な特定波長光
U 集光紫外線
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス被覆膜の非破壊検査法及び検査装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セラミックスの利点のひとつは高温にも耐えられることであり、高温構造材としての適用可能性を検討する研究が長い間行われてきた。しかし、セラミックスの致命的な弱点である「脆さ」を完全に克服することは困難であり、確かに以前に比べれば靭性値は飛躍的に向上しているものの、それでも十分な値とは言えずに今持って金属材料と同様の考え方で強度設計が可能なセラミックス材料は存在しない。
そこで、近年、機械的応力に耐える構造材としての役割を金属に持たせ、その金属を高温でも耐えられるように遮熱する目的で金属にセラミックス材料をコーティングする適用が良く行われている。例えば、近年の発電用ガスタービンでは高効率化のためにガス入り口温度が年々上昇し、金属翼のままでは十分な耐熱性が得られないことから、セラミックス厚膜をTBC(Thermal Barrier Coating;遮熱被覆膜)トップコートとして施工する。この施工法によれば金属翼の上にセラミックスをコーティングするだけで良いので、設計思想を大きく変更することがなく、手軽であるとともに産業上の利用価値が大きい方法である。
【0003】
セラミックス被膜の施工では溶射法が最も低コストで産業上の利点が大きいので良く用いられるが、施工後に所定の厚みに溶射されたかどうかを正確に把握する必要があるにもかかわらず、実際には確立された方法が無い。それまでの経験とカンに頼っているだけで、何らかの不確定要因が入ったりすると、全く対応ができない。このように再現性に多大な問題があるが、問題点はそれだけではなく、1度の溶射であっても、例えばガスタービン翼のような複雑な3次元形状の翼では、翼全体に均一に溶射することが困難である。どうしても膜厚が厚いところと、薄いところができてしまい、後々の耐久性などに直接影響する可能性がある。
【0004】
一方、金属にセラミックス厚膜を施工して耐熱性をもたせても、何らかの理由により膜が剥離すると、下地金属の表面温度は一気に上昇して、条件によっては一部が溶融する等して重大な事故を引き起こす可能性がある。このため、剥離に至る事前の剥離を検知する方法が重要な技術となるが、一般的には定期点検等の運転停止時に目視や浸透探傷法等で表面に発生している亀裂を確認する程度のことしか実施されておらず、これらの方法でもその有効性は十分大きいものではないのが現状である。
【0005】
また、現在では前述したような事故を防止するために、特に過酷な環境にある翼の一群(第一段動翼等)は、ある一定期間が過ぎると全て新品と交換をしており、もし健全な翼が多く含まれていると非常にコストがかさむことになる。もしも、定期点検時等にその時の翼の状態を完全に把握することができれば、交換の要否が判断でき、無駄が省けて低コスト化に大きく貢献することになるが、現在では確立された方法は無い。
【0006】
一方、表面に観察される亀裂は概ね表面に対して垂直方向に導入されているものが多く、これは剥離に対してそれほど重要では無い。そればかりか高度なTBCではトップコートに故意に縦方向の亀裂を導入しているものがある(EB−PVD法で作製された厚膜等)ので、誤認の可能性もあってあまり有効な方法では無い。最も危険なクラックは表面と並行に導入されたクラックで、これらのクラックのいくつかが結合することにより、容易に剥離を引き起こす。これらの亀裂は、表面から目視や浸透探傷法等では検出できない内部で起きているために、その検出や位置の特定は一般的に困難である。
【0007】
より一般的な非破壊検査では、サーモグラフィーや超音波を用いたものがあるが、サーモグラフィーでは被検体を均一加熱する必要があり、複雑形状のものであると困難である。また、超音波を用いるものでは測定精度に問題があり、また超音波の入反射に対するS/N比を上げて誤差を最小限にするために、表面を可能な限り平滑にする必要があったり水没させる必要があるので、大型の製品には適さない等、問題点は多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、セラミックス被覆材の剥離を引き起こし得る亀裂の検査と、好ましくはセラミックス被覆材の膜厚の測定も行うことができるセラミックス被覆材の非破壊検査法を提供することを目的の一つとしている。
また本発明は、上記非破壊検査法に用いて好適なセラミックス被覆材の検査装置を提供することを目的の一つとしている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、金属基材上に施工されるTBCトップコートのようなセラミックス被覆材の部分的な剥離を引き起こす基材と被覆材との界面にほぼ平行に伸展する亀裂の検査を行うことができる非破壊検査法として、(1)被覆材のセラミックス自体が発する蛍光を利用する方法、及び(2)蛍光に強く反応する浸透探傷液をセラミックス被覆材中に浸透させ、浸透探傷液の発する蛍光を利用する方法の2種類の分光的手法を考案し、検証することで、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、前記セラミックス被覆材の表面から励起光を照射し、該セラミックス被覆材の被照射部において前記励起光により励起される蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材を検査することを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記セラミックス被覆材に照射する励起光として、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を用いることが好ましく、前記特定波長光として、レーザ光を用いることもできる。
【0012】
係る構成の検査法は、上記(1)のセラミックス自体から発せられる蛍光を利用する点に特徴を有する検査法である。以下、係る非破壊検査法について説明する。物質にある波長の光を照射すると、その大部分は同一波長の光として散乱されるが、ごく僅かに入射波長とは異なる波長の光が散乱される。この現象をラマン散乱といい、ラマン散乱光は物質を構成する分子の回転や振動を反映するので、解析により物質についての様々な情報を得ることができ、励起する光の波長に応じてラマン散乱光は変化する。ところが、このように励起波長を違えても、そのエネルギーより低い側で一定の波長の強い光が検出される場合がある。この光を蛍光といい、ラマン散乱光と比較してその強度が数十倍にもなる場合があるので、ラマン散乱光とこの蛍光がほぼ同一の波長域に存在すると、ラマン散乱光は蛍光に埋もれて検出できなくなる。
【0013】
従って、ラマン測定を行う際には、蛍光が測定するラマン散乱光の波長と同範囲にあるともはや測定はできないので、蛍光領域を避けられる励起波長を選択して測定を行う必要がある。本発明者らは逆転の発想で、この蛍光は物質そのものが発する光であること、及びラマン散乱光よりも強いことの2点を利用して、非破壊検査への応用を考えたものである。つまり、亀裂の無い所に合焦すると物質そのものが発生する蛍光による強い光が観察できるが、亀裂箇所に合焦するとその場所には空気しかないので蛍光は発しない(合焦するまでの情報は拾うので、弱い光は少し出る)ことが本検査法の原理である。
【0014】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法では、前記セラミックス被覆材の厚さ方向の複数位置において前記励起光により励起される蛍光の測定を行い、得られた蛍光強度の分布から前記セラミックス被覆材の膜厚を導出することができる。
【0015】
また本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法では、前記セラミックス被覆材の厚さ方向の複数位置において前記励起光により励起される蛍光の測定を行い、得られた蛍光強度の分布から前記セラミックス被覆材の亀裂の有無及び/又は深さの検出を行うこともできる。
【0016】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、前記セラミックス被覆材に光に反応して蛍光を発する浸透探傷液を含浸させてセラミックス被覆材の亀裂に前記浸透探傷液を浸透させた後、前記セラミックス被覆材の表面から光を照射し、該光により励起される前記浸透探傷液の蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材の亀裂を検査することを特徴としている。
【0017】
上記構成の非破壊検査法によれば、光の照射による蛍光の発生如何に関わらず、任意の材料を用いたセラミックス被覆材に対しても亀裂の検出を行うことができる。TBCとして広く用いられているZrO2は、可視光領域においてある程度の透過性を有しているため、先に記載の材料自体が発する蛍光を利用して検査を行うことができる。しかし、蛍光を励起させるための光源の出力が不足している場合やTBCが厚すぎるために透過される蛍光の強度が低下し、亀裂検出のための明確な検量線が得られない場合には亀裂の検出精度が低下したり、亀裂検出自体ができないことがある。このような場合に特に本構成の検査法は有効である。
【0018】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記亀裂の検査を行うことができる。
また本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記亀裂の検出を行うことができる。
すなわち、上記浸透探傷液に蛍光を励起させるための光としてレーザ光等のように特定波長範囲の光を主体とする特定波長光、あるいは紫外線を用いることができる。
【0019】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材の表面における亀裂検出を行い、検出された亀裂周囲において前記紫外線を集光して照射し、前記集光された紫外線により励起される蛍光の測定を行うことにより前記セラミックス被覆材内部の亀裂の検出を行うことを特徴とする。
【0020】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材の表面における亀裂検出を行い、検出された亀裂周囲において、特定範囲の波長成分を主体とする励起させるために必要な特定波長光を照射し、前記特定波長光により励起される蛍光の測定を行うことを特徴とする。
【0021】
上記構成の検査法は、セラミックス被覆材表面に生じた亀裂を紫外線照射による浸透探傷液の発光により検知し、その検知された亀裂の被覆材内部の情報を、励起させるために必要な特定波長光照射又は集光紫外線照射により検査するものであり、セラミックス被覆材表面においては、広い面積から亀裂を効率よく検出することができ、亀裂周囲においてはセラミックス被覆材内部の情報を知ることができるため、極めて効率よくセラミックス被覆材の検査を行うことが可能である。
【0022】
上記紫外線を照射してセラミックス被覆材を検査する方法は、部材表面に存在する微小な亀裂を目視にて容易にかつ高精度に確認する方法である蛍光探傷浸透法と同様の手法を用いる。係る検査法は、極めて高い信頼性を要求される航空機分野を中心として広く利用されている。これは、亀裂に紫外線を照射すると蛍光を発する検査液を浸透させて表面の亀裂を検出するもので、亀裂の検出原理としては染色探傷法と同様である。但し、蛍光探傷浸透法では、欠陥部(亀裂)自らが蛍光により発光することと、ブラックライトと呼ばれる紫外線発光ランプ(可視光よりも紫外なので、人間の目には見えない)を用いるので暗い場所で作業することが可能で、より発光が目立つことになるので、単なる色の変化として検出する染色探傷法と比較して感度がより高い方法である。
【0023】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法では、前記セラミックス被覆材表面から励起させるために必要な前記特定波長光又は集光紫外線を照射し、該光により励起される浸透探傷液の蛍光の測定を行うに際して、前記セラミックス被覆材の厚さ方向の複数位置において前記蛍光測定を行い、得られた蛍光強度の分布から前記亀裂の深さを導出することができる。係る構成により得られる亀裂の深さを、上記紫外線照射により検知された亀裂周囲の複数箇所で行うことで、セラミックス被覆材の亀裂の伸展程度を知ることができ、被覆材の寿命の推定に極めて有用な情報を得ることができる。
【0024】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記浸透探傷液として、ローダミン、キトンレッド、コーマリン、オキサジンから選ばれる1種以上の蛍光色素溶液を用いることができる。
【0025】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、前記セラミックス被覆材に励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、該特定波長光照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記特定波長光により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えた検査装置を用い、前記特定波長光照射手段により前記セラミックス被覆材の表面へ特定波長光の照射を行い、該特定波長光の焦点位置で励起される蛍光の測定を前記蛍光測定手段により行う検査を、前記移動手段により前記特定波長照射手段の焦点位置を移動させることで前記セラミックス被覆材の表面又は内部の複数の箇所において行うことを特徴としている。
【0026】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、前記セラミックス被覆材に紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記紫外線照射手段から出射される紫外線を集光するための集光手段と、前記紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記紫外線により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えた検査装置を用い、前記セラミックス被覆材に蛍光に反応する浸透探傷液を浸透させた後、前記紫外線照射手段により前記セラミックス被覆材の表面に紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材表面の亀裂を検出し、前記検出された亀裂周囲において、前記集光手段により集光された紫外線を前記セラミックス被覆材に照射し、前記紫外線の焦点位置で励起される蛍光の測定を前記蛍光測定手段により行う検査を、前記移動手段により前記紫外線の焦点位置を移動させることで前記セラミックス被覆材の表面又は複数位置で行うことを特徴としている。
【0027】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、前記セラミックス被覆材に、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、前記セラミックス被覆材に紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記特定波長光照射手段及び紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記特定波長光により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えた検査装置を用い、前記セラミックス被覆材に蛍光に反応する浸透探傷液を浸透させた後、前記紫外線照射手段により前記セラミックス被覆材の表面に紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材表面の亀裂を検出し、前記検出された亀裂周囲において、前記特定波長光照射手段により前記セラミックス被覆材の表面へ特定波長光の照射を行い、該特定波長光の焦点位置で励起される蛍光の測定を前記蛍光測定手段により行う検査を、前記移動手段により前記特定波長照射手段の焦点位置を移動させることで前記セラミックス被覆材の表面又は内部の複数位置において行うことを特徴としている。
【0028】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記蛍光測定手段として、受光素子を備えた撮像手段と、該撮像手段により得られた画像を処理するための画像処理手段とを用い、前記撮像手段により前記セラミックス被覆材表面の前記紫外線照射手段により紫外線を照射された領域を撮影し、得られた画像を前記画像処理手段により処理することで前記セラミックス被覆材表面の亀裂を検出することができる。
【0029】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法においては、前記蛍光測定手段として顕微ラマン装置を用いることができる。係る構成によれば、数μm程度の極めて微小な領域に対して蛍光の測定が可能であり、セラミックス被覆材の厚さ方向の情報を正確に得ることができる。
【0030】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査に適用できる検査装置であって、
励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、前記特定波長光照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記特定波長光の照射により被照射体において励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えたことを特徴としている。
上記構成の非破壊検査装置によれば、高い精度でセラミックス被覆材の膜厚測定及び亀裂の検査を行うことができる。
【0031】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査に適用できる検査装置であって、前記セラミックス被覆材に紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記紫外線照射手段から出射される紫外線を集光するための集光手段と、前記紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記紫外線により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えたことを特徴としている。
上記構成の非破壊検査装置によれば、セラミックス被覆材に蛍光を発する浸透探傷液を含浸させた被検体に対して、紫外線照射を行うことでセラミックス被覆材表面の亀裂の検出を行うことができ、検出された亀裂及びその周囲に集光された紫外線を照射して蛍光測定を行うことで、セラミックス被覆材内部の亀裂の検査を行うことができる。
【0032】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査に適用できる検査装置であって、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記特定波長光照射手段及び紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記特定波長光又は紫外線の照射により被照射体において励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えたことを特徴としている。
上記構成の非破壊検査装置によれば、セラミックス被覆材に蛍光を発する浸透探傷液を含浸させた被検体に対して、紫外線照射を行うことでセラミックス被覆材表面の亀裂の検出を行うことができ、検出された亀裂及びその周囲に励起させるために必要な前記特定波長光を照射して蛍光測定を行うことで、セラミックス被覆材内部の亀裂の検査を行うことができる。
【0033】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、前記蛍光測定手段に、受光素子を備えた撮像手段と、該撮像手段により得られた画像を処理するための画像処理手段とが備えられた構成とすることができる。
上記構成の非破壊検査装置によれば、セラミックス被覆材表面の亀裂の検出を、セラミックス被覆材表面の画像を処理することにより行うことができるので、測定者の技術や経験によらず高精度の亀裂検出が可能である。
【0034】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、前記画像処理手段により認識されたセラミックス被覆材表面の亀裂発生位置に、前記移動手段により励起させるために必要な前記特定波長光照射手段及び前記特定波長光により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを移動させるための測定位置制御手段を備えた構成とすることができる。
上記構成によれば、紫外線照射と蛍光測定によりセラミックス被覆材表面の亀裂を検出するとともに、その亀裂の位置情報に基づき移動手段を制御して、被覆材内部の検査を行うための励起させるために必要な特定波長光照射手段を移動させることができるので、セラミックス被覆材表面の亀裂探査と発見された亀裂の内部検査とを、極めて簡素な手順で行うことができ、効率よく高速にセラミックス被覆材の検査を行うことができる。
【0035】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、励起させるために必要な前記特定波長光照射手段及び蛍光測定手段とを有する顕微ラマン装置を備えた構成とすることができる。
【0036】
次に、本発明に係る非破壊検査装置においては、励起させるために必要な前記特定波長光がレーザ光であり、前記特定波長照射手段がレーザ光照射手段である構成とすることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係るセラミックス被覆材の検査装置の第1の実施形態を示す構成図であり、この図に示す検査装置10は、3次元ステージ(移動手段)11と、顕微ラマン装置19(特定波長光照射手段、蛍光測定手段)とから概略構成されており、顕微ラマン装置19は、3次元ステージ11に3次元的に移動可能に支持されたプローブ12と、このプローブ12に一端を接続された光ファイバ13と、光ファイバ13の他端と接続された装置本体14とを備えて構成されている。そして、3次元ステージ11のプローブ12の下方に被検体15が配置され、装置本体14から光ファイバ13を介してプローブ12に供給された励起させるために必要な特定波長光を被検体15に照射し、被検体15の表面又は内部で励起された蛍光を、プローブ12から光ファイバ13を通じて装置本体14へ送り、装置本体14において蛍光の強度等を測定するようになっている。
【0038】
本実施形態に係る検査装置10では、上述したように局所的な蛍光を検出するための装置として、顕微ラマン装置を流用することが可能であり、特に皮膜の厚み方向の変化を定量的に測定するために、表面から内部方向に焦点を移動していく共焦点機能が必要である。
【0039】
また、例えばガスタービン翼等の比較的大きな部材は顕微ラマン装置のステージに載らないが、XYZともに長作動距離でかつ微動機構を持った3次元ステージに、励起光照射とラマン散乱光検出のプローブを備えた装置構成とすることで比較的大きな部材であっても測定することが可能になる。また、広範囲な測定を短時間で処理するためには、1箇所の測定時間は短いほど良いので、このために励起させるために必要な特定波長光としては出力の大きなレーザを用いることが好ましい。このような高出力レーザでは例え短時間であっても材料の焼損、溶解等の危険性があるが、被検体がセラミックスの場合には耐熱性が高いので問題がない。また、レーザ光以外でも、ハロゲンランプ等の光源に、その強い白色光の波長帯域をフィルタリングするためのフィルターを付けることで励起させるために必要な特定波長光を得ることができ、このような方法で対応が可能な場合には、高価なレーザ照射装置等を用意する必要がないため、装置の低コスト化を達成することができる。
また本実施形態の検査装置10では、これらの筐体の大きく成りがちな高出力レーザや分光機構は別の場所に設置し、光ファイバを用いて、プローブとの光のやりとりをする構成とされており、比較的大きな部材であっても短時間で広範囲を測定することが可能とされている。
【0040】
上記構成を備えた本発明に係る検査装置を用いて金属基材上に形成されたセラミック被覆材を検査する方法を以下に説明する。図2A、図2Bは、図1に示す検査装置を用いたセラミックス被覆材の膜厚測定の説明図であり、図3は、係る測定により得られる蛍光強度分布を示す説明図である。
図2には被検体15の部分断面構造及び図1に示すプローブ12から出射された励起させるために必要な特定波長光Lが図示されている。被検体15は、金属基材16上にセラミックス被覆材17が成膜された構成である。この被検体15のセラミックス被覆材17の膜厚を測定するには、セラミックス被覆材17の表面側から、励起させるために必要な特定波長光Lの焦点位置を被覆材17厚さ方向に順次移動させ、励起させるために必要な特定波長光Lにより励起された蛍光をセラミックス被覆材17内部の複数位置で測定する。すなわち、初めにセラミックス被覆材17の表面に励起させるために必要な特定波長光Lを合焦させて蛍光を確認し、その後焦点位置を移動させて順次蛍光の測定を行う。例えば、図2Aに示す状態では、セラミックス被覆材内部の位置bに励起させるために必要な特定波長光Lを合焦させて蛍光の測定を行い、次に、励起させるために必要な特定波長光Lの焦点を、3次元ステージ11によりプローブ12を下方に移動させて図2Bに示すように焦点位置を位置cに移動させて蛍光の測定を行う。
【0041】
このようにして位置a〜cで測定された蛍光強度と、焦点位置の深さとの関係は図3に示すようになる。すなわち、焦点位置が深くなるほど観測される蛍光の強度はほぼリニアに低下する。そして、焦点位置の深さが金属基材16に達すると、蛍光強度の低下が停止し、それ以上焦点位置を深くしても観測される蛍光強度は一定になる。従って、この焦点位置の移動に伴い蛍光強度が低下する範囲にはセラミックス被覆材17が存在しており、蛍光が観測されない範囲又は蛍光強度が変化しない範囲ではセラミックス被覆材17は存在しないので、焦点位置の蛍光強度が変化する範囲での焦点位置の移動距離がセラミックス被覆材17の膜厚を与える。本実施形態に係る検査装置10では、測定に当たり3次元ステージ11によりプローブ12を移動させて励起させるために必要な特定波長光Lの焦点位置を移動させるので、プローブ12の移動距離により直接セラミックス被覆材17の膜厚が得られるという利点がある。尚、励起させるために必要な特定波長光Lの焦点位置は、プローブ12にレンズ等の光学手段を設け、焦点距離を調節することによっても変化させることができ、得られた蛍光強度の分布からセラミックス被覆材17の膜厚を得ることができるのは勿論である。
【0042】
次に、図1に示す検査装置10を用いてセラミックス被覆材の亀裂の検出を行う場合について図4及び図5を参照して以下に説明する。図4A、図4Bは、図1に示す検査装置を用いたセラミックス被覆材の膜厚測定の説明図であり、図5は、係る測定により得られる蛍光強度分布を示す説明図である。図4A、図4Bは、被検体15の断面構造を示しており、符号18はセラミックス被覆材17に生じた亀裂を示している。
【0043】
図1に示す検査装置10により亀裂の検出を行う場合、上記膜厚測定と同様に、表面に励起させるために必要な特定波長光を合焦させて蛍光を確認した後、励起させるために必要な特定波長光Lの焦点位置を被覆材17の膜厚方向基材側へ移動させて傾向測定を行う。図4Aは、励起させるために必要な特定波長光Lの焦点を被覆材17内部の位置bに合わせて蛍光の測定を行う場合を示しており、図4Bは、励起させるために必要な特定波長光Lを亀裂18内の位置cに合焦した場合を示している。このようにして図4に示す位置a、b、c及びセラミックス被覆材17の表面で蛍光測定を行うと、図5に示すような蛍光強度分布が得られる。すなわち、セラミックス被覆材17表面から位置a、bの順で励起させるために必要な特定波長光Lの合焦位置を移動して測定すると、各位置で観測される蛍光強度は合焦位置の深さに応じてリニアに減少する。しかし、亀裂18内の位置cにおいては、セラミックス被覆材17が存在しないために、深さに応じた蛍光強度の低下よりも大きな蛍光強度の低下が生じる。従って、図5に示すようなセラミックス被覆材17厚さ方向の蛍光強度分布において変曲点が生じたならば、その位置(図5では位置b、c間)に存在する亀裂18を検知することができる。また、図1に示す検査装置10では、焦点位置の移動距離は3次元ステージ11に支持されたプローブ12の高さ方向の移動距離と対応するため、セラミックス被覆材17内部に生じた亀裂18の深さを容易に特定することが可能である。
【0044】
このように、図1に示す構成を備えた検査装置によれば、金属基材上に形成されたセラミックス被覆材の膜厚及びこのセラミックス被覆材内部に生じた亀裂の検出及び深さの特定が可能である。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図6ないし図9を参照して以下に説明する。本実施形態の検査装置及び検査法は、セラミックス被覆材に光により蛍光を発する浸透探傷液を浸透させた被検体を用い、前記浸透探傷液において励起される蛍光を測定することでセラミックス被覆材の検査を行うものである。
【0046】
図6は、本発明に係るセラミックス被覆材の検査装置の第2の実施形態を示す構成図である。この図に示す検査装置20は、3次元ステージ21と、顕微ラマン装置24と、紫外線励起撮像装置(紫外線照射手段、撮像手段)28とを備えて構成されており、3次元ステージ21の下方に被検体15が配置されるようになっている。尚、係る被検体15は、図2に示す構成と同様のものであり、金属基材16上にセラミックス被覆材17が成膜されたものである。
紫外線励起撮像装置28は、紫外線を照射するための手段としてのブラックライトと、紫外線により励起された蛍光を受光して撮影するための撮像手段としてのCCDとを備えて構成されており、プローブ22及び25から紫外線を照射し、この紫外線の照射により被検体15で励起された蛍光をプローブ22,25に接続された光ファイバ27,26を介して前記CCDにより取り込むことで、観測された蛍光を画像として得られるようになっている。また、紫外線励起撮像装置28には、計算機(画像処理手段)30が接続されており、紫外線励起撮像装置28により撮影された画像を処理して被検体15から得られた情報を処理して亀裂の検査を行えるようになっている。また、上記計算機30は、顕微ラマン装置24にも接続されており、顕微ラマン装置24により得られた蛍光の情報の処理も行うことができるようになっている。
【0047】
3次元ステージ21には2つのプローブ22,25が3次元的に移動可能に支持されており、プローブ22の一端に2本の光ファイバ23,27が接続されており、光ファイバ23の他端に顕微ラマン装置24が接続され、光ファイバ27の他端には紫外線励起撮像装置28が接続されている。すなわち、プローブ22は紫外線と励起させるために必要な特定波長光の両方を照射できるようになっている。また、プローブ22の発光側(光ファイバ23,27と反対側の端部)には、集光手段22aが設けられており、プローブ22から出射される紫外線又は励起させるために必要な特定波長光を集光して被検体15に照射することができるようになっている。一方、プローブ25の一端には光ファイバ26を介して紫外線励起撮像装置28が接続され、プローブ25の他端から紫外線を照射できるようになっている。
【0048】
上記構成の検査装置20を用いたセラミックス被覆材の非破壊検査法を以下に説明する。図7は、係る検査法のブロック図であり、以下ではこのブロック図に沿って説明する。
図7に示すように、本実施形態の検査法は大きく3段階に分けられる。すなわち、A.検査前処理、B.表面マクロ測定、C.内部ミクロ測定の3段階である。
【0049】
<A.検査前処理>
まず、A.検査前処理では、図6に示す被検体15に対して検査を可能にするための処理を施す。具体的には、被検体15の表面に浸透探傷液を含浸させ、その後、被検体15の表面を水洗して被検体15の表面に付着した前記探傷液を除去する。これらの処理により、被検体15のセラミックス被覆材表面に亀裂が生じていれば、その亀裂に浸透探傷液が浸透され、その後表面から浸透探傷液を除去することで、亀裂内部にのみ浸透探傷液が浸透された被検体15が得られる。
【0050】
<B.マクロ測定>
上記工程により被検体15の前処理が終了したならば、図6に示す検査装置20の3次元ステージ21に被検体15を配置する。このマクロ測定段階では、図6に示す紫外線励起撮像装置28からプローブ25を介して被検体15表面に紫外線を照射し、被検体15(セラミックス被覆材)表面において励起される蛍光をCCDにより一括測光して被検体15表面の情報をデジタル化して計算機30に記憶する。そして、この記憶された画像を処理することで、被検体15表面における亀裂発生位置を特定する。
このマクロ測定では、被検体15表面の広範囲の情報を得る必要があるので、プローブ25から照射される紫外線は集光されていないものを用い、むしろ蛍光灯表面に可視光から紫外線を取り出すための塗料を塗布したもの等を紫外線照射手段の光源として用いることが好ましく、紫外線の出射光率を高めるために、光源に紫外線を反射する反射板を設けてもよい。
【0051】
<C.ミクロ測定>
次に、上記工程により検出された大まかな亀裂発生位置に基づき、より位置精度の高いミクロ測定により、更に詳細な亀裂位置の特定を行う。このミクロ測定では、集光レンズ(群)等の集光手段22aを備えたプローブ22を用いて測定を行う。すなわち、紫外線励起撮像装置28からプローブ22を介して集光された紫外線を被検体15の亀裂発生箇所又はその周囲に照射し、より狭い範囲について、セラミックス被覆材の表面のみならず、セラミックス被覆材内部までの蛍光測定を行い、被検体15のセラミックス被覆材表面における亀裂位置をより正確に位置特定するとともに、セラミックス被覆材内部への亀裂の進展状況も知ることができる。
【0052】
図8は、本実施形態に係るミクロ測定による亀裂検出を説明するための説明図であり、図9は、図8に示す測定により得られる蛍光強度分布を示すグラフである。図8A、図8Bに示す被検体15のセラミックス被覆材17には、亀裂18が生じており、この亀裂18のセラミックス被覆材17表面に露出した部分は、先のマクロ測定により検出される。また、亀裂18内部には浸透探傷液29が浸透されている。
本ミクロ測定においてセラミックス被覆材17内部の情報を得るには、セラミックス被覆材17の表面から順次集光紫外線Uの焦点位置をセラミックス被覆材17の内部に移動させて蛍光の測定を行う。この蛍光の測定は、紫外線励起撮像装置28により測光して画像を記憶することにより行う。図8Aは、セラミックス被覆材17内部の位置bに集光紫外線Uを合焦した状態を示し、図8Bは、セラミックス被覆材17内部の亀裂18内の位置cに集光紫外線Uを合焦した状態を示している。このようにしてセラミックス被覆材17内部の複数位置で得られた蛍光強度と、セラミックス被覆材17内における集光紫外線Uの焦点位置の深さとの関係は、図9のようになる。すなわち、亀裂18が存在しない位置a、bに集光紫外線Uを合焦した場合には蛍光は観測されず、亀裂18が存在する位置cに合焦した場合には、亀裂18内に浸透された浸透探傷液29が発する蛍光が観測される。このようにして、セラミックス被覆材17内部に伸展した亀裂18を検知することができ、またその大きさの推定も可能であるため、亀裂18のセラミックス被覆材17内部への伸展程度も推定することが可能である。
尚、本測定において、集光紫外線U及び紫外線励起撮像装置28のCCDは、プローブ22aに設けられた集光手段22aにより、検査対象である亀裂18の大きさに応じて適切な集光及び検出精度となるように調節される。すなわち、紫外線の照射により最も強く発光するのは、亀裂18がセラミックス被覆材17の表面に露出した部分であるので、表面における蛍光の検出精度を抑制することで、内部の亀裂の情報を得られるようになる。
【0053】
実際の測定では、上記マクロ測定により得られた被検体表面の情報に基づき、対象亀裂の周囲を3次元ステージ21によりプローブ22を移動させて被検体15表面を粗く高速に走査してCCDにより撮像し、得られた画像を計算機30に蓄積して処理し、同じ深さで最も蛍光強度が高く観測された位置を中心として、より細かく測定する。さらに、本実施形態の検査装置20によれば、被検体15の亀裂周囲の蛍光の測定を行うことで得られた画像を計算機30により3次元図として可視化し、亀裂18の情報を極めて詳細に得ることができる。また、このような3次元図としての情報を得るために、本実施形態に係る検査装置20においては、長作動距離でかつ微動機構を備えた3次元ステージ21に、プローブ22が支持された構成とされている。
【0054】
上記構成を備えた本実施形態の検査装置20では、上記マクロ測定において得られた被検体15表面の情報に基づいて3次元ステージ21を作動させ、プローブ22を対象亀裂位置に移動させ、対象亀裂の内部情報のミクロ測定を行うことも可能である。その場合には、計算機30と3次元ステージ21とを接続し、計算機30に蓄積された被検体15の表面情報に基づいて3次元ステージ21の制御信号を計算機30から送出する構成とする。この場合には計算機30は、3次元ステージ21の測定位置制御手段として機能する。
従って、被検体15表面における亀裂検出と、その亀裂の詳細な検査を自動化することができ、極めて効率よくかつ高精度にセラミックス被覆材の検査を行うことができる。
【0055】
また、上記ミクロ測定では、集光した紫外線を用いてセラミックス被覆材内部の亀裂を検出する方法のほか、顕微ラマン装置24を用いた励起させるために必要な特定波長光を利用した励起による蛍光測定によってもセラミックス被覆材の内部情報を得ることができる。すなわち、顕微ラマン装置24から光ファイバ23を介して接続されたプローブ22の先端から励起させるために必要な特定波長光を出射させ、上記マクロ測定により検出された亀裂の周囲に照射する。そして、図8に示す集光紫外線Uを用いた方法と同様に、セラミックス被覆材17の膜厚方向に励起させるために必要な特定波長光の焦点を順次移動させて得られた蛍光強度を顕微ラマン装置24に接続された計算機30により処理することで、セラミックス被覆材17の亀裂18の検査を行うことが可能である。また、この場合には、浸透探傷液を励起させるために必要な特定波長光により励起し、顕微ラマン装置24のラマン散乱光検出系で検出することとなるので、検出感度を高めるために高出力の励起させるために必要な特定波長照射手段を備えることが好ましく、検出光の強さが適当な強さとなるようにすることが好ましい。
但し、ミクロ測定に顕微ラマン装置24を用いる場合に、セラミックス被覆材17に励起させるために必要な特定波長光を照射するとセラミックス被覆材自身が蛍光を発することがあるので、浸透探傷液29で励起される蛍光の波長域とセラミックス被覆材自身で励起される蛍光の波長域は互いに異ならせる必要がある。
【0056】
本実施形態の一連の測定では、紫外線により励起された蛍光を測光して画像として保存するので、被検体15に紫外線が照射されるのが一瞬ですむ。従って、従来の浸透探傷液を含浸した試料に紫外線を照射して目視により亀裂を検出する検査に比して、紫外線による被検体15の損傷を極めて小さくすることができるので、セラミックス被覆材の表面に紫外線を照射する際に採られていた紫外線防護対策が特に必要なく、簡便で、効率の良い検査法である。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
(第1の実施例)
<セラミックス自体が発する蛍光を検出する方法>
本例では、上記第1の実施形態で説明した非破壊検査法に準じてセラミックス被覆材の非破壊検査を行った。
まず、直径30mmφの円板状の金属基材に8mol%Y2O3−ZrO2(以下8YSZと略記することもある。)を溶射してセラミックス被覆材を形成させ試験片(被検体)とし、その後熱処理による熱応力を試験片に負荷して溶射膜内部に人為的に亀裂を発生させた。内部亀裂は表面からは確認できないが、内部に亀裂を発生する熱処理条件はこれまでに経験的に求められているので、これを用いた。
この試験片のセラミックス被覆材である8YSZは波長514.5nmのArイオンレーザによる励起で図10に示すような蛍光40を発するので、これを用いた。一般的に蛍光はよりブロードなピークとして検出されるが、8YSZの蛍光40の場合には比較的シャープなピークとして検出される。レーザの励起波長を変えてもこの位置にピークが出ることを確認済みなので蛍光には間違いないが、なぜシャープとなるのかその理由については明らかではない。
【0058】
次いで、この蛍光40のピークに対して、顕微ラマン分光装置により表面から内部に向かって合焦し、図2に示すようにセラミックス被覆材の内部の複数位置で蛍光測定を行い、内部亀裂を調べた。この結果を図11に示す。図11に示すように、表面より深さが深くなるほど、ラマン散乱強度の積分値は小さくなっているが、図11に示した位置▲1▼〜位置▲4▼のところで変曲点が認められており、これが亀裂の存在を示していると考えられる。さらに、位置▲5▼より深さの深いところでは、強度がこれ以上低くならない飽和状態であり、この辺りが金属との界面を示し、トップコートの厚みを表していると考えられる。
【0059】
(第2の実施例)
<蛍光に強く反応する浸透探傷液をセラミックス被覆材中に浸透させ、その蛍光をセラミックス表面から透過して検出する方法>
本例では、上記第2の実施形態で説明した非破壊検査法に準じてセラミックス被覆材の亀裂に浸透探傷液を浸透させた試料を用いて非破壊検査を行った。
【0060】
上記第1の実施例と同様なサンプルを用意し、同様の内部亀裂を人為的に発生させた。
次いで、このサンプルを水溶性の浸透探傷液中に10分間漬け込んで十分含浸させて、その後余分な液を水に浸したワイパーで拭った。ごく表面に付着した蛍光の感度を抑制するために、探傷液がほとんど付いていないような状態とするために水で湿したワイパーで丹念に拭った。さらに、拭い切れなかったことをも考えて、浸透探傷液には比較的蛍光を発する感度の低いものを用いた。
ブラックライトには用いた浸透探傷液に最もよく反応する365nmのランプを用いた。ブラックライト照射により、表面のクラックが容易に明らかになったので、次に顕微ラマンを用いてこの周辺領域について蛍光観察を行った。この結果を図12に示す。
図12に示すように、位置▲1▼〜▲5▼において蛍光強度にピークが観測された。位置▲1▼には非常に大きな亀裂の存在が考えられ、位置▲2▼〜▲5▼にも比較的小さな亀裂の存在が示唆される。
【0061】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のセラミックス被覆材の非破壊検査法は、前記セラミックス被覆材の表面から励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射し、該特定波長光により励起される蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材を検査する構成とされたことで、亀裂の無い所に合焦すると物質そのものが発生する蛍光による強い光が観察できるが、亀裂箇所に合焦するとその場所には空気しかないので蛍光は発しない(合焦するまでの情報は拾うので、弱い光は少し出る)ことを利用してセラミックス被覆材の表面又は内部の亀裂の検出を行うことができる。
【0062】
次に、本発明のセラミックス被覆材の非破壊検査法は、前記セラミックス被覆材に光に反応して蛍光を発する浸透探傷液を含浸させてセラミックス被覆材の亀裂に前記浸透探傷液を浸透させた後、前記セラミックス被覆材の表面から光を照射し、該光により励起される前記浸透探傷液の蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材の亀裂を検査する構成とされたことで、光の照射による蛍光の発生如何に関わらず、任意の材料を用いたセラミックス被覆材に対しても亀裂の検出を行うことができる。
【0063】
次に、本発明に係るセラミックス被覆材の非破壊検査法は、前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材の表面における亀裂検出を行い、検出された亀裂周囲において前記紫外線を集光して照射し、前記集光された紫外線により励起される蛍光の測定を行うことにより前記セラミックス被覆材内部の亀裂の検出を行う構成、あるいは、前記検出された亀裂周囲において前記励起させるために必要な特定波長光により励起される蛍光の測定を行うことにより前記セラミックス被覆材内部の亀裂の検出を行う構成により、セラミックス被覆材表面の広範囲からの亀裂の検出と、検出された亀裂の詳細な情報の取得を行うことができる。
【0064】
次に、本発明に係る非破壊検査装置は、励起させるために必要な特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、前記特定波長光照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記特定波長光の照射により被照射体において励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えた構成により、高い精度でセラミックス被覆材の膜厚測定及び亀裂の検査に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るセラミックス被覆材の検査装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】図2A、図2Bは、図1に示す検査装置を用いたセラミックス被覆材の膜厚測定の説明図である。
【図3】図3は、図2に示す蛍光測定により得られる蛍光強度分布を示す説明図である
【図4】図4A、図4Bは、図1に示す検査装置を用いたセラミックス被覆材の膜厚測定の説明図である。
【図5】図5は、図4に示す蛍光測定により得られる蛍光強度分布を示す説明図である。
【図6】図6は、本発明に係るセラミックス被覆材の検査装置の第2の実施形態を示す構成図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態の非破壊検査法のブロック図である。
【図8】図8A、図8Bは、本実施形態に係るミクロ測定による亀裂検出を説明するための説明図である。
【図9】図9は、図8に示す測定により得られる蛍光強度分布を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の第1の実施例で用いた8YSZにArイオンレーザを照射して得られる蛍光を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明の第1の実施例における蛍光測定の結果を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の第2の実施例における蛍光測定の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
10,20 非破壊検査装置
11,21 3次元ステージ(移動手段)
12,22,25 プローブ
13,23,26,27 光ファイバ
14,24 顕微ラマン装置(特定波長光照射手段、蛍光測定手段)
15 被検体
16 基材
17 セラミックス被覆材
22a 集光手段
28 紫外線励起撮像装置(紫外線照射手段、撮像手段)
18 亀裂
30 計算機(画像処理手段、測定位置制御手段)
L 励起させるために必要な特定波長光
U 集光紫外線
Claims (24)
- 基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、
前記セラミックス被覆材に励起光を照射し、該セラミックス被覆材の被照射部において前記励起光により励起される蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材を検査することを特徴とするセラミックス被覆材の非破壊検査法。 - 前記励起光として、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を用いることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。
- 前記励起させるために必要な特定波長光が、レーザ光であることを特徴とする請求項2に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。
- 前記セラミックス被覆材の厚さ方向の複数位置において前記励起光により励起される蛍光の測定を行い、得られた蛍光強度の分布から前記セラミックス被覆材の膜厚を導出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。
- 前記セラミックス被覆材の厚さ方向の複数位置において前記励起光により励起される蛍光の測定を行い、得られた蛍光強度の分布から前記セラミックス被覆材の亀裂の有無及び/又は深さの検出を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。
- 基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、
前記セラミックス被覆材に、光に反応して蛍光を発する浸透探傷液を含浸させてセラミックス被覆材の亀裂に前記浸透探傷液を浸透させた後、
前記セラミックス被覆材の表面から光を照射し、該光により励起される前記浸透探傷液の蛍光を検知することにより前記セラミックス被覆材の亀裂を検査することを特徴とするセラミックス被覆材の非破壊検査法。 - 前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記亀裂の検査を行うことを特徴とする請求項4に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。
- 前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記亀裂の検出を行うことを特徴とする請求項6に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。
- 前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材の表面における亀裂検出を行い、検出された亀裂周囲において前記紫外線を集光して照射し、前記集光された紫外線により励起される蛍光の測定を行うことにより前記セラミックス被覆材内部の亀裂の検出を行うことを特徴とする請求項6に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。
- 前記浸透探傷液を含浸されたセラミックス被覆材の表面から紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材の表面における亀裂検出を行い、検出された亀裂周囲において、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射し、前記特定波長光により励起される蛍光の測定を行うことを特徴とする請求項6に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。
- 前記セラミックス被覆材表面から前記励起させるために必要な特定波長光又は集光紫外線を照射し、該光により励起される浸透探傷液の蛍光の測定を行うに際して、
前記セラミックス被覆材の厚さ方向の複数位置において前記蛍光測定を行い、得られた蛍光強度の分布から前記亀裂の深さを導出することを特徴とする請求項6ないし10のいずれか1項に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。 - 前記浸透探傷液として、ローダミン、キトンレッド、コーマリン、オキサジンから選ばれる1種以上の蛍光色素溶液を用いることを特徴とする請求項6ないし11のいずれか1項に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。
- 基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、
前記セラミックス被覆材に励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、該特定波長光照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記特定波長光により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えた検査装置を用い、
前記特定波長光照射手段により前記セラミックス被覆材の表面へ特定波長光の照射を行い、該特定波長光の焦点位置で励起される蛍光の測定を前記蛍光測定手段により行う検査を、前記移動手段により前記特定波長照射手段の焦点位置を移動させることで前記セラミックス被覆材の表面又は内部の複数の箇所において行うことを特徴とするセラミックス被覆材の非破壊検査法。 - 基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、
前記セラミックス被覆材に紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記紫外線照射手段から出射される紫外線を集光するための集光手段と、前記紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記紫外線により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えた検査装置を用い、
前記セラミックス被覆材に蛍光に反応する浸透探傷液を浸透させた後、前記紫外線照射手段により前記セラミックス被覆材の表面に紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材表面の亀裂を検出し、
前記検出された亀裂周囲において、前記集光手段により集光された紫外線を前記セラミックス被覆材に照射し、前記紫外線の焦点位置で励起される蛍光の測定を前記蛍光測定手段により行う検査を、前記移動手段により前記紫外線の焦点位置を移動させることで前記セラミックス被覆材の表面又は複数位置で行うことを特徴とするセラミックス被覆材の非破壊検査法。 - 基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査方法であって、
前記セラミックス被覆材に、励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、前記セラミックス被覆材に紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記特定波長光照射手段及び紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記特定波長光により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えた検査装置を用い、
前記セラミックス被覆材に蛍光に反応する浸透探傷液を浸透させた後、前記紫外線照射手段により前記セラミックス被覆材の表面に紫外線を照射して前記浸透探傷液を発光させることにより前記セラミックス被覆材表面の亀裂を検出し、
前記検出された亀裂周囲において、前記特定波長光照射手段により前記セラミックス被覆材の表面へ特定波長光の照射を行い、該特定波長光の焦点位置で励起される蛍光の測定を前記蛍光測定手段により行う検査を、前記移動手段により前記特定波長照射手段の焦点位置を移動させることで前記セラミックス被覆材の表面又は内部の複数位置において行うことを特徴とするセラミックス被覆材の非破壊検査法。 - 前記蛍光測定手段として、受光素子を備えた撮像手段と、該撮像手段により得られた画像を処理するための画像処理手段とを用い、
前記撮像手段により前記セラミックス被覆材表面の前記紫外線照射手段により紫外線を照射された領域を撮影し、得られた画像を前記画像処理手段により処理することで前記セラミックス被覆材表面の亀裂を検出することを特徴とする請求項14又は15に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。 - 前記蛍光測定手段として顕微ラマン装置を用いることを特徴とする請求項13又は15に記載のセラミックス被覆材の非破壊検査法。
- 基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査に適用できる検査装置であって、
励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、前記特定波長光照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記特定波長光の照射により被照射体において励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えたことを特徴とする非破壊検査装置。 - 基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査に適用できる検査装置であって、
前記セラミックス被覆材に紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記紫外線照射手段から出射される紫外線を集光するための集光手段と、前記紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記セラミックス被覆材の表面又は内部において前記紫外線により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えたことを特徴とする非破壊検査装置。 - 基材表面に成膜されたセラミックス材料からなるセラミックス被覆材の検査に適用できる検査装置であって、
励起させるために必要な特定範囲の波長成分を主体とする特定波長光を照射するための特定波長光照射手段と、紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記特定波長光照射手段及び紫外線照射手段の焦点位置を3次元的に移動するための移動手段と、前記特定波長光又は紫外線の照射により被照射体において励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを備えたことを特徴とする非破壊検査装置。 - 前記蛍光測定手段に、受光素子を備えた撮像手段と、該撮像手段により得られた画像を処理するための画像処理手段とが備えられたことを特徴とする請求項19又は20に記載の非破壊検査装置。
- 前記画像処理手段により認識されたセラミックス被覆材表面の亀裂発生位置に、前記移動手段により前記特定波長光照射手段及び前記特定波長光により励起される蛍光を測定するための蛍光測定手段とを移動させるための測定位置制御手段を備えたことを特徴とする請求項21に記載の非破壊検査装置。
- 前記特定波長光照射手段及び蛍光測定手段とを有する顕微ラマン装置を備えたことを特徴とする請求項18又は20に記載の非破壊検査装置。
- 励起させるために必要な前記特定波長光がレーザ光であり、前記特定波長照射手段がレーザ光照射手段であることを特徴とする請求項18ないし23のいずれか1項に記載の非破壊検査装置。
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