JP4749330B2 - 近赤外線分光法による野菜等の成分の非破壊検査法、及び同装置 - Google Patents

近赤外線分光法による野菜等の成分の非破壊検査法、及び同装置 Download PDF

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Description

本発明は、近赤外線分光法による野菜等の成分の非破壊検査法、並びに同検査法に使用する装置に関するものである。本発明は、好適には、野菜中の硝酸イオン濃度の非破壊測定などに利用できるものである。
硝酸の主要な摂取源は野菜であり、今日日本では、1000〜3000mg/週の硝酸が野菜を通じて摂取されると考えられている。硝酸塩を多量に摂取すると、メトヘモグロビン血症を引き起こし、あるいは、発ガン性物質であるニトロソ化合物が生成される結果、胃がんのリスクが高くなるなど人体に有害であることが指摘されている。こうした事情を背景に、野菜に含まれる硝酸塩の健康への影響については消費者の関心も高く、国際的にも既にこの問題について様々な取り組みがなされている。
例えばEUでは、1997年1月にレタスとホウレンソウの硝酸塩の基準値を定めると共に、各加盟国に対して、基準値を超えた野菜の国内消費向けの流通を認める移行期間を設定している。この移行期間は、レタスについては2005年1月1日に終了する予定であり、ホウレンソウについても2005年1月1日までに再検討されることになっている。WHO(1980年)は、人の硝酸の摂取の制限値として、1週間に1540mgとしている。
日本においては、農林水産省がこの問題に取り組み、野菜における硝酸塩蓄積機構の解明と低減化技術の開発といった研究開発、さらに、硝酸塩が少なくなるような栽培法に取り組む生産者に対して、硝酸塩濃度の測定器械の購入費用の一部を補助する補助事業などを行っている状況である。
野菜中の硝酸イオン濃度を測定する従来法としては破壊計測法が知られている。破壊計測法は、一般に測定対象物を破壊して検査対象物質を抽出するための前処理が必要である。このため計測時間がかかる。また、前処理の手順が煩雑であり、熟練を要する。この手法として、イオンクロマトグラフ、キャピラリ電気泳動法、CATALDO法、反射式光度計RQフレックスを使用する方法等を挙げることができる。
イオンクロマトグラフ、キャピラリ電気泳動法による測定は、測定精度は高いものの、測定コストが高いこと、測定時間がかかることが問題として指摘されている。
CATALDO法は、生葉から硝酸を抽出して薬品で赤色に着色し、赤色を分光計で定量化することにより硝酸濃度を測定する。CATALDO法は、試薬と分光計があれば測定可能であり、測定精度もよく低コストであるが、やはりリアルタイム測定は困難である。反射式光度計RQフレックスも、CATALDO法と同様な手法である。
イオン電極を使用した測定法もある。測定時間は短いが、測定精度は低く、試料の前処理も必要である。
これら破壊計測法のほかに、硝酸濃度の非破壊測定法として中赤外線計測法が提案されている(下記の非特許文献1参照)。具体的には、トマト生葉表面の中赤外線の吸光度を測定することにより硝酸濃度を計測する方法である。この中赤外線計測法では2500nm以上の波長を使用し、かつ1物質の濃度を測定するために1波長のみを使用する。このため、近赤外線分光法に比べると情報量が少なく、野外測定などにより生じる測定外乱が大きくなってしまうという問題がある。
近赤外線分光法に関する従来技術として、下記の特許文献1・2記載の方法が挙げられる。特許文献1には、可視−近赤外線を用いて被検体から情報を得る方法、具体的には、未知の被検体が属する群を判別する方法、未知の被検体を同定する方法、及び被検体における経時変化をリアルタイムでモニターする方法が開示されている。野菜中の硝酸イオン濃度を測定する具体的手法については開示されていない。
特許文献2には、近赤外線分光法を用いた液状試料の分析法および分析装置が開示されている。この方法は、液状試料を分析対象とするため、野菜中の硝酸イオン濃度を測定する際には、前処理として野菜の葉などを粉砕抽出して抽出液を調製する必要がある。つまり、この方法も上述した破壊計測法として位置づけられる。
前処理を施すことなく近赤外線分光法によって直接野菜の葉などから野菜中の硝酸イオン濃度を測定することは従来困難といわれていた。
亀岡孝治、橋本 篤、中西健一、中赤外・蛍光X線による作物栄養状態センシング、「未来型軽労化農業技術確立のための基盤技術開発に関する総合研究」研究成果集第III期、中央農業総合研究センター、pp. 14-15, 2003 特開2002−5827号公報 特開2002−122538号公報
前述のように、従来の野菜中硝酸イオン定量法は、CATALDO法、RQフレックス、その他の方法を用いる場合でもいずれも前処理として葉を粉砕抽出して抽出液を調製し、その中に含まれる硝酸イオン量を測定する方法である。これらの方法は試料処理に時間と手間がかかるため多くの試料を処理するには不向きである。さらに試料を粉砕抽出することから、栽培中の野菜の硝酸イオン量をリアルタイムで測定することは不可能である。
他方、従来技術である中赤外線による計測では単波長しか使用できないので外乱が大きな状況では誤差が生じやすい。
そこで、本発明は、上記の問題点を解決すべく、近赤外線分光法を使用して、野菜中の硝酸イオン濃度を定量的または定性的に、非破壊で、高精度かつ迅速に測定するための新規な方法および装置を提供することをその課題とする。
また、硝酸イオン濃度に限らず、近赤外線分光法を使用して、(1)野菜中のその他の成分(ビタミン、糖、ミネラル等)を分析する方法および装置、さらに、(2)近赤外線分光法を使用して、野菜以外の果物、肉類などの食物に含まれる各種成分を分析する方法および装置を提供することも本発明の課題である。
本発明者は、上記の課題に鑑み鋭意研究を進めた結果、ホウレンソウおよびレタスといった野菜について、これらの生葉を直接測定対象として、近赤外線分光法により野菜中の硝酸イオン濃度を非破壊で高精度かつ迅速に計測することに成功し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、産業上有用な、下記A)〜Q)の発明を包含するものである。
A) 波長400nm〜2500nmの範囲またはその一部範囲の波長光を検査対象の野菜、果物または肉類などの食物に照射し、その反射光、透過光または透過反射光を検出して吸光度スペクトルデータを得た後、その中の測定全波長あるいは特定波長の吸光度を、予め作成した計測モデルに代入することによって当該食物中の成分を定量的または定性的に分析することを特徴とする非破壊検査法。
B) 野菜中の成分を分析することを特徴とする上記A)記載の非破壊検査法。
C) 摂動を与えて野菜中の水分子の吸光度変化を調べることを特徴とする、上記B)記載の非破壊検査法。
D) 波長600nm〜1000nmの範囲またはその一部範囲の波長光を検査対象の野菜に照射して測定を行うことを特徴とする、上記B)又はC)記載の非破壊検査法。
E) 計測モデルは、(1)検出により得られた全波長の吸光スペクトルを格納するデータ行列を特異値分解によりスコアとローディングとに分解し、目的成分の濃度の変動を要約する主要な成分を主成分分析によって抽出するステップと、(2)説明変量をスコア、目的変量を目的成分の濃度とする重回帰分析を適用し、重回帰式を作成するステップとによって得られ、この計測モデルを用いて測定全波長あるいは特定波長の吸光度スペクトルデータから目的成分の濃度を測定することを特徴とする、上記B)〜D)のいずれかに記載の非破壊検査法。
F) 野菜中の硝酸イオン濃度の測定に使用することを特徴とする、上記B)〜E)のいずれかに記載の非破壊検査法。
G) 野菜中の硝酸イオン濃度の定性的評価に使用することを特徴とする、上記B)〜E)のいずれかに記載の非破壊検査法。
H) ホウレンソウ、サラダホウレンソウ、レタス、サニーレタス、サラダ菜、春菊、ターツァイ、チンゲンサイ、キャベツ、ハクサイ、コマツナ、及びミズナからなる群から選ばれる1種又は数種の野菜の成分分析に使用することを特徴とする、上記B)〜G)のいずれかに記載の非破壊検査法。
I) 波長400nm〜2500nmの範囲またはその一部範囲の波長光を検査対象の野菜、果物または肉類などの食物に照射する投光手段と、
投光前又は投光後に分光する分光手段、および、野菜に照射された光の反射光、透過光または透過反射光を検出する検出手段と、
検出により得られた吸光度スペクトルデータの中の測定全波長あるいは特定波長の吸光度を、予め作成した計測モデルに代入することによって当該食物中の成分を定量的または定性的に分析するデータ解析手段とを備えたことを特徴とする非破壊検査装置。
J) さらに、成分分析の結果を表示する表示手段を備えたことを特徴とする、上記I)記載の非破壊検査装置。
K) 波長光を検査対象の野菜に照射し、野菜中の成分を分析することを特徴とする上記I)又はJ)記載の非破壊検査装置。
L) 摂動を与えて野菜中の水分子の吸光度変化を調べることを特徴とする、上記K)記載の非破壊検査装置。
M) 波長600nm〜1000nmの範囲またはその一部範囲の波長光を検査対象の野菜に照射して測定を行うことを特徴とする、上記K)又はL)のいずれかに記載の非破壊検査装置。
N) 計測モデルは、(1)検出により得られた全波長の吸光スペクトルを格納するデータ行列を特異値分解によりスコアとローディングとに分解し、目的成分の濃度の変動を要約する主要な成分を主成分分析によって抽出するステップと、(2)説明変量をスコア、目的変量を目的成分の濃度とする重回帰分析を適用し、重回帰式を作成するステップとによって得られ、この計測モデルを用いて測定全波長あるいは特定波長の吸光度スペクトルデータから目的成分の濃度を測定することを特徴とする、上記K)〜M)のいずれかに記載の非破壊検査装置。
O) 野菜中の硝酸イオン濃度の測定に使用することを特徴とする、上記K)〜N)のいずれかに記載の非破壊検査装置。
P) 野菜中の硝酸イオン濃度の定性的評価に使用することを特徴とする、上記K)〜N)のいずれかに記載の非破壊検査装置。
Q) ホウレンソウ、サラダホウレンソウ、レタス、サニーレタス、サラダ菜、春菊、ターツァイ、チンゲンサイ、キャベツ、ハクサイ、コマツナ、及びミズナからなる群から選ばれる1種又は数種の野菜の成分分析に使用することを特徴とする、上記K)〜P)のいずれかに記載の非破壊検査装置。
本発明の非破壊検査方法、並びに非破壊検査装置は、以下のような特徴・利点を有し、非破壊状態で、野菜の硝酸イオン濃度、その他野菜中の成分を定量分析および定性分析することができる。
(a) 測定対象を粉砕抽出する必要がないため、煩雑な前処理が不要である。これにより、多くの試料の硝酸イオン濃度(その他野菜成分)の測定が容易となる。
(b) 一検体あたりの測定時間を数分程度に短縮できるため、多くの試料を迅速に処理することができる。
(c) 前処理が不要なため、栽培中の野菜の硝酸イオン濃度などをリアルタイムで測定することが可能である。したがって、例えば生産者が生産現場で測定することも可能になる。
(d) 複数の波長をもとに分析するため、情報量が多く、外乱の影響を排除できる。したがって、ロバスト性の高い、より高い精度での測定が可能である。
(e) 持ち運びできるように装置構成を単純化できるし、生産者等が容易に取り扱えるよう操作も単純化できる。また、コストの低減化も実現できる。
また同様に、近赤外線分光法を用いて、果物、肉類といった野菜以外の食物に含まれる各種成分を測定することが可能である。
本発明の更なる特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で一層明白になるであろう。
本実施形態に係る装置の概略的構成を示すブロック図である。 上記装置において採用可能な前分光および後分光の2つの分光方式を説明する図である。 上記装置において採用可能な反射光検出、透過反射光検出、および透過光検出の3つの検出方式を説明する図である。 水の吸光特性を示すグラフである。 ホウレンソウの分析結果をまとめたグラフであり、硝酸濃度の実測値(横軸)と推定値(縦軸)とが比較して示される。 ホウレンソウの分析結果をまとめたグラフであり、定量モデルとして作成した重回帰式の全偏回帰係数が示される。横軸が波長を、縦軸が係数の値を示す。 ホウレンソウおよびレタスの分析結果をまとめたグラフであり、硝酸濃度の実測値(横軸)と推定値(縦軸)とが比較して示される。 ホウレンソウおよびレタスの分析結果をまとめたグラフであり、定量モデルとして作成した重回帰式の全偏回帰係数が示される。横軸が波長を、縦軸が係数の値を示す。 本発明の実施例における硝酸イオン濃度算出手順の概要を説明する図である。 本発明の実施例における検量線作成手順を説明する図である。 (a)(b)は、多変量解析における3次元の特徴量空間と主成分の方向を説明する図である。 多変量解析におけるローディングとスコアを説明する図である。 本発明の実施例における吸光度スペクトルの測定法について説明する図である。 本発明の実施例における「2品種統合0,90度統合」の1回目データのみ使用して得られた回帰式の推定値と実測値とを比較して示すグラフである。 本発明の実施例における「2品種統合0,90度統合」の1回目データのみ使用して得られた回帰式の推定値と実測値とを比較して示すグラフである。 本発明の実施例における「2品種統合0,90度統合」の1回目データのみ使用して得られた回帰式において、各波長の吸光度を説明変量とした場合の偏回帰係数を示すグラフである。
以下では、本発明の実施の一形態として、野菜中の硝酸イオン濃度を非破壊で計測する装置(以下、「本装置」という。)を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。
〔1〕本装置による測定と装置構成
[1. 1]測定原理
本装置の測定原理は、本発明の方法を採用し、即ち、(a)波長400nm〜2500nmの範囲またはその一部範囲の波長光を検査対象の野菜に照射し、(b)その反射光、透過光または透過反射光を検出して吸光度スペクトルデータを得た後、(c)その中の測定全波長あるいは特定波長の吸光度を、予め作成した計測モデルに代入することによって当該野菜中の成分(本装置においては硝酸イオン濃度)を定量的または定性的に分析する。
本装置の第1の特徴点は、測定対象の野菜を非破壊で測定する点にあり、野菜の生葉表面または裏面、あるいはその他の器官・組織に直接光(可視光及び/又は近赤外線)を照射して測定する。野菜に照射する波長の範囲は、400nm〜2500nmの範囲またはその一部の範囲(例えば600〜2500nm)である。この波長の範囲は、計測モデルを作成した後、硝酸イオン濃度を算出するために必要な波長光を含む、1又は複数の波長域として設定することができる。後述の実施例2では、測定波長域を600〜1000nmの範囲に設定して硝酸イオン濃度を測定することに成功した。
光源としては、ハロゲンランプ等を使用できるが、特に限定されるものではない。光源から発せられた光は、直接またはファイバープローブ等の投光手段を介して野菜に照射される。後述のように、野菜に照射する前に分光器によって分光する前分光方式を採用してもよいし、照射後に分光する後分光方式を採用してもよい(図2参照)。前分光方式の場合は、光源からの光をプリズムで一度に同時に分光する方法と、回折格子のスリット間隔を変化させることにより連続的に波長を変化させる方法とがある。後者の方法の場合には、光源からの光を所定の波長幅で分解することによって、連続的に波長を変化させた連続波長光が野菜に照射される。後述の実施例では、400〜2500nmの範囲の波長光を波長分解能2nmで分解し、波長を2nmずつ連続的に変化させた光を野菜に照射している。
野菜に照射された光の反射光、透過光または透過反射光が検出器により検出され、生の吸光度スペクトルデータが得られる。生の吸光度スペクトルデータをそのまま使用して硝酸イオン濃度を算出してもよいが、得られたスペクトル中のピークを分光学的手法あるいは多変量解析手法により要素ピークに分解するなどのデータ変換処理を行い、変換後の吸光度スペクトルデータを使用して硝酸イオン濃度を算出することが好ましい。分光学的手法としては、例えば、2次微分処理やフーリエ変換があり、多変量解析手法としてはウェブレット変換、ニューラルネットワーク法等が例示されるが、特に限定されるものではない。
このようにして得られた吸光度スペクトルデータの中の特定波長(または測定全波長)の吸光度を予め作成した計測モデルに代入することによって、野菜中の硝酸イオン濃度を算出する。つまり、測定に先立って計測モデル(検量線)を作成しておく必要がある。
計測モデルは多変量解析によって作成可能である。例えば、全波長の吸光スペクトルを格納するデータ行列を特異値分解によりスコアとローディングとに分解し、硝酸濃度の変動を要約する主成分を抽出する(主成分分析)。これにより、共線性(=説明変量間の相関が高いこと)の少ない独立な成分を重回帰分析に使用できるようになる。そして説明変量をスコア、目的変量を硝酸濃度とする重回帰分析を適用する。これにより、測定全波長あるいは特定波長の吸光スペクトルから硝酸濃度を推定するモデルを作成できる。これら一連の作業(多変量解析)は主成分回帰法(PCR: Principal Component Regression)あるいはPLS(Partial Least Squares)回帰法として確立されている(参考文献:尾崎幸洋、宇田明史、赤井俊男「化学者のための多変量解析−ケモメトリックス入門」、講談社、2002年)。
なお、上述の計測モデルの作成は、野菜内の水分子の要素ピークが、水分子と他の構成成分(この場合は硝酸イオン)との相互作用(水素結合状態の変化)によってシフトし、またはその吸光度が変化するとの知見に基づくものである(特開2002−5827号公報参照)。
また本測定方法においては、摂動(perturbation)を与えて野菜中の水分子の吸光度変化を調べるようになっている。つまり、光の繰り返し照射や光路長を変更して複数回の測定という摂動を与えて試料検体のスペクトル測定を行うようになっている。ここで、「摂動」とは、ある条件について複数の種類・条件を設定し測定することで試料の吸光度変化をもたらし、互いに異なる複数のスペクトルデータを取得することをいう。条件としては、光の繰り返し照射、照射時間の延長、電磁力付加、光路長変更、光路変更、温度、圧力、機械的振動、その他その条件の変更によって物理的または化学的な変化をもたらすもののいずれか、または、それらの組み合わせを挙げることができる。光の繰り返し照射は、連続して又は一定の時間間隔で光を繰り返し照射して複数回の測定という摂動を与えて試料検体のスペクトル測定を行う方法である。例えば、光を3回連続照射することにより、試料の吸光度が微妙に変化し(揺らぎ)、互いに異なる複数のスペクトルデータが得られる。これらのスペクトルデータをPCR法等の多変量解析に用いることにより、解析精度を向上することができ、高精度な濃度測定が可能になる。
一般に、摂動を与えながら試料検体の各成分に応じてシフトする所定の水分子の応答の変化を測定して分光分析を行い多変量解析を行うことによって、スペクトルのグラフからは直接判別できない応答の変化を捉えることができ、従来の方法では判別困難なものを判別可能とし、成分特性の高精度な測定を可能とし、さらに超低濃度成分の検出を可能とし、成分の特性をリアルタイムに測定可能とする精度の高いモデルをリアルタイムに得ることができる(国際出願番号PCT/JP2004/16680号参照)。
本装置においては、検査対象の野菜に対して、3回連続光の繰り返し照射を行うことで摂動を与えて水分子の動きをみる構成になっている。摂動として、光を3回繰り返し照射することによって、1回目、2回目、3回目それぞれ水の吸収に違う変化が起こる。繰り返し光を照射するのは回数が多ければ精度が上がるわけではなく、測定するものによって好ましい回数は変わる。検討の結果、野菜の硝酸イオン濃度測定の場合は3回が好ましい回数と判断された。
検査対象の野菜の種類、成分によって好ましい摂動の条件は異なり、また、測定に使用する光学構成、測定場所など他の測定条件によっても、好ましい摂動の条件は異なるものと考えられる。したがって、検査対象の野菜の種類、成分に応じて、その検査に適した摂動の条件および他の測定条件を設定することが好ましい。
上記のように、野菜の硝酸イオン濃度測定においては、光を3回照射することにより、光と水の相互作用で硝酸イオンの周りの水分子の変化の情報を多く得ることができ、測定の精度を上げることができる。勿論、野菜の硝酸イオン濃度測定において摂動の条件はこれに限定されるものではなく、他の適した摂動条件を設定して測定してもかまわない。なお、通常スペクトルを測定するときは、光を複数回照射するが、これは平均値を出すことが目的であり、ここでいう「摂動」とは異なる。
計測モデルは、測定対象の野菜の種類に応じて複数作成しておき、それぞれ異なるものを使用してもよいし、複数種類の野菜に対応する計測モデルを作成してもよい。また、本装置は硝酸イオン濃度測定用であるが、野菜中の他の成分(ビタミン、糖、ミネラル等)を測定する場合には、その成分分析に使用する計測モデルを作成しておくとよい。
計測モデルは、要求される精度に応じて適宜変更してもよい。例えば、高精度な濃度値をppm単位で求める定量分析の場合は定量モデルを作成・使用するとよい。他方、濃度値に閾値を設けてそれよりも高いか低いかを判定する定性分析の場合は定性モデルを作成・使用するとよい。
作成した計測モデルはファイルとして保存しておき、各モデルは適宜更新されることが好ましい。本装置はこのように複数の計測モデルを作成しておき、測定対象、用途等に応じて2つ以上のモデルを切り替える構成としてもよい。本装置を汎用機とする場合はこの構成が好ましい。他方、専用機として構成を単純化したものとしてもよい。
本装置は、好ましくは、ホウレンソウ(土耕および水耕)、サラダホウレンソウ、レタス、サニーレタス、サラダ菜、春菊、ターツァイ、チンゲンサイ、キャベツ、ハクサイ、コマツナ、及びミズナからなる群から選ばれる1種又は数種の野菜の成分分析に使用される。これら野菜の硝酸塩含有量は比較的多いといわれている。勿論、これら以外の野菜の成分分析に使用してもよい。
本装置の測定システムの構成としては、図1に示すように、プローブ(投光部)1、分光・検出部2、データ解析部3および結果表示部4の4つの要素を備えて構成することができる。以下では、各要素について説明する。
[1. 2]プローブ(投光手段)
プローブ1は、ハロゲンランプ等の光源からの光(波長400nm〜2500nmの全範囲またはその一部範囲)を測定対象である野菜に導く機能を有する。例えばファイバープローブとし、柔軟な光ファイバーを介して測定対象(野菜の生葉など)に投光する構成が挙げられる。一般に近赤外線分光器のプローブは安価に作製することができ、低コストである。
なお、光源から発せられた光を直接測定対象である野菜に投光する構成としてもよいが、その場合プローブは不要であり、光源が投光手段として機能する。前述のように、計測モデルが作成されれば、当該計測モデルによる濃度測定に必要な波長光が決定される。本装置は、こうして決定された1又は複数の波長域(例えば600〜1000nm)を試料に照射する構成とすることで装置構成をより単純化することができる。また前述のように、本装置は、摂動を与えながらスペクトル測定を行うため、摂動付与に必要な構成を適宜備えることが好ましい。
[1. 3]分光・検出部(分光手段および検出手段)
本装置は、測定システムとして近赤外線分光器の構成を有する。近赤外線分光器は一般に、光を測定対象物に照射し、この対象物からの反射光や透過光あるいは透過反射光を検出部で検出する。さらに、検出された光について波長別に入射光に対する吸光度が測定される。
分光方式には前分光と後分光とがある(図2参照)。前分光は、測定対象物に投光する前に分光する。後分光は、測定対象物からの光を検出し分光する。本装置の分光・検出部2は、前分光、後分光いずれの分光方式を採用するものであってもよい。
検出方法には3種類あり、反射光検出、透過光検出および透過反射光検出がある(図3参照)。同図に示すように、反射光検出および透過光検出は、それぞれ、測定対象物からの反射光と透過光とを検出器によって検出する。透過反射光検出は、入射光が測定対象物内に入射した屈折光が物体内で反射し、再び物体外に放射された光を検出する。本装置の分光・検出部2は、反射光検出、透過光検出および透過反射光検出のいずれの検出方式を採用するものであってもよい。
分光・検出部2内の検出器は、例えば半導体素子であるCCD(Charge Coupled Device)などによって構成することができるが、勿論これに限定されるものではなく、他の受光素子を使用してもよい。分光器についても公知の手段によって構成することができる。
[1. 4]データ解析部(データ解析手段)
分光・検出部2から波長別の吸光度、即ち吸光度スペクトルデータが得られる。データ解析部3は、この吸光度スペクトルデータをもとに、前述のように予め作成した計測モデルを使用して、検査対象である野菜中の成分(例えば硝酸イオン濃度)を定量的に測定し、あるいは、成分分析を通じて当該野菜の品質を定性的に評価する。使用する計測モデルは、定量的測定を行うか、あるいは定性的評価を行うかに応じて、異なるものを使用してもよい。
吸光度スペクトルは、検査対象である野菜中の成分に応じて特有の性質を有している。例えば野菜中の硝酸イオン濃度の高低によって吸光度が変化する波長が複数存在する。計測モデルは、これを利用して前述のように、主成分重回帰法などの多変量解析(例えばPLS回帰法)によって測定前に作成しておく。
本装置を専用機として構成する場合には、上記計測モデルは、測定対象の野菜に応じて、また、測定物質に応じて作成するとよい。例えば、レタスの硝酸イオン濃度を測定する場合は、そのための定量モデルの検量線を作成するとよい。また、ホウレンソウの硝酸イオン濃度を測定する場合は、別途そのための定量モデルの検量線を作成するとよい。
データ解析部3は、スペクトルデータ、多変量解析用プログラム、計測モデルなどの各種データを記憶する記憶部と、これらのデータおよびプログラムに基づき演算処理を行う演算処理部とによって構成することができ、例えばICチップなどによって実現可能である。したがって、本装置を携帯型とするため小型化することも容易である。上記の計測モデルも、ICチップなどの記憶部に書き込まれる。
[1. 5]結果表示部(表示手段)
結果表示部4は、データ解析部3における解析結果を表示する。具体的には、計測モデルによる計算の結果得られた野菜中の硝酸イオン濃度値をppmで表示する。あるいは、定性モデルの場合は、計算結果に基づき「濃度低」「普通」「濃度高」の3段階程度に表示する構成としてもよい。つまり、測定精度や定量、定性モデルに応じて表示を切り替えることができる。
なお、本装置を携帯型とする場合は、結果表示部4を液晶等のフラットディスプレイとすることが好ましい。
〔2〕本装置の変更態様
本装置の各要素は、使用態様、目的などに応じて適宜変更することが望ましい。例えば、生産者が屋外の圃場において測定する場合は、装置をできるだけ小型化し、自然光が分光・検出部2に入り込まぬよう遮光した構成を設けることが好ましい。その他、携帯・設置用、定量・定性用、硝酸濃度測定用・他の成分測定用など、各用途に応じて、本装置の各要素に適切な機能を持たせるとよい。
例えば、測定対象と計測用途によって計測モデルに要求される測定精度が異なるので、ppm単位までの厳密な測定用途には定量モデルを使用し、閾値以上あるいは未満などの測定用途には定性モデルを使用するとよい。
また、品種を限定すると精度が高くなる。後述の実施例に示すように、複数品種の測定に1つのモデルで精度良く測定することも可能であるが、1品種に限定すればより精度良く測定することが可能となる。
後述の実施例では、レタスとホウレンソウについて定量モデルの検量線を作成したが、同様の方法で、硝酸イオン濃度が高いとされているキャベツ、ハクサイ、チンゲンサイ等についての検量線を作成することが可能である。
測定対象物質も、硝酸塩以外に、野菜中のビタミン、糖、ミネラルなど各成分の含有濃度の測定に使用してもよい。さらに、検査対象も野菜に限らず、果物、肉類といった野菜以外の食物に含まれる各種成分の測定に使用してもよい。
なお、計測モデル(検量線)は測定前に予め作成しておくことが望ましいが、測定時にスペクトルデータを検量線作成用と測定用とに2分割し、検量線作成用データをもとに得られた計測モデルを使用して測定を行ってもよい。この場合は、測定時に計測モデルを作成することになる。この手法では教師データが無くてもモデルを作成できる。定量及び定性モデルの両方に対応可能である。
〔3〕従来技術と比較した本発明の相違点(優位性)
[3. 1]破壊計測法との違い
破壊計測法は、一般に測定対象物を破壊して検出対象物質を抽出するための前処理が必要である。このため計測時間がかかる。また、前処理の手順は煩雑であり、熟練を要する。
これに対して、本発明の近赤外線分光法による計測では非接触かつ非破壊で計測が可能でリアルタイムでの計測が可能である。このため、野菜にストレスを与えることなく硝酸イオン濃度計測が可能である。また熟練の必要がない。測定精度は破壊計測法と同等であり、ppm単位で測定が可能である。
また、検査対象物質などを限定することにより、本装置の構成を単純化し、安価にすることができる。
[3. 2]中赤外線計測法との違い
中赤外線計測法も非接触計測法であるが、近赤外線分光法との違いは使用する波長の数と計測外乱となる水の影響である。
中赤外線計測法では2500nm以上の波長を使用し、かつ1物質の濃度を測定するために1波長のみを使用する。これに対して、本発明の近赤外線分光法による計測では400nmから2500nmまでに含まれる複数の波長を使用する。このため情報量が多くなる。これにより野外測定などにより生じる測定外乱に強くなり、ロバスト性の高い測定が可能になる。
図4に、水に関する波長と吸光度との関係概要を示す。中赤外線は近赤外線よりも水の吸光度が大きい。このため測定対象物に厚い水膜があると水の吸光が外乱となり測定対象物質の正確な吸光度が得られない。水の吸光帯を避けるために測定に有効な波長が限られる。一方、近赤外線では水の吸光度そのものを利用するので水の吸光が外乱にならない。このため全近赤外線帯域を計測に使用することができる。
このほか、中赤外線のプローブは高価になる点が異なる。近赤外線による測定の方が低コストになる。
〔4〕計測モデル(検量線)作成の具体例
計測モデル(検量線)の作成方法は前述したとおりであるが、以下では、後述の実施例(実施例2)において実際に用いた検量線作成手順について説明する。
[4. 1]硝酸イオン濃度算出方法の概要
実施例2では、測定波長域を600〜1000nmの範囲に設定して濃度算出を行った。濃度算出までの手順概要を図9に示す。同図に示すように、まず吸光スペクトルの測定により多変量データが得られる。即ち600nmから1000nmまでの波長範囲で使用されたm個(m = 401)の波長における吸光度が1サンプル分格納された1行×m列のベクトルデータxである。これを後記[4. 2. 2]で説明する前処理を施した後にあらかじめ求めておいた検量線の式に代入すると硝酸イオン濃度yを次式のように求めることができる。
y = xB (1)
B(m行×1列)の要素は各波長に対応する吸光度にかける偏回帰係数である。(1)式を求める手順がすなわち計測モデル(検量線)の作成手順となる。
[4. 2]検量線式の求め方
実施例2において用いた検量線式導出の手順概要を図10に示す。以下、この手順にしたがって説明する。
[4. 2. 1]吸光スペクトルの測定
最初のステップは分光計による吸光スペクトルの測定である。摂動を利用するため各試料には3回連続で近赤外線を照射した。従って同じ試料から3つの吸光スペクトルが得られる。同じ試料に同じ光を照射したら同じスペクトルが得られると考えられるが、実際には特定の波長で吸光度の変化が見られる。なお、摂動を誘発する刺激は光だけに限られない。電気(電流や電位)、温度など多くの刺激が存在する。
[4. 2. 2]吸光スペクトルデータの前処理
吸光スペクトルの測定により多変量データが得られる。即ち600nmから1000nmまでの波長範囲で使用されたm個の波長に関する吸光度がnサンプル分格納されたn行×m列の行列データXである。このデータはそのまま多変量解析に用いられることは希で、一般には前処理が施される。例えば各波長別に(各列毎に)標準化変換することや、ベースライン(ゼロ点)移動の影響を回避するため中心化処理や1次微分あるいは2次微分等が行われる。これらの前処理は測定対象の性質や測定の目的に応じて適宜選択される。今回は中心化処理を行った。すなわちサンプル平均をサンプル値から差し引いた値を使用した。
[4. 2. 3]主成分回帰分析(PCR)
これ以降は多変量解析である。多変量解析では一般に主成分分析と重回帰分析を共用した主成分回帰分析法(PCR)やPLS(Partial Least Squares)法を使用する。今回はPCR法を用いた。なお、各波長の吸光度は目的変量を求める基本量であり、説明変量と呼ばれる。
PCR法ではまず初めに多変量データXを特異値分解し、次式のように3つの行列に分解する。
X = UΔVT = TVT (2)
ここでT(n行×m列)をスコア、V(m行×m列)をローディングと呼ぶ。Tは転置であることを示す。
この操作は主成分分析の常套手段である。主成分分析は元の多変量データ変動を主要な成分に分解・要約し、特徴を明らかにするための手法である。本例の場合はスペクトルデータXを硝酸イオン濃度に関する主要な変動に分解する。多変量データXの列数分だけ主成分が求められる。つまりm主成分(波長数だけ)求められる。例えばm=3、即ち3変量しかない場合を想定し、測定値が3変量空間で図11(a)のように分布しているとする。
本例の場合であれば3波長の吸光度のみを使用していることに相当し、グラフ内の1点は1試料の吸光度測定値を示している。分布は楕円体の中に含まれているとすると主成分の方向は同図(b)のようにお互いに直交する方向a,b,cになる。a,b,cの順に変動の幅が狭くなる。大きな変動を表す順に第1主成分、第2主成分、第3主成分と呼ぶ。このように元のデータ変動をお互いに独立(直交すること)な3成分に分解したことになる。
Vの第i列は第i主成分の方向余弦を成分に持つベクトルになっている。このベクトル(方向余弦ベクトルと呼ぶことにする)の長さは1である。いま第1主成分方向(a方向)を示す直線を平行移動して座標原点を通るようにすると図12に示すようになる。同図には、第1主成分の方向余弦ベクトルαが示されている。このベクトルの各座標値がVの第1列に格納されている。
各主成分がデータの変動をどれだけ反映しているかを示す指標がスコアである。Tの第i列は第i主成分のnサンプル分のスコアが格納されている。例えばnサンプルのうちの第jサンプルの第1主成分スコアが図12に示されている。サンプルから主成分軸におろした垂線が主成分軸と交差する点と原点との距離がスコアである。これはαベクトルの長さが1であるから、αと第jサンプルの位置ベクトルpjの内積で求めることができる。従って、αとpjの向きが等しい時に最大値を取る。
一般に全主成分を使用しなくても主要な変動を捕らえることができる。そこで第l成分までで主要な変動を知ることができたとし、Tのうち第l列までを取り出した行列を新たにS(n行×l列)とする。そこで次のようなモデルで目的変量ベクトルY(硝酸イオン濃度が格納されたベクトル)を推定することにする。
Y = Sb (3)
偏回帰係数ベクトルb(l行×1列)を最小二乗法(統計学で常用されている手法)で求める。ここでVについて次の正規直交と呼ぶ性質がある。
VVT = VTV = I (4)
Iは単位行列(対角要素が1で他要素がゼロの行列)を表す。そこで(2)式の両辺に右からVをかけると次式のようになる。
XV = TVTV = T (5)
つまり(2)式の特異値分解によってVを求めておけばスコアTは(5)式によりいつでも求めることができる。次にVから第l列までを取りだした行列をW(m行×l列)とする。Tのうち第l列までを取り出した上述の行列Sに関して次式が成り立つ。
S = XW (6)
(6)式を(3)式に代入すると次式を得る。
Y = Sb = XWb = XB, (B = Wb) (7)
B(m行×1列)の要素は各波長の吸光度にかける偏回帰係数になっている(例えば、図8参照)。Bが求められれば新たに未知な試料のスペクトルデータx(1行×m列)を測定し、これに前記[4. 2. 2]で説明した前処理を施してxを求めるとその試料の硝酸イオン濃度yを次式のように求めることができる。
y = xB (8)
以上でPCRによる検量線式の導出が終了する。
図11ではデータの分布が楕円体に近くなり、主成分の方向が明確になりやすかった。しかし、これが球状に分布するとどの主成分も同様に元データの変動を表すことになる。その場合は(8)式の精度が低下する。
摂動はデータの分布に方向性を付加する役割がある。一般に破壊して条件を整えた試料を近赤外線分光法で測定する場合は外乱も少なく理想的である。このため特別な手法によらずとも(8)式の精度は良くなる。しかし、本例のように直接生育している植物葉の表面や株の分光スペクトルを測定する場合は外乱も多く特徴のあるデータ分布を得にくい。
そこで外乱の影響を受ける状況であっても、摂動により特定の波長では吸光度の特徴的な変化を見せる。これは即ちデータの分布に図11のような方向付けをすることに他ならない。
[4. 2. 4]採用する主成分数
また、スペクトルデータの主要な変動を捕らえているのは第何主成分までかという問題も重要である。図11のデータの分布が球形であれば主成分得点に差がつかず、主成分の選択基準が曖昧となる。ここでも摂動が役立つ。摂動を使用したとしても主成分選択の手法が幾つかあり、測定の目的に応じて手法を選択する必要がある。主成分の数を過剰に多く取ると推定誤差が大きくなる。今回は主成分の数を最大で30に限定した。また、サンプル数nが小さな場合はサンプル数が偏回帰係数の数よりも小さくなり、回帰計算ができなくなるため、そのような場合はn-2主成分までを使用した。採用する主成分は具体的には次のように求めた。
クロスバリデーション:第1主成分(スコア行列の第1列)のみの使用から初めて解析対象となった主成分数まで1主成分ずつを説明変量として加えて次に説明するLeave in out法を適用した。主成分を加える毎に残差2乗和を求め、全結果のうち残差2乗和を最小とする主成分までを最終的に使用する主成分数とした。
Leave in out法:計算対象となる主成分を決め、その主成分を含むスコアデータのうち1行分を除いてトレーニングセットとし、スコアを説明変量、硝酸イオン濃度を目的変量とする重回帰式を求める。この回帰式へ除外した1行分、すなわちテストセットを代入して実測値と推定値の残差2乗値を求める。トレーニングセットとテストセットの入れ替えをn行分繰り返して残差2乗値n個分の合計を求める。次に計算対象とする主成分を1つ増やして同様な手順で残差2乗値n個分の合計を求める。この操作を解析対象となった主成分最大数(最大で30あるいはn-2)に達するまで繰り返す。この結果、残差2乗和を最小とする時の主成分数を最適な主成分数として採用した。
[4. 2. 5]重回帰式の作成
主成分数を決定したらスコア行列で該当する列のみ切りだして重回帰分析を行う。最終的に偏回帰係数、標準偏回帰係数、回帰式の分散分析、寄与率(決定係数)、回帰係数の検定結果並びに回帰推定値と実測値のデータが出力される。回帰推定値の95%予測区間も求めた。これは今回測定した吸光スペクトルと同様な性質を有する新規の観測値を回帰式に代入した場合に硝酸イオン濃度推定値が95%の確率で収められると予想される区間である。
[4. 2. 6]回帰ベクトルの作成
(7)式に示したようにローディング行列と偏回帰係数ベクトルの積によって得られるベクトルBは、(8)式のように各波長の吸光度ベクトルとの内積により濃度推定値を与える回帰ベクトルとなっており、これを計算して出力した。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、以下の測定方法により、ホウレンソウおよびレタスの硝酸イオン濃度を測定した。
〔測定方法〕
近赤外線分光装置(製品名「Foss-NIR Systems NIR SYSTEMS 6500」)を使用して、400〜2500nmの吸光スペクトルを測定した。波長分解能は2nmであり、反射光を測定した。
対象品種は、ホウレンソウ(土耕(硝酸濃度低)、水耕(硝酸濃度高))およびレタスであり、測定部位は、生葉の表面および裏面である。
検量線(計測モデル)作成のための破壊計測法はCATALDO法を使用し、検量線算出法としてはPLS回帰法を用いた。
〔分析結果および検量線算出結果〕
ホウレンソウ(土耕および水耕)についての分析結果を図5及び図6にまとめた。図5は実測値(横軸)と推定値(縦軸)の比較を示している。図6は定量モデルとして作成した重回帰式の全偏回帰係数を示している。横軸が波長を、縦軸が係数の値を示す。使用した波長は782nmから1978nmで、波長の分解能は2nmである。従って使用波長数は597となる。個々の波長に対応する偏回帰係数が存在する。これはPLS回帰法を使用して求めた。図5の相関係数(rCal)を見ても判るように非常に高い有意性が示されている。クロスバリデーションを行った場合でも相関係数(rVal)は非常に大きな値となっている。なお、SEC (Standard Error of Calibration) は検量の標準誤差を、SEV (Standard Error of cross-Validation) はクロスバリデーションの標準誤差を表す。いずれも実測値と推定値との偏差の程度を表している。Factors は使用した主成分の数を表す。
この検量線による測定範囲は、硝酸濃度最小値:118 (ppm)、最大濃度値:5346 (ppm)であった。
他方、ホウレンソウにレタスを加えた場合の分析結果を図7及び図8にまとめた。図7は実測値(横軸)と推定値(縦軸)の比較を示している。図8は定量モデルとして作成した重回帰式の全偏回帰係数を示している。横軸が波長を、縦軸が係数の値を示す。使用した波長は782nmから1978nmで、波長の分解能は2nmである。従って使用波長数は597となる。個々の波長に対応する偏回帰係数が存在する。これはPLS回帰法を使用して求めた。図7の相関係数(rCal)を見ても判るように非常に高い有意性が示されている。クロスバリデーションを行った場合でも相関係数(rVal)は非常に大きな値となっている。ホウレンソウのみの場合と比べると主成分の数が増加している。これは品種の増加による変動の増加に対応するため、精度のよいモデル作成のためにはより多くの情報が必要になることを示している。
この検量線による測定範囲は、硝酸濃度最小値:118 (ppm)、最大濃度値:5346 (ppm)であった。
このように精度の良い定量モデルが得られた。複数品種に1モデルを対応させると若干精度が低くなるが、実用上問題ないレベルと考えられる。
[実施例2]
本実施例では、実施例1と異なり、測定対象を葉単位ではなく株単位とした。また、近赤外線分光計を定置式から可搬式に変更し、植物が栽培されている地点における測定を想定した。さらに測定波長域を600から1000nmまでに狭め、より実用的な測定条件へ変更した。なお、本実施例では後分光方式の装置を用いた。
〔材料及び方法〕
教師植物はレタス(岡山サラダ菜Lactuca sativa L., cv. "Okayama Saradana")およびホウレンソウ(オーライ,Spinacia oleracea L., cv. "Orai")である。両方共に神戸大学農学部グリーンハウス内で栽培した。
本実施例で使用した近赤外線分光計の仕様を下記表1に示す。
Figure 0004749330
投光及び受光プローブは特製の光ファイバープローブを使用した。投光部と受光部は独立に位置を変えることができる。
本実施例においては、株全体の硝酸イオン濃度を測定するため、照射された光が株を貫通し、それらの拡散光を測定する必要がある。即ち株全体の平均的な分光特性を測定しなければならない。以上の性質を満たす検量線(分光分布と硝酸イオン濃度の普遍的な関係を表す数式)を求めるために受光プローブの位置を変えて吸光スペクトルを測定した。これら複数のスペクトルから測定株の硝酸イオン濃度を推定する検量線をPCR(Principal Component Regression)法によって求めた。本実施例の吸光スペクトルの測定法について、図13に示す。
投光プローブは平面図に示すように供試植物の中央部に配置した。側面図に示すように受光プローブは投光プローブと平行におく場合(0度)と直角(90度)に配置する場合の2通りを考慮した。プローブは取り付けステイで固定されている。0度の場合は投光及び受光プローブの配置間隔を4cmに固定した。この距離は、照射光が受光プローブに直接入射しないよう一定の距離を保つ必要があること、及び、拡散光が受光プローブに届くような距離に設定すること、を考慮したものである。90度の場合では受光プローブ高さは供試植物の高さの2分の1程度にした。投光、受光の両プローブの投・受光面から植物までの距離は供試植物にほぼ接触する程度であり、0mmとなる。取り付けステイはプローブの位置を植物に合わせるように調節することができる。測定はなるべく外乱光が入らないように人工気象機内で行った。人工気象器が接地されている部屋の照明を消した。部屋は西面に窓があり、照明を消しても薄明かりがあるが、人工気象機内ではほぼ暗室のような状態になった。
摂動を利用するために各測定点について3回連続で吸光スペクトルを測定した。また、植物体を平面内で0度から360度まで90度おきに回転させて測定した。従って、1株の測定点数は2(受光プローブの位置0度,90度)×3(摂動のため)×4(水平面内の回転)=24点である。測定株数はレタス、ホウレンソウ共に4株である。
〔結果及び考察〕
[1]受光プローブの角度を区別した場合の結果
受光プローブは投光プローブに対して0度及び90度に配置した。それぞれの場合で得られた吸光スペクトルを分けて扱った。また、使用した吸光スペクトルは5つのカテゴリーに分けてある。即ち、3回分のデータを全て使用した場合、3回分の吸光スペクトル平均値を使用した場合、1回目の吸光スペクトルのみを使用した場合、2回目のスペクトルのみをした場合、および3回目のスペクトルのみを使用した場合である。全解析結果を表2に示す。
Figure 0004749330
3回分のデータ全てを使用した場合に1%有意となり統計的な有意性は高くなるが,寄与率は低くなり実用的ではない。有意性が高くなるのはサンプル数が多いためである。また、3回平均を使用するよりも照射回数別の吸光度を使用した方が寄与率は高くなった。以上の結果、光の3回繰り返し照射による摂動の効果が認められた。寄与率については、レタス、ホウレンソウ、2品種統合の各場合に分けて以下考察する。
[1-1]レタス
0度の場合は照射回数が増加すると共に重回帰式の寄与率が増加し、摂動の効果が見られた。3回平均の場合よりも寄与率は大きくなった。90度では2回目までは増加するものの3回目で減少している。3回平均の場合よりも寄与率は大きくなった。
[1-2]ホウレンソウ
0度では2回目で減少し、3回目で増加している。3回平均の場合よりも寄与率は大きくなった。90度では照射回数の増加と共に寄与率が減少した。3回目のみのデータを使用した場合は3回平均の場合よりも寄与率が小さくなった。ホウレンソウでは1回目のみのデータを使用した場合に寄与率が最大になった。
[1-3]2品種統合
レタスとホウレンソウの吸光スペクトルを区別せずに1つのデータセットとして使用した場合に、0度では2回目で減少し、3回目で増加した。3回平均の場合よりも2回目のみのデータを使用した場合の方が寄与率は小さくなった。90度では照射回数の増加と共に寄与率が減少した。1回目のみのデータを使用した場合に限って3回平均よりも寄与率が大きくなった。
[2]プローブの角度を区別しない場合の結果
プローブの角度を区別せずに1つのデータセットとして使用した場合の結果を表3に示す。
Figure 0004749330
照射回数の増加に伴い、レタスでは寄与率が減少し、ホウレンソウでは増加した。両品種を統合した場合は照射回数の増加と共に寄与率が減少した。この場合、回帰式は全て1%有意であった。また、3回分を全て使用した場合はそれ以外の場合に比べて寄与率は小さくなるが、有意性は高くなった。
レタスでは3回平均の場合に寄与率が最大になった。ホウレンソウでは3回目のみのデータを使用した場合に3回平均よりも寄与率が大きくなった。2品種統合の場合は3回平均の寄与率は3回目のみのデータを使用した場合よりも寄与率が小さくなった。いずれの場合も3回分のデータを使用した場合を除き、レタス、ホウレンソウ、2品種統合の各カテゴリーについて照射回数や3回平均で得られた寄与率に大きな差はなかった。
以上の結果をまとめると、以下のとおりである。
(1)プローブの角度を区別した場合、レタスでは照射回数と共に寄与率が増加し、ホウレンソウと2品種統合の場合は逆に減少する傾向が見られた。
(2)プローブの角度を区別しない場合は、レタスと2品種統合では照射回数と共に寄与率が減少し、ホウレンソウでは逆に増加した。
(3)3回分のデータを全て使用する場合を除けば照射回数別のデータを使用した各場合並びに3回平均を使用した場合の間で寄与率に大きな違いは見られなかったが、3回平均を使用した場合よりも照射回数別のデータを使用した方が寄与率が高くなる場合があり、摂動の効果が認められた。
(4)より汎用性のある回帰式は品種やプローブの角度を区別しないデータを使用して得られた回帰式であるといえ、これは表3の「2品種0,90度統合」の場合である。この場合、1回目のみのデータを使用したときに得られた回帰式の寄与率が最大となっており0.836479であった。この回帰式は1%有意であった。このことからこの回帰式が現段階で硝酸イオン濃度を推定するために最も有効であると結論できる。そこで表3に示した1回目の吸光スペクトルのみを使用したデータを使用して得られた回帰式の推定値と従来法(カタルド法)によって得られた実測値との比較を図14および図15に示す。
即ち、図14および図15はいずれも、プローブの角度を区別しない場合であって「2品種統合0,90度統合」の1回目データのみを使用したときの実測値と推定値を比較した結果である。図14に示したエラーバーは推定値の95%予測区間である。PCR法による推定式の寄与率は0.836479となり、やや低めであるが、エラーバーの幅は狭く、統計的有意性は高く1%となった。図15をみると従来法で得られた値から100ppmほど偏差が見られた。またこの場合、硝酸イオン濃度の測定範囲は245ppmから878ppmであった。
ここで図14の結果を導いた回帰式の偏回帰係数ベクトルBの各要素値を図16に示す。大きな絶対値を持つ係数がいろいろな波長で見られる。その波長の吸光度は硝酸イオン濃度推定に有効である。
以上のように、本発明は、近赤外線分光法による野菜等の成分の非破壊検査法、及び同装置に関するものであり、生産、流通、販売、消費の各過程における食品品質管理に利用できるほか、前述したとおり、産業上種々の有用性を有するものである。

Claims (15)

  1. 波長400nm〜2500nmの範囲またはその一部範囲の波長光を検査対象の野菜、果物または肉類などの食物に繰り返し照射することにより摂動を与え、その反射光、透過光または透過反射光を検出して吸光度スペクトルデータを得た後、該食物中の水分子の、摂動による吸光度変化を調べ、その中の測定全波長あるいは特定波長の吸光度を、予め作成した計測モデルに代入することによって当該食物中の成分を定量的または定性的に分析することを特徴とする非破壊検査法。
  2. 野菜中の成分を分析することを特徴とする請求項1記載の非破壊検査法。
  3. 波長600nm〜1000nmの範囲またはその一部範囲の波長光を検査対象の野菜に照射して測定を行うことを特徴とする請求項記載の非破壊検査法。
  4. 計測モデルは、(1)検出により得られた全波長の吸光スペクトルを格納するデータ行列を特異値分解によりスコアとローディングとに分解し、目的成分の濃度の変動を要約する主要な成分を主成分分析によって抽出するステップと、(2)説明変量をスコア、目的変量を目的成分の濃度とする重回帰分析を適用し、重回帰式を作成するステップとによって得られ、この計測モデルを用いて測定全波長あるいは特定波長の吸光度スペクトルデータから目的成分の濃度を測定することを特徴とする請求項2又は3に記載の非破壊検査法。
  5. 野菜中の硝酸イオン濃度の測定に使用することを特徴とする請求項2〜のいずれか1項に記載の非破壊検査法。
  6. 野菜中の硝酸イオン濃度の定性的評価に使用することを特徴とする請求項2〜のいずれか1項に記載の非破壊検査法。
  7. ホウレンソウ、サラダホウレンソウ、レタス、サニーレタス、サラダ菜、春菊、ターツァイ、チンゲンサイ、キャベツ、ハクサイ、コマツナ、及びミズナからなる群から選ばれる1種又は数種の野菜の成分分析に使用することを特徴とする請求項2〜のいずれか1項に記載の非破壊検査法。
  8. 波長400nm〜2500nmの範囲またはその一部範囲の波長光を検査対象の野菜、果物または肉類などの食物に繰り返し照射することにより摂動を与える投光手段と、
    投光前又は投光後に分光する分光手段、および、該食物に照射された光の反射光、透過光または透過反射光を検出する検出手段と、
    該食物中の水分子の、摂動による吸光度変化を調べる手段と、
    検出により得られた吸光度スペクトルデータの中の測定全波長あるいは特定波長の吸光度を、予め作成した計測モデルに代入することによって当該食物中の成分を定量的または定性的に分析するデータ解析手段とを備えたことを特徴とする非破壊検査装置。
  9. さらに、成分分析の結果を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項記載の非破壊検査装置。
  10. 波長光を検査対象の野菜に照射し、野菜中の成分を分析することを特徴とする請求項8又は9記載の非破壊検査装置。
  11. 波長600nm〜1000nmの範囲またはその一部範囲の波長光を検査対象の野菜に照射して測定を行うことを特徴とする請求項10記載の非破壊検査装置。
  12. 計測モデルは、(1)検出により得られた全波長の吸光スペクトルを格納するデータ行列を特異値分解によりスコアとローディングとに分解し、目的成分の濃度の変動を要約する主要な成分を主成分分析によって抽出するステップと、(2)説明変量をスコア、目的変量を目的成分の濃度とする重回帰分析を適用し、重回帰式を作成するステップとによって得られ、この計測モデルを用いて測定全波長あるいは特定波長の吸光度スペクトルデータから目的成分の濃度を測定することを特徴とする請求項10又は11に記載の非破壊検査装置。
  13. 野菜中の硝酸イオン濃度の測定に使用することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の非破壊検査装置。
  14. 野菜中の硝酸イオン濃度の定性的評価に使用することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の非破壊検査装置。
  15. ホウレンソウ、サラダホウレンソウ、レタス、サニーレタス、サラダ菜、春菊、ターツァイ、チンゲンサイ、キャベツ、ハクサイ、コマツナ、及びミズナからなる群から選ばれる1種又は数種の野菜の成分分析に使用することを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の非破壊検査装置。
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