JP4748046B2 - ゴム金属積層体 - Google Patents

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本発明は、ゴム金属積層体に関する。更に詳しくは、耐熱性などにすぐれたゴム金属積層体に関する。
エンジン用シリンダヘッドガスケット用途のゴム金属積層体に用いられる金属板としては、ステンレス鋼が挙げられる。かかるステンレス鋼上に直接加硫接着剤を適用してゴムと加硫接着させたゴム金属積層体は、ステンレス鋼とゴムとの密着性が悪く、耐熱性あるいは耐液性が悪いといった問題を有している。
かかる問題を解決すべく、ステンレス鋼表面に一次処理を施すことにより、ステンレス鋼とゴムとの密着性を向上させる方法が提案されている。かかる方法としては、例えば、ステンレス鋼表面に対する塗布型クロメート処理またはリン酸塩処理などの表面処理する方法が挙げられるが、特にガスケット用途においては、一次防錆ならびに密着性向上を目的として、特定化学物質に指定されている6価クロムを含む塗布型クロメート処理が一般的に使用されていた。しかるに、塗布型クロメート処理では、Crイオンが含まれるため、環境対策上からみて好ましくない。
特開平11−221875号公報 特開2000−6308号公報
そこで、本出願人は先に金属とニトリルゴムとの接着剤としてアルコキシシランをベースとする種々の加硫接着剤組成物あるいはフェノール樹脂含有接着剤を提案している。
特許3,669,973号公報 特開2003−334885号公報 特開2004−76699号公報 特開2004−277435号公報 特開2004−11576号公報
これらの接着剤は、クロムフリーの接着剤である点において、所期の目的は達成し得るものの、使用するゴムの配合を考慮しなければならないといった課題が残されている。また、金属とゴムとの密着性を確保せしめることは可能であったが、耐熱性の観点からは、耐熱性に優れている既知の水素化ニトリルゴムを用いた場合であっても、未だ満足のいくものではなかった。
本発明の目的は、150℃以上といった高温下における耐熱性および耐ゴム流動性(耐はみ出し性)にすぐれ、更に好ましくはゴムコンパウンド調製時における混練性に優れたゴム加硫層を有するゴム金属積層体を提供することにある。
かかる本発明の目的は、金属板の片面または両面に、接着剤層およびゴム層を順次積層させてなるゴム金属積層体において、ゴム層が水素化ニトリルゴム100重量部に対して、カオリン50〜250重量部、有機過酸化物4〜20重量部およびN,N’-フェニレンジマレイミド4〜10重量部を含有せしめた水素化ニトリルゴムコンパウンドの加硫物により形成されている水素化ニトリルゴム金属積層体によって達成される。
金属板の片面または両面に、接着剤層およびゴム層を順次積層させてなるゴム金属積層体のゴム層形成用として、水素化ニトリルゴム100重量部に対して、カオリン50〜250重量部、有機過酸化物4〜20重量部およびN,N’-フェニレンジマレイミド4〜10重量部を含有せしめた水素化ニトリルゴムコンパウンドを用いることにより、後記実施例の結果に示される如く200℃といった高温下における耐熱性に優れるとともに、150℃、面圧2〜3トン/cm2(196〜294 MPa)、5分間といった条件下における耐はみ出し性にも優れている。そのため、このゴム金属積層体は、こうした性質が強く求められているエンジン用ガスケット材等として好適に使用される。
さらに、カオリンを用いた場合には、耐熱性を悪化させることなく混練性を大きく改善することができる。
ニトリルゴムコンパウンド
水素化ニトリルゴム(HNBR)は、アクリロニトリルブタジエンゴム中の炭素-炭素二重結合のみを選択的に水素化することにより得られるゴムであり、ニトリルゴムと比較して耐熱老化性、耐候性、耐化学薬品性が大幅に改良されているといった特徴がある。また、HNBRとして、好ましくは中高ニトリル〜高ニトリル、さらに好ましくは中高ニトリルのものが用いられる。本発明では、市販品、例えば日本ゼオン製品Zetpol 2000(ヨウ素価7以下)、Zetpol 2010(ヨウ素価11)、Zetpol 2020(ヨウ素価28)をそのまま用いることができる。このHNBRに対しては、無機充填剤、架橋剤、架橋促進剤、老化防止剤などが添加されて、本発明のゴム金属積層体のゴム層形成に用いられるHNBRコンパウンドが調製される。
無機充填剤としては、ホワイトカーボン、塩基性炭酸マグネシウム、活性化炭酸カルシウム、特殊炭酸カルシウム、超微粉珪酸マグネシウム、ハードクレー、カーボンブラック、硫酸バリウム、タルク、グラファイト、マイカ、カオリンなどが、単独または組み合わせて用いられる。これらの無機充填剤の添加は、高温浸せき時の接着剤層の剥がれ防止に有効であり、耐水性向上といった効果を奏する。このうち、ゴム層のコーティング厚みが5〜120μmであるゴム金属積層体に好適に適用される、平均粒子径が微小な無機充填剤、具体的には平均粒子径が0.01〜50μmである無機充填剤としてはカオリン、炭酸カルシウム、シリカ、マイカが挙げられ、さらに外観向上といった観点からは偏平状の充填剤であるマイカあるいはカオリンが用いられる。
これらの無機充填剤は、水素化ニトリルゴム100重量部当り50〜250重量部、好ましくは80〜200重量部の割合で用いられる。無機充填剤の使用割合がこれより少ないと、高温高面圧での使用においてゴムの流れが多くなるようになり、一方これよりも多い割合で用いられると、空気加熱時にゴムの剥がれが生じやすくなる。
また、無機充填剤としてカオリンを用いた場合には、ゴムコンパウンド調製時における混練性が著しく改善される。この場合、カオリンとともに他の充填剤を併用することも可能であるが、この場合にはカオリンが少なくとも水素化ニトリルゴム100重量部当り50重量部以上用いられるとともに、他の無機充填剤との合計量が水素化ニトリルゴム100重量部当り250重量部以下となるように配合される。
カオリンは、鉱物名がカオリナイト、化学式がAL2O3・2SiO2・2H2Oで表わされ、製造法の違いにより湿式カオリン、焼成カオリン、乾式カオリンに分類される。本発明においては、焼成カリオンが用いられる。
架橋剤としては、有機過酸化物が用いられ、具体的には1,1-ジ第3ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ第3ブチルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。これらの有機過酸化物は、水素化ニトリルゴム100重量部当り約4〜20重量部、好ましくは約6〜16重量部の割合で用いられる。
架橋促進剤としては、N,N’-フェニレンジマレイミドが水素化ニトリルゴム100重量部当り4〜10重量部、好ましくは4〜6重量部の割合で、水素化ニトリルゴムコンパウンドの必須成分として用いられる。N,N’-フェニレンジマレイミドがこれより少ない場合には、所望の耐ゴム流動性(耐はみ出し性)を達成できず、一方これより多い場合には、未加硫ゴムの保管安定性が損なわれるようになる。
水素化ニトリルゴム組成物中には、以上の必須成分以外に、液状ポリブタジエン、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート等の多官能性不飽和化合物、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス等の加工助剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト等の受酸剤、老化防止剤、ジオクチルセバケート(DOS)などの可塑剤などゴム工業で一般的に用いられている各種配合剤が適宜添加されて用いられる。
組成物の調製は、例えば一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサ、ニーダ、高せん断型ミキサ等の混練機を用いて架橋剤および架橋助剤以外の各成分を混練りした後、さらに架橋剤および架橋助剤などを添加して混練することにより行われる。
以上の水素化ニトリルゴム組成物は、金属板上に順次形成された接着剤層、好ましくはプライマー層および接着剤層を介して水素化ニトリルゴム層として積層される。
金属板
金属板としては、表面がショットブラスト、スコッチブライド、ヘアーライン、ダル仕上げなどで粗面化されたステンレス鋼板、SPCC鋼板、アルミニウム板、あるいは粗面化処理をせずに、これらの金属板を溶剤脱脂またはアルカリ脱脂したもの、さらに接着性を高める観点からは脱脂処理された金属板に塗布型クロメート表面処理以外の無機系または有機系防錆被膜を形成させる化成処理を施したものなどが用いられ、またSPCC鋼板の場合には、後述するプライマーとしてのリン酸亜鉛皮膜、リン酸鉄皮膜を形成させることも行われる。その板厚は、特にガスケット用途に用いる場合には約0.1〜1mm程度のものが用いられる。
従ってこれらの金属板上には、好ましくはプライマー層が形成される。プライマー層は、本発明の目的とするゴム層の耐熱性についての向上に必須の要件となるものではないものの、ゴム金属積層体のゴム接着にかかる耐熱性および耐水性の大幅な向上が望めるものであり、特にゴム金属積層体をシール材として使用する場合にはその形成が望ましい。
プライマー層
プライマー層としては、リン酸亜鉛皮膜、リン酸鉄皮膜、バナジウム、ジルコニウム、チタニウム、モリブデン、タングステン、マンガン、亜鉛、セリウム化合物またはこれらの酸化物などの無機系被膜、シラン、フェノール、エポキシ、ウレタン等の有機系被膜など、一般に市販されている薬液あるいは公知技術をそのまま用いることができる。
以上の成分よりなるプライマーは、その固形分濃度が約0.2〜5重量%程度となるように有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類等の溶液として調製される。
プライマー溶液は、金属板上にスプレー、浸せき、刷毛、ロールコータ等を用いて、約50〜200mg/m2の目付量で塗布され、室温または温風にて乾燥させた後、約100〜250℃、約0.5〜20分間焼付処理され、プライマー層が形成される。
接着剤層
接着剤としては、フェノール樹脂含有接着剤、例えばエポキシ樹脂およびフェノール樹脂からなる接着剤、ノボラック型フェノール樹脂およびレゾール型フェノール樹脂の2種類のフェノール樹脂からなる接着剤などが使用できるが、好ましくはこれらに上述した水素化ニトリルゴムコンパウンドがさらに配合して用いられる。水素化ニトリルゴムコンパウンドは、上記の如き接着剤中の樹脂成分、例えばエポキシ樹脂とフェノール樹脂との合計量100重量部当り、約40重量部以下、好ましくは約10〜30重量部の割合で配合して用いることができる。接着剤成分として水素化ニトリルゴムコンパウンドを配合することにより、ゴム層-接着剤層間の接着性の改善を図ることができるが、これ以上の割合で用いられると高温不凍液中への浸せき時に剥がれを生じるようになり好ましくない。
これらの各成分を含有する接着剤は、ケトン系またはアルコール系有機溶媒に約2〜10重量%の濃度となるように溶解されて接着剤溶液として調製され、金属板、好ましくはプライマー処理された金属板上の片面または両面に、乾燥時における厚さが約0.1〜10μmとなるように塗布され、室温条件下で風乾させた後、好ましくはさらに100〜210℃、1〜30分間の加熱処理が行われて接着剤層として形成される。
水素化ニトリルゴム層
接着剤層上には、未加硫の水素化ニトリルゴムコンパウンドが、約5〜200μm程度の厚さの加硫ゴム層を形成させるようにゴムコンパウンドの有機溶媒溶液として塗布され、その加硫は一般に約150〜230℃で約0.5〜30分間程度加圧加硫することによって行われる。
加硫ゴム表面には、その焼付防止および粘着防止を目的として、グラファイト、カーボンブラック、パラフィンワックスなどを主成分とし、これにセルロース、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂等のバインダーを添加し、トルエン等の溶媒中に分散させた分散液が塗布され、厚さ約2〜10μmの非粘着層を形成させることもできる。
次に、実施例について本発明を説明する。
実施例1(参考例)
アルカリ脱脂した厚さ0.2mmのステンレス鋼板(日新製鋼製品SUS301)の表面に、Zr/Al系プライマーを塗布してプライマー層を形成し、このプライマー層上に下記配合の接着剤を、乾燥時の片面厚さが約0.5μmとなるように両面に塗布し、室温条件下で風乾させた後、さらに200℃、1分間の加熱処理を行い、接着剤層を形成させた。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 25重量部
(ジャパンエポキシレジン製品エピコート828)
クレゾール変性ノボラック型フェノール樹脂 17.5 〃
(大日本インキ化学工業製品KA-1053L)
レゾール型フェノール樹脂(同社製品AF-2639) 7.5 〃
2-エチル-4-メチルイミダゾール 0.34 〃
ヘキサメチレンテトラミン 2 〃
下記水素化ニトリルゴムコンパウンド 13.5 〃
メチルエチルケトン 950 〃
形成された接着剤層上には、下記各成分をニーダおよびオープンロールを用いて混練することにより得られた水素化ニトリルゴムコンパウンドを、固形分濃度25重量%となるようにトルエン:メチルエチルケトン=9:1からなる混合溶剤に溶解したものを、20μmの厚みの加硫ゴム層となるように金属板の両面に塗布して、220℃、1分間の加硫を行った。
水素化ニトリルゴム(Zetpol 2000) 100重量部
SRFカーボンブラック 10 〃
炭酸カルシウム(白石工業製品白艶華CC) 200 〃
老化防止剤(大内新興化学製品ノクラックCD) 3 〃
酸化亜鉛 5 〃
ステアリン酸 2 〃
ワックス(精工化学製品サンタイトR) 3 〃
ジクミルパーオキサイド(日本油脂製品パークミルD) 15 〃
N,N′-m-フェニレンジマレイミド 5 〃
(大内新興化学製品バルノックPM-P)
形成された加硫ゴム表面には、その粘着防止を目的としてポリブタジエン樹脂バインダーを添加したポリエチレン樹脂のトルエン分散液を塗布し、200℃、5分間の空気加熱による加熱処理を行い、厚さ5μmの粘着防止層を形成させた。
実施例2(参考例)
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるジクミルパーオキサイド量が7.5重量部に変更されて用いられた。
実施例3(参考例)
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるジクミルパーオキサイド量が5重量部に変更されて用いられた。
参考比較例1
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるN,N′-m-フェニレンジマレイミドの代りに、トリアリルイソシアヌレート(日本化成製品タイク)が同量用いられた。
参考比較例2
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるN,N′-m-フェニレンジマレイミドの代りに、トリメチロールプロパントリメタクリレート(新日本理化製品アクリエステルTMP)が同量用いられた。
参考比較例3
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるN,N′-m-フェニレンジマレイミド量が3重量部に、またジクミルパーオキサイド量が5重量部にそれぞれ変更されて用いられた。
参考比較例4
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるジクミルパーオキサイド量が3重量部に変更されて用いられた。
以上の実施例1〜3(参考例)および参考比較例1〜4で得られたゴム積層金属板について、加硫特性および常態物性の測定、はみ出し試験および空気加熱試験を行った。
加硫特性:キュラストメータを用い、180℃でMH、T10およびT90の値を測定
常態物性:JIS K6253、K6251準拠
空気加熱試験:ゴム積層金属板をギヤ式オーブンに入れ、165℃、185℃または200℃、100時間の条件下で空気加熱後、JIS K5600に準じてカッターで碁盤目の切れ目を入れて、ゴム硬化劣化後におけるゴム剥離の程度を目視にて確認し、ゴム残存率100%のものを5、95%以上100%未満のものを4、85%以上95%未満のものを3、65%以上85%未満のものを2、65%未満のものを1として評価
はみ出し試験:ゴム積層金属板を加熱プレスおよび専用治具を用いて、150℃、面圧2〜3トン/cm2(196〜294MPa)、5分間の条件下で処理した後、ゴム層の破壊状態および剥離状態を以下の基準に基づき評価
5:ゴム層が完全に残存している
4:ゴム層がわずかに流れている(はみ出している)
3:ゴム層が流れているが金属面は露出しておらず、ゴム表面がムラになっている
2:ゴム層が流れ、金属面が若干露出している
1:ゴム層が完全に流れ、金属面が完全に露出
得られた結果は、次の表1に示される。
表1
実施例(参考例) 参考比較例
測定、評価項目
〔ゴム特性〕
加硫特性
MH 58 41 38 46 48 36 38
T10(秒) 22 23 24 57 49 35 26
T90(秒) 144 161 167 340 289 193 166
常態物性
硬さ 93 91 90 93 93 89 88
〔複合材料特性〕
空気加熱試験
165℃での評価 5 5 5 5 5 5 5
185℃での評価 4 4 4 4 4 4 4
200℃での評価 3 3 3 2 3 2 2
はみ出し試験
評価 5 4 4 2 3 2 1
以上の結果から、次のようなことがいえる。
(1) N,N′-m-フェニレンジマレイミドおよび有機過酸化物が所定量配合された水素化ニトリルゴムコンパウンドを用いたゴム金属積層体は、200℃といった高温下における耐熱性に優れるとともに、150℃、面圧2〜3トン/cm2(196〜294MPa)、5分間といった条件下における耐はみ出し性にも優れている。
(2) N,N′-m-フェニレンジマレイミドの代わりに、トリアリルイソシアヌレートあるいはトリメチロールプロパントリメタクリレートを用いた場合(参考比較例1または2)やN,N′-m-フェニレンジマレイミドまたは有機過酸化物が所定量配合されない場合(参考比較例3または4)には、上記いずれかの特性に劣っている。
比較例I
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分である炭酸カルシウム量が150重量部に変更されて用いられた。
比較例II
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分である炭酸カルシウムの代わりに、シリカ(日本シリカ製品ニップシールVN3)150重量部が用いられた。
比較例III
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分である炭酸カルシウムの代わりに、セリサイト(三信鉱工製品FNSマイカ)150重量部が用いられた。
実施例
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分である炭酸カルシウムの代わりに、ビニルシラン表面処理焼成カオリン(林化成製品トランスリンク37)150重量部が用いられた。
実施例II
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分である炭酸カルシウム量が75重量部に変更され、また同成分としてさらに焼成カオリン(トランスリンク37)75重量部が用いられた。
以上の比較例I〜IIIおよび実施例I〜IIで使用された水素化ニトリルゴムコンパウンドについて混練性評価を行い、またそれから得られたゴム積層金属板について、加硫特性、常態物性、空気加熱試験(165℃または185℃)および耐熱屈曲試験を行った。なお、加硫特性、常態物性および空気加熱試験については、前述した通りに試験が行われた。
混練性評価:ニーダ混練性、ロール混練性(ロール負荷、ロール粘着、ブレンダー性、促入れ性、バギング性など)、混練時間、混練作業性などの総合的な評価を行い、以下の基準に基づき評価
5:混練作業性良、充填剤の飛散なし、混練時間良
4:混練作業性良、充填剤の飛散が若干あり、混練時間良
3:混練作業性普通、充填剤の飛散あり、混練時間が評価4あるいは5に比べて長い
2:混練作業性悪い、充填剤の飛散が多い、混練時間が評価3に比べて長い
1:混練作業性が評価2よりもさらに悪く、混練不可
耐熱屈曲試験:ゴム積層金属板をギヤ式オーブンに入れ、200℃、100時間の条件下で空気加熱後、JIS K5600に準じ直径6cmの心棒を使用して耐屈曲性試験を行い、ゴムと金属との接着性を以下の基準に基づき評価
5:ゴム層が完全に残存している(クラックなし)
4:目視ではゴム層の亀裂の確認不可
3:ゴム層上に線状の亀裂が発生
2:ゴム層上にうろこ状の亀裂が発生
1:ゴム層が完全に剥れ、金属面が完全に露出している
得られた結果は、次の表2に示される。
表2
測定、評価項目 比較例I 比較例II 比較例III 実施例I 実施例II
〔コンパウンド〕
混練性評価 2 1 1 4 3
〔ゴム特性〕
加硫特性
MH 71 54 65 69 71
T10(秒) 21 23 25 23 21
T90(秒) 135 137 129 129 132
常態物性
硬さ 95 96 94 94 94
〔複合材料特性〕
空気加熱試験
165℃での評価 5 5 5 5 5
185℃での評価 4 4 4 5 5
耐熱屈曲試験
評価 4 2 4 4 4
以上の結果から、比較例I〜IIIと比較して、無機充填剤としてカオリンを選択した実施例I〜IIでは、耐熱性を悪化させることなく混練性がさらに大きく改善されていることが分かる。
本発明に係るゴム金属積層体は、耐熱性の要求されるオイルシール、パッキン、ガスケットなどのシール材を形成する加硫ゴム金属積層体として好適に用いられる。

Claims (6)

  1. 金属板の片面または両面に、接着剤層およびゴム層を順次積層させてなるゴム金属積層体において、ゴム層が水素化ニトリルゴム100重量部に対して、カオリン50〜250重量部、有機過酸化物4〜20重量部およびN,N’-フェニレンジマレイミド4〜10重量部を含有せしめた水素化ニトリルゴムコンパウンドの加硫物により形成されていることを特徴とする水素化ニトリルゴム金属積層体。
  2. 金属板と接着剤層との間に、プライマー層が形成された請求項1記載の水素化ニトリルゴム金属積層体。
  3. 接着剤層が、水素化ニトリルゴムコンパウンドを含むフェノール系接着剤層である請求項1記載の水素化ニトリルゴム金属積層体。
  4. 水素化ニトリルゴムコンパウンドが、接着剤中の樹脂成分100重量部当り40重量部以下の割合で用いられた請求項3記載の水素化ニトリルゴム金属積層体。
  5. フェノール系接着剤層中に含まれる水素化ニトリルゴムコンパウンドが、ゴム層に用いられる水素化ニトリルゴムコンパウンドと同組成を有するものである請求項3または4記載の水素化ニトリルゴム金属積層体。
  6. エンジン用ガスケット材として用いられる請求項1乃至5のいずれかに記載の水素化ニトリルゴム金属積層体。
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