JP4748046B2 - ゴム金属積層体 - Google Patents
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Description
水素化ニトリルゴム(HNBR)は、アクリロニトリルブタジエンゴム中の炭素-炭素二重結合のみを選択的に水素化することにより得られるゴムであり、ニトリルゴムと比較して耐熱老化性、耐候性、耐化学薬品性が大幅に改良されているといった特徴がある。また、HNBRとして、好ましくは中高ニトリル〜高ニトリル、さらに好ましくは中高ニトリルのものが用いられる。本発明では、市販品、例えば日本ゼオン製品Zetpol 2000(ヨウ素価7以下)、Zetpol 2010(ヨウ素価11)、Zetpol 2020(ヨウ素価28)をそのまま用いることができる。このHNBRに対しては、無機充填剤、架橋剤、架橋促進剤、老化防止剤などが添加されて、本発明のゴム金属積層体のゴム層形成に用いられるHNBRコンパウンドが調製される。
金属板としては、表面がショットブラスト、スコッチブライド、ヘアーライン、ダル仕上げなどで粗面化されたステンレス鋼板、SPCC鋼板、アルミニウム板、あるいは粗面化処理をせずに、これらの金属板を溶剤脱脂またはアルカリ脱脂したもの、さらに接着性を高める観点からは脱脂処理された金属板に塗布型クロメート表面処理以外の無機系または有機系防錆被膜を形成させる化成処理を施したものなどが用いられ、またSPCC鋼板の場合には、後述するプライマーとしてのリン酸亜鉛皮膜、リン酸鉄皮膜を形成させることも行われる。その板厚は、特にガスケット用途に用いる場合には約0.1〜1mm程度のものが用いられる。
プライマー層としては、リン酸亜鉛皮膜、リン酸鉄皮膜、バナジウム、ジルコニウム、チタニウム、モリブデン、タングステン、マンガン、亜鉛、セリウム化合物またはこれらの酸化物などの無機系被膜、シラン、フェノール、エポキシ、ウレタン等の有機系被膜など、一般に市販されている薬液あるいは公知技術をそのまま用いることができる。
接着剤としては、フェノール樹脂含有接着剤、例えばエポキシ樹脂およびフェノール樹脂からなる接着剤、ノボラック型フェノール樹脂およびレゾール型フェノール樹脂の2種類のフェノール樹脂からなる接着剤などが使用できるが、好ましくはこれらに上述した水素化ニトリルゴムコンパウンドがさらに配合して用いられる。水素化ニトリルゴムコンパウンドは、上記の如き接着剤中の樹脂成分、例えばエポキシ樹脂とフェノール樹脂との合計量100重量部当り、約40重量部以下、好ましくは約10〜30重量部の割合で配合して用いることができる。接着剤成分として水素化ニトリルゴムコンパウンドを配合することにより、ゴム層-接着剤層間の接着性の改善を図ることができるが、これ以上の割合で用いられると高温不凍液中への浸せき時に剥がれを生じるようになり好ましくない。
接着剤層上には、未加硫の水素化ニトリルゴムコンパウンドが、約5〜200μm程度の厚さの加硫ゴム層を形成させるようにゴムコンパウンドの有機溶媒溶液として塗布され、その加硫は一般に約150〜230℃で約0.5〜30分間程度加圧加硫することによって行われる。
アルカリ脱脂した厚さ0.2mmのステンレス鋼板(日新製鋼製品SUS301)の表面に、Zr/Al系プライマーを塗布してプライマー層を形成し、このプライマー層上に下記配合の接着剤を、乾燥時の片面厚さが約0.5μmとなるように両面に塗布し、室温条件下で風乾させた後、さらに200℃、1分間の加熱処理を行い、接着剤層を形成させた。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 25重量部
(ジャパンエポキシレジン製品エピコート828)
クレゾール変性ノボラック型フェノール樹脂 17.5 〃
(大日本インキ化学工業製品KA-1053L)
レゾール型フェノール樹脂(同社製品AF-2639) 7.5 〃
2-エチル-4-メチルイミダゾール 0.34 〃
ヘキサメチレンテトラミン 2 〃
下記水素化ニトリルゴムコンパウンド 13.5 〃
メチルエチルケトン 950 〃
水素化ニトリルゴム(Zetpol 2000) 100重量部
SRFカーボンブラック 10 〃
炭酸カルシウム(白石工業製品白艶華CC) 200 〃
老化防止剤(大内新興化学製品ノクラックCD) 3 〃
酸化亜鉛 5 〃
ステアリン酸 2 〃
ワックス(精工化学製品サンタイトR) 3 〃
ジクミルパーオキサイド(日本油脂製品パークミルD) 15 〃
N,N′-m-フェニレンジマレイミド 5 〃
(大内新興化学製品バルノックPM-P)
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるジクミルパーオキサイド量が7.5重量部に変更されて用いられた。
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるジクミルパーオキサイド量が5重量部に変更されて用いられた。
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるN,N′-m-フェニレンジマレイミドの代りに、トリアリルイソシアヌレート(日本化成製品タイク)が同量用いられた。
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるN,N′-m-フェニレンジマレイミドの代りに、トリメチロールプロパントリメタクリレート(新日本理化製品アクリエステルTMP)が同量用いられた。
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるN,N′-m-フェニレンジマレイミド量が3重量部に、またジクミルパーオキサイド量が5重量部にそれぞれ変更されて用いられた。
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分であるジクミルパーオキサイド量が3重量部に変更されて用いられた。
加硫特性:キュラストメータを用い、180℃でMH、T10およびT90の値を測定
常態物性:JIS K6253、K6251準拠
空気加熱試験:ゴム積層金属板をギヤ式オーブンに入れ、165℃、185℃または200℃、100時間の条件下で空気加熱後、JIS K5600に準じてカッターで碁盤目の切れ目を入れて、ゴム硬化劣化後におけるゴム剥離の程度を目視にて確認し、ゴム残存率100%のものを5、95%以上100%未満のものを4、85%以上95%未満のものを3、65%以上85%未満のものを2、65%未満のものを1として評価
はみ出し試験:ゴム積層金属板を加熱プレスおよび専用治具を用いて、150℃、面圧2〜3トン/cm2(196〜294MPa)、5分間の条件下で処理した後、ゴム層の破壊状態および剥離状態を以下の基準に基づき評価
5:ゴム層が完全に残存している
4:ゴム層がわずかに流れている(はみ出している)
3:ゴム層が流れているが金属面は露出しておらず、ゴム表面がムラになっている
2:ゴム層が流れ、金属面が若干露出している
1:ゴム層が完全に流れ、金属面が完全に露出
表1
実施例(参考例) 参考比較例
測定、評価項目 1 2 3 1 2 3 4
〔ゴム特性〕
加硫特性
MH 58 41 38 46 48 36 38
T10(秒) 22 23 24 57 49 35 26
T90(秒) 144 161 167 340 289 193 166
常態物性
硬さ 93 91 90 93 93 89 88
〔複合材料特性〕
空気加熱試験
165℃での評価 5 5 5 5 5 5 5
185℃での評価 4 4 4 4 4 4 4
200℃での評価 3 3 3 2 3 2 2
はみ出し試験
評価 5 4 4 2 3 2 1
(1) N,N′-m-フェニレンジマレイミドおよび有機過酸化物が所定量配合された水素化ニトリルゴムコンパウンドを用いたゴム金属積層体は、200℃といった高温下における耐熱性に優れるとともに、150℃、面圧2〜3トン/cm2(196〜294MPa)、5分間といった条件下における耐はみ出し性にも優れている。
(2) N,N′-m-フェニレンジマレイミドの代わりに、トリアリルイソシアヌレートあるいはトリメチロールプロパントリメタクリレートを用いた場合(参考比較例1または2)やN,N′-m-フェニレンジマレイミドまたは有機過酸化物が所定量配合されない場合(参考比較例3または4)には、上記いずれかの特性に劣っている。
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分である炭酸カルシウム量が150重量部に変更されて用いられた。
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分である炭酸カルシウムの代わりに、シリカ(日本シリカ製品ニップシールVN3)150重量部が用いられた。
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分である炭酸カルシウムの代わりに、セリサイト(三信鉱工製品FNSマイカ)150重量部が用いられた。
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分である炭酸カルシウムの代わりに、ビニルシラン表面処理焼成カオリン(林化成製品トランスリンク37)150重量部が用いられた。
実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンド成分である炭酸カルシウム量が75重量部に変更され、また同成分としてさらに焼成カオリン(トランスリンク37)75重量部が用いられた。
混練性評価:ニーダ混練性、ロール混練性(ロール負荷、ロール粘着、ブレンダー性、促入れ性、バギング性など)、混練時間、混練作業性などの総合的な評価を行い、以下の基準に基づき評価
5:混練作業性良、充填剤の飛散なし、混練時間良
4:混練作業性良、充填剤の飛散が若干あり、混練時間良
3:混練作業性普通、充填剤の飛散あり、混練時間が評価4あるいは5に比べて長い
2:混練作業性悪い、充填剤の飛散が多い、混練時間が評価3に比べて長い
1:混練作業性が評価2よりもさらに悪く、混練不可
耐熱屈曲試験:ゴム積層金属板をギヤ式オーブンに入れ、200℃、100時間の条件下で空気加熱後、JIS K5600に準じ直径6cmの心棒を使用して耐屈曲性試験を行い、ゴムと金属との接着性を以下の基準に基づき評価
5:ゴム層が完全に残存している(クラックなし)
4:目視ではゴム層の亀裂の確認不可
3:ゴム層上に線状の亀裂が発生
2:ゴム層上にうろこ状の亀裂が発生
1:ゴム層が完全に剥れ、金属面が完全に露出している
表2
測定、評価項目 比較例I 比較例II 比較例III 実施例I 実施例II
〔コンパウンド〕
混練性評価 2 1 1 4 3
〔ゴム特性〕
加硫特性
MH 71 54 65 69 71
T10(秒) 21 23 25 23 21
T90(秒) 135 137 129 129 132
常態物性
硬さ 95 96 94 94 94
〔複合材料特性〕
空気加熱試験
165℃での評価 5 5 5 5 5
185℃での評価 4 4 4 5 5
耐熱屈曲試験
評価 4 2 4 4 4
Claims (6)
- 金属板の片面または両面に、接着剤層およびゴム層を順次積層させてなるゴム金属積層体において、ゴム層が水素化ニトリルゴム100重量部に対して、カオリン50〜250重量部、有機過酸化物4〜20重量部およびN,N’-フェニレンジマレイミド4〜10重量部を含有せしめた水素化ニトリルゴムコンパウンドの加硫物により形成されていることを特徴とする水素化ニトリルゴム金属積層体。
- 金属板と接着剤層との間に、プライマー層が形成された請求項1記載の水素化ニトリルゴム金属積層体。
- 接着剤層が、水素化ニトリルゴムコンパウンドを含むフェノール系接着剤層である請求項1記載の水素化ニトリルゴム金属積層体。
- 水素化ニトリルゴムコンパウンドが、接着剤中の樹脂成分100重量部当り40重量部以下の割合で用いられた請求項3記載の水素化ニトリルゴム金属積層体。
- フェノール系接着剤層中に含まれる水素化ニトリルゴムコンパウンドが、ゴム層に用いられる水素化ニトリルゴムコンパウンドと同組成を有するものである請求項3または4記載の水素化ニトリルゴム金属積層体。
- エンジン用ガスケット材として用いられる請求項1乃至5のいずれかに記載の水素化ニトリルゴム金属積層体。
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