JP4743580B2 - 工業製品の設計方法及びこの設計方法により設計された工業製品 - Google Patents

工業製品の設計方法及びこの設計方法により設計された工業製品 Download PDF

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Description

本発明は、工業製品の形状の設計方法に関し、特に質量を有する機械要素が運動する機構を含む機械において、その機械要素の運動を滑らかにする運動の軌道を設計する方法に関する。
機械の小型化・高精度化に伴い、機械要素が高速に運動する機構が重要になってきている。力学的に無理がない滑らかな運動軌跡を設計して、振動や運動誤差が少なく、経年変化や損傷を抑えて、高速・高精度な運動を実現することへの要求は強い。
自由な運動軌跡の設計方法については、従来から直線や円弧などの解析的な曲線を接続する方法や、スプライン曲線補間(与えられた点列をスプライン曲線で補間する方法)が用いられていた(非特許文献1参照)。
穂坂衛・佐田登志夫著,"統合化CAD/CAMシステム"オーム社、1997
前者の手法によれば、一般的には直線と円弧の接続点で曲率を連続に接続することが困難である。後者の手法によれば、曲率連続に接続することは可能であるが、始点からの移動距離と曲率の関係が複雑なので、軌道に沿って力学的に無理のない曲率の分布を設計することが困難であり、良好な運動軌跡が得られない。
そこで本発明は、質量を有する機械要素が運動する機構を含む機械において、その機械要素の運動を滑らかにする運動の軌道を設計する手法を提供することを目的とする。この手法は本発明者によってもたらされた新しく且つ斬新な手法である。
ここで滑らかとは、軌道の接線、接触平面(法線)や曲率などの変化が軌道に沿って連続であり、従って軌道上を運動する機械要素に働く力が連続的に変化することを意味する。
ところでロボット、工作機械、組立機械、検査機械などに多用されるボールねじの回帰経路の形態は、直線や円弧でつないだものであり、曲線の接線や曲率が連続でなく、また軌道設計の自由度も不足であった。
本発明の他の目的は、ボールねじのボール循環経路の設計に際して、ボールの循環経路における運動エネルギの損失を軽減し、また循環経路を与える部品の損傷を防ぐために、循環経路の接線や曲率が連続であり、かつ曲率変化が穏やかである循環経路の設計方法を確立することにある。ボールねじの循環経路の設計方法は、機械要素の運動を滑らかにする運動の軌道を設計する方法の応用例である。
以下、本発明について説明する。
請求項1の発明は、接線方向のピッチ角およびヨー角のそれぞれが曲線長または曲線長変数の二次式で与えられる3次元曲線(3次元クロソイド曲線という)を用いて工業製品の形状を設計することを特徴とする工業製品の設計方法であり、前記3次元クロソイド曲線を以下の式で定義する。
Figure 0004743580
ここで、
Figure 0004743580
はそれぞれ、3次元クロソイド曲線上の点の位置ベクトル、及びその初期値を示す。
始点からの曲線の長さをsとし、その全長(始点から終点までの長さ)をhとする。sをhで割った値をSで表わす。Sは無次元の値であり、これを曲線長変数と呼ぶ。
i,j,kはそれぞれ、x軸、y軸、及びz軸方向の単位ベクトルである。
uは点Pにおける曲線の接線方向を示す単位ベクトルであり、式(2)によって与えられる。E 及びE は回転マトリクスであり、それぞれ、k軸まわりの角度βの回転及びj軸まわりの角度αの回転を表わしている。前者をヨー(yaw)回転、後者をピッチ(pitch)回転という。式(2)は、i軸方向の単位ベクトルを、まずj軸まわりにαだけ回し、しかるのちにk軸まわりにβだけ回すことによって、接線ベクトルuが得られることを示している。
0 ,a 1 ,a 2 ,b 0 ,b 1 ,b 2 は定数。
請求項2の発明は、請求項1に記載の工業製品の設計方法において、前記工業製品は、質量を有する機械要素が運動する機構を含む機械であり、前記3次元曲線(3次元クロソイド曲線という)を用いて前記機械要素の運動の軌道を設計することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の工業製品の設計方法において、前記機械は、前記機械要素としてボールが運動する機構を含むねじ装置であり、前記ねじ装置は、外周面に螺旋状の転動体転走溝を有するねじ軸と、内周面に前記転動体転走溝に対向する負荷転動体転走溝を有すると共に前記負荷転動体転走溝の一端と他端を接続する回帰経路を有するナットと、前記ねじ軸の前記転動体転走溝と前記ナットの前記負荷転動体転走溝の間及び回帰経路に配列される複数の転動体と、を備え、前記3次元曲線(3次元クロソイド曲線という)を用いて、前記ねじ装置の前記回帰経路を設計することを特徴とする。
請求項の発明は、請求項に記載の工業製品の設計方法において、3次元座標内に複数の空間点を指定し、これらの空間点を前記3次元クロソイド曲線を用いて補間することによって、前記工業製品の形状を設計することを特徴とする。
請求項の発明は、請求項に記載の工業製品の設計方法において、前記複数の空間点において、一つの3次元クロソイド線分(補間によって生成される曲線群を構成する単位曲線)と次の3次元クロソイド線分(補間によって生成される曲線群を構成する単位曲線)とで、両者の位置、接線方向、法線方向及び曲率が連続するように、前記3次元クロソイド線分の7つのパラメータa0,a1,a2,b0,b1,b2,hを算出することを特徴とする。
請求項の発明は、請求項に記載の工業製品の設計方法において、前記複数の空間点のうちの始点及び終点の接線方向、法線方向及び曲率を指定し、あらかじめ指定された前記空間点の間に新たに補間対象点を挿入することによって、前記始点及び前記終点における接線方向、法線方向及び曲率の条件式と、前記複数の空間点における、一つの3次元クロソイド線分と次の3次元クロソイド線分とで両者の位置、接線方向、法線方向及び曲率を連続させる条件式と、を合算した条件式の数と、前記3次元クロソイド線分の7つのパラメータa0,a1,a2,b0,b1,b2,hの未知数と、を一致させ、条件式と未知数との数を一致させることによって、前記3次元クロソイド線分の7つのパラメータa0,a1,a2,b0,b1,b2,hを算出することを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1ないしいずれかの工業製品の設計方法により設計された工業製品である。
請求項の発明は、工業製品の形状を設計するために、コンピュータを、接線方向のピッチ角およびヨー角のそれぞれが曲線長または曲線長変数の二次式で与えられる3次元曲線(3次元クロソイド曲線という)を用いて工業製品の形状を設計する手段として機能させるためのプログラムであり、前記3次元クロソイド曲線を以下の式で定義する。
Figure 0004743580
ここで、
Figure 0004743580
はそれぞれ、3次元クロソイド曲線上の点の位置ベクトル、及びその初期値を示す。
始点からの曲線の長さをsとし、その全長(始点から終点までの長さ)をhとする。sをhで割った値をSで表わす。Sは無次元の値であり、これを曲線長変数と呼ぶ。
i,j,kはそれぞれ、x軸、y軸、及びz軸方向の単位ベクトルである。
uは点Pにおける曲線の接線方向を示す単位ベクトルであり、式(2)によって与えられる。E 及びE は回転マトリクスであり、それぞれ、k軸まわりの角度βの回転及びj軸まわりの角度αの回転を表わしている。前者をヨー(yaw)回転、後者をピッチ(pitch)回転という。式(2)は、i軸方向の単位ベクトルを、まずj軸まわりにαだけ回し、しかるのちにk軸まわりにβだけ回すことによって、接線ベクトルuが得られることを示している。
0 ,a 1 ,a 2 ,b 0 ,b 1 ,b 2 は定数。
請求項の発明は、工業製品の形状を設計するために、コンピュータを、接線方向のピッチ角およびヨー角のそれぞれが曲線長または曲線長変数の二次式で与えられる3次元曲線(3次元クロソイド曲線という)を用いて工業製品の形状を設計する手段として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、前記3次元クロソイド曲線を以下の式で定義する。
Figure 0004743580
ここで、
Figure 0004743580
はそれぞれ、3次元クロソイド曲線上の点の位置ベクトル、及びその初期値を示す。
始点からの曲線の長さをsとし、その全長(始点から終点までの長さ)をhとする。sをhで割った値をSで表わす。Sは無次元の値であり、これを曲線長変数と呼ぶ。
i,j,kはそれぞれ、x軸、y軸、及びz軸方向の単位ベクトルである。
uは点Pにおける曲線の接線方向を示す単位ベクトルであり、式(2)によって与えられる。E 及びE は回転マトリクスであり、それぞれ、k軸まわりの角度βの回転及びj軸まわりの角度αの回転を表わしている。前者をヨー(yaw)回転、後者をピッチ(pitch)回転という。式(2)は、i軸方向の単位ベクトルを、まずj軸まわりにαだけ回し、しかるのちにk軸まわりにβだけ回すことによって、接線ベクトルuが得られることを示している。
0 ,a 1 ,a 2 ,b 0 ,b 1 ,b 2 は定数。
本発明によれば、3次元クロソイド曲線を用いることにより、機械要素の運動を滑らかにする運動の軌道を設計することができる。軌道をこのように設計できれば、力学的に無理のない運動が実現されて、運動誤差による機能低下や軌道損傷が少ない機械が実現できる。
特にねじ装置について、転動体の循環経路の設計に際して必要となる空間曲線の汎用的な発生方法を提供することができる。循環経路の空間曲線に沿って転動体が加減速を伴って運動する場合に、拘束力変化が滑らかな設計を可能とする。この特徴により、転動体は穏やかで滑らかな運動を行うので、ねじ装置の動力伝達効率が向上し、過大な摩擦力や慣性力の発生が抑制される。従って部品の損傷を防ぎ、信頼性の高いねじ装置を実現することができる。
また、曲率変化パターンを制御できるという特徴を活かして、産業分野へ多く応用できる。例えば審美的な意匠が要求される意匠形状設計において、この汎用的な曲線設計法を有効に適用することができる。
以下本発明の実施形態について、1.3次元クロソイド曲線の定義と特徴、2.3次元クロソイド曲線を用いた補間法、3.3次元クロソイド補間を用いて、ねじ装置としてのボールねじの回帰経路を設計する方法に分けて順次説明する。
1.3次元クロソイド曲線の定義と特徴
(1−1)3次元クロソイドの基本式
クロソイド曲線(Clothoid curve)は、別名コルニューの螺旋(Cornu’s spiral)とも呼ばれ、曲線の長さに比例して曲率が変化する曲線である。
発明者が既に提案している2次元のクロソイド曲線は、平面曲線(2次元曲線)の一種であり、図1に示されるxy座標上において、次式で表される。
Figure 0004743580
ここで、
Figure 0004743580
は曲線上の点を表わす位置ベクトル、
Figure 0004743580
は、その初期値(始点の位置ベクトル)である。
Figure 0004743580
は、曲線の接線方向を表わす単位ベクトル(長さが1のベクトル)であり、その方向φは原線(x軸方向)から反時計まわりに測られる。この単位ベクトルに微小長さdsをかけて積分すると曲線上の点Pが求められる。
曲線に沿って測った曲線の始点からの長さをsとし、その全長(始点から終点までの長さ)をhとする。sをhで割った値をSで表わす。Sは無次元の値であり、これを曲線長変数と呼ぶ。
クロソイド曲線の特徴は、式(2)で示したように、接線方向角φが曲線長sまたは曲線長変数Sの二次式で表わされることにある。c0,c1,c2またはφ0,φv,φuは二次式の係数であり、これら及び曲線の全長hをクロソイドのパラメータと呼ぶ。図2は一般的なクロソイド曲線の形状を示す。
以上の関係を3次元に拡張して、3次元クロソイド曲線の式を作る。従来3次元クロソイド曲線を与える式は知られていなかったが、発明者らは初めてこれを導いた。
3次元クロソイド曲線を以下の式で定義する。
Figure 0004743580
ここで、
Figure 0004743580
はそれぞれ、3次元クロソイド上の点の位置ベクトル、及びその初期値を示す。i,j,kはそれぞれ、x軸、y軸、及びz軸方向の単位ベクトルである。
uは点Pにおける曲線の接線方向を示す単位ベクトルであり、式(1-7)によって与えられる。式(1-7)において、E及びEは回転マトリクスであり、図3に示されるように、それぞれ、k軸(z軸)まわりの角度βの回転及びj軸(y軸)まわりの角度αの回転を表わしている。前者をヨー(yaw)回転、後者をピッチ(pitch)回転という。式(1-7)は、i軸(x軸)方向の単位ベクトルを、まずj軸(y軸)まわりにαだけ回し、しかるのちにk軸(z軸)まわりにβだけ回すことによって、接線ベクトルuが得られることを示している。
すなわち、2次元の場合は、曲線の接線方向を表す単位ベクトルeは、x軸からの傾き角度φから得られる。3次元の場合は、曲線の接線ベクトルuは、ピッチ角α及びヨー角βから得ることができる。ピッチ角αが0だと、xy平面で巻いた2次元クロソイド曲線が得られ、ヨー角βが0だと、xz平面で巻いた2次元クロソイド曲線が得られる。接線方向ベクトルuに微小長dsをかけて積分すると3次元クロソイド曲線が得られる。
3次元クロソイド曲線においては、接線ベクトルのピッチ角α及びヨー角βはそれぞれ式(1-8)及び式(1-9)に示すように、曲線長変数Sの2次式で与えられる。このことによって接線方向の変化を自由に選びながら、なおかつ、その変化に連続性を持たせることが可能になる。
以上の式によって示したごとく、3次元クロソイド曲線は「接線方向のピッチ角及びヨー角が、それぞれ曲線長変数の二次式で表わされる曲線である」と定義される。
0から始まる一つの3次元クロソイド曲線は、
Figure 0004743580
の7個のパラメータによって決定される。a0ないしb2の6つの変数は角度の単位を持ち、クロソイド曲線の形状を表わしている。これに対しhは長さの単位を持ち、クロソイド曲線の大きさを表わしている。3次元クロソイド曲線の典型的な例としては、図4に示されるような螺旋状の曲線がある。
(1−2)3次元クロソイド曲線上のフルネ標構と曲率
任意の3次元曲線があるとき、tをパラメータとしてR(t)で表すとする。特に、始点からの移動距離sをパラメータとしたときは、R(s)で表すとする。
dsだけ差がある曲線上の2点の相対位置ベクトルdR(s)の絶対値を線素dsと考えると、dsとdtの間には次の(2-1)式の関係がある。パラメータtによるRの微分を簡単のためドットを文字の上につけて表している。
Figure 0004743580
単位接線ベクトルu(t)は曲線の線素ベクトルdR(t)を基準化したものであるから(2-1)式を参照すると、(2-2)式で表わせる。
Figure 0004743580
次に、単位接線ベクトルの変化量duについて考える。図5は単位法線ベクトルの変化量を示す。直線の場合は接線方向は変わらないからdu(t)={0,0,0}であるが、曲線ではそうではなく、距離dsだけ離れた位置における単位接線ベクトルの変化量duは接線ベクトルuと直交する。これはu・u=1の関係を微分すると直交関係u・du=0が得られることからも明らかである。この単位接線ベクトルの変化量duを基準化したものが単位主法線ベクトルn(t)である。つまり、単位主法線ベクトルn(t)は(2-3)式で表される。
Figure 0004743580
法線方向は人が接線方向を向いたときの左方向を正とする。より正確な言い方では、ベクトルduと単位接線ベクトルu(t)とで作る平面内で、単位接線ベクトルu(t)から反時計まわりに90度回転した方向を単位主法線ベクトルn3(t)の正方向と定義する。
また、従法線ベクトルb(t)は、単位接線ベクトルu(t)と単位主法線ベクトルn(t)の両方に直交するベクトルであり、(2-4)式で定義される。
Figure 0004743580
定義された単位接線ベクトルu(t)、単位主法線ベクトルn(t)、従法線ベクトルb(t)を3つのベクトルの組{u(t),n(t),b(t)}としたものを、曲線の位置R(t)におけるフルネ標構(Frenet Frame)と呼ぶ。
続けて、曲線の線素に沿って単位接線ベクトルの曲がる割合である曲率κについて述べる。3次元における曲率は、(2-5)式で定義される。
Figure 0004743580
以上で定義される3次元曲線における基本的な量について、3次元クロソイド曲線において曲線長変数Sをパラメータとして用いた表現で記す。
任意の3次元クロソイド曲線P(S)を考えたとき単位接線ベクトルu(S)は、(2-2)式より、(2-6)式で表すことができる。
Figure 0004743580
また、単位接線ベクトルu(S)は3次元クロソイド曲線の定義式(1-7) (1-8) (1-9)を考慮すると次の(2-7)式の形で表すこともできる。本明細書では、こちらの表現を主として用いる。
Figure 0004743580
3次元クロソイド曲線の接線ベクトルu(S)の曲線長変数Sでの1階微分したものは(2-8)式で、その大きさは(2-9)式で表される。
Figure 0004743580
次に、単位主法線ベクトルn(S)について考える。3次元曲線の法線ベクトルは、(2-3)式で表されるので3次元クロソイド曲線の法線ベクトルは、(2-10)式で表されることになる。
Figure 0004743580
従法線ベクトルb(S)については、 (2-4)式により、(2-7)式の単位接線ベクトルu(S)と(2-10)式の単位主法線ベクトルn(S)から求めるものとした。
Figure 0004743580
最後に曲率についてであるが、(2-5)式を変形すると(2-12)式で表せる。
Figure 0004743580
以上より、3次元クロソイド曲線上の各点におけるフルネ標構と曲率κを曲線長変数Sから求めることができる。
(1−3)向きが逆な3次元クロソイド曲線の生成
図6のような、ある3次元クロソイド曲線と同じ大きさ、形状で向きが逆な3次元クロソイド曲線を生成することをについて考える。
始点Psと終点Peを持ち、3次元クロソイド曲線のクロソイドパラメータが、h,a0,a1,a2,b0,b1,b2の7つの値で決まる3次元クロソイド曲線C1があるとする。そのとき、接線回転角α1、β1は、下記の(2-13)(2-14)式で表される。
Figure 0004743580
この3次元クロソイド曲線と同じ大きさ、形状で向きが逆な3次元クロソイド曲線C2においては、始点をP’sと、P’eを終点とすると、それぞれP’s=Pe、P’e=Psとなる。まず曲線長hについて考えるが、同じ大きさであることを考えると曲線長は曲線C1、C2において等しい。次に3次元クロソイド曲線C2における接線tは、常に同じ座標の3次元クロソイド曲線C1における接線tと逆向きになることを考えると、曲線C1の接線回転角α1、β1と曲線C2の接線方向回転角α2、β2との間には、下記の関係があることがわかる。
Figure 0004743580
これらの式は整理すると、下記の(2-17)(2-18)式で表される。
Figure 0004743580
これによって残るパラメータが定まるので、曲線C2のクロソイドパラメータh ’, a ’0, a ’1, a ’2, b ’0, b ’1, b ’2は、曲線C1のパラメータを用いて、(2-19)式で表せることになる。
Figure 0004743580
この関係式を用いれば、同じ大きさ、形状で向きが逆な3次元クロソイド曲線を生成できる。
(1−4)3次元クロソイド曲線の分割
始点P1と終点P2を持ち、3次元クロソイド曲線のクロソイドパラメータが、h,a0,a1,a2,b0,b1,b2の7つの値で決まる3次元クロソイド曲線C0があるとする。このとき図7のように、点P1、P2を結ぶ3次元クロソイド曲線C0を、途中の曲線長変数がS=Sdである点Pmで分割し、曲線C1とC2とに分割する方法について考えていく。
分割された曲線のうち、点P1を始点とする曲線C1について考える。曲線長hについて考えると、3次元クロソイド曲線の定義より、曲線C1の曲線長h1は曲線C0の曲線長h0のSd倍に等しいことがわかる。また、同じ曲線C1上の点を意味するときの曲線C0の曲線長変数をS0、曲線C1の曲線長変数をS1とすると、これらの間には下記の関係が成り立つ。
Figure 0004743580
つまり、曲線C0の接線回転角α0、β0と曲線C1の接線回転角α1、β1との間には、下記の関係があることがわかる。
Figure 0004743580
これらの式は整理すると、下記の(2-22)式で表される。
Figure 0004743580
これによって接線方向が定まるので、曲線C1のクロソイドパラメータh ’, a ’0, a ’1, a ’2, b ’0, b ’1, b ’2は、曲線C0のパラメータを用いて、(2-23)式で表せることになる。
Figure 0004743580
次に分割点Pmを始点とする曲線C2について考える。曲線C2については、1-3で述べた大きさ、形状が同じで向きが逆な曲線を生成する方法と曲線C1の生成に用いた方法を組み合わせることによって生成できる。
まず、曲線C0と大きさ、形状が同じで向きが逆な曲線を曲線C’0とする。この曲線上において分割点Pmは、Pm=C’0(1-Sd)で表される。ここで曲線C’0を点Pmで分割することを考えると、その分割された曲線のうち点P2を始点とする曲線C’2は、曲線C2と大きさ、形状が同じで向きが逆な曲線になっている。1-3で述べた方法と曲線C1に用いた方法により曲線C’2は、生成することができるので、ここで、さらに曲線C’2に対して1-3で述べた方法を用いれば、曲線C2は生成することができる。
この曲線C2のクロソイドパラメータh", a"0, a"1, a"2, b"0, b"1, b"2は、曲線C0のパラメータを用いて、下記の(2-24)式で表せる。
Figure 0004743580
以上より、3次元クロソイド曲線C0上の曲線長変数がS=Sdである点Pmで曲線を曲線C1とC2とに分割することができる。
(1−5)3次元クロソイド曲線の特徴
(a)曲線の連続性
一つのクロソイド曲線(同一のパラメータで表わされるクロソイド曲線)においては、その接線方向のピッチ角及びヨー角がそれぞれ曲線長変数Sの2次式で与えられるので、これを1回微分して得られる法線方向、及び、2回微分して得られる曲率が曲線長変数Sに関して連続であることが保証される。言い換えれば、一つのクロソイド曲線の中では法線方向及び曲率が連続である。したがって、滑らかで性質の良い曲線が得られる。また、二つのクロソイド曲線を連結する場合にも、そのつなぎ目において接線、法線、曲率が連続になるようにパラメータを選択することによって、滑らかなひとつなぎの曲線を作ることができる。これをクロソイド曲線群という。
(b)適用性
曲線の接線方向を二つの角度(ピッチ角及びヨー角)で振ることができるので、さまざまな条件に合わせた3次元曲線を任意に作ることができ、いろいろな用途に用いることができ、工業製品の設計に必要となる空間曲線の汎用的な発生方法を提供することができる。空間曲線に沿って物体が加減速を伴って運動する場合に、拘束力変化が滑らかな設計を可能とする。また曲線長に対して曲率の変化を適切に設計できることにより、審美的な意匠曲線設計など、様々な産業分野に有効に適用される。
(c)幾何曲線との整合性
直線・円弧・ねじ曲線などの幾何曲線は、クロソイドパラメータのいくつかを0にし、あるいは、いくつかのパラメータ間に特定の関数関係を与えることによって作ることができる。これらの曲線はクロソイド曲線の一種であり、クロソイドのフォーマットを用いて表現できる。
また、αまたはβのいずれかを常に0と置くことによって、2次元クロソイドを作ることができるので、これまで2次元クロソイドについてすでに得られている資源を活用することができる。
すなわち、既に知られている2次元クロソイドを含めて、円弧や直線などの個別の曲線も、αやβを適切に設定することで表現できる。このような個別の曲線について同一の形式3次元クロソイド曲線式を用いることができるので、計算手順を単純化できる。
(d)見通しの良さ
スプライン補間などの従来の補間法では、自由曲線を数式化した際に、その全体の形、あるいは局部的な形が分かりにくいことが多いが、3次元クロソイドにおいては、ピッチ角及びヨー角のそれぞれを想定することによって、比較的容易に全体像を把握することができる。
また、クロソイド曲線として表現した途端に線長・接線方向・曲率等の値は既知となっており、従来の補間法のように、あらためて計算する必要がない。すなわち、曲線のパラメータSに対応して、(1-7),(2-10)及び(2-12)式に示すように、曲線の接線や、法線、曲率が直接的に求められる。
(e)運動制御のやりやすさ
曲線の主変数が長さsまたは正規化された長さSであり、曲線の方程式はこの長さに対する自然方程式で与えられている。このため、長さsを時間tの関数として定めることによって、加減速などの運動特性を任意に与えることができ、従来カムなどに用いられてきた特性の良い運動曲線を採用することによって、加工作業の高速化を図ることができる。長さsは実在のカルテシアン空間における値として与えられ、速度・加速度は接線方向に対して求められるので、従来の補間法のように各軸ごとに与えられた値を合成する必要がない。また、曲率の計算が容易なため、運動時の遠心加速度も容易に求められ、運動軌跡に応じた制御を行うことができる。
2.3次元クロソイド曲線を用いた補間法
(2−1)滑らかな接続の数学的条件
1本の3次元クロソイド曲線では、曲線の形状表現に限界がある。ここでは、数値制御による工具の運動制御を主な目的として、3次元クロソイド曲線(3次元クロソイド線分)を複数本接続し、この複数本の3次元クロソイド曲線によって工業製品の形状を設計する。3次元クロソイド曲線を用いた補間法を以降、3次元クロソイド補間と呼ぶ。以降、補間によって生成される曲線群全体を3次元クロソイド曲線と呼び、それを構成する単位曲線を3次元クロソイド線分と呼ぶ。
2本の3次元クロソイド線分がその端点で滑らかに接続されていることは、端点位置、接線および曲率が連続に接続されていることであると定義される。上述の定義式を用いて、この条件は、以下のように記述される。最初の3式は位置の連続性、次の2式は接線の連続性、次の1式は法線の一致、最後の式は曲率の連続性を示している。
Figure 0004743580
これは、接続点で接線ベクトルと法線ベクトル、曲率とα、β連続であるための十分条件であり、条件がきつすぎる場合がある。そこで純粋に条件を満たすように下記のように条件を変えることもできる。
Figure 0004743580
ここでさらに、
Figure 0004743580
であることを考慮にいれると
Figure 0004743580
は、下記の条件で置き換えられる。
Figure 0004743580
結局下記の条件を満たせば目的を達成することが出来ることがわかる。
Figure 0004743580
(3-3)式において、最初の3式は位置の連続性、次の2式は接線方向の連続性、次の1式は法線方向の一致、最後の式は曲率の連続性を示している。G2連続な補間を行うには、2本の3次元クロソイド曲線がその端点で(3-3)式の7つの条件式を満たす必要がある。
2連続(GはGeometryの頭文字)について補足する。図8はG連続な補間の条件を示す。
連続とは2本の3次元クロソイド曲線がその端点で位置が一致することをいい、G連続とは接線方向が一致することをいい、G連続とは接触平面(法線)及び曲率が一致することをいう。以下の表1にスプライン曲線で用いられるC〜C連続と本発明のクロソイド曲線で用いられるG〜G連続とを対比する。
Figure 0004743580
2本の3次元クロソイド曲線の連続性を考えたときに、C0→C1→C2、G0→G1→G2になるにしたがって補間条件が厳しくなる。C1連続では接線の大きさも方向も一致する必要があるが、G1連続では接線方向だけが一致すればよい。2本の3次元クロソイド曲線で接線を滑らかに接続する場合は、G1連続で条件式を作成するほうがよい。スプライン曲線のようにC連続で条件式を作成すると、幾何学的には関係のない接線の大きさが一致するという条件が入るので、条件が厳しくなりすぎる。G連続で条件式を作成すると、一次微分係数の大きさを自由にとれるという利点がある。
2連続では接触平面(法線)を一致させる。接触平面とは図9に示されるように曲線Cが局所的に含まれる平面S1,S2をいう。この図9では点Pにおいて接線方向が連続であるが接触平面S1,S2が不連続の例を示している。3次元曲線の連続性を考えたときに、接線方向の一致の次に考えなければいけないことは接触平面の一致である。曲率を議論するときには接触平面が一致していないと意味がなく、接触平面を一致させた上で曲率を一致させる必要がある。2本の3次元曲線で、座標、接線方向、接触平面(法線方向)及び曲率を一致させることがG2連続を満たす条件になる。
(2−2)具体的な計算手順
次の2種類の計算手順がある。
(a)曲線のパラメータh,α,βを与えて、1本の3次元クロソイド曲線を発生させ、その端点で、(3-3)式を満たすように次の3次元クロソイド曲線のパラメータを定める。このようにして、次々と滑らかに接続する3次元クロソイド曲線を発生させることができる。この計算手順によれば、曲線パラメータの算出は容易であり、これを順解と呼ぶ。この方式によれば、様々な形状の曲線を容易に発生できるが、曲線が通過する接続点を明示的に指定することはできない。
(b)予め指定された点群が曲線の接続点となるように、3次元クロソイド曲線を接続することが出来る。ここでは、離散的に任意に与えられた点列の各区間毎に短いクロソイド曲線(クロソイドセグメント)を作成する。この場合には、(3-3)式を満たすように曲線パラメータを決定する計算手順は(a)より複雑であり、繰り返し収束計算となる。この計算手順を、接続条件から逆に曲線パラメータを決定する、ということから、逆解と呼ぶ。
上記(b)の逆解について、計算手法を詳細に記述する。解くべき計算問題は、次のように定式化される。
未知パラメータ:曲線パラメータ
拘束条件:(3-3)式、あるいはその一部
要求される問題に応じて、拘束条件の数は変化し、それに見合う数の曲線パラメータを未知パラメータとして設定すればよい。例えば、曲率の連続性が要求されない場合には、一部の曲線パラメータを自由に動かすことが出来る。あるいは、曲率連続でかつ接線方向が指定されている場合には、補間に用いる3次元クロソイド曲線の数を分割により増やして、対応する未知曲線パラメータを増やす必要がある。
上記の繰り返し収束計算を安定に収束させるためには、計算上の工夫が必要である。計算の発散を避け、収束を速めるために、未知パラメータについてより良い初期値を設定することは有効である。そのために、与えられた接続点などの拘束条件を満たす、より単純な補間曲線、例えば線形スプライン曲線などを発生させ、その曲線形状から、3次元クロソイド曲線の曲線パラメータを推算して、繰り返し収束計算の初期値とすることは有効である。
あるいは、満たすべき拘束条件を一気に満たすのではなく、順次条件式を増やしていく方式も、安定に解を得る手法として有効である。例えば、曲線発生の手順を次のような三つのSTEPに分けて、順次実行する。第1STEPとして位置情報と接線方向が一致するように補間した後で、第2STEPとして法線方向を一致するように補間を行い、第3STEPで曲率も一致するように補間する。この手法の流れの概要を図10に記す。必要な3次元クロソイド曲線式及びその接線、法線や曲率の定義式は既に示した。
(2−3)3次元クロソイド曲線を用いた補間法の実施例
(a)補間法の流れ
3次元クロソイド曲線を用いて与えられた点列の間を滑らかに補間していく手法の一実施例について詳しく述べる。
3次元クロソイド補間の基本の流れとしては、補間対象の点間を結ぶ3次元クロソイドセグメントの各パラメータを未知数とし、厳密に補間対象の点を通り、かつG2連続となるような条件を満たす解をニュートン・ラプソン法で求めて曲線を生成する。この流れの概要をまとめたものが図11である。G2連続とは、2本の3次元クロソイド曲線がその端点で位置、接線方向、法線方向及び曲率が一致することをいう。
(b)G2連続な補間の条件
3次元クロソイド補間において、厳密に補間対象の点を通り、かつG2連続となるような条件について具体的な条件を考える。
今、簡単に3つの点P1={ Px1, Py1, Pz1}, P2={ Px2, Py2, Pz2}, P3={ Px3, Py3, Pz3}があり、その点を3次元クロソイド線分で補間することを考える。図12は点P1, P2, P3の3次元クロソイド補間を示す。点P1, P2間を結ぶ曲線を曲線C1、点P2, P3間を結ぶ曲線を曲線C2とすると、この場合未知数は、曲線C1のパラメータa01, a11, a21, b01, b11, b21, h1、曲線C2のパラメータa02, a12, a22, b02, b12, b22, h2の14個となる。また、以後説明にでてくる文字のサブスクリプトは各曲線のサブスクリプトに対応している。
ここで厳密に補間対象の点を通り、かつG2連続となるような条件を考える。まず、始点においては厳密に補間対象の点を通るという条件は3次元クロソイド曲線の定義から考えると、始点を与えた時点で必然的に達成されるので補間条件はない。次に接続点P1では位置について3つ、接線ベクトルについて2つ、曲率連続の条件の式が大きさと方向について2つの合計7個成り立つ。また終点については、点P2では位置について3つの3個である。以上より条件式は合計で10個ある。しかし、これでは未知数14個に対して、条件式が10個しか存在しないので未知数の解を求めることができない。そこで、本研究においては、両端点の接線ベクトルを与え、両端点について2つづつの条件を増やし条件式と未知数の数を等しくした。また、始点における接線方向を決定すればa01, b01は、その定義式より求めることができるので未知数として扱わないことにした。以下、各条件について考えていく。
まず、位置の条件について考えると、(4-1)(4-2)(4-3)式より、下記の3つのが成り立つ。(以下自然数i<3とする。)
Figure 0004743580
次に、接線方向について考えると(4-4)(4-5)の2つの式が成り立つ。
Figure 0004743580
曲率κの大きさについては、次の式(4-6)が成り立つ。
Figure 0004743580
最後に法線方向ベクトルnについて考える。3次元クロソイド曲線の法線ベクトルnは、 (2-10)式で表される。
ここで3次元クロソイド曲線の接線ベクトルuの決定と同様に回転を用いて、法線ベクトルnを考えてみる。初期接線方向(1,0,0)に対して、初期法線方向を定数γを用いて(0,cosγ,−sinγ)で表すとする。これを接線と同じように回転させると、法線nは式(4-7)のように表される。
Figure 0004743580
(2-10)(4-7)式を比較すると、sinγ, cosγは (4-8) 式に対応していることがわかる。
Figure 0004743580
つまり、式(4-8)より、3次元クロソイド補間における接続点での法線連続を達成するにはtanγが、連続であればよいことがわかる。
Figure 0004743580
つまり法線連続である条件は、式(4-10)であることがわかる。
Figure 0004743580
ここでさらに、
Figure 0004743580
であることを考慮にいれると条件式(4-10)は、下記の条件式(4-12)で置き換えられる。つまり、法線連続である条件は(4-12)式である。
Figure 0004743580
以上をまとめると厳密に補間対象の点を通り、かつG2連続となるような条件は接続点では式(4-13)のようになることがわかる。また、始点・終点においてもこれらのうちのいくつかの条件が選択される。
Figure 0004743580
以上より、未知数a11, a21, b11, b21, h1 ,a02, a12, a22, b02, b12, b22, h2の12個に対して、条件式は下記の12個が成り立つことがわかる。(点P3における接線方向回転角をα3、β3とする。)
Figure 0004743580
これで未知数12個について12個の式が成り立つので解を求めることができる。これをニュートン・ラプソン法によって解き、解を求める。
また、一般的にn個の点列を補間するときを考えるときも、条件式は今述べてきた自然数iをi<nと拡張すればよい。後は未知数と条件式の数の問題である。
例えばn-1個の点列があるとき、N個の未知数とN個の関係式が成り立つとする。ここでさらに1点増えたとすると、未知数は3次元クロソイド線分Pn-1,Pnのクロソイドパラメータa0n, a1n, a2n, b0n, b1n, b2n, h nの7つが増える。一方で、条件式は、接続点がひとつ増えるので点Pn-1で位置について3つ、接線ベクトルについて2つ、点Pn-1の曲率連続の条件の式が大きさと方向について2つの合計7つ増える。
n=3では未知数、関係式ともに12個であることがわかっているから、n≧3では、未知数は7(n−2)+5個、これに対して成り立つ式も7(n−2)+5個ある。これで未知数とそれに関する条件の数が等しくなるので、n個の自由点列の場合も3点の場合と同様の方法で解を求めることが可能である。解法としては、未知数と条件式の間には (4-15)(4-16) 式の関係が成り立つことを利用したニュートン・ラプソン法を用いて解いた。(条件をF未知数をu、誤差ヤコビアン行列Jとする。)
Figure 0004743580
以上より、n個の点列に対しても厳密に補間対象の点を通り、かつG2連続となるような3次元クロソイド補間が行えることがわかる。
(C)初期値の決定
ニュートン・ラプソン法においては、解の探索を始める際に適当な初期値を与える必要がある。初期値はどのように与えられてもいいが、ここではその初期値の与え方の一例について述べる。
補間では、まず点列から各未知数の初期値を決定する必要があるが、本研究ではLiらの3D Discrete Clothoid Splinesの多角形Qの単純形である補間対象点列間に頂点を4つもつものを生成し、この多角形Qからその初期値を算出し、決定した。3D Discrete Clothoid Splinesは、厳密に補間対象点を通り、曲率が始点からの移動距離に対して滑らかに変化するような性質を持っている。本明細書では3次元クロソイド補間のための初期値を、図13のようなr=4の3D Discrete Clothoid SplinesのポリゴンQを作り、そこから計算で決定した。
ここで3D Discrete Clothoid Splinesについて補足説明する。図14に示されるようにまず、補間対象の点列を頂点とする多角形Pを作り、Pの各頂点間に同じ数r個づつ新たな頂点を挿入し、P⊂Qとなるような多角形Qを作る。ここでPの頂点がn個あるとすると、ポリゴンQは閉じている場合でrn個、開いている場合でr(n-1)+1個の頂点を持つことになる。以後サブスクリプトを始点からの通し番号として、各頂点をqiで表すことにする。また、各頂点において、方向として従法線ベクトルbを、大きさとして曲率κを持つようなベクトルkを定める。
このとき、下記の頂点同士が等距離になるような式(4-17)を満たし、曲率が始点からの移動距離に比例するような条件に最も近くなるときの(式(4-18)の関数を最小化するときの)ポリゴンQを 3D Discrete Clothoid Splinesと言う。
Figure 0004743580
3D Discrete Clothoid Splinesでは各頂点のフレネ標構がすでに求まっている。そこで、その単位接線方向ベクトルtよりパラメータa0, b0を求める。この接線方向ベクトルtはポリゴンQを求めたときにすでに既知となっており、このtと3次元クロソイド曲線の接線の式とにより、ポリゴンQの頂点の接線方向回転角α,βが求まる。これにより各曲線のa0, b0の初期値が求まる。また、始点から始まる3次元クロソイド線分においては、その値を与える。
Figure 0004743580
ここで、3D Discrete Clothoid Splinesは、頂点が等距離に並んでいることを考えると、図13の点q4i+1では、曲線長変数Sが1/4であると近似することができる。同様に点q4(i+1)-1では、曲線長変数Sが3/4であると近似することができる。これらを3次元クロソイド曲線のαの式とをあわせて考慮すると下記の式(4-20)が成り立つ。
Figure 0004743580
この式は未知数がa14iとa24iの2次元連立方程式になっており、これを解いてパラメータa1, a2の初期値とする。同様にパラメータb1, b2の初期値も決定できる。
残る未知数は曲線長hであるが、この初期値ついては3次元クロソイド曲線の曲率の式より算出する。3次元クロソイド曲線の曲率は、式(4-21)で表される。
Figure 0004743580
この式を変形すると式(4-22)になり、hの初期値が決定される。
Figure 0004743580
以上の方法で7つの3次元クロソイドパラメータについて初期値を決定することができる。この決定した初期値を用い(b)で述べたようなG2連続となるような条件下で各曲線のパラメータの近似値をニュートン・ラプソン法によって求めた。これによって得られたパラメータから3次元クロソイド線分を生成し、点列間を3次元クロソイド曲線で補間することを行った。
(d)補間例
実際に以上に述べた手法で点列を補間した例として(0.0, 0.0, 0.0), (2.0, 2.0, 2.0), (4.0, 0.0, 1.0), (5.0, 0.0, 2.0)の4点を3次元クロソイド補間した例を挙げる。補間により生成された3次元クロソイド曲線の透視図を図15に載せた。図15は実線が3次元クロソイド曲線であり、破線、一点鎖線、二点鎖線の直線は曲線上の各点における、大きさをlog(曲率半径+自然対数e)に、方向を法線ベクトルにとった曲率半径変化パターンである。
さらに表2に各曲線のパラメータを、また表3に、各接続点での座標・接線・法線・曲率のずれを載せた。これらより各接続点でG2連続となるような3次元クロソイド曲線が生成されていることがわかる。また、図16は横軸に始点からの移動距離、縦軸に曲率を取った曲率変化グラフである。
Figure 0004743580
Figure 0004743580
(2−4)両端における各値の制御を考慮したG2連続な3次元クロソイド補間
(a)補間条件と未知数
2-3で述べたように、曲線が開いている場合で補間対象の点がn個あるとき、点列はn-1個の曲線で3次元クロソイド補間される。厳密に各点を通るなら各3次元クロソイド線分について未知数はa0, a1, a2, b0, b1, b2, hの7つあるので、未知数は全体で7(n-1)個あることになる。一方、条件式については、n-2個ある接続点ごとに座標、接線、法線、曲率の7個づつと終点における座標の3個が存在するので、全部で7(n-2)+3個である。2-3の手法ではこれに始点・終点における接線ベクトルを与え、条件を4個増やすことによって、条件式と未知数の数を合わせていた。
ここで、始点・終点における接線・法線・曲率を制御し、かつG2連続となるように補間するなら、条件は両端における接線を制御したときと比べて、さらに始点・終点で法線・曲率について2個づつの合計4個増えることになる。すると、条件式は全部で7n-3個ということになる。この場合、未知数の数が条件より少なくなるため、ニュートン・ラプソン法で解を求めることはできない。そのため、なんらかの方法で未知数を増やす必要がある。
そこで、ここでは、補間対象点を新たに挿入することによって未知数と条件式の数とを等しくすることにした。例えば、4つ未知数の方が多いのであれば、新たな点を2つ挿入し、各点の座標のうち2つを未知数として扱う。
この場合接続点が2つ増えるので、各接続点について条件が座標、接線、法線、曲率の7個づつの14個増える。一方で、未知数は3次元クロソイド線分が2つ増えるので、a0, a1, a2, b0, b1, b2, hの7つづつの合計14個の未知数が増えることになる。このとき点列に含まれる点の数はn+2個であるから、全体で考えると未知数は7(n+1)個、条件式は7(n+1)+4個ということになる。ここでさらに、新たに挿入した点の座標のうち2つを未知数として扱うとすると、未知数は4つ増えることになる。すると、未知数も条件式も7(n+2)-3個となり、未知数の解を求めることができるようになる。このように新たな点を挿入することによって、与えられた各点を厳密に通りG2連続かつ、両端点の接線・法線・曲率を制御した補間を行うことが可能になる。
さらに一般的な場合について考える。n個の点列を補間するとき、両端点でm個の項目を制御する場合についての挿入する点の数とその点において未知数として扱う座標の数について考える。先にも書いたが、曲線が開いている場合、点列はn-1個の曲線で補間される。もし、厳密に各点を通るなら各3次元クロソイド線分について未知数はa0, a1, a2, b0, b1, b2, hの7つあるので、未知数は全体で7(n-1)個あることになる。一方、条件式については、n-2個ある接続点ごとに座標、接線、法線、曲率の7個づつと終点における座標の3個が存在するので、全部で7(n-2)+3個であり、条件式の方が4つ少ない。つまり、両端点おいて制御されるべき項目は4つ以上ということになる。以下、説明中でmは4以上の自然数、kは2以上自然数であるとして、新たに点を挿入したときに条件式と未知数の数を等しくする方法について述べる。
(i) m=2kのとき
両端であわせてm=2k個の項目を制御するとき、未知数は全体で7(n-1)個、条件式は全体で7(n-1)-4+2k個である。このとき過剰な条件式は2k-4個である。今、k-2個の点を新たに挿入することを考えると、3次元クロソイド線分がk-2本、接続点がk-2個増えるので、未知数は全体で7(n+k-3)個、条件式は全体で7(n+k-3)-4+2k個となる。ここでさらに新たに挿入した各点の座標の値のうち2つ(例えばx,y)を未知数として扱うとすると、未知数は全体で7(n+k-3)+2(k-2)個、条件式は全体で7(n+k-3)+2(k-2)個となり未知数と条件式の数が等しくなる。
(ii) m=2k+1のとき
両端であわせてm=2k+1個の項目を制御するとき、未知数は全体で7(n-1)個、条件式は全体で7(n-1)+2k-3個である。このとき過剰な条件式は2k-3個である。今、k-1個の点を新たに挿入することを考えると、3次元クロソイド線分がk-1本、接続点がk-1個増えるので、未知数は全体で7(n+k-2)個、条件式は全体で7(n+k-2)-3+2k個となる。ここでさらに新たに挿入した各点の座標の値のうち2つ(例えばx,y)を未知数として扱うとすると、未知数は全体で7(n+k-2)+2(k-2)個、条件式は全体で7(n+k-2)+2k-3個となり条件式の数が1つ多くなる。そこで、m=2k+1の場合には挿入した点のうちひとつの点においては座標の値のうち1つだけを未知数として扱うとする。そうすることで、未知数は全体で7(n+k-2)+2(k-2)個、条件式は全体で7(n+k-2)+2(k-2)個となり未知数と条件式の数が等しくなる。
以上に述べた方法のように、追加される条件の数に合わせて、挿入した点の座標のうち未知数にする数を調整することで接線、法線、曲率以外の例えば接線回転角αを制御する場合などの種々の場合でも未知数と条件式の数をあわせることができ、理論上両端点の各値を制御することができる。また、制御項目と未知数、条件式の数についてまとめたものを表4に記す。
Figure 0004743580
(b)手法
始点・終点で各値を制御する3次元クロソイドを用いた補間法は、図17及び図18に示されるように以下の流れで行われる。
Step1)制御する条件のうち4つだけを用いて厳密に補間対象点を通り、かつG2連続な補間を行い曲線を生成する。
Step2)生成された曲線上に新たな点を挿入し、条件式と未知数の数を調整する。
Step3)Step1の曲線パラメータを初期値として、目的の条件を満たすような各曲線のパラメータの近似値をニュートン・ラプソン法によって求める。
以下、各Stepについて説明を補足する。まずStep1においては、接線方向を制御するのであれば、2-3の手法を用いて曲線を生成する。また、接線方向を制御しない場合についても、その曲線のパラメータを求める際の初期値としては、2-3の手法と同じ初期値を用いる。
次にStep2において新たな点を挿入し、条件と未知数の数の調整を行うことになる。この際、新たに挿入する点は、各補間対象点間において可能な限り1つ以下になるようにする。また、挿入される点としては補間対象点同士を結ぶStep1で生成された3次元クロソイド線分の中間の点を挿入した。さらに、挿入される点は両端から順々に挿入していくものとする。つまり、最初に挿入されるのは始点とその隣の点の間と終点とその隣の点の間である。
最後にStep3についてであるが、Step3で行うニュートン・ラプソン法のための初期値を新たに決定する必要がある。そのため、新たな点が挿入された曲線については、1-4で述べた3次元クロソイド曲線を分割する手法を用いて曲線を分割し、生成された曲線の各値から決定した。点が挿入されていない曲線については、Step1で生成した曲線の値をそのまま用いる。以上で、Step3における曲線の各パラメータの初期値を決定した。この初期値を用いて、ニュートン・ラプソン法によって得られたパラメータから3次元クロソイド曲線を生成し、点列間を目的の条件を満たすような3次元クロソイド曲線で補間を行った。
(C)補間例
実際に両端での接線、法線、曲率を表5の条件で制御しするように3次元クロソイド補間した例を示す。厳密に通るべき補間対象の点に通し番号を振り、P1, P2, P3とした。
Figure 0004743580
この条件で、実際に補間を行った結果を図19に示す。実線の曲線が3次元クロソイド曲線、破線・一点鎖線・二点鎖線・三点鎖線は各曲線の曲率半径変化パターンを示している。また、図20に図19の曲線の線種に対応させた各曲線の始点からの移動距離と曲率の関係のグラフを記す。生成された曲線は、表6からわかるように与えた条件を満たしていることがわかる。
Figure 0004743580
(d)中間点での値の制御
(b)の手法により、両端点における各値を制御しつつ、G2連続な補間が行えるようになった。ここで、両端点でなく中間点において値を制御する場合について考える。
例えば図21のような点列を補間する場合において、中間点Pcで接線、法線を制御することを考える。しかし、今まで述べてきた手法では中間点における値を制御することはできない。そこで、ここではこの点列を2つに分けることによって中間点での値を制御した。
すなわち、点列に対して一挙に補間を行うのではなく、中間点Pcを挟んで曲線C1とC2とに分けて補間を行う。その場合点Pcは、端点にあたることになるので(b)の手法を用いれば値を制御することができるようになる。
このように制御したい値のある点で区分を分け、その両端における値を制御して補間した結果生成される曲線を繋いでいけば、理論上、各点において接線・法線・曲率の制御可能な3次元クロソイド補間を行うことができる。
(2−5)両端点での接線、法線、曲率を制御した3次元クロソイド補間
(a)手法の流れ
始点・終点で各値を制御する3次元クロソイドを用いた補間法は、図22に示される以下の流れで行われる。以後、この流れに沿って説明する。
(b-1)補間対象の点を与える。
この例では3次元空間の3点{0.0, 0.0, 0.0},{5.0, 5.0, 10.0},{10.0, 10.0, 5.0}を与えた。その他各点に与えた接線、法線、曲率などの条件をまとめて表7に記した。
Figure 0004743580
(b-2)r=4の3DDCSの生成
ニュートン・ラプソン法においては、解の探索を始める際に適当な初期値を与える必要がある。ここではその初期値を得るための準備をする。先行研究である3D Discrete Clothoid Splinesは、厳密に補間対象点を通り、曲率が始点からの移動距離に対して滑らかに変化するような性質を持っている。そこで、本研究では3次元クロソイド補間のための初期値を、図23のようなr=4の3D Discrete Clothoid SplinesのポリゴンQを作り、そこから計算で決定した。また、実際にこの点列より生成されたポリゴンを図24に、頂点の座標を表8に載せた。
Figure 0004743580
(b-3)初期値の決定
ニュートン・ラプソン法で解を求めるには、各未知数の初期値を決定する必要がある。本手法ではその値をb-2で生成したポリゴンQを使って、各未知数の近似値を求めて決定する。3D Discrete Clothoid Splinesでは各頂点のフレネ標構がすでに求まっている。そこで、b-2で生成したポリゴンQの単位接線方向ベクトルtよりパラメータa0, b0を求める。この接線方向ベクトルtはポリゴンQを求めたときにすでに既知となっており、このtと3次元クロソイド曲線の接線の式とにより、ポリゴンQの頂点の接線方向回転角α,βが求まる。これにより各曲線のa0, b0の初期値が求まる。また、始点から始まる3次元クロソイドセグメントにおいては、その値を与える。
Figure 0004743580
ここで、3D Discrete Clothoid Splinesは、頂点が等距離に並んでいることを考えると、図23の点q4i+1では、曲線長変数Sが1/4であると近似することができる。同様に点q4(i+1)-1では、曲線長変数Sが3/4であると近似することができる。これらを3次元クロソイド曲線のαの式とをあわせて考慮すると下記の式が成り立つ。
Figure 0004743580
この式は未知数がa14iとa24iの2次元連立方程式になっており、これを解いてパラメータa1, a2の初期値とする。同様にパラメータb1, b2の初期値も決定できる。
残る未知数は曲線長hであるが、この初期値については3次元クロソイド曲線の曲率の式より算出する。3次元クロソイド曲線の曲率は、下記で表される。
Figure 0004743580
この式を変形すると以下の式になり、hの初期値が決定される。
Figure 0004743580
以上の方法で7つの3次元クロソイドパラメータについて初期値を決定することができる。
実際にこの手法により求めた初期値を表9に記す。
Figure 0004743580
(b-4).厳密に各点を通り、G2連続な3次元クロソイド補間
(b-3)で決定した初期値を用いてG2連続となるような条件下で各曲線のパラメータの近似値をニュートン・ラプソン法によって求める。これによって得られたパラメータから3次元クロソイドセグメントを生成し、点列間を3次元クロソイド曲線で補間することを行った。
ここで、3点の3次元クロソイド補間において、厳密に補間対象の点を通り、かつG2連続となるような条件について具体的な条件を考える。図25は点P1, P2, P3の3次元クロソイド補間を示す。点P1, P2間を結ぶ曲線を曲線C1、点P2, P3間を結ぶ曲線を曲線C2とすると、a01とb01は既に既知であるから、未知数は、曲線C1のパラメータa11, a21, b11, b21, h1、曲線C2のパラメータa02, a12, a22, b02, b12, b22, h2の12個となる。以後説明にでてくる文字のサブスクリプトは各曲線のサブスクリプトに対応しており、各曲線における座標、接線回転角α、β、法線、曲率を曲線長変数Sの関数としてPxi, Pyi, Pzi, αii, ni, κiのように表す。
まず、点P1においては厳密に補間対象の点を通るという条件は3次元クロソイド曲線の定義から考えると、始点を与えた時点で必然的に達成される。また接線方向についても既に既知な値として与えるので点P1における条件は特に指定しない。
次に点P2について考える。点P2は曲線同士の接続点であり、G2連続になるには位置、接線、法線、曲率が連続する必要がある。つまり点P2において成り立つべき条件は下記のようになる。
Figure 0004743580
最後に点P3について考える。点P3は終点であり、満たすべき条件は位置、接線のみであるので以下の5つの条件が成り立つ。ここでα3、β3は、与える終点における接線ベクトルを決める接線方向回転角α、βであるとする。
Figure 0004743580
以上より、未知数a11, a21, b11, b21, h1 ,a02, a12, a22, b02, b12, b22, h2の12個に対して、条件式は下記の12個が成り立つことがわかる。まとめると成り立つ条件式は下記のようになる。
Figure 0004743580
これで未知数12個について12個の式が成り立つので解を求めることができる。この式をニュートン・ラプソン法によって解き、解を求めた。表10に初期値と解を記す。
Figure 0004743580
(b-5).曲線の生成
図26は(b-4)で求めたパラメータを元に生成した曲線とb-2で生成したポリゴンとを同時に表示したものである。実線の曲線が曲線C1、破線の曲線が曲線C2である。この段階では始点・終点で接線方向を制御したG2連続な3次元クロソイド曲線になっている。
(b-6).条件式と未知数
ここで、さらに始点P1と終点P3における法線と曲率も表7で与えた値にすることを考える。始点・終点でさらに法線と曲率を制御するには、始点と終点における条件をそれぞれ2つ増やす必要がある。しかし、条件が4つ増えた状態では未知数の数との関係からその条件を満たす解を求めることが出来ない。そこで、未知数と条件式の数を合わせるために、図27に示されるように曲線C1の曲線長変数S=0.5の位置に点DP1を新たに挿入した。また、曲線C2のついても曲線長変数S=0.5の位置に点DP2を新たに挿入した。
このとき、点P1と点DP1を結ぶ曲線を曲線C’1、点DP1と点P2を結ぶ曲線を曲線C’2、点P2と点DP2を結ぶ曲線を曲線C’3、点DP2と点P3を結ぶ曲線を曲線C’4とする。以後説明にでてくる文字のサブスクリプトは各曲線名に対応しており、例えば曲線Cにおける座標、接線回転角α、β、法線、曲率を曲線長変数Sの関数としてPxc, Pyc, Pzc, αcc, nc, κcのように表す。また、始点・終点においては、座標、接線回転角α、β、法線、曲率を始点ではPxs, Pys, Pzs, αss, ns, κs、終点ではPxe, Pye, Pze, αee, ne, κeのように表す。
以下に各点において成り立つ条件を記す。
Figure 0004743580
以上より、全体で成り立つべき条件式は32個である。ここで、各曲線が持つクロソイドパラメータはa0, a1, a2, b0, b1, b2, hの7つづつであり、かつ、曲線が4本なので未知数は28個となる。しかし、これでは未知数と条件式の数が等しくないので、解を求めることが出来ない。そこで新たに挿入した2つの点DP1,DP2のy,z座標を未知数として扱い、未知数を4つ増やした。こうすることで未知数も条件式も32個となり、解を求めることができる。
(b-7).初期値の決定
(b-6)で立てた条件式を満たす解を求めるためにニュートン・ラプソン法を用いるが、その収束率を上げるために未知数の初期値を決定する。方法としては、図28のように(b-5)で生成した3次元クロソイド曲線を新しく挿入した点の前後で分割することにより、3次元クロソイド曲線を4本作り、そのクロソイドパラメータを与えた。
曲線の分割法については、曲線C1を曲線C'1と曲線C'2とに分割する方法を説明すると、曲線C'1のクロソイドパラメータh', a'0, a'1, a'2, b'0, b'1, b'2は、曲線C1のパラメータを用いて、下記の式で表せる。ここでSdは分割点における曲線長変数でここでは0.5である。
Figure 0004743580
次に分割点DP1を始点とする曲線C’2について考える。まず、曲線C1と大きさ、形状が同じで向きが逆な曲線を曲線C'' 1とすると、その曲線はのクロソイドパラメータh'', a''0, a''1, a''2, b''0, b''1, b ’’2は、曲線C1の曲線のパラメータを用いて、下記の式で表せる。
Figure 0004743580
この曲線上において分割点DP1は、DP1=C''1(1-Sd)で表される。ここで曲線C''1を点DP1で分割することを考えると、その分割された曲線のうち点P2を始点とする曲線C''2は、曲線C'2と大きさ、形状が同じで向きが逆な曲線になっている。曲線C'1を生成した方法により曲線C''2は、生成することができる。ここで、さらに曲線C''2に対して大きさ、形状が同じで向きが逆な曲線を生成すれば、曲線C2は生成することができる。
以上の方法で、3次元クロソイド曲線C1上の曲線長変数がS=0.5である点DP1で曲線C1を曲線C'1とC'2とに分割することができる。同様の手法で、曲線C2上の曲線長変数がS=0.5である点DP2で曲線C2を曲線C'3とC'4とに分割することができる。
この方法で分割した4つの曲線のパラメータを表11に載せた。この曲線のパラメータをb-6で立てた条件式を満たす解を求める際のニュートン・ラプソン法の初期値に用いた。
Figure 0004743580
(b-8).条件を満たすクロソイドパラメータを求める
(b-7)で決定した初期値を元に、(b-6)で立てた条件式を満たす解をニュートン・ラプソン法で求めた。表12は算出された各曲線のパラメータである。また、表13は与えた値と生成された曲線の始点・終点の接線、法線、曲率の差を示したものである。
Figure 0004743580
Figure 0004743580
(b-9).曲線の生成
(b-8)で求めたパラメータにより生成された曲線を図29に示す。実線が3次元クロソイド曲線、破線・一点鎖線・二点鎖線・三点鎖線は各曲線の方向を主法線方向に、大きさを曲率半径に自然対数を足して対数を取った曲率半径変化パターンを示している。また、図30に図29の線の種類に対応させた各曲線の始点からの移動距離sと曲率κの関係のグラフを記す。生成された曲線は、表12からわかるように与えた条件を満たしていることがわかる。
以上で、両端で接線、法線、曲率を制御した3次元クロソイド補間法による曲線生成の例を記した。
3.3次元クロソイド補間を用いたボールねじの回帰経路の設計方法
3次元クロソイド曲線の機械設計への応用事例として、デフレクタータイプのボールねじの回帰経路の設計を行う。
(3−1)デフレクタータイプのボールねじの説明
図31乃至図35はデフレクタータイプのボールねじを示す。デフレクタはねじ溝を転がるボールの回帰経路を構成する。デフレクタには、ナットと別体で形成された後、ナットに固定されるタイプと、ナットに一体に形成されるタイプのものがある。図31はデフレクタがナットと別体のタイプを示す。
以下にデフレクタがナットと一体のタイプのボールねじについて説明する。図32は、デフレクタがナットと一体のタイプのボールねじのナット1を示す。ナット1の内周面には、一周未満の螺旋状の負荷転動体転走溝として、負荷ボール転走溝2が形成される。負荷ボール転走溝2は後述するねじ軸のボール転走溝に一致させたリードを有する。回帰経路としてのボール循環溝3は、負荷転走溝の一端と他端を接続し、負荷ボール転走溝2と逆方向のリードを有する。これら負荷ボール転走溝2及びボール循環溝3で一つの一巻き溝4を構成する。図33中(A)はボール循環溝3が見える状態のナット1の斜視図を示し、図33中(B)は負荷ボール転走溝2が見える状態のナット1の斜視図を示す。
このナット1をねじ軸に組み合わせた状態を示すのが図34である。
ねじ軸5の外周面には、所定のリードを有する螺旋状の転動体転走溝として、ボール転走溝6が形成されている。ナット1の負荷ボール転走溝2は、ねじ軸5のボール転走溝6に対向する。ナット1の負荷ボール転走溝2及びボール循環溝3とねじ軸5のボール転走溝6との間には、転がり運動可能な複数の転動体として、複数のボールが配列される。ナット1がねじ軸5に対して相対的に回転するのに伴い、複数のボールがナット1の負荷ボール転走溝2とねじ軸5のボール転走溝6との間で負荷を受けながら転がり運動する。
図32に示されるナット1のボール循環溝3が図31に示されるデフレクタに対応する部分である。ボール循環溝3は、ねじ軸5の負荷ボール転走溝2を転がるボールがねじ軸5の周囲を一巡して元の負荷ボール転走溝に戻るように、ボールをねじ軸5のねじ山7を乗り越えさせる。
従来のモデルの循環経路は図35の展開図をねじ軸に巻きつけたときに、経路をねじ山とボールがぶつからぬ程度にねじ軸中心から離すことで作られているが、この経路は図36の曲率変化を見てわかる通り、曲率不連続である。そこで3次元クロソイド補間を用いて循環経路を曲率連続な経路に再設計する。
図37はボール中心の軌道を示す。ボールの循環経路が全体としてG連続になるようにするには、ボールが回帰経路に移る点においてG連続となる必要がある。このため回帰経路の設計にあたって、回帰経路の両端点で接線、法線、曲率を制御する必要性があることを考慮した。
(3−2)以下に、3次元クロソイド曲線を用いてデフレクタータイプのボールねじの回帰経路を設計した例を記す。
(a-1). ねじ軸とボール
本設計において用いたねじ軸とボールの寸法を表14に記す。
Figure 0004743580
(a-2). 対称性と座標系
デフレクタータイプのボールねじの回帰経路は、その使用用途から軸対称である必要がある。そこで本設計で用いた座標系について説明する。
まず、図38ようにz軸をねじ軸方向に取る。図38の実線はねじ溝にそってボールを動かしたときにボールの中心が描く軌道である。また、回帰経路に入る点を点Ps、回帰経路からねじ溝に戻る点を点Peとし、点Psと点Peとの中点を点Pmとした。点Psと点Peは図39のようにxy平面への投影図で見ると、原点O、点Psと点Peで二等辺三角形を作るが、この二等辺三角形の∠PsOPeの垂直二等分線の方向をy軸方向と取る。さらに対称性から考えて、y軸は点Pmを通るとした。各軸の方向については図38、39のとおりである。このように座標系をとり、y軸対称となるように回帰経路を設計する。
実際に設計したときにはθ=15°として各点の座標を決定した。それにより決定された座標、接線、法線、曲率を表15に記す。
Figure 0004743580
(a-3).拘束条件
デフレクタータイプのボールねじの回帰経路の設計における拘束条件について考える。まず、点Psと点Psにおいてはねじ溝を移動するボールの中心の軌跡が描く曲線とG2連続である必要がある。
次に、ボールを挙げる高さについて考えると、回帰経路がy軸対称であることを考慮すればボールの中心はy軸上のある点を通るので、この点を点Phとする(図38,39参照)。このとき、ボールがねじ山を飛び越えるのには、点Phのy座標の絶対値が少なくとも
(点Phのy座標の絶対値)≧(ねじ軸外径+ボール径)/2
を満たす必要がある。そこで本設計においては
(点Phのy座標の絶対値)=(ねじ軸外径+ボール径×1.2)/2
であるとした。またy軸対称であることを考えるとにおける法線方向は{0,1,0}である必要があり、接線方向はその回りを回転する自由度しか持たない。
以上の条件を満たし、y軸対称な回帰経路を3次元クロソイド曲線で生成する。実際には、これに加えてねじ軸との干渉について考えなくてはいけないが、干渉については設計した回帰経路を検査し、干渉している場合は補間の初期値を変えたり、補間対象点を増やしたりして、経路を設計しなおすことにより、満たすこととした。
(a-4). 干渉をさけるために
ねじ軸との干渉は、回帰経路に入った辺りで起こりやすく、自由な補間により経路を作ったのでは干渉が起こりやすくなっている。回帰経路は、ねじ軸から離すこととねじ山を超えて元の位置に戻すことが要求されているが、干渉を避けるにはある程度ねじ軸から離してから、ねじ山を超えて元の位置に戻す方が望ましい。この回帰経路を生成する方法としては、補間対象点を増やし、干渉を避ける方法と回帰経路に入った1本目の曲線を手動で生成し強制的にねじ軸から離してやる手法がある。このうち本設計では、回帰経路に入った1本目の曲線を手動で生成し強制的にねじ軸から離してやる手法を用いた。
ここで、点Psから始まる回帰経路に入った1本目の曲線C1について述べる。曲線C1における座標、接線回転角α、β、法線、曲率を曲線長変数Sの関数としてPx1,(S) Py1,(S) Pz1(S), α1(S),β1(S), n1(S), κ1(S)のように、また、点Ps・点Phにおいては、座標、接線回転角α、β、法線、曲率を点PsではPxs, Pys, Pzs, αss, ns, κs、点PhではPxh, Pyh, Pzh, αhh, nh, hdのように表す。ねじ溝を移動するボールの中心の軌跡が描く曲線とG2連続である条件は、点Psにおいて下記が成り立つことである。
Figure 0004743580
また、ねじ溝を移動するボールの中心の軌跡が描く曲線は、3次元クロソイド曲線を用いて表せるが、図40に記すような点から始まり、一巻分の長さの3次元クロソイド曲線C0の式は下記の式で表せる。ここで、ねじのピッチをpit、ねじ軸外形をR、ねじのピッチ角をα0とした。
Figure 0004743580
曲線C0の式では点Psは、Ps=P0(11/12)と表せる。今、点Psから始まり点Psで曲線C0とG2連続となるような曲線C1として下記のようなパラメータを持つ曲線を生成するなら、強制的にねじ軸から離してやることができる。
Figure 0004743580
例えば、この条件を満たす曲線C1として、表16のパラメータを持つ3次元クロソイド曲線を生成する。
Figure 0004743580
このとき、点Psにおける曲線C0と曲線C1の接線、法線、曲率の値を比較してみると表17のようになっており、G2連続となっていることが判る。
Figure 0004743580
また、この曲線は図41,42を見て判る通り単にねじ軸から離すような形状になっていることがわかる。そこで、点Psから始まる回帰経路に入った1本目の曲線C1についてはこのパラメータの曲線を用いた。
(a-5). 3次元クロソイド補間の条件式と未知数
a-3で述べた条件を加味して、G2連続となるような条件下で各曲線のパラメータの近似値をニュートン・ラプソン法によって求める。ここですでに点Psから始まる曲線C1が生成されているので、以後、説明において曲線のC1の終点P1と点Ph間の経路の設計を述べる。説明にでてくる文字のサブスクリプトは各曲線のサブスクリプトに対応しており、各曲線における座標、接線回転角α、β、法線、曲率を曲線長変数Sの関数としてPxi,(S) Pyi,(S) Pzi(S), αi(S),βi(S), ni(S), κi(S)のように表す。また、点Phにおいては、座標、接線回転角α、β、法線、曲率をPxh, Pyh, Pzh, αhh, nh, hhのように表す。
経路の設計おいて、厳密に通るべき点は点P1と点Phの2点であるので、この補間2点の3次元クロソイド補間である。ここで、両端点での補間条件を考えると、条件式の数が未知数の数より2個多くなるので、G2連続な3次元クロソイド補間を行うために、図43のように点P1と点Phの間に点P2を挿入するものとする。また点P1と点P2を結ぶ曲線を曲線C2、点P2と点Peを結ぶ曲線を曲線C3とする。
以下に各点における補間条件を記す。
Figure 0004743580
以上より、全体で成り立つべき条件式は16個である。ここで、各曲線ごとが持つクロソイドパラメータはのa0, a1, a2, b0, b1, b2, hの7つであり、かつ、曲線が2本なので未知数は14個となる。しかし、これでは未知数と条件式の数が等しくないので、解を求めることが出来ない。そこで新たに挿入した2つの点P2のy,z座標を未知数として扱い、未知数を2つ増やした。これで未知数も条件式も16個となり、解を求めることができるようにした。また本設計例では行わないが、この未知数と条件式の数は途中に厳密に通るべき点を与え、その点の前後でG2連続が達成されるなら常に成り立つので、点P1と点Phの間に補間対象点を増やしても解を求めることができる。
(a-6). 条件を満たすクロソイドパラメータを求める
a-5で立てた条件式を満たす解をニュートン・ラプソン法で求めた。補間方法、初期値の生成方法は3次元クロソイド補間の方法に従った。表18は、算出された各曲線のパラメータであり、表19は書く接続点における座標、接線、法線、曲率のずれを示したものである。
Figure 0004743580
Figure 0004743580
(a-7). 経路の生成
a-5,a-6により得られたパラメータにより、点Psから点Phまでの経路は設計することができる。また点Phから点Peまでの経路は、経路がy軸対称であることにより、座標系を取り直して点Peを点Psとみなして生成される経路と同じであるのでこちらも同じ曲線で生成できる。
以上の手法で生成された経路を図44に示す。実線はねじ軸上のボールの中心軌道である曲線C0、点Ps〜点Pnまでの破線、一点鎖線、二点鎖線の3本の曲線がそれぞれ曲線C1、C2、C3である。また、点Pn〜点Peまでの二点鎖線、一点鎖線、破線の3本の曲線は、それぞれ曲線C3、C2、C1とy軸に対して対称な曲線である。
図45に点Peからz軸の正の方向から見て反時計回りに循環経路を移動した移動距離sと曲率κの関係のグラフを記す。グラフの線種は図44の曲線の線種に対応している。
以上の手法により3次元クロソイド曲線を用いてデフレタータイプのボールねじの循環経路を設計した。なお循環経路を3次元クロソイド曲線を用いて設計する手法は、勿論デフレクタータイプのボールねじに限られず、回帰経路をパイプで構成する所謂リターンパイプタイプのボールねじに適用したり、あるいはナット端面に設けられたエンドキャップでボールをねじ軸のボール転走溝から掬い上げ、ナットの中を通して反対側のエンドキャップからねじ軸のボール転走溝に戻す所謂エンドキャップタイプのボールねじに適用したりしてよい。
ところで本発明の設計方法を実現するプログラムをコンピュータで実行する際には、コンピュータのハードディスク装置等の補助記憶装置にプログラムを格納しておき、メインメモリーにロードして実行する。また、そのようなプログラムは、CD−ROM等の可搬型記録媒体にプログラムを格納して売買したり、ネットワークを介して接続されたコンピュータの記録装置に格納しておき、ネットワークを通じて他のコンピュータに転送することもできる。
本発明の3次元クロソイド曲線によれば、工業製品の設計生産に必要となる空間曲線の汎用的な発生方法を提供することができる。空間曲線に沿って物体が加減速を伴って運動する場合に、拘束力変化が滑らかな設計を可能とする。この特徴は、質量を有する機械要素の運動の軌道を設計する方法に広く応用される。今回は設計の応用例としてボールねじの回帰経路の設計方法について説明したが、この他にも幅広く、例えば上下左右に曲りくねったレール上を急スピードで走るジェットコースターのレールの設計方法、リニアガイド等にも応用できる。これ以外にも、曲線長に対して曲率の変化を適切に設計できることにより、審美的な意匠曲線設計など、様々な産業分野に有効に適用される。
xy座標上の2次元クロソイド曲線を示す図。 典型的な二次元クロソイド曲線の形状を示す図。 3次元クロソイド曲線のピッチ角α、ヨー角βの定義を示す図。 典型的な3次元クロソイド曲線の形状を示す図。 単位法線ベクトルの変化量を示す図。 同じ大きさ、形状で向きが逆な2つの3次元クロソイド曲線を示す図。 3次元クロソイド曲線の分割を示す図。 連続な補間の条件を示す図。 接触平面の概念を示す図。 クロソイド補間の手法の流れの概要を示す図。 連続となるような条件を満たすクロソイド補間の手法の流れの概要を示す図。 点P1, P2, P3の3次元クロソイド補間を示す図。 r=4の3D Discrete Clothoid Splinesを示す図。 3D Discrete Clothoid Splinesを説明する図。 補間により生成された3次元クロソイド曲線の透視図。 横軸に始点からの移動距離、縦軸に曲率を取った曲率変化グラフ。 両端点で各値を制御する3次元クロソイド補間の流れの概要を示す図。 両端点で各値を制御する3次元クロソイド補間の概略図 実際に補間を行った結果を示す図。 各曲線の始点からの移動距離と曲率の関係のグラフ。 中間点における値の制御を示す図。 始点・終点で各値を制御する3次元クロソイドを用いた補間法の流れの概要を示す図。 r=4の3D Discrete Clothoid Splinesを示す図。 生成されたポリゴンを示す図。 点P1, P2, P3の3次元クロソイド補間を示す図。 生成された曲線とポリゴンとを示す図。 点を挿入した図。 分割された3次元クロソイド曲線を示す図。 生成された曲線を示す図。 各曲線の始点からの移動距離sと曲率κの関係を示すグラフ。 デフレクタがナットと別体のデフレクタータイプのボールねじを示す図。 デフレクタがナットと一体のボールねじのナットを示す図。 (A)はボール循環溝が見える状態のナットの斜視図を示し、(B)は負荷ボール転走溝が見える状態のナットの斜視図を示す。 ナットをねじ軸に組み合わせた状態を示す図。 従来のボールねじの循環経路を示す展開図。 従来のボールねじの循環経路の曲率を示すグラフ。 ボール中心の軌道を示す図。 座標系を示す図。 z軸上からみた座標系を示す図。 ねじ溝を移動するボールの中心の軌跡が描く曲線を示す図。 y軸上から見た曲線C0とC1を示す図。 z軸上から見た点Ps近傍の曲線C0とC1を示す図。 点P2を挿入した図。 生成された回帰経路と曲線C0を示す図。 点Peから移動距離と曲率の関係を示す図。

Claims (9)

  1. 接線方向のピッチ角およびヨー角のそれぞれが曲線長または曲線長変数の二次式で与えられる3次元曲線(3次元クロソイド曲線という)を用いて工業製品の形状を設計することを特徴とする工業製品の設計方法。
    前記3次元クロソイド曲線を以下の式で定義する。
    Figure 0004743580
    ここで、
    Figure 0004743580
    はそれぞれ、3次元クロソイド曲線上の点の位置ベクトル、及びその初期値を示す。
    始点からの曲線の長さをsとし、その全長(始点から終点までの長さ)をhとする。sをhで割った値をSで表わす。Sは無次元の値であり、これを曲線長変数と呼ぶ。
    i,j,kはそれぞれ、x軸、y軸、及びz軸方向の単位ベクトルである。
    uは点Pにおける曲線の接線方向を示す単位ベクトルであり、式(2)によって与えられる。E 及びE は回転マトリクスであり、それぞれ、k軸まわりの角度βの回転及びj軸まわりの角度αの回転を表わしている。前者をヨー(yaw)回転、後者をピッチ(pitch)回転という。式(2)は、i軸方向の単位ベクトルを、まずj軸まわりにαだけ回し、しかるのちにk軸まわりにβだけ回すことによって、接線ベクトルuが得られることを示している。
    0 ,a 1 ,a 2 ,b 0 ,b 1 ,b 2 は定数。
  2. 前記工業製品は、質量を有する機械要素が運動する機構を含む機械であり、
    前記3次元曲線(3次元クロソイド曲線という)を用いて前記機械要素の運動の軌道を設計することを特徴とする請求項1に記載の工業製品の設計方法。
  3. 前記機械は、前記機械要素としてボールが運動する機構を含むねじ装置であり、
    前記ねじ装置は、外周面に螺旋状の転動体転走溝を有するねじ軸と、内周面に前記転動体転走溝に対向する負荷転動体転走溝を有すると共に前記負荷転動体転走溝の一端と他端を接続する回帰経路を有するナットと、前記ねじ軸の前記転動体転走溝と前記ナットの前記負荷転動体転走溝の間及び回帰経路に配列される複数の転動体と、を備え、
    前記3次元曲線(3次元クロソイド曲線という)を用いて、前記ねじ装置の前記回帰経路を設計することを特徴とする請求項2に記載の工業製品の設計方法。
  4. 3次元座標内に複数の空間点を指定し、これらの空間点を前記3次元クロソイド曲線を用いて補間することによって、前記工業製品の形状を設計することを特徴とする請求項に記載の工業製品の設計方法。
  5. 前記複数の空間点において、一つの3次元クロソイド線分(補間によって生成される曲線群を構成する単位曲線)と次の3次元クロソイド線分(補間によって生成される曲線群を構成する単位曲線)とで、両者の位置、接線方向、法線方向及び曲率が連続するように、前記3次元クロソイド線分の7つのパラメータa,a,a,b,b,b,hを算出することを特徴とする請求項に記載の工業製品の設計方法。
  6. 前記複数の空間点のうちの始点及び終点の接線方向、法線方向及び曲率を指定し、
    あらかじめ指定された前記空間点の間に新たに補間対象点を挿入することによって、前記始点及び前記終点における接線方向、法線方向及び曲率の条件式と、前記複数の空間点における、一つの3次元クロソイド線分と次の3次元クロソイド線分とで両者の位置、接線方向、法線方向及び曲率を連続させる条件式と、を合算した条件式の数と、前記3次元クロソイド線分の7つのパラメータa0,a1,a2,b0,b1,b2,hの未知数と、を一致させ、
    条件式と未知数との数を一致させることによって、前記3次元クロソイド線分の7つのパラメータa,a,a,b,b,b,hを算出することを特徴とする請求項に記載の工業製品の設計方法。
  7. 請求項1ないし6いずれかの工業製品の設計方法により設計された工業製品。
  8. 工業製品の形状を設計するために、
    コンピュータを、
    接線方向のピッチ角およびヨー角のそれぞれが曲線長または曲線長変数の二次式で与えられる3次元曲線(3次元クロソイド曲線という)を用いて工業製品の形状を設計する手段として機能させるためのプログラム。
    前記3次元クロソイド曲線を以下の式で定義する。
    Figure 0004743580
    ここで、
    Figure 0004743580
    はそれぞれ、3次元クロソイド曲線上の点の位置ベクトル、及びその初期値を示す。
    始点からの曲線の長さをsとし、その全長(始点から終点までの長さ)をhとする。sをhで割った値をSで表わす。Sは無次元の値であり、これを曲線長変数と呼ぶ。
    i,j,kはそれぞれ、x軸、y軸、及びz軸方向の単位ベクトルである。
    uは点Pにおける曲線の接線方向を示す単位ベクトルであり、式(2)によって与えられる。E 及びE は回転マトリクスであり、それぞれ、k軸まわりの角度βの回転及びj軸まわりの角度αの回転を表わしている。前者をヨー(yaw)回転、後者をピッチ(pitch)回転という。式(2)は、i軸方向の単位ベクトルを、まずj軸まわりにαだけ回し、しかるのちにk軸まわりにβだけ回すことによって、接線ベクトルuが得られることを示している。
    0 ,a 1 ,a 2 ,b 0 ,b 1 ,b 2 は定数。
  9. 工業製品の形状を設計するために、
    コンピュータを、
    接線方向のピッチ角およびヨー角のそれぞれが曲線長または曲線長変数の二次式で与えられる3次元曲線(3次元クロソイド曲線という)を用いて工業製品の形状を設計する手段として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
    前記3次元クロソイド曲線を以下の式で定義する。
    Figure 0004743580
    ここで、
    Figure 0004743580
    はそれぞれ、3次元クロソイド曲線上の点の位置ベクトル、及びその初期値を示す。
    始点からの曲線の長さをsとし、その全長(始点から終点までの長さ)をhとする。sをhで割った値をSで表わす。Sは無次元の値であり、これを曲線長変数と呼ぶ。
    i,j,kはそれぞれ、x軸、y軸、及びz軸方向の単位ベクトルである。
    uは点Pにおける曲線の接線方向を示す単位ベクトルであり、式(2)によって与えられる。E 及びE は回転マトリクスであり、それぞれ、k軸まわりの角度βの回転及びj軸まわりの角度αの回転を表わしている。前者をヨー(yaw)回転、後者をピッチ(pitch)回転という。式(2)は、i軸方向の単位ベクトルを、まずj軸まわりにαだけ回し、しかるのちにk軸まわりにβだけ回すことによって、接線ベクトルuが得られることを示している。
    0 ,a 1 ,a 2 ,b 0 ,b 1 ,b 2 は定数。
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