以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。先ず、本発明に係る非同期カウンタ回路について説明し、その後に、非同期カウンタ回路を電子機器や半導体装置に適用した事例を説明する。
<カウンタ回路の構成;第1実施形態>
図1は、本発明に係る非同期カウンタ回路の第1実施形態の基本構成を示す回路ブロック図である。また、図2は、第1実施形態の基本構成をより具現化した回路ブロック図である。
図1に示すように、第1実施形態のカウンタ回路400は先ず、複数のネガティブエッジ型かつD型のフリップフロップ412,414,416,418(纏めて410ともいう)がカスケード接続されるようになっている。各フリップフロップ410は、反転出力NQ(図ではQの上に横バー“−”を付して示す)が自身のD入力端子に入力されるようになっている。これにより、カウンタ回路400は、4ビットの非同期カウンタを構成し得るようになっている。なお、図では、昇順に、フリップフロップ412,414,416,418の4段構成(4ビット分)で示しているが、実際には、その数はビット数分だけ設けられる。
またカウンタ回路400は、各フリップフロップ410間に、それぞれのフリップフロップ410の非反転出力Qと反転出力NQと電源(Vdd)レベルの3値を切り替える切替処理部としての3入力−1出力型の3値切替部422,424,426(纏めて420ともいう)を備えている。それぞれの3値切替部420は、図示しない制御部からの2ビットの制御信号SW1,SW2に従って3つの入力信号を切り替えて、選択した1つの信号を後段のフリップフロップ410のクロック端子CKに入力するようになっている。
ここで、3入力−1出力型の各3値切替部420は、カウントモードの切替え時に、モード切替直前のカウント値を初期設定してからモード切替え後のカウント処理が開始されるようにする初期値設定処理部の機能を持つ。
つまり、カウンタの基本要素であるフリップフロップが複数個カスケード配置されている状態にあって、3値切替部420は、カスケード配置されたフリップフロップ410間に配置されており、前段のフリップフロップ410の非反転出力NQと反転出力Qとの何れか一方をカウンタクロックとして選択して後段のフリップフロップ410のクロック端子CKに供給することでカウントモードの切替えを可能にするとともに、モード切替直前の前段のフリップフロップ410のカウント値を後段のフリップフロップ410に初期設定するための切替えとを行なうようになっている。
この3値切替部420は、具体的には、図2に示すように、それぞれ2段構成の2入力−1出力型の2値切替部432,433の対、2値切替部434,435の対、および2値切替部436,437の対で構成することができる。それぞれの対を纏めて2値切替部430という。
この場合、それぞれの2値切替部430は、図示しない制御部からの2ビットの切替制御信号SW1,SW2として、異なったタイミング発せられる切替制御信号SL,FLにより切り替えるようにする。
前段側の2値切替部432,434,436は、対応するそれぞれのフリップフロップ410の非反転出力Qと反転出力NQとを切替制御信号SLに従って切り替え、対応する後段側の2値切替部433,435,437の一方の入力端子に渡す。後段側の2値切替部433,435,437は、前段側の2値切替部432,434,436から渡されたデータと、他方の入力端子に入力される電源レベルとを、切替制御信号FLに従って切り替え、後段のフリップフロップ410のクロック端子CKに入力する。
たとえば、前段側の2値切替部430(432,434,436)は、前段のフリップフロップ410の非反転出力NQと反転出力Qとの何れか一方を切替制御信号SLの元で選択して、後段側の2値切替部430(433,435,437)の一方の入力端子に供給する。切替制御信号SLは、前段側の2値切替部430(432,434,436)を制御することで、カウンタ回路400のカウント動作を、アップカウントとダウンカウントの何れかに切り替えるためのものである。
後段側の2値切替部430(433,435,435)は、前段側の2値切替部430(432,434,436)から出力された前段のフリップフロップ410の出力(非反転出力NQと反転出力Qとの何れか一方)の後段のフリップフロップ410のクロック端子CKへの供給を切替制御信号FLの制御の元で調整する。
切替制御信号FLは、後段側の2値切替部430(433,435,435)を制御することで、前段のフリップフロップ410の出力(非反転出力NQと反転出力Qとの何れか一方)の後段のフリップフロップ410のクロック端子CKへの供給をカウントモードの切替えの後の所定期間停止させるとともに、非反転出力NQと反転出力Qとの何れか一方の供給再開時に後段のフリップフロップ410のクロック端子CKへクロック相当の信号を供給させる。こうすることで、アップカウントとダウンカウントのカウントモードを切り替えた際に、カウント値の連続性を維持させる。この切替制御信号FLの機能の詳細については後述する。
なお、「カウント値の連続性を維持する」とは、カウントモードを切り替えたことでカウント値が壊れてしまうが、モード切替え後にカウントを開始するまでに、前のモードでの最終カウント値に戻すことで、前のモードでの最終カウント値から切り替え後のカウント動作を開始することを意味する。
図3は、2値切替部430の回路構成例を示す図である。たとえば図3(A)は、各スイッチをトランスファーゲートで構成した場合を例示している。全ての回路素子は、CMOS技術を採用して構成されている。
前段側の2値切替部432,434,436に対応して、トランスファーゲート442,443が設けられている。また、後段側の2値切替部433,435,437に対応して、トランスファーゲート446,447が設けられている。以下、纏めてトランスファーゲート440ともいう。
トランスファーゲート442の入力には前段のフリップフロップ410の反転出力NQが入力され、トランスファーゲート443の入力には前段のフリップフロップ410の非反転出力Qが入力され、トランスファーゲート442,443の出力が共通にトランスファーゲート446の入力に接続されている。トランスファーゲート447の入力は電源レベルに接続され、トランスファーゲート446,447の出力が共通に、後段のフリップフロップ410のクロック端子CKに接続されるようになっている。
各トランスファーゲート440は、Nch(ch;チャネル)のトランジスタn1とPchのトランジスタp1とからなるCMOSスイッチで構成されている。トランジスタn1,p1のゲート(制御入力端子)が切替制御信号SL,FLもしくはその反転信号NSL,NFLの入力端子に対応する。反転信号NSLは、切替制御信号SLを反転するインバータ444で生成され、反転信号NFLは、切替制御信号FLを反転するインバータ448で生成される。
トランジスタn1,p1からなるCMOSスイッチは、トランジスタn1のゲートがハイでかつトランジスタn1のゲートがローのときにオンすることにより、前段のフリップフロップ410の非反転出力Qもしくは反転出力NQを選択して出力する。このCMOSスイッチとしては、トランジスタn1,p1のどちらか一方のみのNch型MOSトランジスタやPch型MOSトランジスタによるスイッチでもよいが、その場合、閾値電圧Vthの問題があるため、本例では、n1,p1の両方を利用したCMOSスイッチを採用した。
また、図3(B)は、各スイッチを論理ゲートで構成した場合を例示している。前段側の2値切替部432,434,436に対応して、3つの2入力のNANDゲート452,453,454が設けられている。また、後段側の2値切替部433,435,437に対応して、2入力のNORゲート456とインバータ457とからなるORゲートが設けられている。
NANDゲート452の一方の入力には切替制御信号SLをインバータ455で反転した反転信号NSLが入力され、NANDゲート453の一方の入力には切替制御信号SLが入力される。NANDゲート452の他方の入力には前段のフリップフロップ410の反転出力NQが入力され、NANDゲート453の他方の入力には前段のフリップフロップ410の非反転出力Qが入力され、NANDゲート452,453の各出力がNANDゲート454の入力に接続されている。
NORゲート456は、一方の入力端子にNANDゲート454の出力信号が入力され、他方の入力端子には切替制御信号が入力される。NORゲート456の出力信号はインバータ457で反転された後に、後段のフリップフロップ410のクロック端子CKに接続されるようになっている。
図3(A)および図3(B)の何れにおいても、前段側の2値切替部432,434,436は、切替制御信号SLがハイレベルのとき非反転出力Qを選択し出力する一方、切替制御信号SLがローレベルのとき反転出力NQを選択し出力する。
また、後段側の2値切替部433,435,437は、切替制御信号FLがローレベルのときに、対応する前段側の2値切替部432,434,436の出力を選択し出力する一方、切替制御信号FLがハイレベルのときに電源レベル(ハイレベル)を選択し出力する。
<カウンタ回路の動作;第1実施形態>
図4は、図2に示した第1実施形態のカウンタ回路400の動作を説明するためのタイミングチャート図である。また、図5(A)および図5(B)は、第1実施形態の構成におけるフリップフロップ410の出力変化を説明する図である。
前述のように、切替制御信号SLがハイレベルで切替制御信号FLがローレベルのとき、前段側の2値切替部432,434,436は非反転出力Qを選択して出力し、さらに後段側の2値切替部433,435,437は、前段側の2値切替部432,434,436の出力を選択して出力する。したがって、各フリップフロップ410間は、前段のフリップフロップ410の非反転出力Qが次段のフリップフロップ410のクロック端子CKに入力される。
この状態で、初段のフリップフロップ410のクロック端子CKにクロックCK0を入力すると、非反転出力Qのネガティブエッジごとにフリップフロップ410間に状態遷移が生じ、結果としてカウンタ回路400は、アップカウント動作を行なう(カウント値0〜6の期間)。
任意の期間アップカウントした後に、クロックCK0を止め、切替制御信号SLをハイレベルからローレベルに反転すると(t30)、カウンタ回路400は、アップカウントモードからダウンカウントモードに切り替わり、クロックCK0の再開によりダウンカウントを始める。たとえば、本例では、カウント値0〜6までアップカウントした後に、切替制御信号SLをハイレベルからローレベルに切り替えている。
このt30時点での切替制御信号SLによるカウントモードの切替えにより、対構成の2値切替部430は、前段のフリップフロップ410の反転出力NQを選択して次段のフリップフロップ410のクロック端子CKに入力する。
このとき、前段のフリップフロップ410の非反転出力Qがハイレベルすなわち反転出力NQがローレベルにあると、切替制御信号SLの切替えにより、次段のフリップフロップ410では、クロック端子CKにネガティブエッジ(H→L)が印加されたことになるので、次段のフリップフロップ410の出力が反転する(t30+)。
図5(A)では、2段目のフリップフロップ410の出力がローレベルからハイレベルに反転するとともに、3段目のフリップフロップ410の出力も反転する(t30+)。また、図5(B)では、2段目のフリップフロップ410の出力がハイレベルからローレベルに反転する(t30+)。
つまり、カウントモード切替時点のフリップフロップ410の非反転出力Qがハイレベルすなわち反転出力NQがローレベルにあるフリップフロップ410の後段側でのみ、カウント値の破壊が起き始める。
また、この次段のフリップフロップ410の出力が反転したときに、その反転出力NQがローレベルからハイレベルへ反転した場合には、さらに後段のフリップフロップ410のクロック端子CKがハイレベルになるので、出力の反転が起こらない(t30++;図5(A)の3段目参照)。
これに対して、その反転出力NQがハイレベルからローレベルへ反転した場合には、さらに後段のフリップフロップ410では、クロック端子CKにネガティブエッジが印加されたことになるので、この後段のフリップフロップ410の出力が反転する(t30++;図5(B)の3段目参照)。
以下同様にして、反転出力NQのデータ反転(H→L)の影響が、反転出力NQがローレベルからハイレベルへ反転するフリップフロップ410まで継続される。本例では、図4に示すように、カウント値が“6”から“10”に変化する。
つまり、このままでは、アップカウントからダウンカウントに切り替えた際、カウント値が破壊されてしまいカウント値の連続性を維持することができず、切替え前後でカウント値を保ったまま連続してアップ/ダウンのカウントを行なうことができない。
そこで本実施形態では、カウントモードを切り替える切替制御信号SLの切替え後に、ダウンカウント用のクロックCK0のネガティブエッジを初段のフリップフロップ410に入力する前に、後段側の2値切替部433,435,437に、切替制御信号FLとして、アクティブHのワンショットパルスを加える(t32〜t34)。
こうすることで、全てのネガティブエッジ型のフリップフロップ410のクロック端子CKに電源レベル(ハイレベル)が入力される。しかしながら、切替制御信号FLのワンショットパルス入力前後では、ネガティブエッジ型のフリップフロップ410の出力は変化しない。
この後、ワンショットパルス期間経過すると(t34)、クロック端子CKに前段のフリップフロップ410の反転出力NQが再度入力される。このとき、前段のフリップフロップ410の反転出力NQがローレベルにあると、次段のフリップフロップ410では、クロック端子CKにネガティブエッジが印加されたことになるので、次段のフリップフロップ410の出力が反転する。
図5(A)では、2段目のフリップフロップ410の出力がハイレベルからローレベルに反転する(t34+)。また、図5(B)では、2段目のフリップフロップ410の出力がローレベルからハイレベルに反転するとともに、3段目のフリップフロップ410の出力も反転する(t34+)。
また、フリップフロップ410の出力が反転したときに、その反転出力NQがローレベルからハイレベルへ反転した場合には、後段のフリップフロップ410のクロック端子CKがハイレベルになるので、出力の反転が起こらない(t34++;図5(B)の3段目参照)。
これに対して、その反転出力NQがハイレベルからローレベルへ反転した場合には、さらに後段のフリップフロップ410では、クロック端子CKにネガティブエッジが印加されたことになるので、この後段のフリップフロップ410の出力が反転する(t34++;図5(A)の3段目参照)。以下同様にして、反転出力NQのデータ反転(H→L)の影響が、反転出力NQがローレベルからハイレベルへ反転するフリップフロップ410まで継続される。
この結果、切替制御信号SLによるカウントモードの切替えを契機として出力が反転したフリップフロップ410では、何れも、再び出力が反転することになるため、結果的にカウント値が元に戻る。
以上の動作の後、再びクロックCK0を入力すると、今度は、反転出力NQのネガティブエッジごと、つまり非反転出力Qのポジティブエッジごとにフリップフロップ410間に状態遷移が生じ、結果としてカウンタ回路400は、ダウンカウント動作を行なう(カウント値6〜1の期間)。
このように、第1実施形態のカウンタ回路400によれば、アップカウントからダウンカウントへの切り替え時に変化したカウント値を、切替制御信号FLとして、アクティブHのワンショットパルスを加えて、フリップフロップ410のクロック端子を一旦強制的にハイレベルにしてからモード切替後の状態に戻すようにした。モード切替後の状態に戻ったときに前段のフリップフロップ410の反転出力NQがローレベルにあると、後段のフリップフロップ410の出力が反転し元のカウント値に戻る。
こうすることで、実質的に、カウントモード切替前のカウント値を保持することができるため、アップカウントの後、カウント値の連続性を保った状態で、引き続いてダウンカウントを行なうことができる。
ダウンカウントのカウンタ値は、アップカウントのカウンタ値に対して負の方向にカウントすることになる。よって、iアップカウントした後に、引き続きjダウンカウントすることにより、カウンタ回路400のカウント結果として、i−jの減算結果が得られることになる。アップ/ダウンのモード切替で得られるカウント値は、補数を含まず、減算結果が直接に得られるので、都合がよい。
このような非同期式のカウンタ回路400としたことで、従来困難であった、非同期カウンタでの直接連続アップダウンカウントを単純な切替手段(スイッチ)の追加のみで可能となる。アップダウンカウントの切り替え時にも、切り替え前の値が保たれるため、アップからダウン、またはダウンからアップを行なうことによりアップ時のカウント値とダウン時のカウント値の減算が連続して可能である。
なお、第1実施形態では、アップカウントからダウンカウントに切り替える例を示したが、ダウンカウントからアップカウントに切り替える場合にも、単純にカウントモードを切り替えたのではカウンタ値の連続性を保つことができないが、上記で説明したと同様にして、切替制御信号FLを利用して、フリップフロップ410のクロック端子を一旦強制的にハイレベルにしてからモード切替後の状態に戻すことで元のカウント値に戻すようにすれば、実質的に、カウントモード切替前のカウント値を保持することができるため、ダウンカウントの後、カウント値の連続性を保った状態で、引き続いてアップカウントを行なうことができる。
さらに、任意の組み合わせで自在にアップカウントとダウンカウントを混在して行なう場合でも、モード切替時に、元のカウント値に戻すように制御することができる。
ただし、この第1実施形態では、カウントのオーバーフローを検知する構成になっていないが、たとえば、オーバーフロー用余剰ビットを付加したり、桁上げ(キャリー)、または桁借り(ボロー)のビットを用いたりするなど、公知の技術を用いることで、オーバーフローに対する対処は容易に実現可能である。
<カウンタ回路の構成;第2実施形態>
図6は、本発明に係る非同期カウンタ回路の第2実施形態の構成を示す回路ブロック図であり、第1実施形態の図2に示した具現化した回路ブロック図に対応するものである。
この第2実施形態は、各フリップフロップ510間に、図示しない制御部からの2ビットの制御信号SW1,SW2に従って3つの入力信号を切り替えて、選択した1つの信号を後段のフリップフロップ510のクロック端子CKに入力する3入力−1出力型の3値切替部522,524,526(纏めて520ともいう)を備えている点で第1実施形態と共有する。
3入力−1出力型の各3値切替部520は、カウントモードの切替え時に、モード切替直前のカウント値を初期設定してからモード切替え後のカウント処理が開始されるようにする初期値設定処理部の機能を持つ。
一方、各フリップフロップ510として、ポジティブエッジ型のものを使用しているとともに、ポジティブエッジ型としたことに伴うエッジ動作の逆転に対応するように、フリップフロップ510間に設ける3値切替部520は、対応するフリップフロップ510の非反転出力Qと反転出力NQと接地(GND)レベルの3値を切り替えるようにしている点で異なる。
具体的には、図6に示すように、第2実施形態のカウンタ回路500は、3入力−1出力型の各3値切替部520の構成を、それぞれ2段構成の2入力−1出力型の2値切替部532,533の対、2値切替部534,535の対、および2値切替部536,537の対で構成している。それぞれの対を纏めて2値切替部530という。
前段側の2値切替部532,534,536は、第1実施形態の前段側の2値切替部432,434,436と同様に、対応する各フリップフロップ510の非反転出力Qと反転出力NQとを切替制御信号SLに従って切り替え、対応する後段側の2値切替部533,535,537の一方の入力端子に渡す。
一方、後段側の2値切替部533,535,537は、前段側の2値切替部532,534,536から渡されたデータと、他方の入力端子に入力される接地レベルとを、切替制御信号FLに従って切り替え、後段のフリップフロップ510のクロック端子CKに入力する。つまり、3値切替部520における後段側の2値切替部の一方の入力を、電源から接地レベルに変更している点で第1実施形態と異なる。
前段側の2値切替部532,534,536は、切替制御信号SLがハイレベルのとき非反転出力Qを選択し出力する一方、切替制御信号SLがローレベルのとき反転出力NQを選択し出力する。また、後段側の2値切替部533,535,537は、切替制御信号FLがローレベルのとき、対応する前段側の2値切替部532,534,536の出力を選択し出力する一方、切替制御信号FLがハイレベルのときに接地レベル(ローレベル)を選択し出力する。
<カウンタ回路の動作;第2実施形態>
図7は、図6に示した第2実施形態のカウンタ回路500の動作を説明するためのタイミングチャート図である。また、図8(A)および図8(B)は、第2実施形態におけるフリップフロップ510の出力変化を説明する図である。
この第2実施形態では、ネガティブエッジごとにカウントアップもしくはカウントダウンを行なう第1実施形態に対して、ポジティブエッジごとにカウントアップもしくはカウントダウンを行なうように修正すればよく、基本的な考え方は第1実施形態と同じであり、得られる効果も変わらない。
たとえば、切替制御信号SLがローレベルで切替制御信号FLがローレベルのとき、前段側の2値切替部532,534,536は反転出力NQを選択して出力し、さらに後段側の2値切替部533,535,537は、前段側の2値切替部532,534,536の出力を選択して出力する。したがって、各フリップフロップ510間は、前段のフリップフロップ510の反転出力NQが次段のフリップフロップ510のクロック端子CKに入力される。
この状態で、初段のフリップフロップ510のクロック端子CKにクロックCK0を入力すると、非反転出力Qのネガティブエッジごとに、つまり反転出力NQのポジティブエッジごとにフリップフロップ510間に状態遷移が生じ、結果としてカウンタ回路500は、アップカウント動作を行なう(カウント値0〜6の期間)。
任意の期間アップカウントした後に、クロックCK0を止め、切替制御信号SLをローレベルからハイレベルに反転すると(t40)、カウンタ回路500は、アップカウントモードからダウンカウントモードに切り替わり、クロックCK0の再開によりダウンカウントを始める。たとえば、本例では、カウント値0〜6までアップカウントした後に、切替制御信号SLをローレベルからハイレベルに切り替えている。
このt40時点での切替制御信号SLによるカウントモードの切替えにより、対構成の2値切替部530は、前段のフリップフロップ510の非反転出力Qを選択して次段のフリップフロップ510のクロック端子CKに入力する。
このとき、前段のフリップフロップ510の反転出力NQがローレベルすなわち非反転出力Qがハイレベルにあると、切替制御信号SLの切替えにより、次段のフリップフロップ510では、クロック端子CKにポジティブエッジ(L→H)が印加されたことになるので、次段のフリップフロップ510の出力が反転する(t40+)。
図8(A)では、2段目のフリップフロップ410の出力がローレベルからハイレベルに反転するとともに、3段目のフリップフロップ410の出力も反転する(t30+)。また、図8(B)では、2段目のフリップフロップ410の出力がハイレベルからローレベルに反転する(t30+)。
つまり、カウントモード切替時点のフリップフロップ510の反転出力NQがローレベルすなわち非反転出力Qがハイレベルにあるフリップフロップ410の後段側でのみ、カウント値の破壊が起き始める。
この次段のフリップフロップ510の出力が反転したときに、その非反転出力Qがハイレベルからローレベルへ反転した場合には、さらに後段のフリップフロップ510のクロック端子CKがローレベルになるので、出力の反転が起こらない(t40++;図8(A)の3段目参照)。
これに対して、その非反転出力Qがローレベルからハイレベルへ反転した場合には、さらに後段のフリップフロップ510では、クロック端子CKにポジティブエッジが印加されたことになるので、この後段のフリップフロップ510の出力が反転する(t40++;図8(B)の3段目参照)。
以下同様にして、非反転出力Qのデータ反転(L→H)の影響が、非反転出力Qがハイレベルからローレベルへ反転するフリップフロップ510まで継続される。本例では、図7に示すように、カウント値が“6”から“10”に変化する。
つまり、このままでは、第1実施形態で説明したと同様に、アップカウントからダウンカウントに切り替えた際、カウント値が破壊されてしまいカウント値の連続性を維持することができず、切替え前後でカウント値を保ったまま連続してアップ/ダウンのカウントを行なうことができない。
そこで、この第2実施形態では、カウントモードを切り替える切替制御信号SLの切替え後に、ダウンカウント用のクロックCK0のポジティブエッジを初段のフリップフロップ510に入力する前に、後段側の2値切替部533,535,537に、切替制御信号FLとして、アクティブHのワンショットパルスを加える(t42〜t44)。
こうすることで、全てのポジティブエッジ型のフリップフロップ510のクロック端子CKに接地レベル(ローレベル)が入力される。しかしながら、切替制御信号FLのワンショットパルス入力前後では、ポジティブエッジ型のフリップフロップ510の出力は変化しない。
この後、ワンショットパルス期間経過すると(t44)、クロック端子CKに前段のフリップフロップ510の非反転出力Qが再度入力される。このとき、前段のフリップフロップ510の非反転出力Qがハイレベルにあると、次段のフリップフロップ510では、クロック端子CKにポジティブエッジが印加されたことになるので、次段のフリップフロップ510の出力が反転する。
図8(A)では、2段目のフリップフロップ510の出力がローレベルからハイレベルに反転する(t44+)。また、図8(B)では、2段目のフリップフロップ510の出力がハイレベルからローレベルに反転するとともに、3段目のフリップフロップ510の出力も反転する(t44+)。
また、フリップフロップ510の出力が反転したときに、その反転出力NQがハイレベルからローレベルへ反転した場合には、後段のフリップフロップ510のクロック端子CKがローレベルになるので、出力の反転が起こらない(t44++;図8(B)の3段目参照)。
これに対して、その反転出力NQがローレベルからハイレベルへ反転した場合には、さらに後段のフリップフロップ510では、クロック端子CKにポジティブエッジが印加されたことになるので、この後段のフリップフロップ510の出力が反転する(t44++;図8(A)の3段目参照)。以下同様にして、非反転出力Qのデータ反転(L→H)の影響が、非反転出力Qがハイレベルからローレベルへ反転するフリップフロップ510まで継続される。
この結果、第1実施形態の構成においても、切替制御信号SLによるカウントモードの切替えを契機として出力が反転したフリップフロップ510では、何れも、再び出力が反転することになるため、結果的にカウント値が元に戻る。
以上の動作の後、再びクロックCK0を入力すると、今度は、反転出力NQのネガティブエッジごと、つまり非反転出力Qのポジティブエッジごとにフリップフロップ510間に状態遷移が生じ、結果としてカウンタ回路500は、ダウンカウント動作を行なう(カウント値6〜0の期間)。
このように、第2実施形態のカウンタ回路500によれば、アップカウントからダウンカウントへの切り替え時に変化したカウント値を、切替制御信号FLとして、アクティブHのワンショットパルスを加えて、フリップフロップ410のクロック端子を一旦強制的にローレベルにしてからモード切替後の状態に戻すようにした。モード切替後の状態に戻ったときに前段のフリップフロップ410の非反転出力Qがハイレベルにあると、後段のフリップフロップ410の出力が反転し元のカウント値に戻る。
こうすることで、実質的に、カウントモード切替前のカウント値を保持することができるため、アップカウントの後、カウント値の連続性を保った状態で、引き続いてダウンカウントを行なうことができる。
ダウンカウントのカウンタ値は、アップカウントのカウンタ値に対して負の方向にカウントすることになる。よって、iアップカウントした後に、引き続きjダウンカウントすることにより、カウンタ回路500のカウント結果として、i−jの減算結果が得られることになる。
この第2実施形態でも、アップカウントからダウンカウントに切り替える例を示したが、ダウンカウントからアップカウントに切り替える場合にも、単純にカウントモードを切り替えたのではカウンタ値の連続性を保つことができないが、上記で説明したと同様にして、切替制御信号FLを利用して、フリップフロップ410のクロック端子を一旦強制的にローレベルにしてからモード切替後の状態に戻すことで元のカウント値に戻すようにすれば、実質的に、カウントモード切替前のカウント値を保持することができるため、ダウンカウントの後、カウント値の連続性を保った状態で、引き続いてアップカウントを行なうことができる。
さらに、任意の組み合わせで自在にアップカウントとダウンカウントを混在して行なう場合でも、モード切替時に、元のカウント値に戻すように制御することができる。
ただし、この第2実施形態でも、カウントのオーバーフローを検知する構成になっていないが、たとえば、オーバーフロー用余剰ビットを付加したり、桁上げ(キャリー)、または桁借り(ボロー)のビットを用いたりするなど、公知の技術を用いることで、オーバーフローに対する対処は容易に実現可能である。
<カウンタ回路の構成;第3実施形態>
図9は、本発明に係る非同期カウンタ回路の第3実施形態の構成を示す回路ブロック図であり、第1実施形態の図2に示した具現化した回路ブロック図に対応するものである。
この第3実施形態のカウンタ回路400は、図2に示した第1実施形態のカウンタ回路400における初段のフリップフロップ412のクロック端子CKに入力されるクロック信号を切り替える構成を追加している点に特徴を有する。また、カウンタ回路400の全体としては、クロックCK0自体を最下位ビットQ0とし、その他のビットQx(本例ではQ1〜Q4)であるフリップフロップ410のカウント出力を第1実施形態と比べて1ビットずつ上位ビットにずらしている点に特徴を有する。
具体的には、第3実施形態の400は、クロックCK0を反転するインバータ462と、クロックCK0とインバータ462により反転された反転クロックNCK0の何れかを選択し初段のフリップフロップ412のクロック端子CKに入力する、すなわちクロックCK0の非反転・反転を切り替える2入力−1出力型の2値切替部464とを備えている。
2値切替部464は、切替制御信号SLがハイレベルのときクロックCK0を選択し出力する一方、切替制御信号SLがローレベルのとき反転クロックNCK0を選択し出力する。
<カウンタ回路の動作;第3実施形態>
図10は、図9に示した第3実施形態のカウンタ回路400の動作を説明するためのタイミングチャート図である。
第3実施形態では、ネガティブエッジごとにカウントアップもしくはカウントダウンを行なう第1実施形態に対して、クロックCK0自体を最下位ビットQ0としたものであり、図5(A)および図5(B)に相当する図を用いた説明は割愛するが、基本的な考え方は第1実施形態と同じであり、第1実施形態と同様の効果が得られる。
加えて、クロックCK0自体を最下位ビットQ0としたことにより、第1実施形態に比べて、カウントビット数が1ビット増える、すなわち2倍になる。また、クロックCK0のハイレベルとローレベルもカウント値に寄与するので、クロックCK0の両エッジでカウント動作が行なわれことになりカウント動作が2倍速になる。
なお、第1実施形態に対する第2実施形態の適用と同様に、この第3実施形態についても、ポジティブエッジごとにカウントアップもしくはカウントダウンを行なうように、ネガティブエッジ型のフリップフロップ410をポジティブエッジ型のフリップフロップ510に置き換える変形が可能であり、この場合でも、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
<<非同期カウンタの適用事例>>
次に、本発明に係る非同期型のカウンタ回路を電子機器や半導体装置に適用した事例を説明する。なお、以下においては、X−Yアドレス型の固体撮像装置の一例である、CMOS撮像素子をデバイスとして使用した場合を例に説明する。また、CMOS撮像素子は、全ての画素がNMOSよりなるものであるとして説明する。
ただしこれは一例であって、対象となるデバイスはMOS型の撮像デバイスに限らない。光や放射線などの外部から入力される電磁波に対して感応性をする単位構成要素をライン状もしくはマトリクス状に複数個配列してなる物理量分布検知用の半導体装置の全てに、後述する全ての実施形態が同様に適用できる。
<固体撮像装置の構成;第1実施形態>
図11は、本発明に係る半導体装置の第1実施形態であるCMOS固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)の概略構成図である。なお、このCMOS固体撮像装置は、本発明に係る電子機器の一態様でもある。
固体撮像装置1は、入射光量に応じた信号を出力する受光素子(電荷生成部の一例)を含む複数個の画素が行および列に配列された(すなわち2次元マトリクス状の)画素部を有し、各画素からの信号出力が電圧信号であって、CDS(Correlated Double Sampling ;相関2重サンプリング)処理機能部やデジタル変換部(ADC;Analog Digital Converter)などが列並列に設けられているものである。
“列並列にCDS処理機能部やデジタル変換部が設けられている”とは、垂直列の垂直信号線19に対して実質的に並列に複数のCDS処理機能部やデジタル変換部が設けられていることを意味する。複数の各機能部は、デバイスを平面視したときに、ともに画素部10に対して列方向の一方の端縁側(図の下側に配されている出力側)にのみ配されている形態のものであってもよいし、画素部10に対して列方向の一方の端縁側(図の下側に配されている出力側)とその反対側である他方の端縁側(図の上側)に分けて配されている形態のものであってもよい。後者の場合、行方向の読出走査(水平走査)を行なう水平走査部も、各端縁側に分けて配して、それぞれが独立に動作可能に構成するのがよい。
たとえば、列並列にCDS処理機能部やデジタル変換部が設けられている典型例としては、撮像部の出力側に設けたカラム領域と呼ばれる部分に、CDS処理機能部やデジタル変換部を垂直列ごとに設け、順次出力側に読み出すカラム型のものである。また、カラム型に限らず、隣接する複数(たとえば2つ分)の垂直信号線19(垂直列)に対して1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を割り当てる形態や、N本おき(Nは正の整数;間にN−1本を配する)のN本分の垂直信号線19(垂直列)に対して1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を割り当てる形態などを採ることもできる。
カラム型を除くものは、何れの形態も、複数の垂直信号線19(垂直列)が1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を共通に使用する構成となるので、画素部10側から供給される複数列分の画素信号を1つのCDS処理機能部やデジタル変換部に供給する切替回路(スイッチ)を設ける。なお、後段の処理によっては、出力信号を保持するメモリを設けるなどの対処が必要になる。
何れにしても、複数の垂直信号線19(垂直列)に対して1つのCDS処理機能部やデジタル変換部を割り当てる形態などを採ることで、各画素信号の信号処理を画素列単位で読み出した後に行なうことで、同様の信号処理を各単位画素内で行なうものに比べて、各単位画素内の構成を簡素化し、イメージセンサの多画素化、小型化、低コスト化などに対応できる。
また、列並列に配された複数の信号処理部にて1行分の画素信号を同時並行処理することができるので、出力回路側やデバイスの外部で1つのCDS処理機能部やデジタル変換部にて処理を行なう場合に比べて、信号処理部を低速で動作させることができ、消費電力や帯域性能やノイズなどの面で有利である。逆に言えば、消費電力や帯域性能などを同じにする場合、センサ全体の高速動作が可能となる。
なお、カラム型の構成の場合、低速で動作させることができ消費電力や帯域性能やノイズなどの面で有利であるとともに切替回路(スイッチ)が不要である利点もある。以下の実施形態では、特に断りのない限り、このカラム型で説明する。
図11に示すように、第1実施形態の固体撮像装置1は、複数の単位画素3が行および列に配列された画素部(撮像部)10と、画素部10の外側に設けられた駆動制御部7と、カラム処理部26と、カラム処理部26にAD変換用の参照電圧を供給する参照信号生成部27と、出力回路28とを備えている。
なお、カラム処理部26の前段または後段には、必要に応じて信号増幅機能を持つAGC(Auto Gain Control) 回路などをカラム処理部26と同一の半導体領域に設けることも可能である。カラム処理部26の前段でAGCを行なう場合にはアナログ増幅、カラム処理部26の後段でAGCを行なう場合にはデジタル増幅となる。nビットのデジタルデータを単純に増幅してしまうと、階調が損なわれてしまう可能性があるため、どちらかというとアナログにて増幅した後にデジタル変換するのが好ましいと考えられる。
駆動制御部7は、画素部10の信号を順次読み出すための制御回路機能を備えている。たとえば、駆動制御部7としては、列アドレスや列走査を制御する水平走査回路(列走査回路)12と、行アドレスや行走査を制御する垂直走査回路(行走査回路)14と、内部クロックを生成するなどの機能を持つ通信・タイミング制御部20とを備えている。
なお、図中、通信・タイミング制御部20の近傍に点線で示すように、高速クロック生成部の一例であって、入力されたクロック周波数よりも高速のクロック周波数のパルスを生成するクロック変換部23を設けるようにしてもよい。通信・タイミング制御部20は、端子5aを介して入力される入力ロック(マスタークロック)CLK0やクロック変換部23で生成された高速クロックに基づいて内部クロックを生成する。
クロック変換部23で生成された高速クロックを源とする信号を用いることで、AD変換処理などを高速に動作させることができるようになる。また、高速クロックを用いて、高速の計算を必要とする動き抽出や圧縮処理を行なうことができる。また、カラム処理部26から出力されるパラレルデータをシリアルデータ化してデバイス外部に映像データD1を出力することもできる。こうすることで、AD変換されたデジタルデータのビット分よりも少ない端子で高速動作出力する構成を採ることができる。
クロック変換部23は、入力されたクロック周波数よりも高速のクロック周波数のパルスを生成する逓倍回路を内蔵している。このクロック変換部23は、通信・タイミング制御部20から低速クロックCLK2を受け取り、それを元にして2倍以上高い周波数のクロックを生成する。クロック変換部23の逓倍回路としては、k1を低速クロックCLK2の周波数の倍数としたときk1逓倍回路を設ければよく、周知の様々な回路を利用することができる。
図11では、簡単のため行および列の一部を省略して示しているが、現実には、各行や各列には、数十から数千の単位画素3が配置される。この単位画素3は、典型的には、受光素子(電荷生成部)としてのフォトダイオードと、増幅用の半導体素子(たとえばトランジスタ)を有する画素内アンプとから構成される。
画素内アンプとしては、たとえばフローティングディフュージョンアンプ構成のものが用いられる。一例としては、電荷生成部に対して、電荷読出部(転送ゲート部/読出ゲート部)の一例である読出選択用トランジスタ、リセットゲート部の一例であるリセットトランジスタ、垂直選択用トランジスタ、およびフローティングディフュージョンの電位変化を検知する検知素子の一例であるソースフォロア構成の増幅用トランジスタを有する、CMOSセンサとして汎用的な4つのトランジスタからなる構成のものを使用することができる。
あるいは、特許第2708455号公報に記載のように、電荷生成部により生成された信号電荷に対応する信号電圧を増幅するための、ドレイン線(DRN)に接続された増幅用トランジスタと、電荷生成部をリセットするためのリセットトランジスタと、垂直シフトレジスタより転送配線(TRF)を介して走査される読出選択用トランジスタ(転送ゲート部)を有する、3つのトランジスタからなる構成のものを使用することもできる。
また、駆動制御部7の他の構成要素として、水平走査回路12、垂直走査回路14、および通信・タイミング制御部20が設けられている。水平走査回路12は、カラム処理部26からカウント値を読み出す読出走査部の機能を持つ。これらの駆動制御部7の各要素は、画素部10とともに、半導体集積回路製造技術と同様の技術を用いて単結晶シリコンなどの半導体領域に一体的に形成され、半導体システムの一例である固体撮像素子(撮像デバイス)として構成される。
単位画素3は、行選択のための行制御線15を介して垂直走査回路14と、また垂直信号線19を介してカラムAD回路25が垂直列ごとに設けられているカラム処理部26と、それぞれ接続されている。ここで、行制御線15は垂直走査回路14から画素に入る配線全般を示す。
水平走査回路12や垂直走査回路14は、後述のようにデコーダを含んで構成され、通信・タイミング制御部20から与えられる制御信号CN1,CN2に応答してシフト動作(走査)を開始するようになっている。このため、行制御線15には、単位画素3を駆動するための種々のパルス信号(たとえば、リセットパルスRST、転送パルスTRF、DRN制御パルスDRNなど)が含まれる。
通信・タイミング制御部20は、図示しないが、各部の動作に必要なクロックや所定タイミングのパルス信号を供給するタイミングジェネレータTG(読出アドレス制御装置の一例)の機能ブロックと、端子5aを介してマスタークロックCLK0を受け取り、また端子5bを介して動作モードなどを指令するデータDATAを受け取り、さらに固体撮像装置1の情報を含むデータを出力する通信インタフェースの機能ブロックとを備える。
たとえば、水平アドレス信号を水平デコーダ12aへ、また垂直アドレス信号を垂直デコーダ14aへ出力し、各デコーダ12a,14aは、それを受けて対応する行もしくは列を選択する。
この際、単位画素3を2次元マトリックス状に配置してあるので、画素信号生成部5により生成され垂直信号線19を介して列方向に出力されるアナログの画素信号を行単位で(列並列で)アクセスし取り込む(垂直)スキャン読みを行ない、この後に、垂直列の並び方向である行方向にアクセスし画素信号(本例ではデジタル化された画素データ)を出力側へ読み出す(水平)スキャン読みを行なうようにすることで、画素信号や画素データの読出しの高速化を図るのがよい。勿論、スキャン読みに限らず、読み出したい単位画素3を直接にアドレス指定することで、必要な単位画素3の情報のみを読み出すランダムアクセスも可能である。
また、第1実施形態の通信・タイミング制御部20では、端子5aを介して入力されるマスタークロック(マスタークロック)CLK0と同じ周波数のクロックCLK1や、それを2分周したクロックやより分周した低速のクロックをデバイス内の各部、たとえば水平走査回路12、垂直走査回路14、カラム処理部26などに供給する。以下、2分周したクロックやそれ以下の周波数のクロック全般を纏めて、低速クロックCLK2という。
垂直走査回路14は、画素部10の行を選択し、その行に必要なパルスを供給するものである。たとえば、垂直方向の読出行を規定する(画素部10の行を選択する)垂直デコーダ14aと、垂直デコーダ14aにて規定された読出アドレス上(行方向)の単位画素3に対する行制御線15にパルスを供給して駆動する垂直駆動回路14bとを有する。なお、垂直デコーダ14aは、信号を読み出す行の他に、電子シャッタ用の行なども選択する。
水平走査回路12は、低速クロックCLK2に同期してカラム処理部26のカラムAD回路25を順番に選択し、その信号を水平信号線(水平出力線)18に導くものである。たとえば、水平方向の読出列を規定する(カラム処理部26内の個々のカラムAD回路25を選択する)水平デコーダ12aと、水平デコーダ12aにて規定された読出アドレスに従って、カラム処理部26の各信号を水平信号線18に導く水平駆動回路12bとを有する。なお、水平信号線18は、たとえばカラムAD回路25が取り扱うビット数n(nは正の整数)分、たとえば10(=n)ビットならば、そのビット数分に対応して10本配置される。
このような構成の固体撮像装置1において、単位画素3から出力された画素信号は、垂直列ごとに、垂直信号線19を介して、カラム処理部26のカラムAD回路25に供給される。
カラム処理部26の各カラムAD回路25は、1列分の画素の信号を受けて、その信号を処理する。たとえば、各カラムAD回路25は、アナログ信号を、たとえば低速クロックCLK2を用いて、たとえば10ビットのデジタルデータに変換するADC(Analog Digital Converter)回路を持つ。
ADC回路の構成については、詳細は後述するが、コンパレータ(電圧比較器)にランプ状の参照信号(参照電圧)RAMPを供給すると同時にクロック信号でのカウント(計数)を開始し、垂直信号線19を介して入力されたアナログの画素信号を参照信号RAMPと比較することによってパルス信号が得られるまでカウントすることでAD変換を行なう。
また、この際、回路構成を工夫することで、AD変換とともに、垂直信号線19を介して入力された電圧モードの画素信号に対して、画素リセット直後の信号レベル(ノイズレベル)と真の(受光光量に応じた)信号レベルVsig との差分をとる処理を行なうことができる。これにより、固定パターンノイズ(FPN;Fixed Pattern Noise )やリセットノイズといわれるノイズ信号成分を取り除くことができる。
このカラムAD回路25でデジタル化された画素データは、水平走査回路12からの水平選択信号により駆動される図示しない水平選択スイッチを介して水平信号線18に伝達され、さらに出力回路28に入力される。なお、10ビットは一例であって、10ビット未満(たとえば8ビット)や10ビットを超えるビット数(たとえば14ビット)など、その他のビット数としてもよい。
このような構成によって、電荷生成部としての受光素子が行列状に配された画素部10からは、行ごとに各垂直列について画素信号が順次出力される。そして、受光素子が行列状に配された画素部10に対応する1枚分の画像すなわちフレーム画像が、画素部10全体の画素信号の集合で示されることとなる。
<参照信号生成部とカラムAD回路の詳細>
参照信号生成部27は、DA変換回路(DAC;Digital Analog Converter)27aを有して構成されており、通信・タイミング制御部20からの制御データCN4に基づき、カウントクロックCK0に同期して、階段状の鋸歯状波(ランプ波形)を生成して、カラム処理部26の個々のカラムAD回路25に、この生成した鋸歯状波をAD変換用の参照電圧(ADC基準信号)として供給するようになっている。なお、図示を割愛しているが、ノイズ防止用のフィルタを設けるとよい。
なお、この階段状の鋸歯状波は、クロック変換部23からの高速クロック、たとえば逓倍回路で生成される逓倍クロックを元に生成することで、端子5aを介して入力されるマスタークロックCLK0に基づき生成するよりも高速に変化させることができる。
通信・タイミング制御部20から参照信号生成部27のDA変換回路27aに供給する制御データCN4は、比較処理ごとのランプ電圧が同じ傾き(変化率)となるように、時間に対するデジタルデータの変化率を同じにする。具体的には、単位時間ごとに1ずつカウント値を変化させるのがよい。
カラムAD回路25は、参照信号生成部27のDA変換回路27aで生成される参照信号RAMPと、行制御線15(H0,H1,…)ごとに単位画素3から垂直信号線19(V0,V1,…)を経由し得られるアナログの画素信号とを比較する電圧比較部(コンパレータ)252と、電圧比較部252が比較処理を完了するまでの時間をカウントし、その結果を保持するカウンタ部254とを備えて構成されnビットAD変換機能を有している。
通信・タイミング制御部20は、電圧比較部252が画素信号のリセット成分ΔVと信号成分Vsig の何れについて比較処理を行なっているのかに応じてカウンタ部254におけるカウント処理のモードを切り替える制御部の機能を持つ。
通信・タイミング制御部20から各カラムAD回路25のカウンタ部254には、クロックCK0の他に、カウンタ部254がダウンカウントモードで動作するのかアップカウントモードで動作するのかを指示するための切替制御信号SLと、アップカウントとダウンカウントのカウントモードを切り替えた際にカウント値の連続性を維持するための切替制御信号FLとが入力されている。
電圧比較部252の一方の入力端子RAMPは、他の電圧比較部252の入力端子RAMPと共通に、参照信号生成部27で生成される階段状の参照信号RAMPが入力され、他方の入力端子には、それぞれ対応する垂直列の垂直信号線19が接続され、画素部10からの画素信号電圧が個々に入力される。電圧比較部252の出力信号はカウンタ部254に供給される。
カウンタ部254のクロック端子CKには、他のカウンタ部254のクロック端子CKと共通に、通信・タイミング制御部20からカウントクロックCK0が入力されている。
このカウンタ部254は、その構成については図示を割愛するが、図21に示したラッチで構成されたデータ記憶部255の配線形態を同期カウンタ形式に変更することで実現でき、1本のカウントクロックCK0の入力で、内部カウントを行なうようになっている。カウントクロックCK0も、階段状の電圧波形と同様に、クロック変換部23からの高速クロック(たとえば逓倍クロック)を元に生成することで、端子5aを介して入力されるマスタークロックCLK0より高速にすることができる。
n個のラッチの組合せでnビットのカウンタ部254を実現でき、図21に示した2系統のn個のラッチで構成されたデータ記憶部255の回路規模に対して半分になる。加えて、カウンタ部24が不要になるから、全体としては、図21に示した構成よりも大幅にコンパクトになる。
ここで、第1実施形態のカウンタ部254は、詳細は後述するが、カウントモードに拘わらず共通のアップダウンカウンタ(U/D CNT)を用いて、ダウンカウント動作とアップカウント動作とを切り替えて(具体的には交互に)カウント処理を行なうことが可能に構成されている点に特徴を有する。
また、第1実施形態のカウンタ部254は、カウント出力値がカウントクロックCK0に非同期で出力される非同期カウンタを使用する。具体的には、上記図1〜図4にて説明した第1実施形態のカウンタ回路400を基本要素に備えたものを使用する。
同期カウンタの場合、全てのフリップフロップ(カウンタの基本要素)の動作がカウントクロックCK0で制限されるのに対して、非同期カウンタは、その動作制限周波数が最初のフリップフロップ(カウンタの基本要素)の制限周波数でのみ決められるため高速動作に適する。よって、より高周波数動作が要求される場合には、カウンタ部254としては、非同期カウンタの使用が好ましい。
カウンタ部254には、水平走査回路12から制御線12cを介して制御パルスが入力される。カウンタ部254は、カウント結果を保持するラッチ機能を有しており、制御線12cを介しての制御パルスによる指示があるまでは、カウンタ出力値を保持する。
このような構成のカラムAD回路25は、先にも述べたように、垂直信号線19(V0,V1,…)ごとに配置され、列並列構成のADCブロックであるカラム処理部26が構成される。
個々のカラムAD回路25の出力側は、水平信号線18に接続されている。先にも述べたように、水平信号線18は、カラムAD回路25のビット幅であるnビット幅分の信号線を有し、図示しないそれぞれの出力線に対応したn個のセンス回路を経由して出力回路28に接続される。
このような構成において、カラムAD回路25は、画素信号読出期間において、カウント動作を行ない、所定のタイミングでカウント結果を出力する。すなわち、先ず、電圧比較部252では、参照信号生成部27からのランプ波形電圧と、垂直信号線19を介して入力される画素信号電圧とを比較し、双方の電圧が同じになると、電圧比較部252のコンパレータ出力が反転(本例ではHレベルからLレベルへ遷移)する。
カウンタ部254は、参照信号生成部27から発せられるランプ波形電圧に同期してダウンカウントモードもしくはアップカウントモードでカウント動作を開始しており、コンパレータ出力の反転した情報がカウンタ部254に通知されると、カウント動作を停止し、その時点のカウント値を画素データとしてラッチ(保持・記憶)することでAD変換を完了する。
この後、カウンタ部254は、所定のタイミングで水平走査回路12から制御線12cを介して入力される水平選択信号CH(i)によるシフト動作に基づいて、記憶・保持した画素データを、順次、カラム処理部26外や画素部10を有するチップ外へ出力端子5cから出力する。
なお、本実施形態の説明としては直接関連しないため特に図示しないが、その他の各種信号処理回路なども、固体撮像装置1の構成要素に含まれる場合がある。
<カウンタ部の構成例;第1例>
図12は、カウンタ部254の第1の構成例を示す回路ブロック図である。この第1例では、非同期カウンタの基本構成は、上記図1〜図4にて説明した第1実施形態のカウンタ回路400と同様であるが、図2に示した第1実施形態のカウンタ回路400における初段のフリップフロップ412のクロック端子CKへのクロック信号の入力を、電圧比較部252の比較結果に基づいて制御するゲート回路を追加している点に特徴を有する。
具体的には、第1例のカウンタ部254は、2入力型のAND(論理積)ゲート472を備え、その出力が初段のフリップフロップ412のクロック端子に接続されている。ANDゲート472の一方の入力端子には電圧比較部252の比較結果が入力され、他方の入力端子には、通信・タイミング制御部20からカウンタクロックCK0が入力されている。
このような構成により、初段のフリップフロップ412のクロック端子への入力クロックが、電圧比較部252の出力とカウンタクロックCK0との論理積(AND)となり、これによって、電圧比較部252による比較期間に応じたカウントが可能となる。
すなわち、通信・タイミング制御部20は、参照信号生成部27による参照信号RAMPの生成を起動するべく、制御データCN4とカウントクロックCK0とを参照信号生成部27に供給する。参照信号生成部27は、制御データCN4に応じた初期値からカウントクロックCK0に同期してカウント動作を開始し、クロックごとに決まった段階で電圧を低下させることにより階段状のランプ波形を生成し、これを参照信号RAMPとして電圧比較部252に供給する。
電圧比較部252は、ランプ波形状の参照信号RAMPと、単位画素3からの画素信号における基準成分や信号成分の各電圧とが一致する点を探し、一致したとき、比較出力をローレベルにする。
カウンタ部254には、参照信号生成部27に供給されるカウンタクロックCK0が共通に供給される。ANDゲート262は、このカウンタクロックCK0を、電圧比較部252から供給された比較出力でゲートする。
こうすることで、比較に使用された参照信号RAMPが、画素信号における基準成分や信号成分に応じた電圧より小さくなると、非同期型のカウンタ回路400の初段のフリップフロップ412に供給されるカウントクロックが停止されるため、これ以上のカウント動作が行なわれない。よって、最終的に各フリップフロップ410に書かれた値が、画素信号における基準成分や信号成分に応じた電圧をデジタル値に変換したものとなる。
つまり、カウンタ部254は、電圧比較部252における比較処理で用いるランプ波形状の参照信号RAMPの生成時点から、画素信号における基準成分や信号成分に応じた信号と参照信号RAMPとが一致した時点までをカウントクロックCK0でカウント(計数)することで、基準成分や信号成分の大きさに対応したデジタルデータを得ることができる。
<カウンタ部の構成例;第2例>
図13は、カウンタ部254の第2の構成例を示す回路ブロック図(図13(A))と、その動作を説明するタイミングチャート(図13(B))である。この第2例では、非同期カウンタの基本構成は、第1例と同様に、図2に示した第1実施形態のカウンタ回路400と同様であるが、初段のフリップフロップ412のクロック端子CKへのクロック信号の入力を制御するANDゲート472の前段に、ポジティブエッジ型のD型フリップフロップ474と遅延回路476とを追加している。
遅延回路476としては、図13(B)に示すように、通信・タイミング制御部20からカウンタクロックCK0を所定期間(たとえば1クロック分の範囲内)だけ遅延させることのできるものであればよく、ゲート遅延を利用するなど、公知の種々の回路構成を採ることができる。
D型フリップフロップ474のD入力端子には電圧比較部252の比較結果が入力され、クロック端子CKには通信・タイミング制御部20からカウンタクロックCK0が入力され、非反転出力QがANDゲート472の一方の入力端子に入力されている。これにより、図13(B)に示すように、D型フリップフロップ474の出力は、比較器出力がカウンタクロックCK0の立上りエッジに同期して出力される。
また、通信・タイミング制御部20からカウンタクロックCK0が遅延回路476を介してANDゲート472の他方の入力端子に入力されている。そして、ANDゲート472の出力が、初段のフリップフロップ412のクロック端子に接続されている。
第1例の構成では、クロック信号の初段のフリップフロップ412のクロック端子CKへの入力を制御する機能要素として、ANDゲート472を用いていたが、このような単純な論理積(AND)を利用する場合、タイミングのずれなどによるグリッジやその他のノイズなどの影響が生じる可能性がある。
これに対して、第2例の構成のように、比較器出力をカウンタクロックCK0のエッジ(本例では立上りエッジ)で同期させた上で論理積(AND)を取ることで、電圧比較部252の比較結果をカウンタクロックCK0に同期して初段のフリップフロップ412のクロック端子に取り込むことができ、グリッジなどの影響の危険が少なくなり、より好ましい。
なお、図12および図13に示したカウンタ部254では、非同期カウンタの基本構成として、図2に示した第1実施形態のカウンタ回路400を用いていたが、第2や第3実施形態のカウンタ回路400,500を用いても、同様の考え方で、容易に同様な非同期アップダウンカウンタを構成することができる。
<固体撮像装置の動作;第1実施形態>
図14は、図11に示した第1実施形態の固体撮像装置1のカラムAD回路25における動作を説明するためのタイミングチャートである。画素部10の各単位画素3で感知されたアナログの画素信号をデジタル信号に変換する仕組みとしては、たとえば、所定の傾きで下降するランプ波形状の参照信号RAMPと単位画素3からの画素信号における基準成分や信号成分の各電圧とが一致する点を探し、この比較処理で用いる参照信号RAMPの生成時点から、画素信号における基準成分や信号成分に応じた信号と参照信号とが一致した時点までをカウントクロックでカウント(計数)することで、基準成分や信号成分の各大きさに対応したカウント値を得る手法を採る。
ここで、垂直信号線19から出力される画素信号は、時間系列として、基準成分としての画素信号の雑音を含むリセット成分ΔVの後に信号成分Vsig が現れるものである。1回目の処理を基準成分(リセット成分ΔV)について行なう場合、2回目の処理は基準成分(リセット成分ΔV)に信号成分Vsig を加えた信号についての処理となる。以下具体的に説明する。
1回目の読出しのため、先ず通信・タイミング制御部20は、カウンタ部254のカウント値を初期値“0”にリセットさせるとともに、切替制御信号SLをローレベルにしてカウンタ部254をダウンカウントモードに設定する。そして、任意の行Hxの単位画素3から垂直信号線19(V0,V1,…)への1回目の読出しが安定した後、通信・タイミング制御部20は、参照信号生成部27に向けて、参照信号RAMP生成用の制御データCN4を供給する。
これを受けて、参照信号生成部27は、電圧比較部252の一方の入力端子RAMPへの比較電圧として、全体として鋸歯状(RAMP状)に時間変化させた階段状の波形(RAMP波形)を入力する。電圧比較部252は、このRAMP波形の比較電圧と画素部10から供給される任意の垂直信号線19(Vx)の画素信号電圧とを比較する。
電圧比較部252の入力端子RAMPへの参照信号RAMPの入力と同時に、電圧比較部252における比較時間を、行ごとに配置されたカウンタ部254で計測するために、参照信号生成部27から発せられるランプ波形電圧に同期して(t10)、カウンタ部254のクロック端子に通信・タイミング制御部20からカウントクロックCK0を入力し、1回目のカウント動作として、初期値“0”からダウンカウントを開始する。すなわち、負の方向にカウント処理を開始する。
電圧比較部252は、参照信号生成部27からのランプ状の参照信号RAMPと垂直信号線19を介して入力される画素信号電圧Vxとを比較し、双方の電圧が同じになったときに、コンパレータ出力をHレベルからLレベルへ反転させる(t12)。つまり、リセット成分Vrst に応じた電圧信号と参照信号RAMPとを比較して、リセット成分Vrst の大きさに対応した時間経過後にアクティブロー(L)のパルス信号を生成して、カウンタ部254に供給する。
この結果を受けて、カウンタ部254は、コンパレータ出力の反転とほぼ同時にカウント動作を停止し、その時点のカウント値を画素データとしてラッチ(保持・記憶)することでAD変換を完了する(t12)。つまり、電圧比較部252に供給するランプ状の参照信号RAMPの生成とともにダウンカウントを開始し、比較処理によってアクティブロー(L)のパルス信号が得られるまでクロックCK0でカウント(計数)することで、リセット成分Vrst の大きさに対応したカウント値を得る。
通信・タイミング制御部20は、所定のダウンカウント期間を経過すると(t14)、電圧比較部252への制御データの供給と、カウンタ部254へのカウントクロックCK0の供給とを停止する。これにより、電圧比較部252は、ランプ状の参照信号RAMPの生成を停止する。
この1回目の読出し時は、画素信号電圧VxにおけるリセットレベルVrst を電圧比較部252で検知してカウント動作を行なっているので、単位画素3のリセット成分ΔVを読み出していることになる。
このリセット成分ΔV内には、単位画素3ごとにばらつく雑音がオフセットとして含まれている。しかし、このリセット成分ΔVのばらつきは一般に小さく、またリセットレベルVrst は概ね全画素共通であるので、任意の垂直信号線19の画素信号電圧Vxにおけるリセット成分ΔVの出力値はおおよそ既知である。
したがって、1回目のリセット成分ΔVの読出し時には、RAMP電圧を調整することにより、ダウンカウント期間(t10〜t14;比較期間)を短くすることが可能である。本実施形態では、リセット成分ΔVについての比較処理の最長期間を、7ビット分のカウント期間(128クロック)にして、リセット成分ΔVの比較を行なっている。
続いての2回目の読出し時には、リセット成分ΔVに加えて、単位画素3ごとの入射光量に応じた信号成分Vsig を読み出し、1回目の読出しと同様の動作を行なう。すなわち、先ず通信・タイミング制御部20は、切替制御信号SLをハイレベルにしてカウンタ部254をアップカウントモードに設定する(t16)。
ここで、先にも説明したように、ダウンカウントモードからアップカウントモードに切り替えた際には、カウント値が破壊されてしまい、カウント値の連続性を維持することができず、カウントモードの切替え前後でカウント値を保ったまま連続してダウン/アップのカウントを行なうことができない。
そこで、アップカウントモードでの比較処理やカウント動作を開始するためのカウントクロックCK0の供給に先立って、切替制御信号FLとして、アクティブHのワンショットパルスをカウンタ部254に供給する(t17〜t18)。これにより、非同期カウンタであるカウンタ部254を構成するフリップフロップ410のクロック端子を一旦強制的にハイレベルにしてからモード切替後の状態に戻す。この結果、先にも説明したように、ダウンカウントからアップカウントへの切り替え時に変化したカウント値が元のカウント値に戻る。
そして、任意の行Hxの単位画素3から垂直信号線19(V0,V1,…)への2回目の読出しが安定した後、通信・タイミング制御部20は、参照信号生成部27に向けて、参照信号RAMP生成用の制御データCN4をクロックCK0とともに供給する。
これを受けて、参照信号生成部27は、電圧比較部252の一方の入力端子RAMPへの比較電圧として、全体として鋸歯状(RAMP状)に時間変化させた階段状の波形(RAMP波形)を入力する。電圧比較部252は、このRAMP波形の比較電圧(参照信号RAMP)と画素部10から供給される任意の垂直信号線19(Vx)の画素信号電圧とを比較する。
電圧比較部252の入力端子RAMPへの参照信号RAMPの入力と同時に、電圧比較部252における比較時間を、行ごとに配置されたカウンタ部254で計測するために、参照信号生成部27から発せられるランプ波形電圧に同期して(t20)、カウンタ部254のクロック端子に通信・タイミング制御部20からカウントクロックCK0を入力し、2回目のカウント動作として、1回目の読出し時に取得された単位画素3のリセット成分ΔVに対応するカウント値から、1回目とは逆にアップカウントを開始する。すなわち、正の方向にカウント処理を開始する。
電圧比較部252は、参照信号生成部27からのランプ状の参照信号RAMPと垂直信号線19を介して入力される画素信号電圧Vxとを比較し、双方の電圧が同じになったときに、コンパレータ出力をHレベルからLレベルへ反転させる(t22)。つまり、信号成分Vsig に応じた電圧信号と参照信号RAMPとを比較して、信号成分Vsig の大きさに対応した時間経過後にアクティブロー(L)のパルス信号を生成して、カウンタ部254に供給する。
この結果を受けて、カウンタ部254は、コンパレータ出力の反転とほぼ同時にカウント動作を停止し、その時点のカウント値を画素データとしてラッチ(保持・記憶)することでAD変換を完了する(t22)。つまり、電圧比較部252に供給するランプ状の参照信号RAMPの生成とともにダウンカウントを開始し、比較処理によってアクティブロー(L)のパルス信号が得られるまでクロックCK0でカウント(計数)することで、信号成分Vsig の大きさに対応したカウント値を得る。
通信・タイミング制御部20は、所定のダウンカウント期間を経過すると(t24)、電圧比較部252への制御データの供給と、カウンタ部254へのカウントクロックCK0の供給とを停止する。これにより、電圧比較部252は、ランプ状の参照信号RAMPの生成を停止する。
この2回目の読出し時は、画素信号電圧Vxにおける信号成分Vsig を電圧比較部252で検知してカウント動作を行なっているので、単位画素3の信号成分Vsig を読み出していることになる。
ここで、本実施形態においては、カウンタ部254におけるカウント動作を、1回目の読出し時にはダウンカウント、2回目の読出し時にはアップカウントとしているので、カウンタ部254内で自動的に、式(1)で示す減算が行なわれ、この減算結果に応じたカウント値がカウンタ部254に保持される。
ここで、式(1)は、式(2)のように変形でき、結果としては、カウンタ部254に保持されるカウント値は信号成分Vsig に応じたものとなる。
つまり、上述のようにして、1回目の読出し時におけるダウンカウントと2回目の読出し時におけるアップカウントといった、2回の読出しとカウント処理によるカウンタ部254内での減算処理によって、単位画素3ごとのばらつきを含んだリセット成分ΔVとカラムAD回路25ごとのオフセット成分とを除去することができ、単位画素3ごとの入射光量に応じた信号成分Vsig のみを簡易な構成で取り出すことができる。この際、リセット雑音も除去できる利点がある。
よって、本実施形態のカラムAD回路25は、アナログの画素信号をデジタルの画素データに変換するデジタル変換部としてだけでなく、CDS(Correlated Double Sampling ;相関2重サンプリング)処理機能部としても動作することとなる。
また、式(2)で得られるカウント値が示す画素データは正の信号電圧を示すので、補数演算などが不要となり、既存のシステムとの親和性が高い。
ここで、2回目の読出し時は、入射光量に応じた信号成分Vsig を読み出すので、光量の大小を広い範囲で判定するために、アップカウント期間(t20〜t24;比較期間)を広く取り、電圧比較部252に供給するランプ電圧を大きく変化させる必要がある。
そこで本実施形態では、信号成分Vsig についての比較処理の最長期間を、10ビット分のカウント期間(1024クロック)にして、信号成分Vsig の比較を行なっている。つまり、リセット成分ΔV(基準成分)についての比較処理の最長期間を、信号成分Vsig についての比較処理の最長期間よりも短くする。リセット成分ΔV(基準成分)と信号成分Vsig の双方の比較処理の最長期間すなわちAD変換期間の最大値を同じにするのではなく、リセット成分ΔV(基準成分)についての比較処理の最長期間を信号成分Vsig についての比較処理の最長期間よりも短くすることで、2回に亘るトータルのAD変換期間が短くなるように工夫する。
この場合、1回目と2回目との比較ビット数が異なるが、通信・タイミング制御部20から制御データを参照信号生成部27に供給して、この制御データに基づいて参照信号生成部27にてランプ電圧を生成するようにすることで、ランプ電圧の傾きすなわち参照信号RAMPの変化率を1回目と2回目とで同じにする。デジタル制御でランプ電圧を生成するので、ランプ電圧の傾きを1回目と2回目とで同じにすることが容易である。これにより、AD変換の精度を等しくできるため、アップダウンカウンタによる式(1)で示した減算結果が正しく得られる。
2回目のカウント処理が完了した後の所定のタイミングで(t28)、通信・タイミング制御部20は水平走査回路12に対して画素データの読出しを指示する。これを受けて、水平走査回路12は、制御線12cを介してカウンタ部254に供給する水平選択信号CH(i)を順次シフトさせる。
こうすることで、カウンタ部254に記憶・保持した式(2)で示されるカウント値、すなわちnビットのデジタルデータで表された画素データが、n本の水平信号線18を介して、順次、カラム処理部26外や画素部10を有するチップ外へ出力端子5cから出力され、その後、順次行ごとに同様の動作が繰り返されることで、2次元画像を表す映像データD1が得られる。
以上説明したように、第1実施形態の固体撮像装置によれば、非同期型のアップダウンカウンタを用いつつ、その処理モードを切り替えて2回に亘ってカウント処理を行なうようにした。また、行列状に単位画素3が配列された構成において、カラムAD回路25を垂直列ごとに設けた列並列カラムAD回路で構成した。
非同期カウンタを用いたことで、その動作制限周波数が最初のフリップフロップの制限周波数でのみ決められるため高速動作が可能になる。2回に亘りAD変換を行なうことで基準成分と信号成分との差信号成分をデジタルデータに変換する場合であっても、トータルのAD変換処理を高速に動作させることができAD変換期間を短くすることができる。
また、基準成分(リセット成分)と信号成分との減算処理が2回目のカウント結果として垂直列ごとに直接に取得することができ、基準成分と信号成分のそれぞれのカウント結果を保持するメモリ装置をカウンタ部が備えるラッチ機能で実現でき、AD変換されたデータを保持する専用のメモリ装置をカウンタとは別に用意する必要がない。
さらに、基準成分と信号成分との差を取るための特別な減算器が不要になる。よって、従来構成よりも、回路規模や回路面積を少なくすることができ、加えて、雑音の増加や電流あるいは消費電力の増大を解消することができる。
また、比較部とカウンタ部でカラムAD回路(AD変換部)を構成したので、ビット数によらずカウンタ部を動作させるカウントクロック1本とカウントモードを切り替える制御線とでカウント処理を制御でき、従来構成で必要としていたカウンタ部のカウント値をメモリ装置まで導く信号線が不要になり、雑音の増加や消費電力の増大を解消することができる。
つまり、AD変換装置を同一チップ上に搭載した固体撮像装置1において、電圧比較部252とカウンタ部254とを対にしてAD変換部としてのカラムAD回路25を構成するとともに、カウンタ部254の動作としてダウンカウントとアップカウントとを組み合わせて使用しつつ、処理対象信号の基本成分(本実施形態ではリセット成分)と信号成分との差をデジタルデータにすることで、回路規模や回路面積や消費電力、あるいは他の機能部と間のインタフェース用配線の数や、この配線によるノイズや消費電流などの問題を解消することができる。
<固体撮像装置の構成;第2実施形態>
図15は、本発明の第2実施形態に係るCMOS固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)の概略構成図である。この第2実施形態の固体撮像装置1は、第1実施形態の固体撮像装置1に対して、カラムAD回路25の構成を変形している。
すなわち、第2実施形態におけるカラムAD回路25は、カウンタ部254の後段に、このカウンタ部254の保持したカウント結果を保持するnビットのメモリ装置としてのデータ記憶部256と、カウンタ部254とデータ記憶部256との間に配されたスイッチ258とを備えている。
スイッチ258には、他の垂直列のスイッチ258と共通に、通信・タイミング制御部20から、所定のタイミングで、制御パルスとしてのメモリ転送指示パルスCN8が供給される。スイッチ258は、メモリ転送指示パルスCN8が供給されると、対応するカウンタ部254のカウント値をデータ記憶部256に転送する。データ記憶部256は、転送されたカウント値を保持・記憶する。
なお、カウンタ部254のカウント値を所定のタイミングでデータ記憶部256に保持させる仕組みは、両者間にスイッチ258を配する構成に限らず、たとえば、カウンタ部254とデータ記憶部256とを直接に接続しつつ、カウンタ部254の出力イネーブルをメモリ転送指示パルスCN8で制御することで実現することもできるし、データ記憶部256のデータ取込タイミングを決めるラッチクロックとしてメモリ転送指示パルスCN8を用いることでも実現できる。
データ記憶部256には、水平走査回路12から制御線12cを介して制御パルスが入力される。データ記憶部256は、制御線12cを介しての制御パルスによる指示があるまでは、カウンタ部254から取り込んだカウント値を保持する。
水平走査回路12は、カラム処理部26の各電圧比較部252とカウンタ部254とが、それぞれが担当する処理を行なうのと並行して、各データ記憶部256が保持していたカウント値を読み出す読出走査部の機能を持つ。
このような第2実施形態の構成によれば、カウンタ部254が保持したカウント結果を、データ記憶部256に転送することができるため、カウンタ部254のカウント動作すなわちAD変換処理と、カウント結果の水平信号線18への読出動作とを独立して制御可能であり、AD変換処理と外部への信号の読出動作とを並行して行なうパイプライン動作が実現できる。
<固体撮像装置の動作;第2実施形態>
図16は、図15に示した第2実施形態の固体撮像装置1のカラムAD回路25における動作を説明するためのタイミングチャートである。カラムAD回路25におけるAD変換処理は、第1実施形態と同様である。ここではその詳細な説明を割愛する。
第2実施形態においては、第1実施形態の構成に、データ記憶部256を追加したものであり、AD変換処理を始めとする基本的な動作は第1実施形態と同様であるが、カウンタ部254の動作前(t30)に、通信・タイミング制御部20からのメモリ転送指示パルスCN8に基づき、前行Hx−1のカウント結果をデータ記憶部256に転送する。
第1実施形態では、2回目の読出処理、すなわちAD変換処理が完了した後でなければ画素データをカラム処理部26の外部に出力することができないので、読出処理には制限があるのに対して、第2実施形態の構成では、1回目の読出処理(AD変換処理)に先立って前回の減算処理結果を示すカウント値をデータ記憶部256に転送しているので、読出処理には制限がない。
こうすることで、データ記憶部256から水平信号線18および出力回路28を経た外部への信号出力動作と、現行Hxの読出しおよびカウンタ部254のカウント動作とを並行して行なうことができ、より効率のよい信号出力が可能となる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
たとえば、上記実施形態では、カウントモード切替時に変化したカウント値を元のカウント値に戻す仕組みとして、カウンタの基本要素であるフリップフロップ(ラッチ)のクロック端子を一旦強制的にハイレベル(ネガティブエッジ型のとき)もしくはローレベル(ポジティブエッジ型のとき)にしてからモード切替後の状態に戻すようにしていたが、カウントモード切替時に変化したカウント値を元のカウント値に戻す仕組みは、必ずしもこのようなものに限定されない。
たとえば、図17は、カウントモードの切替時に破壊されたカウント値を元に戻す仕組みの他の構成例を示す図である。先ず、非同期カウンタの基本構成として、公知の技術を利用して任意の初期値をロードすることのできる構成のカウンタ回路600にする。
たとえば、カウンタ回路600は、内部に図示しないフリップフロップ(ラッチ)を有するフリップフロップ群610と、ラッチ620から構成されたものとする。図では、4ビットに対応する事例で示す。
非同期カウンタであるカウンタ回路600を構成するフリップフロップ(ラッチ)群610の各反転出力NQnを、フリップフロップ群610を構成する図示しない自身のフリップフロップのD端子(D0〜D3)に入力する。また、非同期カウンタを構成するフリップフロップ群610の各非反転出力Qnをラッチ620(図では4段構成)のD端子(D0〜D3)に入力する。ラッチ620の各非反転出力をフリップフロップ群610の対応するデータ設定端子Din0〜Din3に入力する。
非同期カウンタを構成するフリップフロップ(ラッチ)群610の各非反転出力Qnをラッチ620(図では4段構成)により該当のクロックCKxでラッチすることで1クロック前の状態を保持しておく。ここで該当のクロックCKxとは、フリップフロップ群610を構成する図示しない個々のフリップフロップ(ラッチ)のクロック端子に入力されるクロックを意味する。カウントモードによって、前段のフリップフロップの非反転出力/反転出力の何れかとなる。
カウントモードを切替制御信号SLにより切り替えた後、切替制御信号FLをフリップフロップ群610のロード端子LDに入力することで、ラッチ620に保持しておいたデータをフリップフロップ群610に書き込む、すなわち初期値設定をする。こうすることで、カウントモードを切り替えた際に変化したカウント値の直前のカウント値がフリップフロップ群610に設定される。つまり、カウント値が変化する前の状態である、カウントモードを切り替える直前のカウント値に戻る。これにより、カウントモード切替前のカウント値を保持することができるため、モード切替後に、カウント値の連続性を保った状態で、引き続いてカウントを行なうことができる。
こうすることで、基準成分と信号成分との減算処理が直接にでき、基準成分と信号成分との差を取るための特別な加算回路が不要になる。また、減算器へのデータ転送が不要になり、そのための雑音の増加や電流あるいは消費電力の増大を解消することができる。
また、上記実施形態では、カウンタの基本要素として、エッジトリガタイプのフリップフロップを用いていたが、レベルトリガタイプのフリップフロップを用いてもよい。
また、上記実施形態では、電圧比較部252とカウンタ部254からなるカラムAD回路25を垂直列ごとに設けて垂直列ごとにデジタルデータ化する構成としていたが、これに限らず、垂直列に対しての切替回路を設けることで、複数の垂直列に対して1つのカラムAD回路25を配するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、画素部10の読出し側に位置するカラム領域にAD変換機能部を設けていたが、その他の箇所に設けることもできる。たとえば、水平信号線18までアナログで画素信号を出力して、その後にAD変換を行ない出力回路28に渡すような構成としてもよい。
この場合でも、AD変換用の参照信号と基準成分と信号成分とを含んで表される処理対象信号とを比較し、この比較処理と並行して、ダウンカウントモードおよびアップカウントモードの何れか一方のモードでカウント処理を行ない、比較処理が完了した時点のカウント値を保持する際、基準成分と信号成分の何れについて比較処理を行なっているのかに応じてカウント処理のモードを切り替えることで、基準成分と信号成分との差を表すデジタルデータを、ダウンカウントモードおよびアップカウントモードの2つのモードでカウント処理した結果として得ることができる。
この結果、基準成分と信号成分のそれぞれのカウント結果を保持するメモリ装置をカウンタ部が備えるラッチ機能で実現でき、AD変換されたデータを保持する専用のメモリ装置をカウンタとは別に用意する必要がない。全ての垂直列に対して1つのAD変換機能部を設ければよく、高速な変換処理が必要にはなるものの回路規模は上記実施形態よりも少なくなる。
また、上記実施形態では、画素信号が、時間系列として、同一画素について、リセット成分ΔV(基準成分)の後に信号成分Vsig が現れ、後段の処理部が正極性(信号レベルが大きいほど正の値が大きい)の信号について処理するものに対応して、1回目の処理として、リセット成分ΔV(基準成分)について比較処理とダウンカウント処理を行ない、2回目の処理として、信号成分Vsig について比較処理とアップカウント処理を行なうようにしていたが、基準成分と信号成分が現れる時間系列に拘わらず、対象信号成分とカウントモードとの組合せや処理順は任意である。処理手順によっては、2回目の処理で得られるデジタルデータが負の値になることもあるが、その場合には、補正演算をするなどの対処をすればよい。
勿論、画素部10のデバイスアーキテクチャとして、信号成分Vsig の後にリセット成分ΔV(基準成分)を読み込まなければならず、後段の処理部が正極性の信号について処理するものである場合には、1回目の処理として、信号成分Vsig について比較処理とダウンカウント処理を行ない、2回目の処理として、リセット成分ΔV(基準成分)について比較処理とアップカウント処理を行なうのが効率的である。
また、上記実施形態では、NMOSより構成されている単位画素で構成されたセンサを一例に説明したが、これに限らず、PMOSよりなる画素のものについても、電位関係を反転(電位の正負を逆に)して考えることで、上記実施形態で説明したと同様の作用・効果を享受可能である。
また、上記実施形態では、アドレス制御により個々の単位画素からの信号を任意選択して読出可能な固体撮像装置の一例として、光を受光することで信号電荷を生成する画素部を備えたCMOSセンサを例に示したが、信号電荷の生成は、光に限らず、たとえば赤外線、紫外線、あるいはX線などの電磁波一般に適用可能であり、この電磁波を受けてその量に応じたアナログ信号を出力する素子が多数配列された単位構成要素を備えた半導体装置に、上記実施形態で示した事項を適用可能である。
また、上記実施形態では、基準成分および信号成分のそれぞれに応じた信号とAD変換用の参照信号とを比較する比較部と、比較部における比較処理と並行して、非同期カウンタを用いてダウンカウントモードおよびアップカウントモードの何れか一方のモードでカウント処理を行ない、比較部における比較処理が完了した時点のカウント値を保持するカウンタ部とを備えてなるAD変換回路(AD変換装置;前例ではカラムAD回路)を固体撮像装置に適用した事例を説明したが、上記実施形態で説明したAD変換回路の仕組みは、固体撮像装置に限らず、2つの信号成分の差信号成分をデジタルデータに変換するためのAD変換の仕組みを用いるあらゆる電子機器に適用することができる。
たとえば、固体撮像装置1の外部にて、固体撮像装置1から取り込んだアナログの画素信号に基づき、上記実施形態で説明した比較器とカウンタとを利用してAD変換を行なうことで、真の信号成分のデジタルデータ(画素データ)を取得し、この画素データに基づきさらに所望のデジタル信号処理を行なう電子機器を構成することもできる。
また、上記実施形態で説明したAD変換回路(AD変換装置)は、固体撮像装置やその他の電子機器に組み込まれて提供されることに限らず、たとえばIC(Integrated Circuit;集積回路)やAD変換モジュールなどのようにして、単独の装置として提供されてもよい。
この場合、比較部と非同期型のカウンタ部とを備えたAD変換装置で提供してもよいが、AD変換用の参照信号を生成し比較部に供給する参照信号生成部や、比較部が基準成分と信号成分の何れについて比較処理を行なっているのかに応じてカウンタ部におけるカウント処理のモードを切り替える制御部も同一の半導体基板上に配したIC(集積回路)や個別チップなどの組合せでなるモジュールに組み込んで提供してもよい。
これらを組み込んで提供することで、比較部と非同期型のカウンタ部の動作を制御するために必要な機能部を纏めて取り扱うことができ、部材の取扱いや管理が簡易になる。また、AD変換処理に必要な要素がICやモジュールとして纏まって(一体となって)いるので、固体撮像装置やその他の電子機器の完成品の製造も容易になる。
1…固体撮像装置、3…単位画素、7…駆動制御部、10…画素部、12…水平走査回路、14…垂直走査回路、15…行制御線、18…水平信号線、19…垂直信号線、20…通信・タイミング制御部、21…タイミング制御部、23…クロック変換部、24…カウンタ部、25…カラムAD回路、26…カラム処理部、27…参照信号生成部、27a…DA変換回路、28…出力回路、252…電圧比較部、254…カウンタ部、256…データ記憶部、258…スイッチ、400,500…カウンタ回路、410〜418,510〜518…フリップフロップ、420〜426,520〜526…3値切替部(初期値設定処理部)、430〜437,464,530〜537…2値切替部、462…インバータ