JP4738555B2 - 電流測定回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、配線器具または電気機械器具等に内蔵する電流測定回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
電力線等、強勢力回路に流れる交流電流を検知または計測する電流測定回路として従来さまざまな回路が提案され、図3(a)に示すように、変流器31と通電表示手段32とで構成されたものや、図3(b)に示すように、通電表示手段として電流計42を用いたものがあり、配電、計装、制御分野に於ける交流電流計測に広く用いられている。
【0003】
図3(b)に示す電流測定回路では、強勢力回路に交流電流I1 が流れると、変流器41の持つ所定の変流比nに従い、二次巻線41Bに誘起される電流I2 は計算式(1)で求められ、
I2 =I1 /n・・・・・・・・・・(1)
誘起された電流によって、電流計42の針を振らせる。この電流計42に変流比nを加味した目盛を施しておくことにより、強勢力回路の電流値を直読できるようにしたものである。
【0004】
また、図3(c)は、通電、表示手段としてLED52を用いた例であり、通電電流の有無を表示する目的に用いられ、特に、配線器具分野では、低圧屋内配線上の負荷設備への通電を確認・表示する目的に、変流器51としてフェライト圧粉磁心を使用した小形電流トランスを用い、通電表示手段であるLED52とともに、埋込型スイッチに内蔵させ、負荷通電の確認表示機能を持たせたものがある。
【0005】
図3(c)の電流測定回路では、強勢力回路に交流電流I1 が流れると、変流器51の持つ所定の変流比nに従い、二次巻線51Bに誘起される電流I2 は上述の計算式(1)で求められ、誘起した電流I2 は交流電流I1 と同期した交番電流となるが、電流I2 の流れが矢印cの方向であるときには、LED52に電流I2 が流れ、LED52が点灯して、強勢力回路の通電を表示する。一方、電流I2 が矢印cと逆方向であるときには、電流I2 はダイオード53に流れ、LED52に対する逆方向電流をバイパスし、LED52に過大な逆方向電圧がかかるのを防いでいる。
【0006】
ところで、図3(b)(c)の電流測定回路において、強勢力回路側にサージ電流IS1 が流入すると、二次巻線41B、51Bにはサージ電流IS1 に対応した二次巻線電流Is2 が誘起し、この二次巻線電流Is2 は計算式(2)で求められる。
Is2 =Is1 /n’・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
(n’:n’≧n)
ここで、n’は、当該サージ電流波形に対する変流器の変成比であり、通常、定格電流に対する同一変流器の変成比nと同等か、それより大きい値をとる。このとき、通電表示手段42又は52、53に流れる電流Iは、計算式(3)で求められる。
I=I2 +Is2
=I1 /n+Is1 /n’・・・・・・・・・・・・・(3)
サージ電流Is1 が甚だしい場合には通電表示手段である電流計42、LED52を過電流により破壊することがある。
【0007】
配線器具の分野では、低圧屋内配線で用いられる白熱灯、小形電動機等、電源投入時の突入電流が定常運転時の定格電流値に対し数倍〜十数倍に達するものがあるため、これが通電表示装置に対するサージ電流として働き、条件によってはLED52が焼損する事例があった。
【0008】
そこで、サージ電流耐量の改善を図った回路として、図3(d)に示すものが知られている。
【0009】
図3(d)において、変流器61の二次巻線61Aと通電表示手段63、ダイオード64との間に限流抵抗器62を挿入し、二次巻線電流に比例する電圧降下Vrを発生させ、この電圧降下Vrは計算式(4)で求められる。
Vr=R×(I2 +Is2 )・・・・・・・・・・・・・(4)
R:限流抵抗器の抵抗値
そして、変流器の二次負担電力P2 は計算式(5)で求められる。
P2 =(Vf+Vr)×(I2 +Is2 )
=R(I2 +Is2 )2 +Vf(I2 +Is2 )・・(5)
Vf:LEDの順方向電圧降下(約2V)
【0010】
従って、図3(d)に於けるRを0Ωとしたものに等しい図3(c)の回路では、変流器二次負担電力P2 は二次電流の一乗と比例して増大するに過ぎない。
【0011】
他方、図3(d)に示す電流測定回路では、二次電流の二乗に比例して変流器二次負担電力が急増するから、二次電流の大きな領域では、変流器磁心が磁気飽和して二次電流の増加に歯止めが掛かり、以って電流測定回路へのサージ電流流入を抑制しようとするものである。
【0012】
他に、限流要素としてインダクタンスを用い、図3(d)における限流抵抗器の代わりに固定インダクタを挿入したもの等が考えられる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のような、変流器の二次巻線と直列に限流要素を挿入する方式では、サージ電流に対する耐量改善の効果はあまり見られなかった。
【0014】
即ち、変流器の二次巻線電流が全て通過する限流抵抗器は、二次巻線電流の二乗に比例した電力を消費する為、サージ電流通過時に瞬時電力が数百kWにも及び、限流抵抗器を焼損し易く、限流抵抗器が焼損した場合には、例え通電表示手段が破壊に至らなくても、通電表示手段への電流経路が断たれるから、結果として通電表示機能が失われ、サージ耐量の改善につながらないという問題がある。
【0015】
特に、配線器具内蔵用などの、小形化要求の厳しい回路にあっては、LEDやダイオード、固定抵抗器等に表面実装用チップ部品を採用することになるため、一般のリード部品に比較して個々の部品の熱容量が小さく、このような尖頭電力による破壊をとりわけ受け易い。
【0016】
また、負荷設備として、近年、種々のインバータ器具が昔及しつつあるが、これら、電源初期投入時に極めて急峻かつ大振幅の突入電流が流入するタイプの負荷にあっては、当該サージ電流に対する変成比n’が予想外に低い値となり、変流器二次回路のサージ抑制効果が上がらず、当該負荷の定格電流に比し充分な電流容量を持つ電流測定回路であっても、しばしば破壊されるという問題があった。
【0017】
更に、サージ電流により限流抵抗器が焼損したときの故障モードが[開放]であることから、抵抗器の故障が、変流器の二次側回路開放につながり、二次巻線の絶縁破壊を招いて、事故波及の恐れがあるという問題も有する。
【0018】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みてなされたもので、省部品、低コストかつ、大幅なサージ耐量改善効果のある電流測定回路を提供することをその課題とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明に係る電流測定回路は、変流器の二次巻線と通電表示手段との間に限流手段を挿入し、通電表示手段に流入する電流に比例して変流器の二次巻線電圧を押上げるとともに、変流器の二次巻線と並列に電圧制御分流手段を設け、当該変流器の二次巻線電圧が所定の値を超えると瞬時に二次巻線電流を短絡し、当該変流器の二次負担を軽減しつつ通電表示手段への電流を制限する一方、通電表示電流が所定値以下となれば、電圧制御分流手段は自動復帰し、変流器二次巻線の短絡を解いて初期の動作に復する構成としたことを特徴としている。
【0020】
また、前記電圧制御分流手段は、定電圧ダイオード、サイリスタ又は双方向サイリスタで構成すればよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る電流測定回路のブロック図を示し、この電流測定回路Aは、埋込スイッチ等の配線器具や電気機械器具等に内蔵される電流通過型の電流測定回路であって、主回路電流I1 の変成・絶縁を行う変流器11と、変流器11の二次巻線11Bに誘起する二次巻線電流I2 の有無若しくは量を表示する通電表示手段14と、通電表示手段14へ流入する電流の増加に従い変流器11の二次巻線電圧を上げる限流手段13と、変流器11の二次巻線11Bと並列に設けられた電圧制御分流手段12とから構成されている。そして図2は、上記電流測定回路Aの好適な一例の電気回路図を示し、符号21は、変流器を示し、この変流器21は配線器具内蔵用のものとしては、小形軽量で安価な、フェライト圧粉磁心と型巻コイルを用いた小形電流トランスが用いられる。
【0022】
変流器21の一次巻線21Aは、電流を計測すべき線路へ直列に挿入されればよい。例えば、離れた場所に設置した照明器具を点滅操作する通電表示機能付スイッチの場合、図2に示すように、スイッチ1の筐体2に電流測定回路Aを内蔵させるとともに、上記スイッチ1と一次巻線21Aと、電源3と、負荷(例えば、照明器具等)4とをすべて直列に結線して主回路を構成すればよい。
【0023】
変流器21の二次巻線21Bは、一次巻線21Aを接続した主回路に流れる電流I1 に比例した二次巻線電流I2 を誘起し、通電表示手段24を駆動する。この通電表示手段24は、LEDで構成され、変流器21の二次巻線電流I2 によって駆動され、主回路電流I1 の有無を表示するもので、LED24の電流感度(輝度)、最大定格電流値と、変流器の変成比とを適宜選択することにより、所望の主回路電流レンジに対して、通電表示させることができる。
【0024】
そして、限流手段23は抵抗器で構成され、LED24に流入する電流に比例する電圧降下を発生させる。例えば、小形高輝度LEDを使用する場合には、数十〜百数十Ω程度の低抵抗を用い、LEDが定格内で点灯している状態では、1V程度の偉かな電圧降下となるよう、選定する。
【0025】
抵抗器23の作用により、変流器二次巻線21Bの端子電圧は上昇するものの、定常時に於けるその上昇値は1V程度と僅少であり、変流器21の二次負担上昇による影響は無視することができる。
【0026】
電圧制御分流手段22は、定電圧ダイオードで構成され、主回路にサージ電流が流れた際、変流器21を通って二次巻線21B側へ流入する異常電流を分流短絡し、変流器及び変流器の二次側に接続される回路全体を保護するものである。
【0027】
上記電圧制御分流手段22としてツェナー電圧4V前後の小形定電圧ダイオードを用い、LEDが定格内で点灯しているときにはツェナー降伏を生ぜず、単に整流ダイオードとして動作させている。この状態は、図3(d)の従来例に於ける通電表示手段のダイオード64の位置を、限流用抵抗器より変流器側へ移動したものに等しく、機能上もダイオード64と同様である。
【0028】
ところで、変流器21の一次巻線21Aを経由して主回路にサージ電流が流れると、変流器21の二次巻線21Bにも、瞬間的に定常時を大きく上回る異常電流が誘起される。例えば、図2に示す主回路の負荷としてインバータ照明器具4が接続されている場合、定格消費電力が100W程度のものであっても、機種によっては起動時の突入電流が数十〜百Aに達する場合がある。
【0029】
このように、瞬間的に定常時の数十倍にも上る電流が一次巻線21Aに流れた場合、変流器内部の鉄損・銅損等により幾分減衰はするものの、変流器の二次巻線21Bには定常時の十倍〜数十倍の異常電流が誘起される。
【0030】
特に、配線器具等に内蔵される小形変流器では、型巻された一次巻線と二次巻線とが、同心円状に密着配置される構造の為、上述のインバータ負荷による突入電流のような、立上がりの極めて急峻かつ大振幅のサージ電流に対し、空心結合効果により、二次巻線に大きなインパルス状の過渡電流が伝達される性質がある。
【0031】
このような異常電流が発生した場合、図3(c)に示す従来例では、LED52やダイオード53が過電流により焼損破壊しており、図3(d)に示す従来例では、抵抗器62が焼損したあと、電流経路の断たれた変流器61の二次巻線61Bが絶縁破壊していた。
【0032】
次に、本発明の電流測定回路の作動態様について説明する。変流器の二次巻線21Bに異常電流が誘起し、異常電流の方向が矢印aの場合、抵抗器23を通ってLED24に流れる電流が増加するため、抵抗器23の電圧降下が増大し、変流器二次巻線21Bの線間電圧が上昇する。これが定電圧ダイオード22のツェナー電圧を超えると、定電圧ダイオード22が導通し、変流器二次巻線21Bを短絡して、二次電流を分流するので、抵抗器23及びLED24には所定値以上の電流が流入せず、破壊に至らないばかりか、表示機能も正常に保たれる。
【0033】
異常電流の方向が矢印bの場合、定電圧ダイオード22は順方向となり、変流器二次巻線間を短絡する。
【0034】
このように、変流器21の二次電流が異常に増加した場合にも、二次巻線間が短絡に近い状態で低電位差に保たれる為、二次負担が軽減されるとともに、二次巻線回路が低力率状態となる。
【0035】
したがって、立ち上がりの急峻なサージ電流に対し、二次巻線に誘起される異常電流の立ち上がりを抑制する効果を有するとともに、巻線温度が過大に上昇しない程度の継続時間であれば、変流器の絶縁破壊等、非可逆的損傷を回避することができる。
【0036】
なお、図2に示した実施例では、主回路の定格電流1A未満〜十数A程度、サージ電流百A〜数百A、サージ波尾長数ms程度を想定しているが、二次側へ伝達されるサージ波は持続時間の短いインパルス状となるため、電圧制御分流手段として用いる定電圧ダイオードの熱的負担は大きくなく、小形の汎用ツェナーダイオードが使用できる。
【0037】
なお、上述の電流測定回路では電圧制御分流手段として定電圧ダイオードを用いたが、大電力回路へ応用するには、定電圧ダイオードに代えて、サイリスタまたは双方向サイリスタを用い、ゲート電流を定電圧ダイオードで制御させる構成としてもよい。
【0038】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、主回路電流の変成・絶縁を行うセンタータップなしの変流器と、電圧制御分流手段である定電圧ダイオードと、限流手段である抵抗器と、通電表示手段であるLEDとで構成し、電圧制御分流手段と変流器の二次巻線とは並列に直結するとともに、電圧制御分流手段の変流器側には限流抵抗を設けていないので主回路に発生するサージ電流に対し高い許容度を有する。しかも汎用部品の組合せで実現できる為、特殊部品使用によるコスト増要因が無く、低コストで主回路に発生するサージ電流に対し高い許容度を有する電流測定回路が得られる。
【0039】
そして、サージ電流通過後、電圧制御分流手段は自動復帰するため、ヒューズや遮断器による保護方式のような復旧操作が不要になる。制御・計装分野に於ける電流監視目的など、復旧忘れによる通電表示機能の停止が重大な影響を及ぼす用途では、警報ヒューズ・警報接点付遮断器などを用いて、使用者に保護回路の動作を報知し、復旧操作を促す構成が必要であったが、本発明によれば、これら警報機構が不要となり、表示信頼性も向上する。
【0040】
請求項2の発明によれば、電圧制御分流手段として定電圧ダイオード、サイリスタ又は双方向サイリスタを用いた場合には、デバイスの耐量を超えたサージ電流が流入すると、電圧制御分流手段が過負荷故障するが、多くの場合過負荷故障がショートモードであるため、保護機構故障後は変流器の二次側回路が短絡となる。この状態で一次巻線に通電しても、変流器の一次巻線及び二次巻線による磁束はバランスが保たれるため、変流器は故障に至らず、一次側回路へ事故波及の恐れがなく、フェイルセーフに優れた電流測定回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す回路ブロック図である。
【図2】本発明の一実施例を示す電気回路図である。
【図3】(a)〜(d)は従来例の回路ブロック図及び電気回路図である。
【符号の説明】
11、21 変流器
11A、21A 変流器一次巻線
11B、21B 変流器二次巻線
12、22 電圧制御分流手段
13、23 限流手段
14、24 通電表示手段
Claims (2)
- 配線器具または電気機械器具等に内蔵する電流測定回路であって、以下の要件を備えたことを特徴とする電流測定回路。
(イ)一次巻線を上記配線器具または電気機械器具等の線路に直列に結線し、主回路電流の変成・絶縁を行うセンタータップなしの変流器と、該変流器の二次巻線に誘起する電流の有無若しくは量を表示する通電表示手段と、上記変流器の二次巻線と並列に設けた電圧制御分流手段と、上記電圧制御分流手段と上記通電表示手段との間に設けた限流手段とを備えること
(ロ)上記電圧制御分流手段は上記変流器の二次巻線電圧が所定の値を越えると二次巻線電流を分流または短絡し、通電表示電流が所定値以下となれば電圧制御分流手段は自動復帰すること - 前記電圧制御分流手段は、定電圧ダイオード、サイリスタ又は双方向サイリスタで構成されている請求項1記載の電流測定回路。
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