(A)第1の実施形態
まず、本発明の通信タイミング制御装置、通信タイミング制御方法、ノード及び通信システムの第1の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態は、例えばアドホックネットワーク等のような対等分散型の通信ネットワークにおいて、空間的に分散配置された複数のノードのそれぞれが有する通信制御手段に、本発明の通信タイミング制御装置及び方法を適用した場合を説明する。
ここで、ノードとは、計算機能や通信機能等を少なくとも有する装置をいい、例えば、コンピュータ、移動通信端末、PDA端末等を含むものである。
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、本実施形態の通信ネットワーク(通信システム)を構成する各ノードの内部構成を示す機能ブロック図である。また、本実施形態では説明を分かりやすくするため、3台のノード1〜ノード3の間における関係を説明し、図2はそれらノード1〜ノード3の位置関係例を示す図である。なお、ノード2及び3は、ノード1が発信するインパルス信号の到達範囲内に存在するものとして説明する。
図2に示すノード1〜ノード3はそれぞれ同一の内部構成を備えており、図1では、これらを代表するノードとしてノード10Aと示して説明する。
図1に示すように、本実施形態のノード10Aは、インパルス信号受信手段11、通信タイミング計算手段12、インパルス信号送信手段13、揺らぎ吸収手段14、タイミング保持手段15、データ通信手段16を少なくとも有する。
インパルス信号受信手段11は、近傍ノード(例えば、ノードの発信電波が届く範囲に存在する他のノード)が発信した出力インパルス信号を入力インパルス信号として受信するものである。また、インパルス信号受信手段11は、入力インパルス信号に基づく受信インパルス信号を通信タイミング計算手段12に与えるものである。さらに、インパルス信号受信手段11は、各インパルス信号の受信時刻を揺らぎ吸収手段14及びタイミング保持手段15に与えるものである。
ここで、インパルス信号は、通信タイミング信号として授受されるものであり、例えば、ガウス分布形状等のインパルス形状を有するものである。また、インパルス信号が、自ノードの空間位置を示す宛先情報(例えば、アドレス情報)が付加されていてもよい。なお、受信インパルス信号は、入力インパルス信号を波形整形したものでも良く、信号を再生成したものであっても良い。
通信タイミング計算手段12は、インパルス信号受信手段11から受信インパルス信号を受け取り、後述するタイミング保持手段15の保持内容を参照して、受信インパルス信号に基づいて通信タイミングを規定する位相信号を生成するものである。また、通信タイミング計算手段12は、生成した位相信号をインパル信号送信手段13に与えるものである。なお、通信タイミング計算手段12は、受信インパルス信号がない場合であっても位相信号を生成し、出力する。
ここで、通信タイミング計算手段12が受信インパルス信号に基づいて通信タイミングを規定する位相信号を生成する、基本的な方法について説明する。
ノードiの位相信号の時刻tでの位相値をθ
i(t)とすると、通信タイミング計算手段12は、受信インパルス信号に基づいて、式(1)に示すように、位相信号(=θ
i(t))を非線形振動リズムで変化させる。この位相信号の変化は、近傍のノード同士が逆相(振動の位相が反転位相)又は他の位相になろうとする非線形特性を実現し、その特性を用いて衝突回避を実行させようとしたものである。すなわち、近傍のノード間における出力インパルス信号の発信タイミングなどが衝突しないように、適当な時間関係(時間差)を形成させようとしている。
(1)式は、インパルス信号受信手段11が受信したインパルス信号に応じて、自ノードiの位相信号θi(t)の非線形振動のリズムを変化させる規則を表している。(1)式において、右辺第1項ω(固有角振動数パラメータ)は、各ノードが備える基本的な変化リズム(「自己の動作状態を遷移させる基本速度」に対応する)を表しており、右辺第2項が非線形変化分を表している。ここで、ωの値はシステム全体で同一値に統一している。関数Pk(t)は、近傍ノードk(kは1〜Nまでとする)から受信したインパルス信号に基づいて、インパルス信号受信手段11が出力した信号を表しており、関数R(θi(t),σ(t))は、他ノードからのインパルス信号の受信に応じて自己の基本的なリズムを変化させる応答特性を表現する位相応答関数であり、例えば、(2)式に従っている。(2)式は時刻tにおける位相信号θi(t)の逆相にランダムノイズを重畳させた位相値の正弦波で位相応答関数を定めていることを表している。
近傍ノード同士が逆相(振動の位相が反転位相)になろうとする非線形特性を実現し、その特性を用いて衝突回避を実行させようとしたものである。すなわち、近傍ノード間におけるインパルス信号の送信タイミングなどが衝突しないように、各ノードの位相信号の値が同じ値になるタイミングに、適当な時間関係(時間差)が形成させようとしている。
(2)式において、関数σ(t)を表現する定数項π[rad]は、近傍のノード同士が逆相になろうとする非線形特性の働きをし、ランダムノイズ関数φ(t)は、その非線形特性にランダムな変動性を与える働きをする(関数φ(t)は、例えば、平均値が0のガウス分布に従う)。ここで、上記非線形特性にランダムな変動性を与えているのは、システムが目的とする安定状態(最適解)に到達せず、別の安定状態(局所解)に陥ってしまう現象に対処するためである。
なお、(2)式では、位相応答関数R(θi(t),σ(t))の最も簡単な例として、sin関数を用いる形式を示したが、位相応答関数として他の関数を用いてもよい。また、関数σ(t)の定数項πに代え、π以外の定数λ(0<λ<2π)を用いても良く、この場合、近傍のノード同士が逆相ではなく、異なる位相になろうとする機能とする。
通信タイミング計算手段12の機能の意味合いを図3及び図4を用いて詳述すると以下の通りである。なお、図3及び図4に示す状態変化は、インパルス信号送信手段13の機能も関係している。
図3及び図4は、ある1つのノードに着目したときに、着目ノード(自ノード)と近傍ノード(他ノード)との間に形成される関係、すなわち、それぞれの非線形振動リズム間の位相関係が時間的に変化していく様子を示している。
図3は、着目ノードiに対して近傍ノードjが1個存在する場合である。図3において、円上を回転する2つの質点の運動は、着目ノードと近傍ノードに対応する非線形振動リズムを表しており、質点の円上の角度がその時刻での位相信号の値を表している。質点の回転運動を縦軸あるいは横軸に射影した点の運動が非線形振動リズムに対応する。後述する(1)式に基づく動作により、2つの質点は相互に逆相になろうとし、仮に、図3(a)に示すように初期状態で2つの質点の位相が近くても、時間経過と共に、図3(b)に示す状態(過渡状態)を経て、図3(c)に示すような2つの質点の位相差がほぼπである定常状態に変化していく。
2つの質点は、それぞれ固有角振動数パラメータωを基本的な角速度(自己の動作状態を遷移させる基本速度に相当)とする回転をしている。ここで、ノード間でインパルス信号の送受信に基づく相互作用が生じると、これらの質点は、それぞれ角速度を変化(緩急)させ、結果的に、適当な位相関係を維持する定常状態に到達する。この動作は、2つの質点が回転しながら相互に反発しあうことによって、安定な位相関係を形成するものと見ることができる。定常状態では、後述するように、それぞれのノードが所定の位相(例えば0)のときに出力インパルス信号を発信するとした場合、互いのノードにおける発信タイミングは、適当な時間関係を形成していることになる。
また、図4は、着目ノードiに対して2個の近傍ノードj1、j2が存在する場合を表している。近傍ノードが2個存在する場合においても、上述と同様に、それぞれの質点が回転しながら相互に反発しあうことによって、安定な位相関係(時間的な関係に関する安定性)を形成する。近傍ノード数が3個以上の場合についても同様である。
上述の安定な位相関係(定常状態)の形成は、近傍ノード数の変化に対して非常に適応的(柔軟)な性質を持つ。例えば、今、着目ノードに対して近傍ノードが1個存在し、安定な位相関係(定常状態)が形成されているときに、近傍ノードが1個追加されたとする。定常状態は一旦崩壊するが、過渡状態を経た後、近傍ノードが2個の場合における新たな定常状態を再形成する。また、近傍ノードが削除された場合や故障等により機能しなくなった場合においても、同様に適応的な動作をする。
図1に戻り、インパルス信号送信手段13は、通信タイミング計算手段12からの位相信号に基づいて、出力インパルス信号を送信するものである。すなわち、位相信号が所定の位相α(0≦α<2π)になると、出力インパルス信号を送信する。ここで、所定の位相αは、予めシステム全体で統一しておくことが好ましい。以下では、α=0にシステム全体で統一されているとして説明する。なお、図3の例で言えば、ノードiとノードjとでは、定常状態で相互の位相信号がπだけずれているので、α=0にシステム全体で統一しても、ノードiからの出力インパルス信号の送信タイミングと、ノードjからの出力インパルス信号の送信タイミングとはπだけずれている。
また、インパルス信号送信手段13は、各インパルス信号の送信時刻をタイミング保持手段15に与えて、保持させるものである。
データ通信手段16は、他ノードが送信したデータ信号を受信すると共に、自ノードが送信元となるデータ信号や、又は中継するデータ信号を送信するものである。データ通信手段16は、インパルス信号送信手段13からの通知を受けて「定常状態」の場合に、後述するタイムスロット(システム等が各ノードに割り当てた固定的な時間区間ではないが、「タイムスロット」という用語を用いる)でデータ信号を送信するものである。
ここで、タイムスロットは、位相信号θi(t)がδ1≦θi(t)≦β1−δ2である期間である。タイムスロットの開始点(そのときの位相信号の値をδ1とする)は、インパルス信号の送信が終了したタイミングであり、タイムスロットの終了点(そのときの位相信号の値をβ1−δ2とする)は、位相信号の周期毎の最初の受信インパルス信号のタイミングより多少のオフセット分δ2だけ前のタイミングとしている。δ1やδ2は、当該ノードの近傍の無線空間で、インパルス信号(送信元は自ノードの場合、他ノードの場合の双方を含む)と、データ信号(送信元は自ノードの場合、他ノードの場合の双方を含む)とが同時に存在しないことを補償するためのごく短い時間に対応する位相幅である。
例えば、図3(c)に示すような「定常状態」の場合、ノードiは、位相θiが0からインパルス信号を送信し始め、位相θiがδ1になる前に、インパルス信号の送信を終了させておき、位相θiがδ1からデータ信号を送信し始め、位相θiがβ1−δ2になると(但しβ1≒π)、データ信号の送信を終了させ、それ以降、位相θiが再び0になるまで、インパルス信号の送信もデータ信号の送信も停止させる。他方のノードjも、位相θjに基づいて同様な動作を実行するが、位相θiと位相θjとがほぼπだけずれているので、送信動作が競合することはない。ノード数が3以上の場合も同様に動作し、送信動作が競合することはない。
上述のように、固有角振動数パラメータωは、通信システム(ネットワーク)全体で同一の値に統一するとしている。固有角振動数パラメータωが統一されていると、各ノードで不規則にばらついている場合に比べ、定常状態に入りやすく、逆に、固有角振動数ωが統一されていないと、異常なインパルス信号を送信するノードも多くなり、定常状態に入り難い。
タイミング保持手段15は、インパルス信号送信手段13から各インパル信号の送信時刻を受け取り、保持するものである。また、タイミング保持手段15は、各インパルス信号の送信時刻の時間差に基づいて、送信インパルス信号の送信周期の時間を求め、保持するものである。
また、タイミング保持手段15は、インパルス信号受信手段11から各インパルス信号の受信時刻を受け取り、それぞれ直前に送信したインパルス信号の送信時刻と各受信インパルス信号の受信時刻との時間関係(時間差)を求め、各受信インパルス信号の時間差を保持するものである。この送信インパルス信号の送信時刻と受信インパルス信号の受信時刻との時間差は、各送信周期におけるインパルス信号の受信タイミングであり、以下ではこれを受信インパルス信号の検知時間差と表現して説明する。
さらに、タイミング保持手段15は、後述する揺らぎ吸収手段14が求めた各受信インパルス信号の修正時間差を保持するものである。
なお、本実施形態では、タイミング保持手段15は、送信インパルス信号の1周期分におけるデータを保持するものとする。
揺らぎ吸収手段14は、タイミング保持手段15の保持内容を参照してインパルス信号の送信周期に揺らぎが生じているか否かを判定し、タイミング保持手段15の保持内容を用いてインパルス信号の送信周期の揺らぎを補正するものである。
揺らぎ吸収手段14によるインパルス信号の送信周期の揺らぎの補正方法について説明する。揺らぎ吸収手段14は、インパルス信号が受信されると、各受信インパルス信号の検知時間差を求める。そして、揺らぎ吸収手段14は、タイミング保持手段15に保持されている1周期前の各受信インパルス信号の検知時間差を読み出し、今周期の各受信インパルス信号の検知時間差を比較する。このとき、揺らぎ吸収手段14は、インパルス信号を受信すると、タイミング保持手段15に保持されている順につけあわせしてそれぞれを比較するものとする。そして、揺らぎ吸収手段14は、今周期の各受信インパルス信号の検知時間差と1周期前の各受信インパルス信号の検知時間差とに基づいて、各受信インパルス信号の検知時間差の修正をする。このとき、今周期の各受信インパルス信号の検知時間差と、1周期前の各受信インパルス信号の検知時間差とが異なる場合、送信周期に揺らぎが生じていると判定できる。
また、揺らぎ吸収手段14は、修正した各受信インパルス信号の検知時間差(各受信インパルス信号の修正時間差)をタイミング保持手段15に保持させる。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、本実施形態の通信システムを構成する各ノードにおける通信タイミングの調整動作について図面を参照して説明する。
本実施形態の各ノードは、インパルス信号を送受信して相互作用をしながら、インパルス信号の送受信タイミングを保存し、この保存内容を利用して自ノードが送信するインパルス信号の送信タイミングの補正を行う。
以下では、タイミングの保存処理を行う相互作用開始直後の1周期目、送信タイミングの補正も行なう2周期目以降についてそれぞれ説明していく。
図5は、各ノードにおける送信タイミングの第1周期目の動作フローチャートであり、図6は、各ノードにおける送信タイミングの第2周期目以降の動作フローチャートである。
また、図7は、本実施形態におけるノード1のインパルス信号の送信周期及び受信インパルス信号の検知タイミングの関係例を示す説明図である。なお、図7(A)及び(B)はノード2及びノード3のインパルス信号の送信タイミングであり、図7(C)はノード1のインパルス信号の送信タイミング及び受信インパルス信号の検知タイミングである。
まず、各ノードにおける通信タイミングの第1周期目の動作について図5を参照して説明する。
自ノードにおいて、インパルス信号送信手段13は通信タイミング計算手段12からの通知を受けて、インパルス信号送信手段13はインパルス信号を送信する(ステップ1)。このとき、インパルス信号の送信時刻はタイミング保持手段15に保持される(ステップ2)。
例えば、図7(C)では、ノード1からインパルス信号が送信されると、インパルス信号の送信時刻t1−1がノード1のタイミング保持手段15に保持される。なお、図7に示されるtK−Nは、Kがノード番号を示し、Nがノード1における送信周期の周期番号を示す。
自ノードがインパルス信号を送信した後、近傍ノードが送信したインパルス信号が、インパルス信号受信手段11に受信される(ステップ3)。
インパルス信号が受信されると、受信時刻がタイミング保持手段15に与えられ、保持される。また、タイミング保持手段15では、自ノードが送信したインパルス信号の送信時刻と当該受信したインパルス信号の受信時刻との時間差から、受信インパルス信号の検知時間差が求められ、保持される(ステップ4)。
また、インパルス信号受信手段11が受信したインパルス信号は、通信タイミング計算手段12に与えられ、通信タイミング計算手段14による位相信号の生成に用いられる。そして、通信タイミング計算手段14から位相信号が出力されるまで、すなわち、次のインパルス信号の送信タイミングまで、インパルス信号の受信処理及び受信インパル信号の検知時間差の保持処理が繰り返される(ステップ5、ステップ3及び4)。
例えば、図7において、ノード1はノード2が送信時刻t2−1に送信したインパルス信号を受信する。ノード1は、送信インパルス信号の送信時刻t1−1と、ノード2からのインパルス信号のノード1における検知時刻との時間差T2−1を求める。そして、ノード2からの受信インパルス信号の検知時間差T2−1をタイミング保持手段15が保持する。
また同様に、図7において、ノード1は、ノード3が送信時刻t3−1に送信したインパルス信号を受信し、送信インパルス信号の送信時刻t1−1と、ノード3からのインパルス信号のノード1における検知時刻との時間差T3−1を求める。そして、ノード3からの受信インパルス信号の検知時間差T3−1をタイミング保持手段15に保持する。
このようにして、インパルス信号の1送信周期内で受信した各インパルス信号の検知時間差を求めることができる。
通信タイミング計算手段12が各受信インパルス信号に基づいて位相信号を出力すると、自ノードのインパルス信号送信手段13からインパルス信号が送信される(ステップ5)。これは、送信インパルス信号の第2周期目の開始を示す。
インパルス信号送信手段13からインパルス信号が送信されると、このインパルス信号の送信時刻と1周期前の送信時刻とに基づいて、第1周期目の周期時間が求められ、その周期時間がタイミング保持手段15に保持される(ステップ6)。
例えば、図7において、自ノードがインパルス信号を送信すると、そのインパルス信号の送信時刻t1−2が求められ、前回の送信時刻t1−1と今回の送信時刻t1−2とに基づいて、インパルス信号の送信周期の時間T1−1が求められる。そして、揺らぎ吸収手段14が求めたインパルス信号の送信周期の時間T1−1はタイミング保持手段15に保持される。
図8は、ノード1のインパルス信号の送信周期が第N周期目の場合に、タイミング保持手段15が保持する内容例を示す。図8に示すように、ノード1のタイミング保持手段15は、第N周期目の送信インパルス信号の送信周期の時間T1−(N−1)と、ノード2から受信した受信インパルス信号の検知時間差T2−Nと、ノード3から受信した受信インパルス信号の検知時間差T3−Nとを有する。
なお、本実施形態では、揺らぎ吸収手段14及びタイミング保持手段15がインパルス信号の送信時刻及び受信時刻に基づく時間を保存するものとして説明した。
しかし、上述したように、通信タイミング計算手段12は相互作用の計算に位相を用いている。
そのため、揺らぎ吸収手段14及びタイミング保持手段15は、インパルス信号の送信時点及び受信時点について位相に変換した位相差θを保存するようにしてもよい。
例えば、この場合、第N周期目におけるノードkから受信したインパルス信号の検知時間差に基づく位相差θkは、θk=Tk−N/T1−Nのようにして求めることができる。
次に、インパルス信号の送信周期が第2周期目以降の場合の各ノードにおける動作について説明する。
図6では、第1周期目内に近傍ノードからインパルス信号を受信した後、自ノードからインパルス信号が送信される(ステップ11)。これにより、ノードにおいて、第2周期目のインパルス信号の送信周期になる。このとき、インパルス信号の送信時刻が測定され、第1周期目のインパルス信号の送信周期の時間がタイミング保持手段15に保持される(ステップ12)。この処理は、図5のステップ5及び6に対応する。
自ノードがインパルス信号を送信した後、第1周期目と同様に、近傍ノードからのインパルス信号が、インパルス信号受信手段11に受信される(ステップ13)。
そして、図5のステップ4の場合と同様に、インパルス信号の受信時刻がタイミング保持手段15に与えられ、受信インパルス信号の検知時間差が求められる(ステップ14)。
第2周期目に受信したインパルス信号の検知時間差が求められると、揺らぎ吸収手段14は、タイミング保持手段15が保持する1周期前の受信インパルス信号の検知時間差が保持されている順に読み取り、第2周期目の受信インパルス信号の検知時間差と、第1周期目の受信インパルス信号の検知時間差とを比較し、受信インパルス信号の検知時間差の修正を行なう(ステップ15)。
ここで、揺らぎ吸収手段14による受信インパルス信号の検知時間差を修正する方法は、例えば次式に従って、受信インパルス信号の修正時間差TK−N’を求めることで行なう。
TK−N’=1/2(TK−N+TK−(N−1)) …(3)
(3)式では、ノードKから受信したインパルス信号について、今周期の受信インパルス信号の検知時間差と1周期前の受信インパルス信号の検知時間差とを平均した時間差を、受信インパルス信号の修正時間差とする。
例えば、ノード1がノード2からのインパルス信号を受信する場合、その受信インパルス信号の検知時間差が、5秒、5秒、10秒、5秒、…と変動したとする。この場合、(3)式に従って受信インパルス信号の修正時間差を求めると、5秒、7.5秒、7.5秒、…となる。すなわち、受信インパルス信号の検知時間差の変動幅は、5.0秒から2.5秒に縮小することができる。
揺らぎ吸収手段14は、インパル信号の受信するたびに、ステップ13〜15の処理を繰り返し行なう。また、第2周期内で求められた各受信インパルス信号の検知時間差及び修正時間差はタイミング保持手段15に保持される(ステップ14及びステップ15)。
通信タイミング計算手段12は、タイミング保持手段15に保持されている各受信インパルス信号の修正時間差を読み出し、各受信インパルス信号の修正時間差に基づく位相差を用いて、インパルス信号の送信タイミングを規定する位相信号を計算し、出力する。なお、上述と同様に、タイミング保持手段15は、各受信インパルス信号の修正時間差を位相差に変換して保持するようにしてもよい(ステップ16)。
このようにして、揺らぎ吸収手段14が受信インパルス信号の検知時間差を修正することで、その検知時間差の変動幅を縮小することができる。そのため、通信タイミング計算手段12における送信タイミングの計算に用いられる受信インパルス信号の変動位相差も縮小することができるので、位相信号の位相変動幅も縮小することができる。すなわち、ノードにおける送信タイミングの変動幅を縮小することができる。
(A−3)第1の実施形態の効果
以上、本実施形態によれば、ノードにおけるインパルス信号の送信周期、各周期毎の各受信インパルス信号の検知時間差を求め、これらを用いて受信インパルス信号の検知時間差を修正することで、送信インパルス信号の送信間隔の揺らぎを補正することができる。
また、本実施形態によれば、送信インパルス信号の送信間隔の揺らぎを小さくすることができるので、従来確保していたデータ信号を行なわないとするマージンを小さくすることができるので、結果として、ネットワークの通信利用効率を向上させることができる。
(B)第2の実施形態
次に、本発明の通信タイミング制御装置、通信タイミング制御方法、ノード及び通信システムの第2の実施形態を図面を参照して説明する。
図9は、第2の実施形態に係るノードの内部構成を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、第2の実施形態のノード10Bは、インパルス信号受信手段11、通信タイミング計算手段12、インパルス信号送信手段13、揺らぎ吸収手段14、タイミング保持手段15、データ通信手段16、状態取得手段21、同調判定保持手段22、を少なくとも有する。
本実施形態のノード10Bが第1の実施形態のノード10Aと異なる点は、ノード10Bが、ノードAが備える構成要件のほかに、状態取得手段21、同調判定手段22を設ける点である。
状態取得手段21は、通信タイミング計算手段12が計算するインパルス信号の送信タイミングの相互調整の状態を取得し、その状態の変動に応じて揺らぎ吸収手段14によるインパルス信号の送信周期の揺らぎ補正を行なわせるか又は行なわせないかを決めるものである。
ここで、状態取得手段21におけるインパルス信号の送信タイミングの相互調整の状態を取得する方法は、種々の方法が考えられるが、例えば、通信タイミング計算手段12が計算した位相相互作用の計算結果から取得する方法や、同調判定手段22が判定した状態の判定結果を利用する方法等が考えられる。
通信タイミング計算手段12の計算結果から取得する方法は、例えば、インパルス信号を受信する近傍ノードの数が変化した場合、通信タイミング計算手段12が計算した送信タイミングが変化する。そこで、状態取得手段21は、通信タイミング計算手段12が計算したインパルス信号の送信タイミングを受け取り、インパルス信号の送信タイミングの位相差の変動幅が閾値以上である場合、過渡状態であると判定し、又閾値未満である場合、定常状態と判定する。
また、同調判定手段22の判定結果を利用する方法は、状態取得手段21が同調判定手段22が過渡状態であるか又は定常状態であるかを示す同調判定信号を受け取り、その同調判定信号に基づいて相互調整の状態を判定する。
また、状態取得手段21は、過渡状態であると判定した場合には、揺らぎ吸収手段14によるインパルス信号の送信周期の揺らぎ補正を行なわないようにし、定常状態であると判定した場合には、揺らぎ吸収手段14によるインパルス信号の送信周期の揺らぎ補正を行なうようにする。
これにより、過渡状態の場合には、揺らぎ補正をしないので、インパルス信号の送信周期の変動を大きくすることができ、定常状態の場合には、揺らぎ補正をして、インパルス信号の送信周期の変動を小さくすることができる。
同調判定手段22は、通信タイミング計算手段12が計算したインパルス信号の送信タイミングを受け取り、そのインパルス信号の送信タイミングの相互調整が「過渡状態」あるいは「定常状態」のいずれかの状態であるかを判定するものである。また、同調判定手段22は、各周期毎に、判定結果に応じた同調判定信号を状態取得手段21に与えるものである。
同調判定手段22は、受信インパルス信号及びインパルス信号の発生タイミングを観測し、インパルス信号を授受し合う複数のノードの発生タイミング間の時間差が時間的に安定している場合に「定常状態」であると判定する(図3(c)、図4(c)参照)。なお、この実施形態の場合には、同調判定手段22には、自ノードが出力するインパルス信号の発生タイミングを捉えるための信号として、出力インパルス信号に代えて、位相信号が通信タイミング計算手段12から入力されている。
同調判定手段22は、例えば、以下の(a)〜(d)のような処理を実行して同調判定を行う。
(a)受信インパルス信号の発生タイミングにおける位相信号の値βを、位相信号の1周期に亘って観測する。ここでは、上記の観測を行った結果、得られる位相信号の値βをそれぞれ、β1,β2,…,βN(0<β1<β2<…<βN<2π)とする。
(b)観測された位相信号の値βに基づいて、隣接値間の差(位相差)△1=β1,△2=β2−β1,…,△N=βN−β(N−1)を算出する。
(c)上記(a)及び(b)の処理を位相信号の周期単位に行い、相前後する周期における位相差△の変化量(差分)γ1=△1(τ+1)−△1(τ),γ2=△2(τ+1)−△2(τ),…,γN=△N(τ+1)−△N(τ)を算出する。ここで、τは、位相信号のある周期を示しており、τ+1は、位相信号のその次の周期を示している。
(d)上述の変化量γが、いずれも微小パラメータ(閾値)εよりも小さい場合、すなわち、γ1<ε,γ2<ε,…,γN<εの場合に、「定常状態」であると判定する。
なお、γ1<ε,γ2<ε,…,γN<εという条件がM周期に亘って満足される場合を定常状態と判定するようにしても良い。Mの値を大きくするほど、より安定性の高い状態で「定常状態」と判定できる。また、一部の受信インパルス信号に基づいて、「定常状態」の判定を行っても構わない。
同調判定手段22は、位相信号の周期毎に、判定結果を示す同調判定信号と、受信インパルス信号の発生タイミングにおける位相信号の値βの最小値β1をスロット信号として状態取得手段21に出力する。
なお、最小値β1をスロット信号として出力するようにしたのは、上述したように、α=0としていることと関係しており、αの値の選定によっては、スロット信号に適用するβの値は変化する。
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
また、本実施形態によれば、自ノードと他ノードと間の動作状態あるいは動作タイミングの関係を判定する状態取得手段21を備えることにより、自ノードと他ノードとの間の関係が、安定状態であると判定した場合に揺らぎ吸収手段14によるインパルス信号の送信周期の補正をさせることができ、不安定状態である場合に揺らぎ吸収手段14によるインパルス信号の送信周期の補正をさせないようにすることができる。その結果、過渡状態では変動が大きいが、揺らぎ補正を行うことで定常状態への遷移までの時間が遅くなることを防ぐことができるという効果がさらに得られる。
(C)第3の実施形態
次に、本発明の通信タイミング制御装置、通信タイミング制御方法、ノード及び通信システムの第3の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の通信タイミング制御装置及び方法は、自ノードがインパルス信号を受信できるノード毎にインパルス信号の受信タイミングの履歴を保持し、その保持内容から対応するノードからインパルス信号の受信エラーが生じているか否かを判定し、その判定結果から相互作用を行なうノード数を決めて、インパルス信号の送信タイミングを決定する。
つまり、自ノードを中心としたネットワーク(通信システム)構成からたいていの近傍ノードはあらかじめ特定することができる。よって、そのような近傍ノードからインパルス信号の受信タイミングの範囲も予想できる。しかし、実際の受信タイミングが予想できなかった範囲となった場合に履歴情報を用いることで、インパルス信号の送信周期の変動幅を少なくするというものである。これにより、例えば、フェージングやノイズ等の一時的に生じ得る影響を受けず、インパルス信号の送信周期の変動幅を小さくすることができる。
(C−1)第3の実施形態の構成
図10は、本実施形態のノードの内部構成を示す機能ブロック図である。本実施形態のノード10Cが第1及び第2の実施形態のノード10A及び10Bと異なる点は、通信タイミング計算手段32、揺らぎ吸収手段34の機能及びタイミング保持手段35が保持する保持内容であり、その他の構成要件は、図1及び図9に示す構成要件に対応する。
そこで、以下では、通信タイミング計算手段32、揺らぎ吸収手段34及びタイミング保持手段35について、第1及び第2の実施形態で既に説明した機能の説明は省略し、本実施形態に特有の機能を詳細に説明する。
タイミング保持手段35は、自ノードが送信した各インパルス信号の送信時刻と、送信インパルス信号の送信周期の時間と、各受信インパルス信号の検知時間差と、各受信インパルス信号の修正時間差とを、少なくとも保持するものであり、少なくとも2周期分以上の受信インパルス信号の検知時間差を各ノードごとに保持するものである。これにより、自ノードが相互作用を行なっている近傍ノードから受信したインパルス信号の検知時間差の履歴を保持することができる。
ここで、例えば、インパルス信号に送信元情報を含ませて用いることで、タイミング保持手段35は、インパルス信号の送信元であるノード毎に受信インパルス信号の検知時間差等の情報を保持する。
なお、インパルス信号に含ませる送信元情報は、各ノードを識別することができる識別情報であり、例えば、自ノードのノード番号(例えば、MAC(Media Access Control)アドレス等)を適用できる。勿論、インパルス信号に送信元情報を付与するのではなく、例えば、制御情報の送信元情報等の別の手段により、どのノードからのインパルス信号であるかを認識できるようにしてもよい。
また、タイミング保持手段35は、揺らぎ吸収手段34からの指示の下、1周期前でインパルス信号を受信していた近傍ノードから今周期ではインパルス信号を受信しなかった場合、当該近傍ノードに対して未受信フラグを付与し、保持するものである。このように、未受信フラグを用いることで、インパルス信号の受信エラーが生じていないかどうかを確認することができる。
揺らぎ吸収手段34は、第1及び第2の実施形態と同様に、タイミング保持手段35を参照して、インパルス信号の送信周期を補正するものである。
また、揺らぎ吸収手段34は、受信インパルス信号の検知時間差を修正する際、タイミング保持手段35が保持する内容を参照して、受信したインパルス信号がどの近傍ノードからのものであるかを判断する。これにより、特定のノードからのインパルス信号について検知時間差の変動を見るようにする。
さらに、揺らぎ吸収手段34は、タイミング保持手段35が保持する内容を参照して、1周期前でインパルス信号を受信していた近傍ノードから今周期ではインパルス信号を受信しなかった場合、当該近傍ノードに対して未受信フラグを付すようタイミング保持手段35に指示するものである。
通信タイミング計算手段32は、タイミング保持手段35が保持する履歴を参照し、次周期のインパルス信号の受信タイミングの範囲を予想し、その予想範囲内で、インパルス信号を受信しなかった場合に、タイミング保持手段35に保持されている1周期前の受信インパルス信号の検知時間差を用いて、インパルス信号の送信タイミングを計算するものである。なお、通信タイミング計算手段32は、予想範囲内でインパルス信号を受信した場合には、通常通りの方法でインパルス信号の送信タイミングを計算する。
(C−2)第3の実施形態の動作
次に、本実施形態のノードにおける動作について図面を参照して説明する。
まず、ノード10Cにおける第1周期目は、第1の実施形態と同様に、インパルス信号の送信時刻、各受信インパルス信号の検知時間差が求められて、これらがタイミング保持手段35に保持される。このとき、インパルス信号受信手段11は、受信したインパルス信号の送信元情報に基づいて送信元ノードを特定し、タイミング保持手段35は、各受信インパルス信号の検知時間差を各ノード毎に保持する。
次に、ノード10Cにおける第2周期目も、第1の実施形態と同様に、インパルス信号の送信時刻、第1周期目のインパルス信号の送信周期の時間、各受信インパルス信号の検知時間差が求められて、これらがタイミング保持手段35に保持される。
このとき、インパルス信号受信手段11は、受信したインパルス信号に含まれている送信元情報に基づいて送信元ノードを特定し、受信インパルス信号の検知時間差を特定した送信元ノードと対応付けて、タイミング保持手段35に保持させる。これにより、各ノード毎に、2周期分の履歴情報をタイミング保持手段35が保持することができる。
なお、本実施形態では、インパルス信号に含まれている送信元情報に基づいて印パル信号の送信元ノードを特定して、受信インパルス信号の検知時間差とノードとを対応付けするようにしたが、これ以外の方法で対応付けしてもよい。
例えば、インパルス信号に送信元情報が付与されていない場合は、受信したインパルス信号について、タイミング保持手段35の保持内容を参照し、第1周期目と第2周期目のノード毎の受信インパルス信号の検知時間差を比較し、それぞれの受信インパルス信号の検知時間差が近いか否かを判断することでノードの対応付けを行なうようにしてもよい。例えば、第1周期目に3個のインパルス信号を受信し、それら受信インパルス信号の検知時間差が5秒、10及び15秒であるとする。そして、第2周期目に2個のインパルス信号を受信し、それら受信インパルス信号の検知時間差が5秒、14秒であるとする。この場合、第2周期目の1番目のインパルス信号は、第1周期目の1番目のインパルス信号と対応させることができ、また第2周期目の2番目のインパルス信号は、第1周期目の3番目のインパルス信号と対応させることができる。
なお、第2周期目において、揺らぎ吸収手段34は、第1の実施形態と同様に、各受信インパルス信号の検知時間差を修正し、通信タイミング計算手段32は、この各受信インパルス信号の修正時間差に基づく位相差により、インパルス信号の送信タイミングを計算する。そして、インパルス信号送信手段13は、通信タイミング計算手段32が計算した送信タイミングでインパルス信号を送信する。
続いて、ノード10Cにおける第3周期目以降の動作について図11及び図12を参照して説明する。
図11は、第N周期目におけるノード1のタイミング保持手段35の保持内容例である。図1に示すように、タイミング保持手段35は、第N周期目及び第N−1周期目の受信インパルス信号の検知時間差を保持すると共に、第N−1周期の時間及び未受信フラグのON/OFFを保持する。
まず、第3周期目以降も同様に、インパルス信号の送信時刻、第2周期目のインパルス信号の送信周期、各受信インパルス信号の検知時間差が求められて、各ノードに対応付けられて各受信インパルス信号の検知時間差がタイミング保持手段35に保持される(ステップ21及び22)。
インパルス信号が受信されると、揺らぎ吸収手段34は、タイミング保持手段35の保持内容を参照して、インパルス信号の受信数、すなわち相互作用を行なっているノード数が変化したか否かを確認する(ステップ23)。
これにより、タイミング保持手段35の保持内容に基づいて、自ノードが受信するインパルス信号の受信エラーが生じたか否かを判定することができる。
ステップ23において、相互作用を行なっているノード数が1周期前と同じである場合(変化がない場合)、通信タイミング計算手段32は、今周期の受信インパルス信号の検知時間差(修正時間差)に基づく位相差を用いてインパルス信号の送信タイミングを計算する(ステップ25)。
また、ステップ23において、相互作用を行なっているノード数が1周期前より増加している場合、新規ノードがネットワーク(通信システム)に接続されたものとみなす(例えば、移動可能ノードが通信システム内に入ってきた場合等が考えられる)。この場合、通信タイミング計算手段32は、増加したノード数で相互作用を行なうように、増加後の受信インパルス信号の検知時間差(修正時間差)に基づく位相差を用いてインパルス信号の送信タイミングを計算する(ステップ24)。
また、ステップ23において、相互作用を行なっているノード数が1周期前より減少している場合、揺らぎ吸収手段34は、インパルス信号の対応付けができなかったノードについて未受信フラグが付与されているか否かを確認する(ステップ26)。
インパルス信号の対応付けができなかったノードについて未受信フラグが付いていない場合(すなわち、未受信フラグがOFFの場合:図11参照)、揺らぎ吸収手段34は当該ノードについて未受信フラグを付すようにタイミング保持手段35に指示する(ステップ27)。
そして、今周期では当該ノードからインパルス信号を受信していないが、通信タイミング計算手段32は、当該ノードの1周期前の受信インパルス信号の検知時間差(修正時間差)を用いて、インパルス信号の送信タイミングを計算する(ステップ28)。
なお、1周期前で一時的にノード数が増加したが、今周期のノード数の減少し、元のノード数に戻った場合には未受信フラグをOFFにするようにし、通信タイミング計算手段32は、通常通りインパルス信号の送信タイミングを計算するようにする。
一方、インパルス信号の対応付けができなかったノードについて未受信フラグ付いている場合(未受信フラグがONの場合)、少なくとも2周期間連続して、当該ノードからインパルス信号を受信していないため、当該ノードは自ノードのタイミング信号の到達範囲外に離れたとみなす。そのため、通信タイミング計算手段32は、当該ノードを減少したノード数で相互作用を行なうものとし、減少後の受信インパルス信号の検知時間差(修正時間差)に基づく位相差を用いてインパルス信号の送信タイミングを計算する(ステップ29)。
(C−3)第3の実施形態の効果
以上、本実施形態によれば、タイミング保持手段35が、少なくとも2周期以上のノード毎の受信インパルス信号の検知時間差の履歴を保持することで、この保持内容から次周期でのインパルス信号の受信タイミングの範囲を予想することができ、この予想範囲内で受信しなければ、タイミング保持手段35が保持する検知時間差を利用して、自ノードのインパルス送信タイミングを計算することができる。これにより、受信エラーによるインパルス送信タイミングの揺らぎを吸収することができるという効果が得られる。
(D)他の実施形態
(D−1)第1の実施形態では、揺らぎ吸収手段14が、連続する2周期間のそれぞれ対応する受信インパルス信号の検知時間を用いて修正する場合について説明した。しかし、受信インパルス信号の検知時間の修正に用いるデータ数は2個(2周期間)に限定されず、3周期間以上の対応データを用いて、受信インパルス信号の修正時間差を求めてもよい。この場合、タイミング保持手段15は3周期以上のデータを保持する必要がある。
(D−2)上述した第1〜第3の実施形態において、インパルス信号受信手段11及びインパルス信号送信手段13を別構成として説明したが、同一の構成としてもよい。
(D−3)上述した第1〜第3の実施形態において、通信タイミング計算手段12が計算する通信タイミング方法は、インパルス信号に基づいて自律分散的に決定することができれば、上述した方法以外の方法を適用することができる。
(D−4)本発明は、通信路が無線通信路の場合だけでなく、有線通信路の場合にも適用することができる。
10A〜10C…ノード、11…インパルス信号受信手段、12、32…通信タイミング計算手段、13…インパルス信号送信手段、14、34…揺らぎ吸収手段、15、35…タイミング保持手段、16…データ通信手段、21…状態取得手段、22…同調判定手段。