しかしながら、上述のような方法では、注入に時間がかかるという問題点があった。図10は、従来の製造方法での泳動用分散媒の注入時における隔壁の状態を示す図である。図10に示すように、白色帯電粒子100および黒色帯電粒子101を基板上に載置した状態で一方向から泳動用分散媒を注入すると、注入時の液圧により、帯電粒子100,101が隔壁の孔を塞ぐので、泳動用分散媒の注入に長時間を要するとともに注入が困難となるのである。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、帯電粒子の偏りを抑制し、且つ泳動用分散媒の注入を容易に行うことができる表示媒体およびその製造方法を提供することを目的としている。
この目的を達成するために、請求項1の表示媒体は、少なくとも一方が表示面を構成し互いに対向する一対の基板と、それら一対の基板間に形成された液室と、その液室内を複数のセルに分割し基板の厚さ方向に立設された隔壁状部材と、その隔壁状部材により構成された各セルに注入された泳動用分散媒と、その泳動用分散媒に分散させられた帯電粒子とを備え、前記一対の基板間に発生させられた電界に応じて前記帯電粒子を移動させて前記表示面に画像の表示を行なうものであって、前記各セルを構成する隔壁状部材のうち少なくとも一部は、前記液室において固定端と自由端を有する複数の可撓性部材から構成され、各可撓性部材の一端から他端までの長さLは基板の厚み方向における液室の高さよりも大きく、且つ、前記一対の基板間において各可撓性部材の自由端が一定の方向を向くように撓んでいる。
請求項2記載の表示媒体は、請求項1記載の表示媒体において、前記可撓性部材の自由端は、表示面または表示面に対向する基板の基板面のいずれかに接して撓んでいる。
請求項3記載の表示媒体は、請求項1または2に記載の表示媒体において、前記可撓性部材の自由端は表示面に表示される画像の上部側に撓んでいる。
請求項4記載の表示媒体は、請求項1から3のいずれかに記載の表示媒体において、前記泳動用分散媒は、前記基板の一辺に設けられた注入口から、当該一辺に対向する対向辺に設けられた排出口へ向けて注入されるものであり、前記泳動用分散媒の注入時において、前記可撓性部材は、前記一辺に垂直な所定方向成分の長さLxが、前記所定方向における前記セルの幅Wから帯電粒子の直径を引いた値以上となるように撓むものである。
請求項5記載の表示媒体は、請求項1から4のいずれかに記載の表示媒体において、前記可撓性部材は、前記液室において、表示面を構成する基板面に一端が固定されるものである。
請求項6記載の表示媒体は、請求項1から5のいずれかに記載の表示媒体において、前記可撓性部材は、前記帯電粒子が通過不可能な孔または間隙を有する。
請求項7記載の表示媒体は、請求項6記載の表示媒体において、前記帯電粒子の直径よりも小さい間隙を有して配置された複数本の円柱状または円錐状の部材から構成される。
請求項8記載の表示媒体は、請求項1から7のいずれかに記載の表示媒体において、前記泳動用分散媒は、前記基板の一辺に設けられた注入口から、当該一辺に対向する対向辺に設けられた排出口へ向けて注入されるものであり、前記可撓性部材は、前記一端から他端までの長さLと、前記基板の一辺に垂直な所定方向における厚さdとが、以下の条件式(2)を満たすポリアミド樹脂である。
0.002≦L/d≦0.1 ・・・(2)
請求項9記載の表示媒体の製造方法は、少なくとも一方が表示面を構成し互いに対向する一対の基板と、それら一対の基板間に形成された液室と、その液室内を複数のセルに分割し基板の厚さ方向に立設された隔壁状部材と、その隔壁状部材により構成された各セル内に注入された泳動用分散媒と、その泳動用分散媒に分散させられた帯電粒子とを備え、前記一対の基板間に発生させられた電界に応じて前記帯電粒子を移動させて前記表示面に画像の表示を行なうものの製造方法であって、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板に、前記各セルを構成する隔壁状部材を形成する基板準備工程と、その一方の基板の前記隔壁状部材が形成された面に、前記帯電粒子を載置する帯電粒子載置工程と、前記帯電粒子が載置された面に他方の基板を対向させ、前記泳動用分散媒を注入するための注入口を設けつつ、それら一対の基板間に前記液室を形成する液室形成工程と、前記一対の基板間に形成された液室内の各セルに、前記注入口から前記泳動用分散媒を注入する分散媒注入工程と、前記泳動用分散媒が注入された後、前記注入口を封止する封止工程とを含み、前記基板準備工程は、前記各セルを構成する隔壁状部材のうち少なくとも一部を、前記一方の基板側に一端が固定された複数の可撓性部材から形成するものであり、前記可撓性部材の一端から他端までの長さLは基板の厚み方向における液室の高さよりも大きく、前記液室形成工程は、前記一対の基板間のうち前記一方の基板側に前記一端が固定された各可撓性部材の他端が、前記他方の基板側において一定の方向を向いて撓む自由端を構成するように、前記一対の基板を対向させる。
請求項10記載の表示媒体の製造方法は、請求項9記載の表示媒体の製造方法において、前記分散媒注入工程は、前記液室形成工程において形成された液室内を負圧とし、その負圧により前記泳動用分散媒を液室内に引き込むものである。
請求項11記載の表示媒体の製造方法は、請求項9または10に記載の表示媒体の製造方法において、前記封止工程の後に、前記一対の基板間に電界を発生させて前記帯電粒子を移動させることにより、前記分散媒注入工程における分散媒の注入により撓んだ可撓性部材を基板の厚み方向へ起立させる可撓性部材復帰工程を含む。
請求項12記載の表示媒体の製造方法は、請求項11記載の表示媒体の製造方法において、前記可撓性部材復帰工程は、画像表示のために前記帯電粒子を移動させる場合に比較して弱い電界を発生させ、且つ画像表示のための電界発生時間tと可撓性部材を基板の厚み方向へ起立させるための電界発生時間Tは下記の条件式(3)を満たすものである。
t≦T≦t’(t’:粒子が電極に張り付かない程度の時間) ・・・(3)
請求項13記載の表示媒体の製造方法は、請求項9から12のいずれかに記載の表示媒体の製造方法において、前記液室形成工程は、前記一方の基板に前記他方の基板を対向させ、且つ、前記他方の基板を前記注入口とは反対の方向へずらしながら位置合わせを行い液室を形成するものである。
請求項14記載の表示媒体の製造方法は、請求項9から13のいずれかに記載の表示媒体の製造方法において、前記分散媒注入工程は、表示面に表示される画像における下部側から上部側に向けて前記泳動用分散媒を注入するものである。
請求項1記載の表示媒体によれば、各セルを構成する隔壁状部材のうち少なくとも一部は、前記液室において固定端と自由端を有する可撓性部材から構成されるので、その可撓性部材は、前記泳動用分散媒の注入時の液圧により、自由端が撓む。よって、注入時には泳動用分散媒の流通路が拡大し、各セル内への泳動用分散媒の注入を容易に行えるという効果がある。また、前記表示面を水平方向に対し傾けた場合には、可撓性部材により前記帯電粒子が保持されて、その帯電粒子が自重により他のセルへ移動することが制限される。よって、帯電粒子の偏りを抑制できるという効果がある。
請求項3記載の表示媒体によれば、請求項1または2に記載の表示媒体の奏する効果に加え、表示面に表示される画像の下部側を鉛直方向下方に向けて表示媒体を配置した場合に、自由端が鉛直方向上側に撓んでいる可撓性部材により、帯電粒子が自重により鉛直方向下方へ沈降しようとするのを好適に抑制することができるという効果がある。
請求項4記載の表示媒体によれば、請求項1から3のいずれかに記載の表示媒体の奏する効果に加え、泳動用分散媒の注入時には、可撓性部材がセル内の帯電粒子に覆い被さり、帯電粒子が他のセルに移動することを抑制する。したがって、各セル間で帯電粒子の濃度に差が生じることを抑制しつつ、泳動用分散媒の注入を容易に行うことができるという効果がある。
請求項5記載の表示媒体によれば、請求項1から4のいずれかに記載の表示媒体の奏する効果に加え、前記可撓性部材は、前記液室において、表示面を構成する基板面に一端が固定されるので、表示面の開口率を高くすることができるという効果がある。可撓性部材の自由端が表示面を構成する基板面に接して撓んでいる場合には、その面と可撓性部材との接触面積が大きくなるため、開口率が下がるのである。
請求項6記載の表示媒体によれば、請求項1から5のいずれかに記載の表示媒体の奏する効果に加え、前記可撓性部材は、前記帯電粒子が通過不可能な孔または間隙を有するので、泳動用分散媒の注入時に撓んだ可撓性部材が気体を抱え込むことを抑制し、セル内に気泡を発生させずに、泳動用分散媒の注入を容易に行うことができるという効果がある。また、孔または間隙を介して泳動用分散媒が各セル内を自由に行き来できるので、泳動用分散媒の流動性が良く、各セル内で帯電粒子が凝集してしまうことが抑制される。
請求項7記載の表示媒体によれば、請求項6記載の表示媒体の奏する効果に加え、前記帯電粒子の直径よりも小さい間隙を有して配置された複数本の円柱状または円錐状の部材から構成されるので、泳動用分散媒の注入時には、各々の可撓性部材が、泳動用分散媒の注入時の液圧により、前記一端が固定された面に他端が近づくようにその他端側が撓むので、各セル内への泳動用分散媒の注入を容易に行うことができるという効果がある。
請求項8記載の表示媒体によれば、請求項1から7のいずれかに記載の表示媒体の奏する効果に加え、前記可撓性部材は、上記条件式(2)を満たすポリアミド樹脂であるので、前記泳動用分散媒の注入時の液圧によりその他端側が撓み、前記泳動用分散媒の各セルへの流入路を拡大する程度の可撓性と、前記表示面を水平方向に対し傾けた場合には、前記帯電粒子を保持してその帯電粒子が自重により他のセルへ移動することを制限する程度の硬さとを有する。よって、表示媒体において、帯電粒子の偏りを抑制し、且つ泳動用分散媒の注入を容易に行うことができるという効果がある。
請求項9記載の表示媒体の製造方法によれば、基板準備工程により、一対の基板のうち少なくとも一方の基板に、各セルを構成する隔壁状部材が形成され、帯電粒子載置工程により、その一方の基板の前記隔壁状部材が形成された面に帯電粒子が載置され、液室形成工程により、前記帯電粒子が載置された面に他方の基板が対向させられ、前記泳動用分散媒を注入するための注入口が設けられつつ、それら一対の基板間に前記液室が形成され、分散媒注入工程により、一対の基板間に形成された液室内の各セルに、前記注入口から前記泳動用分散媒が注入され、泳動用分散媒が注入された後、封止工程により、注入口が封止される。
ここで、前記基板準備工程は、前記各セルを構成する隔壁状部材のうち少なくとも一部を、前記一方の基板側に一端が固定された可撓性部材から形成するものであり、その可撓性部材は、前記泳動用分散媒の注入時の液圧により、前記一端が固定された面に他端が近づくようにその他端側が撓む。よって、各セル内への泳動用分散媒の注入を容易に行うことができるという効果がある。また、前記表示面を水平方向に対し傾けた場合には、可撓性部材により前記帯電粒子が保持されて、その帯電粒子が自重により他のセルへ移動することが制限される。よって、帯電粒子の偏りを抑制できるという効果がある。
請求項10記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項9記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、前記分散媒注入工程は、前記液室形成工程において形成された液室内を負圧とし、その負圧により泳動分散媒を液室内に引き込むので、その泳動用分散媒の注入時の液圧により可撓性部材の他端側が撓み、各セル内への泳動用分散媒の注入を容易に行うことができるという効果がある。
請求項11記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項9または10に記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、前記封止工程の後に、前記一対の基板間に電界を発生させて前記帯電粒子を移動させることにより、前記分散媒注入工程における分散媒の注入により撓んだ可撓性部材を基板の厚み方向へ起立させる可撓性部材復帰工程を含むので、泳動用分散媒の注入後、可撓性部材が自発的に基板の厚み方向へ起立しない場合であっても、可撓性部材を好適に基板の厚み方向へ起立させることができるという効果がある。
請求項12記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項11記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、前記可撓性部材復帰工程は、画像表示のために前記帯電粒子を移動させる場合に比較して弱い電界を発生させ、且つ上記条件式(3)を満たすものであるので、帯電粒子が他のセルへ移動することを抑制しつつ、可撓性部材を起立させることができるという効果がある。画像表示のためと同程度の強さの電界を発生させると、帯電粒子の移動の速度が速すぎて、帯電粒子が可撓性部材の間隙から抜けて他のセルへ移動してしまう場合があり得るのである。また、電界が弱いため、画像表示のための電界発生時間t以上、電界を発生させないと帯電粒子が移動せず、また、t’以上の長時間電界を発生させると、帯電粒子が液室の壁面へ張り付いてしまうのである。
請求項13記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項9から12のいずれかに記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、前記液室形成工程は、前記一方の基板に前記他方の基板を対向させ、且つ、前記他方の基板を前記注入口とは反対方向へずらしながら位置合わせを行い液室を形成するので、可撓性部材の自由端は注入口とは反対方向を向いて液室を構成する壁面に接する。よって、後の分散媒注入工程において注入口から泳動用媒体媒を注入する際には、その液圧により可撓性部材がスムーズに撓むので、泳動用分散媒の注入を容易に行うことができるという効果がある。
請求項14記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項9から13のいずれかに記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、前記分散媒注入工程は、表示面に表示される画像における下部側から上部側に向けて前記泳動用分散媒を注入するので、注入時の液圧により撓み、その後、基板の厚み方向へ起立した可撓性部材の自由端は、表示面に表示される画像における上部側を向いて撓む。よって、表示面に表示される画像の下部側を鉛直方向下方に向けて表示媒体を配置した場合には、可撓性部材の自由端が鉛直方向上側に撓んでいることとなり、帯電粒子が自重により鉛直方向下方へ沈降しようとするのを好適に抑制することができるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の画像表示媒体10を説明する図であり、図1(a)は、画像表示媒体10に画像を表示させる表示装置1全体の斜視図であり、図1(b)は、画像表示媒体10の構造を概略的に示す分解斜視図である。
図1(a)に示すように、表示装置1は、画像表示媒体10と本体20とから構成される装置であり、本体20に画像表示媒体10を配置した上で所定の操作を行うことにより、画像表示媒体10に画像を表示できるものである。
本体20は、画像表示媒体10の大きさより一回り大きい矩形状に形成されたベースプレート25と、そのベースプレート25の周縁に沿って取り付けられた枠体26とを備えている。枠体26は、ベースプレート25の周囲に、その一部(図1(a)ではベースプレート25の左方)が開口されて設けられている。枠体26が一部開口されて設けられていることにより、ユーザは、表示装置1への画像表示媒体10の挿入や、表示装置1からの画像表示媒体10の取り出しを容易に行い得る。この枠体26には、画像表示媒体10に備えられているX電極12a及びY電極13a(いずれも図1(b)参照)に印加する電気信号(電流、電圧、極性)を制御する駆動制御ユニット(非図示)が内包されている。
また、枠体26の表面には、電源スイッチ26aと、コネクタ26bとが設けられている。電源スイッチ26aは、駆動制御ユニットに含まれるCPU(非図示)によって管理されており、電源スイッチ26aが投下されたことがCPUにより検出されると、本体20に電源が供給される。コネクタ26bは、画像表示媒体10に表示する画像に関する画像データを送信する外部装置(パーソナルコンピュータなど)とケーブルを介して接続されるインターフェイスの一部である。
画像表示媒体10が表示装置1に挿入されて、ベースプレート25上の所定位置に配置されると、画像表示媒体10のX電極12a及びY電極13a(いずれも図1(b)参照)が、枠体26に内包された駆動制御ユニット(非図示)に接続される。そして、駆動制御ユニット(非図示)の制御により、コネクタ26bを介して外部装置から入力される画像データに従う画像が画像表示媒体に表示される。
画像表示媒体10は、図1(b)に示すように、第1基板12と、第2基板13と、その第2基板13と第1基板12との間に挟持されるギャップスペーサ17と、第2基板13の一面を覆う植毛シート18とを主に備えており、これらが積層されて構成されたものである。なお、詳しくは図2を参照しつつ後述するが、ギャップスペーサ17の介在によって離間される第1基板12と第2基板13との間には、帯電粒子31を含む電気泳動媒体30(いずれも図2参照)が充填されている。
第1基板12及び第2基板13は、いずれも、約20μm程度の厚さを有し、その材質として、ガラス、合成樹脂、天然樹脂、紙などが挙げられる。好ましい第1基板12及び第2基板13の材質は、可撓性を示す合成樹脂であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)やポリフェニレンサルファイド(PPS)などのポリエステル系樹脂、アラミド、ポリイミド、ナイロン、ポリプロピレン、硬質ポリエチレン(高密度ポリエチレン)などが挙げられる。これらの合成樹脂の中でも、透明性、強度、耐熱性の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイドが特に好ましい材質であり、最も好ましい材質は、ポリエチレンテレフタレートである。第1基板12及び第2基板13として、上記のような可撓性を示す材質を用いることにより、画像表示媒体10全体が可撓性を示すものにすることができる。
第1基板12及び第2基板13には、画像表示媒体10において互いに対向する側の面上に、それぞれ、X電極12a及びY電極13aが設けられている。X電極12a及びY電極13aは、電気泳動媒体30(図2参照)に電界を与えるための極性を担うものである。X電極12a及びY電極13aは、いずれも、複数本の略平行なライン状に形成されている。また、X電極12aとY電極13aとは、画像表示媒体10において、互いに略直交するように構成されている。即ち、画像表示媒体10は、これらの電極12a,13aのオン又はオフを切り換える単純マトリックス駆動方式によって画像が表示されるものである。
X電極12a及びY電極13aはいずれも、導電性を有するものであれば、特にその材料には限定されず、金属、半導体、導電性樹脂、導電性塗料、導電性インク、無機透明導電体などの材料により構成されている。X電極12a及びY電極13aは、上記のような材料を用い、周知の無電界メッキ法、スパッタ法、蒸着法、インクジェット法などの方法によって、それぞれ、第1基板12及び第2基板13上に形成することができる。特に、第1基板12及び第2基板13の材質が可撓性を示す合成樹脂である場合には、ポリチオフェン系導電性高分子などの導電性高分子を含むインクを用いるインクジェット法によって、基板(第1基板12及び第2基板13)を損傷することなく、X電極12a及びY電極13aを容易に形成できる。
なお、第1基板12におけるX電極12aの形成面には、X電極12aを保護するための耐液性の保護膜19(図2参照)が設けられているが、図面が複雑化されることを防ぐために、図1(b)では保護膜19の図示を省略している。
ギャップスペーサ17は、合成樹脂などから構成される約20μm程度の厚さのフィルムであり、その中央部に開口部17aが開口されている。ギャップスペーサの材質としては、第1基板12及び第2基板13の材質として上記で列挙した樹脂などが挙げられる。
植毛シート18は、樹脂フィルム18bの一面に、一端から他端までの長さLが20μm〜22μm程度の円錐状の高分子樹脂繊維18aが植毛(立設)されたシートである。植毛シート18において、高分子樹脂繊維18aにより仕切られた矩形領域がセルCを形成する。なお、樹脂フィルム18bは、耐液性を有し、第2基板13に設けられたY電極13aを電気泳動媒体30(図2参照)から保護する役割も兼ねる。セルCおよび植毛シート18の構成については、図3を参照して後に詳細に説明する。
図2を参照して、画像表示媒体10の構造についてより具体的に説明する。図2は、画像表示媒体10の模式的な断面図である。なお、図2の断面図は、第2基板13上に形成されたY電極13aのうちの1本、および高分子樹脂繊維18aの中心を通り、且つ、第1基板12上に形成されたX電極12aのそれぞれに対して略直交する切断線で切断した場合の断面を図示したものである。また、図面による理解を容易にするために、図2では、基板12,13や、電極12a,13aや、スペーサ17や、植毛シート18や、高分子樹脂繊維18aを模式的に図示しており、それぞれの部材の厚さの相対的な比率は、実際のものを無視して図示している。
図2に示すように、画像表示媒体10における第1基板12と第2基板13との間には、ギャップスペーサ17と、植毛シート18と、保護層19とにより液室Rが形成され、その液室Rは、高分子樹脂繊維18aにより複数のセルCに分割されている。また各セルCには、正又は負に帯電された帯電粒子31を含む電気泳動媒体30が充填されている。
帯電粒子31は、正に帯電されている白色の白色帯電粒子31aと、負に帯電されている黒色の黒色帯電粒子31bとから構成されている。白色帯電粒子31aや黒色帯電粒子31bとしては、白色の酸化チタンや黒色のカーボンブラック、あるいは、フタロシアニン系顔料などの有機顔料の表面にフッ素系の単分子膜を形成して疎水性を持たせたものや、同有機顔料の表面をシランカップリング剤で処理して疎水性を持たせたものが使用される。
これらの白色帯電粒子31a及び黒色帯電粒子31bは、それぞれ、画像表示媒体10における各画素毎に、X電極12aとY電極13aとの間に発生される電界に応じて、第1基板12側又は第2基板13側に泳動される。なお、画像表示媒体10における「画素」は、格子状であるX電極12aとY電極13aとが交差する部分を中心とし、且つ高分子樹脂繊維18aにより仕切られた1のセルに相当する領域のことであり、1つの交差するX電極12aとY電極13aとの間に発生された電界によって、帯電粒子31が他の領域とは独立して移動する領域に相当する。
より具体的には、1の画素において、X電極12aがY電極13aに対して正となるように電界が形成された場合には、負に帯電されている黒色帯電粒子31bは、第1基板12側(X電極12a側)に泳動し、一方で、正に帯電されている白色帯電粒子31aは、第2基板13側(Y電極13a側)に泳動する。この場合、第1基板12が、ユーザにより視認される側の面(以下、「表示面」と称する。)であれば、ユーザは、この画素が黒色で表示されていることを視認することになる。なお、以下において、ユーザが表示面を視認した場合に、黒色であることが視認される画素の状態を「表示状態」と称する。
一方で、1の画素において、X電極12aがY電極13aに対して負となるように電界が形成された場合には、正に帯電されている白色帯電粒子31aが、第1基板12側(X電極12a側)に泳動し、一方で、負に帯電されている黒色帯電粒子31bは、第2基板13側(Y電極13a側)に泳動する。この場合、第2基板12が表示面であれば、ユーザは、この画素が白色で表示されていることを視認することになる。なお、以下において、ユーザが表示面を視認した場合に、白色であることが視認される画素の状態を「非表示状態」と称する。
電気泳動媒体30は、電気抵抗が高い(絶縁性が高い)溶媒が好ましく、好ましい溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、シクロヘキサンなどの直鎖又は環状パラフィン系炭化水素溶媒、イソパラフィン系炭化水素溶媒、ケロシンなど)、ハロゲン化炭化水素溶媒(例えば、クロロホルム、トリクロロエチレン、ジクロロメタン、トリクロロトリフルオロエチレン、臭化エチルなど)、シリコーンオイルのようなオイル状のポリシロキサン、高純度石油などが挙げられる。本実施例ではイソパラフィン系炭化水素溶媒を用いるものとする。なお、電気泳動表示媒体10は、上記のような各溶媒を単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
植毛シート18は、第2基板13におけるY電極13aの形成面を覆うように設けられ、基板の厚さ方向に起立した高分子樹脂繊維18aが樹脂フィルム18b上に形成されている。高分子樹脂繊維18aは一端が樹脂フィルム18bに固定されると共に他端は自由端とされ、一端から他端までの長さLが液室Rの高さH(ギャップスペーサ17の厚みに相当)よりも大きく、液室Rにおいて、自由端が第1基板12側の基板面に接して撓んでいる。なお、液室Rを構成する壁面のうち、第1基板12,第2基板13側の面を「基板面」と称する。
また、各高分子樹脂繊維18aは、後に詳細に説明する電気泳動媒体30の注入時には、その液圧により、一端が固定された面(樹脂フィルム18bに相当)に自由端が近づくようにその自由端側が撓む程度の可撓性と、表示面を水平方向に対し傾けた場合には、帯電粒子31を保持してその帯電粒子31が自重により他のセルへ移動することを制限する程度の硬さとを有する。
このような可撓性と硬さとを有する高分子樹脂繊維18aの具体例としては、例えば、一端から他端までの長さLと直径dとが、以下の条件式(2)を満たすポリアミド樹脂繊維が挙げられる。
0.002≦L/d≦0.1・・・(2)
図3を参照して高分子樹脂繊維18aについてさらに詳細に説明する。図3は、第1基板12a側から見た植毛シート18を拡大して模式的に示す図である。図3に示すように、植毛シート18には、複数の高分子樹脂繊維18aが帯電粒子31の直径よりも小さい間隔で格子状に配置されている。そして、X電極12aとY電極13aとが交差部(画素に相当)にセルCがそれぞれ配置されるように、第1基板12と第2基板13と植毛シート18との相対的な位置が決定される。
このように構成された表示装置1によれば、画像表示媒体10が本体20(図1参照)に装着されると、各画素単位でX電極12a及びY電極13aの極性が、駆動制御ユニット(非図示)により制御され、それによって、画像表示媒体10における各画素の表示状態と非表示状態とが電気的に切り換えられる。その結果として、画像表示媒体10は、コネクタ26bを介して外部装置から入力される画像データに従う画像を表示したり、表示されている画像を消去したりすることができる。
また、液室Rの基板の厚み方向Hよりも一端から他端までの長さLが長い高分子樹脂繊維18aは、表示面を水平方向に対し傾けた場合に、帯電粒子31を保持してその帯電粒子31が自重により他のセルへ移動することを制限する程度の硬さを有し、液室R内における各高分子樹脂繊維18aの間隙は、帯電粒子31の直径よりも小さいので、各セルC内の帯電粒子31の他のセルCへの移動が抑制される。よって、例えば画像表示媒体10を壁に吊すなどして表示面を水平方向に対し傾けたまま長時間放置したとしても、帯電粒子31が画像表示媒体10の下方に偏ることがない。さらに、各高分子樹脂繊維18aは間隙を有して配置されているので、電気泳動媒体30の流動性が良く、セルの中で帯電粒子が凝集することが抑制される。
また、従来は、帯電粒子31の偏りを防止することを目的として、液室内を固体の隔壁により複数のセルに分割していたが、そのような固体の隔壁は、画像表示媒体を撓める際に破損しやすいという欠点があった。一方、本実施例の画像表示媒体10によれば、液室R内に固体の隔壁を形成する必要がないため、画像表示媒体10を撓めても隔壁が破損する心配がない。
以下に、本発明の画像表示媒体10の製造方法について説明する。図4は、本発明の画像表示媒体10の製造方法を説明する図であって、画像表示媒体10の断面を概略的に示す図である。なお、図4の断面図は、第2基板13上に形成されたY電極13aのうちの1本、および高分子樹脂繊維18aの中心を通り、且つ、第1基板12上に形成されたX電極12aのそれぞれに対して略直交する切断線で切断した場合の断面を図示したものである。なお、上述の画像表示媒体10の説明において既に構成を説明した部材については、同一の符号を付して説明を省略する。また、図面の理解を容易にするため、図4においては、高分子樹脂繊維18aは、断面に位置するもののみを図示し、背面に図示されるべき高分子樹脂繊維18aについては図示を省略する。また、白色帯電粒子31a及び黒色帯電粒子31bは共に帯電粒子31として図示されている。
まず、図4(a)に示すように、Y電極13aが片面に形成され、そのY電極形成面に植毛シート18が設けられた第2基板13を準備する(基板準備工程)。その後、公知の粉体散布装置32を用いて、植毛シート18の上に帯電粒子31を均一に散布し、帯電粒子を各セル内に載置する(帯電粒子載置工程)。
次に、図4(b)に示すように、X電極12aと、そのX電極12aを覆うように一面に保護層19が形成された第1基板12の保護層19側の面を、帯電粒子31が載置された面に対向させ、第1基板12と第2基板13との間にギャップスペーサ17と、植毛シート18と、保護層19とを壁面として構成される液室Rを形成する(液室形成工程)。
図5を参照して、液室形成工程についてより詳細に説明する。図5は、第1基板12を表示面側から見た図である。図5において、第1基板12の保護層19側の面とギャップスペーサ17との接着部分をグレーで表す。図5に示すように、液室形成工程においては、第1基板12とギャップスペーサ17とは、互いに対向する辺に設けられる注入口21と排出口22とを除いた縁辺において、例えばエポキシ樹脂などにより接着される。なお、図示は省略するが、液室形成工程において、第2基板13の植毛シート18側の面とギャップスペーサ17とは縁辺の全てが接着される。
液室形成工程においては、高分子樹脂繊維18aにより構成されるセルCが、X電極12aとY電極13aとが交差する部分に位置するように、第1基板12と第2基板13とが位置合わせされる。この位置合わせは、図4(b)に示すように、第1基板12側の面に高分子樹脂繊維18aの自由端を接触させつつ、第2基板13に対し第1基板12を後述する電気泳動媒体30の注入方向へずらしながら行うことが望ましい。これにより、高分子樹脂繊維18aの自由端は電気泳動媒体30の注入方向を向いて第1基板12側の面に接する。よって、後の分散媒注入工程において注入口21から電気泳動媒体30を注入する際には、その液圧により高分子樹脂繊維18aがスムーズに撓むので、電気泳動媒体30の注入を容易に行うことができる。
次に、図4(c)に示すように、液室Rに注入口21から電気泳動媒体30を注入する(分散媒注入工程)。このとき、液室Rに設けられた高分子樹脂繊維18aは、電気泳動媒体30の注入時の液圧によりその自由端側が撓み、電気泳動媒体30の流通路を拡大するので、電気泳動媒体30の注入を容易に行うことができ、注入時間が短縮される。
図6、図7を参照して、分散媒注入工程についてより詳細に説明する。図6は、分散媒注入工程を模式的に説明する図である。まず、図6(a)に示すように、画像表示媒体10の注入口21を第1接合部材23に接続し、排出口22を第2接合部材24に接続する。ここで、第1接合部材23は電気泳動媒体30を貯留する貯留タンク25に連通する注入ライン26に接続され、第2接合部材24は、液室R内の空気を除去する真空ポンプ(非図示)に連通する排気ライン27に接続されている。
次に、図6(b)に示すように、注入ライン26上に設けられた開閉バルブ28を閉状態としつつ、排気ライン27上に設けられた開閉バルブ29を開状態にして真空ポンプを作動させることにより、前記液室R内を減圧し負圧とする。
次に、図6(c)に示すように、開閉バルブ28を閉状態としつつ、開閉バルブ29を開状態とする。したがって、液室R内の負圧により、液室R内に電気泳動媒体30が引き込まれ、各セルC内に電気泳動媒体30が注入される。図6(d)に示すように、注入が完了すると、開閉バルブ29を閉じる。その後、第1接合部材23および第2接合部材24を除去し、エポキシ樹脂等により前記注入口21及び排出口22を封止する(封止工程)。
図7は、(a)は電気泳動媒体30の注入前を示す図であり、(b)は電気泳動媒体30の注入時を示す図である。図7に示すように、高分子樹脂繊維18aは、電気泳動媒体30の注入時において、その注入方向成分の長さLxが、その注入方向におけるセルCの幅Wから帯電粒子31の直径を引いた値以上となる程度の可撓性または長さLを有していることが望ましい。このようにすれば、電気泳動媒体30の注入時には、高分子樹脂繊維18aがセル内の帯電粒子31に覆い被さるので、帯電粒子31が他のセルCに移動することがない。したがって、各セルC間で帯電粒子31の濃度に差が生じることが抑制される。さらに、高分子樹脂繊維18aは、帯電粒子31が通過不可能な程度の間隙を有して配置されているので、電気泳動媒体30の注入時に撓んだ高分子樹脂繊維18aが気体を抱え込みセル内に気泡を発生させることが抑制される。高分子樹脂繊維18aに代えて、板状部材の部材を設けると、電気泳動媒体30の注入時に内部に抱え込んだ気体を外部に逃がすことができず、セル内の気泡の原因となりやすいのである。
図4(d)は、分散媒注入工程による電気泳動媒体30の注入が終了したときの状態を示す図である。高分子樹脂繊維18aの硬さによっては、電気泳動媒体30の注入の終了後、自発的に基板の厚み方向に起立するが、図4(d)に示すように、高分子樹脂繊維18aの撓みが、注入後も維持される場合がある。このような場合には、X電極12aとY電極13aとに電圧を印加し、電気泳動媒体30に電界を発生させることにより帯電粒子31を第1基板12a側へ泳動させ、帯電粒子31により高分子樹脂繊維18aを押し上げて基板の厚み方向へ起立させる(可撓性部材復帰工程)。
なお、この際、画像表示のために帯電粒子31を移動させる場合に比較して弱い電界を発生させ、且つ画像表示のための電界発生時間tと可撓性部材を基板の厚み方向へ起立させるための電界発生時間Tは下記の条件式(3)を満たすように、X電極12aおよびY電極13aに電圧を印加することが望ましい。
t≦T≦t’(t’:粒子が電極に張り付かない程度の時間) ・・・(3)
具体的には、例えば画像表示のために、X電極12とY電極13aとの間の電圧差が40V、電界発生時間tが100msecとなるようにX電極12aおよびY電極13aに電圧を印加する場合、可撓性部材復帰工程においては、X電極12とY電極13aとの間の電圧差が例えば30V、電界発生時間Tは100msec以上1sec以下となるようにX電極12aおよびY電極13aに電圧を印加する。画像表示のためと同程度の強さの電界を発生させると、帯電粒子31の移動の速度が速すぎて、帯電粒子31が高分子樹脂繊維18aの間隙を抜けて他のセルへ移動してしまうためである。また、電界が弱いため、最低でも、画像表示の際の電界発生時間t以上、電界を発生させないと帯電粒子31が移動せず、またt’以上の長時間電界を発生させると、帯電粒子31が液室Rの保護層19側の面へ張り付いてしまうからである。この実施形態では、t‘は10tである。但し、かける電圧によってt’は変化する。例えば帯電粒子31を移動させるために要するX電極12とY電極13aとの間の電圧差が20V以下の時はt‘は20tであり、50V以上の時は5tとなる。
以上説明したように、液室R内の各セルCを構成する高分子樹脂繊維18aは、分散媒注入工程(図4(c)参照)において電気泳動媒体30の注入時の液圧により自由端が撓み、電気泳動媒体30の各セルCへの流通路を拡大するので、電気泳動媒体30の注入がしやすく、分散媒注入工程に要する時間を短縮できる。
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、本実施例では、セルCを高分子樹脂繊維18aにより取り囲む形状であったが、セルCを取り囲む部材のうち一部を高分子樹脂繊維18aとするものであってもよい。
図8は、高分子樹脂繊維の形状の変形例を示す図である。なお、図8においては、図面の理解を容易にするために、帯電粒子31や第1基板12などの図示は省略する。図8(a)は、セルCを取り囲む4辺のうち、電気泳動媒体30の注入方向(図8において矢印で示す)に直交する辺のみ、可撓性のある高分子樹脂繊維18aで構成し、他の2辺は固体の隔壁状部材18cにより構成した場合を示す図である。このようにしても、高分子樹脂繊維18aが撓むことにより、電気泳動媒体30の各セル内への流通路が拡大するので、電気泳動媒体30の注入がしやすいという効果が得られる。
また、高分子樹脂繊維の形状は円錐状や円柱状に限られるものではない。図8(b)は、短冊状の高分子樹脂繊維38aを示す図である。短冊状の各高分子樹脂繊維38aは、帯電粒子31の直径よりも小さい間隙を有して配置される。図8(c)は、板状の高分子樹脂繊維48aを示す図である。板状の高分子樹脂繊維48aは、帯電粒子31の直径よりも小さい孔を有している。図8(b)や図8(c)に示すように、一端から他端までの長さLと電気泳動用媒体30の注入方向におけるその厚さdとが、上述の条件式(2)を満たすものであり、且つ帯電粒子31が通過不可能な孔を有するか、または、帯電粒子31が通過不可能な間隙を有して配置されていれば、円錐状や円柱状の高分子樹脂繊維18aと同様の作用効果が得られる。
また、本実施例の画像表示媒体10は、高分子樹脂繊維18aの一端から他端までの長さLは、液室Rの高さHよりも大きいものであったが、長さLは、下記の条件式(1)を満たすものであればよい。
L>基板の厚さ方向における液室の高さ−2×帯電粒子の直径・・・(1)
図9は、画像表示媒体10の表示面を水平方向に対し略垂直に傾けた場合における、高分子樹脂繊維18aの長さLと帯電粒子31と関係を示す図である。図9に示すように、帯電粒子31は、自重により鉛直方向下方へ沈降しようとするが、高分子樹脂繊維18aは上述のように帯電粒子31を保持する程度の硬さを有しているため、鉛直方向下方のセルへの移動が制限されている。ここで、図9(a)に示すように、高分子樹脂繊維18aの一端から他端までの長さLが液室Rの高さHよりも大きい場合、及び図9(b)に示すように、高分子樹脂繊維18aの一端から他端までの長さLが液室Rの高さHと略同一の場合、高分子樹脂繊維18aは、帯電粒子31を保持することができる。
また、図9(c)に示すように、高分子樹脂繊維18aの一端から他端までの長さLが液室Rの高さHよりも小さい場合であっても、高分子樹脂繊維18aと基板面との間の隙間が、帯電粒子31の2個分程度の大きさであれば、帯電粒子31が通過し難いので、帯電粒子31を保持してその帯電粒子31が自重により隣接するセルへ移動することを制限できる。このように、高分子樹脂繊維18aの一端から他端までの長さLを液室Rの高さHより小さくすることで、液室R内の表示面側の面(図9においては保護層19)に高分子樹脂繊維18aが接しないので、表示面の視認性を損なうことがない。
また、本実施例の画像表示媒体10によれば、分散媒注入工程において、注入口21から電気泳動媒体30を注入し、その注入時の液圧により撓んだ高分子樹脂繊維18aは、自発的または帯電粒子31に押し上げられることにより基板の厚み方向に起立する(図4参照)。このとき、高分子樹脂繊維18aの一端から他端までの長さLが、液室Rの基板の厚み方向の高さHよりも大きい場合は、起立した高分子樹脂繊維18aは、図9(a)に示すように、その自由端側が注入口21の反対側を向いている。よって、本実施例の画像表示媒体10を実際に使用するときには、製造の際に注入口21が設けられた側に画像の下部側が表示され、排出口22が設けられた側に画像の上部側が表示される向きで用いると良い。若しくは、液室形成工程において、画像表示媒体10の下側としたい辺に、注入口21を設け、上側としたい辺に、排出口22を設けると良い(図5参照)。このようにすれば、画像表示媒体10に表示された画像の下部側を鉛直方向下方側にして例えば壁などに吊した場合において、自由端側が鉛直方向上側に向いている高分子樹脂繊維18aにより帯電粒子31を好適に保持することができる。
また、本実施例では、第1基板12に対向する第2基板13に植毛シート18を設け、第2基板13側に高分子樹脂繊維18aを固定するものであったが、高分子樹脂繊維18aが基板面に直接植毛され、固定されているものであってもよい。このように構成すれば、樹脂フィルム18bが設けられることにより基板の透過性が低下することがなく、画像の鮮明さを低下させることがない。
また、基板面に高分子樹脂繊維18aを直接植毛する場合には、表示面を構成する一方の基板側の基板面に高分子樹脂繊維18aを植毛することがのぞましい。。そのようにすれば、高分子樹脂繊維18aの一端から他端までの長さLが、液室Rの高さHよりも大きくその自由端が撓んで他方の基板面に接していても、その自由端が接する基板面は、表示面側ではないので、開口率を低下させることがない。
また、植毛シート18に色が付いているなどの理由により、植毛シート18を基板面に設けると基板の透過性が低下する場合には、植毛シート18は、表示面を構成する基板に対向する基板(すなわち、表示面を構成しない基板)に設けることが望ましい。そのように構成すれば、植毛シート18により基板の透過性が低下しても、表示面における画像の鮮明さを低下させることがない。
また、本実施例では、高分子樹脂繊維18aは全て第2基板13側が固定されているものであったが、自由端と固定端とを有していれば良く、第1基板12側が固定されている高分子樹脂繊維18aと第2基板13側が固定されている高分子樹脂繊維18aとが混在していても良い。また、第1基板12および第2基板13側の端が共に固定端とされている高分子樹脂繊維であっても良い。
図10は、高分子樹脂繊維の変形例を示す図である。図10(a)に示すように、高分子樹脂繊維58は、第1基板12および第2基板13側の端が固定端58aにおいて共に固定され、且つ基板面に固定されていない辺(端)により構成される自由端58bを有する。また、図10(b)に示すように、高分子樹脂繊維68は、第1基板12および第2基板13側の端が固定端68aにより共に固定され、且つスリットが設けられることにより、固定端68aとは独立に撓むことができる自由端68bを有する。
図10(a)(b)に示された高分子樹脂繊維58,68においても、分散媒注入時には自由端58b,68bが撓んで、流通路が拡大するので、各セルC内への電気泳動媒体30の注入を容易に行うことができる。
また、本実施例の画像表示媒体10は、第1基板12と第2基板13とにおける対向面側にX電極12a及びY電極13aが設けられていたが、X電極12a及びY電極13aが設けられていない表示媒体についても本発明は適用できる。その場合には、一対の基板12,13の非対向面側から電極で挟み込み、電気泳動媒体30に電界を発生させて、画像の表示や可撓性部材復帰工程を行うようにすればよい。
また、本実施例の画像表示媒体10は、表示装置1の本体20とが分離可能であったが、画像表示媒体10が、本体20と一体的に構成されて表示装置1となっているものであってもよい。