次に、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。添付の図面には、この実施形態が例示されている。以下では、この具体的な実施形態を参照しつつ本発明を説明するが、本発明を一実施形態に限定する意図はない。逆に、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲内に含まれる代替物、変形物、および、均等物を網羅するよう意図されている。以下では、本発明を十分に理解できるよう、多くの具体的な詳細を説明する。しかしながら、本発明は、これらの詳細な内容の一部または全てがなくとも実施可能である。そのほか、本発明が不必要に不明瞭となるのを避けるため、周知の処理動作については詳しく説明していない。
本発明の一態様は、半導体素子などのサンプル上に形成された1組4つ以上の散乱測定用オーバレイターゲットを提供する。パターンについては、「パターン」または「層間パターン」という用語を用いており、それら2つの用語は、ほとんどの状況で同じ意味で用いられている。特定の実施例では、サンプルは、半導体素子の2以上の層を有し、ターゲットは、素子に設けられた様々な構造の配置の精度を測定するために用いられる。一般に、配置の精度は、半導体素子の2つの異なる層の間のオーバレイ誤差の測定値によって特徴付けられる。
具体的な実施形態では、4つ1組のターゲットが準備され、各ターゲットは、互いにずれた2つの異なる層の上の2組の構造を備える。具体的な実施形態では、オフセットは、2つの別個の距離の和または差として定義されてよい。2つの距離とは、第1の距離Fおよび第2の距離f0であり、Fは、f0よりも大きい。4つのターゲットを、「ターゲットA」、「ターゲットB」、「ターゲットC」、および、「ターゲットD」とすると、各ターゲットに対応する所定のオフセットは、具体的なターゲット設計について、以下の用に定義されてよい:
Xa=+F+f0(ターゲットA)
Xb=−F+f0(ターゲットB)
Xc=+F−f0(ターゲットC)、および
Xd=−F−f0(ターゲットD)
オフセットXaないしXdは、オーバレイを決定する本発明の技術を実施するのに適切な任意の値であってよい。例えば、XaおよびXbは、XcおよびXdと異なるf0の値を有してもよい。
図1は、本発明の特定の実施例においてx軸に沿ったオフセットXa、Xb、Xc、および、Xdの分布を示す図である。図に示すように、オフセットXaおよびXcは共に正の値であり、Xaの方がXcよりも大きい。逆に、オフセットXbおよびXdは共に負の値であり、Xdの方がXbよりも小さい。
ターゲットの数と、それらに対応するオフセットの大きさおよび方向は、オーバレイ誤差を決定するための本発明の技術を実施できるような任意の適切な方法で選択されてよい。具体的なターゲットの組と、それらに対応するオフセットについて、図2Aないし2Fを参照して、以下で説明する。本発明の技術を実施して本発明のシステムを利用するために用いられてよいターゲットおよびオフセットの組み合わせは、数多く存在することは明らかである。
図2Aは、本発明の一実施形態に従って、パターニングされた上部(トップ)層L2が、パターニングされた下部(ボトム)層L1から量Fだけずれた様子を示す側面図である。各層L1およびL2は、1組の構造をパターニングされる。構造は、配線、トレンチ、または、コンタクトなど、任意の適切な形状を含んでよい。半導体素子の形状と同様の構造が設計されてもよい。また、異なる形状の組み合わせから、構造が形成されてよい。さらに、構造は、例えば、サンプルの上部層の上、サンプルの任意の層内、または、部分的もしくは完全にサンプルの層内に配置するなど、サンプルの任意の層に配置されてよい。図2Aに図示した実施形態では、層L1は、完成した構造204a−cを備えており、層L2は、完成した構造202a−cを備えている。散乱測定用オーバレイターゲット構造の構成と、それらの形成方法については、Abdulhalim et al.によって2001年4月10日に出願された米国特許出願第09/833,084号「PERIODIC PATTERNS AND TECHNIQUE TO CONTROL MISALIGNMENT」に記載されている。
図に示すように、上部層L2の構造は、下部層L1の構造から量Fだけずれている。2つのずれた層の構造は、隣接する層内に配置されてもよいし、2つのずれた層の間に配置された任意の適切な数および種類の層を有してもよい。図2Aは、さらに、パターニングされた層L1およびL2の間の3つの膜T1、T2、および、T3と、それらに対応する構造とを示している。任意の他の層が、例の構造を有する例の2つの層の間に存在する限りは、これら他の層は、電磁放射に対する最低限の伝達を示し、例の構造を有する例の層間の放射線の伝搬を可能にする。
図2Bは、本発明の一実施形態に従って、パターニングされた上部層L2が、パターニングされた下部層L1から量−Fだけずれた様子を示す側面図である。図2Cは、本発明の一実施形態に従って、パターニングされた上部層L2が、パターニングされた下部層L1から量+F+f0だけずれた様子を示す側面図である。図2Dは、本発明の一実施形態に従って、パターニングされた上部層L2が、パターニングされた下部層L1から量−F+f0だけずれた様子を示す側面図である。図2Eは、本発明の一実施形態に従って、パターニングされた上部層L2が、パターニングされた下部層L1から量+F+f0+Eだけずれた様子を示す側面図である。図2Fは、本発明の一実施形態に従って、パターニングされた上部層L2が、パターニングされた下部層L1から量−F+f0+Eだけずれた様子を示す側面図である。
一般に、オフセットXaないしXdなど、2つのパターニングされた層間のオフセットを有する4以上のターゲットA、B、C、および、Dから測定されたスペクトルを少なくとも解析することにより、誤差オフセットEを決定してよい。この解析は、いずれかのスペクトルを既知のスペクトルすなわち基準スペクトルと比較することなしに実行される。換言すれば、本発明の誤差決定技術は、キャリブレーション動作を必要としない。
図3Aは、本発明の一実施形態に従って、オーバレイを決定するための手順300を示すフローチャートである。この例では、上述のように、オフセットXaないしXdを有するよう設計された4つのターゲットA、B、C、および、Dが用いられる。すなわち、ターゲットAはオフセット+F+f0、ターゲットBはオフセット−F+f0、ターゲットCはオフセット+F−f0、ターゲットDはオフセット−F−f0を有するよう、それぞれ設計されている。
まず、動作302aないし302dにおいて、4つのターゲットA、B、C、および、Dの各々に対して、入射する放射線ビームを向けて、4つのターゲットからのスペクトルSA、SB、SC、および、SDを測定する。動作302aないし302dは、測定システムの能力に応じて、順次もしくは同時に実行されてよい。入射ビームは、レーザや広帯域放射など、任意の適切な形態の電磁放射であってよい。オーバレイを決定するための散乱測定信号を測定する光学系および方法の例は、(1)Lakkapragata、Suresh、et al.によって2001年5月4日に出願された米国特許出願第09/849,622号「METHOD AND SYSTEMS FOR LITHOGRAPHY PROCESS CONTROL」、および、(2)Abdulhalim、et al.によって2001年4月10日に出願された米国特許出願第09/833,084号「PERIODIC PATTERNS AND TECHNIQUE TO CONTROL MISALIGNMENT」に記載されている。
オーバレイ誤差に適切なシステムのさらなる実施形態と、それらの利用について、以下で説明する。本発明の様々な実施形態では、スペクトルSA、SB、SC、および、SD(並びに、存在しうる任意のさらなるスペクトル)は、tan(Ψ)、cos(Δ)、Rs、Rp、R、α(分光偏光解析の「アルファ」信号)、β(分光偏光解析の「ベータ」信号)、((Rs−Rp)/(Rs+Rp))など、任意の種類の分光偏光解析または反射率測定の信号を含んでよい。
次いで、それぞれ、動作304aおよび304bにおいて、スペクトルSB(−F+f0)をスペクトルSA(+F+f0)から減算し、スペクトルSD(−F−f0)をSC(+F−f0)から減算することで、2つの差分スペクトルD1およびD2を形成する。次に、それぞれ、動作306aおよび306bにおいて、差分スペクトルD1から差分スペクトル特性P1を取得し、差分スペクトルD2から差分スペクトル特性P2を取得する。差分スペクトル特性P1およびP2は、一般に、取得された差分スペクトルD1およびD2の任意の適切な特徴から取得される。差分スペクトル特性P1およびP2は、単に、特定の波長における各差分スペクトルD1またはD2上の点であってもよい。他の例としては、差分スペクトルP1およびP2は、差分信号の平均の積分の結果であってもよいし、SEアルファ信号の平均に等しくてもよいし、オーバレイに対する計器の感度、ノイズまたは信号の感度を示す加重平均に等しくてもよい。
差分スペクトル特性P1およびP2の取得後、動作308において、差分スペクトルP1およびP2から直接的に、オーバレイ誤差Eを算出してよい。一実施形態では、差分スペクトル特性P1およびP2に基づく線形近似を実行することで、オーバレイ誤差Eを決定し、別の技術では、差分スペクトル特性P1およびP2を用いて、オーバレイ誤差Eの決定に用いられる正弦波関数などの周期関数を近似する。図3Bを参照して、1つの線形回帰技術について、以下で説明する。一例では、オーバレイの結果は、複数の波長または複数の波長帯の特性から取得されたオーバレイの結果の統計的計算(例えば、平均または加重平均)によって取得されてよい。
この実施例の変形例では、4つのターゲットすべてが、オフセットを除いて、ピッチP、薄膜の特徴、構造のサイズおよび組成など、同じ特徴を有する場合に、XaおよびXbが、逆の符号を有し、同じ桁である(0.1<Xa/Xb<10)と仮定し、0.05<|Xa/P|<0.45および0.05<|Xb/P|<0.45であり、XaがXcと同じ符号を有し、XbがXdと同じ符号を有する場合には、差分スペクトル特性P1およびP2に基づく線形近似を用いて、以下のように、層間ターゲット内の構造間に存在するオーバレイ誤差Eの推定値を算出できる。
E’=((SC−SD)*(Xa+Xb)/2+(SA−SB)*(Xc+Xd)/2)/((SA−SB)−(SC−SD))
または
E’=(P2*(Xa+Xb)/2+P1(Xc+Xd)/2)/(P1−P2)
ここで、差分スペクトル特性P1およびP2は、一般に、オーバレイ誤差E<f0の場合には、逆の符号を有する。(Xa−Xb)=(Xc−Xd)そしてE=0の場合には、P1=−1*P2である。
また、各ターゲットのオフセットXa、Xb、Xc、および、Xdの設計で、Fおよびf0に同じ値を用いる場合には、
E’=(f0*P2+f0*P1)/(P1−P2)
ターゲットは、2以上の層に少なくとも部分的に配置された構造のオーバレイを決定するために用いられてよいが、実質的に単一の層に配置された構造のオーバレイを決定するために用いられてもよい。
図3Bは、本発明の一実施形態に従って、オーバレイ誤差Eを決定するための線形方法を示すグラフである。図に示すように、y軸の正の部分は、差分スペクトル特性P1の変化をf0+Eの関数として示し、y軸の負の部分は、差分スペクトルの変化を−f0+Eの関数として示している。上述のように、差分スペクトル特性P1およびP2は、差分スペクトルD1およびD2から取得される。
オーバレイ誤差Eは、2つの点(+f0+E,P1)および(−f0+E,P2)を解析することにより取得されてよい。オーバレイ誤差Eは、ある方法では、2つの取得された差分スペクトル特性P1およびP2で線形近似を実行することにより決定されてよい。グラフ上の2つの点で、Eが0になり、グラフの他の部分は、オ―バレイ誤差Eおよびf0の関数であることに注意されたい。線形領域に含まれるように、慎重にオフセットを選択すると、グラフの正の部分の傾き(P1/(+f0+E))が、グラフの負の部分の傾き(P2/(−f0+E))と等しくなるであろう。したがって、オーバレイ誤差は、E=f0*(P1+P2)/(P1−P2)で与えられる。
本発明の一実施例によると、大きさが同じで符号が逆のオフセット+Fおよび−Fを有し、それ以外のオーバレイ誤差を含まない二つのターゲットが存在する場合には、0次の回折次数の散乱測定SEまたは反射率測定スペクトルは、これら2つのターゲットからは、実質的に同一(良好な近似)であり、+Fおよび−Fに対応するスペクトルの間の差分信号は0になる。もちろん、差分信号のどの特性も0である。さらなるオフセット+f0を設計に入れることにより、意図的に対称性をなくす(人為的にオーバレイ誤差を引き起こす)と、差分信号D1は、0でなくなり、任意の適切な差分スペクトル特性が、オーバレイ誤差Eと同じ関係に従う。同様に、さらなるオフセット−f0を有する別の組のオーバレイターゲットを設計することも可能である。したがって、オーバレイ誤差は、差分信号D1(+F+f0,−F+f0)およびD2(+F−f0,−F−f0)の特性を用いて決定されてよいため、別個のキャリブレーション工程は必要ない。
オーバレイ誤差Eは、スペクトル信号から算出された場合には、実際のオーバレイ誤差の推定値であってよいことを理解されたい。算出されたオーバレイ誤差Eは、オーバレイ誤差(E)、または、オーバレイ誤差(E’)の推定値と呼ばれてよい。
構造間のピッチが比較的大きい場合には、上述の線形近似技術は、一般的に、有効に働く。しかしながら、ピッチが比較的小さい場合には、オーバレイ測定値の精度を改善するために、さらなるターゲットをサンプル上に形成してもよい。ターゲットの数と、それに対応して用いられる散乱測定技術は、要因の中でも特に、ターゲットの具体的な材料と、用いられる散乱測定信号の種類とによって決まる。4つのターゲットを用いるか、もしくは、それよりも多くのターゲットを用いるかについては、実験的、または、周知のモデル化の方法によって決定できる。一実施形態では、2つのさらなる層間ターゲット(ターゲット「H」および「J」と呼ぶ)が、サンプルに形成され、それに対応したオフセットXhおよびXjをそれぞれ有する。入射する放射線に照射されると、ターゲットHおよびJは、対応する回折成分を生成する。回折成分は、さらなる差分信号D3および差分スペクトル特性P3を決定するための基礎として機能しうる。この特性P3を、差分スペクトル特性P1およびP2と併せて解析し、線形近似を用いることによって導入される誤差の非線形補正または測定を含むようにオーバレイEの決定の精度を高めてよい。
上述の線形近似法の別の実施形態では、散乱測定オーバレイ信号を周期関数として扱い、位相検出法を用いてオーバレイ誤差を決定する。この実施形態は、散乱測定用オーバレイターゲットのピッチ、散乱測定用オーバレイターゲットの設計、散乱測定用オーバレイ(SCOL)ターゲットの材料、測定された散乱測定信号などを含む変数に応じて、いくつかの状況で好ましい。
オーバレイ誤差は、事前にプログラムされたさらなる組み込みオーバレイオフセットを備える複数のSCOLターゲットを測定することにより抽出されてよい(事前にプログラムされたオフセットの一例としては、図1を参照して上述したXa、Xb、Xc、および、Xdが挙げられる)。測定されるターゲットの数は、2、3、4、または、5以上であってよく、異なるオーバレイ測定位置の間で変わってもよい。必要なSCOLターゲットから、散乱測定信号(例えば、波長または入射角の関数として)が取得される。任意のオーバレイについて、この信号は、オーバレイ誤差の周期偶関数である。位相検出(または、位相回復、位相抽出、位相決定)アルゴリズムが、これら信号の特性を用いる。測定された信号は、対応する数の自由パラメータ(自由パラメータの1つはオーバレイ誤差自体)を含む1組の周期偶関数によって表される。例えば、測定されるターゲットの数、散乱測定信号の特性、ターゲットの特性、および、取得される情報などに応じて、様々な組のかかる関数が用いられてよい。測定されるターゲットの数は、未知な自由パラメータの累積数以上になる。いくつかの(2以上の)散乱測定用オーバレイ(SCOL)ターゲット(事前にプログラムされたオフセットが異なる)が、互いのすぐそばに(例えば、250ミクロン以内に)配置された場合、オーバレイ誤差は、これらのターゲットすべてに対して同じであると推定されてよい。他の自由パラメータの各々は、あるSCOLターゲットの他のSCOLターゲット(フィールド内および/またはウエハ全体)に対する位置によって異なってもよいし同じであってもよい。(オーバレイは、異なるオーバレイ測定位置の間で異なると推定される)。あるいは、これらの自由パラメータ(もしくは、それらの一部)は、X−およびY−SCOLターゲット方向の間で異なってもよいし同じであってもよい。必要な情報、必要な測定精度、および、一部の自由パラメータが、位置によって、および/または、X−方向およびY−方向の間で異ならないか否か、に基づいて、オーバレイ測定位置当たりのSCOLターゲットの総数、および、フィールドおよび/またはウエハ当たりで測定すべきSCOLターゲットの総数が決定される。
複数のターゲットからの散乱測定信号からオーバレイ誤差を決定する位相アルゴリズム手法の一例は、散乱測定信号のオーバレイ誤差への依存度を、周期関数として扱う方法である。この場合、複数のターゲットのプログラムされたオフセットは、初期位相オフセットとして扱われ、オーバレイ誤差は、付加的な位相として扱われる。次いで、オーバレイ位相は、既知の位相決定または位相回復方法で決定されてよい。直交、3バケット、および4バケット位相回復アルゴリズムを含む周知の位相回復方法を用いて、オーバレイ誤差を決定することができる。これらの位相回復方法は、例として挙げたに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。位相検出方法は、よく知られており、いくつかの例を挙げるならば、通信、干渉法、核磁気共鳴、電子回路など、広い領域で一般に利用されている。別の実施形態では、線形、非線形、および位相回復アルゴリズムを組み合わせて用いることで、オーバレイ誤差を決定してもよい。
上述の技術の実施の際には、特定の条件を満たすことが好ましい。測定領域は、オフセット(例えば、+F+f0、−F+f0、+F−f0、および、−F−f0)を除くすべての面で、実質的に同じである。これは、ターゲットを互いに約100ミクロン以下の範囲内に配置し、プロセスに対して比較的頑健なターゲット(すなわち、プロセスの変化に対する敏感さが、素子の形状と同等以下である)を選択することにより実現される。実際的には、製品ウエハにおいて、下方のパターン層および上方の層のトポグラフィが、このトポグラフィとの相互作用に応じて変化する場合には、異なるオフセットについてプロファイルが同一でなくなる場合がある。異なるオフセットを有する2つのターゲットの間の差分信号すなわち誤差信号は、プロファイルが異なるターゲットに共通する限りは、オーバレイターゲットの部分のプロファイルの変動と、膜の変動には比較的依存しない。これは、プロファイル、膜、および、光学系によって決定される信号の部分のコモンモード阻止と実質的に同等である。この技術は、さらに、典型的な製造プロセスで起きるプロセス変動の範囲に対して堅牢であることが好ましい。オーバレイ誤差による信号の差分は、隣接する散乱測定用オーバレイターゲットの間のプロセス変動の他のソースによる信号の差分(マスク誤差を含む)よりも大きいことが好ましい。
特定の実施例において、ターゲットが、線の特徴を示すグループの構造を含む場合には、XおよびYオーバレイ測定のために、別の組のターゲットが必要な場合がある。オーバレイターゲットが、(上から見られるような)二次元構造からなる場合には、1組のターゲットを用いて、XおよびYオーバレイ情報の両方を取得することができる。斜め散乱測定については、具体的な実施例によると、光学散乱面に対してウエハの方向を回転させて、異なるXおよびYオーバレイ誤差を測定することが有利である。正確な垂直入射については、ウエハも光学系も回転させることなしに、異なる偏光からXおよびY両方のオーバレイ情報を取得することができる。
デカルト(直交)座標は、サンプル内のオーバレイを測定するための有用な基準系として機能し、x−y平面は、サンプルの層の面内、または、その層と実質的に平行に配置され、z軸は、サンプルの層と実質的に直交するよう配置される。デカルト座標系は、サンプルに対して固定されてもよいし、測定の複雑さを低減するように回転されてもよい。例えば、サンプル全体にわたって対角線上に単一の層内で起きるオーバレイは、長方形のサンプルの辺に対して実質的に平行なx−y軸を有するデカルト座標系における二次元のx−yオーバレイとして表されることが可能である。しかしながら、x軸が対角線上のオーバレイの方向と平行になるように、x−y軸を回転させることによって、その対角線に沿ったオーバレイを1つの軸に沿って測定できるようになる。三次元のオーバレイは、層に対して実質的に平行なx−y平面内に測定を制限すると共にz方向に生じるすべての層間オーバレイを無視することにより、二次元のオーバレイに単純化されてよい。
一実施形態では、ターゲットは、2つの層に配置された異なる組の構造間に、もしくは、3以上の層に配置された異なる組の構造間に、2以上の所定のオフセットを含む。一般的な例では、ターゲットは、任意の数の層を含んでよく、これらの層のすべてまたは一部は、所定のオフセットを生成する構造を有する。特定の実施例では、ターゲットの1または複数のパターニングされた下層における構造は、(パターニングされた下層の上方に配置された)1または複数の上層の形状またはトポグラフィの変化を引き起こす。この実施例では、1または複数の上層は、実質的または部分的に不透明すなわち吸収性の層であってよく、回折信号の少なくとも一部は、上層のトポグラフィに起因してよく、トポグラフィは、パターニングされた下層に少なくとも部分的に起因する。
一実施形態によると、ターゲットに含まれる構造は、例えば、線、格子、長方形、正方形、曲線、湾曲形状、または、それらの組み合わせなど、様々な構成および形状を有してよい。かかる構成の構造は、ターゲット内の様々な位置に配置されてよく、ターゲット上に入射する電磁放射に対して様々な角度を示してよい。例えば、複数組の構造は、ターゲットに入射する1組の平行な(コリメートされた)放射線またはビームの伝搬方向に垂直な1組の平行なラインとして体系化(オーガナイズ)されてよい。別の例では、1組の平行なラインとして体系化された構造は、入射する放射線に対して鋭角(例えば、45度の角度)をなすように配置されてよい。かかる構成は、xおよびy方向の両方でオーバレイの決定を容易にして、さらなるオーバレイのパターンまたは測定の必要性を低減することから有利である。
散乱測定システムの実施形態と、その利用
本発明の技術のいくつかは、ソフトウェアおよび/またはハードウェアシステムの任意の適切な組み合わせを用いて実施されてよい。例えば、それらの技術は、オーバレイ測定ツール内で実施されてよい。かかる測定ツールは、本発明の動作の多くを実行するコンピュータシステムと統合されることが好ましい。かかる複合システムは、少なくとも、オーバレイターゲットの散乱測定信号を取得するための散乱測定モジュールと、取得された散乱測定信号を解析することにより、かかるターゲット内のオーバレイ誤差を決定するよう構成されたプロセッサと、を備えることが好ましい。散乱測定モジュールは、最低限でも、通例、(i)サンプルの特定の位置に放射線を向けるよう方向付けられた照射源と、(ii)サンプルによって散乱された散乱測定信号を検出するよう方向付けられた1または複数の検出器と、を備える。
本発明の技術の少なくとも一部は、従来のボックス・イン・ボックスまたはフレーム・イン・フレーム方式のオーバレイターゲットまたは他の画像化方式のオーバレイ測定構造に用いられるような画像解析に基づくオーバレイ測定システムまたはサブシステムを補完する追加的なオーバレイ測定機能として、オーバレイ測定システム内に実装されてもよい。画像化に基づくオーバレイ測定法と、散乱測定に基づくオーバレイとを組み合わせる装置の例は、上述の仮出願第60/498,524号に記載されている。オーバレイ補正値の算出、他のオーバレイ補正値の算出、ウエハの他の位置におけるオーバレイ誤差の算出など、様々な利用法のために、画像化によるオーバレイ測定と、散乱測定によるオーバレイ測定と、からのオーバレイデータを組み合わせてよい。画像化によるオーバレイ測定と、散乱測定によるオーバレイ測定とを組み合わせるさらなる利用例は、上述の仮出願第60/498,524号に記載されている。
システムの構成に関わらず、そのシステムは、データと、汎用の検査動作および/または本明細書に記載の発明の技術のためのプログラム命令とを格納するよう構成された1または複数のメモリまたはメモリモジュールを用いてよい。プログラム命令は、オペレーティングシステムおよび/または1以上のアプリケーションの動作を制御してよい。1または複数のメモリは、さらに、ターゲットから取得された散乱測定データと、オーバレイ誤差の結果と、必要に応じて、他のオーバレイ測定値のデータとを格納するよう構成されてもよい。
かかる情報およびプログラム命令は、本明細書に記載のシステムおよび方法を実施するために用いられてよいため、本発明の実施形態は、本明細書に記載された様々な動作を実行するためのプログラム命令や状態情報などを含む機械可読な媒体に関する。機械可読な媒体の例としては、ハードディスク、フレキシブルディスク、磁気テープなどの磁気媒体、CD−ROMディスクなどの光学媒体、フロプティカルディスクなどの光磁気媒体、読み取り専用メモリ装置(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)など、プログラム命令を格納および実行するよう特別に構成されたハードウェア装置、が挙げられるが、それらに限定されない。本発明は、放送電波、光配線、電気配線など、適切な媒体で伝達される搬送波として実施されてもよい。プログラム命令の例としては、コンパイラによって生成されるような機械コードや、インタープリタを用いてコンピュータが実行できる高水準なコードを含むファイルが挙げられる。
以下で説明するシステムの実施形態のいくつかは、4以上のターゲットからスペクトルを取得するための散乱測定モジュールまたは構成要素に関して、主に説明および図示されており、プロセッサやメモリについては、図示されていない。
散乱構造の測定のために開口数を最適化された画像化測定システム
図4は、顕微鏡画像化システムを示す説明図である。図に示すように、画像化システム400は、電磁放射線の入射ビーム403を生成するためのビーム発生器402と、入射ビーム405をサンプル408に向けて方向付けるためのビーム分割器(ビームスプリッタ)404とを備える。通例、入射ビームは、対物レンズ406によってサンプル上に焦点を合わせられる。次いで、入射ビームに応じて、出力ビーム409が、サンプルから放射され、ビーム分割器404とリレーレンズ410とを通って、画像化装置すなわちカメラ412に到達する。カメラ412は、出力ビーム409に基づいてサンプルの画像を生成する。
システム400は、さらに、ビーム発生器402、対物レンズ406、カメラ412など、様々な構成要素を制御するよう構成されたプロセッサおよび1以上のメモリ414を備える。プロセッサおよびメモリは、さらに、上述の様々な散乱測定技術を用いて、検出された出力ビームまたは画像を解析するよう構成される。
従来、かかる画像化システム(オーバレイのために用いられるシステムなど)は、画像の分解能を最適化しつつ光学収差を最小限に抑えるように、(例えば、対物レンズ406を通して)開口数(NA)を選択していた。NAの選択は、通例、画像の幾何学的特性による単一のターゲット(ボックス・イン・ボックス方式のターゲットなど)にわたる強度の変動からオーバレイ情報を引き出すために実行される。
従来の画像化システムは、0.7ないし0.9など、高い開口数(NA)を利用していたが、その結果として、振動、焦点深度、および、光学収差に敏感で高価な光学系を用いていた。これらの問題により、実現可能な正確さが低くなり、「ツール誘起シフト」すなわちTISと呼ばれる測定誤差が引き起こされる。
散乱測定システムは、xおよびy方向のオーバレイ両方を測定すると共に、膜厚などの他のサンプルパラメータの変動による影響を排除するために、複数のサイトにおける測定値を順次取得してよい。この種類の測定プロセスでは、従来のオーバレイ技術に比べて散乱測定ツールの動作がかなり遅くなる。
本発明の一実施形態では、画像化光学系の照射側および画像化側のNAは、0次の回折次数のみが収集されることを保証することにより、散乱構造に対する機器の性能を最適化するように選択される。検出システムによって0次の回折のみが収集される場合には、周期構造に関する特定の測定または検査の作業について性能の有利があることを活かすことができる。この条件下では、鏡面反射のみが収集される。鏡面反射から散乱された出力は収集されず、非鏡面反射出力は、収差に対してより敏感であるため、鏡面反射出力のみを収集すると、光学収差によって引き起こされる影響を最小限に抑えられる傾向がある。この条件により、さらに、以下で詳述するように視野内の複数のサイトの相対的な光度測定値(フォトメトリック測定)について、ツールが最適化される。また、従来の画像化システムに比べて、非常に低いTISを実現できる。さらに、従来の散乱測定システムよりも、はるかに高いスループットを実現できる。
特定の画像化システムに対して照射側および画像化側のNAを選択することは、かかるシステムの特定の構成に基づいて行われる。ここで、照射側および収集側の開口数NAが同じであり、入射ビームがサンプル表面に対して垂直である最も簡単な画像化システムを考えると、「0次回折のみ」という条件は、以下の場合に満たされる。
nλ>2dNA、ここで、n=1
ここで、dは、画像化されるターゲットの構造のピッチである。これは、以下のように、照射側の開口数NAiおよび収集側の開口数NAcを用いて表すことができる。
nλ=d(NAi+NAc)
この式は、照射系の開口数を抑制することができる場合に、集光系の開口数への抑制を緩めることができることを示しており、これは、ある条件下では有利である。したがって、スペクトル域は、ピッチとNAとの積の2倍よりも大きい波長に制限されてよい。実際の条件下では、散乱放射ビームは、照射ビームよりも広くなる(発散する)。しかしながら、実際の状況では、無限周期の格子は画像化されないため、上述の式は近似式になり、回折された平面波は、いくぶん発散する。そのため、制限に安全マージンを含めて、以下を条件とすることが好ましい。
nλ≧2dNA(1+ε)、ここで、n=1であり、εは、小さく、通例0.5未満
一例として、NAが0.4の画像化システムについては、最大ピッチの0.8倍よりも大きい値に波長を制限してよく、これは、適切でない制限であるとは思われない。設計基準70nm以下の形状を有する周期構造については、200nmという小さいピッチを有する最も密度の高い構造は、約200nm以上の動作波長を有する画像化システムのスペクトル域を制限せず、500nmという大きいピッチを有する比較的分離した形状は、400nmよりも長い波長で測定されることが好ましい。
測定および検査の用途のために画像化分光計を設計する場合には、これらの制限を考慮することが好ましい。画像化システムの空間分解能への制限は、そのシステムの開口数である。測定構造のサイズを最小に縮小して貴重なウエハのスペース(リアルエステート)を節約することができるように、最高の空間分解能を実現することが有利である。換言すると、これにより、画像化分光計の視野内の隣接する形状の間の近接効果すなわち「クロストーク」を最小限に抑えることが可能になる。したがって、0次回折のみが検出システムによって収集されるという制限を満たしつつ、可能な限り最高のNAが実現される。
この制限の別の興味深い効果は、試験対象の形状を分解することなしに、可能な限り最高のオーバレイ空間分解能を実現できることである。これは、画像化システムにおいて、問題となるエイリアシング現象を回避することが確実であるから、さらに有利である。好ましい実施形態では、試験対象の形状における最大ピッチに基づいて、測定システムまたはアルゴリズムが、スペクトルの帯域通過(バンドパス)を容易に変更または選択できる構成が提供されている(例えば、以下で説明する図5Aないし5Dのシステムなど)。あるいは、試験対象の形状における最大ピッチに従って、照射側もしくは収集側のNAを容易に変更できる。また、これらの実施形態すべてを、1つのシステムに組み込んでもよい。
図5Aないし5Eは、散乱特性に対して最適化された開口数を有する顕微鏡画像化システムの4つの実施形態を示す図である。図5Aに示すように、システム500は、図4のシステムと同じ名前の構成要素と同様に動作する構成要素を備えてよい。システム500は、さらに、特定の波長を選択するための波長選択装置520を備える。波長選択装置520は、照射光の一部を選択的に透過または選択的に反射させることにより、スペクトル帯の変更を可能にする。1組の帯域通過干渉フィルタから選択する技術、帯域通過干渉フィルタ、格子分光計、フーリエ変換干渉計、音響光学可変フィルタなどを連続的に変更する技術を含めて、様々な周知の分光フィルタリング技術を用いて、スペクトル帯を変更してよい。 波長選択装置520は、ビームの間の入射ビーム路内に配置される。システム500は、さらに、入射ビームを特定の偏光状態にするための偏光器制御装置522と、集光されたビームの偏光成分を解析または分離するための偏光解析器524と、を備える。
図5Bのシステム530は、波長選択装置の代わりに波長変調装置532を用いることを除いて、図5Aのシステム500と同様である。図5Cのシステム540は、波長選択装置542が出力ビーム路に配置されることを除いて、図5Aのシステム500と同様である。図5Dのシステム550は、波長選択装置の代わりに波長変調装置532を用いることを除いて、図5Cのシステム500と同様である。波長変調装置532は、波長変調装置532自体の1または複数の光路長を変化させることによって制御されてよい(例えば、マイケルソン干渉計、ファブリペロ干渉計、または、サニャク干渉計)。スペクトル情報は、例えば、フーリエ変換やアダマール変換などの変換解析の結果生じた信号から抽出されてよい。
図5Eは、本発明の一実施形態に従って、複数サイトの視野の例を示す画像化分光計の上面図である。一実施例では、点線の囲い各々の中の画素(ピクセル)のスペクトルを平均して、4つの測定ターゲットの各々に対するスペクトルを生成する。あるいは、点線の囲い各々の中央の領域のみに位置する画素のスペクトルを平均する。図示されたターゲットにおけるラインのサイズおよび間隔は強調されている。
NAは、0次の回折次数のみが任意の適切な方法で収集されることを保証するよう選択されてよい。提案された実際的な一実施形態では、
画像化システムの視野内に、異なる特性を有する2以上のサイトを配置する。
1以上のスペクトル域にわたって、画像を取り込む。
視野内の各測定サイトについて、当該サイト内に存在すると決定された画素の全部または一部を、合計またはその他の方法で合成することで、そのスペクトル域におけるそのサイトの測光特性を特徴付ける。
工程3を各スペクトル域について繰り返す。
各スペクトル域における各サイトの結果を処理して、サンプルの特性を決定する。例えば、各ターゲットについて得られたスペクトルに対して、上述のスペクトル解析技術(すなわち、F+f0)を用いる。
ウエハにおいて対象となる複数の測定サイトについて、工程1から5を繰り返す。
この例の技術では、異なるスペクトル領域の画像を順次取り込んでいるが、波長依存のビーム分割器、フィルタ、および/または、鏡のシステムを用いて、同時に取り込んでもよい。あるいは、様々な光路差の複数の画像を取り込むサニャク干渉計などの装置を用いて、同じ効果を得ることが可能であり、これらの画像は、異なるスペクトル域について取得された画像と同様の情報を引き出すために用いられる。
フィルタを用いた散乱測定オーバレイ
従来の画像化オーバレイツールは、高い倍率と小さい視野とを有する。全体のパターニング欠陥の検査は、顕微鏡を用いて手動で実行されるか、別個のマクロ検査ツールで自動的に実行される。残念ながら、低倍率のオーバレイツールには、複数の工程やツールが必要であり、それらの一部は手動である。
一実施形態では、1または複数の波長帯を選択するための機構を備えた低倍率の顕微鏡が提供されている。また、このツールは、フィルタを備える1または複数の広帯域ソースを用いることが好ましく、複数のソースが、異なる波長帯、可変フィルタなどを網羅する。図6は、本発明の一実施形態に従って、1または複数の波長帯を選択するためのシステム600を示す説明図である。図に示すように、システム600は、サンプル606に向かって複数波長の入射光ビーム604を生成するための広帯域光源602を備える。入射ビーム604に応じて、複数波長の出力ビーム608が、サンプル606から散乱される。システム600は、さらに、波長に基づいて、出力ビーム611の一部を選択的にカメラ612まで通過させるためのフィルタ610を備える。一実施例では、フィルタは、赤、緑、青、または、黄など、特定の色を通過させるよう構成可能である。カメラは、フィルタリングされた出力ビーム611に基づいて、画像を生成するよう動作可能である。
ターゲット群のターゲットの中の1または複数が、顕微鏡の視野内に入るサンプル上の位置に移動することにより、オーバレイの測定値が取得される。画像が取得され、(各ターゲットを含む)画像内の画素の一部または全部からの強度が、平均または合計されることで、フィルタの特定の設定におけるターゲットの強度値が得られる。一実施形態では、ターゲット間の最大差を得るように、フィルタを調節する。次に、この最大差は、基準面に関して、合計の画素数に正規化されてもよいし、視野内の照射の均一性のマップによって補正されてもよい。次に、サンプルまたは光学系は、ターゲット群の中の必要なターゲットすべてが測定されるまで、移動されてよい。次に、例えば、以下の式によって上述のように決定された強度値を用いて、オーバレイの値が決定される。
P1=(Ia−Ib)およびP2=(Ic−Id)
および
オーバレイ=f0*(P2+P1)/(P2−P1)
このプロセスは、精度、正確さ、および、頑健性を改善するために、複数の波長帯に対して繰り返されてよく、その場合、最良のコントラストをもたらす波長が、散乱測定解析に用いられる。
典型的な画像化オーバレイツールに比べて、倍率が低く視野が大きいと共に、従来の反射率計や楕円偏光計(エリプソメータ)と違って、サンプルの領域の画像が収集されるため、画像を解析することによって他の種類の処理上の問題を検出してもよい。例えば、1または複数の処理工程で、不良レチクルが用いられた場合には、画像は、かなり異なる。レジストの厚さが不適当である場合には、画像の輝度やコントラストが、影響を受けることがある。レジストにむら(ストリーキング)がある場合には、画像にわたって輝度やコントラストの変動が、検出されることがある。CMP(化学機械研磨)処理では、過研磨、研磨不足など、処理上の誤差を同様に検出できる。
この実施形態では、複数の散乱測定ターゲットを同時に測定することで、測定速度を上げることができる。さらに、別個の検査ツールを用いることなく、オーバレイ以外にも、処理上の誤差や、処理条件の変化を検出することができる。
複数角度の同時散乱測定
散乱測定値を取得する技術は、2シータ法を含んでよく、2シータ法では、複数の測定を順次行うことにより、格子などの反復構造からの散乱強度を、複数の角度で測定する。散乱測定を行う別の方法は、分光散乱測定である。通例、複数の測定を行うため、2シータ法を利用すると、非常に遅い。分光散乱測定を利用する場合には、高性能で高価な光学系が必要になる。
本発明の具体的な実施形態では、同時に複数の角度で散乱測定を行うための技術および装置が提供されている。2シータ法と異なり、多くの角度に対して同時に散乱強度を決定できる装置を用いて、測定が行われる。この技術は、2シータ法よりもはるかに高速である。
この方法を実施するために、Spanier et al.による米国特許5,166,752号に示されているような光学装置を用いることができる。上記の特許では、多角度の楕円偏光計が、例えば、Spanier et al.の特許の図3および4に示されている。図7は、同時、多角度入射の楕円偏光計700を示す説明図である。図に示すように、楕円偏光計は、偏光をサンプル714の表面上に方向付けるための光源発生器(ソースジェネレータ)(例えば、構成要素702、706、708、710、および、712)と、サンプルから放射された出力ビームを受けて検出するための検出光学系(例えば、構成要素718ないし724)と、サンプルで反射された光の偏光状態を解析するための解析器726と、を備える。光源発生器は、光源702と、偏光器708と、可変絞りを有する補償器710と、集束レンズ系712とを備えることで、光源からの1つの光束の偏光を、様々な入射角でサンプル表面上に向かって、同時に方向付ける。光源発生器は、さらに、必要に応じて、狭帯域光学フィルタを備えてもよい。
レンズ系712は、少なくとも1または2度の角度の範囲にわたって変化する入射角で、サンプル714上に光を集束させるための有効口径(アパーチャ)と焦点距離との比を有する。特定の実施形態では、入射角の範囲は30度である。サンプル714に光線を方向付けるために、より大きい角度を用いてもよい。
集束レンズ系712は、例えばHe−Neレーザからの偏光を、サンプル714上の1つの小さいスポットすなわち点に収束させる。サンプル714上の1つの小さいスポットに収束される様々な入射光線は、広い範囲の入射角を有してよい。したがって、サンプル714上の小さいスポットに方向付けられる光は、集束レンズを通して、中央の光線の入射角の上下の多くの入射角を有する光線を含む。入射する光線の各々は、その入射角に等しい角度で反射され、各光線の偏光状態は、この反射によって変化する。検出器アレイ722を用いて、サンプル714で反射された複数の光線を、異なる狭い範囲の入射角にわたって個々に検出し、複数の入射角度でのデータを簡単かつ迅速に取得する。
サンプル714から放射された出力ビームは、出力レンズ716と、交換可能な絞り718と、偏光解析器720と、随意的に、交互フィルタ722とを通して、検出器アレイ722に方向付けられる。レンズ712および716の直径dは、それらの有効径に対応する。図に示した実施形態では、レンズ712および716は、それぞれ、18mmの直径dと、34mmの焦点距離1とを有する。入射角度の範囲(少なくとも30度が好ましい)が実現される限りは、他の有効径および焦点距離を用いてもよい。レンズの直径および焦点距離は、サンプル714に入射する光ビームの入射角の数を最大化することを意図して選択される。別の実施形態では、光は、サンプルの表面で反射されずに、サンプルを透過する。
1または複数の再集束レンズ712は、反射した(透過した)光を検出器アレイ722に向かって方向付ける。しかしながら、反射(透過)光が、直接的に検出器アレイに当てられてよい場合には、再集束レンズを用いる必要はない。レンズ712および716は、それ自体では、光の偏光状態を変えないことが好ましい。
検出器アレイ722は、線形の複数素子検出器であってよく、各検出素子が、サンプルに対して照射される狭い範囲の入射角の光線を検出できる。開示されている実施形態では、アレイ722は、個々の検出素子すべてが、1つの回路チップ上に集積された固体の感光性検出器アレイである。具体的には、検出素子は、線形アレイの光ダイオードを備える。1つの回路チップ上に集積されているが、個々の光ダイオードは、別個の検出器として機能することができる。開示されている実施形態の線形アレイは、一列に配列された128の検出素子を備えることで、反射(透過)光がアレイ全体に照射された場合に、128の異なる入射角のデータを提供する。個々の検出素子の数は、開示されている実施形態より多くても少なくてもよく、検出素子は、1つのチップに集積される必要はなく、別個の検出器として構成されてもよい。複数の検出素子を用いることにより、複数の異なる入射角の各々について、表面で反射された光(または、サンプルを透過した光)を同時に検出することができる。さらに、本発明では、順次移動されることが可能な比較的少ない検出素子を用いて、反射(透過)光線を機械的に走査しつつ検出することもできるが、この技術では、所要時間が増大し、位置決め精度に応じて、精度が低くなる。
各検出素子の物理的なサイズは、各素子が、照射側における特定の狭い範囲の入射角のみを検出できるように、反射光線の広がりよりも小さいことが好ましい。各検出素子の出力は、(例えば、解析器724によって)リアルタイムコンピュータ技術のような従来の方法で利用され、入射角の狭い範囲の各々について、ΔおよびΨに関するデータを生成する。次に、そのデータは、従来の方法で解釈される。線形アレイの並ぶ方向は、一般的に重要であり、線形アレイは、光学面内に並ぶことが好ましい。開示されている実施形態では、線形検出器アレイ722の長軸を、中央の光線の入射面内に、中央の光線に垂直に配置することで、最大数の入射角を検出する。
かかる楕円偏光計は、ある範囲の角度にわたって散乱測定用ターゲットへの照射を同時に行うために用いられてよく、散乱光の強度が、アレイ検出器などによって、ある範囲の角度にわたって同時に測定される。それらの角度で測定された強度からのデータを収集することにより、格子またはその他のターゲットのパラメータを決定することができる。例えば、そのデータは、2003年7月8日に発行されたXu et al.による米国特許第6,590,656号「SPECTROSCOPIC SCATTEROMETER SYSTEM」に記載されたような技術で導出されたデータの理論モデルと比較されてよい。そのデータは、Abdulhalim et al.によって2001年4月10日に出願された米国特許出願第09/833,084号「PERIODIC PATTERNS AND TECHNIQUE TO CONTROL MISALIGNMENT」に記載されたような技術で導出された理論モデルと比較されてもよい。
そのデータは、事前に生成されてライブラリに格納されてもよいし、解析中にリアルタイムで生成されてもよい。散乱測定用オーバレイのような技術では、様々なターゲットに関して測定されたスペクトルを直接比較することもできる。かかる示唆測定法を用いて、オーバレイの位置ずれ(ミスレジストレーション)を判定することができる。
また、1991年3月12日に発行されたGold et al.による米国特許第4,999,014号「METHOD AND APPARATUS FOR MEASURING THICKNESS OF THIN FILMS」に記載されたようなビームプロファイル反射率計を用いて、本技術を実行してもよい。
楕円偏光測定と反射率測定の同時実行
楕円偏光計と反射率計を組み合わせて用いるシステムを利用することで、オーバレイの散乱測定値の精度を向上させることができる。一実施形態では、オーバレイを測定するための散乱計として、2以上の楕円偏光計を用いる。これらの楕円偏光計の内の1または複数は、分光楕円偏光計であってよい。別の実施形態では、オーバレイを測定するための散乱計として、2以上の反射率計を用いる。これらの反射率計の内の1または複数は、偏光反射率計であってよい。あるいは、オーバレイを測定するための散乱計として、1以上の楕円偏光計と、1以上の反射率計とを組み合わせて用いる。
測定は、連続的に(各ツールが別の時間に測定するように)実行されてもよいし、並行して(すべてのツールがほぼ同時に測定するように)実行されてもよいし、あるいは、任意の他の方法で(例えば、ツールの総数よりも少ない少なくとも2つのツールが、ほぼ同時に測定するように)実行されてもよい。
本明細書に記載した実施例のいずれかにおいて、様々なツールが、法線入射および斜め入射を含む様々な入射角で、測定を行ってよい。特定の実施形態では、少なくとも2つのツールが、異なる方向から、ほぼ同じ入射角での散乱測定を行う。例えば、第1のツールは、x方向の散乱測定に用いられ、第2のツールは、y方向の散乱測定に用いられる。かかるシステムは、一部の共通な散乱信号を排除して、測定値の精度を向上させると共に、対称的な構成を提供できる。
散乱測定によるオーバレイの決定において、かかるツールを組み合わせて用いる利点は、測定値の精度が上がることである。2以上のツールを用いて、2以上の入射角(または、入射点)での測定を行う際の別の利点は、対象となる媒体への影響(例えば、膜の影響)をオーバレイから切り離すのに役立つことである。さらなる利点は、楕円偏光計と反射率計との組み合わせが、現行の検査ツールですでに用いられていることである。異なるターゲットまたは異なるターゲット部分(セクション)に対して、ほぼ並行して散乱測定を実行するよう構成された複数の散乱計を組み合わせて用いる別の利点は、測定に必要な合計時間を短縮できることである。並列測定システムの別の利点は、各散乱測定用オーバレイターゲットに対する信号取得時間を増大させて、測定の正確さを改善できることである。
FT処理を用いた散乱測定によるオーバレイ決定
フーリエ変換(FT)処理を用いた散乱測定によるオーバレイ測定のためのシステムを用いてもよい。一実施形態では、干渉計を用いて、広帯域光源の実質的にすべての波長を変調し、CCDカメラで、散乱線を検出する。変調帯域の実質的にすべての波長が、各画素または画素群に対して記録される。干渉計が変調帯域を通してステップすると、散乱信号の分光画像が生成される。
結果として生成された分光画像は、比較的大きい視野を有してよい。例えば、その画像は、いくつかの複数のターゲットを含んでよい。分光画像は、外部からの影響(例えば、膜の影響)を排除しつつオーバレイを正確に決定するために、画素ごとに処理されてよい。あるいは、処理速度を向上させると共に処理リソースを低減するために、画素群を用いて処理を行ってもよい。例えば、上述の散乱測定処理に従って、各ターゲットの画素群を解析してよい。一実施例では、それぞれ対応するターゲットの対の画像を減算して、差分画像D1およびD2を取得する。次に、各差分信号の特徴(平均強度など)を取得して、P1およびP2とし、オーバレイ誤差の決定に用いる。
具体的な実施例では、マイケルソン干渉計を用いて、波長変調帯域を通してステップする。あるいは、リンニク干渉計や、任意の他の干渉計を用いてもよい。鏡の各位置について、CCDカメラが、カメラの視野に捕らえられた散乱信号を記録する。次に、検出された信号は、デジタル化されて、画素ごと、もしくは、画素群ごとに格納されてよい。ステップの大きさは、一般に、オーバレイ測定の精度に比例する。カメラの速度(例えば、カメラが捕捉できる1秒当たりのフィールド数)は、通例、測定の速度に比例する。変調帯域についての測定が終わると、各画素(または、画素群)に対して記録された信号は、離散フーリエ変換(DFT)の基礎として用いられてよい。DFTは、各画素(または、画素群)のスペクトルプロファイルを提供する。次に、各ターゲットのスペクトルプロファイルは、上述の散乱測定オーバレイ技術で用いられてよい。これで、精度の高いオーバレイ決定を実行することができる。
複数の波長可変レーザ
様々な構成の楕円偏光計および反射率計によって実行される測定と共に、複数の波長可変レーザを組み合わせたものを有するシステムを用いて、オーバレイの散乱測定値の精度を向上させてもよい。波長可変レーザは、対象となる表面上に入射する放射線を供給する。一実施形態では、検討中の設計における少なくとも1つの層に配置されたターゲットを用いて、散乱測定によるオーバレイ測定が実行され、波長可変レーザは、ターゲットに入射する放射ビームを供給する。
次いで、測定された信号は、処理の前または後に平均されてよい。一実施形態では、測定される放射ビームが、ターゲットA、B、C、および、Dから得られる。次に、信号の各組から2つの差分信号D1およびD2が、複数の波長可変レーザ設定で取得されてよい。波長可変レーザ設定の各々について各ターゲットから測定された信号は、差分信号D1およびD2を取得する前に平均されてもよい。あるいは、D1およびD2に対する差分信号の各組を平均して、1つの平均差分信号D1およびD2を取得してもよい。次に、差分信号D1およびD2の特性P1およびP2(例えば、積分)が取得されてよい。別の実施形態では、異なる構成の波長可変レーザについて、(測定された信号も差分信号D1およびD2も平均せずに)、複数の特性P1およびP2が取得され、その結果が、各信号P1およびP2について平均される。次いで、上述のように、信号P1およびP2に基づいて、オーバレイ誤差が取得される。
空間フィルタリングを用いた散乱測定によるオーバレイ決定
一実施形態では、FT処理を用いた散乱測定によるオーバレイ決定のための上述の実施形態を拡張している。
FT処理を用いた散乱測定によるオーバレイ測定のためのシステムを、空間フィルタリングと組み合わせて、提供する。具体的には、少なくとも1つの散乱測定ターゲットによって反射された信号は、選択的に空間フィルタリングされ、特定の信号成分のみが処理される。
FT処理を用いた散乱測定によるオーバレイ決定に関する上述の実施形態では、干渉計を用いて、広帯域光源の実質的にすべての波長を変調し、CCDカメラなどの検出器で、散乱線を検出する。次いで、実質的にすべての波長が、各画素または画素群に対して記録されてよい。干渉計が変調帯域を通してステップすると、散乱信号の分光画像が生成される。完全な画像(または、画像の一部)に対応する散乱信号が収集される本実施例では、1本の画素ラインに対応する一部の信号のみが保持される。あるいは、画像全体に満たない複数の画素ラインに対応する一部の信号が収集される。このような散乱信号の選択的な収集は、空間フィルタリングによって、検出器すなわちCCDカメラの画素列に対応する水平、垂直、または、斜めの信号のストライプのみを保持することで実現可能である。あるいは、より大きく、より完全な散乱信号の一部を、CCDカメラで収集することもできるが、望まない画素列(例えば、ターゲットの縁部や、2つのターゲット間の境界)に対応する情報は、収集の後に放棄されてもよい。
次に、保持された信号に対応する分光画像は、外部からの影響(例えば、膜の影響)を排除しつつオーバレイを正確に決定するために、画素ごとに処理されてよい。あるいは、処理速度を向上させると共に処理リソースを低減するために、画素群を用いて処理を行ってもよい。この実施形態は、従来の処理方法よりも高いSNRを実現する。
本発明の一実施例では、FT処理の用いた散乱測定によるオーバレイ決定の実施形態を参照してオーバレイを決定する上述の技術が用いられてよい。
FT処理を用いた散乱測定によるオーバレイ決定の実施形態に比べて、空間フィルタリングを用いた散乱測定によるオーバレイ決定の実施形態の態様は、処理速度およびスループットを向上すると共に、処理リソースを低減することができる。
分光楕円偏光計および分光反射率計の例
図8は、本発明の一実施形態に従って、分光散乱計(スペクトロスコピック スキャタロメータ)システム800を示す説明図である。システム800は、基板すなわちウエハ808上に配置された格子構造806のオーバレイを測定するためにそれぞれ利用可能な分光楕円偏光計802および分光反射率計804の特徴を組み合わせて用いる。格子構造806は、多少簡略化して図示されており、様々に変更されてよい。例えば、格子構造806は、本明細書に記載された格子構造のいずれかに対応してよい。分光楕円偏光計802および分光反射率計804の両方は、水平のxy方向と、垂直のz方向とに、基板808を移動させるためのステージ810を利用してよい。ステージは、さらに、基板を回転させたり傾けたりしてもよい。動作中、ステージ810は、分光楕円偏光計802および/または分光反射率計804によって格子構造806を測定できるように、基板808を移動させる。
分光楕円偏光計802および分光反射率計804は、さらに、1または複数の広帯域放射線源812を用いる。例えば、光源812は、少なくとも230ないし800nmの範囲の波長を有する電磁放射を供給してよい。広帯域光源の例としては、重水素放電ランプ、キセノンアークランプ、タングステン電球、石英ハロゲンランプが挙げられる。あるいは、1以上のレーザ放射線源を、広帯域光源の代わりに、または、広帯域光源と組み合わせて用いてもよい。
分光反射率計804では、レンズ814が、光源812からの放射線を集光して、ビーム分割器(ビームスプリッタ)816に向かって方向付け、ビーム分割器816は、入射ビームの一部を集束レンズ818に向かって反射し、集束レンズ818は、基板808上の格子構造806の近傍に放射線を収束させる。基板808によって反射された光は、レンズ818によって集光され、ビーム分割器816を通って分光計820に至る。
スペクトル成分が検出され、かかる成分を表す信号が、コンピュータ822に供給されて、コンピュータ822は、上述の方法でオーバレイを算出する。
分光楕円偏光計802では、光源812は、光ファイバケーブル824を通して光りを供給し、光ファイバケーブル824は、偏光をランダム化して、基板808に照射する一様な光源を形成する。ファイバ824を抜けると、放射線は、スリット開口および集束レンズ(図示せず)を備えてよい光照射器826を通り抜ける。照射器826を通り抜けた光は、偏光器828によって偏光され、基板808に照射される偏光サンプリングビーム830を生成する。サンプリングビーム830からの放射線は、基板808で反射されて、解析器832を通って分光器834に至る。反射された放射線のスペクトル成分が検出され、かかる成分を表す信号が、コンピュータ822に供給されて、コンピュータ822は、上述の方法でオーバレイを算出する。
分光楕円偏光計802では、偏光器828または解析器832、もしくは、その両方が、補償器または位相差板としても知られる波長板(図示せず)を備えてもよい。波長板は、2つの偏光の間の相対位相を変更することで、直線偏光を楕円偏光に、または、その逆に変更する。
入射する偏光830とサンプルとの相互作用の情報をさらに収集するためには、光の偏光状態と解析器の偏光感度との一方または両方を変化させることが望ましい。通例、これは、偏光器および/または解析器の中の光学素子を回転させることによって実行される。偏光器または解析器の中の偏光素子が回転されてもよいし、それらの構成要素の少なくとも一方が波長板を備える場合には、波長板が回転されてもよい。回転は、当業者に周知の方法で、コンピュータ822によって制御されてよい。回転する構成要素を用いるとよいが、それにより、システム802が制限を受けることもある。回転する構成要素を用いると時間が掛かる場合があり、可動部分を含むことから、そのような構成要素は、信頼性が低い傾向にある。
したがって、一実施形態によると、偏光器828は、高速で信頼性の高い分光楕円偏光計を実現するために、光弾性変調器(PEM)などの偏光変調器836を備えるよう構成される。偏光変調器は、回転する波長板の代わりに用いられる。偏光変調器836は、回転する波長板と同じ機能を有する光学素子であるが、コストの掛かる速度および信頼性の問題を生じることがない。偏光変調器836は、どの光学要素も機械的に回転させることなく、光の位相を電気的に変調することを可能にする。100kHzほどの高さの変調周波数を容易に実現可能である。
別の実施形態では、解析器832は、電気的に変調可能なPEM(光弾性変調器)などの偏光変調器を備えるよう構成される。さらに別の実施形態では、偏光器と解析器との両方が、PEMなどの偏光変調器を備え、それらの偏光変調器は、異なる周波数で変調される。
偏光変調器836は、かかる高周波数で変調することができるため、それを利用しない場合には非常に低速である様々な技術を実行するために用いられてよい。例えば、2つの構造の偏光反射率の差分が取得されてよい。このために、PEMと音響光変調器(AOM)とを組み合わせて用いてよく、その場合、AOMは、2つの構造の間を高速で移動しつつ、異なる周波数(異なるが、多重または準多重周波数のように、関連する周波数)で偏光状態を変調する。PEMおよびAOMの変調周波数の和および差における信号は、有用な情報を含んでおり、同期検波によって高い信号対雑音比で検出可能である。あるいは、入射ビームに関するAOMは、解析器のPEMと組み合わせて用いられてもよい。
図示していないが、回転する波長板は、偏光感度を有する反射率計のような他の種類の散乱測定システムの偏光変調器に置き換えてもよい。
散乱測定オーバレイデータベース
本発明の一態様は、散乱測定に基づくオーバレイの決定に用いることができる散乱測定オーバレイ情報データベースを提供するものである。
一実施例では、1つもしくは複数のオーバレイ情報ライブラリを含む1つまたは複数のデータベースが提供される。データベース情報は、オーバレイ測定に使用される。
一実施例では、ライブラリは、人為的にオーバレイを導入された所定のテストパターンを使用して作成される。あるいは、ライブラリは、ステッパにプログラムされた層の位置合わせのずれを使用して作成される。別の一実施形態では、導入またはプログラムされたオーバレイは、特定の範囲内で変動する漸進的(プログレッシブ)な特性を有する。
データベースに格納される情報は、テストパターンまたはステッパを介して導入されるとおりにウエハ上に実際にプリントされるオーバレイに関するオーバレイデータを含むことができる。あるいは、この情報は、サンプル上で実際に測定されるオーバレイから得られる。データベースは、さらに、オーバレイデータに関連した散乱測定記録を格納することができる。このような散乱測定記録は、オーバレイデータに対して実際に散乱測定を実施することによって得られる。データベースは、また、材料、プロセス条件、光学パラメータ、および、その他の関連データに関する情報も含むことができる。データベース情報は、補間処理およびその他の予備処理によって、さらなる強化を図ることができる。
散乱測定データベース情報を用いると、実際の測定時に記録された特定の散乱測定値およびプロセス条件に関連した散乱測定データを取り出すことで、オーバレイ測定の精度と速度とを向上させることができる。また、データベースルックアップに基づいて、測定アルゴリズムまたは測定方法を動的に選択することも可能になる。更なる一実施例では、生産ラインにおける測定工程の前または最中に散乱測定オーバレイ測定ツールを較正するためにデータベースを用いる。
散乱測定を実施するための他のシステム
本発明の一実施形態にしたがうと、画像化反射率計、画像化分光反射率計、画像化偏光分光反射率計、走査型反射率計システム、パラレルデータ収集が可能である2以上の反射率計を有するシステム、パラレルデータ収集が可能である2以上の分光反射率計を有するシステム、パラレルデータ収集が可能である2以上の偏光分光反射率計を有するシステム、ウエハステージを動かさずに、もしくはどの光学素子も反射率計ステージも動かさずにシリアルデータ収集が可能である2つまたは3つ以上の偏光分光反射率計を有するシステム、画像化分光計、波長フィルタを有する画像化システム、長(ロングパス)波長フィルタを有する画像化システム、短(ショートパス)波長フィルタを有する画像化システム、波長フィルタを有さない画像化システム、干渉型画像化システム(例えば、カリフォルニア州サンノゼ市のKLA−Tencor社より市販されているKLA−Tencorオーバレイ測定ツールモデル5100,5200,5300,Archer10等に装備されたリンニク顕微鏡)、画像化楕円偏光計、画像化分光楕円偏光計、走査型楕円偏光計システム、パラレルデータ収集が可能である2以上の楕円偏光計を有するシステム、ウエハステージを動かさずに、もしくはどの光学素子も楕円偏光計ステージも動かさずにシリアルデータ収集が可能である2以上の楕円偏光計を有するシステム、マイケルソン干渉計、マッハツェンダ干渉計、およびサニャク干渉計、のうちの任意の一装置、あるいは任意の複数装置の組み合わせを使用して、スペクトルA〜D(および、存在する場合には、さらなるスペクトル)が取得される。
干渉計をベースにした画像化分光計、および例えばフィルタをベースにした方式または「プッシュブルーム(push broom)」等のその他の方式の画像化分光計についてのいくつかの実施形態が、Cabibらによる1998年11月10日付けの米国特許第5,835,214号「METHOD AND APPARATUS FOR SPECTRAL ANALYSIS OF IMAGES」に記載されている。スペクトル画像化を用いた膜厚マッピングのためのシステムおよび方法の実施形態が、Cabibらによる1999年1月5日付けの米国特許第5,856,871号「FILM THICKNESS MAPPING USING INTERFEROMETRIC SPECTRAL IMAGING」に記載されている。LED照明をベースにしたスペクトル画像化のための別の構成が、Adelらによる2000年11月7日付けの米国特許第6,142,629号「SPECTRAL IMAGING USING ILLUMINATION OF PRESELECTED SPECTRAL CONTENT」に記載されている。
本発明の一実施形態にしたがった、4つのターゲットからスペクトルA〜D(および、存在する場合には、さらなるスペクトル)を取得するための画像化分光計または画像化反射率計は、当業者によく知られているフーリエ変換式画像化分光計のタイプであることが可能である。フーリエ変換式画像化分光計のタイプの画像化システムは、複数の異なるターゲット(または複合型散乱測定オーバレイターゲットのなかの複数の区域)から得られた反射光信号または散乱光信号を分離(分解)できることが望ましい。あるいは、散乱測定オーバレイ信号を取得するための画像化分光計または画像化反射率計は、二次元検出器を用いたものであることも可能である。二次元検出器の一方の軸は、複数の異なる散乱測定オーバレイターゲット(または複合型の散乱測定オーバレイターゲットのなかの複数の区域)から得られる空間的な情報を含み、もう一方の軸は、例えばプリズムと格子とを組み合わせてなるシステム等のプリズムシステムまたは回折格子システムによって分光学的に分離された光から得られるスペクトル的に分解された情報を含む。照射される放射線は、ターゲットに入射する前に波長を選択されてよい。
画像化分光計、画像化反射率計、または本発明の様々な実施形態に関連して前掲されたその他の任意のシステムで検出される、4つのターゲットからのスペクトルA〜D(および、存在する場合には、さらなるスペクトル)は、非偏光であってもよいし、または選択的に偏光であってもよい。ターゲットからの反射光や散乱光に含まれる1または複数の偏光成分、もしくは、1または複数の非偏光は、画像化分光計あるいは画像化反射率計を用いて検出することができる。
様々な実施例では、非偏光反射光、散乱測定オーバレイターゲットの一層の主要な対称軸(one major symmetry axis)にほぼ平行な電場を有する偏光、散乱測定オーバレイターゲットの一層の主要な対称軸にほぼ垂直な電場を有する偏光、散乱測定オーバレイターゲットの一層の主要な対称軸に対してある角度を成した電場を有する偏光、右円偏光放射、左円偏光放射、およびこれらの偏光状態の2以上を組み合わせたもの、のうちの1または複数の光信号を、別々にあるいは同時に記録するために、複数の別々の検出システムを用いることができる。また、光源ノイズの監視、光源レベルの制御、および、光源ノイズの減算もしくは正規化、のうちの1または複数を目的として、光源の一部から得られる信号を同時に記録するために、別の検出システムを用いることもできる。
本発明の様々な実施形態について考えうる各種の実施例が、Walter.D.Mieherらによる2003年2月22日付けの同時係属の米国仮特許出願第60/449,496号「METHOD AND SYSTEM FOR DETERMINING OVERLAY ERROR BASED ON SCATTEROMETRY SIGNALS ACQUIRED FROM MULTIPLE OVERLAY MEASUREMENT PATTERNS」に例示されている。
一実施形態では、光学系によって生成される放射線によって、4つのターゲットのそれぞれが照射される。光学系は、とりわけ、光源、レンズ系、集束系、ビーム成形系、および方向付け(ディレクティング)系のうちの1つまたは複数の形態を取ることができる。一実施形態では、ターゲットの少なくとも1つを照射する放射線は、狭めのビーム断面を有する放射ビームの形態に成形される。具体的な一実施例では、ビームは、レーザビームである。ターゲットに照射する放射ビームは、ターゲットを構成する構造と相互に作用し合うことによって、各ターゲットに対応してSA,SB,SC,SDで示される回折放射成分を生成する。一実施形態では、照射ビームは、分光偏光解析でよく使用される広スペクトル域の広帯域偏光ビームである。
散乱測定オーバレイ技術の別の実施形態:
いくつかの関連技術が、前掲された関連の同時係属の米国仮特許出願に記載されている。これらの関連技術は、本明細書に記載される技術と容易に統合可能である。
本発明の一実施形態では、信号を同時に取得可能にするために、上記のように異なるオフセット+/−Fおよび+/−f0、もしくは異なるオフセット+/−Fをプログラムされた複数のターゲット(または複合型散乱測定ターゲットの複数の区域)、または、その他の類似のターゲットの組み合わせをグループ化する。一実施例では、複数のターゲットを一列に並べることによって、ウエハまたは光学素子の全部もしくは一部を散乱測定オーバレイターゲット配列に沿って一方向に走査しながらデータを取得できるようにする。ターゲットを線形配列に並べれば、画像化分光計または画像化反射率計の使用が可能になる。この画像化分光計または画像化反射率計は、複数の異なるターゲット(またはターゲット区域)からの信号を検出器の一方の軸で分離し、スペクトル情報を検出器のもう一方の軸で検出するものである。この場合の画像化システムは、線形ターゲット配列の線画像または円筒画像をプリズムシステムまたは格子システムのなかで画像化する。画像化分光計または画像化反射率計は、複数の異なるターゲットまたは複数の異なるターゲット区域からの反射光もしくは散乱光を分離して尚かつ方向付けるために、2以上のレンズのアレイ(当業者には小型レンズ配列として知られる)を含むことができる。
一実施形態では、オーバレイ誤差に対する感度を高めるまたは最大化するために、主要オフセットFの最適化が行われる。例えば、ターゲットのピッチの1/4に等しく設定されたオフセットFは、オーバレイ誤差に対する感度が最小である2つの対称点の中間なので、高いオーバレイ感度を提供することができる。補助的オフセットf0は、例えば規格限界に等しいまたは規格(スペシフィケーション)限界を超えるなどオーバレイ測定の対象領域外になるように選択可能である。しかしながら、規格外の測定を規格内のものとして解釈しうる誤差を許容するような不確定性をオーバレイ測定に持ち込むことは望ましくない。にもかかわらず、これは、f0範囲に対する制限にはならない。オーバレイ誤差Eが−f0と+f0との間にある場合は、大きく設定されたf0によってオーバレイ測定の精度が低下する可能性がある。オーバレイ誤差が|f0|より大きい場合は、−f0から+f0までの範囲を超える外挿によってオーバレイ測定の精度が低下する可能性があり、さらには、線形近似の精度も低下する可能性がある。
オーバレイ測定は、ステッパフィールドの四隅または四隅の近くで実施される(フィールドの中心近くで追加測定が実施される場合もある)のが最も一般的である。これは、半導体製造プロセスにおいて、ウエハごとに5〜25フィールドの割合で実施される。X方向にオーバレイを決定するために4つのターゲットが用いられ、Y方向にオーバレイを決定するために4つのターゲットが用いられる、本発明の一実施形態にしたがったシステムでは、通常のオーバレイ測定抜き取り(サンプリング)方式に基づいて二次元オーバレイを決定するために、合計で8×4×5=160回にわたって散乱測定オーバレイターゲットを測定する。より詳細な抜き取り方式の場合は、さらに追加の測定を実施する。
本発明の別の一実施形態にしたがうと、サンプルの二次元オーバレイを決定するために、合計で6つのターゲット(例えばX方向に3つ、Y方向に3つ)を使用することができる。これは、オーバレイ測定プロセスの単純化、処理リソースの低減、および測定プロセスに費やされる時間の短縮をさらに促進することができる。さらに他の実施例では、サンプル上にターゲットまたはターゲット対を追加で設けることができる。そして、それらを、本明細書で説明された散乱測定に基づくオーバレイ決定法とほぼ同じ方法で、ただしターゲット数の増加とそれに対応する回折放射成分の増加とを考慮して調整した方法で処理することができる。また、オーバレイ誤差Eを決定するための数学的方法も、このようなターゲットまたはターゲット対の追加によってもたらされる追加情報の有効性を活用できるように同様に調整することができる。例えば、さらに高次の近似項をオーバレイ誤差Eの算出式に組み入れる等の調整が可能である。
再フォーカスを制限された、散乱測定に基づくオーバレイ決定
散乱測定に基づくオーバレイ決定の精度を向上させるためには、2回以上の測定を実施することが好ましい。一実施例は、複数の散乱測定オーバレイターゲットを利用するもので、各ターゲットは、システムによって1回ずつオーバレイを散乱測定される。別の一実施例は、1つの散乱測定ターゲット、または複数のターゲット小範囲を有する1つの散乱測定ターゲット領域を利用するもので、そのターゲットまたはターゲット領域では、散乱測定に基づくオーバレイ測定が2回以上実施される。さらに別の一実施形態では、複数のターゲットまたは複数のターゲット領域が使用され、その複数のターゲットまたは複数のターゲット領域の一部もしくは全部に対して2回以上の測定が実施される。
従来は、測定ごとに光学系の再フォーカスを行っていた。しかしながら、これは、多くの時間を費やすので、システムの処理速度を低下させる原因となる。例えば、各フォーカス手順が0.1〜1秒の時間を費やし、各ウエハが30〜70の区画を含み、各区画が8つのターゲットからなる場合を考える。これらの数を使用すると、再フォーカスは、ウエハごとに560秒間もの時間を費やすことになる。通常100〜1000枚のウエハが検査されることを考慮すると、この数字はさらに増大し、完全に許容不能なレベルに達すると考えられる。
したがって、本発明の一実施形態にしたがうと、システムの処理速度およびスループットを向上させるために光学的再フォーカスを制限したうえで、散乱測定に基づくオーバレイ測定を複数回にわたって実施する。光学的再フォーカスを制限するというのは、概して、光学系の再フォーカスを経ることなく少なくとも何回かの新しい測定が実施される、すなわち、同一のフォーカス設定で複数回の測定が実施されることを意味する。例えば、実施予定の複数回の散乱測定用に最適化されたフォーカス設定を有するように光学系を初期化して、これらの各散乱測定中はこれ以上の再フォーカスが行われないようにすることができる。最適化されたフォーカス設定は、ウエハ全体について一度に定められてもよいし、または定期的に定められてもよい。定期的に定められる場合は、例えば、検査期間中の所定の時間増分(例えば30秒)ごと、ウエハ上の特定の位置(例えばウエハ上の2×2cm2の面積)ごと、またはターゲットの有する特定の特性(例えば類似の線幅および間隔)ごとにフォーカス設定を定めることできる。
一実施形態では、ウエハは、複数のフォーカスゾーンを含む。各フォーカスゾーンは、そのフォーカスゾーン内で実施予定の全ての散乱測定用に最適化されたフォーカス設定を有するように初期化される。フォーカスゾーン内では、個々の散乱測定間で再フォーカスが行われることはなく、したがって、フォーカスゾーン内の各ターゲットは、最適化された同一のフォーカス設定で測定される。使用されるフォーカスゾーンの数は任意である。
フォーカスゾーンの構成は、様々に可変である。一実施例では、フォーカスゾーンは、ウエハの一部に対応する。例えば、ウエハは、ウエハの中心から発して外向きに広がる複数の放射状のフォーカスゾーンに分割されてもよいし、またはウエハを複数の四分円に分ける複数の角度状のフォーカスゾーンに分割されてもよい。別の一実施例では、フォーカスゾーンは、例えば各半導体素子の隅に位置するターゲット等の特定のひとそろいのターゲットに対応する。別の一実施例では、フォーカスゾーンは、複数のターゲットを含む特定のターゲット領域(例えば図9Aを参照せよ)に対応する。別の一実施例では、フォーカスゾーンは、ターゲット領域内の特定のターゲット小範囲(例えば図9Bに示されたX方向のターゲット群またはY方向のターゲット群)に対応する。さらに別の一実施例では、フォーカスゾーンは、ターゲットそれ自体の中の特定の小範囲に対応する。
次に、オーバレイを決定する方法について説明する。方法は、概して、第1のゾーンのフォーカス設定を最適化する工程を含む。方法は、また、第1のゾーン内の複数のターゲットに対して第1の一連の測定を実施する工程を含む。第1のゾーン内の各ターゲットは、最適化された第1のゾーン用のフォーカス設定を使用して測定される。すなわち、第1のターゲットが測定された後、光学系の再フォーカスを経ることなく第2のターゲットが測定される。このようにして、任意の数のターゲットを測定することができる。方法は、さらに、第2のゾーンのフォーカス設定を最適化する工程を含む。方法は、また、第2のゾーン内の複数のターゲットに対して第2の一連の測定を実施する工程を含む。第2のゾーン内の各ターゲットは、最適化された第2のゾーン用のフォーカス設定を使用して測定される。すなわち、第1のターゲットが測定された後、光学システムの再フォーカスを経ることなく第2のターゲットが測定される。このようにして、任意の数のターゲットを測定することができる。
この方法の一例では、第1のゾーンおよび第2のゾーンは、複数のターゲットを含む互いに異なるターゲット領域であってよい(図9Aを参照せよ)。この例では、各ターゲットは互いに近接しており、したがって、各ターゲットと次のターゲットとの間のフォーカス変動は微小であると仮定することができる。方法は、概して、ターゲット領域におけるフォーカス設定を最適化する工程と、その後に、最適化されたフォーカス設定を用いてターゲット領域内の各ターゲットを測定する工程とを含む。例えば、第1のターゲットの測定後は、隣のターゲット、そしてさらにその隣へと、光学システムを一度も再フォーカスすることなく測定が行われる。第1のターゲット領域の測定後、システムは、例えば、そのデバイスの別の隅に位置するターゲット領域等の第2のターゲット領域上で、これらの工程を繰り返すことができる。
この方法の別の例では、第1のゾーンおよび第2のゾーンは、複数のターゲットを含むターゲット領域を備えた小範囲であってよい。これらの小範囲は、例えば、異なるターゲット方向を表すことができる(図9Bを参照せよ)。方法は、概して、第1の小範囲(例えばX軸に沿ったターゲット)におけるフォーカス設定を最適化する工程と、その後に、最適化されたフォーカス設定を用いて小範囲内の各ターゲットを測定する工程とを含む。例えば、第1のターゲットの測定後は、隣のターゲット、そしてさらにその隣へと、光学系を一度も再フォーカスすることなく測定が行われる。第1の小範囲の測定後は、第2の小範囲(例えばY軸に沿ったターゲット)におけるフォーカス設定を最適化し、その後、最適化されたフォーカス設定を用いて小範囲内の各ターゲットを測定することによって、方法が継続される。例えば、第1のターゲットの測定後は、隣のターゲット、そしてさらにその隣のターゲットへと、光学系を一度も再フォーカスすることなく測定が行われる。別の例では、光学系は、XY散乱測定オーバレイターゲット群の第1の散乱測定オーバレイターゲットの測定に先だって再フォーカスされる。XY散乱測定オーバレイターゲット群の第1のターゲットについて散乱測定信号が測定された後は、残りのターゲットも、再フォーカスを経ることなく測定することができる。XY散乱測定オーバレイターゲット群は、例えば、X方向へのオーバレイ誤差決定のために4つの散乱測定オーバレイターゲットを有し、Y方向へのオーバレイ誤差決定のために4つの散乱測定オーバレイターゲットを有するターゲット群である。
線画像を用いた、散乱測定に基づくオーバレイ決定
線画像を用いて散乱測定に基づくオーバレイ測定を行うためのシステムも構築される。
一実施形態では、散乱測定ターゲットは、単一の入射ラインに沿って照射される。散乱線は、プリズムまたは回折格子等の分散系に捕らえられる。散乱線は、こうして、波長の関数の形で分散される。分散された放射線は、次いで、CCDカメラ等の検出器によって捕らえられる。もしカメラが適切に調整されているならば、視野に入る放射線は、入射ラインに沿った各点を視野のX軸に沿って分布させ、様々な波長をY軸に沿って分布させた二次元プロファイルを有する。入射ラインおよび視野の一例が、図10に示されている。
カメラによって捕らえられた画像は、次いで、オーバレイを決定するために、画素レベルで処理することができる。これは、もし可能ならば、本明細書で開示されたFTアプローチを使用して行うことができる。特定の入射ラインに沿ってオーバレイを測定した後は、異なる方向にオーバレイを測定するために、ウエハを90度(または任意の角度)回転させることができる。本発明の利点は、単一の光学システムを使用して二方向以上にオーバレイを測定できることにある。
単一の入射ラインを照射する別の一形態は、より大きい面積を照射しつつ、検出線に沿った散乱放射のみを捕らえる形態である。以上に記載された説明は、適切な変更を加えたうえで、この実施形態にも適用することができる。
アルゴリズム
散乱測定に基づくオーバレイ測定を、より効果的に且つ正確に実施するために、各種のアルゴリズムおよび方法が用いられる。
このような計算を実施するための旧方法は、オーバレイを計算するためにモデルベース法またはディフェレンシャル法を使用している。しかしながら、これらの従来の方法は、結果の精密化およびクロスチェックのために複数のアルゴリズムを組み合わせた場合に得られる正確さに欠ける。また、これらの方法は、(CDまたはプロファイルデータ等の)既存の情報をうまく活用することができない。
アルゴリズムの一般的な一実施例では、オーバレイは、異なる製品パラメータを個別に複数回にわたって計算して得られるデータを使用して決定される。
第1の実施形態では、第1の技術(例えばディフェレンシャル法)にしたがって、オーバレイの第1の計算が実施される。次いで、第2の技術(例えばモデルベース回帰)にしたがって、オーバレイの第2の計算が実施される。次いで、これら二種類の計算から得られた結果が組み合わされる。これらの結果は、様々に組み合わせ可能である。例えば、一方の計算を、他方の計算のクロスチェックに使用することができる。あるいは、一方の計算を、他方の計算を加速させるための初期値を提供するために使用することができる。その他の組み合わせ方も可能である。
第2の実施形態では、その他の測定データを活用することによって、オーバレイ測定の速度、精度、またはその両方を向上させる。例えば、ターゲットを構成する複数の層から得られた膜厚データをアルゴリズムに供給する。このような膜厚データは、楕円偏光計または反射率計等の適切なツールを使用して測定することができる。代わりに(または追加として)、SCD測定(散乱測定に基づく限界寸法(scatterometry critical dimension)または散乱測定に基づくプロファイルの測定)からCDデータを得て、それを、散乱測定に基づく計算を加速させるまたは散乱測定に基づく計算の精度を向上させるために使用することもできる。また、散乱測定に基づくプロファイル測定から得られた例えば高さまたは三次元プロファイル情報等のその他のデータも、同様に使用することができる。CD SEM等のその他のCDデータ供給源も使用することができる。
散乱測定ターゲットと画像化ターゲットとの結合
別の一実施例では、ターゲットは、上述された散乱測定に基づく解析はもちろんのこと、画像化に基づくオーバレイ測定の用途にも使用できるように設計されている。言い換えると、画像化に基づくオーバレイ測定と併せて散乱測定を実施できるように、散乱測定ターゲット構造と画像化ターゲット構造とがかたく統合されている。散乱測定用のターゲット対は、好ましくは、視野の中心を挟んで対称的に配置される。もし画像化システムの照射経路内および収集経路内で対称性が維持されるならば、ツールによって導入されるシフトは最小になる。例えば、XaとXa’とは(大きさが同様で符号が逆)、X方向に対をなすターゲットである(ここで、XaとXa’とは図1のXaとXdとに対応しうる)。同様に、XbとXb’とも相対している(ここで、XbとXb’とは図1のXbとXcとに対応しうる)。Y方向では、YaとYa’とが相対するとともに、YbとYb’とが相対している。
図11Aは、第1の組み合わせの画像化および散乱測定両用ターゲットの実施形態を示す上面図である。この例では、ターゲット構成は、散乱測定を使用してオーバレイを決定するための4つのX方向ターゲットからなるセットと、散乱測定を使用してオーバレイを決定するための4つのY方向ターゲットからなるセットとを含む。これらのターゲットは、(オーバレイ測定の方向に)隣り合うターゲットどうしが反対のオフセットを有するように配置される。図に示された例では、ターゲットXaはターゲットXa’と反対のオフセットを有し、ターゲットXbはターゲットXb’と反対のオフセットを有する。同様に、ターゲットYaはターゲットYa’と反対のオフセットを有し、ターゲットYbはターゲットYb’と反対のオフセットを有する。この例で用いられるターゲットは、画像化に基づくオーバレイ決定に使用できる構成も含んでいる。
図示された例では、ターゲット構成は、第1の層上に黒色の枠構造1104を、第2の層上に灰色の十字構造1102を、それぞれ含んでいる。画像解析法を使用する場合は、黒色構造1104の中心を灰色構造1102の中心と比較することによってオーバレイ誤差(もしあるならば)を決定すればよい。
このターゲットのセットは、全体として、Y方向よりもX方向に長く延びる長方形を構成している。しかしながら、これらのターゲットは、その他の形状(例えば四角形または対称的な任意の多角形)を構成してもよいし、X方向以外の方向に長く延びてもよいし、またはその両方であってもよい。
その他の複合型ターゲット構成では、画像化用の構造は、対称的に配置されたひとそろえの散乱測定ターゲットの中心に配される。図11Bは、第2の組み合わせの画像化および散乱測定両用ターゲットの実施形態を示す上面図である。図に示されるように、散乱測定ターゲットは、中央の画像タイプのターゲット152の周りに対称的に配される。この例では、画像タイプのターゲット1152は、X方向またはY方向にそれぞれ延びる四分円形(クアドラント)の線分で形成される。適切な画像タイプのターゲット、およびそれらを用いてオーバレイを決定するための技術が、(1)Bareketによる2002年10月8日付けの米国特許第6,462,818「OVERLAY ALIGNMENT MARK DESIGN」、(2)Bareketによる2000年2月8日付けの米国特許第6,023,338号「OVERLAY ALIGNMENT MEASUREMENT OF WAFER」、(3)Ghinovkerらによる2001年6月27日付けの米国特許出願09/894,987「OVERLAY MARKS, METHODS OF OVERLAY MARK DESIGN AND METHODS OF OVERLAY MEASUREMENTS」、ならびに(4)Levyらによる2002年11月26日付けの米国特許第6,486,954号「OVERLAY ALIGNMENT MEASUREMENT MARK」に記載されている。
図11Cは、第3の組み合わせの画像化および散乱測定両用ターゲットの実施形態を示す上面図である。このターゲット構成は、入れ子(ボックス・イン・ボックス)タイプのターゲット1154の周りに対称的に散乱測定ターゲットを配されている。入れ子タイプのターゲットは、一般に、第1の層で形成された第1の内箱を、第2の層に形成された第2の外箱構造で取り囲まれている。オーバレイ誤差(もしあるならば)を決定するためには、内箱構造の中心を外箱構造の中心と比較すればよい。
上記のターゲットは、オーバレイを決定するために、任意の適切な方法で(例えば、Bareket、Ghinovkerら、およびLevyらによる上記の特許および特許出願に記載されたように)画像化することができる。ターゲット構成は、また、散乱測定技術を使用してオーバレイを決定するために、本明細書に記載された任意の望ましい光学ツールで同時にまたは順次に測定することもできる。別の一実施形態では、散乱測定ターゲットを、画像タイプのターゲット構造と同時に画像化することができる。得られた画像は、個々の散乱測定ターゲットに分割され、次いで、各ターゲットについての画像信号(例えば強度)に散乱測定技術が適用される。画像は、散乱測定に基づくオーバレイ測定と同時に、または散乱測定に基づくオーバレイ測定の前、または散乱測定に基づくオーバレイ測定の後に取得することができる。画像化システムは、カリフォルニア州サンノゼ市のKLA−Tencor社より市販されているKLA−Tencor5300のシステムまたはArcherオーバレイ測定システム等の高解像度顕微鏡でよい。あるいは、画像化システムは、ウエハの位置決めまたはパターンの認識を含むその他の目的に使用される低解像度の画像化システムでもよい。
インプリントリソグラフィにおけるマスクの位置決め
ナノインプリントリソグラフィにおいて、マスクおよびサンプルは、(重合予定の流体によって隔てられた状態で)互いに近接しているのが通常であるので、パターニングされたマスク表面、流体、および位置決め先であるパターニングされたサンプルは、散乱測定オーバレイターゲットと機能的に等しいものと見なされる。これにより、散乱測定オーバレイのために定められた全ての方法、技術、およびターゲットを位置決め手順に適用することができる。
一実施形態では、測定機器は、マスクを通して放射線(好ましくは光)を投写して、マスクの一領域を、そして、1つまたは複数の散乱測定オーバレイターゲットを含むウエハを照射する。次いで、マスク上のパターンとウエハ上のパターンとの間のオフセットを決定するために、散乱または回折に起因する反射光特性の変化が使用される。ウエハは、次いで、所望のオフセットを実現するために、マスクに対して相対移動される(または逆も可)。こうすれば、直接的画像化またはモアレ技術等の従来の位置決め技術と比べてより正確な位置決めを実現することができる。測定機器は、反射率計、偏光反射率計、分光計、画像化反射率計、画像化干渉計、または本明細書もしくは上記の仮出願に記載されたその他の類似機器でよい。
散乱測定オーバレイターゲットの配置
散乱測定オーバレイシステムの精度は、対象表面上に分布させた複数のターゲットで測定を行うことによって向上させることができる。一実施例では、散乱測定オーバレイシステムは、対象表面上の様々な位置にある複数の散乱測定ターゲットを使用する。そして、各ターゲットについて、散乱測定に基づくオーバレイ測定を一度だけ実施する。別の一実施例では、散乱測定オーバレイシステムは、対象表面上の様々な位置にある複数の散乱測定ターゲット領域を使用する。これらの各散乱測定ターゲット領域は、散乱測定オーバレイシステムによってそれぞれ測定可能な複数のターゲットを有する。例えば、散乱測定ターゲットまたは散乱測定ターゲット領域は、ウエハ上に形成される1つまたは複数の素子の隅に配置される。また、散乱測定ターゲットは、一般に、散乱測定オーバレイシステムによって測定可能な格子構造を含むことができる。
ターゲットの数は、一般に、対象表面上の利用可能スペースに依存する。大抵の場合は、ターゲットは、ウエハ上の素子と素子との間のスクライブライン内に配置される。スクライブラインとは、ソーイングまたはダイスカットによってウエハを個々のダイに分割するためのウエハ上の場所である。したがって、この線上に回路自体がパターニングされることはない。このような場合は、ターゲットの数は、少なくとも部分的に、スクライブラインの狭さゆえの制約を受ける。ウエハ上の素子の数を最多にしようとすると、スクライブラインは当然狭くなる傾向がある。
本発明の一実施形態にしたがうと、ターゲット数を増加させつつあらゆる空間的制約を克服できるように、ターゲットを対象表面上に戦略的に配置する。一実施例では、少なくとも2つのターゲットを第1の方向にほぼ同一線上に配置する。例えば、少なくとも2つのターゲットをX方向またはY方向にほぼ同一線上に配置する。この構成は、例えばスクライブラインのようなスペースの狭さの問題に直面した場合に有用である。別の一実施例では、複数のターゲットを複数の方向に同一線上に配置する。例えば、複数のターゲットをX方向およびY方向の両方向に同一線上に配置する。この構成は、例えば2本のスクライブラインが交わるところのような素子の隅に対して有用である。
以上に挙げられた例は、対象表面上に直交座標を定めた場合を扱っているが、座標系は、X軸とY軸とを回転させたり置き換えたりして対象表面上で任意に方向付けることが可能である。直交座標の代わりに、または直交座標と組み合わせて、例えば極座標系などのその他の座標系を用いることもできる。
図9Aは、本発明の一実施形態にしたがった、1つまたは複数のターゲット902を有する散乱測定ターゲット領域900の上面図である。散乱測定ターゲット902は、一般に、基板の2枚または3枚以上の連続する層間の相対的シフト、または基板の一層上に個別に形成された2以上のパターン間の相対的シフトを決定する目的で用意される。例えば、散乱測定ターゲットは、第1の層がその上もしくはその下の第2の層とどれだけ正確に位置決めされているか、または第1のパターンが同一層上の先行するもしくは後続する第2のパターンとどれだけ正確に位置決めされているかを決定するために用いることができる。
図9Aに示されるように、散乱測定ターゲット領域900は、少なくとも2つのほぼ同一線上のターゲット902を含む。同一線上とは、概して、各ターゲット902の対称中心が同一軸904上に位置することを意味する。例えば、軸904は、従来の座標系(直交座標、極座標等)またはその変形に対して位置決めされる。したがって、ターゲット902を同一線上に配置すると、散乱測定ターゲット領域900は、それほど幅Wを取らなくなるので、したがって、例えばウエハのスクライブライン内のように限られた広さの場所にも配置できるようになる。
ターゲット902は、軸904に沿って並置されるのが一般的である。並置されたターゲット902は、大抵は互いから空間的に隔てられているので、隣のターゲット902と部分的に重なり合うことはない。したがって、各ターゲット902は明確に区別される、すなわち、基板上の異なる領域をそれぞれ表している。これは、一般に、各ターゲット902の正確な測定を保証するためである。ターゲット902間の間隔906は、光学信号に歪みを生じさせるので、オーバレイの計算から除外される。間隔906の大きさは、オーバレイ測定に対してできるだけ多くの情報を提供しうるように、ターゲット902の大きさとの兼ね合いで定められるのが通常である。すなわち、一般には、ターゲット902はより大きく、それらの間の間隔906はより小さいことが望ましい。ターゲット902間の間隔906は、除外ゾーンと称することができる。
ターゲット902は、様々に可変であり、一般に、散乱測定を介して測定可能な任意のオーバレイターゲットに対応することができる。例えば、ターゲット902は、一般に、平行セグメント線910を有する1つまたは複数の格子構造908を含むことができる。必ずしも必要条件ではないが、同一線上のターゲット902のセグメント線910は、軸904に平行するまたは直角する同一の方向に配されるのが通常である。セグメント線910は、大抵の場合は、X方向およびY方向へのオーバレイ測定を可能にするために、軸904に垂直なものと軸904に平行なものとを含んでいる。さらに、ターゲット902は、同一の構成を有してもよいし、または異なる構成を有してもよい。構成とは、例えば、ターゲット902の全体の形状および大きさ、あるいはことによると、ターゲット902内に含まれる格子構造に関連したセグメント線910の線幅および間隔を含む。例えばX方向等の特定方向へのオーバレイ測定に使用されるターゲットは、プログラムされたまたは設計されたオーバレイオフセットを除いて同じ構成を有するように設計されることが好ましい。
ターゲット数も、様々に可変である。ターゲット数の増加は、データ収集点の数を増加させるので、したがって、測定の精度を向上させる。ターゲット902の数は、一般に、ターゲット902の全体の大きさと、軸904の方向における広さの制約とに依存する。例示された実施形態では、散乱測定ターゲット領域900内に、8つのターゲット902が並置されている。散乱測定ターゲット領域は、上述されたように、XY散乱測定オーバレイターゲット群と同等であることが可能である。
上記のターゲット902を使用すれば、例えば膜厚等のその他のサンプルパラメータの変動による影響を排除しつつ、一度に1つのターゲットに対して散乱測定に基づくオーバレイ測定を順次実行することができる。これは、散乱測定ターゲット領域(例えばターゲットおよびそれらの間のスペースを含む)を連続的に走査することによってまたは各ターゲットを段階的に走査(ステッピング)することによって実現することができる。あるいは、スループットを増大させるために、2つ、3つ以上、または全部のターゲットに対して2以上の散乱測定用信号ビームをほぼ同時に使用して測定を行うことも可能である。複数の散乱測定用信号ビームは、実質的に独立した2つ以上の散乱測定光学システムから発せられてもよいし、また、それらのシステムは、例えば、同じ光源、同じビーム方向付け素子、もしくは同じ検出システム等の光学システムの大半を共有してもよい。
上記の方法は、各ターゲットの対称中心をほぼ同一線上に配しているが、これらの対称中心は、ターゲットの可測部分が同一軸上に位置する範囲内であれば、軸から外されることも可能である。
さらに、上記の方法は、同様な向きのターゲットを同一軸に沿って配しているが、ターゲットの一部を異なる向きに配置することも可能である。例えば、第1群のターゲット902のセグメント線をx次元に配置する一方で、第2群のターゲット902のセグメント線をy次元に配置することが可能である。
さらに、ターゲット902は、単一の軸904のみに沿った状態が図示されているが、これらのターゲットは、複数の軸上に配することも可能である。例えば、図9Bに示されるように、第1のターゲット群902Aを第1の軸904Aに沿って同一線上に並べ、第2のターゲット群902Bを第2の軸904Bに沿って同一線上に並べることが可能である。この実施例では、独立したオーバレイ測定を少なくとも二方向で実施することができる。第1および第2の軸は、通常は、互いを横切るように、より具体的には互いに直角であるように配される。例示された実施形態では、第1の軸904Aがx次元に対応し、第2の軸904Bがy次元に対応する。さらに、各群は、4つのターゲット904からなる。この実施例では、独立したオーバレイ測定をxおよびy方向で実施することができる。
さらに、これらのターゲットは、ほぼ一方向の形状(例えばセグメント線)を有するものとして説明されてきたが、二方向以上の形状を含むことももちろん可能である。例えば一実施例では、散乱測定に基づくオーバレイ測定を第1の方向および第2の方向に実施可能にするような形状を、同一線上に配置された1つまたは複数のターゲットに含ませることができる。例えば、セグメント線等の形状を、xおよびy次元の両方に配置することができる。この場合は、図9Bのように2つ以上の軸に沿ってターゲットを配置する必要性が軽減されるまたは排除される。すなわち、もしターゲットの有する形状が二次元の散乱測定を可能にするものならば、単一軸に沿ってほぼ同一線上に配置されたひとそろいのターゲットを使用するだけで、X軸およびY軸の両方に沿ってオーバレイを決定することができる。あるいは、1つまたはそれ以上のターゲットに、1つまたはそれ以上の下位(サブ)ターゲットを含ませることもできる。もしサブターゲットの有する形状が二次元の散乱測定を可能にするものならば、特定の測定精度を実現するために必要とされるターゲットの数を減らして、それらのターゲットを単一の線に沿って配置することができる。
また、2つ以上のパラメータを測定するために、1つまたは複数の軸に沿って配置されたターゲットを用いることができる。例えば、X軸に沿った波長の散乱測定するために第1のターゲット群を用いるとともに、空間分解能をY軸に沿って散乱測定するために第2のターゲット群を用いることができる。あるいは、別の一実施例では、X軸に沿って空間分解能の散乱測定を実施する一方で、Y軸に沿ってスペクトル測定を実施することができる。
CDおよびオーバレイ両用のマーク
散乱測定ターゲットは、CDおよびオーバレイの両方を測定するために、ウエハ上のかなりの面積を消費する。このウエハ上の面積は、設計基準の縮小にともなって、ますます貴重さを増している。現在のところ、散乱測定オーバレイマークは、ウエハ上の各XY散乱測定オーバレイターゲット群について、すなわち各マークについて、35×70μmを超えるスペースを消費する。これらはオーバレイ測定でのみ使用されるので、メーカーらは、このようなウエハのスペース損失を望ましくないものと考えている。したがって、測定用のターゲット、すなわち測定用の形状に必要とされるウエハの合計面積を低減させることが望まれている。しかしながら、光学系の設計を変更することによって、より小さいターゲットの測定を可能にしようとすると、光学系の複雑度を増大させ、測定の性能を損なう可能性がある。本明細書で説明される、散乱測定に基づくオーバレイ測定では、ターゲット領域は、軸(XおよびY)ごとに4つの格子で構成されるのが通常である。これらの各格子は、15×15μmより大きいのが通常であり、従来の技術では、これ以上の縮小はあまり見込めない。各格子は、第1層の格子(例えばSTI)と上層の格子(例えばゲート)とからなる。これら二層の各層は、オフセットをプログラムされている。このオフセットは、上層格子のピッチ未満であるのが通常である。上層は、大抵はフォトレジストである。オーバレイ測定は、各格子からの反射光のスペクトルを解析することによって実現される。
散乱測定に基づく限界寸法(CD)の測定では、ターゲット領域は、いずれかの軸(XまたはY)に沿って配置可能な単一の格子で構成されるのが通常である。ターゲット領域は、場合によっては、各軸(XおよびY)について複数の格子を含むことも可能である。これらの各格子は、通常は、約50×60μmである。測定は、一般に、下にパターンを有さない単一プロセス層のターゲット上で実施される。この測定は、リソグラフィによるパターン形成プロセスのレジスト成長に続いて、またはその他の製造モジュールのエッチングプロセスもしくはCMPプロセスに続いて、フォトレジストパターンに対して実施されるのが通常である。CD測定は、Xuらによる前掲の米国特許第6,590,656号に記載されるように、格子からの反射光のスペクトルを解析することによって実現される。
本発明の一実施形態にしたがうと、ウエハ上の使用空間を節約して、ウエハのスクライブラインに影響を及ぼすことなくより大きな散乱測定オーバレイマークをプリントできるように、散乱測定用のCDマークと散乱測定のオーバレイマークとを結合する。結合されたマークは、第1層としての散乱測定CDターゲットと、上層としての散乱測定オーバレイターゲットパターンとで構成される。これは、散乱測定に基づくオーバレイ測定のために追加で割り当てられるスクライブラインのスペースをゼロにする、または最小に抑えることができる。
図12は、本発明の一実施形態にしたがった結合型マーク1200の説明図である。結合型マーク1200を使用すれば、ウエハ製造プロセス中の複数の異なる工程で、散乱測定に基づくCD測定と、散乱測定に基づくオーバレイ測定との両方を実施することが可能になる。結合型マーク1200は、ウエハの少なくとも二層の上に、すなわち具体的には第1の層L1および上層L2の上に形成される。第1の層L1は、散乱測定CD/プロファイルターゲット1202を含み、上層L2は、散乱測定オーバレイターゲット1204を含む。図では別々の層として示されているが、散乱測定オーバレイターゲット1204は、散乱測定CD/プロファイルターゲット1202の上(上方)に構築される。散乱測定CD/プロファイルターゲット1202は、L1散乱測定CDマークを構成する。これは、L1パターン形成後に、すなわちL1パターン処理後に、CDを決定する目的で測定することができる。散乱測定オーバレイターゲット1204は、散乱測定CD/プロファイルターゲット1202とともにL2−L1散乱測定オーバレイマークを構成する。これは、(L1パターン形成後にくる)L2パターン形成後に、層間のオーバレイを決定する目的で測定することができる。容易に明らかなように、この方法は、繰り返し実施することができ、そうして、第2の層L2に散乱測定CD/プロファイルターゲットを形成し、次いで第3の層L3にパターンを形成し、L3−L2散乱測定オーバレイマークすなわちL3−L2ターゲット領域を作成することができる。
散乱測定CD/プロファイルターゲット1202および散乱測定オーバレイターゲット1204の構成は、様々に可変である。例示された実施形態において、L1上に配された散乱測定CD/プロファイルターゲット1202は、第1の方向を向く第1の格子1206と、第2の方向を向く第2の格子1208とを含む。第1の方向は、第2の方向に直交する。例えば、第1の格子1206は垂直線を含むのに対し、第2の格子1208は水平線を含むことができる。また、L2上に配された散乱測定オーバレイターゲット1204は、第1の格子群1210と、第2の格子群1212とを含む。第1の格子群1210および第2の格子群1212は、それぞれ1つまたは複数の格子1214を含む。格子1214の数は、様々に可変である。一実施例では、第1の格子群1210および第2の格子群1212は、それぞれ4つの格子1214を含む。第1の格子群1210の格子1214Aは第1の方向を向き、第2の格子群1212の格子1214Bは第2の方向を向いている。例えば、第1の格子群1210の格子1214Aは垂直線を含むのに対し、第2の格子群1212の格子1214Bは水平線を含むことができる。
L2−L1オーバレイマークを作成するために、第1の格子群1210は、CD/プロファイルターゲット1202の第1の格子1206の上方に配置され、第2の格子群1212は、CD/プロファイルターゲット1202の第2の格子1208の上方に配置される。これは、同じ向きの線を持つ格子どうしを合わせて、すなわち、垂直線を垂直線に、水平線を水平線に合わせて配置する。第1の格子群1210はCD/プロファイルターゲット1202の第1の格子1206と、第2の格子群1212はCD/プロファイルターゲット1202の第2の格子1208とそれぞれ連携しあう。これらの層間の位置決めは、連携しあうこれらの構造の対応線間に生じるシフトによって決定される。例えば、Xオーバレイの決定には垂直線を、Yオーバレイの決定には水平線をそれぞれ使用することができる。
CDマークの第1および第2の格子1206,1208は、合わされた状態で図示されているが、これらは、離して配置することも可能である。離して配置される場合は、第1の格子群1210および第2の格子群1212も離して配置される。すなわち、第1の格子群1210は第1の格子1206に、第2の格子群1212は第2の格子1208にそれぞれ付随する。
オーバレイマークとCDマークとを結合することによって、多くの利点を得られる。各種の実施形態または実施例は、以下に挙げる利点のうちの1つまたはそれ以上の利点を有する。マークを結合することによる利点の1つは、散乱測定オーバレイターゲットのために追加で必要とされるウエハのスペースを減らせることにある。もう1つの利点は、もし追加のスクライブラインのためのスペースがそれほど必要でなければ、散乱測定オーバレイターゲットをより大きく設定できることにある。より大きな散乱測定オーバレイターゲットを用いれば、より小さい散乱測定オーバレイターゲットを用いる場合と比べて、光学設計または光学素子製造を容易にすることができ、且つ、散乱測定に基づくオーバレイ測定の性能を向上させることができる。
散乱測定オーバレイとCDSEMとの結合
本実施形態の目的は、電子顕微鏡(CD−SEM)を用いて半導体ウエハ上の限界寸法(クリティカルディメンジョン)を測定すること、および同一測定システム上の散乱測定計、またはロボット式ウエハ搬送システムの少なくとも一部を共有する複数の連結した測定システムを使用してオーバレイを測定することの両方を可能にすることにある。限界寸法とオーバレイとを測定する従来の方法は、通常は、異なる複数の測定システムをスケジュール設定して作動させる必要がある。別々の複数の測定システムを用いて限界寸法およびオーバレイを測定するこれらの従来の方法の欠点の1つは、別々の複数の測定ツールのそれぞれの動作をスケジュール設定し且つ実行するために、余分な時間を必要とすることにある。もう1つの欠点は、共通部分とそれに伴う費用とが重複することにある。
これらの欠点を克服するために、散乱測定オーバレイとCDSEMとを結合した測定システムが提供される。一実施形態において、散乱測定オーバレイ(SCOL)測定システムと、CDSEM測定システムとは、ロボット式ウエハ搬送システム、データシステム、またはその両方の少なくとも一部を共有するように統合される。あるいは、CDSEMシステムと、散乱測定オーバレイシステムとは、独立して動作可能であるもののロボット式ウエハ搬送システムの少なくとも一部を共有するように結合されている別々のシステムであってもよい。
動作時は、この結合型測定システム専用のロボット式ウエハ搬送システムにウエハ容器を装填することによって、結合型測定システムに1枚のウエハ、ひとそろえのウエハ、または複数枚のウエハからなる一バッチが導入される。次いで、一部または全部のウエハを対象としたCDSEM測定と、一部または全部のウエハを対象とした散乱測定オーバレイ測定とを指定する測定レシピが選択される。CDSEM測定およびSCOL測定は、1つまたは複数のレシピで一緒に指定されてもよいし、または別々のレシピで指定されてもよい。CDSEM測定およびSCOL測定は、同じウエハに対して実施されてもよいし、異なるウエハに対して実施されてもよいし、同じウエハの一部および一部の異なるウエハに対して実施されてもよい。CDSEMシステムおよびSCOLシステムは、並行して動作してもよいし、または順番に動作してもよい。
結合型測定システムの一例としては、散乱測定に基づくオーバレイ測定を行うことができる散乱測定システム(例えば分光楕円偏光計、分光偏光反射率計、または+/−1次回折散乱計)を、カリフォルニア州サンノゼ市にあるKLA−Tencor社によって製造された任意の機器でありうるCD−SEMの内部に組み込んだものが挙げられる。結合型測定システムの別の一例としては、散乱測定オーバレイ測定システムと、カリフォルニア州サンノゼ市にあるKLA−Tencor社によって製造された任意の機器でありうるCDSEMと、ロボット式搬送器と、ウエハスケジュールシステムとを有する結合型システムが挙げられる。工場自動化システム、工場情報システム、工場プロセス制御システム、またはこれらの二者以上の組み合わせに対するコミュニケーションは、それぞれ別々の通信システムもしくは自動化システムを介してもよいし、または少なくとも部分的にもしくは完全に共有されてもよい。
結合型CDSEM&SCOL測定システムの利点は、CDSEM測定および散乱測定に基づくオーバレイ測定のスケジュール設定、実行、またはその両方を完了させるために必要な合計時間を短縮できることにある。少なくとも1つのキュー遅延が排除される。CDSEM測定とオーバレイ測定とを並行して実施すれば、測定動作を別々に行うために必要とされる時間を少なくとも部分的にセーブすることができる。
図13Aないし13Dは、本発明のいくつかの実施形態にしたがった、結合型測定ツール1300の各種の変形形態を示している。いずれの図においても、結合型測定ツール1300は、ロボット式ウエハ搬送システム1302と、限界寸法走査用電子顕微鏡(CD−SEM)1304と、散乱測定オーバレイ(SCOL)測定機器1306と、ウエハ装填位置A 1308と、ウエハ装填位置B 1310とをそれぞれ含む。ロボット式ウエハ搬送システム1302は、CD−SEM1304およびSCOL測定機器1310に対してウエハを出し入れするように、そしてウエハ装填位置A 1308およびウエハ装填位置B 1310に対してウエハを出し入れするように構成される。限界寸法走査用電子顕微鏡1304は、例えば、線幅、上端の線幅、バイアの直径、側壁の角度およびプロファイル等を含みうる限界寸法を測定するように構成される。散乱測定オーバレイ測定機器1306は、例えばウエハ上に配された二層間等のオーバレイを測定するように構成される。ウエハ装填位置Aおよびウエハ装填位置Bは、1枚または複数枚のウエハを保持するように構成される。多くの場合は、複数枚のウエハが保持される。これらのウエハは、同じロットから取り出されてもよいし、別のロットから取り出されてもよい。
図13Aおよび図13Dにおいて、CD−SEM1304およびSCOL測定機器1306は、ロボット式ウエハ搬送システム1302を介して統合された別々のシステムである。図13Bにおいて、SCOL測定機器1306は、CDSEM1304に組み込まれている。図13Cにおいて、SCOL測定機器1306は、ロボット式ウエハ搬送システム1302に組み込まれている。
とある動作では、ウエハ装填位置A、ウエハ装填位置B、またはその両方からのウエハのうちのいくつかが、CS−SEMによって限界寸法を測定され、その後、散乱測定オーバレイ測定機器によってオーバレイを測定される。ウエハは、システムから取り出されることなく両プロセスによる測定を経ることができる。すなわち、ウエハの搬送およびそれに伴うスループットの問題が軽減される。別の動作では、ウエハ装填位置A、ウエハ装填位置B、またはその両方からのウエハのうちのいくつかが、CDSEMによって限界寸法を測定され、ウエハ装填位置A、ウエハ装填位置B、またはその両方からのウエハのうちの別のいくつかが、SCOL測定機器によってオーバレイを測定される。いずれの動作の場合も、CDSEMとSCOL測定機器とは、独立に且つ同時に進行することができる。
図14は、本発明の一実施形態にしたがった、結合型測定ツールを用いた場合のフローチャート1400である。方法は、一般に、測定ツールによって一群のウエハを受け取る工程1402を含む。例えば、これらのウエハは、図13の位置Aに装填されたウエハロットでよい。工程1402に続いて、プロセス1400は、一群のウエハのなかの1枚のウエハの限界寸法を測定する工程1404に進む。例えば、図13に示されたCDSEM等のCDSEMによって、限界寸法の測定が行われる。流れ図1400は、また、例えば図13に示された機器等のSCOL測定機器によって一群のウエハのなかの1枚のウエハのオーバレイを実施する工程1406に進む。工程1404,1406は、別々のウエハに対して同時に実施することができる。工程1404,1406は、例えばCDの次にオーバレイを測定する、またはオーバレイの次にCDを測定するなど、一連の動作を通じて同一のウエハに対して実施することもできる。ウエハの移送は、例えば、図13に示されたロボット式システムによって実施される。全ての測定が実施されると、流れ図は、一群のウエハを測定ツールから解放する工程1408に進む。
散乱測定オーバレイとその他の測定法または検査方法との結合
散乱測定オーバレイは、散乱測定プロファイルシステムもしくは散乱測定限界寸法システム、またはその他の半導体測定システムもしくは半導体検査システムと組み合わせ可能である。散乱測定オーバレイは、例えばリソグラフィレジストプロセスツール(レジストトラックとしても知られる)等の半導体プロセスツールと統合可能である。測定システムとプロセスシステムとの統合、および測定システムどうしの組み合わせは、(1)Lakkapragada、Sureshらによる2001年5月4日付けの米国特許出願09/849,622「METHOD AND SYSTEMS FOR LITHOGRAPHY PROCESS CONTROL」、ならびに(2)Nikoonahadらによる2003年10月14付けの米国特許6,633,831号「METHODS AND SYSTEMS FOR DETERMINING CRITICAL DIMENSION AND A THIN FILM CHARACTERISTIC OF A SPECIMEN」に記載されている。
連続変化するオフセットマーク、およびオーバレイを決定するための方法
以下では、本発明の一実施形態にしたがって、連続変化するオフセットマークと、このタイプのマークからオーバレイ情報を抽出するために使用される各種の技術とが説明される。連続変化するオフセットマークは、重ねられた複数の周期構造を含む単一のマークである。これら複数の周期構造は、位置の関数の形で変化するオフセットを有する。例えば、これらの周期構造は、ピッチ等の格子特性の値が異なる複数の格子に対応することができる。ピッチ間の小さな差は、マークの中心から端にかけてオフセットを変化させる。
連続変化するオフセットマークを用いるための方法は、連続変化するオフセットマークの対称中心を決定すること、およびそれをマークの幾何学的中心と比較することを含む。もしゼロオーバレイならば、対称中心は、マークの幾何学的中心と一致する傾向がある。もしオーバレイがゼロでない(例えば二層間にずれがある)ならば、対称中心は、マークの幾何学的中心からずれている。このずれは、マークに関連した事前設定されたゲイン係数とともに、導入されたオーバレイ誤差を計算するために使用される。
連続変化するオフセットマークの実施形態について、図15〜24を参照にしながら以下で説明する。しかしながら、当業者ならば容易に明らかなように、これらの図面に併せて本明細書で示される詳細な説明は、説明を目的としたものであり、本発明は、限定的なこれらの実施形態を超える範囲を有するものとする。
図15は、本発明の一実施形態にしたがった、オーバレイ誤差を決定する方法1500のフローチャートである。オーバレイ方法1500は、少なくとも1つのオーバレイターゲットが用意されるブロック1502から開始する。オーバレイターゲットは、第1の周期構造と第2の周期構造とを少なくとも含む。周期構造は、一次元の周期構造(XまたはYのいずれかで測定可能)でもよいし、または二次元の周期構造(XおよびYの両方で測定可能)でもよい。第1の周期構造は、基板の第1層内に置かれ、第2の周期構造は、基板の第2層内に置かれる。これらの周期構造は、大抵の場合は、種々の層内で直接に重なり合う形で配される(重ね合わされる)。実際は、オーバレイターゲットは、周期構造状のオーバレイターゲット上の一周期構造と見なしてもよいし、より具体的には、格子状のオーバレイターゲット上の一格子と見なしてもよい。
周期構造は、例えば線幅、ピッチ、間隔、CD、回転等を含む多くの特性、すなわち属性を有する。オーバレイターゲット内の複数の周期構造は、ある特定の属性を除き、ほとんどの点でほぼ同じであるように設計される。この特定の属性に関しては、オーバレイターゲット内の複数の周期構造は、それぞれ異なる値を有するように構成される。この特定の属性は、例えば、上記のうちの任意の属性に対応することができる。一実施形態では、特定の属性は、ピッチに対応する。本明細書で言うピッチとは、1つの周期構造が一様(インバリアント)に存在する最小変位量である。別の一実施形態では、特定の属性は、回転に対応する。これらの属性は、とりわけよく機能することが知られている。
これらの値について、上側の周期構造は、下側の周期構造よりも大きいまたは小さい値を有することが可能である。いずれの場合も、概して、差を小さく維持することが望まれる。差は、10%未満、特に5.0%未満、さらに1.0%以下であってよい。一実施形態では、差は、約0.01%から約10%までの範囲である。別の一実施形態では、差は、約0.10%から約5%までの範囲である。さらに別の一実施形態では、差は、約0.10%から約0.99%までの範囲である。本発明の具体的な一実施形態では、差は、約1%に等しい。これらの範囲および値は、とりわけよく機能することが知られている。
ピッチは、マイクロリソグラフィプロセスのなかで最も正確に制御されるパラメータの1つであるので、連続変化するオフセットマークを僅か0.01%のピッチ差で製造することは、容易に実現可能であると考えられる。既存の方法として、ウエハ上のエッジ位置を極めて正確に制御するためのOPC方法が既に知られている。この技術は、分解能を向上させる技術として知られ、形状(フィーチャ)のエッジに沿った部分的デューティサイクル形状で構成される線(ウエハ上のサブ解像(sub-resolution))に基づくものである。この技術を用いれば、比較的高精度のピッチ制御でレチクルを製造することができる。同様な技術は、ミリラジアン程度の小さな角度差を生成するために、角度に対して使用することもできる。
選択された属性値の、周期構造間の小さな差は、そのオーバレイターゲットについて、事前設定のゲイン係数を生成するように構成される。ゲイン係数は、例えば、それらの値の1つを値間の差で割ることによって算出することができる、より具体的には、下方の周期構造の値を値間の差で割ることによって算出することができる。あるいは、ゲイン係数は、第1の値と第2の値との平均を出し、次いでその平均を第1の値と第2の値との差で割ることによって算出することができる。例として、ゲイン係数の算出式を以下に示す。
ゲイン係数=V1/(V1−V2)
ここで、V1=属性の第1の値
V2=属性の第2の値 である。
例として、属性がピッチであり、第1の周期構造のピッチが400nmであり、第2の周期構造のピッチが404nmである(差は1.0%である)と仮定する。すると、ゲインは次のように計算される。
ゲイン係数=400/(400−404)=100
差の大きさ、ひいてはゲイン係数の大きさは、ダイナミックレンジや感度等の様々な要素に依存する。ダイナミックレンジは、測定を正確に実施可能であるような導入オーバレイの範囲である。他方で、感度は、技術によって検出可能であるような最小の導入オーバレイである。ダイナミックレンジと感度とは、トレードオフの関係にあるのが通常である。一般に、大きなダイナミックレンジが必要とされる場合は、周期構造間の値の差が大きい(すなわちゲイン係数が小さい)ことが望ましく、反対に、高感度が必要とされる場合は、周期構造間の値の差が小さい(すなわちゲイン係数が大きい)ことが望ましい。
ブロック1502に続いて、方法は、オーバレイターゲットについて光学データの空間配列を得るブロック1504に進む。光学データの空間配列とは、一般に、ターゲット上の空間座標の関数の形を取るデータ点のセットを意味する。すなわち、光学データは、ターゲットに沿った物理的空間点にそれぞれ関連付けられた複数のデータ点を含む。一例では、光学データは、オーバレイターゲット上の可測素子を横切る軸に沿って空間的に変化する複数のデータ点を含む。一次元格子の場合は、軸が格子の線に直角であるのが通常である。二次元周期構造の場合は、その周期構造の各方向に一軸ずつの複数の軸が使用される。いずれの場合も、光学データ点は、オーバレイターゲットの長さ上に分布する複数の異なる位置にある。
光学データは、単一の光学測定によって収集されてもよいし(例えば画像化)、または軸に沿って空間的に且つ順次に複数の光学測定を実施することによって収集されてもよい(例えば走査もしくはステップアンドリピート)。例えば画像化では、ターゲットに沿った空間依存データ点は全て同時に捕らえられる。例えば走査では、ターゲットに沿った空間依存データ点は徐々に収集される。
光学データおよび光学データを取得する方法は、様々に可変である。例えば、光学データは、スペクトル、白色光反射強度、角度的に分解された散乱測定信号、分光楕円偏光計の信号、何らかの偏光依存信号等を含むことができる。さらに、光学データは、画像化散乱測定法、分光偏光解析法、角度散乱測定法等によって取得することができる。これらの技術を実施すること(画像の分光学的同定)による利点の1つは、コントラスを、ひいてはターゲット領域の単位面積当たりの情報量を、大幅に向上させられることにある。
一実施形態では、画像化または走査のいずれかのメカニズムを用いてパラレルデータ収集および散乱測定処理を実施することによって、光学データを得ることができる。これらの技術は、測定速度を向上させられるという利点を有するうえ、ターゲットの小型化を目的とした多くの選択肢を可能にする。一実施例では、独立したターゲット収集に代わって、一定のまたはその他の速度プロファイルでターゲットを走査することができる。これは、光学素子またはウエハのいずれかを移動させることによって実現される。
別の一実施形態では、一方の軸をスペクトル情報に割り当て、他方の軸を単一の空間的次元に割り当てた二次元のCCDを使用して、画像化に基づく分光学的散乱測定(反射率測定)を実施することによって、光学データを取得することができる。例えば、円筒レンズによる照明と、回折格子分光計またはプリズム分光計のいずれかと、を使用することによって、CCD上の被照領域について、分散した線画像を形成することができる。
別の一実施形態では、両軸を空間次元に割り当てた二次元のCCDを使用して、画像化に基づく光学的散乱測定(反射率測定)を実施することによって、光学データを取得することができる。両軸を空間次元に割り当てるとは、例えば、スペクトル次元を時間領域(テンポラルドメイン)に割り当てる等である。具体的には、フーリエ変換に基づく干渉分光法が挙げられる。この場合は、ビーム分割器で画像を2つの波面に分割し、それらの両波面間に、時間領域(タイムドメイン)を連続的にまたは離散的に変化させる光路差を導入する。すると、各画素で時間依存信号をフーリエ変換したものが、画像内のその点におけるスペクトルになる。この場合は、フーリエ領域、または光路差(時間)領域において、情報をスペクトル領域に変換することなく差分解析を行うことができる。これは、例えば、マイケルソン干渉計またはサニャク干渉計を使用して実現することができる。
以上では、光学データの空間配列を取得するためのいくつかの実施形態が説明されたが、これらは限定的なものではなく、光学データの空間配列は、本明細書で言及された任意の技術を使用して取得可能である。
ブロック1504に続いて、方法は、光学データの空間依存性に基づいてオーバレイターゲットの対称中心を決定する(光学データを空間領域に戻すまたは変換する)ブロック1506に進む。対称中心とは、その点の両側で、観測構造からの反射が不変である点、すなわち光学データがほぼ等しい(同一である)点である。もしオーバレイがゼロならば、対称中心は、ターゲットの幾何学的中心と一致する。もしオーバレイがゼロでないならば、対称中心は、ターゲットの幾何学的中心以外のどこかに位置する。
光学データの空間配列から対称中心を決定するには、多くのアルゴリズムを使用することができる。
一実施形態では、対称中心を決定するために、自己相関が使用される。自己相関では、データ配列を逆向きに複製し、その複製されたデータ配列を原始データに対してシフトさせる。2つのデータ配列間の相関関数は、シフト位置ごとに、既知の任意の相関測定法を用いて算出される。相関性は、シフトの関数の形でプロットされ、相関関数は、自己相関が最大の位置で、すなわち対称中心で最大になる。
別の一実施形態では、ヌル点を使用した方法によって対称中心を決定する。この方法では、スペクトル配列を取得する。スペクトル配列は、格子に沿った複数の点から得られる一連のスペクトルである。これは、例えば、散乱測定法を用いてオーバレイターゲットを測定することによって実現される。その後、オーバレイ誤差が存在するか否かに関する決定が下される。これは、一般に、格子の端から等距離にある複数の点で測定された複数のスペクトル間の差を解析することによって実現される。もしゼロオーバレイならば、差分スペクトルは、スペクトル域の全域にわたってゼロであるはずである。もしオーバレイ誤差が存在するならば、等距離にある複数の点から得られる差分スペクトルは、非ゼロであるはずである。非ゼロである場合は、そのスペクトル配列のヌル点が決定される。もしオーバレイがゼロならば、中心から等距離にある複数の点は一致する傾向にあり、もしゼロでないならば、等距離の基準になる別の点(別の中心線)が存在するはずである。この点が、ヌル点である。
ヌル点は、スペクトル配列の中心点または屈曲点を体系的にシフトさせ、シフトして得られた実際の中心点から等距離にある各点で測定されるスペクトル間の差を解析することによって見つけ出すことができる。ヌル点は、スペクトル域の全域にわたってほぼゼロの差分スペクトルを生成する中心点である(その点の両側ではスペクトルがほぼ同一である。したがって、差分スペクトルはほぼゼロである)。ヌル点は、ある特定の空間的位置、すなわち対称中心に関連付けられている。
ヌル点を決定するための別の一方法は、全波長について、差分スペクトルの振幅を、すなわち選択されたスペクトルバンドを、周期構造内の位置の関数としてプロットする方法である。これは、ゼロを通過する滑らかな関数を生成する傾向がある。このゼロ点が、上述されたヌル点である。
ブロック1506に続いて、方法は、オーバレイターゲットの対称中心と幾何学的中心との間の距離Xを算出するブロック1508に進む。オーバレイターゲットの幾何学的中心は、オーバレイターゲット設計上の物理的中心である。例えば、もしオーバレイが幅20ミクロンであるならば、オーバレイの幾何学的中心は、10ミクロンの位置にある。
例えば、オーバレイターゲットの幾何学的中心が10ミクロンの位置にあり、且つ対称中心が11ミクロンの位置にあるとわかった場合を仮定する。距離Xは、次のように計算される。
X=11−10=1ミクロン
ブロック1508に続いて、方法は、距離Xをオーバレイターゲットのゲイン係数で割ることによってオーバレイ誤差を決定するブロック1510に進む。オーバレイ誤差の計算式は、次の通りである。
OVL誤差=X/ゲイン係数=X×V1/(V1−V2)
ここで、OVL誤差=二層間のずれの量
X=ターゲットの対称中心と幾何学的中心との間の距離
V1=第1の属性値
V2=第2の属性値 である。
上述の例に戻ると、オーバレイ誤差は、以下のように算出される。
OVL誤差=1ミクロン/100=1ミクロン×(400nm)/(400nm−404nm)=10nm
本発明は、上述された様々な実施形態のそれぞれで、半導体ウエハの2枚の層の上に形成された周期構造からなるオーバレイターゲットを用いることによって、これら2枚の層の間のオーバレイ情報を提供している。周期構造は、半導体製造プロセスの際に、ウエハの層のうちの任意の層内に形成することができる。例えば、周期構造は、フォトレジスト層内、誘電体層内、または金属層内に形成することができる。
周期構造の寸法および位置は、様々に可変である。周期構造の形状のサイズおよびピッチは、被験層に施されるパターン形成工程での臨界素子形状にほぼ等しい場合もある。すなわち、形状の寸法は、回路パターンの形状と同程度である。さらに、周期構造は、回路パターンそれ自体の中に配されてもよいし、または従来のように、回路パターンの端に配されてもよい。
本発明にしたがうと、オーバレイターゲットは、2枚の層が適切に位置決めされている場合は対称中心が幾何学的中心に対応し、2枚の層が適切に位置決めされていない場合は対称中心が幾何学的中心から離れるように構成される。オーバレイターゲットのいくつかの例が以下で説明される。
図16は、本発明の一実施形態にしたがった一次元オーバレイターゲット1600の図である。図に示されるように、ターゲット1600は、第1の層上に位置する第1の格子1602と、第2の層上に位置する第2の格子1604とを含む。さらに、格子1602,1604は、相隔てられた複数の平行線1606をそれぞれ有する。
2つの格子は、隣り合うように並べた状態で図示されているが、これは、オーバレイターゲットの説明を分かりやすくするためである。第1の格子は、大抵の場合は第2の格子のすぐ上に配されるので、図17〜20に示されるように、格子の上に格子を重ねた構造を形成する。すなわち、格子は、ゼロオーバレイの場合に対称軸が一致するように互いに重ね合わされる。さらに、これらの線は、Y方向に隣り合うように垂直方向に並置された水平線として図示されているが、これらの線は、X方向に隣り合うように水平方向に並置された垂直線であることも可能である。例示された構成は、Y方向のオーバレイ誤差を決定するために使用され、(90度回転された)別の構成は、X方向のオーバレイを決定するために使用される。大抵の場合は、複数方向にオーバレイ誤差を決定できるように、これらの構成の両方を基板上に配置して使用する。
本発明にしたがうと、ゲイン係数を生成するために、第1の格子1602は、格子特性に関して第1の値を有するように構成され、第2の格子1604は、同じ格子特性に関して、第2の値を有するように構成される。格子特性は、例えば、ピッチまたは回転に対応することができる。第1の格子1602の特性値は、第2の格子1604の特性値よりも大きくまたは小さく設定可能である(逆もまた同様である)。第1の値と第2の値との間の差は、小さく維持されることが好ましい。このような小さな差は、格子のいずれかの端に有効なオフセットを導入する。これは、格子の中心に近づくにつれて線形的に減少する。
差は、10%未満、特に5%未満、さらに1.0%以下であってよい。一実施形態では、差は、約0.01%から約10%までの範囲である。別の一実施形態では、差は、約0.10%から約5%までの範囲である。さらに別の一実施形態では、差は、約0.10%から約0.99%までの範囲である。本発明の具体的な一実施形態では、差は、約1%に等しい。
図17〜20を参照して、オーバレイターゲット1600のいくつかの実施形態を説明する。第1の格子1602を第2の格子1604の上に配されたオーバレイターゲットについて、図17Aおよび図17Bは代表的な上面図を、図18Aおよび図18Bは代表的な側面図を示している。図17Aおよび図18Aは、完全に位置決めされた状態にある2つの格子構造を示している。図17Bおよび図18Bは、ずれた状態にある、すなわち層間にオーバレイ誤差が存在する状態にある2つの格子構造を示している。図示されたこの具体的な実施形態では、格子特性は、ピッチに対応している。第1の格子1602のピッチは、第2の格子1604のピッチより大きく設定される。第1の格子1602のピッチは、例えば、第2のピッチより1.0%大きい。この差のため、下側の格子1602と上側の格子1604との間のオフセットは、位置の関数の形で連続変化する。
第1の格子を第2の格子の上に配されたオーバレイターゲットについて、図19Aおよび図19Bは代表的な上面図を、図20Aおよび図20Bは代表的な側面図を示している。図19Aおよび図20Aは、完全に位置決めされた状態にある2つの格子構造を示している。図19Bおよび図20Bは、ずれた状態にある、すなわちオーバレイ誤差が存在する状態にある2つの格子構造を示している。図示されたこの具体的な実施形態では、格子特性は、ピッチに対応している。上述された実施形態とは異なり、第1の格子1602のピッチは、第2の格子1604のピッチより小さく設定される。第1の格子1602のピッチは、例えば、第2のピッチより1.0%小さい。この差のため、下側の格子1602と上側の格子1604との間のオフセットは、位置の関数の形で連続変化する。
図21は、本発明の別の一実施形態にしたがった一次元オーバレイターゲット1620の図である。オーバレイターゲット1620は、第1の層が単一の格子ではなく一対の格子1602A,1602Bを含む点を除き、上述されたオーバレイターゲット1600と同じである。処理の間ずっと、格子対1602A,1602Bは、第2の格子1604のすぐ上に配置されている。格子対1602A,1602Bは、空間的に相隔てられた状態で並置されている。さらに、格子対1602A,1602Bは、異なる格子特性値を有することを除き、ほとんどの点で同じである。一方の格子1602Aは、第2の格子1604よりも大きい値を有するように構成され、他方の格子1602Bは、第2の格子1604よりも小さい値を有するように構成される。例えば、左側の格子1602Aは、第2の格子1604のピッチよりも1.0%大きいピッチを有し、右側の格子1602Bは、第2の格子1604のピッチよりも1.0%小さいピッチを有する(逆もまた同様である)。
対の格子を用いたアプローチの1つの利点は、オーバレイターゲットの幾何学的中心を決定する必要性を軽減できることにある。対の格子を用いたアプローチでは、上側の格子は、オーバレイ誤差の関数の形で互いに反対方向に移動する。したがって、オーバレイ誤差を決定するためには、先ず、各格子の対称中心を見つけ、その後、それらの対称中心間の距離Y(右側の格子と左側の格子との間の相対オフセット)を算出する。距離Yは2で除され、その結果は、さらに、オーバレイ誤差を決定するためにゲイン係数で除される。対の格子を用いたアプローチにおけるオーバレイ誤差の計算式は、次の通りである。
OVL誤差=Y/{2×ゲイン係数}=Y×V1/{2×(V1−V2)}
ここで、OVL誤差=二層間のずれの量、
Y=左側の格子と右側の格子とで構成されるターゲット対の対称中心間の距離、
V1=第1の属性値、
V2=第2の属性値 である。
対の格子を用いたアプローチのさらなる利点は、スペクトルのサンプリング点間の距離を縮められることにある。これは、空間依存性のプロセス変動が差分スペクトルに及ぼす影響を軽減させる。
対の格子を用いたアプローチの一実施形態では、対の格子を含むターゲットを測定する際に、上記の2つの格子を二光束(ビーム)分光測定計によって走査する、または二次元スペクトル画像化装置によってスペクトル的に画像化する。走査を用いる場合は、隣り合う二点間の差分スペクトルが同時に取得されるので、コモンモード阻止をイネーブルすることができる。この場合のオーバレイ計算は、上述されたゼロ交差点(ヌル点)の方法で進めることができる。ただし、差分スペクトルは、隣り合う点から取得される。
対の格子を用いたアプローチの別の一実施形態では、先ず、単一波長の均一波面によって隣り合うターゲットを照射し、次いで、光路差挿入技術によって反射波面の1つに光位相の逆転を導入し、次いで、単一の検出器上でまたは複数の検出器のアレイ上で2つの波面を重ね合わせる。もしゼロオーバレイならば、再結合された際に、ヌル信号を得られるはずである。あるいは、任意に位相シフトされた波面によって隣り合うターゲットを照射する場合は、もしゼロオーバレイならば、再結合された際に、明確に構造化された信号を得られるはずである。
図22Aおよび図22Bは、本発明の一実施形態にしたがった二次元オーバレイターゲット1640の図である。上述された一次元オーバレイターゲットと異なり、二次元オーバレイターゲット1640は、例えばXおよびY等の複数の方向にオーバレイ情報を生成するように構成される。二次元オーバレイターゲット1640は、第1の層の上に位置する第1の周期構造1642と、第2の層の上に位置する第2の周期構造1644とを含む。図22Aは、完全に位置決めされた状態の2つの周期構造を示している。図22Bは、ずれた状態の、すなわちオーバレイ誤差の存在する状態の2つの周期構造を示している。
各周期構造1642,1644は、X方向およびY方向の両方向に周期的である。図に示されるように、周期構造1642,1644は、相隔てられ且つ行と列の形で配置された複数の下位要素(サブエレメント)1646からなる配列に分けられる。上述された一次元ターゲットと同様に、周期構造1642,1644は、周期構造の特定の属性を除いてほとんどの点で同じである。属性は、例えば、ピッチまたは回転に対応する。いずれの場合も、第1の周期構造1642は、その特定の属性に関して第1の値を有するように構成され、第2の周期構造1644は、その特定の属性に関して第2の値を有するように構成される。第1の周期構造1642の値は、第2の周期構造1644の値よりも大きく、または小さく設定可能である。いずれの場合も、その差は極めて小さいのが通常である。例示された実施形態では、第1の周期構造1642は、第2の周期構造1644よりも両方向に小さいピッチを有する。例えば、両者のピッチの差は、約1.0%である。
図23は、本発明の別の一実施形態にしたがったオーバレイ領域1660の上面図である。オーバレイ領域1660は、連続変化する複数のオフセットマーク1662を含む。オーバレイ領域1660は、より具体的には、X方向を向いた連続変化する第1のオフセットマークセット1662Aと、Y方向を向いた連続変化する第2のオフセットマークセット1662Bとを含む。各セットは、横方向に並置された連続変化する一対のオフセットマークを含む。横方向に並置されたマークは、同軸上に配されてもよいし、または(図に示すように)互いからシフトして配されてもよい。さらに、各セットに含まれる連続変化するオフセットマーク1662は、互いに異なる構成を有する。一方のマークは、特定の属性値が小さめの上側の周期構造を有するように設計され、他方のマークは、特定の属性値が大きめの上側の周期構造を有するように設計される。例示された実施形態では、周期構造は格子であり、特定の属性はピッチに対応する。
連続変化する複数のオフセットマーク1662に加えて、オーバレイ領域1660は、さらに、従来のボックス・イン・ボックスオーバレイターゲット1664を含む。ボックス・イン・ボックスターゲット1664は、中心に配され、連続変化するオフセットマーク1662は、オーバレイ領域1600の周辺に配置される。連続変化するオフセットマーク1662は、ボックス・イン・ボックスターゲット1664を取り囲むように構成される。ボックス・イン・ボックスターゲット1664は、実際は、連続変化するオフセットマークセットに含まれる連続変化する各オフセットマーク1662A,1662Bの間に配することができる。
図24Aおよび図24Bは、本発明の別の一実施形態にしたがったオーバレイ領域1680の上面図である。オーバレイ領域は、連続変化する複数のオフセットターゲット1682,1684を含む。各ターゲットは、格子の上に格子を重ねた形のターゲットとして構成される。第1のターゲット1682の格子1686A,1686Bは、X等の第1の方向を向き、第2のターゲット1684の格子1688A,1688Bは、Y等の第2の方向を向く。図に示されるように、第1のターゲット1686の格子1686は、それぞれ異なるピッチを有するように設計される。さらに、第2のターゲット1684の格子1688は、互いに回転した状態にある(例えば傾いたY格子)。例えば、下側の格子を時計回りに傾けるとともに、上側の格子を反時計回りに傾けることができる(逆もまた可能である)。あるいは、一方の格子のみを傾かせることもできる。なお、図では回転角度が誇張されて示されているが、通常は一度の1%程度である。さらに、図24Aは、完全に位置決めされた状態の格子を示しており、図24Bは、ずれた状態の、すなわちオーバレイ誤差が存在する状態の格子を示している。
知られているように、これらのターゲットは、XオーバレイとYオーバレイとを結合する。回転されたターゲットの対称中心は、±G・OVL(Y)+OVL(X)だけシフトされる。ここで、Gはゲイン係数である。2つの項間の相対符号は、傾きの方向によって決定される。したがって、回転されたターゲットの対称中心の測定を、別に測定されるOVL(X)で補完する、または(別のCVOターゲットを使用して)測定されるOVL(X)とOVL(Y)との別の一次結合によって、両方向のオーバレイを完全に決定することができる。この設定を使用することによる利点は、1つには、例えばX等の一方向の測定を実施するだけで、XおよびYの両方向のオーバレイを抽出できることにある。
図15および図16に示されるように、上述された方法のダイナミックレンジおよび精度は、以下の手順で計算することができる。先ず、格子内の位置決定精度がΔxであると仮定する。次に、第2層におけるピッチの方が大きいと仮定すると、ターゲットの長さは、第1層ではL、第2層では(1+δ)Lと定められる。±δL/2は、格子の端での層間オフセットであるので、この場合のダイナミックレンジは、±δL/2以下である。他方で、オーバレイ測定の精度は、δx×ゲイン係数(またはL/δL)と特定される。なお、上述された解析法は、ピッチが変化する場合と同様に、回転されるターゲットに対しても有効である。ただし、δは、ラジアンの角度を表すものとする。
先の例で挙げられた数字を使用した場合に、もし周期構造のピッチが400nmおよび404nm、ターゲットの幅が20ミクロンであるならば、測定のダイナミックレンジは±100nmになる。もし走査システムの位置決め精度Δxが±50nmであるならば、オーバレイ測定の精度は±0.5nmになる。ゼロ交差をサブピクセル精度で計算することができる画像化システムの場合は、オーバレイ測定の精度を大幅に向上させられると考えられる。
本発明の別の一実施形態では、連続変化するオフセットマークの重ねられた周期構造を、図2に示されるように、対称軸に沿って位置決めする代わりに、互いにオフセットさせる、すなわちシフトさせることができる。このような場合には、オーバレイ誤差を測定する際にオフセットの量が考慮される。例えば、図1のブロック108は、ブロック110でオーバレイ誤差を計算するのに先だって、相対オフセットに基づいて距離Xを調整することを含む。例えば、相対オフセットを2で除した結果を、距離Xから減算するまたは距離Xに加算することができる。上記の例を使用した場合に、周期構造間の相対オフセットの設定値が1ミクロンであると仮定すると、距離Xは、11−10−(1/2)、すなわち0.5ミクロンになる。
本発明の別の一実施形態では、図15に示された方法は、回路パターンに関する正確なオーバレイバジェットを決定するための追加ブロックを含む。追加ブロックは、特定の被験ターゲット上でオーバレイ誤差を決定した後に実施される。オーバレイバジェットは、回路を適切に機能させる許容範囲内にあるオーバレイ誤差の量である。すなわち、もしオーバレイバジェットを超えると、パターン間のずれは、素子の不具合につながる可能性がある。オーバレイバジェットは、大抵の場合は安全域を組み込まれている。安全域が使用されるのは、素子がオーバレイ誤差のグレイ範囲にあるときに、すなわち素子が完全に機能する状態と適切に機能できない状態との間の範囲にあるときに、その素子がどのように働くかを設計者が知らないという事実に対処するためである。安全係数が働くあいだに、設計者は、オーバレイバジェットにバッファを追加して、いくつかの機能素子を廃棄する必要がある。あるいは、設計者は、素子を大きくして、ダイごとの素子数を減らす必要がある。追加ブロックは、オーバレイが素子の形状に及ぼす影響を監視する助けとなるように構成される。形状に及ぼされるそれらの影響を知ることによって、安全域がなくても、または限られた安全域でも、より正確にオーバレイバジェットを決定することが可能になる。
追加ブロックは、構造的特性または幾何学的パラメータを光学データからオーバレイ誤差の連続関数の形で抽出する第1のブロックを含む。構造的特性は、例えば、側壁の角度、エッジの粗さ、およびその他の限界寸法等のうちの1つまたは複数を含むことができる。構造的特性は、オーバレイ誤差の決定に使用されたものと同じ光学データを使用して得ることができる。構造的特性が得られると、それらの特性は、オーバレイ誤差の関数の形を取るように、オーバレイ誤差に沿って解析される。関数が決定されると、方法は、オーバレイ誤差の関数の形を取る構造的特性に基づいてオーバレイバジェットまたはロット割り付け(ディスポジション)パラメータを決定する第2のブロックに進む。設計者は、どの構造的特性が許容範囲内であるかを決定し、その後、安全域を用いることなく正しいオーバレイバジェットを選択することができる。一例では、オーバレイデータと併せて構造的測定法を使用することによって、ロットの割り付けを実施することができる。
次に、構造的特性を決定するブロックの別の一例を挙げる。対称中心に基づくアプローチは、対称的な量、すなわち(オーバレイの大きさを一定に維持しつつ)オーバレイの符号を逆転させた場合に不変であるような量に依存する。偏光測定信号または反射率測定信号もあるが、これらは本質的に反対称的である。このような量は、オーバレイの符号を変化させた場合に自身の量の符号も変化させる。この反対称性は、ターゲット内の任意の周期的格子を形成する任意の線の非対称性によって崩壊すると考えられる。このブロックは、1つまたは複数の反対称的特性を測定して、ターゲット内の構造的非対称性の度合いを、オーバレイの関数の形で決定する。
連続変化するオフセットマークは、下記の1つまたは複数の利点を有することができる。連続変化するオフセットマークによって得られる利点は、1つには、オーバレイを決定するために全期間を必要としない(一部のみを必要とする)ことにある。上記の例では、例えば、半分の期間のみが必要とされる。しかしながら、半分に満たない期間も見込めるので、上記の例は非限定的なものである。反対に、モアレ技術は、全期間を見る必要がある。本発明によって得られるもう1つの利点は、(差が非常に小さいので)ゲインが非常に高いことにある。これは、ターゲットを大幅に小さくすることができる。さらに、測定された対称中心の位置と導入されたオーバレイとの間にゲイン係数を導入すれば、不正確さの原因となるあらゆる源に対する敏感さ、ならびに、収差および照明の不均一性等の画像化ツールにおけるバイアスに対する敏感さを同じゲイン係数によって軽減させることができる。連続変化するオフセットマークによって得られるもう1つの利点は、この技術が対称中心を見つけることに依存しており、ビートピッチ(モアレ技術では必須である)を全く問題にしないことにある。ビートピッチは、異なるピッチを有する2つの周期構造を互いに重ね合わせた(組み合わせた)ときに観測されるピッチである。連続変化するオフセットマークによって得られるもう1つの利点は、単一のターゲットのみが必要とされ、したがって、場所を節約できることにある。
以上では、いくつかの好ましい実施形態に基づいて発明を説明してきたが、発明の範囲内で、様々な変更、置換、および等価の形態が可能である。例えば、連続変化するオフセットマークは、主に、重ね合わされた周期構造を対象にしているが、異なる位置に配置された(例えば互いの上に重ねられたのではなく並置された等の)周期構造を用いてオーバレイを決定することもできる。このような場合は、恐らくは、2つの像を撮影してそれらを1つに統合するシェアリング式の画像化システムを使用してオーバレイ情報を抽出することができる。また、本発明の方法および装置は、他の多くの方法で実現することができる。例えば、XオーバレイターゲットおよびYオーバレイターゲットは、同じように構成されるのが通常であるが、異なるように構成することが望ましい場合もある。例えば、ピッチ差を有するようにXオーバレイターゲットを構成する一方で、回転差を有するようにYオーバレイターゲットを構成することができる。したがって、以下の特許請求の範囲は、このような全ての変更、置換、および等価の形態を、本発明の真の趣旨および範囲に含むもとして解釈される。