JP4734172B2 - 偏光フィルムの製造方法及び延伸装置 - Google Patents
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例えば、帯状のポリビニルアルコール系原反フィルムがロール状に巻回されてなる原反ロールから原反フィルムを送り出しつつ、複数のローラで移動経路を規制することにより、染色浴等の各種浴槽内にフィルムを通して染色し、更に、染色されたフィルムを移動経路中で延伸することにより偏光フィルムとする方法が採用されている。
斯かる方法によれば、連結を結び合わせたり縫い合わせたりする上記の方法に比べて、皺の発生が抑制され、作業性が非常に良好となる。
そこで、上記の如き種々の問題点に鑑み、本発明の課題は、製造の煩雑さを解消し、更に、長手方向に一軸延伸しても延伸による破断の虞を低減しつつ連続して偏光フィルムを製造できる偏光フィルムの製造方法等を提供することとする。
課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、帯状のポリビニルアルコール系原反フィルムを先端側から送り出しつつ規制された移動経路に通して該移動経路中で長手方向に延伸し、且つ先行して送り出した原反フィルムの前記延伸前の後端側と次の原反フィルムの先端側とを連結することにより順次連続して偏光フィルムを製造する偏光フィルムの製造方法であって、
発熱体が下面に配されたシールバーと、前記発熱体と対向する側の表面にラバーシートが配されたシールバー受けと、前記シールバー受けと前記ラバーシートの間に配設された前記ラバーシートよりも高弾性のライナーと、該ライナーを前記ラバーシートの裏面側に対して部分的に押圧可能で且つ押圧力を調整可能とされた押圧調整手段と、を有する連結装置を用いて、前記シールバー及び前記ラバーシートと原反フィルムとの間に空気層が形成されないように前記押圧調整手段にて前記ライナーを前記ラバーシートに押圧しつつシール温度55〜90℃でヒートシールすることにより、前記連結を実施することを特徴とする偏光フィルムの製造方法を提供する。
また、本発明は、帯状のポリビニルアルコール系原反フィルムを先端側から送り出しつつ規制された移動経路に通して該移動経路中で長手方向に延伸するように構成されており、且つ先行して送り出した原反フィルムの前記延伸前の後端側と次の原反フィルムの先端側とを連結する連結装置を備え、前記連結及び延伸により順次連続して偏光フィルムを製造するように構成された延伸装置であって、
前記連結装置は、発熱体が下面に配されたシールバーと、前記発熱体と対向する側の表面にラバーシートが配されたシールバー受けと、を有し、前記後端側と前記先端側との重ね合わせ部分を前記発熱体と前記ラバーシートとで押圧して、シール温度55〜90℃でヒートシールするように構成されてなり、且つ、
前記シールバー受けと前記ラバーシートの間に配設された前記ラバーシートよりも高弾性のライナーと、
前記ライナーを前記ラバーシートの裏面側に対して部分的に押圧可能で且つ押圧力を調整可能とされた押圧調整手段と、を備えたことを特徴とする延伸装置を提供する。
また、連結をシール温度55〜90℃のヒートシールにより実施することから、長手方向に一軸延伸してもフィルムの破断や剥離の虞も低減できる。
先ず、本実施形態の偏光フィルムの製造方法を実施するための好ましい延伸装置について図面を参照しつつ説明する。
延伸装置は、通常、帯状の原反フィルム1がロール状に巻回された原反ロールから原反フィルム1が送り出される原反フィルム供給部3と、送り出されたフィルム1を所定の薬液に浸漬するための複数の浸漬浴4と、該浸漬浴4内に前記原反フィルム1を通すように、原反フィルム1の移動経路を規制する複数のローラ9と、該移動経路中にて原反フィルム1を延伸する延伸手段と、複数の浸漬浴4に浸漬され且つ延伸されたフィルムを偏光フィルムとしてロール状に巻き取る偏光フィルム巻取部10とが備えられている。
図1に示すように、前記浸漬浴4としては、フィルムの流れ方向上流側から順に、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させる膨潤液の貯留された膨潤浴4a、膨潤されたフィルムを染色する染色液の貯留された染色浴4b、染色されたフィルムの構成高分子を架橋させる架橋剤液の貯留された架橋浴4c、浴内でフィルムを延伸するための延伸浴4d、更に、各浸漬浴4に通されたフィルムを洗浄する洗浄液が貯留された洗浄浴4fという5種類の浸漬浴4が備えられている。
尚、図2に於いては、ヒートシールにて連結される部分が黒塗り30で示されている。
図3に示すように、前記連結装置は、線状の発熱体20と、該発熱体20が下面に配された板状のシールバー21と、該シールバー21と対向するように配された板状のシールバー受け22とを有し、先行する原反フィルムの後端側1aと次のフィルムの先端側1bとを重ね合わせ、重ね合わせた部分をシールバー21とシールバー受け22とで押圧し、シールバー21に備えられた発熱体20で重ね合わせた部分を加熱することにより、先行する原反フィルム1と次の原反フィルム1とを熱接着により連結するように構成されている。
また、前記連結装置は、発熱体20の温度が55〜90℃となるように設定されており、好ましくは、シール時間が1〜15秒となるように条件設定されている。
斯かる条件に設定されていることにより、連結されるポリビニルアルコール系の原反フィルム1同士は、互いに剥離する虞や熱による破断の虞が著しく低減されることとなる。
尚、図5、図6は、連結装置をMD方向(原反フィルム1の長手方向)に沿ってみた概略断面図である。
図5に示すように、前記連結装置は、より好ましくは前記シールバー21の上方に配された固定基板30と、該固定基板30と前記シールバー21との間に介設され且つエアーの導入排出により拡縮可能とされたエアー枕31とを更に備えている。
また、前記発熱体20(具体的にはニクロム線)は、シールバー21の下面に沿って備えられ、その両端側がシールバー21の側面側に沿って折り返され前記固定基板30の上面に設けられた発熱体弛み防止用シリンダー32にそれぞれ支持されており、該シリンダー32によってその弛みが防止されるように構成されている。
更に、前記連結装置は、前記シールバー受け22とラバーシート24との間(即ちラバーシート24の裏面側)に配設されたラバーシート24よりも高弾性のライナー33と、前記ラバーシート24の表面凹凸を緩和させうるように、ライナー33を部分的に押圧可能で且つ押圧力を調整可能とされた押圧調整手段を備えている。
前記ライナー33は、例えば、SUS板などから構成されてなり、ラバーシート24の裏面側の略全面を覆うように配設されている。
前記押圧調整手段として具体的には、前記シールバー受け22の裏面側から上方に向けて螺入され且つそれぞれ先端部でライナー33を部分的に突き上げよう構成された複数の蝶ネジ34が備えられており、各蝶ネジ34の螺入量の調整により、ライナー33のラバーシート24裏面側への部分的な押圧力を調整してラバーシート24表面の僅かな凹凸を緩和できるようになっている。
そして、前記連結装置は、図6(イ)に示すように、エアー枕31に空気が殆ど導入されておらず、シールバー21とラバーシート24とが間に配された原反フィルム1を押圧しない非押圧状態と、図6(ロ)に示すように、空気が導入されてエアー枕31が膨張することにより、シールバー21が下方に押し出され、それによって、シールバー21とラバーシート24とが間に配された原反フィルム1を押圧する押圧状態とを取りうるように構成されており、非押圧状態に於いて、シールバー21とラバーシート24との間にて、先行する原反フィルム1の後端側1aと次の原反フィルム1の先端側1bとを重ね合わせてから、エアー枕31に空気を導入しシールバー21を下方に押し出して押圧状態とし、発熱体20を所定温度まで加熱することにより、先行する原反フィルム1と次の原反フィルム1とを連結するようになっている。
本実施形態の偏光フィルムの製造方法は、帯状のポリビニルアルコール系原反フィルムを先端側から送り出しつつ規制された移動経路に通して該移動経路中で長手方向に延伸し、且つ先行して送り出した原反フィルムの前記延伸前の後端側と次の原反フィルムの先端側とをヒートシールにて連結することにより順次連続して偏光フィルムを製造するものである。
通常、これらの原反フィルムは、ロール状に巻回された原反ロールの状態で用いる。
浸漬工程の処理として好ましくは、図1で例示されるように、それぞれローラで移動経路を規制しつつ、膨潤浴に通す等によってフィルムを膨潤させる膨潤工程、染色浴に通す等によってフィルムを染色する染色工程、架橋浴に通す等によってフィルム構成高分子を架橋させる架橋工程、延伸浴に通す等によってフィルムを延伸させる延伸工程、洗浄浴に通す等によってフィルムを洗浄する洗浄工程の処理を実施し、更に、乾燥工程を実施する。
前記膨潤浴中には、グリセリンやヨウ化カリウム等を適宜添加しておいてもよく、添加する場合、その濃度は、グリセリンは5重量%以下、ヨウ化カリウムは10重量%以下であることが好ましい。膨潤浴の温度は、20〜45℃の範囲とすることが好ましく、25〜40℃とすることがより好ましい。膨潤浴への浸漬時間は、2〜180秒間が好ましく、10〜150秒間がより好ましく、60〜120秒間が特に好ましい。また、この膨潤浴中でポリマーフィルムを延伸してもよく、そのときの延伸倍率は膨潤による伸展も含めて1.1〜3.5倍程度とすることが好ましい。
二色性物質の濃度としては、0.010〜10重量%の範囲とすることが好ましく、0.020〜7重量%の範囲とすることがより好ましく、0.025〜5重量%の範囲とすることが特に好ましい。
前記架橋剤としては、従来公知の物質を使用できる。例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を使用できる。これらは一種類のみ用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。二種類以上を併用する場合には、例えば、ホウ酸とホウ砂の組み合わせが好ましく、また、その添加割合(モル比)は、4:6〜9:1の範囲とすることが好ましく、5.5:4.5〜7:3の範囲とすることがより好ましく、6:4とすることが最も好ましい。
架橋剤とヨウ化物の組み合わせとしては、ホウ酸とヨウ化カリウムの組み合わせが好ましく、ホウ酸とヨウ化カリウムの割合(重量比)は、1:0.1〜1:3.5の範囲とすることが好ましく、1:0.5〜1:2.5の範囲とすることがより好ましい。
前記架橋工程に於いては、架橋浴中でポリマーフィルムを延伸してもよく、このときの累積した総延伸倍率は、1.1〜5.0倍程度とすることが好ましい。
尚、架橋工程としては、染色工程と同様に、架橋浴に通す処理に代えて、架橋剤含有溶液を塗布または噴霧する方法を用いても良い。
なかでも、ホウ酸および/またはヨウ化カリウムをそれぞれ2〜18重量%程度添加した溶液を用いることが好ましい。このホウ酸とヨウ化カリウムを同時に用いる場合には、その含有割合(重量比)は、1:0.1〜1:4程度、より好ましくは、1:0.5〜1:3程度の割合で用いることが好ましい。
尚、本実施形態に於いては、乾燥工程にて乾燥させた偏光フィルムの表面片側もしくは両側に適宜表面保護用等の別種のフィルムを積層してから巻き取るようにしてもよい。
原反フィルム同士の熱接着部分が通常必要とされる延伸倍率(4以上)に延伸しても55℃以上であれば十分な熱接着によって剥離する虞が殆ど無く、また、90℃以下であれば、その作用は定かではないもののフィルム内の水分の蒸発による気泡の発生が抑制されるためか、原反フィルムが劣化して破断する虞も殆どない。
従って、連結した原反フィルム同士が離反すること無く、先行する原反フィルムの後端側に追従させて、次の原反フィルムの先端側をローラ等に規制された移動経路に通すことができ、順次各種工程を実施することにより次の原反フィルムも連続して偏光フィルムとすることができる。
ここで、ヒートシールの時間(即ち、シールバーが原反フィルムと接触している時間)は、好ましくは1〜15秒、より好ましくは2〜10秒とする。
ヒートシールの時間が1秒未満であれば、十分にヒートシールされない虞があり、また、15秒を超えて実施する必要性に乏しいからである。
シール幅が1mm以上であれば十分な接着強度が得られ、一方、シール幅を必要以上に大きくするとそれだけ固化して延伸し難い部分が増加するため破断の虞が増加するところ、10mm以下であれば、そのような虞も極めて少ないものとなる。
尚、シール幅は、フィルムと接触してフィルムを加熱するニクロム線等の発熱体の幅を調整することによって適宜調整することができる。
更に、一つの連結に対してヒートシールは、1カ所で十分であるが、念のため2カ所以上で行っても良い。
原反フィルムと原反フィルムとを熱接着により連結を行う際に於いては、ラバーシート表面の僅かな凹凸やシールバー下方の発熱体( 例えばニクロム線) 押圧面の僅かな凹凸によって、シールされるフィルムの下面側若しくは上面側に空気層が形成されることがあり、空気層の存在によって発熱体から原反フィルムに均一に熱が伝わりにくく、原反フィルムが局部的に必要以上に加熱されたり、十分に加熱されなかったりすることがある。そして、その結果、連結部分には局部的に過加熱による気泡が発生したり、十分に熱接着されなかったりする部分が生じうる。
しかしながら、上記の如くライナー及び調整手段を備えている装置を用いて連結を行えば、僅かな凹凸を緩和するようにライナーによる裏面側からのラバーシートへの押圧力を部分的に調整して、上記の如き空気層が形成されることを抑制できる。
尚、ライナーの押圧力の調整に際しては、予めヒートシールしたものを用いて、気泡が発生したり十分に接着されていない部分の有無を確認し、そのような部分が有る場合には、その部分に対応した部位の押圧力を高めるように調整すれば良い。
このように調整することで、連続的にヒートシールした際に、原反フィルムの幅方向の
一定部位に、連続して気泡が発生すること等を防止することができる。
尚、実用に際しては、両面又は片面に各種光学層を積層して光学フィルムとしたり、各種表面処理を施したりして、液晶表示装置等の画像表示装置に用いることもできる。前記光学層としては、要求される光学特性を満たすものであれば特に限定されるものではないが、例えば、偏光フィルムの保護を目的とした透明保護層、視角補償等を目的とした配向液晶層、他のフィルムを積層するための粘着層の他、偏光変換素子、反射板、半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板(λ板)を含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの画像表示装置等の形成に用いられるフィルムを用いることができる。
また、表面処理としては、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止や拡散ないしアンチグレアを目的とした表面処理を挙げることができる。
厚さ75μm、幅50mmのポリビニルアルコール(PVA)原反フィルム((株)クラレ製、重合度2400)を2枚準備し、互いに重ね合わせて、図3に示す連結装置(発熱体:ニクロム線、幅3mm)にて、それぞれ表1に示すシール温度で2カ所をTD方向に沿ってヒートシールした。尚、シール時間を3秒とした。
そして、互いに連結されたフィルムを30℃の純水中に浸漬し、延伸区間50mm、延伸速度2mm/sの条件で手延伸機にて延伸し、連結されたフィルムが剥離若しくは破断によって離反するまでの延伸倍率を測定した。また、ヒートシール部分を切断してフィルム内の気泡の有無を目視にて観察し、それぞれ、結果を表1に示した。また、表1の値をシール温度と延伸倍率の関係グラフにプロットし、図7に示した。尚、図7に於いては、実施例の値を黒塗りで、比較例を白抜きで示した。
Claims (3)
- 帯状のポリビニルアルコール系原反フィルムを先端側から送り出しつつ規制された移動経路に通して該移動経路中で長手方向に延伸し、且つ先行して送り出した原反フィルムの前記延伸前の後端側と次の原反フィルムの先端側とを連結することにより順次連続して偏光フィルムを製造する偏光フィルムの製造方法であって、
発熱体が下面に配されたシールバーと、前記発熱体と対向する側の表面にラバーシートが配されたシールバー受けと、前記シールバー受けと前記ラバーシートの間に配設された前記ラバーシートよりも高弾性のライナーと、該ライナーを前記ラバーシートの裏面側に対して部分的に押圧可能で且つ押圧力を調整可能とされた押圧調整手段と、を有する連結装置を用いて、前記シールバー及び前記ラバーシートと原反フィルムとの間に空気層が形成されないように前記押圧調整手段にて前記ライナーを前記ラバーシートに押圧しつつシール温度55〜90℃でヒートシールすることにより、前記連結を実施することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。 - 延伸倍率を3から7倍とする請求項1記載の偏光フィルムの製造方法。
- 帯状のポリビニルアルコール系原反フィルムを先端側から送り出しつつ規制された移動経路に通して該移動経路中で長手方向に延伸するように構成されており、且つ先行して送り出した原反フィルムの前記延伸前の後端側と次の原反フィルムの先端側とを連結する連結装置を備え、前記連結及び延伸により順次連続して偏光フィルムを製造するように構成された延伸装置であって、
前記連結装置は、発熱体が下面に配されたシールバーと、前記発熱体と対向する側の表面にラバーシートが配されたシールバー受けと、を有し、前記後端側と前記先端側との重ね合わせ部分を前記発熱体と前記ラバーシートとで押圧して、シール温度55〜90℃でヒートシールするように構成されてなり、且つ、
前記シールバー受けと前記ラバーシートの間に配設された前記ラバーシートよりも高弾性のライナーと、
前記ライナーを前記ラバーシートの裏面側に対して部分的に押圧可能で且つ押圧力を調整可能とされた押圧調整手段と、を備えたことを特徴とする延伸装置。
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