JP4732962B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の強度−延性バランスのバラツキ改善方法 - Google Patents

合金化溶融亜鉛めっき鋼板の強度−延性バランスのバラツキ改善方法 Download PDF

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Description

本発明は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の強度−延性バランスのバラツキ改善方法に関するものであり、より詳細には、合金化温度に応じて最大級の強度−延性バランスを発揮し得る合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、常時、バラツキなく、製造することが可能な強度−延性バランスのバラツキ改善方法に関するものである。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)は、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)を加熱して素地鋼板中のFeをめっき層へ拡散させ、FeとZnを合金化することによって得られる。GA鋼板は、強度、溶接性、塗装後の耐食性などに優れるため、例えば、自動車の骨格部材(衝突時のエネルギーを吸収する役割を担うメンバーなど)などに使用されている。自動車部品の製造においては、複雑形状のプレス加工が施される場合が多いため、更に、加工性にも優れたGA鋼板の提供が切望されている。
そこで、組織中に残留オーステナイト(γR)を生成させ、このγRが加工変形中に誘起変態(歪み誘起変態:TRIP)して優れた延性を発揮するTRIP鋼板が注目されている。TRIP鋼板の母相としては、例えば、ポリゴナルフェライトやベイニティックフェライトが代表的に挙げられ、そのほか、焼戻マルテンサイトや焼戻ベイナイトなども例示される。TRIP鋼板は、熱間圧延後の冷却速度を調整するなどして母相組織を導入し、次いでフェライト−オーステナイト2相域温度またはオーステナイト単相域温度から特定のパターンで冷却し、所定温度で加熱保持する(オーステンパ処理)ことによってγRを導入している。
特許文献1には、ポリゴナルフェライトおよびベイニティックフェライトを母相組織とするTRIP鋼板が開示されている。この文献には、主に、GI鋼板について記載されており、γR中のC濃度(Cγ)はTRIPの特性に大きく影響し、Cγの含有量が多い程(例えば、Cγ≧0.8%)伸びなどの延性が向上することが記載されている。しかし特許文献1には、GA鋼板については具体的に記載されていない。
特許文献2には、焼戻マルテンサイトおよびフェライトを母相組織とするTRIP鋼板が開示されており、GI鋼板およびGA鋼板の両方が例示されている。ここには、GA鋼板に関し、好ましい合金化温度は450〜600℃である旨記載されているが、γR中のC濃度(Cγ)については、何も記載されていない。
特開2002−235160号公報 特開2005−146301号公報
前述したように、TRIP鋼板は、残留オーステナイト(γR)による優れた延性向上作用を利用するものであるが、オーステンパ処理によって生成したγRは、合金化を適切に行わないと、セメンタイトとフェライトに変態し、GA鋼板中のγR量が低下するといった問題がある。即ち、GI鋼板では、γRの生成により優れた強度−延性バランスが得られていたにもかかわらず、GI鋼板を合金化する過程で、GI鋼板中のγRの一部が消失するため、GA鋼板では、所望とする強度−延性バランスが有効に発揮されない場合があるという問題を抱えている。特に、GA鋼板では、合金化温度による強度−延性バランスのバラツキが大きいことから、合金化温度に応じて、常時、最大級の強度−延性バランスを発揮し得るGA鋼板の提供が切望されている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、合金化温度に応じて最大級の強度−延性バランスを発揮し得る合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、常時、バラツキなく、製造することが可能な強度−延性バランスのバラツキ改善方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の強度−延性バランスのバラツキ改善方法は、鋼中成分は、質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:2.5%以下、Mn:1.0〜3.5%、sol.Al:2.5%以下、Si+sol.Al:1.0〜3.0%、残部:Fe及び不可避的不純物で、鋼中組織は、フェライトおよび/またはベイニティックフェライトの母相組織と、残留オーステナイトの第2相組織とを含む合金化溶融亜鉛めっき鋼板の強度−延性バランスのバラツキを改善する方法であって、合金化温度(Tga)に応じて、合金化前の溶融亜鉛めっき鋼板中の残留オーステナイトの炭素濃度(Cγ)が下記式(1)を満足するように制御することに要旨を有している。
−0.0030×Tga+2.42≦Cγ≦−0.0030×Tga+2.72
・・・(1)
但し、450≦Tga≦550
式中、Tgaは合金化温度(℃)であり、Cγは合金化前の溶融亜鉛めっき鋼板中の残留オーステナイトの炭素濃度(%)である。
好ましい実施形態において、前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、更に他の元素として、Nb:0.1%以下(0%を含まない)を含有している。
本発明には、上記のいずれかに記載のバラツキ改善方法を用いて合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法も包含される。また、本発明には、上記のいずれかに記載のバラツキ改善方法で得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いて得られた自動車用部材も含まれる。
本発明の強度−延性バランスのバラツキ改善方法は、上記のように構成されているため、残留オーステナイト組織を有する溶融亜鉛めっき鋼板を合金化して合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造しても、溶融亜鉛めっき鋼板中に含まれる残留オーステナイトによる優れた延性向上作用が、そのまま、合金化後も有効に引き継がれ、合金化温度による強度−延性バランスのバラツキを改善することできる。その結果、本発明によれば、合金化温度に応じて最大級の強度−延性バランスを発揮し得る合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、常時、バラツキなく、製造することが可能である。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)において、TRIP鋼板の特性を有効に発揮させるためには、合金化後も、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)由来の残留オーステナイト(γR)がセメンタイトとフェライトに変態して消失することなく、そのまま残存していることが必要である。しかしながら前述したように、オーステンパ処理によって生成したγRは、合金化を適切に行わないと、セメンタイトとフェライトに変態し、GA鋼板中のγR量が低下するため、GA鋼板では、所望とする強度−延性バランスが有効に発揮されないといった問題を抱えている。
TRIP鋼板については、これまで、主に、GI鋼板を対象に研究が進められており、GI鋼板を合金化したGA鋼板の特性は、充分研究が行なわれていないというのが実情である。このような事情のもと、本発明者は、特に、合金化温度に応じて最大級の強度−延性バランスを発揮し得る合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、常時、バラツキなく、製造することが可能な方法を提供するという観点から検討を進めてきた。その結果、合金化温度(Tga)に応じて、合金化前の溶融亜鉛めっき鋼板中の残留オーステナイト(γR)の炭素濃度(Cγ)が上記式(1)を満足するように制御すれば、所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成した。
はじめに、本発明に到達した経緯を詳細に説明する。
本発明者は、まず、伸びなどの延性向上に寄与する残留オーステナイト(γR)中の炭素濃度(Cγ)に着目した。前述したように、GI鋼板は、鋼板中のγR中のCγが多いほど、γRは安定化し、延性が上昇して強度−延性バランスが向上する。この点は、GA鋼板も同じであり、合金化後のγR中のCγが多いほど、強度−延性バランスが向上する。しかしながら、合金化前のγR中のCγに関していえば、GA鋼板はGI鋼板と異なる挙動を示しており、GA鋼板では、合金化前のγR中のCγ量が多くても少なくても、良好な強度−延性バランスを確保することが出来ないことが、本発明者による数多くの基礎実験によって初めて明らかになった。
更に、本発明者が実験を重ねた結果、GA鋼板では、合金化温度に応じて、最大級の強度−延性バランスを発揮し得る適切なCγ量の範囲(至適範囲)があることを突き止めた。
GI鋼板とGA鋼板との上記相違点について、図1〜図3を参照しながら説明する。これらの図は、後記する実施例の欄に記載の結果(表2〜表3)の一部を抜粋し、グラフ化したものである。
図1は、GI鋼板における、Cγ量と強度−延性バランス(TS×El)との関係をグラフ化したものである。図1中、□は表3のNo.30〜32(表1の鋼種bを使用)の結果を、×は表2のNo.1〜3(表1の鋼種aを使用)の結果を、それぞれ示している。
図1から明らかなように、GI鋼板では、残留オーステナイト中のCγが高くなるほど、強度−延性バランスが向上することが分かる。
一方、図2は、GA鋼板における、合金化前のCγ量と強度−延性バランス(TS×El)との関係をグラフ化したものである。図2中、●は合金化温度が475℃の結果(表3のNo.33〜35)を、×は合金化温度が500℃の結果(表3のNo.36〜38)を、△は合金化温度が525℃の結果(表3のNo.39〜41)を、それぞれ、示している。これらは、いずれも表1の鋼種bを使用した結果である。
図2に示すように、GA鋼板には、合金化温度に応じて、それぞれ、強度−延性バランスを最大限に発揮し得るCγ量の至適範囲が存在し、Cγ量が当該至適範囲より多くても少なくても、強度−延性バランスは低下することが分かる。
更に、図2より、GA鋼板では、合金化温度が475℃、500℃、525℃と高くなるほど、Cγ量の至適範囲は低下する傾向が見られることも分かった。即ち、最大級の強度−延性バランスを実現するためには、合金化温度が高いときはCγ量の至適範囲を低く設定し、一方、合金化温度が低いときはCγ量の至適範囲を高く設定すれば良いことが分かった。
上記の傾向は、図3を参照すると一層明瞭になる。図3中、○は合金化温度が475℃の結果(後記する表2のNo.7〜13)を、●は合金化温度が500℃の結果(後記する表2のNo.14〜20)を、それぞれ示している。これらは、いずれも表1の鋼種aを使用した結果である。
図3においても、前述した図2と同様の傾向が見られ、合金化温度が500℃と高いときはCγ量の至適範囲を低く設定し、一方、合金化温度が475℃と低いときはCγ量の至適範囲を高く設定すれば、合金化温度に応じた最大級の強度−延性バランスを実現できることが分かる。
上記の図1〜図3に示す実験結果を踏まえたうえで、本発明者らは、更に検討を重ねてきた。その結果、合金化温度(Tga)に応じて、合金化前の溶融亜鉛めっき鋼板中の残留オーステナイト(γR)の炭素濃度(Cγ)が下記式(1)を満足するように制御すれば、合金化温度に応じた最大級の強度−延性バランスを実現出来ることを突き止め、本発明を完成した。
−0.0030×Tga+2.42≦Cγ≦−0.0030×Tga+2.72
・・・(1)
但し、450≦Tga≦550
上記式(1)に基づき、再び、図3を参照する。図3において、合金化温度が475℃のとき(図中、○)の強度−延性バランス(TS×El)の推移をみると、Cγが上記式(1)の範囲を満足する例(本発明例)は、いずれも、上記式(1)の範囲を満足しない例(比較例)に比べ、強度−延性バランスが格段に向上している。具体的には、本発明例における(TS×El)の値は、いずれも比較例における(TS×El)の最小値に比べ、約3GPa%以上も上昇している。同様の傾向は、合金化温度が500℃のとき(図中、●)においても見られた。
次に、上記式(1)について、詳しく説明する。上記式(1)は、要するに、合金化温度(Tga)が高いときはCγを低く設定し、一方、合金化温度(Tga)が低いときはCγを高く設定するように定めたものであり、上記式(1)に従ってCγとTgaとを適切に制御すれば、合金化温度に応じた最大級の強度−延性バランスを発揮し得るGA鋼板を提供できるというものである。
ここで合金化温度(Tga)は、残留オーステナイトの性質(残留オーステナイトの変態、および残留オーステナイト中へのCの濃化)と密接に関連している。即ち、合金化温度が高いほど、残留オーステナイトの変態が促進され、セメンタイトとフェライトへ変態し易くなる。また、残留オーステナイト中へのCの濃化も促進される。逆に、合金化温度が低いほど、残留オーステナイトの変態は生じ難くなる。この傾向は、残留オーステナイト中のCγが高くても同様に見られる。
上記式(1)は、このような残留オーステナイトの性質と合金化温度との関係をうまく利用したものである。即ち、合金化温度が高い場合には、上記式(1)に従ってCγを低く制御すれば、残留オーステナイトから、セメンタイトとフェライトへの変態が抑えられる。このようにCγを低く抑えることで、GA後に残留オーステナイトを多く存在させることができる。
一方、合金化温度が低い場合には、上記式(1)に従って、合金化温度が高いときよりもCγを高く制御し、GA鋼板中に安定な残留オーステナイトを多く存在させることが有効である。このようにCγを高めておけば、GA後にCγ量の多い安定した残留オーステナイトを多く存在させることができる。
従って、上記式(1)に基づいて残留オーステナイト中のCγを適切に制御すれば、合金化温度に応じた最大級の強度−延性バランスを実現することができる。
一方、GA直前の残留オーステナイト中のCγが上記式(1)の範囲を満足しないときは、以下の不具合を有している。以下では、説明の便宜のため、上記式(1)の左辺で算出される値をQ値、上記式(1)の右辺で算出される値をR値と呼ぶことがある。
まず、GA直前の残留オーステナイト中のCγが上記式(1)の左辺の値(Q値)より低い場合について考察する。この場合は、GA後もGA直前のCγ(低いCγ)がそのまま引き継がれるため、GA鋼板には、GI鋼板と同様、Cγの少ない残留オーステナイト(γR)が生成する。
次に、GA直前の残留オーステナイト中のCγが上記式(1)の右辺の値(R値)より高い場合について考察する。この場合は、Cγが高すぎるためにGAの過程で残留オーステナイトがセメンタイトとフェライトに変態してしまうため、GA鋼板には、GI鋼板と同様、Cγの少ない残留オーステナイトが生成する。
従って、GA直前の残留オーステナイト中のCγが上記式(1)の範囲内にあるときにのみ、GA後もセメンタイトとフェライトに変態することが少なく、GA直前のCγ(GI由来のCγ)がほぼそのまま継承された残留オーステナイトを確保することができる。
図4は、後記する実施例の欄に記載の結果(表1のNo.7〜23,鋼種aを用い、Tgaが450〜550℃の例)を、合金化温度ごとに整理したものである。図4中、●は上記式(1)の範囲内に含まれる例であり、○は上記式(1)の範囲を外れる例である。
図4に示すように、Cγが上記式(1)の範囲を満足する例(本発明例)は、いずれも、上記式(1)の範囲を満足しない例(比較例)に比べ、強度−延性バランスが格段に向上している。具体的には、本発明例における(TS×El)の値は、いずれも、比較例における(TS×El)の最小値に比べ、約3GPa以上も上昇している。
具体的には、合金化温度(Tga)に応じて、以下のように、GA直前のCγを制御すれば良い。
Tga=450℃の場合、1.07%≦Cγ≦1.37%
Tga=475℃の場合、0.995%≦Cγ≦1.295%
Tga=500℃の場合、0.92%≦Cγ≦1.22%
Tga=550℃の場合、0.77%≦Cγ≦1.07%
ここで、合金化前の残留オーステナイト中のCγは、後に詳しく説明するように、溶融亜鉛めっきを行った後合金化処理を行う前に、約10℃/秒の平均冷却速度で急冷した鋼板を用い、X線回折によって測定したものである。
以上の知見に基づき、本発明では、上記式(1)を定めた。
更に、本発明では、合金化温度(Tga)を450〜550℃の範囲内に定めている。この温度範囲は、残留オーステナイトを有するGA鋼板を得るために設定されたものである。即ち、Tgaが450℃未満になると、溶融亜鉛めっき層を合金化することができない。一方、Tgaが550℃を超えると、残留オーステナイトがセメンタイトとフェライトに変態してしまう。
このように、本発明に係る強度−延性バランスのバラツキ改善方法は、合金化温度を450〜550℃の範囲内にすることを前提にしたうえで、上記式(1)に基づき、合金化温度に応じて合金化前のCγを制御するというものである。本発明の改善方法を実施するに当たっては、後に詳しく説明するように、鋼種などに応じて、合金化温度の下限(溶融亜鉛めっき層を合金化するための温度)を適切に設定すれば良い。
次に、Cγを制御する方法について、具体的に説明する。Cγは、例えば、鋼中成分、フェライト−オーステナイト2相域温度からオーステンパ温度域までの冷却条件、オーステンパ条件などによって変化することが知られている。ここでは、オーステンパ条件以外の要件(鋼種、冷却条件など)を一定にし、オーステンパ温度及びオーステンパ時間を種々変化させたときのCγ量の推移(オーステンパ条件とCγ量との関係を示す予備データ)を予め調べて作成しておき、この予備データに基づき、所定のCγ量を得るためのオーステンパ条件を適宜選択することが好ましい。オーステンパ処理は、通常、約300〜500℃の温度(オーステンパ温度)で約20〜1000秒間(オーステンパ時間)行われ、これにより、残留オーステナイトによる延性向上作用が有効に発揮されるようになる。従って、上記の予備データは、オーステンパ温度およびオーステンパ時間を上記の範囲内で種々変化させることによって作成すれば良い。
図5は、オーステンパ条件とCγ量との関係を示す予備データの一例である。図5には、Cを0.18質量%、Siを1.5質量%、Mnを1.5質量%、sol.Alを0.045質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を用い、後記する条件Aに記載の冷却条件で冷却を行なったとき、オーステンパ温度(300〜500℃)およびオーステンパ時間(20〜1000秒間)を種々変化させたときに測定されたCγ量の結果を示している。
図5において、例えば、Cγを1.0%に制御する場合を考える。オーステンパ時間は、図5に示すように、オーステンパ温度が400℃の場合を境にしてほぼ対称なカーブを示している。従って、例えば、400℃の温度でオーステンパ処理を行うときは、オーステンパ時間を50秒程度に短く設定すればよく、一方、350℃または450℃の温度でオーステンパ処理を行うときは、オーステンパ時間を100秒程度に長く設定することが好ましい。
次に、上記の強度−延性バランスのバラツキ改善方法を用い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法について説明する。
まず、C:0.10〜0.25%、Si:2.5%以下、Mn:1.0〜3.5%、sol.Al:2.5%以下、Si+sol.Al:1.0〜3.0%を含有し、残部:Fe及び不可避的不純物である鋼を用意する。各成分の限定理由は、以下の通りである。
C:0.10〜0.25%
Cは、残留オーステナイトの生成に重要な元素であり、特に、残留オーステナイト中のCγに大きく影響する元素である。Cが0.10%未満では、残留オーステナイトを生成させることが難しい。従ってCは0.10%以上であり、好ましくは0.13%以上、より好ましくは0.14%以上である。しかしCが0.25%を超えると、溶接性が悪くなる。従ってCは0.25%以下であり、好ましくは0.23%以下、より好ましくは0.2%以下である。
Si+sol.Al:1.0〜3.0%
Siおよびsol.Alは、いずれも、残留オーステナイトの生成に必要な元素であり、合計で1.0%以上含有させる。好ましくは1.3%以上であり、より好ましくは1.5%以上である。しかしSiとsol.Alの合計が3.0%を超えるように含有させても、残留オーステナイトを生成させる効果は飽和するし、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の延性が却って劣化する。従って合計は3.0%以下とし、好ましくは2.8%以下、より好ましくは2.5%以下である。Siとsol.Alは、単独で含有しても良いし、両方を含有しても良い。即ち、Siのみを含有しsol.Alは実質的に含有しない場合と、sol.Alのみを含有しSiを実質的に含有しない場合と、Siとsol.Alの両方を含有する場合とを含み得る。
Siとsol.Alは、夫々、Si:2.5%以下(0%を含む)、sol.Al:2.5%以下(0%を含む)を満足しているのがよい。Siまたはsol.Alを2.5%を超えるように含有させても、残留オーステナイト生成作用は飽和するし、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の延性が却って劣化するからである。Siは、2.3%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下である。sol.Alは、2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下である。
Mn:1.0〜3.5%
Mnは、オーステナイトを安定化させ、残留オーステナイトの生成に必要な元素であり、1.0%以上含有する。好ましくは1.3%以上であり、より好ましくは1.5%以上である。しかし3.5%を超えて含有させると、鋳片割れ等の問題が発生する。従ってMnは3.5%以下とし、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下である。
更に、必要に応じて、下記の元素を積極的に添加してもよい。
Nb:0.1%以下(0%を含まない)
Nbは、析出強化作用および組織の微細化作用を有しており、鋼板の高強度化に寄与する元素である。しかし0.1%を超えて含有させても上記効果は飽和してしまい、経済的に無駄である。従ってNbは0.1%以下とする。好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.06%以下である。なお、Nbは少量添加することで上記効果を発揮するが、好ましくは0.01%以上含有させるのがよく、より好ましくは0.02%以上含有させればよい。
次に、上記の鋼を用い、常法に従って、所定の母相組織および残留オーステナイトを有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。その際、予め設定された合金化温度に応じ、上記式(1)に基づいて合金化前のCγを適切に制御すれば、合金化温度に応じた最大級の強度−延性バランスを発揮し得る合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、特に限定されず、熱間圧延後の冷却速度を調整する等して母相組織(フェライトおよび/またはベイニティックフェライト)を導入し、次いで、フェライト−オーステナイト2相域温度から特定のパターンで冷却し、オーステンパ処理を施すことによってγRを導入する。具体的には、所定の母相組織と残留オーステナイト(後記する)が得られるよう、上記成分の鋼を、以下のように熱間圧延し、巻取を行った後、必要に応じて冷間圧延を行う。冷間圧延の前には、鋼板の表面に形成されたスケールを除去するため、酸洗を行ってもよい。
熱間圧延の条件は、例えば、加熱温度を約1000〜1300℃、仕上圧延温度を約800〜950℃、巻取温度を約700℃以下の範囲内で行うことが好ましい。加熱温度は、仕上温度の確保およびオーステナイト結晶粒の粗大化防止の観点から、上記の範囲内に制御する。熱間圧延の仕上温度は、加工性を阻害する集合組織が形成されないように上記範囲内に定めた。巻取温度を約700℃以下に制御するのは、この温度より高温で巻取ると、鋼板表面のスケールが厚くなり、酸洗性が劣化するためである。なお、仕上圧延後の冷却速度は、パーライトの生成を抑制するため、約30〜120℃/秒の範囲内に制御することが好ましい。
冷間圧延は、加工性を高めるため、必要に応じて行われる。冷延率は、約10%以上であることが好ましい。冷延率が10%未満では、所望の製品を得るために熱延板を薄く長くする必要があり、酸洗時の生産性などが低下するようになる。
次に、上記鋼板をオーステナイト領域(Ac1点以上の温度)に加熱する。加熱条件は、母相組織の種類によって適切に制御すれば良い。例えば、フェライト組織を生成する場合は、約800〜840℃の温度で約50〜200秒間加熱することが好ましい。一方、ベイニティックフェライト組織を生成する場合は、約900〜950℃の温度で約50〜200秒間加熱することが好ましい。上記の加熱処理は、連続式溶融亜鉛めっきラインで行えばよい。
次いで、上記鋼板を約2〜100℃/秒の冷却速度でオーステンパ温度域(約300〜500℃)まで冷却する。冷却速度が2℃/秒未満では、冷却中にパーライトが多く生成し、冷却終了時のオーステナイト体積率が著しく減少してしまう。冷却速度は、パーライト変態領域を避ける様に、出来るだけ急速に冷却する方が良いが、冷却速度を大きくし過ぎると、冷却終了時での温度を制御することが困難なため、上限を100℃/秒とすることが好ましい。
冷却方法は、後記する実施例の欄に記載の条件Bに示すように、オーステンパ温度域まで冷却する(一段冷却)方法が簡便であるが、一段冷却でフェライトを安定に生成させることは困難である為、冷却速度を複数回に分けて設定する多段冷却法を採用することが好ましい。後記する条件Aでは、二段冷却法を採用している。
次に、オーステンパ温度(約300〜500℃)で20〜1000秒間加熱保持する(オーステンパ処理)。これにより、所定量の残留オーステナイトが得られる。本発明では、予め設定された合金化温度に応じ、合金化前の残留オーステナイト中のCγが上記式(1)を満足するように、オーステンパ条件を適切に制御すれば良い。
次に、溶融亜鉛めっき処理を行う。めっき浴の温度は約400〜500℃(より好ましくは約440〜470℃)とし、約1〜5秒間浸漬することが好ましい。めっき浴の組成は特に限定されず、例えば、有効Al濃度が0.07〜0.13質量%の溶融亜鉛めっき浴とすることが好ましい。めっき後は1〜30秒以内に合金化する。
合金化は、約450〜550℃の温度に加熱して行う。合金化時間は、約5〜30秒間の範囲内に制御することが好ましい。合金化処理の加熱手段は、特に限定されず、例えば、ガス加熱、インダクションヒーター加熱などの慣用の手段を採用することができる。その後、約1℃/秒以上の平均冷却速度で常温まで冷却する。
このようにして得られる合金化溶融亜鉛めっき鋼板の組織は、以下のように制御されていることが好ましい。
母相組織:フェライト(PF)またはベイニティックフェライト(BF)
フェライト(ポリゴナルフェライトのこと、PF)およびベイニティックフェライト(BF)は、鋼板の強度を高めるだけでなく、伸び特性の向上にも寄与している。BFとは、転位密度(初期転位密度)の高い下部組織(ラス状組織は、有していても、有していなくても良い)を意味し、転位密度がないか或いは極めて少ない下部組織を有するPFと相違している。BFは、PFに比べ転位密度が高いため、高強度を容易に達成できると共に、伸び特性や伸びフランジ性も高いという特徴を有している。本発明では、上記の組織が単独で存在していてもよいし、混合組織となっていてもよい。
母相組織の占積率は、全組織に対して、70面積%以上であればよい。好ましくは80面積%以上であり、より好ましくは85面積%以上である。
第2相組織:残留オーステナイト(γR)
残留オーステナイトは、鋼板の全伸び、更には疲労特性を向上させる組織である。この様な作用を有効に発揮させる為には、全組織に対して占積率(面積率)で3%以上存在することが必要である。好ましくは5%以上である。しかし残留オーステナイトが多量に存在すると伸びフランジ性が劣化することがある。残留オーステナイトの上限は、前述した母相組織とのバランスによって適切に定められるが、上限は30%程度とする。
残留オーステナイトの量は、後記する実施例の欄に詳述するように、飽和磁化測定法によって測定することができる。
第2相組織には、残留オーステナイトの他、本発明の作用を損なわない範囲で、他の異種組織として、ベイナイトおよび/またはマルテンサイトを有していても良い。これらの組織は本発明の製造過程で必然的に残存し得るものであるが、少なければ少ない程良く、全組織に対するベイナイトとマルテンサイトの占積率は、合計で、例えば5%以下(好ましくは3%以下)であることが推奨される。尚、上記異種組織には、パーライトは含まれておらず、最大でもパーライトを10%以下に制御することが推奨される。より好ましいのは、パーライト組織は0%である。
上記の製造方法によれば、おおむね590〜1180MPaレベルの高強度の合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
本実施例では、合金化温度に応じて、合金化前のCγが上記式(1)を満足するように制御すれば、合金化温度に応じた最大級の強度−延性バランスを発揮し得る合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られることを説明する。
本実施例で行なった製造条件は、次のとおりである。下記表1に示す成分組成の鋼を溶製し、溶鋼を鋳造して得られたスラブを1150℃に加熱し、仕上温度を860〜900℃として厚さ2.4mmまで熱間圧延し、630℃まで平均冷却速度30℃/秒で冷却し、この温度で巻き取った。得られた熱延鋼板を酸洗後、冷延率50%で厚さ1.2mmまで冷間圧延し、冷延鋼板を得た。なお、下記表4に示すNo.63については、熱間圧延時に鋳片割れが生じたため、以後の試験を行っていない。
得られた冷延鋼板に、下記A〜Cのいずれかの条件でオーステンパ処理を行った。
[条件A:表2のNo.1〜26、表3のNo.30〜41、表4のNo.60〜63]
条件Aは、フェライトの母相組織を得る方法であり、以下に示すように二段冷却を行なっている。
上記冷延鋼板を、連続式溶融亜鉛めっきラインにて840℃に加熱し、この温度で100秒間保持した後、650℃まで冷却速度5℃/秒で冷却し、次いで下記表2〜4に示すオーステンパ温度まで30℃/秒で冷却し、このオーステンパ温度で下記表2〜4に示すオーステンパ時間保持してオーステンパ処理した。
[条件B:表3のNo.42〜47、表4のNo.48〜59]
条件Bは、条件Aと同様、フェライトの母相組織を得る方法であるが、二段冷却を行なっていない点で条件Aと相違している。
上記冷延鋼板を、連続式溶融亜鉛めっきラインにて800℃に加熱し、この温度で100秒間保持した後、下記表2〜4に示すオーステンパ温度まで冷却速度30℃/秒で冷却し、このオーステンパ温度で下記表2〜4に示すオーステンパ時間保持してオーステンパ処理した。
[条件C:表2のNo.27〜29]
条件Cは、ベイニティックフェライトの母相組織を得る方法である。
上記冷延鋼板を、連続式溶融亜鉛めっきラインにて900℃に加熱し、この温度で100秒間保持した後、450℃まで冷却速度30℃/秒で冷却し、450℃(オーステンパ温度)で下記表2〜4に示すオーステンパ時間保持してオーステンパ処理した。
上記条件A〜Cのいずれかでオーステンパ処理し、得られた鋼板は、引き続き、めっき浴温が450〜470℃、めっき浴中の有効Al濃度が0.10%の溶融亜鉛めっき浴に3秒間浸漬させ、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)を得た。なお、オーステンパ処理後、めっき浴温までの冷却速度は、30℃/秒とした。
次に、下記表2〜4に示す種々の合金化温度(Tga)で20秒間保持した後、室温まで10℃/秒以上(具体的には、20℃/秒)の平均冷却速度で急冷し、圧下率1.0%で調質圧延して合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)を得た。但し、表2のNo.1〜3、表3のNo.31〜33は、合金化処理を行っておらず、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)の例である。
(組織の同定)
このようにして得られたGI鋼板またはGA鋼板を用い、各鋼板の板厚1/4位置における組織およびCγを以下のようにして測定した。なお、GI鋼板の組織は、上記のように溶融亜鉛めっきを行なった後、室温まで10℃/秒以上の平均冷却速度で急冷し、得られた供試材を用いて測定した。具体的には、鋼板をナイタールで腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM、倍率:3000倍)観察によりポリゴナルフェライト、ベイニティックフェライトおよび残留オーステナイトを下記の通り区別して面積率を求めた。
ポリゴナルフェライト(PF):SEM写真において黒色であり、多角形の形状で、内部に第2相組織(残留γやマルテンサイト)を含まない。
ベイニティックフェライト(BF):SEM写真において、第2相組織(主に、残留オーステナイトであり、そのほかにマルテンサイトなども含む)を含むベイナイト組織から該第2相組織を差し引いて求めた。SEM写真では濃灰色を示し、ベイニティックフェライトと上記第2相を分離区別できない場合も多い。この様な場合には、ベイナイト組織(ベイニティックフェライト+残留γと仮定)から、後述する飽和磁化法による残留γを差し引いた値を、ベイニティックフェライトの面積率とした。
残留γ(γR):飽和磁化測定法(R&D 神戸製鋼技報 Vol.52、No.3を参照)で面積率を測定した。
(残留オーステナイト中のCγの測定)
上記のようにして得られた供試材の板厚1/4位置における残留オーステナイト中のCγを、X線回折により測定した格子定数から求めた。詳細な測定方法は、例えば、ISIJ Int.Vol.33,(1993),No.7,P.776に記載されている。
(合金化の評価)
GA鋼板の溶融亜鉛めっき層が合金化できているかどうかを目視で判断した。具体的には、表面に溶融亜鉛によるギラツキが残っている場合を合金化できていない(×)と判断し、表面がくすんでおり、ギラツキが無くなっている場合を合金化できている(○)と判断した。
(強度−延性バランスの測定)
上記のGI鋼板またはGA鋼板からJIS Z2201の5号試験片を切り出し、引張試験(歪速度:10mm/秒)を行って引張強さ(TS)および伸び(El)を測定した。表2〜表4には、TS×Elの積も併記した。
これらの結果を表2〜4にまとめて示す。表2〜4には、参考のため、各合金化温度(Tga)を上記式(1)に代入したときの左辺の値(Q値)と右辺の値(R値)も併記している。
Figure 0004732962
Figure 0004732962
Figure 0004732962
Figure 0004732962
これらの表より以下のように考察することができる。
(No.1〜3)
No.1〜3は、鋼種aを用い、条件Aにより母相組織がポリゴナルフェライトの溶融亜鉛めっき鋼板を製造した例であり、Cγ量が多いほど、強度−延性バランスが向上していることが分かる。
(No.4〜26)
No.4〜26は、鋼種aを用い、条件Aにより母相組織がポリゴナルフェライトの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した例である。
このうちNo.4〜6は、合金化温度(Tga)が440℃と低い例であり、合金化ができなかった。
No.7〜13は、合金化温度(Tga)が475℃の例であり、いずれも合金化は適切に行われている。このうち合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.9〜11は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.7〜8、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.12〜13に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイト(GI鋼板由来の残留オーステナイト)は、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
No.14〜20は、合金化温度(Tga)が500℃の例であり、いずれも合金化は適切に行われている。このうち合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.16〜18は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.14〜15、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.19〜20に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイトは、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
No.21〜23は、合金化温度(Tga)が525℃の例であり、いずれも合金化は適切に行われている。このうち合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.22は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.21、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.23に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイトは、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
一方、No.24〜26は、合金化温度(Tga)が575℃と高い例であり、合金化により、残留オーステナイトがセメンタイトとフェライトに変態し、所望の残留オーステナイトが得られなかった。
(No.27〜29)
No.27〜29は、鋼種aを用い、条件Cにより母相組織がベイニティックフェライトの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した例である。このうち合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.28は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.27、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.29に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイト(GI鋼板由来の残留オーステナイト)は、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
(No.30〜32)
No.30〜32は、鋼種bを用い、条件Aにより母相組織がポリゴナルフェライトの溶融亜鉛めっき鋼板を製造した例であり、Cγ量が多いほど、強度−延性バランスが向上していることが分かる。
(No.33〜41)
No.33〜41は、鋼種bを用い、条件Aにより母相組織がポリゴナルフェライトの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した例である。
No.33〜35は、合金化温度(Tga)が475℃の例であり、いずれも合金化は適切に行われている。このうち合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.34は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.33、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.35に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイト(GI鋼板由来の残留オーステナイト)は合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
No.36〜38は、合金化温度(Tga)が500℃の例であり、いずれも合金化は適切に行われている。このうち合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.37は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.36、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.38に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイトは、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
No.39〜41は、合金化温度(Tga)が525℃の例であり、いずれも合金化は適切に行われている。このうち合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.40は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.39、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.41に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイトは、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
(No.42〜47)
No.42〜47は、鋼種cを用い、条件Bにより母相組織がベイニティックフェライトの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した例である。
No.42〜44は、合金化温度(Tga)が475℃の例であり、いずれも合金化は適切に行われている。このうち合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.43は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.42、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.44に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイトは、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
No.45〜47は、合金化温度(Tga)が500℃の例であり、いずれも合金化は適切に行われている。このうち合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.46は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.45、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.47に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイトは、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
(No.48〜50)
No.48〜50は、鋼種dを用い、条件Bにより母相組織がベイニティックフェライトの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した例である。
No.48〜50は、合金化温度(Tga)が500℃の例であり、いずれも合金化は適切に行われている。このうち合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.49は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.48、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.50に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイトは、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
(No.51〜53)
No.51〜53は、鋼種eを用い、条件Bにより母相組織がベイニティックフェライトの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した例である。これらは、いずれも合金化温度(Tga)が500℃の例であり、合金化は適切に行われている。このうち合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.52は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.51、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.53に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイトは、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
(No.54〜56)
No.54〜56は、鋼種fを用い、条件Bにより母相組織がベイニティックフェライトの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した例である。これらは、いずれも合金化温度(Tga)が500℃の例であり、合金化は適切に行われている。このうち、合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.55は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.54、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.56に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイトは、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
(No.57〜59)
No.57〜59は、鋼種gを用い、条件Bにより母相組織がベイニティックフェライトの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した例である。これらは、いずれも合金化温度(Tga)が475℃の例であり、合金化は適切に行われている。このうち、合金化前のCγが上記式(1)を満足するNo.58は、上記式(1)の左辺の値を下回るNo.57、上記式(1)の右辺の値を超えるNo.59に比べ、強度−延性バランスが著しく高められており、合金化前の残留オーステナイトは、合金化により消失することなく、ほぼ残存している。
(No.60〜63)
No.60〜63は、本発明の化学成分を満足しない鋼種h〜kを用い、条件Aにより母相組織がベイニティックフェライトの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した比較例(No.60〜63)である。これらは、いずれも合金化温度(Tga)が500℃の例であり、合金化は適切に行われている。
No.60はC量が少ない鋼種hを用いた例、No.61はSi+sol.Alの合計量が少ない鋼種iを用いた例、No.62はMn量が少ない鋼種jを用いた例、No.63はMn量が多い鋼種kを用いた比較例であり、いずれも所望とする残留オーステナイト量を確保できず、強度−延性バランスが低下している。No.63はMn量が多い鋼種kを用いた比較例であり、熱間圧延時に鋳片割れが生じた。
図1は、GI鋼板における残留オーステナイト中のCγと強度−延性バランスとの関係を示すグラフである。 図2は、GA鋼板における、合金化前の残留オーステナイト中のCγと強度−延性バランスとの関係を示すグラフである。 図3は、他のGA鋼板における、合金化前の残留オーステナイト中のCγと強度−延性バランスとの関係を示すグラフである。 図4は、実施例の結果(表1の鋼種aを用いた結果)を、合金化温度ごとに整理したグラフである。 図5は、オーステンパ条件とCγ量との関係を示す予備データの一例を示す図である。

Claims (3)

  1. 鋼中成分は、質量%で、
    C :0.10〜0.25%、
    Si :2.5%以下、
    Mn :1.0〜3.5%、
    sol.Al :2.5%以下、
    Si+sol.Al:1.0〜3.0%、
    残部 :Fe及び不可避的不純物で、
    鋼中組織は、フェライトおよび/またはベイニティックフェライトの母相組織と、残留オーステナイトの第2相組織とを含む合金化溶融亜鉛めっき鋼板の強度−延性バランスのバラツキを改善する方法であって、
    合金化温度(Tga)に応じて、合金化前の溶融亜鉛めっき鋼板中の残留オーステナイトの炭素濃度(Cγ)が下記式(1)を満足するように制御することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の強度−延性バランスのバラツキ改善方法。
    −0.0030×Tga+2.42≦Cγ≦−0.0030×Tga+2.72
    ・・・(1)
    但し、450≦Tga≦550
    式中、Tgaは合金化温度(℃)であり、Cγは合金化前の溶融亜鉛めっき鋼板中の残留オーステナイトの炭素濃度(%)である。
  2. 前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、更に他の元素として、Nb:0.1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載のバラツキ改善方法。
  3. 請求項1または2に記載のバラツキ改善方法を用いて合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法。
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