JP2009167475A - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】成分組成は、mass%で、C:0.08%以上0.20%以下、Si:0.2%以上1.0%以下、Mn:0.5%以上2.5%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.07%以上0.20%以下、V:0.05%以上0.80%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。そして、組織は体積占有率で60%以上95%以下のフェライトと、第二相はマルテンサイトである。さらに、大きさが20nm未満の析出物に含まれるTiは450mass ppm以上1800mass ppm以下、Vは350 mass ppm以上7200mass ppm以下である。
【選択図】なし
Description
(1)式:(Ti/48+Nb/93)×C/12≦3.5×10−5
(2)式:0.4≦(V/51+Ti/48+Nb/93)/(C/12)≦2.0
(3)式:V+Ti×2+Nb×1.4+C×2+Si×0.2+Mn×0.1≧0.7
特許文献6には、実質的にフェライト単相組織であり、フェライト組織中にTi、MoおよびCを含む析出物が析出してなり、かつ、圧延方向に平行なベクトルに垂直な断面の板厚1/4〜3/4の領域における、隣接する各結晶粒の<110>方位コロニーの面積率が50%以下である、引張強度が950MPa以上の伸びフランジ性に優れた超高張力鋼板に関する技術が開示されている。
特許文献1および4では、Moを含有しているため、近年のMoの原材料価格の高騰に絡んで、著しいコスト増加を招く問題がある。さらに、自動車産業のグローバル化が進み、自動車に使用される鋼板は、外国などの厳しい腐食環境下において使用されるようになり、鋼板に対してより高い塗装後耐食性が必要とされている。これに対して、Moの添加は化成結晶の生成または成長を阻害するため、鋼板の塗装後耐食性を低下させ、上記要求に対応することができない。すなわち、特許文献1および特許文献4に記載の鋼では、近年の自動車産業の要求を十分に満たすことはできない。
i)高強度の鋼板を得るためには、析出物を微細化(大きさ20nm未満)し、微細な析出物(大きさ20nm未満)の割合を高め必要がある。そして、析出物を微細なまま維持するには析出物としてTi−Moを含むもの、または、Ti−Vを含むものが挙げられるが、合金コストの観点からはTiとVの複合析出が有用である。
ii)フェライト相と第二相のマルテンサイト相との硬度差が300以下であるとき、加工後の伸びフランジ性は向上する。また、この加工後の伸びフランジ特性に優れる組織は、第一段冷却停止温度T1および巻取り温度T2を最適範囲に制御することによって得られる。さらに、巻取り温度を300℃以下にすることで、第二相組織が主にマルテンサイト相となり、YRが85%以下になる。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]成分組成は、mass%で、C:0.08%以上0.20%以下、Si:0.2%以上1.0%以下、Mn:0.5%以上2.5%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.07%以上0.20%以下、V:0.05%以上0.80%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織は、体積占有率で60%以上95%以下のフェライトと第二相として5%以上35%以下のマルテンサイトを有し、大きさが20nm未満の析出物に含まれるTi量が450mass ppm以上1800mass ppm以下、V量が350mass ppm以上7200mass ppm以下であり、マルテンサイト相の硬度(HVS)とフェライト相の硬度(HVα)の差(HVS−HVα)が300以下であり、YRが85%以下であることを特徴とする高強度鋼板。
[2]前記[1]において、mass%で、さらに、Cr:0.01%以上、1.0%以下、W:0.005%以上1.0%以下、Zr:0.0005%以上0.05%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度鋼板。
[3]mass%で、C:0.08%以上0.20%以下、Si:0.2%以上1.0%以下、Mn:0.5%以上2.5%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.07%以上0.20%以下、V:0.05%以上0.80%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1150℃以上1350℃以下の温度に加熱したのち、仕上げ圧延温度を850℃以上1000℃以下として熱間圧延を行ない、次いで、650℃以上800℃未満の温度まで、平均冷却速度30℃/s以上で第一段冷却し、1秒以上10秒未満の時間で空冷し、次いで、冷却速度20℃/s以上で第二段冷却し、300℃以下の温度で巻取り、式(1)を満たすことを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
T1≦0.06×T2+764 …(1)
ただし、T1:第一段冷却の停止温度、T2:巻取り温度
[4]前記[3]において、成分組成として、mass%で、さらに、Cr:0.01%以上、1.0%以下、W:0.005%以上1.0%以下、Zr:0.0005%以上0.05%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%、ppmは、すべてmass%、mass ppmである。また、本発明における高強度鋼板とは、引張強度(以下、TSと称する場合もある)が980MPa以上の鋼板であり、熱延鋼板、さらには、これらの鋼板に例えばめっき処理等の表面処理を施した表面処理鋼板も対象とする。
さらに、本発明の目標とする特性は、伸び(El)≧13%、伸張率10%で圧延後の伸びフランジ特性(λ10)≧40%、YR≦85%である。
そして、例えば、本発明の高強度熱延鋼板を自動車の足回り部材やトラック用フレームなどに用いることにより、板厚減少が可能となり、自動車の環境負荷が低減され、衝撃特性が大きく向上することが期待される。
1)まず、本発明における鋼の化学成分(成分組成)の限定理由について説明する。
C:0.08%以上0.20%以下
Cは、TiやVと炭化物を形成しフェライト中に析出することで、鋼板の強度化に寄与する元素である。TSを980MPa以上とするためには、C量を0.08%以上とする必要がある。一方、C量が0.20%を超えると析出物の粗大化により伸びフランジ特性が低下する。以上より、C量は0.08%以上0.20%以下、好ましくは、0.09%以上0.18以下とする。
Siは、フェライト変態の促進および固溶強化に寄与する元素である。そのため、Siは0.2%以上とする。ただし、その量が1.0%を超えると鋼板表面性状が著しく劣化し、耐食性が低下するため、Siの上限は1.0%とする。以上より、Si量は0.2%以上1.0%以下、好ましくは、0.3%以上0.9%以下とする。
Mnは固溶強化に寄与する元素である。しかしながら、その量が0.5%に満たないと980MPa以上のTSが得られない。一方、その量が2.5%を越えると、溶接性を著しく低下させる。よって、Mn量は0.5%以上2.5%以下、好ましいくは0.5%以上2.0%以下である。さらに好ましくは、0.8%以上2.0%以下とする。
Pは旧オーステナイト粒界に偏析するため、低温靭性劣化と加工性の低下を招く。そのため、P量は極力低減することが好ましく、0.04%以下とする。
Sは旧オーステナイト粒界に偏析したり、MnSとして多量に析出すると、低温靭性を低下させたり、また、加工の有無に関わらず伸びフランジ性を著しく低下させる。そのため、S量は極力低下することが好ましく、0.005%以下とする。
Alは、鋼の脱酸剤として添加され、鋼の清浄度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るためには0.001%以上含有させることが好ましい。しかし、その量が0.05%を超えると介在物が多量に発生し、鋼板の疵の原因になるため、Al量は0.05%以下とする。より好ましいAl量は0.01%以上0.04%以下である。
Tiは、フェライトを析出強化する上で非常に重要な元素である。0.07%未満では、必要な強度を確保することが困難であり、0.20%を超えるとその効果は飽和し、コストアップとなるだけである。よって、Ti量は0.07%以上0.2%以下、好ましくは0.08%以上0.18%以下とする。
Vは、析出強化または固溶強化として強度の向上に寄与する元素であり、上記のTiと並んで本発明の効果を得る上で、重要な要件となる。適量をTiとともに複合添加することで、粒径20nm未満の微細なTi−V炭化物として析出する傾向にあり、かつ、Moのように塗装後耐食性を低下させることはない。また、Moに比べコストを低減させるこができる。V量が0.05%未満では、上記添加効果が乏しい。一方、V量が0.80%超えでは、その効果は飽和し、コストアップとなるだけである。よって、V量は0.05%以上0.80%以下、好ましくは、0.06%以上0.60%以下とする。
Cr、WおよびZrは、Vと同様、析出物を形成して、あるいは固溶状態でフェライトを強化する働きを有する。Cr量が0.01%未満、W量が0.005%未満、あるいはZr量が0.0005%未満では高強度化にほとんど寄与しない。一方、Cr量が1.0%超え、W量が1.0%超え、あるいはZr量が0.05%超えでは加工性が劣化する。よって、Cr、W、Zrのいずれか1種または2種以上を添加する場合、その添加量はCr:0.01%以上1.0%以下、W:0.005%以上1.0%以下、Zr:0.0005%以上0.05%以下とする。好ましくはCr:0.1%以上0.8%以下、W:0.01以上0.8以下、Zr:0.001%以上0.04%以下である。
フェライトの体積占有率:60%以上95%以下、マルテンサイトの体積占有率:5%以上35%以下
加工後の伸びフランジ性の向上には、転位密度の低いフェライトが有効である。フェライトの体積占有率が60%未満の場合は、硬質第二相が過多となり、第二相の連結が生じるため、加工後の伸びフランジ性(λ)および伸び(El)が低下する。一方、フェライトの体積占有率が95%を超えた場合は、第二相が少ないために伸びが向上しない。したがって、フェライトの体積占有率は、60%以上95%以下、好ましくは、70%以上90%以下とする。
マルテンサイトの体積占有率が5%未満の場合は、第二相が少ないために伸びが向上しなくなる。一方、35%を越えた場合は、硬質第二相が過多となり、鋼板が変形される際に、第二相の連結が生じるため、加工後の伸びフランジ性(λ)および伸び(El)が低下する。なお、体積占有率で2%以下であれば、一部ベイナイトを含んでも良い。第二相として5%以上35%以下のマルテンサイトが生成した鋼板では、YRが85%以下となる。これは、巻取り後の未変態オーステナイトがマルテンサイトへ変態する時、周囲のフェライトに可動転位が導入される。この可動転位により、降伏応力が低下するため、YRが85%以下になると考えられる。これにより、TSに比べて低いプレス荷重で塑性変形させることができ、また、変形後は、加工硬化により、強度を上昇させることができる。
ここで、フェライトおよびマルテンサイトの体積占有率は、圧延方向に平行な板厚断面のミクロ組織を3%ナイタールで現出し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1500倍で板厚1/4位置を観察し、住友金属テクノロジー株式会社製の画像処理ソフト「粒子解析II」を用いてフェライトおよびマルテンサイト面積率を測定し、体積占有率とした。
本発明の高強度鋼板において、Tiおよび/またはVを含む析出物は、主に炭化物としてフェライト中に析出している。これは、フェライトにおけるCの固溶限がオーステナイトの固溶限より小さく、過飽和のCがフェライト中に炭化物として析出しやすいためと考えられる。そして、こうした析出物により軟質のフェライトが硬質化(高強度化)し、980MPa以上のTSが得られることになる。
さらに、本発明では、大きさが20nm未満の析出物に含まれるTi量およびV量の制御が重要となる。20nm未満の析出物に含まれるTi量が450mass ppm未満、また、V量が350 mass ppm未満であると、析出物の数密度が小さくなり、各析出物の間隔が広くなるため、転位の移動を抑制する効果が小さくなることがわかった。そのため、フェライトを十分に硬質化できないため、TSが980MPa以上の強度が得られなくなる。また、20nm未満の析出物に含まれるTi量が450mass ppm以上で、20nm未満の析出物に含まれるV量が350 mass ppm未満の時は、析出物は粗大化し易い傾向にあるため、TSが980MPa以上の強度が得られなくなる場合がある。また、20nm未満の析出物に含まれるTi量が450mass ppm未満で、20nm未満の析出物に含まれるV量が350mass ppm以上の時は、Vの析出効率が悪くなるため、TSが980MPa以上の強度が得られなくなる場合がある。一方、20nm未満の析出物に含まれるTi量が1800mass ppmを越え、または、V量が7200mass ppmを越えて析出すると、理由は明らかではないが、鋼板は脆性的に破壊し、目標の特性が得られなくなる。よって、大きさが20nm未満の析出物に含まれる析出Ti量および析出V量は共に満足する必要がある。
以上より、大きさが20nm未満の析出物に含まれるTi量は450mass ppm以上1800mass ppm以下、V量は350mass ppm以上7200mass ppm以下とする。
なお、析出物及び/又は介在物を、まとめて析出物等と称する。
また、大きさが20nm未満の析出物に含まれるTi量およびV量は、以下の方法により確認することができる。
試料を電解液中で所定量電解した後、試料片を電解液から取り出して分散性を有する溶液中に浸漬する。次いで、この溶液中に含まれる析出物を、孔径20nmのフィルタを用いてろ過する。この孔径20nmのフィルタをろ液と共に通過した析出物が大きさ20nm未満である。次いで、ろ過後のろ液に対して、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、ICP質量分析法、および原子吸光分析法等から適宜選択して分析し、大きさ20nm未満での析出物における量を求める。
本発明において、重要な構成用件である。第二相(マルテンサイト)とフェライト相の硬度差が300以下であれば、必要とする加工後の伸びフランジ特性が得られる。第二相(マルテンサイト相)とフェライト相の硬度差が300超えでは、鋼板が加工を受けた時にフェライト相と第二相(マルテンサイト)の変形量の差が大きくなるため、クラックが増大し、必要とする加工後の伸びフランジ特性が得られなくなる。硬度差は、小さいほうが良く、好ましくは250以下とする。
本発明の高強度鋼板は、例えば、上記化学成分範囲に調整された鋼スラブを、1150℃以上1350℃以下の温度に加熱したのち、仕上げ圧延温度を850℃以上1000℃以下として熱間圧延を行ない、次いで、650℃以上800℃未満の温度まで、平均冷却速度30℃/s以上で第一段冷却し、1秒以上10秒未満の時間で空冷し、次いで、冷却速度20℃/s以上で第二段冷却し、300℃以下で巻き取り、式(1)を満たすことにより得られる。
T1≦0.06×T2+764 …(1)
ただし、T1:第一段冷却の停止温度、T2:巻取り温度
これらの条件について以下に詳細に説明する。
TiあるいはVなどの炭化物形成元素は、鋼スラブ中ではほとんどが炭化物として存在している。熱間圧延後にフェライト中に目標どおりに析出させるためには熱間圧延前に炭化物として析出している析出物を一旦溶解させる必要がある。そのためには1150℃以上で加熱する必要がある。一方、1350℃を超えて加熱すると、結晶粒径が粗大になりすぎて加工後の伸びフランジ特性、伸び特性ともに劣化するので1350℃以下とする。よって、スラブ加熱温度は、1150℃以上1350℃以下とする。より好ましくは1170℃以上1260℃以下である。
加工後の鋼スラブは、熱間圧延の終了温度である仕上げ圧延温度850℃〜1100℃で熱間圧延される。仕上げ圧延温度が850℃未満では、フェライト+オーステナイトの領域で圧延され、展伸したフェライト組織となるため、伸びフランジ特性や伸び特性が劣化する。仕上げ圧延温度が1000℃を超えると、フェライト粒が粗大化するため、980MPaのTSが得られない。よって、仕上げ圧延温度850℃以上1000℃以下で仕上げ圧延を行う。より好ましくは870℃以上960℃以下である。
熱間圧延後は、仕上げ圧延温度から冷却温度650℃〜800℃まで、平均冷却速度30℃/s以上で冷却を行なう必要がある。冷却停止温度が800℃以上では、核生成が起こりにくいためフェライトの体積占有率が60%以上にならず、Tiおよび/またはVを含む析出物の所定の析出状態が得られない。冷却停止温度が650℃未満では、C、Tiの拡散速度が低下するため、フェライトの体積占有率が60%以上にならず、Tiおよび/またはVを含む析出物の所定の析出状態が得られない。したがって、冷却停止温度は650℃以上800℃未満とする。また、仕上げ圧延温度から冷却停止温度までの平均冷却速度が30℃/s未満では、パーライトが生成するため加工後の伸びフランジ特性や伸び特性が劣化する。なお、冷却速度の上限は、特に限定するものではないが、上記の冷却停止温度範囲内に性格に停止させるためには、300℃/s程度とすることが好ましい。
第一の冷却後、1秒以上10秒以下の間、冷却を停止して空冷する。この空冷している時間が1秒未満ではフェライトの体積占有率60%以上にならず、10秒を超えるとパーライトが生成し、伸びフランジ特性や伸び特性が劣化する。なお、空冷時の冷却速度は、おおむね15℃/s以下である。
空冷後は、巻取り温度300℃以下まで平均冷却速度20℃/s以上で第二の冷却を行なう。このとき、平均冷却速度が20℃/s未満では、冷却中にパーライトが生成するため、平均冷却速度は20℃/s以上、好ましくは50℃/s以上とする。なお、冷却速度の上限は、特に限定するものではないが、上記の巻取り温度範囲内に正確に停止させるためには、300℃/s程度とすることが好ましい。
また、巻取り温度が300℃超えでは、第二相の主体がベイナイトとなり、YRが85%超えとなる。好ましくは、280℃以下である。
第一段冷却後の空冷中に、フェライトへの微細析出が生じる。これより、大部分のフェライト相は析出強化される。析出強化されたフェライト相の硬さは、析出物が生成する温度、つまり、第一段冷却停止温度に影響される。一方、第二相(マルテンサイト相)の硬さは、変態温度、つまり、巻取り温度に影響される。さまざまな研究の結果により、第一段冷却停止温度とT1、巻取り温度をT2とするとT1≦0.06×T2+764を満たすとき、硬度差が300以下となることが明らかとなった。T1>0.06×T2+764では、フェライト相の硬度が低く、かつ、第二相の硬度が高いために、硬度差が300越えとなる。
上記により得られた熱延鋼板を適当な大きさに切断し、10%AA系電解液(10vol%アセチルアセトン-1mass%塩化テトラメチルアンモニウム-メタノール)中で、約0.2gを電流密度20mA/cm2で定電流電解した。
電解後の、表面に析出物が付着している試料片を電解液から取り出して、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(500mg/l)(以下、SHMP水溶液と称す)中に浸漬し、超音波振動を付与して、析出物を試料片から剥離しSHMP水溶液中に抽出した。次いで、析出物を含むSHMP水溶液を、孔径20nmのフィルタを用いてろ過し、ろ過後のろ液に対してICP発光分光分析装置を用いて分析し、ろ液中のTiとVの絶対量を測定した。次いで、TiとVの絶対量を電解重量で除して、大きさ20nm未満の析出物に含まれるTi量およびV量を得た。なお、電解重量は、析出物剥離後の試料に対して重量を測定し、電解前の試料重量から差し引くことで求めた。
圧延方向を引張り方向としてJIS5号試験片を用いてJIS Z 2241に準拠した方法で引張り試験を行ない、引張り強さ(TS)、降伏応力(YS)、およびELを求めた。また、YRは、下降伏応力をTSで割った値とした。
伸張率10%で圧延後、鉄連規格JFST 1001に準じて穴広げ試験を行ない、λ10を求めた。
ビッカース硬さ試験に用いる試験機は、JISB7725に適合したものを用いた。圧延方向に平行な断面について3%ナイタール溶液で組織を現出して、板厚1/4位置にて試験荷重3gでフェライト粒およびマルテンサイト粒にそれぞれくぼみをつけた。くぼみの対角線長さからJISZ2244にあるビッカース硬さ算出式を用い硬度を算出した。それぞれ30個のフェライト粒およびマルテンサイト粒の硬度を測定し、それぞれの平均値をフェライト相の硬度(HVα)およびマルテンサイト相の硬度(HVS)とし、硬度差(HVS−HVα)を求めた。
以上により得られた結果を表2に製造条件と併せて示す。
以上により得られた結果を表4に示す。
Claims (4)
- 成分組成は、mass%で、C:0.08%以上0.20%以下、Si:0.2%以上1.0%以下、Mn:0.5%以上2.5%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.07%以上0.20%以下、V:0.05%以上0.80%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織は、体積占有率で60%以上95%以下のフェライトと第二相として5%以上35%以下のマルテンサイトを有し、大きさが20nm未満の析出物に含まれるTi量が450mass ppm以上1800mass ppm以下、V量が350mass ppm以上7200mass ppm以下であり、マルテンサイト相の硬度(HVS)とフェライト相の硬度(HVα)の差(HVS−HVα)が300以下であり、YRが85%以下であることを特徴とする高強度鋼板。
- mass%で、さらに、Cr:0.01%以上、1.0%以下、W:0.005%以上1.0%以下、Zr:0.0005%以上0.05%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
- mass%で、C:0.08%以上0.20%以下、Si:0.2%以上1.0%以下、Mn:0.5%以上2.5%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.07%以上0.20%以下、V:0.05%以上0.80%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1150℃以上1350℃以下の温度に加熱したのち、仕上げ圧延温度を850℃以上1000℃以下として熱間圧延を行ない、次いで、650℃以上800℃未満の温度まで、平均冷却速度30℃/s以上で第一段冷却し、1秒以上10秒未満の時間で空冷し、次いで、冷却速度20℃/s以上で第二段冷却し、300℃以下の温度で巻取り、式(1)を満たすことを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
T1≦0.06×T2+764 …(1)
ただし、T1:第一段冷却の停止温度、T2:巻取り温度 - 成分組成として、mass%で、さらに、Cr:0.01%以上、1.0%以下、W:0.005%以上1.0%以下、Zr:0.0005%以上0.05%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の高強度鋼板の製造方法。
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