一般に、超音波センサを構成する主な部品は、圧電素子、音響整合層および圧電素子を収容するケースである。当然、圧電素子を駆動すると、その圧電素子とともに音響整合層やケースが振動する。ケースの振動(特に、超音波の放射方向に交差する方向の振動)は、スプリアスの主な原因となる。ケースの振動を抑制するには、圧電素子の送受信面とは反対を剛体で構成すれば理想であると考えられる。そうだとすれば、ケース内に単純にエポキシ樹脂等の硬質な樹脂を充填している従来品でも、スプリアスを十分に抑制できるはずである。ところが、そのような従来品について周波数インピーダンス特性を調べてみると、スプリアスは依然として大きい。また、そのことは、計算機を使った周波数解析からも明白である(図12参照)。こうした事実は、スプリアスの問題が単純に片付かないことを示唆する。
上記のような知見に基づき、本発明者は、以下に記す超音波センサを発明した。すなわち、課題を解決するために本発明の超音波センサは、有底筒状のケースと、ケースの底部の内面に配置された圧電素子と、ケースの底部とは反対側の圧電素子から隔たったところにおいて、ケースの内周面に接する形でそのケース内に配置された樹脂からなる第一ダンパー部材とを備えて、送信感度の低下を抑制しつつ、スプリアスを低減する超音波センサであって、圧電素子側に配置された第一ダンパー部材に重ね合わされると共に、ケースの内周面に接する形で圧電素子から隔離された第二ダンパー部材を配置し、第二ダンパー部材は、第一ダンパー部材よりもヤング率が小さい異なる樹脂材料を主体として構成されており、ケースの開口部には、第二ダンパー部材を当該ケースの外側から取り囲んで支持する支持部を備え、ケースの底部とは反対側に、圧電素子に隣接して配置された吸音部材を備え、第一ダンパー部材は、吸音部材によって圧電素子から隔離されており、ケースは樹脂製であり、圧電素子が取り付けられた底部が、超音波の送受信面をなし、ケースの筒部よりも直径が小であり当該送受信面に垂直な方向における該筒部と自身の境界が第一ダンパー部材と吸収部材との境界と一致する音響整合層に利用され、圧電素子の駆動に基づく第一ダンパー部材を含めたケース全体の振動を、第二ダンパー部材が抑制することを主要な特徴とする。
本発明では、圧電素子から近い位置に、まず硬質(ヤング率が大)の第一ダンパー部材を配置し、それに隣接して軟質(ヤング率が小)の第二ダンパー部材を配置している。このような構成によれば、圧電素子に近いところでは、第一ダンパー部材によって、ケースの中心から拡がる振動が抑制される。さらに、第一ダンパー部材を含めたケース全体の振動を、第二ダンパー部材で吸収する。第二ダンパー部材をヤング率の小さい材料で構成するため、極めて高い減衰効果が得られる。また、超音波流量計に使用するような超音波センサは、残響を抑制するために全体が軽量であることが要求されるが、本発明によれば、全体に硬質な樹脂を充填する場合に比べて軽量化を図ることが可能なため、残響をいっそう抑制するという効果も得られる。
一方、第一ダンパー部材と第二ダンパー部材のヤング率の大小関係が本発明と逆の場合は、圧電素子に近いところでケースの振動の抑えが効かなくなり、スプリアス低減効果を得ることが困難となる。
また、本発明の超音波センサには、ケースの底部とは反対側に、圧電素子に隣接して吸音部材を配置することができる。この場合、第一ダンパー部材は、吸音部材によって圧電素子から隔離される。このようにすれば、第一ダンパー部材が圧電素子に接触することを確実に防止できるので、圧電素子の効率的な振動が妨げられない。
また、エポキシ系樹脂を主体として第一ダンパー部材を構成し、シリコン系樹脂を主体として第二ダンパー部材を構成すれば、ヤング率の大小の調整が容易である。なお、“主体として”とは、質量%で最も多く含有することを意味する。すなわち、各ダンパー部材を構成する樹脂材料は、ガラス、セラミック等の他の材料との複合的なものであってもよい。また、複数の樹脂材料を混合してヤング率の調整を行なったものでもよい。
一つの好適な態様において、樹脂材料を主体として構成され、第二ダンパー部材に重ね合わされて第一ダンパー部材から隔離されるとともに、ケースの開口縁に密着する形で配置された第三ダンパー部材を設けることができる。たとえば、第二ダンパー部材がシリコン系樹脂のように、耐水性に劣る樹脂材料で構成される場合、第二ダンパー部材が膨潤したりして耐水試験をパスできない恐れがある。そこで、上記のごとく、ケースの開口縁に密着するように第三ダンパー部材を設ければ、第二ダンパー部材が露出することを防げる。そのため、第二ダンパー部材の材料選択の幅が拡がる。また、スプリアスを最も低減できる設計の容易化、製造コスト低減といった効果が得られる。なお、第三ダンパー部材は、エポキシ系樹脂のように、耐水性に優れ、経年劣化を生じ難い材料で構成するのがよい。
さらに、上記の第三ダンパー部材は、ケースの開口部を当該ケースの外側から取り囲んで支持する支持部を含むものとして構成されていることが望ましい。支持部によってケースの開口部が固定されれば、ケースの振動がいっそう抑制されるので、スプリアスの低減に寄与する。この効果は、第三ダンパー部材が、エポキシ系樹脂のごとく、適度に硬質な材料で構成されている場合により強く得られる。すなわち、第三ダンパー部材のヤング率は、第二ダンパー部材のヤング率よりも大であることが好ましい。
他の一つの好適な態様において、第二ダンパー部材は、ケースの開口縁に密着する形で第一ダンパー部材に重ね合わされる一方、その第二ダンパー部材に覆い被さる形で配置され、第二ダンパー部材とケースとの双方に跨るように圧電素子の配置されている方向に延び、さらに、ケースを外側から取り囲んで支持する支持部を含んで構成された第三ダンパー部材を設けることができる。つまり、第二ダンパー部材を、ケースに蓋をするような形で配置する。その上で第三ダンパー部材を固定する。このような構成によれば、先に述べた通り、第二ダンパー部材が露出することを防げるため、第二ダンパー部材の材料選択の幅が拡がる。支持部によってケースの開口部が固定されれば、ケースの振動がいっそう抑制されるので、スプリアスの低減に寄与する。もちろん、第三ダンパー部材のヤング率は、第二ダンパー部材のヤング率よりも大であることが望ましい。
また、圧電素子や各ダンパー部材を収容するケースは、開口側に向かうにつれて段階的に広口となるように段付部を有する段付ケースとするとよい。その場合、段付部の高さに第一ダンパー部材の高さを一致させることができる。このような構成によれば、第一ダンパー部材をケース内にしっかりと固定するのに有利である。第一ダンパー部材がしっかり固定されれば、スプリアスの低減にも資する。また、段付部の高さに合わせて第一ダンパー部材を配置する構成によれば、製造も容易である。
上記構成によれば、圧電素子を駆動すると、その圧電素子が接するケース自体も振動する。ケースの振動はスプリアスの主な原因の一つである。圧電素子から近い側にある第一ダンパー部材によって、ケースの中心から拡がる振動が抑制される。もちろん、これだけでもスプリアスの低減効果はあるが、大幅な改善には至らない。そこで、本発明では、第二ダンパー部材の支持部でケースを外側から支持するようにした。特に、ケースの開口部がしっかりと支持されれば、ケースの振動がいっそう抑制されるので、スプリアスの低減に寄与する。
また、ケースを樹脂製とすれば、ケース自身を音響整合層として利用することができる。つまり、圧電素子を取り付ける底部を、超音波の送受信面をなす音響整合層として利用する。この構成によれば、ケースと音響整合層とを別々に用意して組立てる場合に比して部品点数の削減となり、製造コスト減に資する。
また、音響整合層の厚さは、圧電素子の共振周波数(圧電素子が円板状であるとすると径方向振動の共振点)における超音波の波長の1/4よりも大とすることができる。単一の周波数で使用が予定される超音波センサの音響整合層の厚さは1/4波長に一致させるのが通常である。しかしながら、周波数を変化させながら流量計測を行なう超音波流量計に適用する場合、超音波の波長が変化するのだから、音響整合層が常に1/4波長ということは有り得ない。したがって、この場合に採用し得る音響整合層の厚さは、下記3通りであるが、スプリアス低減の観点では、(c)とすることが好適である。
(a)圧電素子の共振周波数における1/4波長に等しい
(b)圧電素子の共振周波数における1/4波長よりも小
(c)圧電素子の共振周波数における1/4波長よりも大
(c)が良い理由は、音響整合層を1/4波長よりも厚くすることに応じて、メイン共振(圧電素子に固有の共振)の共振周波数と、音響整合層に由来するスプリアス共振の共振周波数との差が大きくなる傾向が見られるからである。周波数を可変とする場合、使用周波数帯域の中心周波数は、メイン共振の共振周波数の近くに設定する形となる。したがって、メイン共振の共振周波数とスプリアス共振の共振周波数とが大きい場合、スプリアス共振を使用周波数帯域から外すことも可能であり、好都合である。ただし、音響整合層を厚くしすぎると減衰が大きくなってしまうので、1/2波長を越えない程度とするのがよい(具体的な好適値は後述する)。なお、音響整合層を薄くする(b)の場合には、メイン共振の共振周波数とスプリアス共振の共振周波数との差が小さくなる(縮重する)傾向を示す。
また、本発明の超音波流量計は、流体が流通する流路内の流れ方向上手側および流れ方向下手側のそれぞれに、本発明の超音波センサを設け、それら一対の超音波センサ間で、超音波が予め決められたロック波数になるように送信波パルス群のクロックの周波数を制御し、その周波数を基に流速および流量を求めるようにしたことを主要な特徴とする。本発明の超音波センサは、スプリアスが極めて小さいので、上記のごとく超音波センサ間に定常波を固定する方式の超音波流量計に最適である。逆に言えば、同方式の超音波流量計には、本発明のようにスプリアス低減が十分に図られた超音波センサのみが使用できる。
さらに、本発明の超音波センサには、低Q型(たとえば、Q=70以上120以下)の圧電素子を選択すれば、使用周波数帯域の全体にわたって十分な送受信感度が得られる。このことは、測定を予定する全流量域で高精度な流量計測を実現することにつながる。
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1に示すのは、本発明にかかる超音波センサの軸断面図である。超音波センサ10は、有底筒状のケース13と、ケース13の底部11の内面に配置された板状の圧電素子14と、ケース13の底部11とは反対側に、圧電素子14に隣接して配置された吸音部材15(緩衝部材)と、吸音部材15を挟んで圧電素子14の反対側に配置された第一ダンパー部材16と、第一ダンパー部材16に重ね合わされた第二ダンパー部材17と、第二ダンパー部材17に重ね合わされた第三ダンパー部材18とを備える。
ケース13は、底部11と筒部20とを含んで構成されており、略円筒状の形態を有する。したがって、図1の断面図は、中心軸線Oを挟んで左右対称である。ケース13は、エポキシ樹脂にガラスバルーンを混入した複合材料を成形したものである。底部11は、圧電素子14の音響インピーダンスと、空気やガスなどの媒体の音響インピーダンスとの整合を図るための音響整合層11を構成している。なお、ガラスバルーンを混入しない単一の樹脂材料でケース13を構成してもよい。
また、音響整合層をなす底部11と、筒部20とを別々の材料で構成することも可能である。たとえば、音響整合層11をガラスとエポキシ樹脂の複合材料で円板状に構成する一方、ステンレス鋼やアルミニウム合金など耐食性に優れる金属材料や、エンジニアリングプラスチックを成形して筒部20を別途用意し、その筒部20に、その音響整合層11を接着剤で固定することができる。
音響整合層11は、圧電素子14に接する側とは反対側の面が超音波の送受信面11pになっている。音響整合層11の直径は、筒部20の直径と異ならせてある。本実施形態では、筒部20の直径の方が大である。このような構成によれば、音響整合層11の径方向(送受信面11pに平行な方向)の振動が、筒部20に伝達されることを抑制する効果がある。本実施形態のごとく、中心軸線O方向における音響整合層11と筒部20の境界を、吸音部材15と第一ダンパー部材16の境界に一致させると、音響整合層11と筒部20との境界部付近が第一ダンパー部材16で支持される形となり、さらに効果的である。また、音響整合層11には、送受信面11pを囲う形でテーパ面11rが形成されている。テーパ面11rの形成形態を調整することにより、超音波の指向性を調整したりすることができる。
また、音響整合層11の厚さhは、h=α*(V/(4*fr))に調整されている。ここで、frは圧電素子14に固有の共振周波数、Vは音響整合層11の音速である。また、定数αは、1.25≦α≦1.45である。
単一の周波数で使用する超音波センサの場合、音響整合層の厚さは、いわゆるλ/4に一致させることが技術常識である。しかし、後述する空間定常波固定方式の超音波流量計で使う超音波センサでは、超音波の周波数を流量に応じて変化させるため、この常識が通用しない。そのため、本発明の超音波センサ10では、上記のごとく、音響整合層11の厚さhを、圧電素子14の共振周波数frを基準としたλ/4よりも大としている。このようにすれば、音響整合層11自身の径方向振動が顕著となる周波数帯域を共振周波数frから遠ざけること、すなわちメイン共振の共振周波数と、スプリアス共振の共振周波数とを離すことができるので、周波数可変とするのに好都合である。ただし、過度に厚くし過ぎると送受信感度の低下が顕著になるから、定数αを上記範囲内とすることが望ましい。
圧電素子14は、円板状の形態を有し、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系の圧電セラミックにて構成されている。PZTの他にも、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛などを使用することができる。圧電素子14の厚さは、たとえば音響整合層11の厚さの1/5.5以上1/8.5以下とすることが望ましい。また、直径は、ケース13の底に接着剤で固定したとき周りに適度な隙間ができるよう、ケース13の内径よりも小さく調整されている。また、ケース13との接触面およびそれと平行な面、つまり表面と裏面が、電極形成面(電極が形成されている面)である。電極形成面には、電圧印加用および受信波取り出し用のリードが半田等で接続され、ケース13の開口から引き出されるが、図1では省略している。電極材料には、一般には銀などの良導性金属が使用される。
圧電素子14の後背に配置された吸音部材15は、音響整合層11とは反対側に振動が伝わることや残響を抑制するものであり、たとえばグラスウール、フェルトや不織布といった繊維、さらには発泡樹脂、エラストマーなど、圧電素子14の振動を極力妨げることがない軽量な材料で構成されている。本実施形態では、ゴム弾性を有するシリコン系樹脂を圧電素子14と略同じ厚さの円板状に成形し、圧電素子14の上に載せるだけのような形で配置している。また、吸音部材15の直径は、ケース13の内径に一致するようにしている。なぜなら、ケース13内に樹脂を射出して第一ダンパー部材16を形成するという製造方法を採用する場合、吸音部材15が圧電素子14と第一ダンパー部材16との接触を防ぐ役割を担うからである。
次に、吸音部材15に隣接して設けられた第一ダンパー部材16は、吸音部材15よりも硬質(ヤング率が大)の樹脂、たとえばエポキシ系樹脂で構成されている。その厚さは、圧電素子14の厚さと吸音部材15の厚さを足した値よりも大である。一方、ケース13は、開口側に向かうにつれて段階的に広口となるように段付部131,132を有する。そして、その段付部131,132の高さに第一ダンパー部材16の高さが一致されている。第一ダンパー部材16は円板状の形態を有し、圧電素子14および吸音部材15に同心状に配置され、ケース13に密着してしっかりと固定されている。この構成により、ケース13の径方向振動が抑制される。尚且つ、第一ダンパー部材16は、ケース13の段付部131で外周部が支持される形となっているため、図1の位置よりも圧電素子14の側にズレたりすることもない。これにより、圧電素子14の振動が良好に保たれる。
上記のような第一ダンパー部材16を形成するには、ケース13の底部11に圧電素子14を貼着し、予め成形した吸音部材15をその上に載置したのち、樹脂を射出すればよい。ケース13と第一ダンパー部材16に、同種の樹脂を用いると接着性が良好であり、スプリアスの低減に有利である。また、圧電素子14との間には、吸音部材15が位置するので、第一ダンパー部材16は圧電素子14に直接接触しない。そのため、圧電素子14の振動が妨げられない。
また、第一ダンパー部材16に隣接して、第二ダンパー部材17が配置されている。この第二ダンパー部材17は、第一ダンパー部材16よりも軟質(ヤング率が小)の樹脂、たとえばシリコン系樹脂で構成されている。厚さは、第一ダンパー部材16と同程度でよいが、ケース13から食み出ない厚さに調整する。また、第二ダンパー部材17はケース13にちょうど嵌る大きさの円板状の形態を有し、第一ダンパー部材16に同心状に配置され、ケース13にしっかりと固定されている。ケース13に設けられた段付部132に第一ダンパー部材16の高さが一致されているので、第二ダンパー部材17の方が、第一ダンパー部材16よりもやや径大である。この軟質な第二ダンパー部材17の下面(第一ダンパー部材16との接面)により、第一ダンパー部材16の振動が抑制される。なお、第二ダンパー部材17は、第一ダンパー部材16と同様に樹脂の射出により形成してもよいし、予め成形しておいたものを第一ダンパー部材16に接着剤で貼り合せるようにしてもよい。
さらに、第二ダンパー部材17に隣接して第三ダンパー部材18が設けられている。第三ダンパー部材18は、第二ダンパー部材17と同心状であるとともに、ケース13に蓋をする形で第二ダンパー部材17および当該ケース13に接着剤で固定されている。これにより、ケース13の開口部12の径方向振動が効果的に抑制される。また、第三ダンパー部材18は、第二ダンパー部材17よりも硬質(ヤング率が大)の樹脂、たとえばエポキシ系樹脂で構成されているので、ケース13との接着性は良好である。場合によっては、第一ダンパー部材16と同一樹脂材料を用いてもよい(材料コスト減)。第一ダンパー部材16および第二ダンパー部材17の形成は、ケース13内に樹脂を射出する方法が好適であるが、第三ダンパー部材18は、予め成形しておいたものを接着剤で貼着する方が製造容易である。
以上説明のように、第一ダンパー部材16と第二ダンパー部材17は、第一ダンパー部材16のヤング率が、第二ダンパー部材17のヤング率よりも大となるように、互いに異なる樹脂材料を主体として構成されている。また、第二ダンパー部材17と第三ダンパー部材18とでは、第三ダンパー部材18の方がヤング率は大である。
つまり、図4の模式図に示すごとく、吸音部材15、第一ダンパー部材16、第二ダンパー部材17および第三ダンパー部材18は、同心状の積層構造をなし、尚且つヤング率の大小が交互に入れ替わる構成となっている。ただし、圧電素子14の振動を妨げないように、圧電素子14に接する吸音部材15には、ヤング率の小さい材料を採用することが重要である。また、超音波センサ10の外周面を構成する第三ダンパー部材18は、エポキシ樹脂のような耐水性に優れる樹脂材料で構成されていることも重要である。超音波センサの信頼性試験には、ケース13に水が侵入しやすいかどうか、耐水性に関する試験を行なうことがあるからである。また、既に説明したように、ケース13を構成する樹脂と第三ダンパー部材18を構成する樹脂とを同一種類(エポキシ系樹脂)としているので、相互の接着性に優れる(接着剤にもエポキシ系接着を使用するとよい)。そのため、経年劣化によって剥離が生じ、それがスプリアスの原因になるといった不具合も起こり難い構成となっている。
なお、本明細書においてヤング率の大小は、超音波センサの実使用条件、たとえば、−30℃以上60℃以下の範囲での大小を言うものとする。また、ヤング率については、縦波の伝搬速度と横波の伝搬速度から求める方法が、非破壊試験なので好適に採用できる。なお、参考までに、各部材のヤング率の好適な範囲を表1に示す。
また、図1の実施形態における第三ダンパー部材18に代えて、図2に示すような第三ダンパー部材19を設けることも可能である。図2の軸断面図に示す超音波センサ10’は、第三ダンパー部材19を除けば図1の超音波センサ10と共通である。すなわち、超音波センサ10’の第三ダンパー部材19は、ケース13の開口部12を外側から取り囲んで支持する支持部19aを有する。
第三ダンパー部材19の支持部19aは、中心軸線O方向に沿って送受信面11p側に延び、ケース13の直径が変化する位置まで至り、ケース13の側周面を被覆する形となっている。つまり、図2の例では、ケース13の筒部20全体が第三ダンパー部材19の支持部19aで周りを固められている。このような構成により、ケース13内に配置した第一ダンパー部材16および第二ダンパー部材17と相俟って、ケース13の径方向振動を抑制することができ、スプリアス低減にいっそう効果がある。また、支持部19aを、ケース13よりもヤング率が大の樹脂材料で構成することにより、径方向への剛性を高くできる。つまり、超音波センサ10’を小径化、ひいては全体の小型化に有利である。このことは、第二実施形態の超音波センサ30にも当てはまる。
(第二実施形態)
図3に示すのは、第二実施形態の超音波センサの軸断面図である。超音波センサ30は、有底円筒状のケース31、圧電素子14、吸音部材15、第一ダンパー部材34、第二ダンパー部材35および第三ダンパー部材36で構成され、各部材が積層構造を形成しているという点では、図1や図2の超音波センサ10,10’と共通である。ケース31の底部32を音響整合層とする点も同じである。また、それらの部材に用いる材料も共通とすることができる。以下、相違する点を中心に説明する。
ケース31には段付部311が形成されており、圧電素子14および吸音部材15を収容する位置と、第一ダンパー部材34を収容する位置とで内径が異なる。ただし、ケース31の底部32(音響整合層)と筒部37とは、送受信面32pに隣接するテーパ面32rを無視すれば、同じ外径を持っている。一方、ケース31内には、圧電素子14、吸音部材15および第一ダンパー部材34が収容され、第一ダンパー部材34の吸音部材15に接する側とは反対側の面が、ケース31の開口縁31qに一致するように寸法調整がなされている。第一ダンパー部材34を設けたことにより、ケース31の開口部33のみならず、筒部37全体の径方向振動が抑制される。
また、第一ダンパー部材34の上(図3中では下方)には、ケース31の筒部37と同径の第二ダンパー部材35が配置されている。第二ダンパー部材35は、ケース31に蓋をする形となっている。ケース31の開口縁31qと第一ダンパー部材34の主面が一致しているので、円板状の第二ダンパー部材35は無理なく両者(ケース31と第一ダンパー部材34)にまたがって接着され、それらの振動を効率良く吸収する。そして、この第二ダンパー部材35を内側に収容するような形で、ケース31の開口部33に第三ダンパー部材36が嵌合している。第三ダンパー部材36は、ケース37の側周面37pに密着する支持部36aを含むものとして構成されており、当該ケース31の筒部37を外側から固定する。これにより、ケース31の筒部37の径方向の振動がいっそう抑制される。
以上、図1〜図3に示した超音波センサ10,10’30によれば、予定された使用周波数帯域におけるスプリアス共振とメイン共振とのインピーダンス比Zrを1/30以下とすることが可能である。図5に示すごとく、メイン共振は、超音波センサ10,10’30の使用周波数帯域で観測される、圧電素子に固有の共振である(本実施形態では径方向振動モードの共振点)。他方、スプリアス共振は、超音波センサ10,10’30の使用が予定される周波数帯域において、メイン共振とは異なる位置に観測される。圧電素子14に固有の共振点以外の周波数に、インピーダンスの極値が現れた場合、その共振点をスプリアスとみる。
上記の知見に基づき、スプリアス共振に関する共振周波数と反共振周波数とのインピーダンス差をΔZs、メイン共振に関する共振周波数と反共振周波数とのインピーダンス差をΔZ0とすれば、スプリアス共振とメイン共振とのインピーダンス比Zrは、Zr=(ΔZs/ΔZ0)で求まる。なお、超音波センサ10,10’30のインピーダンス測定は、公知のインピーダンスアナライザーを用いて行なうものとする。
次に、実際の試作品のデータを示す。試作品は、図1の超音波センサ10であり、ガラスバルーンをエポキシ系樹脂に混入した複合材料でケース13を構成し、第一ダンパー部材16および第三ダンパー部材18をエポキシ系樹脂で構成し、吸音部材15および第二ダンパー部材17をシリコン系樹脂で構成し、圧電素子14にはPZTを用いたものである。図6のグラフは、その超音波センサ10を用いて超音波流量計を作り、周波数を変化させながらサイン波駆動による受信ピーク電圧を測定した結果を示している。媒体が空気、室温、流速がゼロの条件での結果である。従来の超音波センサの特性(図14)と比較すると分かるように、駆動周波数に対する受信ピーク電圧の変化および利得の変化が極めて緩やかである。この特性は、周波数に応じた制御や補正が容易であることを意味する。
また、図7のグラフは、図6と同じ超音波流量計において、駆動周波数を変化させたときの受信波の周波数変化をプロットしたグラフである。駆動パルス数が10パルスでの測定である。太線は、得られたデータから最小二乗法により求めた直線である。この結果から分かるように、本発明の超音波センサを用いると、スプリアスの影響が極めて小さく、駆動周波数に対して受信周波数が概ねリニアに変化する。
次に、いくつかの超音波センサについて、有限要素法による周波数解析を行なった結果を示す。まず、図8は、図1の構造の超音波センサ10にかかる解析結果である。左上が周波数インピーダンス特性、左下が位相特性、右上がメイン共振(198KHz)におけるコンター図(変位量を表わす図)、右下がスプリアス共振(172KHz)におけるコンター図である。解析結果より、スプリアス共振とメイン共振とのインピーダンス比Zrを求めたところ、1/30であった。
次に、図9は、図8の場合と同じ超音波センサ10について、ケース13、吸音部材15、第一ダンパー部材16、第二ダンパー部材17および第三ダンパー部材18の各樹脂部材を最適化(ヤング率を最適化)したときの解析結果である。解析結果より、インピーダンス比Zrを求めたところ、1/55であった。この結果より、同じ構造でも、ヤング率の最適化、つまり使用する樹脂材料の選択によってスプリアスを低減できることが理解できる。
次に、図10は、図8の場合と同じ超音波センサ10について、共振周波数が168KHzに現れる圧電素子に変更したときの解析結果である。スプリアス共振は133KHzに現れているが、十分に小さい。この結果より、本発明の超音波センサの構成が、圧電素子の共振周波数に拠らず有効であることが分かる。
次に、図11は、図2の構造の超音波センサ10’にかかる解析結果である。メイン共振は210KHz、スプリアス共振は173KHzに現れている。図2の構造の超音波センサ10’は、ケース13の筒部20が第三ダンパー部材19で外側からホールドされている分、スプリアスを抑制しやすい構造になっている。そのことは、ケース13の筒部20のところにかかる応力が、図8や図9に比して明らかに小さいことからも明白である。また、メイン共振とスプリアス共振のインピーダンス比Zrは、1/120であった。
なお、比較のために、図12に、従来の低Q型超音波センサにかかる解析結果も示す。メイン共振とスプリアス共振のインピーダンス比Zrは、1/4.7であった。しかも使用が予定される周波数帯域(中心周波数±50KHz(たとえば150KHz〜250KHz))の複数箇所に現れている。メイン共振(220KHz)に近い側がケースに由来するスプリアスであり、その隣が音響整合層に由来するスプリアスである。
次に、超音波流量計について説明する。
図16は、本発明にかかる超音波センサ10,10’30を好適に採用できる超音波流量計の構成を示す回路ブロック図である。この超音波流量計40における計測原理は、流路43の流体流れ方向上手側および流れ方向下手側に一対の超音波センサ10a,10bを設け、PLLにより一対の超音波センサ10a,10b間で超音波が予め決められた波の数(以下、ロック波数という)となるように制御し、流れ方向上手側の超音波センサ10a(順方向超音波センサ)から流れ方向下手側の超音波センサ10b(逆方向超音波センサ)に向けて超音波を発射したときの送信波周波数(順方向送信波周波数)と、下手側の超音波センサ10bから上手側の超音波センサ10aに向けて超音波を発射したときの送信波周波数(逆方向送信波周波数)とを計測し、計測された順方向送信波周波数および逆方向送信波周波数を基に流路43を流れる流体の平均流速を求め、さらに平均流速に流路断面積を乗算することで流量を求める方法である。
いま、図17に示すように、ロック波数をN、順方向送信波周波数をfj、逆方向送信波周波数をfg、順方向超音波センサ10a,逆方向超音波センサ10b間の距離(以下、伝搬長という)をL、流体の流速をVとすると、順方向超音波センサ10aから逆方向超音波センサ10bに超音波を伝搬させたときの計測(以下、順方向計測という)で、下式(1)が得られ、逆方向超音波センサ10bから順方向超音波センサ10aに超音波を伝搬させたときの計測(以下、逆方向計測という)で、下式(2)が得られる。
L/(C+V)=N/fj→Lfj/N=C+V ・・・(1)
L/(C−V)=N/fg→Lfg/N=C−V ・・・(2)
式(1)−式(2)から下式(3)が得られ、式(1)+式(2)から下式(4)が得られる。
V=(L/2N)×(fj−fg) ・・・(3)
C=(L/2N)×(fj+fg) ・・・(4)
そして、流量Qが、流路の断面積S、補正係数Hを用いて、下式(5)で求められる。
Q=V・S・H ・・・(5)
さらに、式(4)によって求められた音速Cから、流体が空気である場合、簡易式C=331.68+0.61τにより、温度τが求まるので、温度τに対する補正が可能となる。
図16に示すごとく、超音波流量計40は、流路43と、流路43内の流れ方向上手側に設置された超音波センサ(順方向超音波センサ)10aと、流路43内の流れ方向下手側に設置された超音波センサ(逆方向超音波センサ)10bと、送信手段44と、増幅手段46および2値化手段47からなる受信手段45と、順方向VCO(Voltage Controlled Oscillator)48,順方向LPF(low Pass Filter)49および順方向PD(Phase Detector)50からなる順方向PLL(Phase-Locked loop)と、逆方向VCO51,逆方向LPF52および逆方向PD53からなる逆方向PLLと、順方向カウンタ54,逆方向カウンタ55,ロック波数カウンタ56および送信制御部57からなる制御部58と、位相比較出力幅計測手段59と、順方向計測と逆方向計測とを切り替えるスイッチSW1,SW2,SW3,SW4,SW5およびSW6とから構成されている。
流路43は、順方向超音波センサ10aおよび逆方向超音波センサ10bが、流れ方向に互いに対向するように配置され、軸断面の形状および断面積が流れ方向において同一に形成されている。計測流体がガスの場合、流路43の軸断面形状は壁部により閉鎖された空間を形成するものであればよく、たとえば、円形状、楕円形状、正方形状、矩形状等のいずれを採用してもよい。
送信手段44は、順方向超音波センサ10aおよび逆方向超音波センサ10bに送信波パルス群を発射させるための駆動パルスを発生する駆動電圧回路等から構成される。
受信手段45は、順方向超音波センサ10aおよび逆方向超音波センサ10bの受信波変換電圧(受信波変換信号)を検出するための電圧検出回路等からなる増幅手段46と、受信波パルス群を送信波クロック(送信波パルス群のクロック)の周期で2値化する2値化手段47とを含んで構成されている。
順方向VCO48は、入力された電圧信号に応じた順方向送信波周波数fjの順方向クロックCLKjを出力する電圧制御発信器であり、入力端子を順方向LPF49の出力端子に接続され、出力端子を順方向PD50の一方の入力端子に接続されている。順方向VCO48は、順方向LPF49からの電圧信号を入力し、受信波変換信号と順方向クロックCLKjとの間に位相ズレがあるならば、位相ズレがゼロになるように順方向クロックCLKjの送信波周波数fjを変更し、順方向超音波センサ10a,逆方向超音波センサ10b間の波数が予め決められたロック波数N(N:自然数)となるように位相調整を行なう。
順方向LPF49は、位相比較出力信号(図18(e)参照)を入力し、該位相比較出力信号(図18(e)参照)を平均化して出力するフィルタであり、入力端子を順方向PD50の出力端子に接続され、出力端子を順方向VCO48の入力端子に接続されている。
順方向PD50は、2つの入力信号の位相を比較して、その位相差に比例した信号を出力するものであり、一方の入力端子をスイッチSW3の一方の接点端子に、他方の入力端子を順方向VCO48の出力端子に接続され、出力端子を順方向LPF49の入力端子に接続されている。順方向PD50は、順方向クロックCLKj(図18(a)参照)と2値化後受信波変換信号(図18(d)参照)との位相を比較して、その位相差に比例した位相比較出力信号(図18(e)参照)を出力する。
逆方向VCO51は、入力された電圧信号に応じた逆方向送信波周波数fgの逆方向クロックCLKgを出力する電圧制御発信器であり、入力端子を逆方向LPF52の出力端子に接続され、出力端子を逆方向PD53の一方の入力端子に接続されている。逆方向VCO51は、逆方向LPF52からの電圧信号を入力し、受信波変換信号と逆方向クロックCLKgとの間に位相ズレがあるならば、位相ズレがゼロになるように逆方向クロックCLKgの送信波周波数fgを変更し、逆方向超音波センサ10b,順方向超音波センサ10a間の波数が予め決められたロック波数Nとなるように位相調整を行なう。
逆方向LPF52は、位相比較出力信号(図18(e)参照)を入力し、該位相比較出力信号(図18(e)参照)を平均化して出力するフィルタであり、入力端子を逆方向PD53の出力端子に接続され、出力端子を逆方向VCO51の入力端子に接続されている。
逆方向PD53は、2つの入力信号の位相を比較して、その位相差に比例した信号を出力するものであり、一方の入力端子をスイッチSW3の一方の接点端子に、他方の入力端子を逆方向VCO51の出力端子に接続され、出力端子を逆方向LPF52の入力端子に接続されている。逆方向PD53は、逆方向クロックCLKg(図18(a)参照)と2値化後受信波変換信号(図18(d)参照)との位相を比較して、その位相差に比例した位相比較出力信号(図18(e)参照)を出力する。
順方向カウンタ54は、順方向VCO48の出力端子に接続されており、順方向クロックCLKj(図18(a)参照)をカウントする役目をする。
逆方向カウンタ55は、逆方向VCO51の出力端子に接続されており、逆方向クロックCLKg(図18(a)参照)をカウントする役目をする。
ロック波数カウンタ56は、入力端子をスイッチSW6の切り替え端子に接続され、出力端子を受信手段45の制御端子に接続されており、受信波パルス群の特定の1パルスを入力するために、順方向クロックCLKjまたは逆方向クロックCLKg(図18(a)参照)をロック波数Nずつカウントするごとに、受信波パルス群のマスク解除信号(図18(c)参照)を一定期間分だけオンにする。
送信制御部57は、一方の入力端子が順方向VCO48の出力端子に、他方の入力端子が逆方向VCO51の出力端子に接続され、出力端子が送信手段44に接続されており、送信手段44による駆動パルスの出力を制御する。
位相比較出力幅計測手段59は、位相比較出力信号(図18(e)参照)の幅を計測する手段であり、入力端子がスイッチSW4の切り替え端子に接続され、出力端子がスイッチSW5の切り替え端子に接続されている。位相比較出力幅計測手段59は、順方向PD50から出力された位相比較出力信号(図18(e)参照)をスイッチSW4を経由して入力し位相比較出力幅を計測し、位相比較出力幅の大,中,小をスイッチSW5を経由して順方向LPF49に出力する。
スイッチSW1は、切り替え端子を送信手段44に接続され、一方の接点端子を順方向超音波センサ10aに、他方の接点端子を逆方向超音波センサ10bに接続されている。スイッチSW1は、順方向計測時に送信手段44を順方向センサ10aに接続し、逆方向計測時に送信手段44を逆方向超音波センサ10bに接続する。
スイッチSW2は、切り替え端子を受信手段45の増幅手段46に接続され、一方の接点端子を順方向超音波センサ10aに、他方の接点端子を逆方向超音波センサ10bに接続されている。スイッチSW2は、順方向計測時に受信手段45を逆方向超音波センサ10bに接続し、逆方向計測時に受信手段45を順方向センサ10aに接続する。
スイッチSW3は、切り替え端子を受信手段45の2値化手段47に接続され、一方の接点端子を順方向PD50の他方の入力端子に、他方の接点端子を逆方向PD53の他方の入力端子に接続されている。スイッチSW3は、順方向計測時に2値化手段47を順方向PD50に接続し、逆方向計測時に2値化手段47を逆方向PD53に接続する。
スイッチSW4は、切り替え端子を位相比較出力幅計測手段59の入力端子に、一方の接点端子を順方向PD50の出力端子に、他方の接点端子を逆方向PD53の出力端子に接続されている。スイッチSW4は、順方向計測時に順方向PD50を位相比較出力幅計測手段59に接続し、逆方向計測時に逆方向PD53を位相比較出力幅計測手段59に接続する。
スイッチSW5は、切り替え端子を位相比較出力幅計測手段59の出力端子に、一方の接点端子を順方向LPF49の制御端子に、他方の接点端子を逆方向LPF52の制御端子に接続されている。スイッチSW5は、順方向計測時に位相比較出力幅計測手段59を順方向LPF49に接続し、逆方向計測時に位相比較出力幅計測手段59を逆方向LPF52に接続する。
スイッチSW6は、切り替え端子をロック波数カウンタ56の入力端子に、一方の接点端子を順方向VCO48の出力端子に、他方の接点端子を逆方向VCO51の出力端子に接続されている。スイッチSW6は、順方向計測時に順方向VCO48をロック波数カウンタ56に接続し、逆方向計測時に逆方向VCO51をロック波数カウンタ56に接続する。
受信波を2値化するために、強制振動によるバースト駆動に対して、少なくとも最初に到達する音波の第2〜第3ゼロクロス以降をゼロクロス検出点とすることが望ましい。図19〜図21に示すのは、図6および図7の結果を得たものと同じ超音波流量計において、5パルスの強制バースト駆動により、駆動周波数を変化させたときの受信波の周波数変化をプロットしたグラフである。測定は、媒体が空気、室温、流速がゼロの条件で行なった。具体的に、図19は、第3ゼロクロス点から第5ゼロクロス点まで受信波(つまり受信第2波目)の周波数を調べた結果である。図20は、第5ゼロクロス点から第7ゼロクロス点まで受信波(第4波目)の周波数を調べた結果である。図21は、第4ゼロクロス点から第6ゼロクロス点まで受信波(第3波目)の周波数を調べた結果である。
図19の結果が示すように、受信第2波目くらいまでは、圧電素子に固有の応答性が支配的であるため、受信周波数の線形性はあまりよくない。ところが、図21の結果が示すように、第3波目では中心周波数よりも低周波数側でよい線形性を示した。また、図20の結果が示すように、第4波目では中心周波数よりも高周波数側でよい線形性を示した。これらの結果から、本発明にかかる超音波センサを用いた超音波流量計では、使用する周波数帯域における中心周波数を境に、ゼロクロス検出点を変更することが好適であることが分かる。具体的には、低周波数領域では、第4〜第6ゼロクロス点を使用し、高周波数領域では第5〜第7ゼロクロス点を使用する。このようにすれば、受信トリガ点が安定し、応答性や安定性に優れる超音波流量計の実現に資する。
なお、本明細書では、空間定常波固定方式の超音波流量計40に、本発明の超音波センサを用いることを示したが、課題の欄で説明した伝搬時間逆数差法の超音波流量計やシングアラウンド法の超音波流量計に本発明の超音波センサを用いてよいことはもちろんである。そのような超音波流量計においても、使用する超音波の周波数を流量に応じて可変とする場合が考えられるからである。