JP4728989B2 - ラマン散乱光増強デバイス - Google Patents

ラマン散乱光増強デバイス Download PDF

Info

Publication number
JP4728989B2
JP4728989B2 JP2007078371A JP2007078371A JP4728989B2 JP 4728989 B2 JP4728989 B2 JP 4728989B2 JP 2007078371 A JP2007078371 A JP 2007078371A JP 2007078371 A JP2007078371 A JP 2007078371A JP 4728989 B2 JP4728989 B2 JP 4728989B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
photonic crystal
dimensional photonic
wavelength
waveguide
scattered light
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007078371A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008241796A (ja
Inventor
進 野田
仁路 ▲高▼野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyoto University
Panasonic Corp
Panasonic Electric Works Co Ltd
Original Assignee
Kyoto University
Panasonic Corp
Matsushita Electric Works Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyoto University, Panasonic Corp, Matsushita Electric Works Ltd filed Critical Kyoto University
Priority to JP2007078371A priority Critical patent/JP4728989B2/ja
Publication of JP2008241796A publication Critical patent/JP2008241796A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4728989B2 publication Critical patent/JP4728989B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N21/00Investigating or analysing materials by the use of optical means, i.e. using sub-millimetre waves, infrared, visible or ultraviolet light
    • G01N21/62Systems in which the material investigated is excited whereby it emits light or causes a change in wavelength of the incident light
    • G01N21/63Systems in which the material investigated is excited whereby it emits light or causes a change in wavelength of the incident light optically excited
    • G01N21/65Raman scattering
    • G01N21/658Raman scattering enhancement Raman, e.g. surface plasmons

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)

Description

本発明は、ラマン散乱光増強デバイスに関するものである。
物質に光を入射した時に入射光(励起光)とは異なる周波数の光が出射されるラマン散乱は、光通信における増幅器、波長変換器、ガスセンサ、分光分析機器などの広い分野において応用されている。
しかしながら、ラマン散乱光の強度は励起光の強度に比べて微弱なので、ラマン散乱光を増強する様々な方法が各所で研究開発されている。
例えば、入射光の波長およびラマン散乱光の波長それぞれに共鳴モードを有する光共振器を利用することで、誘導ラマン散乱によるラマン散乱光の増強が期待され、マイクロメータオーダの微小なシリカ球や量子ドットからなる光共振器による誘導ラマン散乱を利用したレーザ(例えば、非特許文献1参照)や、チップにマイクロキャビィを設けることで形成されたマイクロディスクからなる光共振器による誘導ラマン散乱を利用したレーザ(例えば、非特許文献2参照)などが提案されている。
ここにおいて、ナノメータオーダないしマイクロメータオーダの微小なサイズで誘導ラマン散乱を制御可能な光共振器が実現できれば、レーザに限らず、様々な分野への応用が期待できる。例えば、間接遷移型の半導体結晶の一種であるシリコン結晶を用いて波長変換や光信号増幅が可能な光共振器を実現できれば、シリコン電子デバイスと融合可能な光デバイス(一般的に、シリコンフォトニクスと呼ばれている)や、赤外線を吸収しないHガスに対する選択性が高い小型のガスセンサの実現が期待できる。なお、2枚の反射率の高い誘電体ミラーで構成されるファブリ・ペロー共振器により励起光を増強することでラマン散乱光を増強するようにしたガスセンサが提案されており(例えば、非特許文献3参照)、赤外線を吸収しない物質(例えば、水素など)を識別できるという特徴を有しているが、共振器長が10cmで、ディテクタとして光電子増倍管を用いており、小型化が難しい。
また、上記非特許文献1,2に記載された光共振器は、入射光の導入やラマン散乱光の捕獲に必要な光導波路との一括形成が難しいので、上述のシリコン電子デバイスとの集積化が困難である。
これらに対し、近年、シリコンからなるスラブに多数の空孔が2次元的な周期構造を有するように形成されるスラブ型の2次元フォトニック結晶に、誘導ラマン散乱を起こすことが可能な光共振器を形成したラマン散乱光増強デバイスが提案されている(例えば、非特許文献4参照)。この種のフォトニック結晶を利用したラマン散乱光増強デバイスでは、スラブを構成するシリコンからなる高屈折率媒質と空孔内の空気からなる低屈折率媒質とで屈折率周期構造が形成されており、屈折率周期構造に線状の欠陥を設けることにより光共振器および導波路を一括して形成することができるから、シリコン電子デバイスとの集積化が容易になる。ここにおいて、上記非特許文献4に記載されたラマン散乱光増強デバイスにおける光共振器は、入射光の波長に対する共鳴モードとラマン散乱光に対する共鳴モードとを有するように線状の欠陥の長さが設計されている。
S.M.Spillane,etal、「Ultralow-threshold Raman laser using a spherical dielectric microcavity」,Nature,Vol.415,2002,p.621-623 T.J.Kippenberg,etal、「Ultralow-threshold microcavity Raman laser on a microelectronic chip」,OPTICS LETTERS,Vol.29,No.11,2004,p.1224-1226 Ken.Yamauchi,etal、「An intelligent gas detector based on Raman scattering spectroscopy pumped by power build-up cavity」,CWAB3-P100,p.1002-1003 Xiaodong Yang,et al、「Design of photonic band gap nanocavities for simulated Raman amplification and lasing in monolithic silicon」,OPTICS EXPRESS,Vol.13,NO.12,2005,p.4723-4730
しかしながら、上記非特許文献4に記載されたラマン散乱光増強デバイスは、2次元フォトニック結晶の屈折率周期構造に設ける欠陥の長さを変えることにより共鳴モードの波長を設計しているので、誘導ラマン散乱を実現できる波長の設計の自由度が低かった。なお、ラマン散乱光増強デバイスを例えばレーザに応用する場合、誘導ラマン散乱によるレーザ発振の閾値パワーは入射光の共鳴モードのQ値およびラマン散乱光の共鳴モードのQ値が高いほど小さな値となるので、各Q値の向上が望まれている。また、ラマン散乱光増強デバイスを応用したラマン散乱光応用装置としては、上述のレーザ以外に、例えば、光増幅器、波長変換器、ガスセンサ、化学センサなども考えられ、光増幅器での増幅度の向上、波長変換器での波長変換効率の向上、ガスセンサおよび化学センサでの感度の向上のために、共鳴モードのQ値およびラマン散乱光の共鳴モードのQ値を高めることが望まれている。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、ラマン散乱光の共鳴モードの波長の設計自由度が高く、且つ、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積を大きくできるラマン散乱光増強デバイスを提供することにある。
請求項1の発明は、複数の波長で共鳴モードを有する光共振器を備えたラマン散乱光増強デバイスであって、フォトニック結晶構造体に形成された線状の欠陥からなる導波路により構成された光共振器を備え、前記光共振器は、前記光共振器を構成する前記導波路の途中で伝搬波長の帯域をずらすようにフォトニック結晶構造体の構造パラメータを変えることで形成された波長選択的な一対の反射面を備え、前記一対の反射面間で対象媒質のラマン散乱光の波長と入射光の波長との2波長のうちの一方の波長に対する共鳴モードを有するとともに、当該一方の波長に対する共鳴モードを有する前記一対の反射面よりも前記導波路の光の伝搬方向において外側に形成された一対の反射部間で前記2波長のうちの他方の波長に対する共鳴モードを有し、前記フォトニック結晶構造体は、少なくとも、第1の2次元フォトニック結晶が当該第1の2次元フォトニック結晶とは前記構造パラメータの異なる2つの第2の2次元フォトニック結晶により同一面内で挟まれた面内へテロ構造を有し、前記光共振器を構成する前記導波路は、前記第1の2次元フォトニック結晶と前記第1の2次元フォトニック結晶の両側の前記第2の2次元フォトニック結晶とに跨って形成されるとともに、前記各第2の2次元フォトニック結晶の途中で終端されており、前記第1の2次元フォトニック結晶に形成された部分と前記第2の2次元フォトニック結晶に形成された部分との境界が前記反射面を構成し、両端部それぞれが前記反射部を構成していることを特徴とする。
この発明によれば、光共振器が、当該光共振器を構成する導波路の途中で伝搬波長の帯域をずらすようにフォトニック結晶構造体の構造パラメータを変えることで形成された波長選択的な一対の反射面を備え、当該一対の反射面間で対象媒質のラマン散乱光の波長と入射光の波長との2波長のうちの一方の波長に対する共鳴モードを有するとともに、当該一方の波長に対する共鳴モードを有する一対の反射面よりも前記導波路の光の伝搬方向において外側に形成された一対の反射部間で前記2波長のうちの他方の波長に対する共鳴モードを有するので、光共振器における一対の反射面間の長さおよび当該一対の反射面とは別に形成された一対の反射部間の長さそれぞれにより共鳴モードを設計することができるから、従来のように屈折率周期構造に設ける線状の欠陥の長さのみで2つ共鳴モードの波長を設計している場合に比べて、ラマン散乱光の共鳴モードの波長の設計自由度が高くなり、しかも、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積を大きくできる。
また、この発明によれば、異なる2次元フォトニック結晶の面内へテロ構造を利用して前記反射面を形成することができるので、前記反射面の設計および形成が容易になる。
また、この発明によれば、前記光共振器を構成する前記導波路は、第1の2次元フォトニック結晶と当該第1の2次元フォトニック結晶の両側の第2の2次元フォトニック結晶とに跨って形成されるとともに、各第2の2次元フォトニック結晶の途中で終端されており、第1の2次元フォトニック結晶に形成された部分と第2の2次元フォトニック結晶に形成された部分との境界が前記反射面を構成し、両端部それぞれが前記反射部を構成しているので、第1の2次元フォトニック結晶と第2の2次元フォトニック結晶とのヘテロ界面を利用して前記一方の光を反射させることができるとともに、第2の2次元フォトニック結晶のフォトニックバンドギャップを利用して前記他方の波長の光を反射させることができるから、前記反射面、前記反射部それぞれの設計および形成が容易になる。
請求項2の発明は、複数の波長で共鳴モードを有する光共振器を備えたラマン散乱光増強デバイスであって、フォトニック結晶構造体に形成された線状の欠陥からなる導波路により構成された光共振器を備え、前記光共振器は、前記光共振器を構成する前記導波路の途中で伝搬波長の帯域をずらすようにフォトニック結晶構造体の構造パラメータを変えることで形成された波長選択的な一対の反射面を備え、前記一対の反射面間で対象媒質のラマン散乱光の波長と入射光の波長との2波長のうちの一方の波長に対する共鳴モードを有するとともに、当該一方の波長に対する共鳴モードを有する前記一対の反射面よりも前記導波路の光の伝搬方向において外側に形成された一対の反射部間で前記2波長のうちの他方の波長に対する共鳴モードを有し、前記フォトニック結晶構造体は、少なくとも、第1の2次元フォトニック結晶が前記第1の2次元フォトニック結晶とは前記構造パラメータの異なる2つの第2の2次元フォトニック結晶により同一面内で挟まれ、前記各第2の2次元フォトニック結晶における前記第1の2次元フォトニック結晶側とは反対側に前記第2の2次元フォトニック結晶とは前記構造パラメータの異なる第3の2次元フォトニック結晶が形成された面内へテロ構造を有し、前記光共振器を構成する前記導波路は、少なくとも、前記第1の2次元フォトニック結晶と前記各第2の2次元フォトニック結晶と前記各第3の2次元フォトニック結晶とに跨って形成され、前記第1の2次元フォトニック結晶に形成された部分と前記第2の2次元フォトニック結晶に形成された部分との境界が前記反射面を構成し、前記第2の2次元フォトニック結晶に形成された部分と前記第3の2次元フォトニック結晶に形成された部分との境界が前記反射部を構成していることを特徴とする。
この発明によれば、光共振器が、当該光共振器を構成する導波路の途中で伝搬波長の帯域をずらすようにフォトニック結晶構造体の構造パラメータを変えることで形成された波長選択的な一対の反射面を備え、当該一対の反射面間で対象媒質のラマン散乱光の波長と入射光の波長との2波長のうちの一方の波長に対する共鳴モードを有するとともに、当該一方の波長に対する共鳴モードを有する一対の反射面よりも前記導波路の光の伝搬方向において外側に形成された一対の反射部間で前記2波長のうちの他方の波長に対する共鳴モードを有するので、光共振器における一対の反射面間の長さおよび当該一対の反射面とは別に形成された一対の反射部間の長さそれぞれにより共鳴モードを設計することができるから、従来のように屈折率周期構造に設ける線状の欠陥の長さのみで2つ共鳴モードの波長を設計している場合に比べて、ラマン散乱光の共鳴モードの波長の設計自由度が高くなり、しかも、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積を大きくできる。また、この発明によれば、異なる2次元フォトニック結晶の面内へテロ構造を利用して前記反射面を形成することができるので、前記反射面の設計および形成が容易になる。
また、この発明によれば、前記光共振器を構成する前記導波路は、少なくとも、第1の2次元フォトニック結晶と各第2の2次元フォトニック結晶と各第3の2次元フォトニック結晶とに跨って形成され、第1の2次元フォトニック結晶に形成された部分と第2の2次元フォトニック結晶に形成された部分との境界が前記反射面を構成し、第2の2次元フォトニック結晶に形成された部分と第3の2次元フォトニック結晶に形成された部分との境界が前記反射部を構成しているので、第1の2次元フォトニック結晶と第2の2次元フォトニック結晶とのヘテロ界面を利用して前記一方の波長の光を反射させることができるとともに、第2の2次元フォトニック結晶と第3の2次元フォトニック結晶とのヘテロ界面を利用して前記他方の波長の光を反射させることができるから、前記反射面、前記反射部それぞれの設計および形成が容易になる。
請求項3の発明は、複数の波長で共鳴モードを有する光共振器を備えたラマン散乱光増強デバイスであって、フォトニック結晶構造体に形成された線状の欠陥からなる導波路により構成された光共振器を備え、前記光共振器は、前記光共振器を構成する前記導波路の途中で伝搬波長の帯域をずらすように前記導波路の構造パラメータを変えることで形成された波長選択的な一対の反射面を備え、前記一対の反射面間で対象媒質のラマン散乱光の波長と入射光の波長との2波長のうちの一方の波長に対する共鳴モードを有するとともに、当該一方の波長に対する共鳴モードを有する前記一対の反射面よりも前記導波路の光の伝搬方向において外側に形成された一対の反射部間で前記2波長のうちの他方の波長に対する共鳴モードを有し、前記光共振器は、前記導波路の前記構造パラメータである幅を前記導波路の途中で変えることで前記反射面および前記反射部が形成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、光共振器が、当該光共振器を構成する導波路の途中で伝搬波長の帯域をずらすように前記導波路の構造パラメータを変えることで形成された波長選択的な一対の反射面を備え、当該一対の反射面間で対象媒質のラマン散乱光の波長と入射光の波長との2波長のうちの一方の波長に対する共鳴モードを有するとともに、当該一方の波長に対する共鳴モードを有する一対の反射面よりも前記導波路の光の伝搬方向において外側に形成された一対の反射部間で前記2波長のうちの他方の波長に対する共鳴モードを有するので、光共振器における一対の反射面間の長さおよび当該一対の反射面とは別に形成された一対の反射部間の長さそれぞれにより共鳴モードを設計することができるから、従来のように屈折率周期構造に設ける線状の欠陥の長さのみで2つ共鳴モードの波長を設計している場合に比べて、ラマン散乱光の共鳴モードの波長の設計自由度が高くなり、しかも、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積を大きくできる。
また、この発明によれば、前記光共振器を構成する前記導波路の幅を前記導波路の途中で変えることで前記反射面および前記反射部を形成することができるので、前記反射面、前記反射部それぞれの設計および形成が容易になる。
請求項1の発明は、ラマン散乱光の共鳴モードの波長の設計自由度が高くなり、且つ、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積を大きくできるという効果がある。
(実施形態1)
本実施形態では、図1を参照しながら、ラマン散乱光増強デバイスAを応用したレーザについて説明する。
本実施形態におけるラマン散乱光増強デバイスAは、第1の2次元フォトニック結晶1が当該第1の2次元フォトニック結晶1とは屈折率周期構造の周期の異なる2つの第2の2次元フォトニック結晶1,1により同一面内で挟まれた面内へテロ構造を有しており、第1の2次元フォトニック結晶1と当該第1の2次元フォトニック結晶1の両側の第2の2次元フォトニック結晶1,1との並設方向に沿って図1の右側の2次元フォトニック結晶1の屈折率周期構造に線状の欠陥を設けることにより導波路2aを形成するとともに、図1における左側の2次元フォトニック結晶1の屈折率周期構造に線状の欠陥を設けることにより導波路2b,2cを形成し、上記並設方向に沿って全ての2次元フォトニック結晶1,1,1に跨ってそれぞれの屈折率周期構造に線状の欠陥を設けることにより複数の波長に共鳴モードを有するラマン散乱光増強用の光共振器3を形成し、上記並設方向に沿って図1における左側の2次元フォトニック結晶1の屈折率周期構造に線状の欠陥を設けることによりラマン散乱光を選択的に通過させるバンドパスフィルタ用の光共振器4を形成してある。ここにおいて、ラマン散乱光増強デバイスAは、3つの導波路2a,2b,2cが一直線上に並ぶように形成され、2つの光共振器3,4が上記一直線に平行な別の一直線上に並ぶように形成されている。したがって、ラマン散乱光増強デバイスAでは、ラマン散乱光が、導波路2a−光共振器3−導波路2b−光共振器4−導波路2cの経路で進行することとなり、光共振器3においてラマン散乱光が増強される。
ラマン散乱光増強用の光共振器3は、第1の2次元フォトニック結晶1における線状の欠陥が上記並設方向において全長に亙って形成されるとともに各第2の2次元フォトニック結晶1,1における線状の欠陥が上記並設方向において各第2の2次元フォトニック結晶1,1の途中で終端されており、第1の2次元フォトニック結晶1と各第2の2次元フォトニック結晶1,1とのヘテロ界面HI12,HI12間で対象媒質のラマン散乱光の波長に対する共鳴モードを有するとともに、上記並設方向における両端間で入射光の波長に対する共鳴モードを有している。ここにおいて、本実施形態では、第1の2次元フォトニック結晶1と各第2の2次元フォトニック結晶1,1とでフォトニック結晶構造体を構成しており、光共振器3を構成する上述の線状の欠陥からなる導波路が、3つの2次元フォトニック結晶1,1,1に跨って形成され、当該導波路において第1の2次元フォトニック結晶1に形成された部分と第2の2次元フォトニック結晶1に形成された部分との境界が、波長選択的な反射面を構成し、当該導波路の両端部それぞれが、一対の反射面よりも当該導波路の光の伝搬方向において外側に形成された反射部を構成し、一対の反射面間でラマン散乱光の波長に対する共鳴モードを有し、一対の反射部間で入射光の波長に対する共鳴モードを有している。
また、バンドパスフィルタ用の光共振器4は、図1における左側の第2のフォトニック結晶1にのみ線状の欠陥を設けることにより形成されており、共鳴モードとしてラマン散乱光の波長に対する共鳴モードのみを有している。
各2次元フォトニック結晶1,1,1は、スラブ型の2次元フォトニック結晶であり、高屈折率媒質(本実施形態では、Siなど)からなるスラブ11,11,11の厚み方向の両側を一様な低屈折率媒質(本実施形態では、一方がSiO、他方が空気)により挟んだ構成となっており、厚み方向に直交する2次元面内ではフォトニックバンドギャップにより光を閉じ込め、厚み方向には全反射により光を閉じ込めるようになっている。ここに、各2次元フォトニック結晶1,1,1は、多数の空孔12,12,12がスラブ11,11,11の厚み方向に直交する面内で2次元的な周期構造を有するように配列されており、スラブ11,11,11を構成する高屈折率媒質と円形状に開口された空孔12,12,12内の空気からなる低屈折率媒質とで上記屈折率周期構造を有する2次元フォトニック結晶1,1,1を構成している。具体的には、スラブ11,11,11ごとに、単位格子が正三角形の仮想的な2次元三角格子の各格子点に空孔12,12,12を形成することにより、2次元フォトニック結晶1,1,1を形成してある。言い換えれば、空孔12,12,12はスラブ11,11,11の厚み方向に直交する面内において三角格子状に配列されている。なお、本実施形態では、上述の高屈折率媒質であるSiが対象媒質を構成している。
本実施形態におけるラマン散乱光増強デバイスAでは、第1の2次元フォトニック結晶1の屈折率周期構造と第2の2次元フォトニック結晶1の屈折率周期構造とが相似的な関係にあり、隣り合う2つの2次元フォトニック結晶1,1で面内へテロ構造が形成されるように、第2の2次元フォトニック結晶1の空孔12の配列方向における周期を第1の2次元フォトニック結晶1の空孔12の配列方向における周期よりも数%(例えば、2%)だけ小さく設定してある。
更に説明すれば、本実施形態では、2次元フォトニック結晶1における空孔12の配列方向の周期(2次元フォトニック結晶1の屈折率周期構造の周期であって2次元三角格子の格子点間の距離なので、格子定数ともいう)aを307nm、空孔12の半径を0.29a、スラブ11の厚さを0.6aとし、2次元フォトニック結晶1に並設された2次元フォトニック結晶1は空孔12の半径およびスラブ11の厚さは2次元フォトニック結晶1と同じで、空孔12の配列方向の周期(2次元フォトニック結晶1を構成する屈折率周期構造の周期であって2次元三角格子の格子点間の距離なので、格子定数ともいう)aを2次元フォトニック結晶1における空孔12の周期aよりも2%小さく設定してある。なお、本実施形態では、空孔12,12,…の配列方向の周期a,a,…を上述のような値に設定することにより、2次元面内のあらゆる方向から入射する所望の周波数帯の光を伝搬しない波長帯であるフォトニックバンドギャップを形成することができ、導波路2a,2b,2cおよび光共振器3,4は適宜長さの線状の欠陥を設けることにより形成してある。なお、上述の空孔12,12の配列方向の周期a,aや空孔12,12の半径の各数値は特に限定するものではなく、周期a,aは上記周波数帯の光の波長程度(例えば、光の波長の2分の1程度)の周期であればよい。
本実施形態におけるラマン散乱光増強デバイスAは、シリコン基板からなるオプティカルベンチ10aの所定領域上にシリコン酸化膜10bが形成され、当該シリコン酸化膜10b上のシリコン層10cをリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して加工することによって各2次元フォトニック結晶1,1,1および各導波路2a,2b,2cおよび各光共振器3,4を形成してある。ここにおいて、本実施形態におけるラマン散乱光増強デバイスAは、オプティカルベンチ10aを兼ねるシリコン基板上のシリコン酸化膜10b上にシリコン層10cを有するSOI(Silicon On Insulator)基板10を用いて形成してある。すなわち、ラマン散乱光増強デバイスAにおける各2次元フォトニック結晶1,1,1および各導波路2a,2b,2cおよび各光共振器3,4はSOI基板10の主表面側のシリコン層10cをリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して加工することによって形成されている。さらに説明すれば、SOI基板10における主表面側のシリコン層10c上に所望の形状にパターニングしたレジスト層を形成した後、ドライエッチング装置によって各導波路2a,2b,2cおよび各光共振器3,4および各スラブ11,11,11に対応した部分が残り且つ各空孔12,12,12に対応する部位が除去されるようにシリコン層10cをエッチングすることによって、各2次元フォトニック結晶1,1,1および各導波路2a,2b,2cおよび各光共振器3,4を同時に形成することが可能となる。
なお、例えば、C帯やL帯などの光通信波長帯においては、Siの屈折率が3.4程度、SiOの屈折率が1.5程度、空気の屈折率が1であり、スラブ11,11,11とその両側のクラッドとの屈折率差は55〜70%となり、一般的な光ファイバのコアとクラッドとの比屈折率差である0.3%と比較して非常に大きな値となるので、光ファイバに比べて光の閉じ込め効果を高めることができ、小型化を図れる。
ところで、本実施形態のレーザは、上述のSOI基板10におけるシリコン基板がオプティカルベンチ10aを構成しており、当該オプティカルベンチ10aの一表面側に、ラマン散乱光を励起する励起光を出射する励起光源として、ファブリ・ペロー(FP)型共振器構造を有する端面発光型の半導体レーザLDが実装されている。なお、オプティカルベンチ10aの上記一表面側には、半導体レーザLDと電気的に接続される2つの導体パターン(パッド)8a,8bが形成されており、半導体レーザLDの表面側の電極がボンディングワイヤ9を介して一方のパッド8aと電気的に接続され、半導体レーザLDの裏面側の電極が他方のパッド8bと接合されて電気的に接続されている。
また、本実施形態のレーザは、上述のSOI基板10を利用して、ラマン散乱光増強デバイスAの入力側の光デバイスである半導体レーザLDの光出射面とラマン散乱光増強デバイスAにおける導波路2aの入射側端部との間に介在する第1の第1のスポットサイズ変換器5と、ラマン散乱光増強デバイスAにおける導波路2cの出射側端部とラマン散乱光増強デバイスAの出力側の光デバイスである光ファイバ(図示せず)との間に介在する第2のスポットサイズ変換器6とが形成されている。なお、各スポットサイズ変換器5,6は、SOI基板10におけるシリコン層10cをパターニングすることで形成されており、第1のスポットサイズ変換器5は、導波路2aの断面積に合わせて半導体レーザLDの出射光のスポットサイズを小さくするようにシリコン層10cの一部により構成されるコアの幅寸法を適宜変化させてあり、第2のスポットサイズ変換器6は、導波路2cからの出射光のスポットサイズを大きくするようにシリコン層10cの一部により構成されるコアの幅寸法を適宜変化させてある。
ところで、上述のラマン散乱光増強デバイスAの光共振器3の共鳴モードと周波数(ここにおける周波数は、光速cと第1の2次元フォトニック結晶1の格子定数aとで無次元化した光の周波数〔c/a〕である)との関係をシミュレーションした結果、5つの共鳴モードが存在し、第1の共鳴モードの周波数=0.2635〔c/a〕、第2の共鳴モードの周波数=0.2677〔c/a〕、第3の共鳴モードの周波数=0.27995〔c/a〕、第4の共鳴モードの周波数=0.28265〔c/a〕、第5の共鳴モードの周波数=0.28265〔c/a〕であった。ここで、上述のように格子定数aを307nmに設定すると、第1の共鳴モードの波長=1165.1nm、第3の共鳴モードの波長=1098.5nmとなり、第1の共鳴モードの波長と第3の共鳴モードの波長との波長差が、シリコンのラマンシフト(520cm−1)に相当するので、第1の共鳴モードをラマン散乱光の共鳴モードとして利用し、第3の共鳴モードを励起光(入射光)の共鳴モードとして利用している。
ここにおいて、ラマン散乱光増強デバイスAの厚み方向に直交する面内において、各フォトニック結晶1,1,1の並設方向(つまり、ヘテロ界面HI12,HI12に直交する方向)をx方向、x方向に直交する方向(つまり、ヘテロ界面HI12,HI12に平行な方向)をy方向とし、上記厚み方向をz方向とした場合、ラマン散乱光の周波数(f=0.2635)での電界分布(Ey成分)は図2(a)に示すようになり、励起光の周波数(f=0.27995)での電界分布(Ey成分)は図2(b)に示すようになる。この図2から、ラマン散乱光の波長の光がヘテロ界面HI12,HI12間(上述の反射面間)に定在し、励起光の波長の光が光共振器3の両端部間(上述の反射部間)に定在していることが分かる。なお、図2の例では、ラマン散乱光の共鳴モードのQ値が6×10、励起光(入射光)のQ値が2000であり、上記特許文献3に比べて、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積が大きな値となる。
以上説明したラマン散乱光増強デバイスAによれば、ラマン散乱光増強用の光共振器3が、当該光共振器3を構成する導波路の途中で伝搬波長の帯域をずらすようにフォトニック結晶構造体の構造パラメータを変えることで形成された波長選択的な一対の反射面を備え、当該一対の反射面間で対象媒質のラマン散乱光の波長に対する共鳴モードを有するとともに、当該一対の反射面よりも上記導波路の光の伝搬方向において外側に形成された一対の反射部間で入射光の波長に対する共鳴モードを有するので、光共振器3における一対の反射面間の長さ(つまり、ヘテロ界面HI12,HI12間の長さ)および当該一対の反射面とは別に形成された一対の反射部間の長さ(本実施形態では、光共振器3を構成する上記導波路の長さ)それぞれにより共鳴モードを設計することができるから、従来のように屈折率周期構造に設ける線状の欠陥の長さのみで2つ共鳴モードの波長を設計している場合に比べて、ラマン散乱光の共鳴モードの波長の設計自由度が高くなり、しかも、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積を大きくできる。しかして、誘導ラマン散乱の起こるレーザの閾値パワーを低減でき、低消費電力化を図れる。
また、本実施形態では、上述のフォトニック結晶構造体が、構造パラメータの異なる第1の2次元フォトニック結晶1と第2の2次元フォトニック結晶1,1を並設することで形成される面内ヘテロ構造を有し、光共振器3を構成する導波路は、3つの2次元フォトニック結晶1,1,1に跨って形成されるとともに、各第2の2次元フォトニック結晶1,1の途中で終端されており、第1の2次元フォトニック結晶1に形成された部分と第2の2次元フォトニック結晶1に形成された部分との境界が反射面を構成し、両端部それぞれが反射部を構成しており、第1の2次元フォトニック結晶1と第2の2次元フォトニック結晶1,1との面内へテロ構造のヘテロ界面を利用してラマン散乱光を反射させることができるとともに、第2の2次元フォトニック結晶12のフォトニックバンドギャップを利用して入射光を反射させることができるから、反射面、反射部それぞれの設計および形成が容易になる。
なお、本実施形態における光共振器3は、上述のように一対の反射面間で対象媒質のラマン散乱光の波長に対する共鳴モードを有するとともに、一対の反射部間で入射光の波長に対する共鳴モードを有しているが、一対の反射面間で入射光の波長に対する共鳴モードを有するとともに、一対の反射部間でラマン散乱光の波長に対する共鳴モードを有するように設計してもよい。また、本実施形態における光共振器3は、当該光共振器3を構成する導波路の途中で伝搬波長の帯域をずらすようにフォトニック結晶構造体の構造パラメータを変える(本実施形態では、隣り合う2次元フォトニック結晶1,1同士で屈折率周期構造の周期を異ならせる)ことで波長選択的な反射面が形成されているが、当該反射面を形成するために変えるフォトニック結晶構造体の構造パラメータは、周期に限らず、例えば、空孔12,12の半径、媒質の屈折率、スラブ11,11の厚みなどでもよい。また、本実施形態では、2次元フォトニック結晶1の両側に2次元フォトニック結晶1,1を1つずつ並設してあるが、2次元フォトニック結晶1の両側に屈折率周期構造の周期を段階的に変化させた複数の2次元フォトニック結晶を多段に設けてもよい。
ところで、現在、市販されているレーザには様々な種類があるが、半導体レーザは他のレーザ(例えば、ガスレーザなど)に比べて小型で安価なので、民生、通信などの広範な分野で利用されており、既に、民生用途の600〜800nm帯、通信用途の1300〜1600nm帯などで用いる半導体レーザが市販されているが、更に多様な波長の半導体レーザが求められている。
しかしながら、市販されている半導体レーザは、基本的に、直接遷移型の半導体であるIII−V族系化合物半導体での発光を利用しており、活性層の半導体材料のバンドギャップによりレーザ光の波長が決まるので、半導体材料の開発がボトルネックとなっている。一方で、化合物半導体材料に比べて、より安価で加工が容易なシリコンを用いた発光デバイスに対するニーズも大きい。また、LSIなどの電子デバイスにおいては、化合物半導体材料に比べて安価で加工性に優れたシリコンを材料として用いたものが主流であり、次世代の光デバイスとして、電子デバイスとの集積化を考えた場合、シリコンを材料として用いた発光デバイスの実現は非常に有用である。
これに対し、本実施形態におけるラマン光増強デバイスAを応用したレーザでは、従来の化合物半導体材料を用いた半導体レーザLDでは難しい波長域のレーザ光を出射させることが可能となる。なお、ラマン散乱は、原子や分子の振動エネルギに相当するラマンシフト分だけ入射光とずれた波長の光が出射されるので、励起光源として半導体レーザLDを用いれば、ラマンシフト分だけ異なる波長の光が発生するから、原理的に半導体レーザLDでは実現不可能な波長域の光を出射するレーザを実現することが可能となる。
ところで、本実施形態における各2次元フォトニック結晶1,1は、スラブ11,11に対して、単位格子が正三角形の仮想的な2次元三角格子の各格子点に対応する各部位に空孔12,12を設けることにより形成されているが、単位格子は正三角形に限らず、例えば正方形でもよく、この場合には単位格子が正方形の仮想的な2次元正方格子の各格子点に対応する部位に空孔12,12を設ければよい。また、上記実施形態では、各スラブ型フォトニック結晶31,32の屈折率周期構造を形成するためにスラブ11,11に多数の円形状の空孔12,12を形成してあるが、空孔12,12の開口形状は円形状の形状に限定するものではなく、例えば三角形状や四角形状など別の開口形状でもよい。
(実施形態2)
本実施形態においてラマン散乱光増強デバイス応用装置の一例として例示するレーザの基本構成は実施形態1と同じであって、図3に示すように、ラマン散乱光増強デバイスAの構造が相違するだけである。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
本実施形態におけるラマン散乱光増強デバイスAでは、各第2の2次元フォトニック結晶1,1における第1の2次元フォトニック結晶1側とは反対側に第3の2次元フォトニック結晶1,1が並設されており、第2の2次元フォトニック結晶1の屈折率周期構造と第3の2次元フォトニック結晶1の屈折率周期構造とも相似的な関係にあり、隣り合う2つの2次元フォトニック結晶1,1で面内へテロ構造が形成されるように、第3の2次元フォトニック結晶1のスラブ11に形成する空孔12の配列方向における周期を第2の2次元フォトニック結晶1の空孔12の配列方向における周期よりも数%(例えば、2%)だけ小さく設定してある。
ここで、ラマン散乱光増強デバイスAにおけるラマン散乱光増強用の光共振器3を構成する導波路は、第1の2次元フォトニック結晶1と各第2の2次元フォトニック結晶1,1と各第3の2次元フォトニック結晶1,1との並設方向に沿って第1の2次元フォトニック結晶1および各第2の2次元フォトニック結晶1,1および各第3の2次元フォトニック結晶1,1に跨ってそれぞれの屈折率周期構造に欠陥を設けることにより形成されており、第1の2次元フォトニック結晶1に形成された部分と第2の2次元フォトニック結晶1に形成された部分との境界が反射面を構成し、第2の2次元フォトニック結晶1に形成された部分と第3の2次元フォトニック結晶1に形成された部分との境界が反射部を構成している。したがって、本実施形態における光共振器3は、第1の2次元フォトニック結晶1と各第2の2次元フォトニック結晶1,1とのヘテロ界面HI12,HI12間で対象媒質のラマン散乱光の波長に対する共鳴モードを有するとともに、互いに隣り合う第2の2次元フォトニック結晶1と第3の2次元フォトニック結晶1とのヘテロ界面HI23,HI23間で入射光の波長に対する共鳴モードを有している。
また、本実施形態では、実施形態1において、それぞれ第2の2次元フォトニック結晶1,1に形成されていた導波路2a,2cが、第2の2次元フォトニック結晶1,1ではなく、第3の2次元フォトニック結晶1,1に形成されている。すなわち、実施形態1にて説明した導波路2aが図3における右側の第3の2次元フォトニック結晶1に形成され、導波路2cが図3における左側の第3の2次元フォトニック結晶1に形成されている。また、本実施形態では、実施形態1において、第2の2次元フォトニック結晶1に形成されていたバンドパスフィルタ用の光共振器4が図3における左側の第3の2次元フォトニック結晶1に形成されている。
本実施形態におけるラマン散乱光増強デバイスAの光共振器3の共鳴モードと周波数(ここにおける周波数は、光速cと第1の2次元フォトニック結晶1の格子定数aとで無次元化した光の周波数〔c/a〕である)との関係をシミュレーションした結果、7つの共鳴モードが存在し、第1の共鳴モードの周波数=0.26355〔c/a〕、第2の共鳴モードの周波数=0.2675〔c/a〕、第3の共鳴モードの周波数=0.27325〔c/a〕、第4の共鳴モードの周波数=0.27695〔c/a〕、第5の共鳴モードの周波数=0.27995〔c/a〕、第6の共鳴モードの周波数=0.2825〔c/a〕、第7の共鳴モードの周波数=0.28905〔c/a〕であった。ここで、本実施形態では格子定数aを315nmに設定すると、第1の共鳴モードの波長=1196.4nm、第5の共鳴モードの波長=1126.3nmとなり、第1の共鳴モードの波長と第5の共鳴モードの波長との波長差が、シリコンのラマンシフト(520cm−1)に相当するので、第1の共鳴モードをラマン散乱光の共鳴モードとして利用し、第5の共鳴モードを励起光(入射光)の共鳴モードとして利用している。
ここにおいて、ラマン散乱光増強デバイスAの厚み方向に直交する面内において、各フォトニック結晶1,1,1,1,1の並設方向(つまり、ヘテロ界面HI12,HI12,HI23,HI23に直交する方向)をx方向、x方向に直交する方向(つまり、ヘテロ界面HI12,HI12に平行な方向)をy方向とし、上記厚み方向をz方向とした場合、ラマン散乱光の周波数(f=0.264)での電界分布(Ey成分)は図4(a)に示すようになり、励起光の周波数(f=0.280)での電界分布(Ey成分)は図4(b)に示すようになる。この図4から、ラマン散乱光の波長の光が内側の一対のヘテロ界面HI12,HI12間(上述の反射面間)に定在し、励起光の波長の光が外側の一対のヘテロ界面HI23,HI23間(上述の反射部間)に定在していることが分かる。なお、図4の例では、ラマン散乱光の共鳴モードのQ値が13000、励起光(入射光)のQ値が30000であり、上記特許文献3に比べて、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積が大きな値となる。
なお、Q値は、光共振器3と自由空間との系において光共振器3から自由空間へ漏れるエネルギの量に関係する値(つまり、光共振器3と自由空間との系において光共振器3にどの程度のエネルギを蓄えることができるかを示す値)であって、光共振器3に蓄積されるエネルギをW、光共振器3から自由空間側へ単位時間に失われるエネルギを−dW/dtとすれば、Q=ω×W/(−dW/dt)と定義される。
しかして、本実施形態では、内側の一対のヘテロ界面HI12,HI12間の長さおよび外側の一対のヘテロ界面HI23,HI23間の長さそれぞれにより共鳴モードを設計することができるから、従来のように屈折率周期構造に設ける線状の欠陥の長さのみで2つ共鳴モードの波長を設計している場合に比べて、ラマン散乱光の共鳴モードの波長の設計自由度が高くなり、しかも、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積を大きくできて閾値パワーの低減による低消費電力化を図れる。
しかして、本実施形態では、第1の2次元フォトニック結晶1と各第2の2次元フォトニック結晶1,1と各第3の2次元フォトニック結晶1,1とでフォトニック結晶構造体を構成するとともに、光共振器3を構成する導波路は、第1の2次元フォトニック結晶1と各第2の2次元フォトニック結晶1,1と各第3の2次元フォトニック結晶1,1とに跨って形成され、第1の2次元フォトニック結晶1に形成された部分と第2の2次元フォトニック結晶1に形成された部分との境界が反射面を構成し、第2の2次元フォトニック結晶1に形成された部分と第3の2次元フォトニック結晶1に形成された部分との境界が反射部を構成しているので、第1の2次元フォトニック結晶1と第2の2次元フォトニック結晶1とのヘテロ界面を利用してラマン散乱光を反射させることができるとともに、第2の2次元フォトニック結晶1と第3の2次元フォトニック結晶1とのヘテロ界面HI23,HI23を利用して入射光を反射させることができるから、内側の一対のヘテロ界面HI12,HI12間の長さおよび外側の一対のヘテロ界面HI23,HI23間の長さそれぞれにより共鳴モードを設計することができ、反射面、反射部それぞれの設計および形成が容易になるとともに、従来のように屈折率周期構造に設ける線状の欠陥の長さのみで2つ共鳴モードの波長を設計している場合に比べて、ラマン散乱光の共鳴モードの波長の設計自由度が高くなり、しかも、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積を大きくできて閾値パワーの低減による低消費電力化を図れる。
なお、本実施形態では、第1の2次元フォトニック結晶1の両側それぞれに2つの2次元フォトニック結晶1,1を並設してあるが、第1の2次元フォトニック結晶1の両側それぞれに並設する2次元フォトニック結晶の数は特に限定するものではなく、2次元フォトニック結晶1の両側に屈折率周期構造の周期を段階的に変化させた3つ以上の2次元フォトニック結晶を多段に設けてもよい。
(実施形態3)
本実施形態では、図5を参照しながら、ラマン散乱光増強デバイスAを応用した波長変換器について説明するが、実施形態1のレーザと同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の波長変換器は、実施形態1にて説明した半導体レーザLDの代わりに、光通信用の光ファイバOF1がオプティカルベンチ10aの上記一表面側に位置決め固定されている。ここにおいて、オプティカルベンチ10aには、第1のスポットサイズ変換器5に光結合させる上述の光ファイバOF1を位置決めする断面V字状のV溝からなる位置決め溝(図示せず)が形成されている。なお、本実施形態では、オプティカルベンチ10aがシリコン基板により構成されているので、上記位置決め溝を、エッチング速度の結晶面方位依存性を利用した異方性エッチングにより高精度に形成することができる。
本実施形態の波長変換器では、光ファイバOF1から第1のスポットサイズ変換器5を通してラマン散乱光増強デバイスAへ入射した光がラマン散乱光増強デバイスAにてラマン散乱光の波長の光に波長変換され、第2のスポットサイズ変換器6を通して出射されることとなる。
しかして、本実施形態の波長変換器では、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積を大きくできるので、波長変換効率を高めることができる。
なお、ラマン散乱光増強デバイスAの光共振器3の構造として、実施形態2と同様の構造を採用してもよい。
(実施形態4)
本実施形態では、図6を参照しながら、ラマン散乱光増強デバイスAを応用した光増幅器について説明するが、実施形態1のレーザと同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の光増幅器は、オプティカルベンチ10aの上記一表面側において、ラマン散乱光の励起光源としての半導体レーザLDの他に、光信号を入力するための光ファイバOF2が位置決め固定され、光ファイバOF2とラマン散乱光増強デバイスAにおける信号光入力用の導波路2dとの間に第3のスポットサイズ変換器7が形成されている。ここにおいて、オプティカルベンチ10aには、第3のスポットサイズ変換器7に光結合させる上述の光ファイバOF2を位置決めする断面V字状のV溝からなる位置決め溝(図示せず)が形成されている。なお、本実施形態では、オプティカルベンチ10aがシリコン基板により構成されているので、上記位置決め溝を、エッチング速度の結晶面方位依存性を利用した異方性エッチングにより高精度に形成することができる。また、信号光入力用の導波路2dは、導波路2aと同様に、第2の2次元フォトニック結晶1に線状の欠陥を設けることにより形成されており、導波路2aと平行となっている。
本実施形態の光増幅器では、ラマン散乱光増強デバイスAに、光ファイバOF2から第3のスポットサイズ変換器7を通して入力するとともに、当該信号光よりも波長がSiのラマンシフト分だけ波長の短い励起光を半導体レーザLDから第1のスポットサイズ変換器5を通してラマン散乱光増強デバイスAへ入射することにより、誘導ラマン散乱によって信号光が増幅され、導波路2b,2cを通して出射されることとなる。
しかして、本実施形態の光増幅器では、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積を大きくできるので、増幅度を高めることができる。
なお、ラマン散乱光増強デバイスAの光共振器3の構造として、実施形態2と同様の構造を採用してもよい。
(実施形態5)
本実施形態では、図7を参照しながら、ラマン散乱光増強デバイスAを応用したガスセンサについて説明するが、実施形態1のレーザと同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態のガスセンサは、実施形態1にて説明したオプティカルベンチ10aの上記一表面側に、ラマン散乱光増強デバイスAから出射されるラマン散乱光を受光する光デバイスとしてのpin型のフォトダイオードPDと、ラマン散乱光増強デバイスAの導波路2cとフォトダイオードPDとの間に介在しラマン散乱光を導波する導波路OWGとが形成されており、検出対象ガス(例えば、水素ガスなど)のガス分子の存否や濃度に起因したラマン散乱光の強度変化に応じてフォトダイオードPDの出力が変化する。
したがって、励起光源としての半導体レーザLDの出力を制御するとともにフォトダイオードPDの出力に基づいて検出対象ガスの存否の判断や濃度の演算などの処理を行うマイクロコンピュータからなる制御回路や、制御回路による処理結果を測定結果として表示するディスプレイのような表示手段などを適宜設ければよい。
上述のフォトダイオードPDは、オプティカルベンチ10aに不純物をドーピングすることによりpin構造が形成され、さらに、一対の電極24,24が形成されている。
また、導波路OWGは、各2次元フォトニック結晶1,1,1および各導波路2a,2b,2cおよび各光共振器3,4と同様に、オプティカルベンチ10a上のシリコン酸化膜10b上のシリコン層10cをリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して加工することにより形成されている。
ところで、現状のガスセンサは、SnOからなる薄膜セラミックスの表面にガスが吸着した際に起こる還元反応に起因した抵抗値変化や、Ptに可燃性ガスが吸着した際に起こる燃焼反応に起因した抵抗値変化により、ガスの存在を検知するものが一般的である。しかしながら、これらのガスセンサでは、ガスの識別性が低い、数百度に加熱した状態で使用する必要があり消費電力が大きい、応答速度が遅い(〜10秒)、感度がドリフトする、などの問題があった。一方、物質に光を照射した際に、分子の固有振動数分だけ変化した波長のラマン散乱光を用いると、識別性および応答速度および感度の安定性の向上が期待される。特に、ラマン散乱は、赤外線吸収と相補的な関係になっている場合が多く、赤外線吸収で識別できない物質(例えば、水素など)を識別できるという特徴がある。そこで、ラマン散乱光を用いた物質の分析技術は分光分析の分野では一般的であるが、ラマン散乱光が非常に微弱であるため、液体窒素などによる冷却を必要とする高感度なディテクタや高精度の分光器などを用いる必要があり、小型化が難しい。
これに対して、本実施形態のガスセンサでは、上述のラマン散乱光増強デバイスAを採用することで、小型化および低消費電力化を図りながらも、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積を大きくでき、水素ガスなどの赤外線吸収による検知ができないガスに対する感度を高めることができる。ここにおいて、本実施形態のガスセンサは、例えば、オプティカルベンチ10aの厚み寸法を500μm、半導体レーザLDと第1のスポットサイズ変換器5とラマン散乱光増強デバイスAとフォトダイオードPDとの並んでいるx方向の寸法を0.8μm、x方向に直交するy方向の寸法を0.7μm程度とすることができ、上記特許文献4に開示されたガスセンサに比べて小型化することができる。
なお、ラマン散乱光増強デバイスAの光共振器3の構造として、実施形態2と同様の構造を採用してもよい。
また、本実施形態では、ガスセンサについて例示したが、ガスセンサに限らず、化学センサ(例えば、DNAやたんぱく質などの生体高分子を検出するバイオセンサ)などとして用いることも可能である。
(実施形態6)
本実施形態のラマン散乱光増強デバイスAの基本構成は実施形態1と略同じであって、図8に示すように、フォトニック結晶構造体が1つの2次元フォトニック結晶1により構成されており、スラブ11に形成する空孔12の半径を一定とし、ラマン散乱光増強用の光共振器3を構成する導波路の構造パラメータである幅(図8における上下方向の寸法)を当該導波路の途中で段階的に変えることでラマン散乱光を波長選択的に反射する反射面および入射光を反射する反射部が形成されている点に特徴がある。光共振器3を構成する導波路の幅を当該導波路の途中で変えることで、上記導波路において長手方向の中央に形成された第1導波部3と第1導波部3よりも幅狭で第1導波部3の両側に位置する第2導波部3,3との境界により各反射面を形成し、第2導波部3,3と第2導波部3,3よりも幅狭で第1導波部3側とは反対側に位置する第3導波部3,3との境界により各反射部を形成してある。
ところで、本実施形態のラマン散乱光増強デバイスAにおいて、2次元フォトニック結晶1の屈折率周期構造の周期(格子定数)をa、上記導波路において長手方向の中央に形成された第1導波部3の幅をW1、第1導波部3の両側に形成された各第2導波部3の幅をW2、各第2導波部3における第1導波部3側とは反対側に形成された各第3導波部3の幅をW3として、W1=31/2、W1:W2:W3=1:0.975:0.72となるように各幅W1,W2,W3を設計し、第1導波部31の長さを4a、第2導波部3の長さを2aとなるように設計した一例について、光共振器3の共鳴モードと周波数(ここにおける周波数は、光速cと2次元フォトニック結晶1の格子定数aとで無次元化した光の周波数〔c/a〕である)との関係をシミュレーションした結果、5つの共鳴モードが存在し、第1の共鳴モードの周波数=0.26375〔c/a〕、第2の共鳴モードの周波数=0.2716〔c/a〕、第3の共鳴モードの周波数=0.2755〔c/a〕、第4の共鳴モードの周波数=0.2818〔c/a〕、第5の共鳴モードの周波数=0.2832〔c/a〕であった。ここで、上述の格子定数aを347nmに設定すると、第1の共鳴モードの波長=1315.6nm、第4の共鳴モードの波長=1231.4nmとなり、第1の共鳴モードの波長と第4の共鳴モードの波長との波長差が、シリコンのラマンシフト(520cm−1)に相当するので、第1の共鳴モードをラマン散乱光の共鳴モードとして利用し、第4の共鳴モードを励起光(入射光)の共鳴モードとして利用している。
ここにおいて、ラマン散乱光増強デバイスAの厚み方向に直交する面内において、光共振器3の長手方向をx方向、x方向に直交する方向(つまり、光共振器3の幅方向をy方向とし、上記厚み方向をz方向とした場合、ラマン散乱光の周波数(f=0.26375)での電界分布(Ey成分)は図9(a)に示すようになり、励起光の周波数(f=0.2818)での電界分布(Ey成分)は図9(b)に示すようになる。この図9から、ラマン散乱光の波長の光が上述の反射面間に定在し、励起光の波長の光が上述の反射部間に定在していることが分かる。なお、図9の例では、ラマン散乱光の共鳴モードのQ値が350000、励起光(入射光)のQ値が21000であり、上記特許文献3に比べて、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積が大きな値となる。
しかして、本実施形態では、光共振器3を構成する導波路の幅を当該導波路の途中で変えることで第1導波部3と第2導波部3との境界により反射面を形成することができるとともに、第2導波部3と第3導波部3との境界により反射部を形成することができるので、反射面、反射部の設計および形成が容易になる。なお、本実施形態のラマン散乱光増強デバイスAは、実施形態1,2にて説明したレーザや、実施形態3にて説明した波長変換器や、実施形態4にて説明した光増幅器や、実施形態5にて説明したガスセンサなどの各種のラマン散乱光応用装置に適用してもよい。
(実施形態7)
本実施形態のラマン散乱光増強デバイスAの基本構成は実施形態6と略同じであって、実施形態6では光共振器3を構成する導波路の幅を変えるために、空孔12の形成位置をずらしてあるのに対して、本実施形態では、図10に示すように、空孔12の位置をずらさずに上記導波路の空孔12の半径を変えることで上記導波路の幅を変えている点が相違する。ただし、本実施形態においても、上記導波路において長手方向の中央に形成された第1導波部3と第1導波部3よりも幅狭で第1導波部3の両側に位置する第2導波部3,3との境界により各反射面を形成し、第2導波部3,3と第2導波部3,3よりも幅狭で第1導波部3側とは反対側に位置する第3導波部3,3との境界により各反射部を形成してある。なお、実施形態6と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
本実施形態では、2次元フォトニック結晶1における空孔12の配列方向の周期(格子定数)aと、空孔12の基本半径を0.23aとするとき、上記導波路の幅方向の両側それぞれにおいて上記導波路の長手方向に沿った3列分に関して、空孔12の半径を段階的に変えている。ここにおいて、上記導波路において長手方向の中央に形成された第1導波部3の幅方向の両側の3列分については、空孔12の半径を0.23aとし、各第2導波部3の幅方向の両側の3列分については、空孔12の半径を0.233aとし、各第3導波部3の幅方向の両側の3列分については、空孔12の半径を0.28aとし、第1導波部3の長さを4a、第2導波部3の長さを2aとなるように設計した例について、光共振器3の共鳴モードと周波数(ここにおける周波数は、光速cと2次元フォトニック結晶1の格子定数aとで無次元化した光の周波数〔c/a〕である)との関係をシミュレーションした結果、4つの共鳴モードが存在し、第1の共鳴モードの周波数=0.2530〔c/a〕、第2の共鳴モードの周波数=0.2585〔c/a〕、第3の共鳴モードの周波数=0.2658〔c/a〕、第4の共鳴モードの周波数=0.2748〔c/a〕であった。ここで、上述の格子定数aを420nmに設定すると、第1の共鳴モードの波長=1660nm、第4の共鳴モードの波長=1528nmとなり、第1の共鳴モードの波長と第4の共鳴モードの波長との波長差が、シリコンのラマンシフト(520cm−1)に相当するので、第1の共鳴モードをラマン散乱光の共鳴モードとして利用し、第4の共鳴モードを励起光(入射光)の共鳴モードとして利用している。
ここにおいて、ラマン散乱光増強デバイスAの厚み方向に直交する面内において、光共振器3の長手方向をx方向、x方向に直交する方向(つまり、光共振器3の幅方向をy方向とし、上記厚み方向をz方向とした場合、ラマン散乱光の周波数(f=0.2530)での電界分布(Ey成分)は図11(a)に示すようになり、励起光の周波数(f=0.2748)での電界分布(Ey成分)は図11(b)に示すようになる。この図11から、ラマン散乱光の波長の光が上述の反射面間に定在し、励起光の波長の光が上述の反射部間に定在していることが分かる。なお、図11の例では、ラマン散乱光の共鳴モードのQ値が400000、励起光(入射光)のQ値が1200であり、上記特許文献3に比べて、入射光の共鳴モードのQ値とラマン散乱光の共鳴モードのQ値との積が大きな値となる。
実施形態1を示し、(a)はラマン散乱光増強デバイスを応用したレーザの概略斜視図、(b)はラマン散乱光増強デバイスの概略斜視図、(c)はラマン散乱光増強デバイスの要部概略平面図である。 同上のラマン散乱光増強デバイスにおけるラマン散乱光増強用の光共振器の電界分布の説明図である。 実施形態2を示し、(a)はラマン散乱光増強デバイスを応用したレーザの概略斜視図、(b)はラマン散乱光増強デバイスの概略斜視図、(c)はラマン散乱光増強デバイスの要部概略平面図である。 同上のラマン散乱光増強デバイスにおけるラマン散乱光増強用の光共振器の電界分布の説明図である。 実施形態3を示し、(a)はラマン散乱光増強デバイスを応用した波長変換器の概略斜視図、(b)はラマン散乱光増強デバイスの概略斜視図である。 実施形態4を示し、(a)はラマン散乱光増強デバイスを応用した光増幅器の概略斜視図、(b)はラマン散乱光増強デバイスの概略斜視図である。 実施形態5を示し、(a)はラマン散乱光増強デバイスを応用したガスセンサの概略斜視図、(b)はラマン散乱光増強デバイスの概略斜視図である。 実施形態6のラマン散乱光増強デバイスの要部概略平面図である。 同上のラマン散乱光増強デバイスにおけるラマン散乱光増強用の光共振器の電界分布の説明図である。 実施形態7のラマン散乱光増強デバイスの要部概略平面図である。 同上のラマン散乱光増強デバイスにおけるラマン散乱光増強用の光共振器の電界分布の説明図である。
符号の説明
2次元フォトニック結晶(フォトニック結晶構造体)
第1の2次元フォトニック結晶
第2の2次元フォトニック結晶
第3の2次元フォトニック結晶
2a,2b,2c 導波路
3 光共振器(導波路)
4 光共振器
10a オプティカルベンチ
10b シリコン酸化膜
10c シリコン層
A ラマン散乱光増強デバイス
HI12 ヘテロ界面
HI13 ヘテロ界面

Claims (3)

  1. 複数の波長で共鳴モードを有する光共振器を備えたラマン散乱光増強デバイスであって、フォトニック結晶構造体に形成された線状の欠陥からなる導波路により構成された光共振器を備え、前記光共振器は、前記光共振器を構成する前記導波路の途中で伝搬波長の帯域をずらすようにフォトニック結晶構造体の構造パラメータを変えることで形成された波長選択的な一対の反射面を備え、前記一対の反射面間で対象媒質のラマン散乱光の波長と入射光の波長との2波長のうちの一方の波長に対する共鳴モードを有するとともに、当該一方の波長に対する共鳴モードを有する前記一対の反射面よりも前記導波路の光の伝搬方向において外側に形成された一対の反射部間で前記2波長のうちの他方の波長に対する共鳴モードを有し、前記フォトニック結晶構造体は、少なくとも、第1の2次元フォトニック結晶が当該第1の2次元フォトニック結晶とは前記構造パラメータの異なる2つの第2の2次元フォトニック結晶により同一面内で挟まれた面内へテロ構造を有し、前記光共振器を構成する前記導波路は、前記第1の2次元フォトニック結晶と前記第1の2次元フォトニック結晶の両側の前記第2の2次元フォトニック結晶とに跨って形成されるとともに、前記各第2の2次元フォトニック結晶の途中で終端されており、前記第1の2次元フォトニック結晶に形成された部分と前記第2の2次元フォトニック結晶に形成された部分との境界が前記反射面を構成し、両端部それぞれが前記反射部を構成していることを特徴とするラマン散乱光増強デバイス。
  2. 複数の波長で共鳴モードを有する光共振器を備えたラマン散乱光増強デバイスであって、フォトニック結晶構造体に形成された線状の欠陥からなる導波路により構成された光共振器を備え、前記光共振器は、前記光共振器を構成する前記導波路の途中で伝搬波長の帯域をずらすようにフォトニック結晶構造体の構造パラメータを変えることで形成された波長選択的な一対の反射面を備え、前記一対の反射面間で対象媒質のラマン散乱光の波長と入射光の波長との2波長のうちの一方の波長に対する共鳴モードを有するとともに、当該一方の波長に対する共鳴モードを有する前記一対の反射面よりも前記導波路の光の伝搬方向において外側に形成された一対の反射部間で前記2波長のうちの他方の波長に対する共鳴モードを有し、前記フォトニック結晶構造体は、少なくとも、第1の2次元フォトニック結晶が前記第1の2次元フォトニック結晶とは前記構造パラメータの異なる2つの第2の2次元フォトニック結晶により同一面内で挟まれ、前記各第2の2次元フォトニック結晶における前記第1の2次元フォトニック結晶側とは反対側に前記第2の2次元フォトニック結晶とは前記構造パラメータの異なる第3の2次元フォトニック結晶が形成された面内へテロ構造を有し、前記光共振器を構成する前記導波路は、少なくとも、前記第1の2次元フォトニック結晶と前記各第2の2次元フォトニック結晶と前記各第3の2次元フォトニック結晶とに跨って形成され、前記第1の2次元フォトニック結晶に形成された部分と前記第2の2次元フォトニック結晶に形成された部分との境界が前記反射面を構成し、前記第2の2次元フォトニック結晶に形成された部分と前記第3の2次元フォトニック結晶に形成された部分との境界が前記反射部を構成していることを特徴とするラマン散乱光増強デバイス。
  3. 複数の波長で共鳴モードを有する光共振器を備えたラマン散乱光増強デバイスであって、フォトニック結晶構造体に形成された線状の欠陥からなる導波路により構成された光共振器を備え、前記光共振器は、前記光共振器を構成する前記導波路の途中で伝搬波長の帯域をずらすように前記導波路の構造パラメータを変えることで形成された波長選択的な一対の反射面を備え、前記一対の反射面間で対象媒質のラマン散乱光の波長と入射光の波長との2波長のうちの一方の波長に対する共鳴モードを有するとともに、当該一方の波長に対する共鳴モードを有する前記一対の反射面よりも前記導波路の光の伝搬方向において外側に形成された一対の反射部間で前記2波長のうちの他方の波長に対する共鳴モードを有し、前記光共振器は、前記導波路の前記構造パラメータである幅を前記導波路の途中で変えることで前記反射面および前記反射部が形成されてなることを特徴とするラマン散乱光増強デバイス。
JP2007078371A 2007-03-26 2007-03-26 ラマン散乱光増強デバイス Active JP4728989B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007078371A JP4728989B2 (ja) 2007-03-26 2007-03-26 ラマン散乱光増強デバイス

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007078371A JP4728989B2 (ja) 2007-03-26 2007-03-26 ラマン散乱光増強デバイス

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008241796A JP2008241796A (ja) 2008-10-09
JP4728989B2 true JP4728989B2 (ja) 2011-07-20

Family

ID=39913279

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007078371A Active JP4728989B2 (ja) 2007-03-26 2007-03-26 ラマン散乱光増強デバイス

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4728989B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101231455B1 (ko) * 2011-02-28 2013-02-15 중앙대학교 산학협력단 바이오 물질 검출장치
CN104040419B (zh) * 2012-08-24 2016-05-18 国立研究开发法人科学技术振兴机构 拉曼散射光增强设备、拉曼散射光增强设备的制造方法、和使用拉曼散射光增强设备的拉曼激光光源
JP5993334B2 (ja) * 2013-04-08 2016-09-14 日本電信電話株式会社 カーボンナノチューブラマン光源およびこれに用いるシリコンフォトニック結晶共振器
CN103487424A (zh) * 2013-08-29 2014-01-01 中国科学院长春光学精密机械与物理研究所 一种基于光子晶体缺陷模式实现受激拉曼探测方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20060123706A (ko) * 2003-08-29 2006-12-04 고쿠리츠 다이가쿠 호진 교토 다이가쿠 2차원 포토닉 결정 공진기
JP4463742B2 (ja) * 2005-08-11 2010-05-19 日本電信電話株式会社 光共振器

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008241796A (ja) 2008-10-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6640034B1 (en) Optical photonic band gap devices and methods of fabrication thereof
US7933004B2 (en) Method of acquiring information with a microcavity laser
JP4511857B2 (ja) フォトニック結晶を応用したセンサおよび検出対象物質の検出方法
US20080008418A1 (en) Coupling light into microresonators
JP2007538274A (ja) サブ波長光導波路としてのナノワイヤ及びナノリボン並びに、これらナノ構造の光学回路及び光学素子の構成要素への利用
EP2434274A1 (en) Sensor, method for detecting the presence and / or concentration of an analyte using the sensor and use of the method
US7724997B2 (en) Waveguide element, method for producing the waveguide element, and optical sensor
JP4728989B2 (ja) ラマン散乱光増強デバイス
US20080310474A1 (en) Square micro-cavity laser with an output waveguide
Iadanza et al. High-Q asymmetrically cladded silicon nitride 1D photonic crystals cavities and hybrid external cavity lasers for sensing in air and liquids
US20070291273A1 (en) Laser gyro and electronic device using the same
Kim et al. Fiber-coupled surface-emitting photonic crystal band edge laser for biochemical sensor applications
JP2015175902A (ja) 光導波路、スポットサイズ変換器、偏光フィルタ、光結合器、光検出器、光合分波器、および、レーザ素子
US8395768B2 (en) Scattering spectroscopy apparatus and method employing a guided mode resonance (GMR) grating
JP2010186097A (ja) 光共振器、及びこれを用いた流体用光学センサ
JP3927942B2 (ja) 測定装置
CN104165840A (zh) 基于单-多模光纤耦合的光纤端面无标记光学传感器
CN107941716B (zh) 多芯光纤谐振腔气体传感器
Kang et al. Photonic crystal defects with increased surface area for improved refractive index sensing
Arafa et al. High sensitive photonic crystal multiplexed biosensor array using H0 sandwiched cavities
WO2006103850A1 (ja) 導波路素子及びレーザ発生器
CN203299121U (zh) 基于单-多模光纤耦合的光纤端面无标记光学传感器
US20230393060A1 (en) Mid-infrared gas sensor based on tapered sub-wavelength grating slot waveguide
Saetchnikov et al. Development of optical micro resonance based sensor for detection and identification of microparticles and biological agents
JP2008002954A (ja) 光ジャイロ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091127

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100907

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100921

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101122

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20101122

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110322

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110415

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140422

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350