JP4727591B2 - プロテアーゼ阻害活性を有する新規ポリペプチド - Google Patents

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Description

本発明は、プロテアーゼ阻害活性を有する新規なポリペプチドに関する。より詳細には、配列番号24記載のアミノ酸配列からなり、プロテアーゼ阻害活性を有するポリペプチドであって、(ア)SDS-PAGE法による分子量が還元下で10〜12kDa及び非還元下で14〜20kDaである、(イ)60℃、30分間の加熱処理によりプロテアーゼ活性を消失しない又は(ウ)還元剤の処理によりプロテアーゼ活性を消失する、なる特徴を有する新規なポリペプチド、該ポリペプチドを主成分として含有する医薬組成物及び哺乳動物細胞の培養液から該新規ポリペプチドを精製する方法に関する。また、本発明は、上記の新規ポリペプチドをコードする塩基配列からなる核酸断片、該核酸断片を有する発現カセット及び該発現カセットを導入した形質転換体、該新規ポリペプチドを認識する抗体並びにスキムミルクゲル分解法によるプロテアーゼ及びプロテアーゼ阻害活性を有するポリペプチドの検出方法に関する。
プロテアーゼはタンパク質分解作用を持つ酵素であり、多くの生命現象に深く係わっているが、その作用を阻害するインヒビターも重要な役割を担っている。プロテアーゼインヒビターの中で、トリプシンに対して強い阻害活性を有するものをトリプシンインヒビターと称する。トリプシンインヒビターは大きく2つに分けられる。1つは、スルフォンアミド、メシル酸ガベキセートやメシル酸ナファモスタットのような非蛋白性の化合物であり、他の1つは、アプロチニンやウリナスタチンのような蛋白性のトリプシンインヒビターである。前者は、広範な酵素阻害スペクトルを特徴とし、後者は、トリプシンインヒビターとしての作用の他に、細胞膜の安定化等、生体の恒常性を回復させる効果を有する。これらは、臨床の場においてそれぞれの特徴を生かした医薬品として使用されている。例えば、アプロチニンやウリナスタチンは、膵の自己消化が原因とされる急性膵炎をはじめ、川崎病、肝移植、早産、手術やエンドトキシンショック等の治療に用いられている。
現在、医薬品として使用されているアプロチニンやウリナスタチンは、ウシの肺やヒト尿中より精製されている。そのために、大量に生産する場合には原材料の確保が難しく、原材料が不均一であるため一定の成分からなる製剤を製造することも容易ではない。更に、生体成分由来の製剤に一般に共通した問題である、未知成分やヒト感染性ウイルスの混入が懸念される。このような問題を解決するための一つの方法として、遺伝子工学的手法による組換え型のウリナスタチンの開発が試みられている。ウリナスタチンは、Kniz型ドメイン構造を2つ持つDouble-headed inhibitorであり、それぞれ異なる活性を有することが明らかにされている。すなわち、Knizドメイン1は、好中球エラスターゼ及びキモトリプシンの阻害活性を有し、その活性はヘパリン添加により上昇する。一方、Knizドメイン2は、トリプシン、キモトリプシン及びプラスミンの阻害活性を有し、その活性はヘパリン添加により低下する。これらの知見に基づき、ピキア属酵母を宿主細胞としてウリナスタチンやその各ドメインの製造方法、更には、ウリナスタチンの一部のアミノ酸を置換してなるアミノ酸置換型ウリナスタチンや活性ドメインのみからなる短縮型ウリナスタチンの製造方法が報告されている(例えば、特許文献9参照)。
ウリナスタチンやアプロチニン以外の蛋白性のトリプシンインヒビターとしては、これまでに、ウシ膵臓由来の塩基性トリプシンインヒビター(例えば、非特許文献1参照)、牛乳及びホエー由来の酸性トリプシンインヒビター(60〜70kDa)(例えば、特許文献6参照)、大豆由来のトリプシンインヒビター(例えば、非特許文献2参照)、藍藻(Microcystis aeruginosa)由来のトリプシンインヒビター(例えば、特許文献7参照)、シロナタマメ(Canavalia gladiata)由来のトリプシンインヒビター(分子量7〜8kDa)(例えば、特許文献8参照)などが報告されているが、その性状、生理的意義、代謝経路等、まだ不明な部分が多い。
ウイルスによる感染および関連疾患の診断、コントロール、予防および治療に対するアプローチに関しては、そのようなアプローチに利用することができるウイルス特異的機能を同定することがしばしば望まれる。特にウイルスにコードされるポリペプチドの酵素活性は有用な知見となる。これらのウイルス特異的機能を担う成分は、ウイルスの複製にしばしば不可欠のものであり、抗ウイルス薬物開発にふさわしいターゲットであり得る。このような観点から、プロテアーゼインヒビターを利用した種々の抗ウイルス剤の開発が行われている。例えば、ウリナスタチンを用いた哺乳動物におけるロタウイルス感染症の予防及び/又は治療薬の開発(例えば、特許文献1参照)、プロテアーゼインヒビターとHIV及びレトロウイルスのウイルス複製阻害のための薬学的組成物との組み合せによる、HIV及びレトロウイルス関連障害の処置又は予防薬の開発(例えば、特許文献2参照)、C型肝炎NS3プロテアーゼインヒビターを用いた抗C型肝炎ウイルス薬剤の開発(例えば、特許文献3参照)、アスパルチルプロテアーゼインヒビターであるスルフォンアミドを用いたHIV-1およびHIV-2ウイルスに対する抗ウイルス性薬剤の開発(例えば、特許文献4及び5参照)などが報告されている。
インフルエンザウイルス治療薬に関して言えば、1998年我が国でも抗A型インフルエンザ薬としてアマンタジン(Amantadine)を使用することが認可された。アマンタジンは、A型インフルエンザの予防に対しては70〜90%の効果を示すが、B型ウイルスには無効であり、神経系や消化器系の副作用を生じやすく、また、患者に使用すると比較的早期に薬剤耐性ウイルスが出現するため、注意して使用する必要がある。その後開発されたノイラミニダーゼ阻害薬(ザナミビル、オセルタミビル)は、A型にもB型インフルエンザにも有効で、耐性も比較的できにくく、副作用もほとんどないとされていた。しかしながら、最近になって、小児における耐性株の出現や精神症状の副作用が問題となっている。
このような問題に対処していくには、蛋白性、非蛋白性を問わず、既存の治療薬の改良や作用機序の異なる新たなメカニズムを有する抗インフルエンザウイルス剤の開発が重要である。例えば、インフルエンザウイルスはウイルス粒子表面に存在する赤血球凝集素(HA)のHA1+HA2への開裂により感染力を獲得し、その感染は多段階に進行することが知られている。このHAの開裂は、トリでは、標的臓器である腸や気道から分泌されるトリプシン様のプロテアーゼにより行われる。HAが開裂活性化されることで、その臓器における感染が進行し、病原性が発現する。このトリプシン様のプロテアーゼは、上述したように、ウイルス特異的機能を担う成分の一つであり、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤の開発の魅力的なターゲットと考えられる。事実、木戸らは、インフルエンザウイルスの感染メカニズムの研究から、感染成立には宿主由来のプロテアーゼ(トリプターゼクララ)によるウイルス表面のHA抗原の解裂活性化が重要であること、更に、その感染は、ヒト上部気道から分泌されるヒト粘液プロテアーゼインヒビター(Human Mucosal Protease Inhibitor; MPI)と肺サーファクタントがトリプターゼクララの活性を阻害することによって防御されることを示した(例えば、非特許文献3参照)。
特許公開平7−316073号公報 特許公開2002−20283号公報 特許公表2003−529583号公報 特許公表2003−502309号公報 特許公表2002−536430号公報 特許公開平7−82296号公報 特許公開平5−331189号公報 特許公開2000−86530号公報 国際公開WO96/03503号公報 J. Gen. PHysiol., Vol.19,p991 (1936) J. Gen. PHysiol., Vol.29,p149 (1946) FEBS LETTERS, 322, p115-119 (1993)
上述したように、インフルエンザウイルス粒子表面の赤血球凝集素(HA)のHA1+HA2への開裂に関与するプロテアーゼは、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤開発の魅力的なターゲットと考えられ、該プロテアーゼに対して阻害活性を有する生体内の物質は、インフルエンザの予防又は治療薬の有望な候補となる可能性がある。しかしながら、大量生産のための材料確保、製剤の均一性の保証、未知ウイルスの混入といった問題を解決する必要があり、これを達成することは決して容易ではない。
本発明は、このような問題の解決の必要性に鑑みてなされたものであって、細胞培養物由来のプロテアーゼ阻害活性を有する新規ポリペプチド及びその精製方法、該新規ポリペプチドを主成分として含有する、インフルエンザウイルスの増殖を抑制するための医薬組成物を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、該新規ポリペプチド又はその一部をコードする塩基配列からなる核酸断片、該核酸断片を有する発現カセット及び該発現カセットが組み込まれた形質転換体、該新規ポリペプチドを認識する抗体、並びにスキムミルクゲル分解法によるプロテアーゼ及びプロテアーゼ阻害活性を有する新規ポリペプチドの検出方法を提供することにある。
本発明者等は、上記の目的を達成する為に鋭意研究を重ねた結果、イヌ腎細胞の培養液中にインフルエンザウイルスの増殖を阻害する物質が分泌されることを見出し、この物質を、一連の精製工程、すなわち、限外濾過膜処理工程、ヘパリンカラムクロマトグラフィー工程、及び場合によっては、逆相カラムクロマトグラフィー工程に供することにより単離することに成功した。また、本発明者等は、こうして単離された物質は、配列番号24記載のアミノ酸配列からなり、プロテアーゼ阻害活性を有する新規なポリペプチドであり、また、該ポリペプチドが(ア)SDS-PAGE法による分子量が還元下で10〜12kDa及び非還元下で14〜20kDaである、(イ)60℃、30分間の加熱処理によりトリプシン阻害活性を消失しない、(ウ)還元剤の処理によりトリプシン阻害活性を消失する、なる特徴を有することを突き止め、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は、以下の特徴を有する新規なポリペプチドを提供するものである。
1.配列番号24記載のアミノ酸配列からなり、プロテアーゼ阻害活性を有することを特徴とする前記ポリペプチド。
2.下記(ア)〜(ウ)の少なくとも一つを充足し、プロテアーゼ阻害活性を有することを特徴とする前記ポリペプチド。
(ア)SDS-PAGE法による分子量が還元下で10〜12kDa及び非還元下で14〜20kDaである、
(イ)60℃、30分間の加熱処理によりプロテアーゼ阻害活性を消失しない、
(ウ)還元剤の処理によりプロテアーゼ阻害活性を消失する
3.配列番号24記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする上記2のポリペプチド。
4.哺乳動物細胞由来であることを特徴とする上記1ないし3の何れかのポリペプチド。
5.哺乳動物細胞が腎細胞であることを特徴とする上記4のポリペプチド。
6.腎細胞がMDCK細胞、Vero細胞、SK-NEP-1細胞からなる群より選ばれる細胞であることを特徴とする上記5のポリペプチド。
7.遺伝子組換え技術により得られることを特徴とする上記1ないし3の何れかのポリペプチド。
8.トリプシン阻害活性を有することを特徴とする上記1ないし7の何れかのポリペプチド。
9.任意の位置で一つ又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたことを特徴とする上記8のポリペプチド。
また、本発明は、上記1ないし9の何れかのポリペプチドを主成分として含有する、インフルエンザウイルスの増殖を抑制するための医薬組成物、哺乳動物細胞の培養液から上記のポリペプチドを精製する方法、上記のポリペプチドをコードする塩基配列からなる核酸断片、該核酸断片を有する発現カセット及び該発現カセットが組み込まれた形質転換体、上記のポリペプチドを認識する抗体、並びにスキムミルクゲル分解法によるプロテアーゼ及びプロテアーゼ阻害活性を有するポリペプチドの検出方法を提供するものである。
本発明の方法によれば、プロテアーゼ阻害活性を有する新規なポリペプチド及びその調製方法が提供される。該新規ポリペプチドは、トリプシン阻害活性を有するため、インフルエンザ感染の初期段階である、該ウイルス表面のHAをHA1とHA2に開裂するトリプシン活性を抑えることができ、これによりインフルエンザウイルス感染を阻止することが期待できる。したがって、本発明の新規ポリペプチドは、インフルエンザウイルス感染の予防薬又は治療薬の材料を提供する。また、既存の方法に従って、本発明の新規ポリペプチドに対する抗体を容易に入手することができるので、これらを用いた抗原抗体反応に基づくインフルエンザウイルス感染の診断、感染メカニズムに関する研究等に利用できる。
また、該新規ポリペプチドは、侵襲、多臓器不全、ショック、膵炎、播種性血管内凝固症候群、虚血性心疾患、腎炎、川崎病、早産、肝硬変、再閉塞、血管透過性昂進による浮腫、呼吸困難症候群、慢性関節リュウマチ、関節炎、アレルギー等トリプシンが関与する疾患の治療剤の開発に利用できる。
本発明の新規ポリペプチドの精製方法は、イヌ腎細胞に限らず種々の培養細胞由来のプロテアーゼ阻害活性を有するポリペプチドを調製する方法として利用できる。また、本発明のスキムミルク分解法は、種々のプロテアーゼ及びプロテアーゼ阻害活性を有するポリペプチドの活性測定や検出に利用できる。また、培養細胞におけるウイルス増殖において、プロテアーゼ阻害活性を有するポリペプチドの量を制御することによりウイルス産生量を上げることができ、結果として、ワクチン製造における生産性を高める。
図1は、ヘパリンカラムクロマトグラフィーによる分画パターン及びトリプシン阻害活性の分布を示す図面である。+は、トリプシン阻害活性陽性を表し、その数は活性の強さを示す。−は、トリプシン阻害活性陰性を表す。矢印は2つの活性のピークを示し、電気伝導度が3〜5mSの既知のインヒビター(左)と電気伝導度が7〜9mSの新規インヒビター(右)の溶出位置を示す。
図2は、下記の試料のリバースザイモグラフィー分析を行い、そのゲルをCBBで染色した結果を示す写真である。レーン1,4,7は未処理、レーン2,5,8は60℃,30分間加熱処理、レーン3,6,9は還元(2メルカプトエタノール)処理した試料である。図中の矢印はプロテアーゼインヒビター活性によって消化を免れたゼラチンバンド(プロテアーゼインヒビターの局在)の位置を示す。レーン1〜3:大豆トリプシンインヒビター(対照)、レーン4〜6:MDCK細胞培養上清の限外ろ過膜処理画分(100K〜10K画分)をヘパリンカラムクロマトグラフィーに供したときの溶出画分(伝導度3〜5mS画分)、レーン7〜9:MDCK細胞培養上清の限外ろ過膜処理画分(100K〜10K画分)をヘパリンカラムクロマトグラフィーに供したときの溶出画分(伝導度7〜9mSの画分)、レーン10:分子量マーカー
図3は、下記の試料のSDS-PAGEを行い、そのゲルをCBBで染色した結果を示す写真である。レーン1,2は還元下、レーン4、5は非還元下でSDS−PAGEを行った。レーン1,4:MDCK細胞培養上清の限外ろ過膜処理画分(100K〜10K画分)をヘパリンカラムクロマトグラフィーに供したときの溶出画分(伝導度3〜5mS画分)、レーン2,5:MDCK細胞培養上清の限外ろ過膜処理画分(100K〜10K画分)をヘパリンカラムクロマトグラフィーに供したときの溶出画分(伝導度7〜9mSの画分)、レーン3,6:分子量マーカー
図4は5'RACE法に供した各プライマーの位置関係を示した図面である。
図5は3'RACE法に供した各プライマーの位置関係を示した図面である。
第一に、本発明は、(i)プロテアーゼ阻害活性を有する新規なポリペプチド、(ii)該新規ポリペプチドを主成分として含有する医薬組成物及び(iii)該新規ポリペプチドの精製方法によって特徴付けられる。
(i)プロテアーゼ阻害活性を有する新規なポリペプチド
ここで「プロテアーゼインヒビター」とは、動植物界に広く存在する蛋白分解酵素(プロテアーゼ)の活性を阻害するペプチド又はポリペプチドと定義される。以下、本発明のプロテアーゼ阻害活性を有する新規なポリペプチドを「新規プロテアーゼインヒビター」と称することもある。新規プロテアーゼインヒビターは、少なくとも、トリプシンに対する阻害活性を有する。斯かる新規プロテアーゼインヒビターは、いかなる方法で生産されたものであってもよい。例えば、ヒトおよびヒト以外のいかなる生物の組織、尿や血液等の体液から精製されたものであってもよく、哺乳動物細胞を培養し、その培養液から精製して得られたものであってもよく、また、遺伝子組換え技術により生産されたものであってもよい。より好ましくは、新規プロテアーゼインヒビターは、哺乳動物細胞を培養することにより又は遺伝子組換え技術を用いることにより得られる。
一般に、新規プロテアーゼインヒビターを動物細胞から得た場合、あるいは遺伝子工学的に酵母や動物細胞等の真核細胞を宿主として生産させた場合には、該新規プロテアーゼインヒビターに糖鎖が付加されるが、大腸菌等の原核細胞を宿主として遺伝子工学的に蛋白質を生産させた場合には、糖鎖は付加されない。本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、トリプシン阻害活性を保持する限り、糖鎖が付加されたもの、付加されていないものいずれであってもよい。
本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、配列番号24記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。同じポリペプチドでありながら、種や個体間の差、臓器細胞の由来の違いにより、そのアミノ酸配列に変異を生じることは珍しいことではない。ここで言うアミノ酸配列の変異とは、そのアミノ酸配列中の任意の1つ以上のアミノ酸が欠失、もしくは他のアミノ酸に置換していること、および任意の位置に1つ以上のアミノ酸が挿入もしくは付加していることを意味する。これらのアミノ酸の欠失、挿入、付加、置換は、複数箇所で同時に生じていることもある。最近の遺伝子組換え技術によれば、これらのアミノ酸配列の変異を人為的に生じさせることは容易である。したがって、本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、それがトリプシンに対する阻害活性を有している限り、前記配列番号24のアミノ酸配列の一部が変異した配列からなるポリペプチドを含有する。
一般に、糖鎖の有無や糖鎖の種類、測定条件等によってポリペプチドの分子量は変わる。故に、本発明の新規プロテアーゼインヒビターを特徴づける要素の一つとして分子量を使用する場合には、一定の条件下における数値で記載する必要がある。本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、SDS-PAGE法による分子量が還元下で10〜12kDa、非還元下で14〜20kDaであることを特徴とするものである。より好ましくは、SDS-PAGE法による分子量が還元下で10〜12kDa、非還元下で12〜15 kDaである。
本発明の新規プロテアーゼインヒビターを特徴付ける他の要素として、ジチオスレイトール(DDH)や2−メルカプトエタノールなどの還元剤及び/又は加熱に対する安定性等が挙げられる。本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、2v/v%以上の2−メルカプトエタノール処理でトリプシン阻害活性を消失するが、60℃、30分間の加熱処理に対してはその活性は維持される。
したがって、本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、(ア)SDS-PAGE法による分子量が還元下で10〜12kDa及び非還元下で14〜20kDaである、(イ)60℃、30分間の加熱処理によりプロテアーゼ阻害活性を消失しない、(ウ)還元剤の処理によりプロテアーゼ阻害活性を消失する、なる特徴の少なくとも一つを充足するポリペプチドである。好ましくは、配列番号24記載のアミノ酸配列を有し、(ア)SDS-PAGE法による分子量が還元下で10〜12kDa及び非還元下で14〜15kDaである、(イ)60℃、30分間の加熱処理によりトリプシン阻害活性を消失しない、(ウ)還元剤の処理によりトリプシン阻害活性を消失する、なる特徴の少なくとも一つを充足するポリペプチドである。更に好ましくは、配列番号24記載のアミノ酸配列を有し、(ア)SDS-PAGE法による分子量が還元下で10〜12kDa及び非還元下で14〜15kDaである、(イ)60℃、30分間の加熱処理によりトリプシン阻害活性を消失しない及び(ウ)還元剤の処理によりトリプシン阻害活性を消失する特徴を有するポリペプチドである。
(ii)新規プロテアーゼインヒビターを主成分として含有する医薬組成物
前述したように、本発明の新規プロテアーゼインヒビターには、配列番号24記載のアミノ酸配列又はその一部のアミノ酸配列に変異が生じたアミノ酸配列からなるポリペプチド、これに糖鎖が付加されたもの、付加されていないものが含まれる。これらのポリペプチド及び後述の該ポリペプチドを発現する発現カセットは、インフルエンザウイルス感染を抑制するのでインフルエンザウイルス感染の予防又は治療のための医薬組成物の主成分として用いることができる。該医薬組成物には、通常医薬品に用いられる薬理的に許容される添加剤(例えば、担体、賦形剤、希釈剤及び安定剤)などの製薬上必要な成分が適宜混合され、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、腸溶カプセル剤、シロップ剤、注射剤の形体で用いられる。安定化剤としては、グルコース等の単糖類、サッカロース、マルトース等の二糖類、マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール、塩化ナトリウム等の中性塩、グリシン等のアミノ酸、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(プルロニック)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(トゥイーン)等の非イオン系界面活性剤、ヒトアルブミン等が例示され、1〜10W/V%程度が添加されていることが好ましい。また、前記の医薬組成物は、主成分として含有する新規プロテアーゼインヒビターがトリプシン阻害活性を有しているのでトリプシンに起因する各種疾患、たとえば侵襲、多臓器不全、ショック、膵炎、播種性血管内凝固症候群、虚血性心疾患、腎炎、川崎病、早産、肝硬変、再閉塞、血管透過性昂進による浮腫、呼吸困難症候群、慢性間接リュウマチ、関節炎、アレルギー等の治療薬として使用することができる。
(iii)新規プロテアーゼインヒビターの精製
本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、哺乳動物細胞を培養した培養上清及び該細胞の破砕液(以下、単に「培養物」と称することもある)から取得できる。細胞成分や添加物など不純物を含む当該培養物から本発明の新規プロテアーゼインヒビターを精製する際には、一般に、蛋白質化学において使用される精製方法、例えば、塩析法、限外ろ過法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換クロマト法、ゲルろ過クロマト法、アフィニティークロマト法、疎水クロマト法、ハイドロキシアパタイトクロマト法などの方法が使用される。これらの中から、本発明の新規プロテアーゼインヒビターの活性が失われないような方法を適宜選択し、組み合わせて用いる。本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、(1)哺乳動物細胞を培養し、その培養液を回収する、(2)哺乳動物細胞の培養液を分画分子量100kDaの限外濾過膜でろ過し、ろ液を分画分子量10kDの限外濾過膜で濃縮する、(3)前記濃縮液をヘパリンカラムに吸着後、溶出する、及び場合によっては(4)前記溶出液を逆相カラムに通し、目的物を回収する、からなる一連の工程により精製される。
上記の工程(1)の哺乳動物細胞は、本発明の新規プロテアーゼインヒビターを生産する哺乳細胞であれば如何なる細胞であってもよい。好ましくは腎臓由来の細胞、更に好ましくは培養の容易さの点から株化細胞、例えば、MDCK細胞(イヌ腎臓由来の株化細胞)、Vero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来の株化細胞)又はSK-NEP-1細胞(ヒト腎臓由来の株化細胞)である。これらの細胞は、ATCC(American Type Culture Collection)に、それぞれCCL-34、CCL-81及びHTB-48として登録されたものである。
細胞の培養は、一般的な条件下で行えばよい。培地として、T7m(JRH Bioscience社、特注品)、EX-CELL293(JRH Bioscience社、14570)EX-CELL MDCK(JRH Bioscience社、14580)、M199-earle base(日水)、イーグルMEM(E-MEM)(日水)、ダルベッコMEM(D-MEM)(日水)、SC-UCM102(日水)、UP-SFM(GIBCO BRL)、EX-CELL302(ニチレイ)、EX-CELL293-S(ニチレイ)、TFBM-01(ニチレイ)、ASF104(味の素)等が挙げられるが何れを使用してもよい。実際には、これらの培地にアミノ酸、塩類、抗カビ・抗菌剤等を添加したものが使用される。動物血清中には種々のプロテアーゼインヒビターが多量に含まれるため、培地には血清を添加しない方が好ましい。細胞の増殖時には、その増殖効率を上げるために、植物由来加水分解産物等を添加した培地を用いるが、培養物を回収して精製を行う段階では、添加物を含まない培地が用いられる。培地のpHは、動物細胞の増殖に適した7〜8、好ましくは、7.4に調整される。培養上清中に分泌されるプロテアーゼインヒビターは比較的安定であるため、新規プロテアーゼインヒビターを精製する際の材料は、細胞密度を高密度に保持し、長期間培養した培養上清が好ましい。
培養の方法としては、細胞をルー瓶又はローラーボトル等に静置させて培養する静置培養、ホローファイバーを用いる付着培養、マイクロキャリアなどの担体に細胞を付着させてこれを浮遊して培養する浮遊培養又は担体を用いずに細胞を浮遊させて培養する浮遊培養等が挙げられるが、高密度、大量培養を行う場合はマイクロキャリアを用いたファーメンター培養を行うのが好ましい。マイクロキャリアとしては、サイズ、形状、密度、表面荷電及び表面コート材質などタイプの異なる種々のマイクロビーズが市販されているので、この中から適宜選択して用いればよい。例えば、サイトデックス、バイオシロン(ナルジェヌンクインターナショナル)、CELLYARD(ペンタックス社)などのマイクロビーズが挙げられるが、好ましくは、サイトデックス(CytodexI,アマシャムバイオサイエンス社)である。当該サイトデックスの使用量は、培養液1Lあたり、1〜10g、好ましくは、3〜5gである。
培養条件は、細胞の種類、ウイルス接種量及び培養スケール・方法等の組合わせにより適宜に調節される。例えば、培養温度は、32℃〜38℃、好ましくは35〜37℃、培養期間は、7〜15日間、好ましくは12〜14日間、炭酸ガス濃度は4〜6%、細胞の植え込み濃度は5×104〜3×105cells/ml を目安として行えばよい。ファーメンターでの培養では、生産物を蓄積させるために、培地交換を最低限に留めるのが好ましい。より具体的には、MDCK細胞及びサイトデックスを用いた又は浮遊培養用に純化したMDCK細胞を用いた浮遊培養が行われる。5×104〜3×105cells/mlの濃度で細胞を植え込み、細胞密度が2×106cells/ml以上に増殖したときに培養を終了し、培養物を回収する。細胞密度の測定は、血球計算盤等による一般的な方法に従って行えばよい。
こうして得られる細胞培養物は、工程(2)の二段階の限外濾過膜処理に供される。第一段階では、分画分子量100kDaの限外濾過膜を通過させることにより、巨大分子が除去され、第二段階では、低分子の除去と本発明の新規なプロテアーゼインヒビターの濃縮が行われる。本発明に用いる限外濾過膜の形状は、中空糸型,平膜型,管状型,スパイラル型等が開発されているが、無菌性が要求される場合、大量に処理することが要求される場合など、目的に応じて選択される。当該限外ろ過の前に、培養物中の不溶物(主として細胞又はその破砕物)を除去するために、1000〜10000rpm、10分間〜1時間の低速遠心又は5〜0.45μ程度のフィルター処理を行うのが好ましい。
上記の濃縮液は、一旦、蛋白濃度を電気伝道度が1〜2mSになるまで希釈した後、工程(3)のヘパリンカラムクロマトグラフィーに供される。カラム容量及び形状は,試料の添加量に応じて適宜設定される。ヘパリンを結合させる樹脂としては、アガロース、セルロース、ポリスチレン,ジビニルベンゼン及びポリアクリルアミドなどを適宜選択可能であるが、好ましくは、セファロースである。より具体的には、セファロース支持体にヘパリンが結合している市販のHi Trap Heparin Sepharose FF(アマシャムファルマシア社)が使用される。カラムの平衡化には、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、クエン酸緩衝液、炭酸緩衝液、酢酸緩衝液及びホウ酸緩衝液などの一般にクロマトグラフィーに使用される緩衝液が用いられる。また、上記の濃縮液の希釈にも同じ緩衝液が使用される。緩衝液の濃度及びpHは、それぞれ本発明の新規なプロテアーゼインヒビターがカラムに吸着する濃度10〜50mM及びpH7.0〜8.0の範囲で使用される。好ましくは、20mMリン酸緩衝液、pH7.4が使用される。本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、平衡化に用いた緩衝液で洗浄後、適当濃度の塩を含む同緩衝液で溶出される。緩衝液に添加する塩は,塩化ナトリウム,塩化カリウム,硫酸アンモニウム,燐酸ナトリウム等を単品または組み合わせて用いることができる。好ましくは、20mMリン酸緩衝液(pH7.4)と600mM塩化ナトリウムを含む同緩衝液の二つの緩衝液を用いた濃度勾配による溶出が行われる。本発明の新規プロテアーゼインヒビターを含む画分は、各フラクションの一部をプロテアーゼ阻害活性の測定系に共し、プロテアーゼ活性の阻害が認められるフラクションを回収することによって得ることができる。上記の濃度勾配による溶出を行った場合は、溶出画分に複数のピークが出現するが、本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、塩濃度が高い(伝道度7〜9mS:280〜370mM NaCl濃度に相当)ピークに溶出される。ちなみに、塩濃度が低い(伝道度3〜5mS:130〜230mM NaCl濃度に相当)ピークは、既知のPSTI型インヒビターであった。
上記のヘパリンカラムクロマトグラフィーによる精製方法は、複数回繰り返し行ってもよい。第2回目のヘパリンカラムクロマトグラフィーに供するための試料は、必要があれば、適当な緩衝液に対して透析又は5〜10倍希釈して、再度アプライできる。
ヘパリンカラムクロマトグラフィーの後に、工程(4)の逆相カラムクロマトグラフィーを行うことにより本発明の新規プロテアーゼインヒビターの精製度を上げることができる。逆相カラムとして、逆相C4カラム、逆相C8カラム、ODSカラム及び逆相C18カラムが使用可能であるが、好ましくは、逆相C8カラム(SHISEIDO;カプセルックUG120、YMC;YMC-Pack C8、Sigma-Aldorich; Discovery BIO Wide Pore C8、野村化学;Develosil C8-UG、昭和電工;Asahipack C8P)が使用される。より具体的には、ヘパリンカラムクロマトグラフィー後の試料は、50mM塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液、pH7.1に対して一晩透析した後、0.1%ギ酸−水系の緩衝液で平衡化した逆相C8カラム(SHISEIDO カプセルパックUG120、4.6mm径×250mm)クロマトグラフィーに供される。本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、逆相C8カラムに吸着される。これを溶出する際には、0.1%ギ酸−水系の緩衝液で洗浄後、0.1%ギ酸−水系の緩衝液と70%アセトニトリルを含む0.1%ギ酸−水/緩衝液の二つの緩衝液を用いた濃度勾配による方法が用いられる。ギ酸の代わりにトリフルオロ酢酸を用いてもよい。各フラクションの新規プロテアーゼインヒビターの検出には、ヘパリンカラムクロマトグラフィーの時と同じ方法を用いることができる。こうして得られる新規なプロテアーゼインヒビターは、高度に精製されたもので、総蛋白量に対して90%の純度を有する。
上記の工程(2)〜(4)の方法は、生物の組織、尿や血液等の体液を材料とする場合にも適用できる。好ましくは、哺乳動物細胞を用いたときと同様に、遠心分離やフィルター処理等を行って組織や細胞由来の不溶物を取り除いたものに対して本発明の方法が行われる。
このようにして単離された本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、エドマン分解法を利用したアミノ酸シークエンサー(PEアプライドバイオシステム社;オートプロテインシークエンサー492)に供され、アミノ酸配列が決定される。部分精製した試料についてアミノ酸配列を決定することもある。より具体的には、以下の方法が取られる。ヘパリンカラム又は逆相カラム溶出液の一部を2−メルカプトエタノール処理後、10〜15%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEをラエムリ(Laemmli)の方法(Laemmli, U.K., Nature, 227巻, 680-685 頁, 1970年)に準じて行い、泳動終了後、ゲルをトランスファーバッファー(10mM N−サイクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、10%メタノール、pH11)で洗浄し、あらかじめ100%メタノール及びトランスファーバッファーの順に浸しておいたポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(ミリポア製)上に重ね、TRANS-BLOT CELL(バイオ・ラッド製)を用いて20ボルト、一夜転写を行う。転写後のPVDF膜を水洗し、45%メタノール−10%酢酸に溶解した0.25%クーマシーブリリアントブルー(CBB)又は0.1%アミドブラックで30秒間染色後、蒸留水で脱色する。染色された分子量11〜20kDaのバンドを切り出し、この膜をアミノ酸シークエンサーにかけて分析する。
本発明の新規プロテアーゼインヒビターが新規なものであることを確認するには以下の二つの方法が取られる。一つは、ポリペプチドのアミノ酸配列から、バイオインフォーマティクスの技法(BIOINFORMATICS: A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins edited by Andreas D. Baxevanis and B. F. Francis Ouellette)により、実質的な遺伝子をクローニングすることなく、該ポリペプチドをコードする塩基配列を推測し、この塩基配列を既存のデータベースと比較する方法である。より具体的には、プログラムBLAST(tblastnt等)により、データベース(All non-redundant GenBank CDS translations + PDB + SwissProt + PIR + PRF, MSDB 20040106, nr.fasta)の検索が行われる。
他の方法は、MS分析データを比較する方法である。本発明の新規プロテアーゼインヒビターを還元カルボキシメチル化した後、トリプシン消化し、該消化物をMS分析に供する。消化物中のペプチド混合物の質量を測定し、データベース検索(BioWorks;Thermoelectronによる検索とMascotによる検索)が行われる。より具体的には、トリプシン消化断片のアミノ酸配列をhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgiプログラムtblastnにより、イヌゲノムでのデータベースサーチが行なわれる。その結果、本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、染色体クローンgi|54126067|ref|NW_139896.1|Cfa24_WGA61_1 Canis familiaris chromosome 24 genomic contig, whole genome shotgun sequenceに相当するポリペプチドであると同定され、その成熟体でのN末側のアミノ酸配列は、配列番号9記載の配列を有する。
新規プロテアーゼインヒビターの全長の遺伝子配列は、後述の核酸断片、発現カセット及び形質転換体の調製方法に準じて取得することができる。より具体的には、Isogen(ニッポンジーン社製)を用いてMDCK細胞からRNAを抽出し、これを鋳型として、配列番号5、8、9、10、11、12、13のアミノ酸配列に対応するDNA塩基配列の適当な領域のプライマー(配列番号15〜22)を用いたPCRを行い、DNA断片を増幅させる。得られたDNA断片のTAクローニングを行い、自動DNAシークエンサーにより塩基配列を決定する。該塩基配列(配列番号23)から予測されるアミノ酸配列として配列番号24記載のアミノ酸配列が得られる。
本発明の新規プロテアーゼインヒビターのプロテアーゼに対する阻害活性は、スキムミルクゲル分解法、Reverse Zymography及び合成基質法等などの方法などにより測定することができる。スキムミルクゲル分解法は、例えば、スキムミルクを含むアガロースゲルの平板に直径2〜5mmの孔を空け、これに試料を注ぎ、湿箱に入れて、プロテアーゼの蛋白分解活性が最も強い35〜37℃前後で1〜3時間静置することにより行われる。標準プロテアーゼとしてトリプシンを用いる。トリプシンが孔周辺のスキムミルクを分解することにより形成される消化リングの大きさ(縦×横)をマイクロメータで計測し、これを標準トリプシン(Worthington社TPCK-Trypsin)の消化リングの大きさと比較して活性が算出される。スキムミルクの濃度は、1.0〜5.0%、アガロースの濃度は、0.5〜2.0%を使用するのが適当である。アガロースを溶解する際には、一般にプロテアーゼ活性の測定に使用される濃度10〜100mM及びpH6.0〜8.0の緩衝液が使用される。好ましくは、150mM塩化ナトリウムを含む25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に、終濃度2%スキムミルク、1%アガロースを含むゲルが使用される。また、スキムミルクゲル分解法は、スキムミルクを基質とすることができるプロテアーゼならば如何なるプロテアーゼに対しても使用できるので、本発明のプロテアーゼインヒビターの特異性を調べることができる。スキムミルクを分解できるプロテアーゼとして、キモトリプシン、カリクレイン、トロンビン及び凝固第X因子などが挙げられる。さらに、スキムミルクゲル分解法は、プロテアーゼインヒビターのプロテアーゼ阻害活性や特異性を見るだけでなく、未知の蛋白分解活性及びその特異性を調べることも可能である。
リバースザイモグラフィー(Reverse Zymography;勝沼 臨床検査 47:871-874、2003、図8)とは、0.2%ゼラチンを含むSDS-PAGEゲルに試料を添加し、電気泳動後、ゲルをトリプシン溶液で処理し、染色する方法である。プロテアーゼインヒビターが存在するとトリプシン消化から保護された残存ゼラチンのバンドが検出される。そのバンドの分子量は、プロテアーゼインヒビターの分子量を反映する。ゼラチンの濃度は、0.1〜0.5%、SDS-PAGE濃度は、通常の蛋白やポリペプチドを分析するときに使用する濃度が使用される。トリプシン処理に使用するトリプシンの濃度としては、10〜50U/mLを使用するのが適当である。反応時間、反応温度は、上記のスキムミルク分解と同様の条件で行えばよい。市販キット((株)ヤガイ、YU-68028;Serine-protease Reverse Zymo Electrophoresis kit)を用いることもできる。
本発明の新規プロテアーゼインヒビターのインフルエンザウイルス感染への影響を調べる方法としては、該ウイルスと本発明の新規プロテアーゼインヒビターを混合し、これを感受性動物に接種してその感染阻害を見る方法及び培養細胞を用いてウイルスを増殖させる際に、本発明の新規プロテアーゼインヒビターを添加し、その増殖阻害を見る方法などが挙げられるが、何れの方法を用いてもよい。本発明では、培養細胞を用いてインフルエンザウイルスの増殖抑制効果をみる方法を採用した。より具体的には、インフルエンザウイルスをMOI=0.001で、MDCK細胞に感染させ、該感染細胞を本発明の新規プロテアーゼインヒビターを添加した培地中で培養し、培養液中のウイルス産生量を測定する方法である。ウイルス感染細胞の培養は、上述した一般的な培養条件下で行えばよい。ウイルス量の測定は、HAに対する抗血清を用いたELISA法(以下、「HA-ELISA」と称することもある)とニワトリ赤血球の凝集能で判定する赤血球凝集法(以下、「HA-Titer」と称することもある)を用いて行われる。これらの方法は、生物学的製剤基準一般試験法など書籍に記載された一般的な方法に従って行うことができる。
第二に、本発明は、前述の新規プロテアーゼインヒビターをコードする塩基配列からなる核酸断片、これらが発現するように構築された発現カセット及び該発現カセットが導入された形質転換体よって特徴付けられる。
アミノ酸配列が明らかにされている場合、前述したバイオインフォーマティクスの技法をもちいることにより、該アミノ酸配列からなるペプチドをコードする塩基配列を推考することは容易である。したがって、本発明には、配列番号1記載のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする塩基配列からなる核酸断片が含まれる。前述したように、本発明の新規プロテアーゼインヒビターには、それが本発明の新規プロテアーゼインヒビターの特徴を有している限り、前記配列番号1のアミノ酸配列、又はそれらの一部のアミノ酸配列に変異が生じたアミノ酸配列を有するペプチドも含まれる。故に、本発明には、これらのペプチドをコードする塩基配列からなる核酸断片を含む。本発明の核酸断片は、如何なる方法で得られた核酸断片であってもよい。例えば、配列番号1記載のアミノ酸配列から推測される塩基配列を参考にして化学合成されたものでもよく、また、適当なDNAライブラリーからクローニングされたものであってもよい。本発明には、該核酸断片の塩基配列のうち、ハイブリダイズさせることのできる任意の連続した塩基配列を有する断片を含む。一般に15個以上の塩基からなる核酸断片を用いることにより、特異的なハイブリダイゼーションを行うことが可能である。さらに、本発明は、上記の核酸断片とハイブリダイゼーションを行うことによって調製された本発明の新規プロテアーゼインヒビターをコードする塩基配列からなる核酸断片を含む。ここで言う「ハイブリダイゼーション」とは、ストリンジェントな条件で行った場合のハイブリダイゼーションである。以下に記述される「ハイブリダイゼーション」も同条件で行ったものとする。
本発明には、上記の核酸断片が発現するように構築された発現カセット(以下、「発現ベクター」と称することもある)が含まれる。ここで「発現カセット」とは、本発明の新規プロテアーゼインヒビター又はその一部を発現させるために、これらをコードする核酸断片の5’又は3’側に、開始コドン、終止コドン、リンカー配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、エンハンサー配列、プロモーター配列、リボゾーム結合配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、複製開始点配列及び選択マーカー遺伝子配列等を結合させたDNA分子を言う。いずれの塩基配列が必要であるかは、発現カセットの使用目的によって決定される。該発現カセットは、環状、直鎖状等いかなる形態のものであってもよい。
また、本発明には、該発現カセットを生体あるいは種々の細胞、例えば、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、細菌、酵母などの微生物に導入して得られる、本発明の新規プロテアーゼインヒビター又はその一部を発現する形質転換体が含まれる。
上述した核酸断片、発現カセット及び形質転換体は、以下のようにして調製される。すなわち、配列番号1を参考にして所望の塩基配列を有するDNAを、DNA化学合成機(例えば、モデル 394型 アプライドバイオシステムズ社製)を用いて合成し、これをプローブとして、適当なゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーを、ハイブリダイゼーションを基礎としたスクリーニング法や、抗体を用いたイムノスクリーニング法でスクリーニングし、目的のDNAを有するクローンを増殖させ、そこから制限酵素等を用いて切り出す方法等が取られる。本発明のDNAは、また、ゲノムDNAライブラリーもしくはcDNAライブラリーを鋳型とする PCR(Polymerase Chain Reaction, PCR Protocols, a guide to methods and applications、ミカエル A I( Michael A I)等編、1990年、アカデミック出版(Academic Press))によっても得る事ができる。PCRに使用するセンス及びアンチセンスプライマーは、記載のアミノ酸配列から推測される塩基配列を参考にして合成すればよい。DNAライブラリーは、本発明のDNAを有するライブラリーであれば、いかなるものも使用可能であり、市販のDNAライブラリーを使用する、あるいは適当な組織や細胞、尿や血液等の体液から公知の方法(サムブルック J(Sambrook J)等、 Molecular Cloning, a Laboratory Manual 2nd ed., コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory), ニューヨーク(New York), 1989年参照)に従って調製することができる。実際には、市販のキットが使用される。例えば、RNAの抽出には、TRIzol試薬(インビトロジェン社)、ISOGEN(ニッポンジーン社)、StrataPrep Total RNA Purification Kit(東洋紡)などの試薬、mRNAの精製には、mRNA Purification Kit(アマシャムバイオサイエンス社)、Poly(A) Quick mRNA Isolation Kit(東洋紡)、mRNA Separator Kit(クロンテック社)などのキット、cDNAへの変換には、SuperScript plasmid system for cDNA synthesis and plasmid cloning(インビトロジェン社)、cDNA Synthesis Kit(宝酒造)、SMART PCR cDNA Synthesis & Library Construction Kits(クロンテック社)、Directionary cDNA Library Construction systems(ノバジェン社)、GeneAmp PCR Gold(アプライドバイオシステムズ社)などが使用される。得られたDNAは、DNAシークエンサー(例えば、ABI Prism 377アプライドバイオシステムズ社)により決定される。DNAの一部に変異を入れる場合は、サイトダイレクティドミュータジェネシス法を使用するのが一般的である。実際には、本技術を応用したTakara社のSite-Directed Mutagenesis System (Mutan-Super Express Km、Mutan-Express Km、Mutan-Kなど)、 Stratagene社のQuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit、QuickChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit、Invitrogen社のGeneTailor Site-Directed Mutagenesis Systemなどの市販のキットを用い添付のプロトコールに従って行われる。
こうして得られる本発明の新規プロテアーゼインヒビターをコードする遺伝子又は当該遺伝子に変異を入れた改変体の遺伝子を適当な発現ベクターに組み込み、該発現ベクターを宿主に導入することによって、本発明の新規プロテアーゼインヒビター又はその改変体を当該宿主に発現させることができる。宿主として、外来蛋白の発現に常用される細菌、酵母、動物細胞、植物細胞及び昆虫細胞などを使用することが可能であるが、宿主はそれぞれの研究・開発目的に合わせて適宜選択すればよい。宿主への遺伝子導入方法としてリン酸カルシウム法、エレクトロポーレーション法、アルカリ金属法、DEAEデキストラン法、スフェロプラスト法、マイクロインジェクション法及びウイルス粒子を用いる方法などの方法(実験医学臨時増刊、遺伝子工学ハンドブック1991年 3月20日発行、羊土社)が挙げられるが、宿主に応じて適宜選択すればよい。こうして得られる新規プロテアーゼを産生する形質転換細胞を培養し、必要に応じて、遺伝子の増幅や発現誘導を行う。培養条件(培地、温度、pH、時間など)は、それぞれの宿主に応じて設定される。次いで、培養物を回収し、これを材料として、前述した新規プロテアーゼインヒビターの調製方法あるいは他の方法を組合わせて目的物の精製が行われる。
第三に、本発明は、本発明の新規プロテアーゼインヒビター又はその一部のポリペプチドと結合することができる抗体よって特徴付けられる。
該抗体は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む。ポリクローナル抗体を得るには、まず動物に、免疫抗原として本発明の新規プロテアーゼインヒビターもしくはその断片を必要に応じてフロイントの完全アジュバントや不完全アジュバント等の適切なアジュバントとともに腹腔内投与、皮下投与、皮内投与あるいは静脈内投与し、必要があれば2〜4週間の間隔で追加免疫する。追加免疫後、採血し抗血清を得る。免疫する動物は、特に制限されることはない。例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ヤギ、ブタ、ウシ等から、目的の抗体を産生しうる様な動物種を選択して使用すればよい。ポリクローナル抗体は、得られた抗血清を精製することによって得る事が出来る。精製は、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等の公知方法を適宜組み合わせて用いればよい。
また、モノクローナル抗体を得るには、以下のように行う。すなわち、免疫した動物から脾細胞もしくはリンパ球等の抗体産生細胞を採取し、例えば、Milsteinらの方法(Method Enzymol., 73, 3−46, 1981)に従って、ミエローマ細胞株等と融合し、ハイブリドーマを作製する。マウスミエローマ細胞としては、NSI-Ag4/1(Eur. J. Immunol., 6:511, 1976)、P3X63-Ag8.U1(Curr. Topics Microbiol. Immunol., 81:1, 1978)、X63-Ag8.653(J. Immunol., 123:1548, 1979)等を使用することができる。ハイブリドーマは、未融合細胞が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間HAT培地中で培養することにより得られる。かくして得られるハイブリドーマに対し、その培養上清を用いて、通常の限界希釈法に従い、目的とする抗体産生株の選択及びクローン化が行われる。本発明の新規プロテアーゼインヒビターに特異的に結合する抗体を産生しているクローンの選択は、一般的に使用されるELISA法、RIA法、ウエスタンブロット法等の分析方法を用いればよい。抗体の精製は、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等の上述した公知方法を適宜組み合わせて用いればよい。また、ファージディスプレイ技術を利用した抗体作製技術(PHage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual Edited by Brian K. Kay et al.、Antibody Engineering: A PRACTICAL APPROACH Edited by J. McCAFFERTY et al.、ANTIBODY ENGINEERING second edition edited by Carl A. K. BORREBAECK)により本発明の新規プロテアーゼインヒビターと結合する抗体を作製することもできる。こうして得られる抗体は、本発明の新規プロテアーゼインヒビターが関与する疾病の診断や治療に使用することができる。
インフルエンザウイルス増殖阻害物質の確認
(1)MDCK細胞の培養及び培養上清の回収
MDCK細胞を無血清培地T7m培地(JRH Bioscience社、特注品)に懸濁し、pH7.2〜7.5、炭酸ガス5%、37℃で6〜10日間、細胞密度が106cells/mLを越えるまで培養した。培養終了後、低速遠心(3000rpm×30分間)を行うか又は0.45μ程度のフィルターでろ過して、培養上清を回収した。
(2)培養上清の限外ろ過膜処理
実施例1−(1)の培養上清を、分画分子量100,000のスライスカセット(Sartorius社、305-14668-01-E--SG PESU 100K)を装着した限外ろ過膜濃縮装置(Sartorius社、ザルトコンスライス)でろ過し、100K膜を通過しなかった画分(以下、「>100K画分」と称する)とろ液を回収した。該ろ液を、分画分子量10,000のスライスカセット(Sartorius社、305-14439-E--SG HYDRO 10K)を装着した限外ろ過膜濃縮装置でろ過し、10K膜を通過しなかった画分(以下、「100K〜10K画分」と称する)とろ液(以下、「<10K画分」と称する)を回収した。
(3)限外濾過膜処理画分のプロテアーゼ阻害活性及び各画分のインフルエンザウイルス感染への影響
実施例1−(2)で得た3つの限外濾過膜処理画分(「>100K画分」、「100K〜10Kサイズ画分」及び「<10K画分」)のプロテアーゼ阻害活性及びこれらの画分を用いてインフルエンザウイルスA/NewCaredonia株/MDCK細胞培養系に及ぼす影響を調べた。
−1.限外濾過膜処理画分のトリプシン阻害活性
トリプシン阻害活性は、以下のスキムミルクゲル分解法により行った。2% (w/v)スキムミルクを含む1% (w/v)アガロースゲルの平板に直径4mmのウェルを作成して上記の3画分のそれぞれ15μLをアプライし、湿箱に入れて37℃、2時間静置した。ゲルの調製には、25mM トリス、150mM NaCl、0.02% NaN3(pH7.4)緩衝液を用いた。トリプシンにより形成される消化リングのサイズ(縦径×横径)から定性的にトリプシン活性の大きさを判定した。その結果を、表1に示す。+は、トリプシン阻害活性が陽性であることを示し、その数は活性の強さを示す。−は、トリプシン阻害活性が陰性であることを示す。
−2.限外濾過膜処理画分のインフルエンザウイルス感染抑制効果
ウイルス産生量は、MOI=0.001でMDCK細胞に感染させ、該感染細胞を終濃度0.11U/mLのトリプシン及び上記の3画分のそれぞれを添加した培地中で、37℃、7日間(又は、1x106cells/ml以上になるまで)培養し、その培養上清についてウイルス量をHA-ELISAとHA-Titerを用いて測定した。
その結果、上記の表1に示すように、「100K〜10K画分」を添加した場合、インフルエンザウイルスの増殖は全く認められなかった。この画分は、プロテアーゼ阻害活性を有する画分と一致した。+は、ウイルス感染が抑制されたことを示し、その数は抑制効果の強さを示す。−は、ウイルス感染が成立したことを示す。
Figure 0004727591
新規プロテアーゼインヒビターの精製
(1)MDCK細胞の培養及び培養上清の回収
MDCK細胞を、5g/LのCytodex1(Amersham Bioscience社)と無血清培地T7m培地に懸濁し、pH7.2〜7.4、炭酸ガス5%、37℃で3〜7日間、細胞密度が106cells/mLを越えるまで培養した。培養終了後、0.45μ程度のフィルターでろ過して、培養上清を回収した。
(2)培養上清の限外ろ過膜処理
実施例2−(1)の培養上清を、分画分子量100,000のスライスカセット(Sartorius社、305-14668-01-E--SG PESU 100K)を装着した限外ろ過膜濃縮装置(Sartorius社、ザルトコンスライス)でろ過し、ろ液を、分画分子量10,000のスライスカセット(Sartorius社、305-14439-E--SG HYDRO 10K)を装着した限外ろ過膜濃縮装置で10〜40倍(バッチにより濃縮倍数は異なる)に濃縮し、回収した。
(3)ヘパリンカラムクロマトグラフィー
実施例2−(2)で得られた100K〜10K画分の濃縮液を、0.22μフィルターでろ過した後、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)で5〜6倍に希釈し、同緩衝液で平衡化したヘパリンカラムに通した。該クロマトグラフィーは、ヘパリンカラム(Amersham Bioscience社、HiTrap Heparin HP、5mL、17-0407-01)を装着した低圧クロマトグラフィーシステム(Bio-Rad社、BioLogic LP)下、4〜10℃の冷房、流速;1.5mL/min、バッファー;10mMリン酸(pH7.5)で行った。モニター項目としてOD280nm、電気伝導度(mS)を測定した。3〜5倍容量の10mMリン酸(pH7.5)で洗浄し、OD280nmのベースラインが充分下がってから、溶出プログラムに従ってA;10mMリン酸からB;10mMリン酸/0.6M 塩化ナトリウム(溶出)までの塩濃度のリニアグラジエント溶出を行なった。各フラクションのプロテアーゼ阻害活性をスキムミルクゲル分解法により測定した。定量的な判定を行うために、試料の消化リングのサイズと標準トリプシン(Worthigton社製TPCK-Trypsin)の階段希釈液(100、40、20、10、5、2.5、1.25U/mL)の消化リングのサイズをマイクロメータで計測し、両者を比較して活性の大きさを算出した。その結果、プロテアーゼ阻害活性は、素通り画分には認められず、溶出画分にのみに検出された(図1)。活性のピークは二つ認められ、各ピークの伝導度は、3〜5mS(130〜230mM NaClに相当)及び7〜9mS(280〜370mM NaClに相当)であった。
この二つの阻害活性画分のリバースザイモグラフィー分析を行った。すなわち、0.2 %ゼラチンを含有したSDS-PAGEゲルとゼラチンを含まないSDS-PAGEゲルを用意し、両ゲルに同じ試料をアプライした。電気泳動後、ゲルを0.1 % (w/v)トリプシン溶液で37℃、2時間処理してゼラチンを分解後、残存ゼラチンを0.25%CBBで染色した。インヒビターが存在した場合、トリプシン消化から保護された残存ゼラチンがバンドとして染色され、そのバンドの分子量からプロテアーゼインヒビターの凡その分子量(非還元状態)が推定される。その結果、伝導度3〜5mSの画分からは、分子量11kDaの位置に不明瞭で弱いバンドしか検出できなかったが、伝導度7〜9mSの画分からは、分子量約14kDaの位置に明瞭な一本のバンドが認められた(図2)。また、該分子量約14kDaのバンドは、60℃、30分間の加熱処理後もトリプシン阻害活性を保持したが、2v/v%2−メルカプトエタノールによる還元処理によりその活性は消失した(図2)。
(4)逆相カラムクロマトグラフィー
実施例2−(3)で得た伝導度7〜9mSの画分を逆相C8カラム(SHISEIDO カプセルパックUG120、4.6mm径×250mm)クロマトグラフィーに供した。すなわち、50mM塩化ナトリウムを含む50mMトリス緩衝液(pH7.1)に対して一晩透析した後、0.1%ギ酸−水系の緩衝液で平衡化した逆相C8カラム(SHISEIDO カプセルパックUG120、4.6mm径×250mm)クロマトグラフィーにアプライした。同緩衝液で充分に洗浄した後、0.1%ギ酸−水系の緩衝液と70%アセトニトリルを含む0.1%ギ酸−水/緩衝液の二つの緩衝液を用いた濃度勾配により、吸着画分の溶出を行った。RT=20分付近に一本のピークを認めた。ギ酸の代わりにトリフルオロ酢酸を用いたときは、RT=30分付近に一本のピークを認めた。
新規プロテアーゼインヒビターの性質
(1)SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
実施例2−(3)で得たプロテアーゼ阻害活性画分について、ラエムリ(Laemmli)の方法(Laemmli, U.K., Nature, 227巻, 680-685 頁, 1970年)を参考にして還元下及び非還元下でSDS-PAGE分析を行った。その結果、伝導度3〜5mS画分からは、還元下で分子量13.6kDa、非還元下で分子量11.0kDaの一本のバンドが認められた。一方、伝導度7〜9mSの画分からは、還元下で分子量11.4kDa、非還元下で15.0kDaの一本のバンドが検出された(図3)。
(2)N末端アミノ酸配列分析
実施例2−(3)で得たプロテアーゼ阻害活性画分を常法により、還元下でSDS-PAGE後、PVDF膜へトランスファーし、風乾したのち、CBB染色し、染色されたバンドを切出し、PEアプライドバイオシステムズ社のオートプロテインシークエンサー492にてアミノ酸配列の分析を行った。その結果、伝導度3〜5mS画分から得られた分子量13.6kDaのポリペプチドは、そのN末側に配列番号2記載のアミノ酸配列を有し、一方、伝導度7〜9mS画分から得られた分子量11.4kDaのポリペプチドは、そのN末側に配列番号1記載のアミノ酸配列を有していた。
次いで、バイオインフォーマティクスの技法により、配列番号1又は2記載のアミノ酸配列から塩基配列を推測し、プログラムBLAST(tblastnt等)により、データベース(All non-redundant GenBank CDS translations + PDB + SwissProt + PIR + PRF, MSDB 20040106, nr.fasta)の検索を行った。その結果、配列番号2記載のアミノ酸配列は、Hochstrasserらが報告したイヌ顎下腺由来プロテアーゼインヒビター(Submandibular proteinase inhibitor(PSTI-type)又はdouble-headed proteinase inhibitors,bikazins)と同定された。しかしながら、配列番号1記載のアミノ酸配列は、既存のデータベースに登録されているアミノ配列もしくはアミノ酸から塩基配列に翻訳した配列とも一致するものは認められなかった。
(3)質量分析
実施例2−(4)で得た約100〜200μgの試料を回転濃縮装置を用いて溶媒を蒸発させ、乾燥固形化し、再度、20μLの水に溶解した。これに6Mグアニジン塩酸塩/0.5MトリスHCl(pH8.0)+2mMEDTAの80μLを加えて溶解し、さらに100mMDTTを5μL添加した後、アルミホイルで遮光して、37℃で75分間反応させ、変性・還元した。続いて100mMヨードアセトアミドを10μL加え、さらに遮光して37℃で75分間反応させ、還元カルボキシメチル化した。反応後、反応物を予めリン酸緩衝液で平衡化したMicroSpinG-25ゲル濾過カラム(Amersham Biosciences社#27-5325-01)にかけて脱塩後、1mg/mLトリプシンGold(MS分析用:Promega社#V5280)を10μL加えて、37℃で一晩反応(消化)した。翌日、10μLを追加して、7時間消化を続けた消化物をMS分析用の試料とした。目的のプロテアーゼインヒビターとトリプシンで消化して得られるペプチド混合物の質量を測定して、MSデータベース検索(BioWorks;Thermoelectronによる検索とMascotによる検索)を行ったが、既存のペプチド又はポリペプチドと一致するものは認められなかった。
(4)全アミノ酸配列分析
分子内アミノ酸配列を解読するため、精製プロテアーゼインヒビターを還元カルボキシアミドメチル化した後、トリプシンで消化して得られる全ペプチドのN末端アミノ酸配列分析を行った。
Heparinカラムクロマトグラフィーによって得られた精製プロテアーゼインヒビターを50mg/mLの蛋白質濃度に調製し、6Mグアニジン塩酸塩を含む0.5Mトリス塩酸(pH8.0)、2mMEDTAの80μLに対して、20μLを加え、更に100mMDTT(ジチオスレイトール)の5μLを加えて、アルミホイルで遮光して37℃、75分間還元反応を行った。続いて100mMヨードアセトアミドの10μLを添加し、アルミホイルで遮光して37℃、75分間カルボキシアミドメチル化反応を行った。
反応後、試料をMicrospinG-25カラム(プロメガ社、V5280)によって低分子成分を除去、バッファー交換して、ペプチド断片を回収した。これにMS分析用トリプシン(Trypsin Gold)の10μLを加えて、37℃、一晩消化し、更にトリプシン(Trypsin Gold)の10μLを加えて、37℃、一晩消化した。
上記のようにして得られたトリプシン消化物を逆相カラムクロマトグラフィー(HPLCシステム:LC-9A、カラム:東ソー、TSK-gel ODS-80Ts、温度:50℃、移動相:A)0.1%TFA、B) 0.1%TFA/80%アセトニトリル)にアプライし、溶出したところ、16本の明瞭なペプチド・ピークが得られた。これらの精製ペプチドの全てを質量分析(MALDI-TOF/MS:Bruker、BIFLEXIII)及びアミノ酸配列分析機(HEWLETT PACKARD、G1000A)で解読した。得られたペプチドのアミノ酸配列のうちの#16は消化に用いたトリプシンで、#13と#15、#9と#12、#11と#14は同一配列であった。配列番号にはペプチド配列(配列番号3〜14)を示した。
次いで、トリプシン消化断片の全アミノ酸配列をhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgiプログラムtblastnにより、イヌゲノムでのデータベースサーチを行った。その結果、新規プロテアーゼインヒビターは、機能が全く不明な染色体クローンgi|54126067|ref|NW_139896.1|Cfa24_WGA61_1 Canis familiaris chromosome 24 genomic contig, whole genome shotgun sequenceの一部(配列番号表23の83番目Arg相当の塩基配列まで)と一致し、イヌゲノム遺伝子に存在することが推定された。
全長新規プロテアーゼインヒビター遺伝子の単離・同定
配列番号5、8、9、10、11、12、13のアミノ酸配列をもとに対応するDNA塩基配列から図4に示す領域にプライマーをデザインし、MDCK細胞からIsogen(ニッポンジーン社製)を用いてRNAを抽出し、市販のTAKARA 5'-Full RACE Core Set及びTAKARA 3'-Full RACE Core Setを用いて新規プロテアーゼの全長の遺伝子を決定した。
以下、全ての合成プライマーはオペロン社(株)に依頼した。遺伝子組換えに関する試薬類は、特に断りのない限り、TAKARA、TOYOBOおよびNew England Biolabs社製を用いた。
より具体的には、5'RACEとしてTAKARA 5'-Full RACE Core Setの製品マニュアルに基づき、5'リン酸化アンチセンスプライマー(5'PAS1:配列番号15)と図4に示すセンスプライマー1,2 (5'S1,5'S2:配列番号16、17)及びアンチセンスプライマー 1,2 (5'AS1, 5'AS2:配列番号18、19)をデザインした。製品マニュアルに従い、first strand cDNAの合成それに続き、一本鎖cDNAの環化ののち、5'S1と5'AS1による1st PCRを行い、さらに5'S2と5'AS2での2nd PCRを経て増幅されたバンドをアガロース電気泳動後、抽出操作を行い、TA クローニングを実施した。出現したコロニーから常法により遺伝子を調製し(Molecular Cloning 2nd edition pp 1.25-1.28)、自動DNAシークエンサーにて核酸配列の解読を行った。シークエンシングは、TA クローニングベクターに存在するM13RVプライマー(配列番号20)、T7プライマー(配列番号21)を用いて行った。複数クローンの解読された塩基配列と前述したイヌゲノムクローンgi|54126067|ref|NW_139896.1|Cfa24_WGA61_1 Canis familiaris chromosome 24 genomic contig, whole genome shotgun sequenceとの比較から配列番号24に示す配列の一部(23番目Arg相当まで)を決定した。
3'RACEは、MDCK培養細胞totalRNAから、3'-Full RACE Core Set(TAKARA社製)を用いて、添付マニュアルに基づき、添付のオリゴdTプライマーにて逆転写反応を行った後、5'RACEにより決定された領域から図5に示す3'RACE用sense primer 1(3'S1:配列番号22)を設定し、添付のアダプタープライマーでのPCRで増幅したバンドをアガロース電気泳動により分離、抽出後、TA cloningを行った。出現したコロニーから遺伝子を調製し、自動DNAシークエンサーにて核酸配列の解読を行った。シークエンシングは、TA cloning vectorに存在するM13RVプライマー(配列番20)、T7プライマー(配列番号21)を用いて行った。
5'RACE及び3'RACEで得られた配列から、配列番号24に記載する本タンパク質のcDNA配列を決定した。
本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、その好ましい特徴として、インフルエンザウイルスの増殖抑制活性を有しているので、インフルエンザ感染の予防又は治療に使用できる。また、本発明の新規プロテアーゼインヒビターは、トリプシン阻害活性を有しているので、トリプシンに起因する各種疾患、例えば、侵襲、多臓器不全、ショック、膵炎、播種性血管内凝固症候群、虚血性心疾患、腎炎、川崎病、早産、肝硬変、再閉塞、血管透過性昂進による浮腫、呼吸困難症候群、慢性間接リュウマチ、関節炎、アレルギー等の治療薬として使用することができる。また、本発明の新規プロテアーゼインヒビター又はこれをコードする核酸断片は、前記疾病の診断薬に使用できる。

Claims (18)

  1. 配列番号24記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
  2. プロテアーゼ阻害活性を有することを特徴とする請求項1記載のポリペプチド
  3. 哺乳動物細胞由来であることを特徴とする請求項1または2記載のポリペプチド。
  4. 哺乳動物細胞が腎細胞であることを特徴とする請求項記載のポリペプチド。
  5. 腎細胞がMDCK細胞、Vero細胞、SK-NEP-1細胞からなる群より選ばれる細胞であることを特徴とする請求項記載のポリペプチド。
  6. 遺伝子組換え技術により得られることを特徴とする請求項1または2記載のポリペプチド。
  7. トリプシン阻害活性を有することを特徴とする請求項ないしの何れか一項記載のポリペプチド。
  8. 任意の位置で一つ又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたことを特徴とする請求項記載のポリペプチド
  9. 配列番号24記載のアミノ酸配列からなり、プロテアーゼ阻害活性を有するポリペプチドを精製する方法であって、下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする前記方法
    (1)哺乳動物細胞を培養し、その培養液を回収する、
    (2)前記培養液を分画分子量100kDaの限外濾過膜でろ過し、ろ液を分画分子量10kDaの限外濾過膜で濃縮する、
    (3)前記濃縮液をヘパリンカラムに通し、同緩衝液で洗浄後、塩の濃度勾配により溶出し、プロテアーゼ阻害活性画分を回収する、及び場合によっては
    (4)前記溶出液を逆相カラムに通し、同緩衝液で洗浄後、アセトニトリルの濃度勾配により溶出し、プロテアーゼ阻害活性画分を回収する
  10. 哺乳動物細胞が腎細胞であることを特徴とする請求項記載の方法。
  11. 腎細胞がMDCK細胞、Vero細胞、SK-NEP-1細胞からなる群より選ばれる細胞であることを特徴とする請求項10記載の方法。
  12. 該ポリペプチドが、トリプシン阻害活性を有するポリペプチドであることを特徴とする請求項ないし11の何れか一項記載の方法。
  13. 該ポリペプチドが、任意の位置で一つ又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであることを特徴とする請求項12記載の方法。
  14. 配列番号24記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードすることを特徴とする核酸断片。
  15. 前記アミノ酸配列において任意の位置で一つ又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つトリプシン阻害活性を有するポリペプチドをコードすることを特徴とする請求項14記載の核酸断片。
  16. 下記(イ)又は(ロ)の何れか一方の核酸断片を挿入した発現カセット
    (イ)配列番号24記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする核酸断片
    (ロ)前記(イ)のアミノ酸配列において任意の位置で一つ又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つトリプシン阻害活性を有するポリペプチドをコードする核酸断片
  17. 下記(イ)又は(ロ)の何れか一方の発現カセットを導入した非ヒト形質転換体
    (イ)配列番号24記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする核酸断片を挿入した発現カセット
    (ロ)前記(イ)のアミノ酸配列において任意の位置で一つ又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つトリプシン阻害活性を有するポリペプチドをコードする核酸断片を挿入した発現カセット
  18. 配列番号24記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを認識することを特徴とするポリクローナル又はモノクローナル抗体
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