JP4725276B2 - 回路遮断器 - Google Patents

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Description

本発明は、接点対を開極させて電流を遮断する回路遮断器に関するものである。
従来の回路遮断器は、固定接点を有する固定接触子と、前記固定接触子の固定接点と接触および開離可能な可動接点を有し、この可動接点を接触および開離する動作を行う可動接触子と、前記固定接触子及び可動接触子を内蔵し、電流遮断時に前記固定接触子と前記可動接触子との間に発生するアークに起因する加圧ガスを一時貯留する蓄圧空間、および前記蓄圧空間に貯留された加圧ガスが、前記固定接触子及び前記可動接触子に前記アーク発生により形成されたアークスポット間を通って排気されるように、前記アークの発生位置に対して前記蓄圧空間とは反対側に排気口を設けた消弧室容器とを備えている(例えば、特許文献1)。
上述の回路遮断器の作用について説明する。上述の構成では、固定子の接点と可動子の接点とが接点対をなし、電流遮断時(開極時)には、この接点対の間にアークが発生する。このアークは、接点対周辺のガスを急速に加熱し、加圧ガスを生成させる。生成された加圧ガスの一部は、上記蓄圧空間内に一時貯留され、その後接点対間を通過して排気口から消弧室容器外へ排気される。この接点対間を通過する際、接点対間に発生するアークに加圧ガスが吹き付けられるため、アークを吹き流すようにして消弧する。
再公表特許(A1)WO01/041168号広報(17頁12〜22行、図2)
従来の回路遮断器は、遮断時にアークに吹付ける加圧ガスの流速が大きいほど、また流量が大きいほど、アークの消弧能力(即ち電流遮断能力)が高く、開極した固定子と可動子との接点間(接点対間と呼ぶ)の絶縁耐力の回復速度も大きくなる。電流遮断性能を向上させるために、加圧ガスの流速を大きく、ないし流量を大きくする方法として、例えば、アークの発生する位置近傍に有機絶縁物を配置して発生ガス量を増加させる方法がある。
しかしながら、前記方法により発生ガス量が増加すると、消弧室容器により高い内圧が加わることになる。この内圧により、消弧室容器および消弧室容器を収納する筐体への負荷が高くなると、装置破損に至る可能性が高くなる。装置破損を防止し、より大電流の遮断性能を持つ回路遮断器を得るには、より高い内圧に耐えられる消弧室容器が必要になる。このような高内圧に耐えられる消弧室容器を調達するのは必ずしも容易ではないので、従来の回路遮断器の構成によると、消弧室容器の機械的強度により回路遮断器の遮断性能が制約されるという課題があった。
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、遮断時の消弧室容器の内圧上昇を抑制することにより、消弧室容器の機械的強度に起因する最大遮断電流の制約を低減し、大電流に対応できる遮断性能を有した回路遮断器を得るものである。
この発明に係る回路遮断器においては、消弧室容器の内のアークに暴露される部分に蒸気発生源を設け、蓄圧空間から排気口につながる経路を構成する壁面を、加圧ガスの流れのよどみを作らない滑らかな形状とし、且つ排気口前面にノズル状の流路を設けたものである。
この発明は、消弧室容器の内のアークに暴露される部分に蒸気発生源を設け、蓄圧空間から排気口につながる経路を構成する壁面を、加圧ガスの流れのよどみを作らない滑らかな形状とし、且つ排気口前面にノズル状の流路を設けたので、電流遮断の際に消弧室内で発生するガスを排気口側のアーク柱の(排気口側の)一部に速い流速で集中して吹付けて消弧するので、消弧に必要なガス量を低減でき、遮断動作時に消弧容器内で発生する圧力ピークを低くできる。これにより消弧室容器の機械的強度に起因する制約を低減し、大電流に対応できる遮断性能を有するという効果を奏する。
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における回路遮断器の断面図を示すものである。なお、各図中の同一部分ないし相当部分には、同一符号を付与している。
図1において、回路遮断機は、固定接点211を有する固定接触子201と、固定接点111と接触・開離可能な可動接点111を有する可動接触子101とが、略密閉容器である消弧室容器301内に設けられている。可動接触子101は、可動接点111を固定接点211と接触、引き離しができるように動作可能なように構成される。消弧室容器301は、その内壁に有機絶縁物蒸気発生源51を有し、電流遮断時に固定接点211と可動接点111との間に発生するアークにより有機絶縁物蒸気発生源51で生成されるガスを加圧ガスとして一時貯留する蓄圧空間Uと、この加圧ガスを排気する排気口311を有する。排気口311は、蓄圧空間Uに対してアークの発生位置を基準にして相対峙する位置に配置される。電路の異常電流を検出するリレー等からなる異常検出部10、前記接触子対を開閉する開閉機構部20、及び前記消弧室容器301は、共に排気口311が設けられた外筐体501内に収納される。
図1では、消弧室容器301の壁面に有機絶縁物蒸気発生源51を設置したが、遮断時に発生するアークに曝露される部分に有機絶縁物蒸気発生源51として別部材を設けても良いし、有機絶縁物蒸気発生源に代えて別の蒸気発生源を設けても良い。
回路遮断器は、異常検出部10において異常電流が検出され、これに伴い開閉機構部20が動作したとき、又は開閉機構20に設けられた手動操作ハンドル30が遮断操作されたときに動作し、回路遮断が実行される。いずれの場合も、回路遮断は、電路を構成する可動接触子101を動かし、これに伴い可動接触子101上に設けられた可動接点111を移動することにより固定接触子201上に設けられた固定接点211を機械的に開離することにより開始され、その時発生するアークAに対して、そのアークにより発生した上記加圧ガスを吹付けることによってアークAを消弧することにより完了する。図1は可動接点111と固定接点211を機械的に開離、即ち開極した後の図で、開極した接点間の周辺にアークAが発生している様子を示している。以下、回路遮断前後における回路遮断器の電路状態、および回路遮断動作について詳細に説明する。
回路遮断前の通電状態における電路は以下の通りである。外部電源の出力端子(図示しない)と回路遮断器の第1端子41は電気的に接続されている。第1端子41は、回転軸131を支点として回動可能な可動接触子101と電気的に接続されている。可動接触子101には可動接点111が設けられている。この可動接点111は固定接触子201に設けられた固定接点211に機械的に接触している。固定接触子201は第2端子42に電気的に接続され、この第2端子42は外部負荷の入力端子(図示しない)に接続されている。
一方、通電状態からの回路遮断は、可動接触子101に設けられた可動接点111と固定接触子201に設けられた固定接点211とが機械的に開離されることによって実行される。具体的には、第2端子41から回路遮断器に入力される電流が、異常検出部10により異常(電流値が予め設定される定格値を超えた場合など)と判断された場合に、異常検出部10から開閉機構部20にむけ遮断指令が出される。この遮断指令を受け開閉機構部20は指令を出すことにより、回転軸131を中心軸に可動接触子101を回動することによって可動接点111と固定接点211とを開極する。開極の際、可動接点111と固定接点211との間(以下、ギャップ呼ぶ)で放電によるア−クAが発生し、その周辺の空気を熱し加圧ガスを生成させる。
可動接点111と固定接点211の開離に伴い最初に発生したア−クAが出す大量の熱により、ア−ク周辺の空気は瞬時に加熱・膨張され、また、この加熱膨張空気に触れることにより消弧室容器301の壁面から有機絶縁物蒸気発生源51から多量のガスが一瞬に発生・放出され、消弧室容器301の内圧が爆発的に上昇する。これら加圧されたガスの一部は、消弧室容器301が略密閉構造であるため蓄圧空間U内に瞬時に蓄えられ、一部は消弧室容器301の排気口311から排気される。その際、その蓄えられた加圧ガスは蓄圧空間Uと排気口311の間に位置する可動接触子101と固定接触子201との間を通過するため、可動接触子101と固定接触子201間のギャップに発生したア−クAを排気口311の方に向けて押し流すようになる。また、ア−クAを形成するプラズマの電離度は、加圧されたガスによって低下させられ、電離した荷電ガス粒子の一部は前記ギャップの外に押し流されていくため、一気にア−クAは消弧され、ギャップの絶縁性も回復する。
ア−クAの消弧特性は、放電部位の構造に影響を受けるが、これ以外に放電部位から外部へと加圧ガスを排気する流路の構成により影響を受けることが判明している(流路の構成による消弧特性への影響については、後述する)。そこで、本実施の形態1では、図1に示すように、可動接触子101が最大開極した時の可動接触子101先端側の外筐体401に排気口311を設け、この排気口と可動接触子101先端部との間に排気口311に連なるようにノズル状の流路300(ノズル状流路は、ノズル長がノズル径と同程度かそれ以上の長さであるものである。)を設け、且つ、アーク発生位置から排気口311に至る消弧室容器内の壁面の外向きの法線ベクトルが屈曲部において90度以下の変化となるようにテーパ部402、405を設けた。ここで、壁面の外向きの法線ベクトルの屈曲部における変化とは、壁面401と壁面402(テーパ部)とが、屈折部を介して接続され、壁面401と壁面402のそれぞれの外向きの法線ベクトルのなす角度が90度以下であることをいう。さらに詳細には図7の消弧室容器301の断面形状を示す図を用いて説明する。図7における壁面の外向きの法線ベクトルの屈曲部における変化とは、屈折部421を介して接続された壁面(平面)401と402とが、それぞれの平面の法線ベクトル441と442とのなす角度のことをいう。この例では、法線ベクトル441と442とのなす角度は、30度程度であるので、上述の条件を満たす。同様に、他の壁面の外向きの法線ベクトルの屈曲部における変化とは、屈曲部422における法線ベクトル442と443のなす角、屈曲部423における法線ベクト443と444のなす角、屈曲部424における444と445のなす角、屈曲部425における法線ベクトル445と446のなす角のことである。これら法線ベクトルのなす角はいずれも90度以下であるので、この例では上述の条件を満たす。
上記では、消弧室容器301内の壁面が平面で構成されることを前提としたが、屈曲部にフィレット(円筒面)が設けられていても良い。さらには、壁面自体が円筒面、曲面で構成されていても良い。消弧室容器301はアーク発生位置から加圧ガスを排気口311に導く流路がアーク発生位置から排気口311に向けて加圧ガスの流れによどみを作らない滑らかな形状とすれば良い。このような消弧室容器301の形状の例を図8に示す。図8中、421、424、425は、上述の壁面の屈曲部にフィレット(円筒面)を設けたものである。具体的には、421は壁面401と壁面402とが接続する屈曲部にフィレットを設けたものであり、424、425は夫々壁面404と壁面405との屈曲部、壁面405と壁面406の屈曲部にフィレットを設けたものである。さらに、422と423は、夫々、壁面402と壁面403との屈曲部、壁面403と壁面404との屈曲部にフィレットを設けたものである。この結果、壁面403の平面部分が消失し、フィレットとして設けられた壁面422と壁面423とが滑らかに接続したものである。このようにしてできた壁面を消弧室容器301の内壁として構成しても良い。
フィレットを含む消弧室容器301において、蓄圧空間Uから排気口311に至る消弧室容器内の「壁面の外向きの法線ベクトル」が「屈曲部」において90度以下の変化となるようにしたことを図8にて説明する。なお「屈曲部」とは、平面と平面が屈折する部分(図7の421,422,423,424,425)、及び平面間に設けたフィレット部(図8の421,422,423,424,425)のみならず、平面間を滑らかな曲線で接続した部分をも含む概念である。図8中、「屈曲部」は、421,422,423,424,425であり、「壁面の外向きの法線ベクトル」は、441,442,444,445,446である。例えば、屈曲部421を介して接続する壁面401と402とについては、壁面401の外向きの法線ベクトル441と壁面の外向きの法線ベクトル442とのなす角が90度以下となるようにしたものである。同様に、屈曲部で接続する壁面の外向きの法線ベクトル442と443、443と444、444と445、及び445と446のなす角が90度以下となるようにしたものである。
なお、上述の消弧室容器301内の壁面は、図1の紙面に垂直な面について説明しているが、図1の紙面に平行な壁面は、平面で構成される。この場合、図1の紙面に垂直な壁面と平行な壁面とは、壁面の外向きの法線ベクトルどうしが90度の角度をなすので、屈曲部において面の外向きの法線ベクトルが90度以内の上述の条件を満たす。さらに図1の紙面に垂直及び平行な面以外の消弧室容器301内の壁面についても、上述の条件を満たすと良い。
一般的に、本実施の形態のような気中回路遮断器が適用される回路の電圧は、その他の遮断器、例えば、ガス遮断器、真空遮断器に比べて低いので、電流を遮断した瞬間に電極間に印加される再起電圧が比較的小さい。そのため、可動接触子と固定接触子との間の少なくとも一部の空間のみの絶縁性能を回復させ、この状態を維持するだけでも電流を遮断できる。従って、蓄圧空間Uに蓄えられ、限られた量の加圧ガスを接触子間アーク全長に対して吹き付けることは非効率である。本実施の形態では、電流遮断時に可動接触子101側のアーク発生部位に集中して吹き付ける構成としている。
このような構成では、上記加圧ガスを可動接触子101の先端部近傍に集中して吹き付けることにより可動接触子101側アークスポットが可動接触子101先端部へと移行し易くなり、アークスポットで発生する金属蒸気の吹き出し方向が、固定接触子201方向から排気口311側へと変化し、アークAを形成するプラズマを外部へ排出する効率が向上する。
次にノズル状流路300の効果を説明する。図2は、実施の形態1における回路遮断器を模擬し、ノズルの効果を評価する評価装置の断面図、および評価装置の回路図を示すものである。この装置を使って前記ノズル状流路300の長さ(以下ノズル長と略称する)Lと遮断成功時の蓄圧空間U内のピーク圧力値との関係を調べた。評価装置の消弧室容器301内に、第1電極141と第2電極241が対向するように設けられ、その間にギャップが形成されている。消弧室容器301の電極が設けられていない一つの面の一部(端部)には、排気口311が設けられ、排気口311と前記ギャップの間にはノズル状流路300が設けられ、さらに消弧室容器301内で、ギャップ位置を基準にして排気口311とは反対側に蓄圧空間Uが形成されている。ノズル状流路300はノズル状流路300が設けられた消弧室容器301の面において、第1電極141側に設けられている。第2電極241の消弧室容器301貫通部近傍からノズル状流路の端部までの内壁面形状は、テーパ状となっている。蓄圧空間Uには圧力センサ61が設けられ、蓄圧空間U内の圧力変化が計測される。なお、圧力センサ61からの情報は、圧力センサのケーブル611により外部に伝達される。
評価装置における回路遮断器を模擬するための回路は、以下のように構成されている。第1電極141は第1端子41を経由してスイッチ62に接続され、スイッチ62は負荷64を介して電源63に接続されている。また、第2電極241は第2端子42を経由して電源63、負荷64に接続されている。
ノズル長Lと遮断成功時の蓄圧空間U内の圧力ピークとの関係を調べるため、ノズル長Lと蓄圧空間U内の圧力ピークとを変えた試験を行った。蓄圧空間U内の圧力ピークを変える方法として、ノズル状流路300および排気口311の断面積を変える方法を採った。具体的な試験は、スイッチ62を投入することにより試験装置に交流電流を流し、第1電極141と第2電極241間のギャップにア−クAを発生させた後、そのア−クAが消弧されるまでの蓄圧空間Uの圧力変化を計測することにより実施した。なお、試験の回路条件は、電源電圧・交流600V、推定短絡電流・約10kA、力率0.24、投入位相90度である。
この試験における遮断の成功、失敗の判断は、このギャップ間に発生したア−クAが最初の電流零点で消弧されて遮断が完了した場合を遮断成功とし、それ以外を遮断失敗として、遮断成功の確率を算出した。この試験結果を図3に示す。
図3は、図2の評価装置を用いて、排気口311につながるノズル状流路300の長さとアーク発生時の評価装置内の圧力増加に伴う圧力ピークの関係について試験した結果のグラフである。図3中、各試験における圧力ピーク値を平均した平均圧力ピークを横軸に、遮断成功確率を縦軸にとったグラフ上にノズル長Lが0mm、20mm、34mmの試験結果を表したものである。図3から遮断成功確率が100%となる圧力ピ−クは、ノズル長0mmでは約1.75MPaであるが、ノズル長20mmでは約1.70MPa、ノズル長34mmでは約1.25MPaと、ノズル長が長くなるほど遮断成功確率100%になる最小の圧力ピークが低下していることが分かる。つまり、ノズル状流路300を設けることにより、遮断に適した流れを得ることができ、遮断すべき電流が同じ場合には、より低い圧力ピークで遮断できる。また、その効果はノズル長Lが長いほど大きくなる。なお、ガスの貯留容積、テーパ角度はすべての試験にて同じ条件としている。
上記では消弧室容器301はアーク発生位置から加圧ガスを排気口に導く流路がアーク発生位置から排気口311に向けて経路を構成する壁面を、気体の流れのよどみを作らない滑らかな形状とすること、具体的には、アーク発生位置から排気口に至る消弧室容器内の壁面の外向きの法線ベクトルが屈曲部において90度以下の変化となるように壁面(テーパ部)を設けることを述べたが、上記構成とすることで、一旦電流を遮断した直後に再び接触子間で電流が流れ始める再点弧を防止することができるという点について図4により説明する。
図4は、アーク発生位置から排気口に至る消弧室容器内の壁面の外向きの法線ベクトルが屈曲部において90度以上である場合に再点弧が起こり易いことを説明するための模式図である。図4(A)に示す消弧装置では、消弧室容器301内の壁面の外向きの法線ベクトルがその屈曲部において90度以上変化している。このような壁面をもつ消弧室容器301では、固定接触子201近傍に流れのよどみ部ができ、接触子間で発生した金属蒸気を含む高温のガスA´が排気口から排気されず、電流遮断直後に固定接触子201近傍に残留する。この残留した高温のガスA´は、電流遮断後に、図4(A)中で破線矢印にて示すように、接触子間へと広がり、接触子間の空間の絶縁性を低下させ、接触子間に再び電流が流れ始め、再点弧にいたる。
さらに詳細に説明すると、電流遮断時の消弧室容器内での圧力発生元は接点間の高温アークであるので、消弧室容器壁面が無い場合、接点間のアーク柱の空間部位が最も圧力が高く、アークからの距離が遠くなるほど圧力は低くなる。従って、気流はアーク柱を中心として外に向って発生する。この時、例えば、図4(A)に示すように、固定接触子201近傍の消弧室容器301内の壁面404と405の外向きの法線ベクトルがその屈曲部において90度以上変化していると、壁面405に衝突したアーク柱からの気流の大部分は屈曲部側(図中、下側)へ、そしてその気流の一部は排気口側(図中、上側)へと曲げられる。この屈曲部側に曲げられた気流は壁面に沿って流れ、さらに上記屈曲部を形成するもう一方の壁面404(もしくは、壁面に隣接した固定接触子201の部位)に衝突して方向を変え、固定接点211側へと流れようとする。しかし、固定接点211にはアーク柱の一端部が位置しているので固定接点近傍の圧力は高く、結果として、前記流れは屈曲部近傍の空間で渦流を発生させる。この渦流発生空間のガスは、アーク発生初期においては空気を主としているが、アークから連続的に供給される高温の金属蒸気を含むガス流によって置き換えられ、電流遮断時には絶縁耐力が低い残留した高温ガスA´となる。この残留した高温ガスA´の一部は、遮断時に接点間に発生するアークを吹き消す気流に巻き込まれて排気口から排気されるが、上記壁面の外向きの法線ベクトルがその屈曲部において90度以上変化している壁面形状のためスムーズな排気を実現できず、大多数は、アークの消滅にともなう接触子間側の圧力低下により、固定接点近傍へと移動し再点弧の原因となる。
一方、例えば、図4(A)において、固定接触子近傍の消弧室容器内の屈曲部を外向きの法線ベクトルがその屈曲部において90度以下となるように改良をすれば(図示せず)、壁面405に衝突したアーク柱からの気流の多数が排気口側(図中、上側)へと曲げられるので、屈曲部近傍空間には渦流が発生しなくなり、その結果、絶縁耐力が低い残留した高温ガスA´も殆ど発生しない。また、前記壁面の外向きの法線ベクトルがその屈曲部において90度以下の変化とした壁面形状としたので排気がスムーズになり、たとえ少量の残留した高温ガスA´が発生したとしても殆どが即座に排気され、このガスが固定接点側へと移動して再点弧が発生することを防止できる。
この再点弧発生時の電流波形を図4(B)に示す。同図に示すように、前記の高温のガスA´の接触子間への広がりにともない第1電流半波後に時刻t1において再点弧が発生し、第2電流半波が流れる。この第2電流半波後の時刻t2における次の電流零点では、消弧室容器301内に残留する高温ガスA´が累積されるため、さらに遮断できる確率が低下し、遮断不能となることが多い。つまり、再点弧を発生することなく電流を確実に遮断するには、接触子間の絶縁を回復させ、その状態を維持する必要があるが、そのためには、消弧室容器301内に導電性を有する高温ガスが残留しないような構成にすることが不可欠である。そこで放電部位から排気口へとつながる内壁面の面の外向きの法線ベクトルが屈曲部で90度以上変化しないような壁面とすることにより、消弧室容器内から導電性の高温ガスがスムーズに排気されるようにした。この構成により導電性を有する高温ガスが消弧室容器内に残留しないため、直ちに接触子間の絶縁を回復させ、再点弧を生じさせることなく電流を遮断できる。この点が、本発明の特徴の一つである。
上記のように排気口311を前記可動接触子101の近傍に設け、アーク発生位置より前記排気口311までの消弧室容器301内壁面を内壁面の外向きの法線ベクトルが屈曲部で90度以上変化しないようにし、且つ、排気口311につながる部分にノズル状の流路300を設けたので、遮断の際に消弧室容器301内で発生するガスをアーク柱の可動接触子201側の一部に高い流速で集中して吹付けてアークを消弧でき、消弧に必要なガス量を低減できる。これにより遮断動作時に消弧容器内で発生する圧力ピークを低くできる。このことは、同じ圧力ピークであれば従来より大きな電流を遮断できることになり、同じ機械強度を持つ消弧容器であれば、高い消弧能力が発揮できる効果が得られる。
また、消弧室容器301内壁面を面の外向きの法線ベクトルが屈曲部で90度以上変化しないように構成したので、電流遮断時、導電性の高温ガスを接触子近傍にとどまらせること無く排気でき、また導電性の高温ガスが再度接触近傍に戻ることを防止できるので、回復した接触子間の絶縁耐力を維持し、速やかに絶縁回復できるという効果が得られる。これにより再点弧を発生させること無く電流を遮断できる。
最大開極位置における可動接触子101の先端部近傍にノズル状流路300を設けたので、電流遮断直前の可動接触子101側アークスポット吹き出し方向を排気口311側へ向けることができ、アークAを形成するプラズマの排気効率を高めることができる。これにより、アークAを速やかに消弧でき、かつ接触子間の絶縁性能も速やかに回復することができるため、再点弧が生じにくく、確実に消弧できるという効果がある。
実施の形態2.
実施の形態1ではノズル状流路300を最大開極状態の可動接触子101先端部近くに設けたが、本実施の形態は、ノズル状流路300を最大開極位置の可動接触子101先端部と固定接触子201の間に設けたものである。以下、図面に基づいて本発明の実施の形態2について説明する。
図5は本実施の形態2の回路遮断器を示す主要部の断面図である。本実施の形態2における回路遮断器は、排気口311およびそれにつらなるノズル状流路300を、可動接触子最大開極位置における可動接触子101先端部と固定接触子201の中間に設けたものであり、その他の主要構成部ないし相当部分は図1に示す本発明の実施の形態1の回路遮断器とほぼ同じ構成であるので、異なる部分を中心に説明する。
図5を用いて本実施の形態2の回路遮断器の構成とその動作について説明する。回路遮断器の回路遮断は、電路に設けられた異常電流を検出する異常検出部10が、通電時の異常電流の検出に伴い開閉機構部20を動作させたとき、もしくは、開閉機構部20に設けられた手動操作ハンドル30が遮断操作されたときに実施されることは実施の形態1と同じである。いずれの場合も回路遮断は、可動接触子101の移動により開始され、可動接触子101上に設けられた可動接点111が固定接触子201上に設けられた固定接点211から機械的に開離し、2つの接点間の周辺に発生するア−クAに対して加圧ガスを吹付けながら消弧することで完了する。
短絡電流等の大電流を遮断する場合について、この回路遮断完了に至る可動接触子101の動作を以下に詳細に説明する。可動接触子101の固定接触子201からの開離は、機構部20の動作を待たず接点接触部の電流集中により生じる電磁反発力により開始される。接点間で発生したアークのアークスポットでの金属蒸気吹き出しの力と可動接触子101に生じる開極方向の電磁反発力とにより可動接触子101が最大開極位置(図5中、破線にて示す)まで瞬時に移動し、接点間には高いアーク電圧を発生する。
この高いアーク電圧により回路を流れる電流が減衰していき、この減衰にともない可動接触子101を開極させる金属蒸気吹き出しの力と電磁力とが減衰する。これら可動接触子101を開極させる力が減衰すると、接圧バネ(図示せず)の力により可動接触子101は最大開極状態を維持できず固定接触子201方向へ移動(再閉極動作)を開始する。
この固定接触子201方向への移動前に開閉機構部20が動作して可動接触子101に開極力を付与できれば可動接触子を最大開極位置で保持できる。しかしながら、高限流タイプの回路遮断器では、開閉機構部20は、再閉極動作により可動接点111が固定接点211側へ移動開始後、固定接点211へ接触するまでの間に、可動接触子101に開極力を与える。従って、電流が遮断される時点には、可動接触子101は最大開極位置(点線で示す)に無く、図5に実線で示す位置にある。
上記遮断時の可動接触子101の動作を考慮すると、排気口311およびそれに接続するノズル状流路300の設置位置は、可動接触子101最大開極位置の可動接触子101先端部近くではなく、可動接触子101の最大開極位置と固定接触子201位置の間に設けた方が、蓄圧空間Uに蓄えられた加圧ガスを可動接触子101先端部近傍に効率的に吹付けることができる。可動接触子101先端部近傍にこの加圧ガスを吹付けることにより、可動接触子101側アークスポットの金属蒸気吹き出し方向を排気口311側へと移行でき、アークを形成するプラズマの排気効率が向上する。なお、放電部位からノズル状流路300を経て排気口311までにいたる消弧室容器内壁面形状は、理想的には断面積が収縮して広がった形状をしたラバールノズル形状とすることが好ましい。
本実施の形態2では、排気口311開口部を前記可動接触子101最大開極位置でのその先端部と固定接触子201との間に設け、アーク発生位置より排気口311までの消弧室容器301の内壁各面の外向きの法線ベクトルが排気口近傍の内壁面屈曲部にて90度以下の変化となるように壁面を構成し、且つ、排気口311につながる部分にノズル状の流路300を設けたので、短絡電流等の大電流遮断動作時においても、消弧室容器内に蓄えられる加圧ガスを効率的に電流遮断に用いることができ、且つ、回復した接触子間の絶縁耐力を維持できる効果が得られる。
実施の形態3.
本実施の形態では、ノズル状流路300を固定接触子201近くに設けたものである。以下、図面に基づいて本実施の形態3について説明する。
図6は本実施の形態3の回路遮断器を示す主要部の断面図である。本実施の形態3における回路遮断器は、排気口311およびそれにつらなるノズル状流路300を、固定接触子201側に設けたものであり、その他の主要構成部ないし相当部分は図1に示す実施の形態1の回路遮断器とほぼ同じ構成である。
図6を用いて本実施の形態3の回路遮断器の構成とその動作について説明する。回路遮断器の回路遮断は、電路に設けられた異常電流を検出する異常検出部10が、通電時の異常電流の検出に伴い開閉機構部20を動作させたとき、又は開閉機構部20に設けられた手動操作ハンドル30が遮断操作されたときに実施されることは実施の形態1と同じである。いずれの場合も回路遮断は、可動接触子101の移動により開始され、可動接触子上に設けられた可動接点111が固定接触子201上に設けられた固定接点211から機械的に開離し、2つの接点間の周辺に発生するア−クAに対して加圧ガスを吹付けながら消弧することで完了する。
電流遮断時の動作は上述の実施の形態2と同じである。しかし、特に、限流性能に優れた回路遮断器では、電流の減衰が早く、そのために可動接触子101の再閉極動作の始動が早くなる。そこで、本実施例では、排気口311および排気口311につらなるノズル状流路300の設置位置を固定接触子101側とし、蓄圧空間Uに蓄えた加圧ガスを電流遮断直前直後において固定接触子201近傍のアークに効率的に吹付けて遮断するようにした。これにより、電流遮断直前の可動接触子101の位置に関らず、効率的に蓄圧空間Uに蓄えた加圧ガスを電流遮断に用いることができる。
本発明の実施の形態3では、排気口311を固定接触子201側に設け、アーク発生位置より排気口311までの消弧室容器301の内壁各面の面の外向きの法線ベクトルが屈曲部にて90度以下の変化となるように壁面を構成し、且つ、排気口311につながる部分にノズル状の流路300を設けたものであり、遮断回路条件および回路遮断器の限流性能に関らず、消弧室容器内に蓄えられる加圧ガスを効率的に電流遮断に用い、且つ、回復した接触子間の絶縁耐力を維持できる効果が得られる。
本発明の実施の形態1の回路遮断器を示す断面図である。 本発明の実施の形態1の評価装置を示す断面図である。 本発明の実施の形態1の評価装置を用いて、ノズル流路長と評価装置内の圧力ピ−クの関係について試験した結果の図である。 本発明の実施の形態1の回路遮断器の効果を説明するための図である 本発明の実施の形態2の回路遮断器の主要部を示す断面図である 本発明の実施の形態3の回路遮断器の主要部を示す断面図である 本発明の実施の形態1の消弧室容器を示す断面図である。 本発明の実施の形態1のフィレット部を持つ消弧室容器を示す断面図である。
符号の説明
101 可動接触子
111 可動接点
201 固定接触子
211 固定接点
300 ノズル状流路
301 消弧室容器(略密閉容器)
311 排気口
A ア−ク
U 蓄圧空間

Claims (6)

  1. 固定接点を有する固定接触子と、
    前記固定接触子の固定接点と接触および開離可能な可動接点を有し、この可動接点を接触および開離する動作を行う可動接触子と、
    前記固定接触子及び前記可動接触子を内蔵し、電流遮断時に前記固定接触子と前記可動接触子との間に発生するアークに起因する加圧ガスを一時貯留する蓄圧空間、および前記蓄圧空間に貯留された加圧ガスが、前記固定接触子及び前記可動接触子に前記アーク発生により形成されたアークスポット間を通って排気されるように、前記アークの発生位置に対して前記蓄圧空間とは反対側に排気口を設けた消弧室容器とを備えた回路遮断器において、
    前記消弧室容器の内の前記アークに暴露される部分に蒸気発生源を設け、前記蓄圧空間から前記排気口につながる経路を構成する壁面を、前記加圧ガスの流れのよどみを作らない滑らかな形状とし、且つ前記排気口前面にノズル状の流路を設けたことを特徴とする回路遮断器。
  2. 前記ノズル状の流路の長さは、ノズル径以上であることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
  3. 前記消弧室容器の前記蓄圧空間から前記排気口につながる経路を構成する壁面は、屈曲部を有し、この屈曲部で隣接する各壁面の外向きの法線ベクトルの前記隣接壁面間での変化が90度以下となる壁面で構成されたことを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
  4. 前記ノズル状流路を最大開極位置における前記可動接触子先端部近傍の前記消弧室容器に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回路遮断器。
  5. 前記ノズル状流路を最大開極位置における前記可動接触子先端部と前記固定接触子との間に設
    けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回路遮断器。
  6. 前記ノズル状流路を前記固定接触子先端部近傍の前記消弧室容器に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回路遮断器。
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