本発明は、鋳造用自動注湯装置並びに鋳型に対する注湯方法に係り、特に、溶湯が鋳型の複数に対して注湯せしめられ得る量において貯留される取鍋から、鋳型の一つ一つに対して自動的に注湯する装置の改良された構造と、かかる取鍋から鋳型に対して有利に注湯し得る方法とに関するものである。
よく知られているように、多数の鋳造製品を製造する際には、目的とする鋳造製品に対応した形状の空隙部を有する鋳型を、鋳造製品の必要個数と同一の数だけ造型する一方、その造型された鋳型を搬送ラインによって順次搬送しつつ、その搬送途中において、それぞれの鋳型の空隙部内に溶湯を注湯し、その後、搬送ラインの終点で、各鋳型の空隙部内で冷却、固化せしめられた鋳造製品を各鋳型内から取り出すといった一連の作業が、一般に行われている。
そして、従来から、このような一連の鋳造工程に対しては、各作業工程の省力化が望まれてきており、とりわけ、鋳型に対して溶湯を注湯する作業工程においては、劣悪な環境の中で、危険を伴う作業が強いられることとなるため、近年では、鋳型に対して溶湯を自動的に注湯する自動注湯装置を用いることによって、注湯作業の自動化が図られているのである。
かかる状況下、各種の構造を有する自動注湯装置が、現在、一般に使用されており、その中の一種として、溶湯が鋳型の複数に対して注湯せしめられ得る量において貯留される取鍋と、かかる取鍋の重量を計量する計量機構と、取鍋を傾動させることにより、つまり取鍋を回動させる等して、中心軸に対して所定の角度だけ傾けることによって、溶湯を取鍋内から流出させて、鋳型に対して注湯せしめる傾動機構とを備えてなる構造のものがある(例えば、特許文献1及び2参照)。
このような構造を有する自動注湯装置にあっては、傾動機構により取鍋を傾動させて、鋳型に対して溶湯を注湯した際に、計量機構にて計量される取鍋の重量が、一つの鋳型に対する注湯重量に相当する量だけ減少せしめられた時点で、取鍋が傾動される前の状態に復帰せしめられて、鋳型に対する注湯が停止せしめられ得るようになっており、それによって、搬送ラインにて順次送られてくる鋳型の一つ一つに対して、溶湯が、その必要な量において、それぞれ、自動的に注湯され得るようになっているのである。
ところで、かかる従来の自動注湯装置を用いて、自動注湯を行う場合、注湯時間の短縮化を図るには、鋳型に対して溶湯を注湯する際に、傾動機構により取鍋を大きく傾動せしめて、溶湯を取鍋から可及的に大きな流量で流出させるように為すことが望ましいが、そうすると、取鍋の傾動状態を復帰せしめて、鋳型に対する注湯を停止せしめる、所謂湯切りを迅速に行うことが困難となり、その結果、鋳型への溶湯の注湯重量が必要量よりも多くなってしまうといった不具合が生ずる。
そこで、従来の自動注湯装置にあっては、鋳型への注湯に際して、先ず、取鍋が、傾動機構にて、一方向に比較的に大きな角度で回動せしめられて、大きな量で傾動せしめられることにより、取鍋内の溶湯が、大なる流量で鋳型に注湯される。また、その状態から、計量機構にて計量される取鍋の重量が、一つの鋳型に対する注湯重量に相当する量よりも所定量少ない分だけ減少せしめられた時点で、取鍋が上記一方向とは反対の方向に回動せしめられて、取鍋の傾動量が小さくされることにより、鋳型への溶湯の流量が減少せしめられる。そして、その後、計量機構にて計量される取鍋の重量の減少量が、一つの鋳型に対する注湯重量に相当する量となったときに、取鍋の傾動量が更に小さくされて、取鍋が傾動状態から復帰せしめられることにより、鋳型への溶湯の流入が停止せしめられるようになっている。
かくして、従来装置では、取鍋から鋳型への溶湯の注湯操作の前半と後半とで、傾動機構による取鍋の傾動量を変化させて、取鍋からの溶湯の流出流量を制御することで、注湯速度の短縮化と、計量機構による取鍋重量の減少量の計量精度、つまり、一つの鋳型に対する注湯重量の計量精度の安定化とが図られているのである。
ところが、そのような従来の自動注湯装置にあっては、複数種類の製品を鋳造する際に、それらの製品に応じた複数種類の鋳型の一つ一つに対して溶湯を連続的に自動注湯する場合、安定した計量精度を確保することが、極めて困難であった。
すなわち、よく知られているように、鋳型における溶湯の受口から鋳型内部の空隙部内への溶湯の流量等を含む流動状態、所謂湯のみは、湯口系(湯口、湯道等)や空隙部の形状或いは大きさ等に大きく影響される。換言すれば、鋳造されるべき製品の種類に応じて、鋳型の湯のみ状況が、大きく変化せしめられることとなる。
それ故、従来の自動注湯装置を用いて、複数種類の製品に応じた複数種類の鋳型のそれぞれに溶湯を注湯する際には、鋳型が変更せしめられる毎に、各鋳型の湯のみ状況に応じた様々なパターンで、取鍋を傾動させて、各鋳型の受口に、湯だまりが、常時、安定的に形成されるように、取鍋からの溶湯の流出流量を制御し、そして、その上で、上述せる如く、計量精度を高めるために取鍋の傾動量を調節して、取鍋からの溶湯の流出流量を更に制御する必要があった。そのため、傾動機構による取鍋の傾動により取鍋から流出せしめられる溶湯の流量制御が極めて複雑なものとなってしまい、その結果、同一種類の複数の鋳型に溶湯を連続的に自動注湯する場合とは異なって、鋳型に対する注湯重量の計量精度を十分に安定化させることが、困難となってしまうのである。この問題は、10kg以下の少量鋳込み製品を得る際に、特に顕著なものとなっていた。
また、従来の自動注湯装置にあっては、前述せるように、取鍋が大きな量で傾動せしめられた状態から、その傾動量が小さくされることによって、取鍋からの溶湯の流出量が減少せしめられるようになっているのであるが、取鍋の傾動時に、取鍋内で溶湯の波打ちが生じ、それによって、取鍋から流出せしめられる溶湯の流量にバラツキが発生することがあった。
従って、かかる従来装置では、同一種類の複数の鋳型に対して溶湯を連続的に自動注湯する場合にあっても、各鋳型に対する注湯時において、取鍋が大きく傾動せしめられた状態から傾動量が小さくされる際に、たとえ、その傾動量の減少量が同一の量とされていても、取鍋から流出せしめられる溶湯の波打ちに起因する流量のバラツキによって、注湯重量の計量精度が不安定なものとなってしまう恐れがあったのである。これも、10kg以下の少量鋳込み製品を得る際に、特に大きな問題となっていた。
特開平10−58120号公報
特開2001−321924号公報
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、鋳型に注湯される溶湯の注湯重量の計量精度を、より高いレベルで一層安定的に確保し得るように改良された鋳造用自動注湯装置と鋳型に対する注湯方法とを提供することにある。
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、その要旨とするところは、鋳型に対して溶湯を自動的に注湯する鋳造用自動注湯装置において、(a)前記溶湯が前記鋳型の複数に対して注湯せしめられ得る量において貯留される取鍋と、(b)該取鍋の重量変化に基づいて、該取鍋に貯留される前記溶湯の重量の増減量を計量する計量手段と、(c)前記溶湯を前記鋳型の一つに対する注湯量に相当する量において収容可能な容積を有して、該鋳型における前記溶湯の受口の上方に配置可能に位置せしめられた収容部と、該収容部から下方に向かって延び出し、下方に開口する開口部を通じて、該収容部を外部に連通せしめる連通路とを有し、該鋳型の受口の上方への該収容部の配置状態下で、該収容部内に収容される該溶湯を該連通路にて該鋳型の受口に導くように構成された漏斗部材と、(d)前記取鍋を傾動せしめることにより、該取鍋内に貯留される前記溶湯を該取鍋内から前記漏斗部材の前記収容部内に流し込む一方、前記計量手段により計量される該取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量が該鋳型の一つに対する注湯重量と一致したときに、かかる傾動状態から、該取鍋の傾動量を減少せしめることで、該取鍋内から該漏斗部材の収容部内への該溶湯の流入を停止せしめる傾動手段とを含んで構成したことを特徴とする鋳造用自動注湯装置にある。
すなわち、本発明に従う鋳造用自動注湯装置にあっては、傾動手段による取鍋の傾動により、取鍋内の溶湯が、鋳型の一つに対して必要な注湯量に相当する量において溶湯を収容可能な漏斗部材の収容部内に流し込まれ、その一方で、かかる収容部内に流し込まれた溶湯が、漏斗部材の連通路を通じて、鋳型に注湯されるようになっている。そのため、例えば、漏斗部材の収容部内に湯だまりが形成されるように、連通路からの溶湯の流出流量よりも大きな流量で、取鍋内の溶湯を漏斗部材の収容部内に流し込むようにすれば、収容部内に流入せしめられた溶湯が、鋳型に対して、連通路を通じて、その内径に応じた一定の流量で注湯されるようになる。
それ故、かかる本発明装置では、複数種類の製品に応じた複数種類の鋳型のそれぞれに溶湯を自動注湯する場合等において、例えば、連通路を通じて流出せしめられる溶湯の流量が、複数種類の鋳型のそれぞれの湯のみ状況に応じた流量となるように、即ち、鋳型の受口に湯だまりが常時形成されるように、漏斗部材が、汎用的に設計されておれば、或いは各鋳型毎に専用に設計されておれば、鋳型の種類が変更せしめられる毎に、各鋳型の湯のみ状況に応じた様々なパターンで取鍋を傾動させて、取鍋から流出せしめられる溶湯の流量を制御する必要が、汎用的な漏斗部材の1種類のものや各鋳型に専用の複数種類の漏斗部材の使用によって、有利に解消され得ることとなる。
従って、かくの如き本発明に従う自動注湯装置を用いれば、複数種類の製品の鋳造に際して、取鍋を傾動させて、漏斗部材の収容部内に溶湯を流し込むときに、注湯されるべき鋳型の種類に拘わらず、単に、鋳型に対する注湯重量の計量精度を高めることのみにターゲットを絞って、取鍋の傾動量を調節し、取鍋からの溶湯の流出流量を制御することが出来る。そして、それによって、鋳型に注湯される溶湯の注湯重量の計量精度を、より高いレベルで一層安定的に確保することが可能となる。また、その結果として、特に注湯重量に対する厳密な管理が要求される、例えば10kg程度の少量鋳込み製品の鋳造に際して、注湯重量が一層正確に計量され得、以て、目的とする製品が、極めて有利に得られることとなるのである。
発明の態様
ところで、本発明は、少なくとも、以下に列挙する如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。
<1> 鋳型に対して溶湯を自動的に注湯する鋳造用自動注湯装置において、(a)前記溶湯が前記鋳型の複数に対して注湯せしめられ得る量において貯留される取鍋と、(b)該取鍋の重量変化に基づいて、該取鍋に貯留される前記溶湯の重量の増減量を計量する計量手段と、(c)前記溶湯を前記鋳型の一つに対する注湯量に相当する量において収容可能な容積を有して、該鋳型における前記溶湯の受口の上方に配置可能に位置せしめられた収容部と、該収容部から下方に向かって延び出し、下方に開口する開口部を通じて、該収容部を外部に連通せしめる連通路とを有し、該鋳型の受口の上方への該収容部の配置状態下で、該収容部内に収容される該溶湯を該連通路にて該鋳型の受口に導くように構成された漏斗部材と、(d)前記取鍋を傾動せしめることにより、該取鍋内に貯留される前記溶湯を該取鍋内から前記漏斗部材の前記収容部内に流し込む一方、前記計量手段により計量される該取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量が該鋳型の一つに対する注湯重量と一致したときに、かかる傾動状態から、該取鍋の傾動量を減少せしめることで、該取鍋内から該漏斗部材の収容部内への該溶湯の流入を停止せしめる傾動手段とを含んで構成したことを特徴とする鋳造用自動注湯装置。
<2> 上記せる態様<1>において、前記漏斗部材が、着脱可能に設けられていること。この本態様によれば、自動注湯装置に設置される漏斗部材を容易に交換することが出来る。それによって、例えば、複数種類の製品に応じた複数種類の鋳型のそれぞれに溶湯を自動注湯する場合等において、連通路を通じて流出せしめられる溶湯の流量が、複数種類の鋳型のそれぞれの湯のみ状況に応じた流量となるように設計された複数種類の漏斗部材を用い、これを適宜に交換しつつ、鋳型に対する注湯を行うことが、容易となる。そして、その結果、鋳型の湯のみ状況に応じた様々なパターンで取鍋を傾動させて、取鍋から流出せしめられる溶湯の流量を制御する必要が、より効果的に解消され得、以て、鋳型に注湯される溶湯の注湯重量の高い計量精度が、更に一層安定化され得ることとなる。
<3> 上記せる態様<1>又は態様<2>において、前記漏斗部材の前記収容部が、逆角錐形状を有していること。このような本態様によれば、漏斗部材の収容部内での溶湯の旋回が有利に防止され得、それによって、溶湯が、漏斗部材の連通路と鋳型の湯口系とを層流状態で落下せしめられ得る。そして、その結果として、鋳造不良の発生が可及的に抑制された、安定した品質を有する製品が、有利に鋳造され得ることとなる。
<4> 上記せる態様<1>乃至態様<3>のうちの何れか一つにおいて、前記取鍋と前記漏斗部材とが設置される台車が設けられると共に、該台車が、前記鋳型に向かって左右方向に走行せしめられ得るようになっていること。
このような本態様では、左右方向において互いに異なる位置に受口が設けられた別の種類の鋳型のそれぞれ対して溶湯を注湯する場合にあっても、受口の位置に応じて、台車を走行せしめることにより、それらの鋳型の何れに対しても、安定した注湯を行うことが出来る。また、例えば、注湯されるべき鋳型が、それを左右方向に搬送する搬送ライン等によって順次搬送されるようになっている場合等において、かかる鋳型が、取鍋や漏斗部材の前を通過してしまった際にも、台車の走行により、かかる鋳型を追尾し、それに注湯することも出来る。また、例えば、何等かの原因で、鋳型に対する注湯時間が、予め設定された搬送ラインの停止時間を越えることがあっても、搬送ラインを余分に停止させることなく、取鍋と漏斗部材とを搬送ラインに追尾させながら、鋳型に対する注湯をスムーズに行うことも出来る。
<5> 上記せる態様<1>乃至態様<4>のうちの何れか一つにおいて、前記取鍋と前記漏斗部材とを、上下方向と前記鋳型に向かって前後方向とに一体的に移動させる第一の移動手段が、更に設けられていること。このような本態様によれば、上下方向や前後方向において互いに異なる位置に受口が設けられた別の種類の鋳型のそれぞれ対して溶湯を注湯する場合にあっても、各鋳型の受口の位置に応じて、取鍋と漏斗部材とを第一の移動手段にて移動せしめることにより、それらの鋳型の何れに対しても、安定した注湯を行うことが出来る。
<6> 上記せる態様<5>において、前記第一の移動手段にて、上下方向と前記鋳型に向かって前後方向とに移動せしめられる第一の可動体が設けられて、該第一の可動体に対して、前記取鍋と前記漏斗部材とが支持されていること。この本態様によれば、取鍋と漏斗部材とを1個の第一の移動手段にて上下方向と前後方向とに移動可能と為すことが出来、それによって、それら取鍋と漏斗部材とを互いに独立した2個の第一の移動手段にて移動可能と為す場合に比して、部品点数の削減が有利に図られ得る。また、取鍋と漏斗部材の上下方向と前後方向の移動を同期させるための構造や部品も有利に省かれ得る。
<7> 上記せる態様<5>又は態様<6>において前記鋳型の上端の高さを検出する検出手段と、該検出手段による検出値に基づいて、該鋳型の上端と前記漏斗部材の下端との高低差が一定の値となるように、前記第一の移動手段による該漏斗部材の上下方向への移動量を制御する第一の制御手段とが、更に設けられていること。このような本態様によれば、高さが互いに異なる別の種類の鋳型のそれぞれに対して溶湯を注湯する場合に、取鍋と漏斗部材とが、各鋳型の高さに応じた高さ位置に、自動的に移動せしめられ得るのであり、それによって、高さが異なるために、受口の高さ位置が互いに異なる別の種類の鋳型のそれぞれに対する安定的な注湯が、容易に且つ確実に行われ得ることとなる。
<8> 上記せる態様<1>乃至態様<7>のうちの何れか一つにおいて、前記取鍋が、前記溶湯が貯留される貯留部と、該貯留部内の溶湯を流出せしめるための流出口とを有して構成されて、前記傾動手段による該取鍋の傾動により、該取鍋内に貯留される前記溶湯が、該流出口を通じて流出せしめられて、前記漏斗部材に流し込まれるように構成される一方、該取鍋の該流出口を部分的に閉鎖する段階と全閉とする段階の少なくとも二段階で閉鎖せしめる閉鎖手段が設けられて、該取鍋内に貯留される該溶湯の流出に際して、該閉鎖手段による該流出口の段階的な閉鎖により、該溶湯の該取鍋内からの流出量が段階的に調節せしめられるようになっていること。
この本態様にあっては、傾動手段による取鍋の傾動により、取鍋の貯留部内の溶湯が漏斗部材の収容部内に流し込まれる際に、例えば、先ず、取鍋の流出口が閉鎖手段にて何等閉鎖せしめられることなく、全開の状態で維持されることにより、取鍋の貯留部内の溶湯が、大なる流量で、漏斗部材の収容部内に流し込まれる。そして、その状態から、計量機構にて計量される取鍋の重量が、一つの鋳型に対する注湯重量に相当する量よりも所定量少ない分だけ減少せしめられた時点で、取鍋の流出口が、閉鎖手段にて部分的に閉鎖せしめられることにより、漏斗部材の収容部に向かって開口せしめられる流出口の開口面積が所定の大きさだけ小さくされ、以て、取鍋の貯留部内の溶湯が、流出口の部分的な閉鎖前よりも少なく且つ流出口の開口面積に応じた一定の流量で、漏斗部材の収容部内に流し込まれる。その後、取鍋の流出口が閉鎖手段にて全閉せしめられることにより、計量機構にて計量される取鍋の重量の減少量が一つの鋳型に対する注湯重量に相当する量となったときに、取鍋の貯留部内から漏斗部材の収容部内への溶湯の流入が停止せしめられるようになる。
それ故、このような本態様においては、取鍋の流出口を閉鎖手段にて部分的に閉鎖せしめた際に、取鍋の傾動量を変更しない場合は勿論、かかる傾動量が小さくされて、溶湯の波打ちが生じた場合にあっても、取鍋から漏斗部材に流し込まれる溶湯の流量にバラツキが発生するようなことが、効果的に防止され得る。
従って、かくの如き本態様によれば、複数の鋳型の一つ一つに対して溶湯を同一の量で連続的に注湯する際に、取鍋の貯留部内から漏斗部材の収容部内への溶湯の流入量が、効果的に均一化され得るのであり、その結果として、鋳型に注湯される溶湯の注湯重量の計量精度が、より高いレベルで一層安定的に確保され得ることとなるのである。また、それによって、例えば10kg程度の少量鋳込み製品の鋳造に際して、注湯重量が更に一層正確に計量され得、以て、目的とする製品が、極めて有利に得られることとなるのである。
<9> 上記せる態様<8>において、前記計量手段により計量される前記取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量に基づいて、前記傾動手段による前記取鍋の傾動を制御すると共に、該取鍋の傾動位置と該計量手段により計量される該取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量とに基づいて、前記閉鎖手段の作動を制御する第二の制御手段が設けられていること。かかる本態様によれば、傾動手段による取鍋の傾動と閉鎖手段による取鍋の流出口の段階的な閉鎖とが、有利に自動化され得、それによって、取鍋内の溶湯の漏斗部材内への流入量の調節、ひいては溶湯の鋳型への注湯重量の計量制御の自動化が、効果的に実現され得る。
<10> 上記せる態様<9>において、前記第二の制御手段による前記取鍋の傾動制御に基づいて、前記取鍋が、前記傾動手段により大きな角度で傾動せしめられて、該取鍋内の前記溶湯を、前記漏斗部材の収容部内に大なる流量で流し込ませる第一の傾動位置に位置せしめられると共に、前記取鍋が該第一の傾動位置に位置せしめられた時点から前記計量手段により計量される該取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量が、前記鋳型の一つに対する注湯重量よりも少ない予め定められた値となったときに、該取鍋の傾動角度が減少せしめられて、該取鍋が、該取鍋内の溶湯を該漏斗部材の収容部内に小なる流量で流し込ませる第二の傾動位置に位置せしめられるように構成される一方、前記第二の制御手段による前記閉鎖手段の作動制御に基づいて、該取鍋が該第二の傾動位置に位置せしめられると同時に、該閉鎖手段により、該取鍋の前記流出口が部分的に閉鎖せしめられ、更に、かかる流出口の部分的な閉鎖状態から、該流出口が該閉鎖手段により全閉とされることで、前記取鍋が該第一の傾動位置に位置せしめられた時点から前記計量手段により計量される該取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量が前記鋳型の一つに対する注湯重量と一致したときに、該取鍋内から該漏斗部材の収容部内への該溶湯の流入が停止せしめられるようになっていること。このような本態様によれば、注湯速度の短縮化と、鋳型に対する注湯重量の十分に高い計量精度の安定化とが、共に効果的に実現され得る。
<11>上記せる態様<10>において、前記取鍋が前記第一の傾動位置に位置せしめられた時点から前記第二の傾動位置に位置せしめられるまでの間の該取鍋内の前記溶湯の貯留重量の減少量が、前記計量手段により計量されると共に、該計量手段による計量値に基づいて、該第一の傾動位置に位置せしめられた状態下で、該取鍋から前記漏斗部材の収容部内に流し込まれた前記溶湯の流量が、前記第二の制御手段にて求められ、更に、該第二の制御手段にて求められた漏斗部材の収容部内への溶湯の流量に基づいて、前記閉鎖手段による前記流出口の部分的な閉鎖量が増減せしめられるように、該閉鎖手段の作動が、該第二の制御手段にて制御されるようになっていること。
この本態様においては、取鍋の流出口が全開とされて、取鍋内の溶湯が、漏斗部材内に大なる流量で流し込まれることにより、漏斗部材内に収容された溶湯の量に応じて、取鍋の流出口が部分的に閉鎖された状態で、取鍋から漏斗部材内に流し込まれる溶湯の流量が自動的に調節され得る。その結果、注湯速度の短縮化と、鋳型に対する注湯重量の十分に高い計量精度の安定化とが、更に一層効果的に図られ得ることとなる。
<12> 上記せる態様<8>乃至態様<11>のうちの何れか一つにおいて、前記取鍋と前記閉鎖手段と前記漏斗部材とが設置される台車が設けられると共に、該台車が、前記鋳型に向かって左右方向に走行せしめられ得るようになっていること。このような本態様では、左右方向において互いに異なる位置に受口が設けられた別の種類の鋳型のそれぞれ対して溶湯を注湯する場合にあっても、或いは注湯されるべき鋳型が、それを左右方向に搬送する搬送ライン等によって、取鍋や漏斗部材、閉鎖手段の前を通過してしまった際にも、台車の走行により、鋳型を追尾して、それに注湯することが出来る。
<13> 上記せる態様<8>乃至態様<12>のうちの何れか一つにおいて、前記取鍋と前記閉鎖手段と前記漏斗部材とを、上下方向と前記鋳型に向かって前後方向とに一体的に移動させる第二の移動手段が、更に設けられていること。このような本態様によれば、上下方向や前後方向において互いに異なる位置に受口が設けられた別の種類の鋳型のそれぞれ対して溶湯を注湯する場合にあっても、各鋳型の受口の位置に応じて、取鍋と閉鎖手段と漏斗部材とを第二の移動手段にて移動せしめることにより、それらの鋳型の何れに対しても、安定した注湯を行うことが出来る。
<14> 上記せる態様<13>において、前記第二の移動手段にて、上下方向と前記鋳型に向かって前後方向とに移動せしめられる第二の可動体が設けられて、該第二の可動体に対して、前記取鍋と前記閉鎖手段と前記漏斗部材とが支持されていること。この本態様によれば、取鍋と閉鎖手段と漏斗部材とを1個の第二の移動手段にて上下方向と前後方向とに移動可能と為すことが出来、それによって、それら取鍋と閉鎖手段と漏斗部材とを互いに独立した2〜3個の第二の移動手段にて移動可能と為す場合に比して、部品点数の削減が有利に図られ得る。また、取鍋と閉鎖手段と漏斗部材の上下方向と前後方向の移動を同期させるための構造や部品も有利に省かれ得る。
<15> 上記せる態様<8>乃至態様<14>のうちの何れか一つにおいて、前記傾動手段により傾動せしめられる傾動体が設けられて、該傾動体に対して、前記取鍋と前記閉鎖手段とが支持せしめられ、該傾動体の該傾動手段による傾動によって、該取鍋と該閉鎖手段とが一体的に傾動せしめられるようになっていること。この本態様によれば、取鍋の傾動位置に拘わらず、取鍋の流出口が、閉鎖手段にて確実に段階的に閉鎖され得る。
<16> 上記せる態様<8>乃至態様<15>のうちの何れか一つにおいて、前記取鍋が、前記貯留部から側方に向かって延び出し、且つ上方に開口する上側開口部を有すると共に、先端開口部が前記流出口とされた流出流路を有して構成される一方、前記閉鎖手段が、該流出流路の上方に、下降可能に配置された、該流出口に対応した形状を有するシャッタ部材と、該シャッタ部材の先端部が前記上側開口部を通じて該流出流路の内に突入せしめられ、且つ該流出流路の底面に対して所定距離を隔てて位置せしめられて、該流出流路の前記流出口を部分的に閉鎖する第一の位置と、該シャッタ部材の先端部が該流出流路の底面に当接位置せしめられて、該流出口を全閉状態とする第二の位置とに、該シャッタ部材を段階的に下降せしめる下降機構とを含んで構成されていること。このような本態様によれば、閉鎖手段が、比較的に簡略な構造をもって構成され得ると共に、取鍋の流出口の段階的な閉鎖が、閉鎖手段によりスムーズに且つ確実に行われ得ることとなる。
<17> 鋳型に対して溶湯を自動的に注湯する鋳造用自動注湯装置にして、(a)前記溶湯が前記鋳型の複数に対して注湯せしめられ得る量において貯留される貯留部と、該貯留部内に貯留される該溶湯を流出させるための流出口とを有する取鍋と、(b)該取鍋における前記流出口を部分的に閉鎖する段階と全閉とする段階の少なくとも二段階で閉鎖せしめる閉鎖手段と、(c)前記取鍋の重量変化に基づいて、該取鍋に貯留される前記溶湯の重量の増減量を計量する計量手段と、(d)前記溶湯を前記鋳型の一つに対する注湯量に相当する量において収容可能な容積を有して、該鋳型における前記溶湯の受口の上方に配置可能に位置せしめられた収容部と、該収容部から下方に向かって延び出し、下方に開口する開口部を通じて、該収容部を外部に連通せしめる連通路とを有し、該鋳型の受口の上方への該収容部の配置状態下で、該収容部内に収容される該溶湯を該連通路にて該鋳型の受口に導くように構成された漏斗部材と、(e)前記取鍋を傾動せしめることにより、該取鍋内に貯留される前記溶湯を該取鍋内から前記漏斗部材の前記収容部内に流し込む一方、前記計量手段により計量される該取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量が該鋳型の一つに対する注湯重量と一致したときに、かかる傾動状態から、該取鍋の傾動量を減少せしめることで、該取鍋内から該漏斗部材の収容部内への該溶湯の流入を停止せしめる傾動手段とを含み、前記傾動手段による前記取鍋の傾動により、該取鍋内に貯留される前記溶湯が、前記流出口から前記鋳型に流し込まれるときに、前記閉鎖手段による該流出口の段階的な閉鎖に伴って、該溶湯の該取鍋内からの流出量が段階的に調節されるように構成したことを特徴とする鋳造用自動注湯装置。
この本態様にあっては、傾動手段による取鍋の傾動により、取鍋の貯留部内の溶湯が鋳型に流し込まれる際に、例えば、先ず、取鍋の流出口が閉鎖手段にて何等閉鎖せしめられることなく、全開の状態で維持されることにより、取鍋の貯留部内の溶湯が、大なる流量で、鋳型に流し込まれる。そして、その状態から、計量機構にて計量される取鍋の重量が、一つの鋳型に対する注湯重量に相当する量よりも所定量少ない分だけ減少せしめられた時点で、取鍋の流出口が、閉鎖手段にて部分的に閉鎖せしめられることにより、鋳型に向かって開口せしめられる流出口の開口面積が所定の大きさだけ小さくされ、以て、取鍋の貯留部内の溶湯が、流出口の部分的な閉鎖前よりも少なく且つ流出口の開口面積に応じた一定の流量で、鋳型に流し込まれる。その後、例えば、計量機構にて計量される取鍋の重量の減少量が、一つの鋳型に対する注湯重量に相当する量となる直前に、流出口が閉鎖手段にて全閉せしめられることにより、取鍋の貯留部内から鋳型への溶湯の流入が停止せしめられ、以て、取鍋から鋳型への溶湯の注湯重量が、一つの鋳型に対する注湯重量に相当する量と一致せしめられるようになる。
それ故、このような本態様においては、取鍋の流出口を閉鎖手段にて部分的に閉鎖せしめた際に、取鍋の傾動量を変更しない場合は勿論、かかる傾動量が小さくされて、溶湯の波打ちが生じた場合にあっても、取鍋から鋳型に流し込まれる溶湯の流量にバラツキが発生するようなことが、効果的に防止され得る。
従って、かくの如き本態様によれば、複数の鋳型の一つ一つに対して溶湯を同一の量で連続的に注湯する際に、取鍋の貯留部内から鋳型への溶湯の流入量が、効果的に均一化され得るのであり、その結果として、鋳型に注湯される溶湯の注湯重量の計量精度が、より高いレベルで一層安定的に確保され得ることとなるのである。また、それによって、例えば10kg程度の少量鋳込み製品の鋳造に際して、注湯重量が更に一層正確に計量され得、以て、目的とする製品が、極めて有利に得られることとなるのである。
<18> 鋳型に対して溶湯を注湯する方法であって、(a)前記溶湯を前記鋳型の一つに対する注湯量に相当する量において収容可能な容積を有する収容部と、該収容部から下方に向かって延び出し、下方に開口する開口部を通じて、該収容部を外部に連通せしめる連通路とを有して構成された漏斗部材を準備する工程と、(b)該漏斗部材を、前記鋳型における前記溶湯の受口の上方に配置する工程と、(c)前記溶湯が前記鋳型の複数に対して注湯せしめられ得る量において貯留された取鍋を傾動せしめて、該取鍋内の溶湯を該取鍋内から前記漏斗部材の前記収容部内に流入せしめることにより、該取鍋内の溶湯を、該漏斗部材の前記連通路を通じて、前記鋳型の受口に流し込む工程と、(d)前記取鍋の傾動により、前記漏斗部材の収容部内への該取鍋内の前記溶湯の流入が開始されたときから、該取鍋内に貯留される前記溶湯の重量の減少量を計量する工程と、(e)前記取鍋の傾動により、該取鍋内の前記溶湯が前記漏斗部材の収容部内に流入せしめられている状態から、前記計量手段により計量される該取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量が、前記鋳型の一つに対する注湯重量と一致したときに、該取鍋の傾動量を減少せしめることで、該取鍋内から前記漏斗部材の収容部内への該溶湯の流入を停止せしめる工程とを含むことを特徴とする鋳型に対する注湯方法。
この本態様にあっては、複数種類の製品に応じた複数種類の鋳型のそれぞれに溶湯を自動注湯する場合等において、連通路を通じて流出せしめられる溶湯の流量が、複数種類の鋳型のそれぞれの湯のみ状況に応じた流量となるように、即ち、鋳型の受口に湯だまりが常時形成されるように、汎用的に設計された漏斗部材や、各鋳型毎に設計された複数種類の漏斗部材を準備し、そして、それらの漏斗部材を、鋳型における溶湯の受口の上方に配置した後、漏斗部材を傾動させて、例えば、漏斗部材の収容部内に湯だまりが形成されるように、連通路からの溶湯の流出流量よりも大きな流量で、取鍋内の溶湯を漏斗部材の収容部内に流し込むようにすれば、漏斗部材の収容部内に流入せしめられた溶湯を、鋳型に対して、連通路を通じて、その内径に応じた一定の流量で注湯することが出来る。それ故、複数種類の鋳型の一つ一つに溶湯を注湯するに際して、鋳型の種類が変更せしめられる毎に、各鋳型の湯のみ状況に応じた様々なパターンで取鍋を傾動させて、取鍋から流出せしめられる溶湯の流量を制御する必要が、有利に解消され得ることとなる。
従って、かくの如き本態様によれば、複数種類の製品の鋳造に際して、取鍋を傾動させて、漏斗部材の収容部内に溶湯を流し込むときに、注湯されるべき鋳型の種類に拘わらず、単に、鋳型に対する注湯重量の計量精度を高めることのみにターゲットを絞って、取鍋の傾動量を調節し、取鍋からの溶湯の流出流量を制御することが出来、その結果、鋳型に注湯される溶湯の注湯重量の計量精度を、より高いレベルで一層安定的に確保することが可能となるのである。また、それによって、例えば10kg程度の少量鋳込み製品の鋳造に際して、注湯重量が更に一層正確に計量され得、以て、目的とする製品が、極めて有利に得られることとなるのである。
<19> 上記せる態様<17>において、前記計量手段により計量される前記取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量に基づいて、前記傾動手段による前記取鍋の傾動を制御すると共に、該取鍋の傾動位置と該計量手段により計量される該取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量とに基づいて、前記閉鎖手段の作動を制御する第三の制御手段が設けられていること。かかる本態様によれば、傾動手段による取鍋の傾動と閉鎖手段による取鍋の流出口の段階的な閉鎖とが、有利に自動化され得、それによって、取鍋内の溶湯の漏斗部材内への流入量の調節、ひいては溶湯の鋳型への注湯重量の計量制御の自動化が、効果的に実現され得ることとなる。
<20> 上記せる態様<19>において、前記第三の制御手段による前記取鍋の傾動制御に基づいて、前記取鍋が、前記傾動手段により大きな角度で傾動せしめられて、該取鍋内の前記溶湯を、前記漏斗部材の収容部内に大なる流量で流し込ませる第一の傾動位置に位置せしめられると共に、前記取鍋が該第一の傾動位置に位置せしめられた時点から前記計量手段により計量される該取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量が、前記鋳型の一つに対する注湯重量よりも少ない予め定められた値となったときに、該取鍋の傾動角度が減少せしめられて、該取鍋が、該取鍋内の溶湯を該漏斗部材の収容部内に小なる流量で流し込ませる第二の傾動位置に位置せしめられるように構成される一方、前記第二の制御手段による前記閉鎖手段の作動制御に基づいて、該取鍋が該第二の傾動位置に位置せしめられると同時に、該閉鎖手段により、該取鍋における前記流出口が部分的に閉鎖せしめられ、更に、かかる流出口の部分的な閉鎖状態から、該流出口が該閉鎖手段により全閉とされることで、前記取鍋が該第一の傾動位置に位置せしめられた時点から前記計量手段により計量される該取鍋内の溶湯の貯留重量の減少量が前記鋳型の一つに対する注湯重量と一致したときに、該取鍋内から該漏斗部材の収容部内への該溶湯の流入が停止せしめられるようになっていること。このような本態様によれば、注湯速度の短縮化と、鋳型に対する注湯重量の十分に高い計量精度の安定化とが、共に効果的に実現され得る。
<21>上記せる態様<20>において、前記取鍋が前記第一の傾動位置に位置せしめられた時点から前記第二の傾動位置に位置せしめられるまでの間の該取鍋内の前記溶湯の貯留重量の減少量が、前記計量手段により計量されると共に、該計量手段による計量値に基づいて、該第一の傾動位置に位置せしめられた状態下で、該取鍋から前記漏斗部材の収容部内に流し込まれた前記溶湯の流量が、前記第三の制御手段にて求められ、更に、該第三の制御手段にて求められた漏斗部材の収容部内への溶湯の流量に基づいて、前記閉鎖手段による前記流出口の部分的な閉鎖量が増減せしめられるように、該閉鎖手段の作動が、該第三の制御手段にて制御されるようになっていること。
この本態様においては、取鍋の流出口が全開とされて、取鍋内の溶湯が、漏斗部材内に大なる流量で流し込まれることにより、漏斗部材内に収容された溶湯の量に応じて、取鍋の流出口が部分的に閉鎖された状態で、取鍋から漏斗部材内に流し込まれる溶湯の流量が自動的に調節され得る。その結果、注湯速度の短縮化と、鋳型に対する注湯重量の十分に高い計量精度の安定化とが、更に一層効果的に図られ得ることとなる。
<22> 上記せる態様<17>及び態様<19>乃至態様<21>のうちの何れか一つにおいて、前記取鍋と前記閉鎖手段とが設置される台車が設けられると共に、該台車が、前記鋳型に向かって左右方向に走行せしめられ得るようになっていること。このような本態様では、左右方向において互いに異なる位置に受口が設けられた別の種類の鋳型のそれぞれ対して溶湯を注湯する場合にあっても、或いは注湯されるべき鋳型が、それを左右方向に搬送する搬送ライン等によって、取鍋や閉鎖手段の前を通過してしまった際にも、台車の走行により、鋳型に対して、安定した注湯を行うことが出来る。
<23> 上記せる態様<17>及び態様<19>乃至態様<22>のうちの何れか一つにおいて、前記取鍋と前記閉鎖手段とを、上下方向と前記鋳型に向かって前後方向とに一体的に移動させる第三の移動手段が、更に設けられていること。このような本態様によれば、上下方向や前後方向において互いに異なる位置に受口が設けられた別の種類の鋳型のそれぞれ対して溶湯を注湯する場合にあっても、各鋳型の受口の位置に応じて、取鍋と閉鎖手段とを第三の移動手段にて移動せしめることにより、それらの鋳型の何れに対しても、安定した注湯を行うことが出来る。
<24> 上記せる態様<23>において、前記第三の移動手段にて、上下方向と前記鋳型に向かって前後及び左右方向とに移動せしめられる第三の可動体が設けられて、該三の可動体に対して、前記取鍋と前記閉鎖手段とが支持されていること。この本態様によれば、取鍋と閉鎖手段とを1個の第三の移動手段にて上下方向と前後方向とに移動可能と為すことが出来、それによって、それら取鍋と閉鎖手段とを互いに独立した2個の第三の移動手段にて移動可能と為す場合に比して、部品点数の削減が有利に図られ得る。また、取鍋と閉鎖手段の上下方向と前後方向の移動を同期させるための構造や部品も有利に省かれ得る。
<25> 上記せる態様<17>及び態様<19>乃至態様<24>のうちの何れか一つにおいて、前記傾動手段により傾動せしめられる第二の傾動体が設けられて、該第二の傾動体に対して、前記取鍋と前記閉鎖手段とが支持せしめられ、該第二の傾動体の該傾動手段による傾動によって、該取鍋と該閉鎖手段とが一体的に傾動せしめられるようになっていること。この本態様によれば、取鍋の傾動位置に拘わらず、取鍋の流出口が、閉鎖手段にて確実に段階的に閉鎖され得る。
<26> 上記せる態様<17>及び態様<19>乃至態様<25>のうちの何れか一つにおいて、前記取鍋が、前記貯留部から側方に向かって延び出し、且つ上方に開口する上側開口部を有すると共に、先端開口部が前記流出口とされた流出流路を有して構成される一方、前記閉鎖手段が、該流出流路の上方に、下降可能に配置された、該流出口に対応した形状を有するシャッタ部材と、該シャッタ部材の先端部が前記上側開口部を通じて該流出流路の内に突入せしめられ、且つ該流出流路の底面に対して所定距離を隔てて位置せしめられて、該流出流路の前記流出口を部分的に閉鎖する第一の位置と、該シャッタ部材の先端部が該流出流路の底面に当接位置せしめられて、該流出口を全閉状態とする第二の位置とに、該シャッタ部材を段階的に下降せしめる下降機構とを含んで構成されていること。このような本態様によれば、閉鎖手段が、比較的に簡略な構造をもって構成され得ると共に、取鍋の流出口の段階的な閉鎖が、閉鎖手段によりスムーズに且つ確実に行われ得ることとなる。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明に係る鋳造用自動注湯装置の具体的な構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1乃至図3には、本発明に従う構造を有する鋳造用自動注湯装置の一実施形態が、正面、左側面、平面の各形態において、それぞれ概略的に示されている。それらの図からも明らかなように、自動注湯装置は、自走可能な台車10を有し、この台車10に対して、取鍋12が、傾動可能に設置されて、構成されている。
より具体的には、台車10は、その下部の前後に四つの車輪16a〜16bが取り付けられており、これら四つの車輪16a〜16bを介して、図1及び図2に二点鎖線で示される如く、造型された鋳型18を順次搬送する搬送ライン20の延長方向に並行して敷設された二本のレール22,22上に載置され得るようになっている。
また、台車10上には、走行用サーボモータ24が固定されており、更に、この走行用サーボモータ24の回転軸が、台車10の下側に位置せしめられたスプロケット26に対して、所定の連結ギヤを介して連結されている。そして、かかるスプロケット26が、上記2本のレール22,22の間に、それらの延長方向に延びる状態で、移動不能に配置されたチェーン(図示せず)に噛合せしめられている。これによって、台車10が、走行用サーボモータ26の回転駆動に伴って、二本のレール22,22上を、搬送ライン20に並行して、その延長方向に自走せしめられ得るようになっているのである。また、スプロケット26とチェーンとの噛合により、台車10の急停車時や急発進時における各車輪16のスリップ防止が図られている。
なお、ここでは、台車10上に、走行用サーボモータ26の回転制御を行うコントローラ27と操作盤28とが設置されており、操作盤28に対するキー操作等によって、走行用サーボモータ26の回転駆動及び停止や回転駆動時の回転方向と回転量とが設定され、以て台車10の走行及び停止や走行時の方向と距離が、任意に制御され得るようになっている。また、以下の説明からは、本実施形態に係る自動注湯装置の構造の理解を容易と為すために、台車10の走行方向、つまり自動注湯装置の鋳型18に向かって左右となる方向(図1及び図3における左右方向で且つ図2における紙面に垂直な方向)を左右方向を言い、また、この台車10を有する自動注湯装置の鋳型18に向かって前後となる方向(図1における紙面に垂直な方向で且つ図2における左右方向、及び図3の上下方向)を前後方向と言うこととする。
一方、そのような台車10に設置される取鍋12は、従来のものと同様な構造を有しており、全体として、ティーポット型形態を呈し、数十個の鋳型に対して注湯可能な大量の溶湯が内部に貯留される、上方に開口する片側円筒状の貯留部30と、該貯留部30の筒壁から側方に延び出す管状を呈し、先端開口部が流出口32とされると共に、先端部に上方に向かって開口する上側開口部33が設けられてなる流出流路34とをもって、構成されている。また、かかる取鍋12の側面には、先端部が下方に向かって直角に屈曲せしめられた鈎形形状を呈する2個の係合突起35,35が、一体的に設けられている。そして、このような取鍋12が、傾動手段たる取鍋傾動機構36に取り付けられているのである。
すなわち、本実施形態の自動注湯装置の一部を拡大して示す図4及び図5から明らかなように、取鍋傾動機構36は、傾動体38と取鍋傾動用サーボモータ40とを有している。そして、傾動体38は、長手の厚肉平板からなり、板厚方向両側の側面同士が左右方向(水平方向)に対向せしめられた状態で、前後方向に延びるように位置せしめられている。一方、取鍋傾動用サーボモータ40は、かかる傾動体38の右側に、所定距離隔てて、回転軸を左右方向に延出せしめた状態で、位置せしめられている。また、傾動体38における右側面の前端部には、傾動体38と一体回動せしめられる回動軸42が固定されて、取鍋傾動用サーボモータ40に向かって延出せしめられており、この回動軸42が、その先端部において、取鍋傾動用サーボモータ40の回転軸に対して、連結ギヤ44,44を介して連結されている。そして、それら回動軸42と取鍋傾動用サーボモータ40とが、それらの背後に位置せしめられた保持板46にて保持されている。これによって、取鍋傾動機構36の全体が、保持板46にて保持された状態で、台車10上に設置されており、そして、そのような設置状態下で、取鍋傾動用サーボモータ40の回転駆動に伴って、傾動体38が、左右方向(水平方向)に延びる回動軸42回りに回動せしめられ得るようになっている。
また、かかる傾動体38における左側面の後端部側には、先端部が上方に向かって直角に屈曲せしめられた鉤形形状を呈する2個の係止突起47,47が一体的に突設されている。そして、それら各係止突起47と、前記せる取鍋12の側面に一体形成された2個の係合突起35,35のそれぞれが、相互に係合せしめられている。これによって、取鍋12が、流出流路34を前方に延び出させた状態で、傾動体38に対して着脱可能に支持されている。なお、ここでは、そのような傾動体38に対する取鍋12の支持状態下において、取鍋12の前記流出口32が、傾動体38に固定された回動軸42の鉛直線上に位置せしめられている。
かくして、本実施形態においては、取鍋12が、傾動体38にて支持せしめられることで、取鍋傾動機構36に取り付けられている。そして、取鍋傾動用サーボモータ40の一方向への回転駆動に伴う傾動体38の回動により、傾動体38に支持された取鍋12も、流出口32の配置位置を回動中心として、左右方向に延びる回動軸42回りに回動せしめられ、以て、取鍋12の貯留部30内に貯留された溶湯を流出口32を通じて流出させる位置にまで傾動せしめられるようになっている(図9参照)。また、そのような傾動位置から、取鍋傾動用サーボモータ40が、上記一方向とは反対方向に回転駆動せしめられることにより、取鍋12が、傾動前の原位置か、若しくは溶湯の流出が停止され得る、傾動量が小さな位置にまで、復帰乃至は回復されるようになっているのである。
なお、ここでは、例えば、前記操作盤28に対して、予め、所定のキー操作等が行われて、所定のデータが入力されることにより、取鍋12内の溶湯を鋳型18に対して注湯する際に、取鍋傾動機構36における取鍋傾動用サーボモータ40の回転駆動が、コントローラ27にて制御されて、取鍋12が予め設定された、後述するパターンで傾動せしめられるようになっている。
また、上述せる如く、本実施形態においては、取鍋傾動機構36の全体が、保持板46にて保持されているのであるが、この保持板46は、台車10上に配置された支持枠体48にて支持されている。
すなわち、この支持枠体48は、図1乃至図3に示される如く、台車10上において、上下方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられた上側及び下側プレート50,52と、台車10の左右方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられた左側及び右側プレート54,54と、それら4個のプレート50〜54にて形成される前後方向への開口部のうち、前方側開口部を閉塞する、保持板46よりも十分に長い上下方向長さを有する前側プレート56とが一体的に組み付けられて、構成されている。
そして、図1乃至図5から明らかな如く、そのような支持枠体48の前側プレート56の前面には、一対のガイドレール58,58が、前側プレート56の略全長に亘って上下方向に延びるように設けられている。一方、保持板46の後面には、後方に開口する一対のガイド溝(図示せず)が、上下方向に延びるように形成されている。そして、かかる保持板46が、支持枠体48の前側プレート56の下部側の前方において、一対のガイド溝に対して、前側プレート56の一対のガイドレール58,58を摺動可能に嵌合せしめた状態で、位置せしめられている。これによって、保持板46が、支持枠体48の前側プレート56に対して、その下部側において、一対のガイドレール58,58に案内されつつ、上下動可能に支持されている。
また、そのようにして保持板46を支持する支持枠体48の内部には、ボールねじ軸60が、鉛直方向に延出し、上及び下側の各プレート50,52に軸支された状態で、中心軸回りに回転可能に且つ移動不能に取り付けられている。更に、かかるボールねじ軸60の上端部には、大径のギヤ62が一体回転可能に設けられており、このギヤ62が、支持枠体48の内部の上部部位において、ボールねじ軸60の側方に固定された上下移動用サーボモータ64の駆動ギヤ66に噛合せしめられている。更に、ボールねじ軸60の中間部には、前側プレート56を貫通して前方に延び出すアーム部68を有するボールねじナット(図示せず)が、回転不能に且つ上下動可能に螺合せしめられており、このボールねじナットのアーム部68の先端に、可動板70が取り付けられている。
この可動板70は、支持枠体48の前側プレート56よりも十分に小さい上下方向長さを有し、前側プレート56の前方において、保持板46の上方に位置せしめられている。また、可動板70にあっては、その後面に、後方に開口する一対のガイド溝72,72が、上下方向に延びるように設けられており、この一対のガイド溝72,72に対して、前側プレート56の前面に上下方向に延びるように設けられた上記一対のガイドレール58,58が、摺動可能に嵌合せしめられ、以て、各ガイドレール58に案内されつつ、上下動可能とされている。
そして、そのようにして、支持枠体48の前側プレート56に対して、その上部側と下部側とに、それぞれ上下動可能に支持された可動板70と保持板46とが、コントローラ27に対して電気的に接続された公知のロードセル74を介して、互いに連結されている。換言すれば、保持板46が、ロードセル74を介して、可動板70に懸吊せしめられた状態で、支持枠体48に支持されているのである。
これによって、ここでは、上下移動用サーボモータ64の正逆方向への回転駆動によって、可動板70が、ボールねじナットと共に、一対のガイドレール58,58に案内されつつ、上下方向に移動せしめられ、また、そのような可動板70の上下動に伴って、保持板46とそれに保持された、取鍋12を含む取鍋傾動機構36の全体が、上下方向に移動せしめられるようになっている。なお、この上下移動用サーボモータ62の回転駆動による可動板70、保持板46、取鍋12、及び取鍋傾動機構36の上下動も、その移動方向や移動量が、操作盤28に対するキー操作や、後述するレーザセンサ(118)からの入力信号等に基づいて、コントローラ27にて制御されるようになっている。
また、それら保持板46とそれに保持された、取鍋12を含む取鍋傾動機構36の全体の合計重量と、取鍋12の傾動により取鍋12内の溶湯が流出せしめられる際の取鍋12を含む取鍋傾動機構36の減少量、つまり溶湯の鋳型18への注湯重量とが、ロードセル74とコントローラ27にて計測されるようになっている。そして、ここでは、それらロードセル74とコントローラ27にて計測される取鍋12を含む取鍋傾動機構36の全体の合計重量と溶湯の鋳型18への注湯重量とに応じて、取鍋12内の溶湯を鋳型18に流し込む際の取鍋傾動機構36による取鍋12の傾動量が、コントローラ27にて制御されるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、ロードセル74とコントローラ27とにて、計量手段が構成されている。
また、図1に示されるように、支持枠体48の下側プレート52の下面にも、下方に開口する一対のガイド溝76,76が、前後方向に延びるように設けられている。一方、台車10における支持枠体48の配置部位の上面には、一対の案内レール78,78が、前後方向に延びるように形成されている。そして、一対のガイド溝76,76に対して、一対の案内レール78,78が摺動可能に嵌合せしめられており、それによって、支持枠体48が、各案内レール78に案内されつつ、前後方向に移動可能とされている。
また、支持枠体48の下側プレート52上には、図示しない前後移動用サーボモータが、回転軸を下側プレート52の下面から下方に突出させた状態で固定されており、この回転軸に対して、ピニオン80が、取り付けられている。一方、台車10における一対の案内レール78,78の間には、ラック82が、各案内レール78の延出方向に延びるようにして、固定されている。そして、このラック82に対して、前後移動用サーボモータの回転軸に取り付けられたピニオン80が噛合せしめられている。これによって、前後移動用サーボモータの回転駆動に伴って、支持枠体48が、台車10上を前後方向に移動せしめられるようになっている。なお、この前後移動用サーボモータの回転駆動による支持枠体48の前後移動も、その移動方向や移動量が、操作盤28に対するキー操作や、コントローラ27に予め入力された鋳型18の受口(112)の位置データ等に基づいて、コントローラ27にて制御されるようになっている。
かくして、ここでは、コントローラ27による駆動制御の下で、前後移動用サーボモータや上下移動用サーボモータ64の回転駆動により、支持枠体48に支持された可動板70と、可動板70に懸吊された保持板46と、保持板46に保持される取鍋傾動機構36と、更には取鍋傾動機構36に取り付けられる取鍋12とが、上下方向と前後方向とに、任意の量だけ、一体的に移動せしめられるように構成されているのである。
而して、このような本実施形態の自動注湯装置にあっては、取鍋12から流出せしめられる溶湯を、一旦、収容して、鋳型に流し込む漏斗84と、取鍋12における流出流路34の流出口32を段階的に閉塞して、取鍋12から流出口32を通じて流出せしめられる溶湯の流出流量(鋳型18への注湯流量)を調節する閉鎖手段としての閉鎖機構85とが、設置されており、そこに、従来装置には見られない大きな特徴が存しているのである。
すなわち、漏斗84は、図6及び図7に示されるように、全体として、逆四角錐台形状をもって上方に開口する金属製容器86の内側の側面と底面とに、厚肉板状を呈する公知の耐火材88がそれぞれ張り付けられて、構成されている。そして、この漏斗84の上部外周面には、側方に向かって所定高さ突出し且つ周方向に連続して延びる外フランジ90が、一体的に形成されている。
また、かかる漏斗84においては、耐火材88にて囲まれた内側空間が、溶湯を収容する収容部92とされている。そして。この収容部92は、内面形状が、金属製容器86の形状に対応した逆四角錐台形状とされており、また、一個の鋳型18に対する注湯重量に相当する重量の溶湯が収容可能な容積をもって、構成されている。
さらに、そのような漏斗84の収容部92の底部の中心部には、かかる底部に位置する耐火材88を上下方向に貫通して延びる円形の貫通孔94が設けられており、また、この貫通孔94が、金属製容器86の底面の中心部に設けられた透孔96を通じて、下方に開口せしめられている。これによって、漏斗84の底部の中心部に、貫通孔94と透孔96とにて構成されて、収容部92を下方に向かって外部に連通せしめる円形の連通路からなる連通路98が、形成されている。
一方、図4及び図5に示される如く、台車10上において、支持枠体48に支持されて、前後方向及び上下方向に移動可能とされた可動板70の左右両側の端部には、支持板100が、それぞれ前方に延び出すようにして、固定されている。また、それら2個の支持板100a,100bのうち、左側に位置する支持板100aの左側面の下部には、支持フレーム102が、位置固定に取り付けられている。
この支持フレーム102は、図2乃至図5から明らか如く、上下方向に延びる取付部104と、この取付部104の下端部から水平方向に所定長さをもって一体的に延び出すアーム部106と、かかるアーム部106の先端部に一体形成された矩形の枠部108とにて、構成されている。そして、前記支持板100aの左側で、アーム部106を左右方向に延出させ、且つ枠部108を、取鍋12の流出口32と鋳型18との間に位置せしめた状態で、取付部104において、支持板100aに取り付けられている。
そうして、前述せる如き構造を有する漏斗84が、支持フレーム102の枠部108に対して、その内孔内に嵌入され、且つ外フランジ90を係合せしめた状態下で、容易に着脱可能に載置されて、支持されている。また、そのような支持状態下において、かかる漏斗84の収容部92の上側開口部が、取鍋12の流出口32の直下に位置せしめられ、且つ連通路98の下側開口部(透孔96)からなる注ぎ口110が、鋳型18の受口(112)の直上に位置せしめられるようになっている(図8参照)。
かくして、ここでは、取鍋12が、貯留部30内に溶湯が貯留された状態下で、取鍋傾動機構36により傾動せしめられることによって、貯留部30内の溶湯が、漏斗84の収容部92内に、その上側開口部を通じて流入せしめられて、一旦、収容されるようになっており、また、この収容部92内に収容された溶湯が、連通路98の注ぎ口110を通じて下方に流出せしめられて、鋳型18の受口(112)内に流し込まれるように構成されている(図9参照)。
そして、本実施形態においては、特に、漏斗84における連通路98の注ぎ口110からの溶湯の流出流量が、取鍋12から収容部92内への溶湯の流入流量よりも所定量だけ小さく、且つ鋳型18の受口(112)に連通する湯口(114)を流通せしめられる溶湯の流量よりも僅かに大きくなるように、連通路98の内径が設定されている。これによって、漏斗84を介しての取鍋12から鋳型18への溶湯の注湯に際して、漏斗84の収容部92内と鋳型18の受口(112)内とに、それぞれ湯だまりが形成されるようになっている。
また、漏斗84を支持する支持フレーム102が、台車10上において、前後方向及び上下方向に、取鍋12と一体移動可能に配置された可動板70に固定される支持板100aに取り付けられているところから、漏斗84が、台車10と共に、搬送ライン20に並行して、その延長方向(左右方向)に走行せしめられるようになっており、しかも、取鍋12共に、台車10上を前後方向及び上下方向に一体移動せしめられ得るようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、取鍋12や可動板70を上下方向と前後方向に一体移動させる上下移動用サーボモータ64とボールねじ軸60とボールねじナットと前後移動用サーボモータとピニオン80とラック82等にて、取鍋と漏斗部材とを上下方向と前後方向に移動させる第一の移動手段が構成されており、また、可動板70にて第一の可動体が構成されているのである。
また、図1乃至図3に示される如く、台車10には、固定フレーム116が位置固定に設けられている。更に、この固定フレーム116に対して、鋳型18との間の距離を検出するレーザセンサ118が、鋳型18の上方に位置するように取り付けられており、このレーザセンサ118にて検出される鋳型18との距離に基づいて、鋳型18の上端面の高さが、コントローラ27にて把握されるようになっている。そして、鋳型18が別のものに変更されて、鋳型18の上端面の高さが変化せしめられた場合に、コントローラ27により、そこで把握される鋳型18の上端面の高さに基づいて、鋳型18の上端面と漏斗84の下端面、つまり、鋳型18における受口(112)の上方への開口位置と、漏斗84における注ぎ口110の下方への開口位置との高低差が一定となるように、取鍋12と漏斗84とが上下方向に移動せしめられるように構成されている。このことから明らかなように、本実施形態では、レーザセンサ118とコントローラ27とにて、検出手段が構成されると共に、コントローラ27にて、第一の制御手段が構成されている。
また、かくの如き構造とされた漏斗84と共に、本実施形態の自動注湯装置の特徴的構成を為す閉鎖機構85は、可動板70にて懸吊される保持板46に保持された板状の傾動体38に取り付けられている。
すなわち、図4及び図5に示されるように、閉鎖機構85は、取鍋12における流出流路34の流出口32に対応した形状を呈して、取鍋12の流出流路34の上方に位置せしめられたシャッタ部材としてのシャッタ板120と、かかるシャッタ板120を上下動させ、且つその上下動に伴って、シャッタ板120を流出流路34内に突入移動させると共に、かかる突入状態から引込移動させるための突入/引込用サーボモータ122と、それらシャッタ板120と突入/引込用サーボモータ122とを連結する連結板124とを、有している。
そして、突入/引込用サーボモータ122は、傾動体38の右側面、つまり取鍋12の取付側とは反対側の面における後部側に対して、駆動軸を前方側に水平に延出せしめた状態で固定されている。また、連結板124は、傾動体38の上方において、傾動体38の左側と右側とにそれぞれ水平に広がって位置せしめられている。更に、かかる連結板124の左側端部には、側方(左側方向)に向かって所定長さ延び出す取付アーム126が取り付けられている。なお、この取付アーム126は、上下方向に延びる回動軸回りに回動可能、つまり水平面内において首振り可能とされており、連結板124に対する取付部分に設けられたねじ部材128の締付けによって、所定の首振り位置で回動不能とされるようになっている。
また、そのような連結板124における右側端部と左右方向の中間部のそれぞれの下面には、四角柱形状と所定の長さとをもって鉛直下方に延び出すスライドバー130a,130bが、各々一体的に立設されている。更に、それら2個のスライドバー130a,130bのうち、連結板124の右側端部に設けられたスライドバー130bの右側面には、ラック部132が、全長に亘って形成されている。
そして、このような連結板124が、取付アーム126を、取鍋12の流出流路34の上方にまで延出せしめる一方、2個のスライドバー130a,130bが、傾動体38における左右の両側面に、それぞれ上下方向に延びるように取り付けられたガイドブッシュ134a,134bの内孔内に、上下方向に摺動可能に挿入せしめた状態で、傾動体38の上方に位置せしめられている。また、かかる配置状態下において、傾動体38の右側面、つまり前記突入/引込用サーボモータ122の取付側の面に設けられたガイドブッシュ134b内に挿入されたスライドバー130bにあっては、ガイドブッシュ134bの後面に、全長に亘って上下方向延びるように形成されたスリットを通じて、ラック部132が、後方側に突出位置せしめられている。
そして、かかる連結板124の取付アーム128の先端部に対して、取鍋12の流出流路34の上方に位置せしめられた前記シャッタ板120が、下方に向かって延び出すようにして、位置固定に取り付けられている一方、スライドバー130bのラック部132に対して、傾動体38に固定された前記突入/引込用サーボモータ122の駆動軸に取り付けられる駆動ギヤが噛合せしめられている。
これによって、シャッタ板120と突入/引込用サーボモータ122とが、連結板124を介して連結されており、また、そのような連結状態下において、突入/引込用サーボモータ122の正逆方向への回転駆動に伴って、連結板124が、ガイドブッシュ134a,134bに案内されつつ、上下動せしめられ、更に、この連結板124の上下動に伴って、シャッタ板120が上下動せしめられて、取鍋12の流出流路34内に、前記上側開口部33を通じて突入/引込移動せしめられるようになっている。そして、かかる流出流路34内への突入移動によって、流出流路34の流出口32が閉鎖される一方、流出流路内からの引込移動によって、流出口32の閉鎖状態が解消され得るように構成されている。
なお、本実施形態においては、このシャッタ板120による流出口32の開閉を行なわしめる閉鎖機構85の作動が、前記取鍋傾動機構36による取鍋12の傾動位置と、ロードセル74及びコントローラ27にて計測される取鍋12内からの溶湯の減少量とに基づいて、コントローラ27により自動制御されて、シャッタ板120の下降が、流出口32を全開状態と為す上死点位置から、流出口32を部分的に閉鎖する中間位置と、流出口32を全閉と為す下死点位置とに位置せしめられるように、二段階に亘って行われるようになっている(図8乃至図11参照)。このことから明らかなように、ここでは、コントローラ27にて、第二の制御手段が構成されており、また、連結板124とガイドブッシュ134とスライドバー128と突入/引込用サーボモータ122とコントローラ27とにて下降機構が構成されている。
また、閉鎖機構85が、台車10上において、前後方向及び上下方向に、取鍋12や漏斗84と一体移動可能に配置された可動板70に支持される傾動体38に取り付けられているところから、かかる閉鎖機構85のシャッタ板120が、取鍋傾動機構36により、取鍋12と共に、一体的に傾動せしめられるようになっている。そして、閉鎖機構85の全体が、台車10と共に、搬送ライン20に並行して、その延長方向(左右方向)に走行せしめられるようになっており、また、取鍋12や漏斗84と共に、台車10上を前後方向及び上下方向に一体移動せしめられ得るようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、可動板70を上下方向と前後方向に一体移動させる上下移動用サーボモータ64とボールねじ軸60とボールねじナットと前後移動用サーボモータとピニオン80とラック82等にて、取鍋と漏斗部材と閉鎖手段を上下方向と前後方向に移動させる第二の移動手段が構成されており、また、可動板70にて第二の可動体が構成されているのである。
而して、かくの如き構造とされた本実施形態の自動注湯装置を用いて、複数の鋳型18の一つ一つに溶湯を連続的に自動注湯する際には、例えば、以下のようにして、その作業が進められることとなる。
すなわち、先ず、図8に示されるように、取鍋12の貯留部30内に、溶湯136が、例えば数十個の鋳型18に注湯可能な量で貯留されると共に、支持フレーム102に漏斗84が支持される。また、そのような状態下において、閉鎖機構85のシャッタ板120が、取鍋12の流出流路34内に何等突入せしめられていない上死点に位置せしめられて、流出口32が、全開状態とされる。そして、注湯されるべき鋳型18が、搬送ライン20にて搬送されて、受口112が、漏斗84の注ぎ口110の下方に位置するように配置される。
このとき、連通路98の注ぎ口110からの溶湯の流出流量が、鋳型18の湯口114を流通せしめられる溶湯の流量よりも僅かに大きくなるように設定された内径を有する連通路98を備えた漏斗84が、搬送ライン20にて搬送される鋳型18に応じて、適宜に選択されて、準備され、使用されることとなる。なお、ここでは、漏斗84が、支持フレーム102の枠部108に載置されて、着脱可能に支持されているため、漏斗84の交換が容易となっている。そして、この漏斗84の着脱の際には、閉鎖機構85の連結板124に取り付けられた取付アーム126を回動せしめることで、着脱作業が、より容易となる。
また、搬送ライン20にて搬送されて、漏斗84の下方に配置された際には、鋳型18の上端面の高さが、鋳型18の上方に位置せしめられたレーザセンサ118と台車10上に固設されたコントローラ27とにて計測され、更に、その計測値に基づいて、鋳型18における受口112の上方への開口位置と、漏斗84における注ぎ口110の下方への開口位置との高低差が、コントローラ27において求められる。そして、その値が、予め設定された高さ基準値と異なっている場合には、かかる高さ基準値と一致した値となるように、取鍋12と漏斗84とが上下方向に移動せしめられる。これにより、鋳型18の高さに拘わらず、鋳型18における受口112の上方への開口位置と、漏斗84における注ぎ口110の下方への開口位置との高低差が、常に一定の値となるようにされる。その結果として、後述する漏斗84内から鋳型18への溶湯136の注湯作業の安定化、更には鋳型18内で鋳造される製品の品質の安定化が、有利に図られ得る。
さらに、漏斗84の下方への鋳型84の配置時には、予めコントローラ27に入力された鋳型18の形状や受口112の位置データに基づいて、漏斗84の注ぎ口110が、鋳型18の受口112の直上に位置せしめられるように、コントローラ27の制御の下で、必要に応じて、漏斗84が、取鍋12や閉鎖機構85のシャッタ板120と共に、前後方向や左右方向に移動せしめられて、適正な位置に配置せしめられる。また、鋳型18が、搬送ライン20により、漏斗84の配置位置を通り過ぎた位置や、漏斗84の配置位置の手前に搬送された場合等にあっては、例えば、オペレータ等による操作盤28のキー操作等により、漏斗84を、取鍋12や閉鎖機構85のシャッタ板120と共に、左右方向に移動せしめて、適正な位置に配置せしめる作業が、行われる。
次に、図9に示されるように、取鍋12が、取鍋傾動機構36により、比較的に大きな角度で回動せしめられて、取鍋12内の溶湯が流出口32から大なる流量で流出せしめられる傾動位置(第一の傾動位置)に位置せしめられる。このときも、閉鎖機構85のシャッタ板120は、取鍋12の流出流路34内に何等突入せしめられていない上死点に位置せしめられて、流出口32の全開状態が、未だ維持される。
これによって、取鍋12内の溶湯136が、流出流路34の流出口32から、漏斗84の収容部92内に大流量で流し込まれ、また、その一方で、漏斗84の収容部92内に流し込まれた溶湯136は、漏斗84における連通路98の注ぎ口110を通じて、鋳型18の受口112に注湯される。そして、鋳型18の受口112内の溶湯は、湯口114を通じて、鋳型18内に形成される図示しない空隙に流入せしめられる。
このとき、上述せる如く、漏斗84として、収容部92内に収容される溶湯136の流出流量が、鋳型18の湯口114を流通せしめられる溶湯の流量よりも僅かに大きくなるように設定された内径を有する連通路98を備えたものが用いられているため、取鍋12内から漏斗84への溶湯136の流入時に、漏斗84の収容部92内と鋳型18の受口112内とに、それぞれ湯だまりが形成される。それ故、ここでは、取鍋12からの溶湯136の流出流量に拘わらず、漏斗84の収容部92内の溶湯136が、連通路98を通じて、鋳型18の受口112に対して、一定の流量で注湯されるようになる。
また、取鍋12から漏斗84の収容部92内への溶湯136の流入に際しては、漏斗84の収容部92が四角錐台形状とされているため、収容部92内に流し込まれる溶湯136が、収容部92内で旋回せしめられることが有利に防止され、それによって、収容部92内の溶湯136が、層流状態で、連通路98を通じて、鋳型18に注湯されるようになる。
なお、このような本工程において、取鍋12が上記第一の傾動位置に位置せしめられるまでの取鍋12の回動角度(傾動角度)は、取鍋12内に貯留される溶湯136の量に応じて、適正な大きさとなるように、コントローラ27にて制御される。即ち、ここでは、取鍋12の傾動開始前に、取鍋12や取鍋傾動機構36等の保持板46にて保持される部材全体の合計重量が、ロードセル74にて計測され、それに基づいて、取鍋12内の溶湯136の重量が、コントローラ27にて求められる。そして、この取鍋12内の溶湯136の重量が大きいとき、つまり取鍋12の貯留部30内に大量の溶湯が貯留されているときには、取鍋12が第一の傾動位置にまで傾動せしめられる際に、そのときの回動角度が比較的に小さくされ、その反対に、取鍋12内の溶湯136の貯留量が少ないときには、溶湯136が大流量で流出せしめられる傾動位置にまで取鍋12が傾動せしめられる際に、そのときの回動角度が比較的に大きくされる。これによって、取鍋12内の溶湯136の貯留量に拘わらず、溶湯136が、鋳型18に対して、確実に且つスムーズに、しかも迅速に注湯されるようになる。なお、この取鍋12内の溶湯136の貯留重量に応じた取鍋12の回動角度の調節量は、取鍋12の大きさ等によって、適宜に決定されるところである。
また、本工程では、取鍋12内の溶湯136が、鋳型18に対して、漏斗84を通じて注湯せしめられている間、取鍋12内の溶湯136の重量が、ロードセル74とコントローラ27にて継続的に計測され、それによって、取鍋12内からの流出に伴う溶湯136の減少量、換言すれば、鋳型18への溶湯136の注湯重量が、逐次把握される。
そして、かくして把握される鋳型18への溶湯136の注湯重量が、一つの鋳型18に対する注湯重量よりも所定の量だけ少ない重量に達したときに、図10に示される如く、取鍋12の回動角度が小さくされて、取鍋12の流出口32から流出せしめられる溶湯136の流量が所定量だけ減少せしめられる傾動位置(第二の傾動位置)にまで、傾動状態が回復せしめられる。また、かくして取鍋12の傾動状態が回復せしめられるのに連動して、閉鎖機構85のシャッタ板120が、コントローラ27による閉鎖機構85の作動制御の下で、前記中間位置にまで下降せしめられて、シャッタ板12の先端部が、流出流路34内に、その底面から所定距離隔てた位置にまで突入せしめられ、以て、流出口32が部分的に閉鎖せしめられる。
これによって、漏斗84の収容部92内への取鍋12内の溶湯136の流入流量が減少せしめられ、また、取鍋12の傾動位置と部分的に閉鎖された流出口32の開口面積に応じた一定の流量で、取鍋12内の溶湯136が、漏斗84の収容部92内に流し込まれるようになる。なお。このとき、鋳型18の受口112への漏斗84内の溶湯136の注湯流量と、鋳型18の空隙内への受口112からの溶湯136の流入流量は、漏斗84の収容部92内への溶湯136の流入流量の減少に拘わらず、何れも、一定の値に維持される。
そして、本工程においては、取鍋12の傾動開始から、その傾動状態が回復せしめられるまでの間における経過時間と取鍋12内の溶湯136の流出重量とに基づいて、かかる間における取鍋12内からの溶湯136の流出流量が、コントローラ27にて演算せしめられる。また、かくして求められた演算値と予め定められた流量基準値とが、コントローラ27にて比較されて、演算値が流量基準値よりも大きい場合には、その差異に応じた分だけ、シャッタ板12の下降量が、予め設定された設定値よりも大きくされ、以て、流出口32の部分的な閉鎖量が大きくなるように、換言すれば、部分的な閉鎖状態での流出口32の開口面積が小さくなるように、閉鎖機構85の作動が自動制御される。一方、演算値が流量基準値よりも小さい場合には、その差異に応じた分だけ、シャッタ板12の下降量が、予め設定された設定値よりも小さくされ、以て、流出口32の部分的な閉鎖量が小さくなるように、換言すれば、部分的な閉鎖状態での流出口32の開口面積が大きくなるように、閉鎖機構85の作動が自動制御される。
これによって、流出口32が部分的に閉鎖された状態での、流出口32からの溶湯136の流出流量が、それまで、流出口32が全開とされた状態での、流出口32からの溶湯136の流出流量の大きさに応じて、適正に調節される。以て、予め決められた量の溶湯136が、取鍋12内から漏斗84の収容部92内に、予め決められた時間内で、静かに流し込まれるようになる。
そして、ロードセル74とコントローラ27にて把握される鋳型18への溶湯136の注湯重量が、一つの鋳型18に対する注湯重量と一致する直前に、図11に示される如く、閉鎖機構85のシャッタ板120が、コントローラ27による閉鎖機構85の作動制御の下で、前記下死点位置、つまり、取鍋12の流出流路34内に突入せしめられたシャッタ板120の先端部が、流出流路34の底面に当接する位置まで更に下降せしめられて、流出口32が完全に閉鎖せしめられる。これによって、漏斗84の収容部92内への取鍋12内の溶湯136の流入が、停止せしめられる。そして、流出口32が全閉となる直前に取鍋12から流出せしめられて、未だ漏斗84の収容部92内に流入せしめられていない溶湯136が、漏斗84の収容部92内に収容されることで、漏斗84の収容部92内に、一つの鋳型18に対する注湯重量と一致する量の溶湯136の全量が、漏斗84内に流し込まれることとなる。なお、このとき、取鍋12は、傾動前の原位置に復帰せしめられることなく、取鍋12内の溶湯136の漏斗84内への流入流量が小さくされた前記第二の傾動位置に位置せしめられた傾動状態のまま維持される。
そして、その後、漏斗84の収容部92内の溶湯136の全量が、鋳型18の受口112に流し込まれることによって、一つの鋳型18に対する自動注湯が終了せしめられる。また、それに引き続いて、別の鋳型18が、漏斗84の下方に配置されると、取鍋12が、図9に示されるように、前記第二の傾動位置から前記第一の傾動位置にまで傾動せしめられると共に、閉鎖機構85のシャッタ板120が、上死点位置にまで上昇せしめられ、それによって、かかる別の鋳型18に対する自動注湯が開始されることとなるのである。
このように、本実施形態においては、取鍋12の貯留部30内に貯留された溶湯136を一つの鋳型18に自動的に注湯する際に、その注湯操作の前半では、取鍋12が大きく傾動せしめられて、取鍋12内の溶湯136が、かかる鋳型18の一つに対する注湯量に相当する量において収容可能な漏斗84内に、大流量で流し込まれる一方、その後半では、取鍋12の傾動量が小さくされて、取鍋12内の溶湯136が、漏斗84内に、小流量で流し込まれるようになっており、それによって、注湯速度の短縮化と、ロードセル74とコントローラ27とによる一つの鋳型18に対する溶湯136の注湯重量の計量精度の安定化とが図られている。
そして、本実施形態では、特に、取鍋12内から漏斗84内に流し込まれた溶湯136が、漏斗84の連通路98を通じて、漏斗84から鋳型18の受口112に、一定の流量で注湯されるところから、取鍋12内の溶湯136を鋳型18に注湯する際に、鋳型18の受口112内への溶湯の流入量に関して、何等の制御を行うことなく、単に、取鍋12から漏斗84内への溶湯136の流入重量の計量精度を高めることのみにターゲットを絞って、取鍋12の傾動量を調節し、取鍋12からの溶湯136の流出流量を制御することが出来る。
る。
しかも、本実施形態では、取鍋12内の溶湯136を漏斗84内に小流量で流し込む際に、その流量が、シャッタ板120にて部分的に閉鎖された流出口32の開口面積に応じた一定の値に維持されるようになるため、例えば、取鍋12の傾動による溶湯136の波打ち等が生じても、それによって、かかる流量にバラツキが発生するようなことが、未然に防止され得る。
従って、かくの如き本実施形態によれば、鋳型18に注湯される溶湯136の注湯重量の計量精度を、より高いレベルで、更に一層安定的に確保することが可能となるのである。そして、その結果として、特に注湯重量に対する厳密な管理が要求される、例えば10kg程度の少量鋳込み製品の鋳造に際して、注湯重量が一層正確に計量され得、以て、目的とする製品が、極めて有利に得られることとなる。なお、本実施形態の自動注湯装置は、10kg程度の少量鋳込み製品の鋳造に用いられるものに、何等限定されるものではないことは、勿論である。
また、本実施形態においては、漏斗84が、支持フレーム102の枠部108に着脱可能に支持されていることで、漏斗84の交換が容易となっているところから、注湯されるべき鋳型18の種類が変更されても、かかる漏斗84の簡単な交換作業を行うだけで、鋳型18に対する溶湯136の注湯重量の高い計量精度が、より有利に且つ安定的に確保され得る。
さらに、本実施形態では、漏斗84の収容部92が逆四角錐台形状とされていることで、漏斗84内の溶湯136が、連通路98を通じて、鋳型18の受口112に層流状態で注湯されるようになっているため、鋳造不良の発生が可及的に抑制された、安定した品質を有する製品が、有利に鋳造され得ることとなる。
更にまた、本実施形態においては、漏斗84が、上下方向と前後方向と左右方向とに一体移動可能とされていることで、鋳型18の受口112の位置が種々変更されても、漏斗84の注ぎ口110の位置が、それに確実に追従せしめられ得るのであり、それによって、鋳型18の種類に拘わらず、安定した鋳造が、有利に実施され得る。
しかも、取鍋12と閉鎖機構85のシャッタ板120も、漏斗84と共に、上下方向と前後方向と左右方向とに一体移動せしめられるようになっているため、取鍋12から漏斗84内への溶湯136の流入操作も、安定的に行われ得る。また、それら取鍋12と閉鎖機構85のシャッタ板120とが、一体的に傾動せしめられるようになっていることによっても、取鍋12から漏斗84内への溶湯136の安定した流入操作が、効果的に確保され得ることとなる。
さらに、本実施形態においては、一つ目の鋳型18に対する自動注湯を行った後、取鍋12が傾動前の原位置に復帰せしめられることなく、傾取鍋12内の溶湯136の漏斗84内への流入流量が小さくされた第二の傾動位置に位置せしめられた傾動状態のまま維持され、次回の自動注湯の実施に際しては、取鍋12が、かかる第二の傾動位置から前記第一の傾動位置に傾動せしめられて、自動注湯が再開されるようになっている。これによって、複数の鋳型18の一つ一つに対して連続的に自動注湯を行う際に、取鍋12の傾動操作に要される時間が有利に短縮され得るのであり、以て、それら複数の鋳型18に対する自動注湯作業に掛かる時間の短縮化が、効果的に実現され得るのである。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、前記実施形態では、漏斗84の収容部92が逆四角錐台形状とされていたが、この収容部92の形状は、何等これに限定されるものではなく、例えば、逆円錐台形状や、逆四角錐台形状以外の逆角錐台形状とされていても良い。但し、収容部92内に流入せしめられる溶湯136が旋回状態となるのを阻止する上では、収容部92が、逆角錐台形状を含む逆角錐形状とされていることが、望ましいのである。
また、そのような漏斗84や取鍋12、閉鎖機構85を上下方向や前後方向に一体移動させるための構造や、取鍋12と閉鎖機構85とを一体的傾動させるための構造等は、前記実施形態に示されるものに、何等限定されるものでないことは、勿論である。
さらに、取鍋の重量変化に基づいて、取鍋に貯留される溶湯の重量の増減量を計量する計量手段の構造も、前記実施形態に示される如きロードセル74とコントローラ27とからなる構造のものに、決して限定されるものではなく、また、閉鎖手段も、例示の閉鎖機構85に、特に限定されるものではない。更に、検出手段も、例示のレーザセンサ118以外のものであっても良いのである。
また、前記実施形態では、取鍋12が、取鍋傾動機構36による傾動により、取鍋12内の溶湯が流出口32から大なる流量で流出せしめられる第一の傾動位置に位置せしめられているときに、閉鎖機構85のシャッタ板120が、取鍋12の流出流路34内に何等突入せしめられていない上死点に位置せしめられて、流出口32が全開状態とされていたが、例えば、図12に示されるように、シャッタ板120を所定量だけ下降せしめて、流出口32の部分的に閉鎖するようにしても良い。なお、このときのシャッタ板120の下降量も(流出口32の閉鎖量)も、コントローラ27にて制御される。これによって、取鍋12から漏斗84内に大流量で流し込まれる溶湯136の流量が、取鍋12の傾動量とは別に、シャッタ板120にて部分的に閉鎖された流出口32の開口面積に応じて、容易に調節され得るようになる。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
本発明に従う構造を有する鋳造用自動注湯装置の一実施形態を示す正面説明図である。
図1に示された鋳造用自動注湯装置の左側面説明図である。
図1に示された鋳造用自動注湯装置の平面説明図である。
図1に示された鋳造用自動注湯装置の要部を拡大して示す正面説明図である。
図1に示された鋳造用自動注湯装置の要部を拡大して示す平面説明図である。
図1に示された鋳造用自動注湯装置に設置される漏斗の縦断面説明図であって、図7におけるVI−VI断面に相当する図である。
図6に示された漏斗の平面説明図である。
図1に示された鋳造用自動注湯装置を用いて、鋳型に対する自動注湯を行う工程の一例を説明するための図であって、取鍋内に溶湯を貯留せしめると共に、漏斗の下方に鋳型を配置せしめた状態を示している。
図8に引き続いて行われる工程を説明するための図であって、取鍋を大きく傾動せしめて、取鍋内の溶湯を大流量で漏斗内に流し込みつつ、鋳型に対する注湯を行っている状態を示している。
図9に引き続いて行われる工程を説明するための図であって、取鍋の傾動量を小さくすると共に、取鍋の流出口を閉鎖機構にて部分的に閉鎖せしめて、取鍋内の溶湯を小流量で漏斗内に流し込みつつ、鋳型に対する注湯を行っている状態を示している。
図10に引き続いて行われる工程を説明するための図であって、取鍋の流出口を閉鎖機構にて完全に閉鎖せしめて、取鍋から漏斗への溶湯の流入を停止させた状態で、鋳型に対する注湯を行っている状態を示している。
図8に引き続いて行われる工程の別の例を説明するための図であって、シャッタ板にて流出口を部分的に閉鎖した状態で、取鍋内の溶湯を大流量で漏斗内に流し込みつつ、鋳型に対する注湯を行っている状態を示す、図9に対応する図である。
符号の説明
10 台車 12 取鍋
18 鋳型 27 コントローラ
30 貯留部 32 流出口
34 流出流路 36 取鍋傾動機構
38 傾動体 40 取鍋傾動用サーボモータ
42 回動軸 46 保持板
60 ボールねじ軸 64 上下移動用サーボモータ
70 可動板 74 ロードセル
84 漏斗 85 閉鎖機構
92 収容部 98 連通路
110 注ぎ口 118 レーザセンサ
120 シャッタ板 122 突出/引込用サーボモータ
136 溶湯