JP4721211B2 - コアレス・リニアモータ - Google Patents

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Description

本発明は、コアレス・リニアモータに関する。
コアレスリニアモータは、電機子にコア(鉄心)を持たないタイプのリニアモータであり、コギングがなく推力変動が小さい、精密制御が容易等の特徴をもつ。このコアレスリニアモータは、たとえば、工作機械、射出成形機、半導体製造装置等の各種分野に用いられている。コアレスリニアモータの構造は、たとえば、特許文献1等に開示されている。
たとえば、特許文献1に開示されているようなコアレスリニアモータの可動子では、コイルがコアを持たないため剛性が低い。このため、ステンレスやFRP等の非磁性材料からなるプレート状の保持板の両面に扁平に形成したコイルを樹脂で固定することにより、剛性を確保している。
コイルが固定された保持板を直線状に配列された一対の永久磁石列の間に配置し、一方の永久磁石列から他方の永久磁石列に向かう磁束とコイルに流れる電流との相互作用によって、左手のフレミング則に基づく推力が発生する。
特開2002−165434号公報
ところで、上記のような構造のコアレスリニアモータでは、コイルの保持板は磁気回路の磁束の通路にあるため、保持板の肉厚を厚くすることができない。すなわち、保持板の両面にコイルを固定するタイプのコアレスリニアモータでは、保持板の肉厚を厚くするほど永久磁石の発生する磁束の利用効率が低下するため、可動子の剛性向上は構造上限界がある。保持板に十分な剛性が確保できないと、リニアモータを駆動したときに振動が発生しやすく、制御ループゲインを高めることができないという不利益がある。
また、コイルは熱伝導性の低い樹脂で保持板に固定され、かつ、保持板もステンレス等の熱伝導率の低い材料で形成されているため、コイルから発生する熱により温度上昇しやすく、リニアモータの位置決め精度を確保するのが困難である。放熱性の観点からは、アルミニウム合金などの熱伝導率の高い金属を保持板に用いるのが好ましいが、アルミニウム合金などの熱伝導率の高い金属はステンレス等と比べて電気抵抗も低いため、モータ駆動時にステンレスなどよりはるかに大きな誘導電流が発生する。この誘導電流と磁石の磁束との相互作用により推力とは逆方向の力が発生し、推力変動が大きくなる。このため、アルミニウム合金などの熱伝導率の高い金属を保持板に用いるのは困難であった。
本発明は、上記した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、電機子の剛性が向上するとともに、電機子コイルの発熱による温度上昇を抑制できるリニアモータを提供することにある。
本発明によれば、ステータとして機能し、内空を有する固定部と、電機子として機能し、前記固定部の前記内空を長手方向に移動可能な可動部とを有し、
前記可動部は、断面が四角柱状の、長手方向に延び、非磁性体かつ導電性の材料で形成された、補強部材と、前記補強部材の外周に嵌装されるコイル結合体とを有し、
前記コイル結合体は、3相コイルとして機能する連接された3個のコイルを有し、
当該3個のコイルのそれぞれが、断面の外形が矩形でかつ内形が前記補強部材の矩形の外形の外周に嵌装可能な矩形の中空を有するように導電線を長手方向に筒状に巻回された構成されており、かつ、前記3個のコイルの巻回方向は同じであり
記固定部は、
前記可動部が長手方向に移動する当該固定部の前記内空を規定するように対向し、対向する面が平面であり、長手方向に沿って延びる第1および第2の対向部を有するヨークと、前記ヨークを構成する前記第1の対向部の前記第2の対向面に対向する対向面に設けられた、第1の複数の磁石と、前記ヨークを構成する前記第2の対向部の前記第1の対向面に対向する対向面に設けられた、第2の複数の磁石と、を有し、
前記第1の複数の磁石および前記第2の複数の磁石はそれぞれ、前記外形が矩形のコイル結合体の前記3個の平坦なコイルの外周面に対向し、
前記第1の複数の磁石と、対向して配置された前記第2の複数の磁石とはそれぞれ、磁極が同じであり、
前記補強部材の外周に嵌装された前記コイル結合体に流れる電流による電磁誘導による磁界に起因して前記補強部材に流れる誘導電流による推力とは逆方向の力を抑制するため、前記補強部材の表面を前記対向する磁石の表面から所定距離離間されており、
前記補強部材に嵌装された前記コイル結合体を有する前記可動部が、前記コイル結合体の前記3相コイルに印加される電流に応じて、前記固定部の前記内空を長手方向に移動する、
コアレス・リニアモータが提供される。
好適には、前記3相コイルは、各相コイルが筒状に整列多層巻きされ、かつ、接着剤で固められており、電気絶縁性の部材を介して端面が互いに結合されている。
好適には、前記補強部材は、金属で形成されている。
さらに、好適には、前記補強部材は、アルミニウム合金または銅合金で形成されている。
前記補強部材は、内部に流体が通過可能な貫通路を有する構成とすることも可能である。
好適には、前記補強部材は、前記3相コイルが発生した熱を外部に放出する放熱手段を有する。
また、前記電機子を構成する前記コイル結合体として、互いに逆位相の磁界を発生させる第1および第2の3相コイルを有し、前記第1および第2の3相コイルの対応する各相コイルは隣接して配置されている構成を採用することもできる。
本発明では、電機子に用いる3相コイルを導電線を筒状に巻いて形成するため、コイルの断面2次モーメントを大きくとることができ、コイルの剛性、特に、曲げ、せん断剛性が高まる。また、導電線を筒状に整列多層巻きし、かつ、接着剤で固め、電気絶縁性の部材を介して端面を互いに結合することで、コイル自体の剛性が飛躍的に高まる。
このように形成された3相コイルの外周面に対向する位置に磁気回路を構成するための磁石を対向配置し、かつ、同じ極性の磁極が対向するように配置すると、互いに対向する磁石の磁束の向きは相反しているため、磁束は磁石に近い位置にあるコイルには到達するが、3相コイルの内部では磁束密度が非常に小さくなる。
対向する磁石の一方の磁束とコイルとの間で発生する力の向きと、他方の磁束とコイルとの間で発生する力の向きとは同じ向きとなり、これがリニアモータの推力となる。
非磁性で導電性を有する補強部材は、3相コイルの内周を支持し、剛性がアップしたコイルをさらに補強する。この補強部材は、導電性を有し、3相コイルの発生する磁束が通過するため、誘導電流が流れるが、磁石からの磁束が届かないコイル内部にあるため、推力とは逆方向の力がほとんど発生しない。
本発明では、上記のような構造を採用したことで、アルミニウム合金や銅合金当の熱伝導率の高い金属材料を補強部材に使用することが可能となる。したがって、コイルで発生する熱が高熱伝導率の材料で形成された補強部材を通じて外部に効率よく放出される。
さらに、本発明では、3相コイルに対して逆位相相の関係にある3相コイルを各相コイルに隣接して配置すると、互いに隣接するコイルの内部では、相反する向きの磁束が発生し、互いに打ち消し合い、補強部材を通過する磁束が大幅に減少し、補強部材に誘導電流がほとんど流れなくなる。この結果、補強部材に磁石からの磁束が到達したとしても、推力とは逆方向の力の発生を大幅に抑えることができる。また、渦電流損失を回避でき、モータの効率低下を防ぐことができる。
本発明によれば、電機子部分の剛性を大幅に向上させることができる。
また、本発明によれば、コイルからの熱を効率良く放出でき、温度上昇が抑制されたリニアモータが得られる。
さらに、本発明によれば、電機子部分が大幅に軽量化されたリニアモータが得られる。
また、本発明によれば、推力の変動が大幅に抑制されたリニアモータが得られる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
第1の実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係るリニアモータの構造を示す斜視図である。
図1に示すように、リニアモータ1は、可動部2と固定部50とを有する。なお、本実施形態では、可動部2が電機子となっている。
固定部50は、ヨーク51と、ヨークに保持された複数の永久磁石60とを有する。
ヨーク51は、互いに対向する平面をもつ、所定の間隔で対向する対向部51A,51Bと、これらに垂直に配置され直動方向A1およびA2に沿って対向部51A,51Bの一端部を連結する連結部51Cとからなる。なお、直動方向A1,A2は可動部2の運動する方向である。対向部51A,51Bの間隔は、補強部材20の剛性を確保でき相互の永久磁石からの磁束が影響しない程度の大きさとする。
対向部51A,51Bおよび連結部51Cは、たとえば、鉄などの強磁性体材料で一体に形成されている。対向部51A,51Bまたは連結部51Cの外側面がベースなどに固定される。なお、対向部51A,51Bおよび連結部51Cは、別体としてもよい。また、連対向部51A,51Bに強磁性体を用い、連結部に非磁性体を用いる構成としてもよい。また、ヨーク51は、軽量化の観点から、アルミ二ウム合金等の比強度の高い軽量の金属や強化プラスチックなどの非磁性材料を用いてもよい。
永久磁石60は、外形が長方形状の平板状に形成されており、各永久磁石60は同じ寸法を有する。
これらの永久磁石60は、対向部51A,51Bの各対向面に直動方向A1,A2に沿って配列されている。永久磁石60は、直動方向A1,A2に沿って磁極の極性が交互に反転する、すなわち、N極、S極、N極、S極となるように配列されている。さらに、対向部51A側と対向部51Bとで対向する永久磁石60は、同じ極性の磁極が対向するように配置されている。
図2は、可動部2の構造を示す斜視図である。
図2に示すように、可動部2は、コイル結合体3と、補強部材20と、保持部材10とを有する。
保持部材10は、プレート状の部材からなり、たとえば、ステンレス、アルミ二ウム合金等の金属で形成されている。保持部材10は、コイル結合体3を保持する役割を果たす。この保持部材10は、図示しないガイド機構によって直動方向A1およびA2に移動自在に支持されている。
コイル結合体3は、3相コイル3A,3B,3Cからなる。この各コイル3A,3B,3Cは、たとえば、電気絶縁材料で被覆された導電線にウエット状態の接着剤を塗布し、これを筒状に整列多層巻きし、接着剤を硬化させて固めたものである。コイル3A,3B,3Cは、断面の輪郭形状が長方形状であり、永久磁石60に対向する各辺がそれ以外の辺よりも長くなっている。また、中央部に輪郭が長方形状の中空部をもつ。
筒状の3相コイル3A,3B,3Cをそれぞれ形成したのち、非磁性材料からなる電気絶縁性部材9によって端面同士が互いに結合される。電気絶縁性部材9は、たとえば、ガラスエポキシ樹脂や硬質アルマイト処理されたアルミ合金である。
なお、3相コイル3A,3B,3Cの巻き方向は、すべて同じである。
また、3相コイル3A,3B,3Cを上記構成とすることにより、断面2次モーメントを大きくとることができ、3相コイル3A,3B,3Cコイルの剛性、特に、曲げ、せん断剛性が高まる。
補強部材20は、可動部2に必要な剛性を得るために設けられている。補強部材20は、四角柱状の部材からなり、3相コイル3A,3B,3Cの中空部に嵌合し、3相コイル3A,3B,3Cの内周を支持する。補強部材20の断面の輪郭形状は、長方形状であり、3相コイル3A,3B,3Cの中空部の形状と合致している。
補強部材20は、コイル結合体3の中空部に嵌合挿入され、電気絶縁性部材9と同様の材料で固定される。なお、コイル結合体3をあらかじめ所定精度で形成することができるので、組み立ては非常に容易である。
補強部材30は、非磁性でかつ導電性を有する材料で形成されている。非磁性でかつ導電性を有する材料としては、たとえば、ステンレス、カーボングラファイト、アルミ二ウム合金、銅合金などが挙げられる。この補強部材30には、3相コイル3A,3B,3Cから発生する熱を効率良く外部へ放出する観点から、できるだけ熱伝導性が高い材料を用いるのが好ましく、アルミ二ウム合金や銅合金等の金属が最適である。
図3に示すように、補強部材20は、長手方向においてコイル結合体3の全長よりも長く、補強部材20の端部20eは、コイル結合体3の両端部から突き出ている。補強部材20の両端部20eは、スペーサ25を介して上記した保持部材10にボルト30によって締結されている。スペーサ25には、アルミ二ウム合金等の熱伝導性が高い非磁性の材料を用いる。補強部材20をスペーサ25を介して保持部材10に連結すると、保持部材10はコイル結合体3の対向する外周面を全面的に保持した状態となる。
このような構造により、3相コイル3A,3B,3Cで発生した熱は、補強部材20に伝わり、スペーサ25を介して保持部材10に伝導可能となっている。また、3相コイル3A,3B,3Cで発生した熱は保持部材10へ直接伝導可能となっている。したがって、3相コイル3A,3B,3Cで発生した熱を外部へ効率良く放出することが可能となる。
3相コイル3A,3B,3Cは、断面の輪郭形状が長方形状となっているため、図4に示すように、互いに対向する永久磁石60の対向面60fは、コイル結合体3の外周面3fに対して所定の空隙をもって対向しており、対向面60fと外周面3fは略平行である。
次に、上記構成のリニアモータ1の作用について図5を参照して説明する。
図5に示すように、直動方向A1,A2に関して、一対の磁極、すなわち、2個の永久磁石60の寸法と、3相コイル3A,3B,3Cの寸法とが略一致する。
3相コイル3A,3B,3Cを間にして、対向する永久磁石60,60の磁束BFは、磁極の極性が同じであることから、対向している永久磁石60,60の一方から他方へはほとんど向かわず、主に隣接する永久磁石60,60へ向かう。
したがって、図5からわかるように、永久磁石60の磁束BFは、永久磁石60の表面60f付近に主に分布し、3相コイル3A,3B,3Cの内部へは到達しにくい。
3相コイル3A,3B,3Cへそれぞれ位相が120度づつ異なるU相、V相、W相の3相交流を供給すると、ヨーク51A側の3相コイル3A,3B,3Cに流れる電流の方向と、ヨーク51B側の3相コイル3A,3B,3Cに流れる電流の方向は逆向きであり、かつ、ヨーク51A側の3相コイル3A,3B,3Cを貫く磁束BFの向きと、ヨーク51B側の3相コイル3A,3B,3Cを貫く磁束BFの向きとは逆になる。このため、ヨーク51A側とヨーク51B側とには、同じ向きの推力が発生する。
3相コイル3A,3B,3Cに電流が流れると、電磁誘導により磁界が発生し、補強部材20に誘導電流が流れる。アルミ二ウム合金等の電気抵抗の低い金属を補強部材20に用いると、より大きな誘導電流が流れる。このとき、3相コイル3A,3B,3C内に達する永久磁石60の磁界の磁束密度が大きいと、推力とは逆方向の力が発生する。
この推力とは逆方向の力の発生を防ぐためには、永久磁石60の表面60fと、これに対向する補強部材20の表面20fとの距離をLdとすると、距離Ldをある程度確保する必要がある。
たとえば、本実施形態の構造においては、補強部材20にアルミ二ウム合金を用いた場合、補強部材20の表面20fに入射する磁束BFの密度が永久磁石60の表面60fの中央における磁束密度の1/2以下となるように距離Ldを設定すれば、ほとんど影響のない状態となる。
以上のように、本実施形態によれば、3相コイル3A,3B,3C自体の剛性を高めた上に、3相コイル3A,3B,3Cの内部に芯として非磁性の補強部材20を設けることで、電機子がコアレスであっても、剛性を飛躍的に高めることが可能となる。この結果、リニアモータ1を駆動制御する際に、制御ループゲインを高めることが可能となり、外乱に強いナノレベルの位置決め制御に対応可能となる。
また、3相コイル3A,3B,3Cを筒状とし、これを同じ極性の磁極が対向する永久磁石60の間に配置することで、アルミ二ウム合金等の電気抵抗の低い材料を補強部材20に用いて大きな誘導電流が流れたとしても、コイル内部における永久磁石60からの磁束BFの影響が非常に小さいので推力とは逆方向の力の発生を最小限に抑えることができる。この結果、リニアモータ1の推力変動を大幅に抑制することができる。
さらに、本実施形態では、アルミニウム合金や銅合金等の熱伝導率の高い金属材料を補強部材20に使用することが可能となるので、3相コイル3A,3B,3Cをコイルで発生する熱が高熱伝導率の材料で形成された補強部材を通じて外部に効率よく放出される。この結果、リニアモータの温度上昇の抑制や熱変形による位置決め精度の低下を防ぐことが可能となる。
また、本実施形態では、補強部材20にアルミ二ウム合金や銅合金などの電気抵抗の低い材料を使用するため、補強部材20に電気抵抗の高い材料を用いる場合に比べて、3相コイル3A,3B,3Cと補強部材20との相互インダクタンスを小さくすることができ、リニアモータ1の電気的応答性を向上させることができる。
第2の実施形態
図6は、本発明の第2の実施形態に係るリニアモータの可動部の構造を示す斜視図である。なお、本実施形態に係るリニアモータの基本的な構成は第1の実施形態のリニアモータ1と同様である。また、図6において、第1の実施形態と同一構成部分は同一の符号を使用している。
図6に示す可動部2Aは、3相コイル3A1,3B1,3C1と、3相コイル3A2,3B2,3C2からなるコイル結合体30を備えている。各相のコイル3A2,3B2,3C2は、各相のコイル3A1,3B1,3C1にそれぞれ隣接して配置されている。
3相コイル3A1,3B1,3C1と3相コイル3A2,3B2,3C2は、上述した実施形態の3相コイル3A,3B,3Cと同様の構成である。コイル結合体30も上述した実施形態と同様に形成される。
3相コイル3A2,3B2,3C2は、3相コイル3A1,3B1,3C1に対して逆位相、すなわち、位相が180度異なる磁界を発生する。
次に、可動部2Aを備えるリニアモータの作用について説明する。
図7に示すように、2組の3相コイル3A1,3B1,3C1および3相コイル3A2,3B2,3C2は、2対の磁極、すなわち、4個の隣り合う永久磁石60に対向する。直動方向A1およびA2に関して、4個の永久磁石60の寸法と、6個のコイルの寸法とが略同じである。
たとえば、3相コイル3A1,3B1,3C1と3相コイル3A2,3B2,3C2の巻き方向が同じ場合には、U相、V相、W相の3相交流を3相コイル3A1,3B1,3C1へ供給し、3相コイル3A2,3B2,3C2へは、3相交流と位相が180度異なる-U相、-V相、-W相の3相交流を供給する。これにより、図7に示すように、コイル3A1,3A2、コイル3B1,3B2およびコイル3C1,3C2には、それぞれ逆向きの磁界が発生する。これらは、逆位相の関係にあるため、磁界の磁束は互いに打ち消しあう。
この結果、コイル内に存在する補強部材20に発生する誘導電流を抑制することができる。補強部材20に流れる誘導電流を抑えることができるため、補強部材20と永久磁石60との距離を短縮することができる。さらに、渦電流損を低下させることができ、モータ効率の低下を防ぐことができる。
また、コイル3A1,3A2、コイル3B1,3B2およびコイル3C1,3C2内から漏れる磁束が抑制されるため、永久磁石60の形成する磁場への乱れを少なくできまた、コイルの発生する磁束によるヨーク51の磁気飽和を防ぐことができる。
なお、3相コイル3A2,3B2,3C2と3相コイル3A1,3B1,3C1とが発生する磁界を逆位相とするには、3相コイル3A2,3B2,3C2と3相コイル3A1,3B1,3C1の巻き方向を逆にして同相の3相交流を印加してもよいし、コイルの結線方法を変えることで対応してもよい。
図8は、上記した第2の実施形態の変形例を示す図である。
図8に示すように、コイル3A1,3A2、コイル3B1,3B2およびコイル3C1,3C2の組の寸法を2個の磁石60の寸法と略同じとし、各コイルの組を60度または120度の位相分異ならせた配置とする。各コイルの組に上記と同様に磁界を発生させることにより、同様の作用、効果が得られる。
図9は、補強部材の他の構造例を示す断面図である。
上述した第1および第2の実施形態では、補強部材20は中実の四角柱状の部材とした。
図9に示す補強部材20Bは、放熱性を高めるために、上記した直動方向A1およびA2に沿って貫通する貫通穴20Baが形成されている。貫通穴20Baを設けることにより、補強部材20Bの空気に触れる面積が増加し、コイルで発生した熱を放出しやすくなる。また、この貫通穴20Baに空気などの冷却媒体を供給すればさらに冷却効率が高まる。
図10は、補強部材のさらに他の構造例を示す断面図である。
図10に示す補強部材20Cは、直動方向A1およびA2に沿って貫通する貫通穴20Caが形成されているとともに、貫通穴20Caの内壁に放熱用にフィン20Cfが形成されている。フィン20Cfを形成することで、さらに効率よく放熱することができる。
図11は、本発明の第3の実施形態に係るリニアモータの斜視図である。
図11に示すように、リニアモータ100は、可動部150と固定部101とを有する。本実施形態では、固定部101が電機子となっている。
固定部101は、コイル結合体103と、補強部材120と、保持部材110とを有する。
保持部材110は、プレート状の部材からなり、たとえば、ステンレス、アルミ二ウム合金等の金属で形成されている。保持部材110は、コイル結合体103を保持する役割を果たす。この保持部材110は、図示しないベース等に固定される。
コイル結合体103は、3相コイル103A,103B,103Cが複数集まったものである。各コイル103A,103B,103Cは、電気絶縁部材109を介して結合されている。コイル結合体103の形成は、第1の実施形態で説明したコイル結合体3と同様である。ただし、3相コイル103A,103B,103Cが多数結合され、全長が長い点で異なる。
補強部材120は、図12に示すように、コイル結合体103内を貫通しており、コイル結合体103に固定されている。
補強部材120は、コイル結合体103の強度を補う機能をもつが、主に、3相コイル103A,103B,103Cからの熱を外部へ放出する役割を担っている。補強部材120の中心部には、後述するように、冷却媒体が流れる流路120pが長手方向を貫通している。
この補強部材120には、第1の実施形態で説明した補強部材20と同様の形成材料が用いられる。
図12に示すように、補強部材120の端部120eは、コイル結合体103の両端部から突き出ており、スペーサ125を介して保持部材110に図示しない締結部材によって締結されている。スペーサ125には、アルミ二ウム合金等の熱伝導性が高い非磁性の材料を用いる。
図12に示すように、保持部材110は、コイル結合体103の対向する外周面を全面的に保持している。このため、比較的長い全長をもつ固定部101の剛性が飛躍的に高まる。
可動部150は、ヨーク151と、ヨークに保持された複数の永久磁石106とを有する。この可動部150は、図示しないガイド機構によって直動方向A1およびA2に移動自在に支持されている。
ヨーク151は、図13に示すように、互いに対向する平面をもつ所定の間隔で対向する対向部51A,151Bと、これらに垂直に配置され直動方向A1およびA2に沿って対向部151A,151Bの一端部を連結する連結部151Cとが一体に形成されている。なお、対向部151A,151B、連結部151Cを別体としてもよい。
ヨーク151は、鉄などの磁性材料で形成することができるが、可動部150の軽量化の観点から、アルミ二ウム合金等の比強度の高い軽量の非磁性の材料を用いることができる。
また、対向部151A,151Bに磁性材料を用い、連結部151Cにアルミ二ウム合金等の非磁性材料を用いても良い。
永久磁石106は、外形が長方形状の平板状に形成されており同じ寸法を有する。永久磁石106は、ヨーク151の対向部151A,151Bの各対向面に固定されている。各対向面に2個ずつ設けられている。また、同じ対向面に設けられた永久磁石106は、磁極の極性が異なるように配置されている。さらに、対向部151A側と対向部151Bとで対向する永久磁石106は、同じ極性の磁極が対向するように配置されている。
3相コイル103A,103B,103Cは、断面の輪郭形状が長方形状となっているため、図13に示すように、互いに対向する永久磁石106の対向面106fは、コイル結合体103の外周面103fに対して所定の空隙をもって対向しており、対向面106fと外周面103fは略平行に配置されている。
次に、上記リニアモータ100の作用について図14を参照して説明する。
図14に示すように、直動方向A1,A2に関して、一対の磁極、すなわち、2個の永久磁石106の寸法と、3相コイル103A,103B,103Cの寸法とが略一致する。
3相コイル103A,103B,103Cを間にして、対向する永久磁石106,106の磁束BFは、磁極の極性が同じであることから、対向している永久磁石106,106の一方から他方へはほとんど向かわず、主に隣接する永久磁石106へ向かう。
したがって、図14からわかるように、永久磁石106の磁束BFは、永久磁石106の表面付近に主に分布し、対向する3相コイル103A,103B,103Cの内部へは到達しにくい。
上記の状態において、3相コイル3A,3B,3Cに電流を供給する。電流は、すべてのコイルに流れる。これにより、電磁誘導により磁界が発生し、補強部材120に誘導電流が流れる。アルミ二ウム合金等の電気抵抗の低い金属を補強部材120に用いると、より大きな誘導電流が流れる。このとき、3相コイル103A,103B,103C内に達する永久磁石60の磁界の磁束密度が大きいと、推力とは逆方向の力が発生する。
この推力とは逆方向の力の発生を防ぐためには、永久磁石106と補強部材120との距離Ldを第1の実施形態と同様に確保する。これにより、第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。
次に、リニアモータ100の冷却方法の一例を図15を参照して説明する。
図15に示すように、補強部材120に形成された流路120pの一端に冷却媒体を供給する供給源300を接続し、冷却媒体CLを供給する。冷却媒体CLには、たとえば、空気等と比べて熱容量の高い水等の液体を用いる。
流路120pの一端から供給された冷却媒体CLは、補強部材120内を通過し、熱を効率よく吸収し、流路120pの他端から排出される。
本実施形態では、補強部材120が固定されているので、液体の冷却媒体CLを用いた強制冷却を容易に行うことができる。この結果、リニアモータの温度管理が容易にでき、ナノ位置決め制御等の精密制御において特にメリットがある。
第4の実施形態
図16は、本発明の第4の実施形態に係るリニアモータの構成を示す図である。
なお、本実施形態に係るリニアモータの基本的な構成は第3の実施形態のリニアモータ100と同様である。また、図16において、第3の実施形態と同一構成部分は同一の符号を使用している。
図16に示すリニアモータ100Aは、第3の実施形態と同様に、固定部が電機子であり、可動部に永久磁石が設けられている。リニアモータ100Aは、複数の3相コイル103A1,103B1,103C1と、3相コイル103A2,103B2,103C2からなるコイル結合体103−Aを備えている。また、各相のコイル103A2,103B2,103C2は、各相のコイル103A1,103B1,103C1にそれぞれ隣接して配置されている。
3相コイル103A1,103B1,103C1と3相コイル103A2,103B2,103C2は、上述した実施形態の3相コイル103A,103B,103Cと同様の構成である。
3相コイル103A2,103B2,103C2は、3相コイル103A1,103B1,103C1に対して位相が180度異なる磁界を発生する。
また、ヨーク151A,151Bには、それぞれ4個の永久磁石160が磁極の極性が直動方向A1およびA2に沿って交互に反転するように配列され、かつ、対向する永久磁石160の磁極の極性が同じになるように固定されている。
図16に示すように、2組の3相コイル103A1,103B1,103C1および3相コイル103A2,103B2,103C2は、2対の磁極、すなわち、4個の隣り合う永久磁石60に対向する。直動方向A1およびA2に関して、4個の永久磁石60の寸法と、6個のコイルの寸法とが略同じである。
上記構成のリニアモータ100Aにおいて、U相、V相、W相の3相交流を3相コイル103A1,103B1,103C1へ供給し、3相コイル103A2,103B2,103C2へは、3相交流と位相が180度異なる-U相、-V相、-W相の3相交流を供給する。コイル103A1,103A2、コイル103B1,103B2およびコイル103C1,103C2には、それぞれ逆向きの磁界が発生する。この結果、第2の実施形態と同様の作用、効果が得られる。
第5の実施形態
図17は、本発明の第5の実施形態に係るリニアモータの構成を示す図である。
図18は、図17に示すリニアモータの可動部および固定部の構造を示す断面図である。
本実施形態に係るリニアモータは、電機子が固定部であり、可動部に永久磁石が設けられている。また、本実施形態に係るリニアモータの基本的な構成は、第3の実施形態または第4の実施形態と同様である。
本実施形態では、ヨーク151−Aを外形が四角の筒状に形成している。ヨーク151−Aの内面には、2組の対向する永久磁石106が設けられている。これらの永久磁石106がコイル結合体103の4つの外周面にそれぞれ対向している。
このように構成することにより、コイルが利用する永久磁石の利用効率が高まり、推力等を向上させることができる。
なお、上述した実施形態では、コイルの断面形状を長方形状とし、永久磁石を平板状に形成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、コイルの断面形状は、正方形、円形、長円形状などの他の形状でもよく、永久磁石はこれらの形状に応じて湾曲した形状とすることができる。また、ヨークの形状もこれに合わせて変更可能である。
また、上述した実施形態では、コイルを筒状に形成した後に、コイル内に補強部材を挿入する構成としたが、電気絶縁された導電線を補強部材の周囲に直接巻いてもよい。
本発明の一実施形態に係るリニアモータの構造を示す斜視図である。 可動部の構造を示す斜視図である。 可動部の側面図である。 可動部および固定部の直動方向に直交する平面に沿った断面図である。 リニアモータの作用を説明するための図である。 本発明の第2の実施形態に係るリニアモータの可動部の構造を示す斜視図である。 図6に示した可動部をもつリニアモータの作用を説明するための図である。 第2の実施形態の変形例を示す図である。 補強部材の他の構造例を示す断面図である。 補強部材のさらに他の構造例を示す断面図である。 本発明の第3の実施形態に係るリニアモータの斜視図である。 図11に示すリニアモータの側面図である。 図11に示すリニアモータの可動部および固定部の直動方向に直交する平面に沿った断面図である。 図11に示すリニアモータの可動部および固定部の水平面方向の断面図である。 図11に示すリニアモータにおける冷却方法の一例を示す断面図である。 本発明の第4の実施形態に係るリニアモータの構成を示す図である。 本発明の第5の実施形態に係るリニアモータの構成を示す図である。 図17に示すリニアモータの可動部および固定部の構造を示す断面図である。
符号の説明
1,100…リニアモータ
2…可動部
3…コイル結合体
3A,3B,3C…3相コイル
9…樹脂
10…保持部材
20…補強部材
25…スペーサ
50…固定部
51,151…ヨーク
60…永久磁石

Claims (8)

  1. ステータとして機能し、内空を有する固定部と、
    電機子として機能し、前記固定部の前記内空を長手方向に移動可能な可動部と
    を有し、
    前記可動部は、
    断面が四角柱状の、長手方向に延び、非磁性体かつ導電性の材料で形成された、補強部材と、
    前記補強部材の外周に嵌装されるコイル結合体と
    を有し、
    前記コイル結合体は、3相コイルとして機能する連接された3個のコイルを有し、
    当該3個のコイルのそれぞれが、断面の外形が矩形でかつ内形が前記補強部材の矩形の外形の外周に嵌装可能な矩形の中空を有するように導電線を長手方向に筒状に巻回されて構成されており、かつ、前記3個のコイルの巻回方向は同じであり
    記固定部は、
    前記可動部が長手方向に移動する当該固定部の前記内空を規定するように対向し、対向する面が平面であり、長手方向に沿って延びる第1および第2の対向部を有するヨークと、
    前記ヨークを構成する前記第1の対向部の前記第2の対向面に対向する対向面に設けられた、第1の複数の磁石と、
    前記ヨークを構成する前記第2の対向部の前記第1の対向面に対向する対向面に設けられた、第2の複数の磁石と、
    を有し、
    前記第1の複数の磁石および前記第2の複数の磁石はそれぞれ、前記外形が矩形のコイル結合体の前記3個の平坦なコイルの外周面に対向し、
    前記第1の複数の磁石と、対向して配置された前記第2の複数の磁石とはそれぞれ、磁極が同じであり、
    前記補強部材の外周に嵌装された前記コイル結合体に流れる電流による電磁誘導による磁界に起因して前記補強部材に流れる誘導電流による推力とは逆方向の力を抑制するため、前記補強部材の表面を前記対向する磁石の表面から所定距離離間されており、
    前記補強部材に嵌装された前記コイル結合体を有する前記可動部が、前記コイル結合体の前記3相コイルに印加される電流に応じて、前記固定部の前記内空を長手方向に移動する、
    コアレス・リニアモータ。
  2. 前記3相コイルは、各相コイルが筒状に整列多層巻きされ、かつ、接着剤で固められており、電気絶縁性の部材を介して端面が互いに結合されている、
    請求項1に記載のコアレス・リニアモータ。
  3. 前記補強部材は、非磁性体の金属で形成されている、
    請求項1に記載のコアレス・リニアモータ。
  4. 前記補強部材は、アルミニウム合金または銅合金で形成されている、
    請求項3に記載のコアレス・リニアモータ。
  5. 前記補強部材は、長手方向の内部に冷却用流体が通過可能な貫通路を有する、
    請求項1〜4のいずれかに記載のコアレス・リニアモータ。
  6. 前記補強部材は、前記3相コイルが発生した熱を外部に放出する放熱手段を有する、
    請求項1〜5のいずれかに記載のコアレス・リニアモータ。
  7. 前記補強部材がアルミニウム合金で形成されているとき、前記補強部材は、当該補強部材の表面に入射する磁束密度が前記磁石の表面の中央における磁束密度の1/2以下となる距離だけ前記磁石から離隔している、
    請求項4に記載のコアレス・リニアモータ。
  8. 前記電機子を構成する前記コイル結合体は、互いに逆位相の磁界を発生させる第1および第2の3相コイルを有し、
    前記第1および第2の3相コイルの対応する各相コイルは隣接して配置されている、
    請求項1に記載のコアレス・リニアモータ。
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