JP4719862B2 - カルシウム吸収促進剤 - Google Patents

カルシウム吸収促進剤 Download PDF

Info

Publication number
JP4719862B2
JP4719862B2 JP2004288235A JP2004288235A JP4719862B2 JP 4719862 B2 JP4719862 B2 JP 4719862B2 JP 2004288235 A JP2004288235 A JP 2004288235A JP 2004288235 A JP2004288235 A JP 2004288235A JP 4719862 B2 JP4719862 B2 JP 4719862B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gtp
calcium
calcium absorption
promoter
derivative
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2004288235A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006096731A (ja
Inventor
田 恭 治 池
松 聖 史 平
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Health Sciences Foundation
Original Assignee
Japan Health Sciences Foundation
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Health Sciences Foundation filed Critical Japan Health Sciences Foundation
Priority to JP2004288235A priority Critical patent/JP4719862B2/ja
Publication of JP2006096731A publication Critical patent/JP2006096731A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4719862B2 publication Critical patent/JP4719862B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ−GTP)またはカルシウムの吸収促進活性を有するγ−GTPの誘導体を有効成分とする、カルシウムの吸収促進剤およびその医薬用途に関する。
背景技術
γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-Glutamyl transpeptidase、以下「γ−GTP」という。)は、ペプチドのN末端のグルタミン酸を他のペプチドまたはアミノ酸に転移する作用を有する酵素である。γ−GTPは、腎臓、膵臓、および肝臓などに存在し、特に、腎臓では近位尿細管に多く存在することが知られている。一方、通常の場合、カルシウム再吸収に関与する遠位尿細管において、γ−GTPが存在することは確認されていない。
γ−GTPについて種々の生理学的機能が知られている。例えば、γ−GTPの生理的機能の一つとして、抗酸化物質であるグルタチオンの生成に関与していることが明らかとされている。グルタチオンは肝ミクロソームにおける薬物代謝などに重要な役割を有している。また、血中γ−GTP活性は肝疾患または胆道系疾患などにおいて高値となるため、肝疾患などのスクリーニングの指標としても利用されている。
また、γ−GTPの別の生理的機能として、破骨細胞の分化誘導作用が知られている。そして、γ−GTPを発現させることにより、骨組織の脆弱化を伴う疾患のモデル動物を作製できることが、本発明者らの実験から明らかとされている。
一方、カルシウムは、支持組織である骨組織に主に存在するが、細胞応答、分泌現象、細胞分裂など種々の生命現象における調節因子として重要な役割を有している。そして、生体におけるカルシウム代謝のバランスが崩れると重篤な疾患が生ずる場合があり、とりわけ、カルシウムの喪失は老化との関連が深く、低カルシウム血症、骨粗鬆症、高血圧、または癌などの生活習慣病を加速させる要因となる。したがって、カルシウム代謝障害およびこれに起因する疾患を予防または治療するため、優れたカルシウム代謝制御機能を有する薬剤の創出が望まれるといえる。
発明の概要
本発明者らは、今般、γ−GTPが顕著なカルシウムの吸収促進活性を有するとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
従って、本発明は、カルシウムの吸収促進剤の提供をその目的としている。
そして、本発明によるカルシウムの吸収促進剤は、γ−GTPまたはカルシウムの吸収促進活性を有するγ−GTPの誘導体を有効成分として含んでなるものである。
本発明によれば、尿中へのカルシウムの排出を抑制し、血中カルシウム濃度を上昇させることが可能であり、カルシウム代謝障害に基づく疾患の治療を有利に行うことができる。また、本発明によれば、カルシウムの吸収促進剤のスクリーニングにおいてγ−GTPを指標とすることが可能であり、これにより新規なカルシウムの吸収促進剤の探索を効率的に行うことができる。
発明の具体的説明
γ−GTPまたはカルシウムの吸収促進活性を有するγ−GTP誘導体
本発明によるカルシウムの吸収促進剤の有効成分であるγ−GTP とは、全ての脊椎動物のγ−GTP を含む概念であり、好ましくはマウスまたはヒト由来のものが挙げられる。マウスまたはヒト由来のγ−GTPのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は既に公知である。例えば、マウスγ−GTPのヌクレオチド配列は配列番号1に示され、そのアミノ酸配列は配列番号2に示される。従って、本発明の好ましい態様によれば、γ−GTPは配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するものである。また、ヒトγ−GTPのヌクレオチド配列は配列番号3に示され、そのアミノ酸配列は配列番号4に示される。従って、本発明の好ましい態様によれば、γ−GTPは配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するものである。
また、マウスまたはヒト以外の脊椎動物由来のγ−GTP についても、構造が明らかとされているものがある。例えば、ラットのγ−GTPの構造に関しては、GenBank Acc.#X15443、M33822、J05196、M12029、M31056を参照することができる。このように既に開示された配列情報に基づき、γ−GTP特異的なプライマーあるいはプローブを作製し、該プライマーあるいはプローブを用いて脊椎動物の種々のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、構造が未知のγ−GTPについても容易にクローニングすることができる。これらクローニングの方法は、例えばMolecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)などに詳しく述べられており、具体的には、ハイブリダイゼーションを用いる方法、またはPCRを用いる方法などが挙げられる。
また、クローニングされたcDNAの発現ベクターへの挿入、および該発現ベクターの原核性生物細胞または真核性生物細胞への導入は、いずれも前記Molecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)などに従い、当業者であれば容易に行える。さらに、上記発現ベクター導入細胞の培養上清中に産生されたγ−GTPは、亜鉛キレートアガロース、コンカナバリンAアガロース、セファデックスG−150などを用いる公知の方法によって、容易に精製することができる。
本発明において「カルシウムの吸収促進活性を有するγ−GTPの誘導体(以下、単に「γ−GTP誘導体」ともいう。)」とは、いわゆる改変タンパク質またはペプチド、生体内に存在するアレル変異体などであって、カルシウムの吸収促進活性を有するものを意味する。このようなγ−GTP誘導体としては、例えば、配列番号2または4に示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が、欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、かつカルシウムの吸収促進活性を有する蛋白質が挙げられる。また、γ−GTP誘導体の好ましい例として、保存的置換されたものが挙げられる。一般に蛋白質の機能を維持するためには、置換するアミノ酸が置換前のアミノ酸と類似の性質を有するものであることが好ましい。このようなアミノ酸残基の置換は保存的置換と呼ばれる。
上記誘導体をコードするDNAは、例えば部位特異的突然変異導入法( Nucleic Acid Res. 10, p6487 (1982)、Methods in Enzymology, 100, p468 (1983)、Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、PCR A Practical Approach IRL Press p200(1991))などの手法により、当業者であれば容易に作製することができる。また、このようにして作製されたDNAからタンパク質への発現は、上記γ−GTPに関する手法と同様にして行うことができる。
本発明にあっては、γ−GTPまたはγ−GTP誘導体は、腎臓におけるカルシウムの再吸収を亢進することを一つの特徴とするものである。従って、本発明の好ましい態様によれば、カルシウムの吸収促進剤は、腎臓におけるカルシウムの再吸収を亢進することを特徴とするものである。
「カルシウムの吸収促進活性」は、例えば、γ−GTPまたはγ−GTP誘導体を、被検動物に対して直接に投与し、または被検動物内においてにこれを発現させ、その後、血中カルシウム濃度、尿中カルシウム排泄、および/または腎臓におけるカルシウム吸収に関与する分子の発現を測定することにより、確認することができる。
血中カルシウム濃度の上昇および尿中カルシウム排泄の低下は、カルシウム吸収が促進されていることの指標となる。カルシウムの測定法としては、例えば、O−CPC法などを用いることができる。
また、カルシウム吸収に関与する分子としては、カルシウムトランスポーター(TRPV5、TRPV6など)、細胞内においてカルシウムを結合する蛋白質であるカルビンジン(Calbindin 9K,28Kなど)、カルシウム感知受容体(CaSR)などが挙げられる。これらの分子の発現量は、RT−PCRなどによりmRNAの発現量を測定することによって確認することができる。とりわけ、腎臓におけるカルシウム感知受容体の発現の低下は、カルシウムの再吸収が亢進していることの指標となる。
また、副甲状腺ホルモン(PTH)は血中カルシウム上昇作用を有することが知られている。そして、被検動物に対するγ−GTPまたはγ−GTP誘導体の投与後において、PTHレベルが正常値または低値を示すことは、血中カルシウム上昇作用がγ−GTPまたはγ−GTP誘導体のカルシウム吸収促進活性によるものであり、PTHが原因ではないことを示す指標となる。
また、上記被検動物は、特に限定されないが、例えば、マウス、ラット、ヒツジ、ニワトリ、ヤギ、ウシ、サル、イヌまたはネコなどを用いることが可能であり、好ましくはマウスである。
γ−GTP またはγ−GTP誘導体を被検動物に直接に投与する方法としては、例えば、静脈投与などの公知の方法を用いることができる。
また、γ−GTP またはγ−GTP誘導体を被検動物内において発現させる方法においては、例えば、後述の実施例にて用いられるCre-Loxpシステムと呼ばれる遺伝子組み換え技術を利用することができる。
Cre-Loxpシステムは、loxPと呼ばれる特例の塩基配列からなるDNAと、loxPを認識して遺伝子を組み換えるCreリコンビナーゼ(Cre)と呼ばれる酵素によって構成されることを特徴とする。Cre-Loxpシステムにあっては、まず、プロモーターの下流に、両端をloxPに挟まれた不活性蛋白質をコードする遺伝子を配置し、さらにその下流にγ−GTPまたはγ−GTP誘導体をコードする遺伝子を配置したコンストラクトを用意する。次に、このコンストラクトを被検動物に導入し、さらに被検動物においてCreを作用させる。これによりCreはloxPを認識してDNAを組み換える。その結果、loxP同士の接合が起こり、loxP間に挟まれた不活性蛋白質をコードする遺伝子が除去され、γ−GTPまたはγ−GTP誘導体をコードする遺伝子が発現可能となり、被検動物内においてγ−GTPまたはγ−GTP誘導体が発現される。ここで、上記不活性蛋白質は、Creを作用させる前は被検動物において発現し、Creを作用させた後は不活性蛋白質をコードする遺伝子が除去されることに伴いその発現を停止する。従って、上記不活性蛋白質は、被検動物中に上記コンストラクトが導入されていること、および上記コンストラクトにおける不活性蛋白質をコードする遺伝子が除去されていることの指標として用いることができる。上記不活性蛋白質は、被検動物の生理的機能に変化を生じさせず、かつ蛍光、発光などのシグナルを生成する蛋白質が好ましい。
Cre-Loxpシステムのメカニズムは以下の式に示される通りである。
上記コンストラクト([プロモーター]-(loxP)-[不活性蛋白質]-(loxP)-[γ−GTPまたはγ−GTP誘導体])は、例えば、以下の手法により作製することができる。プロモーターとしてはニワトリβアクチンプロモーター( Chicken β-actin Promoter)を用い、不活性蛋白質としては緑色蛍光蛋白質(EGFP(enhanced green fluorescence Protein))を用いる。また、上記コンストラクトに用いるγ−GTPまたはγ−GTP誘導体をコードする遺伝子は、当業者であれば、上述の方法に従ってcDNAライブラリーから容易に得ることができる。そして、図1に示されるベクター、すなわち、CMV IE enhancer + Chicken β-actin Promoterの下流にloxp配列にて挟んだEGFP+ Rabbit β- globlin poly A(pCXP-floxed EGFP)、さらにその下流にγ-GTPまたはγ-GTP誘導体のcDNAフラグメント + Rabbit β-globlin polyAが配置されているベクターを、常法に従って構築する。ここで、図1に示されるベクター中のpCXP-floxed EGFPは、Yoko Furukawa-Hibi et al., "FOXO forkhead transcription factors induce G2- Mcheckpoint in response to oxidative stress" JBC vol.277, 26729-26732, 2002の記載を参照として構築することができる。すなわち、plRES-EGFP(CLONETEC社)をpBS246(Invitrogen社)に挿入し、loxP-EGFP-pA-loxPの部位を切り出し、これをpCAGGSに挿入することにより、pCXP-floxed EGFPが得られる。
そして、図1に示されるベクターからSaII、HindIIIにて切り出すことにより、所望のコンストラクト([プロモーター]-(loxP)-[不活性蛋白質]-(loxP)-[γ−GTPまたはγ−GTP誘導体])を得る。
次に、上記コンストラクトを、例えば、マイクロインジェクション法などの公知の方法を用いて被検動物の受精卵前核に注入する。このコンストラクトを導入した細胞を体外での一晩程度の培養の後、代理母の卵管に移植し、これによって所望のコンストラクトが導入されたトランスジェニック動物を得ることができる。
次に、Chicken β-actin Promoterの下流にCreリコンビナーゼ遺伝子を配置したコンストラクトを常法により導入した、別のトランスジェニック動物を用意する。ここで、Creリコンビナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は公知である(Gene bank Acc.# X03453)。
そして、コンストラクト([プロモーター]-(loxP)-[不活性蛋白質]-(loxP)-[γ−GTPまたはγ−GTP誘導体])が導入されたトランスジェニック動物と、Creリコンビナーゼ遺伝子が導入されたトランスジェニック動物とを交配することにより、全身でCre−loxpシステムが働き、γ−GTPまたはγ−GTP誘導体が過剰発現するトランスジェニック動物を得ることができる。このトランスジェニック動物を被検動物として用いることにより、γ−GTPまたはγ−GTP誘導体のカルシウム吸収促進活性を確認することができる。
上記のようにして遺伝子組み換え技術を用いて製造される被検動物は、カルシウム代謝障害およびこれに起因する疾患のモデル動物としても用いることができる。このような疾患としては、例えば、高カルシウム血症、低カルシウム尿症、または低PTH血症などが挙げられる。従って、本発明の別の態様によれば、γ−GTPまたはカルシウムの吸収促進活性を有するγ−GTPの誘導体の発現が増強された非ヒト動物からなる、カルシウム代謝障害およびこれに起因する疾患のモデル動物が提供される。さらに、本発明の別の好ましい態様によれば、上記疾患は、高カルシウム血症、低カルシウム尿症、または低PTH血症である。さらに、本発明の別の好ましい態様によれば、上記モデル動物は、外来性のγ−GTPまたはカルシウムの吸収促進活性を有するγ−GTPの誘導体をコードする遺伝子を導入されたものである。さらに、本発明の別の好ましい態様によれば、上記モデル動物は、トランスジェニック動物である。
カルシウムの吸収促進剤およびその医薬用途
本発明によるカルシウムの吸収促進剤は、上述のように、γ−GTPまたはγ−GTP誘導体を有効成分として含んでなることを特徴とするものである。ここで、「有効成分として含んでなる」とは、所望する目的および用途に応じた担体を含んでいてもよいことは当然として、併用可能な他の成分を含有する場合も包含する意味である。
γ−GTPまたはγ−GTP誘導体は、カルシウム吸収促進活性を有するものである。従って、これらを有効成分として含んでなるカルシウム吸収促進剤は、カルシウム代謝障害およびこれに起因する疾患の予防または治療に用いることが可能である。さらに詳しくは、本発明によるカルシウム吸収促進剤は、低カルシウム血症、骨粗鬆症、高血圧、または癌などの生活習慣病に対する有効な治療薬となる。従って、本発明の好ましい態様によれば、カルシウムの吸収促進剤は、カルシウム代謝障害およびこれに起因する疾患の予防または治療に用いられるものである。さらに、本発明の好ましい態様によれば、カルシウムの吸収促進剤は、低カルシウム血症、骨粗鬆症、高血圧、または癌の予防または治療に用いられるものである。
本発明にあっては、γ−GTPまたはγ−GTP誘導体をそのままカルシウム吸収促進剤として用いてもよいが、他の成分などを含んでなる場合、γ−GTPまたはγ−GTP誘導体の含有量は、カルシウムの吸収促進剤の全量に対して、例えば、5〜95重量%とすることができる。
本発明によるカルシウムの吸収促進剤は、γ−GTPまたはγ−GTP誘導体を有効成分として用い、当該分野で通常行われている手法により製造することができる。従って、本発明の別の態様によれば、カルシウムの吸収促進剤を製造するための、γ−GTPまたはγ−GTP誘導体の使用が提供される。本発明によるカルシウムの吸収促進剤は、所期の作用効果を奏するものである限り、固形物、粉末、液体などの任意の形態とすることができ、さらに、所望により、顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などとすることができる。
また、本発明によるカルシウムの吸収促進剤の受容者への投与方法としては、例えば、経口投与、静脈注射、座薬としての投与、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹空内投与などが挙げられる。
また、本発明によるカルシウムの吸収促進剤の一日当たりの投与量は、受容者、受容者の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、他成分との組み合わせなどに依存して、当業者であれば適宜決定することができる。
また、γ−GTPは、カルシウムの吸収促進剤のスクリーニングのための指標としても使用することができる。すなわち、被検物質を非ヒト動物に投与し、この非ヒト動物においてγ−GTPの発現量または活性が増加すれば、被検物質は有効なカルシウム吸収促進活性を有することになる。従って、本発明の別の態様によれば、カルシウムの吸収促進剤のスクリーニング方法であって、被検化合物を非ヒト動物に投与し、非ヒト動物におけるγ−GTPの発現量または活性を測定し、γ−GTPの発現量または活性が増加した場合、前記被検物質はカルシウム吸収促進活性を有すると判定することを含んでなる、方法が提供される。このようなγ−GTPを指標とするカルシウム吸収促進剤のスクリーニング方法は、本発明においてγ−GTPの新たな生理機能を見出したことに伴って、初めて可能となったものである。そして、このスクリーニング方法により得られるカルシウム吸収促進剤は、低カルシウム血症、骨粗鬆症、高血圧、または癌などの生活習慣病の予防または治療において、有利に使用することができる。
上記スクリーニング方法に用いる非ヒト動物としては、特に限定されないが、例えば、マウス、ラットなどが挙げられる。また、被検物質の投与方法としては、特に限定されないが、例えば、静脈投与などの公知の投与方法または遺伝子導入技術を用いて上記非ヒト動物内で被検物質を発現させる方法などが挙げられる。また、上記スクリーニング方法において、γ−GTPの発現量または活性を測定する方法としては、当該技術分野において公知の測定方法を用いることが可能である。そして、γ−GTPの発現量を測定する方法としては、例えば、血中γ−GTP濃度などを酵素法により測定する方法、腎臓におけるγ−GTPの発現量をRT−PCRにより測定する方法などが挙げられ、γ−GTPの活性を測定する方法としては、例えば、以下の式に示される反応を利用する方法、すなわち、L−γ−グルタミル−3−カルボキシ−4−ニトロアニリドとγ−GTPとを反応させて5−アミノ−2−ニトロ安息香酸を生成させ、5−アミノ−2−ニトロ安息香酸の吸光度変化を測定することを含んでなる方法などが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
参考例1
γ−GTP (ganmma glutamyl transpeptidase)を過剰発現するマウスの作製
γ−GTPcDNAの単離
Mus Musculus γ−GTP(NCBI U30509)のN末端にkozac配列を配置し、さらにその両端にMfelsiteを配置したプライマーを設計した。各プライマーの塩基配列を次に示す。
Mfel1-GGT5':5'-ccgcaattgccaccatgaagaatcggtttc tgg-3'(配列番号:5)
Mfel1-GGT3':5'-ggcggggaacctgctggctactgacaattg-3'(配列番号:6)
C57BL6/crSlc(8w male)の両側腎臓を採取し、TRlzol(商標)Reagent(Invitrogen)を用いてtotal RNAを抽出した。このtotal RNAからRT-PCRにより約1.7kbのγ-GTP cDNA fragment(配列番号1のCDS 161-1867に相当)を得た。
Floxed EGFP-GGT トランスジェニックマウス作成
pCXP-floxed EGFP-GGTの構築
図1に示されるベクター、すなわち、CMV IE enhancer + Chicken β-actin Promoterの下流にloxp配列で挟んだEGFP(enhanced green fluorescence Protein) + Rabbit β- globlin poly A(pCXP-floxed EGFP)、さらにその下流に前述のγ-GTPcDNA fragment + Rabbit β-globlin polyAが配置されているベクター(pCXP-floxed EGFP-GGT)を常法に従って構築した。
ここで、pCXP-floxed EGFP-GGTを構成するpCXP-floxed EGFPは、次のようにして構築した。plRES-EGFP(CLONETEC社)をpBS246(Invitrogen社)に挿入し、loxP-EGFP-pA-loxPの部位を切り出した。これを大阪大学宮崎教授より供与を受けたpCAGGSに挿入した。
トランスフェクション
上記pCXP-floxed EGFP-GGTからSaII、HindIIIにて切り出したDNAフラグメント(floxed EGFP-GGT 約5.6kb)をC57BL6/crSlcの受精卵前核に注入した。その結果、65匹の産仔が得られた。産仔(生後4w)の尾の先端1mmを切り離し蛍光顕微鏡で観察すると65匹中14匹(=23%)にEGFPの発色が確認された。このようにして、Floxed EGFP-GGT トランスジェニックマウスを得た。これらのマウスの尾からDNAを抽出し、γ−GTPゲノム exon 5〜7にプライマーを設定し、PCRにて遺伝子の導入の有無を確認したところ、遺伝子導入が確認された。PCRに用いたプライマーの塩基配列を次に示す。
GGT 5':5'-ggtgttctgccgccaagggaagg-3'(配列番号:7)
GGT 3':5'-gagacacatcgacaaactttggg-3'(配列番号:8)
CAG−γ−GTP トランスジェニックマウス作成
常法に従って作成したChicken β-actin(CAG) Promoterの下流にCre gene(Gene bank Acc.#X03453)を配置した構築物を、マイクロインジェクション法を用いてマウス(C57BL6/crSlc)に導入した。このマウスが必要な構築物を保持していることを、下記に示すCre geneに設定したプライマーを用いて確認した。このプライマーによって、250bpの増幅産物が合成された。
Cre 5':5'-aggttcgttcactcatgga-3'(配列番号:9)
Cre 3':5'-tcgaccagtttagttaccc-3'(配列番号:10)
このようにして得られたCAG−Creトランスジェニックマウスを、Floxed EGFP-GGTトランスジェニックマウスと交配し、CAG−γ−GTP トランスジェニックマウスを得た。 上記両PCR陽性の固体の尾を1mm採取し、PBS 500μL中で組織を溶解しγGTP活性を測定し、野生型マウスと比較して高い活性を有することを確認した。
試験例1
血液生化学的検査
上記にて得られたCAG−γ-GTPトランスジェニックマウス(Tg、8匹)および野生型マウス(WT、7匹)を用いて、血液を経心臓的に採血した。この血液を遠心分離し、得られた血清をサンプルについて、尿素窒素、クレアチニン、無機リン、γ-GTP、副甲状腺ホルモン、およびカルシウムを測定した。なお、尿素窒素、クレアチニン、無機リン、およびγ-GTPは酵素法により測定し、副甲状腺ホルモンは免疫放射定量法によりを測定し、カルシウムはO-CPC法により測定した。結果は表1に示される通りであった。
上記血液生化学検査において、トランスジェニックマウスは野生型マウスと比較して、γ-GTPおよびカルシウムについて有意に高い値を示し、PTHのについて有意に低い値を示した(いずれもp<0.01)。カルシウムについての結果は図2に示される通りであり、PTHについては図3に示される通りであった。
試験例2
尿検査
CAG−γ-GTP トランスジェニックマウス(Tg、n=20)および野生型マウス(WT、n=17)を代謝ケージ(日本クレア)にて飼育し、24時間採尿を行った。その後、尿中の各成分を試験例1と同様の方法にて測定した。尿中カルシウム排泄量は、図4に示される通りであった。トランスジェニックマウスは野生型マウスと比較して、尿中カルシウム排泄量について有意に低い値を示した(p=0.02)。
試験例3
RT-PCR
CAG−γ-GTP トランスジェニックマウスまたは野生型マウス由来の腎臓および十二指腸から、常法に従ってtotal RNAを採取した。このtotal RNAをRT-PCRにて処理し、各臓器における TRPV、 Calbindin、CaSR、γ−GTP、およびEF1αの発現を比較した。結果は図5に示される通りであった。CAG−γ-GTP トランスジェニックマウス由来の腎臓において、γ−GTPのmRNAの発現上昇が認められ、TRPV5、TRPV6、Calbindin-D28K、CaSRのmRNAの発現低下が認められた。
試験例4
腎臓γ−GTP免疫染色
CAG−γ-GTP トランスジェニックマウスおよび野生型マウスから腎臓組織標本を得た。そして、この腎臓組織標本を用い、γ−GTPについて免疫染色を行った。ヒストファインシンプルステインラットMAX-PO(MULTI、第1抗体;抗ラットγ−GTP抗体(動物種;ウサギ)、第2抗体;抗ウサギIg(動物種;ヤギ))を用い、DAB染色にて発色させた。結果は図6に示される通りであった。
野生型マウスにおいては、近位尿細管にのみγ−GTPの発現が認められたが、CAG−γ-GTP トランスジェニックマウスにおいては、糸球体または遠位尿細管にγ−GTPの発現が認められた。
トランスジェニック動物の作製に用いるベクターpCXP-floxedEGEP-GGTの構造を表す図である。ベクターpCXP-floxedEGEP-GGTは、CMVエンハンサーとCAGプロモーターの支配下にloxpで挟んだEGFP+polyA、その下流にマウスγ-GTP cDNA+poly Aを連結したコンストラクトを含む。 CAG−γ-GTP トランスジェニックマウス(Tg)および野生型マウス(WT)における血中カルシウム濃度を示す図である。 CAG−γ-GTP トランスジェニックマウス(Tg)および野生型マウス(WT)における血中副甲状腺ホルモン濃度を示す図である。 CAG−γ-GTP トランスジェニックマウス(Tg)および野生型マウス(WT)における尿中カルシウム排泄量(クレアチニン補正値)を示す図である。 CAG−γ-GTP トランスジェニックマウスまたは野生型マウスの腎臓および十二指腸における、 TRPV、 Calbindin、CaSR、γ−GTP、およびEF1αのmRNAの発現量を示す写真である。 γ−GTPの免疫染色(DAB染色)を行ったCAG−γ-GTPトランスジェニックマウス(左)および野生型マウス(右)の腎臓組織標本を示す写真である。

Claims (8)

  1. γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ−GTP)を有効成分として含んでなる、カルシウムの吸収促進剤。
  2. 腎臓におけるカルシウムの再吸収を亢進することを特徴とする、請求項1に記載のカルシウムの吸収促進剤。
  3. 前記γ−GTPが配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するものである、請求項1または2に記載のカルシウムの吸収促進剤。
  4. 前記γ−GTPが配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するものである、請求項1または2に記載のカルシウムの吸収促進剤。
  5. カルシウム代謝障害およびこれに起因する疾患の予防または治療に用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカルシウムの吸収促進剤。
  6. 低カルシウム血症、骨粗鬆症、高血圧、または癌の予防または治療に用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカルシウムの吸収促進剤。
  7. カルシウムの吸収促進剤を製造するための、γ−GTPの使用。
  8. カルシウムの吸収促進剤のスクリーニング方法であって、
    被検物質を非ヒト動物に投与し、
    該非ヒト動物におけるγ−GTPの発現量または活性を測定し、
    該γ−GTPの発現量または活性が増加した場合、前記被検物質はカルシウムの吸収促進活性を有すると判定すること
    を含んでなる、方法。
JP2004288235A 2004-09-30 2004-09-30 カルシウム吸収促進剤 Active JP4719862B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004288235A JP4719862B2 (ja) 2004-09-30 2004-09-30 カルシウム吸収促進剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004288235A JP4719862B2 (ja) 2004-09-30 2004-09-30 カルシウム吸収促進剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006096731A JP2006096731A (ja) 2006-04-13
JP4719862B2 true JP4719862B2 (ja) 2011-07-06

Family

ID=36236879

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004288235A Active JP4719862B2 (ja) 2004-09-30 2004-09-30 カルシウム吸収促進剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4719862B2 (ja)

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4034381B2 (ja) * 1996-06-28 2008-01-16 株式会社エーシーバイオテクノロジーズ γ−グルタミルトランスペプチターゼの新規な用途

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006096731A (ja) 2006-04-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Clinkenbeard et al. Conditional deletion of murine Fgf23: interruption of the normal skeletal responses to phosphate challenge and rescue of genetic hypophosphatemia
Holmen et al. Decreased BMD and limb deformities in mice carrying mutations in both Lrp5 and Lrp6
Wang et al. Inactivation of a novel FGF23 regulator, FAM20C, leads to hypophosphatemic rickets in mice
Park et al. MTERF3 is a negative regulator of mammalian mtDNA transcription
Richard et al. Ablation of the Sam68 RNA binding protein protects mice from age-related bone loss
Jiang et al. Defining a link with autosomal-dominant polycystic kidney disease in mice with congenitally low expression of Pkd1
Rinotas et al. Novel genetic models of osteoporosis by overexpression of human RANKL in transgenic mice
Divine et al. GATA-4, GATA-5, and GATA-6 activate the rat liver fatty acid binding protein gene in concert with HNF-1α
CN110494168B (zh) 肾病症和肝病症的人源化模型
CN103298938B (zh) 氧化应激指示物表达用核酸构建物及其应用
Hiramatsu et al. Overexpression of γ-glutamyltransferase in transgenic mice accelerates bone resorption and causes osteoporosis
JP2021169461A (ja) 寿命に関する動物モデル並びに寿命を延ばす及び腫瘍化を阻害する関連方法
Jiang et al. DMP1 C‐terminal mutant mice recapture the human ARHR tooth phenotype
Mohler et al. Ankyrin-B syndrome: enhanced cardiac function balanced by risk of cardiac death and premature senescence
Freudenberg et al. Hippocampal overexpression of NOS1AP promotes endophenotypes related to mental disorders
EP1411971B1 (en) Use of long pentraxin ptx3 for treating female infertility
Sun et al. Hepatocyte expression of serum response factor is essential for liver function, hepatocyte proliferation and survival, and postnatal body growth in mice
JP5093776B2 (ja) 病態の状態をリアルタイムで観察可能なモデル動物とそれを可能にする遺伝子構築物及びその使用
Grimes et al. Rpl3l gene deletion in mice reduces heart weight over time
Bayle et al. Hyperphenylalaninemia and impaired glucose tolerance in mice lacking the bifunctional DCoH gene
JP4719862B2 (ja) カルシウム吸収促進剤
US20020155564A1 (en) Cloning of a high growth gene
US8502016B1 (en) Genomic alpha synuclein transgenic animal
US7135611B2 (en) Compositions and methods for characterizing and regulating Wnt pathways
JP5652755B2 (ja) カロリー制限模倣物のスクリーニング方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070921

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100827

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101005

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110118

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110217

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350