JP4719226B2 - 蛍光タンパク質の蛍光波長を変える方法 - Google Patents

蛍光タンパク質の蛍光波長を変える方法 Download PDF

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Description

本発明は、GFP様の蛍光タンパク質の蛍光波長を変える方法、ならびに、該方法を適用して得られる、改変蛍光タンパク質に関する。特には、Aetideidae 科に属するCopepoda、Pontellina plumata由来のGFP様蛍光タンパク質:ppluGFP2、あるいは、Chiridius poppei由来の蛍光タンパク質:CpYGFPを対象として、該蛍光タンパク質の蛍光波長を変える方法、ならびに、該方法を適用して得られる、改変蛍光タンパク質に関する。
クラゲのアエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)由来の緑色蛍光性タンパク質(GFP:Green Fluroesent Protein)、あるいは、その改変体タンパク質は、異種細胞内、特には、各種の哺乳動物細胞内において、組換え発現可能であり、また、得られる組換えタンパク質は、宿主細胞内において、蛍光特性を示す。この特徴を利用して、生化学、細胞生理学、医学分野において、動物細胞内で発現可能な、in vivo 蛍光性マーカー・タンパク質として、A. victoria由来のGFPならびにその相同体は、種々の対象、用途へ利用が図られている(文献1:Lippincott−Schwartz, J. G.H. Patterson, Science Vol.300, 87−91 (2003); 文献2:Tsien, R.Y., Annu. Rev. Biochem. Vol.67, 509−544 (1998)を参照)。
A. victoria由来のGFPに関しては、その蛍光特性の発揮に必要な機構の研究が進んでいる。まず、翻訳されたGFPポリペプチドは、天然の立体構造へとフォールディングされる際、その蛍光団を形成する内部トリペプチド部位の環化と、その後の酸化を経て、蛍光特性を有する成熟型GFPとなることが解明された。更には、A. victoria由来の野生型GFPの推定アミノ酸配列(deduced amino acid sequence)中、65番〜67番目のSYGが、蛍光団を形成する内部トリペプチド部位であることも確認されている。このA. victoria由来の野生型GFPに関して、X線結晶構造解析結果が公表されている。その三次元構造は、11個のβ鎖がバレル形状を構成し、そのバレル形状中心部を上下に貫くように、αヘリックスが配置され、その全体形状は、“βcan”と称されている。65番〜67番目のSYGは、このαヘリックス中に存在しており、形成された蛍光団は、“βcan”のほぼ中央に位置し、周囲の溶媒分子(水分子)から隔離された疎水的環境下に保持されている(文献3:Ormo, M. et al., Science Vol.273, 1392−1395 (1996); 文献4:Yang, F. et al., Nature Biotech., Vol.14, 1246−1251 (1996)を参照)。
翻訳後、成熟型GFPへと変換されるメカニズム、すなわち、αヘリックス中に存在している、SYGから、蛍光団:p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造の形成は、下記の機構によると推定されている。
・翻訳後、フォールディング;(歪んだ配置への移行)
Figure 0004719226
・環化、脱水過程
Figure 0004719226
・酸化過程:p-hydroxybenzylideneimidazolinone構造の完成
Figure 0004719226
最終的に、蛍光団:p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造は、下記の非イオン化型とイオン化型の間で平衡状態となっている。
・p-hydroxybenzylideneimidazolinone構造におけるイオン化型と、非イオン化型の平衡
Figure 0004719226
従って、A. victoria由来の野生型GFPは、励起スペクトル上において、非イオン化型における吸収に相当する、極大吸収波長395〜397nmのピークと、イオン化型における吸収に相当する、極大吸収波長470〜475nmのピークとが観測される。一方、蛍光スペクトルにおいては、イオン化型における蛍光に相当する、極大蛍光波長504nmのピークが測定される。発色団に含まれる、“p−hydroxybenzyl”の六員環と、“imidazolinone”の五員環とが、“idene”構造で連結されており、全体が平面的な配置を有すると、π電子の共役系が拡がり、最低の電子的励起状態と基底状態間のエネルギー差は、低下する。具体的には、イオン化型構造では、上記の互変異性型の超共役が存在するため、全体が平面的な配置を有している。一方、非イオン化型構造では、“p−hydroxybenzyl”の六員環は、“idene”構造と“imidazolinone”の五員環の存在する平面から、僅かに傾くと、両者のπ電子の共役系は、分断されており、主に、“p−hydroxybenzyl”の六員環に局在した基底状態からの光吸収が観測される。
また、A. victoria由来の野生型GFPに対して、そのアミノ酸配列を改変して、蛍光波長を変える試みが多数報告されている。具体的には、蛍光団となるπ電子の共役系に影響を及ぼす変異を導入し、得られる蛍光を、本来の緑色から、ブルー・シフトさせ、青色、青緑色とする、レッド・シフトさせ、黄色とする手法が報告されている。
蛍光団を構成する65番〜67番目のSYG中、65番目のSerをThrへと変異を施した、S65T−GFPでは、TYGが同様に発色団を形成した際、非イオン化型とイオン化型の間での平衡は、イオン化型へ傾く。その結果、S65T−GFPでは、励起スペクトル上において、主に、イオン化型における吸収に相当する、極大吸収波長489〜490nmのピークが観測される。また、蛍光スペクトルにおいては、イオン化型における蛍光に相当する、極大蛍光波長510〜511nmのピークが測定され、野生型GFPの蛍光よりも、若干レッド・シフトを示す。
蛍光団を構成する65番〜67番目のSYGに変異を施さなくとも、Tyrのフェノール性ヒドロキシル基のイオン化を促進する手段として、天然の立体構造へとフォールディングした際、発光団のp−hydroxybenzylideneimidazolinone構造の近傍に存在する、C末端側の2本のβ鎖(β10、β11)中に存在する、例えば、222番目のGluをGlyへ置換する変異を施す方法も報告されている。すなわち、プロトン供与体として機能する、222番目のGluの側鎖上のカルボキシル基を除くと、それをTyrのフェノール性ヒドロキシル基が補うため、結果的に、Tyrのフェノール性ヒドロキシル基のイオン化が促進される。
上記のGFPの発光団を構成する、p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造中、“idene”構造と“imidazolinone”の五員環部分は、基本的に同じであるが、66番目のTyrの側鎖に由来するp−ヒドロキシファニル基(フェノール環)に代えて、His由来のイミダゾール環、あるいは、Trp由来のインドール環に置き換え、野生型GFPの蛍光波長を変える試みもなされている。
例えば、66番目のTyrをHisへと変異を施した、Y66H−GFPでは、その蛍光は、野生型GFPの緑色蛍光に対して、ブルー・シフトを起こし、極大波長447nmの青色蛍光を示すことが報告されている。このSHGから形成される蛍光団を有するY66H−GFPは、BFP(Bleu Fluoresent Protein)とも称されている。このBFP中の発光団は、Tyr由来のp−ヒドロキシファニル基(フェノール環)が、His由来のイミダゾール環へと変換され、1H−imidazol−4−yl−metylideneimidazolinone構造を有している。なお、1H−imidazol−4−yl−metylideneimidazolinone構造は、下記のようなイオン化型と非イオン化型の間で平衡状態となっていると可能もある。
・1H-imidazol-4-yl-metylideneimidazolinone構造におけるイオン化型と、非イオン化型の平衡
Figure 0004719226
何れにしても、π電子の共役系の差違に起因して、励起スペクトル上においては、極大吸収波長383nmのピーク、一方、蛍光スペクトルにおいては、極大蛍光波長447nmのピークが測定され、それぞれブルー・シフトを示している。
一方、66番目のTyrをTrpへと変異を施した、Y66W−GFPでは、その蛍光は、野生型GFPの緑色蛍光に対して、ブルー・シフトを起こし、極大波長485nmの青緑色蛍光を示すことが報告されている。このSWGから形成される蛍光団を有するY66W−GFPは、CFP(Cyan Fluoresent Protein)とも称されている。このCFP中の発光団は、Tyr由来のp−ヒドロキシファニル基(フェノール環)が、Trp由来のインドール環へと変換され、indole−3−yl−metylideneimidazolinone構造を有している。
・indole-3-yl-metylideneimidazolinone構造
Figure 0004719226
なお、前記CFPの蛍光スペクトルは、エネルギー差が小さな、二つの蛍光ピークが重ね合わせた形態を示し、対応する励起スペクトル上にも、エネルギー差が小さな、二つのピークが重ね合わせた形態を示している。この二種のピークを与える要因として、二つの蛍光状態(光励起状態)が共存しており、この二つの蛍光状態(光励起状態)の間で、何らかの平衡関係が存在している可能性が示唆されている。
これらBFP、CFPにおいては、蛍光団を形成する66番目のTyrを、他の芳香族アミノ酸残で置換することにより、π電子の共役系自体を構成する芳香環基を変更する手法に加えて、複数の芳香環基を、その重ね合わせ、両者のπ電子の重なりを介した、相互作用(π−π−スタッキング)により、蛍光波長をレッド・シフトさせる手法も報告されている。具体的には、天然の立体構造へとフォールディングした際、発光団のp−hydroxybenzylideneimidazolinone構造の近傍に存在する、C末端側のβ鎖(β10)中に存在する、203番目のThrを、芳香族アミノ酸残基へ置換すると、indole−3−yl−metylideneimidazolinone構造のπ電子の共役系、特に、Tyr由来のp−ヒドロキシファニル基(フェノール環)部分に対して、該芳香族アミノ酸残基に由来する芳香環基が、重なりを生じる状態となる。例えば、203番目のThrをTyrへと変異を施した、改変体は、励起スペクトル上においては、極大吸収波長516nm付近のピーク、一方、蛍光スペクトルにおいては、極大蛍光波長529nm付近のピークが測定され、それぞれレッド・シフトを示している。この種のπ−π−スタッキングに起因して、黄色蛍光を示す改変体タンパク質は、YFP(Yellow Fluoresent Protein)と命名されている(文献5:Cubitt, A.B. et al., Trends Biochem. Sci., Vol.20、 448−455 (1995)を参照)。
上述するA. victoria由来のGFPと、その改変体タンパク質とは別に、Discosoma striata由来の蛍光タンパク質が、知られており、この蛍光タンパク質は、励起スペクトル上においては、極大吸収波長558nm付近のピーク、一方、蛍光スペクトルにおいては、極大蛍光波長583nm付近のピークが測定される。すなわち、赤色蛍光を示す蛍光タンパク質であり、Discosoma striata由来の赤色蛍光タンパク質(Red Fluoresent Protein)の意味で、DsRFPと称されている。このDsRFPの蛍光団は、QYGで形成されている。このDsRFPにおいては、p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造に加えて、65番目のGluのN末側のアミド結合を含めた領域が蛍光団として機能する結果、上記の大きなレッド・シフトが達成されている(文献6:Matz, M.V. et al., Nature Biotech., Vol.17, 969−973 (1999);文献7:Verkhusha, et al. Nature Biotech., Vol.22, 289−296 (2004)を参照)。
Lippincott−Schwartz, J. G.H. Patterson, Science Vol.300, 87−91 (2003) Tsien, R.Y., Annu. Rev. Biochem. Vol.67, 509−544 (1998)を参照 Ormo, M. et al., Science Vol.273, 1392−1395 (1996) Yang, F. et al., Nature Biotech., Vol.14, 1246−1251 (1996) Cubitt, A.B. et al., Trends Biochem. Sci., Vol.20、 448−455 (1995) Matz, M.V. et al., Nature Biotech., Vol.17, 969−973 (1999) Verkhusha, et al. Nature Biotech., Vol.22, 289−296 (2004)
更には、A. victoria由来のGFP以外にも、刺胞動物門(Cnidaria)のヒドロ虫類(class Hydrozoa)からGFP様タンパク質のクローニングされており、更には、刺胞動物門(Cnidaria)の花虫類(class Anthozoa)からも、GFP様タンパク質のクローニングされている。これら刺胞動物門(Cnidaria)の花虫類(class Anthozoa)で発見されているGFP様タンパク質に関して、生物進化的には、共通する起源を有する、蛍光性タンパク質ファミリーを構成するであろうことが報告されている(文献8:Y.A. Labas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. vol.99, 4256−4261 (2002)を参照)。
加えて、刺胞動物門(Cnidaria)以外に、節足動物門(Arthropoda phylum)、大顎類(Mandibulata subphylum)、甲殻類(Crustacea class)、橈脚類(カイアシ類:Copepoda subclass)に属する、橈脚類の数種が緑色蛍光を発する蛍光タンパク質を産出することが報告されている。例えば、橈脚類(カイアシ類:Coprpoda subclass)中、カラヌス類(Calanoida order)に分類されるPontellidae科(Pontellidae family)に属する、Pontellina plutellina、Labidocera aestiva、Pontella meadi、ならびに、未同定の一種、合計4種は、GFP様の蛍光タンパク質を保持することが報告されている(文献9:SHAGIN et al., Mol. Biol. Evol., (2004), Vol.21, No.5, pp. 841−850を参照)。また、本発明者らも、橈脚類(カイアシ類:Copepoda subclass)中、カラヌス類(Calanoida order)に分類されるAetideidae科(Aetideidae family)に属する、Chiridius poppeiに由来するGFP様の蛍光タンパク質(CpYGFP)を見出している(文献10:国際公開第2005/095599号パンフレット、または米国特許出願公開2005/0221338号明細書)。
これらの橈脚類(copepod)由来のGFP様の蛍光タンパク質は、A. victoria由来のGFPとは、アミノ酸配列の相同性は乏しく、進化の過程で、アミノ酸配列の変異が多数集積されていると推定されている。しかしながら、二次構造の推定から、これら橈脚類(copepod)由来のGFP様の蛍光タンパク質は、A. victoria由来のGFP、Discosoma striata由来のDsRFPと同様に、11個のβ鎖と、蛍光団の構成に関与するGYGを内在するαヘリックス一本の存在が予測される。また、その三次構造も、全体形状は、“βcan”と称されているバレル形状を共通に有していると予測される。
しかしながら、これらの橈脚類(copepod)由来のGFP様蛍光タンパク質の有する三次元構造、特には、成熟型蛍光タンパク質中において形成されている蛍光団とその周囲の詳細な構造は解明されてなく、アミノ酸配列を改変して、その蛍光波長を変化させる手段として、A. victoria由来のGFPに対して適用された手法が同様に適用可能か、否かを判断する根拠がなかった。更には、アミノ酸配列を改変して、その蛍光波長を変化させる手段として、A. victoria由来のGFPに対して適用された手法以外に、橈脚類(copepod)由来のGFP様蛍光タンパク質の発する蛍光波長を変化する際、有効な新たな手法が存在するか否かを判断する根拠がなかった。
本発明は、前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、橈脚類(copepod)由来のGFP様蛍光タンパク質の有する三次元構造を新たに解析し、解明された三次元構造に基づき、橈脚類(copepod)由来のGFP様蛍光タンパク質が発する蛍光波長を決定する構造的な要因を特定し、この構造的な要因に関与するアミノ酸残基を改変し、野生型蛍光タンパク質と遜色の組換え発現効率を保持しつつ、一方、蛍光波長を変化させる方法、ならびに、かかる方法を適用して得られる改変蛍光タンパク質を提供することにある。特には、Chiridius poppeiに由来するGFP様蛍光タンパク質:CpYGFP、あるいは、Pontellina plutellina由来のGFP様蛍光タンパク質:ppluGFP2(あるいは、商品名“Cop−Green”)を基礎に、その野生型タンパク質の有するアミノ酸配列を改変して、野生型蛍光タンパク質と遜色の組換え発現効率を保持し、一方、蛍光波長を変化させる方法、ならびに、かかる方法を適用して得られる改変体タンパク質を提供することにある。
発明者らは、前記の課題を解決すべく、先ず、橈脚類(copepod)由来のGFP様蛍光タンパク質の有する三次元構造を新たに解析し、解明された三次元構造に基づき、橈脚類(copepod)由来のGFP様蛍光タンパク質が発する蛍光波長を決定する構造的な要因の特定を進めた。特に、本発明者らにより見出されたChiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質:CpYGFPについて、野生型アミノ酸配列を有し、蛍光団を形成する内部トリペプチド部位「GYG」の環化と、その後の酸化を経て、蛍光特性を有する成熟型蛍光タンパク質を宿主大腸菌中で組換え発現し、精製済みCpYGFP評品を調製した。この精製済みCpYGFP評品を用いて、結晶化を行い、得られた結晶について、X線結晶構造解析を行って、該結晶中におけるCpYGFPの三次元構造を決定した。決定されたCpYGFPの三次元構造は、図3に示すように、11個のβ鎖と、蛍光団の構成に関与するGYGを内在するαヘリックス(α−ヘリックス)と他の一本の短いαヘリックス(α−ヘリックス)が、A. victoria由来のGFP、Discosoma striata由来のDsRFPが共通に示す全体形状、すなわち、“βcan”と称されているバレル形状を構成している。また、バレルの内部に位置するαヘリックス中に内在するGYGは、環化と、その後の酸化を経て、実際に、下記のようなp−hydroxybenzylideneimidazolinone構造の蛍光団を形成している。
・p-hydroxybenzylideneimidazolinone構造におけるイオン化型と、非イオン化型の平衡
Figure 0004719226
この蛍光団の近傍に存在するアミノ酸残基を含む、局所的な立体配置は、図4に示すものとなっていることが判明した。野生型のCpYGFPにおいても、蛍光に関与する形状は、上述するイオン化型形状であり、このイオン化型の安定化には、β鎖(β)中に存在する、136番目のThrが何らかの寄与を有することが予測される。加えて、野生型のCpYGFPにおいては、p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造の蛍光団中、Tyr由来のp−ヒドロキシファニル基(フェノール環)部分に対して、52番目のHis側鎖のイミダゾール環が、重ね合わせた位置に存在し、両者のπ電子の重なりを介した、相互作用(π−π−スタッキング)により、蛍光波長をレッド・シフトさせる機能を有すると予測される。
以上の二点は、A. victoria由来のGFPの三次元構造と比較した際、Chiridius poppei由来のCpYGFPの三次元構造に特徴的な、蛍光団近傍の構造上の相違点であるという知見に基づき、実際に、52番目のHis側鎖のイミダゾール環に代えて、種々のアミノ酸残基に置換した改変体タンパク質を創製し、その蛍光特性を対比した。その対比結果から、下記のような効果を示すと考察される。
すなわち、52番目のアミノ酸残基として、His側鎖のイミダゾール環、Phe側鎖のベンゼン環、Tyr側鎖のp−ヒドロキシファニル基(フェノール環)、Trp側鎖のインドール環は、いずれも、p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造の蛍光団中、Tyr由来のp−ヒドロキシファニル基(フェノール環)部分に対して、π−π−スタッキングの効果をもたらし、蛍光波長をレッド・シフトさせる機能を有する。一方、π電子共役系を有していない、Ala(側鎖:CH−)、Val(側鎖:CH−CH(CH)−)、Ile(側鎖:C−CH(CH)−)、Leu(側鎖:CH−CH(CH)−CH−)、Gly(側鎖無し)、Cys(側鎖:HS−CH−)、Met(CH−S−C−)、Ser(側鎖:HO−CH−)、Thr(側鎖:CH−CH(OH)−)で置換した際には、対応する相互作用は無く、His側鎖のイミダゾール環に起因するレッド・シフトの効果が失われる。その他、プロトン供与能を有する、Asp(側鎖:HOOC−CH−)、Glu(側鎖:HOOC−C−)で置換した際には、Tyr側鎖のp−ヒドロキシファニル基のイオン化比率を低下させる効果を示し、結果的に非イオン化型の比率が増し、例えば、励起スペクトル上に、非イオン化型に由来する、400nm近傍のピークが付加され、一方、見掛けの蛍光強度の低下が引き起こされる。
一方、上記のA. victoria由来のGFPと同様に、野生型のCpYGFPにおいても、その蛍光団を形成する「GYG」のうち、Tyrを、His、Trpにより置換すると、形成される蛍光団自体のπ電子共役系の差違に起因する蛍光波長のシフトが生じると予想される。その際、Tyrを、Trpへ置換する際、A. victoria由来のGFPに対する、CFPで見出されるブルー・シフトと比較して、CpYGFPにおける改変体で見出されるブルー・シフトは、顕著に大きく、その蛍光は、青緑色の波長域を超え、青色の波長域に達することを見出した。
以上の知見に基づく、本発明者らは、Chiridius poppei由来のCpYGFPの三次元構造に基づき、該CpYGFPのアミノ酸配列に変異を施し、得られる改変体タンパク質の発する蛍光の極大蛍光波長を変化させる手法を見出し、本発明を完成するに至った。加えて、図1に示すように、Chiridius poppei由来のCpYGFPと、Pontellina plutellina由来のppluGFP2(あるいは、商品名“Cop−Green”)とは、そのアミノ酸配列は高い相同性を示す。従って、その三次元構造中、この蛍光団の近傍に存在するアミノ酸残基を含む、局所的な立体配置、特に、52番目のHisと蛍光団との相対的配置は、極めて高い類似性を示すと判断でき、本発明の手段は、Pontellina plutellina由来のppluGFP2(あるいは、商品名“Cop−Green”)に対しても、有効であることに想到した。
すなわち、本発明の第一の形態にかかる改変蛍光タンパク質の一つは、
Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの改変蛍光タンパク質であって、
該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列(配列番号:1)中、
Figure 0004719226
その52番目のアミノ酸Hisを、
Phe、Tyr、Trpからなる芳香族アミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、レッド・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である;
該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、
Ala、Val、Ile、Leu、Gly、Cys、Met、Ser、Thrからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である;あるいは、
該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、
Asp、Asn、Glu、Glnからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である
のいずれかの改変蛍光タンパク質である
ことを特徴とする改変蛍光タンパク質である。
前記一群のCpYGFPの改変蛍光タンパク質中、好ましい一例は、
前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、Pheで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、レッド・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−H52Fである。
前記一群のCpYGFPの改変蛍光タンパク質中、好ましい一例は、
前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、Thrで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−H52Tである。
前記一群のCpYGFPの改変蛍光タンパク質中、好ましい一例は、
前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、Aspで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−H52Dである。
本発明の第一の形態にかかる改変蛍光タンパク質の他一つは、
Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPと高い相同性を有するPontellina plutellina由来のGFP様蛍光タンパク質ppluGFP2の改変蛍光タンパク質であって、
前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisに対応する、該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列(配列番号:4)中、
Figure 0004719226
その54番目のアミノ酸Hisを、
Phe、Tyr、Trpからなる芳香族アミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該ppluGFP2が発する蛍光のピーク波長と比較し、レッド・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である;
該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、54番目のアミノ酸Hisを、
Ala、Val、Ile、Leu、Gly、Cys、Met、Ser、Thrからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該ppluGFP2が発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である;あるいは、
該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、54番目のアミノ酸Hisを、
Asp、Asn、Glu、Glnからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該ppluGFP2が発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である
のいずれかであることを特徴とする改変蛍光タンパク質である。
前記一群のppluGFP2の改変蛍光タンパク質中、好ましい一例は、
前記ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、54番目のアミノ酸Hisを、Pheで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質である。
前記一群のppluGFP2の改変蛍光タンパク質中、好ましい一例は、
前記ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、54番目のアミノ酸Hisを、Thrで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質である。
前記一群のppluGFP2の改変蛍光タンパク質中、好ましい一例は、
前記ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、54番目のアミノ酸Hisを、Aspで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質である。
一方、本発明の第二の形態にかかる改変蛍光タンパク質の一つは、
Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの改変蛍光タンパク質であって、
該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列(配列番号:1)中、
Figure 0004719226
その56番目のアミノ酸Tyrを、
Trpで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−Y56Wである;
該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、56番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換し、
さらに、194番目のアミノ酸Valを、Serで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−Y56W,V194Sである;あるいは、
該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、56番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換し、
さらに、194番目のアミノ酸Valを、Serで、136番目のアミノ酸Thrを、Alaで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−Y56W,V194S,T136Aである
のいずれかの改変蛍光タンパク質である
ことを特徴とする改変蛍光タンパク質である。
本発明の第二の形態にかかる改変蛍光タンパク質の他の一つは、
Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPと高い相同性を有するPontellina plutellina由来のGFP様蛍光タンパク質ppluGFP2の改変蛍光タンパク質であって、
前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、56番目のアミノ酸Tyrに対応する、該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列(配列番号:4)中、
Figure 0004719226
その58番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質;
該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、58番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換し、
さらに、197番目のアミノ酸Valを、Serで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質;あるいは
該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、58番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換し、
さらに、197番目のアミノ酸Valを、Serで、138番目のアミノ酸Thrを、Alaで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質
のいずれかの改変蛍光タンパク質である
ことを特徴とする改変蛍光タンパク質である。
本発明の第一の形態にかかる蛍光タンパク質の蛍光波長を変える方法を適用して得られる改変蛍光タンパク質は、Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFP、Pontellina plutellina由来のGFP様蛍光タンパク質ppluGFP2で代表される、Copepoda由来の野生型GFP様蛍光タンパク質の蛍光団を構成する“XYG”中のTyrを、他の芳香性環基を有するアミノ酸残基、HisまたはTrpへ置換する手段に代えて、該Tyrの位置をn番目とするとき、(n−4)番目に位置するアミノ酸残基を、芳香性環基を有するアミノ酸残基とすることで、該Tyr側鎖上のp−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)と、前記(n−4)番目に位置するアミノ酸残基側鎖上の芳香性環基とを“π−π stacking”させることで、改変蛍光タンパク質が発する蛍光波長を、野生型蛍光タンパク質の発する蛍光波長と比較して、長波長側へシフトさせることができる。逆に、該Tyrの位置をn番目とするとき、(n−4)番目に位置するアミノ酸残基を、芳香性環基を持たないアミノ酸残基とすることで、前記“π−π stacking”に起因する効果を排除することで、改変蛍光タンパク質が発する蛍光波長を、野生型蛍光タンパク質の発する蛍光波長と比較して、短波長側へシフトさせることもできる。この本発明にかかる手法を用いると、野生型蛍光タンパク質の蛍光団を構成する“XYG”への変異はなされないため、環化、その後の酸化を経由する蛍光団の形成過程は、かかる改変蛍光タンパク質においても、実質的に同等のものとなる。
また、本発明の第二の形態にかかる蛍光タンパク質の蛍光波長を変える方法を適用して得られる改変蛍光タンパク質は、Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFP、Pontellina plutellina由来のGFP様蛍光タンパク質ppluGFP2で代表される、Copepoda由来の野生型GFP様蛍光タンパク質の蛍光団を構成する“XYG”中のTyrを、Trpで置き換えることにより、改変蛍光タンパク質が発する蛍光波長を、野生型蛍光タンパク質の発する蛍光波長と比較して、短波長側へシフトさせることができる。特に、本発明の第二の形態にかかる蛍光タンパク質の蛍光波長を変える方法を、Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFP、Pontellina plutellina由来のGFP様蛍光タンパク質ppluGFP2の改変に適用すると、実質的に単一のピーク波長を示す蛍光スペクトルを示す、青色の色調を示す改変蛍光タンパク質を得ることができる。
図1は、Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPと、Pontellina plutellina由来のGFP様蛍光タンパク質ppluGFP2(商品名“Cop−Green”)のアミノ酸配列をアラインした結果を示す。該アミノ酸配列のアラインメントは、両者間の相同性を示す。 図2は、Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの蛍光スペクトルと、励起スペクトルを示す図である。 図3は、Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの結晶構造を示す図であり、結晶の単位格子中に二量体として存在するCpYGFPの全体構造をリボンモデル表示したステレオ図である。 図4は、Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの「GYG」から形成されるp−hydroxybenzylideneimidazolinone構造の蛍光団と、その近傍に位置するアミノ酸残基;His52、Tyr59、Arg85、Thr136、Asn170、Glu207の側鎖の配置、ならびに、推定される水素結合、水素結合を介して、固定されている水分子の酸素原子の位置を示す部分構造図である。 図5は、解析されたChiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの結晶構造と、既に報告されているDsRedの結晶構造、aqGFPの結晶構造との比較に基づき、対応する二次構造を構成するアミノ酸配列のアライメントを行った結果を示す。該アミノ酸配列のアライメント中、CpYGFPの結晶構造において特定された、各二次構造の部分配列を、配列下に付記する。 図6は、Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの蛍光団を形成する「GYG」を、「GWG」で置換した改変蛍光タンパク質;CpYGFP−Y56W,V194S(CpYGFP mutanat1)、CpYGFP−Y56W,V194S,T136A(CpYGFP mutanat2)のアミノ酸配列を示す図である。 図7−1は、Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPと、改変蛍光タンパク質CpYGFP−H52Tの蛍光スペクトル、ならびに励起スペクトルの形状を対比して示す図である。 図7−2は、改変蛍光タンパク質CpYGFP−H52Dと、CpYGFP−H52Fの蛍光スペクトル、ならびに励起スペクトルの形状を対比して示す図である。 図8は、Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの蛍光団を構成する「GYG」を、「GWG」へと変換した改変蛍光タンパク質;CpYGFP−Y56W,V194Sの蛍光スペクトル、ならびに励起スペクトルの形状を示す図である。 図9は、Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの蛍光団を構成する「GYG」を、「GWG」へと変換した改変蛍光タンパク質;CpYGFP−Y56W,V194S,T136Aの蛍光スペクトル、ならびに励起スペクトルの形状を示す図である。
以下に、本発明をより詳しく説明する。
本発明の第一の形態にかかるGFP様の蛍光タンパク質の蛍光波長を変える方法は、Chiridius poppeiに由来するGFP様蛍光タンパク質:CpYGFP、あるいは、Pontellina plutellina由来のGFP様蛍光タンパク質:ppluGFP2を基礎に、これらの野生型GFP様蛍光タンパク質が発する蛍光の色調、すなわち、蛍光スペクトル上において観測される極大蛍光波長(蛍光ピーク波長)を、長波長側へシフト(レッド・シフト)、あるいは、短波長側へシフト(ブルー・シフト)させる改変蛍光タンパク質を創製する方法の一つである。
具体的には、Chiridius poppeiに由来するGFP様蛍光タンパク質:CpYGFPの結晶構造を新たに解析した結果、該GFP様蛍光タンパク質中に存在する蛍光団は、“GYG”の環化、脱水過程を介して形成されるp−hydroxybenzylideneimidazolinone構造であることが確認された。また、該蛍光団:p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造に含まれる、Tyr56に由来するp−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)に対して、His52の側鎖上のイミダゾール環が、“π−π stacking”が可能な配置を有していることを見出した。
本発明の第一の形態においては、この構造上の特徴を利用し、His52に由来するイミダゾール環を、対応する配置を採ることが可能な芳香族アミノ酸;Pheに由来するベンゼン環、Tyrに由来するフェノール環(p−ヒドロキシフェニル基)、Trpに由来するインドール環で置き換え、“π−π stacking”に起因する、π電子共役系の相互作用を増すことで、蛍光状態の励起エネルギーをより低下させることで、かかる改変蛍光タンパク質の極大蛍光波長(蛍光ピーク波長)は、野生型CpYGFPの極大蛍光波長(蛍光ピーク波長)より、長波長側へシフト(レッド・シフト)されている。
あるいは、イミダゾール環を有するHis52を、対応する配置を採ることが可能な、π電子共役系を有していない鎖式構造アミノ酸;Ala(側鎖:CH−)、Val(側鎖:CH−CH(CH)−)、Ile(側鎖:C−CH(CH)−)、Leu(側鎖:CH−CH(CH)−CH−)、Gly(側鎖無し)、Cys(側鎖:HS−CH−)、Met(CH−S−C−)、Ser(側鎖:HO−CH−)、Thr(側鎖:CH−CH(OH)−)で置き換え、“π−π stacking”に起因する相互作用を除くことで、結果的に、かかる改変蛍光タンパク質の極大蛍光波長(蛍光ピーク波長)は、野生型CpYGFPの極大蛍光波長(蛍光ピーク波長)より、短波長側へシフト(レッド・シフト)されている。
加えて、イミダゾール環を有するHis52を、対応する配置を採ることが可能な、π電子共役系を有していないアミノ酸;Asp(側鎖:−CH−COOH)、Glu(側鎖:−C−COOH)、Asn(側鎖:−CH−CONH)、Gln(側鎖:−C−CONH)ことで、結果的に、かかる改変蛍光タンパク質の極大蛍光波長(蛍光ピーク波長)は、野生型CpYGFPの極大蛍光波長(蛍光ピーク波長)より、短波長側へシフト(ブルー・シフト)されている。
その際、His52を置き換えた際、その側鎖がイミダゾール環と同等のサイズを有するものは、“GYG”の環化過程における構造変化に際して、立体障害を引き起こすことが無く、より好適なものとなる。例えば、His52を置き換えた際、芳香族アミノ酸のうち、Pheのベンゼン環は、Hisのイミダゾール環と同等のサイズであり、より好適なものとなる。
また、図5に示す、結晶構造に基づき、二次構造を構成する部分アミノ酸配列をアライメントした結果から、かかる蛍光団を構成する「XYG」は、A. victoria由来のGFP、Discosoma striata由来のDsRFP、ならびに、Chiridius poppei由来のCpYGFPのいずれでも、対応する長さのαヘリックス様の二次構造(α−ヘリックス)含まれている。その際、Chiridius poppei由来のCpYGFPにおける、His52に対応するアミノ酸位置には、A. victoria由来のGFP:aqGFPでは、Thrが存在している。この点をも考慮すると、Chiridius poppei由来のCpYGFPにおける、His52をπ電子共役系を有していない鎖式構造アミノ酸で置換し、改変蛍光タンパク質の極大蛍光波長(蛍光ピーク波長)を、野生型CpYGFPの極大蛍光波長(蛍光ピーク波長)より、短波長側へシフト(ブルー・シフト)させる際、Thrへの置換はより好ましいものと一つと判断される。
一方、Chiridius poppei由来のCpYGFPにおける、His52を、プロトン供与能を有する、Asp(側鎖:−CH−COOH)、Glu(側鎖:−C−COOH)へと置換すると、蛍光団のp−hydroxybenzylideneimidazolinone構造において、イオン化型と、非イオン化型との平衡は、非イオン化型へ傾くため、Chiridius poppei由来のCpYGFPと比較して、pHの低下に付随する、蛍光強度の低下傾向は、より抑制されると考えられる。この観点では、His52を、プロトン供与能を有する、Asp(側鎖:−CH−COOH)、Glu(側鎖:−C−COOH)へと置換した改変蛍光タンパク質は、極大蛍光波長(蛍光ピーク波長)より、短波長側へシフト(ブルー・シフト)させると同時に、pHの低下に付随する、蛍光強度の低下傾向を更に抑制する効果を併せ持ち、好適なものの一つとなる。
図1に示すように、Chiridius poppei由来のCpYGFPと、Pontellina plutellina由来のGFP様蛍光タンパク質:ppluGFP2とは、一次元構造(アミノ酸配列)を比較すると、相当に高い類似性を有している。加えて、今回、新たに解析された野生型CpYGFPの結晶構造により、特定された二次構造を形成する部分アミノ酸配列に着目すると、両者は、ほぼ等しい三次構造を構成すると推断される。特に、蛍光団を構成する「GYG」を含むαヘリックス様の二次構造(α−ヘリックス)の部分アミノ酸配列は、高い同一性を示しており、ppluGFP2においても、形成された蛍光団:p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造に含まれる、Tyr56に由来するp−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)に対して、His52の側鎖上のイミダゾール環が、“π−π stacking”が可能な配置を有していることを推断される。従って、CpYGFPにおける、His52に対する他のアミノ酸への置換で得られる効果は、このppluGFP2においても、本質的に同等なものとなる。
野生型ppluGFP2が示す蛍光特性は、蛍光ピーク波長は、502nm、励起スペクトルにおけるピーク波長は、482nmと報告されており、図2に示す、野生型CpYGFPの蛍光ピーク波長、517nm、励起スペクトルにおけるピーク波長、509nmと比較して、いずれも、短波長側にシフトしている。両者とも、蛍光団:p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造に対して、His52の側鎖上のイミダゾール環は、“π−π stacking”が可能な配置を有していると推定されるが、見掛け上、野生型ppluGFP2においては、前記“π−π stacking”に起因する、蛍光ピーク波長、および励起スペクトルにおけるピーク波長の長波長側へのシフト(レッド・シフト)の効果が乏しいという測定結果となっている。
例えば、aqGFPが示す、蛍光ピーク波長は504nm、励起スペクトルにおけるピーク波長は470〜475nmであり、蛍光団がイオン化型に変換されているEGFP(enhanced GFP)が示す、蛍光ピーク波長は507〜509nm、励起スペクトルにおけるピーク波長は485nmであり、蛍光ピーク波長、および励起スペクトルにおけるピーク波長は、非イオン化型の寄与を有するaqGFPが、EGFPより、短波長側にシフトしている。すなわち、蛍光団の形状において、非イオン化型の寄与がより高いと、観測される蛍光ピーク波長、および励起スペクトルにおけるピーク波長は、短波長側にシフトすることが示されている。
この蛍光団の形状における、非イオン化型とイオン型との寄与の差違を反映する、蛍光ピーク波長、および励起スペクトルにおけるピーク波長のシフトのメカニズムを考慮すると、野生型ppluGFP2においては、非イオン化型の寄与がより高く、そのため、見掛け上、前記“π−π stacking”に起因する、蛍光ピーク波長、および励起スペクトルにおけるピーク波長の長波長側へのシフト(レッド・シフト)の効果がスペクトル上に反映されていないと判断される。換言するならば、野生型ppluGFP2においても、形成された蛍光団:p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造に含まれる、Tyr56に由来するp−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)に対して、His52の側鎖上のイミダゾール環が、“π−π stacking”が可能な配置を有しているとの推断と、その蛍光スペクトル、励起スペクトル上では、長波長側へのシフト(レッド・シフト)の効果が見出されないこととは、矛盾するものでないと判断される。
従って、ppluGFP2に対して、上述するHis52を他のアミノ酸により置換する改変に伴う効果は、このCpYGFPにおける効果と、本質的に同等なものとなる。なお、ppluGFP2に対して、His52を、π電子共役系を有していない鎖式構造アミノ酸;Ala、Val、Ile、Leu、Gly、Cys、Met、Ser、Thrで置き換え、“π−π stacking”に起因する相互作用を除いた場合、得られる改変蛍光タンパク質が示す、蛍光スペクトル、励起スペクトル上のピーク波長は、野生型ppluGFP2の蛍光ピーク波長と見掛け上、差違が無いものとなる。但し、蛍光スペクトルの全体的な形状は変化し、それらを積分したものに相当する色調は、前記置換に伴い、ブルー・シフトに相当する変化を示すものとなる。同じく、ppluGFP2に対して、His52を、π電子共役系を有していないアミノ酸;Asp、Glu、Asn、Glnで置き換え、“π−π stacking”に起因する相互作用を除いた場合、得られる改変蛍光タンパク質が示す、蛍光スペクトル、励起スペクトル上のピーク波長は、野生型ppluGFP2の蛍光ピーク波長と見掛け上、差違が無いものとなる。但し、蛍光スペクトルの全体的な形状は変化し、それらを積分したものに相当する色調は、前記置換に伴い、ブルー・シフトに相当する変化を示すものとなる。
一方、ppluGFP2に対して、His52を、より大きなπ電子共役系を有している、芳香族アミノ酸;Phe、Tyr、Trpで置き換え、“π−π stacking”に起因する相互作用を増した場合には、得られる改変蛍光タンパク質が示す、蛍光スペクトル、励起スペクトル上のピーク波長は、野生型ppluGFP2の蛍光ピーク波長と見掛けでも、長波長側へのシフト(レッド・シフト)を示すものとなる。
“π−π stacking”に起因する相互作用を利用して、蛍光ピーク波長、ならびに励起スペクトル上のピーク波長を長波長側へシフト(レッド・シフト)する手法は、aqGFPに基づく、改変蛍光タンパク質:YFPにおいても、利用されている。このYFP型の改変蛍光タンパク質では、aqGFPの有する蛍光団を構成する「SYG」のTyr66に由来するp−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)に対して、β10鎖中に存在するThr203を、π電子共役系を有しているアミノ酸残基;His、Phe、Tyrで置き換えることで、“π−π stacking”を誘起させている。aqGFPに基づく、YFPの三次構造において、β10鎖と、蛍光団とが近接しており、偶々、前記の“π−π stacking”の誘起が可能な状態となっている。そのため、YFPでは、所望の蛍光ピーク波長を示す蛍光団の形成効率は、環化、脱水過程が進行する際の環境により影響を受ける点が、実用上の問題となっている。
それに対して、例えば、CpYGFPの三次構造においては、「GYG」を含むαヘリックス様の二次構造(α−ヘリックス)に含まれているHis52の側鎖の配向は、「GYG」に環化、脱水が起こる過程において、一義的に決定される。そのため、His52を、Phe、Tyr、Trpで置き換えた際、これらのアミノ酸残基の側鎖に存在する芳香環基は、His52の側鎖に存在するイミダゾール環と本質的に同じ配向を有する。すなわち、「GYG」から蛍光団が形成されるとともに、自動的に、これらのアミノ酸残基の側鎖に存在する芳香環基は、“π−π stacking”が可能な配向に位置する。
その結果、本発明の第一の形態に基づく、His52を、Phe、Tyr、Trpで置き換えた改変蛍光タンパク質においては、所望の長波長側へのシフトを示す蛍光団の形成効率は、環化、脱水過程が進行する際の環境に起因する影響は、実用上の問題とならない程度に抑制可能となっている。
ppluGFP2においても、「GYG」を含むαヘリックス様の二次構造(α−ヘリックス)の部分アミノ酸配列(アミノ酸番号49〜63)は、CpYGFPのα−ヘリックス(アミノ酸番号47〜61)と極めて高い同一性を有しており、His54を、Phe、Tyr、Trpで置き換えた改変蛍光タンパク質においては、所望の長波長側へのシフトを示す蛍光団の形成効率は、環化、脱水過程が進行する際の環境に起因する影響は、実用上の問題とならない程度に抑制可能となっている。
本発明の第二の形態にかかるGFP様の蛍光タンパク質の蛍光波長を変える方法は、Chiridius poppeiに由来するCpYGFP、あるいは、Pontellina plutellina由来のppluGFP2を基礎に、これらの野生型GFP様蛍光タンパク質が発する蛍光の色調、すなわち、蛍光スペクトル上において観測される極大蛍光波長(蛍光ピーク波長)を、短波長側へシフト(ブルー・シフト)させる改変蛍光タンパク質を創製する方法の一つである。
本発明の第二の形態では、CpYGFP、ppluGFP2の蛍光団を構成する「GYG」を、「GWG」へと変更することで、形成される蛍光団を、p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造から、indole−3−yl−metylideneimidazolinone構造へと変更することにより、得られる改変蛍光タンパク質の蛍光のピーク波長を、野生型蛍光タンパク質よりも、短波長側へシフト(ブルー・シフト)させている。
aqGFPに基づき、その蛍光団を構成する「SYG」を、「SWG」に置き換えたCFP、「SHG」に置き換えたBFPでも、蛍光団自体を変更することにより、得られる改変蛍光タンパク質の蛍光のピーク波長を、野生型蛍光タンパク質よりも、短波長側へシフト(ブルー・シフト)させている。但し、これらCFP、BFPの蛍光スペクトル、励起スペクトルは、少なくとも、二つ以上のピークが近接して、一つのブロードな多峰性ピークを構成している。この二つ以上のピークは、それぞれ異なる状態に起因しており、その二つの状態間で何らかの平衡関係が存在すると想定される。一般に、この種の二つ以上の状態に、同程度の存在比率で分布する場合、その存在比率が外因的な要因で変化することに由来する、全体的なスペクトル形状の変化がしばしば生じる。
それに対して、本発明の第二の形態による、改変蛍光タンパク質は、下記の実施例に示すように、その蛍光スペクトル、励起スペクトルは、実質的に単一の状態に由来すると見なせる程度の単峰型のピークを示している。すなわち、本発明の第二の形態による、改変蛍光タンパク質は、実質的に単一の状態に対する光吸収と、蛍光を示すものとなっており、外的な要因によって、そのスペクトル形状の変化が引き起こされることは回避されている。
加えて、本発明の第二の形態による、改変蛍光タンパク質では、蛍光団は、「GWG」から形成されるindole−3−yl−metylideneimidazolinone構造と推定されるが、その蛍光ピーク波長は、460nmであり、同様に、indole−3−yl−metylideneimidazolinone構造の蛍光団を有するCFP型の蛍光タンパク質の蛍光ピーク波長476nm〜485nmと比較し、有意に短波長側へのシフト量(ブルー・シフト)が優っている。蛍光団として、1H−imidazol−4−yl−metylideneimidazolinone構造を有するBFPの蛍光ピーク波長、440〜448nmと比較しても、遜色の無い短波長側へのシフト量(ブルー・シフト)が得られている。
本発明の第一の形態、第二の形態にかかる方法を適用して、作製される改変蛍光タンパク質は、野生型蛍光タンパク質をコードする遺伝子に対して、部位特異的な変異導入した遺伝子を利用して、組換え発現型タンパク質として製造される。その際、野生型蛍光タンパク質をコードする遺伝子、例えば、Chiridius poppeiに由来するCpYGFPをコードする遺伝子としては、該CpYGFPをコードするmRNAから調製されるcDNAに相当する、下記の塩基配列を有するDNAが利用できる。
Figure 0004719226
Figure 0004719226
この塩基配列(配列番号:3)は、国際公開第2005/095599号パンフレットに開示されており、該CpYGFPをコードする遺伝子(cDNA)を、クローニング・ベクター:pBluescript II SKのマルチ・クローニング・サイト中に挿入したベクター:pBluescriptII SK−NFPは、ブタペスト条約に基づき、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6、郵便番号305−8566)に、受託番号FERM BP−08681として、国際寄託(平成16年3月31日付け)がなされている。
一方、Pontellina plutellina由来のppluGFP2をコードする遺伝子の塩基配列は、公表されており(文献9:SHAGIN et al., Mol. Biol. Evol., (2004), Vol.21, No.5, pp. 841−850)、具体的には、GenBank accession number AY268072として、収録されている。また、該ppluGFP2をコードする遺伝子として、EVRΩGEN社から、商品名:Cop−GreenTMとして、一連のプラスミド中に該コード遺伝子を組換え発現可能な形態で挿入した発現ベクターが市販されている。この市販される発現ベクター中には、該ppluGFP2をコードする遺伝子として、下記のヒト化コドンに変換した塩基配列を含むDNAが挿入されている。
Sequence of
the humanized version of the CopGFP's open reading frame

Figure 0004719226
Figure 0004719226
本発明の第一の形態、第二の形態にかかる方法を適用して、作製される改変蛍光タンパク質は、上述する野生型蛍光タンパク質のアミノ酸配列中、1〜数個の離散的なアミノ酸を、他のアミノ酸へ置換したものであり、入手可能な、塩基配列が既知の遺伝子DNAを鋳型として、下記の実施例に記載する手法に準じて、部位特異的な変異を導入し、組換え発現タンパク質として生産できる。特に、野生型蛍光タンパク質は、何れも組換え発現が可能であり、また、改変部位は、そのタンパク質フォールディングに影響を及ぼすものでなく、野生型蛍光タンパク質が組換え発現可能な宿主において、同様の効率で実際に蛍光を発する成熟型蛍光タンパク質として、生産可能である。
例えば、本発明の第一の形態、第二の形態にかかる方法を、Chiridius poppeiに由来するCpYGFPに適用して、作製される改変蛍光タンパク質は、国際公開第2005/095599号パンフレットに開示される手法に準じて、ヒト細胞内において、蛍光を発する成熟型蛍光タンパク質として、組換え発現が可能である。また、これら成熟型蛍光タンパク質は、蛍光性マーカー・タンパク質として、他のタンパク質と融合した融合タンパク質として、宿主細胞内で組換え発現可能である。その際に利用する手法は、国際公開第2005/095599号パンフレットに開示される手法に準じたものである。
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。ここに示す具体例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、これら具体例に限定されるものではない。
I.Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質:CpYGFPの三次元構造の決定
Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質:CpYGFPの三次元構造を決定するため、組換え発現CpYGFPの精製済標品を用いて、結晶化を行い、得られた結晶を利用し、X線結晶構造解析を行った。
(I−1)組換え発現CpYGFPの精製済標品の調製
国際公開第2005/095599号パンフレットに開示する手法に従って、Chiridius poppei由来のCpYGFPをコードする遺伝子を、市販のプラスミドpET101/D−TOPO(Invitrogen 製)中に挿入し、該CpYGFPを大腸菌内で組換え発現用に利用可能な発現ベクター:pET101−NFPを作製する。
その際、Chiridius poppei由来のCpYGFPをコードする遺伝子は、既に、pBluescriptII SK−NFP(FERM BP−08681)中にクローニングされているものを鋳型として、PCR法により調製する。なお、CpYGFPをコードする遺伝子(cDNA)を、クローニング・ベクター:pBluescript II SKのマルチ・クローニング・サイト中に挿入したベクター:pBluescriptII SK−NFPは、ブタペスト条約に基づき、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6、郵便番号305−8566)に、受託番号FERM BP−08681として、国際寄託(平成16年3月31日付け)がなされている。

先ず、図7に示す、該CpYGPの組換え発現ベクター:pET101−NFPを用いて、大腸菌を形質転換する。得られた形質転換大腸菌に関して、選択マーカーのAmpicillin耐性遺伝子を用いて、クローン選別を行う。
選別されたクローンについて、ベクターpET101/D−TOPO由来のプロモーターから、IPTGを用いて、挿入された遺伝子の発現を誘導し、誘導後2時間、4時間経過後、蛍光性タンパク質の組換え発現の有無を確認する。また、IPTG発現誘導後、組換え発現されている蛍光性タンパク質が成熟型タンパク質となっていることは、形質転換株のコロニーを紫外線照射下、蛍光を示すことによって確認される。
国際公開第2005/095599号パンフレットに開示する手順、条件に従って、Chiridius poppei由来のCpYGFPの組換え発現ベクター:pET101−NFPを保持する形質転換大腸菌を大量培養し、IPTG発現誘導によって産生された蛍光性タンパク質組換え体の分離精製を行う。この工程に従って、精製された、組換え発現CpYGFPは、回収後、精製済標品タンパク質として、結晶化に用いる。
次いで、SDS−PAGEでシングルバンドと認められる程度に精製された組換え発現CpYGFPを含む溶液は、タンパク質濃度 23mg/mlまで遠心濃縮する。
(I−2)結晶化
結晶化は、シッティング・ドロップ蒸気拡散法を用いて行う。リザーバー溶液量100μl、ドロップとして、タンパク質溶液1μlとリザーバー溶液と同じ組成の沈澱剤溶液1μlの混合物をセットする。18℃において、約1週間保持して、ドロップ中の溶媒(水)を減少させ、タンパク質の濃縮を行って、結晶の析出を起こさせる。
結晶化条件の最適化のため、リザーバー溶液の組成を種々に変えて、上記条件で結晶析出が起こるリザーバー溶液組成を選別する。このスクリーニングにより、リザーバー溶液/沈澱剤溶液の組成として、0.1M CAPS (pH 10.5), 0.2M LiSO, 2.2M (NHSOを用いる際、0.1−0.2mmの柱状もしくはブロック状の結晶が析出した。前記結晶サイズは、後述するX線光源として、放射光を用いるX線回折装置に利用可能なサイズである。
(I−3)X線結晶構造解析
組換え発現CpYGFPの結晶について、その対称性と格子定数を確認したところ、空間群 C222、格子定数 a=113.5Å,b=133.5Å,c=108.7Åであった。
X線回折強度の測定は、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構にある、Photon FactoryのビームラインBL−6Aに設置されるX線回折装置を用いて行った。用いたX線光源(放射光)は、波長λ=0.9799Å、回折パターン・強度測定は、二次元マトリックス配置のCCD検出器を採用している。
X線回折の測定は、結晶を100Kに冷却した状態で行う。結晶の冷却時に使用する、クライオプロテクタントとして、グリセロールと、結晶化に使用したリザーバー溶液とを、3:7(容積比)で混合した液を用いた。先ず、タンパク質結晶を、該クライオプロテクタント中に10秒程度浸して、結晶表面に該クライオプロテクタントの被覆層を形成する。次いで、温度100Kに調整した、乾燥窒素気流の中に、前記処理を施したタンパク質結晶を曝し、急速冷凍する。冷凍された結晶は、100Kの乾燥窒素により冷却した状態に保ち、X線回折の測定を行う。
検出された回折パターン・強度データのデータ処理には、プログラムMOSFLMとSCALA(CCP4)を使用した。表1に、回折強度データの統計値を示す。該結晶は、空間群 C222、格子定数 a=113.5Å,b=133.5Å,c=108.7Åであり、分解能1.9Åのデータが収集できていた。
Figure 0004719226
得られた回折強度データに基づく、該組換え発現CpYGFPの結晶構造解析では、類似の構造を有すると想定されるDsRedの座標データを利用し、分子置換法を用いて、初期位相の決定を進めた。なお、モデルに用いたDsRedの座標データは、Protain Data Bank中に、ID 1GGXとして、公開されている。また、分子置換法によるタンパク質分子位置の決定には、プログラムCNXを用いた。決定された位相データから、三次元電子密度マップを作成し、引き続き、プログラムCNXと、三次元グラフィクス・ソフトXtalViewを使用して、構造モデルの精密化を行った。
空間群 C222の結晶において、各非対称単位中には、二つのタンパク質分子が存在しており、それぞれ、結晶学的2回軸対する回転対称性を有する、ダイマー形状を形成していることが確認された。前記精密化を行った構造モデルの原子座標に関して、その統計値を表2に示す。
Figure 0004719226
図3に、上述の精密化を終えた構造モデルにおけるペプチド主鎖の三次元的配置をリボンモデルにより示す。なお、蛍光団のp−hydroxybenzylideneimidazolinone構造は、詳細に表示されている。特に、図4に、蛍光団のp−hydroxybenzylideneimidazolinone構造と、その周囲に位置するアミノ酸残基の配置を含め、局所的な構造を示す。なお、組換え発現CpYGFPの蛍光団、すなわち、図3に示す結晶構造の詳細な座標データは、Protain Data Bank中に、ID code:2DD7として、登録されており、かかる座標データに基づき、三次元的グラフィック化することで、図3に示す全体像のみでなく、図4に示す部分構造も更に詳細に参照可能な状態とされている。
加えて、後述する改変体タンパク質H52Dに関しても、同等の精度の結晶構造の詳細な座標データは、Protain Data Bank中に、ID code:2DD9として、登録されている。
図4に示されるように、GYGから形成される蛍光団のp−hydroxybenzylideneimidazolinone構造中、Tyr56の側鎖に由来する、p−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)に対して、His52の側鎖のイミダゾール環は、重なる配置を採っている。すなわち、p−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)とイミダゾール環とは、両者のπ電子の重なりを介した、相互作用(π−π−スタッキング)が可能な相対配置を採っている。
加えて、p−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)のヒドロキシル基(−OH;フェノール性水酸基)と、Thr136の側鎖上のヒドロキシル基(−OH;アルコール性水酸基)とは、近接しており、水素結合形成か可能な距離となっている。また、p−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)のヒドロキシル基に対して、水素結合形成か可能な距離に水分子が存在している。
一方、イミダゾリノン環のオキソ酸素(=O)と、Arg85の側鎖上のグアニジル基のアミノ窒素原子とは、近接しており、水素結合形成か可能な距離となっている。また、イミダゾリノン環のオキソ酸素(=O)に対して、水素結合形成か可能な距離に水分子が存在している。
上述する相互作用(水素結合)の可能性は、蛍光団のp−hydroxybenzylideneimidazolinone構造が、下記するイオン化型と非イオン化型の平衡において、イオン化型を安定化する上で、Thr136の側鎖上のヒドロキシル基と、Arg85の側鎖上のグアニジル基のアミノ窒素原子が重要な役割を果たしていることを示唆している。
・p-hydroxybenzylideneimidazolinone構造におけるイオン化型と、非イオン化型の平衡
Figure 0004719226
解析された組換え発現CpYGFPの結晶構造は、分子置換法のモデルとして利用したDsRed、ならびに、Aequorea victoria由来のGFP(以下aqGFPと略す)において、共通に見出される、11個のβ鎖がバレル形状を構成し、そのバレル形状中心部を上下に貫くように、αヘリックスが配置されている、“βcan”構造を採っている。また、蛍光団は、“XYG”として、“GYG”が利用され、実際に、自己触媒的に、p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造が生成されている。aqGFPにおいては、この“X656667”は、当初、αヘリックスに相当する二次構造を形成し、タンパク質フォールディング後、環化の過程には、β鎖中に含まれるArg96、ならびに、β11鎖中に含まれるGlu222が関与すると推定されている。組換え発現CpYGFPにおいても、対応して、β鎖中に含まれるArg85、ならびに、β11鎖中に含まれるGlu207が、蛍光団の近傍に位置している。
上述する環化過程が進行すると、当初のαヘリックスに相当する二次構造中に存在している、n番目のアミノ酸残基のα位の−NH−と、(n−4)番目のアミノ酸残基のC末の>C=Oとの間の水素結合のうち、G555657の部位が関与する鎖内の水素結合は失われる。
タンパク質中で見出される一般的な二次構造のαヘリックスは、1巻きは、3.6アミノ酸残基を要し、その間にらせんは5.6Å進む。また、n番目のアミノ酸残基のα位の−NH−と、(n−4)番目のアミノ酸残基のC末の>C=Oとの間で水素結合が形成されているため、n番目のアミノ酸残基の側鎖と(n−4)番目のアミノ酸残基の側鎖とが互いに重なり合う配置を占めることは無い。一方、“XYG”由来の蛍光団領域においては、X(Gly55)のC末の>C=OとGly57のN末の−NH−との間で環化、脱水による環状構造を形成するため、この領域のペプチド主鎖の面間角(φ,ψ)は、αヘリックスにおける面間角(φ,ψ)とは異なったものとなっている。すなわち、G555657の部位は、下記のように、Gly55のC末の>C=Oが、Gly57のα位の−NH−と近接する「歪んだ配置」へと移行する。
・翻訳後、フォールディング;(歪んだ配置への移行)
Figure 0004719226
この構造変化に付随して、His52の側鎖上のイミダゾール環と、Tyr56の側鎖上のp−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)とが、互いに重なり合う配置を占めること可能となっていると推定される。最終的に、環化、脱水反応が完了すると、His52のC末の>C=Oと、Tyr56のC末の>C=Oは、β鎖中に含まれるArg85の側鎖のグアニジノ基と近接し、一方、Tyr56のN末の−NH−は、β11鎖中に含まれるGlu207の側鎖のカルボキシル基と近接する配置となっている。この配置においては、His52の側鎖上のイミダゾール環と、Tyr56の側鎖上のp−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)とが、環相互の間隔 3Å程度で重なり合うことができる。この種の芳香環が平行に積み重なった配置をとると、“π−π stacking”と称される構造的に安定な状態となり、その際、二つのπ電子共役系の相互作用が生じる。
II.改変体タンパク質の作製
上記の“π−π stacking”が達成されると、二つのπ電子共役系の相互作用が生じ、結果的に、蛍光団のp−hydroxybenzylideneimidazolinone構造による蛍光のピーク波長(蛍光波長)、ならびに、励起スペクトル上で観測されるピーク波長は、“π−π stacking”が達成されない場合と比較して、ともに、長波長側にシフトすると予測される。実際に、52番目のアミノ酸残基を、HisからThrに置換した改変体(H53T)、HisからPheに置換した改変体(H52F)、HisからAspに置換した改変体(H52D)の三種の改変体タンパク質を組換え発現により作製し、その蛍光特性の比較を行った。
(II−1)改変体タンパク質の組換え発現用ベクターの構築
国際公開第2005/095599号パンフレットに開示する、Chiridius poppei由来のCpYGFPの組換え発現ベクター:pET101−NFP中に挿入されている、野生型CpYGFPをコードする遺伝子を鋳型として、部位特異的変異導入により、H53T、H52F、H52D改変体タンパク質三種をコードする遺伝子を調製する。
His52をコードするコドンCACを、AspをコードするコドンGAT、ThrをコードするコドンACC、PheをコードするコドンTTCにそれぞれ置換するため、下記のプライマーを利用して、PCR法により、DNA断片を作製する。すなわち、PCR用ファワード・プライマーとして、その5’末端に上記のコドン変換を施した、下記の三種のプライマーを使用する。一方、リバース・プライマーとして、His52をコードするコドンCACより上流側の部分的塩基配列(塩基番号125−153;下記部分配列)に対して、相補的な塩基配列を有するプライマーを利用する。
Figure 0004719226
具体的には、PCR用ファワード・プライマーは、
H52Dのポイント・ミューテーション用には、
CpYGFP/H52D UP(30mer)
Figure 0004719226
H52Tのポイント・ミューテーション用には、
CpYGFP/H52T UP(30mer)
Figure 0004719226
H52Fのポイント・ミューテーション用には、
CpYGFP/H52F UP(30mer)
Figure 0004719226
の三種を用い、一方、共通のリバース・プライマーとして、
リバース・プライマー:CpYGFP/LP153(28mer)
Figure 0004719226
を用いた。
CpYGFPの組換え発現ベクター:pET101−NFPを鋳型として、下記する条件で、該プラスミドの全長に相当する、約6.4kbpのPCR増幅産物を調製した。表3に、用いたPCR反応の温度条件、表4に、反応液の組成を示す。なお、extention時間は、伸長すべき塩基長が約6.4kbpと長い点を考慮して、十分に長い時間を選択している。
Figure 0004719226
Figure 0004719226
調製されたPCR増幅産物の精製は、以下の手順で行った。
各25μLの反応液量でPCR反応を実施した後、合計3回の反応液を合わせ、5μLの反応液を採取し、0.7%アガロース・ゲル上で泳動し、目的分子量、約6.4kbpのPCR増幅産物を確認した。
次いで、反応液から、産物DNAを、MinElute PCR Purification Kit(QIAGEN製)で濃縮した。反応液1容(70μL)当たり、PB buffer 5容(350μL)を加え、ヴォルテックスにかけた後、MinEluteカラムに移した。30秒間遠心し、析出するDNAを沈積させ、上清を除去した。析出したDNAを、PE buffer 0.7mLで洗浄し、1分間、遠心(15,000rpm)した。さらに、EB buffer 20μLを加えて、室温で、1分間静置する。その後、1分間、遠心(15,000rpm)し、上清を回収した。
回収されたDNA溶液に、3μL 10×Buffer(500mM Tris/HCl pH9.5,100mM MgCl2,50mM DTT)、3μL 50%glycerol、3μL 75mM ATPを加え、ヴォルテックスにかけた後、1μL T4 PNK(Polynucleotide kinase)を加え、37℃で約30分インキュベートした。
10×loading dye 液 3μLを添加した後、0.7% TAE アガロース・ゲル上、各レーン DNA溶液 33μLを泳動した。目的の約6.4kbpのバンドをゲルから切り出した。切り出したゲル切片は、Ultrafree−DA(MILLIPORE製)を使用し、10分間、遠心(7000rpm)し、ゲル切片から1.5mL容eppenチューブ中にDNA溶液を抽出した。その抽出液から、産物DNAを、MinElute PCR Purification Kit(QIAGEN製)で濃縮した。反応液1容当たり、PB buffer 5容を加え、ヴォルテックスにかけた後、MinEluteカラムに移した。30秒間遠心し、析出するDNAを沈積させ、上清を除去した。析出したDNAを、PE buffer 0.7mLで洗浄し、1分間、遠心(15,000rpm)した。さらに、EB buffer 10μLを加えて、室温で、1分間静置する。その後、1分間、遠心(15,000rpm)し、上清を回収した。回収された上清を、精製済み二本鎖DNAの溶液として使用した。
精製済み二本鎖DNAの溶液1μLを1μLのLigation high(Toyobo製)とミックスし、16℃で一晩、ライゲーション反応を行った。このライゲーション反応により、二本鎖DNAは、両端の連結され、環状プラスミドが構築される。各プラスミドは、導入されたポイント・ミューテーションを除き、それ以外は、鋳型のCpYGFPの組換え発現ベクター:pET101−NFPと同じ構成となっており、各改変体タンパク質の組換え発現ベクターとなっている。
ライゲーション後、TOP10 cellにライゲーション液全量(2μL)をトランスフォームし、Caarbenicillinを含むLBプレートに蒔種した。翌朝、プラスミド・ベクター中に存在する、前記薬剤に対する耐性遺伝子を保持するコロニーを数個採取する。採取したコロニーを、Carbenicillinを含むLB培地に植菌し、形質転換大腸菌を増殖させ、プラスミド・ベクターの増殖を行った。集菌した形質転換大腸菌を破砕し、DNAを回収し、目的の分子量約約6.4kbpを有する環状DNA分子(プラスミド・ベクター)を単離、精製した。
精製した各プラスミド・ベクター中に含まれる、各改変体タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列を確認するため、該各プラスミド・ベクター中に含まれる改変体タンパク質をコードする領域を鋳型として、PCRによりDNA断片を増幅し、シークエンス解析用試料を作製した。
その際、用いたPCR用プライマーは、国際公開第2005/095599号パンフレットに開示する、フォワード・プライマー:pET−UP1(28mer):
Figure 0004719226
リバース・プライマー:SalI−LP1(35mer):
Figure 0004719226
を用いて、塩基長673bpの増幅産物を調製した。
該673bpのDAN断片から調製した、シークエンス解析用試料は、市販のシークエンス装置:ABI PRISM 310 Genetic Analyzerにかけ、5’末端側からの配列解析、ならびに、3’末端側からの配列解析をそれぞれ行った。
5’末端側からの配列解析結果と、3’末端側からの配列解析結果とを総合し、改変体タンパク質をコードする領域の塩基配列が、目的の部位特異的変異が導入されていること、また、PCR増幅時の誤りを含まないことを確認した。
(II−2)改変体タンパク質の組換え発現
上述の手順で調製、精製した、H53T改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−H53T、H52F改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−H52F、H52D改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−H52Dを利用して、下記の手順に従って、各改変体タンパク質を調製した。
先ず、各改変体タンパク質の組換え発現ベクターを用いて、大腸菌BL21−CodonPlusTM(DE3)−RIL Competent Cells(stratagene社製)を形質転換する。目的の発現ベクターの導入された形質転換大腸菌を、ベクターpET101/D−TOPOに由来する薬剤耐性遺伝子を利用し、選別する。
選別された形質転換大腸菌を、薬剤Carbenicillin添加液体培地において、37℃で、培地中の菌体密度を示すOD600が0.6に達するまで、前培養を行う。OD600が0.6に達した時点で、培地にIPTGを終濃度1mMとなる量添加し、培養温度を下げ、培養を継続する。すなわち、ベクターpET101/D−TOPO由来のプロモーターから、IPTGを用いて、各改変体タンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導する。該IPTG発現誘導後、それぞれ、H52T改変体タンパク質の場合、25℃で20時間、H52D改変体タンパク質の場合、30℃で16時間、H52F改変体タンパク質の場合、30℃で16時間培養した時点で、培養を停止し、遠心により集菌する。集菌した菌体は、20mM Tris−HCl pH8.5で洗浄した後、−80℃で冷凍し、保存した。
冷凍した各形質転換大腸菌を解凍後、20mM Tris−HCl (pH 8.0)に懸濁し、超音波破砕する。菌体破砕後、10000xgで遠心分離して、可溶性画分を含む上清を分取する。SDS−PAGE分析を行った結果、該上清中に、目的の改変体タンパク質の分子量に相当する、25kDaの新たなバンドが見出された。
該上清中に含まれる各改変体タンパク質は、国際公開第2005/095599号パンフレットに開示する、組換え発現CpYGFPの精製手順に準じて、HiTrap−DEAEカラム(Amersham Biosciences)、HiTrap−phenylカラム(Amersham Biosciences)、ゲルろ過カラムSuperdex 75(Amersham Biosciences)を利用する、下記の三段階の精製工程によって精製する。
工程1:
各改変体タンパク質を含む上清を、アニオン交換カラム:HiTrap DEAE(Amersham Biosciences製)にかけ、溶出条件:A buffer 20mM Tris−HCl pH8.0、 B buffer 1M NaCl in A buffer、 直線勾配 0−15% B buffer(0−150mM NaCl濃度)において、1−5% B bufferの画分に該改変体タンパク質を回収した。
工程2:
次いで、該回収画分を、アフィニフィカラム:HiTrap−phenylカラム(Amersham Biosciences)にかけ、溶出条件:A buffer 50mM Tris−HCl pH8.0、 B buffer 0.7M NaSO in A buffer、 直線勾配 100−0% B buffer(0.7M−0M NaSO濃度)において、それぞれ、65%B−38%B(H52T)、62%B−0%B(H52F)、46%B―0%B(H52D)の画分に、該改変体タンパク質三種を回収した。
工程3:
さらに、該回収画分を、予め、VIVASPIN20 MW10,000cutの条件で、遠心濃縮した。この濃縮サンプルを、ゲル濾過:Superdex 75(Amersham Biosciences製)にかけ、溶出条件:buffer 20mM Tris−HCl pH8.0 0.2M NaClを用いて、波長490nmに吸収を示す画分として、該改変体タンパク質を精製、回収した。なお、回収された画分に含まれるタンパク質のSDS分析を行ったところ、SDS電気泳動上で、分子量24−25kDa程度のバンドを示すタンパク質のみを含むことが確認される。
この精製済みの改変体タンパク質の溶液サンプルは、Dark Reader光(波長範囲420nm〜500nm)照射下では、いずれも、黄緑色の蛍光を発していることが確認される。
(II−3)組換え発現改変体タンパク質の蛍光特性
精製済改変体タンパク質について、25mM Tris−HCl (pH 8.0)、0.1M NaCl中に溶解した溶液サンプルを用いて、蛍光スペクトルと、励起スペクトルの測定を行った。対比のため、野生型CpYGFPについても、前記バッファ溶液中に溶解した溶液サンプルを用いて、蛍光スペクトルと、励起スペクトルの測定を行った。蛍光スペクトルの測定は、室温(25℃)において、日立製蛍光測定装置F−4500を使用して行った。一方、励起スペクトルの測定は、蛍光スペクトル中の極大ピーク波長において、蛍光強度もモニターして行った。
図7−1、図7−2に、野生型CpYGFP、H52T改変体タンパク質、H52D改変体タンパク質、H52F改変体タンパク質について、測定された蛍光スペクトルと励起スペクトルを併せて示す。表5に、蛍光スペクトル上の極大ピーク波長(λem.MAX)と、励起スペクトル上に存在するピークの波長(λex.peak)を併せて示す。
Figure 0004719226
His52をThrで置き換えたH52T改変体タンパク質の蛍光スペクトルは、野生型CpYGFPの蛍光スペクトルと比較して、ブルー・シフトを示しており、対応して、励起スペクトル上のピークも、ブルー・シフトを示している。この結果は、野生型CpYGFPの蛍光団では、p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造中、Tyr56の側鎖に由来する、p−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)に対して、His52の側鎖のイミダゾール環は、重なり合う配置を採っているため、実際に“π−π stacking”が達成され、二つのπ電子共役系の相互作用が生じていることを査証している。
同じく、His52をAspで置き換えたH52D改変体タンパク質の蛍光スペクトルも、“π−π stacking”の寄与がなく、野生型CpYGFPの蛍光スペクトルと比較して、ブルー・シフトを示している。加えて、H52D改変体タンパク質の励起スペクトル上には、二つのピークが観測されている。波長499.2nmのピークは、イオン化型の形状を示す蛍光団に起因する吸収に相当すると考えられる。一方、波長408.2のピークは、非イオン化型の形状を示す蛍光団に起因する吸収に相当すると考えられる。すなわち、プロトン供与能を有するAspが、Tyr56の側鎖に由来する、p−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)に近接して存在するため、該p−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)のフェノール性水酸基のイオン化比率が低下しており、結果として、非イオン化型の形状を示す蛍光団に起因する吸収に対応するピークが、励起スペクトル上において、観測されていると考えられる。
一方、His52をPheで置き換えたH52F改変体タンパク質の蛍光スペクトルは、野生型CpYGFPの蛍光スペクトルと比較して、レッド・シフトを示しており、対応して、励起スペクトル上のピークも、レッド・シフトを示している。この結果は、野生型CpYGFPの蛍光団では、p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造中、Tyr56の側鎖に由来する、p−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)に対して、実際に、Phe52の側鎖のベンゼン環は、重なり合う配置を採っているため、“π−π stacking”が達成され、二つのπ電子共役系の相互作用が生じていることを示唆している。
以上の結果から、His52に代えて、“π−π stacking”が可能であり、また、His52の側鎖のイミダゾール環と比較して、そのπ電子共役系がより広い、ベンゼン環、p−ヒドロキシフェニル基(フェノール環)、インドール環を有する、Phe、Tyr、Trpへと置き換えると、得られる改変体、すなわち、H52F、H52Y、H52W改変体が示す蛍光は、野生型CpYGFPの蛍光と比較して、同等のピーク波長を示す、あるいは、レッド・シフトを示すと予測される。
一方、His52に代えて、“π−π stacking”を起こす可能性が無い、Ala(側鎖:CH−)、Val(側鎖:CH−CH(CH)−)、Ile(側鎖:C−CH(CH)−)、Leu(側鎖:CH−CH(CH)−CH−)、Gly(側鎖無し)、システイン(側鎖:HS−CH−)、メチオニン(CH−S−C−)、セリン(側鎖:HO−CH−)、トレオニン(側鎖:CH−CH(OH)−)で置換した際には、かかる改変体の蛍光は、野生型CpYGFPの蛍光と比較して、ブルー・シフトを示すと予測される。
さらに、His52に代えて、“π−π stacking”を起こす可能性が無く、また、プロトン供与能を有するカルボキシル基を側鎖上に有する、Asp(側鎖:−CH−COOH)、Glu(側鎖:−CH−CH−COOH)で置換した際には、かかる改変体の蛍光は、野生型CpYGFPの蛍光と比較して、ブルー・シフトを示すと予測される。また、His52に代えて、“π−π stacking”を起こす可能性が無い、Asn(側鎖:−CH−CO−NH)、Gln(側鎖:−CH−CH−CO−NH)で置換した際にも、かかる改変体の蛍光は、野生型CpYGFPの蛍光と比較して、ブルー・シフトを示すと予測される。
III.蛍光団に変異を導入した改変体タンパク質の作製
上記の蛍光団に対して、“π−π stacking”を起こすHis52を他のアミノ酸残基で置き換える改変以外に、蛍光団を形成する“GYG”中のTyr56を、Trpで置き換える改変体タンパク質を作製し、極めて興味ある結果を得た。
具体的には、野生型CpYGFPの蛍光団を形成する“GYG”中のTyr56を、Trpで置き換える改変体タンパク質は、上記のaqGFPの蛍光団を形成する“SYG”中のTyr66を、Trpで置き換えたCFPに相当しており、蛍光スペクトルは、エネルギー差が小さな、二つの蛍光ピークが重ね合わせた形態を示し、対応する励起スペクトル上にも、エネルギー差が小さな、二つのピークが重ね合わせた形態を示すであろうと予測される。しかし、実際に、野生型CpYGFPの蛍光団を形成する“GYG”を、“GWG”に置き換えた改変体タンパク質を作製して、その蛍光スペクトル、励起スペクトルを測定したところ、予想に反して、いずれも、単一のピークを示すことを見出した。
(III−1)蛍光団に変異を導入した改変体タンパク質の組換え発現用ベクターの構築
国際公開第2005/095599号パンフレットに開示する、Chiridius poppei由来のCpYGFPの組換え発現ベクター:pET101−NFP中に挿入されている、野生型CpYGFPをコードする遺伝子を鋳型として、部位特異的変異導入により、蛍光団を形成する“GYG”を“GWG”に置き換えた改変体タンパク質をコードする遺伝子を調製する。
具体的には、Tyr56をTrpに置き換えたY56W改変体タンパク質、さらに、Val194をSerに置換する変異を施した、Y56W,V194S改変体タンパク質、加えて、Thr136をAlaに置換する変異をも施した、Y56W,V194S,T136A改変体タンパク質の計三種の改変体タンパク質をコードする遺伝子を、順次調製する。
(a)Y56W改変体タンパク質の組換え発現用ベクターの構築
Tyr56をコードするコドンTACを、TrpをコードするコドンTGGに置換するため、下記のプライマーを利用して、PCR法により、DNA断片を作製する。すなわち、PCR用ファワード・プライマーとして、その5’末端に上記のコドン変換を施した、下記のプライマーを使用する。
PCR用ファワード・プライマーは、
Y56Wのポイント・ミューテーション用には、
CpYGFP/Y56W UP(27mer)
Figure 0004719226
一方、リバース・プライマーとして、Tyr56をコードするコドンTACより上流側の部分的塩基配列(塩基番号135−165;下記部分配列)に対して、相補的な塩基配列を有するプライマーを利用する。
Figure 0004719226
すなわち、PCR用リバース・プライマーには、下記の塩基配列を有するCpYGFP LP165(31mer)を用いる。
Figure 0004719226
CpYGFPの組換え発現ベクター:pET101−NFPを鋳型として、上記(II−1)に記載する条件で、該プラスミドの全長に相当する、約6.4kbpのPCR増幅産物を調製した。また、PCR増幅後に行う、
調製されたPCR増幅産物の精製;
精製済み約6.4kbpのPCR増幅産物からライゲーション反応による環状プラスミドの作製;
TOP10 cellの形質転換と、培養によるプラスミドの増幅;
増幅したプラスミドの回収、ならびに、タンパク質コード領域の塩基配列の解析;
以上の各工程も、上記(II−1)に記載する条件、手順に従って実施する。
上述の手順で、Y56W改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−Y56Wを調製、精製した。
(b)Y56W,V194S改変体タンパク質の組換え発現用ベクターの構築
Tyr56のTrpへの置換に加え、Val194をコードするコドンGTCを、SerをコードするコドンAGCに置換するため、下記のプライマーを利用して、PCR法により、DNA断片を作製する。すなわち、PCR用リバース・プライマーとして、その相補的塩基配列は上記のコドン変換を施したものとなる、下記のプライマーを使用する。
V194Sのポイント・ミューテーション用には、
リバース・プライマーは、
CpYGFP V194S LP(25mer)
Figure 0004719226
を用いて、その相補鎖を用いて翻訳される際に、下記のようなアミノ酸残基の変換がなされる。
Figure 0004719226
一方、ファワード・プライマーは、
CpYGFP UP587(28mer)
Figure 0004719226
を用いて、Val194をコードするコドンGTCの直ぐ下流側の部分的塩基配列(塩基番号587−614部分)に相当する塩基配列を有するプライマーを利用する。
Y56W改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−Y56Wを鋳型として、上記(II−1)に記載する条件で、該プラスミドの全長に相当する、約6.4kbpのPCR増幅産物を調製した。また、PCR増幅後に行う、
調製されたPCR増幅産物の精製;
精製済み約6.4kbpのPCR増幅産物からライゲーション反応による環状プラスミドの作製;
TOP10 cellの形質転換と、培養によるプラスミドの増幅;
増幅したプラスミドの回収、ならびに、タンパク質コード領域の塩基配列の解析;
以上の各工程も、上記(II−1)に記載する条件、手順に従って実施する。
上述の手順で、Y56W,V194S改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−Y56W,V194Sを調製、精製した。
(c)Y56W,V194S,T136A改変体タンパク質の組換え発現用ベクターの構築
Tyr56のTrpへの置換、Val194のSerへの置換に加え、Thr136をコードするコドンACGを、AlaをコードするコドンGCCに置換するため、下記のプライマーを利用して、PCR法により、DNA断片を作製する。すなわち、PCR用リバース・プライマーとして、その相補的塩基配列は上記のコドン変換を施したものとなる、下記のプライマーを使用する。
T136Aのポイント・ミューテーション用には、
リバース・プライマーは、
CpYGFP T136A LP(22mer)
Figure 0004719226
を用いて、その相補鎖を用いて翻訳される際に、下記のようなアミノ酸残基の変換がなされる。
Figure 0004719226
一方、ファワード・プライマーは、
CpYGFP UP412(21mer)
Figure 0004719226
を用いて、Asp138をコードするコドンGTCを5’末端とする部分的塩基配列(塩基番号412−432部分)に相当する塩基配列を有するプライマーを利用する。
Y56W,V194S改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−Y56W,V194Sを鋳型として、上記(II−1)に記載する条件で、該プラスミドの全長に相当する、約6.4kbpのPCR増幅産物を調製した。また、PCR増幅後に行う、
調製されたPCR増幅産物の精製;
精製済み約6.4kbpのPCR増幅産物からライゲーション反応による環状プラスミドの作製;
TOP10 cellの形質転換と、培養によるプラスミドの増幅;
増幅したプラスミドの回収、ならびに、タンパク質コード領域の塩基配列の解析;
以上の各工程も、上記(II−1)に記載する条件、手順に従って実施する。
上述の手順で、Y56W,V194S,T136A改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−Y56W,V194S,T136Aを調製、精製した。
Y56W改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−Y56W、Y56W,V194S改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−Y56W,V194S、Y56W,V194S,T136A改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−Y56W,V194S,T136Aは、調製、精製後、導入された変異部位の塩基配列を下記の手順で確認した。
精製した各プラスミド・ベクター中に含まれる、各改変体タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列を確認するため、該各プラスミド・ベクター中に含まれる改変体タンパク質をコードする領域を鋳型として、PCRによりDNA断片を増幅し、シークエンス解析用試料を作製した。
その際、用いたPCR用プライマーは、国際公開第2005/095599号パンフレットに開示する、フォワード・プライマー:pET−UP1(28mer):
Figure 0004719226
リバース・プライマー:SalI−LP1(35mer):
Figure 0004719226
を用いて、塩基長673bpの増幅産物を調製した。
該673bpのDAN断片から調製した、シークエンス解析用試料は、市販のシークエンス装置:ABI PRISM 310 Genetic Analyzerにかけ、5’末端側からの配列解析、ならびに、3’末端側からの配列解析をそれぞれ行った。
5’末端側からの配列解析結果と、3’末端側からの配列解析結果とを総合し、改変体タンパク質をコードする領域の塩基配列が、目的の部位特異的変異が導入されていること、また、PCR増幅時の誤りを含まないことを確認した。
(III−2)改変体タンパク質の組換え発現
上述の手順で調製、精製した、Y56W改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−Y56W;Y56W,V194S改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−Y56W,V194S;Y56W,V194S,T136A改変体タンパク質の組換え発現ベクター:pET101−CpYGFP−Y56W,V194S,T136Aを利用して、下記の手順に従って、各改変体タンパク質を調製した。
先ず、各改変体タンパク質の組換え発現ベクターを用いて、大腸菌BL21−CodonPlusTM(DE3)−RIL Competent Cells(stratagene社製)を形質転換する。目的の発現ベクターの導入された形質転換大腸菌を、ベクターpET101/D−TOPOに由来する薬剤耐性遺伝子を利用し、選別する。
選別された形質転換大腸菌を、薬剤Carbenicillin添加液体培地において、37℃で、培地中の菌体密度を示すOD600が0.6に達するまで、前培養を行う。OD600が0.6に達した時点で、培地にIPTGを終濃度1mMとなる量添加し、培養温度を下げ、培養を継続する。すなわち、ベクターpET101/D−TOPO由来のプロモーターから、IPTGを用いて、各改変体タンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導する。該IPTG発現誘導後、それぞれ、Y56W,V194S改変体タンパク質の場合、25℃で5時間、Y56W,V194S,T136A改変体タンパク質の場合、25℃で5時間培養した時点で、培養を停止し、遠心により集菌する。集菌した菌体は、20mM Tris−HCl pH8.5で洗浄した後、−80℃で冷凍し、保存した。
冷凍した各形質転換大腸菌を解凍後、20mM Tris−HCl (pH 8.0)に懸濁し、超音波破砕する。菌体破砕後、10000xgで遠心分離して、可溶性画分を含む上清を分取する。SDS−PAGE分析を行った結果、該上清中に、目的の改変体タンパク質の分子量に相当する、25kDaの新たなバンドが確認された。
該上清中に含まれる各改変体タンパク質は、国際公開第2005/095599号パンフレットに開示する、組換え発現CpYGFPの精製手順に準じて、HiTrap−DEAEカラム(Amersham Biosciences)を利用して、宿主大腸菌由来の可溶性タンパク質と、組換え発現されたタンパク質とを分離し、精製する。
HiTrap−DEAEカラム精製工程:
各改変体タンパク質を含む上清を、アニオン交換カラム:HiTrap DEAE(Amersham Biosciences製)にかけ、溶出条件:A buffer 20mM Tris−HCl pH8.0、 B buffer 1M NaCl in A buffer、 直線勾配 0−20% B buffer(0−200mM NaCl濃度)にかけた。
Y56W,V194S改変体タンパク質、Y56W,V194S,T136A改変体タンパク質のいずれの場合も、可溶性画分を含む上清を、該カラムにインジェクション後、前記の溶出条件で溶出液を流通し、Wash画分を含め、所定の液量毎に分画し、各画分について、蛍光性タンパク質の有無を確認した。その際、波長365nmの励起光を照射したところ、Wash画分中に、青色の蛍光を発する蛍光性タンパク質が存在することが確認された。
宿主大腸菌由来の可溶性タンパク質中、Wash画分に回収される可能性のあるものは、蛍光性を示さない点は、別途確認されており、確認された蛍光性タンパク質は、組換え発現された、各改変体タンパク質である。すなわち、<1% B bufferの画分(Wash画分)に、該改変体タンパク質が回収されていた。
(III−3)組換え発現改変体タンパク質の蛍光特性
前記のカラム精製済改変体タンパク質について、20mM Tris−HCl pH8.5中に希釈した溶液サンプルを用いて、蛍光スペクトルと、励起スペクトルの測定を行った。蛍光スペクトルの測定は、室温(25℃)において、日立製蛍光測定装置F−4500を使用して行った。一方、励起スペクトルの測定は、蛍光スペクトル中の極大ピーク波長において、蛍光強度をモニターして行った。
図8、図9に、Y56W,V194S改変体タンパク質、ならびにY56W,V194S,T136A改変体タンパク質について、測定された蛍光スペクトルと励起スペクトルをそれぞれ示す。表6に、蛍光スペクトル上の極大ピーク波長(λem.MAX)と、励起スペクトル上に存在するピークの波長(λex.peak)を併せて示す。
Figure 0004719226
Tyr56をTrpで置き換えた上記の三種の改変体タンパク質の蛍光スペクトルは、野生型CpYGFPの蛍光スペクトルと比較して、ブルー・シフトを示しており、対応して、励起スペクトル上のピークも、ブルー・シフトを示している。この結果は、野生型CpYGFPの蛍光団は、p−hydroxybenzylideneimidazolinone構造であるが、Tyr56をTrpで置き換えた結果、上記三種の改変体タンパク質の蛍光団は、indole−3−yl−metylideneimidazolinone構造となっており、「ブルー・シフト」の傾向は、aqGFPに対する、CFPと類似するものとなっている。
なお、CFPは、蛍光スペクトル、励起スペクトルともに、エネルギー差が小さな、二つのピークが重ね合わせた形態を示し、該二種のピークを与える要因として、二つの蛍光状態(光励起状態)が共存しており、この二つの蛍光状態(光励起状態)の間で、何らかの平衡関係が存在している可能性が示唆されている。一方、上記三種の改変体タンパク質では、蛍光スペクトル、励起スペクトルともに、外見的には、単一のピークの形状を示しており、すなわち、それぞれ、一つの蛍光状態(光励起状態)が関与すると推定される。具体的には、上記三種の改変体タンパク質において、蛍光スペクトル、励起スペクトルに関与する蛍光状態(光励起状態)は、CFPにおいて、観測される二つの蛍光状態(光励起状態)のうち、高いエネルギー側のピークを与える蛍光状態(光励起状態)に相当するものと考えられる。
CFPにおいて、観測される二つの蛍光状態(光励起状態)のうち、低いエネルギー側のピークを与える蛍光状態(光励起状態)は、蛍光団であるindole−3−yl−metylideneimidazolinone構造において、インドール環のπ電子共役系と、イミダゾリノン環のπ電子共役系とが、イデン型の連結部を介して、繋がり、励起状態ではより大きな非局在化が生じていると推定される。一方、CFPにおいて、観測される二つの蛍光状態(光励起状態)のうち、高いエネルギー側のピークを与える蛍光状態(光励起状態)は、前記の二つのπ電子共役系における非局在化の寄与は乏しいと推定される。
上記三種の改変体タンパク質の蛍光スペクトル、励起スペクトルに関与する蛍光状態(光励起状態)は、CFPにおいて、観測される二つの蛍光状態(光励起状態)のうち、高いエネルギー側のピークを与える蛍光状態(光励起状態)と比較しても、さらに、高いエネルギー側にピークを与えており、インドール環のπ電子共役系と、イミダゾリノン環のπ電子共役系との間で、イデン型の連結部を介した非局在化の寄与は、更に少ない、あるいは、インドール環とイミダゾリノン環とは、同一平面上に存在してなく、イデン型の連結部を介した非局在化が困難な状態となっていると推察される。
このCpYGFPに基づき、その蛍光団を形成する“GYG”を“GWG”に置き換えた改変体タンパク質は、aqGFPに基づき、その蛍光団を形成する“SYG”を“SWG”に置き換えた改変体タンパク質CFPよりも、蛍光のピーク波長はブルー・シフトしており、その青色蛍光は、BFPの青色蛍光と比較しても、遜色の無い色調(青色)を示す。
本発明の改変を施し、蛍光波長を変化させた蛍光性タンパク質は、野生型CpYGFPと同様に、哺乳動物細胞を利用するin vitro培養系において、該宿主細胞内で発現可能なin vivo 蛍光性マーカー・タンパク質として利用することが可能である。

Claims (19)

  1. Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの改変蛍光タンパク質であって、
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列(配列番号:1)中、
    Figure 0004719226
    その52番目のアミノ酸Hisを、
    Phe、Tyr、Trpからなる芳香族アミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、レッド・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である;
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、
    Ala、Val、Ile、Leu、Gly、Cys、Met、Ser、Thrからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である;あるいは、
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、
    Asp、Asn、Glu、Glnからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である
    のいずれかの改変蛍光タンパク質である
    ことを特徴とする改変蛍光タンパク質。
  2. 前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列(配列番号:1)中、52番目のアミノ酸Hisを、Pheで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、レッド・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−H52Fである
    ことを特徴とする請求項1に記載の改変蛍光タンパク質。
  3. 前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列(配列番号:1)中、52番目のアミノ酸Hisを、Thrで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−H52Tである
    ことを特徴とする請求項1に記載の改変蛍光タンパク質。
  4. 前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列(配列番号:1)中、52番目のアミノ酸Hisを、Aspで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−H52Dである
    ことを特徴とする請求項1に記載の改変蛍光タンパク質。
  5. Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPと高い相同性を有するPontellina plumata由来のGFP様蛍光タンパク質ppluGFP2の改変蛍光タンパク質であって、
    前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisに対応する、該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列(配列番号:4)中、
    Figure 0004719226
    その54番目のアミノ酸Hisを、
    Phe、Tyr、Trpからなる芳香族アミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該ppluGFP2が発する蛍光のピーク波長と比較し、レッド・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である;
    該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、54番目のアミノ酸Hisを、
    Ala、Val、Ile、Leu、Gly、Cys、Met、Ser、Thrからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該ppluGFP2が発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である;あるいは、
    該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、54番目のアミノ酸Hisを、
    Asp、Asn、Glu、Glnからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該ppluGFP2が発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質である
    のいずれかである
    ことを特徴とする改変蛍光タンパク質。
  6. 前記ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列(配列番号:4)中、54番目のアミノ酸Hisを、Pheで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質である
    ことを特徴とする請求項5に記載の改変蛍光タンパク質。
  7. 前記ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列(配列番号:4)中、54番目のアミノ酸Hisを、Thrで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質である
    ことを特徴とする請求項5に記載の改変蛍光タンパク質。
  8. 前記ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列(配列番号:4)中、54番目のアミノ酸Hisを、Aspで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質である
    ことを特徴とする請求項5に記載の改変蛍光タンパク質。
  9. Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの改変蛍光タンパク質であって、
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列(配列番号:1)中、
    Figure 0004719226
    Figure 0004719226
    その56番目のアミノ酸Tyrを、
    Trpで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした、460nm以下の蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−Y56Wである;
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、56番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換し、
    さらに、194番目のアミノ酸Valを、Serで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした、460nm以下の蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−Y56W,V194Sである;あるいは、
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、56番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換し、
    さらに、194番目のアミノ酸Valを、Serで、136番目のアミノ酸Thrを、Alaで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした、460nm以下の蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−Y56W,V194S,T136Aである
    のいずれかの改変蛍光タンパク質である
    ことを特徴とする改変蛍光タンパク質。
  10. Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPと高い相同性を有するPontellina plumata由来のGFP様蛍光タンパク質ppluGFP2の改変蛍光タンパク質であって、
    前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、56番目のアミノ酸Tyrに対応する、該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列(配列番号:4)中、
    Figure 0004719226
    その58番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質;
    該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、58番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換し、
    さらに、197番目のアミノ酸Valを、Serで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質;あるいは
    該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、58番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換し、
    さらに、197番目のアミノ酸Valを、Serで、138番目のアミノ酸Thrを、Alaで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質
    のいずれかの改変蛍光タンパク質である
    ことを特徴とする改変蛍光タンパク質。
  11. Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの蛍光のピーク波長を長波長側あるいは短波長側にシフトさせるための、該蛍光タンパク質の改変方法であって、
    該蛍光タンパク質CpYGFPに対する改変によって作製される改変蛍光タンパク質は、
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列(配列番号:1)中、
    Figure 0004719226
    その52番目のアミノ酸Hisを、
    Phe、Tyr、Trpからなる芳香族アミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、レッド・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質;
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、
    Ala、Val、Ile、Leu、Gly、Cys、Met、Ser、Thrからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質;あるいは、
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、
    Asp、Asn、Glu、Glnからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質
    のいずれかである
    ことを特徴とする蛍光タンパク質の改変方法。
  12. 該蛍光タンパク質CpYGFPに対する改変によって作製される改変蛍光タンパク質は、
    前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、pheで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、レッド・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−H52Fである
    ことを特徴とする請求項11に記載の蛍光タンパク質の改変方法。
  13. 該蛍光タンパク質CpYGFPに対する改変によって作製される改変蛍光タンパク質は、
    前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、Thrで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−H52Tである
    ことを特徴とする請求項11に記載の蛍光タンパク質の改変方法。
  14. 該蛍光タンパク質CpYGFPに対する改変によって作製される改変蛍光タンパク質は、
    前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisを、Aspで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−H52Dである
    ことを特徴とする請求項11に記載の蛍光タンパク質の改変方法。
  15. Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPの蛍光のピーク波長を460nm以下の短波長側にシフトさせるための、該蛍光タンパク質の改変方法であって、
    該蛍光タンパク質CpYGFPに対する改変によって作製される改変蛍光タンパク質は、
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列(配列番号:1)中、
    Figure 0004719226
    その56番目のアミノ酸Tyrを、
    Trpで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした、460nmに蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−Y56W;
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、56番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換し、
    さらに、194番目のアミノ酸Valを、Serで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした、460nmに蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−Y56W,V194S;あるいは、
    該CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、56番目のアミノ酸Tyrを、Trpで置換し、
    さらに、194番目のアミノ酸Valを、Serで、136番目のアミノ酸Thrを、Alaで置換されているアミノ酸配列を有し、該CpYGFPが発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした、459nmに蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質:CpYGFP−Y56W,V194S,T136A
    のいずれかである
    ことを特徴とする蛍光タンパク質の改変方法。
  16. Chiridius poppei由来のGFP様蛍光タンパク質CpYGFPと高い相同性を有するPontellina plumata由来のGFP様蛍光タンパク質ppluGFP2の蛍光のピーク波長を長波長側あるいは短波長側にシフトさせるための、該蛍光タンパク質の改変方法であって、
    該蛍光タンパク質ppluGFP2に対する改変によって作製される改変蛍光タンパク質は、
    前記CpYGFPが有する完全長アミノ酸配列中、52番目のアミノ酸Hisに対応する、該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列(配列番号:4)中、
    Figure 0004719226
    その54番目のアミノ酸Hisを、
    Phe、Tyr、Trpからなる芳香族アミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該ppluGFP2が発する蛍光のピーク波長と比較し、レッド・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質;
    該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、54番目のアミノ酸Hisを、
    Ala、Val、Ile、Leu、Gly、Cys、Met、Ser、Thrからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該ppluGFP2が発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質;あるいは、
    該ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列中、54番目のアミノ酸Hisを、
    Asp、Asn、Glu、Glnからなるアミノ酸の群から選択される一つのアミノ酸で置換されているアミノ酸配列を有し、該ppluGFP2が発する蛍光のピーク波長と比較し、ブルー・シフトした蛍光のピーク波長を示す改変蛍光タンパク質
    のいずれかである
    ことを特徴とする蛍光タンパク質の改変方法。
  17. 該蛍光タンパク質ppluGFP2に対する改変によって作製される改変蛍光タンパク質は、
    前記ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列(配列番号:4)中、54番目のアミノ酸Hisを、Pheで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質である
    ことを特徴とする請求項16に記載の蛍光タンパク質の改変方法。
  18. 該蛍光タンパク質ppluGFP2に対する改変によって作製される改変蛍光タンパク質は、
    前記ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列(配列番号:4)中、54番目のアミノ酸Hisを、Thrで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質である
    ことを特徴とする請求項16に記載の蛍光タンパク質の改変方法。
  19. 該蛍光タンパク質ppluGFP2に対する改変によって作製される改変蛍光タンパク質は、
    前記ppluGFP2が有する完全長アミノ酸配列(配列番号:4)中、54番目のアミノ酸Hisを、Aspで置換されているアミノ酸配列を有する改変蛍光タンパク質である
    ことを特徴とする請求項16に記載の蛍光タンパク質の改変方法。
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